添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
<システム構成>
図1は、実施形態に係るモーション制御システムのシステム構成例を示す図である。モーション制御システム1は、モーション制御装置10と、複数の制御対象装置20とを含む。なお、モーション制御システム1には、必ずしも複数の制御対象装置20が含まれている必要はなく、1つの制御対象装置20のみが含まれる構成としてもよい。
制御対象装置20は、具体的には、サーボモータ(サーボドライバを含む)及びステッピングモータ等のモータである。モーション制御装置10は、複数の制御対象装置20を同期させながら制御することで、ベルトコンベアの回転制御、多軸ロボットの軸制御、回転テーブルの位置決め制御などを行う。1つの制御対象装置20は1つの「軸」を制御する。例えば、6軸ロボットとは、モータである制御対象装置20を6個備えたロボットを意味する。
制御対象装置20に制御指令を与えるための通信インターフェース規格として、例えば、EtherCAT(登録商標)、RTEX(登録商標)(Realtime Express(登録商標))及びMECHATROLINK(登録商標)等が知られている。モーション制御装置10には、異なる通信インターフェース規格の制御対象装置20を混在させて接続することが可能である。
モーション制御装置10は、非リアルタイムOS及びリアルタイムOSがインストールされた汎用的な情報処理装置である。非リアルタイムOSの具体例として、例えば、Windows(登録商標)、macOS(登録商標)等が挙げられる。また、リアルタイムOSは、例えば、RTX(Real Time Extension)、RTH(Real Time Hypervisor)等が挙げられる。また、汎用的な情報処理装置の具体例としては、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)、ノート型PC、サーバ等が挙げられる。
ここで、サーボモータやステッピングモータの制御に用いられる従来のモーションコントローラは、高精度なリアルタイム性能を確保するために、モーション制御に特化した専用のハードウェアとして提供されることが一般的である。また、モーション制御の内容をユーザがプログラミングするためのGUI(Graphical User Interface)を提供するプログラムについては、モーションコントローラに接続されたパーソナルコンピュータにより提供されることが一般的である。
一方で、本実施形態に係るモーション制御装置10は、モーション制御の内容をユーザがプログラミングするためのGUIを非リアルタイムOS上で提供し、プログラミングされた内容に基づいて制御対象装置20を実際に制御する処理をリアルタイムOS上で行う。これにより、専用のハードウェアによるモーションコントローラを利用した場合と同様の高精度なモーション制御を汎用的な情報処理装置のみで実現する。
<モーション制御装置の概要>
図2は、モーション制御装置10の概要を説明するための図である。制御指示部110は、非リアルタイムOS100上で動作し、制御対象装置20が複数のモーション制御サイクルに渡って行うべき動作を示す制御指令を1又は複数発行することで、制御対象装置20を制御する。制御指示部110は、モーション制御システム1を用いるユーザが作成するプログラムを含んでおり、当該プログラムは、制御対象装置20に対して発行する制御指令、制御指令を発行する順序及びタイミング等が、所定のプログラミング言語を用いて記述されている。ユーザが作成するプログラムの具体例としては、例えば、FAを実現するためのベルトコンベア及びアーム等の制御を行うプログラム、ロボット操作を行うプログラム等が挙げられる。非リアルタイムOS100では、複数の制御指示部110を動作させることが可能である。
制御指令は、制御指令の識別子(ID等)と指令値とを含む。制御指令の具体例としては、例えば、PTP(Point to Point)動作(指定した地点に移動させる動作)、JOG動作(指定した速度でモータを動作)、直線補間によるPTP動作、円弧補間によるPTP動作、加速時間を指定するJOG動作、行動時間を指定するJOG動作等が挙げられる。制御指令の識別子は、制御指令の内容を具体的に特定する情報(例えば円弧補間によるPTP動作であることを示す識別子等)である。指令値は、動作目標を具体的に示すパラメータであり、例えば円弧補間によるPTP動作の場合、移動先の地点を示す値、移動速度、回転半径等である。制御指示部110で発行された制御指令は、後述するチャネルを用いて連携部310に通知される。
制御指示部110での制御指令の発行は、ユーザが作成するプログラムにおいてAPI(Application Programming Interface)関数を呼び出すことで行われる。また、指令値の指定は、API関数の引数(argument)に値を設定することで行われる。API関数は、制御指令ごとに1つ用意されており、例えばPTP動作に対しては「startpos()」というAPI関数が用意されている。本実施形態では、制御指示部110で呼び出されたAPI関数及び当該API関数に設定された引数を示す情報を、「API情報」と言う。なお、本実施形態では、API情報を、「制御指令情報」と呼んでもよい。
連携部310は、制御指示部110から通知されたAPI情報を一時的に蓄積するためのFIFOキュー(以下、「APIバッファ」と言う。)を備えている。連携部310は、制御指示部110から受け取った複数のAPI情報を一旦APIバッファ340に蓄積する。また、連携部310は、APIバッファ340からAPI情報を1つずつ取り出して定周期処理部360に渡す。つまり、連携部310は、キューを利用して定周期処理部360との間でAPI情報の受渡を行う。
定周期処理部360は、リアルタイムOS300上で動作し、連携部310から通知された制御指令に基づいて、モーション制御サイクルごとに制御対象装置20に実行させる動作を示す補間指令を算出する。また、定周期処理部360は、算出した補間指令をモーション制御サイクルに従って制御対象装置20に送信することで、制御対象装置20をモーション制御させる。1つのモーション制御サイクルは、例えば0.5msや1msといった単位である。制御対象装置20は、モーション制御サイクルごとに通知される補間指令に従って動作することで、最終的に、制御指令により指示される動作目標を達成する。
また、定周期処理部360は、定周期処理部360が認識可能な信号フォーマット(以下、「共通信号フォーマット」と言う。)と、制御対象装置20が認識可能な通信インターフェース規格に対応する信号フォーマットとの間でプロトコル変換を行う。なお、共通信号フォーマットは、「所定の信号フォーマット」の一例である。
制御指示部110及び連携部310は、制御指示部110及び連携部310が共通に書き込み及び読み出し可能なメモリ領域(以下、「チャネル」と言う。)を介して各種情報の受け渡しを行う。チャネルには、操作チャネル、APIチャネル及び状態チャネルが存在する。
「操作チャネル」は、制御指示部110及び連携部310が制御情報を送受信するために用いるチャネルである。操作チャネルは、全ての制御指示部110が共通に使用するチャネルであり、制御指示部110が1つ以上動作している間、1つの操作チャネルがモーション制御装置10内に存在する。本実施形態では、操作チャネルを、「操作用チャネル」と呼んでもよい。
「APIチャネル」は、API情報を制御指示部110から連携部310に伝えるために使用するチャネルである。APIチャネルは、制御指示部110ごとに少なくとも1つ存在する。本実施形態では、APIチャネルを、「制御指令用チャネル」と呼んでもよい。
「状態チャネル」は、制御対象装置20からのフィードバック情報を格納するチャネルである。状態チャネルは、複数の制御指示部110が共通に使用するチャネルであり、モーション制御装置10内には1又は複数の状態チャネルが存在する。フィードバック情報とは、制御対象装置20の状態(動作状態)を示す情報であり、制御対象装置20が内部に備えるセンサ又は制御対象装置20に接続されたセンサ等により測定される。フィードバック情報には、例えば、軸の位置、軸の回転速度、アームの位置、ベルトコンベアの位置、制御対象装置20の温度など、あらゆる情報が含まれる。制御指示部110は、状態チャネルを参照することで、制御対象装置20の動作状態を把握することができる。
本実施形態では、1つの制御指示部110に関連付けられたAPIチャネル、状態チャネルなどをまとめて「デバイス」と呼ぶ。後述するように、APIチャネルは、制御指示部110からデバイス作成要求があった際に、その制御指示部110専用のチャネルとしてメモリ上に確保される。一方、状態チャネルは、最初にその状態チャネルを利用する制御指示部110からデバイス作成要求があった際にメモリ上に確保され、確保された後は他の制御指示部110からも利用可能となる。
ここで、APIチャネル及び状態チャネルの具体例を説明する。図3は、APIチャネル及び状態チャネルの一例を説明するための図である。図3(a)に、APIチャネルに格納されるデータ例を示す。「デバイス識別子」には、生成されたデバイスを一意に識別するためのデバイス識別子が格納される。「モジュール識別子」については後述する。「制御指令識別子」には、制御指令の内容(例えば、位置決め(PTP)、JOG動作、直線補間、円弧補間等)を特定する情報が格納される。制御指令識別子は、制御指令の種別を一意に示す識別子であってもよいし、API関数を一意に示す識別子であってもよい。
「APIバッファ識別子」には、APIバッファ340を一意に特定するAPIバッファ識別子が格納される。「記録中フラグ」については後述する。「指令値」には、軸ごとの指令値が格納される。例えば制御指令識別子がPTP動作の場合、指令値には、移動先の位置を示す値等が軸ごとに格納される。「生存報告」については後述する。
図3(b)に、状態チャネルに格納されるデータ例を示す。「モジュール識別子」については後述する。「エラーコード」には、何らかのエラーが生じたことでフィードバック情報を状態チャネルに格納できない場合に、発生したエラーの内容を示すエラーコードが格納される。「フィードバック情報」には、制御対象装置20から取得されたフィードバック情報が、制御対象装置20ごと(軸ごと)に格納される。
<ハードウェア構成>
図4は、モーション制御装置10のハードウェア構成例を示す図である。モーション制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、HDD(HardDisk)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置13、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)14、入力操作を受け付ける入力デバイス15、及び情報の出力を行う出力デバイス16を有する。入力デバイス15は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス16は、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカ等である。
<機能構成>
図5は、モーション制御装置10の機能構成例を示す図である。共有メモリ200は、非リアルタイムOS100側の各機能部とリアルタイムOS300側の各機能部とから共通に参照及び書込み可能なメモリである。共有メモリ200には、操作チャネル、APIチャネル及び状態チャネルに対応するメモリ領域が確保される。制御指示部110及び連携部310は、当該メモリ領域にデータを書き込んだり、当該メモリ領域からデータを読み出したりすることでデータの送受信を行う。
(非リアルタイムOS)
非リアルタイムOS100上では、1以上の制御指示部110、及び1以上のデバイス管理部120が動作する。
制御指示部110は、制御指令を発行することで、制御対象装置20をモーション制御する機能を有する。制御指示部110には、ユーザ作成プログラム111、指令受付部112、及びIF(N側)部113が含まれる。
ユーザ作成プログラム111は、モーション制御装置10を利用するユーザが作成するプログラムである。ユーザは、ユーザ作成プログラム111において、非リアルタイムOS100側に用意されている多様なAPI関数を呼び出すことで、任意のモーション制御を実現するプログラムを作成することができる。なお、ユーザ作成プログラム111は予めモーション制御装置10にプリセットされていてもよい。すなわち、本実施形態において、ユーザ作成プログラム111は、必ずしもユーザが作成したプログラムに限定されない。
指令受付部112は、ユーザ作成プログラム111にAPI関数を提供する。具体的には、指令受付部112は、ユーザ作成プログラム111にて呼び出されたAPI関数についてのAPI情報を、APIチャネルに格納するようにIF(N側)部113に指示する機能を有する。
なお、指令受付部112は、制御指令ライブラリ1121A〜1121Z(以下、制御指令ライブラリA〜Zを特に区別しない場合は、単に制御指令ライブラリ1121と言う。)及び通信ライブラリ1122A〜1122Z(以下、通信ライブラリA〜Zを特に区別しない場合は、単に通信ライブラリ1122と言う。)のうち、ユーザ作成プログラム111が実際にプログラム内で参照するライブラリに含まれるAPI関数を提供する。
制御指令ライブラリ1121A〜1121Zは、それぞれ、制御対象装置20をモーション制御する処理を行うための複数のAPI関数のロードモジュール(実行ファイル)をひとまとめにしたライブラリである。また、通信ライブラリ1122A〜1122Zは、モーション制御装置10が制御対象装置20との間で行う通信に関する処理を行うための複数のAPI関数のロードモジュール(実行ファイル)をひとまとめにしたライブラリである。
なお、当該通信に関する処理とは、例えば、断線などで切断された通信路が復帰した際に、通信を再開するタイミングをユーザ作成プログラム111から指定する処理、モーション制御装置10及び制御対象装置20の間の通信路におけるパケットロスの監視等である。通信ライブラリ1122が提供するAPI関数が呼ばれた場合も、制御指令ライブラリ1121が提供するAPI関数が呼ばれた場合と同様、API情報が連携部310を介して定周期処理部360に通知される。
IF(N側)部113は、操作チャネル及びAPIチャネルにデータを格納する機能、操作チャネル、APIチャネル及び状態チャネルからデータを取得する機能、及び、操作チャネル、APIチャネル及び状態チャネルを管理する機能を有する。
なお、指令受付部112及びIF(N側)部113は、ユーザ作成プログラム111が呼び出したAPI関数を受け付けてAPIチャネルに格納する役割を担うことから、指令受付部112及びIF(N側)部113を、まとめて「受付部」と呼んでもよい。
デバイス管理部120は、制御指示部110の生死確認を行う。また、デバイス管理部120は、APIバッファ340へのAPI情報の格納に関する各種の処理等を行う。デバイス管理部120は、制御指示部110がデバイスを作成する際に起動される。なお、デバイスには、より詳細には、APIチャネル及び状態チャネルに加えて、デバイス管理部120も含まれる。
(リアルタイムOS)
リアルタイムOS300上では、連携部310及び定周期処理部360が動作する。
連携部310は、制御指示部110で行われる処理と、定周期処理部360で行われる処理とを連携するための機能部であり、制御指示部110から受けたAPI情報を定周期処理部360に伝える機能を有する。連携部310は、FIFOキューとして機能するAPIバッファ340を備えており、制御指示部110からAPIチャネルを介して伝えられる制御指令(API情報)をAPIバッファ340に蓄積する。また、連携部310は、APIバッファ340に蓄積されたAPI情報を取り出して定周期処理部360に渡す。また、連携部310は、操作チャネル、APIチャネル及び状態チャネルの状態管理(生成、維持及び破棄)を行う。
連携部310には、上述の各機能を実行する機能部として、メイン処理部320、API実行要求処理部330、APIバッファ340及び指令実行処理部350が含まれる。メイン処理部320には、更に、IF(R側)部321が含まれる。
メイン処理部320は、制御指示部110からの要求を受けた場合に、リアルタイムOSのメモリ領域にAPIバッファ340を生成する機能を有する。本実施形態では、メイン処理部320を「キュー生成部」と呼んでもよい。
IF(R側)部321は、操作チャネル、APIチャネル及び状態チャネルの作成(共有メモリ200へのメモリ領域割り当て)、割り当てたメモリ領域の管理、及び、APIチャネル及び状態チャネルの破棄(共有メモリ200の解放)に関する各種の処理を行う。本実施形態では、IF(R側)部321を、「チャネル管理部」と呼んでもよい。或いは、IF(R側)部321は連携部310の一部であることから、連携部310を「チャネル管理部」と呼んでもよい。
具体的には、IF(R側)部321は、リアルタイムOS300の指示によりIF(R側)部321自身が起動した場合に、操作チャネルを共有メモリ200に生成する。また、IF(R側)部321は、制御指示部110(より詳細にはIF(N側)部113)からの要求を受けてAPIチャネルを生成する。また、IF(R側)部321は、制御指示部110(より詳細にはIF(N側)部113)からの指示を受けて状態チャネルを生成する。
API実行要求処理部330は、APIチャネルからAPI情報を取得し、取得したAPI情報をAPIバッファ340に格納する。本実施形態では、API実行要求処理部330を、「格納部」と呼んでもよい。なお、連携部310内では、前述した“デバイス”ごとに1つのAPI実行要求処理部330が動作する。例えば、非リアルタイムOS110内で4つの制御指示部110がそれぞれデバイスを1つずつ生成した場合、連携部310内では、各デバイスに対応するAPI実行要求処理部330が4つ動作することになる。本実施形態では、「デバイス」には、APIチャネル、状態チャネル及びデバイス管理部120に加えて、API実行要求処理部330も含まれることとしてもよい。
指令実行処理部350は、APIバッファ340に格納されているAPI情報を取得し、取得したAPI情報を制御指令モジュール370に渡す。本実施形態では、指令実行処理部350を、「指令処理部」と呼んでもよい。指令実行処理部350は、API実行要求処理部330のようにデバイス単位で並列に動作するのではなく、予め設定ファイルで指定された数の指令実行処理部350が連携部310の中で並列に動作する。
定周期処理部360は、API情報(制御指令情報)に基づいて、制御対象装置20に対してモーション制御サイクルごとに実行させるべき動作を示す補間指令をモーション制御サイクルごとに送信することで、制御対象装置20をモーション制御する機能を有する。また、定周期処理部360には、更に、制御指令モジュール370、IF部380及び通信モジュール390が含まれる。
制御指令モジュール370A〜370Z(以下、制御指令モジュールA〜Zを特に区別しない場合は、単に制御指令モジュール370と言う。)は、API情報(制御指令情報)に基づいて補間指令を算出する。また、制御指令モジュール370は、算出した補間指令を、IF部380に渡す。なお、制御指令モジュール370は、API情報と、制御対象装置20のフィードバック情報に含まれる制御対象装置20の状態とに基づいて補間指令を算出するようにしてもよい。本実施形態では、制御指令モジュール370を、「制御部」と呼んでもよい。
本実施形態では、制御指令ライブラリ1121Aが提供するAPI関数に対応するAPI情報(制御指令情報)は、制御指令モジュール370Aで処理される。同様に、制御指令ライブラリ1121B〜1121Zが提供するAPI関数に対応するAPI情報(制御指令情報)は、それぞれ、制御指令モジュール370B〜制御指令モジュール370Zで処理される。つまり、制御指令ライブラリ1121A〜1121Zは、それぞれ制御指令モジュール370A〜370Zと1対1で対応づけられる。なお、これは実装方法の一例であり、必ずしも1対1で対応づけられていなくてもよい。例えば、複数の制御指令ライブラリ1121が1つの制御指令モジュール370に対応づけられていてもよい。本実施形態では、制御指令モジュール370を一意に特定する識別子を、「モジュール識別子」と言う。
制御指令モジュール370の具体例としては、前述したPTP動作やJOG動作の他に、例えば、特定の動作(あるビットが1になった場合等)や、特定の軸が指定位置まで移動したことをトリガーとして、所定の動作を実行させる制御指令モジュール370、制御対象装置20との間の通信インターフェースから特定の値を取得する制御指令モジュール370が挙げられる。また、指定された制御対象装置20の動作(位置、速度、加速度等)を記録する制御指令モジュール370、制御対象装置20のゆがみ等に起因する位置の誤差等を補正する制御指令モジュール370等が挙げられる。当然ながら、これらの機能に対応するAPI関数を提供する制御指令ライブラリ1121も、非リアルタイムOS110上に用意されている。
IF部380は、制御指令モジュール370及び通信モジュール390が共通に参照可能なメモリ領域を提供する。IF部380は、制御指令モジュール370と通信モジュール390との間で補間指令値及びフィードバック情報を相互に受渡しするために用いられる。
通信モジュール390A〜390Z(以下、通信モジュールA〜Zを特に区別しない場合は、単に通信モジュール390と言う。)は、それぞれ、異なる通信インターフェース規格に対応している。また、本実施形態では、通信ライブラリ1122Aが提供するAPI関数が呼び出されることで定周期処理部360に通知されるAPI情報は、通信モジュール390Aで処理される。同様に、通信ライブラリ1122B〜1122Zが提供するAPI関数が呼び出されることで定周期処理部360に通知されるAPI情報は、それぞれ、通信モジュール390B〜通信モジュール390Zで処理される。つまり、通信ライブラリ1122A〜1122Zは、それぞれ通信モジュール390A〜390Zと1対1で対応づけられる。なお、これは実装方法の一例であり、必ずしも1対1で対応づけられていなくてもよい。例えば、複数の通信ライブラリ114が1つの通信モジュール390に対応づけられていてもよい。
以上説明した、制御指示部110、デバイス管理部120、連携部310、定周期処理部360は、モーション制御装置10のCPU11が、メモリ12又は記憶装置13に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD−ROM等の記憶媒体であってもよい。なお、当該プログラムには、ユーザ作成プログラム111が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
<処理手順>
続いて、モーション制御装置10が行う具体的な処理手順について説明する。
(デバイス作成処理)
図6及び図8は、デバイス作成処理の一例を説明するための図である。また、図7及び図9は、デバイス作成処理が行われる際に生成される各種管理情報の一例を説明するための図である。図6〜図9を用いて、制御指示部110が、ユーザ操作により、制御指示部(1)110−1、制御指示部(2)110−2の順に起動された場合に、各々が実行するデバイス作成処理について説明する。
[前提条件]
最初に、デバイス作成処理を説明するにあたり前提とする条件について説明する。図6〜図9において、制御指示部(1)110−1は、制御指令ライブラリ1121Aが提供するAPI関数を呼び出すものとする。同様に、制御指示部(2)110−2は、制御指令ライブラリ1121A、制御指令ライブラリ1121B及び制御指令ライブラリ1121Cがそれぞれ提供するAPI関数を呼び出すものとする。
また、制御指示部(1)110−1に含まれるユーザ作成プログラム111、指令受付部112及びIF(N側)部113を、それぞれ、ユーザ作成プログラム111−1、指令受付部112−1、IF(N側)部113−1と呼ぶ。また、制御指示部(1)110−1に対応するデバイス管理部120を、デバイス管理部120−1と呼ぶ。
また、制御指示部(2)110−2に含まれるユーザ作成プログラム111、指令受付部112及びIF(N側)部113を、それぞれ、ユーザ作成プログラム111−2、指令受付部112−2及びIF(N側)部113−2と呼ぶ。また、制御指示部(2)110−2に対応するデバイス管理部120を、デバイス管理部120−2と呼ぶ。
また、制御指示部(1)110−1(より詳細には制御指示部(1)110−1が生成したデバイス)に対応するAPI実行要求処理部330を、API実行要求処理部(1)330−1と呼ぶ。同様に、制御指示部(2)110−2(より詳細には制御指示部(2)110−2が生成したデバイス)に対応するAPI実行要求処理部330を、API実行要求処理部(2)330−2と呼ぶ。
また、起動設定情報400には、制御指令モジュール370A〜370C、及び通信モジュール390A〜390Zが起動対象として指定されていると仮定する。なお、起動設定情報400とは、定周期処理部360にて動作させる制御指令モジュール370及び通信モジュール390を指定する情報である。
[制御指示部(1)が行うデバイス作成処理]
図6及び図7を用いて、制御指示部(1)が行うデバイス作成処理を説明する。ユーザ操作により制御指示部(1)110−1が起動されると、ユーザ作成プログラム111−1は、制御対象装置20へのモーション制御を開始する準備を行うことの準備指示(以下、「デバイス作成要求」と言う。)を指令受付部112−1に通知する。当該通知は、具体的には、ユーザ作成プログラム111−1がデバイスの作成を指示するAPI関数を呼び出すことで行われる。続いて、指令受付部112−1は、IF(N側)部113−1に、デバイス作成要求を通知する(S100)。デバイス作成要求には、ユーザ作成プログラム111−1が発行する(後述する「モーション制御処理」にて発行予定である)制御指令を処理する制御指令モジュール370のモジュール識別子(制御指令モジュールA)が含まれる。また、指令受付部112−1は、ステップS100の処理手順の前又は後で、デバイス管理部120−1を起動する。
次に、IF(N側)部113−1は、リアルタイムOS300側で連携部310が起動しているか否かを確認する。起動していない場合、リアルタイムOS300に対して連携部310の起動指示を送信する(S101)。なお、連携部310が起動していない状態とは、例えば、モーション制御装置10を起動した直後などである。起動指示を受けたリアルタイムOSは、連携部310を起動する。
続いて、連携部310のメイン処理部320は、起動設定情報400で指示されている制御指令モジュール370及び通信モジュール390を起動する(S102)。
続いて、リアルタイムOS300の指示により起動した連携部310のIF(R側)部321は、共有メモリ200に操作チャネルに使用するメモリ領域を確保し(S103)、メモリ領域の確保が完了したこと(つまり、操作チャネルを作成したこと)をIF(N側)部113−1に通知する(S104)。このとき、IF(R側)部321は、共有メモリ200において操作チャネルのために確保されたアドレス範囲もIF(N側)部113−1に通知する。IF(R側)部321は、操作チャネルに確保したアドレス範囲をアドレス管理情報(図7(e))に格納する。また、IF(N側)部113−1は、操作チャネルのアドレス範囲を、各IF(N側)部113から共通に参照可能なリソース(ファイル又は共通の変数等)に格納する。なお、IF(N側)部113−1は、操作チャネルのアドレス範囲を、更に、アドレス管理情報(図7(d))に格納することとしてもよい。図7(d)は、操作チャネルのアドレス範囲が格納された状態を示している。 操作チャネルの作成が完了したことの通知を受けたIF(N側)部113−1は、他の制御指示部110のIF(N側)部113との間で操作チャネルの利用について競合が生じないようにするため、操作チャネルの利用権限を取得する(S105)。
利用権限が取得できた場合、IF(N側)部113−1は、デバイス作成要求を、操作チャネルを介してIF(R側)部321に通知する(S106)。デバイス作成要求には、ステップS100の処理手順で通知されたモジュール識別子(制御指令モジュールA)が含まれる。
デバイス作成要求を受けたIF(R側)部321は、デバイス識別子を例えば「D1」に決定する。また、IF(R側)部321は、APIチャネルに使用するメモリ領域を確保すると共に、APIチャネル識別子を例えば「APIチャネル1」に決定する(S107)。また、IF(R側)部321は、決定したデバイス識別子及びAPIチャネル識別子を対応づけて、デバイス管理情報(図7(b))に格納する。
また、IF(R側)部321は、共有メモリ200に、制御指令モジュール370Aに対応する状態チャネルAに使用するメモリ領域を確保する(S108)。IF(R側)部321は、作成した状態チャネルAと制御指令モジュール370Aとの対応関係を、状態チャネル管理情報(図7(c))として保持する。また、IF(R側)部321は、APIチャネル1及び状態チャネルAに確保したメモリ領域のアドレス範囲を、アドレス管理情報(図7(e))に格納する。
続いて、メイン処理部320は、API実行要求処理部(1)330−1を起動する(S109)。なお、ステップS107〜ステップS109の処理手順は、図6に示す順序であることに限定されず、どのような順序で行われてもよい。
続いて、IF(R側)部321は、デバイスの作成が完了したこと(APIチャネル1及び状態チャネルAの作成が完了したこと)をIF(N側)部113−1に通知する(S110)。当該通知は、作成されたAPIチャネル識別子(APIチャネル1)、APIチャネル1及び状態チャネルAに確保されたメモリ領域のアドレス範囲、並びにデバイス識別子(D1)を含む。
デバイスの作成が完了したとの通知を受けたIF(N側)部113−1は、APIチャネル1及び状態チャネルAに確保されたメモリ領域のアドレス範囲を、アドレス管理情報(図7(d))に格納する。続いて、IF(N側)部113−1は、操作チャネルの利用権限を解放し(S111)、デバイスの作成が完了したことを、指令受付部112−1に通知する。また、指令受付部112−1は、デバイスの作成が完了したことをユーザ作成プログラム111−1に通知する(S112)。当該通知には、デバイス識別子(D1)及びAPIチャネル識別子(APIチャネル1)が含まれる。当該通知は、例えば、デバイス作成を指示するAPI関数の戻り値であってもよい。
ユーザ作成プログラム111−1は、通知されたデバイス識別子(D1)及びAPIチャネル識別子(APIチャネル1)を対応づけて、デバイス管理情報(図7(a))として保持する。なお、デバイス管理情報として保持するとは、具体的には、デバイス作成を指示するAPI関数の戻り値として通知されたデバイス識別子及びAPIチャネル識別子を変数に格納して保持することを意図しているが、これに限定されず、例えばファイル等で保持することも可能である。
[制御指示部(2)が行うデバイス作成処理]
図8及び図9を用いて、制御指示部(2)が行うデバイス作成処理を説明する。ユーザの操作により制御指示部(2)110−2が起動されると、ユーザ作成プログラム111−2は、デバイス作成要求を指令受付部112−2に通知する。指令受付部112−2は、IF(N側)部113−2に、デバイス作成要求を通知する(S150)。デバイス作成要求には、ユーザ作成プログラム111−2が発行する(後述する「モーション制御処理」にて発行予定である)制御指令を処理する制御指令モジュール370のモジュール識別子(制御指令モジュールA、制御指令モジュールB及び制御指令モジュールC)が含まれる。また、指令受付部112−2は、ステップS100の処理手順の前又は後で、デバイス管理部120−2を起動する。
次に、IF(N側)部113−2は、リアルタイムOS300側で連携部310が起動しているか否かを確認する。ここでは、制御指示部(1)110−1が連携部310を既に起動していることから、IF(N側)部113−2は、連携部310の起動処理を行わない。続いて、IF(N側)部113−2は、操作チャネルの利用権限を取得する(S151)。
利用権限が取得できた場合、IF(N側)部113−2は、デバイス作成要求を、操作チャネルを介してIF(R側)部321に通知する(S152)。デバイス作成要求には、モジュール識別子(制御指令モジュールA、制御指令モジュールB及び制御指令モジュールC)が含まれる。なお、IF(N側)部113−2は、操作チャネルのアドレス範囲を、各IF(N側)部113から共通に参照可能なリソース(ファイル又は共通の変数等)から取得する。また、IF(N側)部113−2は、操作チャネルのアドレス範囲を、アドレス管理情報(図9(d))に格納することとしてもよい。図9(d)は、操作チャネルのアドレス範囲が格納された状態を示している。
デバイス作成要求を受けたIF(R側)部321は、デバイス識別子を例えば「D2」に決定する。また、IF(R側)部321は、共有メモリ200に、APIチャネルに使用するメモリ領域を確保するとともにAPIチャネル識別子を例えば「APIチャネル2」に決定する(S153)。また、IF(R側)部321は、決定したデバイス識別子及びAPIチャネル識別子を対応づけて、デバイス管理情報(図9(b))に追加する。
続いて、IF(R側)部321は、共有メモリ200に、制御指令モジュール370Aに対応する状態チャネルA、制御指令モジュール370Bに対応する状態チャネルB及び制御指令モジュール370Cに対応する状態チャネルCに使用するメモリ領域を確保する。なお、制御指令モジュール370Aに対応する状態チャネルAは既に作成済み(図6のステップS108)であることから、IF(R側)部321は、状態チャネルB及び状態チャネルCに使用するメモリ領域の確保を行う(S154、S155)。
続いて、IF(R側)部321は、作成した状態チャネルB及び状態チャネルCが、それぞれ制御指令モジュール370B及び制御指令モジュール370Cに対応づけられることを、IF(R側)部321が保持する状態チャネル管理情報(図9(c))に追加する。また、IF(R側)部321は、APIチャネル2、状態チャネルB及び状態チャネルCに確保したメモリ領域のアドレス範囲を、IF(R側)部321が保持するアドレス管理情報(図9(e))に追加する。
続いて、IF(R側)部321は、デバイスの作成が完了したこと(APIチャネル2、状態チャネルB及び状態チャネルCの作成が完了したこと)をIF(N側)部113−2に通知する(S157)。当該通知には、APIチャネル2、状態チャネルA、状態チャネルB及び状態チャネルCに確保されたメモリ領域のアドレス範囲、APIチャネル識別子(APIチャネル2)並びにデバイス識別子(D2)が含まれる。
デバイスの作成が完了したとの通知を受けたIF(N側)部113−2は、APIチャネル2、状態チャネルA、状態チャネルB及び状態チャネルCに確保されたメモリ領域のアドレス範囲を、アドレス管理情報(図9(d))に格納する。
続いて、IF(N側)部113−2は、操作チャネルの利用権限を解放し(S158)、デバイスの作成が完了したことを、指令受付部112−2に通知する。また、指令受付部112−2は、デバイスの作成が完了したことをユーザ作成プログラム111−2に通知する(S159)。当該通知には、デバイス識別子(D2)及びAPIチャネル識別子(APIチャネル2)が含まれる。ユーザ作成プログラム111−2は、通知されたデバイス識別子(D2)及びAPIチャネル識別子(APIチャネル2)を対応づけて、デバイス管理情報(図9(a))として保持する。
なお、以上説明したデバイス作成処理では、デバイス作成要求を取得したIF(R側)部321側は、APIチャネル及び状態チャネルの両方を作成するようにした。しかしながら、本実施形態は、これに限定されない。例えば、図6のステップS100〜ステップS112及び図7のステップS150〜ステップS159の処理手順ではAPIチャネルを作成し、その後、同様の処理手順を繰り返すことで、APIチャネルの作成と状態チャネルの作成を別々のタイミングで行うようにしてもよい。
具体的には、ユーザ作成プログラム111は、モジュール識別子を含まないデバイス作成要求をIF(N側)部113に通知し、IF(N側)部113も同様に、モジュール識別子を含まないデバイス作成要求をIF(R側)部321に通知する。当該デバイス作成要求を受けたIF(R側)部321は、APIチャネルを作成し、デバイスの作成が完了したことをIF(N側)部113に通知する。IF(N側)部113は、デバイスの作成が完了したことをユーザ作成プログラム111に通知する。
その後、ユーザ作成プログラム111は、例えば制御指令を発行する前などのタイミングで、当該制御指令を処理する制御指令モジュール370のモジュール識別子を含む状態チャネル作成要求をIF(N側)部113に通知し、IF(N側)部113も同様に、モジュール識別子を含む状態チャネル作成要求をIF(R側)部321に通知する。当該状態チャネル作成要求を受けたIF(R側)部321は、状態チャネルを作成し、状態チャネルの作成が完了したことをIF(N側)部113に通知する。IF(N側)部113は、状態チャネルの作成が完了したことをユーザ作成プログラム111に通知する。
(モーション制御処理)
続いて、モーション制御装置10が制御対象装置20をモーション制御する際の処理手順について具体的に説明する。
[前提条件]
以下の説明では、制御指示部110が、PTP制御を実行可能な制御指令モジュール370Aを使用し、軸1に対応する制御対象装置(軸1)20−1及び軸2に対応する制御対象装置(軸2)20−2に対してモーション制御を行うものとするまた、制御指示部110が生成したデバイスのデバイス識別子はD1であり、当該デバイスに対応するAPIチャネル識別子はAPIチャネル1であるものとする。また、APIチャネル1及び制御指令モジュール370Aに対応する状態チャネルAは既に生成されているものとする。また、以下の説明において、制御指示部110は、PTP制御に関するAPI関数を呼び出すことで、軸1及び軸2の2軸を同時に制御するものとする。
図10及び図11は、モーション制御装置10が行うモーション制御処理の一例を示す図である。まず、図10を用いて、APIバッファ340の作成から、APIバッファ340にAPI情報がキューイングされるまでの処理手順について説明する。
[APIバッファ作成、API情報蓄積]
まず、ユーザ作成プログラム111は、APIバッファ340の作成を指示するAPI関数を呼び出す。当該API関数が呼び出されると、指令受付部112は、APIバッファの作成をIF(N側)部113に通知する(S200)。当該通知には、作成するAPIバッファ340に対応するAPIバッファ識別子が含まれる。APIバッファ識別子はどのように決定されてもよいが、例えば、ステップS200の処理手順を行う前に、例えばメイン処理部320から払い出されることとしてもよい。ここではAPIバッファ識別子は「1」であると仮定する。
IF(N側)部113は、操作チャネルを介して、APIバッファ340の作成をメイン処理部320に要求する(S201)。当該要求には、APIバッファ識別子が含まれる。メイン処理部320は、APIバッファ識別子「1」に対応するAPIバッファ340を作成する(メモリ領域を確保する)(S202)。
続いて、ユーザ作成プログラム111が、APIバッファ識別子「1」を指定してAPI情報の記録を開始する(API情報のキューイングを開始する)ことを指示するAPI関数を呼び出すと、指令受付部112は、当該API情報の記録を開始することをIF(N側)部113に通知する(S203)。IF(N側)部113は、当該API情報の記録を開始することをデバイス管理部120に通知する(S204)。デバイス管理部120は、APIチャネル1の「APIバッファ識別子」に「1」をセットすると共に、「記録中フラグ」をセットする(S205)。
記録中フラグは、ユーザ作成プログラム111が呼び出したAPI関数に対応するAPI情報を、一旦APIバッファ340にキューイングしてから定周期処理部360に渡すのか、又は、ユーザ作成プログラム111が呼び出したAPI関数に対応するAPI情報を、APIバッファ340にキューイングせずに直接、定周期処理部360に渡すのかを切り替えるために用いられる。具体的には、フラグがセットされている間にAPIチャネルにAPI情報が格納された場合、APIチャネルに格納されたAPI情報は、API実行要求処理部330によりAPIバッファ340にキューイングされる。一方、当該フラグがセットされていない状態でAPIチャネルにAPI情報が格納された場合、APIチャネルに格納されたAPI情報は、API実行要求処理部330により取得されて定周期処理部360に渡され、定周期処理部360で実行される。
続いて、ユーザ作成プログラム111は、軸1に指示する指令値、軸2に指示する指令値及びデバイス識別子(ここではD1)を引数に指定して、PTP制御を行うためのAPI関数を呼び出す。当該API関数が呼び出されると、指令受付部112は、呼び出されたAPI関数に対応するAPI情報をIF(N側)部113に通知する(S206)。
続いて、IF(N側)部113は、API情報をAPIチャネル1に格納する(S207)。具体的には、APIチャネル1の「デバイス識別子」、「モジュール識別子」及び「制御指令識別子」に、それぞれ、「D1」、「制御指令モジュールA」及び「PTP」を格納する。また、「指令値」には軸1の指令値及び軸2の指令値を格納する。「APIバッファ識別子」及び「記録中フラグ」には、ステップS205の処理手順で格納された情報がそのまま格納されている。
なお、APIチャネルに格納する「モジュール識別子」は、制御指令モジュール370を明示的に特定可能な識別子に限られず、制御指令モジュール370を暗示的に示す識別子であってもよい。また、APIチャネルから「モジュール識別子」を省略するようにしてもよい。本実施形態では、「制御指令識別子」で示される制御指令を実行する制御指令モジュール370は1つであることから、連携部310は、制御指令識別子に基づいて、制御指令モジュール370を一意に特定することが可能であるためである。
API実行要求処理部330は、APIチャネル1の「記録中フラグ」がセットされている場合、APIチャネル1に格納されているAPI情報(「デバイス識別子」、「モジュール識別子」、「制御指令識別子」、「APIバッファ識別子」及び「指令値」)を取得する(S208)。また、取得したAPI情報を、ステップS208で取得した「APIバッファ識別子」に対応するAPIバッファ340にキューイングする(S209)。
制御指示部110が複数のAPIを呼び出す場合、ステップS206〜ステップS209の処理手順が繰り返されることで、複数のAPI情報がAPIバッファ340にキューイングされる。
APIバッファ340にキューイングさせるAPI関数の呼出が完了すると、ユーザ作成プログラム111は、APIバッファ340へのAPI情報の記録を終了する(API情報のキューイングを終了する)ことを指示するAPI関数を呼び出す。制御指示部110は、APIバッファ340へのAPI情報の記録を終了することをIF(N側)部113に通知し(S210)、IF(N側)部113は、当該通知をデバイス管理部120に通知する(S211)。デバイス管理部120は、APIチャネル1にセットされている記録中フラグを消去する(S212)。
APIバッファ340は、ユーザ作成プログラム111(より詳細にはデバイス)の指示により生成されるが、1つのユーザ作成プログラム111が複数のAPIバッファ340を作成することが可能である。また、複数のユーザ作成プログラム111が同一のAPIバッファ340を共用することも可能である。本実施形態では、1つのユーザ作成プログラム111が複数のAPIバッファ340を利用可能とすることで、複数の複雑なモーション制御を同時に動作させることを可能としている。また、複数のユーザ作成プログラム111が同一のAPIバッファ340を共用することを可能とすることで、ユーザがユーザ作成プログラム111を作成する際の自由度を高めることができる。
[制御対象装置の制御]
次に、図11を用いて、APIバッファ340にキューイングされたAPI情報に従って、制御対象装置(軸1)20−1及び制御対象装置(軸2)20−2を制御する際の処理手順について説明する。
図11に示すように、制御指令モジュール370Aは、制御指令モジュール370Aが同時に制御可能な複数の軸について、軸ごとに、指令値と、指令値を更新したことを示す実行フラグとを格納するメモリ領域371を保持している。図11の例では、制御指令モジュール370Aは最大128軸まで同時制御することが可能であり、軸1〜軸128の各々について、指令値及び実行フラグを格納するためのメモリ領域371を有している。実行フラグには、「実行中」又は「実行済み」のいずれかが格納される。「実行中」は、制御指令モジュール370Aがモーション制御サイクルに従って軸を制御中であることを示し、「実行済み」は、軸の制御が完了した状態であることを示す。
ここで、IF部380は、定周期処理部360が同時に制御可能な複数の軸について、軸ごとに、補間指令値及びフィードバック情報を格納するためのメモリ領域381を有している。図11の例では、IF部380には、軸1〜軸128の各々について、補間指令値及びフィードバック情報を格納可能なメモリ領域381を有している。
まず、ユーザ作成プログラム111は、APIバッファ識別子(1)に対応するAPIバッファ340について、実行を開始することを示すAPI関数を呼び出す。具体的には、ユーザ作成プログラム111は、当該API関数の引数に、APIバッファ識別子(1)を設定する。続いて、指令受付部112は、APIバッファ識別子(1)のAPIバッファからAPI情報を取り出して制御指令モジュール370に渡す処理を開始すべきことをIF(N側)部113に通知する(S250)。IF(N側)部113は、APIバッファ識別子(1)のAPIバッファからAPI情報を取り出して制御指令モジュール370に渡す処理を開始すべきことを、操作チャネルを介して指令実行処理部350に通知する(S251)。
IF(N側)部113から通知を受けた指令実行処理部350は、指定されたAPIバッファ340に格納されているAPI情報を取得して定周期処理部360に渡す。具体的には、指令実行処理部350は、APIバッファ識別子「1」に対応するAPIバッファ340からAPI情報を1つ取得する。取得したAPI情報の「モジュール識別子」、「制御指令識別子」及び「指令値」には、それぞれ、「制御指令モジュールA」、「PTP」及び「軸1の指令値及び軸2の指令値」が格納されている。指令実行処理部350は、API情報の「モジュール識別子」により指定された制御指令モジュール370Aに対して、実行すべき制御指令識別子(ここではPTP)を通知する(S253)。続いて、指令実行処理部350は、制御指令モジュール370Aのメモリ領域371における軸1の指令値及び軸2の指令値を、API情報から取得した軸1の指令値及び軸2の指令値で更新すると共に、軸1の実行フラグ及び軸2の実行フラグを「実行中」に変更する(S254)。
続いて、制御指令モジュール370Aは、メモリ領域371に格納された軸1及び軸2の指令値に基づいて、軸1及び軸2に対する補間指令値を算出し、算出した補間指令値をIF部380に格納する(S260)。補間指令値は、制御指令の内容に応じて所定のロジックで算出される。所定のロジックとしては、例えば、従来のPTP制御における制御ロジック等を利用することができる。通信モジュール390は、IF部380に格納された軸1及び軸2の補間指令値を取得し、軸1及び軸2の通信インターフェース規格に応じた信号に変換して制御対象装置(軸1)20−1及び制御対象装置(軸2)20−2に送信する(S261)。
ステップS260及びステップS261の処理手順がモーション制御サイクル(例えば1ms間隔や0.5ms間隔等)に従って繰り返されることで、軸1及び軸2が補間指令値に従って滑らかに動作する。軸1及び軸2の状態が指令値に到達すると、制御指令モジュール370Aは、軸1及び軸2の実行フラグを「実行済み」に更新する。軸1及び軸2の実行フラグが「実行済み」に更新されたことを検出した指令実行処理部350は、次にAPIバッファ340に格納されているAPI情報を読み出し、上述したステップS253及びステップS254の処理手順を繰り返し行う。これにより、制御指令モジュール370Aのメモリ領域371における指令値が更新され、再度、ステップS260及びステップS261の処理手順が実行される。以上説明したステップS252〜ステップS261の処理手順の動作が、APIバッファ340が空になるまで繰り返される。
ここで、通信モジュール390は、制御対象装置(軸1)20−1及び制御対象装置(軸2)20−2からフィードバック情報を取得し、共通信号フォーマットのフィードバック情報に変換してIF部380に格納する(S262)。続いて、制御指令モジュール370Aは、IF部380に格納された軸ごとのフィードバック情報を取得する(S263)。ステップS262及びステップS263の処理手順は、モーション制御サイクルに従って繰り返されるようにしてもよいし、モーション制御サイクルとは異なる周期(例えば数ms周期等)で繰り返されるようにしてもよい。
制御指令モジュール370Aは、取得した軸1及び軸2のフィードバック情報をメイン処理部320に通知する(S264)。メイン処理部320は、通知された軸1及び軸2のフィードバック情報を状態チャネルAに格納する(S265)。ユーザ作成プログラム111が、状態チャネルAに対応するフィードバック情報を読み出すAPI関数を呼び出すと、指令受付部112は、IF(N側)部113に対して、状態チャネルAに格納されたフィードバック情報を読み出すべきことを通知する。IF(N側)部113が読みだしたフィードバック情報は、指令受付部112を介してユーザ作成プログラム111に伝えられる。これにより、ユーザ作成プログラム111は、各軸がどのように動作しているのかを把握することができ、例えば、軸の状態に基づいて制御指令を切り替えるといった複雑なモーション制御を実現することができる。
なお、制御指令モジュール370Aは、ステップS260の処理手順において、例えばモーション制御サイクル毎にフィードバック情報に含まれる軸1及び軸2の状態を参照し、軸1及び軸2が意図する動作を行っているかをモーション制御サイクル毎に確認しながら次のモーション制御サイクルにおける補間指令値を算出するようにしてもよい。
図12は、制御指令モジュール370が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、制御指令モジュール370は、メモリ領域371から、実行フラグが「実行中」にセットされた軸についての指令値を取得する(S300)。続いて、制御指令モジュール370は、指令値に基づき、1モーション制御サイクル分の指令値(つまり補間指令値)を算出し(S301)、算出した補間指令値を、IF部380のメモリ領域381に格納する(S302)。続いて、制御指令モジュール370は、IF部380から軸ごとのフィードバック情報を取得する(S303)。続いて、制御指令モジュール370は、ステップS300で指令値を取得した軸について、フィードバック情報が指令値に達しているか否かを判定する(S304)。指令値に達している場合は、当該軸の実行フラグを「実行済み」にセットし、処理を終了する。指令値に達していない場合は、次のモーション制御サイクルまで待機し(S305)ステップS301の処理手順に進む。なお、ステップS303の処理手順を省略し、ステップS304の処理手順を、軸の動作が指令値に達しているか否かを、現代制御理論を利用することでフィードバック情報を利用せず判定することに置き換えるようにしてもよい。
(エラーハンドリング処理)
[制御指示部のクラッシュ]
次に、制御指示部110が何らかの理由でクラッシュした際に行われる処理手順について説明する。デバイス管理部120は、制御指示部110が生存(動作)していることを定期的に監視し、制御指示部110が生存している間、制御指示部110が生存していることを示す生存報告をAPIチャネルに書き込む。IF(R側)部321は、各制御指示部110が生存していることを示す生存報告の有無を、各APIチャネルを参照することで周期的に取得し、生存報告が所定の期間の間なされていない場合、生存報告が報告されなかった制御指示部110に対応するAPIチャネルを破棄(消去)する(当該APIチャネルのメモリ領域を解放する)。以下、図を用いて制御指示部がクラッシュした際の処理手順を具体的に説明する。
図13は、制御指示部がクラッシュした場合の処理手順の一例を示す図である。図13の説明では、前述した「(デバイス作成処理)」で説明した前提条件と同一の前提条件が適用されるものとする。
デバイス管理部120−1及びデバイス管理部120−2は、それぞれ、APIチャネル1及びAPIチャネル2に生存報告を周期的に書き込むように構成されている(S400、S401)。生存報告は、例えばタイムスタンプであってもよい。また、周期は任意であるが、例えば、1秒間隔や10秒間隔といった周期であってもよい。ここで、制御指示部(1)110−1がクラッシュしたことで、デバイス管理部120−1が生存報告をAPIチャネル1に書き込まなくなったと仮定する(S400)。
その後、制御指示部(1)110−1が再起動すると、制御指示部(1)110−1は、デバイス作成要求をIF(N側)部113−1に通知する(S410)。ステップS411及びステップS412の処理手順は、それぞれ、図6のステップS105及びステップS106と同一であるため説明は省略する。なお、IF(N側)部113−1は、操作チャネルのアドレス範囲を、各IF(N側)部113から共通に参照可能なリソース(ファイル又は共通の変数等)から取得する。
続いて、IF(R側)部321は、共有メモリ200にAPIチャネルに使用するメモリ領域を確保する(S413)。また、IF(R側)部321は、デバイス識別子及びAPIチャネル識別子を決定する。ここでは、デバイス識別子を例えば「D3」に決定し、APIチャネル識別子を例えば「APIチャネル3」に決定したとする。IF(R側)部321は、確保したAPIチャネル1のアドレス範囲を、アドレス管理情報に格納すると共に、デバイス管理情報に、デバイス識別子(D3)及びAPIチャネル3が対応づけられたレコードを追加する。ステップS414〜ステップS416の処理手順は、それぞれ図6のステップS110〜ステップS112と同一であるため説明は省略する。
続いて、IF(R側)部321は、APIチャネル1にて生存報告が所定の期間書き込まれていないことを検出し、APIチャネル1を破棄する(S417)。また、IF(R側)部321は、デバイス管理情報から、APIチャネル1を含むレコードを削除し、更に、アドレス管理情報から、APIチャネル1のアドレス範囲が格納されたレコードを削除する。
なお、IF(R側)部321が、生存報告が書き込まれていないことを検出するタイミングによっては、ステップS417の処理手順が、ステップS414の処理手順より前になることも想定される。この場合、IF(R側)部321は、共有メモリ200に、APIチャネルに使用するメモリ領域を確保する際、破棄されたAPIチャネル1のメモリ領域(つまり、空きメモリ領域)を、新たに生成するAPIチャネルのメモリ領域として確保する(再利用する)ようにしてもよい。
本実施形態では、2以上の操作チャネルが共有メモリ200に確保されることはなく、また、状態チャネルが、リアルタイムOS300に実装された制御指令モジュール370の数以上に確保されることはない。一方、共有メモリ200に確保されるAPIチャネルの数は、起動される制御指示部110の数や制御指示部110が作成するデバイスの数に応じて変化する。そのため、利用されなくなったAPIチャネルが共有メモリ200に残り続けると、共有メモリ200の空きリソースが不足してモーション制御装置10自体が動作不能になる可能性がある。以上説明したエラーハンドリング処理によれば、生存報告が書き込まれなくなったAPIチャネルは共有メモリ200から消去されることから、制御指示部110が何度もクラッシュすることにより共有メモリ200のリソースが不足する可能性を抑止することが可能になる。
また、以上説明したエラーハンドリング処理によれば、制御指示部110がクラッシュした場合、当該制御指示部110に関係のあるAPIチャネルの削除や作成のみが行われ、クラッシュしていない他の制御指示部110が使用しているAPIチャネルや状態チャネルについては、共有メモリ200にそのまま確保され続けることになる。すなわち、制御指示部110がクラッシュしたとしても、クラッシュしていない他の制御指示部110は、何の影響を受けることなく動作を継続することが可能になる。
[連携部のクラッシュ]
連携部310がクラッシュした場合、IF(R側)部321は、自身が記憶しているデバイス管理情報(図9(b)、状態チャネル管理情報(図9(c))及びアドレス管理情報(図9(e))を失ってしまうことになる。これらの情報を失ってしまうと、IF(R側)部321は、各チャネルにアクセスすることが出来なくなる。
そこで、本実施形態では、共有メモリ200における予め定められた領域に、操作チャネル、APIチャネル及び状態チャネルのために確保されているアドレス範囲を示す情報と、各アドレス範囲がどのチャネルのために確保されているメモリ領域なのかを示す情報とを格納しておく。連携部310がクラッシュして再起動した場合、連携部310は、当該予め定められた領域にアクセスすることで、操作チャネル、APIチャネル及び状態チャネルが確保されているアドレス範囲等を認識し、認識した情報に基づいて、デバイス管理情報、状態チャネル管理情報及びアドレス管理情報を生成する。
これにより、連携部310がクラッシュした場合であっても、制御指示部110側にて再度デバイス生成処理等をやり直すことなく、モーション制御装置10の動作を復旧させることが可能になる。
(プロトコル変換処理)
モーション制御装置10は、通信インターフェース規格が異なる複数の制御対象装置20を同時に制御することができる。このような制御を実現するために、IF部380のメモリ領域381では、共通信号フォーマットに従った補間指令値及びフィードバック情報を保持する。共通信号フォーマットはどのようなフォーマットであってもよいが、複数の通信インターフェース規格との間で相互に変換(プロトコル変換)可能なように、当該複数の通信インターフェース規格の必須項目を全て含有するフォーマットであることが望ましい。
制御指令モジュール370は、共通信号フォーマットに従って補間指令値を生成してIF部380に格納する。また、通信モジュール390は、補間指令値をIF部380から取得し、取得した補間指令値を、共通信号フォーマットから、通信モジュール390が信号の送受信を行う制御対象装置20の通信インターフェース規格に対応する信号フォーマットに変換してから制御対象装置20に送信する。
同様に、通信モジュール390は、制御対象装置20からフィードバック情報を受信し、受信したフィードバック情報を、制御対象装置20の通信インターフェース規格に対応する信号フォーマットから、共通信号フォーマットにプロトコル変換してからIF部380に格納する。
各通信モジュール390が受け持つ軸(各通信モジュール390が受け持つ制御対象装置20と同義)及びIF部における軸ごとのアドレス範囲は、マッピング情報に定義されている。各通信モジュール390は、マッピング情報に基づき、各通信モジュール390が受け持つべき軸(制御対象装置20)向けに確保されたメモリ領域381にアクセスすることで補間指令値を取得すると共に、フィードバック情報をメモリ領域381に格納する。同様に、各制御指令モジュール370は、マッピング情報に基づき、各軸向けに確保されたメモリ領域381にアクセスすることで補間指令値を取得すると共に、フィードバック情報をメモリ領域381に格納する。
図14は、マッピング情報の一例を示す図である。マッピング情報410には、軸(制御対象装置20)ごとに、各軸を受け持つ通信モジュール390と、通信インターフェース規格で使用される、制御対象装置20を一意に特定する識別子(スレーブ番号)とが対応づけられている。
図14の例では、軸1は、EtherCAT(登録商標)に対応する通信モジュール390が受け持ち、EtherCAT(登録商標)におけるスレーブ1に接続された制御対象装置20に対応していることが定義されている。同様に、軸2は、EtherCAT(登録商標)に対応する通信モジュール390が受け持ち、EtherCAT(登録商標)におけるスレーブ2に接続された制御対象装置20に対応していることが定義されている。同様に、軸3は、RTEX(登録商標)に対応する通信モジュール390が受け持ち、RTEX(登録商標)におけるスレーブ1に接続された制御対象装置20に対応していることが定義されている。なお、マッピング情報は、例えば、複数の通信モジュール390がアクセス可能なリアルタイムOS300上の所定の領域に格納されていてもよい。或いは、各通信モジュール390が、自身に関係のある軸に関するマッピング情報を自ら保持するようにしてもよい。例えば、EtherCAT(登録商標)に対応する通信モジュール390は、軸1及び軸2に対応するスレーブ番号が格納されたマッピング情報を保持し、RTEX(登録商標)に対応する通信モジュール390、軸3に対応するスレーブ番号が格納されたマッピング情報を保持するようにしてもよい。
図15は、プロトコル変換処理の処理手順の一例を説明するための図である。通信モジュール390−1及び通信モジュール390−2は、連携部310からの指示により起動したタイミング(図6のステップS102)など、少なくとも制御対象装置20との間で通信を開始する前にマッピング情報410を読み出すことで自身が制御すべき軸の情報を取得しておく。なお、以下の処理手順において、IF部380に格納されている各軸の補間指令値及びフィードバック情報を読み出す処理、及び各軸の補間指令値及びフィードバック情報をIF部380に書き込む処理は、例えば、制御指令モジュール370及び通信モジュール390が所定の関数を呼び出すことで行われる。
まず、制御指令モジュール370は、IF部380のメモリ領域381に共通信号フォーマットに従って格納されている、軸1〜軸3の補間指令値を更新する(S500)。通信モジュール390−1は、軸1の補間指令値及び軸2の補間指令値を取得し(S501、S502)、取得した補間指令値の信号フォーマットを、共通信号フォーマットからEtherCAT(登録商標)の信号フォーマットに変換する。続いて、通信モジュール390−1は、信号フォーマットの変換を終えた軸1の補間指令値及び軸2の補間指令値を、それぞれ、制御対象装置20−1及び制御対象装置20−2に送信する(S504、S505)。同様に、通信モジュール390−2は、軸3の補間指令値を取得し(S503)、取得した補間指令値の信号フォーマットを、共通信号フォーマットからRTEX(登録商標)の信号フォーマットに変換する。続いて、通信モジュール390−2は、変換した軸3の補間指令値を制御対象装置20−3に送信する(S506)。
次に、通信モジュール390−1は、制御対象装置20−1及び制御対象装置20−2から、軸1のフィードバック情報及び軸2のフィードバック情報を取得し(S510、S511)、取得したフィードバック情報の信号フォーマットをEtherCAT(登録商標)の信号フォーマットから共通信号フォーマットに変換する。続いて、通信モジュール390−1は、変換した軸1のフィードバック情報及び軸2のフィードバック情報を、IF部380のメモリ領域381に格納する(S513、S514)。
同様に、通信モジュール390−2は、制御対象装置20−3から軸3のフィードバック情報を取得し(S512)、取得したフィードバック情報の信号フォーマットを、RTEX(登録商標)の信号フォーマットから共通信号フォーマットに変換する。続いて、通信モジュール390−2は、変換した軸2のフィードバック情報を、IF部380のメモリ領域381に格納する(S515)。制御指令モジュール370は、IF部380のメモリ領域381に格納されている軸1〜軸3のフィードバック情報を取得する(S516)。
以上説明したプロトコル変換処理では、ステップS500〜ステップS516の処理手順が、モーション制御サイクルごとに繰り返し行われる。
<まとめ>
以上、実施形態に係るモーション制御装置10について説明した。制御対象装置20に対してモーション制御を行う場合、複数の制御対象装置20を同期させながら高精度に動作させるためには、モーション制御サイクル(例えば1msごとや0.5ms)ごとに補間指令を制御対象装置20に送信し続けることが必要である。Windows(登録商標)のような非リアルタイムOS100では、OS自身が行うバックグラウンド処理等の影響により処理負荷が高くなると、実行中であるプログラムの動作速度が遅くなってしまうことから、1msや0.5msといった周期で補間指令を制御対象装置20に送信し続けることは困難である。
一方、本実施形態では、非リアルタイムOS110側で複数のモーション制御サイクルに渡る制御指令(API情報)を発行し、リアルタイムOS300側でAPIバッファ340を介して当該制御指令を取得して、モーション制御サイクルごとの補間指令を発行する構成を採用した。これにより、非リアルタイムOS110での処理速度の変化を吸収し、非リアルタイムOS110及びリアルタイムOS300がインストールされた汎用の情報処理装置を用いてスムーズな高精度のモーション制御を実行することを可能とした。また、複数の制御指令が発行される場合、当該複数の制御指令がAPIバッファ340に格納されることになる。これにより、各々の制御指令による連続したモーション制御(モーション制御シーケンス)をスムーズに実行することを可能とした。
また、本実施形態では、制御指示部110を非リアルタイムOS110側に配置したことで、モーション制御サイクルに沿ったリアルタイム処理を実現しつつ、ユーザが使い慣れたデザインのユーザインタフェースを提供することを可能とした。
また、本実施形態では、モーション制御を行う際に必要になるAPIチャネル等のリソースを制御指示部110ごと(より詳細にはデバイスごと)に用意するようにした。これにより、制御指示部110が制御指令を発行することで制御対象装置20を制御するという一連の動作に必要なリソースを制御指示部110ごとに(すなわちユーザ作成プログラム111ごとに)分離することができ、万が一、制御指示部110にクラッシュ等の異常が生じたとしても、当該異常が他の制御指示部110の動作に影響を与えてしまう可能性を抑制することを可能とした。
また、本実施形態では、リアルタイムOS300上の制御指令モジュール370からIF部380までの処理を、共通信号フォーマットを用いて共通化し、通信モジュール390にて、共通信号フォーマットから制御対象装置20に対応する通信インターフェース規格の信号フォーマットにプロトコル変換するようにした。これにより、モーション制御装置10が行う殆どの処理を共通化することができ、通信インターフェース規格が異なる複数の制御対象装置20を混在させた制御を、容易に実現することを可能とした。
<変形例>
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
例えば、APIチャネルはデバイスごとに生成されることから、デバイスが特定されればAPIチャネルも一意に特定できることになる。そのため、本実施形態において「APIチャネル識別子」を「デバイス識別子」に置き換えることとしてもよい。