以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るGM冷凍機1の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係るGM冷凍機1は、1台の圧縮機100と、2台の冷凍発生部(第一冷凍発生部10A及び第二冷凍発生部10B)と、開タイミング調整装置110とを備える。
圧縮機100は、吸入ポート102と吐出ポート101を有する。圧縮機100は、吸入ポート102から低圧の作動ガス(例えばヘリウムガス)を吸入し、内部で作動ガスを圧縮し、吐出ポート101から圧縮した高圧の作動ガスを吐出するように構成される。圧縮機100の吐出ポート101は高圧配管103を介してそれぞれの冷凍発生部10A,10Bに接続され、圧縮機100の吸入ポート102は低圧配管104を介してそれぞれの冷凍発生部10A,10Bに接続される。
第一冷凍発生部10Aの構造と第二冷凍発生部10Bの構造は同じである。以下において、両冷凍発生部を区別することなく説明する場合には、これらの冷凍発生部を総称して、冷凍発生部10と言う。
図2は、冷凍発生部10の一部の内部構造が断面で示された側面図である。また、図3は、図2のIII−III断面図である。図3に良く示すように、冷凍発生部10は、シリンダ部材2と、ディスプレーサ3と、ハウジング4とを備える。
シリンダ部材2は、第一シリンダ部21及び第二シリンダ部22を有する。第一シリンダ部21は、その一方端部である低温端部211及びその反対側の他方端部である高温端部212を有する円筒形状に形成される。第二シリンダ部22は、その一方端部である低温端部221及びその反対側の他方端部である高温端部222を有する円筒形状に形成される。図3において、第一シリンダ部21の低温端部211は第一シリンダ部21の下端部を構成し、第一シリンダ部21の高温端部212は第一シリンダ部21の上端部を構成する。また、第二シリンダ部22の低温端部221は第二シリンダ部22の下端部を構成し、第二シリンダ部22の高温端部222は第二シリンダ部22の上端部を構成する。
第一シリンダ部21の内径は第二シリンダ部22の内径よりも大きく、第一シリンダ部21の外径は第二シリンダ部22の外径よりも大きい。第一シリンダ部21の図3において下部に第二シリンダ部22が接続される。このため、第一シリンダ部21の低温端部211と第二シリンダ部22の高温端部222がそれぞれの端面で連結されており、シリンダ部材2は先端側(図3において下方側)に向かうほど径が小さくなる段付円筒形状を呈する。また、第一シリンダ部21の内部空間が第二シリンダ部22の内部空間に連通している。従って、シリンダ部材2の内部空間の形状は、先端側(図3において下方側)に向かうほど径が小さくなる段付き円柱形状である。
ディスプレーサ3はシリンダ部材2の内部空間に往復動可能に配設される。ディスプレーサ3は、内部に円柱状の空間がそれぞれ形成された第一ピストン部31及び第二ピストン部32を有する。第一ピストン部31の内径は第二ピストン部32の内径よりも大きく、第一ピストン部31の外径は第二ピストン部32の外径よりも大きい。第一ピストン部31の図3において下部に第二ピストン部32が接続される。このためディスプレーサ3もシリンダ部材2と同様に、先端側(図3において下方側)に向かうほど径が小さくなる段付き円筒形状を呈する。
第一ピストン部31の外径は第一シリンダ部21の内径よりも僅かに小さい。第一ピストン部31が第一シリンダ部21内に同軸的に配設される。また、第二ピストン部32の外径は第二シリンダ部22の内径よりも僅かに小さい。第二ピストン部32は、図3に示すように第一ピストン部31の下端面から下方に延設され、第二シリンダ部22の内部空間に進入している。
第一ピストン部31の軸方向長さ(高さ)は、第一シリンダ部21の内部空間の軸方向長さ(高さ)よりも短い。従って、第一シリンダ部21内の空間のうち、第一ピストン部31の下端面よりも下方に第一膨張空間21aが形成され、第一ピストン部31の上端面よりも上方に背面空間21bが形成される。図3からわかるように、第一膨張空間21aは第一シリンダ部21の低温端部211内の空間により構成され、背面空間21bは第一シリンダ部21の高温端部212内の空間により構成される。また、第二シリンダ部22の内部空間のうち、第二ピストン部32の下端面よりも下方に第二膨張空間22aが形成される。第二膨張空間22aは第二シリンダ部22の低温端部221内の空間により構成される。
ハウジング4は、ハウジングボディー41及びハウジングキャップ42を有する。ハウジングボディー41の底壁部41a(下壁部)は閉塞され、上面は開口している。ハウジングボディー41の上面の開口を塞ぐように、ハウジングキャップ42がハウジングボディー41の図3において上側からハウジングボディー41に取り付けられる。そして、ボルト等の締結手段によってハウジングキャップ42がハウジングボディー41に締結される。ハウジングボディー41とハウジングキャップ42とにより、ハウジング4内に収容空間4aが形成される。
ハウジングボディー41の底壁部41aにシリンダ部材2が取り付けられる。具体的には、シリンダ部材2の第一シリンダ部21の高温端部212の端面に径外方に広がるフランジ213が形成されており、このフランジ213がハウジングボディー41の底壁部41aにボルト等の締結手段により固定される。
また、図2及び図3からわかるように、冷凍発生部10は、電気モータ5(回転電機)、偏心部材6、及び動作変換部材としてのスコッチヨーク7を備える。電気モータ5、偏心部材6及びスコッチヨーク7は、ハウジング4の内部に形成されている収容空間4a内に収容される。また、後述するバルブ機構8も、ハウジング4に組み付けられることにより、ハウジング4に収容される。
図2に示すように、冷凍発生部10に備えられる電気モータ5は、モータハウジング51内に設けられたステータ52及びロータ53と、モータハウジング51を貫通するようにロータ53の内周側に設けられ、ロータ53と一体回転する出力軸54を有する公知の構造であり、通電されることにより、ステータ52に対してロータ53及び出力軸54が回転するように構成される。
偏心部材6は、接続部61、第一偏心部62、及び第二偏心部63を有する。接続部61、第一偏心部62、及び第二偏心部63は、一つの部材により一体的に形成される。接続部61は円筒状に形成される。円筒状の接続部61の内周空間内に出力軸54の先端部分が挿通される。そして、出力軸54の回転に伴って接続部61も一体的に回転するように、接続部61が出力軸54に組み付けられる。第二偏心部63は、接続部61の端部に連結しており、第一偏心部62は第二偏心部63に連結している。第一偏心部62及び第二偏心部63は、共に、出力軸54が回転すると、出力軸54の軸心を中心として偏心回転するような円板状の部材により構成される。第一偏心部62と第二偏心部63は、出力軸54の軸方向において異なる位置にそれぞれ設けられる。また、第二偏心部63は、出力軸54が回転すると、第一偏心部62とは異なる回転位相にて、出力軸54の軸心を中心として偏心回転するように構成される。
スコッチヨーク7は、枠状体71と、連結ロッド72と、軸受部材73(ベアリング)とを有する。枠状体71は、図3に示すように、内側空間71aが形成されるように枠状に形成される。本実施形態において、枠状体71は、その外形が正面方向(図3に示す方向)から見て長方形状に形成されており、4つの辺(上辺部711、下辺部712、左辺部713、右辺部714)により構成される。枠状体71は、その下辺部712がハウジングボディー41の底壁部41aのうち収容空間4aに面する内壁面に対面し、その上辺部711がハウジングキャップ42の内壁面に対面し、且つ、収容空間4a内にて図3の上下方向に往復動可能であるように、収容空間4a内に配設される。
枠状体71の内側空間71aに、軸受部材73が配設される。軸受部材73は、内輪及び外輪を有する公知の構造である。軸受部材73の内輪の内周側に偏心部材6の第一偏心部62が一体回転可能に固定される。従って、第一偏心部62が偏心回転すると、それに伴って、軸受部材73も、枠状体71の内側空間71a内で偏心回転する。
図3に示すように、連結ロッド72は、枠状体71を挟んで枠状体71に接続された第一ロッド72a及び第二ロッド72bを有する。第一ロッド72aは、枠状体71の下辺部712から下方に延設され、第二ロッド72bは、枠状体71の上辺部711から上方に延設される。また、ハウジングボディー41の底壁部41aには、一方端が収容空間4aに開口し他方端がシリンダ部材2の内部空間に開口したロッド挿通孔41bが形成されており、このロッド挿通孔41bに、第一ロッド72aが挿通される。第一ロッド72aは、ロッド挿通孔41bを突き抜けてシリンダ部材2の内部空間内に進入しており、その先端にて、シリンダ部材2内のディスプレーサ3(具体的にはディスプレーサ3の第一ピストン部31)の上端面に接続される。また、ハウジングキャップ42には、その内壁面に開口したガイド孔42aが形成されており、このガイド孔42a内に第二ロッド72bの先端部分が挿入される。
ハウジングボディー41に形成されたロッド挿通孔41b内に、リング状のシール部材41c及び円筒状の摺動部材41d(軸受部材)が装着される。第一ロッド72aは、このシール部材41c及び摺動部材41dを介して、ロッド挿通孔41b内に挿通される。シール部材41cにより、ロッド挿通孔41bを経由したシリンダ部材2の内部空間(背面空間21b)とハウジング4の収容空間4aとの連通が遮断される。また、第一ロッド72aが摺動部材41dに対して摺動することにより、ロッド挿通孔41b内での第一ロッド72aの軸方向への移動動作が許容される。
ハウジングキャップ42に形成されたガイド孔42a内に、円筒状の摺動部材42bが装着される。第二ロッド72bは、この摺動部材42bを介して、ガイド孔42a内に挿入される。第二ロッドが摺動部材42bに対して摺動することにより、ガイド孔42a内での第二ロッド72bの軸方向への移動動作が許容される。
第一ロッド72aと第二ロッド72bは、共に、軸心が一致するように、枠状体71に接続される。また、連結ロッド72(第一ロッド72a及び第二ロッド72b)は、ディスプレーサ3の軸方向に一致するように、ディスプレーサ3に接続される。つまり、連結ロッド72の軸方向及びディスプレーサ3の軸方向は、共に図3の上下方向に一致する。
軸受部材73は、その偏心回転平面が、図3の上下方向及び左右方向により規定される平面と平行であるように、枠状体71の内側空間71a内に配設される。また、枠状体71の内側空間71aの図3において上下方向における長さは、軸受部材73の径と同じであるか、わずかに大きい。一方、枠状体71の内側空間71aの図3において左右方向における長さは、軸受部材73の径よりもかなり大きい。具体的には、枠状体71の内側空間71aの縦方向長さは、軸受部材73が偏心回転したときにおける軸受部材73の上下方向への移動領域よりも小さくされており、枠状体71の内側空間71aの左右方向長さは、軸受部材73が偏心回転したときにおける軸受部材73の左右方向への移動領域よりも大きくなるようにされている。
図4は、図2のIV−IV断面概略図である。図4は、偏心部材6の第二偏心部63付近の構成を、第二偏心部63の偏心回転平面で切断した断面概略図である。図4に示すように、ハウジング4内における第二偏心部63の外周側には、収容空間4aの一部である断面リング状の低圧空間4bが形成されている。この低圧空間4bは、低圧配管104を介して圧縮機100の吸入ポート102に連通する。低圧空間4b内で、第二偏心部63が偏心回転する。
また、図4からわかるようにGM冷凍機1は、バルブ機構8を備える。バルブ機構8は、ハウジング4内に組み込まれることにより、ハウジング4に収容される。バルブ機構8は、低圧側バルブアーム81、高圧側バルブアーム82、低圧バルブ83、及び高圧バルブ84を有する。低圧空間4bに、低圧側バルブアーム81及び高圧側バルブアーム82が配設される。低圧側バルブアーム81及び高圧側バルブアーム82は、第二偏心部63をその外周側から挟むように配置される。低圧側バルブアーム81は長尺状に形成されており、その一方の端部側にて低圧空間4bを構成するハウジングボディー41の内壁面に固定された支持ピン81aに支持され、支持ピン81aを中心として揺動可能である。高圧側バルブアーム82も長尺状に形成されており、その一方の端部側にて低圧空間4bを構成するハウジングボディー41の内壁面に固定された支持ピン82aに支持され、支持ピン82aを中心として揺動可能である。
低圧側バルブアーム81は、その揺動平面が第二偏心部63の偏心回転平面に一致し、且つ、揺動領域の一部が第二偏心部63の偏心回転領域と重なるように、支持ピン81aにより支持されている。同様に、高圧側バルブアーム82は、その揺動平面が第二偏心部63の偏心回転平面に一致し、且つ、揺動領域の一部が第二偏心部63の偏心回転領域と重なるように、支持ピン82aにより支持されている。低圧側バルブアーム81及び高圧側バルブアーム82が、本発明におけるバルブ開閉制御部を構成する。
また、図4に示すように、ハウジングボディー41には、低圧バルブ収納孔41e及び高圧バルブ収納孔41fが形成される。低圧バルブ収納孔41eは略円柱形状に形成され、その一方の端面にて低圧空間4bに開口し、他方の端面にてハウジングボディー41の図4において右側面に開口する。高圧バルブ収納孔41fも略円柱形状に形成され、その一方の端面にて低圧空間4bに開口し、他方の端面にてハウジングボディー41の図4において左側面に開口する。低圧バルブ収納孔41eに低圧バルブ83が配設され、高圧バルブ収納孔41fに高圧バルブ84が収納される。
低圧バルブ83は、低圧側弁体831と、低圧側弁座832と、低圧側スプリング833とを備える。低圧側弁座832が、低圧バルブ収納孔41eを構成するハウジングボディー41の内壁面に気密的に嵌め込まれる。この低圧側弁座832の内部には、略円柱状の低圧バルブ室832aと、低圧バルブ室832aにその一端が開口し低圧空間4bにその他端が開口する連通路832cが形成される。低圧バルブ室832aは、連通路832cを介して、低圧空間4bに常時連通する。また、低圧バルブ室832aの一方の端部が外部に開口している。この開口端面が、低圧側弁体831の着座面を構成する。
低圧側弁体831は、ロッド部831aと、係合部831bと、支持部831cとを有する。ロッド部831aは、低圧バルブ室832aの軸方向に沿って延びるように低圧バルブ室832a内に配設される。また、低圧側弁座832には、その一方端が低圧バルブ室832aに開口しその他方端が低圧空間4bに開口する弁体挿通孔832bが形成されており、ロッド部831aはこの弁体挿通孔832bを挿通している。そして、ロッド部831aの先端部分は弁体挿通孔832bを突き抜けて低圧空間4b内に突出している。また、ロッド部831aの基端部に係合部831bが接続される。係合部831bは、ロッド部831aに近づくほど径が小さくされる円錐形に形成され、底面の径は、低圧バルブ室832aの径よりも大きい。そして、係合部831bは、その円錐周面が低圧バルブ室832aの開口端面(着座面)に係合することによって、低圧バルブ室832aを外側から塞ぐことができるように、形成される。また、円錐形状の係合部831bの底面に、係合部831bの底面の径よりも小さい径を有する円柱状の支持部831cが接続される。この支持部831cの外周に、低圧側スプリング833の一方の端部側の部分が配設される。そして、低圧側スプリング833の一方の端面が、係合部831bの底面に係止される。
また、図4に示すように、ハウジングボディー41の図4において右側面に、低圧バルブ収納孔41eの開口を覆うように、低圧バルブ押さえ部材43が取り付けられる。この低圧バルブ押さえ部材43には、低圧連通路431及びスプリング係止孔432が形成される。低圧連通路431は、低圧バルブ室832aが低圧側弁体831の係合部831bによって塞がれていない場合に、低圧バルブ室832aに連通する。スプリング係止孔432は、低圧連通路431を構成する内壁面に開口するように形成される。スプリング係止孔432には、低圧側スプリング833の他方の端部側の部分が配設される。そして、低圧側スプリング833の他方の端面が、スプリング係止孔432の底面に係止される。低圧側スプリング833は、一方の端面が低圧側弁体831の係合部831bの底面に係止され他方の端面がスプリング係止孔432の底面に係止された状態で、伸長力を発生している。従って、低圧側弁体831は、斯かる低圧側スプリング833の伸長力(弾性力)により、ロッド部831aの先端部分が低圧空間4bに進入する方向に、常時付勢される。
また、高圧バルブ84は、高圧側弁体841と、高圧側弁座842と、高圧側スプリング843とを備える。高圧側弁座842が、高圧バルブ収納孔41fを構成するハウジングボディー41の内壁面に気密的に嵌め込まれる。また、高圧側弁座842の内部に略円柱状の高圧バルブ室842aが形成される。この高圧バルブ室842aの一方の端部は外部に開口している。この開口端面が、高圧側弁体841の着座面を構成する。また、高圧側弁座842には、高圧バルブ室842aに開口する連通路842cが形成される。連通路842cは、後述する高圧通路41hに連通する。
高圧側弁体841は、ロッド部841aと、係合部841bと、支持部841cとを有する。ロッド部841aは、高圧バルブ室842aの軸方向に沿って延びるように高圧バルブ室842a内に配設される。また、高圧側弁座842には、その一方端が高圧バルブ室842aに開口しその他方端が低圧空間4bに開口する弁体挿通孔842bが形成されており、ロッド部841aはこの弁体挿通孔842bを挿通している。そして、ロッド部841aの先端部分は弁体挿通孔842bを突き抜けて低圧空間4b内に突出している。また、ロッド部841aの基端部に係合部841bが接続される。係合部841bは、ロッド部841aに近づくほど径が小さくされる円錐形状に形成され、底面の径は、高圧バルブ室842aの径よりも大きい。そして、係合部841bは、その円錐周面が高圧バルブ室842aの開口端面(着座面)に係合することによって、高圧バルブ室842aを外側から塞ぐことができるように、形成される。また、円錐形状の係合部841bの底面に、係合部841bの底面の径よりも小さい径を有する円柱状の支持部841cが接続される。この支持部841cの外周に、高圧側スプリング843の一方の端部側の部分が配設される。そして、高圧側スプリング843の一方の端面が、係合部841bの底面に係止される。
また、図4に示すように、ハウジングボディー41の図4において左側面に、高圧バルブ収納孔41fの開口を覆うように、高圧バルブ押さえ部材44が取り付けられる。この高圧バルブ押さえ部材44には、高圧連通路441及びスプリング係止孔442が形成される。高圧連通路441は、高圧配管103に連通する。また、高圧連通路441は、高圧バルブ室842aが高圧側弁体841の係合部841bによって塞がれていない場合に、高圧バルブ室842aに連通する。スプリング係止孔442は、高圧連通路441を構成する内壁面に開口するように形成される。スプリング係止孔442には、高圧側スプリング843の他方の端部側の部分が配設される。そして、高圧側スプリング843の他方の端面が、スプリング係止孔442の底面に係止される。高圧側スプリング843は、一方の端面が高圧側弁体841の係合部841bの底面に係止され他方の端面がスプリング係止孔442の底面に係止された状態で、伸長力を発生している。従って、高圧側弁体841は、斯かる高圧側スプリング843の伸長力(弾性力)により、ロッド部841aの先端部分が低圧空間4bに進入する方向に、常時付勢される。
また、図4に示すように、ハウジングボディー41には、低圧通路41g、高圧通路41h、及び第一連通路41iが形成される。低圧通路41gは、その一方端にて低圧バルブ押さえ部材43に形成された低圧連通路431に連通する。また、高圧通路41hは、その一方端にて、上述したように高圧バルブ室842aに開口した連通路842cに連通する。低圧通路41gの他方端及び高圧通路41hの他方端は第一連通路41iに合流している。第一連通路41iは、シリンダ部材2内の背面空間21bに連通する。
また、低圧側弁体831のロッド部831aの先端部は、低圧空間4b内にて低圧側バルブアーム81の揺動領域に配置している。従って、第二偏心部63の偏心回転に伴って低圧側バルブアーム81が図4の反時計回り方向に揺動すると、低圧側バルブアーム81がロッド部831aに当接して、ロッド部831aを、低圧空間4bから退避する方向に作動させる。このような退避方向へのロッド部831aの作動により、低圧側弁体831の係合部831bの円錐周面が着座面(低圧バルブ室832aの開口端面)から離間する。つまり、低圧バルブ83が開作動する。低圧バルブ83が開作動すると、圧縮機100の吸入ポート102が、低圧ライン(低圧配管104、低圧空間4b、連通路832c、低圧バルブ室832a、低圧連通路431、低圧通路41g、第一連通路41i)を経由して、シリンダ部材2の内部空間(背面空間21b)に連通する。
一方、第二偏心部63の偏心回転に伴って低圧側バルブアーム81が図4の時計回り方向に揺動すると、低圧側バルブアーム81がロッド部831aから離間する。これにより、ロッド部831aは、低圧側スプリング833の付勢力により低圧空間4bに進入する方向に作動する。このような進入方向へのロッド部831aの作動により、低圧側弁体831の係合部831bの円錐周面が着座面(低圧バルブ室832aの開口端面)に係合する。つまり、低圧バルブ83が閉作動する。低圧バルブ83が閉作動すると、低圧ラインを経由した圧縮機100の吸入ポート102とシリンダ部材2の内部空間(背面空間21b)との連通が遮断される。
また、高圧側弁体841のロッド部841aの先端部は、低圧空間4b内にて高圧側バルブアーム82の揺動領域に配置している。従って、第二偏心部63の偏心回転に伴って高圧側バルブアーム82が図4の時計回り方向に揺動すると、高圧側バルブアーム82がロッド部841aに当接して、ロッド部841aを、低圧空間4bから退避する方向に作動させる。このような退避方向へのロッド部841aの作動により、高圧側弁体841の係合部841bの円錐周面が着座面(高圧バルブ室842aの開口端面)から離間する。つまり、高圧バルブ84が開作動する。高圧バルブ84が開作動すると、圧縮機100の吐出ポート101が、高圧ライン(高圧配管103、高圧連通路441、高圧バルブ室842a、連通路842c、高圧通路41h、第一連通路41i)を経由して、シリンダ部材2の内部空間(背面空間21b)に連通する。
一方、第二偏心部63の偏心回転に伴って高圧側バルブアーム82が図4の反時計回り方向に揺動すると、高圧側バルブアーム82がロッド部841aから離間する。これにより、ロッド部841aは、高圧側スプリング843の付勢力により低圧空間4bに進入する方向に作動する。このような進入方向へのロッド部841aの作動により、高圧側弁体841の係合部841bの円錐周面が着座面(高圧バルブ室842aの開口端面)に係合する。つまり、高圧バルブ84が閉作動する。高圧バルブ84が閉作動すると、高圧ラインを経由した圧縮機100の吐出ポート101とシリンダ部材2の内部空間(背面空間21b)との連通が遮断される。
図3に示すように、第一ピストン部31の内部空間内には、約40〜100K程度の低温における比熱が大きい材質からなる第一蓄冷材33が充填される。第一蓄冷材33は、例えばりん青銅により形成された金網などの積層体により構成することができる。第一蓄冷材33が充填されている第一ピストン部31の内部空間を、以下、第一蓄冷室31aと呼ぶ。また、第二ピストン部32の内部空間内には、約4〜20K程度の極低温における比熱が大きい材質からなる第二蓄冷材34が充填される。第二蓄冷材34として、例えば鉛球などを用いることができる。第二蓄冷材34が充填されている第二ピストン部32の内部空間を、以下、第二蓄冷室32aと呼ぶ。
第一ピストン部31に、第二連通路311及び第三連通路312が形成される。第二連通路311は第一ピストン部31の上端壁に形成されており、第一蓄冷室31aの図3において上方の部分と背面空間21bとを連通する。第三連通路312は第一ピストン部31の側周壁の下端部分に形成されており、第一蓄冷室31aの図3において下方の部分と第一膨張空間21aとを連通する。
第二ピストン部32に、第四連通路321及び第五連通路322が形成される。第四連通路321は第二ピストン部32の側周壁の上端部分に形成されており、第一膨張空間21aと第二蓄冷室32aの図2において上方の部分とを連通する。第五連通路322は、第二ピストン部32の側周壁の下端部分に形成されており、第二蓄冷室32aの図3において下方の部分と第二膨張空間22aとを連通する。
第一ピストン部31の外周側面の図3おいて上方部分に、周方向にわたって第一シールリング313が取り付けられる。第一シールリング313によって、背面空間21bと第一膨張空間21aとの連通が遮断される。また、第二ピストン部32の外周側面の上方部分であって、第二シリンダ部22の内周側面と対面する部分に、第二シールリング323が取り付けられる。第二シールリング323によって、第一膨張空間21aと第二膨張空間22aとの連通が遮断される。
第一シリンダ部21の低温端部211の外周側面に第一冷熱伝達部材C1が取り付けられる。第一冷熱伝達部材C1は、第一シリンダ部21の低温端部211内にて発生した冷熱(冷凍)を被冷却体に伝達する。また、第二シリンダ部22の低温端部221の外周側面に第二冷熱伝達部材C2が取り付けられる。第二冷熱伝達部材C2は、第二シリンダ部22の低温端部221内にて発生した冷熱(冷凍)を被冷却体に伝達する。
また、図2に示すように、冷凍発生部10は、エンコーダ9を備える。エンコーダ9として、周知のロータリエンコーダを採用することができる。本実施形態においては、エンコーダ9に備えられる回転ディスクが電気モータ5の出力軸54の端面に取り付けられる。そして、周知のように、エンコーダ9は、出力軸54の回転角度を検出するとともに、検出した情報(出力軸の回転角度)を、開タイミング調整装置110に出力する。このエンコーダ9が、本発明における、開閉状態検出部を構成する。
図1に示すように、本実施形態に係るGM冷凍機1に備えられる開タイミング調整装置110は、それぞれの冷凍発生部10A,10Bに備えられるエンコーダ9からの検出情報(出力軸54の回転角度)を入力する。また、開タイミング調整装置110は、開作動期間演算部111と、開タイミング調整部112を備える。
開作動期間演算部111は、第一冷凍発生部10Aに備えられるエンコーダ9が検出した情報(出力軸54の回転角度)から、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開作動期間を演算し、第二冷凍発生部10Bに備えられるエンコーダ9が検出した情報(出力軸54の回転角度)から、第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開作動期間を演算する。そして、演算により得られた第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開作動期間に関する情報、及び、演算により得られた第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開作動期間に関する情報を、開タイミング調整部112に出力する。
開タイミング調整部112は、両冷凍発生部(10A,10B)の電気モータ5にそれぞれ電気的に接続される。開タイミング調整部112は、開作動期間演算部111から入力された情報に基づいて、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開作動期間と第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開作動期間が重ならないように、第一冷凍発生部10Aの電気モータ5の出力軸54の回転角度及び第二冷凍発生部10Bの電気モータ5の出力軸54の回転角度を制御する。
上記構成のGM冷凍機1において、以下に、その作動について説明する。それぞれの冷凍発生部10A,10Bの電気モータ5が駆動して出力軸54が回転すると、出力軸54に接続された偏心部材6の第一偏心部62及び第二偏心部63が、出力軸54の軸心を中心として偏心回転する。第一偏心部62の偏心回転に伴い、スコッチヨーク7の軸受部材73が枠状体71の内側空間71a内にて出力軸54の軸心を中心として偏心回転する。
ここで、軸受部材73の偏心回転平面は、図3の上下方向及び左右方向により規定される平面と平行である。また、連結ロッド72の軸方向は、図3の上下方向に一致する。つまり、軸受部材73の偏心回転平面は、連結ロッド72の軸方向に平行である。従って、軸受部材73の偏心回転動作は、連結ロッド72の軸方向に沿って移動する成分と、連結ロッド72の軸方向に直交する方向に沿って移動する成分とに分解することができる。以下、軸受部材73の偏心回転平面内での連結ロッド72の軸方向を縦方向と、連結ロッド72の軸方向に直交する方向を横方向と呼ぶ場合もある。
また、枠状体71の内側空間71aの横方向長さは、軸受部材73が偏心回転したときにおける軸受部材73の横方向への移動領域よりも大きくされている。従って、軸受部材73は、その偏心回転動作のうち横方向に沿って移動する成分により、枠状体71に対して相対的に内側空間71a内を横方向に移動する。つまり、軸受部材73は、枠状体71に干渉することなく、内側空間71a内を横方向に移動する。
一方、枠状体71の内側空間71aの縦方向長さは、軸受部材73が偏心回転したときにおける軸受部材73の縦方向への移動領域よりも小くさされている。従って、軸受部材73は、その偏心回転動作のうち縦方向に沿って移動する成分により、内側空間71aを縦方向に移動して枠状体71に干渉する。このため、軸受部材73は、枠状体71とともに、縦方向、すなわち連結ロッド72の軸方向に移動する。
このように、電気モータ5の出力軸54が回転し、出力軸54の回転に伴って第一偏心部62及び軸受部材73が出力軸54の軸心を中心として偏心回転することにより、軸受部材73が枠状体71に相対的に内側空間71aを横方向に往復移動しながら、枠状体71が軸受部材73とともに縦方向(連結ロッド72の軸方向)に往復移動する。これにより枠状体71に接続された連結ロッド72が往復動し、さらに、連結ロッド72に接続されたディスプレーサ3が、シリンダ部材2内で、連結ロッド72の軸方向、すなわち、シリンダ部材2の軸方向に沿って、往復動する。
また、出力軸54の回転に伴って、偏心部材6の第二偏心部63が偏心回転すると、低圧側バルブアーム81及び高圧側バルブアーム82が揺動する。低圧側バルブアーム81の揺動動作によって低圧バルブ83が開閉作動し、高圧側バルブアーム82の揺動動作によって高圧バルブ84が開閉作動する。
ここで、低圧側バルブアーム81と高圧側バルブアーム82は、第二偏心部63を挟んで対向配置している。そのため、低圧側バルブアーム81の揺動方向と高圧バルブ84の揺動方向は同じ方向である。従って、低圧側バルブアーム81が図4の時計回り方向に揺動して低圧バルブ83が閉作動するときは、高圧側バルブアーム82が図4の時計回り方向に揺動して高圧バルブ84が開作動する。また、低圧側バルブアーム81が図4の反時計回り方向に揺動して低圧バルブ83が開作動するときは、高圧側バルブアーム82が図4の反時計回り方向に揺動して高圧バルブ84が閉作動する。つまり、低圧バルブ83が開いているときは高圧バルブ84が閉じ、高圧バルブ84が開いているときは低圧バルブ83が閉じるように、両バルブが動作する。なお、両方のバルブが閉じている期間が設けられていてもよい。
高圧バルブ84が開くと、圧縮機100の吐出ポート101が高圧ラインを経由して、シリンダ部材2の内部空間に連通する。このため、シリンダ部材2内に高圧が印加される。一方、低圧バルブ83が開くと、圧縮機100の吸入ポート102が低圧ラインを経由してシリンダ部材2の内部空間に連通する。このため、シリンダ部材2内に低圧が印加される。このようなシリンダ部材2内の圧力変化は、ディスプレーサ3のシリンダ部材2内における往復動に連動してなされる。ここで、ディスプレーサ3のシリンダ部材2内での往復動作は、第一偏心部62の偏心回転動作に依存し、シリンダ部材2内の圧力変化は、第二偏心部63の偏心回転動作に依存する。従って、第一偏心部62と第二偏心部63との位相角度を調整することにより、ディスプレーサ3の往復動作とシリンダ部材2内の圧力変化が、所定の位相差をもって、連動する。本実施形態においては、それぞれの冷凍発生部(10A,10B)のシリンダ部材2の低温端部(211,221)内の作動ガスの容積及び圧力がGMサイクルに従って変化することによって低温端部(211,221)に囲まれた膨張空間(21a,22a)にて冷凍が発生するように、それぞれの冷凍発生部(10A,10B)の第一偏心部62と第二偏心部63との位相角度が調整されている。
上記した位相角度の調整により、以下のように、ディスプレーサ3の往復動とシリンダ部材2内の圧力変化が連動する。すなわち、ディスプレーサ3がシリンダ部材2内にて図3において最も下方に位置しているときに、高圧バルブ84が開いており、且つ、低圧バルブ83が閉じている。従って、高圧の作動ガス(ヘリウムガス)がシリンダ部材2内に導入される。次いで、ディスプレーサ3がシリンダ部材2に対して上方に変位される。すると、背面空間21b内の高圧の作動ガスが、第二連通路311を通って第一蓄冷室31aに導入される。第一蓄冷室31a内に導入された作動ガスは第一蓄冷材33から冷熱を奪うことにより冷却される。そして、第一蓄冷材33により冷却された作動ガスは第三連通路312を通って第一膨張空間21aに導入される。これにより、第一膨張空間21aの容積が増加する。また、第一膨張空間21a内の作動ガスの一部は、第四連通路321を通って第二蓄冷室32aに導入される。第二蓄冷室32a内に導入された作動ガスは第二蓄冷材34から冷熱を奪うことにより冷却される。そして、第二蓄冷材34により冷却された作動ガスは第五連通路322を通って第二膨張空間22aに導入される。これにより第二膨張空間22aの容積が増加する(高圧移送工程)。
ディスプレーサ3の上方への移動によって、ディスプレーサ3がシリンダ部材2内にて最も上方に位置したときに、高圧バルブ84が閉じるとともに低圧バルブ83が開く。これによって、第一シリンダ部21の低温端部211側に位置する第一膨張空間21a内の作動ガス及び、第二シリンダ部22の低温端部221側に位置する第二膨張空間22a内の作動ガスが、それぞれ膨張される(低圧化される)。このときに行われる膨張仕事によって、それぞれの膨張空間21a,22a内、すなわち第一シリンダ部21の低温端部211内及び第二シリンダ部22の低温端部221内にて冷熱が発生する(膨張工程)。
次に、ディスプレーサ3がシリンダ部材2に対して下方に変位される。すると、第二膨張空間22a及び第一膨張空間21aの容積が減少する。これとともに、第二膨張空間22a内の作動ガスが第五連通路322、第二蓄冷室32a、第四連通路321、第一膨張空間21a、第三連通路312、第一蓄冷室31a、第二連通路311を経由して、背面空間21bに導入される。このとき、第二蓄冷室32a内の第二蓄冷材34及び第一蓄冷室31a内の第一蓄冷材33に冷熱を奪われることによって、作動ガスが加熱される。また、第一膨張空間21a内の作動ガスが第三連通路312、第一蓄冷室31a、第二連通路311を経由して、背面空間21bに導入される。このとき第一蓄冷室31a内の第一蓄冷材33に冷熱を奪われることによって、作動ガスが加熱される(低圧移送工程)。
次いで、高圧バルブ84が開くとともに低圧バルブ83が閉じる。これによって、シリンダ部材2内の圧力が増加するとともに、背面空間21b内の作動ガスが圧縮仕事を行う(圧縮工程)。斯かる圧縮仕事によって発生する熱は、圧縮機100の吐出側に設置された図示しない放熱器によって外部に放熱される。
このように、各膨張空間21a,21b内の容積及び圧力が上記したGMサイクル(高圧移送工程、膨張工程、低圧移送工程、圧縮工程)に従って変化するように、シリンダ部材2内でのディスプレーサ3の往復動に連動させて高圧及び低圧をシリンダ部材2内に印加することにより、各膨張空間21a,21b内にて冷熱(冷凍)が発生する。そして、このようなGMサイクルが繰り返されることによって、第一膨張空間21a内が約40〜100K程度に冷却され、第二膨張空間22a内が約4〜20K程度に冷却される。第一膨張空間21a内(第一シリンダ部21の低温端部211内)で生じた冷熱(冷凍)は、第一冷熱伝達部材C1から被冷却体に伝達され、第二膨張空間22a内(第二シリンダ部22の低温端部221内)で生じた冷熱(冷凍)は、第二冷熱伝達部材C2から被冷却体に伝達される。
GM冷凍機1の運転中、開タイミング調整装置110は、2台の冷凍発生部10A,10Bにそれぞれ備えられるエンコーダ9から出力軸54の回転角度を入力する。そして、上記したように、開タイミング調整装置110の開作動期間演算部111は、第一冷凍発生部10Aのエンコーダ9から得られる検出情報(出力軸54の回転角度)から第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開作動期間を演算し、第二冷凍発生部10Bのエンコーダ9から得られる検出情報(出力軸54の回転角度)から第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開作動期間を演算する。なお、高圧バルブ84の開閉状態は、第二偏心部63の偏心回転動作に依存し、第二偏心部63の偏心回転動作は、出力軸54の回転動作に依存する。従って、出力軸54の回転角度と、高圧バルブ84の開閉状態を対応付けておくことができる。つまり、出力軸54の回転角度は、高圧バルブ84の開閉状態を表す。従って、出力軸54の回転角度から高圧バルブ84の開作動期間を演算することができる。
また、開タイミング調整装置110の開作動期間演算部111が演算したそれぞれの冷凍発生部の高圧バルブ84の開作動期間は、開タイミング調整部112に出力される。開タイミング調整部112は、上述したように、開作動期間演算部111から入力した情報に基づいて、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開作動期間と第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開作動期間がずれるように(本実施形態では両冷凍発生部の高圧バルブ84の開作動期間が重ならないように)、第一冷凍発生部10Aの電気モータ5の出力軸54の回転角度と第二冷凍発生部10Bの電気モータ5の出力軸54の回転角度を、調整する。これにより、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開作動期間と第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開作動期間が重ならないように、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開タイミングと第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開タイミングが調整される。具体的には、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開タイミングと、第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開タイミングが、位相角180°のずれを生じるように、両高圧バルブ84の開タイミング(両冷凍発生部の電気モータ5の出力軸54の回転角度)が調整される。なお、高圧バルブ84の開タイミングとは、高圧バルブ84が閉状態から開状態に切り替わる時期、すなわち高圧バルブ84が開作動するタイミングである。
図5は、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84及び低圧バルブ83の開閉動作、及び、第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84及び低圧バルブ83の開閉動作の時間的変化を示すチャート図である。図5の横軸は、バルブの開閉周期を表す角度である。図5に示すように、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開タイミングと、第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開タイミングは、180°ずらされている。つまり、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開タイミングと、第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開タイミングとの位相角が、180°である。このように両冷凍発生部(10A,10B)の高圧バルブ84の開タイミングがずらされることにより、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84が開いているときは、第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84が閉じており、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84が閉じているときは、第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84が閉じている。つまり、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開作動期間と第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開作動期間が重ならないように、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84の開タイミングと第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84の開タイミングが調整されている。
従って、第一冷凍発生部10Aの高圧バルブ84と第二冷凍発生部10Bの高圧バルブ84が同時に開いている時期が存在しない。故に、両冷凍発生部(10A,10B)の高圧バルブ84が同時に開いている期間が存在することによって、それぞれの冷凍発生部(10A,10B)のシリンダ部材2内に供給される高圧が低下することを防止することができる。その結果、高圧の大きさの低下に起因した、冷凍能力の低下を抑えることができる。
以上のように、本実施形態に係るGM冷凍機1は、1台の圧縮機100と複数台(本実施形態では2台)の冷凍発生部(10A,10B)を備え、それぞれの冷凍発生部(10A,10B)には、高圧バルブ84の開閉状態を表す出力軸54の回転角度を検出するエンコーダ9(開閉状態検出部)が備えられる。そして、開タイミング調整装置110によって、それぞれの冷凍発生部(10A,10B)の高圧バルブ84の開作動期間がずれるように(本実施形態では、それぞれの冷凍発生部(10A,10B)の高圧バルブ84の開作動期間が重ならないように)、それぞれの冷凍発生部(10A,10B)のエンコーダ9が検出する出力軸54の回転角度(高圧バルブ84の開閉状態)に基づいて、それぞれの冷凍発生部(10A,10B)の高圧バルブ84の開タイミングが調整されている。
本実施形態に係るGM冷凍機1によれば、それぞれの冷凍発生部(10A,10B)の高圧バルブ84の開作動期間が重なってシリンダ部材2内に印加される高圧の大きさが低下することに起因した、各冷凍発生部(10A,10B)の冷凍能力の低下を抑制することができる。
特に、本実施例に係るGM冷凍機1は、バルブ機構8がハウジング4内に組み込まれているため、外部から高圧バルブ84の開閉状態を確認することができない。この点につき、本実施形態においては、GM冷凍機1が、高圧バルブ84の開閉状態を表す電気モータ5の出力軸54の回転角度を検出するエンコーダ9を備える。よって、エンコーダ9にて検出された回転角度から高圧バルブ84の開閉状態に関する情報、特に、高圧バルブ84の開作動期間、或いは、高圧バルブ84の開タイミング、を得ることができる。そして、こうして得られた情報に基づいて、複数の冷凍発生部(10A,10B)の高圧バルブ84の開作動期間が重ならないように、それぞれの高圧バルブ84の開タイミングを容易に調整することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、高圧バルブ84の開閉状態を検出する開閉状態検出部として出力軸54の回転角度を検出するエンコーダ9を用いた例を示したが、開閉状態検出部は、それぞれの冷凍発生部の高圧バルブ84の開閉状態、特に、それぞれの冷凍発生部の高圧バルブ84の開作動期間、或いは開タイミングを検出することができるものであればよい。
また、上記実施形態では、1台の圧縮機と2台の冷凍発生部を備えるGM冷凍機を例示したが、本発明に係るGM冷凍機は、1台の圧縮機と3台以上の冷凍発生部を備えるGM冷凍機であってもよい。この場合、それぞれの冷凍発生部に備えられる高圧バルブの開作動期間が、均等にずれるように、各冷凍発生部の高圧バルブの開タイミングが調整されているとよい。例えば、3台の冷凍発生部を備える場合、それぞれの高圧バルブの開タイミングの位相角が120°となるように、各高圧バルブの開タイミングを調整すればよく、また、4台の冷凍発生部を備える場合、それぞれの高圧バルブの開タイミングの位相角が90°となるように、各高圧バルブの開タイミングを調整すればよい。このようにすることで、各冷凍発生部の冷凍能力の低下が最小限に抑えられる。
また、上記実施形態では、開閉状態検出部としてのエンコーダ9を出力軸54の端部に取り付けた例について説明したが、それ以外の位置にエンコーダを取り付けてもよい。例えば、図6に示すように、出力軸54の側周面にエンコーダ9を取り付けてもよい。また、図7に示すように、電気モータ5のロータ53の端面にエンコーダ9を取り付けてもよい。また、図8に示すように、偏心部材6にエンコーダ9を取り付けてもよい。
また、上記実施形態では、GM冷凍機が開タイミング調整装置110を備える例を示したが、開閉状態検出部(エンコーダ9)が検出した各冷凍発生部の高圧バルブの開閉状態に基づいて、予め、各冷凍発生部の高圧バルブの開タイミングを調整しておくことにより、開タイミング調整装置110を省略することができる。
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。