JP6642020B2 - 連続鋳造設備の鋳造速度制御方法及び鋳造速度制御装置 - Google Patents
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Description
溶解工程に続く精錬工程では、例えばLF(Ladle Furnace)精錬装置、RH(Ruhrstahl-Hausen)真空脱ガス装置等が用いられ、取鍋中の溶鋼の成分調整や脱ガス処理等が行われる。その後の連続鋳造工程では取鍋内の溶鋼がタンディッシュに一旦移され、タンディッシュの下側に位置する1基又は複数基の鋳型に連続的に供給され、鋳型より鋳片を連続的に引き抜くことでブルームやスラブなどの半製品が製造される。
しかしながら鋳造速度が速すぎると鋳片の外面に十分な凝固殻が形成されず、溶鋼が漏れ出すブレイクアウトのようなトラブルが生じる虞がある。このため連続鋳造設備においては、鋼種毎に鋳込み時の基準溶鋼温度及びこの温度に対応した基準鋳造速度が定められ、かかる溶鋼温度及び基準鋳造速度で連続鋳造を行なうのが望ましい。
特に鋳造速度の決定にオペレータが関与する場合は、操業トラブルの回避を優先して過剰に鋳造速度を低く設定する傾向があるため能率ロスが生じ易い傾向があった。
また、下記特許文献2には連続鋳造設備に到着する際の溶鋼温度が目標値に近づくように製鋼プロセスにおける操業スケジュールを立案するための技術が開示されている。
しかしながらこれら特許文献に記載のものは、何れも連続鋳造設備の鋳造速度の制御によって製鋼プロセスの能率を向上させるといったものではなく、本発明とは異なっている。
本発明によれば鋳造速度が速すぎることによるブレイクアウトや鋳造中断といった操業トラブルが生じない範囲での上限鋳造速度を、連続鋳造設備の鋳造速度とするため、操業トラブルを有効に防止し得るとともに能率ロスを未然に防止することができる。
本発明によれば鋳造速度の決定過程にオペレータは関与しないため、オペレータ間での鋳造速度のばらつきや、過剰に余裕を持ったまま(鋳造速度を遅く設定して)操業することを防止することができる。また、更には定常時においては完全無人での操業が可能である。
このような式を利用して第2の上限鋳造速度を算出すると、進捗に遅れが生じたチャージが、連続鋳造設備から離れた位置にある(連続鋳造設備に到着するまでの到着時間の値が大きい)場合には鋳造速度の低下は小さく、連続鋳造設備に近づいた位置にある(連続鋳造設備に到着するまでの到着時間の値が小さい)場合には鋳造速度の低下は大きくなる。
即ち遅れた後続チャージが連続鋳造設備に近づくまでは、鋳造速度が高い値に維持されるため、プロセスの能率を向上させることができる。
また算出対象とする後続チャージの好適な数は、製鋼プロセスの仕様によっても変わってくる可能性があり、算出対象とする後続チャージの数は変更可能とすることが望ましい。
図1は本実施形態の鋳造速度制御装置を備えた製鋼プロセスの全体構成図である。同図の製鋼プロセスは、溶解工程、精錬工程及び連続鋳造工程を含んで構成されている。同図において10は溶解工程で用いられるアーク炉で、電極とスクラップとの間でアークを発生させて、鉄材料としてのスクラップを溶解させる。そしてアーク炉10内に生成された溶鋼は取鍋12に移され次の精錬工程へと搬送される。
LF精錬装置16による処理が終了すると、取鍋12はRH真空脱ガス装置18に移動する。RH真空脱ガス装置18では、溶鋼中の水素、酸素等の脱ガス処理が行われる。
図1において、20は連続鋳造設備で、タンディッシュ22の下方に鋳型24を備えている。連続鋳造設備20に到着した取鍋12内の溶鋼は、タンディッシュ22に移され、タンディッシュ22の下面に配設された浸漬ノズル25を介して鋳型24に鋳込まれる。
鋳型24の下方からは、表面が凝固殻で覆われた鋳片28が連続的に引き抜かれ連続鋳造が行なわれる。
この鋳造速度制御装置36は、データベース38、溶鋼温度取得部40、進捗情報取得部42、鋳造速度算出部44及び出力部54を有しており、例えばCPU、RAM、HDD、及び各種インターフェイスを備えた情報処理装置や、専用のハードウェアを用いて構成することができる。
尚、取鍋12の軌道上に設けられた位置センサからの信号を受信して進捗の把握に利用することも可能である。
この鋳造速度算出部44では、データベース38、溶鋼温度取得部40及び進捗情報取得部42の情報に基づいて、連続鋳造設備20の最適鋳造速度を繰り返し算出し、その値は出力部54から連続鋳造設備20、詳しくは制御部34に出力される。
図2は溶鋼温度と鋳造速度との関係を示した図である。上述のように鋳込中の溶鋼温度に対して鋳造速度が速すぎるとブレイクアウトが生じるため、本例では各鋼種毎に鋳造に適した基準温度t0とこれに対応する基準鋳造速度V0が、更に溶鋼温度が基準温度t0に対して前後した場合のこれに対応する鋳造速度が予め定められ、この関係はデータベース38に格納されている。
そして第1の速度算出手段48では、溶鋼温度取得部40にて取得された現在の溶鋼温度がt1であった場合、図2で示した対応関係に基づいて溶鋼温度を考慮した第1の上限鋳造速度としてV1を算出する。従ってこの上限鋳造速度V1で鋳造を行なえば、ブレイクアウトの発生を未然に防止することができる。
上述のデータベース38には各チャージ毎に処理工程、各工程の基準処理時間、各工程間の基準移動時間に関する情報が格納されている。本例ではアーク炉10→LF精錬装置16→RH真空脱ガス装置18→連続鋳造設備20の順に処理が行われており、下記表1はこれら工程での基準処理時間を、表2は工程間の基準移動時間を示している。これら基準処理時間及び基準移動時間に基づいて算出される、各工程の開始又は終了時点から連続鋳造設備20に到着するまでの、残りの工程に要する基準時間は表3の通りである。尚、下記表1〜表3ではアーク炉をAF、LF精錬装置をLF、RH真空脱ガス装置をRH、連続鋳造設備をCCと表記している。
例えばLF精錬装置16からの処理開始信号が受信され、且つLF精錬装置16からの処理終了信号が受信されていないチャージのCC到着時間は、表3から(Imin>Jminとした場合)最大Imin〜最小Jminの範囲内であり、現時点で処理開始信号の受信から10分経過していれば、このチャージのCC到着時間は(I―10)minと算出される。
V2(m/分)=鋳込待ち重量/CC到着時間/単重/STR数・・式(1)
尚、式(1)において、鋳込待ち重量(トン)は、算出対象チャージよりも前方(連続鋳造設備側)に位置する鋳込待ち溶鋼の重量であって、例えば算出対象チャージが鋳込中チャージの1つ後方のチャージで有る場合には、鋳込待ち重量=鋳込中チャージの残り溶鋼重量である。
算出対象チャージが鋳込中チャージの2つ後方のチャージで有る場合には、鋳込待ち重量=鋳込中チャージの残り溶鋼重量+1つ後方のチャージの溶鋼重量である。
算出対象チャージが鋳込中チャージの3つ後方のチャージで有る場合には、鋳込待ち重量=鋳込中チャージの残り溶鋼重量+1つ後方のチャージの溶鋼重量+2つ後方のチャージの溶鋼重量である。
算出対象チャージが鋳込中チャージの4つ後方のチャージで有る場合には、鋳込待ち重量=鋳込中チャージの残り溶鋼重量+1つ後方のチャージの溶鋼重量+2つ後方のチャージの溶鋼重量+3つ後方のチャージの溶鋼重量である。
CC到着時間は上述のように算出対象チャージが連続鋳造設備20に到着するまでの到着時間である。
単重は、鋳片1m当たりの重量で、ここではεトン/mとする。εは0.5〜3.0トン/mの範囲において鋼種によって適宜決定される。
STR数は、連続鋳造設備20のストランド数である。
本例では、鋳込中チャージの1つ後方のチャージ及び2つ後方のチャージについて、上記式(1)を用いて第2の上限鋳造速度V2を算出し、それぞれの値をV21、V22とした。
次に最適速度決定手段52にて上限鋳造速度V1,V21,V22を比較して最も小さい値を最適鋳造速度VCとする(第3のステップ)。そして出力部54にて最適鋳造速度VCを連続鋳造設備20に出力する(第4のステップ)。
鋳造速度制御装置36では、上記第1のステップから第4のステップを例えば30秒間隔で繰り返し実行し、得られた最新の前記最適鋳造速度VCを、連続鋳造設備20の鋳造速度に反映させる。尚、30秒間隔等の設定は自由に修正して決定できる。
その後チャージbにおいて遅れが発生し、予定時刻にRH工程の処理開始信号が受信されなかったため、V21を算出する式(1)の分母側のCC到着時間は一定となり、分子側の鋳込待ち重量のみが低下する。このためV21の値が低下して、時刻T2の時点でV21<V1となり、第2の上限鋳造速度V21が最適鋳造速度VCとして選択されて鋳造速度が低くなる。
その後チャージcにおいて遅れが発生し、予定時刻にLF工程の処理開始信号が受信されないためV22の値が低下して、時刻T3の時点でV22<V21<V1となり、上限鋳造速度V22が最適鋳造速度VCとして選択されて鋳造速度が低くなる。
その後の時刻T4では連続鋳造設備20に近づいた(CC到着時間の値が小さい)チャージcにおいてRH工程の処理終了信号が受信されないため以降、上限鋳造速度V21の値が大きく低下したため鋳造速度も大きく調整して鋳造の中断を防止している。
特に図3の例で示したように、本実施形態によれば後続チャージの進捗に遅れが生じた場合、そのチャージが連続鋳造設備20から離れた(CC到着時間の値が大きい)位置にあれば鋳造速度の低下は小さく、連続鋳造設備20に近づいた(CC到着時間の値が小さい)位置にあれば鋳造速度の低下は大きくなる。
即ち遅れたチャージが連続鋳造設備20に近づくまで、鋳造速度は比較的高く(速く)維持されるので、図3の一点鎖線で示す比較例のようにトラブル回避を優先して最初から大きく鋳造速度を下げる制御方法に比べて、実働能率を向上させることができる。
本実施形態では進捗監視を行なう後続チャージの数を2つとしたが、製鋼プロセスが有する工程数に合わせて進捗監視を行なう後続チャージの数も変更可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。また、製鋼プロセスのみでなく連続鋳造設備を有する全てのプロセスに対しても有効である。
22 タンディッシュ
36 鋳造速度制御装置
38 データベース
40 溶鋼温度取得部
42 進捗情報取得部
44 鋳造速度算出部
48 第1の速度算出手段
50 第2の速度算出手段
52 最適速度決定手段
54 出力部
Claims (5)
- 溶解工程、精錬工程及び連続鋳造工程を含んで構成され、取鍋内に収容された状態で溶鋼の各工程間搬送が行われる製鋼プロセスにおける連続鋳造設備の鋳造速度制御方法であって、
(a)鋳込中のタンディッシュ内温度を測定して得られた溶鋼温度と、該溶鋼の鋼種情報と、に基づいて、溶鋼温度を考慮した第1の上限鋳造速度を算出する第1ステップと、
(b)鋳込中のチャージよりも後方に位置する複数の後続チャージの進捗を監視し、該後続チャージの進捗情報と、該後続チャージの残りの工程に要する基準時間から、該後続チャージのそれぞれが連続鋳造設備に到着するまでの到着時間を算出し、該到着時間と、該後続チャージよりも前方に位置する鋳込待ち溶鋼の重量とに基づいて、前記後続チャージが前記連続鋳造設備に到着するまでに溶鋼切れによる鋳造の中断が生じるのを防止することができる第2の上限鋳造速度を複数の後続チャージ毎に算出する第2ステップと、
(c)前記第1の上限鋳造速度及び複数算出された前記第2の上限鋳造速度を比較して、最も小さい値を最適鋳造速度とする第3ステップと、
(d)該最適鋳造速度を前記連続鋳造設備に出力する第4ステップと、
を繰り返し実行し、最新の前記最適鋳造速度を、連続鋳造実行中の連続鋳造設備の鋳造速度に反映させるようになしたことを特徴とする連続鋳造設備の鋳造速度制御方法。 - 前記第2ステップにて、前記到着時間を分母に包含し、且つ前記鋳込待ち溶鋼の重量を分子に包含する式を利用して、前記第2の上限鋳造速度を算出することを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造設備の鋳造速度制御方法。
- 前記第2ステップにて、最大で4つの前記後続チャージについて進捗を監視し、前記第2の上限鋳造速度を算出することを特徴とする請求項1,2の何れかに記載の連続鋳造設備の鋳造速度制御方法。
- 前記第2ステップにて、前記第2の上限鋳造速度を算出する前記後続チャージの数を変更可能としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の連続鋳造設備の鋳造速度制御方法。
- 溶解工程、精錬工程及び連続鋳造工程を含んで構成され、取鍋内に収容された状態で溶鋼の各工程間搬送が行われる製鋼プロセスにおける連続鋳造設備の鋳造速度制御装置であって、
少なくとも出鋼されたチャージ毎の鋼種、処理工程、各工程の基準処理時間、各工程間の基準移動時間及び溶鋼重量に関する情報が格納されたデータベースと、
前記連続鋳造設備のタンディッシュ内温度を取得する溶鋼温度取得部と、
前記取鍋の進捗情報を取得する進捗情報取得部と、
前記連続鋳造設備の最適鋳造速度を繰り返し算出する鋳造速度算出部と、
該連続鋳造設備に該最適鋳造速度を出力する出力部と、を有し、
前記鋳造速度算出部は、
(a)鋳込中のタンディッシュ内温度を測定して得られた溶鋼温度と、該溶鋼の鋼種情報とに基づいて、溶鋼温度を考慮した第1の上限鋳造速度を算出する第1の速度算出手段と、
(b)鋳込中のチャージよりも後方に位置する複数の後続チャージの進捗を監視し、該後続チャージの進捗情報と、該後続チャージの残りの工程に要する基準時間から、該後続チャージのそれぞれが前記連続鋳造設備に到着するまでの到着時間を算出し、該到着時間と、該後続チャージよりも前方に位置する鋳込待ち溶鋼の重量とに基づいて、前記後続チャージが前記連続鋳造設備に到着するまでに溶鋼切れによる鋳造の中断が生じるのを防止することができる第2の上限鋳造速度を複数の後続チャージ毎に算出する第2の速度算出手段と、
(c)前記第1の上限鋳造速度及び複数算出された前記第2の上限鋳造速度を比較して、最も小さい値を最適鋳造速度とする最適速度決定手段と、
を備えていることを特徴とする連続鋳造設備の鋳造速度制御装置。
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