図1(A)を参照するに、板状のワークWにレーザ光を照射してワークWの切断加工を行うと、ワークWには切断溝Cが形成される。また前記レーザ光の照射位置LPに近接した周囲には、レーザ切断加工位置へ照射したレーザ光の熱影響が大きく溶損を生じ易い範囲(以下、高温熱影響部と称す)Hの移動軌跡として前記切断溝Cの両側に熱影響部HMが生じる。
ところで、図1(A)に示すように、レーザ切断加工が矢印A方向に継続して連続的に進行して、すなわち一筆書き的にレーザ切断加工を行う。この際、ワークWの切断縁にエッジ部を生じるべく、コーナ位置CEにおいて矢印B方向にレーザ切断加工方向を変更(変化)すると、矢印A方向に進行していた高温熱影響部Hと、コーナ位置CEから矢印B方向へ進行する高温熱影響部Hとが、前記コーナ位置CEの内側の部分Iで重なることになる。そして、前記内側部分Iは、矢印A方向に進行するレーザ切断加工時に熱の伝導によって、レーザ光の照射位置LPがコーナ位置CEに達する前に、既に蓄熱された状態にある。
したがって、前記内側部分Iは、蓄熱された状態にあるところに、矢印A,B方向に切断方向が変更される際の高温熱影響部Hが重合されるものであるから、異常高温となり、前記特許文献1に記載されているように、内側部分Iからバーニングを生じ易いものである。
ところで、例えば特開昭58−23590号公報や特開平10−328879号公報に記載されているように、レーザ加工位置の周囲に、レーザ加工ヘッドに備えた冷却ノズルから冷媒としての冷却水を噴出してレーザ切断加工を行う場合や冷却水の噴射量が多い場合には、前記バーニングは抑制されるものである。しかし、冷却水を噴射することなくレーザ切断加工を行う場合や冷却水の噴射量が少ない場合には、前記バーニングを生じ易いものである。
そこで、本実施形態においては、ワークWに対して水を噴射することなくレーザ切断加工を行う場合や冷却水の噴射量が少ない場合であって、レーザ光の照射位置LP、換言すればレーザ切断加工位置と前記コーナ位置CEとの間の距離LAが、予め設定した設定値になると、前記コーナ位置CEへ冷媒としての冷却水を予め噴射して、コーナ位置CEを予め冷却した後にコーナ位置CEへレーザ切断加工を進行するものである。したがって、本実施形態によれば、前述したごとき問題が解消されるものである。
すなわち、本実施形態によれば、レーザ切断加工方向の前側であって、前工程におけるレーザ切断加工時の熱伝導によって蓄熱された蓄熱位置(例えば前記特開平10−328879号に記載において冷却ノズルからレーザ加工位置の周囲に冷却水を噴射する範囲の外側の位置)へ水を予め噴射して強制的に冷却した後に、当該冷却位置のレーザ切断加工を行うものである。なお、レーザ加工ヘッドに備えた冷却ノズルからの水の噴射(噴出)範囲外の蓄熱位置へ予め水を噴射する方法としては、レーザ光の照射を一時停止して、レーザ加工ヘッドに備えた冷却ノズルから水を噴射しつつレーザ加工ヘッドの進行を進めることによって行う。または、レーザ加工ヘッドに常に先行する冷却ノズルを備え、この冷却ノズルから水を噴出してもよいものである。
次に、図1(B)に示すように、適宜形状、寸法の複数の穴HOを、ワークWに対して複数行、複数列配置する。この場合、上記各穴HOは、個別にレーザ切断加工を間欠的(断続的)に行うことになる。上記構成において、複数の穴HOを各行又は各列毎にレーザ切断加工を行うことにより、レーザ切断加工は、図1(B)に示す矢印Aのごとくジグザクに進行されることになる。又は、各行或は各列に沿ってレーザ加工ヘッドを一方向へ繰り返し移動して各穴HOのレーザ切断加工を行うことになる。この場合、隣接した穴HOを次々にレーザ切断加工を行うと、レーザ切断加工の進行方向の前側に蓄熱を生じ、穴HOの形状、寸法の加工精度が低下することがある。
また、上述のごときレーザ切断加工においては、各行毎に順次レーザ切断加工を行うと、レーザ切断加工時の熱伝導によって、行の後半側位置LF(レーザ切断加工の前側、すなわちレーザ切断加工が次第に進行する進行方向の前側)の蓄熱が次第に大きくなり、後半側位置LFの穴HOのレーザ切断加工を行うときに、バーニングを生じることがある。
したがって、本実施形態においては、適数の穴HOのレーザ切断加工を行った後、隣接した次の穴HOのレーザ切断加工を行うとき、当該次の穴HOのレーザ切断加工位置へ水を噴射して、次のレーザ加工位置を予め強制的に冷却するものである。よって、前工程におけるレーザ切断加工によって蓄熱される傾向にある蓄熱を防止でき、ワークWを予め冷却した状態でもってレーザ切断加工を行うことができるものである。
すなわち、蓄熱された位置を水によって予め冷却して穴HOのレーザ切断加工を行うものであるから、穴HOの形状、寸法を高精度に加工することができるものである。
ところで、各穴HOのレーザ切断加工を行う前に各穴HOの加工毎に各穴の加工位置へ冷却水をその都度噴射することに代えて、ワーク全体に対して冷却水を掛けて、すなわちワークWの上面の全面に冷却水を予め噴射して、例えばワーク上面に冷却水を貯留した状態とするなど、ワーク全体を予め冷却することも可能である。この場合、後半側位置LFは、ワーク上面に貯留されている冷却水によって冷却されることとなり、後半側位置LFへの蓄熱が抑制されるものである。したがって、ワークWの後半側位置LFの熱変形が抑制されることとなり、レーザ切断加工の加工精度が向上するものである。
図1(C)に示すように、ワークWのレーザ切断加工を連続的に行う場合、レーザ切断加工の経路RとワークWの端縁WEとの間の寸法が所定寸法以下、例えば前記高温熱影響部Hの半径以下に小さくなると、ワークWの周辺への熱伝導が抑制されて、前記近接位置N付近の蓄熱が大きくなり、バーニングを生じることがある。また、図1(D)に示すように、レーザ切断加工の経路Rが近接する場合や、図1(E)に示すように、前工程のレーザ切断加工位置の経路Rと今回のレーザ切断加工の経路Rとが近接した近接位置N付近の蓄熱が大きくなる。したがって、上述したごとき各種の近接位置付近のレーザ切断加工時にバーニングを生じることがある。
この場合、本実施形態においては、前記近接位置N付近のレーザ切断加工を行うとき、上記近接位置N付近のレーザ切断加工を行う前に、前記近接位置N付近へ予め水を噴射して、近接位置N付近を予め強制的に冷却した後にレーザ切断加工を行うものである。
ところで、図2に示すように、スタート位置SにおいてワークWにピアシング加工を行い、矢印A方向にレーザ切断加工を行い、ジグザグ加工をZ1,Z2,Z3と行ったところ、ジグザグが3回目における部分においてバーニングが発生した。この場合、1回、2回とジグザグ加工Z1,Z2が繰り返されると、ジグザグ加工位置Z1,Z2のレーザ加工切断時の熱がジグザグ加工の進行方向(矢印B方向)へ伝導される。そして、3回目のジグザグ加工位置Z3に相当する部分に次第に蓄熱され、この蓄熱された位置にレーザ切断加工を行ったことにより、加熱過剰となってバーニングを生じたものと考えられる。
したがって、レーザ切断加工の進行方向(矢印A方向、B方向)の前側であって、前工程のレーザ切断加工時の熱伝導によって蓄熱が行われ、今回のレーザ切断時に加熱過剰となる部分(蓄熱位置)へ冷却水を噴射して、レーザ切断加工時に、加熱過剰とならないように予め冷却することにより、バーニングを防止することができるものである。
本実施形態のレーザ切断加工装置は、前述したごとき蓄熱位置を予め冷却することのできる機能を備えたものであって、次のように構成してある。
すなわち、本実施形態に係るレーザ切断加工装置1は、図3に概念的、概略的に示すように、レーザ発振器3を備えている。また、レーザ切断加工装置1は、前記レーザ発振器3から発振されたレーザ光LBをワークWへ照射するレーザ加工ヘッド5を備えている。さらに、前記レーザ加工ヘッド5をワークWに対して相対的にX,Y,Z軸方向へ移動位置決めするためのサーボモータ7を備えている。そして、前記レーザ加工ヘッド5には、前記レーザ光LBを照射してのレーザ切断加工位置の周囲に冷媒としての冷却水を噴射するための冷却ノズルとしての第1ノズル9が備えられている。
また、レーザ加工ヘッド5には、レーザ切断加工方向であって、レーザ加工ヘッド5の前側へ冷却水を噴射するための冷却ノズルとしての第2ノズル11が備えられている。この第2ノズル11は、前記第1ノズル9による冷却水の噴射範囲外の位置に冷却水を噴射するものであり、前記レーザ加工ヘッド5に水平に回動自在に備えたリングギア13に一体的に装着してある。そして、前記リングギア13を回動するために、前記レーザ加工ヘッド5の一部には、前記リングギア13と噛合したピニオン15を備えたサーボモータ17が備えられている。
したがって、前記サーボモータ17を制御して前記リングギア13の回動を制御することにより、前記第2ノズル11を、レーザ加工ヘッド5の進行方向の前側へ常に位置決めすることができる。よって、前記第2ノズル11から冷却水を常に、又は適正のタイミングでもって噴出することにより、レーザ加工ヘッド5によるレーザ切断加工位置の前側であって、第1ノズル9による冷却範囲外の前側位置を予め冷却することができるものである。すなわち、ワークWにレーザ光LBを照射してのレーザ切断加工時の熱伝導によって蓄熱する傾向にある、レーザ加工の進行方向の前方位置を予め冷却することができるものである。
ところで、第1ノズル9から噴出(噴射)される冷却水によってレーザ切断加工位置付近の周囲の冷却を行う。そして、レーザ加工ヘッド5に備えた第1ノズル9による冷却範囲外であってレーザ切断加工の進行方向の前側の位置(以下、冷却要前側位置と称す)は、第2ノズル11から噴出される冷却水によって予め冷却することも可能である。この場合、加熱過剰によるバーニングを抑制することができると共に、熱伝導に起因する熱膨張を抑制してのレーザ切断加工が可能となり、レーザ切断加工による、例えば穴形状、寸法等の精度向上を図ることができるものである。
なお、レーザ切断加工位置の冷却要前側位置を予め冷却するには、前述したごとき構成によることなく、レーザ光LBの照射を停止した状態において、第1,2ノズル9,11の少なくとも一方のノズルから冷却水を噴出し、レーザ加工ヘッド5を予め冷却要前側位置へ移動して、冷却することも可能である。
ところで、前述のように、第1,第2のノズル9,11から冷却水を噴出すると、冷却水の使用量が多くなり、周囲に飛散するおそれがある。したがって、冷却水の噴射は、例えばバーニング等を抑制するために必要な場合にのみ行うことが望ましいものである。
前記レーザ切断加工装置1は、ワークWに対する前記レーザ加工ヘッド5のX,Y,Z軸方向への相対的な移動位置決めや、ワークWに対する冷却水の噴出等を制御するために、制御装置19を備えている。この制御装置19は、コンピュータから構成してあって、CPU21、RAM23、ROM25、入出力手段27及び表示手段29を備えている。
さらに、制御装置19は、自動プログラミング装置31において生成(作成)された各種の加工プログラムを格納した加工プログラム格納手段33を備えている。また、上記各加工プログラムに対応して冷却水の噴射を行う噴射プログラムを格納した噴射プログラム格納手段35を備えている。前記加工プログラム格納手段33に格納された各種の加工プログラムと、前記噴射プログラム格納手段35に格納された各噴射プログラムは、例えばプログラムNo等によって関連付けられている。
前記噴射プログラムは、前記自動プログラミング装置31によって加工プログラムを生成するときに同時に生成されるものである。すなわち、加工プログラムに、図1(A)に示すように、レーザ切断加工方句が矢印A,B方向に変更されるエッジ部が含まれる場合、冷媒噴射位置条件テーブル37におけるエッジ条件テーブル39を参照して、コーナ位置CEを通過する前に予め冷却水を噴射するプログラムを生成するものである。
前記エッジ条件テーブル39には、予め冷却水を噴出する条件として、矢印A方向から矢印B方向に変更されるエッジ部の角度θが予め設定した設定角度α以下であることが規定してある。また、前記コーナ位置CEから予め設定した距離LAの前側の位置でレーザ切断加工を一時停止して前記コーナ位置CEから距離LBの位置をまで冷却水を噴出することが予め規定してある。さらに、前記エッジ条件テーブル39には、前記コーナ位置CEを間にして距離LAの前側の位置から距離LBの位置までのレーザ切断加工速度及びレーザ出力がワークWの材質、板厚に応じて予め設定してある。
したがって、加工プログラム格納手段33に格納されている加工プログラムに、図1(A)に示すようなエッジ部が含まれている場合、当該加工プログラムに対応して噴射プログラム格納手段35に格納された噴射プログラムには、コーナ部のレーザ切断加工を行う際に、コーナ部を予め冷却するために、レーザ切断加工の一時停止位置及びコーナ部に予め冷却水を噴出するためのレーザ加工ヘッドの動作条件、予め冷却するための冷却水の噴射開始、停止、コーナ部のレーザ切断加工速度、レーザ出力等の各条件が含まれているものである。
したがって、前記加工プログラムに従ってワークWのレーザ切断加工を行う際、噴射プログラムに従って、レーザ切断加工位置がコーナ部のコーナ位置CEから距離LA前側の位置においてレーザ切断加工が一時停止される。そして、コーナ部を予め冷却するために冷却水を噴射する動作が行われ、コーナ部の冷却が行われた後に、レーザ切断加工速度、レーザ出力が予め規定されたレーザ切断速度、レーザ出力に制御されて、レーザ切断加工が行われる。そして、前記コーナ位置CEから距離LBの位置に達すると、レーザ切断加工速度及びレーザ出力は常態の値に復帰されることになる。よって、コーナ部のレーザ切断加工時に生じる傾向にあるバーニングや溶損を防止することができるものである。また、冷却水の使用量を抑制することができるものである。
なお、常態において、冷却水を噴射することなくレーザ切断加工を行う場合には、前述したように、コーナ部を予め冷却した後、コーナ部のレーザ切断加工を行うときで、距離LA,LBを移動しつつのレーザ切断加工時に、冷却水の噴出を行うことも可能である。
前記加工プログラム格納手段33に格納されている加工プログラムに、図1(C)に示すように、レーザ切断加工の経路RがワークWの端縁WEに近接した近接位置Nが含まれる場合には、当該加工プログラムに対応して噴射プログラム格納手段35に格納されている噴射プログラムには、前記近接位置N付近においての冷却水噴射条件が含まれているものである。
上記噴射プログラムは、前記冷媒噴射位置条件テーブル37における端縁近接条件テーブル41を参照して、前記自動プログラミング装置31によって生成されるものである。前記端縁近接条件テーブル41には、予め冷却水の噴射を必要とするところの経路Rと端縁WEとの間の間隔寸法が予め規定してある。
したがって、図1(C)に示すごとく、近接位置Nが含まれるレーザ切断加工を行う加工プログラムに従ってレーザ切断加工を行うときには、経路RがワークWの端縁WEに最も接近する前側において、すなわち、経路Rと端縁WEとの間隔寸法が予め設定されている間隔寸法(規定間隔寸法)の位置においてレーザ切断加工が一時停止される。そして、前記近接位置Nを間にして前記規定間隔寸法以下の範囲に冷却水が予め噴射され、近接位置N付近が予め冷却される。よって、近接位置Nが含まれるレーザ切断加工であっても、近接位置N付近の冷却が予め行われ、当該近接位置Nのバーニングを防止できるものである。近接位置N付近の冷却を行うには、レーザ出力を停止してレーザ加工ヘッド5を経路Rに沿って移動しつつ第1ノズル9から冷却水をワークWへ噴出し、ワークWの近接位置N付近を予め冷却することが望ましいものである。
前記加工プログラム格納手段33に格納されている加工プログラムに、図1(D)に示すように、レーザ切断加工の経路Rが近接した近接位置Nが含まれる場合、上記近接位置N付近を復路において接近通過するものである。したがって、上記プログラムに対応して噴射プログラム格納手段35に格納されている噴射プログラムにおいては、前記近接位置N付近を通過する復路の経路Rにおいて冷却水の噴出を行うものである。
上記復路の経路Rにおける冷却水噴出条件は、前記冷媒噴射位置条件テーブル37における加工経路近接条件テーブル43に規定してある。すなわち、前記近接位置N付近を通過する往路の経路Rと復路の経路Rとの間隔寸法が予め設定した間隔寸法(規定間隔寸法)以下になると、復路の経路Rにおいて第1,2のノズル9,11の適宜一方又は両方から予め冷却水の噴出を行い、設定した間隔寸法以下の範囲の冷却を行うべく規定してある。
したがって、図1(D)に示すように、レーザ切断加工を行う経路Rが往路と復路において近接している場合、前記往路の経路Rと復路の経路Rとの間隔が予め設定した間隔寸法以下になると、復路の経路Rのレーザ切断加工を一時停止して、間隔寸法が規定間隔寸法以下の範囲に冷却水の噴出が行われることになる。よって、レーザ切断加工の経路Rが近接した位置でのバーニングを防止することができるものである。近接位置N付近の冷却を行うには、レーザ出力を停止して、レーザ加工ヘッド5を復路の経路Rに沿って移動しつつ冷却水を、例えば第1ノズル9からワークWへ噴出して、ワークWの近接位置Nを予め冷却することが望ましいものである。
前記加工プログラム格納手段33に格納されている加工プログラムに、図1(E)に示すように、レーザ切断加工位置を変更してレーザ切断加工を間欠的(断続的)に行う場合であって、互のレーザ切断加工位置(互の経路Rの位置)が予め設定した設定値以下に接近した近接位置Nが含まれる場合、上記加工プログラムに対応して前記噴射プログラム格納手段35に格納された噴射プログラムには、レーザ切断加工位置が近接した近接位置N付近のレーザ切断加工を行う際に、冷却水を第1ノズル9又は第2ノズル11の少なくとも一方からワークWへ予め噴射して強制的に冷却する冷却水噴射条件が含まれるものである。
上記冷却水噴射条件は、前記冷媒噴射位置条件テーブル37における加工位置近接条件テーブル45に予め規定してある。すなわち、先にレーザ切断加工を行った穴HO1と後からレーザ切断加工を行う穴HO2の外形線が互に接近する場合であって、上記接近距離(間隔寸法)が予め設定した設定値(規定間隔寸法)以下の範囲に亘って冷却水を、例えば第1ノズル9からワークWへ噴射するものである。
上述の場合、先の穴HO1のレーザ切断加工時には、後の穴HO2の影響を受けることがないので、穴HO1のレーザ切断加工時には、第1ノズル9から冷却水を噴出しても、冷却水の噴出を停止した状態であってもよいものである。しかし、後の穴HO2のレーザ切断加工時には、先の穴HO1のレーザ切断時の熱が蓄熱されており、この蓄熱の影響によって、穴HO2の形状、寸法の精度が悪化し、またバーニングを生じ易いものである。したがって、後の穴HO2のレーザ加工時において、先の穴HO1との近接距離が予め設定した規定間隔寸法になった場合には、穴HO2のレーザ切断加工を一時停止して、第1ノズル9から予め冷却水を噴出して近接位置N付近を予め強制的に冷却するものである。
近接位置N付近の冷却を行うには、後の穴HO2のレーザ切断加工を行うに際しては、レーザ出力を停止した状態において、レーザ加工ヘッド5を穴HO2の加工位置へ移動して、例えば第1ノズル9によって予め冷却水を噴出し、ワークWの加工位置付近を前もって予め冷却することも可能である。また、後の穴HO2のレーザ切断加工を行う際に、第2ノズル11をレーザ切断加工の進行方向の前側へ位置決めする。そして、第2ノズル11から冷却水をワークWへ噴射して、レーザ切断加工を行う前側位置を予め冷却することも可能である。
前記加工プログラム格納手段33に格納されている加工プログラムに、図1(B),図2に示すように、レーザ切断加工の進行経路にジグザグを繰り返す経路が含まれる場合、または、同一方向へのレーザ切断加工を繰り返す工程、すなわちレーザ加工ヘッドの移動軌跡が並列するような並列運行のレーザ切断加工が含まれる場合、当該プログラムに対応して噴射プログラム格納手段35に格納されている噴射プログラムには、並列運行のレーザ切断加工、ジグザグのレーザ切断加工が、予め設定した設定回数以上になると、以後のレーザ切断加工は、第1ノズル9又は第2ノズル11の少なくとも一方から予め冷却水を噴出してワークWを予め強制的に冷却するための冷却水噴射条件が含まれているものである。
上記冷却水噴射条件は、前記冷媒噴射位置条件テーブル37におけるジグザグ進行条件テーブル47に予め規定してある。すなわち、図2を用いて説明したように、ジグザグ加工Z1,Z2が複数回繰り返すと、ジグザグ加工Z1,Z2の進行方向の前側に蓄熱部(蓄熱位置)が生じ、この蓄熱部のレーザ切断加工を行うと、バーニングを生じ易いものである。したがって、ジグザグ進行条件テーブル47には、ジグザグ加工の回数又は並列運行の回数が予め設定してあり、この設定回数を越えてジグザグ加工又は並列運行のレーザ切断加工を行う場合には、レーザ切断加工を一時停止して、例えば第1ノズル9から進行方向の前側へ冷却水を予め噴出し、レーザ加工の進行方向の前側(前方)位置を予め強制的に冷却するものである。
なお、上述の場合、第1,2ノズル9,11から冷却水を同時に噴出することも可能である。そして、第2ノズル11から噴出した冷却水によって、レーザ切断加工の進行方向の前側を予め冷却することが望ましいものである。また、レーザ出力を停止した状態において、前記加工プログラムに従ってワークWに対してレーザ加工ヘッド5を移動し、ワークWの上面に、例えば第1ノズル9から冷却水を全面的に噴出して、ワークWの全体を予め冷却することが望ましいものである。
上述の場合、レーザ切断加工時における熱の伝導によって蓄熱された位置を予め冷却した後にレーザ切断加工を行うものであるから、バーニングを防止することができると共に、穴等の形状、寸法のレーザ切断加工の精度向上を図ることができるものである。また、ワークWに対して全面的に冷却水を噴出した場合には、ワークW上に冷却水が貯留されることとなり、ワークWを効果的に冷却することができるものである。
前記制御装置19には、プログラム検索手段49が備えられている。このプログラム検索手段49は、前記入出力手段27からプログラムNoが入力されると、当該プログラムNoに対応する加工プログラムを前記加工プログラム格納手段33から検索すると共に、前記噴射プログラム格納手段35から対応した噴射プログラム検索する機能を奏するものである。
また、前記制御装置19には、発振器駆動動作制御手段51、加工ヘッド動作制御手段53が備えられている。前記発振器駆動動作制御手段51は、前記加工プログラム格納手段33から検索された加工プログラムに従って、レーザ発振器3のレーザ出力(連続出力、パルス出力)を、レーザ切断加工条件に対応して制御する機能を奏するものである。そして、前記加工ヘッド動作制御手段53は、前記加工プログラムに従って、前記X,Y,Zサーボモータ7、サーボモータ17の動作を制御する機能を奏するものである。
さらに、前記制御装置19には、冷媒噴出制御手段55が備えられている。この冷媒噴出制御手段55は、前記加工プログラムに対応して前記噴射プログラム格納手段35から検索された噴射プログラムに従って冷媒噴出手段57の動作を制御する機能を奏するものである。この冷媒噴出手段57は、貯水槽(図示省略)に接続したポンプ(図示省略)を備えた構成であって、この冷媒噴出手段57と前記第1,2のノズル9,11はそれぞれ接続路59を介して接続してある。そして、第1,2のノズル9,11との接続路には、接続路59を連通遮断自在な開閉弁V1,V2が配置してある。この開閉弁V1,V2の開閉動作は、前記冷媒噴出制御手段55によって制御されるものである。
上記構成により、加工プログラム格納手段33から検索された加工プログラムに従って、レーザ発振器3の出力を制御することができると共に、ワークWに対するレーザ加工ヘッド5のX,Y,Z軸方向への相対的な移動動作及びレーザ切断加工の進行方向の前側へ第2ノズル11を位置決め制御することができるものである。そして、噴射プログラム格納手段35から検索された噴射プログラムに従って、第1,2のノズル9,11から冷却水をワークWへ噴射する噴射時宜を、前記加工プログラムに従ってのレーザ切断加工に対応して適正に行うことができるものである。
なお、第1,2のノズル9,11から冷却水を噴出する場合、前記開閉弁V1,V2の開閉動作を制御することにより、第1,2のノズル9,11から個別に冷却水を噴出することや、同時に噴出することができる。そして、各ノズル9,11から冷却水を噴出する噴出タイミングを、レーザ切断加工に対応して所望の噴出タイミングとすることができるものである。したがって、第1,2のノズル9,11から所望のタイミングでもって適正量の冷却水を噴射でき、過剰の冷却水を噴出することを抑制することができるものである。
以上のごとき構成において、入出力手段27から所望のプログラムNoを入力すると、当該プログラムNoに対応した加工プログラムが加工プログラム格納手段33から検索されると共に、噴射プログラムが噴射プログラム格納手段35から検索される。そして、検索された加工プログラムに従ってレーザ加工ヘッド5の移動動作が制御されると共に、レーザ発振器3の出力が制御されて、ワークWのレーザ切断加工が行われることになる。
上述のごとく、ワークWのレーザ切断加工を行うとき、検索された噴射プログラムに従って、ワークWの適宜レーザ切断加工位置に対して第1,2ノズル9,11の適宜一方又は両方から冷却水の噴出が行われ、ワークWのレーザ切断加工位置の冷却が強制的に行われることになる。
上記レーザ切断加工を行う場合、加工プログラムに、図1(A)に示すエッジ部が含まれる場合には、コーナ位置CEのレーザ切断加工を行う前に、レーザ加工を一時停止した状態において、コーナ位置CEの前側LAの位置から第1ノズル9から冷却水の噴出が開始され、前記コーナ位置CEの後側LBの位置まで冷却水の噴出が継続されるものである。したがって、エッジ部が含まれるレーザ切断加工においては、エッジ部へ予め冷却水を噴出して強制的な冷却が行われる。よって、エッジ部においてのバーニングやエッジ部が溶損すること(エッジ部が溶け落ちること)を防止することができるものである。
ところで、前述のごとくエッジ部のレーザ切断加工を行うとき、レーザ加工ヘッド5の進行方向の前側へ第2ノズル11を位置決めし、当該第2ノズル11から冷却水を噴出して、レーザ切断加工の進行方向の前側を強制的に予め冷却することができるものである。さらに、前記エッジ部のレーザ切断加工を行うに当り、レーザ光LBの出力を停止して、前記前側LAの位置及び後側LBの位置に沿ってレーザ加工ヘッド5を移動し、第1ノズル9からワークWに対して予め冷却水を噴出する。すなわち、エッジ部を予め冷却した後に、前記第1ノズル9から冷却水を噴出してエッジ部のレーザ切断加工を行うことも可能である。すなわち、前工程におけるレーザ切断加工時の熱の伝導によって蓄熱した部分を前もって予め冷却した後に、レーザ切断加工を行うことができるものである。
前記加工プログラム格納手段33から検索された加工プログラムに、図1(B)に示したジグザグ加工や図1(C)〜(E)に示した各種の近接位置Nが含まれている場合には、検索された加工プログラムに対応して噴射プログラム格納手段35からそれぞれに対応した噴射プログラムが検索される。この検索された噴射プログラムには、ジグザグ加工や各種の近接位置Nに対応して適正に予め冷却水を噴出するプログラムが含まれている。
したがって、前工程のレーザ切断加工時の熱の伝導によって蓄熱された部分のレーザ切断加工を行う場合には、第1ノズル9から冷却水を噴出してレーザ切断加工が行われる。この場合、前述した場合と同様に、蓄熱された部分に予め冷却水を噴出して冷却した後にレーザ切断加工を行うことができるものである。
以上のごとき説明より理解されるように、噴射プログラム格納手段35には、加工プログラム格納手段33に格納された加工プログラムに対応した噴射プログラムが格納されているものである。したがって、加工プログラム格納手段33に格納された加工プログラムによってワークWのレーザ切断加工を行うときには、上記加工プログラムに対応した噴射プログラムが噴射プログラム格納手段35から検索され、前記加工プログラムに従ってレーザ切断加工を行うときに蓄熱された部分へ予め冷却水を噴出して強制的に冷却することになる。よって、レーザ切断加工時の熱伝導によって蓄熱部が生じる場合であっても、レーザ切断加工の精度向上を図ることができるものである。
ところで、前記説明においては、加工プログラム格納手段33に格納された加工プログラムに対応した噴射プログラムを噴射プログラム格納手段35に予め格納している旨、説明した。しかし、加工プログラム格納手段33に格納された加工プログラムを実行する際に、当該加工プログラムに対応して噴射プログラムを作成することも可能である。この場合、加工プログラムに対応して噴射プログラムを生成(作成)するためのプログラム作成手段61を前記制御装置19に備えればよいものである。
上記プログラム作成手段61は、先読み手段63、経路解析手段65及び蓄熱位置演算手段67を備えている。前記先読み手段63は、前記加工プログラム格納手段33から検索された加工プログラムを実行する前に、当該加工プログラムを先読みする機能を奏するものである。前記経路解析手段65は、前記先読み手段63によって先読みされた加工プログラムによるレーザ切断加工の加工経路を解析する機能を奏するものである。
前記蓄熱位置演算手段67は、前記経路解析手段65によって解析された加工経路にエッジ部が含まれる場合には、前記冷媒噴射位置条件テーブル37のエッジ条件テーブル39を参照して、エッジ部のレーザ切断加工を行う際に、冷却水を噴出する噴射位置条件(例えば、コーナ位置CEから前側LA,後側LBの位置)を設定し、噴射プログラムを生成する機能を奏するものである。
すなわち、蓄熱位置演算手段67は、経路解析手段65によって解析された加工プログラムの加工経路と、冷媒噴射位置条件テーブル37におけるエッジ条件テーブル39、端縁近接条件テーブル41、加工経路近接条件テーブル43、加工位置近接条件テーブル45、ジグザグ進行条件テーブル47とに基いて、前工程のレーザ切断加工時の熱伝導によって蓄熱される位置を算出する。そして、加工プログラムによって蓄熱位置のレーザ切断加工を行う際に、当該蓄熱位置に予め冷却水を噴射するための噴射プログラムを作成するものである。
したがって、プログラム作成手段61を備えた構成においては、既に使用している加工プログラムに対応して、噴射プログラムを作成して蓄熱位置に対して予め冷却水を噴射して冷却することができる。よって、蓄熱による熱膨張を抑制することができることになる。すなわち、既に使用されている加工プログラムであっても、蓄熱位置を予め冷却してレーザ切断加工を行うことができることとなり、蓄熱に起因する熱膨張を抑制することができる。したがって、レーザ切断加工の高精度化を図ることができるものである。
ところで、本発明は、前述したごとき実施形態に限ることなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能である。すなわち、制御装置19にネスティングデータ格納部69を備える。そして、前記自動プログラミング装置31によって加工プログラムを生成する際に用いたネスティングデータと同一のデータを、作成した加工プログラムのプログラムNoと関連付けて前記ネスティングデータ格納部69に格納する。
そして、前記加工プログラム格納手段33から加工プログラムを検索したとき、検索した当該加工プログラムのプログラムNoに関連したネスティングデータを検索手段49によって検索する。この検索したネスティングデータに基いて、ワークWに対するレーザ切断加工位置の配置、加工形状、寸法を演算手段によって算出する。そして、算出したレーザ加工の加工形状、寸法及び配置位置に基いて、前記冷媒噴射位置条件テーブル37におけるエッジ条件テーブル39、端縁近接条件テーブル41、加工経路近接条件テーブル43、加工位置近接条件テーブル45、ジグザグ進行条件テーブル47を参照し、蓄熱位置を蓄熱位置演算手段47によって算出して、前記加工プログラムに対応した噴射プログラムを作成することも可能である。すなわち、加工プログラムの作成に使用したネスティングデータに基いて(参照して)、噴射プログラムを作成することも可能である。
また、冷媒噴射位置条件テーブル37は、自動プログラミング装置31及び/又はプログラム作成手段61に備えることも可能である。
ところで、前記説明は、ワークのバーニング等を抑制するために、蓄熱部に予め冷却水を噴射して冷却する旨説明した。よく知られているように、ワークのレーザ切断加工を行って、ワークから切断分離された切断片を手作業的に取り出す場合、切断片が熱い場合がある。
したがって、ワークのレーザ切断加工を行った後に、レーザ出力を停止した状態において、レーザ切断加工時と同様に、ワークに対して再び冷却水を噴射することが望ましい。このように、レーザ切断加工終了後に、ワークに対して再び冷却水を噴射すると、切断片が冷却されることとなり、手作業での切断片の取り出しが容易になるものである。