JP6658533B2 - 保存安定性に優れるマレイミド樹脂化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、保存安定性に優れるマレイミド樹脂化合物に関し、詳細には、末端マレイミド基が封止されたマレイミド樹脂化合物及びその製造方法に関する。本発明は、さらに、保存安定性に優れるマレイミド樹脂化合物を用いて製造された電極活物質、電極及び二次電池、並びにそれらの製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池などの二次電池は、エネルギー密度が高い、自己放電が小さい、長期信頼性に優れている等の利点により、ノート型パソコンや携帯電話などにおいて実用化が進められている。さらに近年では、電子機器の高機能化に加え、電気自動車やハイブリッド車等のモータ駆動の車両の市場の拡大、家庭用及び産業用蓄電システムの開発の加速により、容量やエネルギー密度をさらに向上させた、高性能の二次電池の開発が求められている。
しかし、高容量、高エネルギー密度の電池では、外部からの衝撃や過充電状態となった場合に電池の温度上昇が起こりやすくなる。特に、高容量、高エネルギー密度の正極活物質、例えばニッケルやコバルトを含む層状岩塩型構造の化合物などを含む電池は、熱分解時に放出されるエネルギーが大きくなる傾向にあるため、安全性に対する配慮がより必要になる。
高エネルギー密度の電池における安全性を高めるために、これまでにも種々の検討が行われており、特に電池の発熱については、電池の温度上昇時に電池の機能を停止する遮断機構が検討されている。例えば、特許文献1には、正極板と、負極板と、電極板の充放電表面の上に配置された断熱層を含む、リチウム電池の温度が上昇した時に導電率を下げることのできるリチウム電池が記載されている。また、特許文献2には、正極極板または負極極板の材料表面に熱作動保護膜が設けられ、リチウム電池の温度が熱作動保護膜の熱作動温度まで上昇すると、熱作動保護膜が架橋反応を行って熱暴走を阻止するリチウム電池が記載されている。これら特許文献1及び2に記載の電池では、断熱層(特許文献1)及び熱作動保護膜(特許文献2)が、ビスマレイミドモノマーとバルビツール酸の反応によって形成された窒素含有ポリマーを含み、電池の温度上昇時には、当該ポリマーが架橋ポリマーに変換され、リチウムイオンの拡散を阻害して電池の伝導率を下げる機構となっている。すなわち、これらの電池は、ポリマーが有するマレイミド基の熱反応性を利用して、電池にシャットダウン機能を与えるものである。
特開2012−138359号公報 特開2010−157512号公報
マレイミド基を有する樹脂化合物は、上記のように、マレイミド基の反応性を利用した機能性の樹脂として利用することができるが、その一方で、マレイミド基の反応性が高いために保存安定性に課題があった。例えば、末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物は、温度変化等によるマレイミド基の反応により溶液がゲル化する場合があった。また、このようなマレイミド樹脂化合物を電池に利用する場合には、電池の製造プロセス中に反応溶液やスラリーがゲル化して活物質粒子の均一な被覆が困難となる等、マレイミド樹脂化合物の保存安定性の課題に起因する問題が起こることがあった。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、保存安全性に優れるマレイミド樹脂化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、保存安定性に優れるマレイミド樹脂化合物を用いた、安全性の高い二次電池を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、加熱された時に解離する化合物により封止された末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物に関する。
また、本発明の一態様は、加熱された時に解離する化合物により封止された末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物で被覆された電極活物質に関する。
本発明によれば、保存安定性に優れるマレイミド樹脂化合物を提供することができる。また、本発明によれば、保存安定性に優れるマレイミド樹脂化合物を用いた安全性の高い二次電池を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る二次電池の断面構造を表す。 本発明の一実施形態に係る積層ラミネート型の二次電池の構造を示す模式的断面図である。 フィルム外装電池の基本的構造を示す分解斜視図である。 図3の電池の断面を模式的に示す断面図である。
<末端封止されたマレイミド樹脂化合物>
発明者は、マレイミド樹脂化合物において、加熱により解離する化合物により末端マレイミド基を封止する(保護する)ことにより、反応性官能基としてのマレイミド基の機能を維持したまま、マレイミド樹脂化合物の保存安定性を向上させることができることを見出した。
すなわち、本発明に係るマレイミド樹脂化合物は、加熱により解離する化合物(以下、「封止化合物」と記載することもある。)と末端マレイミド基との解離温度より低い温度条件下では、封止化合物が末端マレイミド基に結合することによってマレイミド基の活性を抑制するため、保存安定性に優れている。一方、解離温度以上に加熱された時には、封止化合物がマレイミド基から解離することによって反応性官能基である末端マレイミド基が再生するため、マレイミド樹脂化合物は反応性の樹脂化合物として機能することができる。以下、本発明に係る「加熱された時に解離する化合物により封止されたマレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物」を単に「末端封止されたマレイミド樹脂化合物」と記載することもある。また、本明細書において「末端マレイミド基」とは、化合物中に存在する未反応のマレイミド基:
Figure 0006658533
を表す。なお、末端マレイミド基を単に「マレイミド基」と記載することもある。また、本明細書において「解離温度」とは、マレイミド基から封止化合物が解離する温度であり、具体的には、末端封止されたマレイミド樹脂の昇温示差走査熱量測定(DSC)を行った際の放熱ピークのピーク温度を表す。
本発明に係るマレイミド樹脂化合物のマレイミド基と封止化合物の解離温度は、80℃以上280℃以下であることが好ましい。解離温度は、80℃以上200℃以下であることがより好ましく、80℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。解離温度が80℃以上であると、本発明に係るマレイミド樹脂化合物の単離工程や、保管時及び使用時におけるマレイミド樹脂化合物の保存安定性を向上させることができる。一方、解離温度が280℃を超えると、例えば後述する二次電池にシャットダウン機能を付与する用途においては、二次電池のシャットダウン機能が発現する温度が高温になり過ぎる場合がある。
また、マレイミド基の封止に用いる封止化合物は、1気圧における沸点が220℃以下である化合物であることが好ましい。封止化合物の沸点は、200℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。また、沸点が160℃以下であると、例えば後述する二次電池にシャットダウン機能を付与する用途においては、電池の温度上昇時にマレイミド基から解離した封止化合物が電池内で揮発し、その気化熱による冷却効果や気化物によるイオン伝導の遮断効果により、より優れたシャットダウン機能を発現することができるため好ましい。一方、沸点が低過ぎると本発明に係るマレイミド樹脂化合物の製造工程中に封止化合物が揮散しやすくなる場合があるため、封止化合物の沸点は25℃以上であることが好ましい。
本発明に係る「加熱された時に解離する化合物により封止された末端マレイミド基」としては、例えば、封止化合物がDiels−Alder反応によって結合したマレイミド基が挙げられる。Diels−Alder反応は、ジエノフィルとしてのマレイミド基と封止化合物としてのジエン化合物との間で、[4+2]環化反応により6員環構造を形成する反応であり、形成された環構造は、解離温度以上に加熱されると逆Diels−Alder反応により開裂してマレイミド基とジエン化合物に戻ることができる。このDiels−Alder反応/逆Diels−Alder反応の一例として、マレイミド基とフランとの反応を以下に示す。
Figure 0006658533
(封止化合物)
上記Diels−Alder反応におけるジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン等のジエン構造;フラン環、チオフェン環、ピロール環、シクロペンタジエン環、チオフェエン−1−オキサイド環、チオフェエン−1,1−ジオキサイド環、シクロペンタ−2,4−ジエノン環、2Hピラン環、シクロヘキサ−1,3−ジエン環、シクロヘプタ−1,3−ジエン環、2Hピラン1−オキサイド環、1,2−ジヒドロピリジン環、2Hチオピラン−1,1−ジオキサイド環、シクロヘキサ−2,4−ジエノン環、ピラン−2−オン環等の環状ジエン構造;およびこれらの置換体を含む化合物を挙げることができる。
ジエン化合物は、環状ジエン構造を含む化合物であることがより好ましい。環状ジエン構造を含む好ましい化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0006658533
(式(1)中、Xは、−CH−、−O−、−SO−、−SO−、−CO−、−NH−又は−S−であり、R〜Rは、H、CH、C、C、C、F、Cl、BrおよびIからなる群から選ばれる基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
環状ジエン構造を含む化合物は、フラン環又はシクロペンタジエン環を含む化合物であることがより好ましく、すなわち、上記式(1)中のXが−O−又は−CH−であることがより好ましい。
また、式(1)中のR〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又はCH、C、Cであることが好ましく、R及びRの少なくとも一方が水素原子であることがより好ましく、R〜Rがいずれも水素原子であることがさらに好ましい。R〜Rがいずれも水素原子である化合物としては、例えば、フラン(1−オキサ−2,4−シクロペンタジエン)及びシクロペンタ−1,3−ジエン等を挙げることができる。
(マレイミド樹脂化合物)
本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物のマレイミド樹脂の構造は、少なくともひとつの末端マレイミド基を有するものであれば特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。
一実施形態では、分子内に2個以上の末端マレイミド基を有する多官能マレイミド樹脂化合物であることが好ましい。多官能マレイミド樹脂化合物は、分子内に3個以上の末端マレイミド基を有する化合物であることがより好ましく、4個以上の末端マレイミド基を有する化合物であることがさらに好ましい。多官能マレイミド樹脂化合物は、分子内に複数のマレイミド基が存在するために反応性が高く、保存安定性が低くなる傾向にある。そのため、本発明による保存安定性改善の効果が高い。また、後述する二次電池にシャットダウン機能を付与する用途においては、分子内のマレイミド基が多い程、二次電池の温度上昇時に架橋してネットワークを形成しやすくなるため好ましい。
マレイミド樹脂化合物としては、例えば、末端マレイミド基を有するマレイミドモノマー、並びに、マレイミドモノマーを用いて形成された末端マレイミド基を有するオリゴマー、プレポリマー及びポリマーを挙げることができる。また、任意のポリマー構造に末端マレイミド基を導入した樹脂化合物であってもよい。
以下〔1〕〜〔3〕に好ましい化合物を例示するが、マレイミド樹脂化合物はこれらに限定されるものではない。
マレイミド樹脂化合物の好ましい一態様としては、以下〔1〕及び〔2〕に例示するような、マレイミドモノマーを用いて形成された樹脂化合物を挙げることができる。マレイミド樹脂化合物は、単独重合体であっても共重合体であってもよい。
〔1〕 本実施形態に係るマレイミド樹脂化合物の好ましい例として、高度に分岐した構造を有するハイパーブランチポリマーについて説明する。ハイパーブランチポリマーは、多数の末端マレイミド基を有することから、例えば後述する電池にシャットダウン機能を与える用途では、電池の温度上昇時に架橋してネットワークを形成し、活物質表面にリチウムイオンの拡散・伝導を防止する保護膜を形成し、優れたシャットダウン機能を発現することができる。このようなハイパーブランチポリマーの例としては、特開2010−24455号公報、特開2012−138359号公報に記載されるようなマレイミドモノマーとジオン化合物から形成される高度に分岐した構造を有するハイパーブランチポリマーを挙げることができる。
ハイパーブランチポリマーを形成するためのマレイミドモノマーとしては、モノマレイミドモノマー、ビスマレイミドモノマー、トリスマレイミドモノマー及び4官能以上のポリマレイミドモノマーを組合せて用いることができるが、少なくともビスマレイミドモノマーを含んでもよい。
ビスマレイミドモノマーとしては、例えば、下記式(2)又は(3)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0006658533
(式(2)中、Rは−R−、−R−NH−R−、−C(O)−、−R−C(O)−R−、−R−C(O)−、−O−、−O−O−、−S−、−S−S−、−S(O)−、−R−S(O)−R−、−SO−、−(C)−、−R−(C)−R−、−R−(C)−O−、−(C)−(C)−、−R−(C)−(C)−R−、または−R−(C)−(C)−O−であり、Rは炭素数1〜8のアルキレン基であり、−(C)−はフェニレン基、−(C)−(C)−はビフェニレン基を表す。)
Figure 0006658533
(式(3)中、Yは炭素数1〜8のアルキレン基、−C(O)−、−O−、−O−O−、−S−、−S−S−、−S(O)−、または−SO−であり、X、X、X、X、X、X、XおよびXはそれぞれ独立して、ハロゲン、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のシクロアルキル基、または炭素数1〜8のシリルアルキル基である。)
ビスマレイミドモノマーの具体例としては、特に限定されるものではないが、N,N’−ビスマレイミド−4,4’−ジフェニルメタン、1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド、N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、1,1’−(3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド、N,N’−エチレンジマレイミド、N,N’−(1,2−フェニレン)ジマレイミド、N,N’−(1,3−フェニレン)ジマレイミド、N,N’−チオジマレイミド、N,N’−ジチオジマレイミド、N,N’−ケトンジマレイミド、N,N’−メチレン−ビスマレイミド、ビス−マレイミドメチルエーテル、1,2−ビス(マレイミド)−1,2−エタンジオール、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテル−ビスマレイミド、または4,4’−ビス(マレイミド)−ジフェニルスルホン等を挙げることができる。
モノマレイミドモノマー、トリマレイミドモノマー、ポリマレイミドモノマーとしては、例えば、下記式(4)〜(7)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0006658533
(式(4)中、Rはフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数5〜8のシクロアルキル基である。)
Figure 0006658533
(式(5)中、Rはそれぞれ独立に、フェニレン基、炭素数1〜8のアルキレン基、または炭素数5〜8のシクロアルキレン基である。)
Figure 0006658533
(式(6)中、Rはそれぞれ独立にフェニレン基、炭素数1〜8のアルキレン基、または炭素数5〜8のシクロアルキレン基である。)
Figure 0006658533
(式(7)中、nは1〜1000であり、好ましくは1〜500であり、より好ましくは5〜200である。)
ビスマレイミドモノマーと、モノマレイミド、トリマレイミド及び/またはポリマレイミドモノマーと、を併用する場合、ビスマレイミドモノマーがマレイミドモノマー全体の50〜99モル%の範囲であることが好ましく、66〜99モル%の範囲であることがより好ましい。
ジオン化合物としては、例えば、下記式(8)〜(11)で表されるバルビツール酸又はその誘導体、及び、下記式(12)で表されるアセチルアセトン又はその誘導体を挙げることができる。なお、ジオン化合物にはマレイミド基を有する化合物は含まれないものとする。
Figure 0006658533
(式(8)〜(11)中、R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立して、−H、−CH、−C、−C、−CH(CH、−CHCH(CH、−CHCHCH(CH、または−CH(CH)CHCHCHである。)
中でも、上記式(8)及び(9)中のR、R、RおよびRがいずれも水素であるバルビツール酸が好ましい。
Figure 0006658533
(式(12)中、それぞれのRおよびR’は、脂肪族基、芳香族基、または複素環基である。)
なお、RとR’がいずれもメチル基である場合、上記式(12)で表される化合物はアセチルアセトンである。また、式(12)において、脂肪族基としては炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基等;芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、及びフェネチル基等;複素環基としては、ヘテロ原子としてO、N、Sから選ばれる少なくとも1種を有する4〜6員環の飽和複素環基または不飽和複素環基が挙げられる。
上記ビスマレイミドモノマーを含むマレイミドモノマーと、ジオン化合物とを、ブレンステッド塩基を含む溶媒中で重合させることによりハイパーブランチポリマーを形成することができる。
ジオン化合物とマレイミドモノマーのモル比(ジオン化合物:マレイミドモノマー)は、約1:20〜4:1である。より好適には、モル比は、約1:5〜2:1である。さらに好適には、モル比は、約1:3〜1:1である。
ブレンステッド塩基を含む溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ピロリドン、N−ドデシルピロリドン、またはこれらの組み合わせを用いることができる。また、上記ブレンステッド塩基に、他のブレンステッド中性溶媒、例えばγ−ブチロラクトン(GBL)を加えてもよい。溶媒としてブレンステッド塩基を含むと反応温度を低く設定できる場合があり好ましい。
反応温度は、例えば20〜150℃であり、20〜100℃が好ましい。
なお、上記反応において、ジオンをバッチ方式で反応に添加することにより、ハイパーブランチポリマーの分岐度、重合度、構造等を調整することができる。
ハイパーブランチポリマーの分子量(質量平均分子量)は、特に限定されるものではないが、400〜100,000であることが好ましく、800〜20,000であることがより好ましく、1,000〜10,000であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量を換算して求められる。
ハイパーブランチポリマーの分岐度(%)は、特に限定されるものでないが、30〜100%であることが好ましく、40〜90%であることがより好ましく、50〜80%であることがさらに好ましい。なお、ポリマーの分岐度は、ポリマーの末端部分の数をT、分岐している部分の数をD、分岐していない部分の数をLとしたとき、
(D+T)/(D+T+L)×100(%)
で表される。
ハイパーブランチポリマーは、1分子中3個以上の末端マレイミド基を有することが好ましい。末端マレイミド基数は、1分子中4個以上であることがより好ましく、5個以上であることがさらに好ましい。
〔2〕 また、本実施形態に係るマレイミド樹脂化合物の好ましい例として、ビスマレイミドとジアミンを反応させることにより得られるプレポリマー及びそれを用いて形成されるポリアミノビスマレイミド樹脂化合物を挙げることができる。例えば後述する二次電池にシャットダウン機能を与える用途においては、末端封止されたプレポリマーで活物質を被覆してもよい。プレポリマーは、電池の温度上昇時にマレイミド基の反応により重合・架橋して、リチウムイオンの拡散・伝導を阻害する保護膜を形成することができる。中でも、ビスマレイミド化合物と脂環式ジアミンとから形成されるプレポリマーは、ビスマレイミド化合物と直鎖脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンとから形成されるプレポリマーと比較して、溶剤溶解性に富み、また、硬化に長時間、高温度を必要としないため、本実施形態において好適に用いることができる。本実施形態において、プレポリマー、またはプレポリマーを用いて形成される樹脂化合物の分子量(質量平均分子量)は、特に限定されるものではないが、400〜100,000であることが好ましく、800〜20,000であることがより好ましく、1,000〜10,000であることがさらに好ましい。
このようなポリアミノビスマレイミドプレポリマーは、脂環式ジアミンとビスマレイミド化合物(脂環式ジアミン:ビスマレイミド=1:1.5〜3(モル比))を適当な反応溶媒中で混合し反応させることにより得ることができる。
ここで、ビスマレイミド化合物としては特に限定されず、上述のハイパーブランチポリマーの製造において例示したビスマレイミドを用いることができる。脂環式ジアミンの例としては、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、3(4)、8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンジアミン等が挙げられる。ビスマレイミド化合物及び脂環式ジアミンは、それぞれ、単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
反応溶媒としては特に限定されず、1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、メチルエチルケトン等を用いることができる。反応条件は適宜設定することができ、例えば10〜60℃で10分〜2時間とすることができる。
〔3〕 また、マレイミド樹脂化合物の好ましい別の一態様として、任意のポリマー構造に末端マレイミド基が導入された構造を有する化合物を挙げることができる。末端マレイミド基を導入する位置は特に限定されず、ポリマー構造の分子鎖末端でもよいし、分子鎖末端以外の内部であってもよい。
本実施形態に係るマレイミド樹脂化合物としては、例えば、分子鎖末端にマレイミド基を有するポリマーを挙げることができる。分子鎖末端にマレイミド基を有するポリマーとしては、例えば、下記式(13)で表される化合物を挙げることができる。
X(OR) (13)
(式(13)中、Xは多価アルコールの水酸基を除いた残基を表し、nは多価アルコールの水酸基数であり、Rはそれぞれ独立に分子鎖末端にマレイミド基を有する分子量100〜5000の部分構造を表す。)
式中、Xで表される残基を与える多価アルコールとしては、2〜4価アルコール、5価以上のアルコール、シクロアルカンポリオール、糖アルコール及び糖等が挙げられる。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオールなどの3価アルコール;ペンタエリスリトール、メチルグリコシド、ジグリセリンなどの4価アルコール;ポリグリセリン(例えば、トリグリセリン、テトラグリセリンなど)、ポリペンタエリスリトール(例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなど)などの5価以上のアルコール;テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノールなどのシクロアルカンポリオール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、タリトール、マルチトール、ズルシトールなどの糖アルコール;グルコース、マンノースグルコース、マンノース、フラクトース、ソルボース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、セルロースなどの糖類が挙げられるがこれらに限定されない。
式中、nは2〜20の整数である。後述する二次電池にシャットダウン機能を付与する用途においては、架橋形成の観点からnが3以上であることがより好ましい。すなわち、上記式(13)で表される分子鎖末端にマレイミド基を有するポリマーが分岐ポリマーであり、各分子鎖末端にマレイミド基を有することが好ましい。
式中、Rは、任意のポリマー末端にマレイミド基が導入された構造を有する。ここで、ポリマー構造は特に限定されず用途にあわせて選択することができるが、例えば、分子量100〜5000のアクリル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ、アルキド、ポリエステル構造等が挙げられる。例えば、リチウムイオン電池に用いる場合、電解液との親和性をこれらの官能基密度で調整することが可能である。リチウムイオン電池の電解液としては、カーボネート類やエーテル類が広く用いられるため、これらとの親和性の高いポリエーテル、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリエステル構造の何れかを部分構造として有することが好ましい。また、ポリマー構造とマレイミド基は連結基を介して結合していてもよく、連結基としては、例えば、−O−、−CO−、−CO−O−、−Y−、−O−Y−、−CO−Y−(ここで、Yは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキレン基である)等が挙げられる。
上記式(13)中のRとしてポリエステル構造を有する分岐ポリマーは、例えば、特開2007−284643号公報等に記載されるように、3個以上の水酸基を有する化合物を用いてポリエステル樹脂をエステル交換することで得られる水酸基末端ポリエステル樹脂と、マレイミドカルボン酸と、を反応させることで得ることができる。
ポリエステル構造を有する分岐ポリマーの例としては、例えば、下記式(14)で表されるポリ乳酸から形成される化合物を挙げることができる。
Figure 0006658533
(式(14)中、
mは1〜10の整数であり、
R’は、それぞれ独立に、下記式:
Figure 0006658533
(式中、pは1〜50の整数であり、Yは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキレン基である。)である。)
分子鎖末端にマレイミド基を有する分岐ポリマーの分子量(質量平均分子量)は、特に限定されるものではないが、400〜100,000であることが好ましく、800〜20,000であることがより好ましく、1000〜10,000であることがさらに好ましい。
本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物の製造方法を、封止化合物としてジエン化合物を用いた場合を例に以下に説明する。
本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物は、例えば、マレイミド樹脂化合物とジエン化合物を溶液中で混合して反応させることにより製造することができる。ここで、反応条件は特に限定されるものではないが、ジエン化合物が、マレイミド樹脂化合物の末端マレイミド基に対して過剰量であることが好ましく、例えばマレイミド基に対して1モル当量以上であり、1.1モル当量以上であることがより好ましい。また、ジエン化合物が大過剰であってもよいが、コストを考慮すればマレイミド基に対して50モル当量以下であることが好ましい。反応溶媒は、マレイミド樹脂化合物が溶解し得る溶媒であれば特に限定されず、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、クロロホルム等を用いることができる。反応温度はマレイミド基とジエン化合物との解離温度未満であり、例えば0℃〜120℃である。反応生成物は、必要により、メタノール、ヘキサン、ジメチルカーボネート等を貧溶媒として用いて析出させる、あるいは、溶媒や過剰のジエン化合物を減圧留去する等の方法により精製することも好ましい。
上記のマレイミド樹脂化合物とジエン化合物との反応はプロトンNMRを用いて確認することができる。具体的には、マレイミド基の二重結合炭素に結合する水素は、プロトンNMRにおいて、δ7.2ppmにピークを有するのに対し、フラン環やペンタジエン環、ピロール環、チオフェン環等のジエン化合物と結合した化合物では、δ2.7ppmにピークを有する。マレイミド基の反応率は、これらのピークの積分比率から算出することができる。
末端マレイミド基が封止されていないマレイミド樹脂は、その単離過程や、後述するように電池の活物質を被覆する過程で加熱するとゲル化物を生じる場合があるが、本発明に係るマレイミド樹脂のようにフラン環やペンタジエン環、ピロール環、チオフェン環等と結合したものは熱的に安定になる。そのため、マレイミド基を保護するために、50%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上のマレイミド基を環状ジエン化合物等の封止化合物により保護しておくことが望ましい。
また、本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物は、比較的高濃度の溶液の形態での保存にも適している。末端マレイミド基が封止されていないマレイミド樹脂化合物は、末端マレイミド基の高い反応性や溶解性の観点から、低濃度の溶液状態、及び/又は低温での保存が必要な場合がある。これに対し、本発明の末端封止されたマレイミド樹脂化合物は、1質量%以上60質量%以下、好ましくは2質量%以上40質量%以下の溶液の形態で保存することが可能である。使用する溶媒としては特に限定されず、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ピロリドン、N−ドデシルピロリドン、γ−ブチロラクトン、クロロホルム等を用いることができる。
本発明の末端封止されたマレイミド樹脂化合物は、保管時及び使用時の保存安定性に優れているため、電子パッケージ、ディスプレイ、電池、光電材料、機能性複合材料、コーティング等の種々の用途に好適に用いることができる。
<末端封止されたマレイミド樹脂化合物を用いた二次電池>
本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物を二次電池に適用することにより、安全性の高い二次電池を実現することができる。
(マレイミド樹脂化合物による電池のシャットダウン機能)
活物質を、末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物で被覆することにより、電池の温度上昇時に電池機能を停止するシャットダウン機能を与えることができる。
特に、マレイミド樹脂化合物として本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物を用いた場合、マレイミド基の反応性が抑制されているために、マレイミド樹脂溶液のゲル化、また、後述する電極製造プロセスにおけるスラリーのゲル化等の製造プロセスにおける問題を解消することができる。一方、過充電などによる電池の温度上昇時には、マレイミド基に結合している封止化合物が解離して反応性のマレイミド基が再生するため、マレイミド基の反応による架橋形成が可能となり、マレイミド樹脂化合物の架橋ポリマーが形成される。形成された架橋ポリマーは、リチウムイオンの拡散・伝導を阻止して電池機能をシャットダウンすることができる。
さらに一実施形態では、電池の温度上昇時に末端マレイミド基から解離した封止化合物が電池内部で気化することにより、より効果的に電池機能をシャットダウンすることができる。
以下、本実施形態に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物を用いた二次電池の構成材料、二次電池の構成、およびその製造方法等について説明する。
二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、電解液と、を備える。
1.正極
正極は、正極活物質を含む正極活物質層が集電体上に形成された構成とすることができる。本実施形態において、正極活物質は、本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物で被覆された正極活物質を含む。
(末端封止されたマレイミド樹脂化合物で被覆した正極活物質)
本実施形態では、マレイミド樹脂化合物として、(封止化合物が解離した状態で)80℃〜250℃の範囲で反応して架橋を形成する化合物を用いることが好ましい。マレイミド樹脂化合物の架橋形成温度は130℃〜230℃の範囲であることがより好ましく、160℃〜200℃の範囲であることがさらに好ましい。マレイミド樹脂化合物の架橋形成温度が80℃以上であると、電極の製造後や電池の正常動作時において、マレイミド樹脂化合物の架橋による導電性の低下を抑制することができるため好ましい。一方、マレイミド樹脂化合物の架橋形成温度が高過ぎると、マレイミド樹脂化合物によるシャットダウン機能が発現する温度が高温になり過ぎる場合があるため、架橋形成温度が250℃以下であることが好ましい。
活物質に対するマレイミド樹脂化合物の被覆量(質量比)は、マレイミド樹脂化合物の固形分が活物質に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、活物質に対して5質量%未満であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。また一実施形態では、2質量%以下であることがさらに好ましい場合もある。マレイミド樹脂化合物の被覆量が活物質に対して0.05質量%以上であると、電池に良好なシャットダウン機能を与えることができる。また、活物質に対して5質量%未満であると、より良好な充放電特性が得られるため好ましい。
また、活物質の表面被覆率としては、本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物が活物質表面の60%以上を被覆していることが好ましく、70%以上を被覆していることがより好ましい。また、活物質の表面被覆率は95%以下であることが好ましい。なお、活物質の表面被覆率は、軽元素分析が可能なSEM−EDS(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法)による窒素分分子のマッピング等により測定することができる。
活物質の被覆方法としては、特に限定されるものではないが、活物質と本発明に係るマレイミド樹脂とを溶液中で撹拌混合する方法が挙げられる。本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物を用いれば、溶液中でのマレイミド樹脂化合物の凝集、または反応溶液のゲル化といった問題が解消されるため、活物質を均一に被覆することが容易となる。活物質と本発明に係るマレイミド樹脂化合物の混合比は、例えば活物質に対してマレイミド樹脂化合物が、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、5質量%未満、好ましくは3質量%以下となる範囲で混合することが好ましい。使用する溶媒としては、活物質を溶解せずマレイミド樹脂化合物を溶解し得る溶媒であれば特に限定されず、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ピロリドン、N−ドデシルピロリドン、クロロホルム等を用いることができる。撹拌混合する工程は、通常室温で行うことができ、15分以上、好ましくは30分以上行うことが好ましく、製造プロセスを考慮すれば3日以内であることが好ましい。被覆した活物質は、減圧乾燥等により得ることが出来る。また、必要により、濾過、洗浄、乾燥等により精製することも好ましい。
(正極の製造方法)
正極は、上記により得られた本発明に係るマレイミド樹脂化合物で被覆された活物質を含むスラリーを、正極集電体上に塗工することにより製造することができる。
スラリーは、マレイミド樹脂化合物で被覆された活物質、結着剤、及び必要により導電補助材等を、N−メチルピロリドン等の有機溶媒を用いて混練することにより調製することができる。
なお、一実施形態では、本発明に係るマレイミド樹脂化合物を、被覆されていない活物質、結着剤、及び必要により導電補助材等を含むスラリーに直接添加して混練することにより、マレイミド樹脂を活物質に被覆させることもできる。この方法によれば、前述の減圧乾燥工程を省略できるので好ましい。
次に、上記により得られたスラリーを、正極集電体の片面又は両面に、正極端子と接続する延長部を残して塗工し、乾燥する。このとき、乾燥工程の温度は、50℃以上200℃以下であることが好ましく、80℃以上180℃以下であることがより好ましい。乾燥工程の温度が高過ぎる場合は、マレイミド樹脂化合物のマレイミド基に結合している封止化合物が解離し、さらにマレイミド基が反応することによって、電池としたときの充放電特性が低下する場合がある。乾燥工程の温度が、封止化合物の解離温度以下であると、このようなマレイミド基の反応を抑制することができる。
なお、電極の製造プロセス、例えば、上記の乾燥工程において、マレイミド基から封止化合物の少なくとも一部が解離してもよい。この工程では、マレイミド樹脂化合物は既に活物質に被覆された状態となっているためマレイミド樹脂溶液やスラリーのゲル化といった問題が起きにくく、また、マレイミド樹脂で被覆された活物質は活物質層中に分散した状態であるため、被覆された活物質の凝集といった問題が起きにくいからである。また解離した封止化合物は揮発性であるため、当該乾燥工程において除去することが可能である。
またその一方で、末端マレイミド基の少なくとも一部が、封止化合物により封止された状態で残存することも好ましい。この場合、マレイミド基に結合した封止化合物は、電池の正常な動作環境では、末端マレイミド基の反応を抑制することにより、被覆層のリチウムイオン透過性を維持するように作用することができる。さらに、過充電等により電池内部が解離温度よりも高温となった場合には、封止化合物が末端マレイミド基から解離しマレイミド樹脂の架橋形成が可能となる。その際、解離した封止化合物の気化熱による冷却効果や、気化物自体による電極間のイオン伝導の遮断効果により、より安全に電池機能を停止することができる。また、封止化合物が電解液中のリチウムイオンと錯体を形成し、イオン伝導度の低下を引き起こし、安全に電池機能を停止する効果もある。
なお、電極塗工工程における加熱乾燥で解離せず電極に残存する封止化合物、例えばフラン環やペンタジエン環を有する化合物は、電極を熱分解ガスクロマトグラフィー(GC)にて分析することにより定量することができる。すなわち、電極をパイロライザーにより封止化合物の解離温度以上、例えば180℃に加熱し、この時マレイミド基から解離したフラン環やペンタジエン環を有する化合物を、GCにて定量することにより、これらの残存量を算出することができる。
一実施形態では、加熱乾燥を経た電極中のマレイミド樹脂化合物において、マレイミド基の0.1%以上に封止化合物が結合していることが好ましく、0.5%以上に結合していることがより好ましい。
以下、正極の構成材料について説明する。
(正極活物質)
正極活物質としては、LiMnO、LiMn(0<x<2)、LiMnO、LiMn1.5Ni0.5(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウムまたはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム、LiCoO、LiNiOまたはこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの、LiNi1/3Co1/3Mn1/3などの特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物、これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの、LiFePOなどのオリビン構造を有するもの、等が挙げられる。また、これらの金属酸化物に、Al、Fe,P,Ti,Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La等により一部置換した材料も使用することができる。特に、LiαNiβCoγAlδ(1≦α≦2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)またはLiαNiβCoγMnδ(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.6、γ≦0.2)が好ましい。
また、ラジカル材料等を正極活物質として用いることも可能である。また、正極活物質として、4.5V以上の電位で動作する活物質を用いることもできる。4.5V以上の電位で動作する正極活物質としては、スピネル型、オリビン型、Si複合酸化物、層状構造を有する正極活物質等が挙げられる。
正極活物質は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
正極活物質は、いくつかの観点から選ぶことができる。高エネルギー密度化の観点からは、高容量の化合物を含むことが好ましい。高容量の化合物としては、リチウム酸ニッケル(LiNiO)またはリチウム酸ニッケルのNiの一部を他の金属元素で置換したリチウムニッケル複合酸化物が挙げられ、下式(A)で表される層状リチウムニッケル複合酸化物が好ましい。
LiNi(1−x) (A)
(但し、0≦x<1、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
高容量の観点では、Niの含有量が高いこと、即ち式(A)において、xが0.5未満が好ましく、さらに0.4以下が好ましい。このような化合物としては、例えば、LiαNiβCoγMnδ(0<α≦1.2好ましくは1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)、LiαNiβCoγAlδ(0<α≦1.2好ましくは1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.6好ましくはβ≧0.7、γ≦0.2)などが挙げられ、特に、LiNiβCoγMnδ(0.75≦β≦0.85、0.05≦γ≦0.15、0.10≦δ≦0.20)が挙げられる。より具体的には、例えば、LiNi0.8Co0.05Mn0.15、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNi0.8Co0.1Al0.1等を好ましく用いることができる。
別の態様では、高容量化の観点から、正極活物質として、下式(B):
LiNi1−x (B)
(式中、Mは、Mn、Co、Alからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、0≦x≦0.8である。)
で表される層状構造を有するリチウムニッケル酸化物を含むことが好ましい。xは0≦x≦0.5であることがより好ましい。上記式で表されるリチウムニッケル酸化物としては、LiNiO、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Mn0.3Co0.2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.8Mn0.2等が挙げられる。これらの高容量の活物質を正極活物質の50質量%以上、好ましくは80質量%以上含むことが好ましく、100質量%であってもよい。
また、熱安定性の観点では、Niの含有量が0.5を超えないこと、即ち、式(A)において、xが0.5以上であることも好ましい。また特定の遷移金属が半数を超えないことも好ましい。このような化合物としては、LiαNiβCoγMnδ(0<α≦1.2好ましくは1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、0.2≦β≦0.5、0.1≦γ≦0.4、0.1≦δ≦0.4)が挙げられる。より具体的には、LiNi0.4Co0.3Mn0.3(NCM433と略記)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と略記)、LiNi0.5Co0.3Mn0.2(NCM532と略記)など(但し、これらの化合物においてそれぞれの遷移金属の含有量が10%程度変動したものも含む)を挙げることができる。
また、式(A)で表される化合物を2種以上混合して使用してもよく、例えば、NCM532またはNCM523とNCM433とを9:1〜1:9の範囲(典型的な例として、2:1)で混合して使用することも好ましい。さらに、式(A)においてNiの含有量が高い材料(xが0.4以下)と、Niの含有量が0.5を超えない材料(xが0.5以上、例えばNCM433)とを混合することで、高容量で熱安定性の高い電池を構成することもできる。
(結着剤)
正極用結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸等を用いることができる。中でも、結着性が強いことから、ポリイミドまたはポリアミドイミドが好ましい。使用する正極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、正極活物質100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましい。
(導電補助材)
正極活物質の塗工層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
(増粘剤)
正極活物質の塗工層には、増粘剤を混合させてもよい。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ソーダ等が挙げられる。
(集電体)
正極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、クロム、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
2. 負極
負極は、負極活物質を含む負極活物質層が集電体上に形成された構成とすることができる。
負極は、活物質、結着剤、及び必要により導電補助材等を含むスラリーを調製し、負極集電体の片面又は両面に負極端子と接続する延長部を残して塗工し、乾燥することにより製造することができる。
(負極活物質)
負極活物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素材料を含むことが好ましい。炭素材料としては、例えば、炭素、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物等が挙げられる。ここで、結晶性の高い炭素は、電気伝導性が高く、銅などの金属からなる負極集電体との接着性および電圧平坦性が優れている。一方、結晶性の低い非晶質炭素は、体積膨張が比較的小さいため、負極全体の体積膨張を緩和する効果が高く、かつ結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくい。
(結着剤)
負極用結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸等を用いることができる。中でも、結着性が強いことから、ポリイミドまたはポリアミドイミドが好ましい。使用する負極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、負極活物質100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましい。
(導電補助材)
負極活物質を含む負極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素質微粒子が挙げられる。これらのBET比表面積は、10m/g以上であることが好ましい。
(増粘剤)
負極活物質の塗工層には、増粘剤を混合させてもよい。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ソーダ等が挙げられる。
(集電体)
負極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、クロム、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
3. 電解液
本実施形態で用いる電解液は、リチウム塩(支持塩)と、この支持塩を溶解する非水溶媒を含む非水電解液を用いることができる。
(非水溶媒)
非水溶媒としては、炭酸エステル(鎖状又は環状カーボネート)、カルボン酸エステル(鎖状又は環状カルボン酸エステル)、リン酸エステル等の非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
炭酸エステル溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類;プロピレンカーボネート誘導体が挙げられる。
カルボン酸エステル溶媒としては、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
これらの中でも、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の炭酸エステル(環状または鎖状カーボネート類)が好ましい。
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル等が挙げられる。
また、非水電解液に含有できる溶媒としては、その他にも、例えば、エチレンサルファイト(ES)、プロパンサルトン(PS)、ブタンスルトン(BS)、Dioxathiolane−2,2−dioxide(DD)、スルホレン、3−メチルスルホレン、スルホラン(SL)、無水コハク酸(SUCAH)、無水プロピオン酸、無水酢酸、無水マレイン酸、ジアリルカーボネート(DAC)、2,5−ジオキサヘキサンニ酸ジメチル、2,5−ジオキサヘキサンニ酸ジメチル、フラン、2,5−ジメチルフラン、ジフェニルジサルファイド(DPS)、ジメトキシエタン(DME)、ジメトキシメタン(DMM)、ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン、クロロエチレンカーボネート、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、ジエチルエーテル、フェニルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeTHF)、テトラヒドロピラン(THP)、1,4−ジオキサン(DIOX)、1,3−ジオキソラン(DOL)、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルジフルオロアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、メチルフォルメイト、エチルフォルメイト、エチルブチレート、イソプロピルブチレート、メチルイソブチレート、メチルシアノアセテート、ビニルアセテート、ジフェニルジスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、アジポニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、イソブチロニトリル、ビフェニル、チオフェン、メチルエチルケトン、フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、カーボネート電解液、グライム、エーテル、アセトニトリル、プロピオンニトリル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)イオン液体、ホスファゼン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、又は、これらの化合物の一部の水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
非水溶媒は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
(支持塩)
本実施形態における支持塩としては、LiPF、LiAsF、LiAlCl、LiClO、LiBF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO等の通常のリチウムイオン電池に使用可能なリチウム塩を用いることができる。支持塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
4.セパレータ
セパレータとしては、特に制限されるものではないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等の多孔質フィルムや不織布、また、これらを基材としてシリカやアルミナ、ガラスなどの無機物を、付着もしくは接合したものや、単独で不織布や布として加工したものを用いることができる。また、セパレータとしては、それらを積層したものを用いることもできる。
5.外装体
外装体としては、電解液に安定で、かつ十分な水蒸気バリア性を持つものであれば、適宜選択することができる。例えば、積層ラミネート型の二次電池の場合、外装体としては、アルミニウム、シリカをコーティングしたポリプロピレン、ポリエチレン等のラミネートフィルムを用いることができる。
6.二次電池
(二次電池の基本構造)
二次電池は、電極の構造や形状等により、円筒型、扁平捲回角型、積層角型、コイン型、扁平捲回ラミネート型および積層ラミネート型等、種々のタイプがある。本発明はこれらの何れのタイプにも適用可能である。
一実施形態では、電池の温度上昇時に、マレイミド樹脂化合物の末端マレイミド基に結合している封止化合物が電池内部で解離及び気化するように構成される。このような実施形態では、気化物(ガス)の発生による電極間距離の増大やこれにともなう電池の体積変化を容易にできることから、ラミネート型がより好適である。
また、一実施形態では、封止化合物の解離及び気化により発生するガスを放出するためのガス放出機構を設けることも好ましい。ガス放出機構は、特に限定されないが、例えば、外装体の封止部分の一部に封止幅の狭い部分を設けることにより、発生した気化物の圧力によりその封止幅の狭い部分が開口し、電池機能を直ちに停止する機構とすることができる。
本実施形態によるラミネート型のリチウムイオン二次電池の断面図を図1に示す。図1に示すように、本実施形態によるリチウムイオン二次電池は、アルミニウム箔等の金属からなる正極集電体3と、その上に設けられた正極活物質を含有する正極活物質層1とからなる正極、および銅箔等の金属からなる負極集電体4と、その上に設けられた負極活物質を含有する負極活物質層2とからなる負極を有する。正極および負極は、正極活物質層1と負極活物質層2とが対向するように、不織布やポリプロピレン微多孔膜などからなるセパレータ5を介して積層されている。この電極対は、アルミニウムラミネートフィルム等の外装ラミネート6で形成された容器内に収容されている。正極集電体3には正極リード端子8が接続され、負極集電体4には負極リード端子7が接続され、これらのタブは容器の外に引き出されている。容器内には電解液が注入され封止される。また二次電池は、積層ラミネート型であることも好ましい。なお、電極素子(「電池要素」又は「電極積層体」ともいう)は、図2に示すように、複数の正極及び複数の負極がセパレータを介して積層された構成とすることも好ましい。
さらに別の態様としては、図3および図4のような構造の二次電池としてもよい。この二次電池は、電池要素20と、それを電解質と一緒に収容するフィルム外装体10と、正極タブ51および負極タブ52(以下、これらを単に「電極タブ」ともいう)とを備えている。
電池要素20は、図4に示すように、複数の正極30と複数の負極40とがセパレータ25を間に挟んで交互に積層されたものである。正極30は、金属箔31の両面に電極材料32が塗布されており、負極40も、同様に、金属箔41の両面に電極材料42が塗布されている。なお、本発明は、必ずしも積層型の電池に限らず捲回型などの電池にも適用しうる。
図1および図2の二次電池は電極タブが外装体の両側に引き出されたものであったが、本発明を適用しうる二次電池は図3のように電極タブが外装体の片側に引き出された構成であってもよい。詳細な図示は省略するが、正極および負極の金属箔は、それぞれ、外周の一部に延長部を有している。負極金属箔の延長部は一つに集められて負極タブ52と接続され、正極金属箔の延長部は一つに集められて正極タブ51と接続される(図4参照)。このように延長部どうし積層方向に1つに集めた部分は「集電部」などとも呼ばれる。
フィルム外装体10は、この例では、2枚のフィルム10−1、10−2で構成されている。フィルム10−1、10−2どうしは電池要素20の周辺部で互いに熱融着されて密閉される。図3では、このように密閉されたフィルム外装体10の1つの短辺から、正極タブ51および負極タブ52が同じ方向に引き出されている。
当然ながら、異なる2辺から電極タブがそれぞれ引き出されていてもよい。また、フィルムの構成に関し、図3、図4では、一方のフィルム10−1にカップ部が形成されるとともに他方のフィルム10−2にはカップ部が形成されていない例が示されているが、この他にも、両方のフィルムにカップ部を形成する構成(不図示)や、両方ともカップ部を形成しない構成(不図示)なども採用しうる。
(二次電池の製造方法)
本実施形態による二次電池は、通常の方法に従って作製することができる。例えば、次のようにして積層ラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製することができる。まず、前述に従って、正極集電体上に正極活物質層が設けられた正極と、負極集電体上に負極活物質層が設けられた負極を作製する。次に、乾燥空気または不活性雰囲気において、正極および負極をセパレータを介して対向配置して電極対を形成し、所定の容量に応じた積層数の電極積層体を形成する。この電極積層体は、正極集電体に接続する正極端子と、負極集電体に接続する負極端子を有する。次に、この電極積層体を、外装体(容器)に収容し、非水電解液を注入して、電極に電解液を含浸させる。その後、外装体の開口部を封止して二次電池を完成する。
(組電池)
一実施形態では、本実施形態に係る二次電池を複数組み合わせて組電池(電池パック)とすることができる。組電池は、例えば、本実施形態に係る二次電池を少なくとも2つ以上用いて、直列、並列又はその両方で接続した構成とすることができる。直列および/または並列接続することで容量及び電圧を自由に調節することが可能になる。組電池が備える二次電池の個数については、電池容量や出力に応じて適宜設定することができる。
(車両)
本実施形態に係る二次電池またはその組電池は、車両に用いることができる。本実施形態に係る車両としては、ハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)が挙げられる。これらの車両は本実施形態に係る二次電池を備えるため、安全性が高い。なお、本実施形態に係る車両は自動車に限定されるわけではなく、他の車両、例えば電車などの移動体の各種電源であってもよい。
(蓄電装置)
また、本実施形態に係る二次電池またはその組電池は、蓄電装置に用いることができる。本実施形態に係る蓄電装置としては、例えば、一般家庭に供給される商用電源と家電製品等の負荷との間に接続され、停電時等のバックアップ電源や補助電力として使用されるものや、太陽光発電などの、再生可能エネルギーによる時間変動の大きい電力出力を安定化するための、大規模電力貯蔵用としても使用されるものが挙げられる。
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下特に明記しない限り、試薬等は市販の高純度品を用いた。質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラム法により測定し、標準ポリスチレンを用いて換算した。マレイミド修飾率は樹脂1モルあたりのマレイミド基のモル数を示す。
<末端封止されたマレイミド樹脂化合物の合成>
[実施例1]
末端封止マレイミド樹脂化合物(樹脂A)の合成
1.マレイミドカルボン酸の製法
β−アラニン25.0g、無水マレイン酸28.9g、THF100mLを窒素下室温で24時間撹拌後、固形物をろ過することでマレアミドプロピオン酸(収率96%)を得た。次に、得られたマレアミドプロピオン酸22.1g、オルトリン酸6.11g、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)0.0937g、キシレン100mL、トルエン300mL、ジオキサン20mLを3つ口フラスコに量り取り3時間還流した。反応温度は116℃であった。これを室温まで冷却後、溶液をろ過し溶媒を減圧留去しクロロホルムに溶解した。この溶液をろ過し溶媒を減圧留去後、ジエチルエーテルで再結晶化することで、マレイミドカルボン酸[R1](収率42%)を得た。
Figure 0006658533
2.多官能マレイミド化合物の合成
市販のポリ乳酸(「テラマック」(商品名)、ユニチカ製)2000gとソルビトール69.5gを230℃で10時間溶融混合しエステル交換反応を行った。これをクロロホルム2Lに溶解し、過剰のメタノールに注ぎ再沈殿することで、末端ヒドロキシポリ乳酸[R2]を得た。
[R1]62.5gをクロロホルム900mLに溶解し0℃に冷却した後、二塩化オキサリル122gを滴下した。窒素下室温で5時間撹拌した後、溶媒および過剰の2塩化オキサリルを減圧留去することで、マレイミドカルボン酸クロライド[R3]を合成した。[R3]を少量のクロロホルムに希釈後、[R2]91.4g、ピリジン65.9mL、クロロホルム300mLの溶液中に滴下した。窒素下室温で30分間撹拌した後、反応溶液をメタノールと水の混合溶媒(メタノール3.5L、水500mL)に注ぎ、析出した固体をろ過することでマレイミド樹脂[R4](収率92%)を得た(分子量7550、マレイミド修飾率f=6)。
Figure 0006658533
(式中、pはRに対してそれぞれ独立に1〜50の整数である。)
[R4](10g、マレイミド基8mmol)をクロロホルム溶液(100ml)に溶解し、フラン(0.54g、24mmol)を加えたのち、60℃にて還流撹拌を一晩おこなった。溶媒および過剰のフランを減圧留去し、フラン基により末端封止された樹脂(A)を得た(分子量は7960)。
プロトンNMRにより樹脂(A)を測定したところ、マレイミド基由来のプロトンは検出されなかったため、マレイミド基とフラン基の反応率(封止率)は100%であることがわかる。
[実施例2]
末端封止マレイミド樹脂化合物(樹脂B)の合成
(1)4,4’−ビスマレイミドジ−フェニルメタン4.5gを250mLの三口丸底フラスコに入れ、NMP溶媒60gを加えてから、70℃に加熱し、十分に攪拌して4,4'−ビスマレイミドジ−フェニルメタンをNMP溶媒中に完全に溶解させた(R5)。
(2)バルビツール酸(BTA)粉末1.8gをNMP溶媒40gに加え、十分に攪拌してBTAをNMP溶媒中に均一にエマルジョン(R6)として分散させた。
(3)(R6)を8等分し、バッチ方式で15分毎に1回分を(R5)に添加し、その混合物を十分に攪拌してBMI二重結合の熱重合反応を進行させた。
(4)8回分の(R6)を(R5)にすべて加えてから、さらに4時間反応を進行させた。マレイミド樹脂溶液(R7)を得た。
マレイミド樹脂溶液(R7)100gに、フラン(20g)加えたのち、60℃にて撹拌を一晩おこなった。溶媒および大過剰のフランを減圧留去し、フラン基により末端封止された樹脂(B)を得た。
プロトンNMRにより樹脂(B)を測定したところ、マレイミド基由来のプロトンは検出されなかったため、マレイミド基とフラン基の反応率(封止率)は100%であることがわかる。
<被覆体の調製>
[実施例3−1]
金属酸化物(M:ニッケル酸リチウム(LiNiO))および同質量のクロロホルムのスラリーに、樹脂(A)を、金属酸化物に対し0.1質量%の割合で添加し、60分間混合撹拌したのち、減圧乾燥することにより、金属酸化物の樹脂(A)による被覆体(M−A)−1を調製した。この活物質を熱分解GCで分析してフラン量を測定し、活物質の被覆に使用したのと同じ重量の樹脂(A)のみを測定した際に得られたフラン量と比較し、樹脂当たりのフラン量からマレイミド基の封止率(%)を算出した。結果を表1に示す。なお、被覆体の製造工程において、凝集物の生成は観察されなかった。
[実施例3−2]
樹脂(A)の割合を1.0質量%とした以外実施例3−1と同様に調製し、被覆体(M−A)−2を得た。
[実施例3−3]
樹脂(A)の割合を3.0質量%とした以外実施例3−1と同様に調製し、被覆体(M−A)−3を得た。
[実施例3−4]
樹脂(A)の割合を5.0質量%とした以外実施例3−1と同様に調製し、被覆体(M−A)−4を得た。
[実施例3−5]
スラリーを金属酸化物(M:ニッケル酸リチウム(LiNiO))および同質量のN−メチルピロリドンに、マレイミド樹脂を樹脂(B)とした以外実施例3−1と同様に調製し、被覆体(M−B)−1を得た。
[実施例3−6]
スラリーを金属酸化物(M:ニッケル酸リチウム(LiNiO))および同質量のN−メチルピロリドンに、マレイミド樹脂を樹脂(B)とした以外実施例3−2と同様に調製し、被覆体(M−B)−2を得た。
[実施例3−7]
スラリーを金属酸化物(M:ニッケル酸リチウム(LiNiO))および同質量のN−メチルピロリドンに、マレイミド樹脂を樹脂(B)とした以外実施例3−3と同様に調製し、被覆体(M−B)−3を得た。
[実施例3−8]
スラリーを金属酸化物(M:ニッケル酸リチウム(LiNiO))および同質量のN−メチルピロリドンに、マレイミド樹脂を樹脂(B)とした以外実施例3−4と同様に調製し、被覆体(M−B)−4を得た。
[比較例3−1]
用いたマレイミド樹脂を[R4]とした以外実施例3−2と同様に調製し、被覆体(M−R4)を得た。
[比較例3−2]
スラリーを金属酸化物(M:ニッケル酸リチウム(LiNiO))および同質量のN−メチルピロリドンに、マレイミド樹脂を(R7)とした以外実施例3−2と同様に調製し、被覆体(M−R7)を得た。
Figure 0006658533
<電池の作製>
[実施例4]
(正極)
活物質として被覆体(M−A)−1と、炭素導電剤としてカーボンブラックと、結着材としてポリフッ化ビニリデンを重量比92:4:4でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを作製し、アルミニウムによる集電箔に塗布、120℃で乾燥して正極活物質層を形成した。同様にしてアルミニウムによる集電箔の裏面にも活物質層を形成したあと、圧延して正極電極板を得た。この電極を熱分解GCで測定したところ、樹脂(A)のみを測定した際に得られたフラン量と比較し、樹脂当たり(樹脂中のマレイミド基に対して)1%のフランが検出できた。
(負極)
天然黒鉛と、増粘剤のカルボキシメチルメチルセルロースナトリウムと、結着材のスチレンブタジエンゴムとを、重量比98:1:1で水溶液中に混合してスラリーを作製し、銅による集電箔に塗布、乾燥して負極活物質層を形成した。同様にして、銅による集電箔の裏面にも活物質層を形成したあと、圧延して負極電極板を得た。
(セパレータ)
厚さ20μmのポリプロピレン製のセパレータを用いた。
(電解液)
電解液の非水溶媒には、EC、DEC、体積比で30:70で混合した非水溶媒を用いた。支持塩として、1Mの濃度になるようにLiPFを溶解した。
(電池の作製)
正極電極板を、電流取り出し部を除いた寸法として90mm×100mmに切断し、負極電極板を、電流取り出し部を除いた寸法として94mm×104mmに切断して、セパレータを介して積層した。電池の容量は10Ahとした。
電極とセパレータを積層した電極積層体は電極タブを接続して、アルミニウムフィルムと樹脂フィルムのラミネートフィルムによる、フィルム外装体に収納した。ガス放出機構として、封止幅を2mmまで狭くした箇所を、電極タブの反対側に形成した。
電解液を注液した後、減圧雰囲気下でラミネートフィルムによる外装体を封止して、電池を作製した。
[実施例5]
用いた被覆体を(M−A)−2とした以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
[実施例6]
用いた被覆体を(M−A)−3とした以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
[実施例7]
用いた被覆体を(M−B)−1とした以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
[実施例8]
用いた被覆体を(M−B)−2とした以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
[実施例9]
用いた被覆体を(M−B)−3とした以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
[比較例1]
活物質として被覆していない金属酸化物(M:ニッケル酸リチウム(LiNiO))を用いた以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
[参考例1]
用いた被覆体を(M−A)−4とした以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
[参考例2]
用いた被覆体を(M−B)−4とした以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
[比較例2]
用いた被覆体を(M−R4)とした以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
[比較例3]
用いた被覆体を(M−R7)とした以外は、実施例4と同様にして電池を作製した。
<過充電試験>
実施例4〜9および比較例1〜3の電池は、JISC8712記載の過充電試験を実施した。電池は積層体部分を平板な押さえ板で、電池の厚みに合わせて定寸で固定した。
なお、事前の充放電試験において、1.0Cレートの充電速度で充電し、続く4.2VのCV充電において2時間以内に9.9Ahに充電可能なものについては◎判定、0.2Cで充電可能なものについては○判定とし、参考例1、2の電池は内部抵抗が大きく0.2Cの充電速度でも充電ができなかったため判定を×とし、過充電試験は実施しなかった。
過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約6Vで電池の表面温度が95℃に到達し、ガス放出機構部が開口して電池機能が停止したものを◎判定とし、10Vに到達後でガスが噴出せずに試験を終了したものを○判定、発煙したものを×判定とした。
結果を表2に示す。
Figure 0006658533
実施例4〜9及び比較例2〜3の結果より、マレイミド樹脂化合物で被覆した正極活物質を用いた電池では、過充電条件における熱暴走が阻止されることが示された。特に、マレイミド樹脂化合物として本発明に係る末端封止されたマレイミド樹脂化合物を用いた電池(実施例4〜9)では、末端封止されていないマレイミド樹脂化合物を用いた電池(比較例2〜3)と比べて、ガスの発生によって速やかに電池機能を停止することができ、より安全性の高い電池が実現できることが分かった。
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、本出願の開示事項は以下の付記に限定されない。
(付記1)
加熱された時に解離する化合物により封止された末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物。
(付記2)
前記加熱された時に解離する化合物が、80℃以上で末端マレイミド基と解離し、かつ、1気圧において200℃以下の沸点を有する、付記1に記載の樹脂化合物。
(付記3)
前記加熱された時に解離する化合物が、ジエン化合物である、付記1または2に記載の樹脂化合物。
(付記4)
前記ジエン化合物が、環状ジエン化合物である、付記3に記載の樹脂化合物。
(付記5)
前記ジエン化合物が、フラン環またはペンタジエン環を含有する、付記4に記載の樹脂化合物。
(付記6)
1分子中2個以上の末端マレイミド基を有する、付記1〜5のいずれか一項に記載の樹脂化合物。
(付記7)
付記1〜6のいずれか一項に記載の樹脂化合物を含む溶液。
(付記8)
前記樹脂化合物の濃度が、1質量%以上である、付記7に記載の溶液。
(付記9)
末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物とジエン化合物を溶媒中で反応させることを特徴とする、加熱された時に解離する化合物により封止された末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物の製造方法。
(付記10)
加熱された時に解離する化合物により封止された末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物で被覆された電極活物質。
(付記11)
付記10に記載の電極活物質を含む電極。
(付記12)
付記11に記載の電極を有するリチウムイオン電池。
(付記13)
付記12に記載の電池を搭載した電池パック。
(付記14)
付記12に記載の電池を搭載した車両。
(付記15)
付記12に記載の電池を搭載した蓄電装置。
(付記16)
加熱された時に解離する化合物により封止された末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物で活物質を被覆する工程と、
前記マレイミド樹脂化合物で被覆された活物質と結着剤を含むスラリーを調製する工程と、
前記スラリーを電極集電体の片面または両面に塗布する工程と、
前記スラリーが塗布された集電体を乾燥する工程と、
を含むことを特徴とする、電極の製造方法。

本発明の保存安定性に優れるマレイミド樹脂化合物は、電池、太陽電池、電子パッケージ、ディスプレイ、機能性複合材料、又は塗工材料などの様々な分野に応用することができる。
さらに、本発明の保存安定性に優れるマレイミド樹脂化合物を用いた二次電池は、例えば、電源を必要とするあらゆる産業分野、ならびに電気的エネルギーの輸送、貯蔵および供給に関する産業分野にて利用することができる。具体的には、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器の電源;電気自動車、ハイブリッドカー、電動バイク、電動アシスト自転車などの電動車両を含む、電車や衛星や潜水艦などの移動・輸送用媒体の電源;UPSなどのバックアップ電源;太陽光発電、風力発電などで発電した電力を貯める蓄電設備;などに、利用することができる。
1 正極活物質層
2 負極活物質層
3 正極集電体
4 負極集電体
5 セパレータ
6 外装ラミネート
7 負極リード端子
8 正極リード端子
10 フィルム外装体
20 電池要素
25 セパレータ
30 正極
40 負極

Claims (12)

  1. 加熱された時に解離する化合物により封止された末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物で被覆された電極活物質。
  2. 前記加熱された時に解離する化合物が、80℃以上で末端マレイミド基と解離し、かつ、1気圧において200℃以下の沸点を有する、請求項1に記載の電極活物質
  3. 前記加熱された時に解離する化合物が、ジエン化合物である、請求項1または2に記載の電極活物質
  4. 前記ジエン化合物が、環状ジエン化合物である、請求項3に記載の電極活物質
  5. 前記ジエン化合物が、フラン環またはペンタジエン環を含有する、請求項4に記載の電極活物質
  6. 1分子中2個以上の末端マレイミド基を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極活物質
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極活物質を含む電極。
  8. 請求項に記載の電極を有するリチウムイオン電池。
  9. 請求項8に記載の電池を搭載した電池パック。
  10. 請求項8に記載の電池を搭載した車両。
  11. 請求項8に記載の電池を搭載した蓄電装置。
  12. 加熱された時に解離する化合物により封止された末端マレイミド基を有するマレイミド樹脂化合物で活物質を被覆する工程と、
    前記マレイミド樹脂化合物で被覆された活物質と結着剤を含むスラリーを調製する工程と、
    前記スラリーを電極集電体の片面または両面に塗布する工程と、
    前記スラリーが塗布された集電体を乾燥する工程と、
    を含むことを特徴とする、電極の製造方法。
JP2016555234A 2014-10-21 2015-10-20 保存安定性に優れるマレイミド樹脂化合物 Active JP6658533B2 (ja)

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