以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ及びステップの順序などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、図面に示される構成要素の大きさ又は大きさの比は、必ずしも厳密ではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
(実施の形態1)
図1を参照しながら、実施の形態1に係る水素供給システム1の全体構成について説明する。図1は、実施の形態1における水素供給システムの構成を示すブロック図である。
図1において、太い実線で示す矢印は水素の流れを示している。例えば、各装置間は配管で接続されており、水素は配管で供給される。また、図1において、細い実線で示す矢印は、制御信号線を示しており、有線及び無線のいずれであってもよい。また、図1において、一点鎖線は、電線で電力を供給している状態を示している。そして、図3〜図5においても図1と同様に対応させて表示している。
図1に示すように、水素供給システム1は、水素により発電する燃料電池等の発電装置に水素を供給するシステムである。水素供給システム1は、水素製造装置10と、貯蔵タンク20と、第1発電装置(発電装置の一例)30と、水素供給装置40と、制御装置50と、ポンプ70と、バッテリ80とを備えている。
水素製造装置10、貯蔵タンク20、第1発電装置30、水素供給装置40、制御装置50、ポンプ70及びバッテリ80は、外部の施設200に電力を供給する設備として設置される。施設200は、例えば、一般家庭等の住宅又は店舗・工場等の施設等である。
水素製造装置10は、水素元素(H)を含む原料から水素(H2)を製造する装置である。例えば、水素製造装置10は、都市ガス(メタンガス)等の炭化水素ガスを原料(燃料)として水蒸気改質等の改質を行うことで水素を生成することができる。本実施の形態において、水素製造装置10が製造する水素は、水素ガスであり、水素リッチガス及び純水素ガスのいずれであってもよい。
なお、水素を製造する方法は、改質法に限るものではない。例えば、アンモニアを分解することによって水素ガスを生成する方法でもよいし、有機ハイドライドから脱水素して水素ガスを生成する方法でもよいし、水(H2O)を電気分解して水素を生成する方法でもよいし、あるいは、触媒に太陽光をあてることによって水を分解して水素を生成する方法でもよい。
貯蔵タンク20は、水素製造装置10から供給された水素を貯蔵する。貯蔵タンク20は、配管91で水素製造装置10と接続している。水素製造装置10から貯蔵タンク20への水素の供給は、図示しないポンプを用いて行うことができる。このポンプは、水素製造装置10に設けられていてもいし、貯蔵タンク20に設けられていてもよいし、配管91上に設けられていてもよい。
また、貯蔵タンク20と水素製造装置10との間には、図示しない圧縮機が設けられていてもよい。この場合、圧縮機は、水素製造装置10から供給された水素ガスを圧縮して、液体水素にする。圧縮機は、例えば、ピストン型圧縮機、ベーン型圧縮機等の圧縮機を採用する。圧縮機は、水素製造装置10に内蔵されていてもよいし、配管91上に設けられていてもよいし、貯蔵タンク20に内蔵されていてもよい。この場合、圧縮機が水素ガスを圧縮して液体水素として貯蔵するため、水素製造装置10から供給される水素ガスをそのまま気体として貯蔵する場合に比べ、貯蔵タンク20を小型化できる。なお、水素製造装置10から供給される水素ガスをそのまま気体として貯蔵してもよい。
貯蔵タンク20とポンプ70とは、配管92を介して接続している。また、ポンプ70と第1発電装置30とは、配管93を介して接続している。さらに、ポンプ70と水素供給装置40とは、ポンプ70から水素供給装置40に水素を供給するための配管94を介して接続している。なお、配管93と配管94とは、途中に分岐部を有する1つの配管であってもよいし、別個の2つの配管であってもよい。
ポンプ70は、配管92及び配管93を介し、貯蔵タンク20内の水素を第1発電装置30に供給可能である。また、ポンプ70は、配管92及び配管94を介し、貯蔵タンク20内の水素を水素供給装置40に供給可能である。なお、ポンプ70は、貯蔵タンク20に設けられていてもよい。また、配管93及び配管94には、図示しない電磁弁がそれぞれ配置されていてもよい。
第1発電装置30は、貯蔵タンク20に貯蔵された水素を用いて定期稼働で発電する。つまり、第1発電装置30は、利用される頻度が高く、定期的に発電を行っている。第1発電装置30は、例えば、水素を燃料として発電する燃料電池(FC)又は水素エンジン等である。第1発電装置30で発電された電気エネルギー及び発電時に得られた熱エネルギーは、施設200で利用される。例えば、第1発電装置30で発電された電気エネルギーは、施設200の電気機器(電力負荷)に利用される。
また、第1発電装置30は、第1発電装置30、水素製造装置10、水素供給装置40、制御装置50及びポンプ70にも運転するための電力を供給している。また、第1発電装置30は、ポンプ70以外にも、水素供給システムを運転するための補器(例えば、配管に配置された電磁弁及び筺体内を換気するファンなど)に電力を供給することができる。
水素供給装置40は、貯蔵タンク20に貯蔵された水素を不定期稼働で外部に供給する。つまり、水素供給装置40は、不定期に訪れる移動体300に貯蔵タンク20内の水素を供給する。
また、水素供給装置40は、図示しないタンクと、図示しないディスペンサーとを有している。タンクには、配管92、ポンプ70及び配管94を介して貯蔵タンク20からの水素が一時的に保存される。ディスペンサーは、移動体300に接続することで、タンク内の水素を移動体300に供給する。なお、水素供給装置40は、貯蔵タンク20から供給される水素を一時的に保存するタンクを有さず、ポンプ70又は水素供給装置40内のポンプを用いて貯蔵タンク20から移動体300に水素を供給する構成であってもよい。
移動体300は、水素供給装置40から供給される水素を用いて発電する第2発電装置60を有する。移動体300は、例えば、燃料電池自動車(FVC)、燃料電池自動二輪車、燃料電池電動アシスト付き自転車である。この場合、第2発電装置60は、水素を燃料として発電する燃料電池である。第2発電装置60で発電された電気エネルギーは、燃料電池自動車等の移動体300で利用される。なお、移動体300は、水素供給装置40から供給される水素の熱エネルギーを動力に帰る水素エンジンを有する水素エンジン車であってもよい。
なお、水素供給装置40は、移動体300に水素を供給する場合に限るものではなく、不定期に水素を供給するものであれば、例えば水素を購入する人等が運ぶタンクに水素を供給してもよい。つまり、移動体300は、燃料電池自動車等に限るものではなく、人等であってもよい。
制御装置50は、水素製造装置10と第1発電装置30と水素供給装置40とを制御する。制御装置50は、アプリケーションやソフトウェア等のプログラムを記憶しているメモリ、プログラムを実行するプロセッサ等を有している。制御装置50は、各装置類に含まれるプロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより処理を実行する。
制御装置50は、第1発電装置30で発電する電力量及び移動体300への水素供給量に応じて、水素製造装置10が製造する水素の量を制御する。つまり、制御装置50は、第1発電装置30が発電した電力を施設200に供給しているか否か、水素供給装置40が水素を外部に供給しているか否かで水素製造装置10に製造させる水素の量を制御する。
具体的には、制御装置50は、第1発電装置30で発電する電力量に合わせて、貯蔵タンク20から第1発電装置30に供給される水素量を変更することができる。例えば、制御装置50がポンプ70の稼働量を増やし、貯蔵タンク20から供給する水素量を増加させ、第1発電装置30が発電する電力量を大きくすることができる。また、例えば、制御装置50がポンプ70の稼働量を減らし、貯蔵タンク20から供給する水素量を減少させ、第1発電装置30が発電する電力量を小さくすることができる。
なお、第1発電装置30の発電量に対して供給される水素の量が不足すると、燃料電池が劣化する又は発電できなくなる恐れがあるため、第1発電装置30の発電量よりも水素の供給量が上回るよう制御する必要がある。また、第1発電装置30の発電量よりも水素の供給量が大幅に上回ると、燃料電池の発電効率が低下する。従って、制御装置50は、第1発電装置30の発電量に合わせて、供給される水素量を最適に制御する。
また、水素製造装置10で製造する水素の量は、投入する原料の量を変更したり供給する電力量を変更したりすることで調整できる。例えば、投入する原料の量を多くしたり供給する電力量を大きくしたりすることで、水素製造装置10から貯蔵タンク20に供給する水素の量を多くすることができる。一方、投入する原料の量を少なくしたり供給する電力量を小さくしたりすることで、水素製造装置10から貯蔵タンク20に供給する水素の量を少なくすることができる。
また、制御装置50には、電力系統100から電力が供給されない状態(停電)を検知する図示しない停止検知部が接続されている。具体的には、停止検知部は、電力系統100から電力が供給されない状態であることを検出する検出回路であり、電力系統100からの交流電力の供給が絶たれたことを検知する。停止検知部による停電検知の方法は、例えば、電力系統100から定期的に送られてくる交流電力が定期的に供給されない場合に、停電であると判定する等、いかなるものでもよい。なお、停電は、災害による停電、計画による停電等である。
バッテリ80は、図示しないコンバータを介して制御装置50に電気的に接続している。具体的には、制御装置50は、電力系統100から電力が供給されない状態になると、第1発電装置30及びポンプ70などの補器を始動するのに必要なバッテリ80の始動用電力を供給する。バッテリ80は、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池でもよく、これらのバッテリセルを複数組み込んだ2次電池でもよい。なお、バッテリ80は、水素製造装置10に電気的に接続され、水素製造装置10を始動するのに必要な始動用電力を供給してもよい。
また、制御装置50は、バッテリ80の始動用電力を第1発電装置30及びポンプ70などの補器に供給して始動させ、第1発電装置30が貯蔵タンク20に貯蔵された水素を用いて発電し、発電した電力を用いて水素製造装置10を始動させる。これらが始動した後に、制御装置50は、第1発電装置30の電力をバッテリ80に充電してもよい。具体的には、第1発電装置30では、水素製造装置10で使用される電力よりも第1発電装置30が発電した電力の方が大きい場合は、余剰の電力が発生する。この場合、第1発電装置30から余剰の電力をバッテリ80に充電する。これにより、一度、バッテリ80を使用しても、バッテリ80が充電されれば、バッテリ80が始動用電力を再び第1発電装置30、ポンプ70等に供給することができる。
以上のように構成される水素供給システム1の動作について説明する。
図2は、実施の形態1における水素供給システム1の動作を示すフローチャートである。図2は、水素供給システム1が停止状態から始動した状態を示している。図3は、実施の形態1における水素供給システムにおける電力供給の一例を示すブロック図である。図3は、水素供給システム1が始動している状態を示している。
図2及び図3に示すように、電力系統100から電力が供給されなくなると、制御装置50に接続している停止検知部は、電力の供給が断たれたことを検知する。停止検知部は、電力系統100から電力が供給されていないことを示す停止信号を制御装置50に入力する。制御装置50は、停止検知部からの停止信号により、ポンプ70及び第1発電装置30を起動させる(S1)。
具体的には、制御装置50は、バッテリ80からの始動用電力を、ポンプ70及び第1発電装置30に供給させ、ポンプ70及び第1発電装置30を起動させる。ポンプ70は、貯蔵タンク20に貯蔵された水素を第1発電装置30に供給する。第1発電装置30は、始動後、貯蔵タンク20から供給される水素と図示しない空気供給器から供給される空気中の酸素とを用いて発電を行う。そして、制御装置50は、第1発電装置30が発電を行うと、バッテリ80の電力から第1発電装置30の電力に、制御装置50に組み込まれている切替回路が切替える。なお、制御装置50は、バッテリ80から水素製造装置10を始動するのに必要な始動用電力を供給し、水素製造装置10を起動させてもよい。
制御装置50は、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に優先して供給させる。具体的には、制御装置50は、第1発電装置30を起動させ、第1発電装置30が発電した電力により水素製造装置10を起動させ、水素製造装置10に水素を製造させる(S2)。つまり、電力系統100から電力が供給されない状態において、水素供給システム1が始動する場合は、第1発電装置30が発電した電力を優先して水素製造装置10に供給する。この際、ポンプ70及び第1発電装置30にも第1発電装置30が発電した電力を供給する。そして、水素製造装置10は、配管91を介し、製造した水素を貯蔵タンク20に供給する。こうして、この水素供給システム1では、水素供給システム1が停止状態であっても、制御装置50が電力系統100から電力供給の停止を検知して起動し、発電と水素の製造とを行っていく。
制御装置50は、水素を供給するように水素製造装置10を起動させて、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上となるまで、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に優先して供給する。そして、制御装置50は、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上になったか否かを判断する(S3)。所定の貯蔵量以上になったか否かの判断は、例えば、貯蔵タンク20に供給される水素量と排出される水素量との差から計算した貯蔵量に基づいて判断してもよい等、いかなるものでもよい。なお、貯蔵タンク20内における水素量の所定の貯蔵量は、例えば、貯蔵タンク20の満充填の1/4、1/3、2/3、3/4等、適宜設定することができる。
図4は、実施の形態1における水素供給システムにおける電力供給の一例を示すブロック図である。図4は、施設200に電力を供給している状態を示している。
図2及び図4に示すように、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上である場合(S3ではYES)に、制御装置50は、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10及びポンプ70に供給しつつ、施設200にもその電力を供給する(S4)。具体的には、制御装置50は、水素製造装置10に優先して供給した電力から水素製造装置10が使用した電力を差し引いた余剰の電力を施設200に供給する。言い換えれば、第1発電装置30における電力の需要に応じて貯蔵タンク20から水素が供給される。つまり、第1発電装置30が発電した電力は、水素製造装置10の次に優先して施設200に供給される。
一方、制御装置50は、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上でないと判断すると(S3ではNO)、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に優先して供給させる。例えば、具体的には、余剰の電力がない場合で、貯蔵タンク20内の水素量が空に近い場合は、施設200への電力の供給を停止してもよい。そして、ステップS3に戻る。
制御装置50は、電力系統100から電力が供給されているか否かを判断する(S5)。制御装置50は、停止検知部から停止信号が入力されている状態であれば、未だに電力系統100から電力が供給されていない状態であると判断する(S5ではNO)。
図5は、実施の形態1における水素供給システムにおける電力供給及び水素供給の一例を示すブロック図である。図5は、施設200に電力の供給と、移動体300に水素の供給とを行っている状態を示している。
次に、図2及び図5に示すように、不定期に訪れる移動体300から水素の需要がある場合に、制御装置50は、水素製造装置10で製造された水素から第1発電装置30に供給する水素を差し引いた余剰の水素があるか否かを判断する(S6)。余剰の水素がある場合(S6ではYES)に、制御装置50は、移動体300に水素を供給することができる状態であると判断する。そして、水素供給装置40は、貯蔵タンク20内から水素供給装置40を介して移動体300に水素を供給する(S7)。つまり、水素製造装置10で製造された水素は、水素製造装置10及び施設200で使用する電力を第1発電装置30が発電するために必要な水素の次に優先して水素供給装置40に供給される。そして、ステップS3に戻る。なお、移動体300に水素を供給できる状態である場合であっても、余剰の水素が製造される量が少ない場合は、移動体300に少量の水素を長時間かけて供給してもよく、貯蔵タンク内又は水素供給装置40内に水素が十分に溜まってから、移動体300に水素を供給してもよい。
移動体300の優先度が施設200よりも低いと考えられる理由は、災害などで停電が起こった場合において施設200での電力の必要性が高いためである。移動体300の一例である燃料電池自動車は、一般的に水素タンクを内蔵しており、バッテリで自ら起動できるため、水素タンク内に貯蔵された水素を用いて移動できる。そのため、停電が起こった場合に、移動体300に対して水素を供給する優先度は、相対的に低いと考えることができる。
なお、移動体300に水素を供給するタイミングが定期的でないことが想定されるので、水素供給装置40は不定期稼働すると考えられる。例えば、水素供給装置40が燃料電池自動車に水素を供給する場合は、燃料電池自動車が不定期に水素供給装置40に接続されることが考えられる。これは、水素供給装置40に燃料電池自動車が到来するタイミングは、例えば水素供給装置40でコントロールすることが困難であり、ユーザの都合と燃料電池自動車の水素残存量などを加味してユーザの判断で決められ、到来のタイミングがランダムとなるからである。このため、不定期に到来する燃料電池自動車に備えて水素を貯蔵する貯蔵タンク20には、水素量が所定の貯蔵量となるまでを貯蔵する。
一方、余剰の水素がない場合(S6ではNO)に、制御装置50は、貯蔵タンク20内の水素量が少ない可能性があるため、ステップS3に戻り、貯蔵タンク20内の水素量を所定の貯蔵量以上にする。
制御装置50は、水素供給装置40が移動体300に接続されると、水素を供給するように水素供給装置40を制御する。具体的には、移動体300が水素供給装置40に接続されているか否かの判断は、貯蔵タンク20又は水素供給装置40内のタンクに貯蔵されている水素の減り方又は流れる水素の流量を見たり、センサ等で移動体300の存否を検知したりすることで把握することができる。
ステップS5において、制御装置50は、停止検知部から停止信号が入力されなくなると、電力系統100から電力が供給されていると判断する(S5ではYES)。電力系統100から電力が供給されていると制御装置50が判断した場合は、この水素供給システム1のフローを終了する。
以上のステップS1〜S7により、水素供給システム1を設置することで、電力を施設200に供給したり、移動体300に水素を供給したりすることができる。
次に、本実施の形態における水素供給システム1の効果について説明する。
上述したように、実施の形態1に係る水素供給システム1は、水素元素を含む原料から水素を製造する水素製造装置10と、水素製造装置10から供給された水素を貯蔵する貯蔵タンク20と、貯蔵タンク20に貯蔵された水素を用いて定期稼働で発電する第1発電装置30と、少なくとも第1発電装置30を始動するために必要な始動用電力を供給するバッテリと、第1発電装置30と水素製造装置10とを制御する制御装置50とを備えている。第1発電装置30が停止している状態であり、かつ、電力系統100から電力が供給されない場合に、制御装置50は、少なくとも第1発電装置30をバッテリ80が発電した始動用電力により起動させ、かつ、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に供給し、かつ、水素を供給するように水素製造装置10を制御して貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上となるまで第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に供給する。
この構成によれば、水素供給システム1が停止していても、制御装置50に接続している停止検知部は、電力系統100から電力が供給されていないこと検知する。制御装置50は、バッテリ80の始動用電力から第1発電装置30及びポンプ70などの補器を起動した後に、水素製造装置10を始動させて水素を製造させる。制御装置50は、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上となるまで、第1発電装置30に水素を供給し、かつ、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に供給する。こうして、水素供給システム1では、第1発電装置30からの電力供給による水素の製造と、その水素を用いて発電して電力供給するというサイクルができる。すなわち、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に供給すれば、水素製造装置10が継続して水素を製造することができる。
また、この水素供給システム1では、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上となれば、施設200へ電力を供給したり、移動体300へ水素を供給したりできる。このため、水素製造装置10の製造能力を超える水素の需要があったとしても、貯蔵タンク20内の水素を供給すれば、この需要を満たすことができる。さらに、この水素供給システム1では、貯蔵タンク20内の水素が減少すれば、制御装置50が貯蔵タンク20内の水素量を所定の貯蔵量以上にさせる。その結果、この水素供給システム1では、製造能力を上回る水素の需要があったとしても、水素不足になることなく、第1発電装置30が発電を継続でき、発電した電力を水素製造装置10に供給し、水素製造装置10が水素を製造し続ける。
したがって、この水素供給システム1では、電力系統100から電力が供給されなくなったとしても、第1発電装置30が水素製造装置10に安定的に電力を供給し、水素製造装置10が第1発電装置30に安定的に水素の供給を行うことができる。
さらに、実施の形態1に係る水素供給システム1は、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上となるまで第1発電装置30が発電した電力を外部よりも水素製造装置10に優先して供給する。
この構成によれば、第1発電装置30からの電力供給による水素の製造と、その水素を用いて発電して電力供給するというサイクルができる。このため、この水素供給システム1では、電力系統100から電力が供給されなくなったとしても、第1発電装置30が水素製造装置10により安定的に電力を供給し、水素製造装置10が第1発電装置30により安定的に水素の供給を行うことができる。
さらに、実施の形態1に係る水素供給システム1は、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上となった後に、制御装置50は、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に供給させつつ、第1発電装置30が発電した電力を外部に供給させる。
この構成によれば、制御装置50は、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上となると、第1発電装置30が発電した電力を施設200に供給させる。このため、電力系統100から電力が供給されなくなったとしても、施設200に安定的に電力を供給することができる。その結果、この水素供給システム1では、施設200に対し、電力の需要を満たすことができる。
さらに、実施の形態1に係る水素供給システム1は、貯蔵タンク20に貯蔵された水素を不定期稼働で外部に供給する水素供給装置40を備えている。水素供給装置40は、貯蔵タンク20から供給される水素を移動体300に供給する。第1発電装置30が発電した電力を外部に供給した後に、制御装置50は、水素製造装置10で製造された水素から第1発電装置30に供給する水素を差し引いた余剰の水素を移動体300に供給するように水素供給装置40を制御する。
この構成によれば、水素供給装置40は、電力系統100から電力が供給されなくなっても、余剰の水素と貯蔵タンク20内の水素とを移動体300に供給することができる。このため、この水素供給システム1では、移動体300に対し、災害時でも水素の需要を満たすことができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2における水素供給システム1について説明する。
実施の形態2における水素供給システム1は、水素供給システム1が稼働中に停電が発生した場合である。実施の形態1における水素供給システム1では、制御装置50、第1発電装置30及びポンプ70に始動用電力を供給するバッテリ80が設けられているが、実施の形態2における水素供給システム1は、バッテリ80を有していない。
この水素供給システム1における他の構成は、実施の形態1の水素供給システム1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
以上のように構成される水素供給システム1の動作について、図6及び図7を参照しながら説明する。
図6は、実施の形態2における水素供給システムの動作を示すフローチャートである。図7は、実施の形態2における水素供給システムにおける電力供給及び水素供給の一例を示すブロック図である。図6及び図7では、水素供給システム1が稼働状態にある場合を示している。
制御装置50に接続している停止検知部は、電力系統100から電力が供給されない状態を検知し(S11)、停電したことを示す停止信号を制御装置50に入力する。
制御装置50は、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上であるか否かを判断する(S12)。貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上である場合(S12ではYES)は、第1発電装置30が施設200に続けて電力の供給を行う(S13)。
一方、制御装置50は、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上でないと判断すると(S12ではNO)、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に優先して供給させる。そして、ステップS12に戻る。
次に、制御装置50は、電力系統100から電力が供給されているか否かを判断する(S14)。制御装置50は、停止検知部からの停止信号が入力されている状態であれば、未だに電力系統100から電力が供給されていない状態であると判断する(S14ではNO)。
次に、制御装置50は、水素製造装置10で製造された水素から第1発電装置30に供給する水素を差し引いた余剰の水素があるか否かを判断する(S15)。余剰の水素がある場合(S15ではYES)に、制御装置50は、移動体300に水素を供給することができる状態であると判断する。そして、貯蔵タンク20内から水素供給装置40を介して移動体300に水素を供給する(S16)。つまり、余剰の水素は、施設200で使用する電力において、第1発電装置30が発電するために必要な水素の次に優先して供給される。そして、ステップS12に戻る。
ステップS14において、制御装置50は、停止検知部から停止信号が入力されなくなると、電力系統100から電力が供給されていると判断する(S14ではYES)。電力系統100から電力が供給されていると制御装置50が判断した場合は、この水素供給システム1のフローを終了する。
以上のステップS11〜S16により、水素供給システム1を設置することで、電力を施設200に供給したり、移動体300に水素を供給したりすることができる。
次に、本実施の形態2における水素供給システム1の効果について説明する。この水素供給システム1における他の効果は、実施の形態1の水素供給システム1と同様であり、同一の効果については詳細な説明を省略する。
上述したように、実施の形態2に係る水素供給システム1は、水素元素を含む原料から水素を製造する水素製造装置10と、水素製造装置10から供給された水素を貯蔵する貯蔵タンク20と、貯蔵タンク20に貯蔵された水素を用いて定期稼働で発電する第1発電装置30と、第1発電装置30と水素製造装置10とを制御する制御装置50とを備えている。第1発電装置30が発電している状態であり、かつ、電力系統100から電力が供給されない場合に、制御装置50は、第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に供給し、かつ、水素を供給するように水素製造装置10を制御し、貯蔵タンク20内の水素量が所定の貯蔵量以上となるまで第1発電装置30が発電した電力を水素製造装置10に供給する。
この構成によれば、水素供給システム1が起動している状態において電力系統100から電力が供給されなくなったとしても、第1発電装置30が発電する電力を用いて、第1発電装置30を稼働し続けることができる。このため、実施の形態2に係る水素供給システム1でも、第1発電装置30からの電力供給による水素の製造と、その水素を用いて発電して電力供給するというサイクルにより、水素製造装置10が水素を製造し続けることができる。
(変形例)
以上、本発明に係る水素供給システムについて、実施の形態1、2に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態1、2に限定されるものではない。
ポンプ70は、配管92を介して貯蔵タンク20と接続されている例として記載したが、これに限定されない。例えば、配管93及び配管94にそれぞれポンプが配置されていてもよい。また、第1発電装置30及び水素供給装置40にそれぞれポンプが設けられていてもよい。
また、例えば、上記の各実施の形態において、この水素供給システム1では、施設200及び移動体300の需要により貯蔵タンク20内の水素が減少し続け、貯蔵タンク20内の水素の貯蔵量が所定量以下になれば、移動体300への水素の供給を停止してもよい。
また、この水素供給システム1では、水素の貯蔵量について、複数の所定量を設定してもよい。例えば、水素の貯蔵量において、第1所定量及び第2所定量を定めた場合に、第1所定量よりも大きい第2所定量以下となれば、移動体300への水素の供給を停止し、第1所定量以下となれば、施設200への水素の供給を停止してもよい。また、第1所定量及び第2所定量は、所望の値を任意に定めることができてもよい。
さらに、制御装置50は、水素製造装置10、貯蔵タンク20、第1発電装置30及び水素供給装置40のいずれかに搭載されていてもよい。制御装置50は、水素製造装置10、貯蔵タンク20、第1発電装置30及び水素供給装置40とは別個の装置(例えばコンピュータ等の情報処理装置)であってもよい。
また、制御装置50は、回路であってもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
また、水素供給システム1では、水素製造装置10と貯蔵タンク20とが一つの設備として実現されていてもよい。例えば、水素製造装置10と貯蔵タンク20とが同じ筐体に収納されていてもよいし、水素製造装置10に貯蔵タンク20が内蔵されていてもよい。
また、本発明は、水素供給システムとして実現できるだけでなく、水素供給方法及び水素供給方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。
その他に、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。