JP6645880B2 - ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フレキシブルプリント配線板に好適に使用できるポリイミドフィルムの製造方法に関し、より詳しくは、イミド化触媒を使用したポリイミドフィルムの製造方法に関するものである。
フレキシブル基板の主要材料である金属張積層板は、導電性金属箔(以下、単に「金属箔」という)と絶縁層から構成され、可とう性を有することから、柔軟性や屈曲性が要求される部分の配線基板に用いられ、電子機器の小型化、軽量化に貢献している。金属張積層板の中でも、金属箔として銅箔、絶縁層にポリイミド樹脂を用いた銅張積層板は、耐熱性や寸法安定性に優れることから、携帯電話やデジタルカメラなどの情報端末機等の配線基板に広く使用されている。これらのデジタル情報端末の需要は年々拡大を続けており、今後もさらに増加することが予想されるために、銅張積層板の生産数量を増加させることが製品供給上重要となる。
ポリイミドフィルムを製造する方法の一つとして、閉環触媒及び脱水剤を含有するポリアミド酸の有機溶媒溶液を支持体表面にキャストし、ポリアミド酸をイミド化する方法が提案されている(例えば、特許文献1など)。しかしながら、特許文献1で提案されている閉環触媒及び脱水剤は、室温下でもイミド化(硬化ともいう)が進行するので、ポリアミド酸の有機溶媒溶液のゲル化が生じ、そのハンドリング性に問題があった。
また、ポリアミド酸を閉環してポリイミドを製造する方法としては、熱的閉環法と化学閉環法を併用した方法が提案されている(例えば、特許文献2など)。特許文献2によると、高温での硬化時間を短縮できるイミド化触媒として、イミダゾール化合物などが挙げられている。しかし、これらのイミド化触媒を使用してイミド化を完結させるには、280℃以上の高温での加熱が必要であった。
特開平5−237928号公報 特許第4823953号
本発明の目的は、ポリイミドフィルムの生産性向上のためにイミド化触媒を使用する場合に、ポリアミド酸の有機溶媒溶液のハンドリング性の改善と、イミド化に必要な熱処理温度の低温化とを両立させることである。
本発明者らは、上記の課題を解決するため検討を重ねた結果、特定のイミド化触媒を使用することで、前記ハンドリング性の改善と熱処理温度の低温化とを両立させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリアミド酸を熱処理してイミド化することにより、単層又は積層された複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムを製造する方法において、前記ポリアミド酸をイミド化して前記ポリイミド層の少なくとも1層を形成するときに、アミノメチルフェニルボロン酸をイミド化触媒として用いることを特徴とする。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記アミノメチルフェニルボロン酸が、下記の特徴(a)〜(c)、
(a)フェニルボロン酸骨格を有すること;
(b)前記フェニルボロン酸骨格に3級アミノ基を有するメチル基が直接結合していること;
(c)前記3級アミノ基は、窒素原子に炭素数4〜8の環状飽和炭化水素基又は炭素数1〜10の非環状飽和炭化水素基が結合したものであること;
を有するアミノメチルフェニルボロン酸であってもよい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記イミド化触媒を用いて形成される前記ポリイミド層が、低熱膨張性のポリイミド層であってもよい。この場合、前記低熱膨張性のポリイミド層の線熱膨張係数が5〜30ppm/K未満の範囲内にあってもよい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記イミド化が、支持基材上で、単層又は積層された複数層のポリアミド酸層を熱処理して行われるものであってもよい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記支持基材が、金属箔であって、前記金属箔の上にポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥する操作を複数回繰り返す工程、又は前記金属箔の上にポリアミド酸の溶液を多層塗布して一括で乾燥する工程のいずれかの工程によって複数層のポリアミド酸層を形成し、続く熱処理工程でイミド化を行ってもよい。
本発明方法によれば、イミド化触媒としてアミノメチルフェニルボロン酸を用いることによって、ポリアミド酸のイミド化が室温では進行しないため、ポリアミド酸の有機溶媒溶液のゲル化が起こらず、ハンドリング性に優れる。また、アミノメチルフェニルボロン酸を用いることによって、熱処理によるイミド化を従来に比べて低温で完結させることができる。更に、アミノメチルフェニルボロン酸は、線熱膨張係数へ与える影響が小さく、イミド化の完結とともに線熱膨張係数の制御に時間を要することが無いため、フィルム物性を制御する時間の短縮が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[ポリイミドフィルムの製造方法]
<ポリイミドフィルム>
まず、本発明方法で製造されるポリイミドフィルムは、ポリアミド酸を熱処理してイミド化を行い、単層又は複数層のポリイミド層からなるフィルムを形成してなるものである。なお、本発明でいうポリイミドとは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等の分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂をいい、その分子骨格中に感光性基、例えばエチレン性不飽和炭化水素基を含有するものも含まれる。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法の態様として、例えば、[1]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法、[2]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法がある。また、本発明で製造されるポリイミドフィルムが、複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムである場合、その製造方法の態様としては、例えば[3]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥することを複数回繰り返した後、イミド化を行う方法(以下、キャスト法)、[4]多層押出により、同時にポリアミド酸を多層に積層した状態で支持基材上に塗布・乾燥した後、イミド化を行う方法(以下、多層押出法)などが挙げられる。そして、上記[1]〜[4]の方法において、ポリアミド酸を熱処理してイミド化するときに、イミド化触媒としてアミノメチルフェニルボロン酸を用いる。
上記[1]の方法は、例えば、次の工程1a〜1c;
(1a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(1b)支持基材上でポリアミド酸を熱処理してイミド化することによりポリイミド層を形成する工程と、
(1c)支持基材とポリイミド層とを分離することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
上記[2]の方法は、例えば、次の工程2a〜2c;
(2a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(2b)支持基材とポリアミド酸のゲルフィルムとを分離する工程と、
(2c)ポリアミド酸のゲルフィルムを熱処理してイミド化することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
上記[3]の方法は、上記[1]の方法又は[2]の方法において、工程1a又は工程2aを複数回繰り返し、支持基材上にポリアミド酸の積層構造体を形成する以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
上記[4]の方法は、上記[1]の方法の工程1a、又は[2]の方法の工程2aにおいて、多層押出により、同時にポリアミド酸の積層構造体を塗布し、乾燥させる以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
<支持基材>
本発明で製造されるポリイミドフィルムが単層又は複数層のいずれの場合であっても、支持基材上でポリアミド酸のイミド化を完結させることが好ましい。ポリアミド酸の樹脂層が支持基材に固定された状態でイミド化されるので、イミド化過程におけるポリイミド層の伸縮変化を抑制して、寸法精度を維持することができる。
本発明で使用される支持基材は、ポリイミドフィルム(又はポリイミド層)を補強する目的と、ポリイミドフィルムの伸縮変化を抑制して、寸法精度を維持する目的で使用されるものである。また、支持基材は、ポリアミド酸の溶液が塗布される対象となり、カットシート状、ロール状又はエンドレスベルト状などの形状を使用できる。生産性を得るためには、ロール状又はエンドレスベルト状の形態とし、連続生産可能な形式とすることが効率的である。さらに、ポリイミドフィルムの寸法精度の改善効果をより大きく発現させる観点から、支持基材は長尺に形成されたロール状のものが好ましい。
支持基材の材質としては、金属、セラミックス、樹脂、炭素など耐熱性があるものが挙げられるが、熱伝導性や柔軟性の観点から、金属が好ましい。従って、支持基材としては、金属のフィルム(金属箔)、例えば銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、鉄箔、銀箔、金箔、亜鉛箔、インジウム箔、スズ箔、ジルコニウム箔、タンタル箔、チタン箔、コバルト箔及びこれら合金箔が挙げられる。ポリイミドフィルムを回路配線基板の絶縁層として適用し、また支持基材を回路配線基板の配線層として適用する場合には、支持基材は、銅箔又は銅合金箔が好ましい。また、ポリイミドフィルムを支持基材から剥離して使用する場合には、支持基材としては、平滑なステンレスベルトやステンレスドラムなどが好適に使用可能である。
支持基材としての金属箔の厚みは、例えば5〜35μmの範囲内が好ましく、9〜18μmの範囲内がより好ましい。金属箔が35μmより厚いと、ポリイミド層及び金属箔層からなる積層体としての屈曲性や折り曲げ性が悪くなる。一方、金属箔が5μmより薄いと、積層体としての製造工程において、張力等の調整が困難となり、皺等の不良が発生し易くなる。また、これらの金属箔は、接着力等の向上を目的として、その表面に化学的あるいは機械的な表面処理を施してもよく、防錆を目的とする化学的な表面処理を施してもよい。
<ポリアミド酸>
本発明で製造されるポリイミドフィルムを構成するポリイミドの前駆体としては、公知の酸無水物とジアミンから得られる公知のポリアミド酸が適用できる。ポリアミド酸は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンをほぼ等モルで有機溶剤中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることで得られる。反応にあたっては、得られるポリアミド酸が有機溶剤中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解することがよい。重合反応する際に用いる有機溶剤については、極性を有するものを使用することがよく、有機極性溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶剤を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の一部使用も可能である。
合成されたポリアミド酸は溶液として使用される。通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶剤に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶剤可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cP〜1000,000cPの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。このように調製したポリアミド酸の溶液に、後述するイミド化触媒を添加し、塗布液として利用することができる。
<イミド化触媒>
本発明において使用するイミド化触媒は、アミノメチルフェニルボロン酸である。アミノメチルフェニルボロン酸は、その立体構造の特徴から、ポリアミド酸の分子間に配位するので、分子配向を乱すことがなく、むしろイミド化促進による配向促進することができると考えられる。また、ボロン酸[−B(OH)]は、ポリアミド酸のカルボキシル基(−COOH)へ配位し、ポリアミド酸が固定化された状態でアミノ基(−NR)がポリアミド酸のアミド基(−CONH−)のプロトンを引き抜き、再度、アミノメチルフェニルボロン酸として脱離することで、イミド化を促進させると考えられる。更に、脱離したアミノメチルフェニルボロン酸は、次のポリアミド酸へ移動し同様のサイクルでイミド化を促進すると考えられる。例えば、無水酢酸及びピリジンのような脱水剤とイミド化触媒の組合せでは、脱水後に無水酢酸は酢酸となり消費されるのに対し、アミノメチルフェニルボロン酸は1分子で繰り返しイミド化を促進する作用があり、添加量の低減が可能となる。
イミド化反応を促進する触媒として、塩基性触媒または酸性触媒が有効であり、二種類の触媒系を用いた場合、相乗的なイミド化促進効果が期待される。しかし、塩基性触媒と酸触媒を同時に使用すると触媒同士が反応してしまう可能性がある為、添加方法に工夫が必要となる。一方、本発明では、アミノメチルフェニルボロン酸の一分子中に酸性部位と塩基性部位の二つの機能を持たせることで添加方法の工夫は必要ない。更に、アミノメチルフェニルボロン酸は、一分子中に複数の反応点が存在することから、反応に必要な分子同士の立体的な位置が固定され、効率的な反応性の向上が考えられる。
このようなアミノメチルフェニルボロン酸は、下記の特徴(a)〜(c)、
(a)フェニルボロン酸骨格を有すること;
(b)前記フェニルボロン酸骨格に、3級アミノ基を有するメチル基が直接結合していること;
(c)前記3級アミノ基は、窒素原子に炭素数4〜8の環状飽和炭化水素基又は炭素数1〜10の非環状飽和炭化水素基が結合したものであること;
で表されるものが好ましい。つまり、アミノメチルフェニルボロン酸は、フェニルボロン酸骨格にメチレン基を介して3級アミノ基が連結された構造を有している。
アミノメチルフェニルボロン酸の好ましい例として、下記の一般式(1)で表すものを挙げることができる。
Figure 0006645880
一般式(1)中、R及びRは、独立して炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示すか、又は、R及びRが結合して隣接する窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよく、nは1又は2の整数を意味する。ここで、R及びRとしては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基が好ましい。また、窒素原子を含むヘテロ環としては、例えば5員環、6員環が好ましく、これらのヘテロ環には、さらにメチル基などの低級アルキル基が結合していてもよい。また、3級アミノ基を有するメチル基の置換位置は、ボロン酸[−B(OH)]に対して、オルト位又はメタ位であることが好ましく、オルト位であることがより好ましい。
アミノメチルフェニルボロン酸の具体例としては、例えば、2−[(ジメチルアミノ)メチル]フェニルボロン酸、2−[(ジエチルアミノ)メチル]フェニルボロン酸、2−[(ジイソプロピルアミノ)メチル]フェニルボロン酸、3−[(ジイソプロピルアミノ)メチル]フェニルボロン酸、2−[(ビス(2−メチルプロピル)アミノ)メチル]フェニルボロン酸、2−(1−ピロリジニルメチル)フェニルボロン酸、2−[(ビス(1−メチルエチル)アミノ)メチル]−6−メチルフェニルボロン酸、(2,6−ビス[(ジイソプロピルアミノ)メチル]フェニルボロン酸、2,6−ビス[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)メチル]フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中でも、2−[(ジイソプロピルアミノ)メチル]フェニルボロン酸、3−[(ジイソプロピルアミノ)メチル]フェニルボロン酸、2−[(ビス(1−メチルエチル)アミノ)メチル]−6−メチルフェニルボロン酸、(2,6−ビス[(ジイソプロピルアミノ)メチル]フェニルボロン酸、2,6−ビス[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)メチル]フェニルボロン酸から選択された少なくとも1種であることがよい。フェニルボロン酸骨格に直接結合する「3級アミノ基を有するメチル基」には、ボロン酸とアミノ基が反応点として機能する為、環状または非環状の飽和炭化水素基が結合していることがよい。更に、環状または非環状の飽和炭化水素基が結合することにより、立体的障害を持たせることで副生成物を低減する効果があると考えられる。このようなアミノメチルフェニルボロン酸は、ポリイミドの配向度を向上させるので、特に低膨張性のポリイミド層に適用することが好ましい。低熱膨張性のポリイミド層の線熱膨張係数は、例えば5〜30ppm/K未満の範囲内であり、好ましくは5〜25ppm/Kの範囲内、より好ましくは10〜20ppm/Kの範囲内であることがよい。低熱膨張性のポリイミドは、熱処理の増速化(つまり、熱処理時間の短縮化)による線熱膨張係数の急激な上昇を生じやすいが、このようなイミド化触媒を使用することで、ポリイミド層の急激な上昇を抑えることが可能となる。
アミノメチルフェニルボロン酸の添加量は、テトラカルボン酸二無水物の1モルとジアミン化合物の1モルから生じるポリアミド酸の構成単位1モルに対して、好ましくは0.01〜1モルの範囲内、より好ましくは0.05〜0.3モルの範囲内がよい。このような範囲内とすることで、効果的なイミド化の促進とポリアミド酸のハンドリング性、また、ポリイミド層の低熱膨張性を両立することが可能である。なお、ポリアミド酸の構成単位1モルは、ポリイミドの構成単位1モルを与える。
本発明で用いるイミド化触媒の添加は、公知の方法で行うことが出来る。例えば、有機極性溶媒に溶解したポリアミド酸溶液に、有機極性溶媒へ溶解させたイミド化触媒を添加、混合する方法が好ましい。有機極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、硫酸ジメチル、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらを2種類以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の一部使用も可能である。
<イミド化>
ポリアミド酸の溶液は、支持基材上に塗布され、続く熱処理で乾燥及びイミド化(又は硬化)される。加熱処理は、例えば、120〜360℃の範囲内、8〜20分の範囲内で行うことができるが、加熱処理時間は、好ましくは10〜15分である。イミド化触媒によるイミド化促進効果から、ポリアミド酸のイミド化を完結させる為の熱処理温度を例えば180℃程度まで下げることができる。
本発明において、単層又は複数層のポリイミド層を有するポリイミドフィルムを得ることができるが、ポリイミド層を形成するポリイミドは、熱可塑性ポリイミド又は非熱可塑性ポリイミドのいずれであってもよい。つまり、イミド化触媒であるアミノメチルフェニルボロン酸は、熱可塑性ポリイミドの形成又は非熱可塑性ポリイミドの形成のいずれにも適用が可能である。特に、低熱膨張性のポリイミド層の形成に上記イミド化触媒を適用することは、得られるポリイミドフィルムに十分な特性、例えば熱処理の増速化を行ってもイミド化の促進とともに配向度が向上することで、低い線熱膨張係数を与えることができるので好ましく、ポリイミドフィルムが多層ポリイミドフィルムである場合、生産設備の簡略化の観点から、低熱膨張性のポリイミド層にのみイミド化触媒を使用することが最も好ましい。
<低熱膨張性のポリイミド層>
低熱膨張性のポリイミド層を形成するポリイミドの具体例としては、下記式(2)で表される構造単位を有することが好ましい。
Figure 0006645880
式(2)中、Arは下記式(3)〜式(6)で表される2価の基からなる群より選ばれた2価の芳香族基を示し、Arは式(7)〜式(14)で表される4価の基からなる群より選ばれた4価の芳香族基を示す。また、式(3)〜式(6)及び式(14)において、Rは独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、nは独立に0〜4の整数を示す。式(4)〜式(8)において、Xは独立に単結合又は−C(CH)−、−(CH)m−、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CO−若しくは-−CONH−から選ばれる2価の基を示す。そして、Arの1モルに対して、式(4)〜式(8)において、Xとして表される基であって、−(CH)m−、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CO−及び−CONH−から選ばれる2価の基、並びに−O−が、合計で0.2〜0.6モル含まれる。mは1〜5の整数を示す。式(12)〜式(13)において、Zは独立に−CH−、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CO−又は−CONH−から選ばれる2価の基を示す。
Figure 0006645880
ポリイミドの原料として用いられるジアミンとしては、例えば、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3'-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノジベンゾフラン、1,5-ジアミノフルオレン、ジベンゾ-p-ジオキシン-2,7-ジアミン、4,4'-ジアミノベンジルなどが挙げられる。
また、ポリイミドの原料として用いられる酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。上記ジアミン及び酸無水物は、それぞれ1種のみを使用してもよく2種以上を併用することもできる。
本実施の形態において、低熱膨張性のポリイミド層とするには、例えば、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリドを用いることがよく、特に好ましくは、ピロメリット酸二無水物及び2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニルを原料各成分の主成分とするものがよい。
<高熱膨張性のポリイミド層>
また、線熱膨張係数30ppm/K以上の高熱膨張性のポリイミド層とするには、例えば、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることがよく、特に好ましくはピロメリット酸二無水物及び2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを原料各成分の主成分とするものがよい。
<積層構造>
また、ポリイミド層を低熱膨張性のポリイミド層と高熱膨張性のポリイミド層との積層構造とした場合、好ましくは、低熱膨張性のポリイミド層と高熱膨張性のポリイミド層との厚み比(低熱膨張性のポリイミド層/高熱膨張性のポリイミド層)が2〜15の範囲内であるのがよい。この比の値が、2に満たないとポリイミド層全体に対する低熱膨張性のポリイミド層が薄くなるため、ポリイミドフィルムの寸法特性の制御が困難となり、銅箔をエッチングして回路配線層を形成した際の寸法変化率が大きくなり、15を超えると高熱膨張性のポリイミド層が薄くなるため、ポリイミド層と回路配線層との接着信頼性が低下する。
本発明で製造されるポリイミドフィルムを、例えば回路配線基板の絶縁層として適用する場合、ポリイミドフィルムは金属箔との接着性を良好なものとするために、金属箔と接するポリイミド層には高熱膨張性のポリイミドを選択することが好ましい。このような高熱膨張性のポリイミドは、熱可塑性のポリイミドとして知られているが、そのガラス転移温度は350℃以下であるものが好ましく、より好ましくは200〜320℃である。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[粘度の測定]
樹脂の粘度は、E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV−II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%〜90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
[分子量の測定]
分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、商品名;HLC−8220GPC)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にはN,N−ジメチルアセトアミドを用いた。
[イミド化率の評価]
ポリイミドフィルムのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製、商品名FT/IR)を用い、一回反射ATR法にてポリイミドフィルムの赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1009cm−1のベンゼン環炭素水素結合を基準とし、1778cm−1のイミド基由来の吸光度から算出した。なお、触媒添加を行わずに120℃から360℃までの段階的な熱処理を行い、360℃熱処理後のポリイミドフィルムのイミド化率を100%とした。
[線熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から250℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を求めた。
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ガラス転移温度は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、tanδが最大となる温度をガラス転移温度とした。
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
m−TB:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
4,4’−DAPE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
IM:イミダゾール
PB:2,6−ビス[(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル)メチル]フェニルボロン酸(化学構造は、下式を参照)
Figure 0006645880
合成例1
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、3.376gの4,4’−DAPE(0.0168モル)、14.324gのm‐TB(0.0673モル)及び212.5gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.143gのBPDA(0.0208モル)及び13.656gのPMDA(0.0625モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを得た。得られたポリアミド酸溶液aの重量平均分子量(Mw)は120,000であった。
合成例2
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が12重量%となるように、19.660gのBAPP(0.0478モル)及び220.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、10.331gのPMDA(0.0473モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを得た。得られたポリアミド酸溶液bの粘度は1600cP、重量平均分子量(Mw)は116,000であった。ポリアミド酸溶液bのポリアミド酸をイミド化して形成した厚み25μmの高熱膨張性ポリイミドフィルムの線熱膨張係数(CTE)は、55ppm/K、ガラス転移温度(Tg)は320℃であった。
[実施例1]
合成例1で得られたポリアミド酸溶液aのポリアミド酸の構成単位1モルに対して0.05モルとなるPBの所定量を、配合後のポリアミド酸溶液の固形分濃度が12重量%となるような所定量のDMAcへ溶解させた。これをポリアミド酸溶液aに配合し、ポリアミド酸組成物1を得た。得られたポリアミド酸組成物1の粘度は、9550cPであった。このポリアミド酸組成物1を厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;1.5μm)に、硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結した。得られた金属張積層体について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、樹脂フィルム1を得た。得られた樹脂フィルム1の線熱膨張係数は19.7ppm/K、220℃、50秒間の熱処理後におけるイミド化率は100%であった。結果を表1に示す。
[実施例2、3]
表1に記載の割合(モル)でイミド化触媒としてPBを配合した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸組成物2、3を得、樹脂フィルム2、3を作製した。各ポリアミド酸組成物の粘度、各樹脂フィルムのイミド化率、線熱膨張係数の各評価結果を表1に示す。
[参考例1]
イミド化触媒として、表1に記載の割合(モル)でIM(イミダゾール)を配合した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸組成物を得、樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルムのイミド化率、線熱膨張係数の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
イミド化触媒を配合しないこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸組成物を得、樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルムのイミド化率、線熱膨張係数の評価結果を表1に示す。
[実施例4]
ポリアミド酸溶液bを用い、表2に記載の割合(モル)でイミド化触媒としてPBを配合した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸組成物4を得、樹脂フィルム4を作製した。銅箔への塗布及び熱処理後、銅箔の腐食は無かった。ポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルム4の180℃、1分間熱処理後におけるイミド化率を表2に示す。
[比較例2]
イミド化触媒を配合しないこと以外は、実施例4と同様にしてポリアミド酸組成物を得、樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルムの180℃、1分間熱処理後におけるイミド化率を表2に示す。
以上の結果をまとめて表1及び表2に示す。なお、表中の粘度はイミド化触媒配合後のポリアミド酸組成物の粘度を示し、CTEは線熱膨張係数、220℃または180℃熱処理後のイミド化率は各温度で50秒間又は1分間熱処理後にサンプリングした樹脂フィルムのイミド化率を意味する。
Figure 0006645880
Figure 0006645880
表1及び2の結果より、イミド化触媒としてPB、すなわち、アミノメチルフェニルボロン酸を配合することによって粘度上昇が確認されたが、触媒混合時においてイミド化は進行していないことを確認している。従って、アミノメチルフェニルボロン酸を用いた場合、ポリアミド酸溶液としてハンドリング性に優れていることが分かる。また、アミノメチルフェニルボロン酸を用いる場合は、IM、すなわちイミダゾールを用いる場合よりも高いイミド化率を示すことが分かり、イミド化触媒として優れた効果を確認することが出来た。イミド化触媒としてイミダゾールを用いた場合、イミド化率100%にまで到達する為には、おおよそ280℃以上の熱処理が必要であるが、本触媒により低温でのイミド化達成が可能となる。ポリイミドフィルムの線熱膨張係数は、アミノメチルフェニルボロン酸の配合により増加しているが、30ppm/K未満に抑えることができ、低熱膨張性のポリイミドフィルムとして使用可能である。
[実施例5]
実施例1で使用した電解銅箔の片面に、実施例4で得られたポリアミド酸組成物4を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、120℃で30秒間乾燥した。その上に実施例1で得られたポリアミド酸組成物1を硬化後の厚みが21μmとなるように塗布し、120℃の範囲で2分間乾燥した。更にその上に、実施例4で得られたポリアミド酸組成物4を、硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、120℃で30秒間乾燥した後、120〜360℃の温度で10分間熱処理を行い、イミド化を完了し、高熱膨張性ポリイミド/低熱膨張性ポリイミド/高熱膨張性ポリイミドの厚みがそれぞれ2μm/21μm/2μmの金属張積層体1を得た。得られた金属張積層体1について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、積層樹脂フィルム1を得た。得られた積層樹脂フィルム1の線熱膨張係数は24.0ppm/Kであった。
[参考例2]
実施例1で得られたポリアミド酸組成物1に代えてイミド化触媒を配合しない比較例1のポリアミド酸組成物を用い、実施例4で得られたポリアミド酸組成物4に代えてイミド化触媒を配合しない比較例2のポリアミド酸組成物を用いること以外は、実施例5と同様にして積層樹脂フィルム2を作製した。得られた積層樹脂フィルム2の線熱膨張係数は19.6ppm/Kであった。
[実施例6]
リップ幅200mmのマルチマニホールド式の3層共押出三層ダイを用い、実施例4で得られたポリアミド酸組成物4/実施例1で得られたポリアミド酸組成物1/実施例4で得られたポリアミド酸組成物4の順の3層構造で、実施例1で使用した電解銅箔上に押出し流延塗布した。その後、120〜360℃の温度で10分間熱処理を行い、イミド化を完了し、高熱膨張性ポリイミド/低熱膨張性ポリイミド/高熱膨張性ポリイミドの厚みがそれぞれ2μm/21μm/2μmの金属張積層体3を得た。得られた金属張積層体3について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、積層樹脂フィルム3を得た。得られた積層樹脂フィルム3の線熱膨張係数を測定したところ、25.2ppm/Kであった。
[参考例3]
実施例1で得られたポリアミド酸組成物1に代えてイミド化触媒を配合しない比較例1のポリアミド酸組成物を用い、実施例4で得られたポリアミド酸組成物4に代えてイミド化触媒を配合しない比較例2のポリアミド酸組成物を用いること以外は、実施例6と同様にして積層樹脂フィルム4を作製した。得られた積層樹脂フィルム4の線熱膨張係数は20.1ppm/Kであった。
[実施例7]
実施例1と同様にして、ポリアミド酸組成物7を得た。このポリアミド酸組成物7を厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;1.5μm)に、硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、温度200℃又は220℃で熱処理を行い、金属張積層体を得た。得られた金属張積層体について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、樹脂フィルム7を得た。ポリアミド酸組成物7について、上記各温度でイミド化率が100%となる熱処理時間の評価結果を表3に示す。
[比較例3]
イミド化触媒を配合しないこと以外は、実施例7と同様にしてポリアミド酸組成物を得、樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の上記各温度でイミド化率が100%となる熱処理時間の評価結果を表3に示す。
以上の結果をまとめて表3に示す。
Figure 0006645880
表3より、イミド化触媒を配合しない場合でも低温の熱処理においてイミド化率が100%に到達するが、アミノメチルフェニルボロン酸を使用した場合について熱処理時間の短縮及びより低温でのイミド化促進が可能であることが分かった。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。


Claims (6)

  1. ポリアミド酸を熱処理してイミド化することにより、単層又は積層された複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムを製造する方法において、
    前記ポリアミド酸をイミド化して前記ポリイミド層の少なくとも1層を形成するときに、アミノメチルフェニルボロン酸をイミド化触媒として用いることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
  2. 前記アミノメチルフェニルボロン酸が、下記の特徴(a)〜(c)、
    (a)フェニルボロン酸骨格を有すること;
    (b)前記フェニルボロン酸骨格に3級アミノ基を有するメチル基が直接結合していること;
    (c)前記3級アミノ基は、窒素原子に炭素数4〜8の環状飽和炭化水素基又は炭素数1〜10の非環状飽和炭化水素基が結合したものであること;
    を有するアミノメチルフェニルボロン酸であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  3. 前記イミド化触媒を用いて形成される前記ポリイミド層が、低熱膨張性のポリイミド層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  4. 前記低熱膨張性のポリイミド層の線熱膨張係数が5〜30ppm/K未満の範囲内にあることを特徴とする請求項3に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  5. 前記イミド化が、
    支持基材上で、単層又は積層された複数層のポリアミド酸層を熱処理して行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  6. 前記支持基材が、金属箔であって、
    前記金属箔の上にポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥する操作を複数回繰り返す工程、又は前記金属箔の上にポリアミド酸の溶液を多層塗布して一括で乾燥する工程のいずれかの工程によって複数層のポリアミド酸層を形成し、続く熱処理工程でイミド化を行うことを特徴とする請求項5に記載のポリイミドフィルムの製造方法。


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