JP6637992B2 - 音響再生装置 - Google Patents

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Description

本発明は、音像を定位させる音響再生装置に関する。
近年、個人を対象とする没入型のヘッドマウントディスプレイ装置や、空間と一体化した情報提示を目指す透過型のグラスディスプレイ装置が市場投入されている。これらは、両目に視差効果のある映像を別々に表示することで映像に立体感を出す。これにより、装着者があたかもそこに存在しているかのような仮想現実空間を知覚し、また任意形状の物体があたかもそこに存在しているかのような拡張現実空間を知覚する。
ところで、聴取者は、左右の耳に到来する音波の時間差、音圧差、響きなどを感知し、音像の方向及び距離を知覚する。そこで、ステレオスピーカが出力する左右の音響信号に、仮想音源位置から両耳までの頭部伝達関数(Head−Related Transfer Function)を人工的に与え両耳で再現することができれば、任意の音像を聴取者に知覚させ得る。この原理を利用し、映像に比肩し得る音による仮想現実空間及び拡張現実空間の再現技術の開発が進展している。
例えば、聴取者の両耳をヘッドホンにより被覆し、両耳から音響信号を聴取させる音響再生方法がある。この音響再生方法において、ヘッドホンの発音部を耳介から隔離して配置することで、頭内定位を解消して頭外に音像を定位させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。更に、ヘッドホンと耳介との間で音響信号が複雑に反射してしまい、音像定位の品質を低下させてしまうため、放射インピーダンスの低減を目的に、耳道入口に音響信号を焦点収束させ、耳道入口に仮想音源を作出している(例えば、特許文献2参照)。
特許文献1及び2の手法は、音像位置に合わせた頭部伝達関数の付与を基本とし、音像定位の品質低下要因を除去している。原理的には、音像定位の品質が向上し、任意の全方向に音像が明確に知覚され得るはずである。しかしながら、頭外定位の実現及び放射インピーダンスの低減によっても、後方や側方への音像定位に比べて、前方定位の品質向上が満足に足るものとならない。前方と後方とでは幾何学的に相違は少ないはずであるが、音像は後方に定位し易く、前方への定位は容易ではない。
そこで、前方定位の表現力を向上させるべく、音像定位の品質向上というよりも、別の観点から音像定位を知覚させる方法が提案されている。例えば、スピーカを耳元前方に配置する方法が提示されている(例えば、非特許文献1参照)。音源を実際に前方に位置させることで、前方への音像定位を強調するものである。また、音像位置を前方から側方又は後方へ、或いは側方又は後方から前方へ変化させる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。聴取者の頭部の向き変化に合わせて音像が前方から側方、または側方から前方を移る経過を知覚させることで、聴取者にその経過情報によって前方に音像が定位していることを知覚させることができる。
非特許文献1の手法は、スピーカを顔面よりも前方に位置させなくては頭内定位してしまう。特許文献3の手法に基づき前方定位感を作出すると、聴取者が頭部の向きを変化させない静的な状況では前方定位させることができないし、頭部の向き変化を検出するセンサが必要となってシステムが大型化してしまう。
特許第3637596号公報 特開2012−178748号公報 特許第5499633号公報 和田精二 「感性の時代のモノづくり・3D音響システムを事例として』 湘南工科大学紀要 第37巻 第1号、2003年
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために成されたものであり、その目的は、音像の前方定位を良好に表現できる音響再生装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明の音響再生装置は、耳元から離間して頭部に配置されるステレオスピーカと、前記ステレオスピーカが放音する左右チャンネルの音響信号に、仮想音源を前方定位させる伝達特性を畳み込む第1のフィルタと、仮想音源の設置環境如何を問わず、前方定位させる仮想音源が直接音に影響を与える特定設置環境に存在すると見なして、前記ステレオスピーカが放音する全ての左右チャンネルの音響信号に、該特定設置環境の放音特性を畳み込む第2のフィルタと、を備えること、を特徴とする。
前記特定設置環境は、仮想音源が第1の物体に接触する環境、仮想音源の近傍に第2の物体が位置する環境、または其の両方を具備する環境であり、前記特定設置環境の放音特性は、前記第1の物体、前記第2の物体又は其の両方と前記仮想音源とを合わせて一つの音源と見なしたとき、その一つの音源が放音する音響信号とオリジナルの音響信号の相違であるようにしてもよい。
前記特定設置環境の放音特性は、音源を第1の物体に接触する環境、音源の近傍に第2の物体が位置する環境、または其の両方を具備する環境を有する無響室内で耳甲介腔に設置したマイクロフォンが採取した音響信号と、前記オリジナルの音響信号との相違であるようにしてもよい。
前記特定設置環境の放音特性は、前記第1の物体の振動により仮想音源の放音する音響信号を変化させる特性、又は前記第1の物体や前記第2の物体からの反射音が仮想音源の放音する音響信号の直接音成分に合成される特性の少なくとも一方を含む特性であるようにしてもよい。
前記第2のフィルタは、前記ステレオスピーカが放音する左右チャンネルの音響信号に含まれ、初期反射音前の信号成分であって、ピークを含む3〜5msecの範囲の信号成分に、前記特定設置環境の放音特性を畳み込むようにしてもよい。
前記第2のフィルタは、前記仮想音源の設置環境と前記特定設置環境が相違している状況であっても、前記特定設置環境の放音特性を畳み込むようにしてもよい。
前記第2のフィルタは、前記仮想音源の定位位置が前方と相違している状況であっても、前記特定設置環境の放音特性を畳み込むようにしてもよい。
前記第2のフィルタは、前記仮想音源を前方から側方、又は側方から前方へ移動させる状況であっても、前記特定設置環境の放音特性を畳み込むようにしてもよい。
前記第2のフィルタは、前記仮想音源が前記特定設置環境にある場合、又は前記仮想音源を前方定位させる場合と比べて、前記仮想音源が前記状況にあるときには、前記特定設置環境の放音特性を弱めに畳み込むようにしてもよい。
前記ステレオスピーカは、耳道入口に音響信号を照射し、前記ステレオスピーカと耳甲介腔との間の伝達特性に対する逆特性を前記音響信号に畳み込む第3のフィルタを更に備えるようにしてもよい。
前記ステレオスピーカは、各々音孔を有し、前記音孔は、2平方センチメートル以下の開口面積を有するようにしてもよい。
前記ステレオスピーカは、前記耳甲介腔から5ミリメートル以上45ミリメートル以下の距離に備えられるようにしてもよい。
前記第2のフィルタは、前記放音特性に加え、有響空間の初期反射特性と後部残響特性の信号の少なくとも一方を、前記音響信号に更に畳み込むようにしてもよい。
頭部又は耳に装着され、前記ステレオスピーカを耳元に支持するジグと、前記ジグに支持されるヘッドマウントディスプレイと、を備えるようにしてもよい。
本発明によれば、音像の前方定位を聴取者が明確に感受できる程度にまで豊かに表現することができる。
本発明の実施形態に係る音響再生装置の全体構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係るステレオスピーカの配置及び構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る音響再生装置が備える音響処理装置の第1の構成例を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る音響再生装置が備える音響処理装置の第2の構成例を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る音響処理装置が備える音像定位制御部の構成を示すブロック図である。 仮想音源から聴取者の耳甲介腔に届くまでの空間伝達関数を示す模式図である。 仮想音源の特定設置環境を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る音響処理装置が備える特定設置環境エフェクタの演算内容を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る音響処理装置が備える特定設置環境エフェクタの動作例を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る音響処理装置が備える特定設置環境エフェクタの他の動作例を示すフローチャートである。 仮想音源が特定設置環境にあると見なして、特定設置環境に応じた放音特性を畳み込んだ音響信号を示すスペクトルである。 特定設置環境に応じた放音特性が畳み込まれた音響信号の各種環境での変化を示すグラフである。
(構成)
以下、本実施形態に係る音響再生装置について図面を参照して詳細に説明する。図1に示す音響再生装置1は、仮想音源の方向及び距離を定位させる音像定位処理を音響信号に施した後、該音響信号をステレオスピーカ3から放音させることで、聴取者に仮想音源の方向及び距離を知覚させる。この音響再生装置1は、音像定位処理を施す音響処理装置2と、音響信号を放音するステレオスピーカ3と、ステレオスピーカ3を聴取者の頭部に支持するヘッドマウンタ4とを備える。
ヘッドマウンタ4は、ステレオスピーカ3を聴取者の頭部に固定する装着用のジグである。ヘッドマウンタ4は、例えばメガネやゴーグルの耳に掛けるツル、後頭部から側頭部に亘って頭部周囲を締めるバンド、頭頂部から側頭部に亘って頭部周囲に掛けられるバンドである。ヘッドマウンタ4は、ヘッドマウントディスプレイのツルやバンドであってもよい。
ステレオスピーカ3は、振動板を有し、電気信号を音波信号に変換する装置である。このステレオスピーカ3は、聴取者の左耳近傍に位置する左側スピーカ3Lと、聴取者の右耳近傍に位置する右側スピーカ3Rに分かれている。図2に示すように、このステレオスピーカ3は、音響信号を放音する開口として音孔31を備える。ヘッドマウンタ4は、この音孔31が耳甲介腔から5mm〜45mm程度の距離に位置するように、ステレオスピーカ3を固定している。
音孔31は、2平方センチメートル以下の開口面積を有する。2平方センチメートル以下とは、聴取者の耳甲介腔の開口面積以下に該当する。この音孔31は、例えば一個のスリットにより成るが、複数の開口により構成されていてもよい。音孔31を複数の開口により構成する場合、複数の開口を包含する包絡線内部の面積が2平方センチメートル以下となるように集合させる。
音響処理装置2は、プロセッサ、ROM及びRAMを有するコンピュータ又はマイコン、或いはフィルタ回路である。この音響処理装置2は、ヘッドマウンタ4に固定され、ステレオスピーカ3に内蔵され、又はヘッドマウンタ4やステレオスピーカ3と別体で構成されてステレオスピーカ3と無線接続される。この音響処理装置2は、図3に示すように、メモリ21と再生部22と音像定位制御部23とDAC24とアンプ25とを備える。ステレオスピーカ3と音響処理装置2とを無線接続する場合、図4に示すように、音響処理装置2にRF送信部26を設け、ステレオスピーカ3にRF受信部27を設け、DAC24とアンプ25をステレオスピーカ3側に搭載する。
メモリ21は、音源データSoを記憶する。図4に示すように、メモリ21の代わりにマイクロフォン21aを設け、リアルタイムで音源データを収集してもよい。再生部22は、音源データSoをデコードして左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRを復元する。音源データが5.1チャンネル等のサラウンドデータの場合、再生部22は、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRにダウンミックスする。音像定位制御部23は、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRを加工し、音像の定位位置を設定する。この音像定位処理は、音像を定位させる処理、放音特性重畳処理、及び伝達特性キャンセル処理を含む。
DAC24は、音像定位処理を受けた左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRをアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータである。アンプ25は、アナログ信号となった左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRを増幅して、ステレオスピーカ3に出力する。左側スピーカ3Lは、左チャンネル音響信号SLを音波信号に変換して放音し、右側スピーカ3Rは、右チャンネル音響信号SRを音波信号に変換して放音する。RF送信部26は、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRを変調し、電波送信する。RF受信部27は、電波信号を受信し、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRを復調する。
音響処理装置2に関し、音像定位制御部23の構成を図5に示す。音像定位制御部23は、音像定位フィルタ231と特定設置環境エフェクタ232と伝達特性キャンセルフィルタ233とクロストークキャンセラ234とを備える。音像定位フィルタ231と特定設置環境エフェクタ232と伝達特性キャンセルフィルタ233とクロストークキャンセラ234は、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタやIIR(Infinite Impulse Response)フィルタである。
音像定位フィルタ231は、仮想音源の方向及び距離を全方向の何れかに定位させる。定位方向には聴取者の前方を含む。この音像定位フィルタ231は、伝達関数HLと伝達関数HRを有し、左チャンネル音響信号SLに伝達関数HLを畳み込み、右チャンネル音響信号SRに伝達関数HRを畳み込む。
図6に示すように、伝達関数HLは、仮想音源Pから音響信号が放音されてから聴取者の左耳の耳甲介腔に届くまでの頭部伝達関数である。伝達関数HLは、仮想音源Pから放音された音響信号と、放音後に空間を伝播して左耳の耳甲介腔に到達した音響信号との相違を数学的関係で表している。伝達関数HRは、仮想音源Pから音響信号が放音されてから聴取者の右耳の耳甲介腔までの頭部伝達関数である。伝達関数HRは、仮想音源Pから放音された音響信号と、放音後に空間を伝播して右耳の耳甲介腔に到達した音響信号の相違を数学的関係で表している。伝達関数HLと伝達関数HRは、例えば、音源から耳甲介腔に設置したマイクロフォンまでのインパルス応答を測定することで特定できる。
音像定位フィルタ231は、この伝達関数HLにより、仮想音源Pから聴取者の左耳の耳甲介腔までの音響伝達特性により変化した左チャンネル音響信号SLを生成し、伝達関数HRにより、仮想音源Pから聴取者の右耳の耳甲介腔までの音響伝達特性により変化した右チャンネル音響信号SRを生成する。すなわち、音像定位フィルタ231は、仮想音源Pから各耳甲介腔までの距離差に応じた音圧差、時間差、周波数変化等を左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに与える。
特定設置環境エフェクタ232は、図7に示すように、仮想音源Pの特定設置環境Enに応じた放音特性を示す伝達関数Cを左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに畳み込む。特定設置環境Enは、振動し易い物体Ob1と仮想音源Pが接触する環境、または仮想音源Pの近傍に物体Ob2が位置する環境、または其の両方を具備する環境である。仮想音源Pの近傍に存在する物体Ob2とは、初期反射音S3前に直接音と混和する反射音を作出する物体であり、換言すると、聴取者に到達する直接音と3〜5msecの範囲で同着する反射音を作出する物体である。
すなわち、特定設置環境Enに応じた放音特性とは、仮想音源Pと接触した物体Ob1の振動により仮想音源Pの放音する音響信号を変化させる特性、又は仮想音源Pの近傍に存在する物体Ob2や仮想音源Pと接触した物体Ob1からの反射音が仮想音源Pの放音する音響信号の直接音成分に合成される特性の少なくとも一方を含む特性である。換言すると、特定設置環境Enに応じた放音特性とは、仮想音源P、仮想音源Pと接触する物体Ob1、仮想音源Pの近傍の物体Ob2を一体の音源Puと見なしたとき、メモリ21に記憶されている音響信号と、一体の音源Puが放音する音響信号との間の相違である。
例えば、図7に示すように、特定設置環境Enは、仮想音源Pをスピーカとし、スピーカが物体Ob1である木製の台に設置され、そのスピーカの近傍に物体Ob2であるテレビモニタが存在する環境である。仮想音源Pを出射する音響信号S1は、メモリ21に記憶されている音源データのオリジナルの音質Soと比べ、木製の台の振動による音波の変質によって放音時点で既に変化している。また木製の台やテレビモニタに反射した反射音S2、S3が初期反射音S3前の直接音成分に混和している。スピーカ、木製の台及びテレビモニタを一体の音源Puと見なすと、この一体の音源Puから音響信号S1が放音された時点で、耳甲介腔まで空間を伝達するまでもなく、床や壁や天井に反射するまでもなく、音響信号S1は既にオリジナルの音響データSoとは異なる変化を受けている。この一体の音源S1がオリジナルの音響信号Soに与える変化の特性が、特定設置環境Enにおける放音特性である。
特定設置環境エフェクタ232は、仮想音源Pが特定設置環境Enにあると見なし、更に特定設置環境En中の仮想音源Pと其の周囲の物体Ob1、Ob2を合わせて一体の音源Puと見なし、その一体の音源Puの放音特性を、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに畳み込む。この特定設置環境エフェクタ232は、特定設置環境Enに応じた放音特性を数学的に再現した伝達関数Cを有する。伝達関数Cは、特定設置環境Enを模擬した無響空間において、ダミー人形の耳甲介腔に設置したマイクロフォンでインパルス応答を測定することで、伝達関数HLの積及び伝達関数HRの積として得られる。特定設置環境エフェクタ232と音像定位フィルタ231とを分離して備える場合、それぞれの積から伝達関数HL及び伝達関数HRを各々除去することで、伝達関数Cのみが抽出できる。
この特定設置環境エフェクタ232は、仮想音源Pの設置環境を特定設置環境Enに固定する。すなわち、特定設置環境エフェクタ232は、仮想音源Pの設置環境が特定設置環境Enと不一致であっても、一律に当該特定設置環境Enの放音特性を畳み込む。例えば仮想音源Pが浮遊していたり、仮想音源Pが手で持たれたりして、振動し易い物体Ob1と接触しておらず、または仮想音源Pの近傍に物体Ob2がなくとも、仮想音源Pが特定設置環境Enにあると見なして、伝達関数Cを畳み込む。
但し、特定設置環境エフェクタ232は、仮想音源Pを前方定位させるときに限って、右チャンネル音響信号SRと左チャンネル音響信号SLに伝達関数Cを畳み込むようにし、前方以外に定位させる場合には、右チャンネル音響信号SRと左チャンネル音響信号SLをスルーさせるようにしてもよい。すなわち、特定設置環境エフェクタ232は、図8に示すように、前後で音響信号が変わらない伝達関数Fを更に有し、前方以外に定位させる場合には、この伝達関数Fを畳み込む。前方以外へは、前方定位と比べて定位し易いからである。
また、仮想音源Pを前方以外に定位させる場合には、前方定位させる場合と比べて弱めに伝達関数Cを畳み込むようにしてもよい。前方以外であっても、特定設置環境Enに応じた放音特性を畳み込むことで、定位感は向上するからである。この特定設置環境エフェクタ232は、図8に示すように、所定の比率を示す係数値K(1>K)を記憶している。特定設置環境Enの放音特性を示す伝達関数Cに係数値Kを乗じ、前後で音響信号が変わらない伝達関数Fに(1−K)を乗じ、両乗算結果を加算することで、伝達関数Cを更新する。
更に、前方定位させる場合であっても、仮想音源Pの設置環境が特定設置環境Enと異なる場合、又は仮想音源Pを移動させる等の前方定位感を増加させる他の音響処理が可能な場合、伝達関数Cを弱めに畳み込むようにしてもよい。前方定位感と仮想現実空間や拡張現実空間の再現性とのバランスを図るためである。図8に示すように、特定設置環境Enの放音特性を示す伝達関数Cに係数値Kを乗じ、前後で音響信号が変わらない伝達関数Fに(1−K)を乗じ、両乗算結果を加算することで、伝達関数Cを更新すればよい。
尚、特定設置環境エフェクタ232は、初期反射特性及び後部残響特性を更に畳み込むようにしてもよい。直接音と初期反射音との数学的関係を特定し、初期反射特性を生成して其の伝達関数を伝達関数Cに含め、統計モデルにより得られる後部残響特性の伝達関数も伝達関数Cに含めればよい。
図9は、この特定設置環境エフェクタ232の動作例を示すフローチャートである。音像定位フィルタ231が左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに前方以外に定位させる音響処理を施した場合(ステップS01,No)、特定設置環境エフェクタ232は、特定設置環境Enの放音特性を与えない(ステップS02)。すなわち、特定設置環境エフェクタ232は、係数Kをゼロの値として、伝達関数Cに係数Kを乗算し、前後で音響信号を変化させない伝達関数Fに1を乗算し、両者を足し合わせることで、新たな伝達関数を生成し、その伝達関数を左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに畳み込む。
音像定位フィルタ231が左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに前方定位の音響処理を施した場合(ステップS01,Yes)、仮想現実空間又は拡張現実空間における仮想音源Pの設置環境が特定設置環境Enと一致していれば(ステップS03,Yes)、特定設置環境エフェクタ232は、特定設置環境Enに応じた放音特性を強めに左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに反映させる(ステップS04)。すなわち、係数Kを1にする。
一方、仮想現実空間又は拡張現実空間における仮想音源Pの設置環境が特定設置環境Enと不一致であれば(ステップS03,No)、特定設置環境エフェクタ232は、特定設置環境Enに応じた放音特性を弱めに左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに反映させる(ステップS05)。すなわち、係数Kを0超1未満の値とする。
また、図10は、この特定設置環境エフェクタ232の他の動作例を示すフローチャートである。音像定位フィルタ231が左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに前方以外に定位させる音響処理を施した場合(ステップS11,No)、特定設置環境Enに応じた放音特性を弱めに左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに反映させる(ステップS12)。
音像定位フィルタ231が左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに前方定位の音響処理を施した場合であって(ステップS11,Yes)、仮想音源Pを移動させる等のような前方定位感を増加させる他の音響処理が可能である場合(ステップS13,Yes)、特定設置環境エフェクタ232は、特定設置環境Enに応じた放音特性を弱めに左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに反映させる(ステップS14)。一方、仮想音源Pを移動させる等のような前方定位感を増加させる他の音響処理ができない場合(ステップS13,Yes)、特定設置環境エフェクタ232は、特定設置環境Enに応じた放音特性を強めに左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに反映させる(ステップS15)。
図5に戻り、伝達特性キャンセルフィルタ233は、ステレオスピーカ3から耳甲介腔までの音響伝達特性を打ち消す。この伝達特性キャンセルフィルタ233は、伝達関数DL、DRを有する。伝達関数DL、DRは、ステレオスピーカ3から耳甲介腔までの音響伝達関数の逆特性を再現する。この伝達関数DL、DRは、ステレオスピーカ3から発生させたインパルスの耳甲介腔でのインパルス応答を測定し、このインパルス応答をインパルスに戻す逆伝達関数である。伝達特性キャンセルフィルタ233は、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに伝達関数DL、DRを各々畳み込む。
クロストークキャンセラ234は、ステレオスピーカ3から逆の耳に到達したクロストーク成分を打ち消す。このクロストークキャンセラ234は伝達関数EL、ERを有する。伝達関数ELは、左側スピーカ3Lから右耳までの音響伝達特性の逆特性である。また、伝達関数ERは、右側スピーカ3Rから左耳までの音響伝達特性を示す伝達関数の逆特性である。クロストークキャンセラ234は、伝達関数ELを左チャンネル音響信号SLに畳み込むことで、左側スピーカ3Lから右耳までの音響伝達特性を有する左チャンネル音響信号SLの逆位相を生成し、右チャンネル音響信号SRに加算する。また、クロストークキャンセラ234は、伝達関数ERを右チャンネル音響信号SRに畳み込むことで、右側スピーカ3Rから左耳までの音響伝達特性を有する右チャンネル音響信号SRの逆位相を生成し、左チャンネル音響信号SLに加算する。
(作用)
この音響再生装置1によると、特定設置環境エフェクタ232は、特定設置環境Enに合わせた放音特性で左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRを変化させ、放音している。図11は、特定設置環境エフェクタ232の作用を示すグラフである。図11の(a)は、オリジナルの音響信号Soの直接音成分を示す。図11の(b)は、特定設置環境Enに合わせた放音特性を畳み込んだ音響信号の直接音成分を示すグラフである。図11の(c)は、特定設置環境Enに合わせた放音特性を模擬した伝達関数Cを示す。また、図11の(a)乃至(c)において左図は時間空間のグラフ、右図は周波数空間のグラフである。
特定設置環境エフェクタ232は、図11の(a)に示すオリジナルの音響信号Soの直接音成分に対して、図11の(c)に示す伝達関数Cを畳み込むことで、図11の(b)に示すように、仮想音源Pに接触した物体Ob1の振動を加味した音響信号のスペクトルに変化させ、また仮想音源Pに接触した物体Ob1や仮想音源Pの近傍に位置する物体OP2からの反射音のスペクトルを追加する。すなわち、特定設置環境エフェクタ232は、この両スペクトルの合成により成る左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに耳甲介腔までの空間を伝達した差異の伝達関数HLと伝達関数HRを畳み込んで音源定位させている。
例えば、図11の(a)のオリジナルの音響信号Soは、空中に宙吊りとなっている音源から放音される音響信号をシミュレートしている。特定設置環境エフェクタ232は、図11の(b)に示すように、このオリジナルの音響信号Soに対し、音源が机に設置され、音源近くにテレビモニタが存在する場合に、音源、机及びテレビモニタを一体の音源Puとして放音される音響信号に変換する。
発明者らは、仮想音源Pが特定設置環境Enにあろうがなかろうが、仮想音源Pが特定設置環境Enに存在するものと聴取者に知覚させると、仮想音源Pの前方定位感が豊かに表現されることを見出した。驚くべきは、例えば、映像により仮想現実空間又は拡張現実空間を知覚させ、これら空間内で浮遊する音源を前方に表示した場合であっても、浮遊する音源が発生する放音特性をシミュレートするよりも、その音源が木製の台に置かれ、近傍にテレビモニタが存在するものとして、その放音特性をシミュレートしたほうが、前方定位を豊かに表現できることである。
更に、この音響再生装置1では、開口面積が2平方センチメートル以下の音孔31により、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRの平面波が聴取者の耳道入口に当たらないように、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRの平面波を耳甲介腔の開口以下の2平方センチメートルに絞っている。更に、音像定位制御部23の伝達特性キャンセルフィルタ233により、ステレオスピーカ3から耳甲介腔までの音響伝達特性を打ち消している。
そのため、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRが、聴取者固有の耳構造によって特異的に変化してしまうことが抑制され、聴取者に依らずにステレオスピーカ3から耳甲介腔までの音響伝達特性を打ち消すことができる。従って、聴取者に依らずに、特定設置意環境Enに応じた放音特性を与えた左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRを精度良く聴取させることができ、仮想音源の前方定位感を聴取者の個性に依らずに知覚させることができる。
図12は、このステレオスピーカ3の構造及び特性キャンセルフィルタ233による耳甲介腔付近でのインパルス応答を示すグラフである。SubjectAとSubjectBは、それぞれ固有の耳構造を有する被験者の耳甲介腔付近でのインパルス応答である。図12の(a)〜(d)において、左図は時間空間におけるインパルス応答、右図は周波数空間におけるインパルス応答である。
図12(a)は、ステレオスピーカ3の音孔31を耳甲介腔超とし、特性キャンセルフィルタ233を通さない結果である。図12(a)に示されるように、SubjectAとSubjectBは、共にインパルスとは非類似のインパルス応答となっている。そして、SubjectAとSubjectBは非類似である。一方、図12(b)は、ステレオスピーカ3の音孔31を耳甲介腔超とし、特性キャンセルフィルタ233を通した結果である。図12(b)に示されるように、SubjectAは、インパルスとは非類似のインパルス応答であるが、SubjectBは、インパルスとは似通ったインパルス応答が得られている。
図12(a)及び(b)に示すように、特定設置意環境Enに応じた放音特性を与えた左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRに対する伝達特性の影響は、特性キャンセルフィルタ233によって抑制できることがわかる。しかしながら、聴取者の個性によらず、特定設定環境Enに応じた放音特性を有する左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRを精度良く届けることはできない。
一方、図12(c)は、ステレオスピーカ3の音孔31を耳甲介腔以下とし、特性キャンセルフィルタ233を通さない結果である。図12(c)に示されるように、SubjectAとSubjectBは、インパルスとは非類似のインパルス応答であるが、両方が似通っていることがわかる。すなわち、ステレオスピーカ3の音孔31を耳甲介腔以下とすれば、個人差に依らずに同じような左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRが聴取者に届くことがわかる。
そして、図12(d)は、ステレオスピーカ3の音孔31を耳甲介腔以下とし、特性キャンセルフィルタ233を通した結果である。図12(d)に示されるように、SubjectAとSubjectBは、共にインパルスと似通ったインパルス応答であり、両方も似通っていることがわかる。
すなわち、ステレオスピーカ3の音孔31を耳甲介腔以下とすることで、聴取者の個性的な耳構造に依らずに回折及び反射等の伝達特性を均質化でき、聴取者の個性に依らずに特性キャンセルフィルタ233を効果的に働かせ、聴取者の個性によらず、特定設定環境Enに応じた放音特性を有する左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRを精度良く届けることができる。
但し、2平方センチメートル以下の開口面積を有する音孔31によると、ステレオスピーカ3を耳甲介腔から5ミリメートル以上離せば、放射インピーダンスがヘッドホン未装着と同様となる。一方、ステレオスピーカ3を耳甲介腔から45ミリメートル以上離すと十分な音量が得られない虞がある。従って、ステレオスピーカ3は、耳甲介腔から5ミリメートル以上45ミリメートル以内とすることが望ましい。
(効果)
以上のように、この音響再生装置1は、仮想音源Pの設置環境如何を問わず、前方定位させる仮想音源Pが直接音に影響を与える特定設置環境Enに存在すると見なして、ステレオスピーカ3が放音する全ての左右チャンネルの音響信号に、該特定設置環境Enの放音特性を畳み込む特定設置環境エフェクタ232を備えるようにした。そして、この特定設置環境エフェクタ232とともに、ステレオスピーカ3が放音する左右チャンネルの音響信号に、仮想音源Pを前方定位させる伝達特性を畳み込む音像定位フィルタ231と、耳元から離間して頭部に配置されるステレオスピーカ3とを備えるようにした。これにより、仮想設置環境Enの放音特性が左チャンネル音響信号SL及び右チャンネル音響信号SRに畳み込まれ、聴取者は仮想音源Pの前方定位を明確に感受できる。
特定設置環境Enとしては、仮想音源Pが第1の物体Ob1に接触する環境、仮想音源Pの近傍に第2の物体Ob2が位置する環境、または其の両方を具備する環境であることが望ましい。すなわち、特定設置環境Enの放音特性は、第1の物体Ob1、第2の物体Ob2又は其の両方と仮想音源Pとを合わせて一つの音源Puと見なしたとき、その一つの音源Puが放音する音響信号とオリジナルの音響信号の相違である。この特定設置環境Enに仮想音源Pが存在するとみなすことで、聴取者は仮想音源Pの前方定位をより明確に感受できる。また、前方以外に定位させる場合であっても、定位感は向上する。
この特定設置環境Enを無響室に再現し、耳甲介腔に設置したマイクロフォンが採取した音響信号と、オリジナルの音響信号との相違を特定することで、特定設置環境Enの放音特性は容易に再現可能である。
尚、前方定位感は、左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRのうち、初期反射音SP3前の信号成分であって、ピークを含む3〜5msecの範囲の信号成分に、特定設置環境Enの放音特性を畳み込むこむことで、聴取者に十分に感受される。その他、伝達関数Cを畳み込んだ左チャンネル音響信号SLと右チャンネル音響信号SRから初期反射音及び後部残響音を生成し、その初期反射音及び後部残響音を加えるようにしてもよい。
また、この音響再生装置1では、仮想音源Pの設置環境と特定設置環境Enが相違している状況であっても、仮想音源Pの定位位置が前方と相違している状況であっても、前記仮想音源を前方から側方、又は側方から前方へ移動させる状況であっても、特定設置環境Enの放音特性を畳み込む。但し、仮想音源Pが特定設置環境Enにあり、仮想音源Pが特定設置環境Enと一致している場合と比べて、特定設置環境Enの放音特性を弱めに畳み込むようにした。これにより、仮想音源Pの設置環境と特定設置環境Enの違いによる違和感を抑制しつつ、定位感、特に前方定位感を向上させることができる。
また、ステレオスピーカ3は、耳道入口に左チャンネル音響信号SL及び右チャンネル音響信号SRを照射するようにした。更に、ステレオスピーカ3と耳甲介腔との間の伝達特性に対する逆特性を左チャンネル音響信号SL及び右チャンネル音響信号SRに畳み込む第3のフィルタとして、伝達特性キャンセルフィルタ233を更に備えるようにした。これにより、ステレオスピーカ3と耳甲介腔との間の音響伝達特性により放音特性を変質させずに聴取者に知覚させることができ、仮想音源Pの前方定位感がより一層豊かに表現される。
また、ステレオスピーカ3は音孔31を有し、音孔31は2平方センチメートル以下の開口面積を有するようにした。これにより、伝達特性キャンセルフィルタ233が有する伝達関数DL、DRは、聴取者の耳構造の個性を無視して作成でき、聴取者の個性に依らず、ステレオスピーカ3から耳甲介腔までの音響伝達特性を非常に高い精度で打ち消すことができ、聴取者の個性に依らず、特定設置環境Enに応じた放音特性を感受させ、聴取者の個性に依らず、仮想音源Pの前方定位感を豊かに感受させることができる。
また、ステレオスピーカ3は、耳甲介腔から5ミリメートル以上45ミリメートル以下の距離に備えられるようにした。これにより、放射インピーダンスがヘッドホン未装着の状態に近づき、また十分な音量を得ることもできる。
このような音響再生装置1は、仮想現実空間及び拡張現実空間を映像により表現するヘッドマウントディスプレイと併用することが好適であり、頭部又は耳に装着されるヘッドマウンタ4を装着用のジグとして、ヘッドマウントディスプレイとともにステレオスピーカ3を耳元に支持するようにしてもよい。映像による仮想現実空間及び拡張現実空間の表現とともに、前方定位を豊かに表現する音による仮想現実空間及び拡張現実空間の表現により、装着者に対して非常に高品質の仮想現実空間及び拡張現実空間を提供することができる。
尚、本実施形態において、各種フィルタ及びエフェクタは、説明の都合上、分離させたが、これに限られない。伝達関数HLと伝達関数Cを乗算することで、左チャンネル音響信号SLに対する一つのフィルタを作出し、伝達関数HRと伝達関数Cを乗算することで、右チャンネル音響信号SRに対する一つのフィルタを作出し、音像定位フィルタ231と特定設置環境エフェクタ232を統合してもよい。更に、伝達特性キャンセルフィルタ233やクロストークキャンセラ234を統合してもよい。
1 音響再生装置
2 音響処理装置
21 メモリ
21a マイクロフォン
22 再生部
23 音像定位制御部
231 音像定位フィルタ
HL 伝達関数
HR 伝達関数
232 放音特性フィルタ
C 伝達関数
233 伝達特性キャンセルフィルタ
DL 伝達関数
DR 伝達関数
234 クロストークキャンセラ
EL 伝達関数
ER 伝達関数
24 DAC
25 アンプ
26 RF送信部
27 RF受信部
3 ステレオスピーカ
3L 左側スピーカ
3R 右側スピーカ
31 音孔
4 ヘッドマウンタ
So 音源データ
SL 左チャンネル音響信号
SR 右チャンネル音響信号
P 仮想音源
Pu 一体の音源

Claims (13)

  1. 耳元から離間して頭部に配置されるステレオスピーカと、
    前記ステレオスピーカが放音する左右チャンネルの音響信号に、仮想音源を前方定位させる伝達特性を畳み込む第1のフィルタと、
    仮想音源の設置環境如何を問わず、前方定位させる仮想音源が直接音に影響を与える特定設置環境に存在すると見なして、前記ステレオスピーカが放音する全ての左右チャンネルの音響信号に、該特定設置環境の放音特性を畳み込む第2のフィルタと、
    を備え、
    前記特定設置環境は、仮想音源が第1の物体に接触する環境、仮想音源の近傍に第2の物体が位置する環境、又は其の両方を具備する環境であり、
    前記特定設置環境の放音特性は、前記第1の物体、前記第2の物体又は其の両方と前記仮想音源とを合わせて一つの音源と見なしたとき、その一つの音源が放音する音響信号とオリジナルの音響信号の相違であること、
    を特徴とする音響再生装置。
  2. 耳元から離間して頭部に配置されるステレオスピーカと、
    前記ステレオスピーカが放音する左右チャンネルの音響信号に、仮想音源を前方定位させる伝達特性を畳み込む第1のフィルタと、
    仮想音源の設置環境如何を問わず、前方定位させる仮想音源が直接音に影響を与える特定設置環境に存在すると見なして、前記ステレオスピーカが放音する全ての左右チャンネルの音響信号に、該特定設置環境の放音特性を畳み込む第2のフィルタと、
    を備え、
    前記特定設置環境の放音特性は、音源を第1の物体に接触する環境、音源の近傍に第2の物体が位置する環境、又は其の両方を具備する環境を有する無響室内で耳甲介腔に設置したマイクロフォンが採取した音響信号と、オリジナルの音響信号との相違であること、
    を特徴とする音響再生装置。
  3. 前記特定設置環境の放音特性は、前記第1の物体の振動により仮想音源の放音する音響信号を変化させる特性、又は前記第1の物体や前記第2の物体からの反射音が仮想音源の放音する音響信号の直接音成分に合成される特性の少なくとも一方を含む特性であること、
    を特徴とする請求項1又は2記載の音響再生装置。
  4. 前記第2のフィルタは、
    前記ステレオスピーカが放音する左右チャンネルの音響信号に含まれ、初期反射音前の信号成分であって、ピークを含む3〜5msecの範囲の信号成分に、前記特定設置環境の放音特性を畳み込むこと、
    を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の音響再生装置。
  5. 前記第2のフィルタは、
    前記仮想音源の設置環境と前記特定設置環境が相違している状況であっても、前記特定設置環境の放音特性を畳み込むこと、
    を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の音響再生装置。
  6. 前記第2のフィルタは、
    前記仮想音源の定位位置が前方と相違している状況であっても、前記特定設置環境の放音特性を畳み込むこと、
    を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の音響再生装置。
  7. 前記第2のフィルタは、
    前記仮想音源を前方から側方、又は側方から前方へ移動させる状況であっても、前記特定設置環境の放音特性を畳み込むこと、
    を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の音響再生装置。
  8. 前記第2のフィルタは、
    前記仮想音源が前記特定設置環境にある場合、又は前記仮想音源を前方定位させる場合と比べて、前記仮想音源が前記状況にあるときには、前記特定設置環境の放音特性を弱めに畳み込むこと、
    を特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の音響再生装置。
  9. 前記ステレオスピーカは、耳道入口に音響信号を照射し、
    前記ステレオスピーカと耳甲介腔との間の伝達特性に対する逆特性を前記音響信号に畳み込む第3のフィルタを更に備えること、
    を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の音響再生装置。
  10. 前記ステレオスピーカは、各々音孔を有し、
    前記音孔は、2平方センチメートル以下の開口面積を有すること、
    を特徴とする請求項9記載の音響再生装置。
  11. 前記ステレオスピーカは、前記耳甲介腔から5ミリメートル以上45ミリメートル以下の距離に備えられること、
    を特徴とする請求項10記載の音響再生装置。
  12. 前記第2のフィルタは、
    前記放音特性に加え、有響空間の初期反射特性と後部残響特性の信号の少なくとも一方を、前記音響信号に更に畳み込むこと、
    を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の音響再生装置。
  13. 頭部又は耳に装着され、前記ステレオスピーカを耳元に支持するジグと、
    前記ジグに支持されるヘッドマウントディスプレイと、
    を備えること、
    を特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の音響再生装置。
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