JP6636309B2 - ヒートパイプとそれを用いる空調装置 - Google Patents
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Description
図10(a)のようにヒートパイプ1’の下部(加熱部)が加熱されると、密閉容器2内で下部に滞留している作動液Aが蒸発し、蒸気となって温度の低い上部(放熱部)側に移動する。蒸気は、放熱部の容器2の内面で凝縮し、潜熱を容器2に放出して液化する。凝縮液化した作動液Aは、容器2の内面に沿って重力により下部に還流する。還流する作動液Aは、容器2の内面を濡らしながら降下するので、作動液Aが滞留していない加熱部の上部側においても、容器2の内面に付着した作動液Aが蒸発し、加熱部全体から蒸気が発生して上部の放熱部に熱を輸送する。下部の温度が上部よりも高い場合、このような動作が継続されて、下部の加熱部から上部の放熱部に自動的に熱輸送される。
図10(b)のように、ヒートパイプ1’の上部が加熱されると、密閉容器2の上部内面に付着保持されていた作動液Aが蒸発し、蒸気となって温度の低い下部の放熱部側に移動する。この蒸気は、放熱部の容器2の内面で凝縮し潜熱を容器に放出して液化し、凝縮液化した作動液Aは容器2の下部に滞留する。この作動液Aは重力に抗して上部の加熱部に戻ることはできないので、上部の加熱部に最初に付着保持されていた作動液Aが全て蒸発した後は、加熱部での蒸発が生じなくなる。従って、上部の加熱部から下部の放熱部に連続的に熱輸送することはできない。
なお、ウィックと呼ばれる多孔質の焼結体や金属メッシュ類を密閉容器2の内壁面に設けると、ウィックの毛管力により下部の作動液を上部の加熱部にもち上げることで上部から下部への熱輸送も多少は可能になるが、それが可能な範囲(上部・下部間の高低差)は数cm〜数十cm程度と極めて限定的である。
1) 流通管内に加熱液を流すと、密閉容器内に封入された作動液が蒸発する。流通管の一部が下部の作動液中に浸漬されているため、加熱液が有する熱を作動液が受けるからである。
2) 前記した一般的なヒートパイプにおけるのと同様、作動液の蒸気は上部(放熱部)側の全体で凝縮し、潜熱を密閉容器に放出して液化する。これにより、加熱液の保有熱がヒートパイプの周囲に放熱される。
3) したがって、加熱液をヒートパイプよりも上方から供給することとすれば、上方にある加熱液の熱を、下方にあるヒートパイプの放熱部にまで連続的に熱輸送して放熱するという、従来のヒートパイプでは難しかった方向の熱輸送が可能になる。
なお、上記のヒートパイプにおいて流通管内に加熱液等を流すことを止めれば、一般的なヒートパイプにおけるのと同様に、下部が加熱されるとき、その熱が上部の放熱部に連続的に熱輸送され放熱される。
1) 密閉容器の内面と流通管の外面との接触部分を通して直接に、流通管内の加熱液の保有熱の一部が密閉容器へ移動する。
2) 流通管と密閉容器との接触部分の近傍に微小な隙間ができる(図2(b)参照)。このような隙間を形成させておくと、隙間に保持された部分の作動液の加熱が促進され、作動液の気泡発生(すなわち蒸発)が活発になるため、作動液の蒸発熱伝達特性が向上する。
なお、密閉容器の内面と流通管の外面との上記接触は、流通管の位置を定める部品を密閉容器内に組み込むこと等によって実現させるのがとくに好ましい。
このようなヒートパイプは、流通管の構造がシンプルであり製造容易でもあるため、低コストで実現できる。
このような流通管は、管を曲げたり接続したりしてU字状に形成する必要がないので、製作が容易である。また、加熱液のための流路の断面積を大きくしやすいので、多量の加熱液を流して熱輸送効果を高めるうえで有利である。なお、前記のように密閉容器に流通管を接触させるためには、上記外管の外面を密閉容器の内面に接触させる。
下部に螺旋状部分を有する流通管なら、作動液との接触面積を広くとりやすいので、加熱液から作動液への熱移動を多くして熱輸送効果を高めることができる。なお、密閉容器に流通管を接触させるに関しては、流通管の螺旋状部分またはそれ以外の直線状の部分を密閉容器の内面に接触させるとよい。
密閉容器の上部に放熱用の伝熱フィンがあると、密閉容器の下部に伝えられた蓄熱体からの熱を上部のその放熱用のフィンから効果的に放熱することができる。発明のヒートパイプでは、上述のとおり流通管を用いて上方の(加熱液の)熱を下方に放熱できるが、このように上部に放熱用フィンがあると、流通管の加熱液の循環を停止し、伝熱フィン部に通風することで、下部(加熱部)の熱を上部(上記伝熱フィンを有する放熱部)において効果的に周囲空気に放熱できる。すなわち、伝熱フィン部の通風を停止して加熱液を循環させるか、伝熱フィン部に通風して加熱液の循環を停止させるかの切り替えにより、同一のヒートパイプによる2方向への熱輸送が可能になる。
a) 上記密閉容器の下部外面が蓄熱体(水や土壌、または相変化をともなう蓄熱材等)に接触していて、
b) 上記密閉容器の上部外面に放熱用の伝熱フィンが取り付けられているとともに、上記密閉容器の外において上記流通管の一部外面に吸熱用の伝熱フィンが取り付けられ、
c) 通風手段が、上記流通管にて加熱液を循環させるか停止させるかに応じて空気の通路を変更し、加熱液の循環時には上記吸熱用の伝熱フィンに空気を送り、加熱液の停止時には上記放熱用の伝熱フィンに空気を送り得るものであることを特徴とする。
図8(a)(b)に、そのような空調装置の一例を示している。
1) 密閉容器内に加熱液の流通管が内蔵され上記作動液中に浸漬されているとともに、密閉容器の上部に放熱用の伝熱フィンが取り付けられているので、上述のように、上方の(つまり加熱液の)熱を下方に放熱できるとともに、下方の熱を上方へ放熱することもできる。
2) 密閉容器の下部が蓄熱体に接触しているので、当該蓄熱体が、上記1)で下方に放熱する際の放熱先となり、上方に放熱する際の熱源ともなる。
3) 密閉容器の外で流通管の一部外面に吸熱用の伝熱フィンが取り付けられていて、流通管内に加熱液を循環させる時にはそのフィンに通風手段が空気を送る(図8(a)参照)ので、空気が有する熱を加熱液およびヒートパイプを介して蓄熱体に伝える形で、当該空気の冷房を実現できる。
4) 加熱液を停止した時には、密閉容器の外面に取り付けられた放熱用の伝熱フィンに空気を送る(図8(b)参照)ことにより、蓄熱体が有する熱をヒートパイプを介し当該空気に伝える形で、空気の暖房を実現することができる。
a) 上記密閉容器の下部外面が蓄熱体に接触していて、
b) 上記密閉容器の上部外面に放熱用の伝熱フィンが取り付けられているとともに、上記密閉容器の外において上記流通管の一部外面に吸熱用の伝熱フィンが取り付けられ、
d) それら双方の伝熱フィンが一体のものであり、通風手段が、当該一体の伝熱フィンに空気を送り得る、との構成を有するものであってもよい。
図9(a)(b)に、そのような空調装置の一例を示している。
密閉容器の上部外面に放熱用の伝熱フィンが取り付けられていると、加熱液の循環と停止を切り替えることで、上方から下方への熱輸送で蓄えた熱を、必要に応じて下方から上方へ輸送することも可能になる。この点から、同一のヒートパイプによって2方向の熱輸送すなわち冷・暖房を行うことも可能になる。
発明による空調装置では、上記のヒートパイプとともに蓄熱体および通風手段を使用することにより、室内等の空気の冷・暖房を行うことができる。
ヒートパイプそのものが行う熱輸送(加熱液の循環および通風手段による通風は除く)には動力が不要であるため、上記の熱輸送または冷・暖房に要するエネルギーコストは低く抑えられ、騒音も少ない。特に暖房時は、蓄熱体の熱をポンプ運転せずにヒートパイプのみで空気に熱輸送できるので、きわめて省エネ性の高い暖房が行える。
図1の例と同じく、この図2(a)のヒートパイプ11においても、流通管13は、2本の平行な直管部13aとそれらの下端部に連結するU字管部(屈曲部分)13bとから形成している。使用の際、流通管13の下部(U字管部13b付近)は密閉容器2内の作動液Aに漬かるようになっている。また、この例(および図3以降の例)ではヒートパイプ11の下部を蓄熱体8内に設置している。蓄熱体8としては水タンクを使用できるが、他の各種の蓄熱材を使用してもよい。土壌を蓄熱体8とすることも可能である。
ヒートパイプ41において加熱液Bを流通管3にて循環させるとき、伝熱フィン4への通風を停止しておくと、加熱液Bが有する熱の輸送は図1のヒートパイプ1におけるのと同様に行われ(図5(a)参照)、当該熱が蓄熱体8へと輸送され蓄熱される。
一方、ポンプ9を停止して加熱液Bの循環を止めると、図6(b)のように、蓄熱体8に蓄積された熱Hは、密閉容器2の下部を加熱して作動液Aを蒸発させ、密閉容器2の上部にまで上昇し凝縮する。その凝縮により密閉容器2に凝縮熱Cが伝わり、それが、伝熱フィン4またはさらにファン10の作用によって空気中に放出される。空気を加熱することができるので、たとえば室内を暖房等できるわけである。
この図7の例でも、放熱フィン4に通風しない状態でポンプ9を起動すると、廃温水Wの熱を、図示のように加熱液Bおよび作動液Aを介して蓄熱体8に蓄えることができる。そしてポンプ9を停止させ放熱フィン4に通風すると、図6(b)の場合と同様に、蓄熱体8の保有熱を空気中に放出して室内の暖房等を行うことができる。
このようにすると、ヒートパイプと伝熱フィンを一体化した小形のシンプルな冷暖房用ユニットを構成できるので、空調配管施工時の給水系及びエアダクトの配置がきわめて容易になる。
2 密閉容器
3・13・23・33 流通管
3b・13b U字管部(屈曲部分)
23a 外管
23b 内管
33b 螺旋管部(螺旋状部分)
4・14 伝熱フィン
8 蓄熱体
9 ポンプ
10 ファン
11 ダクト
12 切換板
61 空調装置
71 空調装置
A 作動液
B 加熱液
Claims (7)
- 上下に長さを有する密閉容器内に作動液が封入されたヒートパイプであって、
上記密閉容器内に、当該容器外から容器内を通って再び容器外へ至るよう循環される加熱液の流通管が内蔵され、当該流通管の一部が、密閉容器の内側下部において上記作動液中に浸漬されていること、
上記密閉容器の上部外面に、通風を受ける放熱用の伝熱フィンが取り付けられていること、
および、伝熱フィンへの上記通風を停止して加熱液を循環させるか、伝熱フィン部に通風して加熱液の上記循環を停止させるかの切り替えにより、同一のヒートパイプによって密閉容器の下部か上部かへ選択的に熱輸送できるようにしたこと
を特徴とするヒートパイプ。 - 上記密閉容器の上部において当該容器の内外へと上記流通管が通されていて、当該容器の内面と流通管の外面とが接触していることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
- 上記流通管は、下部にU字状の屈曲部分を有するものであり、上記密閉容器内において当該屈曲部分が上記作動液中に浸漬されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートパイプ。
- 上記流通管は、下端が閉じた外管の内側に下端が開いた内管が挿入されていて双方の下端が接近位置にある二重管の、当該内管の壁をはさむ内外空間を流路とするものであり、上記密閉容器内において上記二重管の外管の下端付近が上記作動液中に浸漬されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートパイプ。
- 上記流通管は、下部に螺旋状部分を有するものであり、上記密閉容器内において当該螺旋状部分が上記作動液中に浸漬されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートパイプ。
- 上下に長さを有する密閉容器内に作動液が封入され、その密閉容器内に、当該容器外から容器内を通って再び容器外へ至る加熱液の流通管が内蔵され、当該流通管の一部が、密閉容器の内側下部において上記作動液中に浸漬されているヒートパイプとともに、蓄熱体および通風手段を使用する空調装置であって、
上記密閉容器の下部外面が蓄熱体に接触していて、
上記密閉容器の上部外面に放熱用の伝熱フィンが取り付けられているとともに、上記密閉容器の外において上記流通管の一部外面に吸熱用の伝熱フィンが取り付けられ、
通風手段が、上記流通管にて加熱液を循環させるか停止させるかに応じて空気の通路を変更し、加熱液の循環時には上記吸熱用の伝熱フィンに空気を送り、加熱液の停止時には上記放熱用の伝熱フィンに空気を送り得るものであることを特徴とする空調装置。 - 上下に長さを有する密閉容器内に作動液が封入され、その密閉容器内に、当該容器外から容器内を通って再び容器外へ至る加熱液の流通管が内蔵され、当該流通管の一部が、密閉容器の内側下部において上記作動液中に浸漬されているヒートパイプとともに、蓄熱体および通風手段を使用する空調装置であって、
上記密閉容器の下部外面が蓄熱体に接触していて、
上記密閉容器の上部外面に放熱用の伝熱フィンが取り付けられているとともに、上記密閉容器の外において上記流通管の一部外面に吸熱用の伝熱フィンが取り付けられ、
それら双方の伝熱フィンが一体のものであり、通風手段が、当該一体の伝熱フィンに空気を送り得るものであることを特徴とする空調装置。
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