JP6651368B2 - クラッチ誤締結判定装置及びこれを用いたクラッチ誤締結対応制御装置 - Google Patents
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Description
油量収支が厳しくなると、ベルト式無段変速機の場合、ベルト滑りが発生し、ベルト滑りが発生すると、この滑りの分だけモータの回転が自由になってモータの回転速度が上昇する。モータの回転速度が上昇するとポンプが吐出する油量や油圧が上昇するため、油量不足が解消されて元圧が確保されるようになって、ベルトグリップが回復し、再び、モータの回転速度が下降しポンプの油量の不足することになってベルトスリップが発生する。
したがって、ベルトのスリップとグリップとが繰り返される前に、クラッチの誤締結を判定することができるようにしたい。
(2)前記異常仮判定条件は、前記電動モータの回転速度が前記目標回転速度よりも低速側に所定差以上乖離したことである第2仮判定条件をさらに含み、前記異常仮判定手段は、前記第1仮判定条件及び前記第2仮判定条件が成立したか否かを前記回転速度差検出手段及び前記モータ回転検出手段の検出情報に基づいて判定し、前記第1仮判定条件及び前記第2仮判定条件が共に成立したら前記異常仮判定条件が成立したと判定することが好ましい。
(3)前記異常仮判定手段は、前記第1仮判定条件及び前記第2仮判定条件が共に成立した状態が設定時間以上継続したら前記異常仮判定条件が成立したと判定することが好ましい。
(4)本発明のクラッチ誤締結対応制御装置は、上記(1)〜(3)の何れかに記載のクラッチ誤締結判定装置と、前記クラッチ誤締結判定装置により、前記クラッチが誤締結状態であることが判定されたら、前記駆動源の出力トルクを低下させるトルクダウン制御を実施する誤締結対応制御手段と、を有することを特徴としている。
前記誤締結対応制御手段は、前記トルクダウン制御を、下限値で制限して実施することが好ましい。
前記トルクダウン制御では、前記セカンダリ油圧が上昇した場合には前記駆動源の出力トルクを保持し、前記セカンダリ油圧が低下した場合には前記駆動源の出力トルクを前記セカンダリ油圧に応じて低下させることが好ましい。
前記誤締結対応制御手段は、前記トルクダウン制御を実施している際に、前記駆動源に対して出力トルクの増加要求があったら、前記駆動源の出力トルクの増加時に前記出力トルクの増加速度を制限することが好ましい。
前記誤締結対応制御手段は、前記トルクダウン制御を終了する際には、前記駆動源の出力トルクを所定の増加速度で徐々に増加復帰させることが好ましい。
また、以下の説明では、回転速度について、回転数と表記するが、これらはいずれも単位時間当たりの回転数であるので、回転速度と同等である。
また、以下の説明では、検出値と目標値とを明確に区別する際には、各値を示す文字に、検出値なら「_r」を、目標値なら「_t」を添付する。
図1は本実施形態にかかる車両用無段変速機が装備された電動車両のパワートレイン及びその制御系統を示す模式的構成図である。図1に示すように、本車両は、エンジン(内燃機関)1と、モータジェネレータ(発電機能付き電動モータ、以下、略してMGともいう)2と、前後進切替機構4とバリエータ(無段変速機構)5とを有する自動変速機としての無段変速機(以下、CVTともいう)3と、第1クラッチ(以下、略してCL1ともいう)6と、第2クラッチ(以下、略してCL2ともいう)7と、ディファレンシャルギア8と、駆動輪9,9と、を備えた、ハイブリッド車両として構成されている。
また、第2クラッチ7は、MG2とCVT3内のバリエータ5との間に設けられている。
次に、このようなパワートレインの制御系を説明する。
図1に示すように、本車両には、制御系統として、パワートレイン全体を制御する車両制御手段としての統合制御装置(HCM,Hybrid Control Module)10と、HCM10の制御下でCVT5を制御する自動変速機制御装置(ATCU,Automatic transmission Control Unit)30とが備えられている。なお、HCM10,ATCU30は、いずれも中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等を備えたマイクロコンピュータで構成される。
CVT3は、上記の前後進切替機構4とバリエータ5とを備え、バリエータ5は、プライマリプーリ51と、セカンダリプーリ52と、これらのプーリ51,52に掛け回されたベルト又はチェーンといった無端状の動力伝達部材(以下、ベルトと称する)53とを備えている。
変速制御部30Aは、前記第1クラッチ6の油圧と、前後進切替機構4の前進クラッチ7a,後退ブレーキ7bの油圧と、バリエータ5のプライマリプーリ51の油圧(プライマリプーリ圧)及びセカンダリプーリ52の油圧(セカンダリプーリ圧)とを、それぞれ設定し、油圧ユニットの電磁弁のソレノイド(プライマリプーリ圧に関してはプライマリソレノイド、セカンダリプーリ圧に関してはセカンダリソレノイド)の制御により、設定した各油圧を生成し供給する。
また、異常監視部30Bは、誤締結異常を判定したら、これに対応する制御を行なう。
このため、異常監視部30Bには、図1,図3に示すように、機能要素として、許可条件判定部(許可条件判定手段)31、異常仮判定部(異常仮判定手段)32、異常確定部(異常確定手段)33、誤締結対応制御部(誤締結対応制御手段)34がそれぞれ設けられている。
ここで、許可条件判定部31が判定を行なう許可条件を説明する。
この許可条件は、第2クラッチ7が誤締結をしていて油量収支が厳しくなる状況が発生する前提条件に相当し、許可条件には以下の(a)〜(e)の各条件が設けられている。これらの(a)〜(e)の各条件が何れも成立したら許可条件が成立する。
(a)走行レンジが選択されていること
(b)第2クラッチ7のクラッチ制御モードが完全係合からスリップ係合又は解放に切り替えられて一定時間が経過していること
(c)現在もクラッチ制御モードが完全係合でないこと
(d)車速が所定車速未満であること
(e)作動油の油温が所定温度よりも高いこと
ただし、IHSW91の異常、MG2の回転異常、プライマリプーリ回転センサ93の異常、セカンダリプーリ回転センサ94の異常、油温センサ98の異常、第2クラッチ7の油圧制御用のソレノイドの電気異常、データ通信異常等、誤締結異常判定に係る機器の異常が1つでも発生したら誤締結異常判定処理を禁止する。
条件(b),(c)はHCM10の指示情報から得ることができる。条件(b)の「一定時間が経過していること」は、クラッチ制御モードが完全係合からスリップ係合又は解放に切り替えられてから第2クラッチ7が実際にスリップ係合又は解放に移行するのに応答遅れがありこれを考慮したものである。条件(b),(c)は異常がなければ第2クラッチ7がスリップ係合又は解放の状態にあることを意味する。
条件(d)は、車両がWSCモードを実施する低車速走行状態であることを意味する。
条件(e)は車両の始動直後等に作動油の油温が低い状況を除外するものである。
(1)第2クラッチ7の入力側(モータ回転数Nm_r)と出力側(プライマリプーリ回転数Npri_r)とに差回転(入出力回転速度差)がないこと
(2)MG2の実回転数Nm_rが目標回転数Nm_tよりも低速側に所定差以上乖離していること
この異常確定条件には以下の条件(3),(4)が設けられている。
(3)MG2の実回転数Nm_rが予め設定された下限回転数(EVアイドル回転数)よりも低いこと
(4)第2クラッチ7の入力側(モータ回転数Nm_r)と出力側(プライマリプーリ回転数Npri_r)とに差回転(入出力回転速度差)がないこと
図4に例示するように、HEV走行モードで、第2クラッチ7を完全係合(締結)した状態で、アクセルオフで走行していて、車速が低下し始めて(時点t1)、これに伴ってMG2の回転数が低下していくと、時点t2でHCM10は第2クラッチ7のクラッチ制御モード(CL2モード)を、完全係合からスリップ係合(WSC)に切り替えてMG2の回転低下を回避する制御を行なう。なお、図4では、CL2モード指示の状態を実線で示し、CL2モード指示に従った実際のCL2の状態(正常時)を鎖線で示している。
なお、本実施形態では、異常確定部33で異常確定の判定がされたらトルクダウン制御を実施するが、このトルクダウン制御自体にも、許可条件が設けられている。
このトルクダウン制御の許可条件は、以下の(a´),(b´)の各条件が設けられている。これらの(a´),(b´)の各条件が何れも成立したら許可条件が成立する。
(a´)走行レンジが選択されていること
(b´)モータ目標回転数Nm_t>所定値(ここでは、EVアイドル回転数)の状態が所定時間継続していること(所定時間はMG2の応答時間)
ただし、IHSW91の異常、MG2の回転異常、プライマリプーリ回転センサ93の異常、セカンダリプーリ回転センサ94の異常、スロットル開度センサ95の異常、セカンダリ油圧センサ97の異常、第2クラッチ7の油圧制御用のソレノイドの電気異常、データ通信異常等、誤締結異常判定に係る機器の異常が1つでも発生したらトルクダウン制御を禁止する。
(1´)モータ回転数Nm_r<所定値(ここでは、EVアイドル回転数)の状態が所定カウント期間継続していること(所定カウント期間はセンサの読み取り精度の影響を排除する微少時間)
また、トルクダウン制御を開始後、トルクダウン条件(1´)が成立しなくなったり、許可条件(a´)が成立しなくなったり、MG2に対して出力トルクの増加要求があったりして、この状態が所定カウント期間継続(所定カウント期間はセンサの読み取り精度の影響を排除する微少時間)したら、トルクダウン制御を解除する。
つまり、セカンダリ油圧Psec_rが低下すれば、ベルトスリップを招き易くなるので、駆動源であるMG2の出力トルクをセカンダリ油圧Psec_rに対応させて低下させ、CVT3への入力トルクを抑えることでベルトスリップを抑制する(時点t3〜時点t4)。
本発明の一実施形態に係るクラッチ誤締結判定装置及びクラッチ誤締結対応制御装置は、上述のように構成されているので、例えば、図9,図10のフローチャートに示すように、クラッチ誤締結の判定、及び、誤締結対応制御を実施することができる。なお、図9,図10のフローチャートは、車両のキースイッチが入れられると、異常確定が判定されるまで或いはキースイッチが切られるまで、所定の制御周期で実施される。
図10に示すように、まず、条件(a´),(b´)の許可条件の判定処理を実施する(ステップT10)。なお、許可条件の判定は禁止条件に相当する状況でないことを確認した上で行なう。
本装置では、このような確認時間が不要となるので、条件(3)の状態が発生したら速やかに異常を確定することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態を本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して適用することが可能である。
2 モータジェネレータ(MG、発電機能付き電動モータ)
3 無段変速機(CVT)
4 前後進切替機構
5 バリエータ(無段変速機構)
6 第1クラッチ
7 第2クラッチ
7a 第2クラッチとしての前進クラッチ
7b 第2クラッチとしての後退ブレーキ
8 ディファレンシャルギア
9 駆動輪
10 統合制御装置(HCM,Hybrid Control Module)
30 自動変速機制御装置(ATCU,Automatic transmission Control Unit)
30A 変速制御部
30B 異常監視部
31 許可条件判定部(許可条件判定手段)
32 異常仮判定部(異常仮判定手段)
33 異常確定部(異常確定手段)
34 誤締結対応制御部(誤締結対応制御手段)
51 プライマリプーリ
52 セカンダリプーリ
53 無端状の動力伝達部材(ベルト)
91 インヒビタスイッチ(IHSW)
92 アクセルポジションセンサ(APS)
93 プライマリプーリ回転センサ
94 セカンダリプーリ回転センサ
95 スロットル開度センサ
96 ブレーキスイッチ
97 セカンダリ油圧センサ
98 油温センサ
Claims (4)
- 車両の駆動源である電動モータと、前記電動モータに駆動連結された機械式のオイルポンプと、プライマリプーリ及びセカンダリプーリとこれらのプーリに掛け回された無端状の動力伝達部材とを有し前記オイルポンプからの油圧を用いて作動する油圧式のバリエータを備えた無段変速機と、前記電動モータと前記無段変速機との間に介装された摩擦係合式のクラッチと、前記車両の走行状態に応じて完全係合,スリップ係合及び解放の何れかのクラッチ制御モードを選択し選択した前記クラッチ制御モードで前記クラッチを制御するクラッチ制御手段と、前記電動モータへの出力要求と前記クラッチの状態とに基づいて前記電動モータを下限回転速度以上の目標回転速度で回転するように制御する車両制御手段と、を有する車両において、前記クラッチが誤って完全係合する誤締結状態を判定するクラッチ誤締結判定装置であって、
前記無段変速機の選択レンジを検出するレンジ検出手段と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記電動モータの回転速度を検出するモータ回転検出手段と、
前記クラッチの入出力回転速度差を検出する回転速度差検出手段と、
前記クラッチ制御手段により選択された前記クラッチ制御モードの情報と、前記レンジ検出手段及び前記車速検出手段からの検出情報とに基づいて、前記クラッチ制御モードが完全係合でないこと、前記選択レンジが走行レンジであること、及び、前記車速が所定値未満であること、を含む各条件の全てが成立したら、許可条件が成立したと判定する許可条件判定手段と、
前記許可条件判定手段により前記許可条件が成立したと判定されたら、前記クラッチに入出力回転速度差がないことである第1仮判定条件を含む異常仮判定条件が成立したか否かを前記回転速度差検出手段の検出情報に基づいて判定する異常仮判定手段と、
前記異常仮判定手段により異常仮判定条件が成立していると判定されているときに、前記電動モータの回転速度が前記下限回転速度よりも低いことである異常確定条件が成立したか否かを前記モータ回転検出手段の検出情報に基づいて判定し、異常確定条件が成立したら前記クラッチが誤締結状態であると確定する異常確定手段とを有する
ことを特徴とする、クラッチ誤締結判定装置。 - 前記異常仮判定条件は、前記電動モータの回転速度が前記目標回転速度よりも低速側に所定差以上乖離したことである第2仮判定条件をさらに含み、
前記異常仮判定手段は、前記第1仮判定条件及び前記第2仮判定条件が成立したか否かを前記回転速度差検出手段及び前記モータ回転検出手段の検出情報に基づいて判定し、前記第1仮判定条件及び前記第2仮判定条件が共に成立したら前記異常仮判定条件が成立したと判定する
ことを特徴とする、請求項1記載のクラッチ誤締結判定装置。 - 前記異常仮判定手段は、前記第1仮判定条件及び前記第2仮判定条件が共に成立した状態が設定時間以上継続したら前記異常仮判定条件が成立したと判定する
ことを特徴とする、請求項2記載のクラッチ誤締結判定装置。 - 請求項1〜3の何れか1項に記載のクラッチ誤締結判定装置と、
前記クラッチ誤締結判定装置により、前記クラッチが誤締結状態であることが判定されたら、前記駆動源の出力トルクを低下させるトルクダウン制御を実施する誤締結対応制御手段と、を有する
ことを特徴とする、クラッチ誤締結対応制御装置。
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