次に、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態と記載する)を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理装置10の主要構成を示すブロック図である。情報処理装置10は、記憶部20、演算部30、通信部40、入力部50、表示部60等を備える。
情報処理装置10は、例えばパーソナルコンピュータ(Personal Computer:PC)又はワークステーション(Workstation:WS)であるが、これらは情報処理装置10の具体的な一例であってこれに限られるものでない。情報処理装置10は、例えばスマートフォンのような携帯端末であってもよい。
記憶部20は、情報処理装置10により取り扱われるソフトウェア・プログラム及びデータ(図1等では、プログラム等Pと記載する)を記憶する。具体的には、記憶部20は、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、フラッシュメモリ等の記憶装置(いわゆる2次記憶装置)を有し、係る記憶装置の記憶領域に情報処理装置10で取り扱われるプログラム等Pを記憶している。また、記憶部20は、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等の主記憶装置を有する。RAMの記憶領域は、演算部30が行う各種の処理における一時的な記憶領域として機能する。
演算部30は、情報処理装置10により行われる各種の処理に係る演算を行う。具体的には、演算部30は、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)等の電子回路を有し、記憶部20により記憶されているプログラム等Pを読み出して解釈、実行し、プログラム等Pの内容に応じた演算処理を行う。
通信部40は、外部のネットワークを介して他の機器と通信するための通信機能を情報処理装置10に提供する。具体的には、通信部40は、例えば所定の通信規格に対応したネットワークカード、通信モジュール等を有し、係る通信規格及び所定の通信プロトコルに則った通信を行う。通信部40が利用する通信回線は、有線、無線のいずれであってもよいし、有線と無線とが混在していてもよい。また、通信部40が用いる通信規格及び通信プトロコルは任意である。
入力部50は、情報処理装置10に対する各種の入力を行うためのインタフェースである。具体的には、入力部50は、例えばキーボード、マウス等の入力装置を有する。入力部50は、タッチパネル形式の入力装置、筐体に設けられた各種のボタン、キー等の入力装置を有していてもよい。ユーザは、入力部50を介して情報処理装置10に対する入力を行う。
また、入力部50の一構成として、画像を読み取り可能なイメージスキャナが設けられていてもよい。イメージスキャナは、紙面等に形成された画像を読み取って画像データに変換し、当該画像データを情報処理装置10に入力する。
表示部60は、情報処理装置10による処理内容に応じた表示出力を行う。具体的には、表示部60は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置を有し、係る表示装置による表示出力を行う。
表示部60は、情報処理装置10が有する出力部の一構成であるが、情報処理装置10は、他の出力部を有していてもよい。例えば画像形成装置(いわゆるプリンタ)等が設けられていてもよい。
情報処理装置10は、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフ(例えば、図11に示す曲線グラフ90)に基づいて当該曲線グラフが示す曲線(第1の曲線)の近似曲線を表す多項式を得るためのプログラム等Pを記憶部20に記憶している。当該プログラム等Pに係る説明に先立ち、増幅器の特性について、図2から図5を参照して説明する。
図2は、増幅器の理想的な増幅特性及び実際の増幅特性の一例を示すグラフである。理想論として、増幅器による信号の増幅特性は、増幅率が一定である増幅特性であることが望ましい。増幅率が一定である場合、図2の破線L1で示すように、入力信号の強さ(以下、入力レベルと記載する)と増幅後の出力信号の強さ(以下、出力レベルと記載する)との関係が線形の関係になる。しかしながら、実際には、例えば図2の実線L2で示すように、増幅器による信号の増幅特性は、入力レベルと出力レベルとが非線形の関係である。すなわち、実際には、増幅器による増幅率は一定でない。より具体的には、入力レベルと出力レベルとの実際の関係は、所定の領域(例えば、図2に示す線形領域U)内において入力レベルが小さい程増幅率が下がり、入力レベルが大きい程増幅率が上がる関係である。また、入力レベルと出力レベルとの実際の関係は、全体としては多項式曲線の近似曲線を描く。なお、通常、増幅器は、増幅率が線形的に増加する線形領域Uの範囲内で利用されるが、当該範囲内においても、増幅率は一定でない。
図3は、入力レベルの時系列的な変化と、当該入力レベルに応じた増幅率の時系列的な変化と、出力レベルの時系列的な変化との関係の一例を示す図である。入力レベルと出力レベルとが非線形の関係である増幅特性を示す増幅器に対する入力信号が所定の周波数で周期的に強弱を繰り返す入力レベルの時系列的な変化を示すと、入力レベルの強弱に応じて増幅器の増幅率が上下することになる。このため、増幅器による増幅後の出力信号は、入力信号に比して周期的な出力レベルの変化がより顕著になる。
図4は、複数の増幅器の各々の増幅特性の違いを模式的に示すグラフである。図5は、図4に示す各々の増幅特性に応じた増幅率の違いを模式的に示すグラフである。図4に示すように、増幅器は、それぞれ異なる増幅特性を示すことがある。この場合、図5に示すように、図3に示すような入力レベルの周期的な変化に応じた増幅率の変化もそれぞれ異なる。一方、図5に示すような増幅率の波形(w)は、以下の式(1)で示す多項式に近似する曲線として一般化することができる。式(1)におけるsinωは、入力レベルの周期的な変化を示す曲線であり、ωが入力信号の周波数を示す。ここで、入力信号(x)=sinωとすると、式(1)は、式(2)のように表すことができる。また、式(1)、(2)に示す増幅率の波形(w)を示す増幅器に入力信号(x)を入力した場合に得られる増幅後の出力信号(y)は、以下の式(3)のように表すことができる。
w=a1+a2sinω+a3sinω2+a4sinω3+…+ansinω(n−1)…(1)
w=a1+a2x+a3x2+a4x3+…+anx(n−1)…(2)
y=a1x+a2x2+a3x3+a4x4+…+anxn…(3)
次に、増幅器の特性と相互変調との関係について説明する。前述の通り、増幅器に対して複数の信号が入力された場合、相互変調が発生することがある。以下、増幅器に2つの信号(sinω1、sinω2)が入力された場合について説明する。2つの信号の一方(sinω1)は、例えば増幅器が設けられた無線受信局による受信波に該当する。また、2つの信号の他方(sinω2)は、例えば当該無線受信局の近隣に存する無線信号送信局からの送信波に該当する。係る2つの信号はあくまで一例であってこれに限られるものでない。
増幅器に2つの信号(sinω1+sinω2)が入力された場合、入力信号(x)が2つの信号(sinω1、sinω2)であるといえる。よって、上記の式(3)に基づいて、当該2つの信号が入力された場合の出力信号(y)は、以下の式(4)のように表すことができる。
y=a1(sinω1+sinω2)+a2(sinω1+sinω2)2+a3(sinω1+sinω2)3+a4(sinω1+sinω2)4+…+an(sinω1+sinω2)n…(4)
上記の式(4)の右辺のうち、1次の項は、a1(sinω1+sinω2)である。同様に、上記の式(4)の右辺のうち、2次の項、3次の項、4次の項、…、n次の項は、それぞれ、a2(sinω1+sinω2)2、a3(sinω1+sinω2)3、a4(sinω1+sinω2)4、an(sinω1+sinω2)nである。
ここで、1次の項であるa1(sinω1+sinω2)のうち、ω1及びω2は、周波数成分である。これらの2つの周波数成分が示す周波数は、増幅器に入力された2つの信号の周波数と等しい。係る1次の項が示すように、増幅器に2つの信号(sinω1+sinω2)が入力された場合、当該増幅器の出力信号は、入力された2つの信号の周波数と等しい周波数である信号を含む。
また、2次の項であるa2(sinω1+sinω2)2は、以下の式(5)のように展開することができる。
a2(sinω1+sinω2)2
=a2(sin2ω1+2sinω1sinω2+sin2ω2)
=a2・1/2(1+cos2ω1+2cos(ω1−ω2)−2cos(ω1+ω2)+1+cos2ω2)…(5)
式(5)における右辺の2ω1、(ω1−ω2)、(ω1+ω2)及び2ω2は、周波数成分である。これらの4つの周波数成分が示す周波数は、増幅器に入力された2つの信号の周波数と異なる。係る2次の項が示すように、増幅器に2つの信号(sinω1+sinω2)が入力された場合、当該増幅器の出力信号は、入力された2つの信号の周波数と異なる周波数である信号を含む。係る入力された2つの信号の周波数と異なる周波数である信号は、相互変調により生じる新たな信号である。
2次の項から導出された相互変調により生じた新たな信号は、式(5)が示す通り、a2の係数を有する。すなわち、a2の値の大小は、2次の項から導出された相互変調により生じた新たな信号の大小に対応する。
図6は、3次の項であるa3(sinω1+sinω2)3の展開を示す図である。図6に示すように、3次の項であるa3(sinω1+sinω2)3は、以下の式(6)のように展開することができる。
a3(sinω1+sinω2)3
=a3{9/4sinω1+9/4sinω2−1/4sin3ω1−1/4sin3ω2−3/4sin(2ω1−ω2)−3/4sin(2ω2−ω1)+3/4sin(2ω1+ω2)+3/4sin(2ω2+ω1)}…(6)
式(6)における右辺のω1、ω2、3ω1、3ω2、(2ω1−ω2)、(2ω2−ω1)、(2ω1+ω2)及び(2ω2+ω1)は、周波数成分である。これらの8つの周波数成分のうち、ω1及びω2の2つの周波数成分が示す周波数は、増幅器に入力された2つの信号の周波数と等しい。一方、これらの8つの周波数成分のうち、3ω1、3ω2、(2ω1−ω2)、(2ω2−ω1)、(2ω1+ω2)及び(2ω2+ω1)の6つの周波数成分が示す周波数は、は、増幅器に入力された2つの信号の周波数と異なる。係る3次の項が示すように、増幅器に2つの信号(sinω1+sinω2)が入力された場合、当該増幅器の出力信号は、入力された2つの信号の周波数と等しい周波数である信号及び異なる周波数である信号を含む。係る入力された2つの信号の周波数と異なる周波数である信号は、相互変調により生じる新たな信号である。
3次の項から導出された相互変調により生じた新たな信号は、式(6)が示す通り、a3の係数を有する。すなわち、a3の値の大小は、3次の項から導出された相互変調により生じた新たな信号の大小に対応する。
4次以上の項については詳細な説明を省略するが、展開することで、入力された2つの信号の周波数と等しい周波数である信号、異なる周波数である信号又は両方の信号が導出される。ただし、4次以上の項から導出される信号は、相互変調による影響という観点において実質的に無視することができるほどに、信号の周波数が入力される2つの信号の周波数から離れているか、信号の強さが弱いか、又はその両方を満たす。
また、3つ以上の信号が入力された場合についても、式(3)における入力信号(x)に3つ以上の信号をあてはめることで、上記と同様、入力された2つの信号の周波数と等しい周波数である信号及び異なる周波数である信号を導出することができる。
このように、式(4)の基になった、出力信号(y)を示す式(3)に基づいて、相互変調により生じる新たな信号の周波数及び当該新たな信号の強さを導出することができる。すなわち、式(3)を導出するための式である、増幅率の波形(w)を示す式(2)を特定することで、入力信号(x)に対して当該増幅率の波形(w)を示す増幅器に対して複数の信号が入力された場合に、相互変調により生じる新たな信号の周波数及び当該新たな信号の強さを導出することができる。
本実施形態の情報処理装置10は、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフ(例えば、図11に示す曲線グラフ90)に基づいて当該曲線グラフが示す曲線の近似曲線を表す多項式を得るための処理を行う。係る多項式と入力信号(x)から、増幅率の波形(w)を示す式(2)を特定することができる。よって、本実施形態の情報処理装置10によれば、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフが示す曲線の近似曲線を表す多項式を得られるので、当該多項式に基づいて相互変調により生じる新たな信号の周波数及び当該新たな信号の強さを導出することができる。以下、情報処理装置10によって多項式を得るための処理について説明する。
図7は、プログラム等Pの内容の一例を示す図である。情報処理装置10の記憶部20は、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフ(例えば、図11に示す曲線グラフ90)に基づいて当該曲線グラフが示す曲線の近似曲線を表す多項式を得るためのプログラム等Pを記憶する。当該プログラム等Pは、例えば、表計算を行うことができるアプリケーションソフトウェアである表計算ソフト70と、表計算ソフト70で解釈可能な形式のデータである表計算データ80を含む。表計算データ80は、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフが示す曲線の近似曲線を描くグラフ描画エリア82と、当該グラフで描かれる曲線を表す多項式のパラメータを設定するための設定エリア81とを有する。表計算ソフト70を実行中の演算部30は、表計算データ80を読み込んで解釈することで、設定エリア81に設定されたパラメータに応じたグラフをグラフ描画エリア82に描画する。
図8は、設定エリア81の一例を示す図である。図9は、グラフ描画エリア82の一例を示す図である。図8に示すように、設定エリア81は、曲線の基になる直線L3の傾きを設定するためのセルである傾き補正セル81aと、当該直線を中心とした曲線の曲がり具合を決定するためのn次の項の係数を設定するためのセルであるn次係数セル81bとを有する。表計算ソフト70を実行中の演算部30は、傾き補正セル81aに設定された値に応じて、図9に示すグラフ描画エリア82に描画された曲線の両端を結ぶ直線L3の傾きを決定する。また、表計算ソフト70を実行中の演算部30は、n次係数セル81bに設定された1次〜n次の係数の値に応じて、図9に示すグラフ描画エリア82に描画された曲線の曲がり具合を決定する。
グラフ描画部82は、増幅器の増幅特性を示す曲線の近似曲線を描画するエリアであり、横軸が増幅器による増幅前の信号強度を示す値に対応し、縦軸が増幅器による増幅後の信号強度を示す値に対応する。図9では、横軸(X)が0〜21であり、縦軸(Y)が0〜12であるグラフ描画エリア82が例示されている。図8では、横軸方向の特定の値(例えば、20)における縦軸方向の値(例えば、10)を傾き補正セル81aに設定するようになっている。表計算ソフト70を実行中の演算部30は、原点(0,0)と、横軸方向の特定の値と傾き補正セル81aに設定された値とにより特定される点(例えば、(20,10))とを曲線の両端として設定する。また、図8の1行目及び2行目に示すように、表計算ソフト70を実行中の演算部30は、横軸方向の特定の値に対する傾き補正セル81aに設定された値の比(例えば、(20,10)の場合、0.5)を傾きとした直線成分を算出する。具体的には、表計算ソフト70を実行中の演算部30は、当該傾き(例えば、0.5)に応じて、横軸の値(0,1,2,…,20)に対する直線成分の縦軸の値(例えば、(0,0.5,1,…,10))を算出する。なお、グラフ描画エリア82の縦軸の上限値は、傾き補正セル81aに設定される縦軸の値以上の値であればよい。また、グラフ描画エリア82の横軸の上限値は、傾き補正セル81aに設定される縦軸の値に対応する横軸の値以上の値であればよい。係る条件下で、グラフ描画エリア82の縦軸及び横軸の上限値は、傾き補正セル81aに係る縦軸の値及び横軸の値に応じて動的に補正されてもよい。
表計算ソフト70を実行中の演算部30は、n次係数セル81bに設定された値に応じて、以下の式(7)に対応する曲線をグラフ描画エリア82に描画する。式(7)におけるbは、横軸方向の特定の値に対する傾き補正セル81aに設定された値の比により求められる傾きである。また、式(7)におけるtは、時間をさす(図3等参照)。
Y=bX+a1(−sinωt)+a2(−sin2ωt)+a3(−sin3ωt)+…+an(−sinnωt)…(7)
図8に示す例の場合、n次係数セル81bとして、1次係数セル(a1)、2次係数セル(a2)、3次係数セル(a3)及び4次係数セル(a4)が設けられている。よって、表計算ソフト70を実行中の演算部30は、以下の式(8)に対応する曲線をグラフ描画エリア82に描画する。
Y=bX+a1(−sinωt)+a2(−sin2ωt)+a3(−sin3ωt)+a4(−sin4ωt)…(8)
図8に示す例の場合、1次係数セル(a1)、2次係数セル(a2)、3次係数セル(a3)及び4次係数セル(a4)が設けられているが、4次以上の係数については省略されてもよい。すなわち、n=3であってもよい。上記の通り、4次以上の項から導出される信号は、相互変調による影響という観点において実質的に無視することができるほどに、信号の周波数が入力される2つの信号の周波数から離れているか、信号の強さが弱いか、又はその両方を満たす。よって、4次以上の係数について演算を省略したとしても、相互変調により生じる新たな信号の周波数及び当該新たな信号の強さの導出に問題は生じない。
図10は、n次の係数による非直線成分の一例を示す参考図である。図10に示す「−sin1乗」、「−sin2乗」の曲線は、それぞれ「a1(−sinωt)」、「a2(−sin2ωt)」を示す1周期の正弦曲線である。図10で示すように、「an(−sinnωt)」は、負のピーク(例えば、5,−an)と正のピーク(例えば、15,an)を有する。
式(7)が示すように、グラフ描画エリア82に描画される曲線は、直線成分(bX)にa1(−sinωt)〜an(−sinnωt)の値を加算した曲線である。例えば、図8に示すように、a1=0.8、a2=0.1、a3=a4=0である場合、直線成分のうち、負のピークに対応する横軸の値(X=5)における縦軸の値(Y=2.5)から、a1〜a4を足し合わせた値(0.9)を差し引いた値(1.6)が得られる。よって、曲線は、(x,y)=(5,1.6)を通過する曲線になる。ここでは、直線成分が示す(5,2.5)の値について例示したが、同様の仕組みで、直線成分に対してa1(−sinωt)〜an(−sinnωt)の値が加算される。直線成分に対して加算されるa1(−sinωt)〜an(−sinnωt)の値は、横軸の値(例えば、0〜20)別に表示されてもよい。図8では、横軸の整数値別に算出されたa1(−sinωt)〜a4(−sin4ωt)の値が「非直線成分」より下の「−sin1乗」、「−sin2乗」、「−sin3乗」、「−sin4乗」の各行に表示出力されている。図8における「近似曲線」の行の値は、「直線成分」の各列の値に、同一の列の「非直線成分」を加算した値である。なお、図10における「−sin3乗」、「−sin4乗」の線は、それぞれ「a3(−sin3ωt)」、「a4(−sin4ωt)」を示す1周期の正弦曲線であるが、図8において設定されている3次係数セル(a3)及び4次係数セル(a4)の値が0であるため、直線として図示されている。
情報処理装置10は、入力部50により傾き補正セル81a及びn次係数セル81bに対する値の設定を受け付ける。入力部50に対する操作により傾き補正セル81a及びn次係数セル81bの値が入力されると、表計算ソフト70を実行中の演算部30は、設定エリア81の補正セル81a及びn次係数セル81bに入力された値を設定する。よって、演算部30は、設定エリア81を有する表計算データ80を用いた処理に係り、変更可能に設けられた直線成分(bX)の傾き(b)及び正弦関数の係数(a1,a2,…,an)を入力に応じて設定する。
演算部30は、設定された傾き補正セル81a及びn次係数セル81bの値に応じた曲線をグラフ描画エリア82に描画するための演算を行う。具体的には、表計算データ82に上記の式(7)(又は式(8))が示す多項式に応じた演算を行うためのデータが含まれており、演算部30は、係るデータと傾き補正セル81a及びn次係数セル81bの値とに基づいて演算を行い、グラフ描画エリア82に描画される曲線を導出する。
情報処理装置10のユーザは、入力部50を介した入力により傾き補正セル81a及びn次係数セル81bに設定する値を調整することで、グラフ描画エリア82に描画される曲線の傾き及び曲がり具合を調整することができる。
ここで、設定エリア81を有する表計算データ80は、増幅前の信号強度の最小値と最大値(例えば、グラフ描画エリア82における横軸の0と20)に対する増幅後の信号強度の最小値と最大値(グラフ描画エリア82における縦軸の0と10)とを結ぶ直線成分(bX)と、当該直線成分を補正する1次からn次までの正弦関数に基づいた非直線成分(a1(−sinωt)+a2(−sin2ωt)+a3(−sin3ωt)+…+an(−sinnωt))と、を含む曲線を示す多項式を示すデータを含んでおり、係るデータを用いた演算結果に応じてグラフ描画部82に曲線が描画されることになる。よって、係る表計算データ80を記憶する記憶部20は、係る多項式を示すデータを記憶しているといえる。
図11は、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフ90の一例を示す図である。図11に示すように、増幅器の増幅特性は、入力レベルと出力レベルとの関係を示す既知の曲線グラフ90として、当該入力レベルと出力レベルとの関係を計測した計測者から提供される。計測者は、例えば増幅器の製造元に係る者である。
記憶部20は、既知の曲線グラフ90を表示部60に表示するためのデータ(例えば、画像データ)を記憶する。具体的には、例えば、情報処理装置10は、紙等の媒体上に印刷された既知の曲線グラフ90がイメージスキャナにより読み込まれるまで待機する。イメージスキャナにより既知の曲線グラフ90が印刷された媒体が読み込まれると、演算部30は、イメージスキャナから出力されたデータを、所定のフォーマットの画像データとして記憶部20に記憶させる。演算部30は、係る画像データを読み出すことで、表示部60に既知の曲線グラフ90を表示出力することができる。なお、既知の曲線グラフ90を表示出力するためのデータの取得方法は、イメージスキャナを用いた方法に限られない。例えば、情報処理装置10は、通信部40を介した通信によって、既知の曲線グラフ90を示す既存の画像データを得ることもできる。また、既知の曲線グラフ90を示す画像データが外部の記憶装置又は記憶媒体に記憶されている場合、情報処理装置10は、係る記憶装置又は記憶媒体に記憶されている画像データを読み出すことで、既知の曲線グラフ90を示す画像データを得ることもできる。
既知の曲線グラフ90を表示部60に表示するためのデータの取得に係る作業(例えば、イメージスキャナを用いた既知の曲線グラフ90が印刷された媒体のスキャニング等)は、ユーザにより行われてもよいし、係る作業を経て得られたデータが記憶部20に予め記憶されていてもよい。
なお、図11では、入力信号の周波数別の曲線グラフ90が示されている。具体的には、入力信号の周波数が、440[MHz]、450[MHz]、460[MHz]、470[MHz]、480[MHz]である場合についてそれぞれ個別に入力レベルと出力レベルとの関係を示す曲線が描かれた曲線グラフ90が示されている。係る周波数別の曲線は必須でなく、増幅器で取り扱うことを想定する入力信号の周波数に対応する曲線グラフ90が既知であればよい。既知の曲線グラフ90に係る入力信号の周波数は、440[MHz]、450[MHz]、460[MHz]、470[MHz]、480[MHz]に限られず、適宜変更可能である。
図12は、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフ90とグラフ描画エリア82に描画される曲線とを重ね合わせた場合の一例を示す図である。図12は、既知の曲線グラフ90が示す曲線の近似曲線を得るための処理に係る画面である。具体的には、ユーザは、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフ90とグラフ描画エリア82に描画される上記式(7)(又は式(8))に対応する曲線とを重ね合わせた場合に、既知の曲線グラフ90が示す所定の周波数の曲線の一部又は全部とグラフ描画エリア82に描画される曲線の一部又は全部が重なり合うように、グラフ描画エリア82に描画される曲線を調整する。すなわち、ユーザは、傾き補正セル81a及びn次係数セル81bに設定する値を調整することで、グラフ描画エリア82に描画される曲線を調整し、当該曲線の一部又は全部が既知の曲線グラフ90が示す曲線の一部又は全部と重なり合う近似曲線となるようにする。
図12に示すように、グラフ描画エリア82に描画される曲線の一部又は全部が既知の曲線グラフ90が示す曲線との一部又は全部と重なり合う近似曲線となった場合に設定されている傾き補正セル81a及びn次係数セル81bの値を式(7)(又は式(8))に代入した多項式が、既知の曲線グラフ90が示す曲線の近似曲線を表す多項式となる。
図12では、入力信号の周波数が440[MHz]である曲線の近似曲線を得る場合について例示しているが、図11に示す他の周波数の曲線及び他の既知の曲線グラフ90についても同様の方法で近似曲線及び多項式を得ることができる。
表示部60は、図12に示すように、設定エリア81により設定された直線成分(bX)の傾き(b)及び正弦関数の係数(a1,a2,…,an)に応じた曲線のグラフと増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフ90とを重畳させて表示出力する。なお、図12では近似曲線を破線で示しているが、実際には実線で出力される。近似曲線の線種は、任意に選択可能であってもよい。
なお、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフ90とグラフ描画エリア82の曲線との重ね合わせに係る条件として、既知の曲線グラフ90の縦軸とグラフ描画エリア82の縦軸とは同一の方向に沿い、既知の曲線グラフ90の横軸とグラフ描画エリア82の横軸とは同一の方向に沿う。すなわち、既知の曲線グラフ90の縦軸とグラフ描画エリア82の縦軸とは、平行の関係となるか、重畳された状態となる。また、既知の曲線グラフ90の横軸とグラフ描画エリア82の横軸とは、平行の関係となるか、重畳された状態となる。
既知の曲線グラフ90が示す曲線の近似曲線を表す多項式を得ることで、図3に示すような入力レベルの周期的な変化に応じた増幅率の変化を特定することができる。すなわち、多項式に基づいて、式(1)、(2)が得られる。式(1)、(2)から、式(3)が得られる。式(3)から、式(4)が得られる。式(4)から、式(5)、(6)が得られる。式(5)、(6)から、相互変調により生じる新たな信号の周波数を求めることができる。このように、増幅器の非線形的な増幅特性を示す既知の曲線グラフ90が示す曲線の近似曲線を表す多項式を得ることで、当該増幅器に複数の信号が入力された場合に相互変調により生じる新たな信号の周波数成分及び当該周波数成分が示す周波数を求めることができる。
図13は、情報処理装置10による処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、既知の曲線グラフ90を示すデータ入力が行われる(ステップS1)。具体的には、例えば、イメージスキャナを用いた既知の曲線グラフ90が印刷された媒体のスキャニング等により、既知の曲線グラフ90を表示出力するための画像データが生成されて情報処理装置10に入力される。情報処理装置10の演算部30は、ステップS1で入力されたデータを記憶部20に記憶させる(ステップS2)。
演算部30は、ステップS2で記憶されたデータを読み出して表示部60に表示させる(ステップS3)。具体的には、表計算ソフト70を実行し、表計算データ80を読み出して解釈し、設定エリア81及びグラフ描画エリア82を表示部60に表示させる。演算部30は、ステップS2で記憶されたデータを読み出し、既知の曲線グラフ90をグラフ描画エリア82に重畳する位置で表示させる。
演算部30は、表計算ソフト70の実行及び表計算データ80の解釈に伴い、設定エリア81を表示部60に表示させる(ステップS4)。演算部30は、設定エリアにおける値の入力の完了、すなわち、設定エリア81の傾き補正セル81a及びn次係数セル81bに値の設定完了まで待機する(ステップS5;No)。設定エリアにおける入力が完了すると(ステップS5;Yes)、演算部30は、傾き補正セル81a及びn次係数セル81bの値と表計算データ80により定められた式(7)(又は式(8))とに基づいて近似曲線をグラフ描画エリア82に描画するための演算を行う(ステップS6)。演算部30は、ステップS6の演算結果に応じた近似曲線をグラフ描画エリア82に描画することで、演算結果に応じた曲線を表示部60に表示させる(ステップS7)。これにより、ステップS3の処理で表示された既知の曲線グラフ90が示す増幅器の増幅特性を示す曲線(第1の曲線)と、ステップS7の処理によって表示された曲線(第2の曲線)とが重畳した状態で表示部60に表示される。
ステップ5に係る処理、すなわち、傾き補正セル81a及びn次係数セル81bに対する値は、ステップS7の処理後に更新されうる。入力部50を介して傾き補正セル81a及びn次係数セル81bの値が再度入力されると、演算部30は、ステップS6以降の処理を再度実行する。
以上、本実施形態によれば、増幅器の増幅特性を示す情報である既知の曲線グラフ(例えば、図11に示す曲線グラフ90)に基づいて当該増幅器に係る相互変調の発生に関する情報をより容易に得ることができる。
また、n=3であることで、最低限の演算で相互変調の発生に関する情報を得ることができる。
以上、実施形態について説明したが、これらの実施形態の内容により本発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
図14は、特定エリア83をさらに有する表計算データ80を示す図である。上記の実施形態に係る情報処理装置10の説明では、既知の曲線グラフ(例えば、図11に示す曲線グラフ90)が示す曲線の近似曲線を表す多項式を得ることについて説明してきたが、情報処理装置10は、さらに、係る既知の曲線グラフが示す増幅特性を有する増幅器に複数の信号が入力された場合に相互変調により生じる新たな信号の周波数を求めるための仕組みを有していてもよい。例えば、図14に示すように、表計算データ80にさらに特定エリア83が設けられていてもよい。表計算ソフト70を実行中の演算部30は、特定エリア83を有する表計算データ80を用いた処理に係り、設定エリア81により設定された正弦関数の係数(a1,a2,…,an)と、複数の正弦波を示す正弦関数(例えば、式(4)における複数の信号(例えば、2つの信号(sinω1+sinω2))増幅器に当該複数の正弦波に対応する信号が入力された場合に当該増幅器から出力される信号の周波数成分を特定する。具体的には、特定エリア83は、複数の正弦波を示す正弦関数を設定するための設定セルを含む。また、特定エリア83は、当該設定セルに設定された正弦関数と設定エリア81のn次係数セル81bに設定された値とを、予め設定された上記の式(5)及び式(6)に代入して演算を行い、出力信号の周波数成分が示す周波数を導出して表示出力する出力セルを含む。係る特定エリア83により、ユーザは、既知の曲線グラフが示す曲線の近似曲線を表す多項式を得ている条件下で設定セルに複数の正弦波を示す正弦関数を設定することで、出力セルに表示された周波数を確認するだけで、相互変調により生じる新たな信号の周波数を含む出力信号の周波数を知ることができる。
また、上記の実施形態では、プログラム等Pとして表計算ソフト70及び表計算データ80が用いられていたが、これはプログラム等Pの具体例であってこれに限られるものでない。例えば、プログラム等Pは、専用のソフトウェア・プログラム及び当該ソフトウェア・プログラムで取り扱われるデータであってもよい。