基材上に、機能性材料を含むライン状液体によって、閉じられた幾何学図形を形成し、次いで、前記ライン状液体を乾燥して、前記機能性材料を縁部に沿って堆積させることにより、機能性材料を含む内側細線と外側細線からなる機能性細線ユニット(以下、単に細線ユニットともいう)を形成する。細線ユニットを基材上に1又は複数並設することで機能性細線パターンを形成することができる。これにより、機能性細線を自由度高く安定に形成できる効果が得られる。
更に、好ましい態様において、かかる細線ユニットは、機能性細線パターンを形成するための機能性細線パターン前駆体(以下、単に前駆体ともいう)として用いられる。即ち、前駆体を構成する内側細線と外側細線からなる機能性細線の一部を除去することにより、除去せず残留させる細線によって、機能性細線パターンを形成することができる。これにより、パターン形成の自由度を更に高めることができ、特に機能性細線パターンを構成する細線の配置間隔を自由度高く調整できる効果が得られる。
以下に、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
まず、ライン状液体から細線ユニットが形成されるプロセスについて、図1を参照して説明する。
図1(a)に示すように、基材1上に、ライン状液体2によって、閉じられた幾何学図形を形成する。ライン状液体2からなる幾何学図形は、液体が付与されていない領域20を内部に包含することにより、縁部として互いに独立した内側縁21と外側縁22とを有する。内側縁21は、ライン状液体2によって形成される閉じられた幾何学図形の内側の縁部であり、液体が付与されていない領域20に隣接する縁部である。外側縁22は、ライン状液体2によって形成される閉じられた幾何学図形の外側の縁部であり、内側縁21とは接続されていない。かかる液体2を乾燥させる際に、コーヒーステイン現象を利用して、縁部である内側縁21及び外側縁22に沿って機能性材料を選択的に堆積させることによって、図1(b)に示すように、内側縁21に対応する位置に内側細線31が、外側縁22に対応する位置に外側細線32が、それぞれ形成される。
このようにして、機能性材料を含む内側細線31と該内側細線31を取り囲む外側細線32からなる細線ユニット3が形成される。細線ユニット3を構成する内側細線31と外側細線32は互いに接続されておらず独立している。内側細線31と外側細線32は、ライン状液体2の線幅(線の太さ)に比べて十分に細いものになる。図示の例では、ライン状液体2が、1つの内側縁21と1つの外側縁22を有することにより、一対の内側細線31及び外側細線32からなる細線ユニット3を形成している。
ライン状液体2から細線ユニット3を形成することによる効果について、図2を参照して説明する。
図2(a)に示すように、基材1上に付与されたライン状液体2の乾燥は、中央部に比べて内側縁21及び外側縁22において速いため、まず内側縁21及び外側縁22に沿って機能性材料の局所的な堆積が起こる。堆積した機能性材料により液体の縁が固定化された状態(接触線の固定化)となり、それ以降の乾燥に伴うライン状液体2の太さ方向の収縮が抑制される。ライン状液体2中では、内側縁21及び外側縁22での蒸発により失った分の液体を補うように、中央部から内側縁21に向かう流動と、中央部から外側縁22に向かう流動とが形成される。図中、流動の方向を矢印により概念的に示した。この流動によって更なる機能性材料が内側縁21及び外側縁22に運ばれて堆積する。その結果、内側縁21及び外側縁22に対応する位置に、機能性材料を含む内側細線31及び外側細線32がそれぞれ形成される。
図2(b)の参考例に示すような、閉じられた幾何学図形ではない液体100の縁101に機能性材料を選択的に堆積させる場合との対比では、図2(a)に示したライン状液体2は、液体が付与されていない領域20を内部に包含することにより、液体の付与量を削減でき、乾燥負荷を低減することができる。これにより、タクトタイムを短縮して生産効率を向上することができる。
更に、ライン状液体2は、液体が付与されていない領域20を内部に包含することにより、液体の乾燥に伴う気化熱の総量が比較的小さくなる。そのため、乾燥に伴う基材温度の変化や不均一化が抑制され、上述した液流を安定に形成することができる。
また更に、ライン状液体2は、液体が付与されていない領域20を内部に包含することにより、流動によって機能性材料が縁に到達するまでの平均移動距離を短縮することができる。
これらの結果、比較的大きい径でライン状液体2を形成する場合においても、コーヒーステイン現象を安定に発現することができ、内側細線31及び外側細線32の形成を安定化することができる。これにより、機能性細線である内側細線31及び外側細線32を自由度高く安定に形成できる効果が得られる。
機能性材料を縁に運ぶ流動の形成を促進することは好ましいことである。例えば、固形分濃度、液体と基材の接触角、液体の量、基材の加熱温度、液体の配置密度、または温度、湿度、気圧といった環境因子などの条件を調整することによって、液体の縁を早期に固定化することができ、また液体中央部と縁の蒸発量の差を大きくすることができる。これにより、機能性材料を縁に運ぶ流動の形成を促進することができる。
基材1上へのライン状液体2の付与は、インクジェット法により行うことができる。具体的には、図示しない液滴吐出装置が備えるインクジェットヘッドを基材に対して相対移動させながら、インクジェットヘッドのノズルから機能性材料を含むインクを吐出し、吐出されたインク滴を基材上で合一させて、ライン状液体2を形成することができる。インクジェットヘッドの液滴吐出方式は格別限定されず、例えば、ピエゾ方式やサーマル方式などを用いることができる。
インクジェット法を用いることにより、ライン状液体2によって、閉じられた幾何学図形を所望の形状で自在に形成することができる。ライン状液体2の内側縁21及び外側縁22の形状に対応して、得られる細線ユニット3を構成する内側細線31及び外側細線32の形状を、それぞれ所望の閉じられた幾何学図形となるように形成することができる。そのため、インクジェット法を用いることにより、機能性細線を更に自由度高く形成することができる。
以下に、基材1上に細線ユニット3を複数形成し、これら複数の細線ユニット3を前駆体として用いることによって、機能性細線パターンからなる透明導電膜を形成する方法の具体例を挙げて、本発明について更に詳しく説明する。ここでは、機能性材料として導電性材料が、基材として透明基材が好ましく用いられる。
まず、図3〜図8を参照して、ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形を四角形にする態様について説明する。
まず、図3(a)に示すように、基材1上に、導電性材料を含む第1ライン状液体2によって、閉じられた幾何学図形として四角形を形成する。ここでは、基材1上に、四角形である第1ライン状液体2を基材の長手方向(図中、上下方向)及び幅方向(図中、左右方向)に所定ピッチで複数並設している。ここでは、便宜上、4つの第1ライン状液体2を図示している。
基材1上に付与された第1ライン状液体2は、液体が付与されていない領域20を内部に包含することにより、縁として、互いに独立した内側縁21と外側縁22とを有する。
次いで、第1ライン状液体2を乾燥させる際にコーヒーステイン現象を生起させて、導電性材料をライン状液体2の内側縁21及び外側縁22に沿って選択的に堆積させる。
これにより、図3(b)に示すように、内側細線31と外側細線32からなる第1細線ユニット3が形成される。第1細線ユニット3を構成する細線31、32は、四角形状に形成されている。
次いで、図4(a)に示すように、基材1上に、導電性材料を含む第2ライン状液体4によって、閉じられた幾何学図形として四角形を形成する。ここでは、基材1上に、四角形である第2ライン状液体4を基材の長手方向及び幅方向に所定ピッチで複数並設している。ここでは、便宜上、5つの第2ライン状液体4を図示している。
基材1上に付与された第2ライン状液体4は、液体が付与されていない領域40を内部に包含することにより、縁として、互いに独立した内側縁41と外側縁42とを有する。
本態様では、第2ライン状液体4を、4つの第1細線ユニット3の間に挟まれる位置に形成している。第2ライン状液体4からなる四角形の各頂点近傍は、隣接する第1細線ユニット3の外側細線32と接触するように配置されている。第2ライン状液体4からなる四角形の各頂点は、隣接する第1細線ユニット3の内側細線31と外側細線32の間の領域に配置されている。
次いで、第2ライン状液体4を乾燥させる際にコーヒーステイン現象を生起させて、導電性材料を第2ライン状液体4の内側縁41及び外側縁42に沿って選択的に堆積させる。
これにより、図4(b)に示すように、内側細線51と外側細線52からなる第2細線ユニット5を形成することができる。第2細線ユニット5を構成する細線51、52は、四角形状に形成されている。
本態様では、基材1上に、第1細線ユニット3と第2細線ユニット5を、基材の長手方向及び幅方向に交互に形成している。第1細線ユニット3の外側細線32と第2細線ユニット5の外側細線52とは互いに接続され、第1細線ユニット3の内側細線31と、第2細線ユニット5の内側細線51とは互いに接続されないように、各細線ユニット3、5を形成している。内側細線31、51は、他の内側細線31、51と接続されていないだけでなく、他の外側細線32、52とも接続されていない。
以上のようにして、基材1上に、外側細線32、52によって互いに接続された細線ユニット3、5からなるパターンが形成される。
次いで、得られたパターンに電解メッキを施す。かかる電解メッキ処理の一例について図5を参照して説明する。
図5に示すように、図示しないメッキ浴内の細線ユニット3、5からなるパターンに給電部材6を接触させて電解メッキを施す。このとき、外側細線32、52同士が互いに接続されていることにより、複数の外側細線32、52からなる通電経路が網目状に形成される。給電部材6から該通電経路を通して通電することで、該通電経路内の外側細線32、52に電解メッキが施される。
一方、内側細線31、51は、他の内側細線31、51及び外側細線32、52と互いに接続されておらず、各々が独立して形成されているため、上述した外側細線32、52のような通電経路が形成されない。図示するように、給電部材6と直接接触する内側細線31、51が存在する場合は、内側細線31、51に電解メッキが施され得るが、それ以外の内側細線31、51には通電されず、電解メッキが施されない。給電部材6を内側細線31、51に接触させない場合は、何れの内側細線31、51にも電解メッキが施されない。
このようにして、外側細線32、52に対して通電経路を通して通電することで、該外側細線32、52に対して選択的に電解メッキを施すことができる。ここで、「選択的」というのは、少なくとも、電解メッキが施される外側細線32、52の本数が、電解メッキが施される内側細線31、51の本数よりも多いことをいう。
このようにして、図6に示すように、電解メッキが施された外側細線32、52の膜厚を、電解メッキが施されていない内側細線31、51と比較して増大させることができる。これにより、外側細線32、52は内側細線31、51よりも低抵抗化され、更に耐久性が向上する。
次いで、細線ユニット3、5を前駆体として用い、機能性細線パターンを形成する。
本態様では、細線ユニット3、5の内側細線31、51を除去することによって、図7に示すように、除去せず残留させる互いに接続された外側細線32、52によって、機能性細線パターンを形成している。
上述したように外側細線32、52に電解メッキを施して膜厚を増大させておくことにより、外側細線32、52は除去されにくくなり、電解メッキが施されていない内側細線31、51は比較的容易に除去できる効果が得られる。
細線を除去する方法は格別限定されないが、例えば、レーザー光等のようなエネルギー線を照射する方法や、化学的にエッチング処理する方法等を用いることが好ましい。
また、細線を除去する好ましい方法として、外側細線32、52に電解メッキを施す際に、内側細線31、51をメッキ液によって除去する方法を用いることもできる。この場合、メッキ液として、除去対象となる細線を構成する導電性材料を溶解又は分解可能なものを用いることができる。
具体例として、まず、導電性材料として銀ナノ粒子を用いて、内側細線31、51及び外側細線32、52からなる細線ユニット3、5を形成する。そして、第1電解メッキとして外側細線32、52に選択的に銅メッキ層を設け、次いで、第2電解メッキとして該銅メッキ層上にニッケルメッキ層を設ける。このとき、第2電解メッキ(電解ニッケルメッキ)のメッキ液によって、第1電解メッキが施されていない銀からなる内側細線31、51を溶解又は分解して除去することができる。このように、外側細線32、52に対する電解メッキと、内側細線31、51の除去を同時に進行させることは好ましいことである。
また、例えば、電解メッキのための給電を停止した後、除去対象となる細線、好ましくは内側細線31、51を除去するのに十分な時間、好ましくは1分〜30分の時間、基材1をメッキ液に浸漬させておくことも好ましいことである。
以上のように、内側細線31、51を除去することによって、除去せず残留させる外側細線32、52からなる機能性細線パターンにおける細線の配置間隔を自由度高く調整することができる。細線の一部除去による配置間隔の調整は、特に配置間隔を大きくする場合に有利である。
細線の一部を除去して細線の配置間隔を大きくすることにより、機能性細線パターンからなる透明導電膜の透過率や低視認性を好適に向上できる効果が得られる。
以上のようにして得られた機能性細線パターンについて詳しく説明する。
図7に示した機能性細線パターンは、基材1上に、外側細線32、52からなる細線、即ち機能性材料を含む四角形状細線を、二次元的に複数並設してなる。四角形状細線(外側細線32、52)は、該基材1の長手方向及び幅方向のそれぞれに所定のピッチで複数並設されている。
図7に示すように、機能性細線パターンにおいて、四角形状細線(外側細線32、52)は、基材1の長手方向に対して各辺が傾斜(図示の例では45°)した四角形であることが好ましい。これにより、機能性細線パターンからなる透明導電膜付き基材1を画像表示装置等のデバイスに組み込んだ際のモアレ発生を好適に防止できる効果が得られる。
モアレというのは、導電性細線の集合体からなる透明導電膜付き基材1をデバイスに組み込んだ際に、導電性細線とデバイス中の他の要素との組み合わせに由来するスジが視認されてしまうことである。モアレは、例えば、透明導電膜を構成する導電性細線と、デバイス中の画像表示素子が備える画素アレイとが光学干渉すること等により生じ得る。モアレが防止されることにより、画像表示素子により表示される画像を鮮明に視認できる効果が得られる。
かかる機能性細線パターンにおいて、隣接する四角形状細線(外側細線32、52)は、四角形の頂点を挟む両辺同士を交差させて2点の交点で接続されている。即ち、図8に拡大して示すように、隣接する四角形状細線(外側細線32、52)は、一方の四角形状細線(外側細線32)の頂点Aを挟む両辺a1、a2と、他方の四角形状細線(外側細線52)の頂点Bを挟む両辺b1、b2とを交差させることによって、2点の交点C、Dで接続されている。なお、図8では、説明の便宜上、隣接する1組の四角形状細線(外側細線32、52)のみを示しているが、図7に示されるように、他の隣接する四角形状細線も同様に接続されている。このように隣接する四角形状細線(外側細線32、52)を2点の交点で接続することによって両四角形状細線を確実に接続でき、特に機能性材料として導電性材料を用いる場合には、確実な電気的接続を実現できる。これにより、透明導電膜の更なる低抵抗化を実現でき、更に抵抗の不均一化を好適に防止できる効果も得られる。
また、隣接する四角形状細線(外側細線32、52)の内部領域の重複面積は、各四角形状細線(外側細線32、52)の内部領域の面積の10分の1以下であることが好ましい。ここで、重複面積というのは、図示の例でいえば、2つの頂点A、B及び2つの交点C、Dからなる4点を頂点とする四角形ADBCの面積である。これにより、両四角形状細線をより確実に接続できると共に、機能性細線パターンが視認されにくくなる効果が得られる。
また、特に機能性材料として導電性材料を用いる場合には、四角形状細線(外側細線32、52)がメッキ層により被覆されていることによって、より確実な電気的接続を実現できる。
以上の説明では、基材の一面に機能性細線パターンを形成する場合について示したが、基材の両面に機能性細線パターンを形成することも好ましいことである。基材の両面に機能性細線パターンを形成する場合の一例について、図9を参照して説明する。
図9の例では、基材1の一面(表面)に機能性細線パターンを形成し、更に、基材1の他面(裏面)にも機能性細線パターンを形成している。
ここでは、各面の機能性細線パターンは、図7に示したものと同様に、細線ユニット3、5の内側細線31、51を除去することにより、除去せず残留させた外側細線32、52により構成されている。
このように、基材1の両面に機能性細線パターンを形成する場合において、一面及び又は他面の細線ユニットを構成する細線の一部を除去して細線の配置間隔を大きくすることは特に好ましい。
例えば、基材として透明基材を用い、両面の機能性細線パターンに含有させる機能性材料として導電性材料を用いることで、機能性細線パターンからなる透明導電膜を透明基材の両面に形成することができる。この場合、細線の一部除去によって細線の配置間隔を大きくすることで、表裏のパターンの位置合わせ精度の高い要求を緩和することができる。
即ち、表裏のパターンの位置合わせに多少のずれが生じても、細線間隔が大きいことによって、表裏のパターンの干渉による骨見えを好適に防止できる。両面に透明導電膜を設けた透明基材は、例えばタッチパネルセンサー等として好適に用いることができる。
図10は、機能性細線パターンにより構成された透明導電膜を備えるタッチパネルセンサーの一例を示している。図10(a)は基材1を表面側から見た様子を、図10(b)は基材1を裏面側から見た様子を、それぞれ示している。
図示のタッチパネルセンサーは、図10(a)に示すように、透明な基材1の表面に、帯状のX電極7が複数並設されている。複数のX電極7は、それぞれ、外側細線32、52からなる機能性細線パターンにより構成された透明導電膜8により構成されている。
各透明導電膜8を構成する機能性細線パターンにおいて、隣接する外側細線32、52は互いに接続されている。一方、一つの透明導電膜8を構成する外側細線32、52は、他の透明導電膜8を構成する外側細線32、52とは接続されていない。このように、互いに接続されていない外側細線32、52が存在することによって、基材1の表面に、互いに電気的に接続されていない独立した複数のX電極7を形成することができる。各X電極7は、互いに電気的に接続された複数の外側細線32、52からなる集合体によって構成されている。図中、符号9は引出し配線であり、各X電極7は引出し配線9によって図示しない制御回路に接続される。
一方、図10(b)に示すように、透明な基材1の裏面には、帯状のY電極10が複数並設されている。複数のY電極10は、それぞれ、上述したX電極7と同様に、外側細線32、52からなる機能性細線パターンにより構成された透明導電膜8により構成されている。帯状のY電極10は、その長手方向が、上述したX電極の長手方向と交差するように形成されている。各Y電極10は引出し配線9によって図示しない制御回路に接続される。
これらX電極7及びY電極10は、透明な基材1を介して交差する(重なり合う)ように設けられる。このとき、上述した細線の一部除去によって、X電極7及びY電極10を構成する透明導電膜を構成する機能性細線パターンにおける細線の配置間隔が大きくなっていることによって、図9を参照して説明したように、表裏のパターンの位置合わせ精度の高い要求を緩和することができる。
以上のような構成を備えたタッチパネルセンサーは、例えば静電容量方式等のタッチパネルセンサーとして好適に用いることができる。静電容量方式のタッチパネルであれば、操作時において、これらX電極7及びY電極10にユーザーの指や導体等が接近、接触した際に生じる静電容量変化に基づく誘導電流を利用して、指や導体等の位置座標を検知することができる。
以上の説明では、第1ライン状液体の形成から第1細線ユニットの形成までの工程と、第2ライン状液体の形成から第2細線ユニットの形成までの工程と、を設けて、2回に分けて複数の細線ユニットを形成したが、これに限定されるものではない。第2細線ユニットを形成した後に、更なる1又は複数の細線ユニットを形成してもよい。更なる1又は複数の細線ユニットは、1又は複数回に分けて形成することができる。即ち、基材上に複数の細線ユニットを形成する場合は、適宜、複数回に分けて形成することができる。また、例えば、細線ユニット同士を接続しない場合は、複数の細線ユニットを1回で形成することも好ましい。
以上の説明では、ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形を四角形とし、四角形状細線からなる機能性細線パターンを形成する場合について示したが、これに限定されるものではなく、ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形を多角形とし、多角形状細線からなる機能性細線パターンを形成することができる。
以下に、四角形以外の他の多角形の例として、三角形、六角形、八角形の場合について説明する。
ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形を三角形とすることにより、図11(a)に示すように、それぞれ三角形状に形成された内側細線31と外側細線32からなる細線ユニット3を形成することができる。隣接する外側細線32は、三角形の頂点を挟む両辺同士を交差させて2点の交点で接続されている。
かかる細線ユニット3からなる機能性細線パターン前駆体の内側細線31を除去することにより、図11(b)に示すように、除去せず残留させる外側細線32、即ち三角形状細線からなる機能性細線パターンを形成することができる。
ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形を六角形とすることにより、図12(a)に示すように、それぞれ六角形状に形成された内側細線31と外側細線32からなる細線ユニット3を形成することができる。隣接する外側細線32は、六角形の頂点を挟む両辺同士を交差させて2点の交点で接続されている。
かかる細線ユニット3からなる機能性細線パターン前駆体の内側細線31を除去することにより、図12(b)に示すように、除去せず残留させる外側細線32、即ち六角形状細線を二次元的に複数並設してなる機能性細線パターンを形成することができる。
ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形を八角形とすることにより、図13(a)に示すように、それぞれ八角形状に形成された内側細線31と外側細線32からなる細線ユニット3を形成することができる。隣接する外側細線32は、八角形の頂点を挟む両辺同士を交差させて2点の交点で接続されている。
かかる細線ユニット3からなる機能性細線パターン前駆体の内側細線31を除去することにより、図13(b)に示すように、除去せず残留させる外側細線32、即ち八角形状細線を二次元的に複数並設してなる機能性細線パターンを形成することができる。
更に、ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形は、多角形に限定されず、例えば円形や楕円形などのように曲線要素を含むものであってもよい。図14は、ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形を円形とする場合の例を示している。
ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形を円形とすることにより、図14(a)に示すように、それぞれ円形状に形成された内側細線31と外側細線32からなる細線ユニット3を形成することができる。隣接する外側細線32は、円形の円周同士を交差させて2点の交点で接続されている。
かかる細線ユニット3からなる機能性細線パターン前駆体の内側細線61を除去することにより、図14(b)に示すように、除去せず残留させる外側細線62、即ち円形状細線を二次元的に複数並設してなる機能性細線パターンを形成することができる。
機能性細線パターンを多角形状細線(外側細線32)によって構成する場合、多角形の1辺の長さは、自在に調整することができる。例えば、1辺の長さは、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、更には1mm以上であることが好ましい。このような比較的大きい多角形を形成する場合であっても、ライン状液体を閉じられた幾何学図形として付与することで、安定な細線形成を実現できる。大きさによらず安定な細線形成を実現できるため、1辺の長さの上限は格別限定されず、用途に応じて適宜設定できる。多角形を構成する少なくとも1つの辺が上記の範囲であることが好ましく、全ての辺が上記の範囲であることが更に好ましい。
また、多角形は正多角形に限定されず、多角形を構成する各辺の長さや、各内角の角度は、互いに異なってもよい。
また、機能性細線パターンを円形状細線(外側細線32)によって構成する場合においても、円形の直径は自在に調整することができる。例えば、直径は、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、更には1mm以上であることが好ましい。このような比較的大きい円形を形成する場合であっても、ライン状液体を閉じられた幾何学図形として付与することで、安定な細線形成を実現できる。大きさによらず安定な細線形成を実現できるため、直径の上限は格別限定されず、用途に応じて適宜設定できる。
また、機能性細線パターンを楕円形状細線(外側細線32)によって構成する場合、上述した直径の好ましい範囲を、長径の好ましい範囲として適用できる。
以上の説明では、基材上に細線ユニットを複数形成する際に、これら複数の細線ユニットを所定のピッチで形成する場合について主に説明したが、これに限定されるものではない。
以上の説明では、細線ユニットを接続する際に、外側細線同士を接続し、内側細線を他の内側細線及び外側細線と接続させない場合について主に示したが、これに限定されるものではない。細線ユニットを構成する何れかの機能性細線を互いに接触させて接続することができる。例えば、第1細線ユニットの内側細線及び又は外側細線と、第2細線ユニットの内側細線及び又は外側細線とを接続することができる。以下に、図15を参照して、細線ユニットの接続形態の他の例について説明する。
図15(a)の例において、互いに隣接する細線ユニット3、5は、外側細線32、52同士は接続され、内側細線31、51同士は接続されていない。この例では、一方の細線ユニット3を構成する内側細線31は、他方の細線ユニット5を構成する外側細線52と接続されている。同様に、他方の細線ユニット5を構成する内側細線51は、一方の細線ユニット3を構成する外側細線32と接続されている。
図15(b)の例において、互いに隣接する細線ユニット3、5は、外側細線32、52同士が接続され、内側細線31、51同士も接続されている。この例では、一方の細線ユニット3を構成する内側細線31は、他方の細線ユニット5を構成する外側細線52と接続されている。同様に、他方の細線ユニット5を構成する内側細線51は、一方の細線ユニット3を構成する外側細線32と接続されている。
図15(a)、(b)に示した接続形態を用いることによって、例えば、上述した電解メッキを、外側細線だけでなく内側細線にも好適に施すことができる。
互いに接続された細線ユニットを複数形成する場合、これらは同一の接続形態によって接続されてもよいし、種々の接続形態が混在してもよい。更に、一部の細線ユニットが、内側細線も外側細線も接続されない状態で並設されていてもよい。
以上の説明では、機能性細線パターンを構成する機能性細線同士を2点で交差させて接続する場合について主に示したが、2点での接続に限定されるものではない。例えば、機能性細線同士を1点で接触させて接続してもよい。2点交差と1点接触を適宜組み合わせて、3点以上で接続することも導電性を確保する観点では好ましいことである。
ライン状液体からなる閉じられた幾何学図形の更なる他の例について、図16を参照して説明する。
例えば、図16(a)に示すように、ライン状液体2よって形成される閉じられた幾何学図形は、ジグザグ状要素により構成されることも好ましいことである。これを乾燥することにより、ジグザグ状の内側縁21及び外側縁22に対応する位置に、ジグザグ状要素により構成された内側細線及び外側細線を形成することができる。更に、図示しないが、ジグザク状要素に代えて波線状要素としてもよいし、ジグザク状要素と波線状要素とを組み合わせてもよい。ジグザグ状要素や波線状要素により構成された機能性細線のような、正多角形ではない機能性細線同士を接続する場合は、1点又は2点で接続してもよいが、上述した3点以上での接続を好ましく用いることができる。上記正多角形ではない機能性細線としては、例えば1以上の内角が180°より大きい多角形の機能性細線を好ましく挙げることができる。
また、図16(b)に示すように、ライン状液体2よって形成される閉じられた幾何学図形は、液体が付与されていない2つの領域20a、20bを包含することができる。これにより、幾何学図形は、複数の内側縁21a、21bを有することができる。これを乾燥することにより、外側縁22に対応する位置に1つの外側細線を形成すると共に、2つの内側縁21a、21bに対応する位置に2つの内側細線を形成することができる。ライン状液体2に包含される液体が付与されていない領域を3以上とすることも可能であり、これにより、該領域の数に対応する本数の内側細線を形成することができる。
更にまた、図16(c)に示すように、ライン状液体2よって形成される閉じられた幾何学図形は、突出部23を備えてもよい。突出部23は、例えば、図示するような、閉じられた幾何学図形に対して一端のみで接続された線分であり得る。
また、内側縁の形状と外側縁の形状は、互いに同一(即ち相似)でもよいし異なってもよい。これらの形状を異ならせることによって、得られる細線ユニットにおける内側細線の形状と外側細線の形状を異ならせることができる。
また、基材上に設けられる複数のライン状液体によって、複数種の互いに異なる幾何学図形を形成してもよい。これにより、複数種の互いに異なる幾何学図形からなる機能性細線を組み合わせた機能性細線パターンを形成することができる。例えば、上述した第1ライン状液体と第2ライン状液体は、同一形状であることが好ましいが、これに限定されず、相似であってもよいし、例えば四角形と円形の組み合わせのように異なる形状であってもよい。
以上の説明では、細線ユニットを構成する内側細線を除去することにより、除去せず残留させる外側細線によって機能性細線パターンを形成する場合について示したが、これに限定されるものではない。細線ユニットを構成する内側細線及び外側細線からなる細線の何れか一部を除去することにより、除去せず残留させる細線によって機能性細線パターンを形成することができる。例えば、細線ユニットを構成する外側細線を除去することにより、除去せず残留させる内側細線によって機能性細線パターンを形成することも好ましいことである。
また、特に図1及び図2を参照して説明したように、細線ユニットを構成する内側細線及び外側細線は、自由度高く安定に形成することができるため、細線の一部除去を行なう場合に限らず、該細線ユニットを基材上に1又は複数並設したものを機能性細線パターンとして用いることも好ましいことである。
以上の説明では、細線ユニットを構成する外側細線に対して選択的に電解メッキを施す場合について主に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、内側細線及び外側細線の両方に電解メッキを施すことも好ましいことである。
また、細線ユニットを構成する内側細線を除去した後に外側細線に対して電解メッキを施すこと、あるいは、細線ユニットを構成する外側細線を除去した後に内側細線に対して電解メッキを施すことも好ましいことである。
電解メッキに用いるメッキ金属は格別限定されないが、例えば銅やニッケル等を用いることが好ましい。細線に対して複数層のメッキ層を積層することも好ましい。この場合、メッキ金属を異ならせた複数回の電解メッキを施す。例えば、第1電解メッキとして細線上に銅メッキ層を設けて導電性を向上させ、次いで、第2電解メッキとして銅メッキ層上にニッケルメッキ層を設けて耐候性を向上させる方法等を好ましく挙げることができる。
また、電解メッキに限らず、無電解メッキを用いることも好ましいことである。これにより、機能性材料が導電性材料ではない場合においても、細線上にメッキ層を設けることができる。
ライン状液体を形成するための液体(インク)に含有される機能性材料は、基材に特定の機能を付与するための材料であれば格別限定されない。特定の機能を付与するとは、例えば、導電性材料を用いて基材に導電性を付与することや、絶縁性材料を用いて基材に絶縁性を付与することをいう。機能性材料は、該機能性材料が付与される基材表面を構成する材料とは異なる材料であることが好ましい。機能性材料として、例えば導電性材料、絶縁性材料、半導体材料、光学フィルター材料、誘電体材料等を好ましく例示できる。特に機能性材料は導電性材料または導電性材料前駆体であることが好ましい。導電性材料前駆体は、適宜処理を施すことによって導電性材料に変化させることができるものを指す。
導電性材料としては、例えば、導電性微粒子、導電性ポリマー等を好ましく例示できる。
導電性微粒子としては格別限定されないが、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の微粒子を好ましく例示でき、中でも、Au、Ag、Cuのような金属微粒子を用いると、電気抵抗が低く、且つ腐食に強い細線を形成することができるので好ましい。コスト及び安定性の観点から、Agを含む金属微粒子が最も好ましい。これらの金属微粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜100nmの範囲、より好ましくは3〜50nmの範囲である。平均粒子径は、体積平均粒子径であり、マルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより測定することができる。
また、導電性微粒子として、カーボン微粒子を用いることも好ましい。カーボン微粒子としては、グラファイト微粒子、カーボンナノチューブ、フラーレン等を好ましく例示できる。
導電性ポリマーとしては格別限定されないが、π共役系導電性高分子を好ましく挙げることができる。
π共役系導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリアズレン類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類等の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、高い導電性が得られる点で、ポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
導電性ポリマーは、より好ましくは、上述したπ共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成ることである。こうした導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と、ポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
導電性ポリマーは市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT/PSSと略す)が、H.C.Starck社からCLEVIOSシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PASS483095、560598として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。
基材1上に付与されるライン状液体2中における機能性材料の含有率は、ライン状液体2の全量に対して0.01重量%以上1重量%以下の範囲であることが好ましい。含有率は、ライン状液体2が基材1上に付与された直後の乾燥される前の値である。機能性材料の含有率が、0.01重量%以上1重量%以下の範囲であることにより、コーヒーステイン現象による細線形成が更に安定化される。
機能性材料を含有させる液体としては、例えば水や有機溶剤等の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機溶剤は、格別限定されないが、例えば、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類等を例示できる。
また、機能性材料を含有させる液体は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤など種々の添加剤を含んでもよい。界面活性剤を用いることで、例えば、液滴吐出装置を用いて基材1上にライン状液体2を形成するような場合などに、表面張力等を調整して吐出の安定化を図ること等が可能になる。界面活性剤としては、格別限定されないが、シリコン系界面活性剤等を用いることができる。シリコン系界面活性剤とはジメチルポリシロキサンの側鎖または末端をポリエーテル変性したものであり、例えば、信越化学工業製のKF−351A、KF−642やビッグケミー社製のBYK347、BYK348などが市販されている。界面活性剤の含有率は、ライン状液体2の全量に対して1重量%以下であることが好ましい。
機能性材料を含む液体が付与される基材は、格別限定されないが、例えば、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリエステル、ポリアミド等)、金属(銅、ニッケル、アルミ、鉄等や、あるいは合金)、セラミックなどを挙げることができ、これらは単独で用いてもよいし、貼り合せた状態で用いてもよい。中でも、プラスチックが好ましく、ポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンなどが好適である。
次に、細線ユニット3の形状について、図17を参照して説明する。
図17は、基材上に形成された細線ユニットを模式的に示した斜視図である。内側細線31及び外側細線32からなる細線ユニット3の一部を示すもので、便宜上直線状に示されているにすぎない。また、ここで説明する細線ユニット3は、コーヒーステイン現象により形成された直後のものである。メッキや細線の一部除去などの後処理によって細線ユニット3の形状等を変化可能であることは上述したとおりである。
内側細線31及び外側細線32の配置間隔Iの範囲は格別限定されず、例えば、10μm以上〜1000μm以下の範囲とすることが好ましく、10μm以上〜500μm以下の範囲とすることが更に好ましく、10μm以上300μm以下の範囲とすることが最も好ましい。なお、内側細線31及び外側細線32の配置間隔Iとは、コーヒーステイン現象により形成された直後(メッキや細線の一部除去といった後処理を施していない状態)の内側細線31及び外側細線32の各最大突出部間の距離であり、基材1上に付与するライン状液体の線幅に対応して定まる。ライン状液体の線幅を小さくし、配置間隔Iを小さくすることは好ましいことである。これにより乾燥負荷を軽減して、内側細線31及び外側細線32の形成を安定化し、更にタクトタイムを短縮できる。このように配置間隔Iを小さくする場合においても、上述したように内側細線31及び外側細線32からなる細線の一部を容易に除去できるため、除去せず残留させる細線に所望の配置間隔を自由度高く設定できる。このような細線の一部除去を用いれば、内側細線31及び外側細線32の安定形成を維持しながら、例えば、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、更には1mm以上という大きい配置間隔を容易に設定できる。
細線ユニット3を構成する内側細線31及び外側細線32は、必ずしも互いに完全に独立した島状である必要はない。図示したように、内側細線31及び外側細線32は、該内側細線31及び外側細線32間に亘って、該内側細線31及び外側細線32の高さよりも低い高さで形成された薄膜部30によって接続された連続体として形成されることも好ましいことである。内側細線31及び外側細線32間において機能性材料の厚みが最薄となる最薄部分の高さZ、具体的には薄膜部30の最薄部分の高さZが10nm以下の範囲であることが好ましい。最も好ましいのは、透明性と安定性のバランスの両立を図るために、0<Z≦10nmの範囲で、薄膜部30を備えることである。機能性材料として導電性材料を用いる場合であっても、薄膜部30は極めて高抵抗であり実質的に絶縁体になるため、薄膜部30を介して接続された内側細線31と外側細線32は、電気的に絶縁された状態になる。それ故、上述した選択的な電解メッキを好適に施すことができる。
細線ユニット3の内側細線31及び外側細線32の線幅W1、W2は、各々10μm以下であることが好ましい。10μm以下であれば、通常視認できないレベルとなるので、透明性を向上する観点からより好ましい。内側細線31及び外側細線32の安定性も考慮すると、線幅W1、W2は、各々2μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。なお、内側細線31及び外側細線32の幅W1、W2とは、該内側細線31及び外側細線32間において機能性材料の厚みが最薄となる最薄部分の高さをZとし、更に該Zからの内側細線31及び外側細線32の突出高さをY1、Y2としたときに、Y1、Y2の半分の高さにおける内側細線31及び外側細線32の幅とする。例えば、細線ユニット3が上述した薄膜部30を有する場合は、該薄膜部30における最薄部分の高さをZとすることができる。なお、内側細線31及び外側細線32間における機能性材料の最薄部分の高さが0であるときは、内側細線31及び外側細線32の線幅W1、W2は、基材1表面からの内側細線31及び外側細線32の高さH1、H2の半分の高さにおける内側細線31及び外側細線32の幅とする。
細線ユニット3を構成する内側細線31及び外側細線32の線幅W1、W2は、上述した通り極めて細いものであるため、断面積を確保して低抵抗化を図る観点で、基材1表面からの内側細線31及び外側細線32の高さH1、H2は高い方が望ましい。具体的には、内側細線31及び外側細線32の高さH1、H2は、50nm以上5μm以下の範囲であることが好ましい。更に、細線ユニット3の安定性を向上する観点から、H1/W1比、H2/W2比は、各々0.01以上1以下の範囲であることが好ましい。
更に、細線ユニット3の更なる細線化向上のために、H1/Z比、H2/Z比は、各々5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることが特に好ましい。
以上、細線ユニット3についてした説明は、細線ユニット5や更に追加的に設けられる細線ユニットについても援用することができる。
細線に含まれる機能性材料は、上述したように導電性材料であることが好ましい。導電性材料を用いることで、該細線の集合体により構成されるパターンを透明導電膜(電極膜あるいは透明電極ともいう)として好適に用いることができる。
透明導電膜付き基材の用途は、格別限定されないが、種々の電子機器が備える種々のデバイスに用いることができる。本発明の効果を顕著に奏する観点で、例えば、液晶、プラズマ、有機エレクトロルミネッセンス、フィールドエミッション等の各種方式のディスプレイ用透明電極として、あるいは、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子等に用いられる透明電極として好適に用いることができる。スマートフォン、タブレット端末等のような電子機器のタッチパネルセンサーとして透明導電膜付き基材を用いることは特に好ましい。タッチパネルセンサーとして用いる場合は、透明基材の両面の透明導電膜(X電極及びY電極)として、上述した細線パターンを用いることが好ましい。
以上の説明において、一つの態様について説明された構成は、他の態様に適宜適用することができる。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
1.パターンの形成
(実施例1);機能性細線パターン(1)の形成
<インクの組成>
インク(機能性材料を含む液体)として、以下の組成のものを調製した。
・銀ナノ粒子(平均粒子径:20nm):0.23重量%
・界面活性剤(ビッグケミー社製「BYK348」):0.05重量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(略称:DEGBE)(分散媒):20重量%
・水(分散媒):残量
<基材>
基材として、機能性材料を含む液体の接触角が20.3°となるように表面処理が施されたPET基材を用意した。表面処理としては、信光電気計装社製「PS−1M」を用いてコロナ放電処理を行った。
<パターニング>
インクジェットヘッド(コニカミノルタ社製「KM1024iLHE−30」(標準液滴容量30pL))を基材に対して相対移動させながら該インクジェットヘッドからインクを吐出して、図3(a)に示すように、基材上に、機能性材料を含む第1ライン状液体2によって内側縁と外側縁を有する閉じられた幾何学図形を複数形成した。幾何学図形は、基材の長手方向に対して各辺が45°で傾斜する四角形である。
これらの第1ライン状液体2を乾燥させることにより、該第1ライン状液体2の内側縁21及び外側縁22に機能性材料を選択的に堆積させて、図3(b)に示すように、内側細線31及び外側細線32からなる第1細線ユニット3を複数形成した。得られた各第1細線ユニット3の内側細線31及び外側細線32は、基材の長手方向に対して各辺が45°で傾斜する四角形である。この四角形は、内側細線31及び外側細線32の中間の線に沿って測定される1辺の長さが0.75mmである。
次いで、インクジェットヘッドを基材に対して相対移動させながら該インクジェットヘッドからインクを吐出して、図4(a)に示すように、基材上に、機能性材料を含む第2ライン状液体4によって内側縁と外側縁を有する閉じられた幾何学図形を複数形成した。幾何学図形は、基材の長手方向に対して各辺が45°で傾斜する四角形である。第2ライン状液体4の形成位置は、第2ライン状液体4の四角形の頂点近傍が、先に形成された第1細線ユニット3の外側細線32の四角形の頂点を覆うように設定した。
これらの第2ライン状液体4を乾燥させることにより、該第2ライン状液体4の内側縁41及び外側縁42に機能性材料を選択的に堆積させて、図4(b)に示すように、内側細線51及び外側細線52からなる第2細線ユニット5を複数形成した。得られた各第2細線ユニット5の内側細線51及び外側細線52は、基材の長手方向に対して各辺が45°で傾斜する四角形である。この四角形は、内側細線51及び外側細線52の中間の線に沿って測定される1辺の長さが0.75mmである。
第1細線ユニット3の外側細線32と、第2細線ユニット5の外側細線52は互いに接続されており、第1細線ユニット3の内側細線31と、第2細線ユニット5の内側細線51は、互いに接続されず独立している。
以上の工程では、70℃に加熱されたステージ上に配置した基材にライン状液体をパターニングすることにより、ライン状液体の乾燥を促進させている。また、形成された細線には、130℃のオーブンで、10分間の焼成処理を施した。
このようにして得られた細線パターン(1)の光学顕微鏡写真を図18に示す。図18に示す写真より、内側細線と外側細線とからなる細線ユニットが複数形成されたことがわかる。
(実施例2);機能性細線パターン(2)の形成
実施例1で得られた機能性細線パターン(1)を構成する細線ユニット3、5の外側細線32、52に選択的に銅電解メッキを施して、図6に示したものと同様の機能性細線パターン(2)を得た。銅電解メッキは下記メッキ条件により行った。
<メッキ条件>
70×140mmに裁断した実施例1の機能性細線パターン(1)が形成された基材の導電面から給電し、下記メッキ浴内で電解メッキを行った。アノードをメッキ用銅板と接続し、メッキ浴内で銅板から30mm離れた位置に基材を設置した。0.2Aの定電流で1分間メッキ処理した。メッキ終了後、基材を水洗し、乾燥させた。
<メッキ浴>
硫酸銅五水和物20g、1N塩酸1.3g、光沢付与剤(メルテックス社製「ST901C」)5gを、イオン交換水で1000mLとなるように調製した。
このようにして得られた機能性細線パターン(2)の光学顕微鏡写真を図19に示す。図19に示す写真より、互いに電気的に接続された外側細線に選択的にメッキ(ここでは銅メッキ)が施されたことがわかる。なお、図19に示す写真はグレースケール化されたものであるが、カラー写真においては、銅メッキされた外側細線が銅色に着色されたことを確認することができる。
(実施例3);機能性細線パターン(3)の形成
実施例2で得られた機能性細線パターン(2)を構成する外側細線32、52に選択的にニッケル電解メッキを施すと共に、メッキ液により内側細線31、51を除去して、図7に示したものと同様の機能性細線パターン(3)を得た。ニッケル電解メッキは下記メッキ条件により行った。
<メッキ条件>
実施例2の機能性細線パターン(2)が形成された基材の導電面から給電し、下記メッキ浴内で電解メッキを行った。アノードをメッキ用ニッケル板と接続し、メッキ浴内でニッケル板から30mm離れた位置に基材を設置した。0.2Aの定電流で30秒間メッキ処理した。メッキ液により内側細線31、51を十分に除去するために、メッキ終了後、基材をメッキ浴内で10分間放置した後、水洗し、乾燥させた。
<メッキ浴>
硫酸ニッケル240g、塩化ニッケル45g、ホウ酸30gを、イオン交換水で1000mLとなるように調製した。
このようにして得られた機能性細線パターン(3)の光学顕微鏡写真を図20に示す。図20に示す写真より、互いに電気的に接続された外側細線32、52に選択的にメッキ(ここではニッケルメッキ)が施されたことがわかる。なお、図20に示す写真はグレースケール化されたものであるが、カラー写真においては、外側細線が銅色から無色(ニッケルによる銀色)に変化したことを確認することができる。また、内側細線31、51が選択的に除去されていることがわかる。
2.評価方法
(1)細線幅
細線幅[μm]は、細線ユニットを構成する外側細線の線幅を顕微鏡により観察して測定した値である。
(2)透過率
透過率[%]は、東京電色社製AUTOMATIC HAZEMETER (MODEL TC-H III DP)を用いて測定した全光線透過率[%]である。なお、パターンのない基材(フィルム)を用いて補正を行い、作成したパターンの全光線透過率として測定した。
(3)シート抵抗値
シート抵抗値[Ω/□]は、ダイアインスツルメンツ社製ロレスタEP(MODEL MCP―T360型)直列4探針プローブ(ESP)を用いて測定した値である。
(4)低視認性
サンプルをライトテーブル上で50cm離れた位置から目視し、細線が視認できないほど低視認性に優れると評価し、具体的には下記評価基準により評価した。なお、以下の評価基準において、B評価以上であれば、透明導電膜としての用途において好ましく用いることができる。
<評価基準>
A:細線が視認できない
B:細線が若干視認できる
C:細線がはっきりと視認できる(該当なし)
以上の結果を表1に示す。
3.評価
実施例1〜3では、機能性材料を含む内側細線と外側細線からなる細線ユニットを用いることで、細線パターンを自由度高く安定に形成することができた。
表1の実施例2、3の結果より、細線ユニットの外側細線にメッキを施すことで、シート抵抗値をより好適に低下できることがわかる。また、実施例3の結果より、細線ユニットの内側細線を除去して、細線の配置間隔を大きくすることにより、透過率と低視認性をより好適に向上できることがわかる。