JP6646922B2 - 金属被覆電極活物質の製造方法、金属被覆電極活物質、及び電極 - Google Patents

金属被覆電極活物質の製造方法、金属被覆電極活物質、及び電極 Download PDF

Info

Publication number
JP6646922B2
JP6646922B2 JP2014058799A JP2014058799A JP6646922B2 JP 6646922 B2 JP6646922 B2 JP 6646922B2 JP 2014058799 A JP2014058799 A JP 2014058799A JP 2014058799 A JP2014058799 A JP 2014058799A JP 6646922 B2 JP6646922 B2 JP 6646922B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
active material
electrode active
metal
powder
lithium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014058799A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015185276A (ja
Inventor
浩一 大川
浩一 大川
峰夫 佐藤
峰夫 佐藤
和義 上松
和義 上松
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dowa Holdings Co Ltd
Niigata University
Akita University NUC
Original Assignee
Dowa Holdings Co Ltd
Niigata University
Akita University NUC
Dowa Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dowa Holdings Co Ltd, Niigata University, Akita University NUC, Dowa Mining Co Ltd filed Critical Dowa Holdings Co Ltd
Priority to JP2014058799A priority Critical patent/JP6646922B2/ja
Publication of JP2015185276A publication Critical patent/JP2015185276A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6646922B2 publication Critical patent/JP6646922B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Description

本発明は、電極活物質である粉末の表面を金属ナノ粒子で被覆する金属被覆電極活物質の製造方法、この製造方法により得られた金属被覆電極活物質、及びこの金属被覆電極活物質を用いた電極に関するものである。
充放電特性の改善、製造コストの低減、及び環境負荷の低減等を目的として、電極活物質の組成や構造に関する研究開発が従来から継続的に行われている。例えば、出発原料として五酸化二リン(P)及び金属鉄(Fe)の粉末を用いてカソード活物質を製造する方法が知られている(非特許文献1)。
また、電極活物質の電気伝導率を高め、かつ、電極活物質である粉末の粒子径を抑制するために、電極活物質の原料にポリビニルアルコールを添加し、この原料に超音波照射、真空乾燥、及び焼成の各処理を施すことにより、電極活物質を製造する方法も知られている(非特許文献2)。
これらの電極活物質の製造方法では、電極活物質である粉末間の電気伝導率を高めるために、この粉末の表面をカーボンで被覆する必要があった。例えば、非特許文献2では、電極活物質の原料に添加されたポリビニルアルコールが原料の焼成によってカーボンに変化し、電極活物質である粉末の表面を被覆する。
Shigeto Okada et al., "Cathode properties of amorphous and crystalline FePO4", Journal of Power Sources 146 (2005) 570-574 Dragana Jugovic et al., "Synthesis and characterization of LiFePO4/C composite obtained by sonochemical method", Solid State Ionics 179 (2008) 415-419
しかしながら、従来の電極活物質の製造方法では、有機物の熱処理によって電極活物質である粉末をカーボンで被覆していた。カーボンで被覆された粉末がリチウムリン酸鉄(LiFePO)のようなリチウムを含有する正極活物質である場合は、カーボン被膜の形成は正極活物質の酸化を防止できる点で有効であった。一方で、カーボンで被覆された粉末がリン酸鉄(III)(FePO)のようなリチウムを含有しない正極活物質である場合は、カーボン被膜を形成すると、有機物からカーボンへの変化の際に正極活物質が還元されて結晶構造が変化し、そのため充放電特性が低下するという課題があった。また、カーボンで被覆された粉末がリチウムを含有する正極活物質である場合には、正極活物質の充放電特性のさらなる向上が求められていた。
本発明は、これらの課題に着目して完成されたものである。その目的とするところは、リチウムを含有しない電極活物質をカーボン被膜の形成及び金属ナノ粒子の付着によって還元することなく、或いはカーボンで被覆したリチウムを含有する電極活物質の表面を金属ナノ粒子からなる膜で被覆する際に前記表面を酸化することなく、電極の充放電特性を改善する電極活物質及びその製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するための第一の手段は、金属塩、アルゴンガス、アルコール、及び電極活物質である粉末を含有する溶液に超音波照射を行い、前記金属塩の金属を金属ナノ粒子として析出させて前記電極活物質である粉末の表面に付着させることである。
第二の手段は、前記金属塩を溶媒に溶解させて金属塩溶液を作成する工程と、前記金属塩溶液に前記電極活物質である粉末を添加して混合溶液を作成する工程と、前記アルゴンガスを用いて、前記混合溶液に溶存する酸素ガス及び窒素ガスをパージすると共に、前記アルゴンガスを前記混合溶液に溶存させる工程と、前記アルゴンガスが溶存した混合溶液に前記アルコールを添加する工程と、前記アルゴンガス及びアルコールが溶存する混合溶液に前記超音波照射を行うことにより、前記金属ナノ粒子を析出させて前記粉末の表面に付着させる工程と、を有することである。
第三の手段は、前記金属塩を溶媒に溶解させて金属塩溶液を作成する工程と、前記電極活物質である粉末とアルコールと水とを混合して粉末を含む水溶液とする工程と、前記アルゴンガスを用いて、前記水溶液に溶存する酸素ガス及び窒素ガスをパージすると共に、前記アルゴンガスを前記水溶液に溶存させる工程と、前記アルゴンガスが溶存した水溶液と前記金属塩溶液とを混合し混合溶液とする工程と、前記混合溶液に前記超音波照射を行うことにより、前記金属ナノ粒子を析出させて前記電極活物質である粉末の表面に付着させる工程と、を有することである。
第四の手段は、第一から第三の手段における前記アルコールは、プロパノールであることである。
第五の手段は、第一から第四の手段における前記電極活物質である粉末は、リン酸鉄(III)又はカーボン被膜を有するリチウムリン酸鉄(II)の粉末であることである。
第六の手段は、第一から第五の手段における前記金属塩は、塩化パラジウム(II)(PdCl)又は塩化金(III)(AuCl)であることである。
第七の手段は、電極活物質であるリン酸鉄(III)又は硫酸鉄の粉末が金属ナノ粒子で被覆されたものである。
第八の手段は、リチウムを含有する電極活物質の粉末が、カーボン被膜と前記カーボン被膜上の金属ナノ粒子からなる膜とで被覆されたものである。
第九の手段は、第八の手段における前記リチウムを含有する電極活物質の粉末が、リチウムを含有するリン酸鉄(II)、リチウムを含有するリン酸バナジウム、リチウムを含有する硫酸鉄、又はリチウムを含有する珪酸鉄であるものである。
第十の手段は、第七から第九の手段における前記金属ナノ粒子が金又はパラジウムのナノ粒子であるものである。
第十一の手段は、第七から第十の手段における金属被覆電極活物質で構成されたものである。
本発明によれば、溶液中で電気伝導体である金属ナノ粒子を析出させ、析出した金属ナノ粒子を電極活物質である粉末の表面に付着させるという簡便な手段により、電極活物質の充放電特性を改善することができる。また、本発明によれば、溶液中で析出した金属ナノ粒子を電極活物質である粉末の表面に付着させるだけであるので、電極活物質がリチウムを含有しない場合に、この電極活物質をカーボンで被覆する必要がないことから、カーボン付着の際に電極活物質の還元による充放電特性の劣化を抑制できる。また、本発明によれば、リチウムを含有する電極活物質をカーボンで被覆してもよく、その場合には、カーボン被膜によるイオン伝導性の向上に加えて、カーボン被膜上の金属被覆膜による電子伝導性の向上も実現できる。
パラジウムナノ粒子が表面に付着したFePO・2HO粉末のXRD測定結果を示す図である(実施例1及び2)。 パラジウムナノ粒子が表面に付着したFePO・2HO粉末のTEM写真である(実施例1)。 電極活物質の充放電特性の測定に使用した二次電池の構造を示す概略図である(実施例2及び3)。 パラジウムナノ粒子が表面に付着したFePO・2HO粉末をカソード活物質として使用した二次電池の放電特性の測定結果を示す図である(実施例2及び比較例1)。 金ナノ粒子が表面に付着したFePO粉末をカソード活物質として使用した二次電池の放電特性の測定結果を示す図である(実施例3及び比較例2)。 カーボン被膜を有するLiFePO粉末をカソード活物質とする二次電池の電流レート0.2Cでの充放電特性を示す図である(比較例3)。 カーボン被膜を有するLiFePO粉末をカソード活物質とする二次電池の電流レート3Cでの充放電特性を示す図である(比較例3)。 カーボン被膜を有するLiFePO粉末をカソード活物質とする二次電池の電流レート5Cでの充放電特性を示す図である(比較例3)。 カーボン被膜とPd被覆膜とを有するLiFePO粉末をカソード活物質とする二次電池の電流レート0.2Cでの充放電特性を示す図である(実施例4)。 カーボン被膜とPd被覆膜とを有するLiFePO粉末をカソード活物質とする二次電池の電流レート3Cでの充放電特性を示す図である(実施例4)。 カーボン被膜とPd被覆膜とを有するLiFePO粉末をカソード活物質とする二次電池の電流レート5Cでの充放電特性を示す図である(実施例4)。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。金属塩、アルゴンガス、アルコール、及び電極活物質である粉末を含有する水溶液に超音波照射を行うと、下記の反応式1に示す水のラジカル化反応によって水素ラジカル(・H)及びヒドロキシラジカル(・OH)が生成する。
O → ・H + ・OH (反応式1)
この超音波照射による水のラジカル化反応は吸熱反応であるから、超音波の照射出力が大きいほど又は水溶液の温度が高いほど、水溶液中で生成する水素ラジカル及びヒドロキシラジカルの量が増えることになる。また、水溶液中の溶存気体の種類によっても水のラジカル化反応の反応速度は影響を受ける。すなわち、水溶液中に溶存する気体の比熱比が高いほど、水溶液への超音波照射によって発生する微小気泡の圧壊による気泡周囲の水温の上昇幅が大きくなるため、水のラジカル化反応が生じ易くなり、水溶液中の水素ラジカル及びヒドロキシラジカルの生成量が増大する。
ここで、水溶液に溶存する気体の種類によって水素ラジカル及びヒドロキシラジカルの生成量が変化することについて具体的に説明する。超音波照射により水溶液中に発生した微小気泡の圧壊は断熱圧縮変化とみなすことができる。断熱変化の場合、ポアソンの法則:PVγ=一定(γ=Cp/Cv、γ:比熱比、Cp:定圧比熱、定積比熱)より、状態1(P1、V1、T1)から状態2(P2、V2、T2)への断熱圧縮変化について、P2/P1=(V1/V2)γ→T2/T1=(V1/V2)γ−1の関係式がほぼ成り立つ。断熱圧縮変化の場合は、(V1/V2)>1であるから、水溶液中に溶存する気体の比熱比γが大きいほど、断熱圧縮変化後の温度T2が高くなる。換言すれば、水溶液中に溶存する気体の比熱比γが大きいほど、水溶液中に発生した微小気泡の圧壊による水溶液の温度上昇幅が大きくなるので、水のラジカル化反応による水素ラジカル及びヒドロキシラジカルの生成量が増大することになる。ここで、酸素ガス、窒素ガス、大気、及びアルゴンガスの比熱比はそれぞれ、酸素ガス(O)=1.396、窒素ガス(N)=1.401、大気(Air)=1.4017、アルゴンガス(Ar)=1.670である(日本化学会編 化学便覧基礎編II 5訂 242頁 丸善 2004年発行)。したがって、これらの溶存気体を比熱比γの大きさの順に並べると、Ar>Air>N>Oとなり、溶存気体の種類以外の超音波照射条件が全く同じ場合は、水溶液中での水素ラジカル及びヒドロキシラジカルの生成量は前記の順となる。なお、溶存気体の量やその蒸気圧によっても水溶液中での水素ラジカル及びヒドロキシラジカルの生成量は影響を受けるが、室温大気中では、その生成量はやはりAr>Air>N>Oの順となる。
このように、水溶液中の溶存気体がアルゴンガスであれば、その比熱比が大気、窒素ガス、及び酸素ガスよりも高いため、これらの他の気体を使用した場合よりも超音波照射による水素ラジカル及びヒドロキシラジカルの生成量を増大させることができる。そのため、金属塩が溶解した水溶液に、あるいは金属塩が溶解し、かつ、電極活物質である粉末が添加された混合溶液(本明細書において「水溶液」と表記しても、混合溶液を意味する場合がある)に、アルゴンガスを用いたバブリング等を行うことにより、超音波照射前に水溶液に溶存している酸素ガスや窒素ガス等をパージしておくことが好ましい。また、水溶液中に溶存する酸素ガス及び窒素ガスを不活性ガスであるアルゴンガスで予めパージしておくことにより、超音波照射によって水溶液中で硝酸や亜硝酸が生成して金属陽イオンと反応してしまうことを防止できる。なお、超音波照射によって水溶液中のアルゴンガス濃度は低下していくため、水溶液に超音波照射を行いながらアルゴンガスのバブリング等も行うことが好ましい。
水溶液中のアルゴンガスの濃度は、特に限定されるものではないが、標準状態:STP(0℃、10Pa)で1.2〜2.3mmol/Lであることが好ましい。1.2mmol/L以上であれば、水溶液中の溶存酸素ガス及び窒素ガスがほぼ完全にパージできるからである。また、水溶液中の溶存酸素ガス及び窒素ガスをパージする態様としては、アルゴンガスのバブリングを行うことが簡便で好ましい。また、水溶液中におけるアルゴンガスの溶解度を高めるため、アルゴンガスをバブリングする際に、水溶液を30℃以下まで冷却することが好ましい。同様に、水溶液中におけるアルゴンガスの溶解度を高めるため、アルゴンガスをバブリングする際における雰囲気中のアルゴンガス分圧を、1.1atm以上とすることが好ましい。さらに、一旦減圧により水溶液中の酸素ガスと窒素ガスの脱気を行った後に、アルゴンガスをバブリングすることが好適である。
上記の反応式1に示す水のラジカル化反応によって生成したヒドロキシラジカルは、反応性が極めて高いため、下記の反応式2に示すように過酸化水素(H)に変化したり、下記の反応式3に示すようにアルコールの炭化水素部分から水素を奪取して炭化水素ラジカル(・R)を生成させたりする。
2(・OH) → H (反応式2)
R−H + ・OH → ・R+ HO (反応式3)
一方で、水のラジカル化反応によって生成した水素ラジカルは、水溶液中では電子供与体すなわち一種の還元剤として機能することができる。そして、水溶液中では金属塩がイオン化して金属原子が陽イオンとなっているため、水溶液中に溶存する水素ラジカルは、この金属陽イオンに電子を供与して金属陽イオンを還元し金属ナノ粒子として析出させる。金イオンAu3+が水素ラジカルから電子を供与されて金に還元される態様を下記の反応式4に示す。
Au3+ + 3(・H) → Au (反応式4)
また、水のラジカル化によって生成した水素ラジカルの一部は、下記反応式5に示すように、ヒドロキシルラジカルと結合して水に戻ってしまう。
・H + ・OH → HO (反応式5)
また、水溶液中にアルコールが存在する場合は、反応式3に示すように、ヒドロキシルラジカルがアルコールの炭化水素部分から水素を奪取するために消費されるので、上記反応式5による水素ラジカルの消費が抑制される。
本発明では、水のラジカル化反応によって生成した水素ラジカルのみならず、上記の反応式3に示すアルコール由来の炭化水素ラジカルも水溶液中で電子供与体として機能して、金属陽イオンを還元する。本発明では、金属含有水溶液にアルコールを添加することにより、超音波照射によって水のラジカル化反応で生成したヒドロキシラジカルの一部がアルコール由来の炭化水素ラジカルを生じさせる。そして、上記の反応式3に示す炭化水素ラジカルが生成すると、水溶液中における金属陽イオンを還元する還元剤の濃度が高まることから、金属ナノ粒子の析出速度も高まり、その生産性が改善する。金イオンAu3+が炭化水素ラジカルから電子を供与されて金に還元される態様を下記の反応式6に示す。
Au3+ + 3(・R) → Au (反応式6)
このように、アルゴンガスを用いて水溶液に溶存する酸素ガス及び窒素ガスをパージすることにより、溶存気体が比熱比の高いアルゴンガスで置換され、超音波照射によって発生したアルゴンガスの微小気泡の圧壊後の水溶液温度が高くなって水のラジカル化反応が生じ易くなる。さらに、この水溶液中にアルコールが存在することにより、水のラジカル化反応で生成したヒドロキシラジカルが速やかにアルコールの炭化水素部分の水素を奪取して炭化水素ラジカルを生成させる。そして、このようにして生成した水素ラジカル及び炭化水素ラジカルが共に、水溶液中の金属陽イオンに電子を供与して金属陽イオンを速やかに還元し、金属ナノ粒子を迅速、かつ、大量に析出させる。
金属塩、アルゴンガス、アルコール、及び電極活物質である粉末を含有する水溶液を製造する手順としては、先ずは金属塩を水溶媒に溶解させて金属塩水溶液を作成し、次いでこの金属塩水溶液に電極活物質である粉末を添加して混合溶液を作成し、次いでこの混合溶液にアルゴンガスのバブリング等を行って混合溶液中の酸素ガス及び窒素ガス等をパージすると共にアルゴンガスを混合溶液に溶存させ、次いでこの混合溶液にアルコールを添加することが好ましい。ただし、金属塩水溶液にアルゴンガスのバブリング等をした後に、この水溶液に電極活物質である粉末を添加してもよい。また、混合溶液にアルコールを添加した後に、アルゴンガスのバブリング等を行ってもよい。また、金属塩水溶液にアルゴンガスのバブリング及びアルコールの添加をした後に、この水溶液に電極活物質である粉末を添加してもよい。
金属塩は、金、銀、白金、又はパラジウム等の貴金属の金属塩が好ましい。例えば、金属塩としては、銅、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロミウム、マンガン、マグネシウム、カドミウム、アルミニウム、錫、又はタングステンを含む金属塩、水溶液中でイオン(Ag,Ag(CN) ,AlCl ,Au ,AuCl ,AuBr ,PtCl 2−,Mg2+,Mn2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+,Cd2+,Fe3+,Al3+,Pd2+,PdCl 2−,Sn2+,SnO 2−,Ga3+,WO 2−)となる金属塩、AgAsF,AgBF,AgBr,AgCl,AgClO,AgClO,AgF,AgF,AgFP,AgFSb,AgI,AgIO,AgMnO,AgNO,AgNO,AgOV,AgORe,AgCrO,AgO,AgS,AgS,AgS,AgSe,AgTe,AgAsO,AgAsO,AgAsO,AgP,Ag16,KAg(CN),CHCOAg,AgCN,AgCNO,AgCNS,AgCO,AlCl12,AlClCs,AlClK,AlClLi,AlClNa,AlC1Ti,AlCsOSi,AlCsOSi,AlCsO,AlFK,AlFNa,AlKO,AlLiO,AlN,AlOP,AlO,AlBaO,AlMgO,AlTi,Al12,AlBi12,Al13Si,HAlLi,HAlNO,AuBr,KAuBr,NaAuBr,AuCl,KAuCl,NaAuCl,HAuCl,AuI,Au,HAuClN,AuCN,CoF,CoF,CoI,CoLiO,CoN,CoNNa12,CoO,CoOS,CoSe,Co,Co,CoSm,CoSm,HCoN,H12CoN,H15ClCoN,CoCO、CdCl,CdCl,CdF,CdI,CdMoO,CdN,CdOZr,CdOS,CdOW,CuF,CuI,CuMoO,CuN,CuNb,CuO,CuOSe,CuOS,CuOW,CuS,CuSe,CuTe,CuHgI,CuO,Cu,CuS,CuSe,CuTe,HClCuN,H12CuNS,CuCN,CuCNS、MgMn,MgMoO,MgN,MgO,MgOTi,MgOZr,MgOS,MgOW,Mg,Mg,HMgNOP,MnMoO,MnN,MnNoO,MnOS,HMnO,NiO,NiOTi,NiOS,HNiO,HPtCl,HClPt,HClPt,HPt,HNaPt,HBrPt,HClPt,HClPt,HPt,H12ClPt,H12ClPt,H12Pt,H14Pt,CPt,HBrPd,HClPd,HPd,HPd,HClPd,HClPd,H12BrPd,H12ClPd,H12ClPd,H12Pd,CPd,Pd(OAc),Pd(NO,HFeNO,HFeN,FeCl,CZn,HSnO,NaSnO,SnCl2HO,SnO,SnSO,SnO,GaBr,GaCl,GaI,Ga(NO・HO,Ga(SO・HO,Ga(SO,GaAs,GaN,GaP,GaS,Ga,GaSe,GaSe,GaSe,GaTe,GaTe,GaOH,HWO,及びPdCl・2NaCl・3HO等が好適である。これらのうち、AgNO,KAuCl,NaAuCl,HAuCl,HPtCl,Pd(OAc),Pd(NO,Ga(NO・HO,及びPdCl・2NaCl・3HO等が特に好ましい。
水溶液に添加するアルコールは、水と相溶性を示すものであれば、メタノール、エタノール、又はプロパノールに限らず、どのようなアルコールでもよい。しかし、エタノールとプロパノールの比較実験の結果では、プロパノールを使用した場合の方が金属陽イオンの還元反応の反応速度が速かったことから、水溶液に添加するアルコールとしては炭化水素部分の炭素数が大きいものが好ましいと考えられる。ただし、水との相溶性及び炭化水素ラジカルの反応性の高さを考慮すれば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールが適当である。
電極活物質である粉末は、リチウムを含有する電極活物質とリチウムを含有しない電極活物質とに大別される。リチウムを含有する電極活物質は、その表面にカーボン被膜を形成しても、リチウムがカーボン被膜形成時における電極活物質の還元を防ぐため、電極活物質の充放電特性が大きく劣化することはない。また、電極活物質を被覆するカーボン被膜は、電極活物質のイオン伝導性を改善させる。したがって、リチウムを含有する電極活物質は、カーボン被膜を有することが好ましい。一方で、リチウムを含有しない電極活物質は、カーボン被膜の形成によって電極活物質が還元されるため、リチウムを含有しない電極活物質には、カーボン被膜処理を施さないことが好ましい。
電極活物質である粉末の大きさは、平均粒径10nm〜200nmが好ましい。また、本明細書における金属ナノ粒子の「ナノ粒子」とは、平均粒径が1〜100nmの微粒子を指す。この平均粒径(D50)の測定には、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)の写真から求めた粒径を用いることができる。なお,平均粒径(D50)とは、粒度分布測定結果を、横軸に粒径Dをとり、粒径D以下の粒子が存在する容積%(Q%)を縦軸とした累積粒度曲線で表したときに、Q=50%に対応する粒径Dの値をいう。
リチウムを含有しない電極活物質として、リン酸鉄(III)(FePO、FePO)、硫酸鉄(Fe(SO)、FePS、FeOCl、FeS、Fe、Fe、Fe(MoO、Fe(WO、又はFe(Pが例示される。従来の技術では、電極活物質である粉末に有機溶剤や高分子を混合し不活性ガス中で焼成すると、電極活物質が還元されてその性能の低下を招いた。一方で、本発明では、平均粒子径が数nmから数十nmの金属ナノ粒子を電極活物質である粉末の表面に付着させるだけであるので、電極活物質の表面の還元を抑制できる。
リチウムを含有する電極活物質として、リチウムリン酸鉄(II)(LiFePO、LiFeP、LiFe(PO)、リチウム硫酸鉄(LiFe(SO)、又はLiFeが例示される。リチウムを含有する電極活物質の表面を金属ナノ粒子で直接被覆することは好ましくない。リチウムを含有する電極活物質の表面がヒドロキシルラジカルによって酸化されて、これらの充放電特性が劣化するからである。そこで、カーボンで被覆したリチウムを含有する電極活物質の表面を、さらに金属ナノ粒子からなる膜(以下、「金属被覆膜」と称することがある)で被覆する。カーボン被膜と金属被覆膜との2層膜を有するリチウムを含有する電極活物質は、カーボン被膜のみを有するリチウムを含有する電極活物質よりも、高速(高レート)での充放電特性が良い。これは、カーボン被膜によるイオン伝導性の向上に加えて、金属被覆膜による電子伝導性の向上が加わったためである、と考えられる。さらに、リチウムを含有する電極活物質としてリチウムを含有するリン酸バナジウム(Li(PO)又はリチウムを含有する珪酸鉄(LiFeSiO)なども使用でき、この電極活物質をカーボン被膜及び金属被覆膜で被覆すれば、高速での充放電特性改善効果が同様に発揮される。
水溶液におけるアルコールの濃度は、0.5mmol/L〜10mol/L(0.5mM〜10M)が好ましく、さらには0.5mmol/L〜6.5mol/Lが好適である。0.5mmol/L未満であれば、アルコールの濃度が低過ぎて、上記の反応式3に示す炭化水素ラジカルを生成する効果及び反応式5に示す水素ラジカルの消費を抑制する効果が殆ど得られない。一方で、水溶液のアルコール濃度が6.5mol/Lを超えるあたりから金属ナノ粒子の析出量が減少し始め、10mol/Lを超えると、アルコールの濃度が高過ぎて、上記の反応式1の水のラジカル化反応の反応速度が著しく低下して金属ナノ粒子の析出が困難になる。なお、カーボン被膜を有する疎水性の電極活物質に金属ナノ粒子を付着させる場合には、疎水性のため電極活物質の粉末が水に浮いてしまい、アルコール濃度が1mM程度と低いと金属ナノ粒子が付着し難くなる。そのため、疎水性の粉末に対しては水溶液のアルコール濃度は1〜6.5mol/Lの範囲が最適である。
水溶液における金属塩の濃度は、0.5〜1000mmol/Lが好ましい。金属塩の濃度が0.5mmol/L未満であれば、その濃度が低過ぎるため、従来技術と比較して金属ナノ粒子の生産性が十分改善されたとは言い難い。一方で、1000mmol/Lを超えると、金属塩の濃度が高すぎるため、粒子サイズにばらつきが生じるおそれがある。
金属塩、アルゴンガス、及びアルコールを含有する水溶液に超音波照射を行う際の水溶液温度は、5〜40℃が好ましい。水溶液の温度が5℃未満であれば、金属塩の溶解が不十分となり、金属ナノ粒子の生産性を改善することが難しくなる。一方で、40℃を超えると、水溶液中のアルゴンガスとアルコールが脱気及び揮発し易くなるため、やはり金属ナノ粒子の生産性を改善することが難しくなる。
金属塩、アルゴンガス、及びアルコールを含有する水溶液には、析出する金属ナノ粒子の凝集を防止するため、分散剤や保護剤を添加してもよい。分散剤としては、ポリビニルピロリドンが好ましい。保護剤としては、硫酸ドデシルナトリウムが好ましい。
水溶液への超音波照射の条件は、周波数が0.1〜10MHz、出力が10〜1000Wであることが好ましい。周波数が0.1〜10MHzであれば、水をラジカル化しやすいという利点がある。また、出力が10〜1000Wであれば、処理する時間を短縮できるという利点がある。
金属塩、アルゴンガス、アルコール、及び電極活物質である粉末を含有する水溶液に超音波照射を行うと、上記の反応式4及び6に示す金属陽イオンの還元反応が生じ、水溶液中で金属ナノ粒子が析出して粉末表面に付着する。このとき、電極活物質である粉末が水溶液中で重なり合って金属ナノ粒子と接触できなくなることを防止するために、この粉末を水溶液中に撹拌する装置を設置することが好ましい。
このように、本実施形態に係る金属被覆電極活物質の製造方法によれば、電極活物質である粉末の表面に金属ナノ粒子を付着させるための専用工程を設ける必要がなく、製造工程を簡略化できる。また、この製造方法によれば、金属ナノ粒子が水溶液中で堆積して凝集する前に粉末表面に付着するため、金属ナノ粒子が粉末表面に沿って付着した後に積層化が進行していくことから、ナノメートルオーダーの極めて薄く、かつ、均質な薄膜を粉末表面上に容易に成形できる。また、この製造方法であれば、金属ナノ粒子の凝集を防止するために水溶液に添加される分散剤や保護剤が本質的に必要ないことから、金属ナノ粒子からなる膜の特性や品質を分散剤等によって劣化させることがない。
リチウムを含有しない電極活物質又はカーボンで被覆されたリチウムを含有する電極活物質の表面上に形成される金属被覆膜の厚さは、5nmから150nmであることが好ましい。BET法による比表面積の測定と、酸溶解後の発光分光分析(ICP)による付着量の測定とにより、金属被覆膜のおおよその厚さを算出できる。
(実施例1)Pdナノ粒子被覆電極活物質の製造[1回処理]
平底フラスコに、金属塩として塩化パラジウム(II)水溶液(PdCl・2NaCl・3HO、和光純薬工業社製、1mM(mmol/L))を50ml入れ、次いでリン酸鉄(III)(FePO・2HO)粉末(平均粒径100nm)を0.1g添加した。この水溶液に溶存している酸素ガスや窒素ガスを除去するために、水溶液中にアルゴンガス(Ar)を100ml/minで30分間流し、アルゴンガス置換を行った。アルゴンガス置換直後の水溶液中のアルゴンガスの濃度は、標準状態:STP(0℃、10Pa)で1.9mmol/Lである。その後、水溶液にエタノールを1mMとなるように添加した。平底フラスコを10℃に設定した恒温槽に入れ、平底フラスコの下に超音波装置を置いて、周波数200kHz、フラスコ内へ伝わる超音波パワー10Wの条件で12分間超音波を照射した。超音波照射前のフラスコ内の水溶液の色は、白濁した茶色であったが、超音波を12分間照射した後にはほぼ黒色となった。超音波照射前と12分間照射後の粉末をろ過により採取した後、XRD測定とTEM像の撮影とを行った。このXRD測定結果を図1に、TEM写真を図2に示す。
(実施例2)Pdナノ粒子被覆電極活物質の製造[3回処理]
実施例1で製造した超音波照射後のFePO・2HO粉末0.1gに対して、実施例1のパラジウムナノ粒子を付着させる一連の工程を更に2度繰り返し、FePO・2HO粉末の表面にパラジウムナノ粒子を計3回付着させた。得られたFePO・2HO粉末についてXRD測定を行った。このXRD測定結果を図1に示す。
図1に示すXRD測定結果において、超音波照射前[未処理]にはPdのピーク(2θ=約40°、約47°、約68°)は現れていないが、超音波照射後はPdのピークが読み取れる。特に、実施例2のようにパラジウムナノ粒子の付着工程を3回繰り返すと、Pdのピークが明確に読み取れるようになる。これは、パラジウムナノ粒子の付着工程を繰り返すことにより、FePO・2HO粉末表面に形成されるパラジウムナノ粒子からなる膜が厚くなったからであると考えられる。
また、図1に示すXRD測定結果には、パラジウムナノ粒子が付着する前後でPd以外のFePO・2HOのピークに変化は見られない。したがって、パラジウムナノ粒子をFePO・2HO粉末の表面に付着させても、FePO・2HOの結晶構造等への悪影響はないと考えられる。
次に、パラジウムナノ粒子を3回付着させた電極活物質(FePO・2HO)70重量部とアセチレンブラック(導電助剤)25重量部とをボールミルで混合し、この混合物にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5重量部を結着剤(バインダ)として添加して造粒した。この造粒物を円盤状に成形してカソードとし、また金属リチウム箔をアノードとするリチウムイオン二次電池を構成した。このリチウムイオン二次電池の電解液は、過塩素酸リチウム(LiClO)をプロピレンカーボネイト(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒に溶解させたものである。このリチウムイオン二次電池のカソードでは、放電時にはLi+FePO+e→LiFePOの反応が生じ、一方で充電時にはLiFePO→Li+FePO+eの反応が生じる。このリチウムイオン二次電池の概略図を図3に示す。
図3に示すリチウムイオン二次電池の放電特性を測定した。具体的には、このリチウムイオン二次電池の放電電圧が2Vに低下するまでの放電容量を0.2Cレートにて測定した。この測定結果を図4に示す。
(比較例1)Pdナノ粒子被覆のない粉末でカソードを製造[未処理]
パラジウムナノ粒子で被覆された電極活物質の代わりに、実施例1で使用したパラジウムナノ粒子を付着させる前のFePO・2HO粉末を使用した以外は実施例2と同様にして、リチウムイオン二次電池のカソードを構成した。そして、実施例2と同様にして、このリチウムイオン二次電池の放電特性を測定した。この測定結果を図4に示す。
図4に示す放電特性の測定結果から、FePO・2HO粉末にパラジウムナノ粒子を付着させると、リチウムイオン二次電池の放電容量が大きくなると共に、放電電圧も高くなることが分かる。したがって、FePO・2HO粉末にパラジウムナノ粒子を付着させると、カソードの内部抵抗値を低下させることができる、すなわちFePO・2HO粉末の電気伝導率を高めることができると言える。
(実施例3)金ナノ粒子被覆電極活物質の製造[3回処理]
平底フラスコに金属塩としてテトラクロロ金(III)酸水溶液(HAuCl・4HO、和光純薬工業社製、0.1mM)を50ml入れ、次いでアモルファス状のリン酸鉄(III)(FePO)粉末(平均粒径100nm)を0.1g添加した。この水溶液に溶存している酸素ガスや窒素ガスを除去するために、水溶液中にアルゴンガス(Ar)を100ml/minで30分間流し、アルゴンガス置換を行った。アルゴンガス置換直後の水溶液中のアルゴンガスの濃度は、標準状態:STP(0℃、10Pa)で1.9mmol/Lである。その後、水溶液にエタノールを1mMとなるように添加した。平底フラスコを10℃に設定した恒温槽に入れ、平底フラスコの下に超音波装置を置いて、周波数200kHz、フラスコ内へ伝わる超音波パワー10Wの条件で12分間超音波を照射した。超音波照射前のフラスコ内の水溶液の色は、白濁した茶色であったが、超音波を12分間照射した後には赤みを帯びた茶色となった。超音波照射前と12分間照射後の粉末をろ過により採取した後、金ナノ粒子を付着させる一連の工程を更に2度繰り返し、FePO粉末の表面に金ナノ粒子を計3回付着させた。
次に、この金ナノ粒子を3回付着させた電極活物質をパラジウムナノ微粒子被覆電極活物質の代わりに用いた以外は実施例2と同様にして、リチウムイオン二次電池を構成し、その放電特性を測定した。この測定結果を図5に示す。
(比較例2)金ナノ粒子被覆のない粉末でカソードを製造[未処理]
金ナノ粒子を3回付着させた電極活物質の代わりに、実施例3で使用した金ナノ粒子を付着させる前のFePO粉末を使用した以外は実施例3と同様にして、リチウムイオン二次電池のカソードを構成した。そして、実施例3と同様にして、このリチウムイオン二次電池の放電特性を測定した。この測定結果を図5に示す。
図5に示す放電特性の測定結果から、FePO粉末に金ナノ粒子を付着させると、リチウムイオン二次電池の放電容量が大きくなると共に、放電電圧も高くなることが分かる。したがって、FePO粉末に金ナノ粒子を付着させると、カソードの内部抵抗値を低下させることができる、すなわちFePO粉末の電気伝導率を高めることができると言える。
(比較例3)カーボン被膜を有する電極活物質(市販品)
正極材料(電極活物質)として、カーボン被膜を有するLiFePO粉末(宝泉株式会社製、SLFP−ES01)を用いた。この電極活物質70重量部とアセチレンブラック(導電助剤)25重量部とを乳鉢を用いて混合し、この混合物にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5重量部を結着剤(バインダ)として添加して造粒した。この造粒物を円盤状に成形してカソードとし、また金属リチウム箔をアノードとする、図3に示す構成のリチウムイオン二次電池を構成した。このリチウムイオン二次電池の電解液には、過塩素酸リチウム(LiClO)をプロピレンカーボネイト(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒に溶解させたものを用いた。このリチウムイオン二次電池の充放電特性を、複数の電流レートで測定した。具体的には、電流レート0.2C、3C、及び5Cについて、このリチウムイオン二次電池を満充電になるまで充電し、続いて放電電圧が2Vに低下するまでの放電容量を5サイクルずつ測定した。電流レート0.2Cにて測定した結果を図6に示す。電流レート3Cにて測定した結果を図7に示す。電流レート5Cにて測定した結果を図8に示す。図6〜8のいずれにおいても、電圧2V及び4Vにおけるリチウムイオン二次電池の容量は、1サイクル>2サイクル>3サイクル>4サイクル>5サイクルの順に並んでいる。
(実施例4)カーボン被膜とPd被覆膜とを有する電極活物質の製造
比較例3で用いたカーボン被膜を有する電極活物質(LiFePO粉末)の表面に、実施例1と同様の方法でパラジウムナノ粒子を1回付着させた。具体的には、LiFePO粉末(宝泉株式会社製、SLFP−ES01、カーボン被膜あり)は水溶液の水面に浮いてしまうため、予め0.1gのLiFePO粉末を10mlのプロパノールに入れなじませた。このLiFePO粉末を含有するプロパノール溶液に水を追加した(プロパノール:水=10ml:15ml)。この水溶液にアルゴンガス(Ar)を100ml/minで30分間流し、アルゴンガス置換を行った。アルゴンガス置換直後の水溶液中のアルゴンガスの濃度は、標準状態:STP(0℃、10Pa)で1.9mmol/Lである。その後、塩化パラジウム(II)水溶液(PdCl・2NaCl・3HO、和光純薬工業社製)を25ml添加した(プロパノール:水=10ml:40mlより、プロパノール濃度は2.6mol/L)。平底フラスコに入ったこの水溶液(20℃)を水槽内に入れ、フラスコ下に超音波装置を置いて、200kHz、フラスコ内へ伝わる超音波パワー10Wの条件で7分間超音波を照射した。その後、ろ過及び乾燥を行い、Pdナノ粒子が付着した電極活物質を得た。
さらに、比較例3と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を作成し、その充放電特性を測定した。具体的には、電流レート0.2C、3C、及び5Cについて、このリチウムイオン二次電池を満充電になるまで充電し、続いて放電電圧が2Vに低下するまでの放電容量を測定した。電流レート0.2Cでの測定は10サイクル、電流レート3Cでの測定は5サイクル、及び電流レート5Cでの測定は5サイクルとした。電流レート0.2Cにて測定した結果を図9に示す。電流レート3Cにて測定した結果を図10に示す。電流レート5Cにて測定した結果を図11に示す。図9では、電圧2V及び4Vにおけるリチウムイオン二次電池の容量は、2サイクル>5サイクル>7サイクル>10サイクルの順に並んでいる。同様に、図10及び図11では、電圧2V及び4Vにおけるリチウムイオン二次電池の容量は、1サイクル>2サイクル>3サイクル>4サイクル>5サイクルの順に並んでいる。図9に示す0.2Cレートでは、図6に示す比較例3の0.2Cレートと同等な結果であったが、図11に示す5Cレートでは、図8に示す比較例3の5Cの結果よりも分極が改善されて放電容量も改善されている。このことから、本実施例では、Pdナノ粒子の付着によりカーボン被膜を有する電極活物質(LiFePO粉末)の電子伝導性が改善されたため、高レートにおける充放電において良好な結果を示したと考えられる。
(実施例5)カーボン被膜とPd被覆膜とを有する電極活物質の製造
プロパノール:水=20ml:30mlより、プロパノール濃度を5.2mol/Lとした以外は、実施例4と同様にした。十分にPdが還元されてPdナノ粒子が付着した電極活物質を得ることができた。
(参考例1)
プロパノール濃度を1mmol/Lとした以外は、実施例4と同様にした。粉末は疎水性で、水溶液の水面に浮いてしまい懸濁せず、Pdナノ粒子の付着が観察されなかった。
なお、実施例1〜5では、カソードを構成する電極活物質の粉体にパラジウムナノ粒子や金ナノ粒子を付着させたが、アノードを構成する電極活物質の粉体に他の金属ナノ微粒子を付着させてもよい。
本発明は、粉末の表面に数nm以上の厚さの金属ナノ粒子からなる被覆膜を簡便な手法により成形できる製造方法であるので、化粧用材料や磁性材料等の製造にも適用できる。

Claims (11)

  1. 金属塩、アルゴンガス、アルコール、並びにリチウムを含有し、かつ、カーボン被膜を有する電極活物質である粉末又はリチウムを含有せず、かつ、カーボン被膜を有しない電極活物質である粉末、を含有する溶液に超音波照射を行い、前記金属塩の金属を金属ナノ粒子として析出させて、前記電極活物質である粉末又は前記カーボン被膜の表面に付着させることを特徴とする金属被覆電極活物質の製造方法。
  2. 前記金属塩を溶媒に溶解させて金属塩溶液を作成する工程と、
    前記金属塩溶液に前記カーボン被膜を有する又は有しない電極活物質である粉末を添加して混合溶液を作成する工程と、
    前記アルゴンガスを用いて、前記混合溶液に溶存する酸素ガス及び窒素ガスをパージすると共に、前記アルゴンガスを前記混合溶液に溶存させる工程と、
    前記アルゴンガスが溶存した混合溶液に前記アルコールを添加する工程と、
    前記アルゴンガス及びアルコールが溶存する混合溶液に前記超音波照射を行うことにより、前記金属ナノ粒子を析出させて前記電極活物質である粉末又は前記カーボン被膜の表面に前記金属ナノ粒子を付着させる工程と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の金属被覆電極活物質の製造方法。
  3. 前記金属塩を溶媒に溶解させて金属塩溶液を作成する工程と、
    前記カーボン被膜を有する又は有しない電極活物質である粉末と前記アルコールと水とを混合して、前記カーボン被膜を有する又は有しない電極活物質である粉末を含む水溶液とする工程と、
    前記アルゴンガスを用いて、前記水溶液に溶存する酸素ガス及び窒素ガスをパージすると共に、前記アルゴンガスを前記水溶液に溶存させる工程と、
    前記アルゴンガスが溶存した水溶液と前記金属塩溶液とを混合し混合溶液とする工程と、
    前記混合溶液に前記超音波照射を行うことにより、前記金属ナノ粒子を析出させて前記電極活物質である粉末又は前記カーボン被膜の表面に前記金属ナノ粒子を付着させる工程と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の金属被覆電極活物質の製造方法。
  4. 前記アルコールは、プロパノールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属被覆電極活物質の製造方法。
  5. 前記リチウムを含有せず、かつ、カーボン被膜を有しない電極活物質である粉末は、リン酸鉄(III)の粉末であり、前記リチウムを含有し、かつ、カーボン被膜を有する電極活物質である粉末は、リチウムリン酸鉄(II)の粉末であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属被覆電極活物質の製造方法。
  6. 前記金属塩は、塩化パラジウム(II)(PdCl)又は塩化金(III)(AuCl)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属被覆電極活物質の製造方法。
  7. リチウムを含有しない電極活物質であるリン酸鉄(III)又は硫酸鉄の粉末の表面に、カーボン被膜処理を施さずに金属ナノ粒子を付着させたものであって、前記表面の還元が抑制されたものであることを特徴とする金属被覆電極活物質。
  8. リチウムを含有する電極活物質の粉末が、カーボン被膜と前記カーボン被膜上の金属ナノ粒子からなる膜とで被覆されたものであることを特徴とする金属被覆電極活物質。
  9. 前記リチウムを含有する電極活物質の粉末が、リチウムを含有するリン酸鉄(II)、リチウムを含有するリン酸バナジウム、リチウムを含有する硫酸鉄、又はリチウムを含有する珪酸鉄であることを特徴とする請求項8に記載の金属被覆電極活物質。
  10. 前記金属ナノ粒子が金又はパラジウムのナノ粒子であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の金属被覆電極活物質。
  11. 請求項7〜10のいずれか1項に記載された金属被覆電極活物質で構成された電極。
JP2014058799A 2014-03-20 2014-03-20 金属被覆電極活物質の製造方法、金属被覆電極活物質、及び電極 Active JP6646922B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014058799A JP6646922B2 (ja) 2014-03-20 2014-03-20 金属被覆電極活物質の製造方法、金属被覆電極活物質、及び電極

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014058799A JP6646922B2 (ja) 2014-03-20 2014-03-20 金属被覆電極活物質の製造方法、金属被覆電極活物質、及び電極

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015185276A JP2015185276A (ja) 2015-10-22
JP6646922B2 true JP6646922B2 (ja) 2020-02-14

Family

ID=54351629

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014058799A Active JP6646922B2 (ja) 2014-03-20 2014-03-20 金属被覆電極活物質の製造方法、金属被覆電極活物質、及び電極

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6646922B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6654355B2 (ja) * 2015-03-28 2020-02-26 国立大学法人秋田大学 金ナノ粒子の製造方法、金ナノ粒子、Liイオン電池用正極活物質の製造方法、およびLiイオン電池用正極活物質
WO2024077636A1 (zh) * 2022-10-14 2024-04-18 宁德时代新能源科技股份有限公司 复合磷酸锰铁锂材料、其制备方法、二次电池和用电装置

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001110414A (ja) * 1999-10-04 2001-04-20 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> リチウム二次電池正極活物質およびリチウム二次電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015185276A (ja) 2015-10-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Karami et al. Synthesis of uniform nano-structured lead oxide by sonochemical method and its application as cathode and anode of lead-acid batteries
Nguyen et al. Ni-Sn-based hybrid composite anodes for high-performance lithium-ion batteries
Nithyadharseni et al. Synthesis and lithium storage properties of Zn, Co and Mg doped SnO2 nano materials
JP2010212309A (ja) 電極材料及びこの電極材料を含有する電極
Guler et al. Electrochemical performance of MWCNT reinforced ZnO anodes for Li-ion batteries
Liang et al. Hybrid of Co-doped SnO2 and graphene sheets as anode material with enhanced lithium storage properties
Kim et al. Facile one-pot synthesis of Ge/TiO 2 nanocomposite structures with improved electrochemical performance
Javadian et al. Flower-like architecture of CoSn4 nano structure as anode in lithium ion batteries
Nguyen et al. Carbon-free Cu/SbxOy/Sb nanocomposites with yolk-shell and hollow structures as high-performance anodes for lithium-ion storage
JP6511965B2 (ja) 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法および非水系電解質二次電池
Kim et al. Synthesis of tin oxide nanoparticle film by cathodic electrodeposition
JP6999598B2 (ja) リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池
JP6646922B2 (ja) 金属被覆電極活物質の製造方法、金属被覆電極活物質、及び電極
Kim et al. Facile electrochemical synthesis of heterostructured amorphous-Sn@ CuxO nanowire anode for Li-ion batteries with high stability and rate-performance
JP5718734B2 (ja) 二次電池用電極材およびその製造方法
JP5121625B2 (ja) リチウム二次電池用正極活物質の製造法、正極活物質及びリチウム二次電池
Mohammad et al. Nanostructured intermetallic InSb as a high-capacity and high-performance negative electrode for sodium-ion batteries
Ullah et al. Fabrication of 1.6 V asymmetric supercapacitor in an aqueous electrolyte using a CuO-SnO2 composite and activated carbon electrodes
Yoon et al. Optimized Ga-based nanocomposite for superior Li-ion battery anodes
JP5312958B2 (ja) ニッケル正極用活物質として有用な結晶凝集粒子の製造方法
JP6930641B1 (ja) リチウムイオン二次電池用金属吸着材担持炭素材料、リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池
Zhang et al. Influence of reduced graphene oxide on the morphology and electrochemical performance of SnSbAg0. 1 composite materials
WO2020158885A1 (ja) 非水系二次電池用電極活物質及びその製造方法
JP6317606B2 (ja) 金属ナノ粒子被覆基材の製造方法
JP7089983B2 (ja) ナトリウムイオン二次電池用nasicon型負極活物質粒子の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170119

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20171018

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171107

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171204

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180605

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180717

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190108

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190308

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20190820

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191113

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20191113

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20191202

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191225

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200114

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6646922

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250