JP6654264B1 - パラミロン含有レーヨン繊維及びパラミロン含有レーヨン繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パラミロン含有再生セルロース繊維を提供する。【解決手段】母体となる繊維に、パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質が埋入しており、前記母体となる繊維が、再生セルロース繊維であることを特徴とするパラミロン含有再生セルロース繊維である。【選択図】図1

Description

本発明は、パラミロン含有再生セルロース繊維及びパラミロン含有再生セルロース繊維の製造方法に関する。
近年、再生可能資源から合成されるバイオベースポリマーが注目を浴びている。パラミロンはユーグレナ(Euglena)などの微細藻類の光合成によって作られる多糖類であり、β−1,3−グルカンによって構成される直鎖状の高分子である。
レーヨン繊維等の再生セルロース繊維は、綿などの天然繊維と同様に生分解性を有しており、染色性やドレープ性に優れているが、強度が他の繊維と比較して弱くなる傾向がある。したがって、再生セルロース繊維の利点を生かせる一部の用途を除いて、合成繊維に取って代わられてきた。
一方、再生セルロース繊維の強度の欠点を克服するために、種々の製造方法が提案され、ハイウェットモジュラス繊維、ポリノジック繊維、強力レーヨン繊維、リヨセル繊維等の再生セルロース繊維が開発されている。
これらの繊維は、生産設備が全く異なったり、再生条件の違いによる製造方法で製造する必要があった。
ビスコース法等を用いる既存の設備を利用して、製造コストを低廉に、かつ、強度が高く、各種用途に汎用性のあるレーヨン繊維及びその製造方法を提供することを目的として、レーヨン繊維中に針状のキチンナノファイバーが分散されたレーヨン繊維が報告されている(特許文献1)。
また、機能性を付与した再生セルロース繊維として、レーヨン繊維の母体に備長炭微粒子を埋入させることで保湿性を付与した保湿性レーヨン繊維が知られている(特許文献2)。
しかし、依然として、再生セルロース繊維の物性を向上させる方法や、機能性を付与した再生セルロース繊維の開発が期待されている。
特開2016−74989号公報 特開2009−299211号公報
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、再生セルロース繊維の物性を向上させる方法や、機能性を付与した再生セルロース繊維を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、再生セルロース繊維であるレーヨン繊維にパラミロンを埋入させると、繊維の各種物性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、前記課題は、本発明によれば、母体となる繊維に、パラミロンが埋入しており、前記母体となる繊維が、レーヨンであり、パラミロン含有レーヨン繊維の重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの添加量が、0.5重量%以上5重量%以下であり、JIS L 1015に準拠して測定される乾伸度が18%以上であることを特徴とするパラミロン含有レーヨン繊維により解決される。
また、前記課題は、本発明によれば、母体となる繊維に、パラミロンが埋入しており、前記母体となる繊維が、レーヨンであり、パラミロン含有レーヨン繊維の重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの添加量が、0.5重量%以上5重量%以下であり、以下の式で測定される水膨潤度が90重量%以上であることを特徴とするパラミロン含有レーヨン繊維により解決される。
水膨潤度(重量%)=100×(W −W )/W
ここで、W は、20±2℃の水200mlに繊維約2gを浸漬し20±2℃の恒温槽中に15分間放置した後、遠心力1000〜1050Gにて10分間遠心分離機を使用し脱水した重量であり、W は、その後に105℃の熱風乾燥機を用いて恒量になるまで乾燥させた重量である
のとき、前記パラミロンが、ユーグレナ由来であるとよい。
このとき、前記パラミロン含有レーヨン繊維の重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの添加量が、2.5重量%以上重量%以下であるとよい。
また、前記課題は、本発明によれば、パラミロン含有レーヨン繊維を含む被服、保湿性繊維、抗菌性布繊維より解決される。
また、前記課題は、本発明によれば、ビスコースを調製するビスコース調製工程と、前記ビスコースにパラミロンを添加して紡糸液を調製する紡糸液調製工程と、前記紡糸液を紡糸する紡糸工程と、を行い、前記紡糸液中のセルロース成分及び前記パラミロンの合計重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの重量が、0.5重量%以上5重量%以下であり、得られる繊維のJIS L 1015に準拠して測定される乾伸度が18%以上であることを特徴とするパラミロン含有レーヨン繊維の製造方法により解決される。
また、前記課題は、本発明によれば、ビスコースを調製するビスコース調製工程と、前記ビスコースにパラミロンを添加して紡糸液を調製する紡糸液調製工程と、前記紡糸液を紡糸する紡糸工程と、を行い、前記紡糸液中のセルロース成分及び前記パラミロンの合計重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの重量が、0.5重量%以上5重量%以下であり、得られる繊維の以下の式で測定される水膨潤度が90重量%以上であることを特徴とするパラミロン含有レーヨンの製造方法により解決される。
水膨潤度(重量%)=100×(W −W )/W
ここで、W は、20±2℃の水200mlに繊維約2gを浸漬し20±2℃の恒温槽中に15分間放置した後、遠心力1000〜1050Gにて10分間遠心分離機を使用し脱水した重量であり、W は、その後に105℃の熱風乾燥機を用いて恒量になるまで乾燥させた重量である
のとき、前記パラミロンが、ユーグレナ由来であるとよい。
このとき、前記紡糸液中の前記セルロース成分及び前記パラミロンの合計重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの重量が、2.5重量%以上重量%以下であるとよい。
本発明によれば、パラミロン含有レーヨン繊維を提供することができる。
本発明のパラミロン含有レーヨン繊維は、各種物性が向上しており、パラミロンの含有より付与された機能性を利用した機能性の繊維や被服を提供することが可能である。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維の製造方法を示すフロー図である。 本実施形態のパラミロン含有レーヨンの製造方法を示すフロー図である。 試験1において検証を行った、実施例1乃至3及び比較例1の繊維の各種物性測定の結果を示す図である。 試験2において観察を行った実施例5の繊維の電子顕微鏡写真である。 試験2において観察を行った実施例6の繊維の電子顕微鏡写真である。 試験2において観察を行った実施例7の繊維の電子顕微鏡写真である。 試験2において観察を行った比較例1の繊維の電子顕微鏡写真である。 試験3において検証を行ったパラミロン含有レーヨンの細菌に対する増殖阻害実験の結果を示す図表である。
以下、本発明の実施形態について、図1乃至8を参照しながら説明する。
本実施形態は、パラミロン含有再生セルロース繊維及びパラミロン含有再生セルロース繊維に関するものである。
<ユーグレナ>
実施形態において、「ユーグレナ」とは、分類学上、ユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種及びユーグレナ科(Euglenaceae)の近縁種を含む。
ここで、ユーグレナ属(Euglena)とは、真核生物のうち、エクスカバータ、ユーグレノゾア門、ユーグレナ藻綱、ユーグレナ目、ユーグレナ科に属する生物の一群である。
ユーグレナ属に含まれる種として、具体的には、Euglena chadefaudii、Euglena deses、Euglena gracilis、Euglena granulata、Euglena mutabilis、Euglena proxima、Euglena spirogyra、Euglena viridisなどが挙げられる。
ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis),特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株を用いることができるが、そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM−ZK株(葉緑体欠損株)や変種のE. gracilis var. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株、Astasia longa等のその他のユーグレナ類であってもよい。
ユーグレナ属は、池や沼などの淡水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ属を使用してもよい。
ユーグレナ属は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
ユーグレナ細胞の培養において、培養液としては、例えば、窒素源,リン源,ミネラルなどの栄養塩類を添加したpH2〜6の培養液、例えば、改変Cramer−Myers培地を用いることができる。そのほか、公知のHutner培地,Koren−Hutner培地を用いてもよい。ユーグレナは、明培養されても暗培養されてもよい。
<パラミロン>
「パラミロン(paramylon)」とは、約700個のグルコースがβ−1,3−結合により重合した高分子体(β−1,3−グルカン)で多孔質であり、ユーグレナ属が含有する貯蔵多糖である。パラミロン粒子は、扁平な回転楕円体粒子であり、β−1,3−グルカン鎖がらせん状に絡まりあって形成されている。
β-グルカンとは、β-グルコースが(1→3),(1→4)および(1→6)の結合で連なった多糖類の一群をいい、セルロース、ラミナラン、リケナン、穀類のβ-グルカン、カロース、ザイモザン等の酵母細胞壁由来のβ-グルカン、クレスチン、レンチナン、ジゾフィラン、グリフォラン、パキマン、マンネンタケ・アガリクス・ヤマブシタケ・カバノアナタケ・カワリハラタケ・メシマコブ由来のβ-グルカン等のキノコ由来のβ-グルカン、カードラン、ユーグレナ由来のパラミロン等を含む。
パラミロンは、β-グルカンの中でも、水不溶性又は水難溶性の性質を備えている。
パラミロンは、ユーグレナを、グルコースを主体とした培地上で培養することにより、その細胞内に蓄積させることができる。ユーグレナ細胞中のパラミロンは、細胞内では直径数μm程度の大きさの粒子状の形態をとり、細胞を破砕することにより簡単に取り出すことができると共に、アルコールやトルエン処理により精製することができる。
パラミロンは、すべての種,変種のユーグレナ細胞内に顆粒として存在し、その個数,形状,粒子の均一性は、種により特徴がある。
パラミロンは、グルコースのみからなり、E. gracilis Zの野生株と葉緑体欠損株SM-ZKから得られたパラミロンの平均重合度は、グルコース単位で約700である。
パラミロンは、水,熱水には不溶性であるが、希アルカリ,濃い酸,ジメチルスルホキシド,ホルムアルデヒド,ギ酸に溶ける。
パラミロンの平均密度は、E. gracilis Zでは1.53、E. gracilis var. bacillaris SM-L1では1.63である。
パラミロンは、粉末図形法を用いたX線解析によれば、3本の直鎖状β−1,3−グルカンが右巻きの縄のようにねじれあったゆるやかならせん構造をとっている。このグルカン分子がいくつか集まってパラミロン顆粒を形成する。パラミロン顆粒は結晶構造部分が非常に多く約90%を占め、多糖類の中で最も結晶構造率の高い化合物である(ユーグレナ生理と生化学,北岡正三郎編,学会出版センター)。
なお、パラミロン(株式会社ユーグレナ製)の粒度分布は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定したときのメジアン径が、1.5〜2.5μmである。
パラミロン粒子は、培養されたユーグレナ細胞から任意の適切な方法で単離及び微粒子状に精製され、通常、粉末体として提供されている。
例えば、パラミロン粒子は、(1)任意の適切な培地中でのユーグレナ細胞の培養、(2)当該培地からのユーグレナ細胞の分離、(3)分離されたユーグレナ細胞からのパラミロンの単離、(4)単離されたパラミロンの精製、および必要に応じて(5)冷却及びその後の凍結乾燥によって得ることができる。
パラミロンの単離は、例えば、大部分が生物分解される種類の非イオン性又は陰イオン性の界面活性剤を用いて行われる。パラミロンの精製は、実質的には単離と同時に行われる。
なお、ユーグレナからのパラミロンの単離および精製は周知であり、例えば、E. Ziegler, "Die naturlichen und kunstlichen Aromen" Heidelberg, Germany, 1982, Chapter 4.3 "Gefriertrocken"、DE4328329、又は特表2003−529538号公報に記載されている。
<パラミロンの加工品>
パラミロンの加工品としては、公知の種々の方法によりパラミロンを化学的又は物理的に処理して得た水溶性パラミロン、アモルファスパラミロン、エマルジョンパラミロン等が含まれる。
(アモルファスパラミロン)
パラミロンの加工品としては、例えば、アモルファスパラミロンが挙げられる。
アモルファスパラミロンとは、ユーグレナ由来の結晶性パラミロンをアモルファス化した物質である。
アモルファスパラミロンは、ユーグレナから公知の方法で生成された結晶性のパラミロンに対する相対結晶度が、1〜20%である。
但し、この相対結晶度は、特開2011−184592号記載の方法により求めたものである。
つまり、アモルファスパラミロン及びパラミロンを、それぞれ、粉砕機(Retsh社製ボールミルMM400)にて、振動数20回/秒で5分間粉砕後、X線回折装置(スペクトリス社製H’PertPRO)を用い、管電圧45KV、管電流40mAにて、2θが5°乃至30°の範囲でスキャンを行い、パラミロンとアモルファスパラミロンの2θ=20°の付近の回折ピークPc,Paを得る。
このPc,Paの値を用い、アモルファスパラミロンの相対結晶度を、
アモルファスパラミロンの相対結晶度=Pa/Pc×100(%)
により算出する。
アモルファスパラミロンは、特開2011−184592号記載の方法に従い、結晶性のパラミロン粉末を、アルカリ処理した後に酸で中和し、その後洗浄、水分除去工程を経て、乾燥を行うことにより調製される。
パラミロンの加工品としては、そのほか、公知の種々の方法によりパラミロンを化学的又は物理的に処理して得た水溶性パラミロン、硫酸化パラミロン等や、パラミロン誘導体も含まれる。
(エマルジョンパラミロン)
エマルジョンパラミロンとは、その加工方法及び物性が乳化物に類似していることから、エマルジョンパラミロンとも呼ばれる物質であって、パラミロンに水を加えて得た流体を超高圧で細孔ノズルから噴出させて被衝突物に衝突させる衝突処理を行うことにより得られ、4倍以上の水と結合して膨潤した加工パラミロンである。
エマルジョンパラミロンは、粉体等の固体に水溶性溶媒を加えたスラリーを、細孔ノズルから超高圧で噴出させて被衝突物に衝突させる公知の物性改質装置(例えば、特開2011−88108号公報、特開平6−47264号公報記載の装置)で、噴出時のノズル圧力245MPaで、1回以上衝突処理を行うことにより得ることができる。
エマルジョンパラミロンは、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で粒度を測定したときのメジアン径が、パラミロンの5倍以上であり、7μm以上であって、光学電子顕微鏡により、粒子が、隣接する粒子と付着していることが観察され、パラミロンに対して4倍以上の水と結合して膨潤している。
原料パラミロンと水を混合したスラリーは、さらさらした流体であるが、エマルジョンパラミロンは、パラミロンが水分子中に分散して、粘度が増加して粘性を有し、触ったときに手に付着するような粘着性と、弾力性を有し、糊のような触感を備えている。
なお、その処理方法と物性から、得られた加工パラミロンを本明細書においてエマルジョンパラミロンと呼んでいるが、エマルジョン化しているか否かは不明であり、パラミロンが水と結合して膨潤している状態である。
<パラミロン誘導体>
パラミロン誘導体としては、公知の種々の方法によりパラミロンを化学的に処理して得た硫酸化パラミロンやパラミロンエステル誘導体等が含まれる。
(硫酸化パラミロン)
本実施形態の硫酸化パラミロンは、多糖類を硫酸化する公知の方法により調製することが可能であり、例えば、硫酸を用いる方法、クロルスルホン酸を用いる方法、スルファートリオキサイドを用いる方法などから選択すればよい。そのなかでも、ルイス塩基との組み合わせで用いる、クロルスルホン酸法やスルファートリオキサイドを用いる方法は、硫酸を用いる方法よりも多糖類の分解が少ないため、医療用途など、品質の安定性を確保する観点からみて好ましい。
硫酸化パラミロンは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのレトロウイルス感染症の治療等に有効であることが報告されており(特開平4−54125号公報)、再生セルロース繊維に、抗ウイルス性を付与することが可能となる。
(パラミロンエステル誘導体)
本実施形態におけるパラミロンエステル誘導体としては、側鎖にアルキルカルボニル基からなるエステル基を有するパラミロンエステル誘導体を用いることが可能である。
ここでパラミロンエステル誘導体は、特開2017−218566号公報に記載されているような、全ての水酸基が、同じアルキルカルボニル基により置換されたモノエステルであってもよい。つまり、パラミロンを構成する繰返し単位であるグルコースに含まれる3つの水酸基が、全て同じアルキルカルボニル基により置換されている。
アルキルカルボニル基の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、バレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、及びラウロイル基などを挙げることができる。
パラミロンエステル誘導体の製造方法は、パラミロンとカルボン酸とを反応させて、パラミロンにおける複数の水酸基の少なくとも1つをエステル化するエステル化工程を少なくとも含む方法であればよい。このとき、カルボン酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、及びラウリン酸を用いることができる。エステル化工程が、無水トリフルオロ酢酸の存在下、40℃〜60℃で、1時間〜6時間行われ、パラミロンエステル誘導体を得ることができる。
また、その他のパラミロンエステル誘導体として、パラミロンにN,N−ジメチルアミノエチル(DMAE)基、N,N−エチルアミノエチル(DMAE)基、2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニオプロピル(HAP)基、カルボキシメチル(CM)基などを導入して水溶性を付加したものを用いてもよい。これらのパラミロン誘導体は、大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌、腸炎菌に、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス(皮膚真菌症)のような真菌に対する抗菌活性を有していることが報告されている(宮武ら、「原生動物の作り出すバイオ粒子、パラミロンの性質と利用」、粉体工学会誌、Vol.32,No.8,pp.566−572,1995)。
<母体となる再生セルロース繊維>
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維は、再生セルロース繊維を母体とするものである。
再生セルロース繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル、アセテート繊維などが例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(レーヨン)
レーヨンとは、ビスコース法によって得られるビスコースレーヨンであり、セルロースを水酸化ナトリウムなどのアルカリと二硫化炭素に溶解させてビスコースとし、ビスコースを酸性溶液中に押し出すことで紡糸して得られる繊維である。なお、本明細書において、レーヨンは、ポリノジック(ポリノジックレーヨン)を含むものとする。
(キュプラ)
キュプラとは、銅アンモニアレーヨンとも呼ばれる再生繊維の一種であり、セルロースを銅アンモニア溶液(シュバイツァー溶液)に溶解させ、セルロースを溶解させた銅アンモニア溶液を酸性溶液に押し出すことで紡糸して得られる繊維である。
(リヨセル)
リヨセルとは、溶剤紡糸法によって得られる再生繊維の一種であり、溶剤紡糸セルロース繊維とも呼ばれる。リヨセルは、木材パルプ等を有機溶剤(N−メチルモルフォリン−N−オキサイド、CAS登録番号:7529−22−8)等に溶解させ、フィルターでろ過したのち、不純物を取り除いて紡糸して得られる繊維である。
(アセテート繊維)
アセテート繊維とは、木材パルプなどのセルロースと酢酸を反応させて得られたアセチルセルロース(酢酸セルロース)から製造される繊維である。アセテート繊維は、アセチルセルロースをアセトンに溶解させ、紡糸して得られる繊維である。
<パラミロン含有再生セルロース繊維>
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維は、母体となる繊維に、パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質が埋入しており、前記母体となる繊維が、再生セルロース繊維である。
ここで、母体となる再生セルロース繊維は、レーヨン、キュプラ、リヨセル及びアセテート繊維を含む群から選択される少なくとも1種以上である。
また、パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質は、ユーグレナ由来であると好ましい。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維は、パラミロン含有再生セルロース繊維の重量を100重量%としたときに、パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質の添加量が、0.1重量%以上10重量%以下であると好ましい。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維は、繊度が0.1〜10.0dtexであることが好ましく、0.5〜5.0dtexであるとより好ましく、1.0〜2.0dtexであると特に好ましい。繊度が0.1dtex未満であると、延伸時に単繊維切れが発生しやすい傾向にある。繊度が10.0dtexを越える場合、衣料用途には向かなくなるが、カーペット等のインテリア製品用であれば10.0dtexを越える太繊度の繊維でも使用することが可能である。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維は、乾強度が1.0cN/dtex以上であることが好ましく、1.5cN/dtex以上であることがより好ましく、2.0cN/dtex以上であることが特に好ましい。
また、本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維の乾伸度は、15%以上であることが好ましく、17%以上であることがより好ましく、18%以上であることが特に好ましい。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維は、白色度が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維は、水膨潤度が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、92%以上であることが特に好ましい。
また、本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維の染着度は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが特に好ましい。
<パラミロン含有再生セルロース繊維の製造方法>
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維の製造方法は、パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質と、セルロース成分と、を含有する紡糸液を調製する紡糸液調製工程(ステップS1)と、前記紡糸液を紡糸する紡糸工程(ステップS2)と、を行うことを特徴とする。
以下、各工程について図1を参照して詳細に説明する。
(紡糸液調製工程)
紡糸液調製工程では、パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質と、セルロースと、を含有する紡糸液を調製する(ステップS1)。
ここで、紡糸液は、母体となる再生セルロース繊維の種類に応じて、選択すればよく、レーヨンの場合はビスコースを、キュプラの場合はセルロースを溶解させた銅アンモニア溶液を、リヨセルの場合はセルロースを溶解させたN−メチルモルフォリン−N−オキサイドを、アセテート繊維の場合はアセチルセルロースを溶解させたアセトンを含む紡糸液を用いればよい。
紡糸液中のセルロース成分及びパラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質の合計重量を100重量%としたときに、パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質の重量が、0.1重量%以上10重量%以下であると好適である。
(紡糸工程)
紡糸工程では、紡糸液調製工程で調整した紡糸液を紡糸する(ステップS2)。
紡糸の方法は、公知の再生セルロース繊維の紡糸方法と同様に行うことが可能であり、再生セルロース繊維の種類や、目的とする繊維の特性に応じて条件等を適宜選択して行えばよい。
<パラミロン含有レーヨンの製造方法>
以下、ビスコース法を用いるパラミロン含有レーヨンの製造方法について詳細に説明する。
本実施形態のパラミロン含有レーヨンの製造方法は、ビスコースを調製するビスコース調製工程(ステップS11)と、前記ビスコースにパラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質を添加して紡糸液を調製する紡糸液調製工程(ステップS12)と、前記紡糸液を紡糸する紡糸工程と(ステップS13)、を行うことを特徴とする。
以下、各工程について図2を参照して詳細に説明する。
(ビスコース調製工程)
ビスコース調製工程では、公知の方法によってビスコースを調製する(ステップS11)。
例えば、まず、溶解パルプを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬する。パルプはアルカリ繊維素となって容積が4〜5倍に膨張する。これを圧搾して過剰のアルカリを搾り取り、粉砕機に入れて粉砕してかき混ぜる。これを老成させ、二硫化炭素と反応させてザンテートを形成する。ザンテートに希薄水酸化ナトリウム水溶液を加え、液体状にしたものをビスコースとする。
ビスコースとしては、例えば、セルロースを7〜10質量%、水酸化ナトリウムを5〜8質量%、二硫化炭素を2〜3.5質量%を含むビスコースを用いることができる。また、ビスコースは、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、二酸化チタン等の添加剤を含んでもよい。ビスコースの温度は19〜23℃に保持するのが好ましい。
(紡糸液調製工程)
紡糸液調製工程では、ビスコースにパラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質を添加して紡糸液を調製する(ステップS12)。
パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質とビスコースとは、公知の任意の方法によって混合することができ、混合方法は特に限定されるものではなく、インジェクション型またはホモミキサー型の装置を用いて行えばよい。
このとき、パラミロンを水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液に溶解してから、ビスコースに添加すると好適である。
添加および混合の時期についても適宜調整すればよく、ビスコースを脱泡後または脱泡前に、パラミロン等を添加して混合を行ってもよく、パラミロン等の添加及び混合後に脱泡を行ってもよい。
パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質とビスコースとの混合比率は適切に設定すればよい。例えば、紡糸液中のセルロース成分とパラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質の合計重量を100重量%としたときに、パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質の重量が、0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上5重量%以下であることがより好ましく、2.5重量%以上5.0重量%以下であることが特に好ましい。
セルロース成分に対するパラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質の添加量が多いほど繊維の強度や保湿作用などの機能性が向上するため好ましいが、添加量が多すぎると濾過性が悪くなったり、紡糸性に悪影響を与えたり、繊維強度が低下してしまう可能性がある。
(紡糸工程)
紡糸工程では、紡糸液調製工程で調整した紡糸液を紡糸する(ステップS13)。
紡糸の方法は、公知のビスコース法と同様の方法にしたがって行うことができる。具体的には、紡糸液をノズルから押し出して、紡糸浴の中でセルロースを再生させ、延伸をかけることで、繊維軸方向を整え、繊維長に合わせて切断をする。
紡糸浴(ミューラー浴)としては、硫酸、硫酸亜鉛、芒硝(硫酸ナトリウム)を含む紡糸浴を用いて、温度を45〜60℃とすることが好ましい。
紡糸ノズルとしては、特に限定されず、円形ノズルを用いてもよく、異形ノズルを用いてもよい。また、紡糸ノズルの選定は、目的とする生産量にもよるが、直径0.05〜0.12mmのホールを1000〜20000ホール有するものが好ましい。
紡糸ノズルから、紡糸液を紡糸浴中に押し出して紡糸し、凝固再生させる。紡糸速度は35〜75m/分の範囲が好ましい。また、延伸率は30〜100%が好ましい。ここで、「延伸率」とは、延伸前の糸条の長さを100%としたとき、延伸後の糸条の長さを何%伸ばすかを示すものである。倍率で示すと、延伸前が1、延伸後は1.30〜1.50倍となる。
(精練工程)
紡糸工程を行った後、精練処理を行う。精練処理は、公知の方法にしたがい行えばよい。例えば、捲縮、水洗、脱硫、漂白、水洗、仕上げの順で行うとよいが、これらの処理に限定されるものではなく、各処理を適宜省略してもよい。その後、必要に応じて圧縮ローラーや真空吸引等の方法で余分な油剤、水分を繊維から除去した後、乾燥処理を施す。
<パラミロン含有再生セルロース繊維の用途>
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維は、各種用途に用いることが可能である。このとき、パラミロン含有再生セルロース繊維は、トウ、フィラメント、不織布等の長繊維状、湿式抄紙用原綿、エアレイド不織布用原綿、カード用原綿等の短繊維状のいずれの形態で用いてもよい。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維を用い、トウ、フィラメント、紡績糸、中綿(詰め綿)、紙、不織布及び織編物等の繊維構造物を製造することも可能である。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維を含む繊維構造物は、パラミロンを含有させることによって、後述するように各種性能を発揮することができる。
このとき、繊維構造物は、パラミロン含有再生セルロース繊維のみで構築されていてもよいが、他の繊維と組み合わせることも可能である。
例えば、パラミロン含有再生セルロース繊維と、その他の再生セルロース繊維、コットン、麻、ウールなどの天然繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維、他の繊維と混紡してもよい。このような紡績糸は、織物や編物に加工して被服などに用いることが可能である。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維を含む繊維構造物の、具体的な例としては、被服、衛生用品(マスク、手袋、エプロン、帽子、枕カバー、座席の頭部カバー、ウェットティッシュ、ふきん、靴の中敷、靴の脱臭、衣類カバーなど)、壁の中の建材、壁紙、ガーゼ、包帯、めん棒、寝具(枕カバー、シーツ、布団カバー、枕または布団の綿など)、インテリア用品(カーテン、障子、ソファカバー、玄関マット、クッションの中の綿など)、台所または風呂またはトイレ用品(ウェットティッシュ、便座カバー、便座マット、浴槽マット、台所マットなど)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本実施形態のパラミロン含有再生セルロース繊維は、パラミロン、パラミロンの加工品及びパラミロン誘導体を含む群から選択される少なくとも1種以上の物質が有する保湿性(保水性)、抗菌性、抗ウイルス性などの機能性を利用して、美容用途、化粧料用途、医療用途などの用途に用いることが可能である。
例えば、保湿性レーヨン繊維などの保湿性再生セルロース繊維を用いた保湿性不織布シートや、該保湿性不織布シートに化粧用組成物を含浸させた化粧用シートとして用いることが可能である。
また、抗菌性レーヨン繊維などの抗菌性再生セルロース繊維を含む抗菌性不織布シートや、抗ウイルス性レーヨン繊維などの抗ウイルス性再生セルロース繊維を含む抗ウイルス性不織布シートとして用いることが可能である。
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例では、再生セルロース繊維にパラミロンを埋入させたパラミロン含有再生セルロース繊維を製造し、物性の検討を行った。具体的には、レーヨンに対して異なる割合でパラミロンを埋入させたパラミロン含有レーヨンを製造して、強度、伸度、色合い(白色度)、水膨潤度、染着率などの測定を行った。
<実施例1>
パラミロンとして、ユーグレナ・グラシリス由来のパラミロン粉末((株)ユーグレナ製)を用いた。
原料パルプを約18%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、圧搾・粉砕によりアルカリセルロースを得た。これを老成した後、二硫化炭素を反応させ、セルロースザンテートを得、次いで希釈水酸化ナトリウム水溶液で溶解し、ビスコースを調製した。このビスコースは、セルロース含有率8.6%、アルカリ含有率5.0%で、粘度が50秒(落球式)であった。
紡糸直前のビスコースに、パラミロン粉末を0.1wt%になるように混合した濃度1.0wt%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、均一に混合して紡糸液を調製した。このとき、パラミロン粉末の添加量は、ビスコース中のパラミロン粉末とセルロースの合計重量に対して0.1重量%(wt%)となるようにした。
ビスコースにパラミロン粉末が分散した紡糸液を、ノズル径0.06mm、孔数13000の紡糸口金から、紡糸速度60m/分にて、凝固・再生浴中に紡糸した。凝固・再生浴は、硫酸95g/L、芒硝350g/L、硫酸亜鉛12.5g/Lを含有するものであり、その液温は47℃とした。紡糸後は、常法の二浴緊張紡糸法により延伸した後、切断し、繊度1.7デシテックス(T)で繊維長51mmのパラミロン含有レーヨンを得た。
<実施例2>
パラミロン粉末の添加量を、ビスコース中のパラミロン粉末とセルロースの合計重量に対して0.5重量%とした以外は、実施例1と同様の方法に従って、実施例2のパラミロン含有レーヨンを得た。
<実施例3>
パラミロン粉末の添加量を、ビスコース中のパラミロン粉末とセルロースの合計重量に対して1.0重量%とした以外は、実施例1と同様の方法に従って、実施例3のパラミロン含有レーヨンを得た。
<実施例4>
パラミロン粉末の添加量を、ビスコース中のパラミロン粉末とセルロースの合計重量に対して2.5重量%とした以外は、実施例1と同様の方法に従って、実施例3のパラミロン含有レーヨンを得た。
<実施例5>
パラミロン粉末の添加量を、ビスコース中のパラミロン粉末とセルロースの合計重量に対して5.0重量%とした以外は、実施例1と同様の方法に従って、実施例3のパラミロン含有レーヨンを得た。
<実施例6>
パラミロン粉末の添加量を、ビスコース中のパラミロン粉末とセルロースの合計重量に対して10.0重量%とした以外は、実施例1と同様の方法に従って、実施例3のパラミロン含有レーヨンを得た。
<比較例1>
パラミロン粉末を添加しないこと以外は、実施例1と同様の方法に従って、比較例1のレーヨン繊維を得た。
<試験1 物性測定>
(試験方法)
繊度及び乾強伸度の測定は、強伸度測定装置(LENZING社製、vibro skop micro)を用い、JIS L 1015に準じた試験で行った(温度20±2℃、湿度65±2%の測定環境条件)。
また、強力CVとは、乾強度のn=20の数値の標準偏差を平均値で割った値である。CV値が小さい程、強度のばらつきが少なく、生産上の変動が少ないこととなる。
繊維の色は、JIS Z 8722にて定義されている拡散照明垂直受光方式に準拠した日本電色製「SPECTROPHOTOMETER NF333」を用いて、JIS Z 8729に規定されている「L***表色系」に従って測定した。
また、ハンター白色度は、測色色差計(日本電色工業)を用いてL*、a*及びb*値に基づいて、下記式を用いて算出した。
ハンター白色度=100−√〔(100−L*)+(a*2+b*2)〕
水膨潤度は、20±2℃の水200ml繊維約2gを浸漬し20±2℃の恒温槽中に15分間放置した後、遠心力1000〜1050Gにて10分間遠心分離機を使用し脱水する。脱水した重量(W)を測定した。次に105℃の熱風乾燥機を用いて恒量になるまで乾燥させ、その重量(W)を測定し、次式により水膨潤度を求めた。
水膨潤度(重量%)=100×(W−W)/W
染着率は、水分平衡に達した繊維3gを100倍量の水を70℃とした中で30分間撹拌しながら洗浄して脱水する。この状態で元の繊維質量に対して5倍になるよう水を加え、次の染色条件で染色する。
染料:C.I.ダイレクトブルー1、被染物に対して0.2%
助剤:無水硫酸ナトリウム、被染物に対して20%
浴比:1:100
温度:45±1℃
時間:20分
染色した残液を、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて吸光度を測定し、別に求めた検量線から染着率を求めた。
油脂分は、繊維約5gの絶乾重量を求め、ソックスレー抽出器に投入した後、附属のフラスコにエタノール及びベンゼンの混合液(容量比1:2)100〜150mlを入れ、弱く沸騰を保つ程度に3時間加熱し油脂分を抽出した。
(試験1の結果)
各種物性測定結果を図3に示す。
実施例1〜6のパラミロン含有レーヨンは、乾強度が比較例1のレーヨン繊維と同程度であり、良好な強度を有していた。
パラミロンの添加量が増加するにつれて乾強度が低下しており、強度の観点からは、パラミロン粉末の添加量を10.0重量%以下とすることが好ましいことがわかった。
実施例1〜5のパラミロン含有レーヨンは、乾伸度が比較例1のレーヨン繊維よりも向上しており、優れた伸び特性を備えていた。
実施例4及び5のパラミロン含有レーヨンで乾伸度が特に向上しており、伸び特性の観点からは、パラミロンの添加量を2.5重量%以上5.0重量%以下とすることが好ましいことがわかった。
実施例1〜6のパラミロン含有レーヨンにおいて、強力CVの値から、強度ムラが無く安定した繊維であることがわかった。
実施例1〜6のパラミロン含有レーヨンは、白色度が比較例1のレーヨン繊維と同程度であり、良好な白色度を有していた。
実施例1〜6のパラミロン含有レーヨンは、水膨潤度が比較例1のレーヨン繊維よりも大きく向上しており、優れた水膨潤性を有していた。
実施例1〜6のパラミロン含有レーヨンは、染着度が比較例1のレーヨン繊維よりも大きく向上しており、染料によって染めやすいことがわかった。
実施例4〜6のパラミロン含有レーヨンは、油脂分が比較例1のレーヨン繊維よりも大きくなっており、ヌメリ感やソフトな風合いを有する繊維であることがわかった。
(試験1のまとめ)
試験1の結果から、再生セルロース繊維であるレーヨンに、パラミロンを埋入させることで、強度を低下させることなく、伸度、色合い、水膨潤度、染着度、油脂分などの各種物性値を向上させることができることが示された。
<試験2 パラミロン含有レーヨンの電子顕微鏡観察>
パラミロン含有レーヨンの微細構造及び表面構造の観察を行った。
(観察試料)
・比較例1:パラミロン0%含有レーヨン
・実施例5:パラミロン5%含有レーヨン
・実施例6:パラミロン10%含有レーヨン
・実施例7:パラミロン10%含有レーヨン(シート状)
(観察方法)
1.アルミ試料台に両面カーボンシートを用いて綿状の試料を接着した
2.エアダスターを用いて試料台上の余分なごみを除去した
3.オスミウム蒸着器により試料をコーティングした
4.走査型電子顕微鏡により試料を観察した
(結果)
結果を図4乃至図7に示す。各試料の電子顕微鏡写真から、パラミロンを添加することによって、繊維の表面構造に、電子顕微鏡で観察しうるレベルでの構造の変化はみられなかった。すなわち、パラミロン含有した場合であっても、レーヨン繊維は良好な形態を維持していることが判明した。
<試験3 細菌に対する増殖阻害実験>
パラミロン含有レーヨンの抗菌または殺菌活性有無の確認を目的として試験を行った。
(試験条件)
各菌株培養液中にパラミロンレーヨン等を浸潤して培養した。培養後の濁度を測定した。
(使用した菌株)
・菌株1:Bacillus cereus(NBRC 3001)
・菌株2:Proteus vulgaris(NBRC 3045)
・菌株3:Staphylococcusaureus subsp. aureus (NBRC 3060)
・菌株4:Bacillus megaterium (NBRC 3970)
・菌株5:Lactococcus lactis subsp. lactis (NBRC 100933)
(培地)
・菌株1−4:ポリペプトンを主とする富栄養培地
・菌株5:トリプチケースソイブイヨン培地(Trypticase soy broth)を主とする富栄養培地
(培養条件)
各菌株の培養は、NITEバイオテクノロジーセンター(NBRC)が開示している培養条件に従って行った。
培養温度:30℃
菌株1−4は150rpmにて振とう培養し、菌株5は静置培養した。
・比較例1のレーヨン繊維(レーヨン100%)及び実施例6のパラミロン10%含有レーヨンは、オートクレーブで滅菌済みのものを約0.5g培地に添加した。
・無添加(control)は、繊維を添加せずに培養を行った。
(測定方法)
吸光光度計による濁度測定(λ=600nm)を行った。
(試験3の結果)
結果を図8に示す。菌株3(S.aureus)および菌株4(B.megaterium)に対して、実施例6のパラミロン10%含有レーヨンは、増殖を阻害した。

Claims (11)

  1. 母体となる繊維に、パラミロンが埋入しており、
    前記母体となる繊維が、レーヨンであり、
    パラミロン含有レーヨン繊維の重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの添加量が、0.5重量%以上5重量%以下であり、
    JIS L 1015に準拠して測定される乾伸度が18%以上であることを特徴とするパラミロン含有レーヨン繊維。
  2. 母体となる繊維に、パラミロンが埋入しており、
    前記母体となる繊維が、レーヨンであり、
    パラミロン含有レーヨンの重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの添加量が、0.5重量%以上5重量%以下であり、
    以下の式で測定される水膨潤度が90重量%以上であることを特徴とするパラミロン含有レーヨン繊維。
    水膨潤度(重量%)=100×(W −W )/W
    ここで、W は、20±2℃の水200mlに繊維約2gを浸漬し20±2℃の恒温槽中に15分間放置した後、遠心力1000〜1050Gにて10分間遠心分離機を使用し脱水した重量であり、W は、その後に105℃の熱風乾燥機を用いて恒量になるまで乾燥させた重量である
  3. 前記パラミロンが、ユーグレナ由来であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパラミロン含有レーヨン繊維。
  4. パラミロン含有レーヨン繊維の重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの添加量が、2.5重量%以上重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパラミロン含有レーヨン繊維。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパラミロン含有レーヨン繊維を含む被服。
  6. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパラミロン含有レーヨン繊維を含む保湿性繊維。
  7. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパラミロン含有レーヨン繊維を含む抗菌性繊維。
  8. ビスコースを調製するビスコース調製工程と、
    前記ビスコースにパラミロンを添加して紡糸液を調製する紡糸液調製工程と、
    前記紡糸液を紡糸する紡糸工程と、を行い、
    前記紡糸液中のセルロース成分及び前記パラミロンの合計重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの重量が、0.5重量%以上5重量%以下であり、
    得られる繊維のJIS L 1015に準拠して測定される乾伸度が18%以上であることを特徴とするパラミロン含有レーヨン繊維の製造方法。
  9. ビスコースを調製するビスコース調製工程と、
    前記ビスコースにパラミロンを添加して紡糸液を調製する紡糸液調製工程と、
    前記紡糸液を紡糸する紡糸工程と、を行い、
    前記紡糸液中のセルロース成分及び前記パラミロンの合計重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの重量が、0.5重量%以上5重量%以下であり、
    得られる繊維の以下の式で測定される水膨潤度が90重量%以上であることを特徴とするパラミロン含有レーヨンの製造方法。
    水膨潤度(重量%)=100×(W −W )/W
    ここで、W は、20±2℃の水200mlに繊維約2gを浸漬し20±2℃の恒温槽中に15分間放置した後、遠心力1000〜1050Gにて10分間遠心分離機を使用し脱水した重量であり、W は、その後に105℃の熱風乾燥機を用いて恒量になるまで乾燥させた重量である
  10. 前記パラミロンが、ユーグレナ由来であることを特徴とする請求項8又は9に記載のパラミロン含有レーヨン繊維の製造方法。
  11. 前記紡糸液中の前記セルロース成分及び前記パラミロンの合計重量を100重量%としたときに、前記パラミロンの重量が、2.5重量%以上重量%以下であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載のパラミロン含有レーヨン繊維の製造方法。
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