以下、実施の形態に係るモータ用焼結磁石及びこれを用いたモータについて説明する。なお、同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、モータの分解斜視図である。三次元直交座標系を設定すると、モータの回転軸及びモータ用焼結磁石の回転中心に位置する軸は、一致しており、これはZ軸に平行である。Z軸に垂直な2軸をX,Y軸とし、上記軸を通るX軸に対して、Y軸の正方向の領域において、モータ用焼結磁石1(A)が位置し、負方向の領域において、モータ用焼結磁石1(B)が位置している。
このモータ10は、ブラシ付きのモータであり、弧状のモータ用焼結磁石1(A)、1(B)と、一対のモータ用焼結磁石1(A)、1(B)の内側に配置されたコイル(回転子)2と、これらを収容する円筒形のケース本体3とを備えている。ケース本体3の上下の開口は、図示しない蓋部材で封止することもできる。モータ用焼結磁石1(A)、1(B)は、固定子であり、回転しない。
回転軸6の周囲にはコイル2が固定されており、コイル2の周囲には磁場ができる。この磁場と、モータ用焼結磁石からの磁場と相互作用することにより、コイル2の設けられた回転軸6が回転する。コイル2への給電方法としては、回転軸6に整流子を設け、この整流子に接触するブラシから、整流子を介してコイル2に給電を行う手法がある。
図2は、モータの平面図である。
モータ用焼結磁石1(A)、1(B)は、円筒形の一部分を軸方向に沿って切り出した弧状の形状を有しており、開き角は180°よりも小さい。一対のモータ用焼結磁石1(A)、1(B)の周方向端部間の隙間には、U字型のバネ材7が介在しており、これらの焼結磁石がケース本体3に対して移動しないように、上記隙間が広がる方向に力を与えている。モータ用焼結磁石1(A)、1(B)の外側表面は、ケース本体3の内側表面に固定されている。
モータ用焼結磁石1(A)と1(B)は、同一形状であるため、以下では、一方の磁石をモータ用焼結磁石1として説明する。
図3は、モータ用焼結磁石の外側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
同図内には、図2に示した周方向の角度位置も示してある。具体的には、モータ用焼結磁石1に関して、角度0°からθ0の間には隙間があり、θ0からθ3まで周方向に沿って連続し、θ3から角度180°の間には隙間がある。したがって、外側表面の周方向長は、θ0からθ3までの距離であり、円筒形のモータ用焼結磁石1の軸方向長はZ2である。
ここで、モータ用焼結磁石1には、周囲にある残余の領域1SZよりも、中心軸から外方に向けた高さが、高い領域(1S1,1S2,1S3,1S4)が存在する。これらの高い領域は、円筒形のモータ用焼結磁石1の軸からの距離が、残余の領域1SZよりも遠い領域であり、これらの領域は、仮想的円筒面に一致している。なお、この軸は、Z軸に平行である。
なお、本願でいう「高い領域」は「第1の高い領域1S1(1S2〜1S4)を少なくとも含む。
第1の高い領域1S1の重心位置を通り、Z軸に平行な直線は、第3の高い領域1S3の重心位置を通り、周方向位置はθ1の位置にある。同様に、第2の高い領域1S2の重心位置を通り、Z軸に平行な直線は、第4の高い領域1S4の重心位置を通り、周方向位置はθ2の位置にある。Z軸に平行であって、モータ用焼結磁石1の外側表面の周方向長を2等分する位置に存在する第1中心線CL1を設定した場合、第1中心線CL1からθ1の位置までの周方向長(角度)Δθ1と、第1中心線CL1からθ2の位置までの周方向長(角度)Δθ2とは等しい。全体としては、周方向に沿って、高い領域1S1及び1S2(1S3及び1S4)は、Δθ=Δθ1+Δθ2の周方向長(角度)だけ離間している。
モータ用焼結磁石1の外側表面の軸向長を2等分する位置に存在する第2中心線CL2をZ1の位置に設定した場合、下方端の位置0から第2中心線CL2(=Z1)までの距離ΔZ1と、第2中心線CL2(Z1)から上方端の位置Z2までの距離ΔZ2とは、等しい。
なお、モータ用焼結磁石1(A)に関しては、第1中心線CL1の位置は、90°に設定され、モータ用焼結磁石1(B)に関しては、第1中心線CL1の位置は、同図内において括弧で示すように、270°に設定される。
具体的に数値例は、以下の通りであり、以下の数値範囲を許容することができる。
Δθ0=θ0−0°=0〜29°
Δθ1=90°−θ1=22.5〜60°
Δθ2=θ2−90°=22.5〜60°
Δθ3=180°―θ3=0〜29°
ΔZ1=ΔZ2=Z2/2=0〜200mm
なお、これらの数値範囲は、1つのモータ内のモータ用焼結磁石の数が2つ(2極)の場合であるが、3つ(3極)以上とすることもできる。
上記の通り、モータ用焼結磁石が、2極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜29°、Δθ1=22.5〜60°である。
モータ用焼結磁石が、3極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜14°、Δθ1=15〜45°である。
モータ用焼結磁石が、4極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜8°、Δθ1=11.25〜36°である。
モータ用焼結磁石が、5極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜5°、Δθ1=9〜30°である。
モータ用焼結磁石が、6極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜6.5°、Δθ1=7.5〜22.5°である。
なお、第1及び第2の高い領域間の最大開角度は、2極、3極、4極、5極、6極の場合、それぞれ90°、60°、45°、36°、30°である。
なお、一例として、4極のモータ用焼結磁石を用いたモータの平面図を、図25に示す。図25に示すモータの構造は、複数のモータ用焼結磁石1(A)、1(B)、1(C)、1(D)が、4極構造を構成し、周方向に隣接するモータ用焼結磁石の端部間の隙間には、U字型のバネ材7が配置されており、これらの焼結磁石がケース本体3に対して移動しないように、上記隙間が広がる方向に力を与えている。図25に示すモータの構造は、これらの点が、図2に示したものと異なり、その他の構造は、図2に示したものと同一である。
図25において、モータ用焼結磁石1(A)〜1(D)は、円筒形の一部分を軸方向に沿って切り出した弧状の形状を有しており、開き角は90°よりも小さい。また、モータ用焼結磁石1(A)〜1(D)の外側表面は、ケース本体3の内側表面に固定されている。
上述の構造の場合、上記高い領域が、仮想的な円筒面に一致するので、これらの領域が、ケース本体の内側表面に当接する。残余の領域1SZは、高い領域よりも、若干低いので、ケース本体の内側表面に接触しない。
この構造においては、以下のような利点がある。
まず、第1中心線CL1に対して、両側に高い領域があるため、これらがケース本体の内面に接触することで、モータ用焼結磁石の位置が安定して規制される。また、これらの高い領域は、研削処理によって円筒面に一致するように形成されるが、研削処理が行われると、強度が低下する。上述の高い領域以外は、研削しないで、残余の領域として残しておくことで、機械的強度を維持することができる。すなわち、モータ用焼結磁石の固定状態の安定化と研削処理によりによる強度低下問題を同時に解決することで、相乗的に、衝撃などによる破壊を抑制することができる。換言すれば、衝撃に対しても、固定状態が安定しており、機械的強度も高いので、破壊が抑制される。
また、周方向の第2中心線CL2の両側に、高い領域が位置しているので、第2中心線CL2を回転中心とする揺動やがたつきが抑制され、モータ用焼結磁石の固定状態の安定化が図られ、上記と同様に、残余の領域の存在によって、機械的強度を維持することもできる。
図4は、モータ用焼結磁石(中間体)の平面図である。
同図に示すように、1つのモータ用焼結磁石1は、2種類の曲率半径を有しており、二点鎖線で示す仮想的円筒面CSに沿って、研削が行われると、外側表面1S(A)と1S(B)、1S(B)と1S(C)、これら2つの曲率の接合部分、すなわち、図中の矢印C1、C2の領域が選択的に研削され、円筒面が形成される。
図5は、モータ用焼結磁石の外側表面と仮想的円筒面の関係を示す図である。
中央の外側表面1S(B)の曲率半径はR1で中心軸はP1、左側の外側表面1S(A)の曲率半径はR2で中心軸はP2、右側の外側表面1S(C)の曲率半径はR2で中心軸はP2、仮想的円筒面CSの曲率半径はR3で中心軸はP3である。外側表面と仮想的円筒面の曲率半径は、以下の関係を満たしている。
R2<R3<R1
この場合、矢印C1及びC2の領域を、選択的に研削することができる。
図6は、上述の高い領域を通るモータ用焼結磁石(中間体)のYZ断面図である。
第2中心軸CL2の両側に、矢印C1及びC2で示される、残余の領域よりも高い領域が、存在している。これらの領域が、仮想的円筒面CSに沿って、研削されることで、第2中心線CL2を回転中心とする揺動やがたつきが抑制される。
図7は、モータ用焼結磁石の外側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
本例と図3に示したものとの相違点は、上述の高い領域の表面上に、Z軸方向に平行な複数の溝GRが形成されていることである。その他の点は、上述のものと同一である。
この場合、ケース本体の内側表面とモータ用焼結磁石の外側表面との間に、接着剤を介在させる場合には、溝GR内に接着剤が入り込むため、これらの接着強度を高めることができる。
溝GRの深さは、0.1〜3.0μm、幅は2〜50μmが好ましい。なぜならば、この条件の場合、磁石固定用の接着剤が溝に入りやすく、アンカー効果による接着強度向上が期待できるからである。
図8は、モータ用焼結磁石の外側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
本例は、図7に示したものと比較して、Z軸方向に整列する高い領域(1S1と1S3)、(1S2と1S4)を連続させたものであり、その他の点は、上述のものと同一である。このような構造においても、上述のものと同様の作用効果を得ることができる。
図9は、モータ用焼結磁石の外側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
本例は、図7に示したものと比較して、下部に位置する2ついの高い領域(1S3と1S4)の代わりに、第1中心線CL1上であって、第2中心線CL2の下方に高い領域1S34を配置した点において相違し、その他の構造は同一である。このような構造においても、上述のものと同様の作用効果を得ることができる。
図10は、モータ用焼結磁石の外側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
本例は、図9に示したものと比較して、各高い領域の形状を長方形から、不定形に変更し、また、上下の高い領域、を全て連続させたものである。モータ用焼結磁石における曲率半径の設計精度を上述のものよりも低下させることで、高い領域を不定形とすることができる。このような構造においても、上述のものと同様の作用効果を得ることができる。
なお、上記では、モータ用焼結磁石の外側表面のみを研削したが、上記とは半径の異なる仮想的円筒面を有する研削器(砥石)を用意し、内側表面を研削してもよい。外側表面を先に研削してから、内側表面を研削する方法と、内側表面を先に研削してから、外側表面を研削する方法がある。
次に、モータ用焼結磁石が、回転子として機能するブラシレスモータについて説明する。
図11は、モータの分解斜視図であり、図12は、モータの平面図である。
このモータ10は、ブラシレスモータであり、弧状のモータ用焼結磁石1(A)、1(B)と、一対のモータ用焼結磁石1(A)、1(B)の内側に配置された回転軸30と、モータ用焼結磁石1(A)、1(B)の外側に配置された複数のコイル(固定子)2と、これらを収容する円筒形のケース本体3(図12参照)とを備えている。なお、Z軸方向の端部を固定するためのキャップ状の蓋部材を設けることもできる。また、モータ用焼結磁石に囲まれた回転軸30には、これと同軸の回転軸6を固定することもできる。
モータ用焼結磁石1(A)、1(B)は、回転子であり、これが回転すると、回転軸6がZ軸の回りに回転する。
コイル2に通電すると、コイル2の周囲に磁場ができ、モータ用焼結磁石の周囲の磁場との相互作用により、モータ用焼結磁石を含む回転子が回転する。上記では、角度60毎にコイル2を配置しており、これらに三相電力を供給することで、モータを回転させることができる。
モータ用焼結磁石1(A)、1(B)は、円筒形の一部分を軸方向に沿って切り出した弧状の形状を有しており、開き角は180°よりも小さい。モータ用焼結磁石1(A)、1(B)の内側表面は、回転軸30の外側表面に固定されている。
モータ用焼結磁石1(A)と1(B)は、同一形状であるため、以下では、一方の磁石をモータ用焼結磁石1として説明する。
図13は、モータ用焼結磁石の内側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
同図内には、図12に示した周方向の角度位置も示してある。具体的には、モータ用焼結磁石1に関して、角度0°からθ0の間には隙間があり、θ0からθ3まで周方向に沿って連続し、θ3から角度180°の間には隙間がある。したがって、内側表面の周方向長は、θ0からθ3までの距離であり、円筒形のモータ用焼結磁石1の軸方向長はZ2である。
ここで、モータ用焼結磁石1には、周囲にある残余の領域1UZよりも、外方より中心軸に向けた高さが、高い領域(1U1,1U2,1U3,1U4)が存在する。これらの高い領域は、円筒形のモータ用焼結磁石1の回転軸からの距離が、残余の領域1UZよりも近い領域であり、これらの領域は、仮想的円筒面に一致している。なお、この回転軸は、Z軸に平行である。
なお、本願でいう「高い領域」は、高い領域1U1(1U2〜1U4)を少なくとも含む。
第1の高い領域1U1の重心位置を通り、Z軸に平行な直線は、第3の高い領域1U3の重心位置を通り、周方向位置はθ1の位置にある。同様に、第2の高い領域1U2の重心位置を通り、Z軸に平行な直線は、第4の高い領域1U4の重心位置を通り、周方向位置はθ2の位置にある。Z軸に平行であって、モータ用焼結磁石1の内側表面の周方向長を2等分する位置に存在する第1中心線CL1を設定した場合、第1中心線CL1からθ1の位置までの周方向長(角度)Δθ1と、第1中心線CL1からθ2の位置までの周方向長(角度)Δθ2とは等しい。全体としては、周方向に沿って、高い領域1U1及び1U2(1U3及び1U4)は、Δθ=Δθ1+Δθ2の周方向長(角度)だけ離間している。
モータ用焼結磁石1の内側表面の軸向長を2等分する位置に存在する第2中心線CL2をZ1の位置に設定した場合、下方端の位置0から第2中心線CL2(=Z1)までの距離ΔZ1と、第2中心線CL2(Z1)から上方端の位置Z2までの距離ΔZ2とは、等しい。
なお、モータ用焼結磁石1(A)に関しては、第1中心線CL1の位置は、90°に設定され、モータ用焼結磁石1(B)に関しては、第1中心線CL1の位置は、同図内において括弧で示すように、270°に設定される。
具体的に数値例は、以下の通りであり、以下の数値範囲を許容することができる。
Δθ0=θ0−0°=0〜29°
Δθ1=90°−θ1=22.5〜60°
Δθ2=θ2−90°=22.5〜60°
Δθ3=180°―θ3=0〜29°
ΔZ1=ΔZ2=Z2/2=0〜200mm
なお、これらの数値範囲は、1つのモータ内のモータ用焼結磁石の数が2つ(2極)の場合であるが、3つ(3極)以上とすることもできる。
上記の通り、モータ用焼結磁石が、2極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜29°、Δθ1=22.5〜60°である。
モータ用焼結磁石が、3極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜14°、Δθ1=15〜45°である。
モータ用焼結磁石が、4極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜8°、Δθ1=11.25〜36°である。
モータ用焼結磁石が、5極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜5°、Δθ1=9〜30°である。
モータ用焼結磁石が、6極の場合の第1及び第2の高い領域間の好適なΔθ0=0〜6.5°、Δθ1=7.5〜22.5°である。
なお、第1及び第2の高い領域間の最大開角度は、2極、3極、4極、5極、6極の場合、それぞれ90°、60°、45°、36°、30°である。
なお、4極のモータ用焼結磁石を用いたモータの場合、図12に示した平面図において、モータ用焼結磁石を、図25に示した場合と同様に、4分割したものであり、その他の構造は、図12に示したものと同一である。この場合、図12に示したものと同様に、各モータ用焼結磁石の内側表面は、回転軸30の外側表面に固定されている。
上述の構造の場合、上記高い領域が、仮想的な円筒面に一致するので、これらの領域が、回転軸30の外側表面に当接する。残余の領域1UZは、高い領域よりも、若干低いので、回転軸30の外側表面に接触しない。
この構造においては、以下のような利点がある。
まず、第1中心線CL1に対して、両側に高い領域があるため、これらが回転軸30の外側表面に接触することで、モータ用焼結磁石の位置が安定して規制される。また、これらの高い領域は、研削処理によって円筒面に一致するように形成されるが、研削処理が行われると、強度が低下する。上述の高い領域以外は、研削しないで、残余の領域として残しておくことで、機械的強度を維持することができる。すなわち、モータ用焼結磁石の固定状態の安定化と研削処理によりによる強度低下問題を同時に解決することで、相乗的に、衝撃などによる破壊を抑制することができる。換言すれば、衝撃に対しても、固定状態が安定しており、機械的強度も高いので、破壊が抑制される。
また、周方向の第2中心線CL2の両側に、高い領域が位置しているので、第2中心線CL2を回転中心とする揺動やがたつきが抑制され、モータ用焼結磁石の固定状態の安定化が図られ、上記と同様に、残余の領域の存在によって、機械的強度を維持することもできる。
図14は、モータ用焼結磁石(中間体)の平面図である。
同図に示すように、1つのモータ用焼結磁石1は、2種類の曲率半径を有しており、二点鎖線で示す仮想的円筒面CSに沿って、研削が行われると、内側表面1U(A)と1U(B)、1U(B)と1U(C)、これら2つの曲率の接合部分、すなわち、図中の矢印C1、C2の領域が選択的に研削され、円筒面が形成される。
図15は、モータ用焼結磁石の内側表面と仮想的円筒面CSの関係を示す図である。
中央の内側表面1U(B)の曲率半径はR1で中心軸はP1、左側の内側表面1U(A)の曲率半径はR2で中心軸はP2、右側の内側表面1U(C)の曲率半径はR2で中心軸はP2、仮想的円筒面CSの曲率半径はR3で中心軸はP3である。内側表面と仮想的円筒面CSの曲率半径は、以下の関係を満たしている。
R1<R3<R2
この場合、矢印C1及びC2の領域を、選択的に研削することができる。
図16は、上述の高い領域を通るモータ用焼結磁石(中間体)のYZ断面図である。
第2中心軸CL2の両側に、矢印C1及びC2で示される、残余の領域よりも高い領域が、存在している。これらの領域が、仮想的円筒面CSに沿って、研削されることで、第2中心線CL2を回転中心とする揺動やがたつきが抑制される。
図17は、モータ用焼結磁石の内側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
本例と図13に示したものとの相違点は、上述の高い領域の表面上に、Z軸方向に平行な複数の溝GRが形成されていることである。その他の点は、上述のものと同一である。
この場合、回転軸30の外側表面とモータ用焼結磁石1の内側表面との間に、接着剤を介在させる場合には、溝GR内に接着剤が入り込むため、これらの接着強度を高めることができる。
図18は、モータ用焼結磁石の内側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
本例は、図17に示したものと比較して、Z軸方向に整列する高い領域(1U1と1U3)、(1U2と1U4)を連続させたものであり、その他の点は、上述のものと同一である。このような構造においても、上述のものと同様の作用効果を得ることができる。
図19は、モータ用焼結磁石の内側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
本例は、図17に示したものと比較して、下部に位置する2ついの高い領域(1U3と1U4)の代わりに、第1中心線CL1上であって、第2中心線CL2の下方に高い領域1U34を配置した点において相違し、その他の構造は同一である。このような構造においても、上述のものと同様の作用効果を得ることができる。
図20は、モータ用焼結磁石の内側表面を周方向に沿って平面上に展開した図である。
本例は、図19に示したものと比較して、各高い領域の形状を長方形から、不定形に変更し、また、上下の高い領域、を全て連続させたものである。モータ用焼結磁石における曲率半径の設計精度を上述のものよりも低下させることで、高い領域を不定形とすることができる。このような構造においても、上述のものと同様の作用効果を得ることができる。
なお、上記では、モータ用焼結磁石の内側表面のみを研削したが、上記とは半径の異なる仮想的円筒面を有する研削器(砥石)を用意し、外側表面を研削してもよい。外側表面を先に研削してから、内側表面を研削する方法と、内側表面を先に研削してから、外側表面を研削する方法がある。
図21は、研削装置を示す図である。
(A)に示すように、1つの研削装置UNITは、円盤状の研削器G1と、送りローラROと、押さえ部材PHを備えており、レールRA上をモータ用焼結磁石1の中間体が搬送される。送りローラROの表面が、モータ用焼結磁石1に接触して回転すると、モータ用焼結磁石1は、図面左方向に移動するレールRA上に乗って移動し、上方から、前段の押さえ部材PHによって、押さえられながら、回転する研削器G1の外周表面に接触し、外側表面又は内側表面が研削され、後段の押さえ部材PHによって、押さえられながら、図面左方向へと排出される。
(B)は、3つの研削装置UNITを連続させたものであり、一度の研削工程において、研削されない場合においても、3度の研削を行えば、より精密に研削することができる。また、3つの研削装置のうち、1つの研削装置を、他の研削装置とは別のものにするのと同時に、この研削装置による研削加工時は、他の研削装置による研削加工時とは、モータ用焼結磁石の上下を反転させることもできる。
例えば、第1の研削装置において内側表面を研削し、第2の研削装置において内側表面を研削し、第3の研削装置において外側表面を研削する場合、第2の研削装置と第3の研削装置との間において、モータ用焼結磁石の上下を反転させる。この場合、焼結磁石の反りの影響を抑制することができる。
また、第1の研削装置において外側表面を研削し、第2の研削装置において内側表面を研削し、第3の研削装置において内側表面を研削する場合、第1の研削装置と第2の研削装置との間において、モータ用焼結磁石の上下を反転させることもできる。
外側表面に高い領域を形成する場合、外側表面から研削した方が、加工時の磁石姿勢が安定するという効果がある。内側表面に高い領域を形成する場合、内側表面から研削した方が、加工時の磁石姿勢が安定するという効果がある。また、外側表面と内側表面の研磨の順番は、砥石の圧力により割れないよう、磁石のそりに応じて研磨台(レール)に沿った方向に研磨することが好ましい。外側表面の研削時に形成された円筒面を基準として、内側表面の研削を行うことができる。
図22は、外側表面を研削するための研削器近傍の断面図である。
レールRAのXY断面は、長方形であり、上部の角部にはアールが設けられている。この角部にモータ用焼結磁石1の内側表面が接触し、これに対向する外側表面は、研削器(砥石)G1に設けられた円筒研削面(仮想的円筒面CSに等しい)に当接し、X軸を中心に回転する研削器G1によって、図4に示した矢印C1,C2の領域が削られ、上述の高い領域が形成される。
図23は、内側表面を研削するための研削器近傍の断面図である。
同図では、ブラシレスモータ用の焼結磁石1が配置されている。なお、上述のブラシ付きモータ用の焼結磁石の内面を、同一方法で研削することもできる。
レールRAのXY断面は、X軸方向に沿って離間した一対の長方形であり、長方形の上部の角部にはアールが設けられている。この角部にモータ用焼結磁石1の外側表面が接触し、これに対向する外側表面は、内側表面は、研削器(砥石)G1に設けられた円筒研削面(仮想的円筒面CSに等しい)に当接し、X軸を中心に回転する研削器G1によって、図14に示した矢印C1,C2の領域が削られ、上述の高い領域が形成される。
図24は、研削装置を示す図である。
図24に示すように、図21に示した研削装置は、研削器G1の位置を、レールRAの下方に配置することも可能である。この場合、図22及び図23に示した断面は上下が反転する。
なお、上述の焼結磁石は、フェライト磁石又は金属磁石からなるが、フェライト磁石が好ましい。フェライト磁石の場合、研削面(研磨面)が、直接、ケース本体に当たるので、研削後にメッキ処理等の表面処理したものよりも、精度がより高いという利点がある。金属磁石の場合、耐食性を向上させるため、研削後に、ニッケめっきや樹脂コートをすることが必要である。
なお、金属磁石の場合、射出成型と最小限の研磨加工により大幅なコストダウンをすることができる。
また、上述のモータ用焼結磁石において、仮想的円筒面に一致する領域は、周辺の残余の領域よりも「高い領域」であるが、高さの基準としては、仮想的円筒面の位置を最も高い位置として、2番目以降の高さの平均値を、高さを計る際の基準とした。
フェライト焼結磁石は、永久磁石である。比較的高い磁気特性を有しつつ、安価であることから広く使用されている。フェライト焼結磁石の種類は特に限定されるものではなく、バリウム系、ストロンチウム系、カルシウム系等、いずれでもよい。
ブラシ付きモータの場合の外側のケース本体の材料は、鉄または鉄を主成分とする合金を用いることもできる。
以上、説明したように、上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石は、1つの軸(Z軸)に沿って延びており、Z軸に垂直な断面形状が弧状のモータ用焼結磁石1であって、Z軸に近い側に位置する内側表面と、Z軸から遠い側に位置する外側表面と、を備え、Z軸に平行であって、外側表面の周方向の中央位置を通る中心線CL1を設定し(図3参照)、この外側表面上の中心線CL1の両側の領域を一方領域及び他方領域とし、Z軸周りに仮想的外側円筒面CSを設定した場合(図4参照)、外側表面は、外側表面上の一方領域内において、仮想的外側円筒面CSに一致する第1外側表面領域(図4の矢印C1、領域1S1又は1S3)と、外側表面上の他方領域内において、仮想的外側円筒面CSに一致する第2外側表面領域(図4の矢印C2、領域1S2又は1S4)と、仮想的外側円筒面CSに一致しない残余の第3外側表面領域1SZ(非研削領域)(図3参照)とを備えている。
この場合、外側表面領域(高い領域)が、中央線CL1の両側に位置し、これらがケース本体の内面に接触することで、モータ用焼結磁石1の位置が安定して規制される。また、これらの高い領域は、研削処理によって円筒面に一致するように形成されるが、高い領域以外は、研削しないで、残余の領域として残されており、機械的強度を維持することができる。すなわち、衝撃に対して、固定状態が安定しており、機械的強度も高いので、破壊が抑制される。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石において、内側表面は、少なくとも一部領域が、仮想的内側円筒面CSに一致していることを特徴とする。
この場合の内側表面の加工として、単純に、内側表面を円筒形に研削加工することができる。なお、図13に示したように、Z軸に平行であって、内側表面の周方向の中央位置を通る中心線CL1を設定し、この内側表面上の中心線の両側の領域を一方領域及び他方領域とし、Z軸周りに仮想的内側円筒面CSを設定した場合、内側表面は、内側表面の一方領域内において、仮想的内側円筒面CSに一致する第1内側表面領域(図14の矢印C1、領域1U1又は1U3)と、内側表面の他方領域内において、仮想的内側円筒面に一致する第2内側表面領域(図4の矢印C2、領域1U2又は1U4)と、仮想的内側円筒面に一致しない残余の第3内側表面領域1UZ(非研削領域)(図13参照)とを備えることとしてもよい。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石においては、Z軸に垂直であって、外側表面上のZ軸方向の中央位置を通る周方向中心線CL2を設定した場合(図3参照)、この外側表面上の周方向中心線CL2を挟んだ一方の側に、第1外側表面領域(図3の領域1S1)が位置し、この外側表面上の周方向中心線CL2を挟んだ他方の側に、第2外側表面領域(図3の領域1S4)、又は、仮想的外側円筒面CSに一致する別の外側表面領域(図3の領域1S3)を備えることを特徴とする。
この場合、周方向中心線CL2の両側に、上述の高い領域(第1外側表面領域、第2外側表面領域又は別の外側表面領域)が位置しているので、周方向中心線CL2を回転中心とする揺動やがたつきが抑制され、モータ用焼結磁石の固定状態の安定化が図られ、上記と同様に、残余の領域の存在によって、機械的強度を維持することもできる。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石においては、Z軸に平行であって、外側表面の周方向の中央位置を通る中心線CL1と(図3参照)、Z軸に垂直であって、外側表面上のZ軸方向の中央位置を通る周方向中心線CL2とによって分割され、外側表面上に画成される4つの領域のうち、少なくとも3つの領域において、それぞれ、第1外側表面領域(領域1S1)、第2外側表面領域(領域1S4)、及び、別の外側表面領域(領域1S3)が位置していることを特徴とする。
平面は3点によって規定することができるため、少なくとも3つの領域において、上記外側表面領域が、ケース本体の内側表面に接触することで、モータ用焼結磁石の位置が安定する。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石においては、第1外側表面領域(領域1S1、1S3)及び第2外側表面領域(領域1S2、1S4)の表面には、複数の溝GR(図7参照)が設けられていることを特徴とする。
この場合、外部のケース本体と接着を行う場合に、溝GR内に接着剤が入り込むため、接着強度を高めることができる。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石においては、仮想的外側円筒面CSに一致しない残余の第3外側表面領域(1SZ)(図3参照、図7から図10参照)は、外側表面(図3、図7から図10参照)の95%以下30%以上であることを特徴とする。換言すれば、上述の高い領域が、外側表面の5%以上70%以下である。
外側表面の上述の高い領域が70%を超える場合(残余の外側表面領域が30%より小さい場合)、強度が全面研削(100%)と比較して、1/2〜1/3程度になってしまう。また、外側表面の上述の高い領域が5%を下回る場合(残余の外側表面領域が95%より大きい場合)、バラツキを考慮した量産加工条件の設定が難しくなるからである。
また、上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石は、1つの軸(Z軸)に沿って延びており、Z軸に垂直な断面形状が弧状のモータ用焼結磁石であって、Z軸に近い側に位置する内側表面と、Z軸から遠い側に位置する外側表面とを備え、Z軸に平行であって、内側表面の周方向の中央位置を通る中心線CL1を設定し(図13参照)、この内側表面上の中心線CL1の両側の領域を一方領域及び他方領域とし、Z軸周りに仮想的内側円筒面CSを設定した場合、内側表面は、内側表面の一方領域内において、仮想的内側円筒面CSに一致する第1内側表面領域(図14の矢印C1、領域1U1又は1U3)と、内側表面の他方領域内において、仮想的内側円筒面CSに一致する第2内側表面領域(図4の矢印C2、領域1U2又は1U4)と、仮想的内側円筒面CSに一致しない残余の第3内側表面領域1UZ(図13参照)とを備えている。
この場合、内側表面領域(高い領域)が、中央線CL1の両側に位置し、これらが回転軸30の内面に接触することで(図12参照)、モータ用焼結磁石1の位置が安定して規制される。また、これらの高い領域は、研削処理によって円筒面に一致するように形成されるが、高い領域以外は、研削しないで、残余の領域1UZとして残されており、機械的強度を維持することができる。すなわち、衝撃に対して、固定状態が安定しており、機械的強度も高いので、破壊が抑制される。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石は、外側表面は、少なくとも一部領域が、仮想的外側円筒面CSに一致していることを特徴とする。
この場合の外側表面の加工として、単純に、外側表面を円筒形に研削加工することができる。なお、図3に示したように、Z軸に平行であって、外側表面の周方向の中央位置を通る中心線CL1を設定し、この外側表面上の中心線の両側の領域を一方領域及び他方領域とし、Z軸周りに仮想的外側円筒面CSを設定した場合、外側表面は、外側表面の一方領域内において、仮想的外側円筒面CSに一致する第1外側表面領域(図4の矢印C1、領域1S1又は1S3)と、外側表面の他方領域内において、仮想的外側円筒面に一致する第2内側表面領域(図4の矢印C2、領域1S2又は1S4)と、仮想的内側円筒面CSに一致しない残余の第3内側表面領域1SZとを備えることとしてもよい。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石においては、Z軸に垂直であって、内側表面上のZ軸方向の中央位置を通る周方向中心線CL2を設定した場合(図13参照)、この内側表面上の周方向中心線CL2を挟んだ一方の側に、第1内側表面領域(1U1)が位置し、この内側表面上の周方向中心線CL2を挟んだ他方の側に、第2内側表面領域(1U4)、又は、仮想的内側円筒面CSに一致する別の内側表面領域(1U3)を備えることを特徴とする。
この場合、周方向の周方向中心線CL2の両側に、上述の高い領域(第1内側表面領域、第2内側表面領域又は別の内側表面領域)が位置しているので、周方向中心線CL2を回転中心とする揺動やがたつきが抑制され、モータ用焼結磁石の固定状態の安定化が図られ、上記と同様に、残余の領域の存在によって、機械的強度を維持することもできる。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石においては、Z軸に平行であって、内側表面の周方向の中央位置を通る中心線CL1と、Z軸に垂直であって、内側表面上のZ軸方向の中央位置を通る周方向中心線CL2とによって分割され、内側表面上に画成される4つの領域のうち、少なくとも3つの領域において、それぞれ、第1内側表面領域(1U1)、第2内側表面領域(1U4)、及び、別の内側表面領域(1U3)が位置していることを特徴とする。
平面は3点によって規定することができるため、少なくとも3つの領域において、上記内側表面領域が、回転軸の外側表面に接触することで、モータ用焼結磁石の位置が安定する。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石においては、第1内側表面領域(1U1,1U3)及び第2内側表面領域(1U2,1U4)の表面には、複数の溝GR(図17〜図20)が設けられていることを特徴とする。
この場合、内部の回転軸と接着を行う場合に、溝GR内に接着剤が入り込むため、接着強度を高めることができる。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石においては、仮想的内側円筒面CSに一致しない残余の第3内側表面領域1UZ(図13参照、図17から図20参照)は、内側表面(図13参照、図17から図20参照)の95%以下30%以上であることを特徴とする。
内側表面の上述の高い領域が70%を超える場合(残余の内側表面領域が30%より小さい場合)、強度が全面研削(100%)と比較して、1/2〜1/3程度になってしまう。また、内側表面の上述の高い領域が5%を下回る場合(残余の内側表面領域が95%より大きい場合)、バラツキを考慮した量産加工条件の設定が難しくなるからである。
以上のように、モータは、上記のモータ用焼結磁石1と、モータ用焼結磁石1の磁場内に配置されたモータ用コイル2とを備え、モータ用コイル2に通電することにより、モータ用焼結磁石1がモータ用コイル2に対して相対的に回転する。この原理は、ブラシ付きのモータの場合(図1、図2)と、ブラシレスモータの場合(図11、図12)とで同じである。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石の製造方法は、研削前の弧状のモータ用焼結磁石1(中間体)を用意する工程と、モータ用焼結磁石1(中間体)の外側表面を、図22のように、円筒面CSを有する研削器G1によって研削する工程とを備えるモータ用焼結磁石の製造方法であって、モータ用焼結磁石1(中間体)の外側表面上の少なくとも一対の所定領域(上述の高い領域)は、研削器G1の円筒面CSと同一形状であって、且つ、弧状のモータ用焼結磁石中間体と同一方向に延びた軸(Z軸)を有する仮想的円筒面CSよりも外側に突出しており(図3の矢印C1、C2の部分)、所定領域は、仮想的円筒面CSの軸(Z軸)に平行に設定される外側表面上の中心軸CL1(図3)の両側に設定されることを特徴とする。
この製造方法によれば、上述のモータ用焼結磁石を製造することができるので、衝撃に対して、固定状態が安定しており、機械的強度も高いモータ用焼結磁石を製造することができる。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石の製造方法は、外側表面の研削工程の後、モータ用焼結磁石中間体の内側表面を、円筒面CSを有する研削器G1によって研削する工程を更に備えることを特徴とする。すなわち、内側表面も切削することができる。この場合、内側表面は、図23に示すような研削器G1によって、研削することができる。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石の製造方法は、切削前の弧状のモータ用焼結磁石1(中間体)を用意する工程と、モータ用焼結磁石1(中間体)の内側表面を、図23のように、円筒面CSを有する研削器G1によって研削する工程と、を備えるモータ用焼結磁石の製造方法であって、モータ用焼結磁石1(中間体)の内側表面上の少なくとも一対の所定領域(上述の高い領域)は、研削器G1の円筒面CSと同一形状であって、且つ、弧状のモータ用焼結磁石中間体と同一方向に延びた軸(Z軸)を有する仮想的円筒面CSよりも内側に突出しており(図13の矢印C1、C2の部分)、所定領域は、仮想的円筒面CSの軸(Z軸)に平行に設定される内側表面上の中心軸CL1(図13)の両側に設定されることを特徴とする。
上述の実施形態に係るモータ用焼結磁石の製造方法は、内側表面の研削工程の後、モータ用焼結磁石中間体の外側表面を、円筒面を有する研削器によって研削する工程を更に備えることができる。すなわち、外側表面も切削することができる。この場合、外側表面は、図22に示すような研削器G1によって、研削することができる。
また、実施形態に係るモータの製造方法は、上述のいずれかのモータ用焼結磁石を製造する工程と、モータ用コイル2に通電することにより、モータ用焼結磁石1がモータ用コイル2に対して相対的に回転するように、モータ用焼結磁石の磁場内に、モータ用コイル2を配置する工程とを備えることを特徴とする。
図1及び図2に示したブラシ付きモータを製造する場合は、ケース本体3内に、対向面がS極及びN極のモータ用焼結磁石1の対を配置し、これらの内側に、コイル2を配置し、通電によって、反発力がモータ用焼結磁石との間に生じるように配置すればよい。図11及び図12に示したブラシレスモータを製造する場合は、回転軸30の外側に、外側の面がS極及びN極のモータ用焼結磁石1の対を配置し、これらの外輪が内側に、コイル2を配置し、通電によって、反発力がモータ用焼結磁石との間に生じるように配置すればよい。例えば、周方向に交互にS極及びN極となるコイル2を配置することができる。
以上、説明したように、上述のモータ用焼結磁石は、弧状のモータ用焼結磁石1の表面上に設定される所定の中心線の両側に位置し、且つ、仮想的円筒面CSに一致する少なくとも一対の表面領域と、一致しない残余の表面領域を備えている。上述の高い領域が、中央線(CL1又はCL2)の両側に位置し、これらが隣接部材に接触することで、モータ用焼結磁石1の位置が安定して規制され、高い領域となる研削領域の他には、残余の領域(非研削領域)も備えているので、その強度を維持することができる。
また、上述の焼結磁石によれば、部分的にしか研削(研磨)しないため、研磨(研削)負荷が減り、ワレ、欠け不良が減少し、加工速度も上昇する。黒色の未研削の部分は高強度となり、また、研削カスを削減することができ、材料コストを低下させることができる。また、未研削の領域は、粒子の脱落、研磨痕がなく表面が平滑である。
なお、上述の高い領域以外は、ケース本体との間に空気の隙間があるため、熱が伝わり難い。また、焼結磁石が熱膨張しても、空気が緩衝材となるし、この隙間に接着剤を入れる事により、固定しやすくなるという利点がある。
製造方法においては、焼結磁石の位置決めが容易であり、また、姿勢が安定し、隙間があるために、脱脂性が向上する。研削した円筒面は、加工時のレール位置に対する基準に使用することができる。また、焼結磁石を積み上げたり、縦に並べた場合、高い領域が存在するため、くっつきにくくなるという利点もある。