JP6647586B2 - 絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法およびゲート絶縁膜の製造方法 - Google Patents
絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法およびゲート絶縁膜の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6647586B2 JP6647586B2 JP2015076104A JP2015076104A JP6647586B2 JP 6647586 B2 JP6647586 B2 JP 6647586B2 JP 2015076104 A JP2015076104 A JP 2015076104A JP 2015076104 A JP2015076104 A JP 2015076104A JP 6647586 B2 JP6647586 B2 JP 6647586B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- insulating film
- solution
- forming
- precursor solution
- autoclave treatment
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Formation Of Insulating Films (AREA)
- Thin Film Transistor (AREA)
Description
これら情報機器のデバイスには大量(数億)の薄膜トランジスタ(TFT)が搭載されて高速で作動している。このTFTの構成材料としてゲート絶縁膜は電流のスイッチに重要な役目を担っている。
また、ディスプレイなどの大面積化トレンドの中、TFTの従来作製法(真空スパッタリング、リソグラフィー)から脱真空プロセスを採用することにより製造コストを下げる狙いの一環として、液相プロセスによるTFT作製のための研究開発も盛んに行われている。このため、液相プロセスによる高誘電率酸化物薄膜の作製研究が重要な研究の一環となり、特に低温下(300℃以下)且つ簡易な装置を用いて電気性能に優れた高誘電率の酸化物絶縁膜を作製する方法の研究開発が注目されている。
薄膜トランジスタの製造方法として、SiNxからなる下層絶縁薄膜と有機絶縁膜からなる上層絶縁薄膜の2層構造の絶縁膜を形成する製造方法が知られている(特許文献3参照)。
更に、スパッタリング、レーザーアブレーションなど25〜150℃で実施できる低温プロセスを用いたTaO、VO、TiO、BiTiO等の無機酸化物絶縁膜を形成する製造方法が知られている(特許文献5参照)。
更に、Sr、Zr、Ti、Bi、Taなどの金属イオンのアルコール溶液を用いて絶縁膜を作製する技術も開示されている(特許文献6参照)。
これらの方法により成膜した後、高誘電体薄膜を得るためには、通常、500℃以上の高い温度で熱処理を施し、薄膜を結晶化させる必要がある。
この溶液においては異なる金属イオン間の化学結合がなく、分子集合体あるいはクラスター構造の秩序性が低いため、成膜後に高温焼成しても緻密な酸化物の薄膜を実現するのは困難であり、特に低温度プロセス(400℃以下)によって良好な性能を有する酸化物薄膜の作製は極めて難しいという問題があった。
本発明は、400℃ 以下、あるいは300℃ 以下の低温プロセスで成膜可能であって、UV照射による絶縁膜の低温作製が可能であり、低温成膜であっても高誘電率かつ高絶縁特性の絶縁膜を提供できる技術の提供を目的とする。
本発明は、300℃ 以下の低温プロセスで成膜可能であって、リーク電流が少なく、ゲート電流を低減でき、低温作製可能な絶縁膜を提供できる利点を生かして銅のゲート電極を備えた薄膜トランジスタを実現可能とする技術の提供を目的とする。
本発明に係る絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法は、Ln化合物(LnはLaあるいはTmを含む希土類元素のうち、1種または2種以上を示す。)とZr化合物とを溶媒に溶解し、オートクレーブ処理を経る絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法であり、紫外線の吸収端波長が280nm以上であって、室温〜200℃領域での熱分析により計測される有機成分含有量が、前記オートクレーブ処理前50質量%を超え、前記オートクレーブ処理後50質量%以下であり、前記Ln化合物と前記Zr化合物が前記溶媒中に溶解したLn錯体とZr錯体を有し、これら錯体が化学結合により繋がった分子集合体を含有させることを特徴とする。
また、本発明に係る絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法によれば、従来よりも低温で高誘電率かつリーク電流の少ない絶縁膜を提供することができ、この絶縁膜を備えた薄膜トランジスタとすることにより、薄膜トランジスタの低温作製に貢献できる。
以下に、本発明の第一実施形態について、図面を適宜参照しながら説明する。
図1(A)は本発明に係る絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて構成されたゲート絶縁膜を備えたボトムゲート型薄膜トランジスタ(トランジスタデバイス)の一例構造を示す断面図である。この例の薄膜トランジスタTは、基板1上にゲート電極2が形成され、基板1上にゲート電極2を覆うようにゲート絶縁膜3が形成され、ゲート絶縁膜3の上に半導体層4が積層され、半導体層4の上に前記ゲート電極2の上方両側に対峙するようにソース電極5とドレイン電極6が形成されてなる。
本実施形態の薄膜トランジスタTにおいて、ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6は一例としてPtなどの良導電性の金属材料からなり、半導体層4はInOなどの酸化物半導体からなる。また、本実施形態のゲート絶縁膜3はLaZrOで示される絶縁材料、LaZrHfOで示される絶縁材料、または、これらに数%程度のYを添加した絶縁材料からなる。ゲート絶縁膜3は、その他、ZrO2,HfO2,Ta2O5,Y2O3,TiO2,Al2O3,Ce2O3,SrTiO3などからなる組成の絶縁材料により形成されていても良い。
本実施形態において用いるLa化合物として、酢酸ランタン等カルボン酸ランタン類化合物(、2−エチルヘキサンランタン、クエン酸ランタンなど)の他に、硝酸ランタン、水酸化ランタン、ランタンアセチルアセトナート、トリイソプロポキシランタン、塩化ランタンなどのうち、1種または2種以上を用いることができ、Zr化合物として、ブトキシジルコニウム等アルコキシドジルコニウム類化合物の他に、カルボン酸ジルコニウム類化合物(2−エチルヘキサンジルコニウム、酢酸ジルコニウムなど)、アセチルアセトナートジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムなど)のうち、1種または2種以上を用いることもできる。
また、溶媒は、プロピオン酸等カルボン酸類の他に、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、テトラヒドロフランなどよりなる群から選択される1種以上を含有するものを用いることができる。
また、溶液性状調整(安定性・粘度等)のために前記LaZrO酸化物溶液に重量比5%以下のキレート剤とするアミン化合物、増粘剤の多糖類あるいはセルロースなどの添加剤が含まれていても良い。
なお、本実施形態において、Laについては他の希土類元素と置換することが可能である。この場合、LaZrO酸化物溶液は、LnZrO酸化物溶液と表記できる。
LnZrO系の溶液とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのいずれかから選択される希土類元素のうち、1種または2種以上とZrの酸化物溶液を意味し、希土類元素は置換可能性が高い元素であるので、本実施形態のLaZrO系の溶液に限らず、LnZrO系の溶液一般に適用できると考えられる。また、LnZrO系の溶液の中には不可避不純物を含んでいても良い。
なお、後に説明する実施例においては、LaとZrのモル比の溶液において、LZ37溶液、LZ55溶液、LZ73溶液を主体として試験がなされている。
オートクレーブ処理は内部を高圧力にすることが可能な耐圧性の容器に溶液を収容し、沸点以上の高温に保持することができる装置による加圧加熱処理である。沸点以上の高温域、例えば、150〜230℃の範囲で加圧状態に必要時間(例えば、1〜数10時間程度)晒すオートクレーブ処理が望ましい。オートクレーブ処理する場合の温度範囲は150〜200℃が望ましく、160〜180℃の範囲がより好ましい。また、オートクレーブ処理を行う時間は製造効率の面から2〜20時間程度が望ましく、2〜12時間程度がより好ましい。
なお、オートクレーブ処理の温度上限は230℃に限らず、更に高温保持できる装置を用いる場合は更に高温度に保持しても良い。
オートクレーブ処理後の絶縁膜形成用前駆体溶液は、異なる金属イオン、例としてLa錯体イオンとZr錯体イオンが化学結合で互いに繋がった状態となり、多種類金属イオンが構成した新たな分子構造体あるいは分子集合体(クラスター)が生成している。また、これらのクラスターは秩序性が大幅に向上した微細構造を有する点に特徴を有する。
クラスターの一例として、LaaZrbOx(R1)y1(R2)y2(R3)y3なる組成式で示されるクラスターを例示することができる。このクラスターにおいてa、b、x、y1、y2、y3はいずれも分布を有する。
これらのクラスターは溶質(金属錯体)や溶媒あるいは添加剤との間にリガンド交換が起こり、クラスターを生成したものであり、これらのクラスターの構造によって後述する熱処理後の絶縁膜の構造、密度、特性に影響を及ぼす。
ゲート絶縁膜3を形成後、半導体層4を形成し、ソース電極5とドレイン電極6を形成することで図1(A)に示す構造の薄膜トランジスタTを得ることができる。
これは、前述した多種類金属イオンが構成した新たな分子構造体あるいは分子集合体(クラスター)が生成している絶縁膜形成用前駆体溶液に熱処理を施して得たゲート絶縁膜3であるので、膜としての密度が高く絶縁特性が向上することによっている。例えば、オートクレーブ未処理の溶液から得られる絶縁膜に対し1桁以上リーク電流を低減したゲート絶縁膜3を提供できる。前述の新たな分子構造体あるいは分子集合体(クラスター)が生成している絶縁膜形成用前駆体溶液は、クラスター実空間の秩序性が向上しているため、熱処理により絶縁膜となった状態において構造上の秩序性が向上する結果、膜としての密度が向上すると想定できる。
例えば、オートクレーブ処理した絶縁膜形成用前駆体溶液は長波長紫外線の吸収特性が向上するため、300℃以下の低温プロセスにおいて、紫外線およびオゾンによる光分解プロセスにより優れた絶縁性を有するゲート絶縁膜3を得ることができる。
このため、このゲート絶縁膜3を用いて薄膜トランジスタを製造するならば、150〜300℃の低温加熱処理であってもOFF電流が低く、ゲートのリーク電流が少なく、トランジスタ特性に優れた薄膜トランジスタTを得ることができる。
また、低温プロセスで薄膜トランジスタTのゲート絶縁膜3を形成できるので、加熱に弱い樹脂を基板とするフレキシブル基板に半導体を形成する場合、有機薄膜半導体などにも有効に適用できる。
この薄膜トランジスタT2は、基板11上にソース電極15とドレイン電極16が形成され、それらを覆うように半導体層14が形成され、半導体層14の上にゲート絶縁膜13を介しゲート電極12が形成されている。
この構造の薄膜トランジスタT2のゲート絶縁膜13についても先の実施形態のゲート絶縁膜3を構成した場合と同様に絶縁膜形成用前駆体溶液を用いてゲート絶縁膜13を形成することができる。
また、薄膜トランジスタは図1(A)、(B)に示した構造の他にも多数の種類があるが、いずれにおいてもゲート絶縁膜を介しソース電極及びドレイン電極とゲート電極が対峙した構造であるので、本実施形態の絶縁膜形成用前駆体溶液を用いていずれの構造の薄膜トランジスタにおいてもゲート絶縁膜を形成できるのは勿論である。
LZ37溶液(LaZrO:La/Zr=3/7)の調製:
0.0006molの酢酸ランタン(関東化学(株)製)と0.0014molのブトキシジルコニウム(ゲレスト(Gelest)社製)をプロピオン酸液に加えて10gのLZ37溶液を調製し、110℃のホットプレート上に30分攪拌後、静置した。
LZ37溶液のオートクレーブ処理:
上記10gのLZ37溶液をポリ4フッ化エチレン製の容器中に入れ、180℃・2時間の条件でオートクレーブ処理を行った。室温まで冷却後、0.2μmのフィルターを用いて溶液を濾過した。
オートクレーブ処理後、沈殿物が観察されず、薄黄色状態の絶縁膜形成用前駆体溶液となった。
また、オートクレーブ処理において、160℃・2時間、180℃・5時間、180℃・12時間の各条件にて処理した場合に得られた個々の絶縁膜形成用前駆体溶液について吸光度の波長依存性を測定した結果を図2に併せて示す。
このことから、オートクレーブ処理前の溶液が短波長領域の紫外線しか吸収しないのに対し、オートクレーブ処理後の絶縁膜形成用前駆体溶液は、長波長領域の紫外線を吸収するようになることがわかる。
いずれの濃度の絶縁膜形成用前駆体溶液であっても、溶液の紫外線吸収では処理前溶液から処理後の溶液へ大きなシフトが検出された。
図2、図3に示す各溶液においてオートクレーブ処理後の紫外線吸収の長波長シフト幅は異なっているが、LZ73溶液が最小値であり、280nmより長波長の紫外線吸収が現れている。このことは、オートクレーブ処理後の前駆体溶液の紫外線吸収端波長が280nm以上であり、組成に応じて、280〜380nmの範囲であることを示している。
図5はLZ55溶液に対するオートクレーブ処理前後の質量分析結果を示し、図6はLZ73溶液に対するオートクレーブ処理前後の質量分析結果を示す。
一例として、平均分子量ピーク507.07、791.03、865.07、1149.02の値が上昇し、横軸に示す平均分子量の多い領域にオートクレーブ処理後により多くのピークが出現している。これは、溶液中の金属錯体分子同士が反応することで平均分子量の多いクラスター構造体の形成が促進されたものと推定できる。
質量分析結果のピーク507.07は、La0〜1Zr2〜1(Ac)0〜2(PrA/Buto)4〜1O2〜0(OH)0〜4(H2O)0〜3 が可能な組成となる。
質量分析結果のピーク791.03は、La2〜3Zr(Ac)1〜6(PrA/Buto)3〜0O0〜4(OH)0〜4(H2O)0〜2 が可能な組成となる。
質量分析結果のピーク865.07は、La1〜3Zr2〜1(Ac)0〜6(PrA/Buto)7〜1O0〜4(OH)0〜4(H2O)3〜0 が可能な組成となる。
質量分析結果のピーク1149.02は、La0〜3Zr3〜1(Ac)2〜6(PrA/Buto)8〜3O0〜2(OH)0〜4(H2O)3〜0 が可能な組成となる。
いずれの溶液についても、オートクレーブ処理後では前駆体構造の単一化及び熱分解の高温化を示した。溶液の質量分析によると処理後溶液の分子質量が明らかに上昇した。
また、図7(A)、図8(A)に示す結果から明らかなように、オートクレーブ処理を施すことで室温〜300℃までの温度域において計測される有機成分の含有量が減少していることが分かる。このことから、La錯体とZr錯体を含む溶液にオートクレーブ処理を施すことで、室温〜300℃領域で熱分析により計測される有機成分含有量が50%を超えていた状態から50%以下に遷移していることがわかる。
図7(B)に示す結果から明らかなように、オートクレーブ処理していない溶液は3つのピークを示すので、熱分解温度の異なる複数の分子構造体が溶液中に存在すると想定できるのに対し、オートクレーブ処理後の溶液はいずれも1つのピークのみ現れている。このことから、オートクレーブ処理後の溶液は分子構造体の単一化と構造の安定化が推進されていると想定できる。
図8(B)はLZ55溶液について、オートクレーブ処理していない溶液とオートクレーブ処理後の溶液の熱分解挙動の変化を対比して示すグラフである。オートクレーブ処理は180℃で5時間処理した溶液について図8(B)に示す。
図8(B)に示す結果からも分るように、オートクレーブ処理していないLZ55溶液には4つのピークが現れ、熱分解温度が異なった複数の分子構造体が溶液中に存在することが示唆された。一方、オートクレーブ処理後の溶液には、高温側へ大幅にシフトした1つの強い熱分解ピークと極弱いショルダーピークが現れている。このことからもオートクレーブ処理後のLZ55溶液は分子構造体の単一化と構造の安定化が推進されていると推測できる。
図9の各グラフにおける縦軸T(r)は構造体実空間の全相関関数を示し、横軸r(Å)は周期の長さを示す。
図9においてLa-Oの構造秩序性とZr-Oの構造秩序性とZr-Zrの構造秩序性がわかるが、La-Oの構造秩序性とZr-Oの構造秩序性が明らかに向上していると推定できる。
図10の矢印部分に示すように絶縁膜の構造は明らかに変わっており、オートクレーブ処理後の溶液を熱処理して絶縁膜を形成することで、絶縁膜の構造も変化していることがわかる。
図11においてピークが大きいほど結晶度が高いことを示しており、オートクレーブ処理後溶液中のクラスターはLa−OとZr−Oに関わる微細構造の秩序性が著しく向上したことが示唆されている。LZ37溶液は、Laの含有量が少ないため、オートクレーブ処理後に全てのLaイオンがZrO2結晶格子に入ることで安定なZrO2立方晶ドメインが生じ、余計な構造がほぼ完全に消失していると推定できる。
図11に示すデータを解析すると以下の表1のように対比することができる。
以上のことからオートクレーブ処理した溶液から得た絶縁膜(高温焼成体)はZr0.8Y0.2O1.9立方晶に類似する構造を有することが示唆される。
図12から、LZ55溶液では過剰な量のLaが存在していたため、オートクレーブ処理後にZrO2立方晶の形成が促進されることに伴い、余計な構造が若干残留したと推定できる。
また、比較のために、オートクレーブ処理なしのLZ37溶液とLZ55溶液を白金膜付きシリコンウェーハー上にスピンコート(2000rpm)で5層製膜し、400℃・酸素雰囲気中にて10分間焼成して絶縁膜を得た。また、オートクレーブ処理なしのLZ55溶液を白金膜付きシリコンウェーハー上にスピンコート(2000rpm)で5層製膜し、600℃・酸素雰囲気中にて10分間焼成して絶縁膜を得た。
即ち、LaZrO酸化物溶液をオートクレーブ処理して得た絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して得た絶縁膜であるならば、LaZrO酸化物溶液を単に熱処理して得た従来の絶縁膜に対しリーク電流を大幅に低減することができた。
図15に示す特性の薄膜トランジスタは、移動度:86cm2/Vs、On/off電流比(ドレイン比):5.7E-6、Vth:1.77V、SS-factor:0.38V/dec、Off電流1.64E-10、Ig(リーク電流):3.2×10-10A(Vg=10V)の優秀な値を示した。
これらに対し従来法による絶縁膜のリーク電流はVg=10Vの場合に10-7レベルであり、本実施例の試料の方が2〜3桁良好となる。また、移動度:86cm2/Vsも良好な値であり、実施例の薄膜トランジスタは優れた特性を有する。
この薄膜トランジスタのVd=4V、εr=25、W/L=60/20μmであり、移動度588.5cm2/Vs、Ig(リーク電流)=8.2×10-10(4V)を示し、優れた薄膜トランジスタであることを確認できた。
図17に示す結果から、オートクレーブ処理した後の絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて製造した絶縁膜の方が、広い周波数領域で安定した比誘電率を示している。これに対し、従来法による絶縁膜においては、低周波数帯域において比誘電率が大きく変動している。
このことから、オートクレーブ処理した絶縁膜形成用前駆体溶液から得られた絶縁膜の比誘電率について、従来の絶縁膜に対し周波数依存性を改善できることがわかる。
図18に示すように、LaZrHfO酸化物溶液においてLaZrO酸化物溶液の場合と同様な波長シフトが認められた。
このことから、LaとZrとHfの錯体を含む溶液において、オートクレーブ処理前の溶液が短波長領域の紫外線しか吸収しないのに対し、オートクレーブ処理後の絶縁膜形成用前駆体溶液は、長波長領域の紫外線を吸収するようになることがわかる。
このことから、LaとZrとHfの錯体を含む溶液においてLaとZrの錯体を含む溶液と同等の紫外光照射による低温作製の効果を得ることができると想定できる。
図19に示す結果から、LaZrHfO酸化物溶液であってもオートクレーブ処理済みの絶縁膜形成用前駆体溶液から得られた絶縁膜の方が従来法による絶縁膜よりも2〜3桁程度リーク電流を低減することができた。
熱処理温度は250℃に設定し、中心波長253.7nmの紫外光を用いてオゾン(濃度50.0PPM)雰囲気において基板加熱することにより熱処理を施した。
図20に示す結果から、250℃という低温で熱処理することにより、良好な絶縁特性を示し、薄膜トランジスタに適用可能な絶縁層を得ることができ、この絶縁膜を用いて良好なI-V特性を示す薄膜トランジスタを250℃という低温で形成できることがわかる。
LZ55溶液をオートクレーブ処理(180℃、5時間)後に600℃で焼成した絶縁膜の組成は、La0.87Zr4.05C0.16H0.23であった。
LZ37溶液をオートクレーブ処理(180℃、5時間)後に200℃でUV光を焼成した絶縁膜の組成は、La0.38Zr4.18C0.58H0.6であった。
LZ37−AC180−5hは、LZ37溶液を180℃で5時間、オートクレーブ処理した溶液を用いて製造した絶縁膜を示す。UV150はオゾン雰囲気において150℃でUV照射した絶縁膜を示し、UV200はオゾン雰囲気において200℃でUV照射した絶縁膜を示す。
図21に示すAFMの表面観察像によると、絶縁膜の表面にナノサイズの高密度粒子が均一に分布している状態を確認できた。このことから、低温でUV照射して得た絶縁膜であっても、緻密で密度の高い絶縁膜が得られていると推定できる。
図22(B)は、Z37溶液あるいはLZ55溶液を用い、オートクレーブ処理後、オゾン雰囲気でUV照射とともに低温加熱あるいは高温加熱により作製した絶縁膜の密度と高温加熱のみによって熱処理した絶縁膜の密度を対比して示す。各図において、UV200は、200℃に基板加熱しながら紫外線照射をオゾン雰囲気中で行った絶縁膜試料であり、UV250−500は、250℃で基板加熱しながら紫外線照射処理を行い、大気中500℃で焼成して得られた絶縁膜試料の結果である。
図22(A)、(B)に示す密度の対比から明らかなように、LZ37溶液あるいはLZ55溶液にオートクレーブ処理を行うことにより、いずれの場合であっても密度を向上できることがわかる。また、低温でUV照射することにより、密度が向上しているので、リーク電流を低減できる緻密な絶縁膜を低温で作製できることがわかる。
図23に示す膜厚の対比から、UV照射を行うことなく低温(250℃)で熱処理すると高温(500℃)で熱処理した絶縁膜に対し膜厚変動が大きいが、UV照射とともに低温(150℃、200℃)で熱処理した絶縁膜は高温(500℃)で熱処理した絶縁膜と殆ど膜厚が変わらないことがわかる。
図24に示す結果から、LZ37溶液をオートクレーブ処理して250℃という低温で熱処理することにより、良好な絶縁特性を示し、薄膜トランジスタに適用可能な絶縁層を得ることができ、この絶縁膜を用いて良好なI-V特性を示す薄膜トランジスタを形成できることがわかる。
図25に示す結果から、LZ55溶液をオートクレーブ処理して250℃という低温で熱処理することにより、良好な絶縁特性を示し、薄膜トランジスタに適用可能な絶縁層を得ることができ、この絶縁膜を用いて良好なI-V特性を示す薄膜トランジスタを形成できることがわかる。
図26に示す結果から、LZ37とLZ55とLZ73のいずれの溶液であってもオートクレーブ処理済みの絶縁膜形成用前駆体溶液から200℃の低温で良好な絶縁膜を得ることができ、この絶縁膜を用いて良好なI-V特性を示す薄膜トランジスタを形成できると推定できる。
図27に示すように絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して得た絶縁膜を備えた優れた特性の薄膜トランジスタを製造できることがわかった。
図28に示すように優れた特性の薄膜トランジスタを製造できることがわかった。この結果から、Cuのゲート電極を備えた薄膜トランジスタを製造できることがわかった。
図29に示すようにTmZrOで示す溶液に対し、TmZrOで示す溶液に180℃、5時間のオートクレーブ処理を施して得た前駆体溶液の方が、紫外線の吸収率が向上している。このことから、Ln系元素であるTmとZrで構成した酸化物溶液においても、先のLZ溶液と同様な紫外線吸収変化が得られることがわかった。
このため、本願のオートクレーブ処理は、LaZrO系の溶液に限らず、LnZrO系の溶液一般に適用できると思われる。
LnZrO系の溶液とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのいずれかから選択される希土類元素とZrの酸化物溶液を意味し、希土類元素は置換可能性が高い元素であるので、本発明をLaZrO系の溶液に限らず、LnZrO系の溶液一般に適用できると考えられる。
図31は、LZ37溶液について、オートクレーブ処理(180℃、5時間)を行った後に高温焼成して得た膜(500℃、1時間加熱)とオゾン雰囲気において紫外線を照射して250℃熱処理により作製して得た膜のX線光電子分光スペクトル(XPS)を示す。
オートクレーブ処理後の溶液は、膜中のZrとOがより低エネルギー方向にシフトしたことが分った。これは、前駆体溶液中に有機組成の光分解が促進されたことでZr−Oの結合が十分に進んだことによるものであると考えられる。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、その絶縁膜形成用前駆体溶液の紫外線吸収スペクトルは長波長側へシフトすることを確認できた。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、その絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して得た絶縁膜の密度を高くすることができた。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、該絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して得た絶縁膜について、誘電率の周波数依存性を著しく改善できた。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、該絶縁膜形成用前駆体溶液を高温熱処理して得た絶縁膜について、有機成分残留量を低減することができた。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、この絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて作製した絶縁膜を用いて薄膜トランジスタを製造することによりリーク電流を2桁以上低減することができた。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、この絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して絶縁膜を作製する場合、溶液の紫外線吸光特性を利用することで薄膜トランジスタの低温作製に成功し、Cu膜をゲート電極の構成材料とした薄膜トランジスタを実現できた。
Claims (7)
- Ln化合物(LnはLaあるいはTmを含む希土類元素のうち、1種または2種以上を示す。)とZr化合物とを溶媒に溶解し、オートクレーブ処理を経る絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法であり、
紫外線の吸収端波長が280nm以上であって、室温〜200℃領域での熱分析により計測される有機成分含有量が、前記オートクレーブ処理前50質量%を超え、前記オートクレーブ処理後50質量%以下であり、
前記Ln化合物と前記Zr化合物が前記溶媒中に溶解したLn錯体とZr錯体を有し、これら錯体が化学結合により繋がった分子集合体を含有させることを特徴とする絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。 - 熱分解に伴う1つの発熱ピークのみを200〜400℃の温度範囲内に有する前駆体溶液とすることを特徴とする請求項1に記載の絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。
- LnとZrをモル比で3:7〜7:3の割合で溶解することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。
- 前記オートクレーブ処理を150℃〜230℃において2〜50気圧で行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。
- 前記溶媒中にHf錯体を添加することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。
- 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された製造方法により得られた絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて塗膜を形成し、オゾン雰囲気において紫外線を照射しながら150〜300℃に熱処理する低温プロセスで加熱乾燥することを特徴とするゲート絶縁膜の製造方法。
- 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された製造方法により得られた絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて塗膜を形成し、300〜600℃の温度で高温加熱乾燥することを特徴とするゲート絶縁膜の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015076104A JP6647586B2 (ja) | 2015-04-02 | 2015-04-02 | 絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法およびゲート絶縁膜の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015076104A JP6647586B2 (ja) | 2015-04-02 | 2015-04-02 | 絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法およびゲート絶縁膜の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016197631A JP2016197631A (ja) | 2016-11-24 |
JP6647586B2 true JP6647586B2 (ja) | 2020-02-14 |
Family
ID=57358500
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015076104A Expired - Fee Related JP6647586B2 (ja) | 2015-04-02 | 2015-04-02 | 絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法およびゲート絶縁膜の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6647586B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018101278A1 (ja) * | 2016-11-30 | 2018-06-07 | 株式会社リコー | 酸化物又は酸窒化物絶縁体膜形成用塗布液、酸化物又は酸窒化物絶縁体膜、電界効果型トランジスタ、及びそれらの製造方法 |
KR102000829B1 (ko) | 2017-09-07 | 2019-07-16 | 한양대학교 산학협력단 | 고유전체 절연 박막을 포함하는 박막 트랜지스터 및 이의 제조 방법 |
CN113540254B (zh) * | 2021-06-08 | 2023-09-29 | 华南师范大学 | 一种钕掺杂的氧化锆薄膜晶体管及其制备方法和应用 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
ES2193400T3 (es) * | 1996-10-15 | 2003-11-01 | Rhodia Rare Earths Inc | Oxidos de cerio y zirconio, oxidos mixtos y disoluciones solidas con estabilidad termica mejorada para la catalisis de sistemas de gases de escape y metodos de produccion. |
JP5489009B2 (ja) * | 2011-11-18 | 2014-05-14 | 独立行政法人科学技術振興機構 | 積層構造体、強誘電体ゲート薄膜トランジスター及び強誘電体薄膜キャパシター |
JP2015017012A (ja) * | 2013-07-10 | 2015-01-29 | 三井金属鉱業株式会社 | 油性分散液並びに薄膜及びその製造方法 |
-
2015
- 2015-04-02 JP JP2015076104A patent/JP6647586B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2016197631A (ja) | 2016-11-24 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Lee et al. | Atomic layer deposition of SrTiO3 films with cyclopentadienyl-based precursors for metal–insulator–metal capacitors | |
Xu et al. | Aqueous solution-deposited gallium oxide dielectric for low-temperature, low-operating-voltage indium oxide thin-film transistors: a facile route to green oxide electronics | |
Plassmeyer et al. | Lanthanum aluminum oxide thin-film dielectrics from aqueous solution | |
Bae et al. | Soluble oxide gate dielectrics prepared using the self-combustion reaction for high-performance thin-film transistors | |
EP2513355B1 (de) | Verfahren zur herstellung von indiumoxid-haltigen schichten, nach dem verfahren hergestellte indiumoxid-haltige schichten und ihre verwendung | |
JP6161764B2 (ja) | 酸化インジウム含有層の製造方法 | |
KR102060492B1 (ko) | 고성능 및 전기 안정성의 반전도성 금속 산화물 층의 제조 방법, 및 상기 방법에 따라 제조된 층 및 그의 용도 | |
TWI483925B (zh) | 含烷氧銦的組成物,彼之製法以及彼之應用 | |
Zhuang et al. | Solution-processed rare-earth oxide thin films for alternative gate dielectric application | |
KR101301215B1 (ko) | 산화물 박막용 조성물, 산화물 박막용 조성물 제조 방법, 산화물 박막용 조성물을 이용한 산화물 박막 및 전자소자 | |
JP6647586B2 (ja) | 絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法およびゲート絶縁膜の製造方法 | |
JP6887770B2 (ja) | Pzt強誘電体膜の形成方法 | |
Falmbigl et al. | BaTiO3 thin films from atomic layer deposition: a superlattice approach | |
Shen et al. | Flash memory featuring low-voltage operation by crystalline ZrTiO4 charge-trapping layer | |
Zhu et al. | Vertical distribution of PbI2 nanosheets for robust air-processed perovskite solar cells | |
Jo et al. | In situ tracking of low-temperature VO2 crystallization via photocombustion and characterization of phase-transition reliability on large-area flexible substrates | |
Liu et al. | High Performance and High Yield Solution Processed IGZO Thin Film Transistors Fabricated with Low‐Temperature Annealed Hafnium Dioxide Gate Dielectric | |
Tan et al. | Comparative studies of metal‐organic decomposed GaxCeyOz and CeO2 based functional MOS capacitor | |
Woods et al. | Low-temperature steam annealing of metal oxide thin films from aqueous precursors: Enhanced counterion removal, resistance to water absorption, and dielectric constant | |
US20140212576A1 (en) | Dielectric thin film-forming composition and method of forming dielectric thin film using the same | |
Miyakawa et al. | Application of hydrogen injection and oxidation to low temperature solution-processed oxide semiconductors | |
Armelao et al. | Microstructural and Optical Properties Modifications Induced by Plasma and Annealing Treatments of Lanthanum Oxide Sol− Gel Thin Films | |
JP2019169728A (ja) | 金属酸化物半導体層形成用組成物及びそれを用いた金属酸化物半導体層の製造方法 | |
Frunză et al. | Ta2O5-based high-K dielectric thin films from solution processed at low temperatures | |
Igityan et al. | Electrical and optical properties of lanthanum oxide-based films prepared by electron beam evaporation |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20180320 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20180320 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20190111 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20190305 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20190426 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20190704 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20191203 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20191225 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6647586 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |