JP6644276B2 - 家禽始原生殖細胞の遺伝子改変方法、遺伝子改変された家禽始原生殖細胞、遺伝子改変家禽の生産方法及び家禽卵 - Google Patents

家禽始原生殖細胞の遺伝子改変方法、遺伝子改変された家禽始原生殖細胞、遺伝子改変家禽の生産方法及び家禽卵 Download PDF

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Description

本発明は、家禽始原生殖細胞の遺伝子改変方法、遺伝子改変された家禽始原生殖細胞、遺伝子改変家禽の生産方法及び家禽卵に関する。
鳥類は他の生物とは異なり、卵子が巨大な卵黄を有するため胚への顕微操作が極めて困難であり、受精直後の数回程度の細胞分裂を経た初期胚を用いた家禽遺伝子操作は例外的な研究を除き殆どなされていない。また、クローン個体作製技術も報告がない。このため、他の家畜や動物で行われている遺伝子操作技術を家禽に適用することは実現困難である。一方、家禽においては、将来精子や卵子に分化する始原生殖細胞を株化し、遺伝子改変を行う試みがなされている。特殊なことに家禽だけが配偶子分化能を保持した始原生殖細胞の株化に成功しており、ヒトやマウス、家畜を始めとする様々な哺乳動物では達成されていない。一方、家禽始原生殖細胞株は遺伝子導入や外来遺伝子発現が極めて困難であったり、培地に用いる血清が異なると樹立できないなど樹立効率が著しく不安定で低かったり、雌始原生殖細胞株が樹立出来なかったり、樹立できても長期間培養を維持できない等、他の培養細胞株と大きく異なった性質を数多く有している(非特許文献1−3)。このため、他の生物の培養細胞株で得られた知見や技術を家禽始原生殖細胞株に適用することは難しく、始原生殖細胞株に適した方法を開発しなければならない。実際、最初の家禽始原生殖細胞遺伝子改変が行われてから現在までになされた始原生殖細胞培養や遺伝子操作の報告もごくわずかに限られている。また、近年初期胚や培養細胞などでなされているゲノム編集技術なども家禽始原生殖細胞株には適用されていない。ゲノム編集は外来遺伝子を染色体に残さない遺伝子ノックアウトや、外来遺伝子を標的部位に挿入するノックインを可能にするため、家禽への適用が望まれるが、これを可能にする技術的な報告はなされていない。特に遺伝子改変家禽個体を作製するためには、高効率の遺伝子ノックアウトやノックインが必要であるが、一般的な哺乳類の培養細胞であってもゲノム編集による遺伝子改変の効率はばらつきが大きく、まして哺乳類の培養細胞と大きく性質の異る家禽始原生殖細胞株ではどのように効率化を達成すべきかも予見出来ない。
さらに、家禽の雄始原生殖細胞株が長期間培養可能なのに対し、雌始原生殖細胞株は樹立や培養が著しく困難とされてきた。例えば非特許文献2では雌始原生殖細胞株の樹立に失敗しているし、非特許文献3では、100日程度の培養後、雌始原生殖細胞株の維持が不能になるなどの報告がある。このため、雌始原生殖細胞株を用いた遺伝子操作はこれまで報告がなされていない。
多くの問題点や改善すべき課題は残るものの、始原生殖細胞株を用いることで家禽の遺伝子改変が可能になってきたが、雄始原生殖細胞株のみ遺伝子改変可能という現状は、遺伝子改変個体を作製する上で効率上の大きな問題がある。現在の始原生殖細胞株を用いた遺伝子改変個体の作製は、雄始原生殖細胞を遺伝子改変し、レシピエント胚に移植後これを孵化させ、雄のキメラ個体(G0)を半年程度の飼育により性成熟後、これを野生型の雌と交配し、この後代(F1)にヘテロ型の組換え個体を得るものである。さらにホモ型を得ようとする場合、ヘテロ型の雌雄F1個体を性成熟させ、ヘテロ型の組換え後代同士を交配する必要があり、多大な時間と労力が必要であった。
ニワトリの遺伝子ノックアウトについては非特許文献4にあるように、雄始原生殖細胞を用いた相同組換えによる報告が1例のみあるが、相同組換えによる外来遺伝子を挿入する方法であるため、当該技術を用いて遺伝子ノックアウトを行った場合、ニワトリ自体や鶏卵が組換え産物となるため、食品として活用する場合の障壁が高く、相同組換え以外の方法による遺伝子ノックアウト技術が求められる。
また、非特許文献4にある相同組換え技術を活用して標的とする遺伝子座に外来遺伝子をノックインすることは技術的に可能であるが、非特許文献4の方法では相同組換えが28%程度の細胞で認められ、クローン樹立は107細胞に1クローン程度と限定的なこと、相同組換えだけでなく、ランダムな遺伝子導入が多く生じている可能性が否定出来ないこと、さらには生殖系列への分化能が著しく悪く、平均して後代900羽に1羽しか相同組換え個体が得られないことが記されている。これら欠点を克服し、より効率よく標的とする遺伝子座に外来遺伝子をノックインする技術が開発されれば、遺伝子ノックインニワトリをより簡便に樹立することが可能となる。例えば組換え導入効率を3倍以上(28%を84%程度以上)改善できれば組換え後代を得る効率も3倍以上改善し、後代300羽に1羽以上の組換え個体が得られると予想されるし、クローン樹立効率を100倍程度改善すれば105細胞に1クローン程度のノックイン始原生殖細胞を得られると考えられる。
Leighton PA, van de Lavoir MC, Diamond JH, Xia C, Etches RJ: Genetic modification of primordial germ cells by gene trapping, gene targeting, and phiC31 integrase. Mol Reprod Dev 2008, 75(7):1163-1175 Macdonald J, Glover JD, Taylor L, Sang HM, McGrew MJ: Characterisation and germline transmission of cultured avian primordial germ cells. PLoS One 2010, 5(11):e15518. van de Lavoir MC, Diamond JH, Leighton PA, Mather-Love C, Heyer BS, Bradshaw R, Kerchner A, Hooi LT, Gessaro TM, Swanberg SE et al: Germline transmission of genetically modified primordial germ cells. Nature 2006, 441(7094):766-769. Schusser B, Collarini EJ, Yi H, Izquierdo SM, Fesler J, Pedersen D, Klasing KC, Kaspers B, Harriman WD, van de Lavoir MC et al: Immunoglobulin knockout chickens via efficient homologous recombination in primordial germ cells. Proc Natl Acad Sci U S A 2013, 110(50):20170-20175.
本発明は、効率的な家禽の遺伝子改変技術を提供することを主な目的とする。
本発明は、以下の家禽始原生殖細胞の遺伝子改変方法、遺伝子改変された家禽の生産方法、雌始原生殖細胞の継代培養方法及びノックイン家禽卵を提供するものである。
項1. 家禽始原生殖細胞の遺伝子をゲノム編集により改変することを特徴とする、家禽始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
項2. 前記家禽始原生殖細胞が雌始原生殖細胞である、項1に記載の遺伝子改変方法。
項3. 前記遺伝子が卵内タンパク質遺伝子である、項1又は2に記載の遺伝子改変方法。
項4. TALEN又はCRISPRを用いたゲノム編集により遺伝子が改変される、項1〜3のいずれか1項に記載の遺伝子改変方法。
項5. CRISPRを用いたゲノム編集により遺伝子が改変される、項4に記載の遺伝子改変方法。
項6. 遺伝子の改変が遺伝子のノックイン、ノックアウトまたは部分欠失である、項1〜5のいずれか1項に記載の遺伝子改変方法。
項7. 前記遺伝子をノックインにより改変し、前記家禽始原生殖細胞に薬剤耐性遺伝子を組み込み、前記薬剤耐性遺伝子に基づき遺伝子改変された始原生殖細胞を選別することを特徴とする、項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子改変方法。
項8. 前記遺伝子をノックアウト又は部分欠失により改変し、前記家禽始原生殖細胞に薬剤耐性遺伝子を導入し、前記薬剤耐性遺伝子に基づき遺伝子改変された始原生殖細胞を選別することを特徴とする、項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子改変方法。
項9. 薬剤耐性遺伝子がピューロマイシン耐性遺伝子(Puror)又はゼオシン耐性遺伝子(Zeor)である、項7又は8に記載の遺伝子改変方法。
項10. ゲノム編集をプラスミドベクター又はウイルスベクターを用いて行う、項1〜9のいずれか1項に記載の遺伝子改変方法。
項11. プラスミドベクター又はウイルスベクターを家禽初期胚に導入して内在性の始原生殖細胞のゲノム編集を行い内在性の家禽始原生殖細胞の遺伝子改変を行う、項10に記載の遺伝子改変方法。
項12. 項1〜10のいずれかに記載の遺伝子改変方法により得られた、ゲノム編集により遺伝子改変された家禽始原生殖細胞。
項13. 雌始原生殖細胞である、項12に記載の家禽始原生殖細胞。
項14. 項1〜10のいずれかの方法により得られた遺伝子改変された家禽始原生殖細胞を家禽初期胚の胚盤葉、血液中もしくは生殖巣領域に移植して遺伝子改変キメラ個体を得る工程、このキメラ個体を性成熟して野生型個体、遺伝子改変個体或いは遺伝子改変キメラ個体と交配する工程を含む、遺伝子改変家禽の生産方法。
項15. 項11に記載の方法により遺伝子改変された内在性の家禽始原生殖細胞を含むキメラ個体を性成熟して野生型個体、遺伝子改変個体或いは他の遺伝子改変キメラ個体と交配する工程を含む、遺伝子改変家禽の生産方法。
項16. 遺伝子改変された家禽のジェノタイプが変異型ホモ(-/-)である、項14又は15に記載の方法。
項17. 遺伝子改変がオボアルブミン、オボムコイド、オボムチン、オボトランスフェリン、オボインヒビターからなる群から選ばれる少なくとも1種の卵内タンパク質遺伝子のノックアウトである、項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
項18. 遺伝子改変が卵内タンパク質遺伝子における外来遺伝子のヘテロ又はホモのノックインであり、雌の遺伝子改変家禽の卵が外来遺伝子の発現産物を含む項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
項19. 項17に記載の方法により生産された雌の遺伝子改変家禽から得られる、オボアルブミン、オボムコイド、オボムチン、オボトランスフェリン、オボインヒビター、オボグロブリン、リゾチームからなる群から選ばれる少なくとも1種の卵内アレルゲンタンパク質が低減又は消失されたノックアウト家禽卵。
項20. 項18に記載の方法により生産された雌の遺伝子改変家禽から得られる、外来遺伝子の発現産物を含むノックイン家禽卵。
項21. 外来遺伝子がヒト由来のタンパク質をコードする遺伝子である、項20に記載のノックイン家禽卵。
項22. 外来遺伝子が抗体又はその断片、酵素、ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターフェロン、コラーゲン、細胞外マトリクス分子、ワクチン、アゴニスト性タンパク質、アンタゴニスト性タンパク質からなる群から選ばれる、項20又は21に記載のノックイン家禽卵。
項23. 雌始原生殖細胞の継代培養方法であって、培地の交換を常圧下もしくは低重力加速度下に行うことを特徴とする、雌始原生殖細胞の継代培養方法。
本発明によれば、ゲノム編集により効率よく家禽始原生殖細胞の遺伝子改変を行うことができる。ノックアウトについてはPuror、Zeorなどを用いることにより90%以上の効率で標的配列に変異導入が可能であり、ノックインについては組換え導入効率80〜90%以上で1〜5x105細胞に1系統以上の効率でクローンを樹立可能である。遺伝子は、オボムコイドやオボアルブミンなどアレルゲンの場合にはノックアウトすることでアレルゲンを含まない卵を生産できる。また、オボムコイド又はオボアルブミン遺伝子など卵内タンパク質遺伝子に有用な外来遺伝子をノックインすることで、有用な遺伝子産物を多量に含む卵を産生できる。
ゲノム編集技術を家禽始原生殖細胞の卵内タンパク質遺伝子に適用して得られた家禽卵は、オボムコイドやオボアルブミンなどの遺伝子をホモ欠損型にすることにより、アレルゲン性の高いタンパク質を卵白より除去することができる。また、卵管プロモーターの制御下に外来遺伝子をノックインすることで卵内に外来遺伝子の発現産物を有する家禽卵を得ることができる。
本発明により得られる遺伝子改変された家禽始原生殖細胞は、レシピエント胚に移植後これを孵化させ、キメラ個体(G0)を得、必要に応じてこれを交配させるなどの常法に従い遺伝子が改変された家禽を得ることができる。ゲノム編集により遺伝子改変された始原生殖細胞は、遺伝子改変の効率が高いだけでなく、レシピエント胚に移植後キメラ個体を得て、これを交配させ後代を得た場合、平均して後代1.7〜2.3羽に1羽(ノックアウトおよび部分欠損)、3.5〜3.8羽に1羽(ノックイン)の高い確率で遺伝子改変個体が得られる。なお、キメラ個体は後代ではなく、キメラ個体の次の代が「後代」である。後代の中には移植始原生殖細胞(ドナー)由来の遺伝子改変個体(組換え個体)と移植始原生殖細胞(ドナー)由来の野生型個体(非組換え個体)および内在性始原生殖細胞由来の野生型個体が存在するが、本発明では遺伝子改変個体の割合が非常に高いことが特徴である。始原生殖細胞のゲノム編集の効率が非常に高いことに加え、ゲノム編集により遺伝子改変された始原生殖細胞は、生殖系列への分化能が非常に高いために高い確率で遺伝子改変個体が得られたものである。また、従来の雌始原生殖細胞は100日程度の培養で死滅するような増殖能力の弱いものであり、遺伝子改変した雌始原生殖細胞の生殖系列への分化能も非常に弱いと考えられる。遺伝子改変された雌のキメラ個体はゲノム編集を用いた本発明で初めて得ることができた。本発明の遺伝子改変技術は、高効率な遺伝子のノックアウトが可能であるので、標的遺伝子を破壊することにより、ウイルス受容体タンパク質や糖鎖改変、欠失による高病原性トリインフルエンザ等への抗病性家禽の開発や摂食抑制ホルモンの改変、欠失により摂食抑制が働かず、短期間で肥大する肉用家禽、あるいは成長ホルモン系遺伝子の変異、欠失による低成長の愛玩用家禽等の効率よい開発にもつながり得る。
オボムコイドやオボアルブミンなどの卵管プロモーター下に外来遺伝子をノックインすることにより、位置効果によるサイレンシングなどの影響を受けずに卵内に外来遺伝子由来タンパク質を高発現させ、安価なタンパク質生産につながりうる。また、従来行われてきた鶏卵バイオリアクター技術よりも効率良く外来遺伝子由来タンパク質を発現可能と強く期待される。
さらに、雌始原生殖細胞株を長期培養し、遺伝子改変することで雌の遺伝子改変G0キメラを樹立可能で、雄の遺伝子改変G0キメラと交配することで短期間にホモ型の遺伝子改変個体を樹立し得る。これにより、ホモ型のノックアウト家禽やノックイン家禽の樹立期間を大幅に短縮することが出来る。更に、遺伝子改変G0ニワトリ(キメラ個体)同士の交配を可能にすることで、従来より大幅に早く、様々な組み合わせの遺伝子改変ニワトリ(F1以降)を後代に樹立し得る。また、家禽はWZ型の性染色体を有するため、従来不可能であった雌にしか存在しないW染色体上遺伝子のノックアウトやW染色体上へのノックインを可能にし、伴性型の表現型を人為的に付与することを可能にする。
ニワトリオボアルブミン遺伝子の標的配列(2ヶ所, OVATg1とOVATg3の標的配列)。大文字がsgRNA認識部位、隣接する下線部がPAM配列を示す ニワトリオボムコイド遺伝子の標的配列(4ヶ所, OVMTg2, OVMTg3, OVMTg5, OVMTg6の標的配列)大文字がsgRNA認識部位、隣接する下線部がPAM配列を示す。OVMTg5はイントロン領域を含む(斜線がイントロン/エキソンの境界) CRISPRによるオボアルブミン遺伝子破壊例 大文字(下線)がsgRNA認識部位、隣接する囲い部分がPAM配列を示す 変異した配列の欠失部は-(ハイフン)、変異部は大文字で表記 OVATg1のMetは翻訳開始部位を示す。 CRISPRによるオボムコイド遺伝子破壊例 大文字(下線)がsgRNA認識部位、隣接する囲い部分がPAM配列を示す OVMTg5配列ではイントロン/エキソンの境界部を/(スラッシュ)で表記 変異した配列の欠失部は-(ハイフン)、変異部は大文字で表記 上段:オボムコイド遺伝子が破壊されたニワトリの例。写真の移植始原生殖細胞由来ニワトリ(黒)のオボムコイド遺伝子は片アレルで図2のTg2領域の5塩基が欠損している。ニワトリゲノムの当該領域をセンス側、アンチセンス側それぞれから塩基配列を解析した結果を示す。下段:ニワトリ個体に認められたオボムコイド遺伝子の変異例(F1ニワトリ)。1から31塩基の欠損が認められた。 オボアルブミン遺伝子座への外来遺伝子(EGFPドナーコンストラクト)ノックインとゲノムPCRによるノックインの証明。プライマー1(P1)〜プライマー8(P8)は以下の配列に対応 P1:配列番号27、P2:配列番号29、P3:配列番号28、P4:配列番号26、P5:配列番号30、P6:配列番号32、 P7:配列番号33、P8:配列番号31 Nested PCRの結果、ノックイン始原生殖細胞(PGCs)由来ゲノムにのみ想定サイズの増幅産物を認める(写真、矢印) オボアルブミン遺伝子座への外来遺伝子ノックインとゲノム定量PCRによるノックイン効率の検定 プライマー1(P1)〜プライマー3(P3)は以下の配列に対応。 P1:配列番号34、P2:配列番号35、P3:配列番号36 OVA(ATG)定量の結果、ノックイン始原生殖細胞(PGCs)では90%以上のオボアルブミン遺伝子座にドナーコンストラクトがノックインされている。また、OVA5’の結果、ランダムな挿入は殆ど無いと考えられる オボアルブミン遺伝子座へのヒトインターフェロンβ遺伝子ノックインとゲノムPCRによるノックインの証明。プライマー1(P1)〜プライマー8(P8)は以下の配列に対応P1:配列番号27、P2:配列番号29、P3:配列番号41、P4:配列番号40、P5:配列番号30、P6:配列番号32、 P7:配列番号33、P8:配列番号31 Nested PCRの結果、ノックイン始原生殖細胞(PGCs)由来ゲノムにのみ想定サイズの増幅産物を認める(写真、矢印) キメラニワトリ精子におけるオボアルブミン遺伝子座へのヒトインターフェロンβ遺伝子ノックインの証明。4羽のキメラニワトリ(411〜414)、1羽のネガティブコントロールニワトリ(416、NC)の精液ゲノム及びノックイン細胞(PCIFNKI#4)ゲノムを配列番号30と31(3’UTR)、配列番号27と40(5’OVAp_out-IFN)、配列番号27と36(5’OVAp_out-OVA(ATG)のプライマーを用いて増幅した。予期されるサイズに出現したバンドを*で示す。411,412においてポジティブコントロールと同程度の相対強度のノックインシグナルを認める。 オボアルブミン遺伝子座にヒトインターフェロンβ遺伝子がノックインされたニワトリ。図7Bの411と412の後代ニワトリ(雌)の写真および、後代血液由来ゲノムをPCR解析し、オボアルブミン遺伝子座にIFNドナーコンストラクトがノックインされたことを示す。野生型(WT:ネガティブコントロール(NC))ニワトリの羽軸(Shaft)由来ゲノム、ノックイン後代(KI)ニワトリの羽軸(Shaft)由来ゲノム及びノックイン細胞(KI PGC:ポジティブコントロール(PC))由来ゲノムを配列番号30と31(ノックイン3’領域)、配列番号27と40(ノックイン5’領域)、配列番号27と36(内在性オボアルブミン)のプライマーを用いて増幅した。予期されるサイズに出現したバンドを*で示す。411,412後代においてポジティブコントロールと同パターンのシグナルを認め、後代ニワトリのオボアルブミン遺伝子座にIFNドナーコンストラクトがノックインされたと判断できる。 ニワトリオボアルブミン遺伝子の標的配列(2ヶ所, OVATg1とOVATg2の標的配列)。大文字がsgRNA認識部位、隣接する下線部がPAM配列を示す。 ニワトリ始原生殖細胞オボアルブミン遺伝子座への遺伝子ノックインの効率化。導入群1と導入群2ではノックインの効率は変わっておらず、細胞数は導入群2の方が多いことから、導入群2の導入法がより好ましい。導入群2と導入群3では導入群3の方がノックイン効率が高いと考えられ、導入群3の導入法がより好ましい。 オボアルブミン遺伝子座へのヒト免疫グロブリン遺伝子ノックインとゲノムPCRによるノックインの証明。プライマー1(P1)〜プライマー8(P8)は以下の配列に対応 P1:配列番号27、P2:配列番号29、P3:配列番号44、P4:配列番号43、P5:配列番号30、P6:配列番号32、 P7:配列番号33、P8:配列番号31 Nested PCRの結果、ノックイン始原生殖細胞(PGCs)由来ゲノムにのみ想定サイズの増幅産物を認める(写真、矢印)。 オボアルブミン遺伝子座へのヒトコラーゲン遺伝子ノックインとゲノムPCRによるノックインの証明。プライマー1(P1)〜プライマー8(P8)は以下の配列に対応 P1:配列番号27、P2:配列番号29、P3:配列番号44、P4:配列番号43、P5:配列番号30、P6:配列番号32、 P7:配列番号33、P8:配列番号31 Nested PCRの結果、ノックイン始原生殖細胞(PGCs)由来ゲノムにのみ想定サイズの増幅産物を認める(写真、矢印)。 雌始原生殖細胞(PGCs)の長期培養とゲノムPCRによる細胞の雌雄判定。CHD(chromo-helicase-DNA binding protein)遺伝子増幅により雌雄判別が可能で、培養始原生殖細胞が雌の核型であることが示された。 雄始原生殖細胞(培養約4ヶ月)、本法による雌始原生殖細胞(培養約3ヶ月)、常法による雌始原生殖細胞(継代時遠心操作あり、培養約40日)の細胞数増加の比較。培養8日後にそれぞれ12.2倍、4.0倍、0.9倍の細胞数を認めた。 本法により培養した雌始原生殖細胞由来の後代(矢印)と同親由来のレシピエント由来の後代(後方、黒色羽毛の3羽) 雌始原生殖細胞への安定遺伝子導入とニワトリ初期胚血液移植後の生殖巣(卵巣)への定着 雌始原生殖細胞におけるアレルゲン遺伝子破壊例 大文字(下線)がsgRNA認識部位、隣接する囲い部分がPAM配列を示す 変異した配列の欠失部は-(ハイフン)、変異部は大文字で表記 オボアルブミンのOVATg3領域とオボムコイドのOVMTg2領域を標的としてそれぞれ遺伝子破壊 雌始原生殖細胞のオボアルブミン遺伝子座への外来遺伝子(EGFPドナーコンストラクト)ノックインとゲノムPCRによるノックインの証明。プライマー1(P1)〜プライマー8(P8)は以下の配列に対応 P1:配列番号27、P2:配列番号29、P3:配列番号28、P4:配列番号26、P5:配列番号30、P6:配列番号32、 P7:配列番号33、P8:配列番号31 Nested PCRの結果、ノックイン始原生殖細胞(PGCs)由来ゲノムにのみ想定サイズの増幅産物を認める(写真、矢印) 雌始原生殖細胞のオボアルブミン遺伝子座へのヒトインターフェロンβ遺伝子ノックインとゲノムPCRによるノックインの証明。プライマー1(P1)〜プライマー8(P8)は以下の配列に対応 P1:配列番号27、P2:配列番号29、P3:配列番号41、P4:配列番号40、P5:配列番号30、P6:配列番号32、 P7:配列番号33、P8:配列番号31 Nested PCRの結果、ノックイン始原生殖細胞(PGCs)由来ゲノムにのみ想定サイズの増幅産物を認める(写真、矢印)
本発明では、家禽の始原生殖細胞の遺伝子をゲノム編集により改変する。
ゲノム編集は、2本鎖DNAの切断とその修復のエラーを利用して遺伝子改変を行う技術であり、標的の2本鎖DNAを切断できるヌクレアーゼ、前記ヌクレアーゼと結合もしくは複合化したDNA認識成分を使用することができる。ゲノム編集としては、ZFN(zinc finger nuclease)、TALEN、CRISPRが挙げられる。例えば、ZFNでは、FokI(ヌクレアーゼ)とジンクフィンガーモチーフ(DNA認識成分)が用いられ、TALENでは、FokI(ヌクレアーゼ)とTALエフェクター(DNA認識成分)が用いられ、CRISPRでは、Cas9(ヌクレアーゼ)とguide RNA(gRNA, DNA認識成分)が用いられる。ゲノム編集に用いられるヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性を有していればよく、ヌクレアーゼ以外にDNAポリメラーゼ、リコンビナーゼなどを用いることもできる。
家禽としては、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、オナガドリ、チャボ、ハト、ダチョウ、キジ、ホロホロチョウなどが挙げられ、好ましくはニワトリ、ウズラなどが挙げられる。
始原生殖細胞は雄と雌のいずれでもよい。従来、雌の始原生殖細胞の遺伝子改変は細胞培養が100日程度しか実現できていないため難しいとされていたが、本発明では、培地の交換を常圧下もしくは低重力加速度下において、好ましくは遠心分離を行わずに上清を分離して培養することで、280日を超える期間の雌の始原生殖細胞の培養に成功した。
このような長期間の培養が可能になったことから遺伝子改変始原生殖細胞を移植した雌の家禽成体(雌の遺伝子改変キメラ個体)の生産が可能になった。図11Bに示すように、雄始原生殖細胞は、培地の交換時に遠心操作を加えても増殖能力が高いが、雌始原生殖細胞は培地交換のたびに遠心操作を行うとほとんど増殖せず、キメラ個体を得ることは実質的に困難であるが、培地交換時の遠心操作を抑制することで増殖能力を維持でき、キメラ個体を得ることができる。
ニワトリなどの家禽始原生殖細胞は浮遊性の細胞であり、BRL細胞やSTO細胞などのフィーダー細胞存在下で培養される。継代に際しては例えば非特許文献3に記されているように、数日おきに始原生殖細胞を培地ごと遠心チューブに移し、300g, 5分程度の遠心により細胞を沈殿させ、培地に再懸濁後細胞を播種するのが一般的である。この方法を用いることで雄始原生殖細胞は長期の継代が可能であるが、雌始原生殖細胞の継代は困難であり(図11B)、例えば非特許文献3によれば、独立した2系統の雌始原生殖細胞が樹立されたがそれぞれ109日、77日を超えて維持することが不可能となったと記されている。維持が不可能になるとは、雌始原生殖細胞の大部分が死滅した状態である。雌始原生殖細胞を長期間維持する方法として、より穏やかな培地の回収法を適宜行うことにより、280日を超えて雌始原生殖細胞を培養可能なことを見出した。より穏やかな回収法とはすなわち、継代時に雌始原生殖細胞に加える重力加速度を300g未満、好ましくは270g以下、より好ましくは200g以下、さらに好ましくは100g以下、特に好ましくは50g以下、最も好ましくは1g(常圧)の低重力加速度下で培養を行うことである。また、適宜とは1ヶ月に1回以上、好ましくは一週間に1回以上、より好ましくは2回以上を示しており、これを行う限りにおいて、場合によっては例外的に雄始原生殖細胞と同様に300gを超える重力加速度を雌始原生殖細胞に加えても良い。雌始原生殖細胞は重力加速度の負荷に感受性であり、重力加速度の負荷は増殖能力を維持可能な範囲で行う。例えば、実施例では、培地交換時の遠心操作による重力加速度(300g)の負荷は、1週間に1回までであれば雌始原生殖細胞による増殖能力は維持できる。当業者はこのことを参考にして、増殖能力が維持可能な重力加速度の負荷とその頻度を決定できる。
ゲノム編集により改変される遺伝子としては、オボアルブミン、オボムコイド、オボムチン、オボトランスフェリン、オボインヒビター、オボグロブリン、リゾチームなどの卵内タンパク質、特に卵白タンパク質、色素細胞刺激ホルモン、レプチン、コカイン−アンフェタミン調節転写産物などの摂食抑制性タンパク質、成長ホルモンやその受容体などの成長促進性タンパク質、鳥類感染性ウイルスが認識する膜タンパク質や糖鎖を合成する糖付加酵素(例えばシアル酸転移酵素群)などをコードする遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子の機能は遺伝子のゲノム編集により低下又は欠失され得る。
ゲノム編集により遺伝子機能はノックアウトにより消失するか、部分欠失により低下又は消失する。ゲノム編集により、遺伝子の少なくとも1つの塩基が欠失もしくは挿入する場合、フレームシフトにより遺伝子機能は消失する場合があり(ノックアウト)、フレームシフトが起こらない場合には一部のアミノ酸が欠失(部分欠失)して機能が低下又は消失し得る。また、欠失や置換によって終止コドンが生じることもある(ノックアウト)。
ゲノム編集により外因性遺伝子をノックインする場合、外因性遺伝子がオボアルブミン、オボムコイド、オボインヒビター、オボグロブリン、リゾチーム、オボムチン、オボトランスフェリンなどの卵内タンパク質遺伝子座にノックインされると、卵内タンパク質の代わりに外因性遺伝子の発現産物を含む卵が得られるので好ましい。このような外因性遺伝子の発現産物であるタンパク質としては、様々な分泌性のタンパク質やペプチドが考えられ、抗体(モノクローナル抗体)又はその断片(例えばscFv、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、一本鎖抗体、scFv、dsFvなど)、酵素、ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターフェロン、コラーゲン、細胞外マトリクス分子、ワクチンなどの機能性ポリペプチド、アゴニスト性タンパク質、アンタゴニスト性タンパク質などが挙げられる。外因性遺伝子がコードするタンパク質は、ヒトに投与する医薬になり得る生理活性タンパク質の場合、哺乳動物由来、好ましくはヒト由来である。また、プロテインAや蜘蛛の糸を構成するタンパク質などの工業的に使用可能なタンパク質の場合、微生物(細菌、酵母など)、植物、動物を含む任意の生物由来のタンパク質、あるいは人工的なタンパク質をコードする外因性遺伝子が挙げられる。
また、ゲノム編集により蛍光分子等の遺伝子を細胞特異的プロモーター、組織特異的プロモーターの制御下にノックインすることで、特定の細胞や組織だけで蛍光タンパク質が発現するため、発生機構の解明に有用な実験用ニワトリ胚やニワトリ個体を作成できる。
ゲノム編集としては、ジンクフィンガー、TALEN、CRISPRなどが挙げられ、TALEN、CRISPRが好ましく、CRISPRがより好ましい。ゲノム編集の方法は次々に開発されてきており、これらに限定されず、今後開発されるゲノム編集方法は全て本発明で使用可能である。
ゲノム編集によりノックインを行う場合、薬剤耐性遺伝子を有用な外因性遺伝子とともにゲノムに安定的に組み込み、それによりノックインされた始原生殖細胞を選別するのが好ましい。薬剤耐性遺伝子としては、ネオマイシン耐性遺伝子(Neor)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(Hygr)、ピューロマイシン耐性遺伝子(Puror)、ブラストサイジン耐性遺伝子(blastr)、ゼオシン耐性遺伝子(Zeor)などが挙げられ、ネオマイシン耐性遺伝子(Neor)あるいはピューロマイシン耐性遺伝子(Puror)が好ましい。
ゲノム編集を行い遺伝子機能をノックアウトにより消失するか、部分欠失により低下又は消失させる場合、上記薬剤耐性遺伝子をゲノム編集を行う際の遺伝子導入時に始原生殖細胞に導入し、薬剤耐性遺伝子に基づき選別することが好ましい。薬剤耐性遺伝子の導入と薬剤選択は安定的でも一過的でも良く、ノックアウトや部分欠失の場合一過的が望ましい。薬剤耐性遺伝子は上記のものなどが挙げられ、ピューロマイシン耐性遺伝子(Puror)あるいはゼオシン耐性遺伝子(Zeor)が好ましい。薬剤耐性遺伝子はジンクフィンガー、TALEN、CRISPRプラスミドと独立した形でも、プラスミドに組み込まれる形でも良く、薬剤耐性遺伝子がゲノム編集の為のプラスミドに組み込まれる形が好ましい。
1つの実施形態において、本発明の遺伝子改変方法により得られた、遺伝子改変された家禽始原生殖細胞から常法に従い遺伝子改変された家禽を生産することができる。具体的な手順を以下に示す。
遺伝子改変された始原生殖細胞をレシピエント初期胚の胚盤葉、血液中もしくは生殖巣領域に移植する。好ましくは孵卵後2〜3日程度、血流循環開始前後の時期の血流中に数百から数千個程度の細胞を顕微注射により移植する。また、移植前にレシピエントの内在性の始原生殖細胞を薬剤や電離放射線により予め不活化させたり、数を減らしても良い。移植胚を常法に従って孵卵操作を継続し、移植個体を孵化させる。移植、孵化操作は卵殻の変更を含むシステム培養であっても、卵殻の変更を行わない窓開け法でも良い。孵化した個体は通常の飼育により生体(キメラ個体)として性成熟させることが出来る。これを野生型もしくは遺伝子改変個体あるいは遺伝子改変キメラ個体と交配することにより移植細胞由来の遺伝子改変の生じた家禽を後代として生産できる。本発明で得られるゲノム編集された始原生殖細胞は増殖能力が高く、キメラ個体において数多くの受精能力の高い精子或いは卵子になる。この際、効率を上げるために、配偶子のゲノムに含まれる遺伝子改変の頻度を調査し、移植細胞の寄与率を評価した上で交配試験を行ったり、後代の羽毛色による判定を行ったりしてもよい。遺伝子改変された雌始原生殖細胞を移植した雌キメラ家禽と雄始原生殖細胞を移植した雄キメラ家禽交配させることで、ホモ型の遺伝子改変家禽を得ることができる。また、家禽個体内に限らず、将来in vitroで始原生殖細胞を生殖細胞に分化させる等の技術が開発された場合には、これを用いた人工受精や顕微授精により遺伝子改変された家禽を生産することができる。
図2、図4A、図4B、図13において、OVMTg2のPAM配列は「agg」であるが、ニワトリのオボアルブミンのOVMTg2に対応する配列はNCBIのデータベースで2種類あり、OVMTg2の配列は、TTTCCCAACGCTACAGACA(t or a)ggと表記し得る。本発明は、このような多型を全て包含する。
本発明の他の実施形態において、ゲノム編集は始原生殖細胞の培養を経由せずに、初期胚に各種ウイルスベクターを感染させて或いはプラスミドベクターをリポソーム複合体として初期胚血液中に注入することで、内在性の始原生殖細胞を遺伝子操作し、キメラ個体及び組換え後代を樹立してもよい。ゲノム編集により得られる始原生殖細胞は遺伝子改変効率が高く、かつ、家禽の組み換え後代や遺伝子改変後代を得るのに十分高い生殖能力を有しており、この実施形態においても有用である。本実施形態においては、始原生殖細胞の培養操作を伴うことなく(内在性の)始原生殖細胞の遺伝子改変が可能である。
ゲノム編集による遺伝子操作に用いるウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。これらのウイルスベクターは、培養始原生殖細胞あるいは内在性の始原生殖細胞のゲノム編集のいずれにも使用できる。
例えば、内在性の始原生殖細胞をゲノム編集を用いて改変するには、各社から販売されているゲノム編集用ウイルスベクターを用いて任意の標的配列を認識、切断するヌクレアーゼやsgRNAを発現するウイルスベクターを構築し、パッケージングにより感染可能な形態とし、家禽初期胚の胚盤葉、血液や生殖巣領域等始原生殖細胞の存在する場所に投与することで始原生殖細胞におけるゲノム編集を行い、後代に遺伝子改変個体や遺伝子改変産物を得ることが可能である。市販のゲノム編集用ウイルスベクターは国内外の多くの会社が販売しているが、例えばアデノ随伴ベクターを用いたTakara社の「AAVpro(登録商標) CRISPR/Cas9 Helper Free System (AAV2)」やレンチウイルスベクターを用いたSystem Biosciences, LLCの「Lentiviral CRISPR/ Cas9 System」などが挙げられる。遺伝子改変がノックインの場合、ゲノム編集に必要なウイルスベクターとノックインされる遺伝子を含むウイルスベクター、プラスミド等を併用することができる。
また、ウイルスベクターを使わない、あるいは併用する形態のゲノム編集用プラスミドやドナーコンストラクトをリポソーム複合体など細胞膜を透過可能な形態にし、家禽初期胚の胚盤葉、血液や生殖巣領域等始原生殖細胞の存在する場所に投与することで始原生殖細胞におけるゲノム編集を行い、後代に遺伝子改変個体や遺伝子改変産物を得ることが可能である。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
実施例1
(1)ニワトリ雄始原生殖細胞を用いたゲノム編集
(1−1)オボアルブミン(OVA)、オボムコイド(OVM)ノックアウトのための遺伝子構築
ニワトリ雄始原生殖細胞株を用い、オボアルブミンならびにオボムコイド遺伝子を標的としてCRISPR法により遺伝子破壊を行った。図1(オボアルブミン)、図2(オボムコイド)に示すようにそれぞれ2箇所(OVATg1、OVATg3)、4箇所(OVMTg2、OVMTg3、OVMTg5、OVMTg6)の標的部位の破壊を試みた。
図1に示すオボアルブミン遺伝子の標的配列(2箇所)を標的とし、CRISPR用プラスミドを構築した。
まず、配列番号5(OVATg3)を標的として配列番号6,配列番号7で示されるオリゴDNAを合成し、T4 Polynucleotide Kinaseを用いて5’末端をリン酸化した後、両者の混合液を98℃まで加熱し、室温までゆるやかに冷却することでアニールした。このDNA断片をプラスミドpx330(AddGENE,米国)のNotI部位に配列番号8のピューロマイシン耐性遺伝子ユニットを挿入したプラスミドpx330-Puror のBbsI切断部位に挿入した(px330-Puror-OVATg3)。また、px330-Puror-OVATg3のピューロマイシン耐性遺伝子ユニットを配列番号124のゼオシン耐性遺伝子ユニットに置き換えたプラスミドを構築した(px330-Zeor-OVATg3)。さらに、px330- Puror-OVATg3のピューロマイシン耐性遺伝子ユニットを配列番号4で示すネオマイシン耐性遺伝子ユニットに置き換えたプラスミドを構築した(px330-Neor-OVATg3)。加えて、配列番号1(OVATg1)を標的として配列番号2,配列番号3で示されるオリゴDNAを合成、リン酸化、アニールし、プラスミドpx330のNotI部位に配列番号4で示すネオマイシン耐性遺伝子ユニットを挿入したプラスミドpx330-NeorのBbsI切断部位に挿入した(px330-Neor-OVATg1)。
図2に示すオボムコイド遺伝子の標的配列(4箇所)を標的とし、CRISPR用プラスミドを構築した。配列番号9(OVMTg2)を標的として配列番号10と配列番号11で示されるオリゴDNAを合成し、リン酸化後、アニールし、プラスミドpx330-PurorのBbsI切断部位に挿入した(px330-Puror-OVMTg2)。さらにpx330-Puror-OVMTg2のピューロマイシン耐性遺伝子ユニットを配列番号124のゼオシン耐性遺伝子ユニットならびに配列番号4で示すネオマイシン耐性遺伝子ユニットに置き換えたプラスミドを構築した(px330-Zeor-OVMTg2ならびにpx330-Neor-OVMTg2)。さらに、配列番号12(OVMTg3)を標的として配列番号13と配列番号14、配列番号15(OVMTg5)を標的として配列番号16と配列番号17、配列番号18(OVMTg6)を標的として配列番号19と配列番号20でそれぞれ示されるオリゴDNAを合成し、リン酸化後、アニールし、それぞれのDNA断片をプラスミドpx330-NeorのBbsI切断部位に挿入した(px330-Neor-OVMTg3, px330-Neor-OVMTg5, px330-Neor-OVMTg6)。
(1−2)オボアルブミン、オボムコイド遺伝子ノックアウト
(1−2−1)一過的薬剤選択による変異導入の効率化
横斑プリマスロック雄胚血液中より採取し、株化したニワトリ雄始原生殖細胞(非特許文献3)に上述の遺伝子(プラスミド)を一過的に導入した。1×105〜5×105個の雄始原生殖細胞株をPBSで洗浄し、OPTI-MEMに懸濁後、3μlのリポフェクタミン2000(Life Technologies, 米国)を用いて1.6μgのpx330-Puror-OVATg3を遺伝子導入した。具体的には、リポフェクタミン2000とプラスミドを80μl OPTI-MEM中で混合し、雄始原生殖細胞株と混合後室温で5分程度静置し、その後抗生物質を含まない培地を500μl添加し、37℃で1〜4時間程度静置した上でフィーダー細胞上に播種した。遺伝子導入後2〜4日の間、ピューロマイシン(InvivoGen,米国)を終濃度1μg/mlで添加し、これを洗浄除去した後に1〜2週間の培養を行った。培養後に細胞を回収し、ゲノムDNAを抽出後、配列番号21,配列番号22で示されるオリゴDNAプライマーを用いたPCR法によりオボアルブミン遺伝子の一部領域を増幅し、TAベクター(pGEM-T Easy, Promega, 米国)にサブクローンし、配列番号5(OVATg3)を含む領域のゲノム塩基配列を解析した。解析した12クローン中12クローン全て(100%)においてオボアルブミン遺伝子の配列番号5(OVATg3)を含む領域で遺伝子の欠失が認められた。一方、対照群として薬剤選択を行わなかったものの遺伝子欠損は45クローン中3個のクローン(6.7%)にとどまった。これら変異の多くは翻訳時のフレームシフトを含んでいた。また、px330-Zeor-OVATg3を同様に遺伝子導入し、遺伝子導入後2〜4日の間、終濃度50μg/mlのゼオシン(InvivoGen,米国)存在下で培養し、洗浄後、1〜2週間の培養を行った細胞を用いて同様の遺伝子解析を行った結果、解析した12クローン中11クローン(92%)において遺伝子の欠失が認められた。OVATg3を含む領域に認められた遺伝子変異の例を図3に示す。
次に、オボムコイド遺伝子を標的とした同様の解析を行った。上述と同様に1×105〜5×105個の雄始原生殖細胞株にリポフェクタミン2000を用いてpx330-Puror-OVMTg2を1.6μg遺伝子導入し、導入後2〜4日の間、ピューロマイシンを終濃度1μg/mlで添加した。ピューロマイシンを洗浄除去した後に1〜2週間の培養を行ない、細胞を回収し、ゲノムDNAを抽出後、配列番号23,配列番号24で示されるオリゴDNAプライマーを用いたPCR法によりオボムコイド遺伝子の一部領域を増幅し、TAベクターにサブクローンし、配列番号9(OVMTg2)を含む領域のゲノム塩基配列を解析した。解析した23クローン中21クローン(91%)においてオボムコイド遺伝子の配列番号9(OVMTg2)を含む領域で遺伝子の欠失が認められた。一方、対照群として薬剤選択を行わなかったものの遺伝子欠損は24クローン中0個(0%)であった。また、px330-Zeor-OVMTg2を同様に遺伝子導入し、導入後2〜4日の間終濃度50μg/mlのゼオシン存在下で培養し、洗浄後1〜2週間培養した細胞においては解析した11クローン中10クローン(91%)において変異を認めた。OVMTg2を含む領域に認められた遺伝子変異の例を図4Aに示す。これらのことは家禽始原生殖細胞の遺伝子をゲノム編集する上で、薬剤耐性遺伝子導入と薬剤による一過的選択が変異の効率を顕著に上昇しうること、特にピューロマイシン耐性遺伝子とピューロマイシンによる薬剤選択もしくはゼオシン耐性遺伝子とゼオシンによる薬剤選択で高い変異効率が得られることを示している。
(1−2−2)オボアルブミン、オボムコイドの様々な領域に対する変異導入
オボアルブミン遺伝子の翻訳開始点を含む領域を標的としたpx330-Neor-OVATg1を上述の方法によりニワトリ始原生殖細胞に遺伝子導入後、導入後2〜4日の間ネオマイシン(G418二硫酸塩、ナカライテスク、日本)終濃度0.5mg/mlで選択し、1−2−1と同様の手法で標的領域を含むゲノム塩基配列を解析した。図3に示すように開始コドンの欠失、置換を含む変異を確認した。
また、オボムコイド遺伝子の様々な領域を標的として変異の導入を行った。オボムコイドタンパク質には強いアレルゲン性を持つと考えられるドメインが3箇所(ドメイン1〜ドメイン3)存在する。ドメイン1以降を欠失する目的でpx330-Neor-OVMTg3を、ドメイン1を残し、ドメイン2以降を欠失する目的でpx330-Neor-OVMTg5, px330-Neor-OVMTg6をそれぞれ上述の方法によりニワトリ始原生殖細胞に遺伝子導入後、上述と同様にネオマイシン選択し、ゲノム塩基配列を解析した。図4Aに示すようにいずれの遺伝子導入によってもアレルゲン遺伝子であるオボムコイドの標的部位を含む領域で遺伝子の欠損や置換、挿入が起こり、翻訳時のフレームシフトや終結を含む変異を確認した。このように始原生殖細胞を用いたゲノム編集技術により、様々な標的部位の変異に起因する遺伝子ノックアウトが可能である。
(1-3)ゲノム編集ニワトリの樹立
(1-2-1)に記載した要領で横斑プリマスロック種始原生殖細胞にpx330-Puror-OVMTg2を遺伝子導入し、薬剤選択した細胞を培養し、白色レグホン種2.5日胚(レシピエント胚)の血液中に顕微注射により移植を行った。移植に先立ち、レシピエント胚内在性の始原生殖細胞数を減少させる目的で孵卵操作前の受精卵に電離放射線を5Gyまたは6Gy照射した。電離放射線照射はガンマセル40(カナダ原子力公社)を用いたガンマ線照射により行った。
孵卵2.5日後、卵の突端側に直径2cm程度の窓を開けて胚を露呈し、ハンバーガーハミルトンステージ13から15までのレシピエント胚血液中に約1000〜5000個の薬剤選択済み細胞(1〜2μlのPBSに懸濁)を微小ガラス針を用いて移植した。窓をセロハンテープで密閉後、温度38.5℃、湿度60〜80%で培養し孵化させた(キメラヒヨコ(G0))。8羽の雄キメラヒヨコを性成熟させ、精液を採取した。精液よりゲノムDNAを抽出後、配列番号23,配列番号24で示されるオリゴDNAプライマーを用いたPCR法によりオボムコイド遺伝子の一部領域を増幅し、TAベクターにサブクローンし、配列番号9(OVMTg2)を含む領域のゲノム塩基配列を解析した。高頻度に変異の見られたキメラニワトリ#372,#376(いずれもサブクローンした11クローン中10クローンにオボムコイド遺伝子の変異が見られた)を野生型の横斑プリマスロック種雌と交配させ、それぞれの後代19羽中に11羽、14羽中に6羽のオボムコイド変異ニワトリ(ヒヨコ)を見出した。オボムコイド遺伝子変異の一例を図4B上段に示す。この個体ではオボムコイドタンパク質のシグナルペプチド直下部より変異を起こす5塩基の欠損が認められ、片アレルにオボムコイド遺伝子のフレームシフト変異を有している。また、オボムコイドゲノムの標的領域を中心に認められる代表的な変異(遺伝子欠損)の例を図4B下段に示した。ここに代表されるようなオボムコイドタンパク質のシグナルペプチド直下部よりフレームシフト変異を生じるオボアルブミンヘテロノックアウトの雌雄個体を複数得ており、これら個体を性成熟後交配することでオボムコイドのホモノックアウトニワトリ作出が可能である。
実施例2
(1)オボアルブミン遺伝子座への遺伝子ノックイン
雄ニワトリ由来始原生殖細胞を用いてゲノム編集による遺伝子ノックインを行った。オボアルブミン遺伝子の翻訳開始点に外来遺伝子(EGFP)を挿入することを目的とし、配列番号25に示されるドナーコンストラクト(EGFPドナーコンストラクト)を作製した。このEGFPドナーコンストラクトはオボアルブミン翻訳開始点の5’側約2.8kb、EGFP遺伝子、薬剤耐性遺伝子ユニット(PGK-Puror)、オボアルブミン翻訳開始点の3’側約3.0kbから構成される。このドナーコンストラクトをプラスミドpBlue ScriptII(SK+)(Stratagene,米国 現Agilent technologies)に挿入しpBS-EGFPドナーとした。 実施例1と同様に1×105〜5×105個の始原生殖細胞株にリポフェクタミン2000を用いてpx330-Neor-OVATg1を0.8μg、pBS-EGFPドナーを0.8μg同時に遺伝子導入し、導入後3日以降、ピューロマイシンを終濃度1μg/mlで添加した。適宜培地交換を行い、終濃度1μg/mlのピューロマイシン存在下で増殖する細胞を回収し、ゲノムDNAを調製した。
ドナーコンストラクトがオボアルブミン遺伝子座にノックインされていることをゲノムPCRにより確認した。5’領域についてドナーコンストラクトの外来遺伝子とドナーコンストラクトに含まれないオボアルブミンの5’領域に対するプライマーを用いたPCRを以下のように行った。配列番号26に示すEGFPに対するアンチセンスプライマーと配列番号27に示すオボアルブミン翻訳開始点の5’側約3.0kbの領域に対するセンスプライマーを用いてPCRを行い、さらに増幅産物に対して配列番号28に示すEGFPに対するアンチセンスプライマーと配列番号29に示すオボアルブミン翻訳開始点の5’側約2.85kbでドナーコンストラクトには含まれない領域に対するセンスプライマーを用いてPCRを行った(nested PCR)。図5に示すようにpx330-Neor-OVATg1と共にドナーコンストラクトを導入し、薬剤選択した始原生殖細胞(ノックインPGCs)由来ゲノムを鋳型とした場合、ドナーコンストラクトが挿入された際に期待される約2.9kの位置に増幅産物が認められるのに対し、対照の遺伝子導入を行っていない始原生殖細胞由来ゲノム(対照PGCs)を鋳型とした場合、増幅産物は認められない。
同様に、3’領域についてについてドナーコンストラクトの外来遺伝子とドナーコンストラクトに含まれないオボアルブミンの3’領域に対するプライマーを用いたゲノムPCRにより確認した。配列番号30に示す薬剤耐性遺伝子ユニットに対するセンスプライマーと配列番号31に示すオボアルブミン翻訳開始点の3’側約3.4kbの領域に対するアンチセンスプライマーを用いてPCRを行い、さらに増幅産物に対して配列番号32に示す薬剤耐性遺伝子ユニットに対するセンスプライマーと配列番号33に示すオボアルブミン翻訳開始点の3’側約3.2kbでドナーコンストラクトには含まれない領域に対するセンスプライマーを用いてPCRを行った(nested PCR)。図5に示すようにpx330-Neor-OVATg1と共にドナーコンストラクトを導入し、薬剤選択した始原生殖細胞(ノックインPGCs)由来ゲノムを鋳型とした場合、ドナーコンストラクトが挿入された際に期待される約3.4kの位置に増幅産物が認められるのに対し、対照の遺伝子導入を行っていない始原生殖細胞(対照PGCs)由来ゲノムを鋳型とした場合、増幅産物は認められない。以上のことから、薬剤選択された細胞集団の中に外来遺伝子部分を含むドナーコンストラクトがオボアルブミン遺伝子座にノックインされた細胞が存在すると考えられる。
(2)ノックイン効率の検定
次に、薬剤選択された細胞群にどの程度の割合でドナーコンストラクトがオボアルブミン遺伝子座にノックインされた細胞が存在するか検定した。薬剤選択された細胞群と遺伝子導入を行なっていない始原生殖細胞(対照PGCs)よりゲノムDNAをそれぞれ調製した。これを鋳型として配列番号34と配列番号35で示されるプライマーによる定量PCR(OVA5’)、配列番号34と配列番号36で示されるプライマーによる定量PCR(OVA(ATG))、配列番号37と配列番号38で示されるプライマーによる定量PCR(GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ))を行った。反応はTHUNDERBIRD qPCR Mix(東洋紡、日本)を使用し7300 Real Time PCR system (Applied Biosystems、米国)により解析した。図6に模式的に示すようにOVA5’のPCR産物はノックインされていないオボアルブミン遺伝子、ランダムに挿入されたドナーコンストラクト、ノックインされたドナーコンストラクトのいずれをも鋳型として増幅されうる。一方、OVA(ATG)のPCR産物はノックインされていないオボアルブミン遺伝子のみを鋳型とし、ランダムに挿入されたドナーコンストラクト、ノックインされたドナーコンストラクトを鋳型とした増幅は長い増幅領域のため、殆ど起こらない。GAPDHはゲノム量の内部標準として用いた。内部標準による補正を行った定量PCRの結果をグラフ化したものを図6に示す。OVA5’のPCR産物が薬剤選択された細胞群ゲノムと対照の始原生殖細胞ゲノムにおいて有意差が無いのに対し、OVA(ATG)のPCR産物は薬剤選択された細胞群ゲノムにおいて対照の十分の一以下となっている。OVA5’のPCR産物に有意差が無いことは、ドナーコンストラクトのノックイン以外のランダムな挿入が検出限界以下であることを示している。一方、OVA(ATG)のPCR産物が薬剤選択された細胞群ゲノムにおいて対照の十分の一以下となったことは、このゲノムのオボアルブミン遺伝子の9割以上でドナーコンストラクトがノックインされていることを示している。すなわち、薬剤選択された始原生殖細胞群において90%以上のオボアルブミン遺伝子がノックインコンストラクトによって置き換えられていると判断される。
実施例3
ヒトインターフェロン遺伝子ノックイン
(1)始原生殖細胞樹立へのノックインとノックインキメラニワトリの樹立
上記実施例2のEGFPドナーコンストラクトのEGFPの代わりに配列番号39に示されるヒトインターフェロンβ遺伝子を導入したドナーコンストラクト(IFNβドナーコンストラクト)を作製した。このドナーコンストラクトはオボアルブミン翻訳開始点の5’側約2.8kb、ヒトインターフェロンβ遺伝子、薬剤耐性遺伝子ユニット(PGK-Puror)、オボアルブミン翻訳開始点の3’側約3.0kbから構成される。このドナーコンストラクトをプラスミドpBlue ScriptII(SK+)に挿入しpBS-IFNβドナーとした。 上記pBS-EGFPドナーと同様の手法により雄ニワトリ始原生殖細胞にノックイン後ピューロマイシンで選択し、選択された細胞のゲノムを鋳型としてPCRを行なった。5’側は配列番号27のプライマーと配列番号40に示されるインターフェロンβに対するアンチセンスプライマーによるPCRの後、増幅産物に対して配列番号29のプライマーと配列番号41に示すインターフェロンβに対するアンチセンスプライマーを用いてPCRを行った(nested PCR)。3’側は上記EGFPドナーのノックイン時と同様に配列番号30と配列番号31に示すプライマーを用いたPCRの後、増幅産物に対して配列番号32と配列番号33に示すプライマーを用いてnested PCRを行った。図7Aに示すように、EGFPドナーと同様IFNβドナーを用いた場合でも始原生殖細胞のオボアルブミン遺伝子へのノックインが認められた。また、ノックイン効率の検定を実施例2−(2)と同様の定量PCRによって行った結果、85%以上のオボアルブミン遺伝子がIFNβドナーコンストラクトによって置き換えられていると判断される。
このIFNβドナーコンストラクトがノックインされた細胞を含む始原生殖細胞を、(1−3)と同じ手法によりレシピエント胚に移植後孵化させ、4羽の雄キメラニワトリを得た(#411〜#414)。これらより精液を採取し、ゲノムDNAを採取後、配列番号30と配列番号31のプライマー(オボアルブミン遺伝子にノックインされたインターフェロンの3’側を増幅)、配列番号27と配列番号40のプライマー(オボアルブミン遺伝子にノックインされたインターフェロンの5’側を増幅)、配列番号27と配列番号36のプライマー(ノックインされていないオボアルブミンを増幅)を用いてそれぞれPCRを行った(図7B)。キメラニワトリ#411と#412においてオボアルブミン遺伝子座へのインターフェロンノックインを明瞭に示すシグナルが3’側、5’側で共に認められ、特に#411は移植した親株と遜色のないシグナル強度で認められることから、精子中に親株と同程度インターフェロンがノックインされた細胞が存在すると考えられる。
キメラニワトリ#411と#412を雌野生型ニワトリ(横斑プリマスロック種)と交配し、それぞれ28羽の後代、19羽の後代を得た。この後代より羽軸を採取し、ゲノムDNAを採取後、上述と同様に配列番号30と配列番号31のプライマー(オボアルブミン遺伝子にノックインされたインターフェロンの3’側を増幅)、配列番号27と配列番号40のプライマー(オボアルブミン遺伝子にノックインされたインターフェロンの5’側を増幅)、配列番号27と配列番号36のプライマー(ノックインされていないオボアルブミンを増幅)を用いてそれぞれPCRを行った。また、野生型の羽軸由来のゲノム(ネガティブコントロール(NC))、および移植したインターフェロンドナーベクターノックイン始原生殖細胞由来のゲノム(ポジティブコントロール(PC))を用いて同じPCRを行った。#411由来後代28羽のうち8羽と#412由来後代19羽のうち5羽において、それぞれポジティブコントロールと同様のオボアルブミン遺伝子座へのインターフェロンノックインを明瞭に示すシグナルが3’側、5’側で共に認められた。#411由来後代(雌)と#412由来後代(雌)のPCR産物電気泳動像を図7Cにそれぞれ示す。このことより、これらの後代雌ニワトリではオボアルブミン遺伝子座にインターフェロンドナーベクターがノックインされていると判断される。
(2)ノックイン効率の改善
遺伝子ノックインの効率改善について検討を行った。まず、上述のインターフェロンβドナーコンストラクトの薬剤耐性ユニットをPGK-PurorからSV40Pe-Neor(配列番号125 )に置換したIFNβ-Neoドナーコンストラクトを作製した。このドナーコンストラクトはオボアルブミン翻訳開始点の5’側約2.8kb、ヒトインターフェロンβ遺伝子、薬剤耐性遺伝子ユニット(SV40Pe-Neor)、オボアルブミン翻訳開始点の3’側約3.0kbから構成される。このドナーコンストラクトをプラスミドpBlue ScriptII(SK+)に挿入しpBS-IFNβ-Neoドナーとした。次に、px330-Neor-OVATg1のネオマイシン耐性ユニットを配列番号8のピューロマイシン耐性ユニットに置き換えたプラスミドpx330-Puror-OVATg1を構築した。また、図8Aに示すようにOVATg1と一部重なるオボアルブミンの標的配列OVATg2(配列番号126)を標的とし、CRISPR用プラスミドを構築した。配列番号127と配列番号128でそれぞれ示されるオリゴDNAを合成し、実施例1-1と同様にリン酸化後、アニールし、DNA断片をpx330のBbsI切断部位に挿入するとともに、NotI部位に配列番号8のピューロマイシン耐性ユニットを挿入したプラスミドpx330-Puror-OVATg2を構築した。約5×105個の始原生殖細胞株を調製し、3分割した後に、実施例2-(1)と同様にリポフェクタミン2000を用いてpx330-Neor-OVATg1を0.8μg、pBS-IFNβドナー(ピューロマイシン耐性遺伝子ユニットを持つ)を0.8μg(導入群1)もしくはpx330-Puror-OVATg1を0.8μg、pBS-IFNβ-Neoドナーを0.8μg(導入群2)もしくはpx330-Puror-OVATg2を0.8μg、pBS-IFNβ-Neoドナーを0.8μg(導入群3)それぞれ同時に遺伝子導入し、(導入群1)は実施例3-(1)同様導入後3日以降、ピューロマイシンを終濃度1μg/mlで添加した。一方、(導入群2)と(導入群3)は実施例(1-2-1)と同様に遺伝子導入後2〜4日の間、終濃度1μg/mlのピューロマイシン存在下で培養し、洗浄後、終濃度0.5 mg/mlのネオマイシンを添加し培養を行った。導入後24日後に各導入群の細胞数をそれぞれ計測した所、導入群1の2×104に対し、導入群2と3では1×105の薬剤耐性細胞が認められた。また、それぞれの群より細胞を回収し、ゲノムDNAを調製後、実施例3-(1)と同様に配列番号30と配列番号31のプライマー(オボアルブミン遺伝子にノックインされたインターフェロンの3’側を増幅)、配列番号27と配列番号40のプライマー(オボアルブミン遺伝子にノックインされたインターフェロンの3’側を増幅)、配列番号27と配列番号36のプライマー(ノックインされていないオボアルブミンを増幅)を用いてそれぞれPCRを行った(図8B)。導入群1と2との間でPCRシグナル強度比の大きな違いを認めないことから、導入群2のピューロマイシンで短期間選択後、ネオマイシン選択する方法のほうが迅速に目的細胞を調製可能と考えられる。また、導入群3は導入群2と比較してノックインされていないオボアルブミンが殆ど認められないことから、より効率の良いノックインが起こっていると考えられる。以上より、OVATg2配列を標的とし、CRISPRコンストラクトにピューロマイシン耐性遺伝子をドナーコンストラクトにネオマイシン耐性遺伝子をそれぞれ挿入し、始原生殖細胞に導入後一過的にピューロマイシンで選択し、その後ネオマイシンで選択を行うことで迅速かつ高効率に外来遺伝子のオボアルブミン遺伝子座へのノックインが可能になると考えられる。
実施例4
ヒト抗体遺伝子ノックイン
上記実施例2のEGFPドナーコンストラクトのEGFPの代わりに配列番号42に示されるヒト免疫グロブリン遺伝子を導入したドナーコンストラクト(免疫グロブリンドナーコンストラクト)を作製した。このドナーコンストラクトはオボアルブミン翻訳開始点の5’側約2.8kbの下流に卵白リゾチームシグナルペプチド、ヒト免疫グロブリン重鎖、furinタンパク質切断標的配列、2A自己プロセッシング性ペプチド、卵白リゾチームシグナルペプチド、ヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子をそれぞれコードする遺伝子を連結して配置し、薬剤耐性遺伝子ユニット(PGK-Puror)、オボアルブミン翻訳開始点の3’側約3.0kbから構成されている。このドナーコンストラクトが転写、翻訳されることで免疫グロブリンの重鎖と軽鎖からなる抗体タンパク質を発現する。
プラスミドpBlue ScriptII(SK+)に免疫グロブリンドナーコンストラクトを挿入しpBS- IgG(Hc+Lc)ドナーとした。上記pBS-EGFPドナーやpBS-IFNβドナーと同様の手法により雄ニワトリ始原生殖細胞にノックイン後ピューロマイシンで選択し、選択された細胞のゲノムを鋳型としてPCRを行なった。5’側は配列番号27のプライマーと配列番号43に示される卵白リゾチームシグナルペプチドに対するアンチセンスプライマーによるPCRの後、増幅産物に対して配列番号29のプライマーと配列番号44に示す卵白リゾチームシグナルペプチドに対するアンチセンスプライマーを用いてPCRを行った(nested PCR)。3’側は上記EGFPドナーやpBS-IFNβドナーのノックイン時と同様に配列番号30と配列番号31に示すプライマーを用いたPCRの後、増幅産物に対して配列番号32と配列番号33に示すプライマーを用いてnested PCRを行った。図9に示すように、免疫グロブリンドナーを用いた場合でも始原生殖細胞のオボアルブミン遺伝子へのノックインが認められた。また、実施例2-(2)と同様の定量PCRによって行った結果、90%以上のオボアルブミン遺伝子が免疫グロブリンドナーコンストラクトによって置き換えられていると判断される。
実施例5
ヒトコラーゲン遺伝子ノックイン
上記実施例2のEGFPドナーコンストラクトのEGFPの代わりに配列番号45に示されるヒトI型コラーゲン遺伝子を導入したドナーコンストラクト(コラーゲンドナーコンストラクト)を作製した。このドナーコンストラクトはオボアルブミン翻訳開始点の5’側約2.8kbの下流に卵白リゾチームシグナルペプチド、ヒトI型コラーゲンα1鎖(COLLAGEN1A1)、furinタンパク質切断標的配列、2A自己プロセッシング性ペプチド、卵白リゾチームシグナルペプチド、ヒトI型コラーゲンα2鎖(COLLAGEN1A2)遺伝子をそれぞれコードする遺伝子を連結して配置し、薬剤耐性遺伝子ユニット(PGK-Puror)、オボアルブミン翻訳開始点の3’側約3.0kbから構成されている。このドナーコンストラクトが転写、翻訳されることでヒトI型コラーゲンα1鎖とα2鎖からなるI型コラーゲンタンパク質を発現する。
プラスミドpBlue ScriptII(SK+)にコラーゲンドナーコンストラクトを挿入しpBS-COL1(A1+A2)ドナーとした。 上記pBS-EGFPドナーやpBS-IFNβドナー、pBS-IgG(Hc+Lc)ドナーと同様の手法によりpBS-COL1(A1+A2)ドナーを雄ニワトリ始原生殖細胞にノックイン後ピューロマイシンで選択し、選択された細胞のゲノムを鋳型としてPCRを行なった。5’側はpBS-IgG(Hc+Lc)ドナーと同様、配列番号27のプライマーと配列番号43に示される卵白リゾチームシグナルペプチドに対するアンチセンスプライマーによるPCRの後、増幅産物に対して配列番号29のプライマーと配列番号44に示す卵白リゾチームシグナルペプチドに対するアンチセンスプライマーを用いてPCRを行った(nested PCR)。3’側は上記EGFPドナーやpBS-IFNβドナー、pBS-IgG(Hc+Lc)ドナーのノックイン時と同様に配列番号30と配列番号31に示すプライマーを用いたPCRの後、増幅産物に対して配列番号32と配列番号33に示すプライマーを用いてnested PCRを行った。図10に示すように、コラーゲンドナーを用いた場合でも始原生殖細胞のオボアルブミン遺伝子へのノックインが認められた。また、実施例2-(2)と同様の定量PCRによって行った結果、90%以上のオボアルブミン遺伝子がコラーゲンドナーコンストラクトによって置き換えられていると判断される。
実施例6
雌始原生殖細胞の培養
ハイラインマリア種ニワトリ2〜3日胚血液中からの始原生殖細胞の単離と培養は非特許文献3に準拠して行った。性別の判定はCHD(chromo-helicase-DNA binding protein)遺伝子に対する配列番号46と配列番号47で示されるプライマーを用い、採血したニワトリ胚細胞由来ゲノムを鋳型としたPCRにより決定した。
継代に際しては、ピペットを用いて培地中の始原生殖細胞を分散、回収し、フィーダー細胞(BRL細胞)上に播種した。細胞の回収に先立って、培地の上層を一部(通常50〜75%程度)アスピレーターもしくはピペットを用いて穏やかに除去し、新たな培地を添加することで培地交換とした。始原生殖細胞は浮遊性の細胞であるが、1g(常圧)下の培養で大部分の細胞は培養皿の下部に集積するので、この方法で始原生殖細胞の大部分を残して細胞を維持しつつ培地の大部分を交換することが可能である。また、培地交換時に細胞を極力喪失したくない場合や完全に培地を交換したい時(選択薬剤の除去や遺伝子導入時の血清成分の除去)は、始原生殖細胞を培地ごと回収し、非特許文献3と同様に300g、5分程度の遠心を行ったが、通常は1週間に1回以上は遠心を伴わない継代を行うこととした。このような継代を行うことにより、長期間にわたり雌始原生殖細胞を培養することが出来た。図11は培養開始後100日目と230日目の雌始原生殖細胞像を示しており、球状で浮遊性の特徴を維持した培養が可能である。また、培養している細胞が雌始原生殖細胞であることは、培養100日目の培養細胞由来ゲノムを鋳型に配列番号46と配列番号47で示されるプライマーを用いたPCRによりCHD遺伝子を増幅して確認した。性染色体上にあるCHDは配列番号46と配列番号47で示されるプライマーを用いて増幅すると雌ゲノムで約400bpと600bpの2つの産物を、雄ゲノムで600bpの一つの増幅産物を生ずる。図11に示すように雌始原生殖細胞(PGCs)由来のゲノムを鋳型とすることで雌の核型が確認された。次に本法による効果を検証する目的で、雌始原生殖細胞の細胞増殖について検討を行った。本法により約3ヶ月培養した雌始原生殖細胞を24ウェルプレートに1ウェルあたり1×103ずつ播種した。また、比較として従来法である継代時(一週間に1−2回の頻度)に300g、5分の遠心操作を加えた培養開始より40日経過した雌始原生殖細胞と約4ヶ月経過した雄始原生殖細胞を同様に播種し、細胞数を経時的に計測した。図11Bに示すように、培養開始より8日後に従来法では有意な雌始原生殖細胞数の増加を認めないが、本法による雌始原生殖細胞の培養により約4倍の増加を認める。雄始原生殖細胞と比較すると増加速度は遅いものの、本法を用いることにより雌始原生殖細胞の安定的な増殖を可能にした。雌始原生殖細胞のレシピエント胚への移植と移植細胞由来後代の樹立や、雌始原生殖細胞を用いた遺伝子操作(安定的な遺伝子導入やゲノム編集によるノックイン、ノックアウトなど)には安定的な細胞数の増加が必要不可欠であり、本法による雌始原生殖細胞の安定的な培養、細胞増殖技術により、これらが初めて可能になると考えられた。
実施例7
培養した雌始原生殖細胞由来ニワトリ後代の樹立
実施例6に記載の方法により雌始原生殖細胞を172日培養した後に、2000個を実施例(1-3)と同様の方法で横斑プリマスロック種2.5日胚(レシピエント胚)の血液中に顕微注射により移植を行った。移植に先立ち、6Gyのガンマ線照射を行った。この個体(雌キメラヒヨコ)を孵化させ、性成熟後、横斑プリマスロック種野生型と交配した。移植細胞由来後代はハイラインマリア種の白色毛(優勢遺伝)により、黒色毛のレシピエント由来後代と区別がつくが、図12Aに示すようにドナー細胞由来の個体が得られ、上記培養法により雌始原生殖細胞の配偶子分化能を保持した長期培養が可能なことが示された。
実施例8
雌始原生殖細胞の遺伝子操作
更に、本培養法で長期培養を可能にしたことで、雌始原生殖細胞に安定的な外来遺伝子導入ができるか否かを検証した。配列番号48で示されるEGFP、ネオマイシン耐性遺伝子ユニットから成る配列をトランスポゾン特異性末端逆位配列を有するベクターpB530A-2(System Bioscience, 米国)のEF1αプロモーター下流のEcoRI-EcoRV部位に挿入した(pB530-EGFP-Neor)。上述と同様、1×105〜5×105個の雌始原生殖細胞株にリポフェクタミン2000を用いて0.8μgのpB530-EGFP-NeorとPiggyBacポトランスポザーゼ発現ベクターであるpB200PA-1(System Bioscience, 米国) 0.8μgを同時に遺伝子導入した。遺伝子導入後3日以降、ネオマイシンを終濃度0.5mg/mlで添加し、培養を行った。ネオマイシン存在下で増殖する始原生殖細胞は図12Bに示すように緑色蛍光を発し、雌始原生殖細胞に安定的に外来遺伝子が導入され、発現することが示された。
更に、外来遺伝子が安定導入された雌始原生殖細胞の細胞特性を解析した。上記方法で樹立された緑色蛍光を発する雌始原生殖細胞を孵卵後2.5日のニワトリ胚血液中に顕微注射により移植した。個体あたりの移植細胞数は2000〜5000個とした。移植後、胚の孵卵操作を継続し、17日胚(移植14日後)の胚を解析した。緑色蛍光を発する移植始原生殖細胞ならびにその子孫細胞は図12Bの写真のように卵巣組織に集積し、特に腹側の皮質層に大部分が局在した。このような局在は、内在性の始原生殖細胞と一致しており、一連の培養操作、遺伝子導入操作、薬剤選択操作を経ても雌始原生殖細胞が始原生殖細胞としての特性を失っていないことを示している。
実施例9
雌始原生殖細胞のオボアルブミン、オボムコイドノックアウト
雌始原生殖細胞でゲノム編集操作によるノックアウトが可能となれば、ノックアウト雌始原生殖細胞を移植した雌キメラ個体(G0)を樹立可能となり、ノックアウト雄始原生殖細胞を移植した雄キメラ個体(G0)と交配することで後代(F1世代)にホモノックアウト個体を樹立可能になる。このことは従来の技術より1世代早くノックアウト個体が樹立可能なことを意味しており、研究にかかる期間や費用を大幅に低減できるなど利点が多い。そこで、雌始原生殖細胞を用いてアレルゲン遺伝子のノックアウトを試みた。
実施例6に記載の方法で調製した雌始原生殖細胞1×105〜5×105個を用いて、上記で雄始原生殖細胞に行ったものと同一の条件でオボアルブミン遺伝子のノックアウトを試みた。1.6μgのpx330-Puror-OVATg3をリポフェクタミン2000を用いて遺伝子導入し、遺伝子導入後2〜4日の間終濃度1μg/mlのピューロマイシン存在下で培養し、洗浄後、1〜2週間の培養を行った細胞からゲノムDNAを抽出後、配列番号21,配列番号22で示されるオリゴDNAプライマーを用いたPCR法によりオボアルブミン遺伝子の一部領域を増幅し、TAベクターにサブクローンし、配列番号5(OVATg3)を含む領域のゲノム塩基配列を解析した。その結果、12クローン中11クローン(92%)においてオボアルブミン遺伝子の配列番号5(OVATg3)を含む領域で塩基の欠失や置換が認められた。代表的な欠失を図13に示す。
また同様に、雌始原生殖細胞を用いてオボムコイド遺伝子のノックアウトをpx330-Puror-OVMTg2を遺伝子導入、薬剤選択、培養し、ゲノムDNAを抽出後、配列番号23,配列番号24で示されるオリゴDNAプライマーを用いたPCR法によりオボムコイド遺伝子の一部領域を増幅し、TAベクターにサブクローンし、配列番号9(OVMTg2)を含む領域のゲノム塩基配列を解析した。解析した12クローン中11クローン(92%)においてオボムコイド遺伝子の配列番号9(OVMTg2)を含む領域で塩基の欠失が認められた。代表的な欠失を図13に示す。雌始原生殖細胞にpx330-Puror-OVMTg2を遺伝子導入、薬剤選択、培養し、オボムコイド遺伝子に欠損が入ったものが大部分である雌始原生殖細胞を実施例(1-3)で記載した要領で白色レグホン種2.5日胚(レシピエント胚)の血液中に顕微注射により移植した。実施例(1-3)と同様の電離放射線照射、窓開け、細胞移植、孵化操作を行い、雌キメラヒヨコ(G0)を7羽得ることができた。以上のことから、雌始原生殖細胞を用いることでゲノム編集による遺伝子のノックアウトが可能であり、これを雌胚に移植することで卵巣に遺伝子ノックアウトされた雌始原生殖細胞が集積するキメラニワトリを樹立可能である。
実施例10
雌始原生殖細胞のオボアルブミン遺伝子座への遺伝子ノックイン
雌始原生殖細胞を用いて、雄始原生殖細胞のようなゲノム編集による遺伝子ノックインの可否を検討した。上述と同様に、1×105〜5×105個の雌始原生殖細胞株にリポフェクタミン2000を用いてpx330-Neor-OVATg1を0.8μg、pBS-EGFPドナーを0.8μg、同時に遺伝子導入し、導入後3日以降、ピューロマイシンを終濃度1μg/mlで添加した。適宜培地交換を行い、終濃度1μg/mlのピューロマイシン存在下で増殖する細胞を回収し、ゲノムDNAを調製後、Nested PCRを行い、EGFPドナーコンストラクトのオボアルブミン遺伝子座へのノックインを確認した(図14)。雌始原生殖細胞においてもゲノム編集による遺伝子ノックインは可能である。また、実施例2-(2)、3-(1)、4、5で行った雄始原生殖細胞のノックイン効率の検定と同様の定量PCRを行った結果、約80%以上のオボアルブミン遺伝子がEGFPドナーコンストラクトによって置き換えられていると判断された。
実施例11
雌始原生殖細胞のヒトインターフェロン遺伝子ノックイン
雌始原生殖細胞を用いて、実施例3-(1)で行った雄始原生殖細胞と同様にゲノム編集によりIFNβドナーコンストラクトの遺伝子ノックインを行った。実施例3-(1)と同様の手法により雌ニワトリ始原生殖細胞に遺伝子ノックイン後ピューロマイシンで選択し、選択された細胞のゲノムを鋳型としてPCRをNested PCRを行い、IFNβドナーコンストラクトのオボアルブミン遺伝子座へのノックインを確認した(図15)。

Claims (21)

  1. 家禽の雌始原生殖細胞を培地の交換を常圧下もしくは300g未満の重力加速度を加えて行う継代培養により培養する工程、及び
    培養した家禽の雌始原生殖細胞を遺伝子操作技術により改変する工程を含む、家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  2. 前記家禽の雌始原生殖細胞が、胚血液中より採取した家禽の雌始原生殖細胞である、請求項1に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  3. 前記培養が、家禽の雌始原生殖細胞の配偶子分化能を保持した培養である、請求項1又は2に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  4. 前記培養を、100日を超えて行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  5. 前記遺伝子が卵内タンパク質遺伝子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  6. 前記遺伝子操作技術がゲノム編集である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  7. TALEN又はCRISPRを用いたゲノム編集により遺伝子が改変される、請求項に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  8. CRISPRを用いたゲノム編集により遺伝子が改変される、請求項に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  9. 遺伝子の改変が遺伝子のノックイン、ノックアウトまたは部分欠失である、請求項1〜のいずれか1項に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  10. 前記遺伝子をノックインにより改変し、前記家禽始原生殖細胞に薬剤耐性遺伝子を組み込み、前記薬剤耐性遺伝子に基づき遺伝子改変された始原生殖細胞を選別することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  11. 前記遺伝子をノックアウト又は部分欠失により改変し、前記家禽始原生殖細胞に薬剤耐性遺伝子を導入し、前記薬剤耐性遺伝子に基づき遺伝子改変された始原生殖細胞を選別することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  12. 薬剤耐性遺伝子がピューロマイシン耐性遺伝子(Puror)又はゼオシン耐性遺伝子(Zeor)である、請求項10又は11に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  13. ゲノム編集をプラスミドベクター又はウイルスベクターを用いて行う、請求項1〜12のいずれか1項に記載の家禽の雌始原生殖細胞の遺伝子改変方法。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の遺伝子改変方法により得られた、遺伝子操作技術により遺伝子改変された家禽の雌始原生殖細胞であって、
    前記遺伝子改変が
    (i)オボアルブミン、オボムコイド、オボムチン、オボトランスフェリン、オボインヒビターからなる群から選ばれる少なくとも1種の卵内タンパク質遺伝子のノックアウト、又は
    (ii)オボアルブミン、オボムコイド、オボムチン、オボトランスフェリン、オボインヒビターからなる群から選ばれる少なくとも1種の卵内タンパク質遺伝子遺伝子における、抗体若しくはその断片、酵素、ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターフェロン、コラーゲン、細胞外マトリクス分子、ワクチン、アゴニスト性タンパク質、及びアンタゴニスト性タンパク質からなる群から選ばれる外来遺伝子のノックイン
    である、家禽の雌始原生殖細胞
  15. 請求項1〜13のいずれかの方法により得られた遺伝子改変された家禽の雌始原生殖細胞を家禽初期胚の胚盤葉、血液中もしくは生殖巣領域に移植して遺伝子改変キメラ個体を得る工程を含む、遺伝子改変家禽のキメラ雌個体の生産方法。
  16. 請求項1〜13のいずれかの方法により得られた遺伝子改変された家禽の雌始原生殖細胞を家禽初期胚の胚盤葉、血液中もしくは生殖巣領域に移植して遺伝子改変キメラ個体を得る工程、このキメラ個体を性成熟して野生型個体、遺伝子改変個体或いは遺伝子改変キメラ個体と交配する工程を含む、変異型ホモ又は変異型ヘテロの遺伝子改変家禽の生産方法。
  17. 遺伝子改変された家禽のジェノタイプが変異型ホモ(-/-)である、請求項16に記載の遺伝子改変家禽の生産方法。
  18. 遺伝子改変がオボアルブミン、オボムコイド、オボムチン、オボトランスフェリン、オボインヒビターからなる群から選ばれる少なくとも1種の卵内タンパク質遺伝子のノックアウトである、請求項16又は17のいずれか1項に記載の遺伝子改変家禽の生産方法。
  19. 遺伝子改変が卵内タンパク質遺伝子における外来遺伝子のヘテロ又はホモのノックインであり、雌の遺伝子改変家禽の卵が外来遺伝子の発現産物を含む請求項16又は17のいずれか1項に記載の遺伝子改変家禽の生産方法。
  20. 外来遺伝子がヒト由来のタンパク質をコードする遺伝子である、請求項19に記載の遺伝子改変家禽の生産方法。
  21. 外来遺伝子が抗体又はその断片、酵素、ホルモン、成長因子、サイトカイン、インターフェロン、コラーゲン、細胞外マトリクス分子、ワクチン、アゴニスト性タンパク質、アンタゴニスト性タンパク質からなる群から選ばれる、請求項19又は20に記載の遺伝子改変家禽の生産方法。
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