JP6644328B2 - アトピー性疾患の発症又は重症化リスクの評価法 - Google Patents

アトピー性疾患の発症又は重症化リスクの評価法 Download PDF

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Description

本発明は、KPRP遺伝子の一塩基多型を分析することにより、あるいはKPRP遺伝子の発現量を測定することにより、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクを評価、判定する方法に関する。
アトピー性皮膚炎を始めとする皮膚疾患では皮膚の分化・バリア機能の異常が示唆されていたが、これに関わる重要な遺伝子・タンパク質が同定されておらず有効な診断の標的法の開発が困難であった。これまでにもフィラグリン等の他の因子を使って、アトピー性皮膚炎との相関や診断が試みられているものの、未だ十分な標的法とは言えない。そこで、更に精度良く、アトピー性皮膚炎の発症リスク、特にその重症度に応じた発症リスクを評価できる手法の開発が求められていた。
一方、hKPRP遺伝子は、ヒト染色体の1q21に位置することが知られている公知の遺伝子である。hKPRP遺伝子は、表皮分化複合体(EDC)を構成する1つの遺伝子であり、hKPRPタンパク質をコードする。hKPRPタンパク質は、プロリンタンパク質を約18%程度含むタンパク質であり、正常表皮の顆粒層上部で断続的に発現することが知られ、表皮バリア機能形成に関与することが示唆されているが(非特許文献1、2)、未だ不明な部分が多いタンパク質である。また、非特許文献1では、乾癬患者においてhKPRP遺伝子の発現量が増加したことが記載されているものの、アトピー性皮膚炎の患者ではhKPRP遺伝子の発現が殆んど検出できなかったと記載されており、アトピー性疾患におけるKPRP遺伝子発現の増減については不明である。ましてや、アトピー性疾患とKPRP遺伝子における変異との間に相関関係があることについて、非特許文献1には一切記載も示唆もされていない。
また非特許文献3では、アトピー性皮膚炎患者の皮膚バリア遺伝子として複数遺伝子の配列を解読し、アトピー性皮膚炎関連遺伝子の探索が試みられているものの、研究成果報告で挙げられているのはSPRR2E、LCE1Fの2つの遺伝子のみで、hKPRP遺伝子における変異とアトピー性疾患との明確な関連性については報告されておらず、一切記載も示唆もされていない。
Lee WH et al., J. Invest. Dermatol., 995-1000, 2005 Kong W et al., J. Biol. Chem. 22781-6, 2003 佐々木貴史、科学研究費補助金研究成果報告書、2010.5.31
本発明は、アトピー性皮膚炎等のアトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクを評価、判定するための方法及び試薬の提供を目的とする。
本発明者らは、アトピー性疾患の発症や重症化に関与している遺伝子について探索を行った。その結果、皮膚においてKPRP(keratinocyte proline-rich protein)遺伝子の発現が減少し、皮膚のKPRPタンパク質が減少することにより、アトピー性疾患が発症し、さらに重症化することを見出した。さらに、本発明者らは、KPRP遺伝子の発現がKPRP遺伝子の一塩基多型と関連していることを見出した。すなわち、KPRP遺伝子の一塩基多型部位のアレルが特定のものの場合に、KPRP遺伝子の発現が低下し、アトピー性疾患を発症し、あるいは重症化することを見出した。本発明者はこれらの知見に基づいて、被験体のKPRP遺伝子の一塩基多型を分析し、あるいは被験体の皮膚におけるKPRP遺伝子の発現量を測定することにより、アトピー性疾患を発症するリスク、又はアトピー性疾患が重症化するリスクを評価、判定し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 被験体において、KPRP遺伝子の一塩基多型又は該一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型を分析することを含む、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクを判定するための検査方法。
[2] KPRP遺伝子の一塩基多型が以下の(i)〜(viii)の少なくとも1つの一塩基多型である、[1]の方法:
(i) 配列番号1で示される塩基配列の3096番目の塩基におけるT又はAである一塩基多型;
(ii) 配列番号1で示される塩基配列の2231番目の塩基におけるG又はCである一塩基多型;
(iii) 配列番号1で示される塩基配列の1969番目の塩基におけるT又はCである一塩基多型;
(iv) 配列番号1で示される塩基配列の2362番目の塩基におけるG又はAである一塩基多型;
(v) 配列番号1で示される塩基配列の4185番目の塩基におけるC又はTである一塩基多型;
(vi) 配列番号1で示される塩基配列の451番目の塩基におけるA又はGである一塩基多型;
(vii) 配列番号1で示される塩基配列の3982番目の塩基におけるG又はAである一塩基多型;
(viii) 配列番号1で示される塩基配列の1901番目の塩基におけるA又はTである一塩基多型。
[3] 配列番号1で表されるhKPRP遺伝子の塩基配列の3096番目の一塩基多型部位の遺伝子型がT/Tである場合、2231番目の一塩基多型部位の遺伝子型がG/Gである場合、2362番目の一塩基多型部位の遺伝子型がG/Gである場合、1969番目の一塩基多型部位の遺伝子型がT/Tである場合、4185番目の一塩基多型部位の遺伝子型がC/Cである場合、3982番目の一塩基多型部位の遺伝子型がG/Gである場合、451番目の一塩基多型部位の遺伝子型がA/Aである場合、又は1901番目の一塩基多型部位の遺伝子型がA/T若しくはT/Tである場合に、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクが存在すると判定する、[1]又は[2]の方法。
[4] 配列番号1で表されるhKPRP遺伝子の塩基配列の以下の(i)〜(viii)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、被験体のアトピー性疾患の発症又は重症化のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(i) 配列番号1で示される塩基配列の3096番目の塩基におけるT又はAである一塩基多型;
(ii) 配列番号1で示される塩基配列の2231番目の塩基におけるG又はCである一塩基多型;
(iii) 配列番号1で示される塩基配列の1969番目の塩基におけるT又はCである一塩基多型;
(iv) 配列番号1で示される塩基配列の2362番目の塩基におけるG又はAである一塩基多型;
(v) 配列番号1で示される塩基配列の4185番目の塩基におけるC又はTである一塩基多型;
(vi) 配列番号1で示される塩基配列の451番目の塩基におけるA又はGである一塩基多型;
(vii) 配列番号1で示される塩基配列の3982番目の塩基におけるG又はAである一塩基多型;
(viii) 配列番号1で示される塩基配列の1901番目の塩基におけるA又はTである一塩基多型。
[5] [4]のプローブ又はその標識物を標識した固定化基板からなるDNAチップ。
[6] 配列番号1で表されるhKPRP遺伝子の塩基配列の以下の(i)〜(viii)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むDNA断片の増幅に用いるプライマー;
(i) 配列番号1で示される塩基配列の3096番目の塩基におけるT又はAである一塩基多型;
(ii) 配列番号1で示される塩基配列の2231番目の塩基におけるG又はCである一塩基多型;
(iii) 配列番号1で示される塩基配列の1969番目の塩基におけるT又はCである一塩基多型;
(iv) 配列番号1で示される塩基配列の2362番目の塩基におけるG又はAである一塩基多型;
(v) 配列番号1で示される塩基配列の4185番目の塩基におけるC又はTである一塩基多型;
(vi) 配列番号1で示される塩基配列の451番目の塩基におけるA又はGである一塩基多型;
(vii) 配列番号1で示される塩基配列の3982番目の塩基におけるG又はAである一塩基多型;
(viii) 配列番号1で示される塩基配列の1901番目の塩基におけるA又はTである一塩基多型。
[7] フォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマー対である、[6]のプライマー。
[8] 被験体の皮膚組織において、KPRP遺伝子の発現量を測定することを含む、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクを判定するための検査方法。
[9] KPRP遺伝子の発現量が低下している場合に、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクが存在すると判定する、[8]の方法。
[10] 抗KPRP抗体を用いたイムノアッセイによりKPRPタンパク質量を測定する、[8]又は[9]の方法。
[11] KPRPのmRNA量を測定する、[8]又は[9]の方法。
[12] KPRP遺伝子を有する被験動物、被験組織又は被験細胞、或いは該被験動物、該被験組織又は該被験細胞においてKPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトした被験動物、被験組織又は被験細胞を被験物質と接触させ、KPRP遺伝子の発現量を測定及び/又はアトピー性疾患症状の変化を評価する工程を含む、アトピー性疾患の予防又は治療剤をスクリーニングする方法。
[13] 被験物質との接触の後に、被験動物、被験組織又は被験細胞において、KPRP遺伝子の発現量が上昇した場合及び/又はアトピー性疾患症状の改善が認められた場合に、該被験物質はアトピー性疾患の予防又は治療剤として用いられ得ると判定する、[12]のスクリーニング方法。
[14] [4]のプローブ、[5]のDNAチップ、[6]若しくは[7]のプライマー又は抗KPRP抗体のいずれかを含む、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクを判定するための検査キット。
[15] KPRP遺伝子がノックダウンされた非ヒト動物である、アトピー性疾患モデル動物。
[16] KPRP遺伝子がノックアウトされた非ヒト動物である、アトピー性疾患モデル動物。
[17] [15]又は[16]のアトピー性疾患モデル動物より得られた、皮膚組織又は皮膚細胞。
[18] KPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトした動物皮膚組織又は皮膚細胞。
[19] [4]のプローブ、[5]のDNAチップ、[6]若しくは[7]のプライマー、抗KPRP抗体、KPRP遺伝子を保有する非ヒト動物、KPRP遺伝子を保有する組織、KPRP遺伝子を保有する細胞、[15]若しくは[16]のアトピー性疾患モデル動物、並びに[17]若しくは[18]の皮膚組織若しくは皮膚細胞のいずれかを含む、アトピー性疾患の予防又は治療剤をスクリーニングするためのキット。
[20] 表皮の顆粒層におけるKPRP遺伝子の発現量を増加させ得る物質を有効成分として含有する、アトピー性疾患の予防又は治療剤。
[21] KPRP遺伝子発現産物を有効成分として含有する、アトピー性疾患の予防又は治療剤。
KPRP遺伝子の一塩基多型を解析し、一塩基多型部位が特定の塩基である場合に、アトピー性疾患を発症するリスク、又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高いと判断することができ、さらに、皮膚におけるKPRP遺伝子の発現を測定し、KPRP遺伝子の発現が減少している場合、アトピー性疾患を発症するリスク、又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高いと判断することができる。アトピー性疾患を発症するリスク、又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高いと判断された場合、その被験体に対して、適切な治療を施すことができ、あるいはアトピー性疾患の発症や重症化を抑制する日常のケアを提供することができる。
HapMapプロジェクトデータベースのhKPRP遺伝子の構造を示す図である。 hKPRP遺伝子の一塩基多型の分析に用い得るプローブ及びプライマーを示す図である(実施例1で用いたものを含む)。 アトピー性皮膚炎の重症度と一塩基多型のアレルの頻度の関係を示す図である。 アトピー性皮膚炎の重症度と一塩基多型(rs4329520)の遺伝子型の関係を示す図である。 アトピー性皮膚炎とKPRP遺伝子の発現の関係を示す図である。図5Aは平均を示し、図5Bは各サンプルの分布を示す。 健常人及びアトピー性皮膚炎患者のhKPRPタンパク質発現の免疫組織化学を示す図である。図6Aはコントロールの結果であり、図6Bはアトピー性皮膚炎の結果である。 hKPRP遺伝子の一塩基多型の分析に用い得るプローブ及びプライマーを示す図である(実施例2で用いたものを含む)。 アトピー性皮膚炎の重症度と一塩基多型(rs4329520)の遺伝子型の関係を示す図である(実施例2の結果)。 アトピー性皮膚炎の重症度と一塩基多型(rs16834461)の遺伝子型の関係を示す図である。 アトピー性皮膚炎の重症度と一塩基多型(rs11581045)の遺伝子型の関係を示す図である。 アトピー性皮膚炎の重症度と一塩基多型(rs17612167)の遺伝子型の関係を示す図である。 アトピー性皮膚炎とKPRP遺伝子の発現の関係を示す図である(実施例2の結果)。図12Aは平均を示し、図12Bは各サンプルの分布を示す。 健常人及びアトピー性皮膚炎患者のhKPRPタンパク質発現の免疫組織化学を示す図である(実施例2の結果)。図13Aはコントロールの結果であり、図13Bはアトピー性皮膚炎の結果である。 hKPRP遺伝子をノックダウンした表皮細胞を用いて作製された三次元培養皮膚の角層を撮影した組織写真を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.KPRP遺伝子の一塩基多型の分析によるアトピー性疾患の発症のリスク又は重症化のリスクの評価、判定
本発明においては、KPRP(keratinocyte proline-rich protein)遺伝子の一塩基多型(SNP)又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を分析し、アトピー性疾患の発症のリスク又は重症化のリスクを評価、判定するための検査を行い、アトピー性疾患の発症のリスク又は重症化のリスクを予測、評価、判定するための補助的データを取得する。評価、判定とは予測ともいう。
KPRP遺伝子は皮膚の顆粒層の最上層部に存在するタンパク質であり、皮膚の保護等に関与しており、後述の実施例の結果に示されるように、アトピー性疾患患者において、発現が低下する。なお、本明細書において、KPRP遺伝子とは、ヒト(H.sapiens)、チンパンジー(P.troglodytes)、アヌビスヒヒ(P.anubis)、アカゲザル(M.mulatta)、ウシ(B.taurus)、ラット(R.norvegicus)、ハツカネズミ(M.musculus)等において知られているKPRP遺伝子の他、イヌ(C.lupus)、ラバ(E.caballus)等で知られているKPRP様遺伝子も含む。好ましくは、ヒトのKPRP遺伝子(hKPRP遺伝子:human keratinocyte proline-rich protein遺伝子)である。
アトピー性疾患とは、主にIgE媒介性の過剰な免疫応答であり、殆んどのアトピー性疾患はI型過敏性疾患である。一般的な症状は、皮膚の炎症、皮膚や眼のかゆみ、鼻漏、くしゃみ、鼻うっ血(上気道)、喘鳴、呼吸困難(下気道)、結膜の充血及び浮腫、皮膚の苔癬化等である。皮膚の炎症を伴うアトピー性疾患をアトピー性皮膚炎と呼ぶ。本発明においては、皮膚の炎症が症状として表れるアトピー性皮膚炎を対象とするが、アトピー性皮膚炎患者は他の症状も伴うことも多く、本発明においては、アトピー性皮膚炎を含めて広くアトピー性疾患の発症のリスク等を判定する。好ましくは、アトピー性皮膚炎の発症又は重症化リスク等を判定する。本発明において、アトピー性疾患の発症のリスク又は重症化のリスクとは、上記の症状が発症すること、あるいは上記の症状が重症化することをいう。
アトピー性疾患の重症化とは、「厚生労働科学研究班アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008」に順じて判断される。即ち、上記ガイドラインに記載された重症度の目安の基準に従い、軽症(面積に関わらず、軽度の皮疹のみみられる)、中等症(強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満にみられる)、重症(強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上30%未満にみられる)、最重症(強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる)が判断され、症状が重くなるに従い、アトピー性疾患が重症化したと判定される。なお、ここで「軽度の皮疹」とは、軽度の紅斑、乾燥、落屑主体の病変をいい、「強い炎症を伴う皮疹」とは、紅斑、丘疹、びらん、浸潤、苔癬化などを伴う病変をいう。
また、KPRP(keratinocyte proline-rich protein)遺伝子の一塩基多型(SNP)又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型の分析により、被験体がアトピー性疾患の遺伝的素因を有しているか否かを判断することもできる。
さらに、KPRP(keratinocyte proline-rich protein)遺伝子の一塩基多型(SNP)又は該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型の分析により、アトピー性疾患患者の治療法を決定し、あるいは日常生活におけるケアを決定することができる。例えば、アトピー性皮膚炎の治療に用いられるステロイド外用薬は、効果の弱いウィーク(例えば、プレドニゾロン)から、ミディアム(例えば、吉草酸酢酸プレドニゾロン)、ストロング(例えば、デプロドンプロピオン酸エステル)、ベリーストロング(モメタゾンフランカルボン酸エステル)、及び最も効果の強いストロンゲスト(クロベタゾールプロピオン酸エステル)までランク付けされているが、本発明に従う一塩基多型の分析により、どのランクのステロイド薬を使用すべきか、又はステロイド薬を使用すべきでないかの指標を与えることができる。
本発明者らは、上記のKPRP遺伝子の一塩基多型がアトピー性疾患と関連していることを見出し、本発明を完成させたが、ここでアトピー性疾患と関連しているとは、一塩基多型のアレルとアトピー性疾患の発症するリスク又はアトピー性疾患の重症化とが統計学的に関連していることをいう。
一塩基多型の分析は、一塩基多型部位の塩基の種類、すなわちアレルを決定することをいい、1対の染色体上の一方の染色体について検出する場合も、両方の染色体について検出する場合も包含され、両方の染色体について検出する場合にも、一塩基多型部位においてホモ接合性かヘテロ接合性かの検出を含む。被験体から単離した試料に含まれる特定のアレルに対立する各々のアレルを検出し、遺伝子型を決定することができる。あるアレルのみが検出された場合は当該アレルをホモに有するホモ接合性であり、2つのアレルが検出された場合には該2つのアレルをヘテロに有するヘテロ接合性である。
具体的には、hKPRP遺伝子の場合を例にとると、hKPRP遺伝子の一塩基多型であるrs4329520、rs4845480、rs944683、rs16834461、rs2297487、rs1412548、rs11581045及びrs17612167で表わされる一塩基多型の少なくとも1つの一塩基多型を分析する。「rsXXXXXX(Xは任意の数字)」は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のSNPデータベース(dbSNP BUILD137)のリファレンス番号であるrs番号を示す。hKPRP遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。rs4329520、rs4845480、rs944683、rs16834461、rs2297487、rs1412548、rs11581045及びrs17612167で表わされる一塩基多型はそれぞれhKPRP遺伝子上の以下の一塩基多型である。
rs4329520 配列番号1で示される塩基配列の3096番目の塩基における多型をいい、T又はAである。
rs4845480 配列番号1で示される塩基配列の2231番目の塩基における多型をいい、G又はCである。
rs944683 配列番号1で示される塩基配列の1969番目の塩基における多型をいい、T又はCである。
rs16834461 配列番号1で示される塩基配列の2362番目の塩基における多型をいい、G又はAである。
rs2297487 配列番号1で示される塩基配列の4185番目の塩基における多型をいい、C又はTである。
rs1412548 配列番号1で示される塩基配列の451番目の塩基における多型をいい、A又はGである。
rs11581045 配列番号1で示される塩基配列の3982番目の塩基における多型をいい、G又はAである。
rs17612167 配列番号1で示される塩基配列の1901番目の塩基における多型をいい、A又はTである。
今回、本発明者等により初めて得られた知見によれば、hKPRP遺伝子のrs4329520で表わされる一塩基多型部位の遺伝子型がT/Tのホモ接合性である被験体において、T/AまたはA/Aであるヒトに比べ、アトピー性疾患を発症するヒトの割合及びアトピー性疾患が重症化するヒトの割合が有意に大きい。すなわち、rs4329520で表わされる一塩基多型について、Aアレル(マイナーアレル)を保有している被験体よりもTアレルを保有している被験体の方がアトピー性疾患を発症するリスクが高く、またアトピー性疾患が重症化するリスクが高い。さらに、アトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクはA/A、T/A、T/Tの順に高くなる。
これらのKPRP遺伝子の一塩基多型部位に変異があるとKPRP遺伝子の発現が減少し、皮膚の顆粒層の最上層部におけるKPRPタンパク質が減少し、アトピー性皮膚炎を発症し、又はアトピー性皮膚炎が重症化する。
また、上記一塩基多型の代わりに、上記一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型を分析してもよい。上記一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型とは、上記遺伝子多型と関連性のある遺伝子多型であり、具体的には、上記遺伝子多型がXである場合には、常に別の遺伝子多型がYとなるという関係が成立するものである。
上記のrs4845480で表わされる一塩基多型はrs4329520で表わされる一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型であり、これらの一塩基多型によってもアトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクを判定することができる。具体的には、連鎖不平衡の関係から、rs4845480で表される一塩基多型の場合には、Cアレル(マイナーアレル)を保有している被験体よりもGアレルを保有している被験体の方が、アトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高く、C/C、G/C、G/Gの順にそれらのリスクが高くなることが理解される。
また、上記のrs944683、rs16834461及びrs2297487で表される一塩基多型は、rs4329520で表される一塩基多型と同じハプロタイプブロックに存在する一塩基多型であり、これら3つの一塩基多型は相互に連鎖不平衡の関係にある。ゲノムは親から子に伝わるときに組換えが起こり得るが、近くにある一塩基多型は一連のセットで遺伝する。この一連のセットで遺伝する纏まりを、ハプロタイプブロックという。従って、これらの一塩基多型を分析することによっても、アトピー性疾患を発症するリスク、又はアトピー性疾患が重症化するリスクを評価、判定できることが予期される。実際、後述の実施例に示されるように、rs16834461で表される一塩基多型についてアトピー性疾患との相関を評価したところ、この一塩基多型部位の遺伝子型がG/Gのホモ接合性である被験体において、G/A又はA/Aであるヒトに比べ、アトピー性疾患を発症するヒトの割合及びアトピー性疾患が重症化するヒトの割合が有意に大きいことが確認されている。すなわち、rs16834461で表わされる一塩基多型について、Aアレル(マイナーアレル)を保有している被験体よりもGアレルを保有している被験体の方がアトピー性疾患を発症するリスクが高く、またアトピー性疾患が重症化するリスクが高い。また、連鎖不平衡の関係から、rs944683で表される一塩基多型の場合には、C(マイナーアレル)を保有している被験体よりもTアレルを保有している被験体の方が、アトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高く、特にT/Tの場合にそれらのリスクが高くなることが理解される。同様に、連鎖不平衡の関係から、rs2297487で表される一塩基多型の場合には、T(マイナーアレル)を保有している被験体よりもCアレルを保有している被験体の方が、アトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高く、特にC/Cの場合にそれらのリスクが高くなることが理解される。
さらに、上記のrs1412548及びrs11581045で表される一塩基多型も、rs4329520で表される一塩基多型と同じハプロタイプブロックに存在する一塩基多型であり、これら2つの一塩基多型は相互に連鎖不平衡の関係にある。従って、上記と同様の理由により、これらの一塩基多型を分析することによっても、アトピー性疾患を発症するリスク、又はアトピー性疾患が重症化するリスクを評価、判定できることが予期される。
実際、後述の実施例に示されるように、rs11581045で表される一塩基多型についてアトピー性疾患との相関を評価したところ、この一塩基多型部位の遺伝子型がG/Gのホモ接合性である被験体において、G/A又はA/Aであるヒトに比べ、アトピー性疾患を発症するヒトの割合及びアトピー性疾患が重症化するヒトの割合が有意に大きいことが確認されている。すなわち、rs11581045で表わされる一塩基多型について、Aアレル(マイナーアレル)を保有している被験体よりもGアレルを保有している被験体の方がアトピー性疾患を発症するリスクが高く、またアトピー性疾患が重症化するリスクが高い。さらに、アトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクはA/A、G/A、G/Gの順に高くなる。また、連鎖不平衡の関係から、rs1412548で表される一塩基多型の場合には、G(マイナーアレル)を保有している被験体よりもAアレルを保有している被験体の方が、アトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高く、G/G、A/G、A/Aの順にそれらのリスクが高くなることが理解される。
そして、rs17612167で表される一塩基多型も、rs4329520で表される一塩基多型と同じハプロタイプブロックに存在する一塩基多型である。従って、上記と同様の理由により、この一塩基多型を分析することによっても、アトピー性疾患を発症するリスク、又はアトピー性疾患が重症化するリスクを評価、判定できることが予期される。実際、後述の実施例に示されるように、rs17612167で表される一塩基多型についてアトピー性疾患との相関を評価したところ、この一塩基多型部位の遺伝子型がA/Tのヘテロ接合性又はT/Tのホモ接合性である被験体において、A/Aであるヒトに比べ、アトピー性疾患を発症するヒトの割合及びアトピー性疾患が重症化するヒトの割合が有意に大きいことが確認されている。すなわち、rs17612167で表わされる一塩基多型について、Aアレル(メジャーアレル)を保有している被験体よりもTアレルを保有している被験体の方がアトピー性疾患を発症するリスクが高く、またアトピー性疾患が重症化するリスクが高い。
本発明において、rs4329520、rs944683、rs4845480、rs16834461、rs2297487、rs1412548、rs11581045又はrs17612167で表わされる一塩基多型は、アトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクを判定するための遺伝子マーカーということができる。
本発明の方法においては、被験体から試料を採取し、該サンプルのDNAやRNAについて一塩基多型を分析すればよい。被験体としては、アトピー性疾患に罹患していない健常体も、アトピー性疾患に罹患しているが症状が重症化していない軽症又は中等症の者も含まれる。また被験体は、ヒトに限定されず、チンパンジーやイヌ等のKPRP遺伝子を保有する任意の動物でもあり得る。さらにヒトの場合、人種は特に限定されず、モンゴロイド系人種、オーストラロイド系人種、コーカソイド系人種、ネグロイド系人種のいずれの人種でもあり得るが、本発明の対象となり得る人種として、好ましくはモンゴロイド系人種であり、より好ましくはアジア人であり、更に好ましくは東アジア人であり、特に好ましくは日本人である。健常人又は健常動物については将来的にアトピー性疾患を発症するか否か、発症するリスクがあるか否か、あるいは将来的にアトピー性疾患が重症化するリスクがあるか否かを評価、判定することができる。また、軽症患者や中等症患者については将来的にアトピー性疾患が重症化するか否か、あるいはそのリスクがあるか否かを評価、判定することができる。
分析に用いるサンプルとしては、染色体DNAを含む試料ならばあらゆる試料を用いることができ、例えば、血液、皮膚、口腔粘膜、毛髪、尿、爪、細胞等が挙げられる。これらの試料から、常法に従い、染色体、DNA又はRNA等の核酸を単離し分析すればよい。
KPRP遺伝子の一塩基多型の解析は、通常の遺伝子多型解析方法によって行うことができる。例えば、ジデオキシ法やMaxam-Gilbert法等の公知の方法により直接配列決定するシークエンス解析による解析法、遺伝子多型に特異的なプローブや該プローブを固定化したマイクロアレイ(DNAチップ)などを用いるハイブリダイゼーション法、遺伝子多型に特異的なプライマーを用いる種々の方法があげられ、さらに具体的に、PCR法、NASBA法、LCR法、SDA法、LAMP法、制限断片長多型(RFLP)を利用する方法、変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE)、ミスマッチ部位の化学的切断を利用した方法(CCM)、プライマー伸長法(TaqMan(登録商標)法)、PCR-SSCP法、一本鎖コンフォメーション多型解析(SSCP;single strand conformation polymorphism)、Invader法、シングルヌクレオチドプライマー法、SNaPshot法、MassArray法、Pyrosequncing法、SNP-IT法、BeadArray法、Scorpion法、MADI-TOF/MS法等が挙げられる。
シークエンス解析による解析法は通常の方法により行うことができる。具体的には、一塩基多型部位の5’側の数十塩基の位置に設定したプライマーを使用してシークエンス反応を行い、その解析結果から、一塩基多型部位の塩基を決定することができる。
プローブを用いる方法は、一塩基多型部位を含むKPRP遺伝子配列の一部に対応するオリゴヌクレオチド又はその相補的配列、或いはストリンジェント条件下でそれらの配列にハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプローブを用いて、被験体から単離した核酸サンプル、又はそれをPCR等の公知の方法により増幅した核酸サンプルとのハイブリダイゼーションを行うことにより分析することができる。すなわち、一方のアレルに完全又はほぼ完全(例えば、対象とする一塩基多型部位に連続した塩基配列部分が70%以上の配列同一性、好ましくは80%以上の配列同一性、より好ましくは90%以上の配列同一性、特に好ましくは95%以上の配列同一性を有することをいう)に相補的なプローブと他方のアレルにのみ完全又はほぼ完全に相補的なプローブを用い、各プローブを用いた場合に被験体から単離した核酸サンプル又はそれを増幅した核酸サンプルとハイブリダイズするか否かにより一塩基多型のアレルを同定することができる。また、一方のアレルに対応したプローブのみを用いてもよい。ハイブリダイゼーションの条件は、遺伝子多型を区別するのに十分な条件であればよく、例えば遺伝子多型部位が特定のアレルの場合にはハイブリダイズするが、他のアレルの場合にはハイブリダイズしないような条件、例えばストリンジェントな条件であり、このような条件は当業者ならば適宜設定することができる。一例として、ストリンジェントな条件としては、約5〜6×SSC中において、約60℃以上、好ましくは約65℃以上、更に好ましくは約70℃以上でハイブリダイゼーションを行う条件をいう。また、ストリンジェントな条件は、約0.1〜1×SSC中において、約40〜70℃、好ましくは約50〜67℃、更に好ましくは約60〜65℃で洗浄処理を行うことを含むものであってもよい。
プローブは、一端を基板に固定してDNAチップ(マイクロアレイ)として使用してもよい。この場合、DNAチップには、1つの遺伝子多型部位に対応するプローブのみが固定されていても、複数の遺伝子多型部位に対応するプローブが固定されていてもよい。オリゴヌクレオチドを固定化する基板としては、スライドガラス、ニトロセルロース膜、マイクロビーズ等種々のものを用いることができる。固定化基板上に複数のオリゴヌクレオチドを整列固定化した場合、該固定化基板は、DNAマイクロアレイ又はDNAチップとして用いることができる。また、オリゴヌクレオチドは基板上で合成しても良いし、また合成したオリゴヌクレオチドを基板上に固定化しても良い。基板上への固定化は、例えば市販のスポッターやアレイヤーを用いて行うことができ、オリゴヌクレオチドの固定化は吸着や共有結合を介した結合により行うことができ、共有結合を介した結合により固定化する場合は、基板表面及びオリゴヌクレオチドに共有結合用のアミノ基、SH基等の官能基を導入すれば良い。オリゴヌクレオチドを固定化した固定化基板を用いる多型の検出は公知の方法で行うことができる。このようなDNAチップを用いた遺伝子多型の検出は、例えば「DNAマイクロアレイと最新PCR法」、村松正明及び那波浩之監修、秀潤社、2000年、第10章などに記載されている。一塩基多型のプローブは、検出のために蛍光物質、酵素、放射性同位体、化学発光物質等で標識されている標識物でもよい。標識に用いる標識物質は、公知のものを用い、公知の方法で標識することができる。蛍光物質としては、例えば、Cy3、Cy5、ローダミン、フルオレセイン等が挙げられる。
プライマーを用いる方法は、一塩基多型部位を含むKPRP遺伝子配列の一部に対応するプライマーを用いて、被験体から単離した核酸サンプルを増幅させて行う。すなわち、例えば、一方のアレルに完全又はほぼ完全に相補的なプライマーと他方のアレルにのみ完全又はほぼ完全に相補的なプライマーを用い、各プライマーを用いた場合に被験体から単離した核酸サンプルが増幅されるか否かにより一塩基多型のアレルを同定することができる。また、一方のアレルに対応するプライマーのみを用いてもよい。
KPRP遺伝子の一塩基多型を検出するためのプローブやプライマーは、一塩基多型の配列情報に基づいて適宜設計することができる。
プローブは、KPRP遺伝子の一塩基多型部位を含む塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列或いはストリンジェント条件下でそれらの配列にハイブリダイズし得る配列からなるヌクレオチド断片(好ましくは、DNA断片)からなり、塩基の数は5〜50、好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜25である。
プライマーは、KPRP遺伝子の一塩基多型部位のアレルを同定できるプライマーであり、たとえば、KPRP遺伝子の一塩基多型部位を含む配列を有する領域を増幅することのできる配列である。これらのプライマーは、一塩基多型部位を含む配列を含んでいてもよく、また一塩基多型部位を含む領域(好ましくは40〜1000塩基の長さの領域)の3’側と5’側の両端に設定されたフォワードプライマーとリバースプライマーのプライマー対であってもよい。プライマーは、KPRP遺伝子の一塩基多型部位を含む塩基配列(例えば、配列番号1)又は該塩基配列に相補的な塩基配列或いはストリンジェント条件下でそれらの配列にハイブリダイズし得る配列から設計されるヌクレオチド断片(好ましくは、DNA断片)からなり、塩基の数は5〜50、好ましくは10〜30、さらに好ましくは15〜25である。
また、プローブ又はプライマーはKPRP遺伝子の塩基配列の一塩基多型部位を含む連続した塩基配列において、数個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1個又は2個、特に好ましくは1個のミスマッチを有していてもよい。
rs4329520、rs4845480、rs944683、rs16834461、rs2297487、rs1412548、rs11581045及びrs17612167で表わされる一塩基多型部位の解析に用いるプローブ又はプライマーとして以下の塩基配列からなるもの、又は該塩基配列を全部若しくは一部含む配列を含むものを挙げることができる。
プローブ
rs4329520
アレルTを検出するためのプローブ CAGAACCATGCATAAG (配列番号2)
9番目のTが一塩基多型部位
アレルAを検出するためのプローブ CAGAACCAAGCATAAG (配列番号3)
9番目のAが一塩基多型部位
rs4845480
アレルGを検出するためのプローブ TGCGAAGCGTCAC (配列番号4)
9番目のGが一塩基多型部位
アレルCを検出するためのプローブ AGTGCGAAGCCTC (配列番号5)
11番目のCが一塩基多型部位
rs944683
アレルTを検出するためのプローブ CCAAGTGGTGGTTC (配列番号6)
12番目のTが一塩基多型部位
アレルCを検出するためのプローブ CCAAGTGGTGGCTCA (配列番号7)
12番目のCが一塩基多型部位
rs16834461
アレルGを検出するためのプローブ AGATGTATAGAGGGCGTC (配列番号8)
16番目のGが一塩基多型部位
アレルAを検出するためのプローブ AGATGTATAGAGGGCATC (配列番号9)
16番目のAが一塩基多型部位
rs2297487
アレルCを検出するためのプローブ AGAATCTCTAAATCTC (配列番号10)
14番目のCが一塩基多型部位
アレルTを検出するためのプローブ CTCTAAATTTCAGTGTCTAT (配列番号11)
9番目のTが一塩基多型部位
rs1412548
アレルAを検出するためのプローブ GGGAGGGCGAGGGGTGCATT (配列番号12)
18番目のAが一塩基多型部位
アレルGを検出するためのプローブ AGGGAGGGCGAGGGGTGCGTT (配列番号13)
19番目のGが一塩基多型部位
rs11581045
アレルGを検出するためのプローブ CCCATCTTTCAGTGCCT (配列番号14)
14番目のGが一塩基多型部位
アレルAを検出するためのプローブ CCCATCTTTCAGTACC (配列番号15)
14番目のAが一塩基多型部位
rs17612167
アレルAを検出するためのプローブ CCGCTCCAACAGT (配列番号30)
9番目のAが一塩基多型部位
アレルTを検出するためのプローブ CTCCATCAGTGCTGC (配列番号31)
6番目のTが一塩基多型部位
プライマー
rs4329520
フォワードプライマー GTCACCACTGCAGCGATGTC (配列番号16)
リバースプライマー CGCGGGCGTGGTTCTAG (配列番号17)
rs4845480
フォワードプライマー TGTTCAAAGCCAGGCTCCAT (配列番号18)
リバースプライマー CAAACTGGAGCACATTCTACGAA (配列番号19)
rs944683
フォワードプライマー GCTCCTCTCAATCCCCCTTT (配列番号20)
リバースプライマー GTCCACAATTTGCATCTCACAAG 配列番号21)
rs16834461
フォワードプライマー GAATGCCCAGTCCAGAACTATGT (配列番号22)
リバースプライマー CCCTGAGGCTGGCACACT (配列番号23)
rs2297487
フォワードプライマー TCCTTATCTGCCCAACTAGGTTGTA (配列番号24)
リバースプライマー CCCACAAGCCTTGCTAAGCA (配列番号25)
rs1412548
フォワードプライマー AAAGAAGGGAGAAGCT (配列番号26)
リバースプライマー GCTCACCAGACTTTTC (配列番号27)
rs11581045
フォワードプライマー TCCCCAGCTTCTGAAATCCA (配列番号28)
リバースプライマー GAACAAGCAAAGAAGGCTCCAA (配列番号29)
rs17612167
フォワードプライマー TGTGACCAGCAGCAGATCCA (配列番号32)
リバースプライマー GGATTGAGAGGAGCAGAAGG (配列番号33)
本発明は、KPRP遺伝子の一塩基多型を分析するために用いるプローブ及び一塩基多型を分析するために一塩基多型部位を含むDNA断片の増幅に用いるプライマー(好ましくは、少なくとも一対のプライマーセット)を包含する。また、プローブを固定化したDNAチップをも包含する。さらに、プローブ、DNAチップ、プライマーを含むKPRP遺伝子の一塩基多型部位を解析するためのキットも包含する。
該キットは、他に一塩基多型の解析に使用される制限酵素、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、核酸標識分子、緩衝液、該キットの取扱説明書等を含んでいてもよい。
2.KPRP遺伝子の発現量の分析によるアトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクの評価、判定
KPRP遺伝子の上記の一塩基多型部位のアレルがアトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高いアレルを有する被験体において、KPRP遺伝子の発現量が低下する。従って、KPRP遺伝子の発現量を測定することによってもアトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクを評価、判定することができる。この場合、被験体から組織又は細胞を採取し、組織又は細胞におけるKPRPの発現を測定すればよい。組織又は細胞は、好ましくはヒトの皮膚組織又は皮膚の細胞であり、より好ましくはヒト皮膚の角層を含む表皮層の組織又は細胞であり、さらに好ましくはヒトの皮膚の顆粒層の組織又は細胞であり、特に好ましくはヒトの皮膚の顆粒層の最上層部の組織又は細胞である。これらの組織又は細胞は、たとえば、母斑切除手術等により採取することもできる。
KPRP遺伝子の発現量は、発現したKPRPタンパク質を測定しても、KPRPのmRNAを測定してもよい。タンパク質の測定は、組織や細胞からタンパク質を抽出し、抗KPRPタンパク質ポリクローナル抗体等のKPRPタンパク質に対する抗体を用いてKPRPタンパク質を抗原抗体反応を利用したイムノアッセイにより行うことができる。抗原抗体反応を利用したイムノアッセイとしては、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)、イムノドットブロット、イムノクロマトグラフィー、ラテックス等の粒子を利用した凝集法、ウエスタンブロット等が挙げられるがこれらには限定されない。また、採取した組織又は細胞を抗KPRP抗体を利用した免疫組織化学、免疫細胞化学による染色により、測定することもできる。この際、抗KPRPタンパク質抗体を蛍光色素、アルカリフォスファターゼ(ALP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、蛍光タンパク質等で標識して用いることができる。具体的には、たとえば、被験体から採取した組織又は細胞をスライドグラス等に固定化したサンプルを作製し、該サンプルと標識抗体を接触させ、KPRPタンパク質と結合させ、組織又は細胞の染色の程度を目視又は蛍光測定装置等の測定装置を用いて測定すればよい。
本発明は、KPRP遺伝子の発現の測定に用いるために利用し得る抗KPRPタンパク質抗体を包含する。抗KPRPタンパク質抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、好ましくはポリクローナル抗体を用いる。抗体は公知の方法で作製することができる。
組織や細胞中のmRNAの測定は、例えば、組織又は細胞からRNAを抽出し、cDNAに逆転写し、KPRPのcDNAを測定すればよい。cDNAの測定は、KPRP遺伝子の配列情報を利用して、KPRP遺伝子に相補的にハイブリダイズするプローブ又はプライマーを用いて行うことができる。プローブ又はプライマーを用いた測定は、上記の一塩基多型を検出する方法に準じて行うことができる。用いるプローブ又はプライマーは、hKPRP遺伝子の場合を例にとると、配列番号1に表わされるKPRP遺伝子の塩基配列情報に基づいて設計することができる。
組織又は細胞を採取する被験体は健常人(若しくは健常動物)、又は軽症、中等症若しくは重症の被験体である。被験体は、ヒトに限定されず、チンパンジーやイヌ等のKPRP遺伝子を保有する任意の動物でもあり得る。被験体から採取した組織又は細胞のKPRPタンパク質又はRNA量が有意に減少している場合、該被験体は、アトピー性疾患を発症していると評価、判定することができ、発現量に応じて軽症、中等症又は重症のアトピー性疾患を発症していると評価、判定することができる。KPRP遺伝子の発現量が少なければ少ないほど重症度が高いと評価、判定することができる。すなわち、KPRP遺伝子の発現量により、アトピー性疾患の重症度をより客観的に評価、判定することができる。また、健常人(若しくは健常動物)において、KPRP遺伝子の発現が有意に低下している場合、該健常人(若しくは該健常動物)は将来的にアトピー性疾患を発症するリスクがあるか、又は将来的にアトピー性疾患が重症化するリスクがあるとより客観的に評価、判定することができる。さらに、軽症又は中等症の被験体において、KPRP遺伝子の発現が有意に低下している場合、該被験体は将来的にアトピー性疾患が重症化するリスクがあると評価、判定することができる。
KPRP遺伝子の発現が低下しているかどうかは、例えば、対象となる被験体の組織又は細胞において、アトピー性疾患の発症と無関係に一定量を安定的に発現している他の遺伝子の発現量と比較して決定することができる。例えば、ヒトの場合、皮膚組織又は細胞中のβアクチン遺伝子の発現量を同時に測定し、βアクチン遺伝子の発現量に対するKPRP遺伝子の発現量の比を算出して比較すればよい。具体的には、例えば、発現したmRNAのコピー数あるいはタンパク質発現量で比較することができる。例えば、ヒトのhKPRP遺伝子の発現量の測定を例にとると、βアクチン遺伝子の発現量に対するhKPRP遺伝子の発現量の比が0.3以下の場合、好ましくは0.2以下の場合、さらに好ましくは0.1以下の場合、hKPRP遺伝子の発現が有意に低下していると判断することができる。また、ヒトの場合、βアクチンに変えて、皮膚組織又は細胞中のGAPDH遺伝子の発現量を測定して比較することもでき、例えば、GAPDH遺伝子の発現量に対するhKPRP遺伝子の発現量の比が3.0以下の場合、好ましくは2.0以下の場合、さらに好ましくは1.0以下の場合に、hKPRP遺伝子の発現が有意に低下していると判断することができる。さらに、あらかじめ、健常人(若しくは健常動物)、又は軽症、中等症若しくは重症と判定されたアトピー性疾患患者の組織又は細胞におけるKPRP遺伝子の発現量を測定し、健常人(若しくは健常動物)とアトピー性疾患患者のKPRP遺伝子の平均発現量を測定しておき、該発現量をカットオフ値として、発現量が低下しているかどうか判断することができる。例えば、ある被験体において、KPRP遺伝子の発現が健常人(若しくは健常動物)と同程度の場合、該被験体はアトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクが低いと判定することができ、KPRP遺伝子の発現が重症患者と同程度の場合、該被験体はアトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高いと判断することができる。
このように、KPRP遺伝子の発現量によって、アトピー性疾患を発症しているか、アトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクが高いと判断された被験体については、適切なアトピー性疾患の治療法を施すことができ、あるいは将来的なアトピー性疾患の発症や重症化に備えて適切な治療や日常生活におけるケアを施すことができる。
本発明は、KPRP遺伝子の発現量の分析によるアトピー性疾患を発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクの判定に用いるキットを包含し、該キットは抗KPRP抗体やプローブ、プライマー等を包含する。
該キットは、他に緩衝液等の試薬、該キットの取扱説明書等を含んでいてもよい。
3.アトピー性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング
KPRP遺伝子を有し該遺伝子を発現し得る被験動物、被験組織又は被験細胞、或いは該被験動物、該被験組織又は該被験細胞においてKPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトした被験動物、被験組織又は被験細胞を用いて、アトピー性疾患の予防又は治療剤をスクリーニングすることができる。
KPRP遺伝子を有し該遺伝子を発現し得る被験動物としては、ヒトやサル、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、チンパンジー、アヌビスヒヒ、アカゲザル、ウシ、ラバ等の非ヒト動物を用いることができる。非ヒト動物を用いる場合、その動物固有のKPRP遺伝子を利用することができる。具体的には、チンパンジー、アヌビスヒヒ、アカゲザル、ウシ、ラット、ハツカネズミ等においてKPRP遺伝子の存在が知られ、イヌ、ラバ等においてKPRP様遺伝子が知られており、これらのKPRP遺伝子を利用することができる。また、非ヒト動物に、KPRP遺伝子を形質転換により導入して用いてもよい。KPRP遺伝子を有する非ヒト動物の作出は、公知の形質転換動物の作出法により行うことができる。例えば、KPRP遺伝子を有する形質転換非ヒト動物の作出は、受精卵や初期胚にKPRP遺伝子を導入し、遺伝子を導入した受精卵や初期胚を前記動物の仮親の子宮に移植し、発生させればよい。また、ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞(induced pluripotent stem cell)又はSTAP細胞(stimulus-triggered acquisition of pluripotency cell)(WO2013/163296; Nature, Volume 505, page 596-)等の多能性幹細胞にKPRP遺伝子を導入し、胚盤胞等の初期胚に挿入し、遺伝子を導入した細胞を前記動物の仮親の子宮に移植し、発生させキメラマウスを得て、キメラマウスを交配することにより、KPRP遺伝子のホモ接合型の形質転換動物を得ることにより行うこともできる。初期胚へのKPRP遺伝子の細胞への導入は公知の形質転換等により行うことができ、ウイルスベクター等のベクターを用いる方法、エレクトロポレーション法等により行うことができる。
KPRP遺伝子を有し該遺伝子を発現し得る組織又は細胞、或いは該組織又は該細胞においてKPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトした組織又は細胞は、ヒト組織又は細胞を単離して用いることができる。組織又は細胞は、好ましくはヒトの皮膚組織又は皮膚の細胞であり、より好ましくはヒト皮膚の角層を含む表皮層の組織又は細胞であり、さらに好ましくはヒトの皮膚の顆粒層の組織又は細胞であり、特に好ましくはヒトの皮膚の顆粒層の最上層部の組織又は細胞である。また、サル、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、チンパンジー、アヌビスヒヒ、アカゲザル、ウシ、ラバ等の動物由来の培養組織の組織又は培養細胞の細胞を用いること、及び各動物固有のKPRP遺伝子を利用することも含む。
また、哺乳類培養細胞にKPRP遺伝子を形質転換により導入し、該形質転換細胞を用いるか、あるいは該形質転換細胞から組織を形成させその組織を用いることができる。また、iPS(induced pluripotent stem)細胞、ES(embtyonic stem)細胞又はSTAP(stimulus-triggered acquisition of pluripotency)細胞等の多能性幹細胞にKPRP遺伝子を導入し、皮膚組織等の組織に分化させて組織を形成させ用いることもできる。
また、細菌、真菌細胞、昆虫細胞等の細胞にKPRP遺伝子を導入して用いることもできる。
細胞へのKPRP遺伝子の導入は公知の方法で行うことができる。
本発明のスクリーニング方法では、上記のKPRP遺伝子を有し該遺伝子を発現し得る被験動物、被験組織又は被験細胞、或いは該被験動物、該被験組織又は該被験細胞においてKPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトした被験動物、被験組織又は被験細胞と、被験物質とを接触させ、KPRP遺伝子の発現量やアトピー性疾患症状の変化等を測定すればよい。ここで、接触とは被験動物に被験物質を投与することも含む。KPRP遺伝子の発現が上昇した場合、又はアトピー性疾患症状の変化や改善(具体的には、アトピー性皮膚炎の罹患部の角層でよく認められる所見の変化、例えば、角層における有核細胞数増加等の不全角化の抑制等)が認められた場合に、該被験物質はアトピー性疾患の予防又は治療剤として用いることができると評価される。被験物質はタンパク質等の高分子化合物でも低分子化合物でもよく、また動植物エキス等でもよい。KPRP遺伝子の発現量は、発現したKPRPタンパク質を測定しても、KPRPのmRNAを測定してもよい。発現したKPRPタンパク質の測定及びKPRPのmRNAの測定は上記の方法で行うことができる。また、アトピー性疾患症状の変化や改善の評価は目視観察で行ってもよいし、又は、角層における有核細胞数の計測等によっても行うことができる。例えば、角層における有核細胞数の測定は、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)等の当該分野で公知の方法で行うことができる。
本発明は、KPRP遺伝子を有する組織や細胞並びに該組織や該細胞においてKPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトした組織及び細胞、KPRP遺伝子を含む非ヒト動物(例えば、非ヒト形質転換動物)等を包含する。KPRP遺伝子を有する組織や細胞並びに該組織や該細胞においてKPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトした組織及び細胞は非ヒト由来の組織や細胞だけでなく、ヒト由来の組織や細胞も含み、例えば、ヒト由来の組織や細胞のKPRP遺伝子を公知の方法でノックダウン又はノックアウトすることにより得られる。これらの組織、細胞、非ヒト動物をアトピー性皮膚炎の予防又は治療薬のスクリーニングに用いることができる。
本発明は、さらにアトピー性疾患の予防又は治療薬をスクリーニングするためのキットを包含し、該キットは、上記のプローブ、DNAチップ、プライマー、抗KPRP抗体、KPRP遺伝子を有する組織や細胞並びに該組織や該細胞においてKPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトした組織及び細胞(特に、動物皮膚組織若しくは皮膚細胞)、KPRP遺伝子を含む非ヒト動物(例えば、非ヒト形質転換動物)等を含み、さらに後記のKPRP遺伝子のノックダウン非ヒト動物若しくはKPRP遺伝子のノックアウト非ヒト動物であるアトピー性疾患モデル動物、又はそれらのモデル動物から得られる組織若しくは細胞(特に、皮膚組織若しくは皮膚細胞)を含んでいてもよい。
4.アトピー性疾患モデル動物の作出
非ヒト動物の固有のKPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトすることにより、アトピー性疾患のモデル動物を作出することができる。KPRP遺伝子のノックダウンとはKPRP遺伝子の転写、発現を減少させる操作をいい、KPRP遺伝子のノックアウトとは、KPRP遺伝子を破壊することをいう。
遺伝子のノックダウン又はノックアウトは公知の方法で行うことができる。たとえば、ノックダウンは、KPRP遺伝子のアンチセンスmRNA、siRNA、microRNAを用いることにより行うことができる。ノックアウトは例えば動物の受精卵や初期胚のKPRP遺伝子を相同組換え等により部分的に又は完全に欠失させ、該受精卵又は初期胚を前記動物の仮親の子宮に移植し、発生させればよい。また、ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞(induced pluripotent stem cell) 又はSTAP細胞(stimulus-triggered acquisition of pluripotency cell)等の多能性幹細胞のKPRP遺伝子を相同組換え等により部分的に又は完全に欠失させ、該ES細胞、該iPS細胞又は該STAP細胞等の多能性幹細胞を、胚盤胞等の初期胚に挿入し、該初期胚を前記動物の仮親の子宮に移植し、発生させ、キメラマウスを得て、キメラマウスを交配することにより、KPRP遺伝子がノックアウトされた形質転換動物を得ることにより行うことができる。
このようにして得られたKPRP遺伝子がノックダウン又はノックアウトされた非ヒト動物は、KRPPタンパク質の発現が低下し、アトピー性疾患の症状を発現し得る。これらのノックダウン動物又はノックアウト動物はアトピー性疾患のモデル動物として利用することができ、例えば、アトピー性疾患の予防又は治療剤のスクリーニングに利用することができる。また、アトピー性疾患の病態解析に用いることもできる。
5.アトピー性疾患の予防又は治療剤
本発明はアトピー性疾患の予防又は治療剤を包含する。該予防又は治療剤は、被験体において、KPRP遺伝子の発現量を増加させ得る物質を有効成分として含み、KPRP遺伝子の発現量を増加させ得る物質は上記のスクリーニング方法で選択することができる。該有効成分は直接又は間接的にKPRP遺伝子の発現を調節し得る物質であり、皮膚の表皮の顆粒層におけるKPRP遺伝子の発現量を増加させることができ、アトピー性疾患の症状を緩和させ、あるいは寛解さえさせ得る。該物質はタンパク質等の高分子化合物であっても、低分子化合物であってもよく、動植物エキス等でもよい。
また、アトピー性疾患の予防又は治療剤は有効成分として、KPRP遺伝子の発現産物であるKPRPタンパク質を含んでいてもよい。KPRPを皮膚に投与することにより、皮膚の表皮の顆粒層におけるKPRPタンパク質が補充され、増加し、アトピー性疾患の症状を緩和させ、あるいは寛解さえさせ得る。
上記予防又は治療剤は、アトピー性疾患の予防又は治療剤は有効成分として、KPRP遺伝子(好ましくは、rs4329520の一塩基多型部位においてAアリルを有するhKPRP遺伝子、rs4845480の一塩基多型部位においてCアリルを有するhKPRP遺伝子、rs16834461の一塩基多型部位においてAアリルを有するhKPRP遺伝子、rs944683の一塩基多型部位においてCアリルを有するhKPRP遺伝子、rs2297487の一塩基多型部位においてTアリルを有するhKPRP遺伝子、rs11581045の一塩基多型部位においてAアリルを有するhKPRP遺伝子、rs1412548の一塩基多型部位においてGアリルを有するhKPRP遺伝子、rs17612167の一塩基多型部位においてAアリルを有するhKPRP遺伝子)を含んでいてもよい。該遺伝子は、アデノウイルス等のウイルスベクターに導入し、該ベクターを介して皮膚細胞に導入し、皮膚細胞中で発現させる。
上記予防又は治療剤は、薬理学的に許容され得る担体、希釈剤、賦形剤等を含んでいてもよい。例えば、皮膚外用剤用の担体、基剤としては、水、油脂類、アルコール類等が挙げられ、プロピレングリコール等のポリアルコール、界面活性剤等の溶解補助剤を併用してもよい。錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。また、注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが挙げられ、アルコール、プロピレングリコールなどのポリアルコール、非イオン界面活性剤などの溶解補助剤を併用してもよい。油性液としては、ゴマ油、大豆油などが使用され、溶解補助剤としては安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用すればよい。
さらに、上記予防又は治療剤は、種々の形態で投与することができ、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、あるいは注射剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、点滴剤、座薬、スプレー剤、点眼剤、経鼻投与剤、貼付剤などによる非経口投与を挙げることができる。該予防又は治療剤は、局所投与してもよく、例えば、アトピー性皮膚炎の症状が現れている皮膚に直接適用することができる。投与量は、症状、年齢、体重などによって適宜調整でき、毎日0.001mg〜100mg程度投与してもよく、或いは数日又は数週間又は数ヶ月おきに1回あたり、0.001mg〜100mgを投与してもよい。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
今回解析に使用したヒトゲノムDNAは、ヒトの血液又は皮膚組織より常法により抽出されたものである。
その内訳は、HapMap プロジェクト(http://hapmap.ncbi.nlm.nih.gov/index.html.ja)で使用された日本人健常者ゲノムDNAが45例、東京大学医学部皮膚科学教室にて被験者の同意を得て抽出し、保管されていたアトピー性皮膚炎の日本人患者のゲノムDNAが96例(軽症:41例、中等症47例、重症:8例)、そして、日本人健常者のゲノムDNA38例、日本人アトピー性皮膚炎患者14例(軽症:2例、中等症5例、重症:7例)は、今回新たに抽出された。
アトピー性皮膚炎患者の重症度は、東京大学医学部皮膚科学教室の医師により、前述の「厚生労働科学研究班アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008」に従って診断されたものである。
ヒトKPRP遺伝子(Human keratinocyte proline-rich protein (hKPRP) 遺伝子)の一塩基多型(SNP)
HapMapプロジェクトデータベース(図1)によると、hKPRP遺伝子は、1つのエクソンより構成され、エクソン1の翻訳領域に8つ(rs17612167, rs944683, rs16834457, rs4845480, rs16834461, rs4329520, rs6703165, rs6703294)、イントロン領域に6個(rs16834455, rs1412548, rs35337800, rs13328667, rs35941946, rs34266276)及び3´フランキング領域に2個(rs11581045, rs2297487)の一塩基多型が報告されている。そのうち、日本人で同定されているのは、rs16834455, rs1412548, rs13328667, rs17612167, rs944683,rs16834457, rs4845480, rs16834461, rs4329520, rs6703294, rs11581045, rs2297487である。
今回試験を行ったSNPについて
アトピー性皮膚炎とSNPの関係を検討するにあたり、ある程度の割合のマイナーアレル頻度(マイナーアレルの割合)が必要であると考えられた。そこで、日本人で同定されているSNPのうち、マイナーアレル頻度が20%以上のものを選抜したところ、さらに、アミノ酸置換を引き起こすSNP、すなわち遺伝子多型のアレルに依存して翻訳後のアミノ酸の種類が変化するSNPは、rs944683, rs16834461, rs4329520の3個のSNPであった。それらのSNPのうち、試験の便宜上rs4329520を解析に使用した。
hKPRP遺伝子SNP(rs4329520)と、アトピー性皮膚炎の相関
hKPRP遺伝子多型と、アトピー性皮膚炎の相関を調べるために、デジタルPCR法(Fluidigm)を使用した。今回使用したSNPのプライマーとプローブ、及び同様な結果を得られると予測できるSNPの候補プライマーとプローブを図2に示す。図2のプローブの配列中、枠で囲んだ塩基が一塩基多型部位に相当する塩基である。
その結果、アトピー性皮膚炎の重症度依存的に、マイナーアレルであるAlleleAの頻度が減少し、特に重症患者において有意に減少していることが示された(T-test p=0.027, Mann-Whitney U-test p=0.007)(図3)。
それらの値を離散化し、遺伝子型を決定した。遺伝子型TTの人の割合は、健常人で33.7%、アトピー性皮膚炎軽症の人34.9%、中等症の人43.1%、重症の人60.0%であった(図4)。この結果より、遺伝子型TTの人では、アトピー性皮膚炎を発症すると重症化するリスクが高いことが予想される。
hKPRP遺伝子発現解析
アトピー性皮膚炎(重症)の皮膚組織、及び、コントロールとして、母斑切除手術などにより切除された皮膚組織から病態部位以外を用いて、常法により、RNAを抽出し、cDNAに逆転写した。そして、Taqman(登録商標) Gene Expression Assays(Applied biosystems) kitを用い、付随のプロトコールに従い、発現解析を行った。
その結果、アトピー性皮膚炎患者の皮膚において、hKPRP遺伝子の発現量が有意に少なかった(p=0.0028)(図5)。図5中、図5Aは平均を示し、図5Bは各サンプルの分布を示す。
hKPRPタンパク発現:免疫染色
アトピー性皮膚炎(重症)の皮膚組織、及び、コントロールとして、母斑切除手術などにより切除された皮膚組織から病態部位以外を用いて、常法によりhKPRPポリクローナル抗体を用い、免疫染色を行った。
その結果、hKPRPタンパクは皮膚の顆粒層の最上層部に発現しており、アトピー性皮膚炎の皮膚ではその発現が有意に少ないことが観察された(図6)。図6中、図6Aはコントロールの結果であり、図6Bはアトピー性皮膚炎の結果である。
遺伝子発現解析、免疫染色の結果から、hKPRPの発現量減少により、アトピー性皮膚炎が重症化することが予想される。
実施例2
本実施例で使用したヒトゲノムDNAは、ヒトの血液又は皮膚組織より常法により抽出されたものである。なお、被験者の選定にあたり、アトピー性疾患症状が認められない被験者であっても、鼻炎や喘息といった一般的なアレルギー性疾患症状を示す被験者は健常人としての被験対象から除外した。アトピー性皮膚炎患者の重症度は、東京大学医学部皮膚科学教室の医師により、前述の「厚生労働科学研究班アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008」に従って診断されたものである。なお、診断にあたり、中等症で判定の難しい被験者についてはIgEの値を参考に重症度の判定を行った(IgE値が5000以上であれば中等症以上とし、IgE値が5000未満であっても皮疹がひどければ中等症と判定)。
hKPRP遺伝子SNP(rs4329520)と、アトピー性皮膚炎の相関
hKPRP遺伝子多型と、アトピー性皮膚炎の相関を調べるために、リアルタイムPCR法を使用した。今回使用したSNPのプライマーとプローブ、及び同様な結果を得られると予測できるSNPの候補プライマーとプローブを図7に示す。図7のプローブの配列中、枠で囲んだ塩基が一塩基多型部位に相当する塩基である。具体的には、常法により抽出したゲノムDNAに対し、図7のプライマーセット、プローブ(蛍光色素FAM、VICで標識)、Taqman Gene Expression Master Mix(Applied biosystems)を混合し、添付のプロトコールに従って、リアルタイムPCRを行った。この結果産出されたFAM、VICのそれぞれのCt値(PCR増幅産物がある一定量に達したときのサイクル数)から、このrs4329520で表される一塩基多型部位の遺伝子型を決定した。
得られた結果から、カイ二乗検定及びオッズ比を求め、一塩基多型部位の遺伝子型とアトピー性皮膚炎の中等症及び重症度の相関を評価した。この結果を表1〜3及び図8に示す。表1及び図8は各遺伝子型とアトピー性皮膚炎の重症度を示し、表2は2分割表、表3は3分割表を示す。本結果に示される通り、rs4329520で表される一塩基多型部位の遺伝子型がT/Tのヒトでは、それ以外の遺伝子型のヒトと比べ中等症・重症になり易い傾向が確認された。
Figure 0006644328
Figure 0006644328
Figure 0006644328
hKPRP遺伝子SNP(rs16834461)と、アトピー性皮膚炎の相関
rs16834461で表される一塩基多型部位の遺伝子型と、アトピー性皮膚炎の相関関係についても、図7に示されるプライマーセット及びプローブを用いて、上記と同様の手法によりリアルタイムPCR法で評価を行った。
この結果から、この結果を表4〜6及び図9に示す。表4及び図9は各遺伝子型とアトピー性皮膚炎の重症度を示し、表5は2分割表、表6は3分割表を示す。本結果に示される通り、rs16834461で表される一塩基多型部位の遺伝子型がG/Gのヒトでは、それ以外の遺伝子型のヒトと比べ中等症・重症になり易い傾向が確認された。
Figure 0006644328
Figure 0006644328
Figure 0006644328
hKPRP遺伝子SNP(rs11581045)と、アトピー性皮膚炎の相関
rs11581045で表される一塩基多型部位の遺伝子型と、アトピー性皮膚炎の相関関係についても、図7に示されるプライマーセット及びプローブを用いて、上記と同様の手法によりリアルタイムPCR法で評価を行った。
この結果から、この結果を表7〜9及び図10に示す。表7及び図10は各遺伝子型とアトピー性皮膚炎の重症度を示し、表8は2分割表、表9は3分割表を示す。本結果に示される通り、rs11581045で表される一塩基多型部位の遺伝子型がG/Gのヒトでは、それ以外の遺伝子型のヒトと比べ中等症・重症になり易い傾向が確認された。
Figure 0006644328
Figure 0006644328
Figure 0006644328
hKPRP遺伝子SNP(rs17612167)と、アトピー性皮膚炎の相関
rs17612167で表される一塩基多型部位の遺伝子型と、アトピー性皮膚炎の相関関係についても、図7に示されるプライマーセット及びプローブを用いて、上記と同様の手法によりリアルタイムPCR法で評価を行った。
この結果から、この結果を表10〜12及び図11に示す。表10及び図11は各遺伝子型とアトピー性皮膚炎の重症度を示し、表11は2分割表、表12は3分割表を示す。本結果に示される通り、rs17612167で表される一塩基多型部位の遺伝子型がA/T又はT/Tのヒトでは、それ以外の遺伝子型のヒトと比べ中等症・重症になり易い傾向が確認された。
Figure 0006644328
Figure 0006644328
Figure 0006644328
hKPRP遺伝子発現解析
本実施例において新たに採取されたアトピー性皮膚炎(重症)の皮膚組織、及び、コントロールとして、母斑切除手術などにより切除された皮膚組織から病態部位以外を用いて、常法により、RNAを抽出し、cDNAに逆転写した。そして、Taqman(登録商標)Gene Expression Assays(Applied biosystems) kitを用い、付随のプロトコールに従い、発現解析を行った。
その結果、アトピー性皮膚炎患者の皮膚において、hKPRP遺伝子の発現量が有意に少なかった(p=0.0248)(図12)。図12Aは平均を示し、図12Bは各サンプルの分布を示す。
hKPRPタンパク発現:免疫染色
本実施例において新たに採取されたアトピー性皮膚炎(重症)の皮膚組織、及び、コントロールとして、母斑切除手術などにより切除された皮膚組織から病態部位以外を用いて、常法によりhKPRPポリクローナル抗体を用い、免疫染色を行った。
その結果、hKPRPタンパクは皮膚の顆粒層の最上層部に発現しており、アトピー性皮膚炎の皮膚ではその発現が有意に少ないことが観察された(図13)。図13Aはコントロールの結果であり、図13Bはアトピー性皮膚炎の結果である。
本実施例の結果からも、遺伝子発現解析、免疫染色の結果から、hKPRPの発現量減少により、アトピー性皮膚炎が重症化することが予想される。
実施例3
KPRP遺伝子をノックダウンした表皮細胞及び三次元培養皮膚の作製・評価
市販の表皮細胞(クラボウ製)を該細胞についてのメーカー推奨培地で培養し、その培養表皮細胞に対し、Lipofectamine RNAiMAX(Life Technologies製)を付随のプロトコールに従って使用してKPRP siRNA(下記表13)の導入を行うことで、KPRP遺伝子ノックダウン表皮細胞を作製した。
Figure 0006644328
次いで、三次元培養皮膚の作製のために、先ず、ヒト皮膚組織(BIOPREDIC International製)を、イソジン(MeijiSeikaファルマ製)及び0.3%アジ化ナトリウム水溶液で殺菌し、1M水酸化ナトリウム水溶液に一晩浸漬した。翌日、ピンセットを用いて表皮組織を取り除くことで真皮のみの皮膚組織を作製した。次いで、皮膚組織の表皮が存在した面とは反対の面に、細胞メーカー推奨培地で培養した線維芽細胞(クラボウ製)を播種し、培養を行った。培養開始から4日後、皮膚組織の表皮が存在した面に、前記のKPRP遺伝子ノックダウン表皮細胞またはノックダウンをしていない表皮細胞(コントロール)をそれぞれ播種し、更に4日間培養した。その後、表皮細胞の上にある培地を取り除き、表皮面が空気に曝露されている状態にして2週間培養を行った。培養期間終了後、組織観察のために常法により、組織固定、パラフィンブロック作製、及びヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行い、皮膚組織の写真撮影を行った。この結果を図14に示す。
図14の写真において、最上層に認められるのが角層であり、中間層が顆粒層、有棘層、基底層からなる表皮層であり、その下にある最下層が真皮層である。図14に示されるように、コントロール(図14A:control)では、角層には青紫色に染色された核が殆んど認められず、正常に脱核している状態が観察された。一方、KPRP遺伝子をsiRNAでノックダウンした皮膚組織写真(図14B:KPRP siRNA)では、角層中にも青紫色に染色された核が多数認められ、脱核していないままの分化異常の角化(不全角化)が生じている状態が観察された。アトピー性皮膚炎を発症した患部の角層ではこのような有核細胞の出現が頻繁に認められることが知られている。従って、本試験により、KPRP遺伝子をノックダウンすることによって、アトピー性皮膚炎を発症させ得ることが推察された。このようなKPRP遺伝子ノックダウンモデルは、アトピー性疾患モデルとして有用であり、例えば、アトピー性疾患の予防又は治療剤をスクリーニングするために有益に用いることができる。
本発明の方法、プローブ、プライマー等によりアトピー性疾患が発症するリスク又はアトピー性疾患が重症化するリスクを評価、判定することができる。
配列番号2〜15、30〜31、35〜36、39〜40 合成
配列番号16〜29、32〜34、37〜38 プライマー

Claims (11)

  1. 被験体から採取された試料において、KPRP遺伝子の一塩基多型又は該一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型を分析することを含み、KPRP遺伝子の一塩基多型が以下の(i)又は(ii)の一塩基多型である、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクを判定するための検査方法:
    (i) 配列番号1で示される塩基配列の3096番目の塩基におけるT又はAである一塩基多型;
    (ii) 配列番号1で示される塩基配列の2231番目の塩基におけるG又はCである一塩基多型。
  2. 配列番号1で表されるhKPRP遺伝子の塩基配列の3096番目の一塩基多型部位の遺伝子型がT/Tである場合、又は2231番目の一塩基多型部位の遺伝子型がG/Gである場合に、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクが存在すると判定する、請求項1記載の方法。
  3. 配列番号1で表されるhKPRP遺伝子の塩基配列の以下の(i)又は(ii)の一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の13〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、被験体のアトピー性疾患の発症又は重症化のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
    (i) 配列番号1で示される塩基配列の3096番目の塩基におけるT又はAである一塩基多型;
    (ii) 配列番号1で示される塩基配列の2231番目の塩基におけるG又はCである一塩基多型。
  4. 請求項3記載のプローブ又はその標識物を標識した固定化基板からなるDNAチップ。
  5. 配列番号1で表されるhKPRP遺伝子の塩基配列の以下の(i)又は(ii)の一塩基多型部位を含むDNA断片の増幅に用いるプライマー;
    (i) 配列番号1で示される塩基配列の3096番目の塩基におけるT又はAである一塩基多型;
    (ii) 配列番号1で示される塩基配列の2231番目の塩基におけるG又はCである一塩基多型。
  6. フォワードプライマー及びリバースプライマーのプライマー対である、請求項5記載のプライマー。
  7. 被験体から採取された皮膚組織において、KPRP遺伝子の発現量を測定することを含み、KPRP遺伝子の発現量が低下している場合に、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクが存在すると判定する、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクを判定するための検査方法。
  8. 抗KPRP抗体を用いたイムノアッセイによりKPRPタンパク質量を測定する、請求項7記載の方法。
  9. KPRPのmRNA量を測定する、請求項7記載の方法。
  10. KPRP遺伝子を有する被験非ヒト動物、採取された被験組織又は採取された被験細胞、或いは該被験非ヒト動物、該採取された被験組織又は該採取された被験細胞においてKPRP遺伝子をノックダウン又はノックアウトした被験非ヒト動物、採取された被験組織又は採取された被験細胞を被験物質と接触させ、KPRP遺伝子の発現量を測定する工程を含み、被験物質との接触の後に、被験非ヒト動物、採取された被験組織又は採取された被験細胞において、KPRP遺伝子の発現量が上昇した場合に、該被験物質はアトピー性疾患の予防又は治療剤として用いられ得ると判定する、アトピー性疾患の予防又は治療剤をスクリーニングする方法。
  11. 請求項3に記載のプローブ、請求項4に記載のDNAチップ、請求項5若しくは6に記載のプライマー又は抗KPRP抗体のいずれかを含む、アトピー性疾患の発症又は重症化のリスクを判定するための検査キット。
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