JP6645068B2 - マイクロ波加熱装置 - Google Patents

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本発明は、マイクロ波加熱装置に関するものである。
電子レンジ等の電磁波としてマイクロ波を用いたマイクロ波加熱装置では、マイクロ波加熱装置の加熱室に被加熱体を置き、加熱室内にマイクロ波を放射することにより、マイクロ波を被加熱体が吸収し加熱される。加熱される被加熱体には水が含まれており、被加熱体に照射されるマイクロ波は水の吸収波長帯の電磁波であるため、このようなマイクロ波を照射することにより被加熱体が加熱される。電子レンジ等のマイクロ波を用いたマイクロ波加熱装置においては、加熱室内に放射されたマイクロ波は、加熱室内において反射を繰り返しながら、被加熱体に吸収されて、被加熱体が加熱される。
特開平10−172750号公報 特開2004−213976号公報
上述した電子レンジ等のマイクロ波加熱装置は、加熱室内に置かれている被加熱体に、マイクロ波を放射し加熱するものであるため、加熱室内に様々な大きさの被加熱体を入れることができるように、比較的大きく作られている。従って、マイクロ波加熱装置は、比較的大型なものとなる。
このため、被加熱体を加熱することが可能の小型のマイクロ波加熱装置が求められている。
本実施の形態の一観点によれば、被加熱体に近接して設置されたスロットアンテナと、前記スロットアンテナにマイクロ波を供給するマイクロ波発生源と、を有し、前記スロットアンテナは、誘電体層の一方の面には開口部を有する接地電極層が形成されており、他方の面には伝送線路が形成されており、前記マイクロ波は、マイクロ波発生源から前記伝送線路に供給されるものであって、前記伝送線路は、前記開口部の長手方向と直交する方向に沿って形成されており、前記マイクロ波は、前記被加熱体が加熱される周波数のマイクロ波であって、前記スロットアンテナを複数有しており、各々の前記スロットアンテナは、前記被加熱体の周囲に巻かれていることを特徴とする。
開示のマイクロ波加熱装置によれば、マイクロ波加熱装置を小型化することができる。
開口部が1つのスロットアンテナの構造図 開口部が3つ形成されているスロットアンテナ及び接地電極層に開口部が形成されていない構造のものの構造図 スロットアンテナの反射特性図(1) スロットアンテナの反射特性図(2) 第1の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の構造図 開口部が3つのスロットアンテナの構造図 スロットアンテナの反射特性図(3) 第2の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の構造図
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
〔第1の実施の形態〕
本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置について図1に基づき説明する。本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、加熱室を有しておらず、小型化可能なものである。尚、図1(a)は、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置を形成するスロットアンテナの斜視図であり、図1(b)は、底面図である。
本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、図1に示されるような、スロットアンテナ10を有している。このスロットアンテナ10は、誘電体層20の一方の面に接地電極層30が形成されており、他方の面に伝送線路40が形成されている。
誘電体層20は、ポリイミドやPET(Polyethyleneterephthalate)等の絶縁性を有するフレキシブルで柔軟性のある樹脂材料により形成されている。本実施の形態においては、誘電体層20は、厚さtaが500μm、幅Waが約3mmのポリイミド(ε=3.4)により形成されている。
接地電極層30は、誘電体層20の一方の面に、開口部31を有する金属膜等により形成されており、接地電位に接続されている。本実施の形態においては、接地電極層30は、全体が厚さtbが200μmのCu膜により形成されており、中央には長方形の開口部31が形成されている。また、接地電極層30の開口部31は、X軸方向における幅Wbが500μm、Y軸方向における長さLbが6.8mmとなるように形成されており、開口部31の長手方向がY軸方向となっている。
電子レンジ等のマイクロ波加熱装置では、周波数が2.45GHzのマイクロ波が用いられており、このマイクロ波の空気中における波長は約122.5mmである。水中の比誘電率を約80とすると、このマイクロ波の水中における波長λは約13.7mmとなる。開口部31におけるY軸方向における長さLbは、この水中における波長λの約半分、即ち、λ/2程度であることが好ましい。また、開口部31におけるX軸方向における幅Wbは、開口部31の長さLbの1/10程度、若しくは、それ以下で形成されていることが好ましい。
尚、本実施の形態において使用されるマイクロ波の周波数は、2.4GHz以上、2.5GHz以下である。この範囲の周波数は、電子レンジや工業用マイクロ波加熱装置に用いられるIMS(Industry-Science-Medical)バンドである。このような周波数のマイクロ波を被加熱体に照射することにより、被加熱体に含まれる水を加熱することができる。
伝送線路40は、誘電体層20の他方の面に、Cu等の金属材料により形成されている。本実施の形態においては、誘電体層20の他方の面に形成されている伝送線路40は、厚さtcが3.5μm、幅Wcが1140μmであり、開口部31の長手方向と直交する方向となるX軸方向に沿って形成されている。尚、伝送線路40は、他方の面において、開口部31に対応する領域を横切るように形成されており、図1(b)に示す場合では、伝送線路40は、開口部31に対応する領域の中央部分を横切るように形成されている。
次に、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置に用いられるスロットアンテナについて電磁界解析を行った結果について説明する。具体的には、図2(a)に示される開口部31が3つ設けられているスロットアンテナ、図1(b)に示される開口部31が1つ設けられているスロットアンテナについて電磁界解析を行った。尚、図2(a)に示されるスロットアンテナは、開口部31と開口部31の間隔Wkは500μmとなるように形成されている。また、比較のため、図2(b)に示すように開口部が設けられておらず、全面に接地電極層930が形成されているものについても電磁界解析を行った。この電磁界解析においては、接地電極層に水が接しているモデルを用い、伝送線路40の一方から信号を供給し、他方を解放(Open)にした状態で行った。
図3は、周波数を変化させた場合の反射S11の特性を示す。反射S11は、アンテナ等に供給されたマイクロ波が、アンテナ等において反射されたエネルギーを示している。特性3Aは、図2(a)に示される開口部31が3つ設けられているスロットアンテナの特性を示し、特性3Bは、図1(b)に示される開口部31が1つ設けられているスロットアンテナ10の特性を示す。特性3Cは、図2(b)に示される開口部が設けられておらず、全面に接地電極層930が形成されているものの特性を示す。尚、反射S11が高いと、アンテナ等において反射されるマイクロ波が高く、アンテナ等から放射されるマイクロ波は少ない。また、反射S11が低いと、アンテナ等において反射されるマイクロ波が少なく、アンテナ等から放射されるマイクロ波は多い。
図3において、特性3Aに示される図2(a)の開口部31が3つ設けられているスロットアンテナでは、約4.3GHzにおいてマイクロ波の反射S11が低くなり、ボトムが−15dB以下となり、この分のマイクロ波が放射される。
また、特性3Bに示される図1(b)の開口部31が1つ設けられているスロットアンテナ10では、約3.5GHzにおいてマイクロ波の反射S11が低くなり、ボトムが−10dB以下となり、この分のマイクロ波が放射される。
これに対し、特性3Cに示される図2(b)の開口部が形成されておらず全面に接地電極層930が形成されているものでは、マイクロ波の反射は0〜−3dBであり、入力エネルギの半分以上が反射される。このため、この場合におけるマイクロ波の放射は、特性3A及び3Bと比べて極めて低い。
尚、特性3A及び特性3Bに示されるように、スロットアンテナにおける開口部31の数によりボトムとなる周波数を変えることができる。よって、開口部31の数や、開口部31における幅Wb等を調整することにより、ボトムとなる周波数を2.45GHzにすることが可能であり、これにより、被加熱体に含まれる水を効率よく加熱することができる。
次に、図4は、図2(a)に示される開口部31が3つ設けられているスロットアンテナの接地電極層30の側に、水が存在している場合と、水が存在していない場合(空気が存在している場合)とにおける反射S11の特性を示す。特性3Aは、接地電極層30の側に、水が存在している場合の特性を示し、特性4Aは、接地電極層30の側に、水が存在していない場合の特性(空気が存在している場合の特性)を示す。
図4において、特性3Aに示される接地電極層30の側に水が存在している場合には、特性4Aに示される水が存在していない場合よりも反射S11が低い。従って、図2(a)に示される開口部31が3つ設けられているスロットアンテナでは、接地電極層30が設けられている側に、水が存在していると、マイクロ波は放射されるが、水が存在していないと、マイクロ波は反射されるため放射されない。このように、本実施の形態においては、被加熱体に含まれている水を選択的に、加熱することができる。
次に、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置について説明する。本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、図1や図2(a)に示されるスロットアンテナを複数有しており、被加熱体に巻き付けて使用する。被加熱体としては、例えば、ペットボトルに入っている水や飲み物等が挙げられ、具体的には、図5に示されるように、円筒形の容器101に被加熱体100として水が入れられているものが挙げられる。
本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、スロットアンテナ10a、10b、10cとマイクロ波発生源50とを有している。スロットアンテナ10a、10b、10cの各々には、図1や図2(a)に示されるように、複数の開口部31が形成されている接地電極層30と、伝送線路40が設けられており、各々の伝送線路40と接地電極層30は、マイクロ波発生源50に接続されている。尚、マイクロ波発生源50は、マイクロ波を発生させるためのマグネトロンやGaN等の半導体材料により形成された高周波半導体素子を備えている。
本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、スロットアンテナ10a、10b、10cが、円筒形の容器101の周囲において、円筒形の容器101の円周方向に伝送線路40が沿うように巻かれている。具体的には、円筒形の容器101の下側から上側に向かって、円筒形の容器101の円周方向に沿って、スロットアンテナ10a、スロットアンテナ10b、スロットアンテナ10cの順に巻かれている。スロットアンテナ10a、10b、10cは、各々の接地電極層30が、円筒形の容器101の側となっており、円筒形の容器101に接している。本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、このような状態で、被加熱体に設置される。
図5に示される状態では、円筒形の容器101には、被加熱体100となる水が、スロットアンテナ10a、スロットアンテナ10bが位置している部分までは入れられているが、スロットアンテナ10cが位置している部分には存在していない。従って、円筒形の容器101の被加熱体100となる水が存在している領域に巻かれているスロットアンテナ10a、10bからは、マイクロ波発生源50より供給されたマイクロ波が放射され、被加熱体100となる水が加熱される。一方、円筒形の容器101の被加熱体100となる水が存在していない領域に巻かれているスロットアンテナ10cでは、マイクロ波が反射されるため、マイクロ波が放射されることはない。これにより、スロットアンテナ10a、10bにより、円筒形の容器101内に存在している被加熱体100となる水を選択的に加熱することができる。
次に、スロットアンテナの接地電極層30に形成される開口部31の間隔と反射S11との関係について説明する。具体的には、図2(a)に示される開口部31の間隔Wkが500μmの場合と、図6に示される開口部31の間隔Wkが5mmの場合について、周波数と反射S11との関係を図7に示す。図7において、特性7Aは、図6に示される間隔Wkが5mmで開口部31が3つ設けられているスロットアンテナの特性を示し、比較のため特性3A及び3Cも併せて示す。
図7において、特性7Aに示されるように、開口部31の間隔Wkを5mmにすることにより、マイクロ波は、約4.3GHzにおいて反射S11が低くなり、ボトムが−20dB以下となる。この値は、特性3Aに示される間隔Wkが500μmで開口部31が3つ設けられているスロットアンテナの反射S11よりも低い値である。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、図8に示されるように、スロットアンテナが伝送線路40が円筒形の容器101の母線方向に沿うように設置されている。具体的には、被加熱体100である水が入れられている円筒形の容器101の周囲に、円筒形の容器101の母線方向に伝送線路40が沿うように、スロットアンテナ10d、10e、10f等が設置されている。尚、スロットアンテナ10d、10e、10fは、接地電極層30が形成されている面が、円筒形の容器101と接するように設置されている。スロットアンテナ10d、10e、10fにおける伝送線路40及び接地電極層30は、マイクロ波発生源50と各々配線により接続されている。
被加熱体100となる水は、円筒形の容器101の途中まで入れられている。スロットアンテナ10d、10e、10fからは、被加熱体100となる水が入れられている領域においては、マイクロ波は放射されるが、被加熱体100となる水が入れられていない領域においては、マイクロ波は反射され放射されない。よって、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、被加熱体100の周囲に巻かれているマイクロ波加熱装置より放射されたマイクロ波を吸収することにより加熱される。
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
被加熱体に近接して設置されたスロットアンテナと、
前記スロットアンテナにマイクロ波を供給するマイクロ波発生源と、
を有し、
前記スロットアンテナは、誘電体層の一方の面には開口部を有する接地電極層が形成されており、他方の面には伝送線路が形成されており、
前記マイクロ波は、マイクロ波発生源から前記伝送線路に供給されるものであって、
前記マイクロ波は、前記被加熱体が加熱される周波数のマイクロ波であることを特徴とするマイクロ波加熱装置。
(付記2)
前記スロットアンテナを複数有しており、
各々の前記スロットアンテナは、前記被加熱体に接して巻かれていることを特徴とする付記1に記載のマイクロ波加熱装置。
(付記3)
前記誘電体層は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されていることを特徴とする付記1または2に記載のマイクロ波加熱装置。
(付記4)
前記接地電極層に設けられている開口部は複数であることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載のマイクロ波加熱装置。
(付記5)
前記マイクロ波の周波数は、2.4GHz以上、2.5GHz以下であることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載のマイクロ波加熱装置。
(付記6)
前記被加熱体は、円柱状または円筒形の容器に入れられているものであって、
前記スロットアンテナは、前記伝送線路が前記被加熱体または円筒形の前記容器の円周方向または母線方向に沿うように巻かれていることを特徴とする付記1から5のいずれかに記載のマイクロ波加熱装置。
10 スロットアンテナ
20 誘電体層
30 接地電極層
31 開口部
40 伝送線路
50 マイクロ波発生源
100 被加熱体
101 容器

Claims (6)

  1. 被加熱体に近接して設置されたスロットアンテナと、
    前記スロットアンテナにマイクロ波を供給するマイクロ波発生源と、
    を有し、
    前記スロットアンテナは、誘電体層の一方の面には開口部を有する接地電極層が形成されており、他方の面には伝送線路が形成されており、
    前記マイクロ波は、マイクロ波発生源から前記伝送線路に供給されるものであって、
    前記伝送線路は、前記開口部の長手方向と直交する方向に沿って形成されており、
    前記マイクロ波は、前記被加熱体が加熱される周波数のマイクロ波であって、
    前記スロットアンテナを複数有しており、
    各々の前記スロットアンテナは、前記被加熱体の周囲に巻かれていることを特徴とするマイクロ波加熱装置。
  2. 前記接地電極層に設けられている開口部は複数であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  3. 前記誘電体層は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ波加熱装置。
  4. 前記マイクロ波の周波数は、2.4GHz以上、2.5GHz以下であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマイクロ波加熱装置。
  5. 前記開口部は、前記長手方向における長さに対し、前記長手方向に直交する幅が、1/10以下であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマイクロ波加熱装置。
  6. 前記被加熱体は、円柱状または円筒形の容器に入れられているものであって、
    前記スロットアンテナは、前記伝送線路が前記被加熱体または円筒形の前記容器の円周方向または母線方向に沿うように巻かれていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマイクロ波加熱装置。
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