JP6638276B2 - 多孔質中空糸膜の製造方法 - Google Patents

多孔質中空糸膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多孔質中空糸膜の製造方法に関する。
従来、透水性能に優れた濾過膜として、湿式または乾湿式紡糸法により製造される、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート、ポリフッ化ビニリデン等の膜形成性樹脂製の多孔質中空糸膜が知られている。これらの多孔質中空糸膜は、膜形成性樹脂溶液をミクロ相分離させた後、同膜形成性樹脂溶液を非溶媒中で凝固させて製造するものであり、高空孔率で且つ非対称な構造を持つ。上記膜形成性樹脂の中でもポリフッ化ビニリデン樹脂は、耐薬品性、耐熱性に優れているため、分離膜の素材として好適に用いられている。
各種の膜形成性樹脂溶液を乾湿式紡糸して多孔質中空糸膜を製造する場合、ノズル吐出口から凝固液までを空走させる区間の温度・湿度条件などによって、多孔質中空糸膜の外表面側に形成される多孔質部の孔径が大きく左右される。一般的に、非溶媒誘起型相分離法によりスピノーダル分解をさせた製膜法では、空走部における水蒸気の吸収量が多くなるに連れて製造される膜の孔径及び透過係数が大きくなる傾向にある。
特許文献1には、平膜状の微孔性膜の製造方法として、ポリマーに膨潤剤と非溶媒を加えて溶媒に溶解してなる製膜原液を溶液状態で平板上に流延し、流延された液膜の表面に温度15〜60℃、相対湿度10〜80、風速0.2〜4msecの範囲で調節した空気を2〜17秒間当てた後、凝固浴に浸漬させる方法が開示されている。この方法では、膜表層の孔径を制御して透過流量を向上させることが可能とされている。
しかし、上記方法は、気相部での接触時間が長く、紡糸安定性の観点から多孔質中空糸膜の製造に適した方法とは言い難い問題があった。気相部での接触時間を短くした場合には十分な透過流量(透水性能)が得られない問題があった。
特許文献2〜3の実施例では、空走部の相対湿度を80〜100%、温度を40〜50℃と高くして乾湿式紡糸することにより多孔質中空糸膜が製造されている。この方法では、比較的短い距離で十分な吸湿をさせることができる。
空走部の相対湿度を高く保つ簡便な方法として、ノズル下面に始まる空走部のすべてを密閉する方法がある。
しかし、上記方法では、紡糸の際にノズル表面が結露し、紡糸安定性を損なう問題があった。
このような問題に対し、特許文献4には、膜形成性樹脂溶液を乾湿式紡糸するに際し、ノズル吐出孔付近を低湿度雰囲気とし、それ以外の暴露区間を高湿度雰囲気とした雰囲気中を空走させる多孔質中空糸膜の製造方法が開示されている。具体的には、湿度40%RHの外気状態中を空走させた後、密閉容器内に収容された凝固浴の上部空間(湿度90〜100%RH)を空走させている。この方法では、乾湿式紡糸法における空走部に、ノズル吐出口付近の低湿度雰囲気部と、それ以外の高湿度雰囲気部との2領域を設けることにより、ノズル下面への水滴の付着を防止し、安定した紡糸が可能とされている。
しかし、上記方法では、低湿度雰囲気部と高湿度雰囲気部との界面近傍で水蒸気が凝縮して水滴(湯気)を生成することがあった。これが空走中の膜形成性樹脂溶液表面に付着すると、局所的な凝固の斑、水吸収斑となり、欠陥点が増える等の膜品質の低下を招く問題があった。
特開昭63−139930号公報 特開平7−163849号公報 特開平9−29078号公報 特開2002−58971号公報
本発明の目的は、透水性能および膜品質に優れた多孔質中空糸膜を良好な紡糸安定性で製造できる製造方法を提供することにある。
本発明は、以下の態様を有する。
<1>環状の吐出口が形成されたノズルの前記吐出口から膜形成性樹脂溶液を吐出させて紡糸し、中空糸状前駆体を得る工程と、前記中空糸状前駆体を空走させる工程と、前記空走させた中空糸状前駆体を、前記膜形成性樹脂溶液を凝固させる凝固液に浸漬する工程と、を含む多孔質中空糸膜の製造方法において、
前記中空糸状前駆体を空走させる、前記ノズルの吐出口から前記凝固液までの空走部が密閉されておらず、
前記凝固液の温度が61℃以上であり、
前記ノズルの表面温度および前記膜形成性樹脂溶液の吐出温度がそれぞれ、前記凝固液の温度+5℃以上であることを特徴とする、多孔質中空糸膜の製造方法。
<2>前記凝固液の温度が70℃以上である<1>に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
<3>前記空走部の長さが20mm以下である<1>又は<2>に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
<4>前記膜形成性樹脂溶液の吐出温度が75℃以上である<1>〜<3>のいずれかに記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
<5>前記膜形成性樹脂溶液の粘度が、40℃において5万mPa・sec以上である<1>〜<4>のいずれか一項に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
<6>前記ノズルに、一端が前記吐出口の内側に開口する貫通孔が形成されており、
前記中空糸状前駆体を得る工程にて、前記貫通孔に中空多孔質支持体を通過させ、前記吐出口の内側の開口から導出させるとともに前記膜形成性樹脂溶液を前記吐出口から吐出させ、前記中空多孔質支持体の外周面上に前記膜形成性樹脂溶液の塗膜を形成することにより紡糸する<1>〜<5>のいずれか一項に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
<7>前記中空多孔質支持体が、熱処理された支持体である<6>に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
<8>前記熱処理された支持体が、マルチフィラメントからなる1本の糸を丸編した中空状編紐である<7>に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
本発明の多孔質中空糸膜の製造方法によれば、透水性能および膜品質に優れた多孔質中空糸膜を良好な紡糸安定性で製造できる。
本発明の多孔質中空糸膜の製造方法の第一実施形態で用いられる紡糸装置の概略構成図である。 図1に示す紡糸装置が備えるノズル部の模式的な縦断面図である。
本発明の多孔質中空糸膜の製造方法は、環状の吐出口が形成されたノズルの前記吐出口から膜形成性樹脂溶液を吐出させて紡糸し、中空糸状前駆体を得る工程と、前記中空糸状前駆体を空走させる工程と、前記空走させた中空糸状前駆体を、前記膜形成性樹脂溶液を凝固させる凝固液に浸漬する工程と、を含む多孔質中空糸膜の製造方法において、
前記中空糸状前駆体を空走させる、前記ノズルの吐出口から前記凝固液までの空走部が密閉されておらず、
前記凝固液の温度が61℃以上であり、
前記ノズルの表面温度および前記膜形成性樹脂溶液の吐出温度がそれぞれ、前記凝固液の温度+5℃以上であることを特徴とする。
(多孔質中空糸膜)
本発明の多孔質中空糸膜の製造方法で製造される多孔質中空糸膜は、膜形成性樹脂によって形成される多孔質膜層を備える。
膜形成性樹脂としては、たとえば、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐薬品性に優れることから、ポリフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
多孔質中空糸膜は、一層の多孔質膜層からなる一層膜であってもよく、少なくとも一層の多孔質膜層を含む二層以上の多層膜であってもよい。
多孔質中空糸膜としては、優れた機械的強度が得られることから、中空多孔質支持体上に多孔質膜層を有するものが好ましい。
なお、ここでは多孔質膜層と中空多孔質支持体との位置関係を明確にするために「中空多孔質支持体上」と表現しているが、多孔質膜層が中空多孔質支持体の空隙を通じて中空多孔質支持体の内部に含浸している場合もある。
中空多孔質支持体としては、高い機械的強度を有し、かつ多孔質膜層と一体化できるものであれば、適宜選択して使用することができ、特に限定するものではないが、たとえばフィラメントが筒状に成形されたものが挙げられる。フィラメントを筒状に成形した中空多孔質支持体としては、1本のフィラメントを円筒形に丸編みにした編紐形態の中空多孔質支持体、複数のフィラメントを円筒形に組み上げた組紐形態の中空多孔質支持体等が挙げられる。フィラメントの成形は、公知の方法により行うことができる。
なお、丸編とは、丸編機を用いて筒状の横メリヤス生地を編成することであり、フィラメントを円筒状に丸編みした編紐とは、フィラメントを湾曲させて螺旋状に伸びる連続したループを形成し、これらループを前後左右に互いに関係させたものである。
フィラメントの材質としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維等が挙げられる。フィラメントは、複数種類の繊維を組み合わせたものであってもよい。
合成繊維としては、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等のポリエステル系繊維;ポリアクリロニトリル等のアクリル系繊維;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維;ポリビニルアルコール系繊維;ポリ塩化ビニリデン系繊維;ポリ塩化ビニル系繊維:ポリウレタン系繊維;フェノール樹脂系繊維;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系繊維;ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維等が挙げられる。
半合成繊維としては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、キチン、キトサン等を原料としたセルロース誘導体系繊維:プロミックスと呼称される蛋白質系繊維等が挙げられる。
再生繊維としては、ビスコース法、銅−アンモニア法、有機溶剤法等により得られるセルロース系再生繊維(レーヨン、キュプラ、ポリノジック等)が挙げられる。天然繊維としては、亜麻、黄麻等が挙げられる。
これらのなかでは、耐薬品性に優れる点から、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維からなる群から選ばれる1種が好ましく、中空状多孔質膜の洗浄に用いられる次亜塩素酸塩(例えば次亜塩素酸ナトリウム)に対する耐性が優れる点では、ポリエステル系繊維が特に好ましい。
フィラメントとしては、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸等が挙げられ、中でも、中空多孔質支持体の外径を制御しやすい点で、マルチフィラメントが好ましい。ここで、マルチフィラメントとは、複数(数本から数十本)の繊維を撚り合わせたものである。
フィラメントは、捲縮加工が施されたもの(捲縮糸)でもよく、捲縮加工が施されていないもの(非捲縮糸)でもよい。捲縮糸は、糸自体が伸縮性を有するため、筒状に製紐する際の張力管理が比較的容易である。非捲縮糸は、糸自体に伸縮性を有さないため、筒状に製紐する際の張力管理が難しいが、繊度の小さな糸を選択でき、かつ、合糸数も少なくすることができる。
フィラメントの繊度は、中空多孔質支持体の外径、内径、厚み等を勘案して適宜決定でき、例えば55〜500dtexが好ましく、111〜420dtexがより好ましい。
中空多孔質支持体としては、多孔質膜層を製膜する際の張力による伸びを抑えられることから、熱処理されたものが好ましく、製造コストが低く、柔軟性と断面の形状安定性(真円性)を両立でき、多孔質膜層との接着性にも優れることから、編紐を熱処理したものがより好ましい。中でも、マルチフィラメントからなる1本の糸を丸編した中空状編紐を熱処理したものが好ましい。
中空多孔質支持体の外径は、0.8〜4.5mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。中空多孔質支持体の外径が前記範囲の上限値以下であれば、中空多孔質支持体の製造が容易である。また、多孔質中空糸膜の外径を小さくでき、多孔質中空糸膜をケースに収納して膜モジュール化する際に中空状多孔質膜の充填量を充分に大きくできる。中空多孔質支持体の外径が前記範囲の下限値以上であれば、内径が充分に大きく、多孔質中空糸膜でろ過された処理水が中空多孔質支持体の内側を流れる際に生ずる圧力損失による流量低下が生じにくい。
中空多孔質支持体の外径は、多孔質中空糸膜の外径Dから多孔質膜層の膜厚Lの2倍値を除いた数値(D−2L)である。
多孔質中空糸膜の外径Dは、多孔質中空糸膜の任意の3箇所以上を測定し、それらの平均値として求められる。
多孔質膜層の膜厚Lは、多孔質中空糸膜の外表面から、中空多孔質支持体の外径のうち最大である部分までの長さのことをいう。すなわち、中空多孔質支持体の外周面に凹凸がある場合、多孔質中空糸膜の外表面から、中空多孔質支持体の外周面の凸の部分までの長さを膜厚Lとする。膜厚Lは、任意の3箇所以上を測定し、その平均値として求められる。
多孔質中空糸膜の外径Dは、1〜5mmが好ましく、1.2〜3.5mmがより好ましい。前記範囲の上限値以下であれば、多孔質中空糸膜を膜モジュール化する際に中空状多孔質膜の充填量を充分に大きくできる。前記範囲の下限値以上であれば、内径が充分に大きく、多孔質中空糸膜でろ過された処理水が中空多孔質支持体の内側を流れる際に生ずる圧力損失による流量低下が生じにくい。
(第一実施形態)
以下、本発明の多孔質中空糸膜の製造方法の第一実施形態を、図1を用いて説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本実施形態の多孔質中空糸膜の製造方法に用いられる紡糸装置10の概略構成図である。
<紡糸装置>
紡糸装置10は、中空多孔質支持体1の外周面に内層と外層からなる2層構成の多孔質膜層が形成された中空糸膜を製造するための紡糸用のノズル部12と、ノズル部12に膜形成性樹脂溶液L1を供給する膜形成性樹脂溶液供給装置14と、ノズル部12に中空多孔質支持体1を供給する巻き出し装置(図示略)と、膜形成性樹脂溶液L1を凝固させる凝固液L2を収容する凝固浴16と、ノズル部12から吐出された膜形成性樹脂溶液L1が外周面に塗布された中空多孔質支持体1を凝固浴16に連続的に導入するガイドロール18とを備える。
膜形成性樹脂溶液供給装置14は、ノズル部12に接続された紡糸管14aと、紡糸管14a上に配置された送液ポンプ14bとを備える。本実施形態においては、2つの膜形成性樹脂溶液供給装置14がノズル部12に接続されている。以下、一方の膜形成性樹脂溶液供給装置14によって供給される膜形成性樹脂溶液L1を第1の膜形成性樹脂溶液103、他方の膜形成性樹脂溶液供給装置14によって供給される膜形成性樹脂溶液L1を第2の膜形成性樹脂溶液104ともいう。
凝固浴16は、ノズル部12の下方に配置されている。
ノズル部12と、凝固浴16内の凝固液L2との間は離間している。これにより、中空糸状前駆体を空走させる空走部Sが形成されている。
図2は、ノズル部12の模式的な縦断面図である。
ノズル部12は、中空多孔質支持体1が挿入される支持体挿入孔110が上下方向に形成された金属製の導入プレート21と、導入プレート21の下流側の端面に、ビス等によって脱着可能に取り付けられたノズル23とを備える。
導入プレート21は平面視で円形状であり、その軸心に沿って支持体挿入孔110が形成されている。支持体挿入孔110は、導入プレート21の上流側の端面から下流側の端面まで貫通している。
導入プレート21には、支持体挿入孔110に加えて、膜形成性樹脂溶液が導入される第1の導入孔112と第2の導入孔113が形成されている。第1の導入孔112と第2の導入孔113は、平面視で導入プレート21における支持体挿入孔110よりも外側にそれぞれ離間して位置し、導入プレート21の上流側の端面から下流側の端面まで支持体挿入孔110と並行するように形成されている。
第1の導入孔112には、多孔質膜層の内層を形成するための第1の膜形成性樹脂溶液103が導入される。第2の導入孔113には、多孔質膜層の外層を形成するための第2の膜形成性樹脂溶液104が導入される。
ノズル23は、導入プレート21側から順に三段に重ねられた円柱状の第1ノズルブロック105A、第2ノズルブロック105B及び第3ノズルブロック105Cを備えるノズル本体105を備えている。
ノズル本体105の材質としては、種々の材質を選択することができ、耐熱性、耐食性、強度等の観点からは、ステンレス鋼材(SUS)が好ましい。
第1ノズルブロック105Aは、円柱状のブロック本体151と、ブロック本体151における導入プレート21と反対側の端面の中央から突出するように一体に設けられた円筒状の筒状突起106と、を備えている。
筒状突起106は、基端側の大径部106aと、先端側の小径部106bとを備えている。大径部106aの軸心と、小径部106bの軸心は一致している。
筒状突起106の内部は、中空多孔質支持体1が挿通される支持体挿通孔107となっている。支持体挿通孔107は、筒状突起106の先端からブロック本体151の導入プレート21側の端面まで形成されており、導入プレート21に形成された支持体挿入孔110と連通している。筒状突起106の先端には、支持体挿通孔107を通った中空多孔質支持体1が繰り出される支持体繰り出し口107aが形成されている。導入プレート21の支持体挿入孔110に挿入された中空多孔質支持体1は、第1ノズルブロック105Aの支持体挿通孔107を通って支持体繰り出し口107aから外部に繰り出される。例えば、ガイドロール18によって支持体繰り出し口107aから中空多孔質支持体1を連続的に引き出す態様等を採用することができる。
第2ノズルブロック105Bは、円柱状のブロック本体152と、ブロック本体152における導入プレート21と反対側の端面の中央から突出するように一体に設けられた円筒状の筒状突部108と、を備えている。
ブロック本体152におけるブロック本体151側の端面には、平面視形状が円形状の凹部120が形成されている。凹部120は、その内径が筒状突起106における大径部106aの外径よりも大きく、凹部120の内壁面が大径部106aを取り囲むように形成されている。ノズル本体105の内部における凹部120と大径部106aの間の空間が、円環状の第1の原液貯液部121とされている。円環状の第1の原液貯液部121の中心は、筒状突起106における大径部106aの軸心と一致している。
第1ノズルブロック105Aのブロック本体151と第2ノズルブロック105Bのブロック本体152とが重なった部分には、第1の原液導入部114が形成されている。第1の原液導入部114は、平面視でブロック本体151における支持体挿通孔107の外側で、かつブロック本体152における凹部120の外周部分に対応するように位置し、ブロック本体151の上流側の端面から凹部120と通じるように、支持体挿通孔107と並行して形成されている。第1の原液導入部114の底面は凹部120の底面と面一になっている。
第1の原液導入部114は、第1の導入孔112と連通しており、第1の導入孔112に導入された第1の膜形成性樹脂溶液103が流入してくるようになっている。
第1の原液導入部114を流通してきた第1の膜形成性樹脂溶液103は、第1の原液貯液部121に流入するようになっている。第1の原液貯液部121では、第1の原液導入部114から流入してきた第1の膜形成性樹脂溶液103が、筒状突起106における大径部106aの周囲で円環状に貯液される。具体的には、第1の原液導入部114から第1の原液貯液部121に流入してきた第1の膜形成性樹脂溶液103は、第1の原液貯液部121内で二手に分岐してそれぞれ円弧状に流れ、第1の原液導入部114と反対側で合流して円環状とされる。
平面視における筒状突部108の中央には、凹部120と連通し、筒状突部108の先端面まで延びる貫通孔122が形成されている。貫通孔122は、その内径が筒状突起106における小径部106bの外径よりも大きく、貫通孔122の内壁面が小径部106bを取り囲むように形成されている。貫通孔122と小径部106bの間の空間が、円筒状の第1の原液賦形部123とされている。円筒状の第1の原液賦形部123の軸心は、筒状突起106における小径部106bの軸心と一致している。
第1の原液貯液部121において円環状とされた第1の膜形成性樹脂溶液103は、第1の原液賦形部123に流入して円筒状に賦形される。
第3ノズルブロック105Cにおけるブロック本体152側の端面には、平面視形状が円形状の凹部124が形成されている。凹部124は、その内径が筒状突部108の外径よりも大きく、凹部124の内壁面が筒状突部108を取り囲むように形成されている。ノズル本体105の内部における凹部124と筒状突部108の間の空間が、円環状の第2の原液貯液部125とされている。円環状の第2の原液貯液部125の中心は、筒状突起106における小径部106bの軸心と一致している。
ノズル23では、第2ノズルブロック105Bのブロック本体152に第1の原液貯液部121が形成され、第2ノズルブロック105Bよりも下側の第3ノズルブロック105Cに第2の原液貯液部125が形成されている。すなわち、外層側に積層される第2の膜形成性樹脂溶液104が貯液される第2の原液貯液部125が、内層側に積層される第1の膜形成性樹脂溶液103が貯液される第1の原液貯液部121よりも下流側となるように、支持体挿通孔107の軸方向にずれて形成されている。このように、外層側に積層される膜形成性樹脂溶液が貯液される原液貯液部が、内層側に積層される膜形成性樹脂溶液が貯液される原液貯液部よりも下流側となるように、支持体挿通孔の軸方向にずれて形成されていることにより、ノズルを幅方向にコンパクトに設計でき、製膜装置の操作性ならびに生産性を向上できる。
第1ノズルブロック105Aのブロック本体151と第2ノズルブロック105Bのブロック本体152と第3ノズルブロック105Cとが重なった部分には、第2の原液導入部115が形成されている。第2の原液導入部115は、平面視でブロック本体151及びブロック本体152における第1の原液導入部114よりも外側で、かつ第3ノズルブロック105Cにおける凹部124の外周部分に対応するように位置し、ブロック本体151の上流側の端面から凹部124と通じるように、支持体挿通孔107と並行して形成されている。第1の原液導入部114の底面は凹部124の底面と面一になっている。
第2の原液導入部115は、第2の導入孔113と連通しており、第2の導入孔113に導入された第2の膜形成性樹脂溶液104が流入してくるようになっている。
第2の原液導入部115を流通してきた第1の膜形成性樹脂溶液103は、第2の原液貯液部125に流入するようになっている。第2の原液貯液部125では、第2の原液導入部115から流入してきた第2の膜形成性樹脂溶液104が、筒状突部108の周囲で円環状に貯液される。具体的には、第2の原液導入部115から第2の原液貯液部125に流入してきた第2の膜形成性樹脂溶液104は、第2の原液貯液部125内で二手に分岐してそれぞれ円弧状に流れ、第2の原液導入部115と反対側で合流して円環状とされる。
平面視における第3ノズルブロック105Cの中央には、凹部124と連通し、第2ノズルブロック105Bと反対側の端面まで延びる貫通孔126が形成されている。貫通孔126は、その内径が筒状突起106における小径部106bの外径よりも大きく、貫通孔126の内壁面が小径部106bを取り囲むように形成されている。また、貫通孔126の内径は、貫通孔122の内径よりもわずかに大きくなっている。
ノズル本体105の内部における貫通孔122と小径部106bの間の空間が、円筒状の複合部127とされている。円筒状の複合部127の軸心は、筒状突起106における小径部106bの軸心と一致している。
第2の原液貯液部125において円環状とされた第2の膜形成性樹脂溶液104は、複合部127に流入し、円筒状に賦形されつつ、第1の膜形成性樹脂溶液103の外側に積層複合される。
第3ノズルブロック105Cにおける第2ノズルブロック105Bと反対側の端面には、複合部127の開口端である円環状の吐出口127aが形成されている。この吐出口127aの内側に、支持体挿通孔107の一端が開口している。具体的には、吐出口127aは、支持体繰り出し口107aを囲うようにして支持体繰り出し口107aの外側に位置し、筒状突起106の小径部106bにおける先端部を形成する筒状壁106cによって隔てられた状態で形成されている。
このように、ノズル本体105の内部には、第1の原液導入部114、第1の原液貯液部121及び第1の原液賦形部123を含む第1の膜形成性樹脂溶液流路128と、第2の原液導入部115及び第2の原液貯液部125を含む第2の膜形成性樹脂溶液流路129が形成されている。そして、第1の膜形成性樹脂溶液流路128と第2の膜形成性樹脂溶液流路129は、ノズル本体105内の吐出口127a寄りの複合部127で合流している。
吐出口127aからは、第1の膜形成性樹脂溶液流路128を流通してきた第1の膜形成性樹脂溶液103と、第2の膜形成性樹脂溶液流路129を流通し、複合部127で第1の膜形成性樹脂溶液103の外側に積層複合された第2の膜形成性樹脂溶液104とが、円筒状に吐出される。吐出口127aから吐出された円筒状の第1の膜形成性樹脂溶液103と第2の膜形成性樹脂溶液104は、支持体繰り出し口107aから繰り出された中空多孔質支持体1の外周面に連続して被着される。
紡糸装置10において、ノズル23の吐出口127aから凝固浴16に収容された凝固液L2までの空走部Sは、密閉されていない。
「密閉されていない」とは、多孔質中空糸膜の製造が行われる空間のうち、空走部と他の部分との間の空気の流通を遮断する構造がないことを意味する。
空走部Sが密閉されていないことで、空走部S雰囲気内で蒸気の対流等が発生しにくく、蒸気の均一性が損なわれにくい。
空走部Sの一部または全部が密閉されていると、つまりノズル23の吐出口127aから凝固液L2までの間に密閉空間があると、密閉空間内で凝固液L2の蒸気の対流等が発生し、蒸気の均一性が損なわれ、形成される多孔質膜層の表面孔径の不均一性、ひいては凝固の斑による膜品質低下の一因となる。
なお、空走部Sの一部または全部が密閉されている例としては、中空糸状前駆体が通過する大きさの孔が形成されている以外は密閉された容器に凝固浴16が収容されている場合、下端部が開口した略逆U字状の断面を有し、上端部に中空糸状前駆体が通過する孔が形成されたカバーが、下端部が凝固液L2に浸漬した状態で空走部に配置されている(カバーと凝固液L2の表面によって密閉空間が形成されている)場合等が挙げられる。
<製造方法>
第一実施形態の多孔質中空糸膜の製造方法は、以下の工程(1)〜(4)を有する。
工程(1):紡糸装置10において、中空多孔質支持体1を、ノズル部12(導入プレート21の支持体挿入孔110およびノズル23の支持体挿通孔107)を通過させて支持体繰り出し口107aから導出させるとともに、膜形成性樹脂溶液L1(第1の膜形成性樹脂溶液および第2の膜形成性樹脂溶液104)をノズル23の吐出口127aから吐出させ、中空多孔質支持体1の外周面上に膜形成性樹脂溶液L1の塗膜を形成することにより紡糸し、中空糸状前駆体3を得る工程。
工程(2):工程(1)で得た中空糸状前駆体3を空走部Sに空走させる工程。
工程(3):工程(2)で空走させた中空糸状前駆体3を凝固浴16の凝固液L2に浸漬し、膜形成性樹脂溶液L1の塗膜を凝固させて多孔質膜層を形成し、多孔質中空糸膜前駆体5を得る工程。
工程(4):工程(3)で得た多孔質中空糸膜前駆体5を洗浄し、乾燥して多孔質中空糸膜を得る工程。
また、本製造方法において、凝固液L2の温度は61℃以上、ノズル23の表面温度および膜形成性樹脂溶液L1の吐出温度はそれぞれ、凝固液L2の温度+5℃以上とされる。
「膜形成性樹脂溶液」
膜形成性樹脂溶液L1は、通常、膜形成性樹脂と、親水性樹脂と、それらを溶解する溶媒とを含む。
膜形成性樹脂は、前記のとおりである。
親水性樹脂は、膜形成性樹脂溶液L1の粘度を好適な範囲に調整し、製膜状態の安定化を図るために添加されるものである。
親水性樹脂としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンと他の単量体との共重合体等が好ましく使用される。これらの中でも、得られる多孔質中空糸膜の孔径の制御や多孔質中空糸膜の強度の点から、ポリビニルピロリドンおよびN−ビニル−2−ピロリドンと他の単量体との共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
親水性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上の樹脂を混合して使用してもよい。たとえば、親水性樹脂として、より高分子量のものを用いると、膜構造の良好な多孔質中空糸膜を形成しやすい傾向がある。一方、より低分子量の親水性樹脂を用いると、多孔質中空糸膜前駆体からより除去されやすい傾向がある。よって、目的に応じて、分子量が異なる同種の親水性樹脂を適宜ブレンドして用いてもよい。
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、又はN−メチルモルホリン−N−オキンドなどが挙げられる。は、1種を単独で使用してもよく、2種以上の樹脂を混合して使用してもよい。
膜形成性樹脂溶液L1中、膜形成性樹脂の含有量は、膜形成性樹脂溶液L1の総質量に対し、13〜20質量%が好ましい。膜形成性樹脂の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、膜品質がより優れ、上限値以下であれば、透水性能がより優れる。
膜形成性樹脂と親水性樹脂との質量比(膜形成性樹脂:親水性樹脂)は、8:3〜8:6が好ましい。膜形成性樹脂の比率が前記範囲の下限値以上であれば、膜品質がより優れ、上限値以下であれば、透水性能がより優れる。
膜形成性樹脂溶液L1は、必要に応じて、その他の添加成分を含んでもよい。その他の添加成分としては、たとえば粒子、フィラー等が挙げられる。
膜形成性樹脂溶液L1は、溶媒への膜形成性樹脂や親水性樹脂の溶解性を損なわない範囲で、膜形成性樹脂や親水性樹脂の貧溶媒や非溶媒を含んでもよい。貧溶媒や非溶媒としては、たとえば水、グリセリン等が挙げられる。
膜形成性樹脂溶液L1の粘度は、温度が高くなると(たとえば75℃以上になると)大きく低下し、品質や紡糸安定性の低下要因となる。そのため、たとえば膜形成性樹脂としてポリフッ化ビニリデン樹脂を用いる場合、膜形成性樹脂溶液L1の粘度は、40℃において5万mPa・sec以上であることが好ましく、10万mPa・sec以上がより好ましい。40℃での粘度が5万mPa・sec以上であれば、相分離の進行が適度に遅く、粗大構造が形成されにくくなるため、膜品質がより優れる。
一方、膜形成性樹脂溶液L1の粘度は、40℃において50万mPa・sec以下であることが好ましく、30万mPa・sec以下がより好ましい。40℃での粘度が50万mPa・sec以下であれば、相分離の進行が適度に速く、微小構造が形成されにくくなるため、透水性能がより優れる。
以上の点から、膜形成性樹脂溶液L1の40℃での粘度は5万mPa・sec以上50万mPa・sec以下が好ましく、10万mPa・sec以上30万mPa・sec以下が特に好ましい。
膜形成性樹脂溶液L1の粘度は、B型粘度計により測定される値である。
膜形成性樹脂溶液L1の粘度調整方法は特に限定されるものではなく、例えば、親水性樹脂の分子量を変えたり、親水性樹脂の濃度を変えたりすることによっても可能である。親水性樹脂の分子量を変える方法として、たとえば前述のような、異なる分子量の二種類の親水性樹脂をブレンドする方法を用いることもできる。
「工程(1)」
工程(1)では、紡糸装置10において、膜形成性樹脂溶液L1を紡糸し、中空糸状前駆体3を得る。
たとえば、紡糸装置10の巻き出し装置(図示略)により中空多孔質支持体1を、ノズル部12の導入プレート21の支持体挿入孔110に導入し、ノズル23の支持体挿通孔107を通過させ、支持体繰り出し口107aから導出する。それと共に、膜形成性樹脂溶液供給装置14により、第1の膜形成性樹脂溶液103および第2の膜形成性樹脂溶液104をそれぞれ、ノズル部12の第1の膜形成性樹脂溶液流路128および第2の膜形成性樹脂溶液流路129に供給し、吐出口127aから円筒状に吐出させる。これにより、吐出された第1の膜形成性樹脂溶液103および第2の膜形成性樹脂溶液104が中空多孔質支持体1の外周面に任意の厚さに塗布され、内層側が第1の膜形成性樹脂溶液103からなり、外層側が第2の膜形成性樹脂溶液104からなる膜形成性樹脂溶液L1の塗膜が形成されて、中空多孔質支持体1の外周面上に膜形成性樹脂溶液L1の塗膜を有する中空糸状前駆体3が得られる。
第1の膜形成性樹脂溶液103および第2の膜形成性樹脂溶液104は同じものであってもよく、異なるものであってもよい。膜品質および製造時の紡糸安定性(例えば、欠陥点の抑制)の観点から、第1の膜形成性樹脂溶液103および第2の膜形成性樹脂溶液104として、同じ膜形成性樹脂溶液を用いることが好ましい。
第1の膜形成性樹脂溶液103および第2の膜形成性樹脂溶液104のいずれか一方のみをノズル23に供給して、膜形成性樹脂溶液L1の塗膜を単層の膜としてもよい。
ノズル23の表面温度は、凝固液L2の温度+5℃以上であり、凝固液L2の温度+10℃以上が好ましく、凝固液L2の温度+15℃以上がより好ましい。表面温度が凝固液L2の温度+5℃以上であれば、紡糸の安定性が優れる。
ここで、ノズル23の表面とは、凝固液L2の蒸気と接触し、その蒸気が結露した場合にその水滴がノズル23の吐出口127aに流れる表面を示す。本実施形態においては、ノズル23の下面(第3ノズルブロック105Cの第2ノズルブロック105Bと反対側の端面)および側面(第1ノズルブロック105A、第2ノズルブロック105B及び第3ノズルブロック105Cそれぞれの側面)である。
ノズル23の表面は、空走部S雰囲気と接しており、空走部Sには凝固液L2の蒸気が存在する。ノズル23の表面温度が凝固液L2の温度+5℃より低い場合は、凝固液L2の蒸気がノズル23表面で結露し、ノズル23表面の水滴が吐出口127aに流れ、その水滴によって膜形成性樹脂溶液L1が凝固し、膜形成性樹脂溶液L1の安定的な吐出および塗布ができなくなるおそれがある。
ノズル23の表面温度は、凝固液L2の温度+30℃以下が好ましく、凝固液L2の温度+20℃以下がより好ましい。表面温度が凝固液L2の温度+30℃以下であれば、膜形成性樹脂溶液L1の粘度が低くなりすぎず、膜品質が良好である。
膜形成性樹脂溶液L1のノズル23からの吐出温度は、凝固液L2の温度+5℃以上であり、凝固液L2の温度+10℃以上が好ましく、凝固液L2の温度+15℃以上がより好ましい。膜形成性樹脂溶液L1の吐出温度が凝固液L2の温度+5℃より低い場合は、凝固液L2の蒸気が空走部S雰囲気中で凝縮して水滴となり、空走中の中空糸状前駆体3の表面(膜形成性樹脂溶液L1の塗膜の表面)に付着することで、局所的な凝固の斑、水吸収斑となり、膜品質低下の一因となる。
膜形成性樹脂溶液L1の吐出温度は、蒸気の凝固抑制および相分離促進の点から、凝固液L2の温度+5℃以上、かつ70℃以上であることが好ましく、凝固液L2の温度+5℃以上、かつ80℃以上がより好ましく、凝固液L2の温度+5℃以上、かつ85℃以上がさらに好ましい。
膜形成性樹脂溶液L1のノズル23からの吐出温度は、凝固液L2の温度+30℃以下が好ましく、凝固液L2の温度+20℃以下がより好ましい。吐出温度が凝固液L2の温度+30℃以下であれば、膜形成性樹脂溶液L1の粘度が低くなりすぎず、膜品質が良好である。
ノズル23の表面温度および膜形成性樹脂溶液L1の吐出温度それぞれの制御方法は特に限定されない。たとえば、ノズル部12(導入プレート21、ノズル23)およびノズル部12に膜形成性樹脂溶液L1を供給する紡糸管14aをジャケット構造にし、別途、恒温槽等を用いて調整した温水をジャケットに供給する方法が挙げられる。この場合、ノズル23の第1の膜形成性樹脂溶液流路128や第2の膜形成性樹脂溶液流路129を流通する膜形成性樹脂溶液L1の熱がノズル23の表面まで伝わるため、ジャケットに供給する温水の温度によって、ノズル23の表面温度および膜形成性樹脂溶液L1の吐出温度両方を制御することが可能である。
「工程(2)」
工程(2)では、工程(1)で得た中空糸状前駆体3を、たとえば、ガイドロール18を用い、凝固浴16の凝固液L2に向かって空走させる。
「空走」は、気体中を走行させることを意味する。中空糸状前駆体3を空走させる気体としては、空気、水蒸気等が挙げられる。
中空糸状前駆体3を空走させる空走部Sは、前述のとおり、密閉されていない。
空走部Sは、相対湿度が90%以上あることが好ましく、95%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。空走部Sの湿度が90%以上であれば、凝固液L2の蒸気が空走部Sにおいて均一に存在し、凝固の斑による膜品質低下が生じにくい。そのため、得られる多孔質中空糸膜の表面孔径の均一性が高く、膜品質がより優れる。
空走部Sの相対湿度を90%以上に調整する方法としては、凝固液L2の温度を上げる方法、空走部Sを短くする方法等が挙げられる。
空走部Sの長さは、20mm以下であることが好ましく、10mm以下がより好ましい。空走部Sの長さが20mm以下であれば、凝固液L2の蒸気により、ノズル23の吐出面付近および空走部Sの湿度が90%以上になりやすく、ノズル23の吐出面付近および空走部Sの雰囲気中の蒸気の均一性が良好である。また、中空糸状前駆体3表面の膜形成性樹脂溶液L1の塗膜の温度が空走中に低下しにくく、凝固液L2の蒸気が凝縮してその水滴が空走中の膜形成性樹脂溶液L1の塗膜の表面に付着することによる膜品質の低下が生じにくい。
空走部Sの長さは、表面の相分離促進の点では、5mm以上が好ましい。
空走部Sの長さは、ノズル23の吐出口127aから凝固液L2まで(凝固液L2の表面の中空多孔質支持体1が導入される位置まで)の、中空糸状前駆体3を空走させる距離である。
「工程(3)」
工程(2)で空走部Sを空走させた中空糸状前駆体3は、凝固浴16の凝固液L2に導入される。これにより、中空糸状前駆体3の表面の膜形成性樹脂溶液L1の塗膜に凝固液L2が接触し、塗膜の内部に拡散する。凝固液L2が拡散するにつれて、膜形成性樹脂と親水性樹脂とが相分離し、膜形成性樹脂が凝固して、膜形成性樹脂とゲル状の親水性樹脂とが相互に入り組んだ三次元網目構造を有する多孔質膜層が形成される。これにより、中空多孔質支持体1とその外周面上に形成された多孔質膜層とを備える多孔質中空糸膜前駆体5が得られる。多孔質中空糸膜前駆体5における多孔質膜層には親水性樹脂が残存していてもよい。多孔質膜層に残存する親水性樹脂は工程(4)で除去される。
凝固液L2は、膜形成性樹脂溶液L1を凝固させるものである。
凝固液L2としては、たとえば、膜形成性樹脂の非溶媒を含むものが挙げられる。膜形成性樹脂の非溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられる。これらの非溶媒はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
凝固液L2は、膜形成性樹脂の非溶媒に加えて、膜形成性樹脂溶液L1に用いた溶媒を含むことが好ましく、安全性、運転管理の面から、膜形成性樹脂溶液L1に用いた溶媒と水との混合液が特に好ましい。
膜形成性樹脂溶液L1に用いた溶媒と水との混合液を用いる場合は、膜形成性樹脂溶液L1の総質量に対する溶媒の含有量(溶媒の濃度)が5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。この範囲を下回ると、中空糸状前駆体3の凝固液L2への浸漬後、膜形成性樹脂溶液L1の塗膜中での非溶媒の増加速度が速まり、多孔質膜層内部の構造が緻密になりすぎることがある。また、この範囲を上回ると、膜形成性樹脂溶液L1の塗膜に十分な量の非溶媒が浸入できず、凝固浴16内で凝固が完了しないことがある。
凝固液L2の温度は、61℃以上であり、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。凝固液L2の温度が61℃より低い場合は、限られた空走部Sにおいて膜形成性樹脂溶液L1の塗膜表面の相分離が十分に進まず、結果として表面孔径が大きくならず、透水性能が不十分になるおそれがある。
凝固液L2の温度は、安定制御の点から、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましい。
「工程(4)」
工程(4)では、多孔質中空糸膜前駆体5を洗浄することで、多孔質中空糸膜前駆体5から溶剤や親水性樹脂を除去する。
たとえば、多孔質中空糸膜前駆体5を水または熱水で洗浄することにより、多孔質中空糸膜前駆体5中の溶剤(凝固液L2の溶媒等)が除去(脱溶剤)される。また、親水性樹脂が水または熱水に溶解する場合は、多孔質膜層から親水性樹脂が除去される。
水または熱水による洗浄方法としては、多孔質中空糸膜前駆体5を水中または熱水中に浸漬する方法、多孔質中空糸膜前駆体5に水または熱水を噴き付けて洗い流す方法等が挙げられる。熱水の温度は、60〜100℃が好ましい。
親水性樹脂としてポリビニルピロリドン等の高分子を用いる場合等においては、多孔質中空糸膜前駆体5を熱水で洗浄した後、酸化剤含有液で洗浄することが好ましい。酸化剤含有液での洗浄を行うことで、親水性樹脂が分解され、除去しやすくなる。
酸化剤としては、たとえば次亜塩素酸塩、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過硫酸塩等が挙げられる。次亜塩素酸塩としては、たとえば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等が挙げられる。
酸化剤含有液で洗浄の後、水または熱水による洗浄を行ってもよい。また、90〜100℃のスチームによる加熱処理と組み合わせてもよい。たとえば酸化剤含有液で洗浄し、スチームにより加熱処理し、熱水により洗浄する一連の工程を繰り返して行ってもよい。
洗浄後、洗浄した多孔質中空糸膜前駆体5を乾燥し、多孔質中空糸膜前駆体5中の水を除去する。これにより多孔質中空糸膜が得られる。
得られた多孔質中空糸膜は、ボビン、カセ等に巻き取られてもよい。
「作用効果」
本実施形態の製造方法にあっては、ノズル23の吐出口127aから凝固液L2までの空走部Sが密閉されておらず、凝固液L2の温度が61℃以上であり、ノズル23の表面温度および膜形成性樹脂溶液L1の吐出温度がそれぞれ凝固液L2の温度+5℃以上であるため、透水性能および膜品質に優れた多孔質中空糸膜を良好な紡糸安定性で製造できる。
すなわち、凝固液L2の蒸気は空走部Sに供給され、空走する中空糸状前駆体3の表面の膜形成性樹脂溶液L1の塗膜に接触し吸収される。空走部における蒸気の吸収量が多くなるにつれて、製膜される多孔質膜層の孔径が大きくなり、透水性能が高まる。凝固液L2の温度が61℃以上であれば、優れた透水性能を得るために充分な量の蒸気が空走部Sに供給される。また、空走部Sが密閉されていないことで、空走部S雰囲気内で蒸気の対流等が発生しにくい。そのため、空走部Sにおける蒸気の均一性が損なわれることによる膜品質の低下を抑制できる。また、ノズル23の表面温度が凝固液L2の温度+5℃以上であることで、凝固液L2の蒸気がノズル23の表面で冷やされて結露することによる紡糸安定性の低下を抑制できる。また、膜形成性樹脂溶液L1の吐出温度が凝固液L2の温度+5℃以上であることで、空走中の膜形成性樹脂溶液L1の塗膜の表面温度が充分に高く、凝固液L2の蒸気が空走部S雰囲気中で凝縮して水滴となって空走中の膜形成性樹脂溶液L1の塗膜の表面に付着することによる膜品質の低下を抑制できる。
本実施形態の製造方法により製造される多孔質中空糸膜の透水性能は、純水透過係数として、10m/m/hr/MPa以上であることが好ましく、15m/m/hr/MPa以上がより好ましい。透水性能が前記下限値以上であれば、運転時の圧力が高くなりにくい。
透水性能の上限は特に限定されないが、透水性能と分画性能とがトレードオフであることを考慮すると、30m/m/hr/MPa以下が好ましい。
純水透過係数は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本実施形態の製造方法により製造される多孔質中空糸膜は、バブルポイント法(測定媒体:99.5%エタノール)により多孔質中空糸膜10m中の品質検査(欠陥点数測定)を行ったときに検出される以下の欠陥点の数が0個であることが好ましい。欠陥点の数が少ないほど、膜品質に優れる。
欠陥点:バブルポイント圧(膜表面に気泡の発生が観察できる最小圧力)が100kPa以下の孔。
以上、実施形態を示して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
たとえば、紡糸の際、ノズル部12に中空多孔質支持体1を通さなくてもよい。この場合、中空多孔質支持体を有さない、多孔質膜層からなる多孔質中空糸膜が得られる。紡糸の際、ノズル23の支持体繰り出し口107aから水等の凝固液を同時に吐出させてもよい。
ノズル23として二重環状ノズルを用いる例を示したが、ノズル23としては、形成する多孔質膜層の層数等に応じて公知のノズルを適宜採用できる。たとえば、三重以上の環状ノズルを用いることができる。二重環状ノズルとして、図2に示したもの以外の二重環状ノズルを用いてもよい。
工程(3)と工程(4)の間に工程(1)〜(3)を繰り返すことで、多孔質膜層を多層構造としてもよい。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
各例で用いた測定方法を以下に示す。
(膜形成性樹脂溶液の粘度)
膜形成性樹脂溶液の粘度は、B型粘度計により測定した。
(多孔質中空糸膜の外径)
多孔質中空糸膜の外径は、以下の方法で測定した。
測定するサンプルを約10cmに切断し、数本を束ねて、全体をポリウレタン樹脂で覆った。ポリウレタン樹脂は、中空多孔質支持体の中空部にも入るようにした。
ポリウレタン樹脂を硬化させた後、カミソリ刃を用いて厚さ(膜の長手方向)約0.5mmの薄片をサンプリングした。
次に、サンプリングした薄片の多孔質中空糸膜の断面を、投影機(ニコン社製、PROFILE PROJECTOR V−12)を用い、対物レンズ100倍にて観察した。
観察している多孔質中空糸膜断面のX方向、Y方向の外表面の位置にマーク(ライン)をあわせて外径を読み取った。これを3回測定して外径の平均値を求めた。
(純水透過係数)
純水透過係数は、以下の方法で測定した。
濾過有効長が4cmとなる1本の多孔質中空糸膜からなるミニモジュールを作製し、エタノールに浸漬して親水化処理を行った後、加圧100kPaの条件にて多孔質中空糸膜の外側から内側へ純水を送液し、一定時間の透水量(m)を測定した。得られた透水量(m)の値を、単位有効膜面積(m)、単位時間(hr)、単位圧力(MPa)における値(m/m/hr/MPa)に換算して純水透過係数とした。
〔実施例1〕
図1〜2に示す構成の紡糸装置を用い、以下の手順で多孔質膜層を製膜した。
中空多孔質支持体として、捲縮加工がされたポリエステル繊維(繊度84dtex、フィラメント数36)のマルチフィラメント5本を1つにまとめた糸(合計繊度420dtex)を円筒状に丸編みし、190℃で熱処理した編紐支持体を使用した。この編紐支持体の外径は2.5mmであった。
ポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製、商品名カイナー(登録商標)761A)およびポリビニルピロリドン(日本触媒社製、商品名K−80)を、N,N−ジメチルアセトアミドに撹拌しながら溶解させて膜形成性樹脂溶液を調製した。膜形成性樹脂溶液におけるポリフッ化ビニリデンの濃度は19質量%、ポリビニルピロリドンの濃度は12質量%とした。膜形成性樹脂溶液の40℃での粘度は23万mP・secであった。
この膜形成性樹脂溶液を、90℃に調整した紡糸管の中を通して温めた後、同じく90℃に表面温度を調整したノズル部に送液した。この際、膜形成性樹脂溶液は、ノズル部の導入プレートの第2の導入孔(外層側)のみに供給した。中空多孔質支持体を、導入プレートの支持体挿入孔およびノズルの支持体挿通孔に15m/minの速度で通しながら、膜形成性樹脂溶液をノズルより吐出して中空多孔質支持体の外周面に塗布した後、凝固液で満たされ、ノズル吐出面から10mm離れた位置に凝固液の水面を有する凝固浴へ導き(空走部の長さ10mm)、塗布された膜形成性樹脂溶液を固化させて、多孔質膜層を製膜した。凝固液としては、N,N−ジメチルアセトアミドの30質量%水溶液を用い、凝固液の温度は75℃とした。空走部の相対湿度は96%であった。
多孔質膜層が製膜された中空多孔質支持体(多孔質中空糸膜前駆体)を、70℃の温水に35秒間通して脱溶剤させた。次いで、50,000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃のスチーム槽中で2分間加熱処理し、90℃の熱水中に40秒間通す、というこれら一連の工程を2回繰り返した後、105℃に熱した乾燥炉に4分間通して乾燥して多孔質中空糸膜を得た。得られた多孔質中空糸膜はボビンに巻き取った。
得られた多孔質中空糸膜の外径は2.7mmであり、純水透過係数は15m/m/hr/MPaであった。また、バブルポイント法(測定媒体:99.5%エタノール)により多孔質中空糸膜10m中の品質検査(欠陥点数測定)を実施したところ、バブルポイント圧が100kPa以下の孔は計測されなかった。
〔実施例2〕
ノズルの表面温度および膜形成性樹脂溶液の吐出温度を80℃に調整し、凝固液の温度を70℃にした以外は、実施例1と同様にして多孔質中空糸膜を得た。
得られた多孔質中空糸膜の外径は2.7mmであり、純水透過係数は13m/m/hr/MPaであった。また、バブルポイント法(測定媒体:99.5%エタノール)により多孔質中空糸膜10m中の品質検査(欠陥点数測定)を実施したところ、バブルポイント圧が100kPa以下の孔は計測されなかった。
〔実施例3〕
中空多孔質支持体として、捲縮加工がされていないポリエステル繊維(繊度111dtex、フィラメント数48)のマルチフィラメントを円筒状に丸編みし、190℃で熱処理した編紐支持体を使用した。この編紐支持体の外径は1.4mmであった。
中空多孔質支持体としてこの編紐支持体を用いたこと、中空多孔質支持体の供給速度を20m/minにしたこと、および凝固液としてN,N−ジメチルアセトアミドの40質量%水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質中空糸膜を得た。
得られた多孔質中空糸膜の外径は1.7mmであり、純水透過係数は21m/m/hr/MPaであった。また、バブルポイント法(測定媒体:99.5%エタノール)により多孔質中空糸膜10m中の品質検査(欠陥点数測定)を実施したところ、バブルポイント圧が100kPa以下の孔は計測されなかった。
〔実施例4〕
凝固液の温度を70℃にした以外は、実施例3と同様にして多孔質中空糸膜を得た。
得られた多孔質中空糸膜の外径は1.7mmであり、純水透過係数は17m/m/hr/MPaであった。また、バブルポイント法(測定媒体:99.5%エタノール)により多孔質中空糸膜10m中の品質検査(欠陥点数測定)を実施したところ、バブルポイント圧が100kPa以下の孔は計測されなかった。
〔実施例5〕
ポリフッ化ビニリデンとしてソルベイ社製の商品名SOLEF(登録商標)1015を用い、凝固液としてN,N−ジメチルアセトアミドの40質量%水溶液を用い、凝固液の温度を70℃に調整した以外は、実施例1と同様にして多孔質中空糸膜を得た。
得られた多孔質中空糸膜の外径は2.7mmであり、純水透過係数は27m/m/hr/MPaであった。また、バブルポイント法(測定媒体:99.5%エタノール)により多孔質中空糸膜10m中の品質検査(欠陥点数測定)を実施したところ、バブルポイント圧が100kPa以下の孔は計測されなかった。
〔比較例1〕
凝固液の温度を60℃にした以外は、実施例3と同様にして多孔質中空糸膜を得た。
得られた多孔質中空糸膜の外径は1.6mmであった。純水透過係数は6m/m/hr/MPaであり、実施例1〜5に比べて低い値となった。
〔比較例2〕
ノズルの表面温度および膜形成性樹脂溶液の吐出温度を71℃に調整した以外は、実施例5と同様にして多孔質中空糸膜を得た。
得られた多孔質中空糸膜の外径は2.7mmであり、純水透過係数は21m/m/hr/MPaであった。しかし、バブルポイント法(測定媒体:99.5%エタノール) により多孔質中空糸膜10m中の品質検査(欠陥点数測定)を実施したところ、1個の欠陥点(バブルポイント圧が100kPa以下の孔)が計測された。
〔比較例3〕
空走部の長さを30mmにした以外は、比較例2と同様にして多孔質中空糸膜を得た。
得られた多孔質中空糸膜の外径は2.7mmであり、純水透過係数は33m/m/hr/MPaであった。しかし、バブルポイント法(測定媒体:99.5%エタノール) により多孔質中空糸膜10m中の品質検査(欠陥点数測定)を実施したところ、2個の欠陥点が計測された。
上記のとおり、実施例1〜5の多孔質中空糸膜は、純水透過係数が高く、透水性能に優れていた。また、欠陥点が計測されず、膜品質および製造時の紡糸安定性に優れていた。
これに対し、凝固液の温度が70℃未満の比較例1の多孔質中空糸膜は、透水性能が劣っていた。
ノズルの表面温度および膜形成性樹脂溶液の吐出温度がそれぞれ凝固液の温度+5℃未満の比較例2〜3の多孔質中空糸膜は、欠陥点が計測され、膜品質および製造時の紡糸安定性に劣っていた。特に空走部の長さを30mmとした比較例3は、空走部の長さが10mmの比較例2よりも欠陥点が多くなっていた。
本発明によれば、高い透水性能を発現し、かつ膜品質に優れた多孔質中空糸膜を優れた紡糸安定性で得ることが可能である。
1 中空多孔質支持体
3 中空糸状前駆体
5 多孔質中空糸膜前駆体
10 紡糸装置
12 ノズル部
14 膜形成性樹脂溶液供給装置
16 凝固浴
18 ガイドロール
21 導入プレート
23 ノズル
103 第1の膜形成性樹脂溶液
104 第2の膜形成性樹脂溶液
107 支持体挿通孔
127a 吐出口
128 第1の膜形成性樹脂溶液流路
129 第2の膜形成性樹脂溶液流路
L1 膜形成性樹脂溶液
L2 凝固液

Claims (8)

  1. 環状の吐出口が形成されたノズルの前記吐出口からポリフッ化ビニリデン樹脂を含む膜形成性樹脂溶液を吐出させて紡糸し、中空糸状前駆体を得る工程と、前記中空糸状前駆体を空走させる工程と、前記空走させた中空糸状前駆体を、前記膜形成性樹脂溶液を凝固させる凝固液に浸漬する工程と、を含む多孔質中空糸膜の製造方法において、
    前記中空糸状前駆体を空走させる、前記ノズルの吐出口から前記凝固液までの空走部が密閉されておらず、
    前記凝固液の温度が61℃以上であり、
    前記ノズルの表面温度および前記膜形成性樹脂溶液の吐出温度がそれぞれ、前記凝固液の温度+5℃以上であることを特徴とする、多孔質中空糸膜の製造方法。
  2. 前記凝固液の温度が70℃以上である請求項1に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
  3. 前記空走部の長さが20mm以下である請求項1又は2に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
  4. 前記膜形成性樹脂溶液の吐出温度が75℃以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
  5. 前記膜形成性樹脂溶液の粘度が、40℃において5万mPa・sec以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
  6. 前記ノズルに、一端が前記吐出口の内側に開口する貫通孔が形成されており、
    前記中空糸状前駆体を得る工程にて、前記貫通孔に中空多孔質支持体を通過させ、前記吐出口の内側の開口から導出させるとともに前記膜形成性樹脂溶液を前記吐出口から吐出させ、前記中空多孔質支持体の外周面上に前記膜形成性樹脂溶液の塗膜を形成することにより紡糸する請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
  7. 前記中空多孔質支持体が、熱処理された支持体である請求項6に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
  8. 前記熱処理された支持体が、マルチフィラメントからなる1本の糸を丸編した中空状編紐である請求項7に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
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