本発明の態様を例示的な実施形態を参考にして図面を参照するとともに説明する。図中、類似の符号は類似の要素を指す。
本発明の各種態様は、概して、血液濾過システム、血液濾過透析システム、血漿交換システムなどの血液透析等の新システムに関する。したがって、本明細書に記載の各種システムおよび方法は血液透析に関連して説明されているが、その他の透析システムおよび/または血液または血漿などのその他の体液を処理可能な体外システムにも適用可能であることを理解すべきである。
以下に説明するように、血液透析システムは通常、血液流路と透析液流路とを含む。こうした流路において、流体の流れは必ずしも直線的である必要はなく、流体が流路の入口から流路の出口まで流れることのできる流路内に任意数の「枝路」があり得ることに留意すべきである。このような分岐の例を以下で詳細に説明する。血液流路において、血液は患者から引き出され、透析器を通過した後に患者に戻る。血液は透析器によって処理され、廃棄分子(たとえば、尿素、クレアチニンなど)と水は、血液から透析器の半透膜を通じて、透析液流路によって透析器を通過する透析液溶剤へと至る。各種実施形態では、2つのライン(たとえば、動脈ラインと静脈ライン、すなわち、「二重針」流)を通じて患者から血液を得ることができる、あるいは、一実施形態では、血液を患者から抜き取り、同じ、つまりカテーテル針を通じて戻すことができる(たとえば、2つのラインまたは内腔は両方とも同じ針内に存在する、すなわち「二重内腔」流の形状であることができる)。さらに他の実施形態では、「Y字」部位または「T字」部位が使用されており、2つの枝路(1つは抜き取った血液の流路用、もう1つは戻る血液用の流路、すなわち、「単一針」流の形状)を有する1つの患者との連結部を通じて、患者から血液を抜き取り、患者へと戻す。患者は、犬、猫、猿などの人間以外の対象と人間とを含む、血液透析または類似の治療を必要とする任意の対象とすることができる。
透析液流路では、新鮮な透析液が作成され、血液流路からの血液を処理すべく透析器を通過させられる。さらに、透析液は、透析器内での血液処理のために、精密に、あるいは、いくつかの実施形態では、血液圧の少なくとも約1〜2%内に、均等化させることができる(すなわち、透析液と血液との間の圧力を均等化する)。一実施形態では、血液流路と透析液流路との間の大きな圧力差(正または負)を維持することが望ましいことがある。透析器を通過した後、(後述するように)廃棄分子を含む使用済み透析液は、所定の方法によって廃棄される。透析液は、一実施形態では「多通路」構成で再循環させることができ、これは、透析器を横断する低移動度の比較的大きな分子を捕捉するのに好都合であり得る。一実施形態では、電気抵抗ヒータなどの適切なヒータを用いて、透析器内の血液を処理する前に透析液を加熱することができる。たとえば、限外濾過フィルタを用いて、汚染物質、感染性微生物、屑などを除去するために、透析液を濾過することもできる。限外濾過フィルタは、上記のような種が通過してしまうのを防ぐように選択された孔径を有することができる。たとえば、孔径は、約0.3マイクロメートル未満、約0.2マイクロメートル未満、約0.1マイクロメートル未満、または約0.05マイクロメートル未満などにすることができる。透析液は浸透または濾過に伴う溶質移動により、廃棄分子(たとえば、尿素、クレアチニン、カリウムなどのイオン、リン酸塩など)と水とを血液から抜き取り透析液内に送るために使用され、透析溶液は当業者にとって周知である。
透析液は通常、正常な血液と同様の濃度で、ナトリウム、塩化物、重炭酸塩、カリウム、およびカルシウムなどの各種イオンを含有する。一実施形態では、重炭酸塩は、正常な血液中の濃度より若干高い濃度を有する場合がある。通常、透析液は、給水器からの水と1つまたは複数の成分とを混合することによって作成される。ここで、1つまたは複数の成分とは、「酸」(酢酸、デキストロース、NaCl、CaCl、KCl、MgClなどの様々な種を含み得る)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、および/または塩化ナトリウム(NaCl)である。適切な塩濃度、重量オスモル濃度、pHなどの利用を含む透析液の作成は、当業者にとっては周知である。以下詳細に説明するように、透析液は、透析液が血液を処理するために使用される時間と同じ時間に作成する必要はない。たとえば、透析液は透析と同時または透析前に作成し、透析液保存容器などに保管しておくことができる。
透析器内で、透析液と血液は通常、半透膜によって分離される。通常、半透膜は、血液処理中にイオンや小さな分子(たとえば、尿素、水など)の輸送を許すが、大量輸送または濾過に伴う溶質移動を許さない、セルロース、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのポリマーから成る。一実施形態では(高線束透析器など)、β2ミクログロブリンなどのより大きな分子が膜を通過する場合がある。また、一実施形態では、たとえば、静水圧差が半透膜内で存在する場合、イオンと分子が対流によって透析器を通過する場合がある。
本明細書で使用される「流体」は、流体の性質を備えるものすべてを意味し、空気などの気体や、水、水溶液、血液、透析液などの液体を含むがそれらに限定されないことに留意すべきである。
図1は、発明の各種態様を組み込む血液透析システムの流体回路の概略ブロック図である。本例示の実施形態では、透析システム5は、患者から血液を抜き取り、血液を透析器14に通過させ、処理済み血液を患者に戻す血流回路141を備える。平衡回路または内部透析液回路143は、限外濾過フィルタ73から透析液を受け取り、透析液を透析器14に通過させ、透析器14から使用済み透析液を受け取る。方向付け回路または外部透析液回路142は、新鮮な透析液を限外濾過フィルタ73に供給し、内部透析液回路143から(排液口31へと方向づけられる)使用済み透析液を受け取る。方向付け回路142は、給水源30から水を受け取り、その水を混合回路25に流すこともできる。混合回路25は、方向付け回路142からの水と、再生可能な供給源から受け取ることの可能な、クエン酸、塩、および重炭酸塩などの試薬成分49とを用いて透析液を作成する。混合回路25は、たとえば、必要に応じて、透析中および/または透析前に透析液を作成することができる。混合回路25によって作成された新たな透析液は、方向付け回路142に供給され、その方向付け回路142が、上述するように透析液を限外濾過フィルタ73に供給することができる。方向付け回路142は、透析液を適切な温度に加熱し、および/または消毒用システム内の流体を加熱するヒータを含むことができる。たとえば、血液透析システムの消毒のため、血流回路141と方向付け回路142との間を管路67(点線で表示)で接続することができる。
図2は、図1に示す透析システム5用のより詳細な回路構成を示す概略図である。当然ながら、図2は図1の一般的な血液透析システムのうち1つの可能な実施形態にすぎず、他の実施形態では、その他の流体回路、モジュール、流路、レイアウトなどが可能であると理解すべきである。こうしたシステムの例は、より詳細に後述し、各々が参照により本明細書に組み込まれる以下の文献において参照される。すなわち、2008年2月27日に出願された米国特許出願第12/072,908号明細書、2007年2月27日に出願された米国仮特許出願第60/903,582号明細書、2007年2月27日に出願された米国仮特許出願第60/904,024号明細書、2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,680号明細書、2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,712号明細書、2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,787号明細書、2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,793号明細書または2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,803号明細書である。
血流回路141は、抗凝血剤供給源11と、血液を患者から透析器14を通じて送出し、該血液を患者に戻す血流ポンプ13とを備える。抗凝血剤供給源11は、透析器に向かって流れる血液路では図示されていないが、血流ポンプ13の上流または下流の任意の位置などの別の適切な位置に配置することができる。平衡回路143は、透析液を透析器14に圧送する2つの透析液ポンプ15と、バイパスポンプ35とを備える。血流回路141を通る血液流は、一実施形態では、透析液流路内の透析液流と同期する。一実施形態では、透析器14および平衡回路143を出入りする透析液流は、平衡回路143の平衡チャンバを用いて平衡が保たれる。方向付け回路142は、透析液タンク169からヒータ72および/または限外濾過フィルタ73を通じて平衡回路143まで透析液を圧送する透析液ポンプ159を備える。また、方向付け回路142は、平衡回路143から廃液を受け取り、それを排液口31へと方向付ける。一実施形態では、血流回路141は、たとえば上述したように消毒のために、管路67を通じて方向付け回路142に接続され得る。透析液タンク169内の透析液は混合回路25によって供給される。混合回路25は、方向付け回路142を通じて供給される給水源30からの水と透析液成分49(たとえば、重炭酸塩と酸)とを用いて透析液を生成する。一連の混合ポンプ180、183、184は、各種成分を混合して透析液を生成するために使用される。
図3は、本例示の実施形態の血流回路141の近接図である。通常動作時、血液は患者から血流ポンプ13を通じて動脈ライン203を通り透析器14まで流れる(通常の透析中の流れの方向は矢印205で示す。しかし、いくつかの動作モードでは、後述するように、流れは異なる方向であってもよい)。任意に、抗凝血剤供給源から抗凝血剤ポンプ80を通じて血液中に抗凝血剤を導入することができる。透析器14を通過し透析を受けた後、血液は、任意にエアトラップおよび/または血液サンプルポート19を通過し、静脈ライン204を通って患者へと戻る。ポンプ13は、たとえば、制御流体によって作動されるポンプ23を含むことができる。
たとえば、一実施形態では、血流ポンプ13は、2つ(またはそれ以上)のポッドポンプ23を備えることができる。本実施例では、各ポッドポンプは、各チャンバをポンプコンパートメントと制御コンパートメントとに分割する可撓性の隔膜または膜を有する剛質(リジッド)チャンバを備えることができる。これらのコンパートメントには4つの入口/出口バルブを設けることができ、2つはポンプコンパートメント用、2つは制御コンパートメント用である。チャンバの制御コンパートメント用バルブは双方向比例バルブとすることができ、一方は第1の制御流体源(たとえば、高圧空気源)に接続され、他方は第2の制御流体源(たとえば、低圧空気源)または真空源に接続される。ポッドポンプ23の動作中、流体バルブは流体の流れを方向づけるために開放および閉鎖することができる。ポッドポンプの非限定的な例は、2006年4月14日に出願された米国仮特許出願第60/792,073号明細書、または2007年4月13日に出願された米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されており、各々参照により本明細書に組み込まれる。2つ以上のポッドポンプが存在する場合、ポッドポンプは、任意の適切な形式において、たとえば同期して、非同期で、同位相において、位相をずらして動作させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、2つのポンプがポンピングサイクルに影響を及ぼすように位相をずらして動作することができ、たとえば、1つ目のポンプチャンバが満たされる一方、2つ目のポンプチャンバが空になる。所望のポンピングサイクルを付与するため、0度(ポッドポンプが同時に満たされ、空になる)と180度(一方のポッドポンプが満たされる間、他方のポンプが空になる)との間の任意の位相関係を選択することができる。180度の位相関係は、ポッドポンプのセットを出入りする連続的な流れを生み出すことができる。たとえば、二重針または二重内腔カテーテル流とともに使用するために連続流が所望される場合、有益である。しかしながら、単一針/単一内腔流の場合には、0度の位相関係を設定することが有益である。0度の関係の場合、ポッドポンプは最初に針から充填され、次に血液流路を通って血液を運び、同じ針を用いて患者に血液を戻す。また、透析器全体での押し/引き関係(血液透析または連続的バックフラッシュ)を達成するには、一実施形態では、0度〜180度間の位相の実行を利用することができる。
抗凝血剤(たとえば、ヘパリンやその他の適切な抗凝血剤)はバイアル(vial)11(またはチューブやバッグなどのその他の抗凝血剤供給源)内に含有させることができ、血流回路141は、バイアルの封(seal)を貫通することのできるスパイク201(一実施形態では、針である)を備えることができる。スパイク201は、プラスチック、ステンレス鋼、またはその他の適切な材料から成ることができ、一実施形態では消毒可能な材料製であってもよく、たとえば、材料は消毒の際の十分な高温および/または放射に耐え得る。
一実施形態では、計量チャンバとしての役割を担う抗凝血剤ポンプ80は、血液回路への抗凝血剤の流れを制御するために使用することができる。抗凝血剤ポンプ80はポッドポンプまたはダイアフラム計量ポンプであってもよく、および/または空気などの制御流体によって作動させることができる。たとえば、抗凝血剤ポンプ80は、チャンバをポンプコンパートメントと制御コンパートメントとに分割する可撓隔膜を有する剛質チャンバを備えることができる。チャンバの制御コンパートメント用の一方のバルブは第1の制御流体源(たとえば、高圧空気源)に接続され、他方のバルブは第2の制御流体源(たとえば、低圧空気源)または真空源に接続されることができる。チャンバのポンプコンパートメント用のバルブは、制御コンパートメントと協調して開閉させることによって、血液への抗凝血剤の流れを制御することができる。1つの実施形態では、フィルタ81を通じて供給される空気が抗凝血剤ポンプ80によって血液流路に導入され、たとえば、抗凝血剤がバイアルから引き出される前または後にバイアル11内に空気を供給することができる。
流体管理システム(「FMS」)の測定は、膜の一行程中にポンプチャンバを通って圧送される流体の体積を測定するか、あるいはポンプチャンバ内の空気を検出するために使用することができる。FMS法は、米国特許第4,808,161号明細書、同第4,826,482号明細書、同第4,976,162号明細書、同第5,088,515号明細書および同第5,350,357号明細書に記載されており、これらは、全体として参照により本明細書に組み込まれる。例示の一実施形態では、抗凝血剤ポンプ、透析液ポンプ、またはその他のダイアフラム流体ポンプによって送出される液体の体積は、充填行程の最後と送出行程の最後での体積測定を算出するのにチャンバ圧の変化を利用するFMSアルゴリズムを使用して判定される。充填行程の最後と送出行程の最後で算出された体積間の差を、実際の行程容積(stroke volume)を判定するために使用することができる。この実際の行程容積は、特定サイズのチャンバに関する予想行程容積と比較することができる。実際行程容積と予測行程容積が大きく異なる場合、行程が適切に完了しておらず、エラーメッセージを生成することができる。
血流回路141は、血液流路に存在し得る気泡を除去するためのエアトラップ19も備えることができる。一実施形態では、エアトラップ19は、存在し得る空気を重力により血液から分離し、および/または血液をサンプリングするためのポートを含むことができる。
図4は、図2の実施形態における平衡回路143の近接図である。平衡回路143では、透析液は、任意の限外濾過フィルタ73から透析液ポンプ15内へ流れる。本実施形態では、透析液ポンプ15は、2つのポッドポンプ161、162と、2つの平衡チャンバ341、342と、平衡チャンバ341、342をバイパスするポンプ35とを備える。平衡チャンバ341、342は、チャンバを2つの別個の流体コンパートメントに分割する可撓隔膜を有する剛質チャンバから成り、一方のコンパートメントへの流体の進入が他方のコンパートメントから流体を追い出す(その逆も可)のに使用されるように構成される。ポッドポンプおよび/または平衡チャンバとして使用することができるポンプの非限定的な例は、2006年4月14日に出願された米国仮特許出願第60/792,073号明細書にまたは2007年4月13日に出願された米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されている。
一実施形態では、内部透析液回路内の流れの平衡化は以下のように動作する。1セットの空気式バルブ211、212、213、241、242は同期して共に制御されて動作し、バルブ211、212、213が一群にされ、バルブ241、242が一群にされており、第2セットの空気式バルブ221、222、223、231、232も同様に同期し共に制御されて動作し、バルブ221、222、223が一群にされ、バルブ231、232が一群にされている。第1の時点で、第1セットのバルブ211、212、213、241、242が開放され、第2セットのバルブ221、222、223、231、232が閉鎖される。新鮮な透析液が平衡チャンバ341に流れ込み、使用済み透析液が透析器14からポッドポンプ161に流れ込む。バルブ221が閉鎖されているため、新鮮な透析液は平衡チャンバ342に流れ込まない。新鮮な透析液が平衡チャンバ341に流れ込むにつれ、平衡チャンバ341内の使用済み透析液は追い出され、平衡回路143を出る(バルブ223が閉鎖されているため、使用済み透析液はポッドポンプ161に進入しない)。同時に、ポッドポンプ162は、ポッドポンプ内に存在する使用済み透析液を(開放されているバルブ213を通って)平衡チャンバ342内に押しやる(バルブ242、222は閉鎖されており、使用済み透析液は確実に平衡チャンバ342に流れ込む)。これにより、平衡チャンバ342内に含まれる新鮮な透析液は、平衡回路143を出て透析器14に入る。さらに、ポッドポンプ161が、透析器14からポッドポンプ161内へと使用済み透析液を引き出す。
ポッドポンプ161および平衡チャンバ341が透析液で満たされると、第1セットのバルブ211、212、213、241、242が閉鎖されて、第2セットのバルブ221、222、223、231、232が開放される。バルブ221が開放される間、バルブ212が開放されるため、新鮮な透析液は平衡チャンバ341ではなく平衡チャンバ342に流れ込む。新鮮な透析液が平衡チャンバ342に流れ込むにつれ、バルブ213は現時点で閉鎖されているため、チャンバ内の使用済み透析液は追い出され平衡回路を出る。さらに、現時点でバルブ232が閉塞されバルブ222も開放されているため、使用済み透析液がポッドポンプ161に流れ込むのを防止されている間、ポッドポンプ162は透析器からポッドポンプ内へと使用済み透析液を引き出す。バルブ232、211が閉鎖され、バルブ223が開放されるため、ポッドポンプ161は(先のステップからの)ポッドポンプ内に含まれる使用済み透析液を平衡チャンバ341に押し込む。これにより、(現時点でバルブ241が開放され、バルブ212が閉鎖されているため)、平衡チャンバ341内に含まれる新鮮な透析液が透析器14内へと誘導される。このステップの最後で、ポッドポンプ162および平衡チャンバ342は透析液で満たされる。このため、システムの状態は本説明の最初の構成に戻るので、サイクルを繰り返して透析器14との間で透析液の一定流を確保することができる。一実施形態では、平衡チャンババルブが適切に機能している(たとえば、開放と閉鎖)ことを保証するため、平衡チャンババルブの制御側にかかる流体(たとえば空気)圧が監視される。
具体例としては、第1セットのバルブのポートに真空(たとえば、4psiの真空)を印加してそれらのバルブを開放させ、第2セットのバルブに正圧(たとえば、20psiの空気圧)を印加してそれらのバルブを閉鎖させることができる(またはその逆も可)。各ポッドポンプは、平衡チャンバ341、342の一方へ透析液を促す。透析液を平衡チャンバの所定の体積に押し込むことによって、同量の透析液が隔膜によって平衡チャンバの残りの体積から外へ絞り出される。各平衡チャンバでは、所定の体積が新鮮な透析液によって占められて透析器へと向かい、残りの体積が透析器から来る使用済み透析液によって占められる。よって、透析器に入る透析液の体積と透析器から出る透析液の体積は略均等に保たれる。
バイパスポンプ35は、ポッドポンプ161、162のいずれも通過せずに透析液流を透析器14から平衡回路143を通って方向付けることができる。本実施形態では、バイパスポンプ35は、剛質チャンバと、各チャンバを流体コンパートメントおよび制御コンパートメントに分割する可撓隔膜とを有する、上述したものと同様のポッドポンプである。このポンプは、上述したその他のポッドポンプおよび/または計量ポンプと同一であっても異なっていてもよい。制御流体がバイパスポンプ35を作動させるために使用されると、透析器の出ていく(使用済み)透析液の側にかかる圧力がさらに低下して、流体が透析器内の血液からさらに限外濾過される。これにより、正味の流体が患者の血液から透析器を通って最終的に排液口へと流出する。このようなバイパスは、たとえば、患者が腎臓を通じて余分な流体(主に水)を排出できないことにより増大し得る、患者の有する流体の量を低減する際に有効である。図4に示すように、バイパスポンプ35は、ポッドポンプ161、162の動作に関係なく、制御流体(たとえば、空気)によって制御することができる。この構造により、患者からの上記流体の除去を達成するため、透析液ポンプを血液ポンプと不均衡に、あるいは位相をずらして動作させる必要がなく、患者からの正味流体除去をより容易に制御することができる。
透析器全体の流れのバランスを取るため、血流ポンプ、平衡回路のポンプ、および方向付け回路(後述)のポンプを連動するように動作させて、透析器に入る流れが透析器を出る流れとほぼ均等になるように確保することができる。限外濾過を必要とする場合、限外濾過ポンプ(存在すれば)をその他の血液ポンプおよび/または透析液ポンプの一部または全部と関係なく動作させて、所望の限外濾過速度を達成することができる。
透析液の気体発生を防止するため、平衡回路のポンプは大気圧を超える圧力下に保つことができる。しかしながら、対照的に、血流ポンプおよび方向付け回路ポンプは大気圧未満の圧力を使用して、隔膜をチャンバ壁の方に引き、充填行程を完了させる。流体が透析器の半透膜全域を移動し、また、平衡回路のポンプが正圧で動作するため、平衡回路ポンプは、平衡回路チャンバの透析器への送出行程と血液ポンプの送出行程とを同期させるために血流ポンプからの情報を利用することができる。
一つの実施形態では、このような平衡化モードで動作する際、血流ポンプからの送出圧力がなければ、平衡回路ポンプの隔膜は透析器全域の流体を血液内へ押し出し、平衡回路の別のポッドは完全に充填しない。このため、血流ポンプは、能動的に一行程送出しているときに報告する。血流ポンプが一行程で送出しているとき、内部透析液ポンプが動作する。血流ポンプが血液を送出していないとき、透析器から内部透析液ポンプへの流れを制御するバルブ(および、上述したようにこれらのバルブと一群にされたその他の平衡化バルブ)を閉鎖して、透析液側から血液側への流体移送が発生するのを防止する。血流ポンプが送出していない間、内部透析液ポンプは有効に凍結され、血流ポンプが送出を再開すれば、内部透析液ポンプの送出行程が再開される。内部透析液ポンプ充填圧は、ポンプが最小インピーダンスで大気圧を超えて動作することを確実にするため、最小の正の値に設定することができる。さらに、内部透析液ポンプ送出圧は、透析器のいずれかの側にかかる圧力とほぼ一致するように血流ポンプ圧に設定され、内部透析液ポンプの送出行程中の透析器を横断する流れを最小限に留めることができる。
別の実施形態では、内部透析液ポンプは、血液が透析器に送り出される圧力よりわずかに高い圧力で、透析液を透析器に送出する。これにより、完全にバランスのとれたチャンバの清浄な透析液が透析器に送り出される。戻り側では、内部透析液ポンプが、透析器の血液側の出口圧よりもわずかに低い圧力で、透析器からの使用済み透析液で満たし、収容透析液ポンプチャンバを確実に充填することができる。その結果として、平衡チャンバ内の全行程を完了させるのに十分な透析液を確保することができる。これらの圧力差によって生じた半透膜の横断流は、相殺し合う傾向にあり、それ以外の方法でポンピングアルゴリズムは、透析器の透析液側と血液側にかかる平均圧力を合致させようとする。
停滞した血液流は血栓を起こす可能性があるため、治療中、血液流をできる限り連続的に保つことが一般的に有益である。また、血流ポンプの送出流量が非連続的である場合、平衡化ポンプはより頻繁に行程を一時停止し、結果的に非連続的および/または低透析液流量をもたらしかねない。しかし、血流ポンプを通る流れは、様々な理由で非連続的になる可能性がある。たとえば、患者に安全なポンピング圧を提供するため、圧力が血流ポンプ内で、たとえば、+600mmHgおよび/または−350mmHgに制限される場合がある。たとえば、二重針流の場合、血流ポンプの2つのポッドポンプは、互いに180度位相をずらして動作するようにプログラムすることができる。圧力に制限がない場合、この位相合わせは常に実行可能である。しかしながら、患者にとって安全な血流を提供するため、これらの圧力は制限される。(小型の針、粘度が非常に高い血液、わずかな患者アクセスなどのため)充填行程でのインピーダンスが高い場合、負圧の限界に達する場合があり、充填流速が所望の充填流速より遅くなる。よって、送出行程が先の充填行程が終わるのを待たなければならず、結果的に血流ポンプの送出流速を一時停止することになる。同様に、単一針流の場合、血流ポンプが0度の位相で動作し、2つの血流ポンプのポッドポンプは同時に空になり充填される。両方のポッドポンプが充填されれば、2つのポッドポンプの体積が送出される。一実施形態では、一続きの作動で、まず第1のポッドポンプ、次に第2のポッドポンプが充填された後、まず第1のポッドポンプ、次に第2のポッドポンプが空になる。よって、単一針または単一内腔構造での流れは非連続的になることがある。
圧力飽和限界を制御する方法の1つは、所望の流速を最も遅い充填行程および送出行程に制限することである。この結果、血液送出流速は遅くなるが、流速はいまだに既知であり、より連続的になり、より正確で連続的な透析液流速を可能にする。単一針動作で血液流速をより連続的にするもう1つの方法は、充填時間が最小限になるようにポッドを充填するのに最大圧を使用することである。次に、所望の送出時間を、所望の行程時間合計から充填行程にかかる時間を引いた時間に設定することができる。しかしながら、血液流が連続的でなくなるほど、血流ポンプが充填しているときに透析液ポンプが停止される時間を補うため、透析器への血液送出中に透析液流速を上方向に調節しなければならない。これが正確なタイミングで実行されれば、複数行程にわたる平均透析液流速は、所望の透析液流速に合致させることができる。
図5は、図2の実施形態の方向付け回路142の近接図である。本実施形態では、方向付け回路142は、透析液ポンプ159を通じて、透析液タンク169からヒータ72および限外濾過フィルタ73へ透析液を供給することができる。ヒータ72は、体温および/または血流回路内の血液が透析液によって加熱され、患者に戻る血液が体温以上となるような温度まで透析液を温めるために使用することができる。一実施形態では、ヒータ72は制御システムに接続されて、不正確に加熱された透析液(すなわち、透析液が熱すぎるか冷たすぎる)がリサイクルされる(たとえば、透析液タンク169に戻される)、あるいは透析器へ送られる代わりに排液口へ送られる。ヒータ72は、いくつかの実施形態では、消毒または殺菌のために使用することもできる。たとえば、水を血液透析システムに通過させ、消毒または殺菌できる温度、たとえば、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃などの温度に加熱されるようにヒータを用いて加熱することができる。
方向付け回路142を通る透析液流は、透析液ポンプ159の動作によって(少なくとも部分的に)制御することができる。また、透析液ポンプ159は、平衡回路143を通る流れを制御することができる。たとえば、上述したように、方向付け回路142からの新鮮な透析液は、平衡回路143の平衡チャンバ341、342に流れ込む。透析液ポンプ159は、新鮮な透析液をこれらの平衡チャンバに流れ込ませる駆動力として使用することができる。一つの実施形態では、透析液ポンプ159は、たとえば、上述したものと同様のポッドポンプを含む。透析液は、汚染物質、感染性微生物、病原菌、発熱物質、屑などを除去するために、たとえば限外濾過フィルタ73を用いて濾過することもできる。
限外濾過フィルタ73は、たとえば図示するように、方向付け回路と平衡回路との間などの透析液流路内の適切な位置に配置することができ、および/または、限外濾過フィルタ73は方向付け回路または平衡回路に組み込まれることができる。限外濾過フィルタが使用される場合、孔径は、種がフィルタを通過するのを防ぐように選択することができる。
一実施形態では、限外濾過フィルタ73は、フィルタからの廃棄物(たとえば、保持液流)が図5の廃棄物ライン39などの廃棄物流に送られるように動作し得る。一実施形態では、保持液流に流れ込む透析液の量は制御され得る。たとえば保持液が冷たすぎる(すなわち、ヒータ72が機能していないか、あるいはヒータ72が透析液を十分な温度まで加熱していない)場合、全体透析液流(あるいは透析液の少なくとも一部)は廃棄物ライン39へと分岐され、任意で、ライン48を用いて透析液タンク169にリサイクルされ得る。フィルタ73からの流れは、たとえば、温度センサ(センサ251、252など)や伝導度センサ(透析液濃度の確認用、例えばセンサ253など)などを用いて、いくつかの理由で監視することもできる。こうしたセンサの例については後述し、さらなる非限定的な例は、2008年2月27日に出願された米国特許出願第12/038,474号明細書によって参照される。
限外濾過フィルタおよび透析器は、汚染物質、伝染性微生物、病原菌、発熱物質、屑などの除去のための余分な選分け方法を提供することができる。したがって、患者の血液に達する前に、どんな汚染物質も限外濾過フィルタと透析器の両方を通過しなければならない。限外濾過フィルタまたは透析器のいずれか一方の完全性が損なわれた場合でも、透析液の無菌を維持し、汚染物質が患者の血液に入るのを防止することができる。
方向付け回路142は、平衡回路から排液口へ、たとえば、廃棄物ライン39を通って排液口31へ使用済み透析液を送ることもできる。排液口は、たとえば、地方自治体の排液口または適切に処理されるように水(たとえば、使用済み透析液)を収容する別個の容器であってもよい。一実施形態では、1つまたは複数のチェックバルブまたは「一方向」バルブ(たとえば、チェックバルブ215、216)が、方向付け回路142およびシステム5からの廃棄物流を制御するために使用される。さらに、一例では、血液が透析器14を通って透析液流路に漏れ出しているか否かを判定するために、血液漏れセンサ(たとえば、センサ258)を使用することができる。また、液体センサを血液透析ユニットの底の回収皿に配置して、流体回路からの血液または透析液、あるいはその両方の漏れを表示することができる。
方向付け回路142は、給水源30、たとえばバッグなどの水容器、および/または逆浸透装置などの水を生成することのできる装置から水を受け取ることができる。一実施形態では、システムに入る水は、たとえば、特定値未満のイオン濃度を有する特定純度に設定することができる。方向付け回路142に入る水は、様々な位置、たとえば、新鮮な透析液を生成する混合回路25および/または廃棄物ライン39に送ることができる。一実施形態では、排液口31および各種リサイクルラインへのバルブが開放され、管路67が方向付け回路142と血流回路141との間で接続されて、水が連続的にシステムを巡って流れる。ヒータ72が始動される場合、システムを通過する水は、たとえば、システムを消毒するのに十分な温度まで連続的に加熱される。
図6は、図2の例示の実施形態における混合回路25の近接図である。方向付け回路142からの水は、ポンプ180の作用により混合回路25に流れ込む。本実施形態では、ポンプ180は、上述したものと同様の1つまたは複数のポッドポンプを含む。一実施形態では、たとえば、重炭酸塩28などの成分を輸送する際に使用するため、水の一部が、混合回路25を通って試薬成分49へ方向付けられる。一実施形態では、塩化ナトリウムおよび/または重炭酸ナトリウム28は粉末または顆粒状で供給され、ポンプ180によって供給される水と混合される。重炭酸塩源28からの重炭酸塩は、重炭酸塩ポンプ183を通じて混合ライン186に送出され、混合ラインは方向付け回路142からの水も受け取る。酸源29からの酸(液体の形でもよい)も、酸ポンプ184を通じて混合ライン186に圧送される。成分49(水、重炭酸塩、酸、NaClなど)は混合チャンバ189で混合されて透析液を生成し、次いで、透析液は混合回路25を出て方向付け回路142へと流れる。伝導度センサ178、179は混合ライン186に沿って配置され、それぞれの成分が混合ラインに追加される際、適切な濃度で追加されることが確実となる。水ポンプ180および/またはその他のポンプによって送出される体積は伝導度測定値に直接関連するため、体積測定値は、生成される透析液の組成に関するクロスチェックとして使用することができる。これにより、たとえ伝導度測定値が治療中に不正確となっても、透析液の組成が安全性を維持するように確保される。
図7は、本発明の各種態様を組み込む血液透析システム5の斜視図である。本発明の一態様によると、システム5は、共に接合して示されている透析ユニット51と動力部モジュール52とを備える。本実施形態では、透析ユニット51は、透析器、透析器を通る血液を循環させる1つまたは複数のポンプ、透析液源、および透析器を通る透析液を循環させる1つまたは複数のポンプなどの、血液透析を実行するために適した構成要素を収容するハウジングを有する。たとえば、透析ユニット51は、上述したように、混合回路25、血流回路141、平衡回路143、および方向付け回路142を備えることができる。透析ユニット51は、システム5の動作に必要なすべての血液回路接続部および透析液流体接続部も備えることができる。患者アクセスおよびその他の接続部は、透析ユニット51のハウジングの前側でハンドル54を通じて縦型並列ドア53を開放することによって露出させることができる。本実施形態では、透析ユニット51は、透析ユニット51の動作を制御するのに使用可能な(本実施形態では、可撓ケーブルによってハウジングに装着される)制御インタフェース55を備える。制御インタフェース55は、接触感知オーバーレイを有する表示画面を備え、接触制御と、画面に提示されるグラフィカルユーザインタフェースとの相互作用とを可能にする。制御インタフェース55は、プッシュボタン、スピーカ、音声コマンドを受信するマイクロフォン、デジタルカメラなどのその他の機能を含むこともできる。制御インタフェース55の裏側には、制御インタフェース55を透析ユニット51のハウジングの上に配置させることのできる格納式の「キックスタンド」(図示せず)を備えることができる。格納式「キックスタンド」の配備によって、制御インタフェース55は表示画面を適切に見ることのできるよう略垂直位置に配置される。他の実施形態では、制御インタフェース55は、タブレット型コンピュータまたはハンドヘルド電子通信デバイスを含むことができ、これらはいずれも、透析ユニット51内に収容されているコントローラと無線で通信することができる。無線通信手段の例としては、Bluetooth(登録商標)技術またはWi−Fi(登録商標)等の無線ローカルエリアネットワーク技術を挙げることができる。
動力部52のハウジングは、透析ユニット51に動作動力を与える、たとえば、ポンプ、バルブ、および透析ユニット51のその他の構成要素に空気/真空を与えるのに適した構成要素を含むことができる。本明細書で使用する「空気圧」とは、可撓隔膜またはその他の部材を移動させるために空気やその他の気体を使用することを意味する(空気は単に例として使用しており、他の実施形態では、窒素(N2)、CO2、水、油などのその他の制御流体を使用することができることに留意すべきである)。上述したように、透析ユニット51のポンプおよびバルブは空気動力で動作するため、動力部52は透析ユニット51による使用のために1つまたは複数の空気圧源を提供することができる。このように、透析ユニット51は必ずしも必要な空気動力を生成および/または保管するように構成される必要はなく、代替えとして動力部モジュール52に頼ることができる。動力部52は、所望の空気圧および/または真空を生成する1つまたは複数の空気圧ポンプ、空気動力を保管する1つまたは複数の畜圧器またはその他の装置、バルブ、管路および/または動力部52における空気流を制御するその他の装置、ならびに、プログラムされた汎用データプロセッサ、メモリ、(たとえば、圧力や温度などを検知する)センサ、リレー、アクチュエータなどの適切な構成要素を有するコントローラを備えることができる。
一実施形態では、空気動力(たとえば、適切な圧力/真空下の空気)を、動力部52によって、1つまたは複数の供給タンクまたはその他の圧力源を通じて透析ユニット51に供給することができる。たとえば、2つのタンクが動力部52で使用される場合、一方の供給タンクは正圧貯蔵器とすることができ、一実施形態では、750mmHg(ゲージ圧)(1mmHgは約133.3パスカル)の設定点を有する。他方の供給タンクは真空貯蔵器または負圧貯蔵器とすることができ、一実施形態では、−450mmHg(ゲージ圧)の設定点を有する。ポッドポンプに対する可変バルブの正確な制御を可能とするため、たとえば、供給タンク圧と所要のポッドポンプ圧との間で、この圧力差を利用することができる。供給圧の限界は、可変バルブの制御のために十分な圧力差を提供するため、患者血流ポンプに対して設定し得る最大圧プラスマージンに基づき設定することができる。よって、一実施形態では、2つのタンクは、透析ユニット51の機能全部に対して、圧力を供給し、流体を制御するのに使用される。
一実施形態では、動力部52は、供給タンクに供する2つの独立するコンプレッサを備えることができる。タンク内の圧力は、たとえば、実施形態に応じて、単純な「バングバング(bang−bang)」コントローラ(すなわち、オンまたは開放状態とオフまたは閉鎖状態との2つの状態が存在するコントローラ)、あるいはより高性能な制御機構などの適切な技術を用いて制御することができる。バングバングコントローラの一例として、正タンクの場合、実際の圧力が設定点より小さければ、正タンクに供するコンプレッサがオンとなる。実際の圧力が設定点より大きければ、正タンクに供するコンプレッサがオフとなる。設定点の項の符号が反転されることを例外として、同じ論理を真空タンクと真空コンプレッサの制御とに適用することができる。圧力タンクが調節されていない場合、コンプレッサがオフとなり、バルブが閉鎖される。
圧力タンクのより厳密な制御は、ヒステリシスバンドのサイズを低減することによって達成できるが、その結果として、コンプレッサのサイクリング周波数が高くなる場合がある。これらの貯蔵器の非常に厳密な制御が要求される場合、バングバングコントローラは、コンプレッサ上でパルス幅変調(「PWM」)信号を使用して、比例積分導関数(「PID」)コントローラと置き換えることができる。その他の制御方法も可能である。
他の実施形態ではその他の圧力源を使用することができ、一実施形態では、2つ以上の正圧源および/または2つ以上の負圧源が使用される。たとえば、漏れを最小限にするために利用可能な異なる正圧(たとえば、1000mmHgと700mmHg)を供給する2つ以上の正圧源を使用することができる。たとえば、高い正圧を使用してバルブを制御できる一方、低い正圧を使用してポンプを制御することができる。これは、透析器または患者に送られる可能性のある圧力の量を制限し、ポンプの作動が隣接するバルブに印加される圧力を圧倒するのを防ぐことを補助する。負圧の非限定的な例は−400mmHgである。一実施形態では、負圧源は真空ポンプでもよく、正圧ポンプはエアコンプレッサでもよい。
一実施形態では、動力部52は、図7aに示すような構成要素を収容することができるハウジングを備える。本例では、ポンプおよび空気圧保管アセンブリは、動力部52内に嵌合するように構成され、正圧ポンプ60、負圧ポンプまたは真空ポンプ61、高正圧貯蔵器62、低正圧貯蔵器63、負圧貯蔵器64および除湿または「冷却器」部65を備える。高正圧貯蔵器62は、たとえば、約1000mHg〜1100mHg以上の圧力で空気を保管することができ、低正圧貯蔵器63は、たとえば、約700mmHg〜850mmHgの圧力で空気を保管することができる。正圧ポンプ60によって発生する加圧空気を使用して、ポンプ60の出口と貯蔵器63の入口との間に圧力調整器(図示せず)を介在させることにより貯蔵器63を充填することができる。
冷却器65または他の適切な除湿器は、正圧ポンプ60の出口と1つまたは複数の正圧貯蔵器62および/または63の入口との間に介在させることができる。加圧空気の除湿により、空気圧ラインまたはマニホルド通路および正圧貯蔵器62および/または63によって駆動されるバルブの内部の水分凝縮を防止することができる。図7bに概略的に示すように、冷却器65は金属コイル管路66を備えることができ、同金属コイル管路66をコンプレッサ60からの空気が通過し、同コンプレッサ60において圧縮空気から水を凝縮させることができる。冷却素子67は、圧縮空気コイルを熱交換器68から分離することができ、熱交換器68を通って、周囲空気をファン69によって引き込み、加温し、排出することができる。熱交換器は、周囲環境に熱を放出し、ウォータートラップ70が凝縮水を圧縮空気から分離する。次いで、乾燥した圧縮空気が貯蔵器62に保管される(または圧力調整器を通じて低圧貯蔵器63に保管される)ことが可能になるか、またはバルブ付き空気圧マニホルド等の下流装置71に送出されることが可能になる。冷却素子67は、テルレックス社(Tellurex,Inc.)の素子モデルC1−34−1604等の市販の電動ペルティエ素子であり得る。図7cは、冷却器65を動力部52の境界内に嵌合するように配置し構成する例を示す。
さらに、動力部52は、たとえば、異なる動力部52と交換できるように、透析ユニット51に選択的に接続可能にすることができる。たとえば、透析ユニット51は、電力を使用して空気動力を生成する動力部52や保管された空気動力(たとえば、1つまたは複数の高圧タンクに保管された加圧空気)を使用する動力部52などの様々な種類の動力部52と連動するように構成することができる。よって、動力部52は、故障やその他の要件の場合に、別のユニット52と交換することができる。たとえば、近くの人が眠っているときなど、ノイズの生成が許容不能である領域でシステム5を使用することが望まれる場合がある。この場合、ポンプまたはその他のノイズ生成機器を動作させることによって空気動力を生成するユニット52ではなく、保管された空気動力を使用する動力部52を使用する方が望ましい。図8に示すように、動力部52は、ハンドル521の操作によって透析ユニット51から切断することができる。たとえば、ハンドル521を回して、透析ユニット51から動力部52を解錠し、ハウジング間の機械的接続だけでなく、両者間の動力および/または通信接続も切断することができる。透析ユニット51と動力部52との間のインタフェース(図示せず)によって、空気動力(動力部52から透析ユニット51へ)、ならびに、電力、制御通信などをユニット間でやり取りすることができる。透析ユニット51は、電力(たとえば、家庭用電源コンセントにおける標準的な115V、15Ampの電力)、外部通信(イーサネット(登録商標)や通信に適するその他任意の適切な接続)、給水などのための接続点を有することができる。透析ユニット51は、所望であれば、電力またはその他の接続を動力部52に提供する。
透析ユニット51は、システム5の各種構成要素に対する制御流体の流れを制御し、その他の所望の機能を実行するコントローラを備えることができる。一実施形態では、制御流体は、様々なチューブまたは管路内で様々な圧力で保持される。たとえば、正圧(すなわち、大気圧より大きい)で保持される制御流体もあれば、負圧(大気圧未満)で保持される制御流体もある。また、ある実施形態では、コントローラは、各種液体回路から離れて保持される構成要素を有することができる。この構造はいくつかの利点を有する。たとえば、一実施形態では、透析ユニット51の液体回路は、消毒を実行するため、消毒温度まで加熱され、および/または比較的高い温度またはその他の過酷な状態(たとえば、放射線)にさらされる一方で、コントローラの電子部品のような過酷な状態にはさらされず、絶縁壁(たとえば、「防火壁」)などによって離れて保持させることができる。すなわち、透析ユニットハウジングは2つまたはそれ以上のコンパートメント、たとえば、熱やその他の状態に敏感な電子部品やその他の構成要素を有するコンパートメントと、消毒のため加熱またはその他の方法で処理される液体回路部品を有するコンパートメントとを備えることができる。
よって、いくつかの実施形態では、システム5は、(加熱されていない)「コールド」セクションと、たとえば消毒のために加熱することのできる「ホット」セクションとを含む。コールドセクションは、絶縁体によってホットセクションから絶縁することができる。一実施形態では、絶縁体は成形された発泡性断熱材であり、別の実施形態では、噴霧断熱、空隙、シートから切断した断熱材などの任意の種類の断熱を含むが、それらに限定されない。一実施形態では、コールドセクションは、たとえば、ファンおよび/または空気をコールドボックスの内外に流すことのできるグリッドなどの循環システムを含む。一実施形態では、絶縁体は、ドア、ポート、ガスケットなどの「ホット」セクションへのアクセス点を覆うように延長させることができる。たとえば、「ホット」セクションが封止されると、絶縁体は一実施形態では「ホット」セクションを完全に覆うことができる。
「コールド」セクション内に存在し得る構成要素の非限定的な例としては、電源、電子部品、電源ケーブル、空気制御器などが挙げられる。一実施形態では、「ホット」セクション間を往復する流体の少なくとも一部は、「コールド」セクションを通過する。しかし、別の場合、流体は「コールド」セクションを通過せずに「ホット」セクションへと流れることができる。
「ホット」セクション内に存在することのできる構成要素の非限定的な例としては、カセット(存在する場合)、流体ライン、温度および伝導度センサ、血液漏れセンサ、ヒータ、その他のセンサ、スイッチ、非常灯などが挙げられる。一実施形態では、一部の電子部品も「ホット」セクションに含めることができる。その例はヒータを含むがそれに限定されない。一実施形態では、流体に加えて、ホットボックス自体を加熱するためにヒータを使用することができる。いくつかの実施形態では、ヒータ72が、「ホット」セクション全体を所望の温度に達するまで加熱する。
本発明の一態様によると、透析ユニット51のハウジングは、血液流回路接続部および透析液回路接続部のためのすべての機械的インタフェース点、すなわち、透析ユニット51を使用するためにユーザが行わなければならない患者血液接続部および酸/重炭酸塩接続部のためのすべての接続点を露出させるように開放可能な縦型並列ドアを備えることができる。図9は、閉鎖状態の縦型並列ドア53を有する透析ユニット51の前面図である。この構成では、ドア53は、患者血液接続部および酸/重炭酸塩接続部のための接続点へのアクセスを遮断し、消毒に適した熱の保存を可能とするようにユニットハウジングの内側を封止することができる。ドア53に提供される封止は、ハウジングの内部環境と外部環境との間の空気交換を防止するか、またはこれを実質的に抑制するように気密にすることができか、あるいは、消毒効果を維持できる程度に質を若干落とすこともできる。
本実施形態では、ドア53は、ドア53が2つの異なる開放状態において開放されるように、二重ヒンジ構造によって透析ユニット51のハウジングに接続される。図10〜13は第1の開放状態のドア53を示す。この状態で、ドア53は、透析器14自体および消耗酸/重炭酸塩材料などの試薬材料を含め、血液回路接続部および透析器回路用のすべてのユーザ接続を露出させる。この位置は、酸/重炭酸塩容器(図示せず)用のホルダ531や、制御インタフェース55などの任意の適切な要素を保持するのに使用可能なフック532などのその他の機能も露出させ、制御インタフェースはそのハンドルをフック532に引っ掛けることができる(制御インタフェース55またはその他の要素を収容するように開くことのできる左側ドア53の前部のフック532を示す図7を参照)。本実施形態のホルダ531は、図に示す位置から折り込む(すなわち、ドア53から水平に延在するように折り畳み、ドア53の凹部に入れ込む)ことができる。ホルダ531は、酸/重炭酸塩容器を収容し保持する「C」字状の収容部を有するが、当然ながら任意の適切な形状にするか、あるいはそれ以外の構成にすることができる。
図14〜16は、各ドア53のヒンジプレート533が透析ユニットハウジング51から外側へ離れるように旋回する第2の開放状態にあるドア53を示す。本実施形態では、透析ユニットハウジング51のほぼ全高に沿って垂直に延在するヒンジプレート533が、第1の外側端でドア53に枢動可能に装着され、第2の内側端で透析ユニットハウジング51に枢動可能に装着される(当然ながら、ヒンジプレート533は異なるように構成されることができ、たとえば、多くの冷蔵庫ドア構造に見られるようにドア53の上部および下部に配置および/または位置決めすることができ、各プレート533は、互いに縦方向に分離される2つまたはそれ以上の部分を有することができる)。ヒンジプレート533に装着される磁石534は、ヒンジプレート533を透析ユニットハウジング51の方に引きつけることによって、ヒンジプレート533を図10〜13に示す位置に保持するように、透析ユニットハウジング51に装着された対応する磁石(またはスチール素子などのその他の適切な構成要素)と相互作用する(当然のことながら、磁石534はユニットハウジング上に配置し、ヒンジプレート533は磁石534に装着される(スチール片などの)適切な素子を有することができる)。本実施形態のドア53はヒンジプレート533に装着される磁石も備えるため、ドア53が図10〜13に示されるような第1の状態に開放されると、磁石はヒンジプレート533内の対応する磁石と相互作用し、ドア53がヒンジプレート533に対して開放位置に存在するように補助する。さらに、これらの磁石は、ヒンジプレート533が、図13〜16に示す第2の状態まで開放されたとき、ドア53とヒンジプレート533との相対的位置を維持することを補助する。
本例示の実施形態では、ドア53および/またはヒンジプレート533が特定の開放状態または閉鎖状態を維持するように補助するため、磁石が保持部材の一部として使用されているが、保持部材の他の構造も可能である。たとえば、ドア53とヒンジプレート533との間のヒンジ接続および/またはヒンジプレート533とハウジング51との間の接続は、その他の部分(ヒンジプレートまたはハウジング)に対する特定位置にドア53またはヒンジプレート533を弾性的に保持する役割を担う移動止め構造でもよい。別の実施形態では、1つまたは複数のバネを、ヒンジプレート533に対する開放位置にドア53を保持するように補助するために使用することができる。さらに別の実施形態では、ヒンジプレート533が、ヒンジプレート533を(ハウジングに近接する)閉鎖位置に保持しようとするハウジング51の部分と摩擦または静止嵌りするものでもよい。したがって、ドア53をヒンジプレート533に対する特定位置に保持する役割を示し、および/またはヒンジプレート533をハウジング51に対する特定位置に保持する役割を示す保持部材は、多数の可能な構造のうちの1つを取ることができる。
本発明の別の態様によると、透析ユニットハウジングの方にドアを開けると、システム5の動作に必要な血液回路接続部および透析液流体接続部のためのユーザ接続がすべて露出される。たとえば、図17に示すように、ドア53が開放状態(第1または第2の開放状態のいずれか)にあると、透析ユニット51のフロントパネル511を露出させることができる。本実施形態では、フロントパネル511は、ユーザがアクセスしなければならないいくつかの要素または接続点を担持する。たとえば、定期的に交換しなければならない透析器14がフロントパネル511に搭載される。透析器14は、血流回路141だけでなく平衡回路143にも接続しなければならない。さらに、酸/重炭酸塩源49用の接続点512が、フロントパネル511の下端に配置される。この接続点512で、ユーザは、透析液を作成する際に透析ユニット51が使用する消耗試薬成分49の供給源に接続することができる。閉鎖部(occluder)513もフロントパネル511上に搭載される。閉鎖部513は血流回路のチューブを受け取り、システム動作に基づきチューブの開放/閉鎖状態を制御する。閉鎖部513の機能については、2008年8月27日に出願された米国特許出願第12/198,947号明細書(代理人整理番号第D0570.70020US00(G28))により詳細に述べられており、より詳細に後述する。要約すると、漏れ、ポンプの故障、過圧状況などのシステム問題がない限り、閉鎖部513は血流回路の動脈および静脈ラインに流れを通させる。上記のような問題がある場合、閉鎖部513は自動的に血液ラインを閉鎖して、患者との間の流れを阻止する。血流回路141の動脈血液ラインおよび静脈血液ライン203、204を方向付け回路142と接続する血液ライン接続点514(図2および3を参照して説明したように、血流回路141は方向付け回路142に接続することができる)がフロントパネル511上に露出される。システムが血流回路141を清浄および殺菌できるように、この接続は通常、治療の最後に行われる。フロントパネル511は、血流回路141の血液ポンプ部上の対応する制御ポートと嵌合する1セットの制御ポート515も有する。制御ポート515は、バルブの開放/閉鎖状態を制御し、血流回路141のポンプに動力を与えるため、制御されたレベルの空気圧および/または真空を供給する。
本発明の別の態様において、図17Aは、血液ポンプアセンブリ13を搭載することができ、血液ポンプアセンブリ13の流体制御ポートを接続することができる制御ポートアセンブリ615の斜視図を示す。たとえば、血液ポンプアセンブリ13のバルブの作動を制御する制御ポート616と、血液ポンプアセンブリ13のポンプの作動を制御する制御ポート617とが示されている。制御ポートアセンブリ615に血液ポンプアセンブリ13を固定するように、ラッチ部材または他の係合装置を、制御ポートアセンブリ615の1つまたは複数の面にもしくは制御ポートアセンブリ615内に、またはフロントパネルアセンブリ511の制御ポートアセンブリ615の位置に隣接するかもしくはその中の部分に設けることができる(図示する例では、制御ポートアセンブリ615は、保持タブ619を通じてフロントパネルアセンブリ511に可逆的に搭載することができる)。もしくは、またはさらに、フロントパネル511からの血液ポンプアセンブリまたは血液回路アセンブリの他の部分の取外しに役立つように、血液回路アセンブリ用の分離または他の取出し機能を設けることができる。たとえば、制御ポートアセンブリ615の両側に、一対のカセットラッチおよび取出しアセンブリを搭載することができる。図17Aの実施形態では、血液回路アセンブリ係合装置は、制御ポートアセンブリ615の側部に枢動可能に搭載されたラッチまたはリテーナ部材618aおよび618bを備える。好ましくは、ラッチ部材618aおよび618bの枢支接続部(たとえば枢支接続部620)は、適切に配置されたバネにより、ラッチ部材618aおよび618bを互いに向かっておよび制御ポートアセンブリ615の表面に向かって回転させるように付勢され、それにより、それらは、制御ポートアセンブリ615に搭載された血液ポンプアセンブリ13(図17Bに断面で示す)の縁または他の部分との接触を維持することができる。これは、血液ポンプアセンブリ13が搭載されている制御ポートアセンブリ615の上部断面図である図17Bにより明確に示されている。ラッチ部材618bは、図17Bでは、その通常の付勢位置で示されており、制御ポートアセンブリ615に関連して血液ポンプアセンブリ13の外縁を固定している。一方、ラッチ部材618aは、部分的に後退した位置で示されており、血液ポンプアセンブリ13を制御ポートアセンブリ615から部分的に分離することができる。完全に後退した位置(図示せず)では、ラッチ部材618aまたは618bは、血液ポンプアセンブリ13の前縁を空け、血液ポンプアセンブリ13が制御ポートアセンブリ615から取り外されるかまたはそれに設置されもしくは搭載されるのを可能にする。
図17Aおよび図17Bに示すように、血液ポンプアセンブリ13を制御ポートアセンブリ615に保持するのに役立つことができるラッチまたはリテーナ部材618aおよび618bに加えて、ユーザが制御ポートアセンブリ615から血液ポンプアセンブリ13を分離しそれを制御ポートアセンブリ615から持ち上げることを補助するように、分離補助部材(またはエジェクタ要素もしくはエジェクタ部材)622aまたは622bを含めることもできる。分離補助部材622aまたは622bは、分離補助部材622aおよび622bの接触部624aまたは624bが、分離補助部材622aまたは622bが外側に回転したときに血液ポンプアセンブリ13の下面113aの縁に接触してそれを制御ポートアセンブリ615から持ち上げるに役立つのに適した位置において、フロントパネルアセンブリ511に枢動可能に搭載することができる。係合装置は、ユーザが、分離補助部材622aまたは622bを外側に枢動させて接触部624aまたは624bを血液ポンプアセンブリ13の下面113aに係合させるように、側方に押圧することができる親指または指接触要素626aまたは626b等、リテーナ部材618および/またはエジェクタ要素622を作動させるアクチュエータを備えることができる。好ましくは、バネ628を、分離補助部材622aまたは622bの枢支接続部の近くに含め、接触部624aまたは624bを血液ポンプアセンブリ13の下面113aとの接触状態から離すように分離補助部材622aまたは622bを付勢するように、適切に配置することができる。このように、分離補助部材622aまたは622bからの固有力は、制御ポートアセンブリ615から血液ポンプアセンブリ13を押し離すように作用していない。別の好適な実施形態では、図17Aに示すように、分離補助部材622aまたは622bを、ラッチ部材618aまたは618bに枢動可能に搭載することができる。この実施形態では、ユーザは、分離補助部材622aまたは622bを血液ポンプアセンブリ13の下面113aに係合させ、同時に、親指または指接触要素626aまたは626bを一度外側に押すことにより、血液ポンプアセンブリ13の前縁または表面との接触状態からラッチ部材618aおよび618bを分離することができる。よって、単一の要素626aまたは626b等の1つまたは複数のアクチュエータを外側に押すことにより、血液ポンプアセンブリ13を、制御ポートアセンブリ615に交互に取り付け固定するか、または制御ポートアセンブリ615から分離することができ、血液ポンプアセンブリ13の設置および/または取外しが容易になる。
図17Cは、血液回路アセンブリ係合装置の別の実施形態を示し、それは、本実施形態では、一対の血液ポンプカセットリテーナおよびエジェクタ要素を備える。本実施形態では、カセットリテーナ要素630は、エジェクタ(または分離補助)要素634と接触する接触部材632を備える。後退状態では、エジェクタ要素634は、制御ポートアセンブリ640の血液ポンプポッド凹部638の窪み領域636に配置される。リテーナ要素630が外側(図17Cにおける矢印の方向)に枢動する際、接触部材632はエジェクタ要素634の近位端642を押圧し、その時エジェクタ要素634は枢動軸644を中心に回転し、エジェクタ要素634の遠位端646が凹部636から出て上がり、血液ポンプポッド凹部638内に配置されている搭載されたポンプカセットの作動チャンバの剛質後壁と係合する。図17Dおよび図17Eは、エジェクタ要素634が後退位置(図17D)および伸長位置(図17E)にある、係合装置の単独図を示す。図17Dにおいて、リテーナ要素630は保持位置にあり、リテーナ要素648は制御ポートアセンブリ640の中心に向かって内側に回転しており、エジェクタ要素634は引っ込んだ位置にあって、近位部642が上昇し遠位部646が押し下げられている。図17Eにおいて、リテーナ要素630は解放位置にあり、リテーナ要素648は制御ポートアセンブリ640の中心から離れる方向に外側に回転しており、エジェクタ要素634は上昇位置にあり、近位部642は接触部材632によって下げられ、遠位部646は凹部636から出て上昇して制御ポートアセンブリ640に搭載されたカセットを突き出す。親指レスト(アクチュエータ)650は、ユーザが、都合よく、図17Cに示すような完成したアセンブリにおいて対向するラッチ部材630の各々に1つの親指を当てることにより、カセットを解放するように外向きに力を適用することができるようにする形状となっている。一実施形態では、リテーナ要素630は、カセットを制御ポートアセンブリ640に固定して搭載された状態で維持するのに役立つように、ラッチまたは保持方向に付勢されるバネ654を備えた、ピニオン652によって形成された軸を中心に回転する。図17Fは、露出したフロントパネル511等、透析ユニットのパネルに搭載された血液ポンプカセット1000(血液回路アセンブリの一部である)の前面図を示す。図17Gおよび図17Hは、それぞれ線17G−17Gおよび17H−17Hに沿った血液ポンプカセット1000の断面図を示し、カセット1000は制御ポートアセンブリ640に適切に取り付けられている。図17Gは、接触部材632、エジェクタ要素634、およびカセット1000のポンプ作動チャンバの剛質後壁658の間の関係を示す。エジェクタ要素634は、ポンプカセット1000を完全に取り付けることができるようにそれらのそれぞれの窪み領域636において完全に後退した位置にあるように示されている。図17Hは、リテーナ要素648とカセット1000の前部プレート656との間の関係を示す。この場合、リテーナ要素648は前部プレート656と並置され、カセット1000を制御ポートアセンブリ640上に固定する。
図17Iは、透析ユニットのパネル511から分離される過程における図17Fの血液ポンプカセットの前面図を示す。図17Jおよび図17Kは、血液ポンプカセット1000の断面図を示し、カセット1000は制御ポートアセンブリ640と係合した状態から部分的に持ち上げられている。図17Jは、接触部材632、エジェクタ要素634、およびカセット1000のポンプ作動チャンバの剛質後壁658の間の関係を示す。この場合、エジェクタ要素634の遠位端646は、カセット1000と接触して、制御ポートアセンブリ640内のその完全に取り付けられた位置からカセット1000を上昇させている。図17Kは、リテーナ要素648とカセット1000の前部プレート656との関係を示す。この場合、前部プレート656は、リテーナ要素648の保持面より上方に上昇している。
図17のフロントパネル511上にはユーザ制御パネル510も露出される。ユーザ制御パネル510は、ユーザが血液透析中に、制御インタフェース55上のグラフィカルユーザインタフェースをバイパスして、特定の機能(たとえば、重要な機能)を制御する別の方法を提供することができる1つまたは複数のボタンを備える。たとえば、仮に制御インタフェース55が透析治療セッション中に故障した場合、これが非常に重要となる。重要な機能の非限定的な例は、「透析停止」または「透析一時停止」コマンドと「透析溶剤注入」コマンドである。
本実施形態および本発明の別の態様によると、血流回路141は透析ユニット51のフロントパネル511から取り外し可能な血液回路アセンブリとして形成され、図17では血液回路アセンブリはフロントパネル511に搭載されていないため、図17は血流回路141用の動脈および静脈ライン203、204を示していない。図18は透析器14とともに本実施形態の血液回路アセンブリ17の前面図を示す。血液回路アセンブリ17は、たとえば図3を参照すると、血液回路編成トレイ171に搭載される上述の各種構成要素を含む。動脈および静脈ライン203、204(たとえば、可撓シリコーン配管の長さを含む)は、本発明の一態様によると、血液ライン接続点514との差込型接続または圧入型接続に加え、一般的な患者アクセス点(たとえば、ルアー(luer)型患者アクセコネクタ)と共に使用されるネジ型接続を提供するように構成される血液ラインコネクタを終点とする。動脈ライン203は、2つのポッドポンプ23、バルブ、および血流を制御するその他の構成要素を含む血液ポンプ13の上部に存在する入口につながる。血液ポンプ13は、エアフィルタ81、抗凝血剤ポンプ80(図示せず)、および抗凝血剤供給源11(ヘパリンのバイアなど)と関連付けられる(本例示の実施形態の血液ポンプ13に関する詳細は、「ポンピングカセット(Pumping Cassette)」と題する2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,680号明細書、「ポンピングカセット(Pumping Cassette)」と題する2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,712号明細書、「ポンピングカセット(Pumping Cassette)」と題する2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,787号明細書、「ポンピングカセット(Pumping Cassette)」と題する2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,793号明細書、および「カセットシステム統合型装置(Cassette System Integrated Apparatus)」と題する2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,803号明細書において参照される)。血液ポンプ13(出口はポンプ13の底部に位置している)から出力された血液は、透析器14の入口(透析器14の最上部に存在する)に入り透析器(透析器血液出口は透析器14の底部に位置している)から出てエアトラップ19の入口に流れ込む。エアトラップ19の出口は静脈血液ライン204に接続される。透析器14の入口血液ポートおよび出口血液ポートへの接続は、典型的なネジ型接続によってなされる。
図18aは、血液ポンプ13のポンプ80(図3に概略的に示す)と流体連通している中空スパイク1208上に薬剤11(たとえば抗凝血剤等)のバイアルを保持するかまたは載せるバイアル受けまたはバイアルホルダ1206の別の実施形態を備える血液ポンプ13の斜視図を示す。本実施形態では、可撓上部アーム1210は、バイアル11の本体を適所に保持するのに役立ち、さまざまなサイズのバイアルに適応するように撓むことができる。下部アーム1212は、バイアル11がバイアル11の反転した最上部に対して角度をなして突き出るのを防止するように、バイアル11の反転した最上部をスパイク1208と位置合せするために役立つ。バイアル11の最上部を実質的に垂直に突き出すことは、スパイク1208の外側の周囲におけるバイアル11内からの流体の漏れを回避するために役立つことができる。
本発明の別の態様によると、エアトラップ19は、血液が透析器を出た後、患者に戻るまで血液流路に配置される。一実施形態では、エアトラップ19は球状、または回転楕円体状容器(すなわち、略球状の内壁を有する容器)と、最上部近傍に容器の縦軸から偏位して配置される入口ポートと、容器の底部の出口とを有することができる(容器の縦軸は、略球状容器の「上下の」極を通過する縦方向に配置される)。入口ポートは縦軸から偏位しており(この場合、トレイ171の方に後退している)、血液は容器の縦軸に略垂直で、容器の球状内壁にほぼ接する方向で容器に導入される。血液が(たとえば螺旋状に)重力で容器の下端に引かれ、血液からの気泡の除去を促進する際、トラップの内壁の湾曲形状は内壁に沿って血液を循環させるように導く。透析器14の出口を出る血液中に存在する空気はエアトラップ19の上端に入り、血液が下端の出口から静脈血液ライン204へと流れ出る間、容器の上端にとどまる。トラップ19の上端近傍に入口ポートを配置することによって、容器内に最小限の空気しか残さず、あるいは全く空気を残さず、血液をトラップ中で循環させることができる(「全開運転」エアトラップとして)。トラップ内の血液の定期循環のため、空気と血液の接触を回避できることが有効である。容器の上端またはその近傍に入口ポートを配置することによって、血液チューブを通る流体流を逆行させ(すなわち、トラップ19の下端から上端へ流れ、トラップ19の入口ポートを出る)、トラップ内に存在する空気の大半または全部をトラップから除去することができる。
一実施形態では、スプリット隔膜または膜、あるいはその他の構造のセルフシール(self−sealing)ストッパなどのセルフシールポートがトラップの上端に配置されて、(たとえば、シリンジによって)容器から空気を抜き出すことができる。たとえば、透析液またはその他の洗浄液を用いてエアトラップ内において流れを逆行させることによって消毒中のセルフシールポートの洗浄を簡易化するように、セルフシール膜の血液側面は、トラップの内側の上端とほぼ同一面に配置させることができる。また、容器の入口、出口、および内壁とセルフシールポートは、停滞領域をほぼなくすように構成する、すなわち、血液が停滞するか凝固する領域がほぼ、または全く存在しないようにし得る。セルフシールポートは、血液サンプリング部位として機能し、および/または血液回路に液体、薬剤、またはその他の化合物を導入させることができる。針でのアクセスが企図されるとき、封止ラバー型ストッパを使用することができる。スプリット隔膜を用いるセルフシールストッパは、無針システムを使用するサンプリングおよび流体送出を可能にする。
図19は、各種血液回路アセンブリ17の構成要素を搭載していない血液回路アセンブリ17用編成トレイ171を示す。本発明の一態様によると、編成トレイ171は、血液回路アセンブリ17をフロントパネル511に搭載する/血液回路アセンブリ17をフロントパネル511から取り外す際にユーザが握ることのできるハンドル172(本実施形態では、指で引く)を備える。ハンドル172の内側には、フロントパネル511上のスプリングタブが編成トレイ171および/または血液ポンプ13のカセットを通過して、血液回路アセンブリ17と係合し、血液回路アセンブリ17をフロントパネル511上の適所に保持することができるように開口部173が設けられる。本発明の別の態様によると、編成トレイ171は、それぞれが対応する血液ライン203、204の通過するC字状の凹部またはその他の穴を有する血液ライン係合部材174を備える(ここでは、「穴」は、図19に示されるような凹部、たとえばドリルで作製されるような連続壁を有する貫通孔、またはその他の適切な開口部を含む)。より詳細には、血液ライン203、204を閉鎖部513に搭載する際に、血液ライン係合部材174が使用される。要約すると、血液ライン203、204を閉鎖部513に搭載する際、血液ライン203、204は、閉鎖部513のスロットに水平に押しこみながら(ラインの外径を低減するように)下方向に引っ張り、伸張させなければならない。血液ライン係合部材174は、血液ライン203、204での下方向の引っ張りに抵抗する機能と(たとえば、各ライン203、204は、係合部材174の凹部を通って引っ張ることができないように、各係合部材174の上に停止リングを備えることができる)、ユーザに係合部材174を内側に押し込んでライン203、204を閉鎖部スロットに配置させる機能とを担う。係合部材174は編成トレイ171と一体型に形成されているため、「リビングヒンジ(living hinge)」すなわち編成トレイの比較的柔軟な部分が、係合部材174と編成トレイ171の本体との間に配置される。この構造により、係合部材174と編成トレイ本体との接続部が撓むため、係合部材174を編成トレイ171に対して内側に押すことができる。
図20は、編成トレイ171を取り外した血液回路アセンブリ17の後面図である。この図は、制御ポートを露出させた血液ポンプ13の後面を示す。空気圧制御(たとえば、適切な空気圧または真空)がポンプおよびバルブに印加されて、それらの動作と血液回路アセンブリ17を通る流れとを制御するように、これらの制御ポートはフロントパネル511上の対応するポート515と嵌合する(図17を参照)。図20は、エアトラップ19の入口ポートの偏位も示す。すなわち、エアトラップ19の上端の入口ポートは、エアトラップ19のほぼ球状の容器部の縦軸の後方に配置されている。
図20Aおよび図20Bは、血液ポンプカセット1000の別の実施形態の展開斜視図を示す。図20Aは、後部(作動側)プレート1001を有するカセット1000の展開前斜視図を示し、後部プレート1001は、材料の単一成形部品に後部プレートにとともに形成された配管編成部を備えている。図20Bは、図20Aのカセット1000の展開後斜視図を示す。図20A〜20Dに示すカセット1000は、図18Aのカセット13および図19の編成トレイ171の代替えとして使用することができ、これらの構成要素の機能の多くを組み合わせ、それらを製造し組み立てるコストおよび複雑性を実質的に低減することができる。
カセット1000は、さまざまなバルブおよびポンプの作動チャンバの剛質外壁を形成する後部プレート1001と、さまざまなバルブおよびポンプ隔膜を保持し、カセット1000にさまざまな流路を形成するのに役立つ中間プレート1002と、カセット1000のさまざまなバルブおよびポンプの流体チャンバのうちのいくつかの剛質外壁を形成する前部プレート1003とを備える。カセット1000は、任意に、後部プレート1001の前面側に装着可能な保護カバー1004をさらに備える。保護カバー1004は、バイアルホルダ1037に後に搭載するために使用することができる保持アームを備えることができ、この保持アームはバイアルを保持するものである。保護カバー1004は、処置中に使用するためにバイアルをバイアルホルダ1037に挿入する前に、空のまたは充填されたバイアルのいずれかを一時的に保持することができる。すなわち、バイアルは、バイアルホルダ1037に連結することができ、バイアルホルダ1037は、バイアルをバイアルホルダ1037内に前部プレート1003の流体ポート1038と流体連通して配置する中空スパイクを有する。たとえば透析中に使用される抗凝血剤でバイアルを充填することができ、または、バイアルは空であって、透析治療の前または後のいずれかの洗浄および消毒処置中に使用することができる。
カセット1000は、液体をカセット1000の流体流側を通って移動させる流体流ポンプ1013および1014を備える。すなわち、カセット1000は、血液透析装置の場合は血液であり得る流体を圧送する左側ポンプ1013および右側ポンプ1014を備える。ポンプ1013および1014(本明細書ではポッドポンプとも称す)を、空気、液体、ガスまたは後部プレート1001のポートからカセット1000に入る他の流体等の制御流体によって作動させることができる。左側ポッドポンプ1013は、前部(または上部)プレート1003に形成された剛質チャンバ壁1005と、後部(または下部)プレート1001に形成された剛質チャンバ壁1008と、中間プレート1002に形成された穴1006と、剛質チャンバ壁1013および1008の間で撓むことができる可撓膜1007とを備える。剛質チャンバ壁1013と可撓膜1007との間の空間は、左側ポンプ1013の流体または血液側(すなわち流体チャンバ)を形成し、可撓膜1007と剛質チャンバ壁1008との間の空間は、左側ポンプ1013の空気圧側(すなわち制御チャンバ)を形成する。同様に、右側ポッドポンプ1014は、上部プレート1003に形成された剛質チャンバ壁1009と、下部プレート1001に形成された剛質チャンバ壁1012と、中間プレート1002に形成された穴1010と、剛質チャンバ壁1009および1012の間で撓むことができる可撓膜1011とを備える。剛質チャンバ壁1009と可撓膜1011との間の空間は、右側ポンプ1009の流体または血液側(すなわち流体チャンバ)を形成し、可撓膜1011と剛質チャンバ壁1012との間の空間は、右側ポンプ1014の空気圧側(すなわち制御チャンバ)を形成する。
ポッドポンプ1013および1014の各々は、上部プレート1003から形成された流体流コンパートメントと下部プレート1001から形成された制御コンパートメントとを有する、一対の膜ベース入口/出口バルブを備えることができる。それらのバルブを、下部プレート1001の制御ポートを通じて個々の可撓膜に正または負の流体(たとえば空気)圧を印加することによって作動させることができる。流体バルブは、ポッドポンプが圧送しているときに流体流を方向付けるように開閉することができる。バルブ作動がそれらのバルブに関連するポンプの作動に関連してなされた順序付けに応じて、流体を順方向にまたは逆方向に圧送することができる。ポッドポンプの非限定的な例は、参照により本明細書に組み込まれる「流体圧送システム、装置および方法(Fluid Pumping Systems,Devices and Methods)」と題する2007年4月13日に出願された米国特許出願第11/787,212号明細書に記載されている。ポッドポンプ1013および1014を、いずれかの方向の流体流により、任意の適切な形で、たとえば同期して、非同期で、同位相において、位相をずらして等、動作させることができる。
血液透析用途の場合、一実施形態では、抗凝血剤(たとえば、ヘパリン、または当業者に既知である他の任意の抗凝血剤)を、血流カセット1000内で血液と混合することができる。たとえば、バイアル(またはチューブもしくはバッグ等、他の抗凝血剤供給源)内に抗凝血剤を収容することができ、血流カセット1000は、バイアルの封を貫通することができる(一実施形態では、針または中空スパイクを備える)バイアルホルダ1037を備えた抗凝血剤バイアルを受け入れることができてもよい。スパイクは、プラスチック、ステンレス鋼または他の適切な材料から形成することができ、一実施形態では滅菌可能な材料とすることができ、たとえば、材料は、材料を滅菌するように十分に高い温度および/または化学物質曝露に耐えることができてもよい。一例として、スパイクを用いて、バイアルの封を貫通することができ、それにより、抗凝血剤は、血流カセット1000内に流れ込み血流路において血液と混合され得る。他の場合では、バイアルを、洗浄、消毒またはプライミング作業中に水または透析液で充填するかまたは部分的に充填することができる。
カセット1000内の、一実施形態では計量ポンプとして作用することができる第3のポンプ1015を使用して、装着されたバイアルからの薬剤(抗凝血剤等)のカセット1000内の流路内への流れを制御することができる。計量ポンプ1015は、ポンプ1013および1014と同じ設計であっても異なる設計であってもよい。たとえば、計量ポンプ1015は、ポッドポンプとすることができ、空気等の制御流体によって作動させることができる。たとえば、図20A〜図20Dに示すように、計量ポンプ1015は、後部プレート1001内に形成された剛質チャンバ壁1015と、中間プレート1002に形成された剛質チャンバ壁1018(図20B参照)と、ポッドを流体コンパートメントまたはチャンバおよび制御コンパートメントまたはチャンバに分割する可撓隔膜1015とを備えることができる。バルブ1028、1029、1030は、流体ポート1038と、通気ポート1019と、第1のポンプまたは第2のポンプ(ポンプ1013等)に通じるかまたはそこから通じる流体流路と、計量ポンプ1015に通じるかまたはそこから通じる流体流路とをさまざまな組合せで接合する流体流路に接続することができる。よって、装着されたバイアルからカセット1000内の主流体流路内への薬剤(たとえば抗凝血剤)または他の流体の流れを、計量ポンプ1015によって制御することができ、周期的に、計量ポンプ1015によって空気を通気ポート1019からポート1038を通じて装着されたバイアル内に導入して、薬剤または他の流体がバイアルから引き抜かれる際に装着されたバイアル内の圧力を周囲圧力と均等化することができる。
カセット1000は、ポート1019に連結された通気孔を備えることもできる。計量ポンプ1015の流路内に空気を導入して、装着されたバイアル内の圧力を周囲空気と均等化することができる。この場合、バルブ1029は、計量ポンプ1015と第1のポンプ1013(または第2のポンプ1014)の主流路との間の流れを閉鎖する。一実施形態では、計量ポンプ1015は、システムコントローラがシステムの血液または液体搬送構成要素を空にするのを制御することができるために、第1のポンプ1013または第2のポンプ1014の主流路内に空気を導入することもできる。
ポッドポンプ1013および1014は、チャンバ1005および1009にそれぞれ隆起流路1020および1021を備える。隆起流路1020および1021により、隔膜(すなわち可撓膜)1007および1011が行程の最後に達した後に流体がポッドポンプ1013および1014内を流れ続けることができる。
カセット1000は、後部プレート1001内に形成されたいくつかのバルブ1022、1023、1024および1025を備える。バルブ1022〜1025および1028〜1030の作動(または空気圧)側は、下部プレート1001から形成され、制御(たとえば空気圧)流体が入るかまたは出るための対応する作動ポートを有する。中間プレート1002に設置されたいくつかの隔膜1026および1027がバルブを完成させ、隔膜1007、1011および1016がポッドポンプ1013、1014および計量ポンプ1015を完成させる。計量ポンプ1015は、隔膜1016によって完成する。好適な実施形態では、バルブは空気圧式に作動され、バルブ隔膜が中間プレート1002の隣接する穴から引き離される際に、液体は引き出され、隔膜が穴に向かって押される際に、液体はそこを押し通される。流体流は、バルブ1022〜1025および1028〜1030の開閉の適切な順序付けによって方向付けられる。
計量ポンプ1015は、中間プレート1002に形成された流体チャンバ1018に接続された3つの通路を備える。1つの通路は、通気孔1019からの空気が計量ポンプ1015内に引き込まれるのを可能にし、第2の通路は、空気が、バイアルホルダ1037に接続されたスパイク/ソース容器に押し込まれるのを可能にし、また、ソース容器またはバイアルから交互に液体を引き抜き、第3の通路は、ソース容器からの液体が、計量ポンプ1015によって、第1のポンプ1013(または別の実施形態ではポンプ1014)に接続された主流体ラインに押し込まれるのを可能にする。バルブ1028、1029および1030は、計量ポンプ1015が流体または空気を移動させるか否かと、いずれの方向に移動させるかとを判定する。
次に図20Cを参照すると、下部プレート1100の内部図が示されている。ポッドポンプ1008および1012、計量ポンプ1015ならびにバルブ1022、1023、1028、1025、1029、1030および1024の作動/空気チャンバの内側図が示されている。ポッドポンプ1008および1012、計量ポンプ1015ならびにバルブ1022、1023、1028、1025、1029、1030および1024は、空気圧式空気源によって作動する。ここで図20Dを参照すると、下部プレート1100の外側が示されている。制御流体(たとえば、正圧または負圧下の空気)源が、カセットのこの外側に接続される。一実施形態では、チューブはさまざまなポート1031に接続する。他の実施形態では、ポート1031は、透析ユニット51のフロントパネル(たとえば図17のフロントパネル511)の制御ポートアセンブリ(たとえば図17Aの制御ポートアセンブリ615)に差し込まれるように構成される。
ここで図20A〜図20Dを参照すると、下部プレート1001にはさまざまな編成部機能が組み込まれている。下部プレート1001は、下部プレート1001に形成されたチューブガイド1033および1034を有するエアトラップ保持部材1032を備える。チューブガイド1033および1034は、チューブを、エアトラップ保持部材1032内に配置されたエアトラップにおよびエアトラップから誘導する。下部プレート1001はまた、追加のチューブガイド1035および1039も備える。下部プレート1001はまた、治療中に患者から動脈または静脈ラインが分離していないかモニタリングするために装置において使用することができる電気コネクタを受け入れる受入部1036も形成する。図21は、編成トレイ171なしのフロントパネル511に搭載された血液回路アセンブリ17を有する透析ユニット51のフロントパネル511の斜視図である(通常、血液回路アセンブリ17は編成トレイ171を備えるが、フロントパネル511の構成要素をより明確に示すために本例ではトレイ171を図示していない)。血液ポンプ13のカセットの対向端に、フロントパネル511は、血液ポンプカセットおよび/または編成トレイ171と前方向に柔軟に延在して、血液回路アセンブリ17を適所に保持するスプリングタブ516を有する。タブ516は、血液回路アセンブリ17を適所に保持するように補助する突刺またはその他の機能を備えることができる。スプリングタブ516は外方に曲げられて血液回路アセンブリ17上での保持を解放し、取外しを可能にする。しかし、スプリングタブ516に外方向への力が印加されない場合、タブ516は血液回路アセンブリ17と係合したままである。図22は、血液回路アセンブリ17の編成トレイ171が含まれるフロントパネル511の前面図である。フロントパネル511から血液回路アセンブリ17を取り外すには、ユーザは、スプリングタブ516の内側(血液ポンプ23に最も近い側)に親指を当てて、スプリングタブ516を外方向にポンプ23から離れるように曲げると同時にハンドル172の後ろに人差し指を当てる。これにより、スプリングタブ516は血液回路アセンブリ17を解放することになり、たとえば、タブ516の突刺が血液ポンプ13および/または編成トレイ171から分離される。当然ながら、血液回路アセンブリ17を取り外すには、透析器14との接続部や血液ライン接続点514などのその他の接続部を取り外し、ライン203、204も閉鎖部513から取り外さねばならない。血液回路アセンブリ17をフロントパネル511に搭載する際、たとえば、スプリングタブ516が開口部173を通過するように揃えられ、血液ポンプ13のカセットの制御ポートがフロントパネル511上の対応するポート515と揃えられるように、編成トレイ171はハンドル172を握って適切に位置合わせすることができる。その後で、血液回路アセンブリ17がそのまま適所に押し込まれて、スプリングタブ516が編成トレイ171および/または血液ポンプカセットと係合する。次に、透析器14との接続や、閉鎖部513への血液ライン203、204の装着などの他の接続を行うことができる。
図21は、閉鎖部513内に導くために血液ライン203、204を保持するスロット517も示す。スロット517は、ライン203、204がスロット内への配置後にスロット517内にとどまるように、血液ライン203、204の外径よりもわずかに小さい通路を形成する。これは、ラインと閉鎖部513との適切な関連付けを確保するように補助する。血液回路アセンブリ17がスプリングタブ516上に搭載されれば、ユーザは、(編成トレイ171上の係合部材174が各ライン203、204上の停止リングまたはその他の機能と係合し、下方向の引っ張りに抵抗した状態で)ライン203、204を下方に伸張させ、ライン203、204を対応するスロットに押し込むことによって、血液ライン203、204とスロット517とを係合させる。ライン203、204は、上述したように、柔軟であり、編成トレイ171に対して内方向に曲げられる係合部材174を内側に押すことによって、適所に押し込むことができる。次いで、ライン203、204は閉鎖部513を通って進ませることができる。
本発明の別の態様によると、フロントパネル511は、フロントパネル511の外周に血液ラインラップ機能を備える。本例示の実施形態では、フロントパネル511は、フロントパネル511の上縁と下隅に沿ってフランジ部518を備える。このため、ユーザはフランジ部518によって形成される通路内にライン203、204を配置することによって、血液ライン203、204をフロントパネル511の外周に巻きつけることができる。ライン203、204は、透析器14の下端近傍の箇所から、フロントパネル511の下右隅近傍の箇所まで時計方向に巻きつけることができる。次に、血液ライン203、204は血液ライン接続点514で接続して、たとえば、血液ライン203、204を通って循環される流体を消毒することができる。その結果、血液ライン203、204はフロントパネル511上に適切に保持されて、フロントパネル511上の他の構成要素に容易にアクセスすることができ、ユーザはドア53と透析器ユニットハウジング51間に血液ライン203、204を挟むか否かをほぼ心配することなくドア53を閉めることができる。もしくは、血液ライン203、204はまず血液ライン接続点514で接続して、その後、透析器14の下端近傍の箇所からフロントパネル511の下右隅近傍の箇所まで時計方向に巻きつけることができる。これにより、血液ラインはフランジ部518に沿って適切に分布されて接続点514に至るように確保することができる。ヒンジプレート533およびその他の挟まれる可能性のある箇所から離れた所望の位置に血液ライン203、204を保持する補助として、フロントパネル511の左側と右側に縦型フェンス519も設けることができる。
別の態様では、図21Aに示すように、フロントパネルアセンブリ811の別の実施形態は、動脈および静脈血液ラインを接続することができる接続点814を有するモジュール式排液アセンブリ(または排液カセット)815を備えることができる。図5Aに示すように、排液カセット815は、プライミング、洗浄および消毒作業中の動脈および静脈血液ライン両方に対する排液ライン31への共通通路を備える。血液通路から空気を追い出し血液通路をプライミングするために、または血液通路を洗浄し消毒するために、透析器14の半透膜を通じて透析システム5の血液通路内に、水、透析溶液または他の流体を導入することができる。排液カセット815は、任意に、動脈または静脈血液通路の一方または両方にバルブを備えることができる。一実施形態では、静脈ラインのモジュール式排液カセット815内またはその近くの電子制御バルブ831が、血液ポンプカセット13の血液ポンプが、静脈ラインのバルブ831が閉鎖している間に動脈ラインを逐次満たすかまたは空け、その後、バルブの開放時に動脈ラインを満たすかまたは空けるのを可能にすることができる。この方法では、動脈ラインの空気または汚染物質が、静脈配管内ではなく排液カセット815の排液出口に強制的に送られる。または、バルブ831は、動脈ラインと排液口との間の流れを制御するように配置することができ、たとえば、そのため、静脈ラインの中身を、動脈ライン内ではなく排液出口に強制的に向けることができる。排液カセット815はまた、任意に、伝導度および/または温度センサ834、835を備えることもできる。温度センサを使用して、たとえば熱消毒中に血液ラインを循環する流体の温度をモニタリングすることができる。伝導度センサを使用して、たとえば透析器の尿素またはナトリウムのクリアランスの検査中に、血液ラインを循環している水または透析溶液の伝導度をモニタリングすることができる。電子制御排液制御バルブ207は、排液カセット815の排液出口に配置することができ、または(図5Aに示すように)排液カセット815の外部に配置することができる。排液制御バルブ207は、たとえば、加熱された水または化学消毒薬が透析ユニット51の血液回路構成要素内を循環しているときに有用であり得る。排液カセット815は、透析ユニット51のフロントパネル511または811への接続およびそこからの切断を容易にするように構成することができる。排液カセット815をフロントパネルに、ハンドルを回すことによって固定する単一ハンドル操作ラッチ(たとえばバヨネット接続等)を含めることができる。
図21Aはまた、血液ポンプカセットおよび編成トレイアセンブリの別の実施形態も示す。いくつかの実施形態では、編成トレイ822は、血液ポンプカセット824の空気圧作動プレート(または後部プレート)に組み込むことができる。図21Bは、明確にするために血液ポンプカセット824の上部および中間プレート構成要素が取り除かれているフロントパネルアセンブリ811を示す。本例では、編成トレイ822および血液ポンプカセット824の後部プレート816は、結合されて単一成形部品になっている。本例では、エアトラップ819は、編成トレイ822の延長部によって支持され、図19および図29に示す実施形態より縦方向に上昇した位置に配置される。エアトラップを、閉鎖部813またはライン内空気検出器823に対してより高い位置まで移動させることにより、逆流処置において血液ポンプが、静脈配管内に存在する気泡をエアトラップ819に引き込む能力を増大させることができる。たとえば、エアトラップ819の入口は、血液回路アセンブリが透析ユニットに搭載されたときにエアトラップの出口より上方の位置において編成トレイ822によって支持することができる。さらにまたはもしくは、エアトラップの入口および/または出口は、エアトラップの出口から閉鎖部位置まで延在する可撓管の最高点より上方の位置で、編成トレイによって支持することができる。こうした配置は、静脈配管内の空気をエアトラップ819内に追い込むのに役立つことができる。
本発明の別の態様では、透析ユニット51の血液回路を流れる流体(水または透析溶液等)をモニタリングし排出する機能を有する、モジュール式排液カセットを含めることができ、血液回路は、血液ポンプと、透析器の血流コンパートメントと、エアトラップと、動脈および静脈血液配管とを備える。図5Aに示すように、動脈および静脈血液配管は、患者に接続されていないとき、最終的に排液ライン31に通じる排液チャンバ/エアトラップ4703に接続することができる。この接続により、たとえば血液回路コンパートメントの洗浄および消毒のため、透析器クリアランス特性の判定のため、または透析溶液による血液回路のプライミングのために、加熱水を循環させることができる。本発明の一態様では、排液カセット815は、排液チャンバ/エアトラップ4703と、動脈および静脈血液ラインの一方または両方のバルブ831と、排液ラインのチェックバルブ836と、容易に透析ユニット51のフロントパネルに接続するかまたはそこから切断することができる1つのモジュール式構成要素内の温度および伝導度センサ834、835とを備えることができる。図21Aに示すように、一実施形態では、動脈および静脈血液ラインは、フロントパネル811の接続点814を通じて排液カセット815に接続することができる。排液カセット815は、共通の出口を通じて排液ライン31に出る、静脈および動脈血液ラインからの流体流を併合するチャネルまたはチャンバを備えることができる。
上述したように、排液カセット815は、任意に、静脈路に(または、もしくは動脈路に、または両経路に)バルブ831を含むことができる。好適な実施形態では、バルブ831は空気圧操作膜バルブであり、それは、空気圧源に配管された電気機械バルブによって電子コントローラの制御の下で作動する。排液カセット815はまた、任意に、カセット815のハウジング内の流体流チャネルまたはチャンバ内に伝導度および熱プローブ834、835を含むことができる。好適な実施形態では、排液出口ポート、空気圧制御ポート、ならびに伝導度および熱センサ用の電気接続は、対になったコネクタを備え、各対の一方の部材は排液カセット815のハウジングに堅固に装着され、各対の他方の部材は、ユーザが排液カセット815をフロントパネル811から迅速におよび容易に搭載しまたは取り外すことができるために、透析ユニット51のフロントパネル811に堅固に装着されている。フロントパネル511または811の他の血液回路構成要素(透析器14、血液ポンプカセット13または824、エアトラップ19または819ならびに動脈および静脈血液ラインを含む)と同様に、排液カセット815は、透析ユニット51から容易に着脱可能であるように構成することができる。
図31は、例示的なモジュール式排液カセット815を示す。この図では、排液カセット815の飾り板825は、動脈および静脈ライン接続点814を識別するマーキングを含む。飾り板825の前方のハンドル821は、片手で把持し、排液カセット815をフロントパネル811に係合しまたはそこから分離するように回すことができる。動脈および静脈血液ラインの各々のための血液ラインコネクタ802が、排液カセット815のそれらのそれぞれの接続ポートまたは接続点814内に係合して示されている。
図32は、排液カセット815の前壁826の前方の飾り板825とともに、排液カセット815を展開図で示す。本例では、前壁826は、排液カセット815のハウジング828の共通チャネルまたはチャンバ827用の前壁を封止して形成する。チャネル827から排液ラインへの共通出口829には、ハウジング828の後壁に搭載された流体コネクタ830が装備され、流体コネクタ830は、任意に、排液ライン内の流体がチャネル827内に再度入らないように一方向チェックバルブ(たとえばダックビルバルブ等)を含むことができる。フロントパネル811には嵌合コネクタ830aが搭載され、それは、最終的に排液口に通じる流体ラインに接続される。出口829は、好ましくは、排液カセット815に接続されたときに動脈または静脈血液ラインに存在する可能性がある空気を排出するように閉じ込め最終的に追い出すために、いずれの流体接続点814aおよび814bよりも高い位置に配置される。これに関して、流体チャネル827はU字形状を有することができ、静脈および動脈血液ラインコネクタ802は、U字形状の端部でそれぞれの接続ポート814a、814bと流体連結され、排液出口ポート829はU字形状の曲り部に位置する。接続点814aおよび814bから通じるチャネル827の一方または両方の流体チャネル部にバルブ831が存在してもよい。よって、そのバルブは、接続ポート814と排液出口ポート829との間のチャネル827における流体連通を制御可能に開閉することができる。1つのバルブ831のみがチャネル827に設けられる実施形態では、1つの接続ポート814と出口排液ポート829との間の流れは、バルブによって制御することができ、一方で、他方の接続ポート814と排液出口ポート829との間の流体連通は、恒久的に開放することができる。図示する例では、ハウジング828の後部に搭載された空気圧作動膜バルブ831が、静脈血液ライン接続点814aに通じるチャネル827aの部分の上に配置される。フロントパネル811に搭載された嵌合する空気圧コネクタ831aが、バルブ831に正または負の空気圧を供給して、バルブ、空気圧分散モジュールからフロントパネル811まで延在する空気圧ライン、または透析ユニット51の後方部分に位置するマニホルドを作動させる。コネクタ830および831はともに、排液カセット815が比較的容易にフロントパネル811に差し込まれるかまたは引き抜かれることが可能になるために、フロントパネル811の嵌合コネクタ830aおよび831aとの半径方向封止係合を(たとえばエラストマOリングを用いて)形成するように構成することができる。同様に、チャネル827内に配置された温度および/または伝導度プローブとチャネル827の外側で電気接続するために、ハウジング828の後壁に電気コネクタ833を搭載することができる。電気コネクタ833は、排液カセット815がフロントパネル811に設置されるかまたはそこから取り除かれるときにコネクタの係合および分離を容易にするために、フロントパネル811の嵌合する電気コネクタ833aとの鍵式接続を形成するように構成することができる。いくつかの実施形態では、出口排液ポートコネクタ830、バルブ制御ポートコネクタ831および電気コネクタ833のパネル511上のそれぞれのコネクタへの接続は、たとえば排液カセット815をパネル511の適所に押し込むことにより、本質的に同時におよび/または単一操作で行うことができる。
図33は、排液カセット前壁826の斜視図を示す。排液カセット前壁826において、プローブ834および835とコネクタ833との間の電気接続が示されている。本例では、プローブ834は、流体温度および伝導度をともに検出するためにチャネル827内に延在する、サーミスタおよび一対の伝導度センサのうちの一方を備える。プローブ835は、チャネル827内に延在する一対の伝導度センサの第2のプローブとして同様にチャネル827内に延在する。
図34は、排液カセット815の主ハウジング828を示し、明確にするために前壁826が取り外されている。熱および/または伝導度プローブ834および835が、流体流チャネル827の部分827bにおけるそれらの位置決めを例示するように示されている(各プローブは、前壁826に封止して設置されているが、流体チャネル827のいずれかの部分に存在するように前壁826を貫通する細長い要素を有する)。電気コネクタ833が、チャネル827の外側にあるハウジング828の領域に位置決めされるように示されている。一実施形態では、排液コネクタ830(図32に示す)内に、ダックビルバルブ836等のチェックバルブを搭載することができる。
図35は、排液カセット815の後斜視図を示す。雄流体コネクタ830が、排液ラインに接続される、フロントパネル811の嵌合コネクタ830aに接続するように構成される。雄空気圧コネクタ831が、空気圧ラインに接続される、フロントパネル811の嵌合コネクタ831aと接続するように構成される。雄電気コネクタ833が、フロントパネル811の嵌合コネクタ833aに接続するように構成され、嵌合コネクタ833aは、ハウジング828内の熱および/または伝導度センサから透析ユニット51の後部分のシステムコントローラへの電気接続を行う。ハンドル821に接続されたラッチ部材837が、排液カセット815をフロントパネル811に係合させ係止するために、フロントパネル811の鍵穴に挿入されるように構成される。
図36は、排液カセット815が取り外されているフロントパネル811を示す。排液カセット凹部838が、排液カセット815を受け入れるように構成される。ユーザは、排液カセット815の排液コネクタ830、空気圧バルブコネクタ831および電気コネクタ833を、フロントパネル811のそれらの相手側コネクタ830a、831aおよび833aと位置合せし、カセット815を適所に押し込んで必要な空気圧および電気接続を行うだけでよい。排液カセット815のハンドル821のラッチ部材837が鍵穴837aに挿入され、ハンドル821が、1/4回転または1/2回転させて排液カセット815を凹部838内に係止することができ、それにより図21Bに示すようなフロントパネルの構成になる。
排液カセット815のモジュール式機能により、有利に、ユーザは、透析システムの血液担持構成要素の実質的にすべて(一実施形態では排液ライン31の遠位部分を除く)を容易に搭載し取り外すことができる。よって、透析ユニット51は各組が各個々のユーザに割り当てられる、血液担持構成要素(たとえば血液回路アセンブリおよび排液カセット)を単に交換するたけで、2人以上の個人による使用を可能にすることができる。透析器半透膜により、透析液側回路内の入ってくる水または透析液用の限外濾過フィルタにより、透析ユニット51の各使用の間の透析液側消毒処置により可能となる微生物学的バリアにより、透析液側構成要素を異なるユーザ間で再使用可能とすることができる。他のモジュール式血液回路構成要素とともにモジュール式排液カセット815があることにより、透析ユニット51を、単一ユーザの家庭環境におけるように多ユーザの臨床の現場で好都合に使用することができる。
本発明の別の態様によると、透析ユニット51のフロントパネル511(またはその他の適切な構成要素)は、様々なサイズおよび/または形状の透析器ユニット14を収容するように構成することができる。異なる患者、一実施形態では、長期にわたり同一の患者に対しても、異なる治療条件を提供するように異なる透析器を指定することができる。よって、透析ユニット51は好ましくは、複数の様々な種類の透析器14と共に動作するように構成される。多くの場合、透析器14が異なれば、透析器ユニットの全体の径および/または長などの寸法が異なる。図23に示す例示の実施形態では、フロントパネル511は、透析器14上のそれぞれの透析液迅速接続継手に係合するよう構成された一対の「鍵穴」機能520を有する透析器搭載台を備える。各鍵穴機構520は、迅速接続継手の一部を収容する寸法の上側挿入領域520aと、迅速接続継手の全体径よりも幅が小さく、迅速接続継手の溝領域と係合する下側フランジ部520bとを含む。これらの機能を理解することを補助するために、図24は、透析器14の透析液入口ポートおよび出口ポートに装着される迅速接続継手14aを備えた透析器14を示す(血液入口および出口ポートは、図24に示す透析器14の上端と下端に配置される)。図示される迅速接続継手14aは標準的なタイプのもので、すべてではないが多くの透析器14は、標準的な迅速接続継手14aと係合するように構成される透析液入口/出口ポートを有する。迅速接続継手14aはそれぞれ、(図24に示すように)基部14cに対して右手に移動させて、継手14aを透析器14上の透析液ポートと係合させる摺動素子14bを備える。摺動素子14bが移動して継手14aを透析器14に接着させると、溝14dが閉鎖される。ただし、継手14aが透析器14の入口/出口ポートに適切に配置されると、摺動素子14bは解放されて、図24に示すようにバネ(図示せず)が摺動素子を左手に移動させて、溝14dを図24に示す状態に再設定する。よって、迅速接続継手14aが透析器14と適切に係合すれば、溝14dは図24に示すように存在する。
透析器14を鍵穴機構520に取りつけるには、各迅速接続継手14aの溝14dが鍵穴機構520の下側フランジ部520bのフランジと並んで配置されるように、迅速接続継手14aが上部および下部鍵穴機構の上側挿入領域520aにそれぞれ部分的に挿入される(下部鍵穴機構520の上側挿入領域520は、より広い範囲の透析器長を収容できるように、図23に示すものよりも長くすることができることに留意されたい)。溝14dがフランジと並べば、迅速接続継手14aが鍵穴機構520の下側フランジ部520bに完全に収容されるように、透析器14を降下させることができる。
本発明の別の態様によると、鍵穴機構520の一方または両方は、透析器14の重量が鍵穴機構520の両方の下側フランジ部520bによって分担されるように調節可能である。たとえば、本例示の実施形態では、下部鍵穴機構520は、上部鍵穴機構520に対して垂直位置に調節可能な下側フランジ部520bの部分を有する。このように、この下側フランジ部520bの部分は縦方向の位置に調節可能であるため、上部の迅速接続継手14aが上部鍵穴機構520のフランジ部520bによって支持された状態で、下部鍵穴機構のフランジ部520bの可動部分をたとえば上方向に移動させて、下部の迅速接続継手14aもフランジ部520bによって支持することができる。よって、透析器14の重量は、両鍵穴機構520によって分担することができる。フランジ部520bは、任意の適切な方法で調節可能にすることができる。本実施形態では、フランジ部520bは、縦フランジに沿って縦方向に摺動可能であり、1セットの蝶ネジを締めることによって適所に固定できる「U」字状部材520cを有する。「U」字状部材520cが透析器14の重量を(少なくとも部分的に)支持するように、「U」字状部材520cは迅速接続継手14aと係合することができる。
上記実施形態では、透析器14はフロントパネル511の鍵穴機構によって支持されるが、透析器のための支持構造は他の方法で構成することもできる。たとえば、上側挿入領域520aは必ずしも必要ではない。代替えとして、フランジ部(たとえば、対向するフランジ部を有する「U」字状フランジの形状で)のみを設けて透析器迅速接続継手と係合させることができる。フランジ部は、フロントパネル511の前面から偏位させて、継手用の隙間を設け、フランジ部を迅速接続継手の溝と係合させることができる。さらに、フランジ部は図示されるように縦方向に設ける必要はなく、縦方向から角度をつけて、たとえば水平に配向させることができる。フランジ部は、移動止め、キャッチ、または透析器を適所に保持するための補助となるその他の機能を有することができる。
本発明の別の態様によると、重炭酸塩、酸および/またはその他の試薬供給源を透析ユニットと選択的に関連付けることができる。上述したように、透析ユニット51は、システム動作に必要な透析液および/またはその他の材料を生成する特定の化学物質の供給を必要とする。図25は、酸、重炭酸塩および/またはその他の材料を透析ユニット52に供給するために使用される試薬供給源49を示す(図21は、フロントパネル511で酸/重炭酸塩接続点512に装着された試薬供給源49を示す)。本例示の実施形態の試薬供給源49は、酸/重炭酸塩接続点512と嵌合するように構成されたE字叉コネクタ491を備える。接続点514での血液ライン接続など、フロントパネル511でユーザによってなされた他の接続と同様、嵌合コネクタは、適切な接続を確保するため、色分けする、あるいはそれ以外の方法で印をつけることができる。たとえば、E字叉コネクタ491と酸/重炭酸塩接続点512はオレンジ色に、接続点514での動脈ライン203とその嵌合接続部は赤色に、接続点514での静脈ライン204とその嵌合接続部は青色にすることができる。E字叉コネクタ491からは、重炭酸塩供給ライン492、給水ライン493、および酸供給ライン494が延びている(図6とこれらのラインの機能に関する関連の説明とを参照)。給水ライン493は重炭酸塩供給源28に水を供給する(本実施形態では、粉末重炭酸塩材料を含有する、バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッドで販売される750g Altracart Bicarbonateカートリッジ(#500750A)だが、任意の適切な供給源であってもよい)。重炭酸塩供給源28は、重炭酸塩供給ライン492を通じて透析ユニット51に重炭酸塩を供給する。本実施形態では、酸供給ライン494は、IV型バッグまたはその他の容器を突き刺し、そこから適切な酸を抜き出すのに使用可能な酸バッグスパイク495につながる。本実施形態では、酸バッグスパイク495はスパイク部材495aと一対のスプリングクリップ495bとを含む。スプリングクリップ495bは接続バーによって中心部で共に接合される結果、スプリングクリップ495bとその接続バーとが「H」状を成し、スプリングクリップ495bの近位端が互いに締め付けられるとき、スプリングクリップ495bは互いに回転可能である。スプリングクリップ495bは酸バッグ(またはその他の酸供給源、図示せず)上のコネクタ素子と係合するように構成されるため、ユーザがクリップ495bを取り外すまで、スパイク部材495aをバッグと係合させておくことができる。たとえば、クリップ495bの遠位端は酸供給源と係合する突刺(barb)を含むことができ、クリップ495bの近位端を共に締め付けあい、クリップ495bの遠位端で突刺素子を酸供給源から分離させることによって、クリップを酸供給源から脱離させることができる。酸バッグスパイク495は、酸バッグスパイク495のラインを開放/閉鎖するバルブ495c(この場合、ピンチクランプ)も備えることができる。本発明の一態様によると、酸バッグスパイク495は、(キャップコネクタ496で酸供給ライン494から切り離して)酸ジャグストロー(図示せず)やその他の構造などの別の構成要素と取り換えることができる。ジャグストローと共に使用される場合、キャップコネクタ496は、酸ジャグの開口部をキャップのように覆うように、酸ジャグの開口部と係合させることができる。もしくは、ジャグストローは終端部をスパイク状にして、酸ジャグの開口部を覆うセルフシール(たとえばラバー)膜を貫通する能力を有することができる。このように、酸供給構造(ジャグ、ボトル、バッグなど)に応じて、様々な種類の構成要素を酸供給ライン494に装着することができる。
図26は、E字叉コネクタ491と、フロントパネル511の対応する接続点512との近接図である。E字叉コネクタ491は、接続点512の対応する収容穴と係合する3つの平行な叉(重炭酸塩ラインおよび酸供給ライン492、494、および給水ライン493に対応する)を有する。E字叉コネクタ491と接続点512の収容穴とは、中心内腔(給水ライン493)が上方に配置される、あるいは他の形で2つの外側内腔(重炭酸塩および酸供給ライン492、494)の共通面から外に配置されるように構成される。このように、適切に配向されない限り、E字叉コネクタ491は接続点512と係合できないため、重炭酸塩および酸供給ライン492、494が適切に接続されることが確実となる。E字叉コネクタ491は、たとえば、叉が接続点512の収容穴に適切に配置されるときに接続点512の対応するスロット512aと係合可能な一対のスプリングタブ491aを備える。タブ491aがスロット512aと係合した状態で、E字叉コネクタ491は接続点512から容易に脱離できず、不測の分離の可能性を低下させるための補助となる。E字叉コネクタ491は、タブ491aの遠位端の突刺がスロット512aから分離するようにタブ491aを互いの方に押し合うことによって切断させることができる。接続点512は、接続点512をフロントパネル511と着脱させることのできる同様のスプリングタブ512bを有する。
本発明の別の態様によると、消毒コネクタ(図示せず)は、消毒手順中、使用のため接続点512と係合する。消毒コネクタはE字叉コネクタ491と同様の配向の3つの平行な叉を有するため、叉が接続点512の収容穴に係合することができる。消毒コネクタコネクタの叉内の通路は、消毒コネクタ内の共通チャンバ内で終端となる。よって、消毒手順中、重炭酸塩流ライン、酸流ライン、および水流ラインはすべて相互接続され、消毒手順中、各流ラインを消毒することができる(これは図6の49で点線の逆「T字」ラインとして示されている)。
本発明の別の態様によると、血液ライン203、204には、2種類の接続を行うことのできるコネクタが備えられる。1種類目の接続は、コネクタが収容内腔に押し込まれる差込型または圧入型接続と、コネクタまたは収容内腔の回転を必要とせずに行われる漏れなし接続である。2種類目の接続は、漏れなし接続がコネクタと補完素子とのねじ込み係合により行われるネジ型接続である。たとえば、図27および28は、血液ライン203、204と共に使用され、フロントパネル511上の血液ライン接続点514と係合可能である血液ラインコネクタ202の斜視図と側面図である。コネクタ202は、対応する血液ライン203、204に接続するチューブ接続端202aと、患者アクセスおよび接続点514の両方に接続して漏れなし接続を確立するように構成された患者アクセス接続端202bとを備える。患者アクセス接続端202bにおいて、コネクタ202は、雄ネジ患者アクセスと係合するように構成された雌ネジ部を有する円錐台形部材202cを備える。たとえば、円錐台形部材202cは、円錐台形部材202cの中心から延在する中央チューブ202を備える雄型ルアーコネクタの一部であってもよい。ルアー接続を行う際、チューブ202eは患者アクセスで雌型ルアーコネクタ内に延在し、円錐台形部材202cの内側のねじ込み部は、患者アクセス(動脈または静脈)の雌型ルアーコネクタのネジと係合することができる。血液ラインを患者アクセスに接続するときは、このようなルアー接続が標準的である。しかし、コネクタ202は、単に患者アクセス接続端202bを接続点514の収容穴に押し込むことによって、接続点514と係合させることができる。この接続を行う際、円錐台形部材202cの外側は好適なシート、あるいはその他の接続点514内の表面または素子(たとえば、バルブシート、Oリングまたはその他)と係合して、円錐台形部材202cと接続点514との間に封止を形成することができる。さらに、もしくは代替えとして、適切な封止を確立するため、中央チューブ202eを接続点514と係合するのに使用することができる。円錐台形部材202cから後方に延在する係止アーム202dは、接続点514の穴514aと係合して(たとえば、アーム202dの有刺部は、穴514aと係合することができる)、コネクタ202を接続点514の収容穴に保持するのを補助することができる。コネクタ202はアーム202dを互いに押し合わせて(たとえば、アーム202dの遠位端で指窪み部を押すことによって)解放し、穴514aから突刺を分離させ、コネクタ202を引き抜くことができる。接続点514は、接続点514を選択的にフロントパネル511と係合させる/フロントパネル511から分離させることのできるスプリングタブ514bを備えることに留意されたい。コネクタ202は、たとえば単独の一体型部分としてプラスチック成形などの任意の適切な方法で作製することができる。
図29は、別の実施形態の血液回路アセンブリ17の斜視図を示す。本実施形態は、幾つかの点で図18および図19に示すものと異なる。たとえば、本実施形態では、血液ライン203および204は、形状が「数字8」に類似する断面を有し、「数字8」の1つの部分が血液または他の流体を搬送する内腔を含み、「数字8」の別の部分が導体を搬送する。すなわち、血液ライン203および204は、血液および他の流体が流れることができる内腔と、導電体が通過することができる別の内腔とを有する。このおよび他の配置に関するさらなる詳細は、図37〜49を参照して後述する。同様により詳細に後述するように、導電体を使用して、患者または他の接続点からの血液ライン203、204の切断、若しくは血管またはろうに挿入された一対のカテーテルの一方または両方の血管アクセスの中断を検出することができる。さらに、図29の編成トレイ171は図19に示すものと以下の点で異なる。すなわち、係合部材174は、血液ライン203、204が係合するスロットまたは穴を有することができるが、本実施形態では、係合部材174は、たとえば閉鎖部にラインを搭載するために、ライン203、204の下方の引張に抵抗するように血液ライン203、204と係合する必要がない。代替えとして、本実施形態では、血液ライン203、204は、係合部材174に関して自由に移動させることができる。実施形態の別の変更は、係合部材174が両ライン203、204にわたるプッシュプレートを含む、ということである。これは、各ライン203、204が互いに独立する係合部材174によって係合される図19の構成とは対照的である。図29の構成は、ユーザが、単一操作で閉鎖部に通じるスロット517に関してライン203、204を係合させることができるいくつかの実施形態において、利点を提供することができる(図22参照)。一実施形態では、スロット517は、各々、ライン203または204に気泡があるか否かを(たとえば、ライン203または204の空気をスロット517のうちの1つのそれぞれの空気検出器によって検出することができるような光学的検出法または他の検出法により)検出するように動作する空気検出器に関連付けることができる。よって、係合部材174は、閉鎖部、またはライン203、204を所望の方法で位置決めする他の機構に加えてまたはその代替えとして、ラインを空気検出器または他の機能に関連付けるように機能することができる。本実施形態では、係合機構174は、導体をプッシュプレートの近くに位置決めするようにライン203、204の狭い方の部分(たとえば、導電体を搬送する部分)と係合するプッシュプレートの下側に配置されたスロットを含む。これは、導体がライン203、204における空気を検出するように動作する空気検出器を干渉しないように、スロット517内でライン203、204の位置決めするのに役立つことができる。上述したように、ライン203、204と係合するプッシュプレートのスロットはラインと係合することができ、それにより、ラインは、プッシュプレートに対して回転しないが、それらの長さに沿ってプッシュプレートに対して進むことができる。図30は、図29の血液回路アセンブリの一部の近接図を示し、編成トレイ171の一部を、トレイ171によって保持される血液ライン203、204の形状に少なくとも部分的に一致するための配置を示す。係合部材174と同様に、ライン203、204と係合するトレイ171の部分は、ラインの導体部が外側に面するようにライン203、204を配向するように構成することができる。これは、係合部材174またはアセンブリ17の他の部分に対してライン203、204を適切に位置決めするのに役立つことができる。
本明細書に記載した発明の態様の任意ものおよびすべてを、記載した発明および/または実施形態の他の態様の任意のものと組み合わせるかまたは他の方法で統合することができることを理解すべきである。たとえば、本明細書に記載する発明の1つまたは複数の態様を組み込んだ透析システムは、図37〜図49に関連して記載したもののようなライン切断機能若しくはライン中断機能を有することができる。こうした切断機能は、1)関連するコネクタに関して血液ライン203、204の切断を示す電圧、抵抗または他の特性の変化を検出する電気回路または他の適切な回路、2)患者または他の基準に適切に近接した検出電極の位置決め、3)1つまたは複数のコネクタ配置、4)血液ラインが流体流内腔および導電性機能の両方を支持する、血液ライン配管構成または他の適切な構成等の特徴を有することができる。たとえば、本発明の一態様では、血液回路アセンブリは、血液ライン、1つまたは複数の血液ポンプ、エアトラップ、および編成トレイの1つまたは複数の血液ラインの切断/接続を検出するのに使用するのに適している電気回路構成要素を備えることができる。こうした構成により、ユーザは、流体、空気圧および/または電気のいずれであってもいくつかの異なる接続を、比較的複雑でなく簡単に行うことができる。
したがって、本発明の態様は、概して、カテーテルまたは針等、透析治療で使用されている体内留置血管ラインまたはその装着配管の切断を検出するシステムおよび方法に関する。切断は、迅速に検出されない場合、特にカテーテルまたは配管内の血液が正圧下にある場合、急速な放血に至る可能性がある。正の血管内圧を伴う環境の例としては、動脈または動静脈ろうに関連する正圧、または体外血液ポンプ回路に関連する正圧が挙げられる。血液透析では、たとえば、血液ポンプは、400ml/分〜500ml/分の血液流量を生成することができ、迅速な信頼性の高い切断検出を特に望ましいものとする。実際に、比較的流れが高いかまたは圧力が高い体外循環をと伴う任意の医療治療(たとえば、血液灌流または心肺バイパス等)を、動脈(引抜き)および静脈(戻り)の完全性をモニタリングする有効なシステムがあることにより、より安全なものとすることができる。
血液透析では、たとえば、体外血液循環を、単一の体内留置カテーテルかまたは2つの別個の体内留置カテーテルのいずれかを用いる血管アクセスによって達成することができる。単一カテーテルシステムでは、血液は、同じカニューレを通じて交互に体内から引き抜かれかつ体内に戻される。このシステムにおける切断を、ポンプ入口におけるまたはその近くのラインに空気モニタを配置することによって迅速に検出することができ、それは、ポンピングの血液引抜き段階中に切断部位からライン内に空気が引き込まれることになるためである。他方で、2カテーテルシステムでは、血液は、通常連続して、血管またはろうに挿入された1つのカテーテルを通じて体内から引き抜かれ、同じ血管内の第1のカテーテルから幾分かの距離に、または全く別個の血管に挿入された第2のカテーテルを通じて、体内に戻される。2カテーテルシステムでは、センサを用いて、負のポンプ圧および/または正のろう圧の下で血液が血管から引き抜かれる際に、動脈配管内に閉じ込められている空気の存在を検出することにより、血液引抜すなわち「動脈」セグメントにおいてカテーテルまたは配管が外れていないかをモニタリングすることもできる。しかし、ライン内空気検出は、体外回路の静脈(戻り)セグメントの切断を確実に検出することはできない。この場合、血液引抜経路がそのままである場合、空気は、ライン内に導入されない。よって、体外ポンプから血管アクセス部位までの戻りラインの連続性の分断を検出することができることが特に重要である。
一態様では、本発明は、針、カニューレ、カテーテル等、血管アクセス装置が血管または血管グラフトから切断されたかまたは外れたか否かを検出するシステムを含む。別の態様では、システムは、血管アクセス装置が閉鎖されているかどうかを電気伝導度またはインピーダンスによって検出するように構成される。本システムは、血管またはグラフトの第1の部位における体内留置針またはカテーテルを通じて、チューブまたは管路を通る血管内への液体の流れを提供する、流体送出装置を含む。流体は、電解液または静脈内注入に適している他の溶液とすることができ、または血液もしくは血液成分とすることができる。電極が、管路の内腔と接触するかまたは流体連通するように配置され、第2の電極が、血管またはグラフトの第2を通じて血管またはグラフト内の血液と流体連通するように配置される。電子回路が、第1および第2の電極に接続され、第1の電極と第2の電極との間の流体の電気抵抗を測定するために第1および第2の電極に制御信号を送出するように構成され、その際、電極のうちの少なくとも1つは、流体送出装置より血管またはグラフトの近くに配置される。いくつかの実施形態では、電極は、流体送出装置から血管またはグラフトまでの距離の約50%〜70%に配置される。他の実施形態では、電極は、流体送出装置から血管またはグラフトまでの距離の約70%〜90%以上に配置される。流体送出装置は、血液用かまたは他の治療もしくは診断流体用のポンプを備えることができる。流体送出装置は、血液ポンプ、透析器カートリッジまたはエアトラップおよび関連配管を備えていてもいなくてもよい血液透析血流回路の一部とすることができる。第2の電極は、第2の部位において血管またはグラフトと流体連通する第2の管路またはチューブの内腔と接触して配置することができる。第2の管路は、血管またはグラフトから流体送出装置までの流体流路の部分を形成することができる。第2の管路内の流体は、体外血流回路に送出されている血液であり得る。
本システムは、2つの異なる部位における血管セグメントまたは血管グラフトセグメントにアクセスする一対の血管アクセスカテーテルを接続する第1および第2のコネクタを備えることができる。第1および第2のコネクタは各々、流体送出装置に通じる可撓チューブに接続することができる。各コネクタは、コネクタの内腔に露出する電極を備えることができる。各コネクタにワイヤを装着することができ、ワイヤは、その他端において電子回路に接続可能である。可撓チューブは、流体を搬送する第1の内腔とワイヤを搬送する第2の内腔とを有する二重内腔チューブであり得る。各チューブのワイヤは、チューブの他端において電子回路に接続するためのコネクタに接続することができる。
電子回路または関連するマイクロプロセッサは、電極に接続された端子の両端で電子回路によって測定された電圧を、抵抗値に変換するように構成することができる。本システムは、電子回路またはマイクロプロセッサから信号を受け取るように構成されたコントローラを備えることができ、信号は電極間の電気抵抗を表し、コントローラは、電気抵抗値が所定閾値を超えると警報信号をトリガするようにプログラムされる。警報信号は、血管がアクセスされている人に対する可聴または視覚信号とすることができ、任意に、警報信号は、配管閉鎖部装置に対する電気コマンドを含むことができる。配管閉鎖部装置を、血管アクセス部位から通じるチューブのうちの1つまたは複数を機械的に閉鎖するように作動させることができる。配管閉鎖部は、たとえば電気機械的に、液圧式にまたは空気圧式に等、複数の方法で動作することができる。
別の態様では、本発明は、第1および第2の血管コネクタを備える、血管アクセス装置と血管または血管グラフトセグメントとの間の連続性をモニタリングする装置を含み、第1のコネクタは、近位端において第1の二重内腔チューブの流体搬送内腔の遠位端に装着され、第2のコネクタは、近位端において第2の二重内腔チューブの流体搬送内腔の遠位端に装着される。第1のコネクタは、第1のコネクタの内腔と接触し第1の二重内腔チューブのワイヤ搬送内腔内のワイヤに電気的に接続された第1の電極を備え、第2のコネクタは、第2のコネクタの内腔と接触し第2の二重内腔チューブのワイヤ搬送内腔内のワイヤに電気的に接続された第2の電極を備える。第1の二重内腔チューブ内のワイヤおよび第2の二重内腔チューブ内のワイヤは、各々、二重内腔チューブの近位端において電気コネクタに接続される。各コネクタの遠位端は、コネクタと血管カテーテルの嵌合コネクタとの間の可逆気密接続を提供する係止機能を有するように構成することができる。二重内腔チューブの近位端は、動脈側の血液ポンプと静脈側のエアトラップとに接続することができ、血液透析システムでは、血液ポンプおよびエアトラップは、各々、透析器カートリッジに可逆的に接続可能であり得る。
別の態様では、本発明は血管コネクタを備え、血管コネクタは、近位流体接続端と、遠位流体接続端と、コネクタの流体搬送内腔を血管コネクタの外部のワイヤに電気的に接続するように構成された電極とを備える。コネクタの近位端は、可撓チューブと接続するように構成することができ、コネクタの遠位端は、血管カテーテルの嵌合コネクタと接続するように構成することができる。電極は、コネクタの内腔をコネクタの外部に接続するコネクタの管路に設置することができる。電極は、内腔とコネクタの外側との間に気密シールを提供するように管路内に収容することができる。気密シールに寄与するように、Oリング等のエラストマ部材を、電極と管路との間に設置することができる。
別の態様では、本発明は、第1の電極と第2の電極との間の液体の抵抗を測定する電気回路であって、第1の電極が電気回路の第1の端子に接続され、第2の電極が電気回路の第2の端子に接続され、第1の端部において第1の端子に接続されたコンデンサC1と第1の端部において第2の端子に接続されたコンデンサC2と、第1の端部においてコンデンサC1の第2の端部に接続された既知の基準抵抗Rrefと、(a)第1の基準電圧V+をRrefの第2の端部に接続し低い方の第2の基準電圧V−をC2の第2の端部に接続して第1のスイッチ構成を形成するか、または(b)第1の基準電圧V+をC2の第2の端部に接続し低い方の第2の基準電圧V−をRrefの第2の端部に接続して第2のスイッチ構成を形成する、スイッチング手段と、C1とRrefとの間の接続部において電圧Vsenseを測定する測定手段とを備え、それにより、電気回路が、第1および第2のスイッチ構成の各々に対して既知の基準電圧Rrefおよび観測された電圧Vsenseに基づいて液体の抵抗の値を判定するように構成される、電気回路を備える。抵抗Rrefは、電解液または静脈内注入に適している他の溶液の伝導度測定を可能にする値であるように選択することができる。電解液は、透析液を含むことができる。抵抗Rrefはまた、第1の電極と第2の電極との間の或る体積の血液の抵抗の測定を可能にするように選択することもできる。
伝導度回路
図37に示す例示的な電気回路を用いて、対象流体の導電率または抵抗を測定することができる。一実施形態では、流体は、電解液または透析流体とすることができ、回路は、最終的に、血管内投与に対するその適合性を確保するように流体の伝導度の測定を提供することができる。流体内の溶解溶質の濃度をモニタリングすることに加えて、電気回路はまた、回路に接続された電極間の流体の連続性において中断の可能性がないかモニタリングすることもできる。たとえば、それを用いて、気泡の存在、または汚染物質の存在に対して静脈内流体ラインをモニタリングすることができる。別の実施形態では、流体は血液とすることができ、(たとえば管路内の)血流路の測定された電気抵抗の変化を用いて、血流路と測定電極との間に不連続性が発生するか否かを示すことができる。たとえば、血流路は、血管、動静脈ろうまたはグラフトのセグメントにおける体内留置針またはカテーテルを含む2つの電極の間の血液のカラムを含む場合がある。血管アクセスの切断により、血流路に空気が導入され、電極の間の血液カラムの抵抗が変化する可能性がある。電気回路は、血流路のインピーダンスと透析流体のインピーダンスとの差を調整するように(その用途に応じて)容易に変更することができる。
図37に示す回路を用いて、低価格の電子部品を使用して、対象媒体1の未知の抵抗Rxを、特に未知の抵抗が電解流体を通る導電路を含む場合、測定することができる。一対のマルチプレクサを備えたスイッチング網2により、ノードVAの基準電圧V+およびV−への接続が可能になる。未知の抵抗Rxを有する対象媒体1は、端子VTAおよびVTB 3に接続され、基準抵抗器Rref 4を備えた分圧器を形成する。伝導度測定を行うために、交流電圧を、既知の基準抵抗器Rref 4(たとえば透析流体の場合は680オーム)および対象媒体1の未知の抵抗Rxによって生成された分圧器へのスイッチング網2を通じて、対象媒体1に提供することができる。分圧器の中間点が測定される。点8における信号Vsenseは、増幅器10によってバッファリングされ、アナログ−デジタル変換器(ADC)111の入力信号Vinを生成する。分圧器が最初に一方の方向に次いで他方の方向に駆動される際に、Vsenseは2つの値の間で切り替わる。この信号は、切替り後の短期間にのみ有効であり、それは、伝導度セル1内の流体が、コンデンサC1およびC2 6を通じて回路に交流結合されているためである。よって、直流阻止コンデンサC1およびC2 6を用いて、直流電流が(電解流体または血液を通る導電路を含む可能性がある)未知の抵抗を通過するのを防止することができる。一実施形態では、直列コンデンサCは、各々2つのコンデンサを並列に含むことができ、一方はたとえば0.1μFの値を有し、他方はたとえば10μFの値を有する。直列抵抗器7を用いて、スイッチ網および他の感知回路によるノイズおよびサージ電圧への曝露を低減することができる。ADC111は、回路が2つの構成間で切り替わる際に信号の複数のサンプルを取得することができる。
スイッチングネットワーク2は、1つの半サイクルの間にVAをV+に、そしてVBをV−に接続し、他の半サイクルの間にVBをV+に、そしてVAをV−に接続する一対の交互の(alternating)バイナリ制御信号131、144によって駆動される。バイナリ制御信号131、144は、サイクル(T)の持続時間または信号の周波数(f=1/T)によって特徴付けられてもよい。バイナリ制御信号131、144は、図38に示されるように信号が高値と低値との間で交互になるアクティブ期間と両方の信号がオフである非アクティブ期間とによって更に特徴付けられてもよい。一実施形態では、アクティブ期間は、3つの高い半サイクルを供給する第1の制御信号からなり、一方、第2の制御信号は2つの高い半サイクルを供給する。バイナリ制御信号131、141を図37の回路と同様の回路に適用すると、図38に示される波形20と同様の波形がVsenseノード58において生成される。他の実施形態では、アクティブ期間中の各制御信号131、144の高い半サイクルの数は、信号144の高い半サイクルの任意の整数と交互である信号131の高い半サイクルの整数であり得る。あるいは、アクティブ期間中に、制御信号131は、制御信号144における1つの高い半サイクルと交互に1つの高い半サイクルを生成することができる。
本実施形態では、Vrefは4ボルトであり、図38に示すように、Vsense振幅が4ボルト未満になる。分圧器8は、それぞれ正の基準電圧Vrefに近く接地に近い電圧V+およびV−をもたらす。一実施形態では、R1は10オームの値を有することができ、R2は2Kオームの値を有することができる。スイッチング網2の両マルチプレクサがゼロに指示されたとき、回路は停止しており、低い方の電圧が端子VTAおよびVTB 3に与えられる。VAが高くVBが低い場合、高い方の電圧が基準抵抗器Rref 4に与えられ、低い方の電圧が、未知の抵抗Rxを有する対象媒体1に与えられる。VBが高くVAが低い場合、高い方電圧が、未知の抵抗Rxを有する対象媒体1に与えられ、低い方電圧が基準抵抗器Rref 4に与えられる。
各矩形波エッジの前後の電圧の変化ΔVsenseは、基準抵抗Rref 4、対象媒体1の未知の抵抗Rxおよび任意の直列抵抗(たとえばRs 7を含む)のみによって決まるように示すことができ、概して、直列容量C1またはC2 6とは無関係であり、それは、この短期間中、コンデンサはインクリメンタル形の短絡回路として作用するためである。特に、
Δα=ΔVsense/(V+−V−)=(Ry−Rref−Rth)/(Ry+Rref+Rth)=(ρ−1)/(ρ+1)
であり、式中、Ry=Rx+2Rs+Rthであり、Rth=マルチプレクサ2および分圧器8からのソース直列抵抗でありρ=Ry/(Rref+Rth)である(ソース直列抵抗Rthは、マルチプレクサ2の抵抗と分圧器8のテブナン等価抵抗との和として導出することができる。たとえば、R1=10オーム、R2=2Kオームの場合、Rth=R1‖(R1+R2)=9.95オームである)。よって、Ryが短絡回路である場合、ρ=0およびΔα=−1である。次いで、センスノードの電圧の変化ΔVsenseは、VAにおけるドライブノードとは反対の振幅を有するVBにおける電圧変化に等しい。Ryが開回路である場合、ρ=∞およびΔα=1である。次いで、センスノードの電圧の変化ΔVsenseは、ドライブノードVAにおける電圧変化に等しい。したがって、電圧のこの変化が測定される場合、先の式を、未知の抵抗Rxに対して解くことができる。
Rx=ρ(Rref+Rth)−2Rs−Rth、式中、ρ=(1+Δα)/(1−Δa)
図37に示すように、高周波ノイズを除去するために、抵抗器RfおよびコンデンサCfによってローパスフィルタ9を形成することができる。1つの例示的な構成では、Rfは1Kオームの値を有することができ、Cfは0.001μFの値を有することができる。次いで、緩衝増幅器10およびアナログ−デジタル変換器(ADC)111が、コンピュータまたはデジタル信号プロセッサ(図示せず)に対して検知電圧を測定することができる。
基準電圧V+およびV−は、V+がADC111の基準電圧Vrefに近く、V−がADC111の接地基準電圧に近いように、分圧器8から有利に導出することができる。たとえば、R1=10オーム、R2=2kオームおよびVref=4.0Vである場合、V+=3.980VおよびV−=0.020Vである。これにより、両電圧がADC111の能動検知領域内であるがそのエッジに近くなり、それらを校正(後述する)に使用することができる。負荷抵抗検知の校正に役立つようにスイッチSW1 12を用いることができる。
いくつかの改善により、成分値の変動に関連する誤差を低減することができる。第1に、整定しV+におよそ等しくなるまで(その時点で、ADC111はVsenseの測定を行うことができる)、比較的長期間、VAがV+に切り換えられる校正ステップを導入することができる。第2の校正ステップは、Vsenseが整定しV−におよそ等しくなるまで(その時点で、ADC111はVsenseの別の測定を行うことができる)、比較的長時間、VAをV−に切り替えることを含むことができる。これにより、ADC111はV+およびV−をともに測定することができる。
第2に、図38に示すように、矩形波が切り替わる間、切替波形の両エッジの前後のADC111読取値を用いて、以下のように無次元数Δαを計算することができる。
Δα=ΔVsense/(V+−V−)=[(V2−V1)+(V3−V4)]/2(V+−V−)
結果として、波形の両エッジを用いてΔVsense=[(V2−V1)+(V3−V4)]/2を測定することができ、それにより、回路に対する非対称応答が相殺される可能性がある。または、波形のおよそ中間点における平均電圧を使用することができ、それにより、たとえばΔα=ΔVsense/(V+−V−)=[(V7−V6)+(V7−V8)]/2(V+−V−)およびΔVsense=[(V7−V6)+(V7−V8)]/2となる。さらに、ADC111の入力信号Vinの差分測定値のみを使用することができる。よって、緩衝増幅器10およびADC111のいかなるオフセット誤差も相殺することができる。また、Δαは、同じ信号経路を使用する測定に基づくレシオメトリック量である。よって、ADC111のいかなる利得誤差も相殺することができる。
基準抵抗器Rref 4は、直列抵抗Rs 7を考慮して、所望の範囲の未知の抵抗の端点の幾何平均に等しいように任意に選択することができる。たとえば、Rs=100オームでありRxが100オームから3000オームまで変化する場合、Ry=Rx+2Rは300オームから3200オームまで変化し、Rrefは、およそ(300オーム*3200オーム)の平方根=980オームであるべきである。100kオーム〜300kオームの範囲の(たとえば、動静脈ろうを通じて1つの電極から別の電極まで延びる血液のカラムにおけるように)未知の抵抗を測定するために、基準抵抗器Rref 4はおよそ200kオームに変化させることができ、緩衝増幅器10への入力におけるローパスフィルタ9のフィルタコンデンサRfを完全に取り除くことができる。
分圧器の出力がその抵抗比の非線形関数であるため、ADC111からの読取値における誤差またはノイズが、RyがRrefに等しい場合の結果としてのRyの計算においてそれらの最も低い部分誤差(感度)をもたらし、感度が増大するほどRyは基準抵抗Rrefから発散する。具体的には、抵抗比における感度は以下の通りであることを示すことができる。
Sρ=(1/ρ)・∂Δρ/∂Δα=2/[(1+Δα)(1−Δα)]=2/[1−(Δα)2]
Ry=Rrefであるとき、ρ=1、Δα=0およびSρ=2である。よって、この点の周囲の0.001(ADCフルスケールの0.1%)のΔαの変化の場合、計算された抵抗Ryは0.002すなわち0.2%変化する。表1に示すように、ρが1から発散するに従って感度は増大する。
図39は、ノイズ/誤差感度が、約6:1の未知/基準抵抗比で2倍になり、10:1の比で3倍になることを示す。この範囲外の抵抗測定値は、ノイズおよび誤差に対する感度増大の影響を受ける可能性がある。
校正の目的で、スイッチSW1 12を用いて、抵抗測定を行ってRx=0の点を校正で除去することができる。好ましくは、このスイッチ12は、端子VTAおよびVTB 3の両端に、または可能な限りそれらの端子に近接して配置されるべきであり、それにより真のゼロ点校正が与えられる。しかし、実際には、スイッチ12を端子VTAおよびVTB 3に近接して配置することにより、スイッチ12が外部ノイズおよびサージ電圧を受け易くなる可能性があり、対象媒体1内に直流漏れ電流が導入される可能性がある。
直列容量C1およびC2 6ならびに矩形波の使用は、電解質導電路を含む未知の抵抗に対して重要である。これには少なくとも2つの理由がある。第1に、多くの用途において、直流電流が電解液または同様の特性を有する体液内を流れないようにすることが重要である可能性があり、そうでなければ、端子VTAおよびVTB 3における電極の電気めっきおよび/または電気分解が発生する可能性がある。この回路では、コンデンサC1およびC2 6が直流電流を阻止する。さらに、コンデンサは、非常にわずかな電流(マイクロアンペア以下)を流すことができるため、交番矩形波電圧を用いることが、平均電流をさらに制限するのに役立つことができる。
第2に、対象媒体1にわずかな電気化学的直流電圧が誘導される(たとえば、流体路の電極が異なる速度で経時的に酸化する可能性がある)場合、この直流電圧は、コンデンサC1およびC2 6によって阻止することができる。抵抗を計算する方法が差分測定を行うため、対象媒体1の未知の抵抗Rxを計算する過程を通じて、いかなる残留直流電圧も相殺することができる。
アクティブ期間中の高い半サイクルの印加電圧および持続時間は、電圧VAと電圧VBとの間の容量性要素を飽和させるように選択され、これにより、決定されたインピーダンスが未知インピーダンスRxの純粋な抵抗成分に等しくなる。さらに、アクティブ期間の間の期間は、患者が曝露される可能性のある漏れ電流を制限するように選択されてもよい。
ここで、図37の回路と図38の波形プロットとを参照する。図37の未知の抵抗Rxは、純抵抗と容量性抵抗からなる複素インピーダンスを有することができる。純抵抗は直流電流の流れに対する抵抗であり、容量性抵抗は交流電流に対する抵抗である。いくつかの実施形態では、コンデンサC1、C2と端子VTA、VTBとの間の電線路は、容量結合されていてもよい。容量性結合は、測定された電圧信号Vsenseを、したがって測定されたインピーダンスを低下させる未知インピーダンスRxと並列する抵抗を提供する。透析液の伝導度を測定するか、または切断された血管アクセスを検出するなどの用途では、複合インピーダンスRxの純粋な抵抗部分がより重要である。
容量性要素が未知の抵抗Rxと直列に、または未知の抵抗と並列に存在する場合、測定された電圧信号Vsense、よって測定されたインピーダンスは、図37のVAおよびVBで印加される信号の電圧および周波数に依存する。一実施形態では、バイナリ電圧信号131、144は、未知のインピーダンスRxと直列または並列の容量性要素が完全に充電または飽和されるアクティブフェーズ中に十分な低周波数で動作する。結果として生じるVsense波形20は、V7がほぼV3に等しくなるように、半サイクル中に安定した値に達する。安定化されたVsenseから計算される抵抗は、容量性要素の影響を最小限に抑えられ、結果として得られる測定抵抗は、主にRxの純粋な抵抗性要素を反映する。未知のインピーダンスRxにおける容量性要素によって影響を受けない測定値を生成するバイナリ電圧信号131、144の周波数は、キャパシタンスの測定値または計算に基づいて決定されてもよいし、経験的に決定されてもよい。
一実施形態では、コントローラは、バイナリ電圧信号131、144の周波数を変化させて容量排除(capacitance−rejecting)周波数を決定し、同容量排除周波数以下では容量性要素が未知の抵抗Rxの測定に影響を及ぼすことはない。コントローラは、高周波数で開始し、電圧信号131、144の周波数を減少させることによって、容量性要素を最小化するための周波数の探索を開始し、結果として生じるVsense波形20を監視しながら、高い半サイクルの持続時間を延長する。コントローラは、Vsense波形20が半サイクルの終わりにより定常状態に達したことを同コントローラが検出するまで、電圧信号の周波数を低下させ続けることができる。一実施形態では、定常状態は、半サイクルの終わりでの最終電圧V3の所定の割合よりも大きい半サイクルの中央でのVsense電圧V7として定義することができる。一実施形態では、Vsense波形20は、V7がV3の約75%よりも大きいときに定常状態に達している。別の実施形態では、Vsense波形20は、V7がV3の約90%よりも大きいときに定常状態に達している。あるいは、Vsense波形20は、V3の変化率が所定の閾値よりも小さい場合に定常状態に到達したと宣言することができる。
代替的に、コントローラは、低周波数値で周波数サーチを開始し、Vsense波形20が半サイクルの終わりにより、もはや定常状態ではなくなるまで周波数を上昇させることができる。
コントローラは、治療の開始時にバイナリ制御信号131、144の容量排除周波数を決定し、その後、残りの治療を通してその周波数を使用することができる。容量排除周波数の決定は、所定量の血液が圧送された後、または所定数の血液ポンプ行程が生じた後に行われてもよい。
別の実施形態では、容量排除周波数は、動脈血回路配管108および静脈カテーテル配管コネクタ128(図40)のワイヤ間の容量が変化しないことを保証するために定期的に決定されてもよい。一実施形態では、容量排除周波数は、血液ポンプの50行程ごとに決定される。
一実施形態では、バイナリ電圧信号の非アクティブ期間を延長して、図37の回路からの電流漏れを制限することができる。アクティブ期間は短い持続時間を有することができ、回路が比較的長い期間にわたってオフにされる数サイクルだけを含む。例えば、アクティブ期間は420マイクロ秒の持続時間を有する6つのパルスからなり、アクティブ期間は80ミリ秒毎に発生する。
血管切断検出器
上述したもののような伝導度測定回路を適切に変更することにより、血液の伝導度および伝導度の変化を検出することができる。より詳細には、ある体積の血液の伝導度において空気がその体積に入るときに発生する変化を検出することができる。この状況は、たとえば、血管内アクセス部位が体外血液回路内で外れた場合に発生する可能性がある。
図37に示す回路を用いて、伝導度セルまたは管路1におけるある体積の流体の抵抗を測定することができる。ある体積の透析溶液の抵抗または伝導度を表す伝導度セル1のRxを測定する場合、基準抵抗器Rref 4の好都合な値は、およそ680オームであるように選択することができる。第1のカニューレまたは針から動静脈ろうを通って第2のカニューレまたは針まで延在する血液のカラムの抵抗または伝導度を表す管路1のRxを測定する場合、基準抵抗器Rref 4の好都合な値は、およそ200kオームであるように選択することができる。
この回路を用いて血液または血漿等の体液のカラムの連続性をモニタリングする利点には、以下が挙げられる。すなわち、伝導度セルまたは管路1に対する容量結合が、端子VTAおよびVTBにおける電極のめっきおよび腐食をもたらす可能性がある直流電流を阻止し、患者の安全のために、電圧および電流レベルが非常に低くかつ分断され、測定が行われている間にのみ電流が短時間流れる。測定の合間には電流は流れない。
基準抵抗器Rref 4の低い方の値(たとえば680オーム)を用いて、この回路は、透析液伝導度測定に対して適切に構成される。基準抵抗器Rref 4のはるかに高い方の値(たとえば200kオーム)を用いて、この回路は、動静脈ろうから血管針が外れるのを検出するために動脈針と静脈針との間の抵抗を測定するのに適切に構成される。
電極配置
流体送出装置から患者の血管または血管グラフトに通じる流体カラムの連続性は、上述した電子回路を用いてモニタリングすることができる。送出されている流体は、血液、または透析流体を含む任意の電解液を含むことができる。以下の考察は血液透析システムを含むが、本発明の動作の同じ原理を、血管アクセスを通じて患者に流体を送出するように構成されたいかなる装置にも適用することができる。図40に示す実施形態では、血管透析機200の流体流回路100内のある体積の血液または他の流体の伝導度を、血液または他の流体と直接接触する、その体積の各端部の電極を用いて、電子的にモニタリングすることができる。図37に示すもののような電気回路を用いて、一方の電極をVTA端子に接続することができ、他方の電極を回路のVTB端子に接続することができる。回路によって電極に印加される電圧は、患者に対するいかなる損傷も防止するように、十分小さく(たとえば約4ボルト以下)、十分に短時間であり、十分に分断した直流電圧であり得る。本例では、動脈アクセス針102、動脈カテーテル配管104、動脈カテーテル配管コネクタ106、動脈血液回路配管108、血管回路配管108と血液透析機200との間の移行部110、血液ポンプ入口ライン112、血液ポンプ13、血液ポンプ出口ライン116、透析器14、透析器出口ライン120、エアトラップ122、血液透析機200と静脈血液回路配管126との間の移行部124、静脈カテーテル配管コネクタ128、静脈カテーテル配管130、静脈アクセス針132、および動脈アクセス針102と静脈アクセス針132との間に位置する患者の血管またはろう134の部分の内腔内体積を含む、流体流回路100が示されている。本明細書に記載する発明はまた、動脈アクセス針が患者の1つの血管内に存在する可能性があり、静脈アクセス針が、動脈アクセス部位から幾分か離れた別個の血管に存在する可能性がある状況も包含する。さらに、上述した回路を用いて、図40に示す静脈戻りラインを有していない流体送出システム内の血管アクセスの完全性をモニタリングすることができる。その場合、たとえば、位置Bにおける電極を、血管または血管グラフトにアクセスする第2の針またはカニューレと連通する行き止まり(dead−end)ラインの流体と接触する電極と対にすることができる。別の例では、血管セグメントにおける体内留置中空カニューレまたは中実トロカールに、導電性ワイヤを装備することができ、導電性ワイヤは、それにより、モニタリングシステムにおいて第2の電極としての役割を担うことができる。アクセスされている血管セグメントは、外科手術によって形成された動静脈ろうであってもよく、ゴアテックス(GoreTex)(登録商標)血管グラフト等の人工管路を含んでもよい。「動脈の」という用語は、本明細書では、血液を患者から離れて血液透析機200に向かって導く血流回路の部分を指すために用いられる。「静脈の」という用語は、血液を血液透析機200から離れて患者に向かって戻るように導く血流回路の部分を指すために用いられる。「アクセス針」という用語は、患者の血管セグメントまたはろうを貫通する針またはカテーテル装置を指すために用いられる。種々の実施形態において、それを、対応するカテーテル配管104、130に恒久的に融合させるかまたは可逆的に接続することができる。
流体流回路100の任意セグメントの連続性は、対象となる流体および血液含有セグメントの両側において2つの電極を流体と接触するように位置決めすることによってモニタリングすることができる。動脈アクセス針102または動脈カテーテル配管104または静脈アクセス針132または静脈カテーテル配管130の切断がないかモニタリングするために、1つの電極を、血流回路の静脈側の内腔と連続して配置することができ、第2の電極は、血流回路の動脈側の内腔に連続して配置される。一実施形態では、2つの電極は、透析機200にまたはその近くに配置することができ、1つの電極は血液ポンプ110の上流で血液と接触し、第2の電極は透析器14および/またはエアトラップ122の下流で血液と接触する。たとえば、電極は、遷移位置110および124に組み込むことができる。
別の実施形態では、電極のうちの一方は、流体流をアクセスされた血管または血管グラフトに送出するために用いられる機器(たとえば透析機)より血管アクセス部位134に近い点において、流体流回路100の流体と接触するように位置決めすることができる。好適な実施形態では、両電極は、透析機200に関連する機器より患者の血管または血管グラフトの近くに位置決めすることができる。これにより、透析機200に関連する電気的干渉をさらに低減することができる。電極Aは、動脈カテーテル配管コネクタ106にまたはその近くに好都合に配置することができ、第2の電極Bは、静脈カテーテル配管コネクタ128にまたはその近くに好都合に配置することができる。この構成において、第1の電極から患者の血管アクセスを通り第2の電極までの電気的導通経路は、透析機200に向かって戻るように延在する経路よりはるかに短く、すなわち、電気抵抗が低い。一実施形態では、アクセスカテーテル104および130は、約1フィート程度に短くすることができ、動脈配管108および静脈配管126は約6フィート長とすることができる。回路内の流体の導電特性のために、配管108および126を組み込んだ経路および透析機200の構成要素に関連する電気抵抗は、患者の血管またはろう134を通る経路に関連する電気抵抗より何倍も大きくすることができる。
よって、透析機200に関連する電気的干渉が低減し、アクセス関連の切断による電気抵抗の変化はより容易に検出することができる。好ましくは、電極AおよびBは、透析機から患者までの距離の50%を超えるように位置決めされる。より好ましくは(より好都合には)、電極AおよびBは、患者に達する前の最後の分離可能な流体接続の近くに配置される。血液透析システムの一実施形態では、血液配管108および126は長さがおよそ6フィートであり、動脈カテーテル配管104および静脈カテーテル配管130は、長さが約2フィート以下である。次いで、電極AおよびBに対して好都合な位置は、動脈血液回路チューブ108および静脈血液回路チューブ126を動脈カテーテルチューブ104および静脈カテーテルチューブ130に接続する動脈ラインコネクタ106および静脈ラインコネクタ128(たとえばルアー型コネクタまたはその変形であり得る)にある。
コネクタ電極
図41Aおよび図41Bに示すように、一実施形態では、血液透析システムの血液回路用の血液ラインコネクタは、コネクタの内腔内の液体と接触することができる電極を組み込むことができる。一態様では、電極は、たとえばコネクタ300等、任意の適切なコネクタのチューブ接続または近位端302に配置された環状導電キャップ310を備えることができる。電極は、好ましくは、たとえばステンレス鋼等、耐久性があり耐食性がある材料から構成される。コネクタ300の遠位連結端304は、たとえば、動脈または静脈カテーテルの対応するルアー型コネクタと封止係合するように構成することができる。キャップ310の内側環状表面312は(部分的にまたは全体として)、コネクタの内腔314内に存在する液体と接触することができる。図41Bに示すように、コネクタとコネクタに装着された任意の可撓管との間の流体密封接続を維持するために、キャップ電極310とコネクタの近位端302との間にOリング316または適切な封止材を配置することができる。
血液透析システム、または血液担持構成要素が加熱流体を用いて消毒または滅菌される他の体外システムにおいて、エラストマOリングが特に有用であり得る。コネクタのプラスチック構成要素の熱膨張率は、組み込まれた金属電極と大幅に異なる可能性があり、そのため1回以上の滅菌または消毒処置の後に恒久的な封止が維持されない可能性がある。電極と電極が配置されるコネクタ座部との間の接合部にOリング等のエラストマ構成要素を追加することによって、電極とコネクタとの間の異なる膨張および収縮率に適応することにより、封止を維持することができる。
図42に示すように、一実施形態では、導電性電極310(たとえばステンレス鋼から構成される)をコネクタ300の一部に(その近位端302にまたはもしくはその遠位接続端304に)組み込むことができ、コネクタ300のその部分の上に、可撓管318の端部を配置することができる。本実施形態では、電極310は概して円柱状であり、電極310の外側表面への可撓管318のセグメントの端部のより容易な滑り嵌合装着を可能にするように、近位端にテーパ状部320を有する。図42に示すように、電極310の内側表面は内部棚状突起322を有し、それにより、電極キャップ310はコネクタ300の近位端302の上を滑動しかつそれに当接することができる。コネクタ300は、金属またはより典型的にはプラスチック材料を含む任意の適切な硬質材料から構成することができる。棚状突起322は、電極310のより径の小さい方の内面312が、コネクタ300の内腔314を通過する液体(たとえば血液)と接触するように適切に位置決めされるのを確実にするために役立つ。コネクタ300と電極310との間の接続および電極310と上に重なる可撓管318の終端部との間の接続は、構成要素の組成と適合性がある任意の適切な接着剤を用いて気密にまたは恒久的にすることができる。
コネクタと電極との間の血液の漏れを防止するようにより確実な封止を確保するために、および血液成分が移動して留まる可能性がある電極の下の領域を制限するために、電極310の内面の電極内部棚状突起320の近くにOリング316を組み込むことができる。これは、図42において拡大した詳細に示されている。本例では、Oリング316は、ステンレス鋼電極310とコネクタ300の遠位端302との間を封止する。可撓管318の伸張端をコネクタ300の近端302の上に保持するために、コネクタ設計にコネクタ300の近位端302の突刺要素324を組み込むことができる。一実施形態では、電極310は、電極310およびコネクタ300の突刺324両方の上に伸張する可撓チューブの部分によって適所に保持される。
電極310の外面にワイヤ326をはんだ付けし、溶接し、または他の方法で固定することができ、ワイヤ326は、コネクタ300に沿ってより遠位に出るまで、上に重なる伸張配管318の下を進むことができる。よって、ワイヤは、内面312が内腔内流体(たとえば血液)と接触する際に電極310におよび電極310から電気信号を伝えることができる。図示する例では、ワイヤ326は電極310の遠位部にはんだ付けされ、配管318下を移動して、コネクタ300の対応するストッパ326との配管318の当接部で現れる。
図43A〜図43Cに示すような別の実施形態では、米国特許出願公開第2010/0056975号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなコネクタ400が、コネクタ400の中央部406が電極を組み込むことができるように変更されている。コネクタ400の中央部406に沿って電極を配置することにより、コネクタの遠位連結端404を変更する必要がなくなり、可撓管の終端部とコネクタの近位端402との間の相互作用のいかなる変更もなくなる。本例では、血液ラインコネクタ400は、その遠位連結端404に、患者アクセスラインのルアー型コネクタ用の雌ネジ型接続部405と、透析システムの血液担持構成要素を通るプライミングおよび消毒流体の再循環用の透析機ポートとの外部圧入型接続部407とを含む、2つの異なるタイプの封止接続を行うように構成される。圧入機構407は、コネクタ400の遠位端404の外側表面に円錐台形状を有して形成され、ルアー適合ネジ型機構405は、コネクタ400の遠位端404の対応する内側表面に形成される。円錐台部材の外側表面は、透析機200または他の装置の嵌合コネクタの座部と封止係合するように構成される。コネクタ400の遠位連結端404から近位方向に延在する一対の係止アーム408が、各々、透析機の嵌合コネクタの対応する係止機構と係合する有刺部409と、有刺部409を透析機から取り外すことを補助する指窪み部410とを有することができる。有刺部409は、圧入型の接続を行うときに透析機のその嵌合コネクタと封止係合する円錐台状部材を係止するのに役立つ。係止アームの遠位端は、コネクタ400の円錐台部407の近位に位置するフランジ411を通じてコネクタに付着するように構成することができる。コネクタ400は、可撓チューブと封止係合する近位配管装着端402を有する。配管装着端402は、可撓チューブの端部がコネクタ400から外れるのを防止するのに役立つ1つまたは複数の突刺機構412を有することができる。
図43Bは、コネクタ400の内腔と直接連通する電極の配置を可能にすることができるアクセス機構またはポート420を見えるようにする、コネクタ400の側面図を示す。他の実施形態では、アクセス機構は、鋭利なまたは鈍い針を備えたシリンジを用いてコネクタ400の内腔414内からの流体のサンプリングを可能にするように、エラストマストッパ(隔膜ありまたはなし)を収容することができる。または、機構は、別の流体ラインのコネクタ400の内腔414への接続を可能にするポートとしての役割を担うことができる。
さらに別の実施形態では、図43Cの断面図に示すように、コネクタ400の中間部406は2つのアクセスポートを有することができる。流体アクセスポート420aはサンプリングポートとしての役割を担うことができ、電極ポート420bは電極クレードルとしての役割を担うことができる。サンプリングポート420a内のエラストマストッパ422は、コネクタ400の内腔414まで延在するような形状とすることができ、気密封止を維持しながら同時に針による内腔414内の流体のサンプリングを可能にする。または、隔膜付きキャップまたは封を有するルアー型コネクタをポートに組み込むことができ、ポートは、嵌合するルアー型コネクタを有するシリンジまたはカテーテルと接続することができる。電極ポート420bが電極424用の座部またはクレードルとしての役割を担うことができる。それは、適所に圧入するかまたはセメント接合し、接着剤を用いて、または図示するようにOリング416を用いて封止することができる。ワイヤ426を、電極424の外面にはんだ付けし、溶接し、または他の方法で固定することができ、ワイヤ426は、コネクタ400が装着される動脈配管108または静脈配管126により透析機200に向かって近位方向に進むことができる。
上記電極実施形態のいずれにおいても、コネクタ300、400またはその変形を通過する流体の温度を測定するさらなる目的のために、電極を、適切に寸法が決められたサーミスタ、またはサーミスタおよび導電体の組合せと置き換えることができる。
ワイヤアセンブリ
一実施形態では、コネクタ106、128の一対の電極(1つは血流回路の動脈側にあり1つは静脈側にある)にまたはそこから電気信号を搬送するワイヤは、別個に、血液配管108、126から離れて透析機200に向かって戻るように進むことができ、透析機200では、最終的に終端し図37に示す伝導度回路等の伝導度検出回路に接続する。次いで、伝導度回路は、アクセス切断に一貫する流体伝導度の変化が発生したか否かを判定するために、透析機のプロセッサに対して適切に構成された信号を提供する。流体伝導度の変化が発生した場合、プロセッサは、警報状態をトリガすることができ、または血液ポンプ13の停止を開始し、たとえば血液配管108および/または126の機械的閉鎖をトリガすることができる。
透析機と患者との間において合わせてまたは別個に延在するワイヤには、もつれるか、破断するか、または切断されるという危険がある。したがって、好ましくは、各ワイヤ326または426は、その関連する配管108、128に装着するか、融合させるか、または他の方法で組み込むことができる。ワイヤをその関連する配管に組み込むことは、ワイヤおよび接続部を保護し、患者と透析装置との間のインタフェースを簡略化する好都合な方法を提供する。これを達成する例示的な方法を図44A〜44Dに示す。好適な実施形態では、配管は、押出処理で形成することができる可撓材料(たとえばシリコーン)から構成される。図44Aに示すように、可撓管のファイバ補強と同様に、形成され押し出される際の可撓シリコーン配管に目の粗いワイヤメッシュを埋め込むことができる。図41Aに示すように、ファイバ補強チューブの構成に類似する方法で、押出中に可撓管502の壁内にワイヤメッシュ500を埋め込むことができる。図44Bに示すように、二次押出し処理中、または2つの構造体がたとえば接着剤で接合される処理中に、その隣接する配管506の外側表面に絶縁ワイヤ504を接合することができる。図44Cに示すように、配管材料508の二次同軸層を製造する二次押出しを行って、一次押出し後の配管の外側表面に沿って伸びるワイヤを捕捉することができる。図44Dに示すように、成形中の配管502を、配管の壁に埋め込まれたワイヤ504と共押出しすることもできる。
上記方法のうちのいくつかでは、結果としてのチューブ−ワイヤ組合せは、ワイヤと配管のシリコーン材料との間の熱膨張率が異なるため、ねじれる傾向がある可能性がある。材料が押出し後に冷える際、シリコーンは埋め込まれたワイヤを堅く捕捉する可能性があり、それにより冷えたチューブ−ワイヤ束がねじれる。好適な実施形態では、押出ダイのワイヤ内腔は、埋め込まれるワイヤの断面積より著しく大きい断面積に適応するのに十分大きいように構成される。次いで、シリコーンが冷える際、ワイヤを包囲する通路は、ワイヤを堅く収容する包み込む程度まで収縮しない。絶縁ワイヤを組み込んだ共押出処理は、図45に示すようなチューブ−ワイヤ束を生成することができる。本例では、可撓管502は、流体搬送内腔601とワイヤ搬送内腔602との共押出品である。好ましくは、ワイヤ501は可撓性および耐久性のために多重より線であり、たとえばPTFE等の耐久性のある可撓合成絶縁材料503でコーティングされるかまたは被覆される。より線ワイヤ501のPTFE系シース503は、シリコーン配管押出処理に関連する高温に耐えることができ、それにより、透析機200または患者ラインコネクタ106、128のいずれかに接続するために最終的に配管を出るワイヤの部分504に沿って、その完全性が維持される。コーティングまたは被覆はまた、押出後および冷却中のワイヤ搬送内腔の側壁にワイヤが付着するのを防止するのに役立つことができる。別の実施形態では、シース503を省略し、ワイヤ301をワイヤ搬送内腔602の内側に露出させてもよい。図46は、例示的なコネクタ−ワイヤ−配管アセンブリの断面図を示す。二重内腔配管502の端部が装着されている、コネクタ400の近位配管接続端が示されている。流体搬送内腔601は、コネクタ400の近位端に圧入および/またはセメント接合され、コネクタ400の中心内腔414を通る流体流を可能にする。より線ワイヤ501は、電極424にはんだ付けされるかまたは他の方法で装着され、電極424は、コネクタ400の内腔414内に存在する流体と導電接触する。配管502の外側を通るワイヤ501の非接続部分は、好ましくは、たとえばPTFE等の絶縁合成コーティングで被覆される。任意に、露出したワイヤおよび被覆されたワイヤ両方のこの部分は、RTV等の封止材で封止することもできる。被覆されたワイヤ503は、コネクタ400へのその終端部の近くで配管502のワイヤ搬送内腔602に入る。次いで、ワイヤ/配管束は、透析機200に向かって進み、透析機200において、ワイヤは、図37に示すもののような伝導度回路に接続するために配管から現れる。
図47は、図48に示すような血液透析装置220において着脱可能な交換可能ユニットとして使用することができる例示的な体外回路210を示す。本実施形態では、体外回路は、血液ポンプカセット13、透析器14、静脈戻りエアトラップ122、動脈血液配管108、静脈血液配管126、動脈カテーテルコネクタ106および静脈カテーテルコネクタ128を備える。動脈コネクタ106および静脈コネクタ128は、図41Aおよび41Bに示すコネクタ300と同様のタイプであってもよく、または図43A〜43Cに示すコネクタ400と同様にタイプであってもよく、またはその変形であってもよい。動脈血液チューブ108および静脈血液チューブ126は、図44A〜44Dまたは図45に示すタイプとすることができる。コネクタ106および128の電極への端子接続を形成するワイヤは、セグメント504Aおよび504Bとして動脈チューブ108および静脈チューブ126から出てコネクタと接続し、コネクタは、最終的にその接続を、透析装置において図37に示すもののような伝導度回路に関連する端子に渡す。図示する実施形態では、コネクタ526は、血液ポンプ13およびエアトラップ122用の支持構造214に搭載される。図47に示すセグメント504A、504Bは、絶縁されていてもよい。別の例では、セグメント504A、504Bは露出しているが、底部プレート1001(図20A)に連結するシールド1004(図20A)で覆われていてもよい。動脈チューブおよび静脈チューブ108、126内のワイヤ501の配置および動脈チューブ108の静脈チューブ126に対する相対的な位置は、各管108、126内のワイヤ501間に容量性コンダクタンスを生成することができる。この容量性コンダクタンスは、端子VTAとVTB3(図37)との間の付加的な導電経路として機能し、カテーテル管104、130およびろう134(図40)の血液柱を通る純粋に抵抗性のインピーダンスと並列に機能する。動脈チューブ108および静脈チューブ126内のワイヤ501間の容量性コンダクタンスは、管の間の距離によって変化する。図37と同様の回路で行われたVsense測定は、動脈チューブ108及び静脈チューブ126内のワイヤ501間のキャパシタンスを飽和させるのに十分低いバイナリ電圧信号131、144の周波数を選択することによって、動脈チューブ108および静脈チューブ126の位置に対して非感受性にすることができる。例示的な実施形態では、バイナリ電圧信号は、周期的なアクティブフェーズの間、約2174Hzの周波数で50%のデューティサイクルでそれぞれ動作される。アクティブフェーズは、80ミリ秒毎に発生するように設定することができる。
図48は、図47に示す体外回路210を受け入れるように構成される例示的な血液透析装置220を示す。本例では、透析器14は、装置220にすでに搭載されている。基礎部227が、嵌合する血液ポンプカセット13の制御ポートを受け入れる。レースウェイまたはトラック225のセットが、延出して患者に接続されていないときに動脈血液チューブ108および静脈血液チューブ126の対を編成するのに役立つ。コネクタ224が、ワイヤセグメント504Aおよび504Bとコネクタ526との間で形成された接続を受け取り、図1に示すもののような伝導度回路の端子接続部に渡す。配管閉鎖部226が、エアトラップ122を出た後の静脈血液チューブ126と、血液ポンプカセット13に達した後の動脈血液チューブ108とを受け入れるように位置決めされる。閉鎖部226は、たとえば体外血流の停止を必要とする警報状態が発生したときいつでも、空気圧式にまたは電気機械的に作動させることができる。閉鎖部226のアームのセットを、可撓チューブの壁に対して回転し、その中の流体流を抑制するかまたは停止させるように構成することができる。よって、装置220内に設置されたコントローラは、図37と同様の伝導度回路から信号を受け取ることができ、その信号は、コネクタ106および128に設置された電極間の流体または血液のカラムの電気抵抗を表す。コネクタが、血液ポンプ13、透析器14およびエアトラップ122より患者の血管またはろう134に流体的にはるかに近接して位置決めされるため、血管またはろう134を通る流体路に関連する信号は、コネクタ106/128と患者の血管またはろう134との間の血液または流体のそのままのカラムと中断したカラムとを識別することができる。コントローラは、所定値を超えることが分かった、伝導度回路によって検出された電気抵抗に応答するようにプログラムすることができる。環境に応じて、その後、コントローラは、血液流のあり得る切断に対して患者に警告する警報をトリガすることができ、任意に、患者へのかつ患者からの体外流を停止するように閉鎖部226に命令することもできる。
切断検出回路の動作
図49は、上述し図37に示す切断検出回路を利用する試験結果を示す。この場合、米国特許出願公開第2009/0114582号明細書および同第2010/0056975号明細書(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)において開示されているものと同様の血液透析血液回路および装置が採用された。図47に示す体外回路210は、血液ポンプ13、透析器14、エアトラップ122、静脈血液回路配管126および動脈血液回路配管108を備える。体外回路210は、図48に示すものと同様の血液透析装置220に嵌合する。試験される血流回路は、図47に示す血液ポンプカセット13に配置された一対の膜ベース血液ポンプと、透析器14と、静脈戻りエアトラップ122と、動脈血液配管セット108と、静脈血液配管セット126と、動脈コネクタ106および静脈コネクタ128と、図40に示すような血管アクセス針102、132に接続されたカテーテル配管セット104、130とを備えていた。針102、132は、抗凝固処置されたウシの血液を保持する容器に配置された。血液配管セット108および126は、およそ6フィート長であり、カテーテル配管セット104および130はおよそ2フィート長以下であった。針は、交互に、血流中に容器に配置されるかまたは容器から引き出されて、ろうまたは血管からの針の切断をシミュレートした。図49における期間A、CおよびFは、針が容器内の血液に浸漬された時間を表す。これらの期間中に図37に示す切断検出回路によって測定された電気抵抗は、平均して120,000オームと130,000オームとの間であった。図49の期間BおよびEは、静脈戻り針132(血液ポンプからの正圧下)が容器内の血液の表面の数センチメートル上方から引き抜かれ、血液が静脈戻り針を出て下方の血液の容器に入る際に空気と混合した血液の流れを形成する時間を表す。これらの期間中に測定された電気抵抗は、平均して140,000オームと150,000オームとの間であった。期間Dは、針のうちの1つが容器から完全に取り除かれ、完全に開放した電気回路を生成する時間を表す。この期間中に測定された電気抵抗は、平均して約160,000オームと180,000オームとの間であった。よって、コントローラは、血液の中断しない流れと中断した流れとの間の電気回路のモニタリングされた抵抗の差を識別するように容易にプログラムすることができる。これらの結果により、動脈針102と静脈針132との間の血液の連続性の中断により、外部血液回路の血液処理構成要素13、14および122より動脈および静脈アクセス部位の方に比較的近接して配置された場合の2つの電極の間において、測定された電気抵抗の検出可能な変化を確実にもたらすことができることが分かった。さらに、(空気を通る血液の流れのように)血流の連続性の部分的な中断さえも、測定された電気抵抗の変化がわずかであっても、確実に検出することができる。
ADSアルゴリズム
アクセス切断センサ(ADS)の動作は、図40、48を参照することによってさらに理解され得る。血液透析装置220(図48)内に設置されたコントローラは、アクセス遮断を検出すると血液の損失を最小限に抑えるために、閉鎖部226の位置およびベースユニット227を通る血液ポンプの動作を制御することができる。ここで図40を参照すると、アクセス切断または針の脱落は、静脈針132または動脈針102のいずれかが血管アクセス部位から除去された場合、またはいずれかが血管アクセス部位から部分的に外れた場合、またはいずれかが血管アクセス部位へのまたは血管アクセス部位からの流体流へのまたは流体流からの妨害を生じている場合に起こると考えられる。より一般的には、「アクセス切断(access disconnect)」という用語の使用は、第1のカテーテル(またはカニューレ)から、血管アクセスを含む血管またはろうを通って第2のカテーテル(またはカニューレ)までの流体経路内の2つの電極間の電気インピーダンスまたは伝導度が、以下に説明する検出アルゴリズムによって変更されていた任意の状態を含むものと理解される。血管アクセス部位は、静脈またはろうまたはシャント134を指し、同部位において、透析装置200からの針102、132またはカテーテルが患者の血液にアクセスするために体内に入る。静脈針または動脈針102、132のいずれかの血管アクセス部位からの除去は、針102、132を覆うように適用されたテープの緩み、または針の近位側の配管、患者の身体または四肢の運動時に不注意にライン104、108、126、または130を引っ張ること、若しくは血管アクセス部位から針102、132またはカテーテルを取り外すための患者による動作、等を含むがこれに限定されない多くの作用から生じ得る。
コントローラは、図37と同様の伝導度回路の信号、血液ポンプの動作を監視する1つまたは複数のセンサからの圧力情報、または血液ポンプのバルブの命令された位置およびコントローラにより命令されたポンプ動作、を含むがこれに限定されない1つ以上の入力に基づいてアクセス切断を検出することができる。図37に示すものと同様の伝導度回路であって、上述したように患者に接続された伝導度回路からのデータ出力信号は、アクセス切断センサ(Access Disconnect Sensor)信号またはADS信号と呼ぶことができる。一実施形態では、ADS信号は、図40に示されるコネクタ106、128内のプローブ間の電気インピーダンスである。別の実施形態では、ADS信号は、図37のデータ出力信号のフィルタリングされた値であるか、或いは図40のコネクタ106、128内のプローブ間の測定された電気インピーダンスである。他の電気量は、測定された電気インピーダンスまたはADS信号から計算することができ、限定されないが、種々の時定数でのインピーダンスのフィルタリングされた値;インピーダンスの時間微分:インピーダンスの平均値、ピーク値、データの移動ウィンドウ上のピーク値、データの移動ウィンドウ上の最小値、またはデータの移動ウィンドウ上の平均値を含む。
再び図40を参照すると、一実施形態では、針の脱落またはアクセス切断を検出すると、コントローラはフリーズ状態を命令し、血液ポンプ血液13を停止させ、および/または閉鎖部226を閉じて患者に通知する。アクセス切断の場合、コントローラは、患者またはユーザに、針102および132の状態および/または位置を確認するように通知する。これが完了すると、患者は、治療を再開するか、または治療を中止するかの選択肢を与えられ得る。針が適切に配置されていることを確認すると、患者は治療を再開することが可能となる。患者が治療を再開することを選択した場合、コントローラは、閉鎖部226を開き、必要に応じて血液ポンプ13および血液透析装置220の他の構成要素を再起動して治療を再開する。患者が血管アクセスを再確立せずに治療を終了することを選択した場合、コントローラは患者に装置を取り外すよう指示し、コントローラは体外回路100内の血液を患者に戻さずに治療手順の終了を開始するであろう。一実施形態では、コントローラは、制御インタフェース55(図7)を介して患者と通信することができる。
一例では、コントローラは、本明細書においてはADSアルゴリズムと称されるソフトウェアサブルーチンまたは機能を実行し、同ADSアルゴリズムはADS信号および他のセンサまたはコントローラ内の他のソフトウェアコンポーネントによって生成される他の入力に基づいてアクセス切断を識別する。コントローラは、ADSアルゴリズムからのアクセス切断信号を受信すると、血液ポンプ、閉鎖部および/または制御インタフェースを制御して血液損失を最小限に抑え、患者が血液透析機械200のための次の動作を選択できるようにするであろう。他の実施形態において、別体の機械レベルコントローラは、ADS信号を追跡および/またはフィルタリングし、信号閾値、タイミングまたはポンプ行程カウンタ、フラグまたはトリガ事象を設定し、必要に応じて1つまたは複数のトリガ信号をより高いレベルのコントローラ(例えば、治療コントローラおよび/またはユーザインターフェースコントローラ)に転送して、ポンプ動作の停止、血液ラインの閉鎖、ユーザ通知、またはユーザ命令を開始するべくプログラム化されていてもよい。
上述のように、アクセス切断は、プローブ間の導電経路を遮断し、高いADS信号を生成するであろう。ADSアルゴリズムは、好ましくは、ADS信号に基づいてアクセス切断を識別し、様々な非脱落事象に起因する他の高ADS信号を無視する。ここで図40を参照すると、非脱落事象は、限定されるものではないが、針ライン104、130のいずれかの気泡、ねじれた、挟まれたまたは閉鎖した針ライン104、130、2つの針102、132の間で静脈が圧縮されること、または患者を電気的に接地すること、を含む。ADSアルゴリズムは、偽のADS信号と、コントローラから受信したADS信号および他の情報を処理する1つまたは複数のソフトウェアサブルーチン、機能またはクラスを介してアクセス切断を表している可能性の高いものとを区別することができる。次に、コントローラソフトウェア内の高次関数は、血液の損失を最小限に抑えるために血液ポンプ、閉鎖部および/または制御インタフェースを制御し、患者が血液透析機械200の次の動作を選択できるようにすることができる。
ADSアルゴリズムは、治療中のヘマトクリットレベルの変化、日ごとの及び患者ごとのヘマトクリットレベルの変化、患者の特徴の相違または使用される針のタイプに起因する静脈、ろうまたはアクセスにおける相違、を含むがそれらに限定されないADS信号を変化させ得る種々の物理的条件には無関係であることが好ましい。ADSアルゴリズムは、そのような変化に起因する偽の針脱落信号を拒絶することが好ましい。ADSアルゴリズムは、針の脱落を検出し、1つ以上の多段階法を用いて高いADS信号を引き起こす他の事象を区別することができる。ADSアルゴリズムの一実施形態は、静脈ライン上のプローブと動脈ライン上のプローブとの間の測定された電気インピーダンスから導かれる第1の値であって、第1の閾値を超える第1の値に基づいて針の切断の可能性が認識され、カウンタの開始をトリガする第1のステップを含む。第2のステップでは、測定されたインピーダンスから導かれる第2の値は、カウンタが増分されるときに監視される。第2の導出された値が第2の閾値を下回った場合、カウンタは停止される。第3のステップでは、カウンタが第3の閾値に達し、かつ第2の導出された値が第2の閾値を上回ったままである場合、針の脱落またはアクセス切断が宣言される。
代替的な実施形態では、多段階ADSアルゴリズムは、以下のステップを含むことができる。第1のステップでは、静脈ライン上のプローブと動脈ライン上のプローブとの間の測定された電気インピーダンスから導出された第1の値に基づいて針の切断の可能性が認識される。第1の値が第1の閾値を超えるかまたは第1の閾値と交差すると、カウンタが開始される。第2のステップでは、測定されたインピーダンスから導かれる第2の値が、カウンタが増分されるときに監視される。第2の導出された値が第2の閾値を下回るかまたは第2の閾値と交差した場合、カウンタは停止される。第3のステップでは、カウンタが第3の閾値に達し、第2の導出された値が第2の閾値と交差していなければ、閉鎖が宣言され、血液ラインが閉鎖される。第4のステップでは、測定された電気的インピーダンスから導出された第3の値が第4の所定の閾値と交差する場合、閉鎖宣言は針の脱落宣言に置き換えられる。
代替的な実施形態では、多段階ADSアルゴリズムは、以下のステップを含むことができる。第1のステップでは、静脈ライン上のプローブと動脈ライン上のプローブとの間の測定された電気インピーダンスから導き出された第1の値であって、第1の閾値を超えるか第1の閾値と交差する第1の値に基づいて、針の切断の可能性が認識される。第2のステップでは、測定されたインピーダンスから導かれる第2の値が、カウンタが増分されるときに監視される。第2の導出された値が第2の閾値を下回るかまたは第2の閾値と交差する場合、カウンタは停止される。第3のステップでは、第2の値が第2の閾値と交差する場合、血液ポンプを一時停止し、血液を送達するポンプチャンバからの出口バルブを除いてすべてのバルブを閉じる。そのポンプチャンバは完全に送達され、次いで送出圧力はほぼ大気圧に低下される。第4のステップでは、静脈ライン上のプローブと動脈ライン上のプローブとの間の測定された電気インピーダンスに由来する第3の値が、第1の閾値に関連する第3の閾値を超えるか第3の閾値と交差する場合に、針の脱落またはアクセスの切断が宣言される。
ADSアルゴリズムは、いくつかの方法で実装され得る。図62乃至64にプロットされた試験データを参照して実施形態を説明する。これらの試験では、静脈針および動脈針を共通のウシ血液ビーカーに入れ、シミュレートされた透析療法を開始した。図62は、静脈ラインが数秒間閉鎖され、その後閉鎖されていない試験であって、一時的にADS信号レベルを上昇させた試験の結果をプロットしたものである。図63は、針の切断をシミュレートして、静脈ラインがビーカーから取り外された試験の結果をプロットしたものである。図62は、ADS関連の信号、血液ポンプ圧、およびADSアルゴリズムにおける計算の一部であり得るソフトウェアフラグのプロットを示す。図62のプロットの上部は、ADS信号および複数の導出信号を、ADSアルゴリズムで使用される閾値とともにプロットしたものである。信号はkオームの抵抗単位でプロットされている。1つまたは複数のソフトウェアフラグの状態が図62のプロットの底部にグラフ表示されている。ソフトウェアフラグはメモリに格納されたバイナリ値またはブール値であり、オフまたはオンのいずれかであり、それぞれ0または1に等しいものとして表すことができる。血液圧送圧力(mmHg)は、図62のソフトウェアフラグのプロットとADS導出信号との間に位置している。この例では、2つの血液ポンプは、陰圧を印加することにより動脈ラインから血液を引き出すことと、陽圧を適用することによって静脈ラインに血液を送達することとを交互に行っている。第1の血液ポンプの圧力は、mmHgの単位で太線1232としてプロットされている。第2の血液ポンプの圧力は、mmHgの単位で細い線1234としてプロットされている。ほぼ垂直な線は、各血液ポンプポッドの行程の終わりを表す。ADS信号、圧送圧力およびフラグは、測定値の指数(index)に対してプロットされている。プロットされた例では、指数は20Hzで更新されるため、水平軸値は値を20で割ることで時間単位の秒に変換できる。
図62において、ADS信号1210は、時間要素1236で約135Kオームから約180Kオームの値まで急激に上昇する。ADS信号1210は時間要素1238で約130に戻る。
一実施形態では、ADSアルゴリズムは、ADS信号1210が第1の所定の閾値1211と交差するときにカウンタを開始し、ADS信号が第2の所定の閾値1213と交差するまでカウンタを増分し続ける。カウンタが所定の値に達した場合、ADSアルゴリズムはアクセス切断を宣言する。ADS信号が第2の閾値1213と交差するか、またはアクセス切断が宣言されたとき、カウンタはゼロにリセットされてもよい。一例では、カウンタは時間によって増分され、ADSアルゴリズムは、カウンタが所定の時間量を超えたときにアクセス切断を宣言する。別の例では、カウンタは血液量によって増分され、ADSアルゴリズムは、カウンタが所定の血液量を超えたときにアクセス切断を宣言する。別の例では、カウンタは、血液ポンプ行程によって増分され、ADSアルゴリズムは、カウンタが所定の血液ポンプ行程数を超えたときに、アクセス切断を宣言する。一例では、ADSコントローラは、ADS信号が180Kオームを超え、複数回の血液ポンプ行程の間、または例えば3回以上の血液ポンプ行程が完了したときに175Kオームを超えたままである場合、針の脱落を宣言する。
アクセス切断信号をトリガしない高ADS事象の一例を図62に示す。同図62において、血液ポンプの動作がポンプ圧1232、1234によって示されている。時間要素1236でADS信号1210が第1の閾値1211を超えた後に1つの血液ポンプ行程が完了し、第2の血液ポンプ行程が開始されるが、時間要素1238においてADS信号1210が第2の所定の閾値1213を下回る前に完了しない。
アクセス切断信号をトリガする高ADS事象の一例を図63に示す。同図63において、ADS信号が時間要素1236で第1の閾値1211を超えている。3つの血液ポンプ行程が、ポンプ圧力1232、1234によって証明されるように組み合わせられた両方のポンプによって時間要素1239によって完了され、その時点で、アクセス切断信号1220は、ADSアルゴリズムによってトリガされる。アクセス切断信号をトリガすると、コントローラは「凍結(frozen)」フラグ1225を設定し、凍結状態に入り、その間に血液ポンプが停止され、閉鎖部が閉じられる(すなわち、流体ラインを閉鎖する)。(上述したように、これらの機能は、複数のソフトウェアベースのサブルーチンを使用する単一の物理コントローラによって実行されてもよく、またはフラグまたはカウンタによってトリガされる機能を調整するために相互作用する2つ以上の物理コントローラによって実行されてもよい。)閉鎖部を直ちに閉めることができ、コントローラは、ポンプ動作の再開時に血液ポンプが現在の行程を再開できるようにパーセント行程完了時間を記録することができる。時間要素1245において、ユーザは、1230としてプロットされた治療の再開を命令し、それは、閉鎖部を開き、血液ポンプを再始動するようにコントローラに命令するものである。
一実施形態では、ADSアルゴリズムは、「凍結」フラグが設定されている間、および血液ポンプが静脈ラインまたは動脈ラインを通って血液または他の流体を移動していないときにADS信号を無視するようにコントローラをプログラミングするステップを含むことができる。
別の実施形態では、ADSアルゴリズムは、ADS信号に基づいて暫定切断フラグを設定し、カウンタを開始し、カウンタが所定値に達する前に暫定フラグがクリアされない場合にアクセス切断を宣言する。上述したように、一例におけるカウンタは時間を増分させることができ、所定の値は時間の期間である。別の例では、カウンタは血流を測定し、所定の値は圧送された血液量である。別の例では、カウンタは血液ポンプ行程を増分し、所定の値は血液ポンプ行程数である。一例では、ADSアルゴリズムは、ADS信号が第1の所定の閾値を超える場合に暫定フラグを設定する。例示的な実施形態では、その第1の閾値は、約180Kオームに設定される。ADSアルゴリズムは、ADS信号が第2の閾値を下回った場合に暫定フラグを除去またはクリアするであろう。例えば、第2の閾値は、約175Kオームに設定することができる。例示的な実施形態では、ADSアルゴリズムは、暫定フラグが3回以上の血液ポンプ行程の期間に設定されている場合には、システムまたはシステムコントローラ内のより高いソフトウェアレベルへのアクセス切断を宣言する(とはいえ、所望であれば、ポンプ行程の閾値数は別の数に設定することもできる)。
アクセス切断ではない高ADS信号事象に反応する暫定フラグを含む実施形態の一例が図62にプロットされている。暫定フラグ1218は、時間要素1236においてADS信号1210が第1の閾値1211を超えるときに時間要素1236にて設定される。時間要素1238では、ADS信号1218が第2の閾値1213を下回ったときに暫定フラグ1218がクリアされる。アクセス切断は、図2のADSアルゴリズムによって通知されない。これは、3回の血液ポンプ行程が完了する前に暫定フラグ1218がクリアされたためである。
暫定フラグを含むこの同じ実施形態を実際のアクセス切断に適用すると、図63に示すプロットが得られる。時間要素1236において、暫定フラグは、ADS信号1210が第1の閾値1211を超えるときに設定される.ADS信号1210は第2の閾値1213の上にとどまり、暫定フラグ1218は、血液ポンプ圧1232、1234によってプロットされるように、組み合わせられたポンプによる3つの完了した行程を表す時間にわたり設定したままとなる。時間要素1239にて第3の行程の完了時に、ADSアルゴリズムはアクセス切断を通知し、切断フラグ1220を設定する。制御装置は、アクセス切断信号を受信すると、「凍結」フラグ1225を設定して凍結状態に入り、その間に血液ポンプが停止され、閉鎖部が閉じられる。閉鎖部は閉じられ、ポンプを直ちに停止する、或いは、動脈ラインからの引き出しがポンプを再始動するための開始位置にあるために現在の行程を完了さることを可能にする場合、血液ポンプ。時間要素1245において、ユーザは、1230としてプロットされた再開を命令し、これはコントローラに閉鎖部を開き、血液ポンプを再始動するように命令するものである。
別の実施形態では、ADSアルゴリズムは、ADS信号がアクセス切断の場合に予想されるように急激な増加を示す場合に暫定フラグを設定し、暫定フラグが設定されている場合にADS信号が同ADS信号から計算された値を下回った場合に暫定フラグをクリアする。一例では、ADSアルゴリズムは、ADS信号の時間微分(time derivative)が第1の所定の値を超える場合に暫定フラグを設定する。この例では、暫定フラグがADS−entryとして設定されている場合、ADSアルゴリズムはADS信号を記録する。暫定フラグは、ADS信号がADS−entryの所定の機能であるADS−exitよりも下回った場合にのみクリアされる。更なる例では、暫定フラグは、ADS信号がADS−exit以下に低下し、ADS微分が第2の所定値よりも下回った場合にクリアされてもよい。
フィルタリングされていないADS信号データは、血管アクセス切断事象に起因する信号変化と他の事象(例えば、信号ノイズ、腕の動き、血液組成および伝導度の変動、治療の経過中の信号ドリフト、或いはカテーテルまたはろうの部位に発生する小さな閉塞など)との間において十分な識別を提供することができないかもしれない。ベースライン信号はまた、患者毎に変更してもよく、ろうまたはグラフトの解剖学的構造または質に依存していてもよく、または身体上のその位置に基づいて変更してもよい。好ましくは、アクセス切断アルゴリズムは、多数のこれらの変数に基づいて個別化パラメータを設定する必要はない。未処理の信号データを単にフィルタリングするだけでは、患者固有の変数とは無関係に信頼性が高くかつタイムリーに切断事象を検出する問題を解決するには不十分である可能性がある。より信頼性の高い検出アルゴリズムを提供するための1つのステップは、一時的な「ノイズ」事象による切断事象の誤った宣言を排除するための暫定フラグおよびタイマの使用を伴い得る。より長期的な変数がアルゴリズムに及ぼす影響に対処するには、信号データをそのフィルタリングされた対応物と比較することが有用であり得る。一実施形態では、未処理信号とそのフィルタリング処理された対応部分との間の差異が取られ、フィルタリングは、ベースライン信号の時間にわたって既存のバイアスまたはドリフトを隔離するのに十分である。代替的に、緩やかにフィルタリングされた信号は、第1の時定数でフィルタリングされた信号と第2のより長い時定数でフィルタリングされた信号との間の差である、同じ信号のより重くフィルタリングされたバージョンと比較することができる。2つの値の間に差があれば、トリガ事象を宣言できる閾値インピーダンスを設定することができる。閾値インピーダンス値は、より高度にフィルタリングされたバージョンの信号の値の変化に比例して変化するようにプログラムされていてもよい。2つの値の間の比率が取られれば、トリガ事象が宣言される閾値比を設定することができる。
再び図62及び63を参照すると、別の実施形態(デルタADSの実施形態として示される)において、ADSアルゴリズムは、異なる時定数でフィルタリングされたADS信号1210の2つのフィルタリングされた値を比較する。デルタADSの実施形態では、コントローラは、短い時定数でフィルタリングされた(軽度にフィルタリングされた)ADS値とより長い時定数でフィルタリングされた(より重くフィルタリングされた)ADS値との間の差を監視することによって、ADS信号の長期平均値と比較した場合のADS信号の急激な増加を探す。デルタADS実施形態では、コントローラは、針脱落またはアクセス切断事象の指示としてADS信号の急激な増加を評価する。デルタADSの実施形態は、患者毎、日毎、または治療中に変化するベースラインインピーダンスの差異に対してあまり敏感ではない可能性がある。ベースラインの電気インピーダンスは、異なるヘマトクリットレベル、異なる血管アクセス位置、および異なる針を含むが、これらに限定されない多くの理由により、治療方法毎に変化する可能性がある。ベースラインの電気インピーダンスは、針の位置の変化、ヘマトクリットレベルの変動、または他の様々な原因によって治療中に変化し得る。デルタADSの実施形態における閾値の少なくともいくつかは、ADS信号の絶対値またはベースライン値の変化(例えば、信号ドリフトまたは他の要因による)が偽陽性の検出値をトリガすることがより少なくなるように、フィルタリングされた値(slowADS、medADS)の間の差である。別の実施形態では、コントローラは、2つのフィルタリングされた値の間の比をとり、比における所定の値に基づいて暫定フラグを設定することができる。
ADSアルゴリズムのデルタADSの実施形態は、より速くフィルタリングされた(またはより軽くフィルタリングされた)ADS(medADS)1212と、より遅くフィルタリングされた(またはより重くフィルタリングされた)ADS値(slowADS)1214と、の間の差である値−デルタADS1216を計算する。暫定フラグ1218は、デルタADS値1216が第3の所定の閾値1215より大きい場合に設定される(第3の所定の閾値は、例えば、信号ドリフトがある場合、より遅くフィルタリングされたADS値が増加または減少する量に比例して上方または下方に調整可能である)。暫定フラグがmedADS−entry1212AおよびslowADS−entry1214Aとして設定された場合、medADS1212およびslowADS1214の値が記録されてもよい。ADS−exit値1217は、medADS−entry1212AおよびslowADS−entry1214Aの所定の関数として計算され得る。暫定フラグは、medADS値1212がADS−exit1217を下回った場合にクリアされる。1つの例では、(1)medADS値1212がADS−exit1217を下回った場合、そして(2)デルタADS1216が第4の所定の値(図示せず)よりも低い場合のみ、暫定フラグがクリアされる。
デルタADSの実施形態のいくつかの例では、slowADS値および/またはmedADS値は、特定のポンプ事象後にコントローラによってリセットされてもよい。slowADS値およびmedADS値は、検出を改善するために、および/または特定の状況におけるアクセス切断の誤検出を低減するためにリセットされてもよい。一例では、誤検出値を最小限に抑えるために、血液ポンプがフリーズ状態から再開するときはいつでも、medADS値はslowADS値と等しく設定される。
デルタADSの実施形態の別の例では、一時(Temp)切断状態の後、血液ポンプが動作を再開するとき、slowADS値およびMedADS値の両方がフィルタリングされていないADS値にリセットされる。一時切断状態では、ユーザは、BTSライン108、126(図40)を針ライン104、130から一時的に切断し、BTSライン108、126を互いに結合して、血液ポンプ13により血液が両方のBTSラインを通って流れるようにしてもよい。一時切断状態は、ユーザが針ライン104、130をBTSライン108、126に再接続した後に終了する。
デルタADS実施形態の更なる変形例では、針脱落の検出を改善するために、血液ポンプ13が動作している間にslowADS値をmedADS値にリセットすることができる。この実施形態の第1のステップは、medADSが上述のように所定の量だけslowADSより大きい場合、脱落の可能性を検出する。特定の状況では、ADS信号が急速に低下し、ADAD値がよりゆっくりと応答し、一時的にmedADS値よりも大きくなる。針の脱落の可能性を検出する能力を維持するために、ADSアルゴリズムのコントローラは、slowADS値がmedADSよりも所定量だけ大きい場合、slowADS値をmedADS値にリセットする。治療中の特定の状態では、ADS信号は安定したより高い値に急激にシフトすることがある。平均またはベースラインADS信号の急速で持続的なシフトは、アクセス切断の誤った検出の繰り返しを引き起こす可能性がある。一実施形態の一例では、アクセス切断または閉鎖の繰り返しの検出によって引き起こされるフリーズ状態の後に治療を再開するとき、slowADS値をmedADS値にリセットすることができる。1つの例では、slowADS値は、ユーザが同じ治療セッション内でアクセス切断または閉鎖の3回目の検出後に治療を再開することを選択したときにmedADSにリセットされる。
一例では、同じ治療セッション内での閉鎖の3回目の検出後に、ユーザが治療を再開することを選択した場合、slowADS値はmedADS値にリセットされる。この例では、BTSまたは針ラインの閉鎖によってフリーズ状態になった後に治療が再開される度に、閉鎖カウンタが増分される。閉鎖カウンタは、治療の開始時にゼロに設定され、ADSアルゴリズムの下のコントローラがアクセス切断を検出した場合、ゼロにリセットすることができる。また、slowADS値がmedADS値にリセットされると、カウンタもゼロにリセットされる。
ここで図62および図63を参照すると、一実装例では、medADS値1212は、1秒の時定数を有するADS信号1210の第1次フィルタリング値である。slowADS値1214は、20秒の時定数を有するADS信号1210の第1次フィルタリング値である。暫定フラグは、デルタADS1216が第3の所定値16Kオームを超えると設定される。例えば、ADS−exit1217は、7/8*medADS−entry+1/8*slowADS−entryと等しく設定することができる。暫定フラグをクリアするための第4の所定の閾値は、2Kオームに設定することができる。
アクセス切断ではない高ADS信号事象に反応するADS信号の2つのフィルタリングされた値を含む実施形態の一例が図62にプロットされている。暫定フラグ1218は、デルタADS1216が第3の閾値1215を超えたとき、時間要素1236にて設定されるが、3つの完全な行程がポンプ圧1232、1332によって示されるように発生する前に、medADS値1212がADS−exit値1217を下回る。
2つのフィルタリングされたADS値および暫定フラグを含むこの同じ実施形態を実際のアクセス切断に適用すると、図63に示すようなプロットが得られる。デルタADS1216は、時間要素1236で第3の閾値1215を超え、暫定フラグ1218が設定される。medADS値1212は、1232、1234によってプロットされるように、次の3回の血液ポンプ行程の完了によって高く維持される。時間要素1239における第3の行程の完了時に、ADSアルゴリズムはアクセス切断を通知し、切断フラグ1220を設定する。アクセス切断信号を受信すると、コントローラは、「凍結」フラグ1225を設定し、凍結状態に入り、その間、血液ポンプは停止され、閉鎖部が閉じられる。時間1245において、ユーザは1230としてプロットされた再開を命令し、それは、コントローラに閉鎖部を開き血液ポンプを再起動するように命令するものである。
一実施形態では、ADSアルゴリズムは、ADS信号が予め定められた期間よりも長い間、または所定量より多くの血液が圧送される間、または所定数より多くの血液ポンプ行程が発生する間、所定の低閾値を下回った場合、アクセス切断を宣言する。一例では、暫定フラグは、ADS信号が第1の低閾値を下回ったときに設定され、ADS信号が第2の低閾値を上回ったときにのみクリアされる。暫定フラグが所定の期間より長く設定されている場合、または所定量より多くの血液が圧送されている間、または所定数より多くの血液ポンプ行程が発生している場合には、ADSアルゴリズムはアクセス切断を宣言する。一例では、第1の低閾値は20kオームに設定され、第2の低閾値は25kオームに設定され得る。
別の実施形態では、ADSアルゴリズムは、ADS信号試験が失敗した場合にアクセス切断を宣言する。ADS信号試験は、ポンプ遅延動作を実行しながらADS信号を監視することを含む。ポンプ遅延動作は、送達ポンプポッドの行程を完了し、その後、血液ポンプポッドおよび内部透析液回路の両方を一時停止させることと、血液ポンプ上の全ての弁、好ましくは内部透析液回路と透析器との間の弁を閉じることと、送出ポンプポッドの出口弁を開放したままにすることと、その後、第1の所定の時間の間、第1の所定の圧力を適用することによって、送達ポッドから血液を完全に送達することと、最後に、ポンププランジャまたはダイアフラムに加えられる圧力を、大気圧に近いが大気圧より大きい第2の低圧力に低下させ、その第2の圧力を第2の所定の時間保持することと、を含む。一実施形態では、ポッドポンプのポンププランジャまたはポンプダイヤフラムに加えられる第2の圧力は、プランジャおよびポンプチャンバ内の流体にほぼゼロの力を加えるために大気圧に近い。暫定フラグが設定されている場合には、ADSアルゴリズムは即座にアクセス切断を通知する一方で第2の圧力が適用される。暫定フラグは、ADS信号が以下の条件のいずれかを満たす場合に設定することができる:第1の閾値を上回るADS信号、第2の閾値を上回るADS信号の微分値、第3の閾値を上回るデルタADS信号。コントローラは、ADSアルゴリズム上で、閉鎖部を閉じること、血液ポンプを停止すること、ユーザに信号を送ることを含むがこれに限定されないアクセス切断を通知する1つ以上の動作をとる。コントローラは、針の配置を検査するようにユーザに知らせることができ、針が適切に挿入された場合にユーザが治療を再開できるようにすることができる。
一実施形態では、ADSアルゴリズムは、暫定フラグが設定され、アクセス切断または閉鎖を通知することなくクリアされた場合にのみ、ADS信号試験を実行する。この実施形態では、ADSアルゴリズムは、静脈針または動脈針が血管アクセス部位からは除去されたが、血管アクセス部位の静脈またはろうの外側にある他の針への導電経路を再確立した場合の針の脱落を同定するためにADS信号試験を使用する。シミュレートしたろう内における動脈針および静脈針を用いた1つの実験であって、静脈針をシミュレートしたろうから引き抜いた実験では、ADS信号は最初に上昇し、次に、脱落された静脈針からの血流が動脈針と接触して、導電経路が再確立されると、より低い値に戻った。ADS信号試験は血流を停止し、結果として血中の高抵抗によって高ADS信号となり、ADSアルゴリズムはそれを検出してアクセス切断を通知した。同様のアルゴリズムはインビボ設定で使用することができる。
ADS信号試験は、他の検出された状態(例えば、エアインライン検出)に基づいて、または治療中に予めプログラムされた周期的な監視プロトコルを介して、針の脱落を識別するために、いつでも使用することができる。動脈針と静脈針との間に電気的不連続性を生じさせる事象は、ADS信号試験によって検出することができる。例えば、外部にプールされた血液または他の流体の集合体を介して、脱落した針とその対応物との間に導電路が再確立される場合、いずれかの針の遠位端に小さな気泡を導入すると、血管切断が実際に起こったことをコントローラが認識するのに十分な電気的不連続性を作出し得る。コンプライアントな血液回路では、静脈ライン内の血液のカラムの推進力は、小さな気泡を脱落した針の先端に流入させるのに十分であり得る。このような気泡は、例えば、ポンプ遅延動作中に針の遠位端に進入することもある。
暫定フラグを設定してクリアした後にADS信号試験を適用する例を図64に示す。図64にプロットされた試験では、静脈針および動脈針を最初にウシ血液の第1のビーカーに入れ、シミュレートされた透析療法を開始する。次いで、静脈ラインが第1のビーカーから取り出され、静脈針が第2のビーカーの底部の血液プールに接触しないように第2のビーカーに入れられる。そして最後に、金属ワイヤが2つのビーカー内の血液を電気的に接続する。静脈針が第1のビーカーから取り外されると、ADS信号が一時的に上昇する。静脈針が第2のビーカー内に配置されると、静脈針、血液プールおよびワイヤからの血液の流れが、同血液が静脈針を通って流れる限り、動脈針に戻る電気的接続を再確立する。ADS信号試験を使用して、コントローラは静脈針を通る血流を停止させ、針の脱落を検出するべくADS信号の上昇を探す。
ADS信号は急激に上昇し、時間要素1236にて暫定フラグ1218を設定する。暫定フラグは、第1の閾値1211を超えるADS信号1210によって、または第3の所定の閾値1215を超えるデルタADS1216によって設定されてもよい。時間要素1238において、ADS信号1210は降下し、同ADS信号1210が第2の所定の閾値1213を下回ること、またはmedADS1212がADS−exitを下回ることに基づいて暫定フラグ1218をクリアする。ADS信号試験は、暫定フラグ1218が時間要素1238でクリアされたときに血液を送達していた血液ポンプポッドに高圧1232Aを印加することによって開始される。一定時間後、送達血液ポンプポッドに印加された圧力は、時間1243にてほぼ大気圧1232Bに低減された。ADS信号1210Bが第1の閾値1211を超え、かつデルタADS1216が第3の閾値1215を超えたため、暫定フラグ1216はリセットされ、時間要素1243でアクセス切断1220が通知された。
ADSアルゴリズムは、上記の閾値の一部または全部を組み合わせて、暫定フラグを設定し、フラグをクリアするための対応する試験を設定することができる。同様に、アクセス切断は、上記のいずれかの基準について通知され得る。ここで図63を参照すると、一実施形態では、暫定フラグは、以下の条件のいずれかが生じた場合に設定される:すなわち、ADS信号1210が第1の閾値1212を超えること、デルタADS1216が第3の閾値1215を超えること、ADS信号は低閾値(図示せず)を下回るか、またはADS信号の微分が第5の所定の閾値を超えること。暫定フラグは、最初にフラグをセットする条件に対応する条件に基づいてクリアされてもよい。例えば、フラグが第1の閾値1211を超えるADS信号によって設定された場合、ADS信号が第2の閾値1213を下回ったときにのみフラグがクリアされるか、またはフラグが第3の閾値を超えるデルタADS1216によって設定された場合、フラグは、medADS1212がADS−exit1217を下回った場合にのみクリアされる(例えば、図62参照)。別の例では、上記の1つまたは複数の条件を要求することによって、フラグがクリアされてもよい。ADSアルゴリズムは、暫定フラグが所定の期間連続して設定されている場合、ある量の血液が圧送されている間、またはいくつかの血液ポンプ行程が起こった場合に、針が脱落したことをより高いソフトウェアレベルまたはコントローラの残りに通知する。
図49、62〜64に報告された測定された抵抗値は、図37及び38におけるバイナリデジタル信号131、144が、約35kHzの周波数で交互に現れる場合に行われた。デジタル信号131、144の周波数は、動脈ラインおよび静脈ライン108、126(図40)におけるワイヤ間の容量結合を可能にするために十分に高かった。並列容量回路は、試験を通して測定した抵抗値を低減したが、静脈針を第1のビーカーから取り出した場合の開回路条件下では最も有意に減少した。
対照的に、図65にプロットされた測定された抵抗は、高い半サイクル(図38)の持続時間が、図49、62〜64にプロットされた実験における半サイクルよりも16倍長い実験からのものである。図65にプロットされた実験では、半サイクルの持続時間は約4分の1ミリ秒である。周波数に関して、バイナリ制御信号131、144は、図65にプロットされた試験のアクティブフェーズの間、2174Hzの周波数で交互に現れる。
ここで図38を参照すると、一例における信号131および144は、それぞれが420マイクロ秒の持続時間を有するパルスを含む。パルスは、80,000マイクロ秒毎に繰り返される6つのパルスの組で発生する。パルスの組の間では、信号131、144は共に低い。パルス間の信号が低い期間は、患者に達する電流漏れの量を制限し得る。
試験された血流回路は、図47に示す血液ポンプカセット13上に配置された一対の膜ベースの血液ポンプ、透析器14、静脈戻りエアトラップ122、動脈血液配管セット108、静脈血液配管セット126、動脈および静脈コネクタ106および128、および図40に示されるように、血管アクセス針102、132に連結されたカテーテル配管セット104、130を含んでいた。図37の回路のプローブ3は、動脈および静脈コネクタ106、128に取り付けられている。針102、132を抗凝固処理したウシ血液を入れた容器に入れた。血液配管セット108および126は約6フィート(1.83メートル)の長さであり、カテーテル配管セット104および130は約2フィート(0.61メートル)以下の長さであった。針は、ろうまたは血管からの針の切断をシミュレートするために、交互に、血流時に手動で容器に入れられるかまたは容器から引き出される。図65の横軸の730の前の期間は、針が容器内の血液中に沈められている時間を表す。
引き続き図65を参照すると、これらの期間中の電気抵抗またはADS信号1210は平均して100kオームであった。約735秒で、針の1つが容器から完全に除去され、完全に開いた電気回路が形成された。測定された電気抵抗は約670Kオームに増加した。コントローラは、ADS値1210の大きな変化に基づいて暫定フラグ1218を設定する.ADS値は、次の3回のポンプ行程の間は高いままであり、約748秒で針の脱落が宣言され、切断フラグ1225が設定された。太い線1232は、(−)500〜500mmHgの範囲の血液ポンプポッド圧の1つをプロットしている。−500から500mmHgの間の各遷移は、血液ポンプの1つの行程を表す。血液ポンプ動作は、切断フラグ1225が設定され、図40の閉鎖部226が閉鎖されたときに凍結される。引き続き図40を参照すると、閉鎖部226を閉じることにより、コネクタ106の一方の電極Aから血液セット配管108、126、血液ポンプ13、血液ポンプライン112、116、透析器14、透析器ライン120およびエアトラップ122、コネクタ128におけるプローブBを介する導電経路を遮断する。既に説明したように、血液セット配管およびカセットを通る導電経路は、アクセス部位を通るコンダクタンスへの平行経路である。少なくとも1つのろう針が血管アクセスから脱落した場合、ADS値は、図65の735〜748秒の間のADS値1210のような、血液配管セットおよびポンプによる抵抗とほぼ等しくなり得る。時間748で閉鎖部が閉じられると、血液ポンプを通る導電経路が中断されるので、測定されたADS値1210は、1000Kオームをかなり上回る値まで急激に上昇する。一実施形態では、コントローラは、2段階法で、血液配管104、130(図40)における閉鎖または気泡と、血管アクセス部位134からの針132、102のうちの1つの脱落とを区別する。コントローラがADS信号に基づいて針の脱落を検出すると、血液ポンプが凍結され、閉鎖部226が閉じられる。コントローラは、最初に閉鎖(occlusion)を宣言し、その閉鎖アラートをユーザに表示する。ADS信号またはADS信号のフィルタリングされた値が所定の閾値を超えるまで、針脱落またはアクセス切断は宣言されておらず、ユーザは針の脱落に対して警告されていない。一例では、コントローラは、ADS信号が1000kオームを超えるまで、針の脱落を宣言しない。1つの可能な理論は、特に、血液配管108、126内の閉鎖または気泡が、血液ポンプを通る導電経路を遮断し、血液ポンプ13を通る導管経路のうちの1つを除去することによって、継手(fittings)106、128におけるプローブ間の測定した抵抗を上昇させることである。血液ライン108、126における閉鎖の場合、閉鎖または気泡が既に血液ポンプ13を通る導電経路を遮断しているので閉鎖部を閉じることによって導電型路が変化することなく、一方、血管アクセス134を通る導電経路は元のままである。この場合、閉鎖部を閉じてもADS信号は変化しない。逆に、針102、132のうちの1つが血管アクセス部位134から引き出された場合、プローブ間に残っている唯一の導電経路は血液ポンプ13を通り、閉鎖部226を閉じることによりその導電経路を閉じ、ADS信号が急激に上昇する。一実施形態では、ADSアルゴリズムは、ADS信号1210に基づく量が第1の閾値1211と交差するときにカウンタを開始し、ADS信号が第2の閾値1213と交差するまでカウンタが増分し続ける(例えば、図62〜64を参照)。ADSアルゴリズムは、カウンタが所定の値に達するとアクセス切断を宣言する。ADS信号が第2の閾値1213と交差したとき、またはアクセス切断が宣言されたとき、カウンタはゼロにリセットされてもよい。この実施形態では、第1および第2の閾値は、測定されたADS信号1210に基づいて計算される。第1および第2の閾値は、ADS信号が増加するにつれて増加する。一例では、第1の閾値は、所定の低い値を下回るADS信号の最小値と、所定の高い値を超えるADS信号の最大値とを有する。所定の高いADS値と低いADS値との間で、第1の閾値はADS値の変化に比例して変化する。第2の閾値は、同様に比例する方法でADS値に依存することができる。
一例では、コントローラは、ADS信号1210の2つのフィルタリングされた値の差を閾値と比較し、2つの値が異なる時定数でフィルタリングされる。ADSアルゴリズムは、より速いフィルタリングされたADS(medADS)1212とより遅いフィルタリングされたADS値(slowADS)1214との差である値デルタADS1216を計算することができる。暫定フラグ1218は、デルタADS値1216が第1の閾値より大きい場合に設定される。この例では、第1および第2の閾値は、slowADS値1214の関数である。一例では、第1の閾値は、60Kオーム未満のslowADS値に対して14Kオームである。第1の閾値は170Kオームを超えるslowADS値に対して51Kオームである。第1の閾値は、slowADS値が60〜170Kオームの間にある場合、slowADS値に比例して増加する。第2の閾値は、第1の閾値の固定された関数であってもよい。代替的に、第2の閾値は、第1の閾値未満の固定値であってもよい。
いくつかの実施形態では、第1および第2の閾値は、ADS信号のノイズに起因する針の逸脱の誤った検出を回避するために、所定の動作期間中に増加される。一例では、第1および第2の閾値は、所定量の血液が血液ポンプ13(図40)によって圧送されるまで一定量だけ増加される。例えば、第1および第2の閾値は、最初の25回の血液ポンプ行程の間に約150%増加されてもよい。
血液ポンプ遅延試験の実施形態では、上述したように、第3の閾値は、第1の閾値よりも所定の因子だけ大きくてもよい。血液ポンプ遅延試験の一例では、暫定フラグは、ADS信号に基づく電気量が第1の閾値を超えたときに最初に設定される。針脱落が宣言される前に暫定フラグがクリアされると、血液ポンプ試験が開始される。血液ポンプ試験は、血液ポンプを停止させ、ポンプポッドに最大許容圧力を加えることによって、ポッドからのすべての可能な血液を押し出す(force)。次に、ポンピング圧力がほぼゼロに減少し、遅延後に電気量が第3の閾値と比較される。一例では、第3の閾値は、第1の閾値よりも大きい固定因子である。一例では、第3の閾値は、第1の閾値の約150%であってもよい。一例では、電気量を第3の閾値と比較する前の遅延は約10秒である。
血液ポンプが患者の方に流体を移動させない間に誤検出を回避する実施形態では、コントローラは、ADS信号に基づいて電気量を計算することを回避し、ADS信号またはADS信号に基づく量を第1の閾値と評価または比較しない。一例では、コントローラは、血液ポンプがフリーズ状態から再開した後の複数の行程のADS値を評価しない。血液ポンプ圧は、ポンプの最初の数回の行程で血液が流れないように十分に低く開始することができる。一例では、コントローラは、凍結状態から再開した後の最初の2行程のADS信号を評価しない。別の例では、溶液注入の間、外部透析液ポンプは透析液を患者に向けて圧送する一方で血液ポンプは一時停止する。血液ポンプが一時停止している間、コントローラはADS信号を評価しない。
任意選択的に、コントローラは、針の脱落を確実に検出するために、針ライン線104、130(図40)および血管アクセス部位134を通る電気抵抗を評価する。針ライン104、130および血管アクセス134を通る電気抵抗が、脱落した針の抵抗値に近づくと、ADSアルゴリズムは切断を検出しないことがある。コントローラが脱落した針を検出する能力を確実にするために、ADSアルゴリズムは、針ラインおよび血管アクセスの抵抗を測定し、これを所定の最大許容抵抗と比較する。測定された抵抗が所定の最大許容抵抗を超える場合、コントローラは、ADSシステムが適切に機能しないことをユーザに知らせることができる。ユーザには、ADSシステムの保護なしに続行するという選択肢が与えられるか、或いは治療を終了する選択肢が与えられる。
1つの例では、コントローラは、ADSアルゴリズムが、針ラインが患者の血液で満たされるのを確実にするのに十分な時間にて動作させ、その後、血液ポンプ13を停止させ、針ラインおよび血管アクセス部位を介する患者の抵抗を測定する前に閉鎖部226を閉じることを可能にする。測定された抵抗が所定の最大許容抵抗値以下である場合、コントローラは治療を再開するであろう。測定された抵抗が最大許容抵抗よりも大きい場合、治療は終了するか、またはADSシステムがアクティブではなく、ADSシステムなしで治療を続けるといった選択を許容できることをユーザに警告することができる。一例では、血液ポンプは、針ラインおよび血管アクセスによる抵抗を測定する前に、10回のポンプ行程を実行する。一例では、測定された許容抵抗は約800Kオームである。一実施形態では、ADSアルゴリズムは、治療を開始する前または患者を透析する前に、1つまたは複数の機械操作中にADS信号を評価することによって、ADSシステムの機能性を確認する。一例では、ADSアルゴリズムは、血液ポンプが透析液でプライミングされ、閉鎖部が開いている間に、ADS信号が所定の最小値を上回っていることを確認する。別の例では、ADSアルゴリズムは、BTSライン108、126(図40)を針ライン104、130に接続するプロセスの間にADS信号の大きさが実質的に変化することを確認する。この例では、血液ポンプ13の最初の行程が完了する前に、接続プロセス中の最高のADS値が最低のADS値と比較される。最高のADS値および最低のADS値の差が所定の値以下である場合、治療は一時停止され、コントローラはフリーズ状態に入る。患者が治療を再開すると、ADSアルゴリズムは1つ以上の血液ポンプ行程を完了し、その行程中の最低ADS値を最高ADS値と比較する。最高および最低ADS値の間の差が所定の値以下である場合、治療は一時停止され、コントローラはフリーズ状態に再び入る。
リンスバック閉鎖検出
ここで図5および図5Aを参照すると、ADSコントローラは、リンスバック処理中に静脈ライン204内の閉鎖を検出することもできる。リンスバックプロセスは、治療の最後に行われ、血液ポンプ13および透析器14から患者に血液を戻す。リンスバック処理は、通常、外部透析液ポンプ160および血液ポンプ13を使用して、透析器14を超える透析液を押し込み、血液ポンプ13および透析器14内に残っている血液を、静脈ライン204を通して患者に向けて流すことを含む。このプロセス中に標準閉鎖検出アルゴリズムは閉鎖を検出することはできない。
ここで図40を参照すると、治療の終了時およびリンスバック動作の開始前に、BTSライン108、126および針ライン104、130は、患者の血液で完全にプライミングされる。血液が洗い流されて患者に戻されると、それはゆっくりと透析液と交換され、血液ヘマトクリットはBTSおよび針ライン104、108、126、130において減少する。ヘマトクリットの減少は、継手106、128に取り付けられたADSプローブ間の電気インピーダンスであって、図37の回路と同様のADS検出回路により測定される電気インピーダンスを変化させる。ライン120、126、130を含むポンプの静脈側の血液配管が閉鎖されると、透析液の流れが減少または停止され、配管内のヘマトクリット値の低下が減衰される。ヘマトクリットの減衰された変化は、ADS信号(すなわち、信号インピーダンスまたは信号インピーダンスのフィルタリングされた値)の減衰された低減に対応する。このようにして、静脈ライン130、126、120または透析器14における閉鎖は、リンスバックプロセス時のADS信号の変化の減少によって検出され得る。
一実施形態では、コントローラは、リンスバックプロセスの開始時にADS信号を記録し、それをリンスバックプロセスの終了時のADS信号と比較する。リンスバックプロセスの終了時のADS信号がリンスバックプロセスの開始時のADS信号の所定の割合以上である場合、コントローラは閉鎖を宣言する。一例では、所定の割合は100%未満である。別の例では、所定の割合は99%である。別の例では、所定の割合はある範囲の値、例えば93%から97%を含む。
一例では、コントローラは、リンスバックプロセスの最初の12秒間に最高のmedADS値として高リンスバックADS値を記録する。リンスバックプロセスが完了した後、コントローラは、リンスバックプロセスの終了時に、エンドリンスバックADS値をmedADS値として記録する。エンドリンスバックADS値が高リンスバックADS値の97%以上であれば、コントローラは閉鎖を宣言する。
閉鎖部
上述したように、図17の閉鎖部513等の閉鎖部を用いて、血液回路アセンブリのラインを通る流れを、たとえば血液ライン203、204の患者接続部とアセンブリの他の部分との間の箇所において制御することができる。以下、単独でまたは本明細書に記載する他の特徴との任意の適切な組合せで採用することができる、閉鎖部に関連する本発明のさまざまな態様について、1つまたは複数の具体的な実施形態とともに説明する。
開示する発明の一態様によれば、少なくとも1つの可撓チューブ、たとえば一対の可撓チューブを圧縮する閉鎖アセンブリが記載されている。閉鎖アセンブリは、1つまたは複数の可撓チューブ、いくつかの実施形態では可撓チューブの1つまたは複数の対の中の流体流を閉鎖するように構成された機構を備えるチューブ閉鎖部を備える。いくつかの実施形態では、閉鎖アセンブリのチューブ閉鎖部は、少なくとも1つの閉鎖部材を備え、具体的な実施形態では、アセンブリ内に配置された配管の各セクションに対して閉鎖部材を備える。いくつかのこうした実施形態では、各閉鎖部材は閉鎖部材の側部に沿って摺動する要素によって押圧されるかまたは他の方法で閉鎖位置まで押し込まれるかもしくは付勢され、それにより閉鎖部材はその近位端において枢動し、その遠位端において配管に向かって並進する。一実施形態では、その要素は、2つの閉鎖部材の間に位置決めされ、閉鎖部材がそれらのそれぞれのチューブに対して押圧する際に閉鎖部材の遠位端を互いから離れる方向に広げるように作用する。好適なオプションでは、主バネが、広がり要素を、閉鎖要素の遠位端に向かって閉鎖位置まで押しやる。広がり要素は、広がり要素に連結されたボタンおよびリンクアセンブリを通じて手動で、または同様に広がり要素に連結されるアクチュエータを作動させるコントローラの制御により、主バネの付勢力に抗して、閉鎖要素の近位端の近くの非閉鎖位置まで移動させることができる。ヒンジ式ドアを、閉鎖要素および配管のそれらのそれぞれの部分を覆うように構成することができる。ドアが閉鎖要素の上で適切に閉鎖しない場合に、アクチュエータの作動を阻止することができる。任意に、ドアが開放位置にあるとき、広がり要素を非閉鎖位置で保持するリテーナ要素を使用可能とすることができる。リテーナ要素を使用可能とすることにより、ユーザがボタンに連続して力を加えるかまたはアクチュエータの連続作動によることなく、広がり部を、非閉鎖位置で保持することができる。ドアが閉じたときにリテーナ要素を使用不能とすることができ、それにより、広がり要素は、手動でまたはアクチュエータを通じて閉鎖位置になるようにおよび閉鎖位置から出るように自由に移動することができる。
図50および図51は、本開示の実施形態による閉鎖アセンブリ700の展開斜視図を示す。図50は、正面角度からの閉鎖アセンブリ700の展開斜視図を示し、図51は、背面角度からの閉鎖アセンブリ700の展開斜視図を示す。
閉鎖アセンブリ700は、一対のチューブ705を受け入れ、アセンブリ700の長さに沿っておよそ同じレベルでつまみ(pinching)作用を用いてチューブ705を閉鎖するように構成される。つまみ作用により、各チューブ705の内部流体通路のサイズが、そこを流れる流体の流れを制限するように低減する。閉鎖アセンブリ700は、注入ポンプと、透析機、血液透析、腹膜透析、血液ろ過、血液透析ろ過、腸透析等で使用することができる。
閉鎖アセンブリ700は枠701を備える。いくつかの実施形態では、枠701は、血液透析装置等の血液ろ過装置のフロントパネルの対応するスロットに枠を固定するタブまたはスナップ709を備える。
枠701は、チューブ705が一対の閉鎖アーム710および711の閉鎖端713によって圧縮されるアンビルまたはブロック702および703と、各チューブ705をブロック702および703に対して位置決めするチューブガイド704とを備える。チューブガイド704ならびにブロック702および703は、各々、ブロック702および703の各々に隣接する所定位置にチューブ705を位置決めするように構成される。閉鎖アセンブリ700はまた、枠701に枢動可能に搭載されるドア706も備える。ドア706は、ブロック702および703の各々とチューブガイド704との間でチューブ705を固定するように枠701に対して閉じることができる。ドア706には、ドア706を閉鎖位置で枠701に固定する、弾性の可撓基部(たとえばリビングヒンジを介する)708を通じてラッチ707が一体成形されている。しかし、ラッチ707は、ドア706に接着されるか、溶接されるか、ボルト締めされるかまたは他の方法で装着されるラッチ要素を含む等、他の適切な方法で配置することができる。図50、52および53に示すように、ラッチ707を側方に押圧して、枠701の対応するスロット741との係合からキャッチ740を解放してドア706を開放することができる。
閉鎖アセンブリ700は、2つのアーム710および711を備える。第1のアーム710は枢動端712および閉鎖端713を有し、同様に、第2のアーム711は、枢動端714および閉鎖端715を有する。2つのアーム710および711は、ボタン716が解放されドア706が閉鎖したとき、またはアクチュエータ717が停止したときにチューブ705を閉鎖するように合わせて動作する。
図52は、本開示の一実施形態による、チューブ705の装填および取外しを可能にするように閉鎖アーム710および711の解放を示す、ドア706が開放し、ボタン716が押されている、閉鎖アセンブリ700の前斜視図を示す。図54は、本開示の一実施形態による、チューブ705a、bを完全に閉鎖するアーム710および711を示すように、ドア706および枠701のない図50の閉鎖アセンブリ700の前面を示す。図54に示すように、くさび要素または広がり部722が閉鎖アーム710および711の面する側に接触し、閉鎖アーム710および711は、バネ力下で、閉鎖アーム710および711の閉鎖端713および715をチューブ705a、705bの一部に対して押圧するように、閉鎖アーム710および711に圧力を印加することができる。ユーザは、ボタン716を押すことにより閉鎖アーム710および711を解放することができ、それにより、広がり部722は、閉鎖アーム710および711から離れるように引っ込み、閉鎖アーム710および711の遠位端に印加されている広がり部722の圧力を解放する。態様によっては、手動アクチュエータ(たとえばボタン716)は、配管閉鎖部要素(たとえば広がり部722)に接続された自動アクチュエータ(たとえば空気圧作動ピストン/シリンダ装置等)に対するオーバーライド機構として作用する。手動アクチュエータは、配管閉鎖部に動作可能に連結されて、配管閉鎖部の少なくとも一部のほぼ直線的な運動をもたらし、ユーザによるオーバーライド機構の手動操作時に閉鎖部材を閉鎖位置から非閉鎖位置まで移動させる。
同様に、アクチュエータの作動により、広がり部722を、閉鎖アーム710および711の閉鎖端713、715から離れるように引っ込ませることにより、閉鎖アーム710および711を解放することができる。一実施形態では、図50に示すように、広がり部722は、キャリッジアセンブリ723から形成するか、それと一体成形するか、それに装着するかまたは他の方法で接続することができ、キャリッジアセンブリ723は、さらに、アクチュエータの作動アームに接続される(たとえば図56および57参照)。アクチュエータは、特に、たとえばモータおよび歯車アセンブリ(たとえばラックおよびピニオンアセンブリまたはウォーム型歯車アセンブリ)、ソレノイド、液圧シリンダまたは空気圧シリンダを備えることができる。好適な実施形態では、アクチュエータは、ピストンアーム742を備える作動アームをバネ力(一実施形態では、図60に示すようにシリンダ717内のコイルバネ745であり得る)に抗して線形に伸長させる空気圧シリンダ717を備える。図60に示すように、空気圧作動リニアアクチュエータ717の側面斜視図では、ピストンアーム742は、キャリッジ723に接続される。空気圧によって作動すると、アクチュエータ717は、ピストンアーム742を伸長させ、キャリッジ723および装着された広がり部722を、閉鎖アーム710および711の遠位端713、715との係合から広がり部722を引っ込める方向に移動させる(明確にするために、特に、閉鎖アーム711、枠701、ドア706、ブロック703およびチューブガイド704は図58〜図60から取り除かれている)。好ましくは、シリンダ/アクチュエータ717の外部または内部の主バネは、ピストンアーム742またはキャリッジ723に付勢力を印加して、広がり部722に対して、閉鎖アーム710および711を閉鎖位置まで移動させることができる。動力または空気圧が喪失すると、閉鎖アーム710および711はデフォルトで閉鎖モードになり、チューブ705内の流体の流れを阻止する。図60の閉鎖アセンブリ700の断面図に示すように、一実施形態では、コイルバネ745をシリンダ743内に配置して付勢力を提供することができ、ピストン744は、それに抗して空気圧下でピストンアーム742を移動させることができる。空気圧は、電子コントローラの制御下で介在する電気機械バルブによって調整される圧力源(たとえばポンプによって加圧されるタンク)からリニアアクチュエータ717に供給することができる。
図54および図59に示すように、リニアアクチュエータ717が完全に後退すると、キャリッジ723は、閉鎖アーム710および711の面する側に沿って広がり部722を担持して、それらを閉鎖位置まで回転させる。第1のアーム710は、その枢動端712を中心に枢動して、閉鎖端713を、ブロック702によって拘束される第1のチューブ705aに対して押圧させる(図54参照)。第2のアーム711は、その枢動端714を中心に枢動し、それにより、閉鎖端715が、ブロック703によって拘束される第2のチューブ705を押圧することができる。
図55および図58は、非閉鎖状態の閉鎖アセンブリ700を示す(明確にするために、枠701、ドア706、ブロック702、703および他の要素は取り除かれている)。ボタン716が押されるかまたはリニアアクチュエータ717が作動すると、キャリッジ723および装着された広がり部722がアクチュエータ717から離れて遠位方向に移動し、閉鎖部アーム710および711が枢動点712および714を中心に非閉鎖位置まで回転することができるようにする。チューブ705a、bの弾性により、アーム710および711は互いに向かって枢動することができる。本開示のいくつかの実施形態では、アーム710および711に埋め込まれた小型磁石(明示的に示さず)がアーム710および711を互いに向かって引っ張り、閉鎖端713および715のチューブ705から離れる方向の後退を容易にする。他の実施形態では、小型バネ(図示せず)が、閉鎖アーム710および711を互いに向かって枢動するように付勢することができ、バネ定数は、キャリッジ723または広がり部722を後退(閉鎖)位置に付勢する主バネ(たとえばバネ745)によって克服されるのには十分弱い。
図53は、本開示の一実施形態による、ドア706が閉鎖したときにスイッチ720と係合する状態を示す、図50の閉鎖アセンブリ700(明確にするために枠701は取り除かれている)の側面斜視図を示す。図53に示すように、ラッチ707のヒンジ部708は、枠701の連動するスロット741内にはまり込むことができる係合部材またはキャッチ740に連結される(たとえば図50および図53参照)。ドア706が閉鎖すると、ドア706のラッチ707のキャッチ740の一部がバネ式スイッチ720と係合し、一実施形態では、バネ式スイッチ720はスイッチ720のバネアーム737を含む。
ドア706の閉鎖によるスイッチ720の係合により、電子コントローラ(図示せず)に、ドア706が適切に閉鎖されていることと、リニアアクチュエータ717を作動させて、流体がチューブ705を流れるのを可能にするように閉鎖部710および711を解放することができることとが通知される。ドア706閉鎖信号により、コントローラは、たとえばチューブ705内の流体の圧送を開示するようにチューブ705に連結されたポンプに命令する等、他の機能を行うこともできる。
図56は、本開示の一実施形態による、リニアアクチュエータ717が完全後退位置(すなわち、閉鎖位置)にある、図50の閉鎖アセンブリ700の後面を示す。図56は、図54において閉鎖アセンブリ700の前面図に対して示したものと同じ構成で、閉鎖アセンブリ700の後側を示す。図56は、本開示の一実施形態による、アクチュエータ717およびキャリッジ723の動作を示すように図50の閉鎖アセンブリ700のいくつかの作動部分を示す。キャリッジ723は、ピストンアーム742の伸長もしくは後退により、またはボタン716の作動により移動する。キャリッジ723は、キャリッジ723に一体成形されるかまたは他の方法で装着されたガイド724を備える。ガイド724は、ピストンアーム742の作動を介するかまたはボタン716の作動によって移動する際のキャリッジ723を誘導する。ガイド724は、枠701のトラック725とインタフェース接続する(たとえば図51参照)。
任意の実施形態では、ドア706が開放すると、ユーザによるボタン716の作動またはコントローラによるアクチュエータ717の作動により、キャリッジ723および広がり部722が非閉鎖位置まで移動し、リテーナ要素またはアセンブリにより、ユーザによるかまたはアクチュエータ717によってさらなる力が印加されることなく、非閉鎖位置を保持することができる。図56に示す例示的な実施形態では、キャリッジ723は、保持部材718のスロットまたは穴と連動するラッチピン726を組み込むことができる。保持部材718は、閉鎖したドア706の内側に位置するピン738が接触するように位置決めされた表面727を有する(たとえば図51および図52参照)。貫通穴739により、ピン738が保持部材718の一部と接触して、それを後部方向に変位させることができる。図示する実施形態では、ピン738は、保持部材718の前部プレート727と接触する。保持部材718はまた、図示する実施形態では受入部729を形成する水平プレート728を備える、ラッチピン726の頭部を受け入れるように位置決めされたスロットまたは穴729を有する表面も有する。保持部材718は、ドア706が閉鎖するかまたは開放するとき(たとえば図51参照)ピン738による接触に応じて、枠701の溝またはガイド(図示せず)内で摺動するように構成される。枠701に搭載されたバネ730は、保持部材718を枠701のストッパ機構(図示せず)まで前方に移動させるように付勢することができ、それにより、ドア706を開放することによって、保持部材718が前方に摺動することができ、ラッチピン726に関して受入部729を再度位置合せする。ドア706が閉鎖すると(図50および図51参照)、ドア706のピン738は前部プレート727を押圧し、前プレート727はバネ730を圧縮し、それにより、水平プレート728の受入部729がラッチピン726の上に直接位置決めされる。受入部729がラッチピン726に位置合せされると、受入部729の面積は、ラッチピン726を保持部材718によって解放することができるほど十分に広く、それにより、キャリッジ723が、アクチュエータ717における主バネ745のバネ力を受けることができる。その後、空気圧がアクチュエータ717に印加されていない場合、キャリッジ723は自由に閉鎖位置まで移動することができる。使用不能状態(すなわち非動作状態)にある保持部材718により、ラッチピン726は、キャリッジ723が完全伸長位置と完全後退位置との間で移動する際に受入部729を通って自由に移動することができる。
図57は、アクチュエータ717が作動し、閉鎖アーム710、711を非閉鎖状態にするようにピストンアーム742が伸長位置にある、閉鎖アセンブリ700の後面図である。この図では、ラッチピン726の頭部は、保持部材718の水平プレート728の平面より上方にあるように示され、ラッチピン726の窪み領域731は、保持部材718の受入部729と位置合せされるように示されている。この図では、ドア706は閉鎖位置にあり、それは、受入部729が、ラッチピン726が保持部材718内に掛からないように十分後方位置にあることを意味する。
ドア706が十分に開放すると、ドア706のピン738は前部プレート727を押圧せず、バネ730は前部プレート727に力を印加し、それにより保持部材718の受入部729はラッチピン726が受入部729の縁に係合し保持部材718に掛かることができるように位置決めされる。受入部729がラッチピン726に掛かるように位置決めされたときに、ラッチピン726は、受入部729内に移動して、前部プレート727をバネ730の力に抗して後方に引っ張る。ラッチピン726の頭部が受入部729を通って十分に移動すると、ラッチピン726の頭部の下方の窪み領域731は、前部プレート727に印加されるバネ730の力の下で、受入部729の縁が窪み領域731内に移動する際に移動する、水平プレート728と相互に位置合せされる。ドア706のピン738が前部プレート727と十分に係合したとき、受入部729は、ラッチ718からラッチピン726を解放するように位置決めされる。よって、ドア706が開放すると、キャリッジ723および広がり部722は、アクチュエータ717によるかまたはユーザがボタン716を押すことによる力の連続的な印加なしに、非閉鎖位置に保持することができる。これにより、ユーザは、ボタン716に同時に力を印加することなく、閉鎖アセンブリ700に配管を装填しかつそこから配管を取り外すことができる。しかし、ドア706の閉鎖時、保持部材718はそれ以上動作可能ではなく、アクチュエータ717によるかまたはボタン716を介する力の連続的な印加がないため、キャリッジ723および広がり部722は適所に移動して、閉鎖アーム710および711を閉鎖位置まで回転させる。
図58および図59は、図50の閉鎖アセンブリ700のいくつかの作動部分の側面斜視図を示し、枠701、ブロック702、703、チューブガイド704、ドア706、閉鎖アーム711および他の部分は明確にするために取り除かれている。図58において、ピストンアーム742は、本開示の実施形態により完全に伸長している。図58は、保持部材718上に掛けられたラッチピン726を示す。すなわち、ドア706が開放位置にあるとすると、水平プレート728は、ラッチピン726の窪み領域731と係合するようにバネ730の力によって位置決めされる。
図59は、ピストンアーム742が完全後退位置にある、図50の閉鎖アセンブリ700の側面斜視図を示し、明確にするために図58のようにいくつかの要素が取り除かれている。本例では、ラッチピン726は、保持部材718から完全に取り外されているように示され、アクチュエータ717に対する作動力またはボタン716に対する押圧力がないため、ピストンアーム742、キャリッジ723および広がり部722は、ピストンアーム742の伸長に対して付勢された主バネ745(図60参照)の力の下で自由に後退することができる。次いで、広がり部722は、閉鎖アーム710、711の閉鎖端713、715に向かって移動する。一実施形態では、図58および59に示すように、ボタン716が押されたとき、ボタン716は枢動軸732を中心に枢動してレバーアーム733を上昇させる。レバーアーム733は、近位枢動軸735を通じて接続部材734に枢動可能に接続される。次いで、接続部材734は、遠位枢動軸736を通じてキャリッジ723に枢動可能に接続される。ボタン716が押されるかまたはピストンアーム742がキャリッジ723を保持部材718に向かって移動させると、図58に示すように、接続部材734はキャリッジ723とともに移動し、枢動軸732を中心にボタン716を回転させる。
図61は、本開示の一実施形態による透析システムのフロントパネルアセンブリ911に使用される図50の閉鎖アセンブリ700を示す。閉鎖アセンブリ700は、血液が患者までおよび患者から流れる際に通る可撓チューブ901、902を閉鎖する。右側チューブ902は患者から血液ポンプアセンブリ1000まで血液を搬送し(動脈血液ライン)、左側チューブ901は、透析機14からエアトラップ19を通過した後に患者に戻るように血液を搬送する(静脈血液ライン)。閉鎖アセンブリ700は、これらの患者チューブ901、902の両方を同時に通る血液の流れを閉鎖することができる。
詳細に上述したように、チューブ901、902は、フロントパネル911に搭載しフロントパネル911から取り外すことができるモジュール式ユニットである、血液ポンプカセットまたはアセンブリ1000に接続される。患者チューブ901、902はともに、血液ポンプカセット1000およびエアトラップ19を含むアセンブリとして提供することができ、血液ポンプカセット1000がフロントパネル911に搭載されたときに閉鎖アセンブリ700内に装填することができる。本実施形態では、閉鎖アセンブリ700は、フロントパネル911の恒久的な部分を形成する。
閉鎖アセンブリ700が非閉鎖状態にあるとき、血液ポンプカセット1000に位置するポンプは、血液を、患者から右側チューブ902を通して、血液ポンプを通して透析器14を通して圧送するように、作動させることができる。透析器14によって処理される血液は、その後、最初にエアトラップ19およびライン内空気検出器823を通過した後に、チューブ901を通じて患者まで戻る。
本発明の種々の実施形態を本明細書に記載して説明したが、当業者であれば、本明細書に記載の機能を担う、および/または本明細書に記載の成果および/または1つ以上の利点を得るための様々なその他の手段および/または構造を容易に構想し得る。こうした構想および/または変形は、本発明の範囲に属するものとみなされる。すなわち、当業者であれば、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示であり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明が利用される具体的な用途に左右されることを容易に認識し得る。当業者であれば、実験を利用して、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を認識し得る。したがって、上記した実施形態は単なる例示であり、添付の特許請求の範囲とその等価物の範囲において本発明が実施され得ることを理解すべきである。
本明細書および請求項において使用される不定冠詞「a(1つの)」および「an(1つの)」は、明らかに矛盾するとの指摘がない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解すべきである。