JP6635862B2 - BiFeO3系焼結体からなるスパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents

BiFeO3系焼結体からなるスパッタリングターゲット及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Ti(チタン)を含有するBiFeO系焼結体からなるスパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、特に、アーキングやパーティクルなどの発生が少ない、高密度のスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
BiFeOはぺロブスカイト型の結晶構造を有し、強誘電体メモリ(FeRAM)用の薄膜などに利用されている。通常、BiFeO系薄膜は、物理気相成長(PVD)法又は化学気相成長(CVD)法によって成膜され、また、特性を向上させるために、BiやFeの一部を他の元素に置換することなども行われている。以下にBiFeOに関連する先行文献を示す。
特許文献1には、ABOで示される強誘電体薄膜であって、A=Bi、Pb、Ba、Sr、Ca、Na、K、希土類元素のうち1種又は2種以上、B=Ti、Nb、Ta、W、Mo、Fe、Co、Cr、Zrのうち1種又は2種以上、とすることが記載されている。また、この薄膜は、混合粉末を押し固めたターゲットを用いた高周波スパッタ法により、成膜することが記載されている。
特許文献2には、Bi:Nd:Fe:Mn=1.0:0.05:0.97:0.03の組成を有する焼結ターゲットを用い、パルスレーザー照射によりターゲットから射出されたアブレーション粒子を基板上に堆積することにより、BFOのBiサイト及びFeサイトの両方のサイトを元素置換した強磁性体材料の薄膜が開示されている。また、この材料を強誘電体として不揮発メモリに、圧電体としてアクチュエータなどに、利用することが
記載されている。
特許文献3及び4には、鉛フリーで、高い比誘電率を有する非鉛誘電体薄膜を化学溶液堆積法により、形成する技術が開示されている。具体的には、BaTiOの成分、Bi(Mg0.5Ti0.5)Oの成分、BiFeO成分のうち、少なくとも2成分を含有する液組成物を用いることが記載されている。また、この薄膜を、コンデンサ、キャパシタ、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子として利用することが記載されている。
特許文献5には、(Bi1−xSr)(Fe1−yTi)O、但し、0.2≦x≦0.7、0.2≦y≦0.7で表される焼結体であって、焼結体そのものを比誘電率の高いセラミック電子部品(コンデンサ、圧電素子、インダクタ、バリスタ、サーミスタ、抵抗など)とすることが開示されている。また、該焼結体は、原料粉末を混合し、1000℃以上で熱処理(焼成)して、作製することが記載されている。
また、非特許文献1には、BiFeOにMn及び/又はTiをドープした薄膜の強誘電性に関する研究が示されている。また、これらの薄膜は、Bi1.1FeO、Bi(Fe0.98Ti0.02)O、Bi(Fe0.97Mn0.03)O、Bi(Fe0.95Mn0.03Ti0.02)Oのセラミックターゲットを、パルスレーザーデポジション(PLD)法によって、成膜することが記載されている。
非特許文献2には、W、Nb又はTiを含有するBiFeOセラミックスの焼結挙動及びミクロ組織に関する研究が示されている。その製造方法として、Bi、Fe、WO、Nb、TiO、を粉砕、混合した後、600〜800℃で仮焼し、これを粉砕後、200MPaで成型し、800〜900で焼結することが記載されている。また、得られたセラミックスの密度や結晶相などについて記載されている。
非特許文献3には、溶融塩法で作製したTiドープBiFeOセラミックスの分解挙動及び電気特性に関する研究が示されている。その製造方法として、Bi、Fe、TiOの粉末を750℃で仮焼し、その後、100MPaで成型した後、760〜980℃で焼結することが記載されている。また、得られたセラミックスの密度や結晶相などついて記載されている。
非特許文献4には、Bi(Fe1−xTi)O(x=0〜0.1)セラミックスの構造、誘電率、リーク電流に関する研究が示されている。また、その製造方法として、Bi、Fe、TiOの粉末を700℃で仮焼した後、820℃、2時間の条件にて、焼結することが記載されている。また、得られたセラミックスの密度や結晶相などについて、記載されている。
非特許文献5には、Feの一部をTiに置換したBiFeO膜に関する研究が示されている。その膜はゾルーゲル法を用いて作製され、具体的には、BFTO(BiFeTiO)前駆体液をスプレーコーディングによってITO基板上に成膜し、その後、350℃でプレアニールした後、大気中600℃でアニールすることが記載されている。また、得られた薄膜のX線回折パターンや誘電率に関する評価結果が示されている。
非特許文献6には、BiFeO、BiFe0.9Ti0.1、BiFe0.9Ti0.05セラミックスの誘電特性に関する研究が示されている。その製造方法として、Bi、Fe、TiOの原料粉を所望の組成をなるように秤量し、これを湿式混合、乾燥後、これを一軸加圧し、得られた成形体を880℃で30分、焼結することが記載されている。また、得られたセラミックスのX回折パターンや誘電率の評価結果について示されている。
特開平8−253324号公報 特開2009−231482号公報 特開2015−107904号公報 特開2014−107905号公報 特開2014−189464号公報
T. Kawae, Y. Terauchi, H. Tsuda, M. Kumeda, and A. Morimoto,"Improved leakage and ferroelectric properties of Mn and Ti codoped BiFeO3 thin films", APPLIED PHYSICS LETTERS 94, 112904 (2009) M.S. Bernardo, T. Jardiel, M. Peiteado, A.C. Caballero, M. Villegas, "Sintering and microstructural characterization of W6+, Nb5+ and Ti4+ iron-substituted BiFeO3", Journal of Alloys and Compounds 509(2011)7290-7296 X. H. Zheng, Z. H. Ma, P. J. Chen, D. P. Tang, N. Ma, "Decomposition behavior and dielectric properties of Ti-doped BiFeO3 ceramics derived formmolten salt method", J Mater Sci: mater Electon (2012)23:1533-1537 J. H. CHO, S. C. LEE, H. G. YEO, Y. S. SUNG, M. H. KIM, T. K. SONG, S.S. KIM, AND C. CHOI, "Structural, Dielectric and Leakage Current Behavior of of Ti-Substituted BiFeO3 Ceramics", Taylar & Francis, Ferroelectrics, 410:16-21, 2011 Liu Hongri, Liu Zuli, Li Xiaulu, Yao Kailunm "Effects of substitution of Ti for Fe in BiFeO3 films prepared by so-gel process", Physica B 400 (2007)252-256 Yan Hong Gu, Wan Ping Chen, Ming Jian Ding, Jian Quan Qi, "Dielectric Properties of BiFeO3 Ceramics with Equal and Unequal Substitutions of Ti for Fe" Key Engineering Materials Vols, 434-435 (2010) pp278-280
しかしながら、上記文献に記載されている焼結体は、パルスレーザーデポジション(PLD)法に用いられる小型ターゲットであったり、焼結体それ自体が強誘電体として利用されるものであったりするものである。近年、FeRAM(強誘電体メモリ)強誘電体膜をスパッタリング法によって作製するために、商業ベースのスパッタリングターゲットが求められており、上記文献に記載された焼結体では、その要求を満たすことができないという問題があった。
特に、焼結体(ターゲット)の組織中に金属Bi相が存在すると、そこを起点として異常放電(アーキング)を発生して、スパッタリングの際にパーティクルが発生し易いという問題があった。本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、パーティクルやアーキングの発生を低減できる、金属Biの析出がほとんど見られない焼結体からなるスパッタリングターゲット及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を行った結果、焼結条件を工夫することにより、金属Bi相の生成を抑制することができ、さらには、焼結体(ターゲット)の低抵抗化や高密度化を達成することができるとの知見を得た。このようなスパッタリングターゲットは安定的なスパッタ成膜が可能であり、得られる薄膜を、強誘電体膜として利用する場合、その特性改善や生産性向上が可能となる。
本発明者らは、この知見に基づき、下記の発明を提供する。
1)原子比における組成式:Bi(Fe1−yTi)O、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.3、で表される成分組成を有する焼結体からなり、X線回折においてバックグランド強度に対する金属Biに帰属するX線回折ピーク強度比が3.0未満であり、かつ、バルク抵抗率が500kΩcm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
2)X線回折において、Bi25FeO40相に帰属するX線回折ピークが出現し、かつ、Bi25FeO40相に帰属するX線回折ピーク強度比が他の相のX線回折ピーク強度に対して1.0以上であることを特徴とする上記1)記載のスパッタリングターゲット。
3)密度が6.5g/cm以上であることを特徴とする上記1)又は2)記載のスパッタリングターゲット。
4)抗折強度が80MPa以上であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット。
5)Bi、Fe、TiOの粉末を、原子比における組成式:Bi(Fe1−yTi)O、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.3、で表される成分組成となるように秤量、混合し、得られた混合粉末を、真空中又は不活性ガス雰囲気中、温度650℃超800℃未満で加圧焼結することを特徴とすることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
6)加圧焼結は、ホットプレス焼結によって行うことを特徴とする上記5)記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
7)プレス面圧を50〜500kg/cmとすることを特徴とする上記6)記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
本発明によれば、焼結条件を工夫することにより、金属Bi相の析出を抑制することができ、さらには、高密度で、高強度のBi(Fe1−yTi)Oスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。このターゲットはアーキングやパーティクルの発生が少なく、安定したスパッタリングを行うことができるので、膜質や歩留まりを向上できるという優れた効果を有する。
実施例及び比較例の焼結体(ターゲット)のX線回折スペクトル(広域)を示す図である。 実施例及び比較例の焼結体(ターゲット)のX線回折スペクトル(狭域)を示す図である。 本発明で使用した原料混合粉のTMA(熱機械分析)の結果を示す図である。 焼結体(ターゲット)の抗折強度の測定箇所を示す模式図である。
本発明のスパッタリングターゲットは、原子比における組成式がBi(Fe1−yTi)O、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.3、で表される成分組成を有する焼結体からなる。一般にスパッタして得られる膜の成分組成は、スパッタリングターゲットの成分組成と大きく異なることがないことから、膜において所望される組成がターゲットの成分組成となる。本発明では、少なくとも、強誘電体として機能を備えた膜を形成するために、スパッタリングターゲットの成分組成を上記の範囲としている。
本発明は、後述の通り、真空中又は不活性ガス雰囲気中で焼結することを特徴としているので、得られる焼結体は酸素欠損している可能性があり、一方で、Feに対して、酸素量の多いTiOを添加しているので、酸素が過剰になっている可能性もある。そのため、上記酸素量は3±0.2程度の範囲で変化する可能性があり、本発明はそのような場合も含むものである。本発明では、上記ターゲットや膜の成分組成は、ICP-OES(高周波誘導結合プラズマ発光分析法)を用いて評価している。
本発明のスパッタリングターゲットは、X線回折において、バックグランド強度に対する金属Biに帰属するX線回折ピーク強度比が3.0未満であることを特徴とする。本発明は、金属Biの析出が抑制された結果、そのX線回折ピーク強度比を3.0未満となり、金属Biに起因する異常放電(アーキング)を防止することができる。
金属Biに帰属するX線回折ピークとして、JCPDS(No.01−085−1329)カードに基づき、(012)面におけるピークを使用する。なお、他成分が固溶した場合等、ピークがずれる可能性があるが、JCPDSカードに記載される(012)面の27.16°を基準に付近のピークをBiのピークか否かを判断し、本発明のようにBiのピークが観察されない場合は、27.16°を基準とする。但し、他の相によりBiのピークが判断し難い場合もあり、他の相のピーク位置がどこに表れているかも考慮して、総合的な判断が望ましい。本発明では、2θ=26.3〜27.3°の最高強度をピーク強度として判断した。
バックグランド強度は((26.26〜26.34°の平均強度)とする。なお、上記のバックグランド強度の位置に、特定の相のピークが現れる(例えば、Sonneveld-Visser法、バックグラウンド関数法、スプライン関数法等により、バックグランドを除去してもなおピークが存在すると判断される)場合には、さらに上記の角度を低角側にして、特定の相のピークがないと判断される位置でバックグランドの強度とする。このように、バックグランドの強度が特定し難い場合は、上記の範囲を変更してもよい。すなわち、必ず上記の範囲をバックグランドの基準とする必要はなく、適宜角度、範囲を変更して判断するのが望ましい。また、サンプルの測定箇所は任意の箇所でよく、スパッタ面や断面のいずれでもよい。場合によっては、粉砕した粉を用いてもよい。
本発明のスパッタリングターゲットは、X線回折において、Bi25FeO40相に帰属するX線回折ピークが出現し、かつ、Bi25FeO40相に帰属するX線回折ピーク強度比が、他の相のX線回折ピーク強度に対して1.0以上であることが好ましい。Bi25FeO40相に帰属するX線回折ピークとしては、2θ=27.69°付近に現れる(310)面におけるピークを使用する。一方、他の相のX線回折ピークは、Bi25FeO40相以外の相の最大強度のピークを使用する。このようにBi25FeO40相単相にできるだけ近いターゲット組織とすることで、安定で均一な成膜が可能となる。
なお、上記のX線回折ピークは、X線回折装置(リガク社製:UltimaIV、Cu−Kα線)を用い、測定条件(管電圧:40kV、管電流:30mA、測定方法:2θ−θ反射法、スキャン速度:8.0°/min、サンプリング間隔:0.02°)の下で得られるXRDスペクトルから分析した。
また、本発明のスパッタリングターゲットでは、TiがBiFeOのFeサイトに固溶しているため、Fe3+とFe2+が共存し、電荷移動が生じて抵抗が低下する。一方、Tiが固溶していない場合は、Fe3+のみとなるため導電性はなく、抵抗率を見ることでTiの固溶状況を推測することが可能である。本発明のターゲットでは、Tiの固溶により、バルク抵抗率を500kΩcm以下まで抵抗率が低下させることが可能である。なお、Tiが固溶していない場合は、Tiが異相として複合酸化物化すると考えられるため、割れや不均一化の原因となる。
また、本発明は、ターゲットの密度を6.5g/cm以上とすることができる。また、好ましくは、密度が7.0g/cm以上である。このような高密度ターゲットは、スパッタ時において、割れや亀裂の発生がなく、また、パーティクルの発生が少ないという優れた効果を有する。なお、上述の非特許文献には、焼結体の密度に関する開示があるが、いずれも高温での焼結によって、原料からの組成ズレが生じている。本発明において、ターゲットの密度は、ターゲット片の寸法をノギスで測長して体積を求め、その体積と重量とを算出して求めた。
本発明のスパッタリングターゲットは、その抗折強度が80MPa以上であることが好ましい。原料粉末や焼結条件等の適切な調整により、このような高強度の焼結体からなるスパッタリングターゲットの作製を可能にする。高強度のスパッタリングターゲットは、スパッタ時の割れや亀裂等を防止することができ、パーティクルの発生を抑制することができる。抗折強度は、引張圧縮試験機(今田製作所製:SV−201NA−50SL)を用い、「JIS R 1601 ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法」に準じて測定を行った。サンプルの箇所は、極端な場所は避け、例えば、図4のような箇所から採取するのが望ましい。本発明では、図4のように5箇所の抗折強度を測定し、その平均値としている。
本発明のスパッタリングターゲットは、以下のようにして製造することができる。
まず、Bi、Fe、TiOの原料粉末を秤量、混合した後、この混合粉末を真空中又は不活性ガス雰囲気中にて加圧焼結して、製造する。このとき、焼結温度は、650℃超、800℃未満とすることが好ましい。650℃以下であると、高密度のターゲットが得られず、一方、800℃以上であると、Biの蒸発による組成ズレや密度の低下が生じるため、好ましくない。さらに好ましくは、670℃以上750℃以下である。また、原料粉末は、緻密な焼結体を作製するために、平均粒子径2μm以下とすることが好ましい。
一方、焼結体の作製方法として、混合粉末を仮焼(合成)し、これを粉砕したものを焼結用粉末として用いることが考えられる。しかし、Biの融点(820℃)以下で仮焼した粉はBi25FeO40相が生成するものの、これを、真空中又は不活性ガス雰囲気中にて650℃程度で加圧焼結した場合は、Bi25FeO40相が還元されて、金属Biが生成されてしまい、また密度も低下することなるため、好ましくない。
また、他の焼結体の作成方法として、混合粉末を常圧焼結することが考えられる。しかし、常圧焼結では昇温過程で体積が膨張して、クラックが発生することがある。したがって、加圧焼結により、昇温時に発生する体積膨張を荷重により抑えることが必要である。加圧焼結は常圧焼結に比べて短時間での焼結が可能であるため、金属Biが還元する前に焼結を行うことができ、また、生産性の面でメリットもある。本発明においてホットプレス焼結時のプレス面圧を50〜500kg/cmとすることが好ましい。
本発明において、評価方法等は、以下の通りである。
(成分組成について)
装置:SII社製SPS3500DD
方法:ICP-OES(高周波誘導結合プラズマ発光分析法)
(密度測定について)
寸法測定(ノギス)、重量測定
(バルク抵抗値について)
装置:NPS社製 抵抗率測定器 Σ−5+
方法:直流4探針法
(X線回折分析について)
装置:リガク社製UltimaIV、Cu−Kα線
測定条件
管電圧:40kV
管電流:30mA
測定方法:2θ−θ反射法
スキャン速度:8.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
(抗折力測定について)
装置:今田製作所製引張圧縮試験機 SV−201NA−50SL
測定方法:「JIS R 1601 ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法」に準じて測定を行った。
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
(実施例1)
Bi粉、Fe粉、TiO粉を準備し、これらの粉末を、表1に記載される成分組成となるように配合比に調合し、これを混合した。次に、この混合粉末をAr雰囲気中、温度700℃、面圧250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。また、得られたターゲットが所望の組成になっていることを確認した。
得られた焼結体のバルク抵抗率と密度を測定した結果、表1に示す通り、密度は7.25g/cmに達し、バルク抵抗は12.5kΩ・cm、抗折力は82.5MPaであった。また、焼結体のX線回折を分析した結果、表1に示す通り、金属BiのX線回折ピーク/バックグラウンド強度比は2.0であり、Bi25FeO40のX線回折ピーク/Bi25FeO40以外の相の最強ピーク強度比は1.9であった。このターゲットを使用してスパッタリングを実施したところ、パーティクル数は少なかった。
以上の結果を表1に示す。
(実施例2〜3)
Bi粉、Fe粉、TiO粉を準備し、これらの粉末を、表1に記載される成分組成となるように配合比に調合し、これを混合した。次に、この混合粉末をAr雰囲気中、温度700℃、面圧250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。また、得られたターゲットが所望の組成になっていることを確認した。
得られた焼結体のバルク抵抗率と密度を測定した結果、表1に示す通り、いずれも、密度は6.5g/cmを超え、バルク抵抗は500kΩ・cm未満であった。また、焼結体のX線回折を分析した結果、表1に示す通り、金属BiのX線回折ピーク強度比は3.0未満であり、Bi25FeO40のX線回折ピーク強度比は1.0以上であった。このターゲットを使用してスパッタリングを実施したところ、いずれもパーティクル数は少なかった。
(比較例1〜2)
比較例1〜2は、焼結温度を650℃以下とした例である。
Bi粉、Fe粉、TiO粉を準備し、これらの粉末を、表1に記載される成分組成となるように配合比に調合し、これを混合した。次に、この混合粉末をAr雰囲気中、温度650℃未満、面圧250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。また、得られたターゲットが所望の組成になっていることを確認した。
得られた焼結体のバルク抵抗率と密度を測定した結果、表1に示す通り、いずれも密度は6.5g/cm未満、バルク抵抗は500kΩ・cm超であった。このターゲットを使用してスパッタリングを実施したところ、いずれも実施例に比べてパーティクル数が増加していた。以上の通り、焼結温度が低すぎると密度が上がらないという問題がある。
(比較例3)
比較例3は、焼結温度を800℃以上とした例である。
Bi粉、Fe粉、TiO粉を準備し、これらの粉末を、表1に記載される成分組成となるように配合比に調合し、これを混合した。次に、この混合粉末をAr雰囲気中、温度750℃超、面圧250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を、機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。なお、得られたターゲットが所望の組成になっていることを確認した。
得られた焼結体のバルク抵抗率と密度を測定した結果、表1に示す通り、いずれも密度は6.5g/cm未満、バルク抵抗は500kΩ・cm超であった。また、焼結体のX線回折を分析した結果、表1に示す通り、金属BiのX線回折ピーク強度比は3.0超で、金属Biの析出が観察された。このターゲットを使用してスパッタリングを実施したところ、いずれも実施例に比べてパーティクル数が増加していた。以上の通り、焼結温度が高すぎると金属Biが析出するという問題がある。
(比較例4)
比較例4は、常圧焼結(焼結温度800℃)した例である。
Bi粉、Fe粉、TiO粉を準備し、これらの粉末を、表1に記載される成分組成となるように配合比に調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を大気若しくは酸素雰囲気中、温度800℃の条件で、常圧焼結した。その後、この焼結体を、機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。なお、得られたターゲットが所望の組成になっていることを確認した。
得られた焼結体の密度を測定した結果、密度が4.64g/cmと極めて低くなった。比較例4は、密度が低いため、X線回折分析、抗折力試験が困難であり、またスパッタリングの実施も困難であった。
(比較例5)
比較例4〜5は、常圧焼結(焼結温度850℃)した例である。
Bi粉、Fe粉、TiO粉を準備し、これらの粉末を、表1に記載される成分組成となるように配合比に調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を大気若しくは酸素雰囲気中、温度850℃の条件で、常圧焼結した。その後、この焼結体を、機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。なお、得られたターゲットが所望の組成になっていることを確認した。
得られた焼結体の密度を測定した結果、表1に示す通り、密度が7.17g/cmであった。比較例5は、比較例4に比べて密度が上っていたものの、クラックが多数発生しており、スパッタリングの実施が困難であった。以上の通り、常圧焼結では、焼結温度が低いと密度が上がらず、焼結温度が高いと密度が上るが、クラックが発生した。
なお、図3に示すように、混合粉についてTMA(熱機械分析)にて室温から800℃までの体積変化を測定したところ、体積膨張が確認された。この体積膨張によりクラックが生じたと考えられる。
(比較例6〜9)
比較例6〜9は、仮焼を行った例である。
Bi粉、Fe粉、TiO粉を準備し、これらの粉末を、表1に記載される成分組成となるように配合比に調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を大気中、温度750℃(比較例7、8)、800℃(比較例6、9)で仮焼した後、粉砕した。その後、この粉砕粉をAr雰囲気中、温度650℃(比較例6)、720℃(比較例7)、800℃(比較例8、9)、面圧250kgf/cmの条件でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を、機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。また、得られたターゲットが所望の組成になっていることを確認した。
得られた焼結体のX線回折を分析した結果、表1に示す通り、金属BiとバックグラウンドのX線回折ピーク強度比は3.0超で、金属Biの析出が観察された。また、Bi25FeO40と第2相最大ピークのX線回折ピーク強度比は1.0以下であった。このターゲットを使用してスパッタリングを実施したところ、いずれも実施例に比べてパーティクル数が増加していた。以上の通り、焼結温度が低いと密度が上らないだけでなく、金属Biが析出し、焼結温度が高いと密度が上るものの金属Biの析出が増加する。また、仮焼温度を上げても、上記の問題を解消することができない。
以上の通り、本願発明の製造方法により作製したスパッタリングターゲットは高密度、高強度であって、良好なスパッタリング特性が得られた。なお、参考までに、実施例と比較例のスパッタリングターゲット(焼結体)のX線回折スペクトルを図2、3に示す。図2に示すように、いずれの実施例もBi25FeO40相の(310)面に帰属するX線回折ピーク強度比が他の相のX線回折ピーク強度よりも大きかった。一方、図2、図3に示すように、比較例では、Bi25FeO40相の(310)面に帰属するX線回折ピーク強度比が他の相のX線回折ピーク強度よりも小さく、比較例によっては、金属BiのX線回折ピークも観察された。
本発明のスパッタリングターゲットは、高い密度を有し、また、金属Biの生成が抑制されていることから、安定したスパッタリングを可能とする。そして、このターゲットを用いることで、成膜の際にスパッタ時に発生するパーティクル(発塵)やノジュールを低減し、品質のばらつきが少なく量産性を向上させることができる。本発明のスパッタリングターゲットを使用して形成された薄膜は、強誘電体として不揮発メモリ、圧電体としてアクチュエータなどに、利用することができる。

Claims (7)

  1. 原子比における組成式:Bi(Fe1−yTi)O、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.3、で表される成分組成を有する焼結体からなり、X線回折において、バックグランド強度に対する金属Biの(012)面に帰属するX線回折ピーク強度比が3.0未満であり、かつ、バルク抵抗率が500kΩcm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  2. X線回折において、Bi25FeO40相に帰属するX線回折ピークが出現し、かつ、Bi25FeO40相の(310)面に帰属するX線回折ピーク強度比が他の相のX線回折ピーク強度に対して1.0以上であることを特徴とする請求項1記載のスパッタリングターゲット。
  3. 密度が6.5g/cm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のスパッタリングターゲット。
  4. 抗折強度が80MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  5. Bi、Fe、TiOの粉末を、原子比における組成式:Bi(Fe1−yTi)O、0.9≦x≦1.1、0<y≦0.3、で表される成分組成となるように秤量、混合し、得られた混合粉末を、真空中又は不活性ガス雰囲気中、温度650℃超800℃未満で加圧焼結することを特徴とすることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  6. 加圧焼結は、ホットプレス焼結によって行うことを特徴とする請求項5記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  7. プレス面圧を50〜500kg/cmとすることを特徴とする請求項6記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
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