以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施の形態における超音波診断装置1の内部構成を示すブロック図である。超音波診断装置1は、CPU(Central Processing Unit)1aと、ROM(Read Only Memory)1bと、RAM(Random Access Memory)1c及び入出力インターフェイス1dがバス1eを介して接続されている。入出力インターフェイス1dには、入力部1fと、表示部1gと、通信制御部1hと、記憶部1iとが接続されている。
また、入出力インターフェイス1dには、超音波診断装置1を構成する各駆動部を制御する駆動部制御部1jと、超音波プローブPを介して被検体との間で超音波ビームを送受波する超音波送受信部1kと、送受波された超音波ビームを基に医用画像を生成する医用画像生成部1lとが接続されている。
さらに、被検体に対するスキャンを行う際に必要となるラスタ数とプレーン枚数とを算出する演算部10が接続されている。
CPU1aは、入力部1fからの入力信号に基づいてROM1bから超音波診断装置1を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、記憶部1iに格納されている各種オペレーティングシステムを読み出す。またCPU1aは、入力部1fや入出力インターフェイス1dを介して、図1において図示していない外部機器からの入力信号に基づいて各種装置の制御を行う。
さらにCPU1aは、RAM1cや記憶部1i等に記憶されたプログラム及びデータを読み出してRAM1cにロードするとともに、RAM1cから読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、フィルタ処理等一連の処理を実現する処理装置である。
入力部1fは、超音波診断装置1の操作者である医療従事者が各種の操作を入力するキーボード、ダイヤル等の入力デバイスにより構成されており、医療従事者の操作に基づいて入力信号を作成し、バス1eを介してCPU1aに送信する。また、超音波診断装置1には、キーボード等だけでなく専用の操作パネルが設けられている場合もある。
表示部1gは、例えば液晶ディスプレイであり、例えばCPU1aからバス1eを介して出力信号を受信する。表示部1gは、超音波プローブPを介して得られたデータを基に生成される医用画像やCPU1aの処理結果等を表示する手段である。
通信制御部1hは、LANカードやモデム等の手段であり、超音波診断装置1をインターネットやLAN等の通信ネットワークに接続することを可能とする手段である。通信制御部1hを介して通信ネットワークと送受信したデータは入力信号または出力信号として、入出力インターフェイス1d及びバス1eを介してCPU1aに送受信される。
記憶部1iは、半導体や磁気ディスクで構成されており、CPU1aで実行されるプログラムやデータが記憶されている。例えば、記憶部1iには、スキャン条件や送受信条件等の超音波診断装置1を利用して被検体をスキャンする際に設定が行われる各種条件が記憶されている。また、これらの条件を基にラスタ数とプレーン枚数を算出するための演算式も併せて記憶されている。
また、本発明の実施の形態における超音波診断装置1では、超音波画像生成プログラムが、例えば、記憶部1iに格納されている。当該プログラムがCPU1aに読み込まれ実行されることにより、超音波診断装置1に実装されることになる。
超音波送受信部1kは、CPU1aの制御に従って、後述する超音波プローブPを介して被検体に超音波スキャンを実行する。実行される超音波スキャンとしては、例えば、Bモードスキャン、カラードプラモードスキャン、ドプラモードスキャン等を挙げることができる。超音波送受信部1k内には、図1にて図示していないが、例えば、プリアンプ、アナログディジタル変換器、受信遅延回路、加算器等が設けられている。
超音波送受信部1kには、被検体に直接接触し、超音波の反射をもって被検体内部の情報を取得する超音波プローブPが接続されている。超音波プローブPは、超音波の送受波を行う超音波振動子を備えており、超音波送受信部1kからの指示に基づきこの超音波振動子が駆動する。超音波プローブPが収集した被検体に関する内部情報は、超音波ビームとして超音波送受信部1kにて受信され、医用画像生成部1lへと送られる。
なお、超音波プローブPとしては、例えば、メカニカル4Dプローブやマトリクスアレイプローブを利用することができる。
医用画像生成部1lは、図1においてその内部構成の図示を省略しているが、その内部に信号処理部、画像構成部、及び画像生成部を備え、超音波プローブP、超音波送受信部1kを介して取得した情報を基に、医用画像を生成する。
信号処理部では、超音波送受信部1kの受信部が受信した信号に基づいて種々の信号処理を行う。具体的には、上述したスキャンモードに応じた信号処理が行われることになる。信号処理部内には、例えば、エコーデータ用検波器、対数圧縮器、深さ・走査線・フレーム方向のディジタルフィルタ等の各機器が設けられている。
画像構成部は、信号処理部から送信される信号を受信し、信号処理部において深さ方向で整列されたビームデータの座標を変換して、表示用にライン方向に整列されたピクセルデータへと変換するスキャン変換器の役割を果たす。当該処理が行われることによって、超音波画像を生成する際に基となる画像データが生成されることになる。
画像生成部は、画像構成部において生成された画像データを基に、例えば、2次元画像として表示される医用画像を生成するとともに、当該2次元の医用画像を基に、3次元の医用画像を生成する。
演算部10は、超音波診断装置1を利用して被検体のスキャンを行うに際して必要なラスタ数とプレーン枚数を算出する。詳細は後述するが、演算部10は、ラスタ密度とプレーン密度とを基に、ラスタ数とプレーン枚数とを算出する。
図2は、実施の形態における演算部10の内部構成を示すブロック図である。演算部10は、ラスタ数及びプレーン枚数算出のトリガーとなる処理要求を受け付ける受信部11と、ラスタ密度とプレーン密度を算出する密度算出部12と、判断部13と、算出されたラスタ密度とプレーン密度を用いてラスタ数とプレーン枚数を算出する算出部14と、算出されたラスタ数とプレーン枚数をスキャンの条件として用いるべく、例えばCPU1aに送信する送信部15とから構成される。
なお、これら各部の機能、働きについては、後述するラスタ数とプレーン枚数を算出した上で、これらの条件を基に被検体のスキャンを行い医用画像を生成する流れの中で説明する。
次に超音波診断装置1を利用して被検体のスキャンを行う際に必要となるラスタ数とプレーン枚数の算出と当該条件を利用して行われたスキャンに基づいて医用画像が生成される流れについて、以下、説明する。
図3は、超音波診断装置1において、ラスタ数とプレーン枚数とを算出し医用画像を生成する流れを示すフローチャートである。なおここで使用する超音波プローブPは、メカニカル4Dプローブであることを前提とする。
超音波診断装置1を利用する医療従事者は、被検体のスキャンを行う前にスキャンを行うためのスキャン条件や送受信条件等の各種条件(パラメータ)の入力を行い、超音波診断装置1は、入力されたこれらパラメータに関する情報の内容を把握する(ST1)。
なお、ここでは、医療従事者が全てのパラメータを入力することとしても良く、或いは、記憶部1iに記憶されているパラメータの使用、変更を行うことによってパラメータの設定を行うこととしても良い。
パラメータの入力が行われる際には、例えば、医療従事者は入力部1fを構成するキーボード等を使い、入力内容は表示部1gに表示される。このようにパラメータの入力が開始される場合には、超音波診断装置1はその旨を把握していることから、演算部10に予めパラメータの入力が行われる旨の指示が出されている。
演算部10では、入力、確定されたパラメータを受信し、当該パラメータを基にスキャン方向の密度と揺動方向の密度を算出する(ST2)。このスキャン方向の密度がラスタ密度であり、揺動方向の密度がプレーン密度である。
ここでラスタ(走査線)やプレーン(断層画像)といった語句の意味するところを図を用いながら説明する。図4は、ラスタ数とプレーン枚数についての概念を説明するための説明図である。まず図4において、正面に示されている、上下が円弧状であって略台形に示される領域が超音波診断装置1を利用して行われるスキャン領域となる。
この領域内に実線の矢印で示されているのがラスタ(走査線)Xである。このラスタXがスキャン角度θ1の範囲内においてスキャン領域を形成するように送受波されることによって1枚の医用画像として生成されるのがプレーンYである。すなわち、図4において略台形の形状に示される形状はプレーン(断層画像)Yを示している。そして1枚のプレーンYを生成する際に送受波されるラスタXの数がラスタ数である。
そして、超音波プローブPを少しずつずらしてスキャンすることによって複数のプレーンYを得ることができる。このように超音波プローブPをずらす角度を揺動角度といい、図4においては符号θ2で示している。揺動角度θ2の範囲内で複数のプレーンYが生成されるだけのボリュームデータを得ることによって、3次元の医用画像を生成することが可能となる。ここでは、揺動角度θ2内において生成されるプレーンYの枚数をプレーン枚数と表わしている。
このようにスキャンが行われることによって、被検体の検査対象となる部位のボリュームデータを取得することができる。但し、検査対象となる部位によって取得されるボリュームデータの形状は異なることがある。
図5、図6は、スキャンの対象となる部位ごとに必要とされるボリュームデータが異なることを説明するための説明図である。
例えば、検査対象が子宮や胎児の背骨である場合、必要とされるボリュームデータは、図5に示すような、幅広で奥行きの狭い(薄い)形状となる。従って得られるボリュームデータは、スキャン角度θ1が揺動角度θ2よりも大きいものとなる。
一方、検査対象が例えば、胎児の心臓である場合には、図6で示すような幅、奥行きともに同じくらいの幅、厚みで示される形状となる。そのため得られるボリュームデータは、スキャン角度θ1と揺動角度θ2とが略同じとなる。
このようにして得られたボリュームデータは、超音波診断装置1の表示部1gに表示される。図7は、超音波診断装置1の表示部1gに表示される医用画像の例を示す画面例である。
図7に示すように、表示部1gは、4つの表示領域に分けられ、4種類の画像が表示されている。このうち右下に表示される画像が取得されたボリューム画像である。その他の3つの領域に表示される画像は、当該ボリューム画像をある断面で切断して示される断面図である。
図4に示す説明図では、ラスタXと複数のプレーンYが示されている。ここでラスタXの向きであるスキャン方向をAと表わし、当該スキャン方向Aに直交し複数のプレーンYが撮影されて行く方向、すなわち、揺動方向をBとする。さらに、これらスキャン方向A及び揺動方向Bに直交する方向をCと表わす。
図7に示す表示部1gにおいては、ボリューム画像をそれぞれの方向において切断して示される断層画像が表示される。すなわち、図7の表示部1gにおける左上の表示領域には、スキャン方向Aにおける断層画像(A面)が、右上の表示領域には、揺動方向Bにおける断層画像(B面)が表示される。そして左下の領域には、図4に示すCの方向に切断して得られる断層画像(C面)が表示される。
なお、表示部1gの各表示領域の大きさ等を含むレイアウトやいずれの表示領域にどのような画像を表示させるかについては、超音波診断装置1を使用する医療従事者が任意に設定することが可能である。
密度算出部12においてスキャン方向AにおけるラスタXの密度(ラスタ密度)と揺動方向BにおけるプレーンYの密度(プレーン密度)が算出されると、判断部13に算出結果が送信され、両者の密度が1:1であるか否かが判断される(ST3)。すなわち、ここではラスタ密度とプレーン密度とが1:1となるように調整することによって、表示画像の画質を向上させることとしている。
算出されたラスタ密度とプレーン密度とが1:1の比率であると判断された場合には(ST3のYES)、その旨が算出部14へと送られ、これら算出された密度を用いてラスタ数及びプレーン枚数が算出される(ST4)。算出部14では、次に示す式1を基本式として、ラスタ数及びプレーン枚数、及びボリュームスキャンを行う際に1つのボリュームデータを取得するのに必要な時間を算出する。
ここでスキャン方向のラスタ数をX1、揺動方向Bにおけるプレーン枚数をX2、パルス送信間隔をt、振動方向の切り替えなどのために考慮すべき時間αとすると、ボリュームスキャンを行う際に1つのボリュームデータを取得するのに必要な時間Tを算出することができる。そして、この時間Tを算出するために必要なラスタ数X1とプレーン枚数X2は、それぞれ式(1)に示される式を用いて算出される。本発明の実施の形態においてはラスタ数X1、或いは、プレーン枚数X2の算出に当たってラスタ密度k1、或いは、プレーン密度k2を利用する。
ここでスキャン角度をθ1、揺動角度をθ2、ラスタ密度をk1、プレーン密度をk2、補正関数をf(y)とする。当該補正関数f(y)は、ボリューム画像を生成、表示する処理過程において、例えば、コンパウンド処理のようにボリュームレート、prfのみではラスタ数を正確に表現できない処理が存在することに鑑み、このような場合に補正を行うことを目的としている。
このようにして算出されたラスタ数X1とプレーン枚数X2の値を用いて、被検体のスキャンを行う(ST5)。スキャンされた結果は、医用画像生成部1lにおいて医用画像であるボリューム画像が生成され(ST6)、表示部1gに表示される。表示部1gには、ボリューム画像のみならず、図7に示す通り、A面、B面、C面、それぞれで切断した状態を示す断面図も表示される。
生成、表示された医用画像を見て、操作者である医療従事者は自身が意図した画像が表示されているか否かを確認する。すなわち、医療従事者は、表示された画像を見て、表示された画像、ひいては、画像生成に掛かるパラメータ(ラスタ密度、プレーン密度)の設定が適切であったか否かを判断することになる。超音波診断装置1では、例えば、適切な画像であるか否かを医療従事者に問いかけるポップアップ等の確認画面を表示させて医療従事者に選択させることで、表示された画像が適切であるか否かを判断する(ST7)。
超音波診断装置1では、医療従事者が例えば、確認画面上において判断を確定させる処理を行ったことを検知して、表示された医用画像が適切であったか否かを判断し、適切な画像が表示されている場合には(ST7のYES)、そのまま当該条件のまま撮影が続行される一方(ST8)、適切な画像ではない場合には(ST7のNO)、再度各種パラメータの入力が行われ、再度ラスタ密度とプレーン密度とが算出される。
図7は、上述したように、超音波診断装置1の表示部1gに表示される医用画像の例を示す画面例である。ここで示される断層画像は、ラスタ密度とプレーン密度とは概ね1:1の状態にあることから、画面例を見ると、左上に表示されているA面の断層画像と右上に表示されているB面の断層画像は画質良く表示されている。またA面及びB面に表示されている断層画像はいずれも画質が良いことから、両者は、画面全体を見渡した際にバランスが取れて表示されている。
一方、判断部13においてラスタ密度とプレーン密度との比率を確認した際に、両者の密度が1:1の状態にない場合には(ST3のNO)、このままでは画質の良い医用画像を生成することができないと判断される。
図8は、実施の形態において算出されるラスタ数とプレーン枚数を用いずに生成された医用画像の表示例を示す画面例である。すなわち、A面を示す断層画像とB面を示す断層画像との画質に差が見られる場合の画面例である。
図8に示す画面例の場合、プレーン密度の方がラスタ密度よりも高い状態にあるため、A面の分解能よりもB面の分解能の方が高い。そのため図7に示す画面例とは異なり、ラスタ密度とプレーン密度の比率がアンバランスな状態にあると、例えば、B面の断層画像は鮮明に表示されるもののA面の断層画像は粗い画質で表示されるといったことになる。もちろん、いずれかの面の画質のみ向上させるということも考えられるが、通常ボリューム画像の必要領域について断層画像を生成することを考えれば、少なくともA面とB面の断層画像の画質は概ね揃っていた方が見やすい。
この見やすさは、ラスタ密度とプレーン密度とがバランス良く、つまり1:1に近い状態にあることで、ラスタ数とプレーン枚数とが適切に設定された上で、スキャンが行われ表示されることによって達成される。そこで、超音波診断装置1の演算部10において、ラスタ密度とプレーン密度とが1:1となるようにパラメータの1つであるスキャン角度θ1、揺動角度θ2を修正することで(ST9)、その結果、ラスタ密度とプレーン密度とが1:1となる。なお、当該修正を自動的に行うとしても、医療従事者等によって入力されたパラメータを根本的に修正することはしないのはもちろんである。
このようにここでは、図8の画面例に示すように断層画像におけるアンバランスの解消を、超音波診断装置1が入力されたパラメータを適宜修正することによってラスタ密度とプレーン密度とを1:1に近づける処理を説明した。
一方で、入力されたパラメータを修正するのではなく、ラスタ密度とプレーン密度の比率を超音波診断装置1にて自動的に1:1と設定してしまい、当該条件の下でラスタ数とプレーン枚数とを算出する処理も考えられる。
図9は、ラスタ密度とプレーン密度とを1:1に設定した上で、超音波診断装置1において、ラスタ数とプレーン枚数とを算出し医用画像を生成する流れを示すフローチャートである。なお、図9に示すフローチャートにおいて、図3に示すフローチャートと同じ処理については、同じステップ数を示している。
まず、超音波診断装置1において入力された各種パラメータの値を把握する(ST1)。判断部13では、入力されたパラメータのうち、スキャン角度と揺動角度を抽出する(ST11)。その上で、両者の角度を確認する(ST12)。ここでスキャン角度と揺動角度とを確認するのは、両者の角度が大きく異なると、ラスタ密度とプレーン密度とが互いに乖離した値となり、ひいては、表示部1gに表示されるスキャン方向の断層画像(A面)と揺動方向の断層画像(B面)の画質がアンバランスになる可能性が考えられるからである。
判断部13がスキャン角度と揺動角度を確認した結果、両者の角度が大きく異なる場合には(ST12のYES)、式(2)に示すように、予めラスタ密度k1とプレーン密度k2との値をイコールとなるように、設定する(ST13)。
その上で、上述した式(1)に式(2)の関係を反映させると、次に示す式(3)を得ることができる。
設定されたラスタ密度k1とプレーン密度k2とを用いて式(3)を利用することで、スキャン時間Tとパルス繰り返し周波数(prf)tにより、ラスタ数X1及びプレーン枚数X2とが算出されることになる(ST14)。このようにして算出されたラスタ数X1及びプレーン枚数X2を基に被検体をスキャンし、医用画像を生成する(ST5、ST6)。これから先の処理については上述した通りである。
このように、ラスタ密度k1とプレーン密度k2とをk1=k2となるように自動的に設定することによって、例えば、図8の画面例に示す、A面とB面とのアンバランスを解消することができる。
ここで、図10は、実施の形態において算出されるラスタ数とプレーン枚数を用いて生成された医用画像の表示例を示す画面例である。すなわち、図8に示す画面例と比較してみると、A面とB面とで両者の画面の質にアンバランスなところは見受けられず、A面もB面同様の画質をもって表示されることになる。これは、スキャン角度と揺動角度のアンバランスを式(3)において考慮しているからである。
なお、判断部13がスキャン角度と揺動角度とを比較した結果、両者の角度において大きく異なるところがない場合には(ST12のNO)、これまで通り入力されたパラメータを基にラスタ密度k1とプレーン密度k2とを算出し(ST2)、当該密度を利用してラスタ数とプレーン枚数を算出する(ST14以降)。
次に、これまで説明してきたように、ラスタ密度k1とプレーン密度k2とを利用してラスタ数とプレーン枚数を算出する方法の、別の方法について説明する。
図11は、超音波診断装置1において、別の方法を用いてラスタ数とプレーン枚数とを算出し医用画像を生成する流れを示すフローチャートである。図11に示すフローチャートにおいて、これまでに示されたフローチャートと同じ処理については、同じステップ数を示している。
ここでは、算出されたラスタ密度k1とプレーン密度k2の絶対値を基に、適切なラスタ数とプレーン枚数とを求めることとしている。具体的なラスタ数とプレーン枚数の算出の流れは以下の通りである。
まず、医療従事者等によって入力された各種パラメータの値を把握し、これらの値を利用して密度算出部12がラスタ密度とプレーン密度とを算出する(ST1、ST2)。これらの処理はこれまで説明した通りである。
判断部13では、算出されたラスタ密度とプレーン密度との値を受信し、両者の絶対値を把握する(ST21)。その上で、把握された両密度の絶対値を基準となる絶対値と比較する(ST22)。ここで基準となる絶対値とは、当該値を密度として用いてラスタ数とプレーン枚数とを算出することによって、画質が維持された適切な医用画像を生成することができる値であり、例えば、画質を維持可能な密度としての下限値を示している。従って、当該基準絶対値は、例えば、記憶部1i内に予め設定されている。判断部13では、当該基準絶対値を用いて、算出されたラスタ密度とプレーン密度とを比較する。
その結果、算出されたラスタ密度とプレーン密度の絶対値が基準絶対値以上の値を取らなかった場合には(ST23のNO)、算出された密度の絶対値ではなく、基準絶対値を当該密度の値として選択する(ST24)。
すなわち、当該基準絶対値よりも小さな値をラスタ密度やプレーン密度として採用すると、画質が維持できず、例えば、画面が荒くなり、或いは、A面とB面との画質についてアンバランスな状態が生じ得ることになる。そこで、最低限の画質が維持できるように設定されている基準絶対値をラスタ数とプレーン枚数を算出する際の密度として利用するものである。
一方、判断部13が算出された密度と基準絶対値とを比較した結果、算出された密度の値が基準絶対値以上の値を示している場合には(ST23のYES)、密度算出部12において算出されたラスタ密度k1とプレーン密度k2をそのまま利用してラスタ数とプレーン枚数とを算出する処理を行う。
その後、選択、或いは、算出されたラスタ密度k1とプレーン密度k2とを利用して、上述した式を利用してラスタ数とプレーン枚数を算出し(ST15)、当該値を基に被検体に対するスキャンが行われる。その結果、得られたボリュームデータを基に、ボリューム画像や設定断面における断層画像が表示部1gに表示されることになる(ST5以下)。
図12は、図11に示すフローチャートの流れに従って生成された医用画像の表示例を示す画面例である。通常、ボリュームレートを高くすると画面表示が粗くなり、画質は落ちることになるが、ラスタ密度及びプレーン密度の絶対値を利用して上述したような処理を行うことによって、ボリュームレートを高くしたとしてもボリュームレートが低い場合と同様の画質を維持することができる。
例えば、図7や図10に示す画像では、ボリュームレートは2vps(volume per second)に設定されており、この状態から単にボリュームレートを例えば、6vpsへと上げてこれまで同様の処理を行って医用画像を表示させると、画質は低下する。
但し、上述したように、図11に示す処理の流れを利用して、ラスタ密度及びプレーン密度の絶対値を基にラスタ数とプレーン枚数とを算出しスキャンを行うと、ボリュームレートを上げたにも拘わらず、図12に示す画像のように、図7や図10に示すボリュームレートを上げる前の画像と比較して遜色のない画質を維持することが可能となる。
なお、ここでは、ラスタ密度とプレーン密度の両者の絶対値に関して基準絶対値との比較を行っている。この処理の方法を採用した場合のメリットは上述した通りであるが、ラスタ数が影響するA面の画像とプレーン枚数が影響するB面の画像との画質のバランスについては考慮していない。そこで、例えば、次のように処理を行うことでA面、B面の両者が画質においてアンバランスにならないようにすることができる。
図13は、超音波診断装置1において、さらに別の方法を用いてラスタ数とプレーン枚数とを算出し医用画像を生成する流れを示すフローチャートである。ここでは、ラスタ密度とプレーン密度が基準絶対値以上の値を取らない場合の処理にポイントがある。なお、図13に示すフローチャートにおいて、これまでに示されたフローチャートと同じ処理については、同じステップ数を示している。
すなわち、ラスタ密度、プレーン密度の密度が基準絶対値より小さな値である場合、ラスタ数とプレーン枚数を算出するに当たって、算出された密度ではなく基準絶対値を採用する(ST24)。但しこのような場合は、ラスタ密度、及び、プレーン密度の両者が基準絶対値より小さな値を示す場合、または、ラスタ密度、或いは、プレーン密度のいずれか一方が基準絶対値より小さな値を示す場合、いずれも考えることができる。
ラスタ密度、及び、プレーン密度の両者が基準絶対値より小さな値を示す場合には、いずれの密度についても基準絶対値が選択されることになるため、両者の密度がアンバランスとなることは考えにくい。これに対して、いずれか一方は基準絶対値よりも小さな値であるものの、他方は基準絶対値以上の値を持っている場合には、両者の密度がアンバランスとなる可能性がある。
そこで、判断部13ではラスタ密度及びプレーン密度のいずれもが絶対値を選択したか否かを確認する(ST31)。判断の結果、ラスタ密度、或いは、プレーン密度のいずれかが絶対値を選択した場合には(ST31のNO)、両者の値を調整する(ST32)ことで、医用画像が生成される場合に、その画質がアンバランスに表示されることを回避することができる。具体的には、例えば、以下の処理を行う。
例えば、ラスタ密度k1の絶対値を20、プレーン密度k2の絶対値を8とする。また、基準絶対値の値を10とする。この場合、プレーン密度k2の値は、基準絶対値よりも小さな値を示している。従って、上述した処理に従って、基準絶対値の値である10をその密度(k2=10)とする。一方、ラスタ密度k1については、基準絶対値以上の値(20)を備えていることから、このままであれば、ラスタ密度k1の値は算出された値を利用することになる。
但し、このように算出された値をそのまま利用する処理の他に、例えば、プレーン密度k2の値を基準絶対値とする前の値、すなわち、算出されたプレーン密度k2の値と算出されたラスタ密度k1との比率を維持するようにラスタ密度k1の値を調整する処理を行っても良い。
或いは、表示される画質を維持するだけではなく、ラスタ数が影響するA面の画像とプレーン枚数が影響するB面の画像との画質のバランスに配慮して、例えば、これまでの処理とは異なり、基準絶対値以上の値を備えるラスタ密度k1の値をそのまま利用するのではなく、プレーン密度k2の値に配慮して、例えば、ラスタ密度k1の値を18と設定する調整方法も採用することができる。
このように、ラスタ密度、或いは、プレーン密度のいずれかが絶対値を選択した場合に画質のアンバランスさが発現する可能性が考えられるときには、両者のバランスを調整した上で、その値を持ってラスタ数、プレーン枚数を算出するように処理する(ST33)。
一方、もし両者ともに絶対値を選択した場合は(ST31のYES)、その値を持ってラスタ数、プレーン枚数を算出するように処理する(ST33)。
以上説明した通り、ラスタ密度k1の値とプレーン密度k2の値を単純に基準絶対値との比較で決定するだけではなく、両者のバランスにまで配慮して算出された密度の値は基準絶対値以上の値を示しているにも拘わらず、あえてその値を下げるといった調整を行うことによって、ラスタ数が影響するA面の画像とプレーン枚数が影響するB面の画像との画質のバランスを取ることができる。
これまで説明してきたように、ラスタ密度k1とプレーン密度k2をできるだけ1:1となるように処理を行うと、ラスタ数が影響するA面の画像とプレーン枚数が影響するB面の画像との画質を向上させることができる。一方でボリュームレートを高くすると、1ボリューム当たりのスキャン時間Tは短くなる。従って、1つのボリューム画像を生成するのに十分なラスタ数を得ることができなくなる。そのため、ラスタ密度k1とプレーン密度k2の絶対値をとり、基準絶対値と比較することで、ボリュームレートを高く設定した場合にもこれまで同様の画質を維持することができる。
以上の処理は、あくまでも例えば走査線を等方に、すなわちスキャン方向A、或いは、揺動方向Bにおいて均等に走査線を出す(密度を均一化する)ことを前提に行われている。但し、検査によっては、例えばスキャン方向Aのうち、特定の方向に意図的に走査線を増やしてスキャンを行いたい場合が生ずる。
例えば、上述したボリュームレートを高くする設定がなされた場合には、ラスタ密度k1を等方とする条件のままでは、何の手当もしないと、ラスタ数が影響するA面の画像とプレーン枚数が影響するB面の画像の画質が悪く、医療従事者が診断をする上で必要な分解能を得ることができない場合も考えられる。そこで手当の1つとして、上述したように絶対値を用いた処理を行うことで、ラスタ密度k1を等方とする条件の下で画質の維持、向上を図ることを可能としている。
そして、手当としてはこの方法に限られず、別の方法も考えられる。すなわち、次に説明する処理の方法は、例えば、ラスタ密度k1を等方とせず特定の方向に意図的に走査線を増やしてスキャンを行う場合であっても同じように画質の維持、向上を図るという効果を得ることができるものである。
図14は、超音波診断装置1において、ボリュームレートを変更する際に画質を維持するべくラスタ数とプレーン枚数とを算出し医用画像を生成する流れを示すフローチャートである。なお、ここではプレーン密度k2ではなくラスタ密度k1を意図的に変更することを前提に説明を行う。また、図14に示すフローチャートにおいて、これまでに示されたフローチャートと同じ処理については、同じステップ数を示している。
ここで説明する処理において特徴となる点は、密度の上限値、下限値を予め設けておき、これら設定されている上限値、下限値と算出されたラスタ密度k1、プレーン密度k2をそれぞれ比較する。
図14に示すフローチャートを用いて説明すると、まず、医療従事者等によって超音波診断装置1に入力されたパラメータを把握するとともに、演算部10において当該パラメータを利用してスキャン方向Aの密度(ラスタ密度k1)と揺動方向Bにおける密度(プレーン密度k2)とを算出する(ST1、ST2)。
次に密度算出部12において算出されたラスタ密度k1及びプレーン密度k2を、判断部13において予め定められている上限値kmaxと下限値kminと比較する(ST41)。これら上限値kmaxと下限値kminは、例えば、事前に記憶部1i内に記憶されている。
比較の結果、ラスタ密度k1とプレーン密度k2の値が上限値kmax或いは下限値kminである閾値を超えた場合には(ST42のYES)、判断部13は次にいずれの面、すなわち、スキャン方向Aにおける断層画像(A面)が、右上の表示領域には、揺動方向Bにおける断層画像(B面)のいずれの面の分解能を重視するかを確認する(ST43)。
ここでは判断部13は、A面、B面のいずれの分解能を重視するのかの判断を、スキャン角度θ1と揺動角度θ2との大きさを比較することで行う(ST44)。つまり、角度が大きな値を示す、ということは、医療従事者がより広い範囲を見たいということであり、従って、そのような断層画像における画質を上げることとするものである。
例えば、スキャンを行って取得するボリュームデータの形状が図5に示すような幅広で奥行きの狭い(薄い)形状の場合、スキャン角度θ1は揺動角度θ2よりも大きいものとなる。従ってこのような場合には、揺動方向Bの断層画像であるB面よりもスキャン方向Aにおける断層画像であるA面が医療従事者がみたい断層画像であると推察できるので、A面に表示される断層画像の分解能を上げるべく処理を行う。なお、以下においては、分解能を重視する特定の断層画像を便宜上「断層画像α」と表わし、それ以外の断層画像を便宜上「断層画像β」と表わす。
そして判断部13がスキャン角度θ1と揺動角度θ2との大きさを比較していずれの面の分解能を重視するかの判断を行った結果、より角度の小さな面における断層画像βの密度を下限値kminと設定する(ST45)。
算出部14では、判断部13によって設定された密度を基に、ラスタ数X1とプレーン枚数X2とを求める(ST46)。この際利用する式は、以下の式(4)である。
式(4)を用いることで、下限値kminと設定されたより角度の小さな面における断層画像βの密度を用いてラスタ数X1とプレーン枚数X2とが求められる。算出されたラスタ数X1とプレーン枚数X2を用いて被検体がスキャンされ、取得された情報を基に医用画像が生成される(ST6、ST7)。生成された医用画像は表示部1gに表示され、医療従事者による確認を経て(ST8)、再度ラスタ密度k1とプレーン密度k2の設定が行われるか、或いは、そのまま撮影が続行となる(ST9)。
ここで図15は、実施の形態において算出されるラスタ数とプレーン枚数を用いずに生成された医用画像の表示例を示す画面例である。一方、図16は、実施の形態において算出されるラスタ数とプレーン枚数を用いて生成された医用画像の表示例を示す画面例である。
図15に示す画面例にも明らかな通り、手当てせずにボリュームレートを上げる処理を行うと、A面及びB面における画質は悪化し、診断をする上で必要な分解能を得ることができていない。
一方で、上述した式(4)を用いて算出されたラスタ数X1とプレーン枚数X2を利用して医用画像を生成、表示すると、図16の画面例に示すように、断層画像αであるA面の分解能は格段に上がっている。これは上述したようにここでは断層画像βのB面よりもA面の分解能を重視したためである。但し、B面の分解能についてもA面の分解能が改善されることに伴って、図15に示す画面例のB面よりも高い分解能を得ることができている。
なお、ここではA面、B面のいずれの分解能を重視するかの判断をスキャン角度θ1と揺動角度θ2との比較を行うことで行っていたが、分解能を重視する断層画像αの選択方法については、例えば、いずれの方向に走査線が多く出されると分解能が上がるか、画像認識の技術を利用して判断することとしても良い。
また、超音波診断装置1が自動で、或いは、医療従事者の指示に基づいて分解能を重視する断層画像αとそうでない断層画像βとの密度のバランス調整を行うこともでき、当該調整を行うことによって、画面上よりバランスの取れた画質を取得することができる。医療従事者による指示の場合、例えば、それぞれのプレーン密度の比率を示すパターンを複数種類事前に設定しておき、その中から選択可能としても良い。
以上説明した通り、ボリュームスキャンを行う際の条件設定に関して、ラスタ密度とプレーン密度とを用いてラスタ数とプレーン枚数とを設定することによって、生成される医用画像に対する画質を向上させることが可能である超音波診断装置を提供することができる。
また、表示される断層画像のバランスを取る処理を組み合わせて行うことによって、画質を向上させることに加えて画面全体の表示バランスにも配慮した医用画像の生成、表示を行うことが可能となる。
さらに、これまでは、超音波診断装置1にて使用する超音波プローブPは、メカニカル4Dプローブであることを前提に説明した。但し、超音波プローブPは、メカニカル4Dプローブに限られず、例えばマトリクスアレイプローブも利用することができる。マトリクスアレイプローブを利用した場合、メカニカル4Dプローブを利用する際のスキャン方向はアジマス方向であり、揺動方向はエレベーション方向となるが、処理の流れ、内容は上述した通りである。すなわち、ラスタ密度とプレーン密度とを用いてラスタ数とプレーン枚数とを設定することによって、生成される医用画像に対する画質を向上させることができる。
またこれまでは、ラスタ密度とプレーン密度とを用いてラスタ数とプレーン枚数とを超音波診断装置1が自動的に設定することによって、生成される医用画像の画質を向上させることについて説明してきたが、例えば、スキャンの対象となる部位に対する最適なラスタ密度及びプレーン密度が予め部位ごとに超音波診断装置1に設定されていても良い。この場合は、医療従事者がスキャンの対象となる部位を勘案して、例えば表示部に表示される部位のアイコンを選択することによって、選択された部位をスキャンする際の最適なラスタ密度及びプレーン密度を設定することができる。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。