JP6641366B2 - スピノサド異種発現株およびその構築方法ならびに使用 - Google Patents

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Description

本発明は生物工学の分野に属し、スピノサド異種発現に関し、より詳細には、スピノサド異種発現株およびその構築方法ならびに使用に関する。
1999年6月に米国の「Presidential Green Chemistry Challenge Award」を獲得した、生物学的農薬の安全性および化学的農薬の即効性の両方を有している、スピノサドはマクロライド化合物である。天然において、スピノサドはSaccharopolyspora spinosaから発酵され、その生合成は主に2つの局面:1つはポリケチドシンターゼ(PKS)によって合成されるグリコンであり、第2は、関連するシンテターゼおよび修飾酵素によってそれぞれ行われるラムノースおよびホロサミンの付加および改変である(SU Jianya et al., Biosynthesis of Spinosad, CHINA BIOTECHNOLOGY, Vol. 23, No. 5参照)。。ラムノース合成遺伝子を除くと、Saccharopolyspora spinosaにおける関連する他のスピノサド生合成遺伝子は、約80kbのDNA断片(GenBank AY007564)にクラスタ形成されている。
Saccharopolyspora spinosaは、天然のスピノサド生成株であるが、その生産性は高くない。さらに、Saccharopolyspora spinosaの遺伝子操作は比較的に困難であり、良好な生産能を有している株の取得を困難にするほど形質転換の余地が限られている。従来技術において、Saccharopolyspora spinosaおよびSaccharopolyspora erythraeaの異種間の融合を、スピノサドの高い生成株をスクリーニングし、かつ交配させるための二親性の不活性化の方法を介して、実施している(WU Ping et al., Screening and Breeding of High Producing Strains of Spinosad by Protoplast Fusion, SCIENCE AND TECHNOLOGY OF CEREALS, OILS AND FOODS, 2012,20 (3): 46-49)。しかし、原形質融合のあとに、複雑な組換えが、2つの親ゲノムの間に生じ、当該複雑な組換えは、最終的にスクリーニングされた株の複雑な遺伝的背景および不安定な遺伝的特徴を生じ、かつさらなる遺伝的な改変に有益ではない。
本発明は、上述の組換え発現株の不確かな遺伝的背景および不安定な遺伝的特徴の問題を解決するために、スピノサド発現株の構築方法を提供すること、およびスピノサド異種発現株を入手することを目的とする。
第1の態様では、本発明は、スピノサド異種発現株の構築方法を提供する。当該方法において、Saccharopolyspora erythraeaにおけるエリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタが、Saccharopolyspora spinosaのスピノサド合成性の遺伝子クラスタおよびラムノース合成性の遺伝子クラスタに置き換えられる。好ましくは、当該方法は、複数の相同的組換えを用いてSaccharopolyspora erythraeaにおける上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタをSaccharopolyspora spinosaの上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタおよび上記ラムノース合成性の遺伝子クラスタに置き換える。
さらに好ましくは、当該方法は、以下のステップ:(1)Saccharopolyspora spinosaの上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタならびにその上流および下流を網羅しており、かつ複数の隣接する核酸断片が重複している配列を保有している、複数の核酸断片を得ることと;(2)ステップ(1)において得られた上記複数の核酸断片を、Saccharopolyspora erythraeaのゲノム内に連続的に連結して、これによって、Saccharopolyspora erythraeaにおける上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタを、Saccharopolyspora spinosaの、上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタの配列ならびにその上流配列および下流配列と置き換えて組換え株を得るために、相同的組換えの機序を用いることと;(3)Saccharopolyspora spinosaのラムノース合成性の遺伝子クラスタの、核酸断片を得ることおよびステップ(2)において得られた上記組換え株のスピノサド合成性の遺伝子クラスタの上記下流配列を、ラムノース合成性の遺伝子クラスタの上記核酸断片に置き換えて、上記スピノサド異種発現株を得るために、相同的組換えの機序を用いることとを包含している。
好ましくは、ステップ(2)において、上記複数の核酸断片はそれぞれプラスミドとして構築され、それから上記Saccharopolyspora erythraeaと相同的な交差によって相同的組換えを行う。ここで、上記複数の核酸断片の5’〜3’(5’から3’)までの配列に従って、最後の核酸断片を含んでいるプラスミドを除く他のプラスミドのそれぞれは、順に接続されている5’相同性アーム、ステップ(1)で得られた上記核酸断片、および接合に必要な耐性遺伝子カセットを含んでおり、各プラスミドの上記5’相同性アームは、Saccharopolyspora erythraeaの上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの上流の配列と相同である。上記最後の核酸断片を含んでいるプラスミドは、耐性遺伝子カセット、5’相同性アーム、上記最後の核酸断片、および3’相同性アームを含んでおり、上記耐性遺伝子カセット、上記5’相同性アーム、上記最後の核酸断片、上記3’相同性アームは順に結合しており、上記3’相同性アームは、Saccharopolyspora erythraeaの上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの下流の配列と相同である。さらに好ましくは、まず、上記最後の核酸断片を含んでいるプラスミドおよび最初のSaccharopolyspora erythraeaの間で相同性組換えが生じ、それから続いて、上記他の核酸断片を含んでいるプラスミドおよび先のステップで得られたSaccharopolyspora erythraeaの間で相同性組換えが生じる。好ましくは、上記最初のSaccharopolyspora erythraeaはATCC11635である。
さらに好ましくは、cosmid supercos-1がステップ(2)の最初のプラスミドとして用いられる。好ましくは、上記耐性遺伝子カセットはaac(3)IV+oriT配列を含んでいる。
さらに好ましくは、ステップ(2)におけるプラスミド構築過程は以下の通りである。まず、Saccharopolyspora erythraeaの上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの上流および下流の核酸断片(それぞれ約3kb)を、それぞれ上記5’相同性アームおよび上記3’相同性アームとしてcosmid supercos-1に挿入して、改変cosmid eryUD-cos2を得る。それから、ステップ(1)で得られた上記核酸断片を上記cosmid eryUD-cos2の上記2つの相同性アームの間に挿入する。上記最後の核酸断片を含んでいるプラスミドでは、上記5’相同性アームの上流に耐性遺伝子カセットを導入し、他のプラスミドでは、上記3’相同性アームを置き換えることで耐性遺伝子カセットを導入する。さらに好ましくは、他のプラスミドの上記3’相同性アームを上記耐性遺伝子カセットと置き換えることは、相同的組換えによって行われる。
さらに好ましくは、上記5’相同性アームの配列は配列番号46に示されており、上記3’相同性アームの配列は配列番号47に示されている。
好ましくは、ステップ(3)において、上記ラムノース合成性の遺伝子クラスタは相同的組換え用のプラスミドとして構築され、上記プラスミドはそれから、ステップ(2)で得られた上記組換え株と相同的組換えし、上記プラスミドは、2つの相同性アームおよびこれら2つの相同性アームの間に位置する上記ラムノース合成性の遺伝子クラスタを含んでおり、これら2つの相同性アームは両方とも、上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタの上記下流の配列と相同である。好ましくは、これら2つの相同性アームの配列はそれぞれ、配列番号49および配列番号48である。
好ましくは、ステップ(1)において、上記複数の核酸断片は、少なくとも3つの核酸断片であり、好ましくは、3、4、5、6または7つの核酸断片であり、各核酸断片は25〜40kbのサイズであり、さらに好ましくは、上記複数の核酸断片は、4つの核酸断片であり、それらの配列は、配列番号17〜20にそれぞれ示されている。
好ましくは、ステップ(1)において、Saccharopolyspora spinosaのゲノムDNAはSau3AIによって消化されてゲノムライブラリを構築し、上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタ配列ならびにその上流および下流の配列を網羅している複数の核酸断片は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってスクリーニングされる。
第2の態様では、本発明は、本発明の方法によって構築されるスピノサド異種発現株を提供する。上記発現株は、上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタがSaccharopolyspora spinosaの上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタおよび上記ラムノース合成性の遺伝子クラスタと置き換えられたSaccharopolyspora erythraeaである。好ましくは、上記発現株は遺伝的に改変された株ES05である。
第三の態様では、本発明は、本発明のスピノサド異種発現株を、スピノサドを調製するのに用いる方法を提供する。
第四の態様では、本発明は、スピノサドを生成する方法であって、当該方法は本発明によって構築されるスピノサド異種発現株を用いる方法を提供する。
本発明では、エリスロマイシン生成株Saccharopolyspora erythraeaのエリスロマイシン生合成性の遺伝子クラスタ(32kb、GenBank AY661566.1)をSaccharopolyspora spinosaのスピノサド生合成性の遺伝子クラスタ(80kb、GenBank AY007564)によって置換し、ラムノース生合成性の遺伝子クラスタ(全部で4つの遺伝子。gdh+ kre、GenBank AF355468.1; gtt、 GenBank AF355467.1; epi、GenBank AF355466.1)を挿入して、Saccharopolyspora erythraeaがスピノサドを生成するようにする。得られた遺伝的に改変された株は、明確な遺伝的背景を有し、全ゲノムの配列情報は極めてはっきりしている。したがって、任意の位置の遺伝子を正確に改変でき、遺伝子操作および株育成が容易になる。Saccharopolyspora erythraea自身が改変の可能性を有しているので、得られた組換え株も改変の可能性を有しており、これはもともとのスピノサド生成株Saccharopolyspora spinosaに比べてすぐれており、得られた組換え株の発酵時間(fermentation time)は短いので、感染しにくく、スピノサドの生成により役に立ち、コストを削減し、品質を保証し、産業的な大規模生産に適している。
プラスミドpBS-eryUDの構築過程である。 プラスミドSupercos-1 (A)およびeryUD-cos2 (B)のプラスミド概観図である。 スピノサド生成株のゲノムDNAの酵素消化結果であり;それぞれのレーンが、1.酵素消化なしのゲノムDNA;2.5分間の酵素消化;3.8分間の酵素消化;4.11分間の酵素消化;5.14分間の酵素消化;6.17分間の酵素消化;7.20分間の酵素消化;およびM、λ/Hind IIIをそれぞれ表わしている。 スピノサド生成株のゲノムDNAの酵素消化結果であり、それぞれのレーンが、1.5分間の酵素消化;2.6分間の酵素消化;3.7分間の酵素消化;およびM、λ/Hind IIIをそれぞれ表わしている。 96ウェルプレートを用いてゲノムプラスミドライブラリをスクリーニングするフロー図である。 スピノサド合成性の遺伝子クラスタにおける各遺伝子位置、および各ゲノムプラスミドライブラリ位置の概略図である。 A〜Fは、spnR、spnFおよびspnBを含んでいるプラスミドライブラリをスクリーニングするPCR電気泳動の結果である。 A〜Fは、図7A〜7Fにおいて得られた陽性の結果をさらにスクリーニングするPCR電気泳動の結果である。 A〜Dは、spnDおよびspnEを含んでいるプラスミドライブラリをスクリーニングするPCR電気泳動の結果である。 A〜Dは、図9A〜9Dにおいて得られた陽性の結果をさらにスクリーニングするPCR電気泳動の結果である。 スピノサド合成性の遺伝子クラスタの断片改変および相同的組換え過程を示す概略図である。 プラスミド15D1-AmTの構築過程である。 プラスミドpUAmT14の概観図である。 プラスミドpAT-DgegUの概観図である。 A〜Cは、3株の発酵のHPLCプロファイルである。 種々の断片の重複している部分のPCR検出の概略図である。
以下、具体的な実施形態を参照して発明を説明するが、本発明の内容はこれに限定されない。
本発明のスピノサド異種発現株構築方法は、以下のステップに説明され得る。
(1)元のコスミドを改変すること:すなわち、Saccharopolyspora erythraeaのエリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの上流および下流断片(それぞれ約3kb)をそれぞれ、cosmid supercos-1のクローニング部位BamHIの両側に挿入して、改変されたcosmid eryUD-cos2を得ること。Saccharopolyspora erythraeaの染色体におけるエリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタは、2つの異種断片によって、クローン化されている標的断片と直接に置き換えられ得る。
(2)Saccharopolyspora spinosaのスピノサド合成性の遺伝子クラスタ断片をクローン化すること:Saccharopolyspora spinosaのゲノムDNAに対する、Sau3AIを用いた部分的な酵素消化を実施して、酵素消化後の上記断片の大部分を25〜40kbの範囲に分布させ、それから改変されたcosmid eryUD-cos2をキャリアとして選び、パッケージキットGigapack(登録商標) III XL Packaging Extractをパッケージングのために利用し、Saccharopolyspora spinosaゲノムライブラリを構築し、スピノサド合成性の遺伝子クラスタ断片を含んでいるライブラリプラスミドをPCRを介してスクリーニングする。
(3)スクリーニングしたゲノムライブラリを配列決定し、そこに含まれているDNA断片の、スピノサド生合成性の遺伝子クラスタにおける相対的位置を決定する。同じ挿入方向を有する異なる断片を含んでいる4つのライブラリプラスミドを選択する。上記4つのライブラリプラスミドは、スピノサド生合成性の遺伝子クラスタを完全に網羅でき、上記遺伝子クラスタを移動させるために十分な長さだけ、互いに重複している。
(4)ライブラリプラスミドをトリミングすること:PCRターゲット法を用いて、上記相同性アームがeryUD-cos2に設計されている相同性アームと同じ長さであり、かつ接合に必要な要素を有しているように、スピノサド合成性の遺伝子クラスタ断片上の不要な相同性アーム断片をアプラマイシン耐性遺伝子カセットaac(3)IV+oriTと置き換える。PCRターゲットに供された耐性遺伝子カセットは、2つの相同性アームの外側に配置されており、ターゲット断片が相同的な二重の交差によってSaccharopolyspora erythraea染色体に移されるときに、失われ、したがって、上記耐性遺伝子カセットを次の回のトリミングおよびDNA断片移動に再利用され得る。
(5)
含まれているDNA断片の配列の接合によって、上記4つのトリミングされたライブラリプラスミドを、Saccharopolyspora erythraeaに形質転換し、二重交差の株をスクリーニングによって、遺伝子断片の移動を達成する。4段階の移動後、80kbのスピノサド合成性の遺伝子クラスタは、エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタがSaccharopolyspora erythraea染色体上に本来的に配置されている位置に、うまく移動させられる。スピノサド合成性の遺伝子クラスタの上流および下流の約10kbの断片が同時に移動され、これらの断片はそのあとの遺伝子操作の標的領域として用いることができ、それぞれ「操作可能領域1」「操作可能領域2」と呼ばれる。
(6)gtt、epi、gdh、 kre遺伝子を含んでいるラムノース合成性の遺伝子クラスタをクローニングしてキャリアにライゲートし、当該クラスタを上記の「操作可能領域2」に相同的二重交差法により挿入して、組換えの全過程を終え、スピノサド異種発現株を得る。
以下の方法は、詳細には以下の通りである以下の実施形態において使用される。
方法1:DNAのライゲーション反応
異なる断片およびリニアのキャリアを、3:1〜9:1のモル比、3μlの総容積において準備した。3μlの溶液I(Takara、商品番号D6020A)を加え、ウォーターバスを30分以上にわたって6℃に保った。
方法2:Escherichia coli形質転換(CaCl法)(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition; Beijing Science Press, 2002:93-99)
1)Escherichia coliの単コロニーを3mlのLB培地に37℃(BW25113の場合は30℃)において播き(Escherichia coliが耐性遺伝子を保有しているとき、対応する抗生物質を加える)、220rpmで14〜18時間、培養した。
2)上記混合物を、1%の播種量(必要に応じて対応する構成物質が加えられ;種々の抗生物質の終濃度は以下の通り:アンピシリン(Ap)の終濃度は100μg/mL、カナマイシン(Km)およびアプラマイシン(Am)の終濃度は50μg/mL、クロラムフェニコール(Cm)の終濃度は25μg/mL))、37℃(30℃におけるBW 25113)においてLB培地に移し、それから上記混合物を、OD600が0.4〜0.6になるまで、220rpmにおいて培養した。
3)株を遠心分離によって回収し、滅菌した100mMのCaCl(同容積)に懸濁し、氷上に20分間置いた。
4)株を遠心分離によって回収し、100mMのCaCl/15%(W/V)グリセロール(1/10容積)に懸濁し、100μl/チューブにおいて、1.5mlの遠心チューブにサブパッケージ化して、コンピテントセルを得た。
5)コンピテントセルの1つのチューブを取り、DNA(10μlを超えない体積の、プラスミドまたはライゲーション生成物)を加え、静かに混合し、氷上に30分間置いた。
6)上記混合物を、42℃のウォーターバスに90秒間入れたあとすぐに、氷上に1〜2分置いた。
7)900μlのLB培地を加え、ウォーターバスを45〜60分間、37℃に保った。
8)菌株液(50μlをプラスミド形質転換用およびライゲーション生成物形質転換用に取り、それから、遠心分離後、上澄の大部分を取り除き、株を残留溶液に懸濁した)を、対応する抗生物質を含んでいるLBプレート上に、スクリーニングのためにコートし、37℃(BW25113の場合は30℃)、14〜18時間で培養して、形質転換体を増やした。
方法3:PCR増幅
反応溶液を以下の比に従って調製した。25μlの2xPrimeSTAR GCバッファー溶液(Mg2+ Plus)、4μlのdNTP混合物(それぞれ2.5mM)、1μlの上流プライマー(25μM)、1μlの下流プライマー(25μM)、18μlのddHO、0.5μlのテンプレートDNA、および0.5μlのPrimeSTAR(登録商標)HSDNAポリメラーゼ。
反応手順:95℃×5分、(98℃×10秒、68℃×1分/1kb標的断片長)×25サイクル、72℃×2分、16℃×1分。
方法4:DNAの回収
Shanghai Huashun Biotechnology Co., Ltd.のPCR産物回収キット(商品番号W5202)およびゲル回収キット(商品番号W5203)を回収に用いた。
1)溶液からDNAを回収する場合は、5倍の体積のPBバッファー溶液を上記溶液に加え、混合し、吸収カラムに吸収した。電気泳動ゲルから回収する場合は、3倍の重量(100μlは100mgに等しいとして計算)のS1バッファー溶液をスライスしたゲルに加え、50℃のウォーターバスに入れて、ゲルを融かし、吸収カラムに吸収させた。
2)9000rcfの遠心分離を30秒行った。
3)回収チューブ内の液体を注ぎ、500μlのW1バッファー溶液を加え、遠心分離を9000rcfで30秒行った。
4)ステップ3)を繰り返して、回収チューブ内の液体を注いだ。
5)吸収カラムを清潔な1.5ml遠心チューブに移し、30μlのT1バッファー溶液をカラムの中心に加え、室温において5分、置いた。
6)9000rcfの遠心分離を1分行って、回収されたDNAを得た。
方法5:DNA断片の付着端の補填および5’リン酸化
以下の反応溶液を調製した。4.2μlの精製したDNA断片、0.5μlのBKLバッファー溶液、および0.25μlのBKL酵素混合物を37℃のウォーターバスに30分以上入れ、それから70℃のウォーターバスに5分入れて、上記酵素混合物を不活性化した。
方法6:エンドヌクレアーゼ消化によるリニア化後におけるDNA断片の脱リン酸化
1μlのFastAp(Fermentas、商品番号EF0651)をエンドヌクレアーゼ消化反応溶液に直接加え、37℃のウォーターバスに30分間にわたって入れた。
方法7:Escherichia coli-Saccharopolyspora erythraeaの接合方法
1)Escherichia coliET12567(pUZ8002)(Gust B, Kieser T, Chater KF. REDIRECT Technology: PCR-targeting system in Streptomyces coelicolor. Norwich: John Innes Center. 2002: 13-35)のコンピテントセルを方法2に従って調製し、それから、培養の間にKmおよびCmを培地に加えた。
2)接合に用いる5μlのプラスミドを取り、ET12567(pUZ8002)のコンピテントセルに方法2に従って形質転換させ、形質転換後、Km、Cm、およびAmを含んでいるLBプレート上にコートした。
3)1つの形質転換体を取り、Km、Cm、Amを含んでいる3mlのLB液体培地、37℃、14〜18時間、220rpmにおいて培養した。
4)上記混合物を、Km、Cm、Amを含んでいる30mlのLB液体培地に、1%の播種量、37℃、220rpmにおいて、OD600が0.4〜0.6になるまで培養した。
5)遠心分離により株を回収し、LB液体培地を用いて2回にわたって洗浄し、2mlのLB液体培地に懸濁し、それから使用のため室温に置いた。
6)ステップ5)を行うと同時に、10〜10の細胞を含み500μlの2×YT培地(1.6%のトリプトン、1.0%のイースト抽出物、0.5%NのaCl)に懸濁したSaccharopolyspora erythraea胞子溶液に、50℃において10分間、熱ショックを与え、それから室温において冷やした。
7)ステップ5)の菌株液500μlを、ステップ6)の熱的衝撃を受けた上記胞子溶液および混合し、9000rcf、1分間、遠心分離し、それから約800μlの上澄を捨て、株を残留溶液に懸濁し、MS(2%の大豆ケークパウダー、2%のマンニトール、1.5%の寒天粉末)プレート(当該プレートはその前に、無菌環境において1時間にわたって風乾し、部分的に脱水した)に塗り、34℃において14〜18時間、培養した。
8)1.25mgのAmおよび0.5mgのナリジクス酸(Nal)を含んでいる1mlの滅菌水を上記プレートに塗り、引き続き34℃において培養した。
9)6〜7日後、形質転換体が成長した。
方法8:アルカリ溶解によるプラスミドDNAの調製
1)単一のコロニーを3ml(必要なら、体積を大きくしてもよい)のLB液体培地に接種し、適当な抗生物質を加え、それから37℃において14〜18時間、振盪培養を行った。
2)1.5ml(低コピー数のプラスミドを調製する場合は5ml)を取って、30秒間、12000r/分で遠心分離した。
3)上澄を完全に吸収し、株を100μlの予冷した溶液I(50mmol/Lのグルコース、25mmol/LのTris−HCl、10mmol/LのEDTA、pH8.0)に懸濁した。
4)200μlの新たに調製した溶液II(NaOHを0.2mol/L、SDS1%)を加え、5回ひっくり返し(reversed for 5 times)、3分間、氷上に置いた。
5)150μlのあらかじめ冷却した溶液III(60mlの5mol/L酢酸カリウム、11.5mlの氷酢酸、28.5mlの水)を加え、アップダウンによって混ぜ、3分間、氷上に置いた。
6)5分間、12000r/分で遠心分離し、それから上澄を別の遠心チューブに移し、等量のフェノール−クロロフォルム−イソアミルアルコール(BioFlux, 商品No.: BSA03M1)を加えて振動し混合した。
7)5分間、12000r/分で遠心分離し、それから上澄を別の遠心チューブに慎重に移し、二倍の体積の氷冷の無水エタノールを加え、室温において2分間、置いた。
8)5分間、12000r/分で遠心分離し、それから上澄を注ぎ、沈殿物を70%のあらかじめ氷冷したアルコールで2度、洗浄した。
9)上記沈殿物を乾燥させ、20〜50μlのTE(pH8.0)に溶解させ、−20℃において保存した。
方法9:PCR検出
次のような反応溶液を調製する。25μlの2×GC I バッファー溶液(Takara、商品番号DRR20GCI)、4μlの2.5mM dNTP、1μlのプライマー1(25μM)、1μlのプライマー2(25μM)、1μl(10−100ng)のテンプレートDNA、32.5μlのH
PCR産物が3kb未満のサイズの場合は、0.5μlのrTaqDNAポリメラーゼ(Takara、商品番号R001)を加え、
PCR産物が3kbより大きいサイズの場合は、0.5μlのLA Taq DNAポリメラーゼ(Takara、商品番号DRR002B)を加えた
手順:94℃×5分、(95℃×30秒、(Tm-5)℃×15秒、72℃×1分/kbp)×30サイクル、72℃×2分、16℃×1秒
方法10:放線菌のトータルDNAの抽出
1)放線菌の胞子または菌糸を取り、30mlのTSB培地(商品番号211825、BD、USA)に接種して、28℃において40時間、200rpmで培養した。
2)遠心分離で株を回収し、滅菌水で2度洗い、4mlのリゾチーム溶液(10mM Tris−HCl、pH7.0、10.3%スクロース、4mg/mlリゾチーム)に懸濁し、それから37℃のウォーターバスに4時間にわたって入れた。
3)400μlの10%SDS溶液および15μlの20mg/mlプロテイナーゼK(Takara、商品番号D9033)溶液を加え、引き続き37℃のウォーターバスに30分間にわたって入れた。
4)上記混合物を、同体積のフェノール−クロロフォルム−イソアミルアルコール(BioFlux、商品番号BSA03M1)で2度抽出し、2.5mlの上澄を取った。
5)250μlの3M NaAc溶液(pH5.3)および3mlのイソプロパノールを加え、何度かひっくり返した(reversing for several times)したあと、白色の綿状沈殿物を摘出して新たな2.5mlの遠心チューブに入れ、70%エタノールで2度、洗浄したあと、室温において1時間乾燥させた。
6)2mlの2mM Tris−HCl溶液(pH8.0)を用いて、上記沈殿物を溶解させ、それから、2μlの20mg/mlRNA酵素を加えた。
特に断りがない限り、本発明で用いられる特定の実験方法はすべて、本研究分野で既知の従来の方法である。例えば、
1.エンドヌクレアーゼの単回の酵素消化は、製品マニュアルに従って行われる。
2.プラスミドはアルカリ溶解によって抽出される。詳細について方法8を参照。
3.PCR検出には通常のTaqDNAポリメラーゼが用いられる。詳細について方法9を参照。
さらに、記載の便宜のため、以下の記載は実際には次のような内容を含んでいるものとする。
1.プラスミドを構築する際、「ライゲートしてプラスミドを得る」という記載は、以下のいくつかの局面からなる複数の操作内容を含んでいる、連続的な操作プロセスである。(1)DNA断片のライゲーション反応(方法1を参照)。(2)上記ライゲーション反応の生成物をEscherichia coliDH5αに移すこと(方法2を参照)。(3)形質転換体を摘出してプラスミドを抽出。(4)上記プラスミドをエンドヌクレアーゼで酵素消化して、上記プラスミドの消化生成物の断片サイズが想定したサイズと一致するかどうかテストすること。
2.「PCR増幅」という記載は、特に断りがない限り、PrimeSTAR(登録商標)HS DNAポリメラーゼおよびGCバッファー溶液を増幅に用いる。詳細は方法3を参照。
3.「回収する」という記載は、PCR産物回収キットを用いて溶液から回収することであり、ゲル回収キットを用いて電気泳動ゲルから回収することである。具体的な操作について方法4を参照。
特に断りがない限り、以下の実施例に使用される試薬のすべては、化学または生物学の試薬販売店または供給業者から購入され得;使用されるすべての器具も当該分野における従来の器具である。
〔実施例1:コスミドキャリアの改変〕
ステップ(1)およびステップ(2)は、エリスロマイシン生合成性の遺伝子クラスタの上流断片および下流断片(すなわち、5’相同性アームおよび3’相同性アームを含んでいる、二重乗り換えのための2つの相同性アーム)を、pBluscript KS (+)(GenBank:X52331.1)ベクターに順にクローニングし、2つの相同性アームの間にBamHI部位を導入し、上流の断片の5’末端および下流の断片の3’末端にNotI部位をそれぞれ導入し、上記NotIを用いて、上記2つの相同性アームを含んでいる断片を切断する。構築プロセスは、図1に示す通りである。
(1)Saccharopolyspora erythraea(ATCC 11635)のゲノム(ゲノムDNAの抽出については方法10を参照)を、テンプレートとして使用し、euF(配列番号1、5’末端にNotI部位を導入している)/euR(配列番号2、5’末端にBamHI部位を導入している)を、プライマーとして利用し、エリスロマイシン生合成性の遺伝子クラスタの上流にある2511bp断片1:eryU(配列番号46、制限消化部位および保護的な塩基配列を含んでおり、したがってサイズは2531bpであった)を、PCRによって増幅した。PCR産物を回収し、NotI(Takara)を用いた1時間にわたる酵素消化に供し;それから、酵素消化された生成物を、回収し、BamHI(Takara)を用いた1時間にわたる酵素消化に供して、二重に酵素消化された生成物を得;また、pBluscript KS (+)ベクターを、NotIおよびBamHIを用いた酵素消化に供し、回収し;それから、二重消化後における上述のPCR産物とライゲートさせ、組換え組換えプラスミド1:pBS-eryUを、スクリーニングおよび試験の後に得た。
(2)それから、エリスロマイシン生成株のゲノムDNAを、テンプレートとして利用し、エリスロマイシン生合成性の遺伝子クラスタの下流に基づく2642bp断片2:eryD(配列番号47、制限消化部位および保護塩基配列を含んでおり、したがってサイズは2667bpであった)を、edF(配列番号3、5’末端にPst I部位を導入している)/edR(配列番号4、3’末端にNotIおよびXhoI部位を導入している)を、プライマー対として用いたPCRによって増幅した。回収後に、XhoIおよびPstI:5μlの10×Hバッファー溶液、25μlのPCR産物(またはプラスミド1:pBS-eryU)、18μlのddHO、1μlのPstI(Takara、商品番号1073A)、および1μlのXhoI(Takara、商品番号1094A)を用いて、PCR産物および組換えプラスミド1:pBS-eryUを、二重の酵素消化に供した。二重酵素消化させた。混合物を、1時間にわたって37℃のウォータバスに入れ、それから、生成物を、それぞれ回収し、ライゲートして、組換えプラスミド2: pBS-eryUDを、スクリーニングおよび同定を経て、得た。
(3)組換えプラスミド2 pBS-eryUDを、NotIを用いた制限消化に供し、2つの相同性アーム(すなわち、断片1:eryUおよび断片2:eryU)を含んでいる5179bp断片を、ゲルの切り取りを介して回収し、それから、NotIを用いて消化された、脱リン酸化されているたコスミドsupercos-1(Stratagene、商品番号251301、概観について図2Aを参照)とライゲートした。最後に、コスミドEryUD-Cos2(概観について図2Bを参照)を、PCRおよび酵素消化検出を経て、得た。
〔実施例2:スピノサド生成株のトータルDNAの抽出〕
極低温バイアルからのスピノサド生成株Saccharopolyspora spinosaの胞子溶液(NRRL 18538)を、取り、30mlのTSB培地に播き、トータルDNAを、方法10にしたがって抽出した。
〔実施例3:スピノサド生成株のゲノムライブラリの構築〕
(1)スピノサド生成株のトータルDNAの部分的な酵素消化条件のための試験:
以下の反応溶液:実施例2において調製されたスピノサド生成株の100μlのトータルDNA;15μlの10×Hバッファー溶液および、35μlのddHOを調製した。
上記溶液を、5分間にわたって37℃のウォーターバスに入れたあと、0.25uのSau3AI(Takara Biological Engineering (Dalian) Co., Ltd., 商品番号D1082A、酵素の保存溶液を用いて標的濃度まで希釈されている)を加えて、それから、混合物を37℃のウォーターバスにふたたび入れた。5分後から、3分ごとに25μlの反応液を取りだして、5μlの6×ローディングバッファー溶液(Takara Biological Engineering (Dalian) Co., Ltd., 商品番号D604)において反応を停止させた。電気泳動の結果(図3)は、反応時間が5〜8分間のとき、スピノサド生成株のトータルDNAの消化断片が、相対的に30kb付近に集められることを示している。
(2)スピノサド生成株のトータルDNAの、部分的な酵素消化:
以下の反応溶液:スピノサド生成株の、1000μlのトータルDNA、150μlの10×Hバッファー溶液、および350μlのddHOを調製した。
上記溶液を37℃のウォーターバスに5分間にわたって入れておいたあと、0.25uのSau3AIを加えて、それから、混合物を37℃のウォーターバスにふたたび入れた。反応が5分間、6分間および7分間にわたって実施されたときに、500μlの反応溶液を、それぞれ取り出し、等量のフェノール−クロロフォルム−イソアミルアルコールを抽出物に加え、それから、5μlの混合物を、電気泳動試験のために取りだした。結果は、反応時間が5分および6分のときに、スピノサド生成株のトータルDNAの消化された断片が、相対的に25〜40kb付近に集められることを示している。その結果を図4に示した。
5分の反応時間および6分の反応時間を有している2つのチューブを混ぜ合わせ、それから、100μlの3mol/LのNaAc溶液(pH5.3)および1.1mlのイソプロパノールを加え、数回の転倒の後に白色の綿状の沈殿物を新しい2.5mlの遠心管に取り出した。沈殿物を、70%エタノールを用いて2回にわたって洗浄し、室温において30分間にわたって乾燥させ、100μlの2mmol/LのTris−HCl溶液(pH8.0)に溶解させた。
(3)スピノサド生成株のトータルDNAの部分的な酵素消化生成物の脱リン酸化:
以下の反応溶液:スピノサド生成株のトータルDNAの、100μlの部分的な酵素消化生成物;11.5μlのFastApバッファー溶液;および3μlのFastApを調製した。
溶液を37℃のウォーターバスに50分間にわたって入れておいたあと、等量のフェノール−クロロフォルム−イソアミルアルコールを加えて、抽出し;90μlの上澄を取り、9μlの3mol/LのNaAc溶液(pH5.3)および200μlの無水エタノールを加え、上澄を遠心分離によって除去し、それから沈殿物を、70%エタールを用いて2回にわたって洗浄し、室温において30分間にわたって乾燥させた。上記沈殿物を、50μlの2mmol/LのTris−HCl溶液(pH8.0)に溶解させて、スピノサド生成株のトータルDNAの脱リン酸化部分的な酵素消化生成物を得た。
(4)コスミドEryUD-Cos2の酵素消化および脱リン酸化:
以下の反応溶液:50μlのコスミドEryUD-Cos2;10μlの10×Hバッファー溶液;37μlのddHO;および3μlのXhoIを調製した。
溶液を37℃のウォーターバスに2時間にわたって入れておき、1μlのFastApを加え、37℃のウォーターバスに30分間にわたって入れておき;等量のフェノール−クロロフォルム−イソアミルアルコールを加えて抽出し;80μlの上澄を取り、8μlの3MのNaAc溶液(pH5.3)および180μlの無水エタノールを加え、それから上澄を遠心分離によって除去し、沈殿物を、70%エタノールを用いて2回にわたって洗浄し、室温において30分間にわたって乾燥させた。それから、上記沈殿物を、50μlの2mMのTRIS−HCL溶液(pH8.0)に溶解させて、5’−脱リン酸化されているリニアのコスミドEryUD-Cos2を得た。
以下の反応溶液:5’−脱リン酸化されているリニアの、50μlのコスミドEryUD-Cos2;10μlの10×BamH Iバッファー溶液;37μlのddHO;および3μlのBamH Iを調製した。
溶液を37℃のウォーターバスに2時間にわたって入れたあと、等量のフェノール−クロロフォルム−イソアミルアルコールを加えて抽出した。80μlの上澄を取り、8μlの3mol/LのNaAc溶液(pH5.3)および180μlの無水エタノールを加え、それから上記上澄を遠心分離によって除去し、沈殿物を、70%エタノールを用いて2回にわたって洗浄し、室温において30分間にわたって乾燥させた。それから、上記沈殿物を、30μlの2mMのTris−HCl溶液(pH8.0)に溶解させて、XhoIおよびBamH Iの二重に酵素消化されたコスミドEryUD-Cos2を得た。
(5)スピノサド生成株のゲノムライブラリのライゲーション:
以下の反応溶液:スピノサド生成株のトータルDNAの、3μlの脱リン酸化されている部分的な酵素消化生成物;XhoIおよびBamH Iの二重に酵素消化された、1μlのコスミドEryUD-Cos2;3μlの10×T4リガーゼバッファー溶液;21μlのddHO;2μlのT4リガーゼ(Takara、商品番号D2011A)を調製した。
溶液を16℃のウォーターバスに一晩にわたって入れておいたあとに、3μlの3mol/LのNaAc溶液(pH5.3)および180μlの無水エタノールを加え、それから上澄を遠心分離によって除去し、沈殿物を、70%エタノールを用いて2回にわたって洗浄し、室温において30分間にわたって乾燥させた。それから、上記沈殿物を、5μlのddHOに溶解させて、ライゲーション生成物を得た。
(6)スピノサド生成株のゲノムライブラリの、パッケージングおよびトランスフェクション:
パッケージングキットは、以下のステップによって扱われるGigapack(登録商標) III XLパッケージングシステム(Stratagene Inc.、商品番号200201)であった。
a)キットのうち1パック(1つの遠心チューブ)を、取り出し、チューブにおける試薬が融けるまで手に握っていた。
b)ステップ5)から得られた4μlのライゲーション生成物を加え、穏やかに撹拌し、遠心分離器において3〜5秒間にわたって素早く遠心分離して、溶液のすべてが遠心チューブの底にある状態を確保し;
c)22℃において2時間にわたって反応させたあと、500μlのSMバッファー溶液を加え(1000gごとに、以下の物質:5.8gのNaCl、2.0gのMgSO・7HO、50mlの1MのTris−HCl(pH7.5)、5.0mlの2%(W/V)のゼラチンを含んでいる);
d)20μlのクロロフォルムを加え、穏やかに混合し、3〜5秒間にわたって素早く遠心分離し、4℃の冷蔵庫に使用のために保存し;
e)Escherichia coli DH10Bを、グリセロールと一緒に入っている、キットにおけるチューブからピックアップして、LB培地上にストリークし、37℃において14〜18時間にわたって培養して、複数の単コロニーを形成させた。
f)1つの単コロニーをピックアップし、10mMのMgSOおよび0.2%(w/v)のマルトースを含んでいる3mlのLB培地に播き、37℃において4〜6時間にわたって220rpmにおいて、OD600が0.6〜0.8になるまで振盪培養に供し;
g)1.5mlの菌菌株液を取り、10分間にわたって500gにおいて遠心分離して菌株を回収し、沈殿物を、滅菌した10mMのMgSOを用いて懸濁させ、OD600=0.5まで希釈して、コンピテントセルを得;
h)d)において得られた5μlのパッケージ生成物を取り、SMバッファー溶液によって50μlまで希釈し、それから1μlの混合物を取り、200μlのコンピテントセルに加え、37℃において15分間にわたって培養し;
i)それから、1mlのLB培地を加え、一様に混ぜ、混合物を、100μg/mlのアンピシリンを含んでいる10個のLBプレートに均一に広げ、37℃において約16時間にわたって培養した(各プレート上の形質転換体の数は300〜400であった)。
(7)スピノサド生成株のゲノムライブラリプラスミドのスクリーニング:
100μg/mlのCbを含んでいるLB培地を、150μl/ウェルの96ウェルプレート15個にサブパッケージし、これら15個のプレートにそれぞれ1#から15#の番号を振り、上記形質転換体の1つを爪楊枝で各ウェルへ取って接種し、それから37℃、220rpmで約16時間、培養した。
上記の96ウェルプレート中の12ウェルのそれぞれの菌株液10μlを、以下の規則に基づいて混合して新たな96ウェルプレート(それぞれ16#および17#および番号を振る)に入れた。
16#96ウェルプレートの縦方向:1#96ウェルプレートのウェルA1〜A12を混合して16#96ウェルプレートのウェルA1に入れ、ウェルB1〜B12を混合して16#96ウェルプレートのウェルB1に入れ(以下同様)、H1〜H12を混合して16#96ウェルプレートのウェルH1に入れた。
16#96ウェルプレートの横方向:1#96ウェルプレートのウェルA1〜A12を混合して16#96ウェルプレートのウェルA1に入れ、2#96ウェルプレートのウェルA1〜A12を混合して16#96ウェルプレートのウェルA2に入れ(以下同様)、12#96ウェルプレートのウェルA1〜A12を混合して16#96ウェルプレートのウェルA12に入れた。詳細は図5を参照。
同様にして、17#96ウェルプレートの縦方向:13#96ウェルプレートのウェルA1〜A12を混合して17#96ウェルプレートのウェルA1に入れ、ウェルB1〜B12を混合して17#96ウェルプレートのウェルB1に入れ(以下同様)、H1〜H12を混合して17#96ウェルプレートのウェルH1に入れた。
17#96ウェルプレートの横方向:13#96ウェルプレートのウェルA1〜A12を混合して17#96ウェルプレートのウェルA1(A13および数を振り直す)に入れ、14#96ウェルプレートのウェルA1〜A12を混合して17#96ウェルプレートのウェルA2(A14および数を振り直す)に入れ、15#96ウェルプレートのウェルA1〜A12を混合して17#96ウェルプレートのウェルA3(A15および数を振り直す)に入れた。
(8)スピノサド生成株特別ゲノムライブラリのPCRスクリーニング:
a)PCRを用いて、ライブラリプラスミドが、spnR、spnF、およびspnBの3つの遺伝子に含まれる部分断片(スピノサド生合成性の遺伝子クラスタの相対位置はそれぞれ、4168-5330、20151-21020、34049-34639である)を含んでいるかどうか検出した。スピノサド生合成性の遺伝子クラスタ上の上記3つの断片の相対位置を、図6に示す(つまり、スピノサド生合成性の遺伝子クラスタ上の矢印は、上記断片の位置を示す)。上記3つの遺伝子の部分断片のPCR産物のサイズはそれぞれ、1163bp(spnR)、870bp(spnF)、591bp(spnB)である。上記3つの遺伝子のPCR増幅に用いたプライマー配列は、それぞれ以下の通り:
spnRプライマー:spnRF(配列番号5)およびspnRR(配列番号6);
spnFプライマー:spnFF(配列番号7)およびspnFR(配列番号8);ならびに
spnBプライマー:spnBF(配列番号9)およびspnBR(配列番号10)。
以下の反応溶液:750μlの2×GCIバッファー溶液、120μlの2.5mM dNTP、15μlのspnRF(25μM)、15μlのspnRR(25μM)、15μlのspnFF(25μM)、15μlのspnFR(25μM)、15μlのspnBF(25μM)、15μlのspnBR(25μM)、535μlのddHO、および7.5μlのrTaq(Takara、商品番号DR001A)を調製した。
上記溶液を10μl/チューブにサブパッケージし、16#および17#96ウェルプレートの各ウェルの菌株液0.5μlをそれぞれ加え、スピノサド生成株のトータルDNA0.2μlをコントロールとして用いた。PCR反応手順は以下のようにした。95℃×10分、(94℃×30秒、55℃×30秒、72℃×1分10秒)×35サイクル、72℃×1分、16℃×1秒。
PCRの結果を電気泳動によって調べた。その結果を図7A〜7Fに示した。
図7A〜7Cの結果によれば、B9、D9、E4、F1、F4は目的のバンドを有した。すなわち、1#96ウェルプレートのF1〜F12(1F1〜1F12と表す)、4#96ウェルプレートのE1〜E12(4E1〜4E12と表す)およびF1〜F12(4F1〜4F12と表す)、9#96ウェルプレートのB1〜B12(9B1〜9B12と表す)およびD1〜D12(9D1〜9D12と表す)の菌株液が、対応する目的遺伝子を有した。上記の5つを第1グループと表した。図7D〜7Fの結果によれば、H5、E7、H9、A10、D10、G10、H10は目的のバンドを有した。すなわち、5#96ウェルプレートのH1〜H12(5H1〜5H12と表す)、7#96ウェルプレートのE1〜E12(7E1〜7E12と表す)、9#96ウェルプレートのH1〜H12(9H1〜9H12と表す)、10#96ウェルプレートのA1〜A12(10A1〜10A12と表す)、D1〜D12(10D1〜10D12と表す)、G1〜G12(10G1〜10G12と表す)、H1〜H12(10H1〜10H12と表す)の菌株液が、対応する目的遺伝子を有した。以上の7つを第2グループと表した。
第1グループの60の菌株液および第2グループの84の菌株液に対して、上記と同じ組成を用いて、別々に個別にPCR検出を行った。それらの結果を図8A〜8Fに示した(図8A〜8Cは第1グループ、図8D〜8Fは第2グループと称した)。
第1グループの結果は、1F9、4E11、4F11、9B5、9D10は対応する目的断片をそれぞれ有していると示した。一方、第2グループの結果は、7E9、9H9、10A5、10D5、10D6、10G3は対応する目的断片をそれぞれ有していると示した。上記の菌株液を再培養してプラスミドを抽出したあと、当該プラスミドはそれぞれ上記の数で名付けられ、サンプルを配列決定に送った。シークエンシングプライマーは、cosF:配列番号11およびcosR:配列番号12であった。
b)PCRを用いて、ライブラリプラスミドが2つの遺伝子spnDおよびspnEの部分断片を有しているか検出した(スピノサド生合成性の遺伝子クラスタ上の相対位置はそれぞれ、50305−51725および69264−70076であった)。スピノサド生合成性の遺伝子クラスタ上の2つの断片の相対位置を図6に示した。上記2つの断片のPCR産物のサイズはそれぞれ、1421bpおよび813bpであった。用いられたプライマー配列は以下の通り:
spnDプライマー:spnDF(配列番号13)およびspnDR(配列番号14);ならびに
spnEプライマー:spnEF(配列番号15)および spnER(配列番号16)。
以下の反応溶液:750μlの2×GCIバッファー溶液、120μlの2.5mM dNTP、15μlのspnDF(25μM)、15μlのspnDR(25μM)、15μlのspnEF(25μM)、15μlのspnER(25μM)、および580μlのddHO、7.5μlのrTaqを調製した。
上記溶液を10μl/チューブにサブパッケージし、上記16#および17#96ウェルプレートの各ウェルの菌株液0.5μlをそれぞれ加え、スピノサド生成株のトータルDNA0.2μlをコントロールとして用いた。PCR反応手順は以下のようにした。95℃×10分、(94℃×30秒、55℃×30秒、72℃×1分10秒)×35サイクル、72℃×1分、16℃×1秒。
PCRの生成物を電気泳動によって調べた。その結果を図9A〜9Dに示した。
上記結果によれば、B8、C2、D4、E4、E12、F4、A15、D15は目的のバンドを有した。すなわち、8#96ウェルプレートのB1〜B12(8B1〜8B12と表す)、2#96ウェルプレートのC1〜C12(2C1〜2C12と表す)、4#96ウェルプレートのD1〜D12(4D1〜4D12と表す)、E1〜E12(4E1〜4E12と表す)、F1〜F12(4F1〜4F12と表す)、12#96ウェルプレートのE1〜E12(12E1〜12E12と表す)、15#96ウェルプレートのA1〜A12(15A1〜15A12と表す)、D1〜D12(15D1〜15D12と表す)の菌株液が、対応する目的遺伝子を持つと示した。上記96の菌株液を選んで、上記と同じ組成を用いて、別途PCR検出をそれぞれ行った。それらの結果を図10A〜10Dに示した。
上記結果によれば、2C7、4D1、4E11、4F11、8B8、12E10、15A11、15D1の菌株液は対応する目的遺伝子を有した。上記の菌株液を再培養してプラスミドを抽出したあと、当該プラスミドはそれぞれ上記の数で名付けられ、サンプルを配列決定に送った。シークエンシングプライマーは同様にcosFおよびcosRであった。
配列結果によれば、9D10および10G3はまったく同じ配列を有し、2C7、4D1、12E10はまったく同じ配列を有し、4E11および4F11はまったく同じ配列を有していた。2C7/4D1/12E10および9H9によって運ばれる断片は逆方向であり、残りは順方向であった。
各ライブラリプラスミドに含まれるスピノサド生合成性の遺伝子クラスタ断片の相対位置を以下の表に示した。GenBank AY007564.1によって公開された配列位置は1〜80161であり、9D10、10G3、15A11、15D1すべての部分配列は、上記範囲の外に位置している。10G3(配列番号17)および15D1(配列番号20)の追加の配列決定結果に従って、位置1の前の配列をマイナスに設定し、位置80161のあとの配列はそれに続けてカウントした。
Figure 0006641366
種々のプラスミドによって運ばれる断片の、スピノサド生合成性の遺伝子クラスタに対する位置を、図6に示した。
4つのプラスミド10G3、9B5、8B8、15D1によって運ばれる断片は、全スピノサド生合成性の遺伝子クラスタおよびその上流および下流の配列を網羅できた。上記4つのプラスミドによって運ばれる断片の配列は以下の通り:
10G3によって運ばれるDNA断片配列:配列番号17;
9B5によって運ばれるDNA断片配列:配列番号18;
8B8によって運ばれるDNA断片配列:配列番号19;ならびに
15D1によって運ばれるDNA断片配列:配列番号20。
トリミング後、ライブラリプラスミド15D1、8B8、9B5、10G3を、配列における相同的な二重の交差によって、Saccharopolyspora erythraeaのエリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの位置にインテグレートした。図11は、全過程の模式図である。図11において、「US」は、エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの上流断片eryUであり、「DS」はエリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの下流断片eryDである。種々のプラスミドの改変方法、および相同的組換えを行う方法については、このあとで詳細に説明する。
〔実施例4:ライブラリプラスミド15D1の改変〕
本実施例の目的は、aac(3)IV遺伝子(アプラマイシン耐性遺伝子)およびoriT(接合開始点(conjugative origin)、接合に必須の要素)を含んでいる耐性断片をライブラリプラスミド15D1のHindIII部位に挿入して、改変プラスミドを接合に用いることができるようにすることであった。本実施例は2つのステップで行われた。耐性遺伝子カセットをClaIおよびEcoRIでプラスミドpIJ773から切り離し、当該耐性遺伝子カセットを、平滑末端化後、ベクターpUC118(Takara、商品番号D3322)のHincII部位にライゲートした(配列番号65)。切断された耐性断片はClaI付近の末端にHindIII部位を有しており、ベクターpUC118も1つのHindIII部位を有しているので、正確な挿入方向を有する形質転換体をスクリーニングし、耐性断片はHindIIIで切断されうる。第2のステップは、HindIIIで切断した耐性断片を、15D1のHindIII部位に挿入することである。耐性断片は、スクリーニングおよび接合のために機能するだけなので、その挿入方向はその後の実験の結果に影響しなかった。したがって、その挿入方向を決定する必要はなかった。特定の操作は以下の通りであった(図12に示す)。
以下の反応溶液:20μlのpIJ773、5μlの10×Hバッファー溶液、23μlのddHO、1μlのCla I(Takara、商品番号D1034A)、および1μlのEcoRI(Takara、商品番号D1040A)を調製した。
上記溶液を37℃のウォーターバスに1時間にわたって入れ、aac(3)IV遺伝子およびoriTを含んでいる1389bp断片を電気泳動で回収した。BKLキットで平滑末端化後、断片をpUC118/Hinc II、BAP(Takara、商品番号D3322)にライゲートして形質転換した。プラスミドを抽出するため形質転換体を選び出し、HindIIIを用いて酵素消化を行い、3502bp+1402bの酵素消化結果を有する組換えプラスミドをスクリーニングした。aac(3)IV遺伝子およびoriTを含んでいる1402bp断片を電気泳動で回収し、HindIIIで消化された脱リン酸化プラスミド15D1にライゲートして、組換えプラスミド15D1-AmTを得た。
〔実施例5:スピノサド生合成性の遺伝子クラスタの第1断片の、Saccharopolyspora erythraeaへの転移〕
組換えプラスミド15D1-AmTを接合(方法7を参照)によってSaccharopolyspora erythraea(ATCC 11635)に形質転換した。形質転換体を2度、継代培養したあと、アプラマイシン感受性のコロニーをスクリーニングした。ゲノムDNAを抽出し(方法10に従ったが、TSBの量を3mlに変え、他の試薬の量も同様に対応して減らした。ただし、70%エタノールで洗浄する間の量は依然として500μlにした。以下同様)、プライマーspnEF(配列番号15)/spnER(配列番号16)およびプライマーery1F(配列番号21)/ery1R(配列番号22)を用いてPCR検出をそれぞれ行った。ライブラリプラスミド15D1によって運ばれるDNA断片内の配列はプライマーspnEF/spnERによって増幅され、一方、エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタ内の配列はプライマーery1F/ery1Rによって増幅された。したがって、spnEF/spnERは標的のバンドを増幅できたが、ery1F/ery1Rは標的のバンドを増幅できなかった。これは、エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタがライブラリプラスミド15D1によって運ばれるDNA断片と置き換えられており、標的の株であることを示した。遺伝子組換え株ES01をスクリーニングによって得た。
以下の実施例6、8、10の目的は、耐性遺伝子カセットaac(3)IV+oriT(耐性遺伝子カセットはプラスミドpIJ773、配列番号65の14-1382部位からPCRで増幅された)を用いて、対応するライブラリプラスミド上のDSを、運ばれたゲノム断片の3’末端の部分配列と置き換えることであった。これは主に2つのステップに分けられた。長さがそれぞれ59ntおよび58ntの順方向プライマーおよび逆方向プライマーをまず設計した。当該プライマーの5’末端の39ntはそれぞれ相同性アームとして働き、一方、3’末端の20nt(順方向プライマー、配列番号63)および19nt(逆方向プライマー、配列番号64)は耐性遺伝子カセット上のプライマー配列と一致した。耐性遺伝子カセットはpIJ773からPCRによって増幅された。長さ39bpの相同性アームをPCR産物によって耐性遺伝子カセットの両端にそれぞれ導入した。これら2つの相同性アームは、ライブラリプラスミド上で置き換えられるべき断片の両端に位置していた。それから、PCR産物が、ライブラリプラスミドを含んでいるEscherichia coli BW25113 (pIJ790)に形質転換され、標的配列が、Escherichia coliの組換え系を用いて耐性遺伝子カセットに置き換えられた。種々の実施例に用いられているプライマーおよび置き換えられた断片の関連情報について表2を参照。
Figure 0006641366
〔実施例6:ライブラリプラスミド8B8の改変〕
(1)ライブラリプラスミド8B8を、コンピテントセルBW25113 (pIJ790)に、方法2に従って形質転換した。
(2)BW25113 (pIJ790、8B8)の1つの形質転換体を選び出し、Cmを含んでいる3mlLB培地に接種し、30℃において14〜18時間の間、220rpmで培養した。
(3)それから、形質転換体を、Km、Cm、Ap、および300μlの1MのL−アラビノースを含んでいる30mlのSOB培地(滅菌済の、2.0%のトリプトン、0.5%のイースト抽出物、0.05%のNaCl、2.5ml/Lの、1MのKCl、および4ml/Lの、2.5MのMgCl)に移し、OD600が0.4から0.6になるまで30℃、220rpmで培養した。
(4)4℃において遠心分離して株を回収し、10%グリセロールを用いて2回にわたって洗浄し、それから100μlの10%のグリセロールで懸濁して、エレクトロポレーション−コンピテントセルを得た。
(5)プラスミドpIJ773を鋳型として用いて、aac(3)IV+oriT耐性遺伝子カセットをPCR増幅し、相同的な交差のための長さ39bpの相同性アームを、耐性遺伝子カセットの両端に加えた。
反応系:25μlの5×PrimeSTARバッファー溶液(Mg2+Plus)、4μlのdNTP混合物(各2.5mM)、1μlのプライマー8BA−L(配列番号23、25μM)、1μlのプライマー8BA−R(配列番号24、25μM)、18μlのddHO、0.5μlのプラスミドpIJ773、および0.5μlのPrimeSTAR(登録商標)HS DNAポリメラーゼ。
反応プログラム:95℃×5分、(98℃×10秒、50℃×10秒、72℃×90秒)×10サイクル、72℃×2分、16℃×1分、(98℃×10秒、68℃×90秒)×15サイクル、72℃×1分、16℃×1分。
PCR産物の電気泳動後、約1.4kbの標的断片をゲル切断によって回収した。
(6)ステップ(5)で得られた耐性断片3μlを取り、ステップ(4)で得られた50μlのBW25113 (pIJ790/8B8) エレクトロポレーション−コンピテントセルに加えた。当該エレクトロポレーション−コンピテントセルをすべて、2mmのエレクトロポレーションカップ(BioRad)に移した。電気ショックのパラメータは、2500V、25μF、200Ωであった。電気ショック後、1mlのSOC培地(100mlのSOB培地につき、2mlの1mol/Lグルコース)を速やかに加え、1.5mlの遠心チューブにすべて移した。
(7)37℃のウォーターバスに1時間にわたって入れたあと、900μlの上澄を遠心分離により取り除き、沈殿物を、残っている培地に懸濁させ、Amを含んでいるLB固体培地上に完全に広げ、37℃において16時間、培養した。
(8)サイズの大きな形質転換体を選び出し、Amを含んでいる3mlのLB液に加え、37℃において6時間、200rpmで培養し、それからプラスミドを抽出して、プライマー8BD-L (配列番号25)/8BD-R(配列番号26)を用いてPCR検出を行った(PCR反応手順における伸張時間は4分であった)プライマー8BD−Lおよび8BD−Rはそれぞれ、ライブラリプラスミド8B8上で置き換えられるべき配列の両端に位置していた。置き換えがうまく行われている場合、プラスミドのPCR産物は1963bpの標的バンドとなる。置き換えがうまく行われていない場合、PCR産物は3957bpである。スクリーニング後、組換えプラスミド8B8-AmTが得られた。
〔実施例7:スピノサド生合成性の遺伝子クラスタの第2断片の、Saccharopolyspora erythraeaへの転移〕
組換えプラスミド8B8-AmTを、実施例5で得られた遺伝的に改変された株ES01に、接合で形質転換した。形質転換体を2度、継代培養したあと、アプラマイシン感受性コロニーをスクリーニングした。トータルDNAを抽出し、プライマー8BD-L(配列番号25)/8BD-R(配列番号26)をPCR検出に用いた。沈殿物は、実施例6のステップ(8)のそれと同じであり、標的株のPCR産物は1963bpのバンドのみであった。遺伝的に改変された株ES02をスクリーニングによって得た。
〔実施例8:ライブラリプラスミド9B5の改変〕
標的および方法は、実施例6のライブラリプラスミド8B8と同じであり、耐性遺伝子カセットを増幅するプライマーは9B5-L (配列番号27)/9B5-R (配列番号28)であった。プライマー95A-L(配列番号29)/95A-R(配列番号30)を用いてプラスミドPCR検出を行い、1881bpバンドを増幅できるプラスミドをスクリーニングし、組換えプラスミド9B5-AmTを得た。
〔実施例9:スピノサド生合成性の遺伝子クラスタの第3断片の、Saccharopolyspora erythraeaへの転移〕
組換えプラスミド9B5-AmT、実施例7で得られた遺伝的に改変された株ES02に、接合で形質転換した。形質転換体を2度、継代培養したあと、アプラマイシン感受性コロニーをスクリーニングした。トータルDNAを抽出し、プライマー95A-L(配列番号29)/95A-R (配列番号30)をPCR検出に用いた。標的株のPCR産物は1881bpのバンドのみであった。遺伝的に改変された株ES03をスクリーニングによって得た。
〔実施例10:ライブラリプラスミド10G3の改変〕
標的および方法は、実施例6のライブラリプラスミド8B8と同じであり、耐性遺伝子カセットを増幅するプライマーは10G3-L(配列番号31)/9B5-R(配列番号28)であった。プライマー10G-L(配列番号32)/10G-R(配列番号33)を用いてプラスミドPCR検出を行い、1676bp標的バンドを増幅できるプラスミドをスクリーニングし、組換えプラスミド10G3-AmTを得た。
〔実施例11:スピノサド生合成性の遺伝子クラスタの第4断片の、Saccharopolyspora erythraeaへの転移〕
組換えプラスミド10G3-AmTを、実施例9で得られた遺伝的に改変された株ES03に、接合で形質転換した。形質転換体を2度、継代培養したあと、アプラマイシン感受性コロニーをスクリーニングした。トータルDNAを抽出し、プライマー10G-L/10g-RをPCR検出に用いた。標的株のPCR産物は1676bpのバンドのみであった。遺伝的に改変された株ES04をスクリーニングによって得た。
〔実施例12:Saccharopolyspora spinosaのラムノース合成性の遺伝子クラスタを含んでいる組換えプラスミドの構築〕
本実施例の目的は、上流および下流の相同性アームの間に4つのラムノース合成性の遺伝子を集め、それによって、上記4つの遺伝子を、実施例11で得られた遺伝的に改変された株ES04の染色体に、相同的な二重の交差によって挿入することであった。遺伝的に改変された株ES04の染色体において、80kbスピノサド生合成性の遺伝子クラスタが、これまでの実施例において、エリスロマイシン合成遺伝子の位置に挿入され、エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタが同時に欠損していた。しかし、Saccharopolyspora spinosaに由来する、スピノサド生合成と無関係な2つの断片も同時に導入されており、これを「複数の操作可能領域」と呼ぶ(図11の、KCZ1およびKCZ2)。本実施例では、2つの相同性アームを、「複数の操作可能領域」うちの1つにおいて選択し、上記4つの挿入された遺伝子がスピノサド生合成性の遺伝子クラスタを損なわないようにした。したがって、本実施例は以下のいくつかのステップを含んでいる。
(1)「操作可能領域2」から上流および下流の相同性アームをクローニングし、当該アームを配列のベクターpUAmT14内に挿入する。
(2)4つのラムノース合成遺伝子をそれぞれクローニングし、当該遺伝子を配列の上記2つの相同性アームの間に挿入する。
本実施例は1つのベクターおよび5つの断片(2つの相同性アーム、ここで、3つの断片に、4つのラムノース合成遺伝子が分配されていた)に関するので、XbaI部位のみが、操作を容易にするために、二番目の相同性アームおよび3つの遺伝子断片をクローニングする間のクローニングのために選択された。以下は、次の条件に基づいて設計された解決策である。
(1)2つの相同性アームおよび4つのラムノース合成遺伝子の両方にXbaI部位はなかった。ベクターpUAmT14には2つのXbaI部位があったが(図13)、消化の第1ステップ後に、1つのXbaI部位だけが残った。
(2)エンドヌクレアーゼXbaIはメチル化に影響される酵素であった。認識部位TCTAGAのあとにある2つの塩基がTCである場合、メチル化機能を有する宿主株から抽出されたプラスミド(例えば、DH5α)は、XbaI部位によって切断できなかった。PCR産物はメチル化されていなかったので、PCR産物が直接消化される場合、認識部位のあとにある塩基がどのような配列であっても、酵素消化は影響されなかった。
したがって、具体的な解決策は以下のようなものであった。
(1)下流の相同性アームをまず、ベクターpUAmT14のAseI-HindIII部位にクローニングした。二重の酵素消化により、断片の挿入方向が正しいことが保障され、XbaI部位を下流の相同性アームの上流に位置させた。
(2)メチル化に影響されたXbaI部位を、PCR増幅で得られた上流相同性アームの5’末端に導入し、一方、メチル化に影響されていないXbaI部位を3’末端に導入した。断片がXbaIによって酵素消化され、先のステップで得られたプラスミドのXbaI部位に挿入されると、DH5αから抽出されたプラスミド中の上流相同性アームおよび下流相同性アーム間のXbaI部位だけを切断することができ、他のXbaI部位は、メチル化の影響で切断できなくなった。これにより、以下のラムノース遺伝子断片がすべて、上記2つの相同性アーム間に挿入された。
(3)3つのラムノース遺伝子断片を、同じ方法でXbaI部位に挿入した。
具体的な実施プロセスは以下の通りである。
(1)下流相同性アームの挿入:
ライブラリプラスミド15D1を鋳型として、プライマー005DF(配列番号34、5’末端にHind III部位を導入)/006DR(配列番号35、5’末端に Ase I部位を導入)を用いてPCR増幅を行い、下流相同性アーム断片5: D PCR(配列番号48)を得た。断片5を回収し、ベクターpUAmT1とともにAseI+HindIIIの二重の酵素消化を行った。
反応系:20μlの断片5(または担体pUAmT14)、5μlの10×Tangoバッファー溶液、23μlのddHO、1μlのAseI (Fermentas、商品No. ER0911)、1μlのEcoRI(Fermentas、商品No. ER0501)。
37℃のウォーターバスに1時間にわたって入れたあと、生成物をそれぞれ直接回収し、ライゲートして、組換えプラスミドpAT-Dを得た。
(2)上流相同性アームの挿入:
ライブラリプラスミド15D1を鋳型として、プライマー007UF(配列番号36。5’末端にメチル化に影響されたXbaI部位を導入)/008UR(配列番号37。5’末端にメチル化に影響されていないXbaI部位を導入)を用いてPCR増幅を行い、上流相同性アーム断片6: U PCR(配列番号49)を得た。断片6に対してXbaIで酵素消化を行い、XbaIで消化した脱リン酸化プラスミドpAT-Dにライゲートし、形質転換した。形質転換体のプラスミドを抽出し、プライマー009F(配列番号44)/010R(配列番号45)を用いてPCR増幅を行った。フォワードプライマー009Fは上流相同性アームに位置し、リバースプライマー010Rは下流相同性アームに位置した。上流方向性アームの挿入方向が正しい場合、PCR産物は170bpとなる。挿入方向が誤っている場合、PCR産物は得られない。組換えプラスミドpAT-DUはスクリーニングによって得られた。
(3)上流相同性アームおよび下流相同性アームの間への、gtt遺伝子の挿入:
Saccharopolyspora spinosaのトータルDNAを鋳型として、プライマーgttF(配列番号38。5’末端にメチル化に影響されていないXbaI部位を導入)/gttR(配列番号39、5’末端にメチル化に影響されたXbaI部位を導入)を用いてPCR増幅を行い、gtt遺伝子を含んでいる断片7: gtt PCR(配列番号50)を得た。断片7に対してXbaIで酵素消化を行い、XbaIで消化した脱リン酸化プラスミドpAT-DUおよびライゲートし、組換えプラスミドpAT-DgUを得た。
(4)上流相同性アームおよび下流相同性アームの間への、epi遺伝子の挿入:
Saccharopolyspora spinosaのトータルDNAを鋳型として、プライマーepiF(配列番号40、5’末端にメチル化に影響されていないXbaI部位を導入)/epiR(配列番号41、5’末端にメチル化に影響されたXbaI部位を導入)を用いてPCR増幅を行い、epi遺伝子を含んでいる断片8:epiPCR(配列番号51)を得た。断片8に対してXbaIで酵素消化を行い、XbaIで消化した脱リン酸化プラスミドpAT-DgUにライゲートし、組換えプラスミドpAT-DgeUを得た。
(5)上流相同性アームおよび下流相同性アームの間への、gdhおよびkre遺伝子の挿入:
Saccharopolyspora spinosaのトータルDNAを鋳型として、プライマーgdhF(配列番号42。5’末端にメチル化に影響されていないXbaI部位を導入)/gdhR(配列番号43。5’末端にメチル化に影響されていないXbaI部位を導入)を用いてPCR増幅を行い、gdh+kre遺伝子を含んでいる断片9:gdhPCR(配列番号2)を得た。断片9に対してXbaIで酵素消化を行い、XbaIで消化した脱リン酸化プラスミドpAT-DgeUおよびライゲートし、組換えプラスミドpAT-DgegUを得た。そのプラスミドプロファイルを図14に示した。
4つのラムノース合成遺伝子の配列および方向はラムノースの合成に影響しないので、当該遺伝子がステップ(3)〜(5)で挿入されるのを確認しさえすればよく、挿入の方向および配列は決定する必要はなかった。配列決定検出により、プラスミドpAT-DgegUは4つのラムノース合成遺伝子を含んでいる。
〔実施例13:Saccharopolyspora spinosaのラムノース合成性の遺伝子クラスタの、Saccharopolyspora erythraeaへの転移〕
組換えプラスミドpAT-DgegUを、実施例11で得られた遺伝的に改変された株ES04へ接合により形質転換した。形質転換体を2度、継代培養したあと、アプラマイシン感受性コロニーをスクリーニングした。トータルDNAを抽出し、プライマー009F(配列番号44)/010R(配列番号45)を用いてPCR検出を行った。プライマー009Fおよび010Rはそれぞれ、上流相同性アームおよび下流相同性アームに位置していた。4つのラムノース合成遺伝子が首尾よく挿入された場合は、PCR産物は4931bpとなる。4つのラムノース合成遺伝子が首尾よく挿入されなかった場合は、PCR産物は1322bpとなる。遺伝的に改変された株ES05をスクリーニングによって得た。
Figure 0006641366
遺伝的に改変された株ES05のスピノサド合成性の遺伝子クラスタの種々のライブラリプラスミド間の接合部に対する配列決定を行った。種々の接合点の相対位置を図16に示し、結果を表3に示した。シークエンシングの結果は想定した結果と一致した。このことが示すのは、スピノサド合成性の遺伝子クラスタが遺伝的に改変された株へすでに移動しており、配列順は、Saccharopolyspora spinosa中のスピノサド合成性の遺伝子クラスタの配列順と一致した。
遺伝的に改変された細菌ES05に挿入されたスピノサド合成性の遺伝子クラスタおよびラムノース合成性の遺伝子クラスタに対する配列決定をさらに行った。結果は、想定した配列および完全に一致した。このことが示すのは、はっきりした遺伝的背景を有する遺伝的に改変された株が得られたということである。
〔実施例14:遺伝学的に改変された株ES05の発酵〕
ES05のコロニー塊を種培地(3.0%のスターチ、2.5%の大豆のケーク粉末、0.5%のペプトン、3.0%のキストリン、1.0%のグルコース、0.4%の塩化ナトリウム、pH7.5)で、34℃、48時間、200rpmで培養し、発酵培地(3.0%の大豆ケーク粉末、4.0%のコーンスターチ、3.0%のキストリン、0.2%の硫酸アンモニウム、0.6%の硫酸カルシウム、1.0%のグルコース、0.04%のリン酸二水素カリウム、pH6.8)に、10%の播種量において移し、34℃において7〜8日間、200rpmで培養した。発酵液1mlを取り、4mlの無水エタノールに浸し、1時間にわたって超音波処理し、それから濾過した。濾過物に対して、以下の条件でHPLC検出を行った。C18カラム、水溶液の移動相は、メタノール、アセトニトリル、0.05%の酢酸アンモニウム(1800:1800:400)、流速1ml/分、検出波長250nm。スピノサド生成株Saccharopolyspora spinosaをポジティブコントロールにし、Saccharopolyspora erythraeaをネガティブコントロールにした。結果を図15A〜15Cに示した。ポジティブコントロール(図15A)および本発明で得られた遺伝的に改変された株ES05(図15B)の両方とも、スピノサドの構成要素AおよびDを生成できたのに対し、ネガティブコントロール(図15C)はスピノサドAおよびDを生成できなかった。

Claims (19)

  1. スピノサド異種発現株の構築方法であって、
    Saccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)におけるエリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタが、Saccharopolyspora spinosa(サッカロポリスポラ
    スピノサ)のスピノサド合成性の遺伝子クラスタおよびラムノース合成性の遺伝子クラスタによって置き換えられる、方法。
  2. Saccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)における上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタを、Saccharopolyspora spinosa(サッカロポリスポラ スピノサ)の上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタおよびラムノース合成性の遺伝子クラスタに置き換えるために複数の相同的組換えを利用している、請求項1に記載の方法。
  3. 以下のステップ:(1)Saccharopolyspora spinosa(サッカロポリスポラ スピノサ)の上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタの配列ならびにその上流配列および下流配列を網羅している複数の核酸断片であって、隣接する当該核酸断片が重複している配列を保有している、複数の核酸断片を得ることと;(2)ステップ(1)において得られた上記複数の核酸断片を、Saccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)のゲノム内に連続的に連結して、これによって、Saccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)における上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタを、Saccharopolyspora spinosa(サッカロポリスポラ スピノサ)の、上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタの配列ならびにその上流配列および下流配列と置き換えて組換え株を得るために、相同的組換えの機序を用いることと;(3)Saccharopolyspora spinosa(サッカロポリスポラ スピノサ)のラムノース合成性の遺伝子クラスタの、核酸断片を得ることおよびステップ(2)において得られた上記組換え株のスピノサド合成性の遺伝子クラスタの上記下流配列を、ラムノース合成性の遺伝子クラスタの上記核酸断片に置き換えて、上記スピノサド異種発現株を得るために、相同的組換えの機序を用いることとを包含している、請求項1または2に記載の方法。
  4. ステップ(1)において、上記複数の核酸断片が、少なくとも3つの核酸断片である、請求項3に記載の方法。
  5. 上記複数の核酸断片が、3、4、5、6または7つの核酸断片であり、かつ当該核酸断片のそれぞれが、25〜40kbの大きさを有している、請求項4に記載の方法。
  6. 上記複数の核酸断片が4つの核酸断片であり、かつその配列が配列番号17〜20にそれぞれ示されている、請求項5に記載の方法。
  7. ステップ(1)において、Saccharopolyspora spinosa(サッカロポリスポラ スピノサ)のゲノムDNAが、ゲノムライブラリを構築するために、Sau3AIを用いて消化され、上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタの配列ならびにその上流配列およびその下流配列を網羅している上記複数の核酸断片が、PCRを介してスクリーニングされる、請求項3に記載の方法。
  8. ステップ(2)において、上記複数の核酸断片がプラスミドとしてそれぞれ構築され、かつ相同的組換えが複数の当該プラスミドおよび上記Saccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)の間に生じ、
    上記複数の核酸断片の5’から3’への配列順に関して最後の上記核酸断片を含んでいる上記プラスミドを除く他のプラスミドのすべてが、順に接続されている5’相同性アーム、ステップ(1)において得られた複数の上記核酸断片および耐性遺伝子カセットを含んでおり、
    上記プラスミドのそれぞれの上記5’相同性アームが、Saccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)の上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの、上記上流配列に対して相同であり;上記最後の核酸断片を含んでいる上記プラスミドが、順に接続されている耐性遺伝子カセット、5’相同性アーム、当該最後の核酸断片および3’相同性アームを含んでおり、
    上記3’相同性アームが、Saccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)の上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの、上記下流配列に対して相同である、請求項3から7のいずれか1項に記載の方法。
  9. コスミドsupercos-1が、ステップ(2)における初期のプラスミドとして使用され、かつ上記耐性遺伝子カセットがaac(3)IV+oriT配列を含んでいる、請求項8に記載の方法。
  10. ステップ(2)におけるプラスミドの構築処理が、以下の通りである:
    5’相同性アームおよび3’相同性アームとしてそれぞれ機能させるために、上記Saccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)の、上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタの上記上流核酸断片および下流核酸断片を上記コスミドsupercos-1に挿入して、改変されたコスミドeryUD-cos2を得ること;およびそれから、上記コスミドeryUD-cos2のうち上記2つの相同性アームの間に、ステップ(1)において得られた上記複数の核酸断片を挿入すること;上記最後の核酸断片を含んでいる上記プラスミドの上記5’相同性アームの上流に耐性遺伝子カセットを導入すること;
    ならびに他の複数のプラスミドのうち上記3’相同性アームを、他の複数のプラスミドにおける耐性遺伝子カセットによって置き換えること、
    請求項8に記載の方法。
  11. 他の複数のプラスミドのうち上記3’相同性アームを、上記耐性遺伝子カセットによって、置き換えることが、相同的組換えを介している、請求項10に記載の方法。
  12. 上記5’相同性アームの配列が配列番号46に示され、かつ3’相同性アームの配列が配列番号47に示される、請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
  13. ステップ(2)が、以下の通りである:
    相同的組換えが、上記最後の核酸断片を含んでいる上記プラスミドおよび初期のSaccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)の間に生じ、それから相同的組換えが、他の核酸断片を含んでいる複数の上記プラスミドおよび前の段階における相同的組換えを介して得られた上記Saccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ
    エリスレア)の間に、順に生じる、請求項8から12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 上記初期のSaccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)がATCC11635である、請求項13に記載の方法。
  15. ステップ(3)において、上記ラムノース合成性の遺伝子クラスタが、相同的組換えのためのプラスミドとして構築され、相同的組換えが、上記プラスミドおよびステップ(2)において得られた上記組換え株の間に生じ、上記プラスミドが、2つの相同性アームおよび当該相同性アームの間に配置されている上記ラムノース合成性の遺伝子クラスタを含んでおり、上記2つの相同性アームの両方が、上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタの上記下流配列に対してそれぞれ相同である、請求項から14のいずれか1項に記載の方法。
  16. これらの2つの相同性アームの配列が、それぞれ配列番号49および配列番号48である、請求項15に記載の方法。
  17. 上記エリスロマイシン合成性の遺伝子クラスタが、Saccharopolyspora spinosa(サッカロポリスポラ スピノサ)の、上記スピノサド合成性の遺伝子クラスタおよびラムノース合成性の遺伝子クラスタによって置き換えられているSaccharopolyspora erythraea(サッカロポリスポラ エリスレア)である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法によって得られた、スピノサド異種発現株。
  18. 請求項17に記載のスピノサド異種発現株の、スピノサドを調製することにおける、使用。
  19. スピノサドを調製する方法であって、当該方法が、請求項17に記載のスピノサド異種発現株を使用する、方法。
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