ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、寝台上での膝立位による胸骨圧迫時に術者の足趾を安定して支持することのできる、新規な構造の足趾支持台を提供することにある。
本出願人は、寝台上における膝立位での胸骨圧迫に際して、術者の足趾の支持が不安定になる理由として、術者の激しい動作(重心移動)などにより足趾支持台が寝台からずれてしまうということを見出した。
すなわち、本発明の第1の態様は、天板と脚部とから構成されて、患者の寝台上での膝立位による胸骨圧迫時に術者の足趾を支持する足趾支持台であって、前記寝台から離隔する方向において移動不能に固定される固定手段を備えていることを特徴とするものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、患者の寝台から離隔する方向において移動不能に固定される固定手段を備えていることから、寝台上での膝立位による胸骨圧迫時に術者の圧迫作動に伴う外力が足趾支持台に及ぼされても、足趾支持台が寝台から離隔方向にずれるおそれが回避される。これにより、胸骨圧迫時において、術者の足趾が足趾支持台の天板上に安定して支持されて、胸骨圧迫の姿勢を固定させることができるとともに、術者の圧迫作動に伴う外力に対して反力を及ぼすことができて、術者の重心移動がより確実に実現されることから、有効な圧迫効果を得ることができる。それ故、かかる足趾支持台を採用することにより、効果的な胸骨圧迫が実現され得る。
なお、本態様における寝台は、例えば病院や一般家庭に設置されるベッドや患者を搬送するストレッチャーなどが採用されるものであり、すなわち患者が仰臥する載置面が床面から離隔していればよい。さらに、足趾支持台は寝台から離隔する方向において移動不能とされていればよく、ストレッチャーのように寝台が移動可能とされる場合には、例えば足趾支持台にキャスターなどを設けて、寝台と共に移動可能としてもよい。これにより、ストレッチャーなどで搬送中の患者に対しても安定して胸骨圧迫を施すことができる。あるいは、寝台から離隔する方向でなければ、足趾支持台は寝台に対して相対的に移動してもよい。
また、本態様において、患者の寝台上で膝立位によって胸骨圧迫を実施する際には、患者が寝台上に仰臥する状態で胸骨圧迫が施されればよく、術者の膝の位置は限定されるものではない。すなわち、患者が仰臥する寝台上に術者が膝をついてもよいし、寝台上の患者の位置に応じて、例えば術者が足趾支持台の天板上に膝をつくようにしてもよい。さらに、足趾支持台は術者の両脚の足趾を支持することが好適であるが、少なくとも術者の一方の脚の足趾が支持されていればよい。
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る足趾支持台において、前記固定手段が前記寝台に対して着脱可能に固定される固定部を含んで構成されているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、固定部により寝台に対して着脱可能とされていることから、胸骨圧迫を行わないときには足趾支持台を寝台から取り外して収容することができる。これにより、足趾支持台を使用しない際に寝台の周辺が足趾支持台で占められることがなく、医師などによる治療や患者による寝台の昇降が妨げられるおそれが回避され得る。
なお、本態様の固定部の構造や寝台における固定箇所などは何等限定されるものではなく、固定部は、例えば寝台のフレームや寝台に設けられる転落防止用の柵などに固定されてもよい。
本発明の第3の態様は、前記第2の態様に係る足趾支持台において、前記固定部が前記寝台のフレームに対して係合されるようになっているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、固定部が寝台のフレームに対して係合されるようになっていることから、例えば固定部が寝台に設けられる転落防止用の柵などに固定される場合に比べて、足趾支持台が寝台からずれることが一層効果的に防止され得る。これにより、より安定した寝台上での膝立位による胸骨圧迫が実現され得る。
なお、本態様における固定部の構造は何等限定されるものではなく、例えば鉤状とされて寝台のフレームに引っ掛けて係合させてもよいし、寝台のフレームに凹部を設けて当該凹部に嵌め入れるようにしてもよい。尤も、かかる凹部は別途設ける必要はなく、寝台に対して転落防止用の柵を設置する際の設置用の凹部を利用してもよい。あるいは、クランプ状とされて寝台のフレームを厚さ方向で挟み込んで固定したり、バンド状とされて寝台のフレームに対して、例えば面ファスナーなどで固定するようにしてもよい。
本発明の第4の態様は、前記第2又は第3の態様に係る足趾支持台において、前記天板と前記固定部との高さ方向での距離が調節可能とされているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、固定部に対する天板の高さ位置が調節可能とされている。これにより、例えば寝台と足趾支持台との固定位置が寝台における患者の載置面より下方であっても、天板の高さ位置を調節することにより、例えば患者の載置面と天板の上面との高さ位置を略等しくすることができる。この結果、天板を、術者が胸骨圧迫をし易い位置に位置させることができて、一層安定した姿勢をもって胸骨圧迫を施すことができる。特に、後述する第5、第6の態様と組み合わせることにより、天板から突出する突出板部を、例えば患者とマットレスとの間により確実に挿入することができる。
本発明の第5の態様は、前記第1〜第4の何れかの態様に係る足趾支持台において、前記固定手段が前記天板から突出する突出板部を含んで構成されており、該突出板部が前記患者と前記寝台との間に挿し入れられることで該患者の体重により移動不能に固定されるようになっているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、天板が突出板部を備えており、当該突出板部が患者と寝台との間に挿し入れられることで、足趾支持台が患者自身の体重により寝台に固定されるようになっていることから、足趾支持台を寝台に固定するための固定部を必要とすることがなく、足趾支持台の構造が簡単なものとされ得る。なお、前記第2の態様と組み合わせることにより、足趾支持台が固定部により寝台に固定されるだけでなく、突出板部が患者と寝台との間で挟まれることで足趾支持台が寝台に固定されることから、寝台に対する足趾支持台のずれが更に一層効果的に防止され得る。
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に係る足趾支持台において、前記突出板部が前記患者の背中を覆い得る大きさの板状体により構成されているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、寝台上での胸骨圧迫を一層効果的に施すことができる。すなわち、患者が仰臥する寝台は、一般に、寝台のフレーム上にマットレスが敷かれており、胸骨圧迫時に加える圧力がマットレスに吸収されてしまうことから、寝台上での胸骨圧迫時には、患者と寝台との間に板状体(心肺蘇生用背板)を挿入することがよく行われる。ここにおいて、本態様では、突出板部が患者の背中を覆い得る大きさの板状体により構成されていることから、突出板部を患者と寝台との間に挿入して足趾支持台を寝台に対して固定させるだけでなく、突出板部を心肺蘇生用背板として利用することも可能となる。これにより、別途心肺蘇生用背板を設けることなく、寝台上での膝立位による胸骨圧迫を一層安定して施すことができる。
本発明の第7の態様は、前記第1〜第6の何れかの態様に係る足趾支持台において、前記寝台への固定時に前記天板が該寝台と重なるようになっているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、寝台への固定時に寝台を構成する天板と足趾支持台とが重なることから、平面視において足趾支持台と寝台との間に隙間を生じることが回避される。これにより、術者の足趾が足趾支持台上に安定して支持され得る。
本発明の第8の態様は、前記第1〜第7の何れかの態様に係る足趾支持台において、折り畳み可能な構造とされているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、折り畳み可能な構造とされていることから、非使用時には折り畳んでコンパクトにすることができる。これにより、医師などによる治療や患者による寝台の昇降が阻害されるおそれが低減され得る。特に、前記第2の態様と組み合わせることにより、寝台から取り外された足趾支持台がコンパクトに折り畳まれ得ることから、足趾支持台の収容スペースを小さく抑えることができる。
本発明の第9の態様は、前記第8の態様に係る足趾支持台において、折り畳むことで前記寝台に対して収納可能な構造とされているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、折り畳んで寝台に対して収納可能とされていることから、足趾支持台を収納するスペースを別途設ける必要がなく、例えば救急車などに搭載されるストレッチャーに足趾支持台を収納することにより、救急車などの限られた空間内でも足趾支持台を効率的に収納することができる。特に、足趾支持台を寝台に固定した状態で折り畳んで寝台に収納可能とすることにより、使用する度に寝台への装着および取外しを行う必要がなく、折り畳まれた足趾支持台を展開することのみで使用できることから、集中治療室(ICU)や冠疾患集中治療室(CCU)に設けられる場合など、より緊急の、且つ頻度の多い胸骨圧迫にも対応することが可能となる。
本発明の第10の態様は、前記第1の態様に係る足趾支持台において、前記天板が前記寝台の表面に載置される載置部を有しており、前記載置部の一部が前記天板に加えられる荷重により前記寝台の表面に食い込んで圧接される圧接係合部とされており、該圧接係合部によって前記固定手段が構成されているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、固定手段が、天板の一部であって寝台の表面に重ね合されて載置される載置部に設けられた圧接係合部により構成されていることから、単に天板の載置部を寝台の表面に載置するだけで、固定手段を寝台に装着する作業が完了する。それゆえ、足趾支持台を寝台に設置する作業時間を可及的に短くすることができ、緊急性を要する心肺蘇生術の実行をより速やかに実施することが可能となる。
しかも、圧接係合部は天板に加えられる術者の体重等の荷重が加えられることで寝台の表面に食い込んで圧接されることから、高い摩擦抵抗や凹凸嵌合状態を発現させることができ、胸骨圧迫時の足趾支持台に及ぼされる寝台からの離隔方向の力に抗して足趾支持台の天板を安定して寝台に固定できるのである。
なお、圧接係合部は、天板に加えられる荷重により寝台の表面に食い込むように構成されていれば具体的な形状等は何れでもよく、例えば、載置部から寝台に向かって突出する単数又は複数の突部によって構成されてもよく、突部の形状も任意に設定し得る。また、載置部そのものの一部に荷重が集中して及ぼされるようにして構成してもよい。
本発明の第11の態様は、前記第10の態様に係る足趾支持台において、前記圧接係合部が、前記載置部から前記寝台に向かって突出し前記寝台の長手方向に延出する突条部を含んで構成されているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、圧接係合部が載置部から寝台に向かって突出する突条部によって構成されていることから、突条部を天板に及ぼされる荷重により確実に寝台に食い込ませることができる。しかも、突条部は寝台の長手方向に延出していることから、寝台上での膝立位による胸骨圧迫時に足趾支持台に及ぼされる力の方向である寝台からの離隔方向と直交する方向で、圧接係合部が寝台に係合されることとなる。その結果、胸骨圧迫時に足趾支持台の寝台からの離隔変位をより有利に阻止することができる。
本発明の第12の態様は、前記第10又は第11の態様に係る足趾支持台において、前記天板が前記寝台の表面に載置される載置部と前記寝台の外周側に突出する突出部を有しており、前記載置部を前記寝台の表面に載置した状態で、前記突出部が前記載置部よりも高位に支持されて前記天板が前記載置部側に向かって下方傾斜するように保持されており、前記圧接係合部が、前記載置部の前記傾斜方向における下方側端縁部を含んで構成されているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、足趾支持台の天板が、寝台に載置される載置部よりも寝台から突出する突出部が上方に支持されており、これにより、天板が載置部側に向かって下方傾斜するように保持されている。その結果、天板に加わる術者の体重等の荷重を載置部の下方側端縁部に集中させることができ、天板の傾斜方向の下方側端縁部をそのまま圧接係合部として利用することができる。それゆえ、平板状の天板に何らの部材を設けることのない簡素な構造により圧接係合部を構成することができる。したがって、足趾支持台の寝台への取り付けや取り外しの際に圧接係合部が天板から突出している場合に比して、他部材と干渉する恐れを低減でき、取扱性の向上を図ることができる。
しかも、足趾支持台を寝台に設置した状態で、天板が寝台に向かって下方傾斜していることから、圧迫動作毎に術者が重心を胸部側に移動させる反力を天板部から有利に確保することができて、胸骨圧迫の確実な実行を促進することが可能となる。すなわち、胸骨圧迫時に術者の足趾が天板を押圧する(蹴り出す)際に天板から受ける反力は、天板が下方傾斜することによって天板に平行で患者から離隔する方向に向かうすべり方向の成分を小さくでき、その分、術者は天板から大きな反力を安定して得ることができ、圧迫作動毎の術者の重心の胸部側への移動を安定的に実現して、確実な胸骨圧迫を行うことができる。かかる構成による効果は、天板を載置部に向かって上方傾斜するよう逆向きに傾斜させた際に、天板に平行で患者から離隔する方向に向かうすべり方向の成分が大きくなって十分な反力が得られないことからも理解できる。なお、かかる効果と術者の作業性を考慮すると、天板の寝台に対する傾斜角度αは、0°<α≦45°、より好ましくは3°≦α≦30°、さらに好ましくは3°≦α≦15°に設定される。
本発明の第13の態様は、前記第10〜第12の何れかの態様に係る足趾支持台において、前記天板が前記寝台の表面に載置される載置部と前記寝台の外周側に突出する突出部を有しており、前記突出部の底面に設けられたヒンジ部を介して前記脚部が回転自在に連結されている一方、前記脚部の拡開方向の回動端を規定するストッパが設けられており、前記脚部を前記ストッパによって前記回動端に保持された状態で前記天板の前記載置部を前記寝台の表面に載置することにより、前記寝台を支持する床面へ当接する前記脚部の先端部が、前記ヒンジ部を通って前記床面に直交する垂線に対して前記寝台と反対側に配置されるようになっているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、脚部が天板の突出部の底面に回転自在にヒンジ連結されており、天板に対する脚部の閉方向の回動端は天板と脚部の当接によって規定される一方、天板に対する脚部の拡開方向への回動端は、ストッパ部によって規定されている。それゆえ、天板と脚部を並列させて折り畳んだ状態から、脚部を天板に対して回動させて、ストッパ部によって規定される回動端まで拡開するだけで、足趾支持台を速やかに寝台への装着が可能な状態にすることができる。しかも、天板には圧接係合部が設けられていることから、脚部を回動端まで開いた状態の足趾支持台の天板の載置部を寝台に載置するだけで、足趾支持台の寝台への設置および固定を速やかに完了させることができる。これにより、緊急性を要する心肺蘇生術の速やかな実行にさらに有利に寄与することができる。
加えて、寝台へ設置および固定された足趾支持台の脚部の先端部が、ヒンジ部を通って床面に直交する垂線に対して寝台と反対側に配置されるようになっている。これにより、胸骨圧迫時に天板に対して寝台から離隔する方向への力が及ぼされても、天板が変位して脚部の先端部が垂線よりも寝台側に位置してしまい、脚部がヒンジ部回りで閉方向に回動してしまうことを安定して阻止することができる。具体的には、脚部の先端部を、ヒンジ部を通って床面に直交する垂線よりも寝台からより離隔した位置に配置させることで、ヒンジ部が脚部の先端部よりも寝台から離隔した位置に変位するために移動する軌跡は、先端部を中心とした回転方向で上向きの成分を含むこととなる。天板には術者の体重等の荷重が加わっていることから、ヒンジ部が変位するためにはかかる荷重に抗する力が必要となり、実質的にヒンジ部の寝台から離隔する方向への変位が不可能となるのである。
なお、脚部の拡開方向の回動端を規定するストッパは、当該位置に脚部を仮保持する仮保持機構を設け、仮保持機構を解除しなければ脚部の閉方向への回動が阻止されるようにしてもよく、そのような仮保持機構を有するものが本態様の範囲に含まれることはもちろんである。
本発明の第14の態様は、前記第1〜第13の何れかの態様に係る足趾支持台において、前記天板が前記術者の前記足趾と膝が載置可能な大きさを有しているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、天板上に術者の足趾と膝を載置することができることから、天板に対して術者の体重の大部分を荷重として及ぼすことができ、圧接係合部を有している場合には、圧接係合部と寝台との係合による足趾支持台の寝台への固定を一層安定して実現することができる。さらに、寝台のフレーム上にマットレスが敷かれる場合には、術者の膝の沈み込みによる圧迫姿勢の不安定性を解消することができ、より安定して胸部の圧迫を行うこともできる。
本発明の第15の態様は、前記第1〜第14の何れかの態様に係る足趾支持台において、前記天板の高さ位置を調節する高さ調節機構が設けられているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、天板の高さ位置を調節する高さ調節機構が設けられていることから、異なる高さの寝台に対して共通の足趾支持台を使用することができる。なお、かかる高さ調節機構の具体的な構造は何等限定されるものではないが、例えば足趾支持台を構成する脚部の下端にねじ式や油圧式のジャッキ構造を設けて床面から天板までの距離を調節可能としたり、脚部を、複数本のロッドがテレスコピック構造やねじ式構造をもって接続された構造として、脚部の長さを調節することで天板の高さを調節可能とすることもできる。また、上記の如き構造をもって天板の高さを手動で調節する他、モータなどを用いて天板の高さを電動で調節することも可能である。
本発明の第16の態様は、前記第1〜第15の何れかの態様に係る足趾支持台において、前記術者の左右脚のそれぞれに対して設けられるようになっているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台は、術者の左右脚のそれぞれに対して設けられるようになっていることから、術者の両脚を一度に支持する大きさの天板を必要とせず、一方の脚を支持する大きさの天板を一対設ければよい。これにより、天板、ひいては足趾支持台の大きさを小さくすることができる。特に、前記第2の態様と組み合わせることにより、一対の足趾支持台をそれぞれ別々に収容することができることから、寝台から取り外された足趾支持台の収容スペースもコンパクトにされ得る。また、一対の足趾支持台間に患者に挿入される医療用チューブやカテーテルなどを位置させることができて、治療の妨げになるおそれが効果的に低減され得る。さらに、胸骨圧迫を実施しない時には、一対の足趾支持台間から医師や看護師が患者に対して医療行為などを行うことも可能である。
本発明の第17の態様は、前記第1〜第16の何れかの態様に係る足趾支持台において、前記天板の幅方向両側のそれぞれに前記脚部が設けられていると共に、これらの脚部における所定の高さ位置において、水平方向に延びる足掛部が設けられており、前記術者が該足掛部に足を掛けて該天板上に乗ることができるようになっているものである。
本態様に従う構造とされた足趾支持台によれば、天板の幅方向両側からは床面に向かって脚部が延び出しており、当該脚部の所定の高さ位置において、水平方向に延びる足掛部が設けられていることから、術者が、当該足掛部に足を掛けて天板上に素早く乗ることができて、胸骨圧迫を迅速に行うことができる。特に、足掛部が、天板の長さ方向において、寝台と反対側の端部と略同位置かそれよりも外方に設けられることにより、術者が天板上に乗り上がる動作を一層素早く行うことができる。
本発明に従う構造とされた足趾支持台によれば、患者の寝台に対して移動不能とされる固定手段を備えていることから、胸骨圧迫時の激しい動作に対しても寝台に対して離隔する方向にずれることが防止され得る。これにより、寝台上での膝立位による胸骨圧迫時に術者の足趾を安定して支持することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1,2には、本発明の第1の実施形態としての足趾支持台10が示されている。この足趾支持台10は患者の寝台12に隣接して設けられて、寝台12上での膝立位による胸骨圧迫時において、術者14の足趾16を支持することにより、胸骨圧迫が安定してなされ得るようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、鉛直方向である図2中の上下方向を言う。また、寝台12の長さ方向とは、図2中の奥手前方向を言う。さらに、図中において、寝台12および術者14は仮想線で示している。
より詳細には、足趾支持台10は、術者14の両脚の足趾16を支持するための天板18と、当該天板18を床面から一定の高さに保つための脚部20とを含んで構成されている。本実施形態では、この天板18は全体として水平方向に広がる矩形板状とされており、寝台12の長さ方向と直交する方向(図2中の左右方向)が長手方向とされている。そして、かかる天板18が患者の寝台12に対して隣接しており、当該天板18の長手方向において、寝台12と隣接する側と反対側の端部には、天板18の幅方向(図2中の奥手前方向)両端に一対の脚部20,20が設けられている。これらの脚部20,20は全体として略矩形断面のロッド状とされて、天板18から下方に延びている。
なお、天板18の大きさは術者14の足趾16が支持される大きさであれば何等限定されるものではないが、好ましくは天板18の長さ方向寸法A(図1参照)が400mm以上、且つ600mm以下(400mm≦A≦600mm)とされる。また、本実施形態では、天板18に術者14の両脚の足趾16が支持されるものであり、好ましくは天板18の幅方向寸法B(図1参照)が300mm以上、且つ900mm以下(300mm≦B≦900mm)とされて、より好ましくは600mm以上、且つ800mm以下(600mm≦B≦800mm)とされる。
また、天板18や脚部20の材質は、金属や硬質の合成樹脂、木などが好適に採用されて、天板18の下面に対して脚部20が、接着や溶着、嵌合などにより固定されている。
さらに、寝台12としては、病院や一般家庭で用いられるベッドや緊急搬送用のストレッチャーなどが採用され得るものであり、寝台12における患者の載置面22と床面とが上下方向で離隔している構造であれば、何等限定されるものではない。なお、図1,2では一般的なベッドの構造をもって寝台12を示しており、すなわち、全体として格子状のフレーム24に対して下方に延びる脚部26が設けられているとともに、かかるフレーム24の上側にはマットレス28が敷かれている。そして、当該マットレス28の上面が患者の載置面22とされている。また、本実施形態では、足趾支持台10の脚部20,20の長さ方向寸法と寝台12の脚部26の長さ方向寸法とが略等しくされており、天板18とフレーム24の高さ位置が略等しくされている。
ここにおいて、天板18の長さ方向における寝台12と隣接する側には、天板18の幅方向両端に一対の固定部30,30が設けられている。これらの固定部30,30はそれぞれ、側面視において上方に凸となる略半円湾曲形状の係合部分31,31を備えており、これら係合部分31,31を、寝台12の側縁部を構成するフレーム24に対して引っ掛けて係合することにより、天板18が床面から一定の離隔距離をもって寝台12に固定される。これにより、足趾支持台10が寝台12の側方に対して着脱可能に固定されるようになっているとともに、寝台12上での膝立位による胸骨圧迫時の動作により主に入力される外力の方向、すなわち、寝台12と直交する方向において、足趾支持台10が寝台12から離隔不能とされている。要するに、足趾支持台10は寝台12から離隔する方向に対して移動不能に固定される固定手段を備えており、本実施形態では、固定部30,30の係合部分31,31により固定手段が構成されている。
このように、足趾支持台10が寝台12に対して固定された状態で、図2に示すように、術者14が、例えば寝台12のマットレス28上に膝立ちになって胸骨圧迫を実施する際には、術者14の足趾16が足趾支持台10の天板18上に支持される。これにより、安定した胸骨圧迫が実現され得る。なお、図2では、術者14の膝29がマットレス28上に位置しているが、寝台上の患者の位置によっては、必ずしも術者が寝台上に膝をつく必要はなく、足趾支持台の天板上に膝をついてもよい。
ここにおいて、胸骨圧迫の際には術者が上下方向に大きく動くことから、術者が寝台上に膝をついて立つだけでなく、足趾にも力を入れて姿勢を維持することが有効である。しかしながら、術者が足趾にも力を入れることで胸骨圧迫時の振動などが足趾を介して足趾支持台に伝達され易くなり、足趾支持台が寝台から離隔してしまうおそれがあった。そこで、本実施形態の足趾支持台10では、寝台12から離隔する方向において移動不能とされる固定手段を設けることにより、寝台12上での膝立位による胸骨圧迫の際に、術者14の動作により足趾支持台10が寝台12からずれることが防止され得る。これにより、術者14が激しく動いたとしても足趾16が足趾支持台10に安定して支持されて、足趾支持台10により術者14が適切な姿勢を維持するための反力を得ることができることから、効果的な胸骨圧迫が実現され得る。
特に、足趾支持台10が固定部30,30により比較的重量のある寝台12のフレーム24に固定されていることから、足趾支持台10の寝台12からのずれが効果的に防止され得る。
また、足趾支持台10が固定部30,30により寝台12に対して着脱可能とされていることから、足趾支持台10の非使用時には寝台12から足趾支持台10を取り外すことができる。これにより、足趾支持台10の非使用時において、足趾支持台10を寝台12とは別の場所に収納することができて、医師の治療や患者による寝台12の昇降が妨げられることが回避され得る。さらに、本実施形態では、固定部30の係合部分31を寝台12のフレーム24に引っ掛けることのみで足趾支持台10が寝台12に対して固定されることから、足趾支持台10の寝台12への取付けおよび取外しも容易とされ得る。
次に、図3には、本発明の第2の実施形態としての足趾支持台32が示されている。本実施形態の足趾支持台32の脚部34,34には、天板18の高さ位置を調節する高さ調節機構36,36が設けられている。また、寝台12に対する固定部として、前記第1の実施形態と同様の固定部30,30が設けられている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
すなわち、本実施形態の脚部34,34は、それぞれテレスコピック構造とされており、断面形状の大きな筒状体38,38の内部に断面形状の小さなロッド状体40,40が長さ方向一方(図3中の下方)の端部から挿入されて、ロッド状体40,40における長さ方向一方側の端部が筒状体38,38から突出している。そして、筒状体38, 38とロッド状体40,40の長さ方向での相対位置を変化させる、すなわち筒状体38,38からのロッド状体40,40の突出寸法を変化させることにより、脚部34,34の長さ方向寸法が調節可能とされている。
なお、筒状体38,38の側面にはボルト42,42が貫通して設けられており、これらのボルト42,42を締め付けることによりロッド状体40,40が筒状体38,38の内面とボルト42,42とに挟まれ、筒状体38,38とロッド状体40,40とが長さ方向で相対移動不能とされて、脚部34,34の長さ寸法が規定されるようになっている。一方、ボルト42,42の締付けを緩めることにより筒状体38,38とロッド状体40,40との長さ方向での相対位置、すなわち脚部34,34の長さ寸法が調節可能とされている。したがって、ボルト42,42を含んで、脚部34,34の長さ方向寸法を調節して天板18の高さ位置を調節する高さ調節機構36,36が構成されている。
さらに、筒状体38,38とロッド状体40,40との長さ方向での相対位置は上記のように無段階に調節可能とされてもよいし、例えばロッド状体40,40の側面に長さ方向で複数の凹部を設けて当該凹部にボルト42,42の先端を挿入することにより筒状体38,38とロッド状体40,40とを長さ方向で相対移動不能とするなど、段階的に調節可能としてもよい。
また、筒状体38,38の基端部分(天板18との接合部分)には、天板18に固定された回動軸44,44が挿通されている。これにより、脚部34,34が回動軸44,44を中心として、天板18の長さ方向における固定部30,30が設けられている側に回動することができるようになっている。この結果、足趾支持台32の非使用時には、脚部34,34が天板18への接近方向へ回動可能とされており、すなわち、本実施形態の足趾支持台32は折り畳み可能な構造とされている。なお、脚部34,34を折り畳んだ状態を図中において仮想線で示す。
上記の如き形状とされた足趾支持台32においても、前記第1の実施形態と同様に固定手段(固定部30,30の係合部分31,31)が設けられて、足趾支持台32が寝台12から離隔する方向において移動不能に固定されていることから、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
特に、本実施形態の足趾支持台32では、脚部34,34の長さ寸法が調節可能とされていることから、脚部(26)の長さ寸法が異なる複数の寝台12に対しても適用可能である。すなわち、寝台12の脚部(26)の長さ寸法に対応して足趾支持台32の脚部34,34の長さ寸法、要するに天板18の高さ位置を調節することができて、脚部(26)の長さ寸法が異なる複数の寝台12の何れに対しても天板18が水平な状態で足趾支持台32を設置することができる。これにより、脚部(26)の長さ寸法が異なる複数の寝台12のそれぞれに対応した足趾支持台を製造する必要がなく、また、複数の足趾支持台の中から寝台の高さ寸法にあったものを選択するといった作業も省かれることから、コストや手間の削減が図られ得る。
また、足趾支持台32には前記第1の実施形態と同様の固定手段(固定部30,30の係合部分31,31)が設けられて寝台12から取外し可能とされているとともに、脚部34,34が折り畳み可能な構造とされていることから、寝台12から取り外した足趾支持台32をコンパクトにすることができる。これにより、足趾支持台32を収納するために必要なスペースを小さくすることができる。
なお、天板18の高さ位置を調節する高さ調節機構は、図3に示される態様のものに限定されるものではなく、例えば図4(a)〜(c)に示される構造も採用され得る。すなわち、図4(a)では、高さ調節機構としてねじ式ジャッキ46が採用されている。かかるねじ式ジャッキ46が脚部34の長さ方向中間部分に設けられることにより、脚部34の長さ寸法、ひいては天板18の高さ位置を調節することができる。なお、ジャッキの構造はねじ式に限定されるものではなく、油圧式なども採用され得る。
また、脚部34がテレスコピック構造とされても、図3に示される態様のようにボルト42が必要とされるものではなく、例えば図4(b)に示される高さ調節機構48のようにラチェット式とされたり、図4(c)に示される高さ調節機構50のように回転式とされてもよい。
すなわち、図4(b)に示される高さ調節機構48では、筒状体38の下端に弾性変形可能な係止片52が突設されている一方、ロッド状体40の外周面には長さ方向に複数の係止歯54が設けられており、係止片52が係止歯54,54間に係止されるようになっている。そして、ロッド状体40は筒状体38に対して下方に相対移動可能とされており、係止片52が、任意の係止歯54,54間に係止されることにより、脚部34の長さ寸法が調節可能とされている。なお、係止片52の係止歯54,54間への係止を解除することにより、ロッド状体40は筒状体38に対して上方に相対移動することができる。したがって、図4(b)に示される態様では、高さ調節機構48が係止片52と係止歯54とにより構成されている。
さらに、図4(c)では、筒状体38の内周面に雌ねじ56が設けられている一方、ロッド状体40の外周面に雄ねじ58が設けられており、これら雌ねじ56および雄ねじ58が螺合している。そして、筒状体38とロッド状体40とを相対回転させることにより、脚部34の長さ寸法が調節可能とされている。したがって、図4(c)に示される態様では、高さ調節機構50が、雌ねじ56と雄ねじ58とにより構成されている。
これら図3や図4に示される高さ調節機構36,46,48,50を採用することで脚部34の長さ寸法を調節することが可能であり、これにより天板18の高さ位置を調節することができる。
次に、図5,6には、本発明の第3の実施形態としての足趾支持台60が示されている。本実施形態の足趾支持台60では、天板18の下面に固定部としてのクランプ62が設けられており、寝台12の側縁部を構成するフレーム24を厚さ方向で挟み込んで固定するようになっている。すなわち、クランプ62(固定部)により、足趾支持台60を寝台12に固定する固定手段が構成されている。
具体的には、天板18の長さ方向における寝台12と隣接する側には、天板18の幅方向両端に一対のクランプ62,62が設けられている。そして、これらクランプ62,62に寝台12のフレーム24を厚さ方向で挟み込んで、クランプ62,62の下部に設けられたボルト64,64を締め付けることにより、足趾支持台60が寝台12に対して移動不能に固定されている。なお、本実施形態では、足趾支持台60が寝台12に固定された際に、天板18と寝台12の側縁部とが平面視において重なるようになっている。
このように、足趾支持台60が寝台12に対して固定手段により移動不能に固定されることから、本実施形態の足趾支持台60においても、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
特に、本実施形態では、足趾支持台60の寝台12への固定時に、足趾支持台60と寝台12とが重なるようにされていることから、足趾支持台60と寝台12との間に隙間が発生することが回避されて、例えば術者14がマットレス28上の足趾支持台60から離れた位置で膝をついたとしても、術者14の足趾16がより確実に足趾支持台60上に支持され得る。あるいは、術者14の膝が足趾支持台60と寝台12との隙間に位置するということが回避されて、術者14が寝台12または足趾支持台60上により確実に膝をつくことができる。この結果、寝台12上の膝立位による胸骨圧迫が一層安定して達成され得る。
次に、図7には、本発明の第4の実施形態としての足趾支持台66が示されている。本実施形態の足趾支持台66では、天板18に対する固定部の高さ方向での距離が調節可能とされている。なお、図7において、足趾支持台66の脚部としては、前記第1の実施形態の脚部20,20や前記第2の実施形態の脚部34,34と同様の構造とされた脚部が採用され得ることから、図示を省略する。
すなわち、本実施形態では、固定部として、前記第3の実施形態と同様のクランプ62が設けられているとともに、当該クランプ62と天板18との間にはねじ式ジャッキ68が取り付けられている。そして、かかるジャッキ68を伸縮させることにより、クランプ62と天板18との高さ方向の距離を調節することができるようになっている。これにより、クランプ62(固定部)に対する天板18の高さ方向での位置を調節することができて、特に、本実施形態では、天板18がマットレス28の上面に重なるようにされている。すなわち、本実施形態では、ねじ式ジャッキ68により、天板18の高さ位置を調節する高さ調節機構が構成されている。
また、本実施形態では、天板18が、術者14の足趾16だけでなく膝29も載置可能な大きさで形成されている。
かかる構造とされた本実施形態の足趾支持台66では、固定手段としてのクランプ62により寝台12に移動不能に取り付けられることから前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本実施形態では、固定部(クランプ62)と天板18との高さ方向の距離を調節することができることから、例えばマットレス28の厚さ寸法が大きく異なる場合でも、安定して天板18をマットレス28の上面に重ね合わせることができる。これにより、患者の載置面22であるマットレス28の上面と術者14の高さ位置を略等しくすることができる。
また、天板18が、術者14の足趾16だけでなく膝29も載置可能であることから、一層確実に術者14が天板18上に膝をつくようにできて、マットレスに膝をつく場合などに比べて術者の膝が沈み込んだりすることがなく、更に安定した姿勢をもって胸骨圧迫を施すことができる。
なお、固定部(クランプ62)と天板18との高さ方向での位置調節機構は上記のねじ式ジャッキ68に限定されるものではなく、油圧式ジャッキや、図3や図4(b),(c)に記載されたものと同様なボルト式やラチェット式、回転式の高さ調節機構も採用され得る。
次に、図8,9には、本発明の第5の実施形態としての足趾支持台70が示されている。本実施形態の足趾支持台70は、天板18から突出する突出板部72を備えている。なお、本実施形態では、固定部として、天板18の下面に前記第3の実施形態と同様のクランプ62,62が設けられており、当該クランプ62,62が寝台12のフレーム24を挟み込むことにより足趾支持台70が寝台12に固定されるようになっている。
この突出板部72は、全体として患者74の背中を覆い得る大きさの板状体により構成されており、本実施形態では、天板18の長さ方向における寝台12と隣接する側の側縁部に対して複数のヒンジ76,76により接続されている。すなわち、足趾支持台70の使用状態では、図9に示されるように、突出板部72が天板18から寝台12側に延び出して当該突出板部72上に患者74が載置されるようになっており、要するに、突出板部72が患者74と寝台12のマットレス28との間に挿し入れられている。したがって、足趾支持台70は、クランプ62で寝台12のフレーム24を挟み込むことにより寝台12に固定されるだけでなく、突出板部72上に載置される患者74の体重により寝台12に固定されるようになっている。それ故、本実施形態では、クランプ62(固定部)だけでなく、突出板部72によっても足趾支持台70を寝台12から離隔する方向において移動不能に固定する固定手段が構成されている。一方、足趾支持台70の非使用状態では、図8に仮想線で示されているように、突出板部72がヒンジ76,76で折り返されて天板18の上面に重ね合わされるようになっている。すなわち、本実施形態の足趾支持台70は折り畳み可能な構造とされており、折り畳むことでコンパクトにすることができて、収容スペースの増大が防止され得る。
上記の如き構造とされた本実施形態の足趾支持台70では、固定部(クランプ62)により寝台12に固定されるだけでなく、突出板部72が患者の体重をもって寝台12に固定されることから、前記第1の実施形態と同様の効果がより高度に発揮される。
それに加えて、本実施形態の足趾支持台70では、胸骨圧迫効率の向上が図られ得る。すなわち、一般に、寝台上で胸骨圧迫を実施する際には、胸骨圧迫の圧力がマットレスに吸収されることから、患者とマットレスとの間に板状体(心肺蘇生用背板)を挿入することが行われる。本実施形態の足趾支持台70では、突出板部72が心肺蘇生用背板として機能することから、別途患者とマットレスとの間に心肺蘇生用背板を挿入する必要がなく、部品点数増加の防止、および術者の手間の軽減が図られ得る。
なお、前記第4の実施形態の如き固定部(クランプ62)と天板18との高さ寸法を調節する機構を採用することにより、天板18および突出板部72の高さ位置を任意に調節できることから、突出板部72を一層確実に患者74とマットレス28との間に挿入することができる。
次に、図10には、本発明の第6の実施形態としての足趾支持台78が示されている。本実施形態では、術者(14)の左右両脚のそれぞれに対して足趾支持台78,78が設けられている。なお、これらの足趾支持台としては術者(14)の左右それぞれの脚で同様の構造のものが採用されることから、以下、片方の足趾支持台78について説明する。
すなわち、本実施形態の足趾支持台78では、天板80の長さ方向における寝台12と隣接する側の側縁部において、天板80と略同じ幅寸法をもって、前記第1の実施形態と同様の固定部30(固定手段)が設けられている。一方、天板80の長さ方向における寝台12と隣接する側と反対側の側縁部において、幅方向中央部分には、前記第2の実施形態と同様の脚部34が設けられている。そして、かかる構造とされた一対の足趾支持台78,78が寝台12の長さ方向で所定距離を隔てて対向して設けられており、それぞれの足趾支持台78,78の固定部30,30における係合部分31,31が寝台12のフレーム24に係合されることにより、これら足趾支持台78,78が寝台12から離隔する方向において移動不能に固定されている。
なお、本実施形態における足趾支持台78の天板80の幅方向寸法C(図10参照)の大きさは術者(14)の片脚の足趾(16)が支持され得れば何等限定されるものではないが、好ましくは200mm以上、且つ400mm以下(200mm≦C≦400mm)、より好ましくは300mm程度(C≒300mm)とされる。また、両足趾支持台78,78の対向距離D(図10参照)は、術者(14)の両脚の足趾(16)が支持され得れば何等限定されるものではないが、200mm以上、且つ500mm以下(200mm≦D≦500mm)とされることが好ましく、より好ましくは300mm程度(D≒300mm)とされることが好適である。足趾支持台78,78間の間隔が上記範囲とされることにより、胸骨圧迫を実施しない時には、足趾支持台78,78間の隙間を通じて医師や看護師が患者に医療行為などを行うことも可能となる。
上記の如き構造とされた足趾支持台78,78においても、固定部30,30の係合手段31,31(固定手段)により寝台12から離隔する方向に移動不能とされていることから、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本実施形態の足趾支持台78,78は、術者(14)の左右両脚用に別個に設けられていることから、例えば前記第1の実施形態のように術者(14)の両脚の足趾(16)を支持する天板(18)に比べて、天板80の大きさを小さくすることができる。これにより、寝台12から取り外した足趾支持台78,78の収容スペースを小さくすることができる。さらに、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、脚部34が折り畳み可能とされていることから、足趾支持台78,78を収容するスペースを更に小さくすることができる。
また、両足趾支持台78,78の間に空間が設けられることから、当該空間に患者から延び出す医療用チューブやカテーテルを位置させることができる。要するに、患者から医療用チューブやカテーテルが延び出している場合でも、これらのチューブやカテーテルを避けて足趾支持台78,78を設置することができて、足趾支持台を設置することにより患者の治療が妨げられるおそれが低減され得る。
次に、図11,12には、本発明の第7の実施形態としての足趾支持台82が示されている。本実施形態の足趾支持台82は折り畳み可能な構造とされており、図11(a)に示される足趾支持台82の使用状態から折り畳むことで、図11(b)に示されるように寝台12に収納可能とされている。なお、本実施形態では、前記第6の実施形態と同様に、術者(14)の左右両脚用に一対の足趾支持台82,82が設けられるようになっているが、これらの足趾支持台82,82はそれぞれ同様な構造であることから、片方のみを示して説明する。
すなわち、本実施形態の足趾支持台82を構成する天板80において、長さ方向における寝台12側の端縁部の幅方向中央部分からは矩形板状の上側固定片84が突出している。この上側固定片84は長さ方向で2枚の板状体がヒンジ86で接続されることで構成されており、すなわち、突出方向の先端側(寝台12側)に位置する先端板部88と基端側(天板80側)に位置する基端板部90とがヒンジ86により接続されている。これにより、水平方向に広がる先端板部88に対して基端板部90がヒンジ86により垂直に折れ曲がることが可能となっている。また、上側固定片84の先端部分(先端板部88)には固定部としてのクランプ92が設けられている一方、上側固定片84の基端部分(基端板部90)は天板80と重ね合わされて、これら基端板部90と天板80との重ね合わせ部分に回動軸94が挿通されている。これにより、天板80が、回動軸94を中心として、基端板部90に対して相対回動可能とされている。一方、天板80の長さ方向における寝台12側と反対側の端縁部の幅方向中央部分には、前記第2の実施形態と同様の脚部34が設けられている。
かかる構造とされた足趾支持台82の収納作動を図12(a)〜(c)を用いて順次説明する。足趾支持台82の非使用時には、先ず、図12(a)に示されているように、脚部34を収縮して、天板80に接近する方向に折り曲げる。次に、図12(b)に示されているように、天板80と寝台12とが相互に接近する方向に上側固定片84を折り曲げる。すなわち、ヒンジ86を中心として先端板部88に対して基端板部90を垂直方向下方に折り曲げる。その後、図12(c)に示されているように、天板80を、基端板部90に対して回動軸94を中心として、足趾支持台82,82の対向する方向とは反対方向(図12(c)中では紙面奥方向)に回動させる。これにより、足趾支持台82が、図11(b)に示されるように、寝台12の側方に収納される。
上記の如き足趾支持台82は、クランプ92の下部に設けられたボルト96を締め付けることにより、固定部(クランプ92)が寝台12のフレーム24に固定されることから、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。また、足趾支持台82の非使用時には、クランプ92のボルト96を緩めることで寝台12から足趾支持台82を取り外すことも可能であるが、本実施形態の足趾支持台82は折り畳み可能な構造とされて、寝台12に収納することが可能となっている。これにより、足趾支持台82を使用する度に装着および取外しを行う必要がなく、非使用時においても、寝台12から離れた場所に収納スペースを設けることなく、コンパクトに収納される。それ故、本実施形態の足趾支持台82は救急車などの限定された空間内でも効果的に収納され得て、寝台12として救急車に搭載されるストレッチャーが採用される場合には、救急車内における胸骨圧迫が効果的に施され得る。また、使用時には、その都度装着作業を行うことがなく、足趾支持台82を展開することのみで使用可能とされることから、集中治療室(ICU)や冠疾患集中治療室(CCU)に設置されるベッドなどに本実施形態の足趾支持台82が採用されることにより、その効果が安定して享受され得る。
次に、図13,14には、本発明の第8の実施形態としての足趾支持台98が示されている。本実施形態の足趾支持台98は、前記第7の実施形態の足趾支持台82と同様な構造とされているが、前記第7の実施形態では上側固定片84が天板80から突出しているのに対して、本実施形態では、平面視において上側固定片84が天板99から突出せずに重なる位置に設けられている。これにより、足趾支持台98の寝台12への固定時において、天板99が寝台12の側縁部と重なるようにされている。なお、足趾支持台98の収納作動は前記第7の実施形態と同様であることから、図示を省略する。
上記の如き構造とされた足趾支持台98においても、前記第7の実施形態の足趾支持台82と同様な構造を有していることから、前記第7の実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本実施形態では、足趾支持台98の寝台12への固定時に、天板99と寝台12との間に隙間が形成されないことから、術者14の足趾16が安定して支持され得る。
次に、図15,16には本発明の第9の実施形態としての足趾支持台100が示されている。本実施形態の足趾支持台100は、寝台12からの取外しが不能とされており、足趾支持台100の非使用時は天板102を回動移動させることにより寝台12に収納することが可能とされている。
すなわち、本実施形態における足趾支持台100の天板102の、寝台12と隣接する側の側縁部には、幅方向両端部に一対の固定部104,104が設けられている。なお、これらの固定部104,104は同様の構造であることから、以下片方の固定部104について説明する。
この固定部104は、側面視において略C字状または略円形の構造の係合部分106を備えており、当該係合部分106が寝台12の側縁部を構成するフレーム24に引っ掛けられて係合されている。これにより、係合部分106、および当該係合部分106から連続する天板102がフレーム24を中心として回動可能とされている。したがって、これら固定部104,104の係合部分106,106により足趾支持台100を寝台12に固定する固定手段が構成されている。
なお、係合部分106には、例えば周方向に延びる開口部が設けられており、当該開口部の幅寸法がフレーム24の最大幅寸法より小さくされることで、固定部104(係合部分106)とフレーム24との係合が解除されないようになっている。また、かかる係合部分106のフレーム24への装着は、例えば係合部分106を、開口部の幅寸法がフレーム24の最大幅寸法より大きくなる状態で製造して、係合部分106とフレーム24とを係合させた後、係合部分106を変形させて、開口部の幅寸法がフレーム24の最大幅寸法より小さくなるようにしてもよい。
一方、天板102の長さ方向における寝台12と隣接する側と反対側の側縁部には、前記第2の実施形態と同様の脚部34,34が設けられている。なお、前記第2の実施形態では、脚部34,34は寝台12側に回動させて折り畳むことが可能とされていたが、本実施形態の脚部34,34のそれぞれは、例えば当該脚部34,34が対向する方向と反対の方向に回動させて折り畳むことが可能とされている。
かかる構造とされた足趾支持台100は図16(a),(b)に示す作動により寝台12に収納される。なお、図16(c)は、図16(b)に示される足趾支持台100の正面図である。すなわち、先ず、図16(a)に示されるように、足趾支持台100の脚部34,34を収縮状態とした後、当該脚部34,34を対向する方向と反対の方向に回動させる。その後、天板102を、係合部分106をフレーム24を中心として回動させて、天板102を固定部104(フレーム24)から下方に延びるように位置させる。これにより、図16(b),(c)に示されるように、足趾支持台100が寝台12の側方に収納される。
上記の如き構造とされた本実施形態の足趾支持台100においても、寝台12に収納され得ることから、前記第7の実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本実施形態では、足趾支持台100が、折り畳む作動を必要とすることなく回動作動のみで寝台12に収納され得ることから、使用時には、より素早く展開させることができる。なお、例えば、本実施形態の天板は、複数枚の板状体を長さ方向でヒンジなどにより接続した構造とされてもよく、かかる天板を折り畳んで寝台(12)に収納してもよい。これにより、天板が、折り畳み時にコンパクトにされてより効率的に収納され得るとともに、展開時の面積を十分に確保することができて、一層安定して術者(14)の足趾(16)が支持され得る。
次に、図17,18には、本発明の第10の実施形態としての足趾支持台110が示されている。本実施形態の足趾支持台110では、前記実施形態の如き、凹凸による係合やクランプ、突出板部による固定とは異なり、天板112が寝台12におけるマットレス28の表面(載置面22)に載置されることのみで、足趾支持台110が寝台12に固定されるようになっている。
すなわち、天板112の長さ方向の一方の端部分が寝台12におけるマットレス28の表面22に重ね合わされて載置されており、かかる天板112における重ね合わせ部分が、載置部114とされている。一方、天板112の長さ方向他方側が、寝台12から外周側に突出する突出部116とされている。
なお、本実施形態では、天板112が、略全面に亘って合成樹脂により形成された樹脂製シート117で覆われている。この樹脂製シート117は、全面に亘って微小な凹凸を備えており、表面の摩擦抵抗が大きくされている。かかる樹脂製シート117の材質としては、例えばポリウレタン樹脂製レザーやポリ塩化ビニルレザーなどが好適に採用され得る。
そして、天板112の長さ方向の他方の端部分(突出部116)において、幅方向両端部分からは、寝台12を支持する床面118に向かって延びる一対の脚部120,120が設けられている。また、これらの脚部120,120の基端(天板112側の端部)には、天板112の底面122に設けられて、且つ天板112の幅方向に延びるヒンジ部としての回動軸124,124が挿通されており、当該回動軸124,124を中心として、脚部120,120が天板112に対して開方向または閉方向に回転自在とされている。
なお、本実施形態の脚部120,120には、前記第2の実施形態などと同様に高さ調節機構が設けられており、特に、本実施形態では、前記図4(b)に示されたラチェット式の高さ調節機構126,126が採用されている。すなわち、両脚部120,120は、筒状体128,128にロッド状体130,130が挿入された構造を有しており、筒状体128,128からのロッド状体130,130の突出寸法が段階的に調節可能とされている。また、本実施形態では、両脚部120,120のそれぞれにおいて、2本の筒状体128,128が相互に反対方向を向いて、且つ幅方向の内外で隣り合わせで固着されており、すなわち、筒状体128,128から上方に突出するロッド状体130,130の突出寸法が調節可能とされているとともに、筒状体128,128から下方に突出するロッド状体130,130の突出寸法が調節可能とされている。
また、両脚部120,120において、下方に突出するロッド状体130,130の下端は、連結体132で相互に接続されている。この連結体132は、ロッド状体130などと同様に金属製とされており、ロッド状体130,130の下端に対して溶接などにより固定されている。なお、連結体132の長さ方向(図18中の左右方向)両端は、ロッド状体130,130よりも外方まで延び出しており、その両端には、合成樹脂製のキャップ134,134が外嵌固定されている。これらのキャップ134,134は、例えば外周面に、連結体132の長さ方向に延びる複数の突条が設けられるなどして、外周面の摩擦抵抗が大きくされている。
さらに、本実施形態では、幅方向外側の筒状体128,128の長さ方向中間部分において、それぞれの筒状体128,128を相互に接続して水平に延びる接続部136が設けられている。この接続部136は、筒状体128や連結体132などと同様に金属製とされており、幅方向外側の筒状体128,128に対して溶接などにより固定されている。なお、後述する足趾支持台110の寝台12への取付状態においては、両脚部120,120が略上下方向に延びることから、接続部136は、床面118に対して所定の高さ位置をもって設けられるようになっている。
ここにおいて、両脚部120,120の基端において、上方に突出するロッド状体130,130の上端には、外方(寝台12と反対側)に突出する金属片138,138が、脚部120,120に対して所定の角度をもって形成されている。かかる金属片138,138は、例えば鉄などの金属で形成された薄肉の矩形板により構成されており、ロッド状体130,130の上端に対して溶接などにより固定されている。
以上の如き構造とされた足趾支持台110は、使用していない状態では、例えば図19に示されるように折り畳み状態として収容される。すなわち、脚部120,120において、高さ調節機構126,126により脚部120,120の長さ寸法を調節する、即ち筒状体128,128内にロッド状体130,130を収容して短くするとともに、脚部120,120を回動軸124回りで閉方向に回転させることで、足趾支持台110が折り畳み状態とされる。かかる折り畳み状態では、例えば天板112と脚部120,120とが相互に平行となるようにされる。
そして、足趾支持台110を使用するにあたっては、脚部120,120を回動軸124回りで開方向に後述するストッパ(金属片138,138)によりその回転が制限されるまで回転させて、脚部120,120を回動端で保持した状態とする。かかる状態で、天板112の長さ方向一方の端部分(載置部114)を寝台12のマットレス28上に載置する。さらに、筒状体128,128からロッド状体130,130を引き出して脚部120,120の長さ寸法を長くして、脚部120,120の下端(キャップ134,134)を床面118に当接させることで、足趾支持台110が展開状態で寝台12に取り付けられる。かかる足趾支持台110の天板112上に術者14が乗ることで、膝立位による胸骨圧迫が行われる。なお、本実施形態における天板112は、例えば前記第4の実施形態と同様に、術者14の足趾16だけでなく膝29も載置可能な大きさで形成されることが好適であり、これにより、天板112上に膝29を載置して、沈み込むことなく胸骨圧迫を行うことも可能である。
なお、脚部120,120を回動軸124回りに回転させるに際して、金属片138,138が天板112の底面122に当接することで、脚部120,120のそれ以上の回動が制限されるようになっている。すなわち、金属片138,138により、脚部120,120の拡開方向の回動端を規定するストッパが構成されている。また、筒状体128,128からロッド状体130,130を引き出して脚部120,120の長さ寸法を長くする際には、例えば接続部136を足で押さえつつ天板112における寝台12と反対側の端部を上方に持ち上げることで、脚部120,120の長さを素早く調節することができる。さらに、接続部136に足を掛けることで、術者14が天板112上に素早く乗ることができる。すなわち、かかる接続部136により、術者14が足を掛けて天板112上に乗るための足掛部が構成されている。特に、足掛部(接続部)136が、天板112の長さ方向において寝台12と反対側の端部付近に設けられていることから、術者14が天板112上に乗る動作が一層容易とされる。
ここにおいて、載置部114を寝台12のマットレス28上に載置して寝台12に取り付けた状態では、天板112が、寝台12側(載置部114側)に向かって下方傾斜するようにされている。したがって、天板112において載置部114と反対側である突出部116が、マットレス28および載置部114よりも高い位置に支持されている。すなわち、図17に示される右側面図において、マットレス28の上面を通る直線と天板112の長さ方向に延びる直線とが所定の角度αをもって交わるようになっている。かかる天板112の寝台12に対する傾斜角度αは、0°<α≦45°、より好ましくは3°≦α≦30°、さらに好ましくは3°≦α≦15°に設定される。
また、足趾支持台110を寝台12に取り付けた状態では、天板112の長さ方向に延びる直線と脚部120の長さ方向に延びる直線とは、所定の角度β(図17参照)をもって交わっており、当該角度βは、好適には90°≦β≦135°、より好適には90°<β≦120°の範囲内に設定される。
更にまた、足趾支持台110を寝台12に取り付けた状態では、脚部120,120の先端部(キャップ134,134)は、回動軸124を通って床面118に直交する垂線Lに対して寝台12と反対側に位置している。すなわち、脚部120の長さ方向に延びる直線と床面118が90°未満とされる角度γをもって交わっている。かかる角度γは、45°≦γ<90°とされることが好適であり、より好適には60°≦γ<90°の範囲内に設定される。
以上の如き構造とされた本実施形態の足趾支持台110では、例えば天板112上の載置部114の側に術者14の膝29が載置されて術者14の体重などの荷重が及ぼされることから、載置部114における下方端縁部(天板112の傾斜方向で下方となる端縁部)139が寝台12におけるマットレス28の表面に食い込んで圧接される。これにより、足趾支持台110が寝台12に固定されるようになっている。それ故、載置部114の下方端縁部139により寝台12の表面に食い込んで圧接される圧接係合部が構成されており、当該圧接係合部114により、足趾支持台110を寝台12に固定する固定手段が構成されている。そして、かかる足趾支持台110においても、膝立位による胸骨圧迫時に術者14の足趾16が支持されることから、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
また、本実施形態では、天板112が寝台12側に向かって下方傾斜していることから、術者14が前傾姿勢となることができて、胸骨圧迫に際して術者14の体重を効率的に患者に及ぼすことができる。それに加えて、天板112の寝台12と反対側の端部がマットレス28よりも高い位置にあることで、足趾16に力を入れた際にも、例えば天板が水平方向に広がっている場合に比べて、天板112から安定して反力を得ることができて、胸骨圧迫時の術者14の姿勢を一層安定させることができる。
さらに、天板112の載置部114が術者14の体重により寝台12におけるマットレス28上に食い込むことに加えて、天板112が樹脂製シート117で覆われて表面の摩擦抵抗が大きくされていることから、胸骨圧迫時の術者14の動作により天板112が寝台12のマットレス28上から滑り落ちることが防止され得る。それ故、前記実施形態の如き凹凸による係合やクランプ、突出板部などを採用することなく、載置部114を寝台12の表面に載置することのみで、足趾支持台110が寝台12に固定され得る。これにより、足趾支持台110の寝台12への固定時間を短くすることができて、患者74に対してより素早く胸骨圧迫を施すことができる。
特に、脚部120,120の長さを調節して、天板112を寝台12側に向かって下方傾斜させつつ載置部114を寝台12のマットレス28上に載置することで、足趾支持台110が寝台12に固定されることから、寝台の種類や高さなどに拘らず、足趾支持台110を取り付けることができる。それ故、汎用性の高い足趾支持台110を提供することができる。
更にまた、本実施形態では、脚部120,120の開方向の回動を制限するストッパ(金属片)138,138が設けられていることから、脚部120,120を開方向に回動させることのみで足趾支持台110の展開動作を完了させることもできる。これにより、足趾支持台110を寝台12に対して一層素早く装着することができる。
なお、本実施形態では、脚部120,120の閉方向の回動を制限するストッパは設けられていないが、天板112と脚部120,120とのなす角βが90°以上とされていることや、脚部120,120と床面118とのなす角γが90°未満とされている(脚部120,120の下端が直線Lを挟んで寝台12と反対側にある)ことから、胸骨圧迫時の動作により脚部120,120が天板12に対して閉方向に自動的に回動してしまうことが効果的に防止され得る。それ故、脚部120,120の閉方向の回動を制限する動作を行う必要もなく、足趾支持台110を寝台12に対してより一層素早く固定することができる。
また、本実施形態の足趾支持台110には、脚部120,120間を水平に延びる接続部136が設けられており、当該接続部136に足を掛けて天板112上に乗ることができることから、術者14が素早く天板112上に移動して胸骨圧迫を施すことができる。
次に、図20には、本発明の第11の実施形態としての足趾支持台140が示されている。本実施形態における足趾支持台140の脚部の構造は、前記第10の実施形態における脚部120,120と同様の構造が採用されている一方、天板の構造が異ならされている。
すなわち、本実施形態における天板142の寝台12側の端部(載置部114)には、寝台12側(下方)に突出する突条部144が設けられている。かかる突条部144は、略矩形断面をもって寝台12の長手方向(図20の紙面直交方向)、即ち天板142の幅方向略全長に亘って延びている。なお、本実施形態においても、天板142は、全面に亘って樹脂製シート117で覆われている。
かかる構造とされた足趾支持台140では、天板142が水平とされた状態で、載置部114が寝台12のマットレス28上に載置される。
このような足趾支持台140においても、術者14が天板142上に乗ることにより、突条部144が寝台12の表面に食い込んで、足趾支持台140が寝台12に圧接固定される。したがって、かかる足趾支持台140によれば、前記第10の実施形態と同様の効果が発揮され得る。それ故、本実施形態の足趾支持台140では、突条部144により圧接係合部が構成されているとともに、当該圧接係合部により足趾支持台140を寝台12に固定する固定手段が構成されている。
次に、図21には、本発明の第12の実施形態としての足趾支持台150の要部が示されている。なお、本実施形態の足趾支持台150では、脚部120,120の回動を制限するストッパ以外の構造は、前記第11の実施形態と同様であることから、ストッパの部分のみを拡大して図21に示す。すなわち、前記第11の実施形態においては、脚部120,120の展開状態からの更なる開方向への回動を制限するストッパが金属片138,138により形成されている一方、展開状態からの閉方向への回動を制限するストッパは設けられていなかったが、本実施形態では、脚部120,120の展開状態からの開方向と閉方向の両方向の回動を制限するストッパ機構152が設けられている。
本実施形態の足趾支持台150では、ストッパ機構152が、第一の金属片154と第二の金属片156とから構成されており、天板142側に第一の金属片154が設けられているとともに、脚部120側に第二の金属片156が設けられている。これら第一および第二の金属片154,156は、それぞれ略矩形状とされており、第一の金属片154には、板厚方向に貫通するとともに第一の金属片154の長さ方向に延びる係合溝158が形成されている。一方、第二の金属片156からは係合突部160が突出しており、係合溝158内に係合突部160が入り込むことで、第一の金属片154と第二の金属片156とが係合している。そして、脚部120,120の回動軸124回りの回動に伴い、係合突部160が、係合溝158内を摺動するようになっている。
すなわち、脚部120,120が閉状態とされる場合には、係合突部160が、係合溝158内の一方の端部に位置しているとともに、脚部120,120が展開状態とされる場合には、図21に示されるように、係合突部160が、係合溝158内の他方の端部に位置している。なお、係合溝158には、溝内部に突出する凸部162が設けられており、係合突部160が凸部162を乗り越えることで、係合溝158内の他方の端部に位置するようになっている。
かかる構造とされたストッパ機構152では、脚部120,120を回動軸124回りで所定の角度だけ回転させることにより、係合突部160が凸部162を乗り越えて、係合溝158内の他方の端部に位置させられる(展開状態)。この際、係合突部160と係合溝158における他方の端部側の内壁164とが当接することにより、それ以上の脚部120,120の開方向への回動が制限される。すなわち、これら係合突部160と係合溝158における他方の端部側の内壁164とにより、脚部120,120の開方向への回動端を規定するストッパが構成されている。また、かかる状態から脚部120,120を閉方向に回動させるには、凸部162を乗り越える必要があることから、脚部120,120が自動的に閉方向に回転してしまうことが防止されている。すなわち、係合突部160と凸部162とが当接することで、脚部120,120の閉方向への回動が制限されるようになっている。
以上の如きストッパ機構152を備える足趾支持台150では、脚部120,120が展開された状態で、脚部120,120のそれ以上の開方向および閉方向への回転が防止されることから、足趾支持台150に対して胸骨圧迫の動作に伴う外力が及ぼされても、脚部120,120が自動的に閉方向へと回動することが回避されて、術者(14)が高い信頼性をもって胸骨圧迫を施すことができる。尤も、展開状態からの脚部120,120の開方向および閉方向への回動を防止するストッパ機構としては本実施形態に例示的に記載したものに限定されるものではなく、例えば係合溝158内に別途ストッパ部材を嵌め込んだりして係合突部160の移動(脚部120,120の回動)を防止するようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良などを加えた態様で実施可能である。
たとえば、足趾支持台に設けられる脚部の数は何等限定されるものではない。すなわち、前記第6〜第8の実施形態では、足趾支持台78,82,98にそれぞれ1つの脚部34が設けられていたが、これらの足趾支持台においても複数の脚部が設けられてもよい。さらに、前記各実施形態では、天板18,80,99,102,112,142の長さ方向における寝台12に隣接する側と反対側の側縁部のみに脚部20,34,120が設けられていたが、天板の長さ方向における寝台に隣接する側の側縁部にも脚部が設けられてもよく、例えば足趾支持台は四本脚とされてもよい。その場合、例えば各脚部の下端にキャスターを設けてもよく、これにより足趾支持台の移動が容易とされ得る。また、足趾支持台にキャスターが設けられる場合には、足趾支持台がベッドやストレッチャーと共に移動できることから、患者の搬送中においても術者が寝台上で膝立位の状態で胸骨圧迫を施すことが可能となる。
さらに、足趾支持台に設けられる固定部やクランプの数は何等限定されるものではない。たとえば、前記第6〜第8の実施形態では、足趾支持台78,82,98にそれぞれ1つの固定部30またはクランプ92が設けられていたが、それぞれ複数の固定部やクランプが設けられてもよい。また、前記第1〜第5、第9の実施形態では、足趾支持台10,32,60,66,70,100にそれぞれ一対の固定部30,30や固定部104,104、またはクランプ62,62が設けられていたが、これらはそれぞれ1つ、または3つ以上設けられてもよい。
また、前記第1〜第6および第10〜第12の実施形態では、足趾支持台10,32,60,66,70,78,110,140,150が寝台12から取外し可能とされるとともに、前記第7〜第9の実施形態では、足趾支持台82,98,100が寝台12に収納され得るようになっていたが、足趾支持台は取り外したり収納したりされなくてもよい。すなわち、例えば前記第1の実施形態に示される足趾支持台10が、固定部30,30の係合部分31,31において、寝台12のフレーム24に溶着や接着により固着されてもよい。
さらに、前記第1,2,6,9の実施形態では、固定部30,104の係合部分31,106が寝台12のフレーム24に引っ掛けられるように係合するようになっているとともに、前記第3〜5,7,8の実施形態では、クランプ62,92(固定部)が寝台12のフレーム24を挟み込むように係合するようになっているが、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、たとえば、図22(a)に示されるように、寝台12に、上下方向にスライド可能な転落防止用の柵170が設けられる場合には、転落防止用の柵170を下げた状態にして、固定部30の係合部分31が当該転落防止用の柵170に係合して固定されるようになっていてもよい。また、図22(b)に示されるように、転落防止用の柵がフレーム24に設けられた凹部172に挿入されることで取り付けられる場合には、かかる転落防止用の柵を取り外して、当該柵の設置用の凹部172に鉤状とされた固定部174の先端部分を挿入することで固定されるようになっていてもよい。さらに、図22(c)に示されるように、固定部176がバンド状とされて、フレーム24に結び付けられてもよい。かかる場合の固定には、例えば面ファスナーなどが好適に採用され得る。これら図22(a)〜(c)に示される固定部30,174,176を採用することにより、寝台12に対して足趾支持台が着脱可能に固定され得る。
更にまた、前記第5の実施形態では、天板18から別部材とされた突出板部72が突出していたが、天板と突出板部は一体とされて、1枚の板状体として構成されてもよい。また、前記第5の実施形態において、クランプ62,62は必須なものではなく、突出板部が患者の体重により固定されることのみで足趾支持台が寝台に固定されるようになっていてもよい。なお、突出板部が固定手段として患者の体重により移動不能に固定される場合には、突出板部は、前記第5の実施形態のように患者の背中を覆い得る大きさとされる必要はなく、患者の一部分が載置されることにより患者の体重が及ぼされて移動不能に固定されるようになっていてもよい。
さらに、前記第5の実施形態では、天板18と突出板部72とはヒンジ76,76により接続されて、当該ヒンジ76,76において、天板18に対して突出板部72を折り返すことで足趾支持台70をコンパクトにできるようにされていたが、図23に示される足趾支持台178のように、天板18の上面に対して突出板部180を重ね合わせて、天板18の幅方向両端に設けられたガイド182,182に沿って天板18の長さ方向でスライド変位できるようにしてもよい。かかる足趾支持台178においても、突出板部124を天板18の長さ方向における寝台12が設けられる側とは反対側へスライド変位させることにより足趾支持台178をコンパクトにすることができることから、前記第5の実施形態と同様の効果が発揮され得る。尤も、上記の如き折り返したりスライドしたりして足趾支持台をコンパクトにする機構は必須なものではなく、図24に示される足趾支持台184のように、1枚の平坦な天板186が患者の体重のみで寝台12に固定されるようになっていてもよい。
また、前記図3や図4に示される高さ調節機構36,46,48,50はそれぞれ天板18の高さ位置を手動で調節するようにされていたが、例えばモータなどを用いて電動で調節するようにしてもよい。なお、寝台が高さ調節機構を備えている場合には、寝台の高さの調節に連動して、足趾支持台の高さを自動で調節するようにしてもよい。
さらに、前記第10〜第12の実施形態では、天板112,142の全体が樹脂製シート117で覆われていたが、例えば寝台のマットレス上に直接当接する載置部や突条部の底面のみに樹脂製シートが貼付されるなどでもよい。なお、摩擦抵抗を向上させる部材は、樹脂製シートに限定されるものではなく、例えば凹凸を有するゴムなどでもよい。尤も、かかる摩擦を向上させる部材は必須なものではなく、天板の底面を荒らして摩擦抵抗を上げるなどしてもよい。かかる摩擦抵抗を向上させる部材の材質などは、例えば防水性や消毒性(耐薬品性)などを考慮して選択されることが好適である。
また、前記第11の実施形態では、突条部144が天板142の幅方向の略全長に亘って延びていたが、例えば天板142の幅方向で部分的に設けられてもよい。また、前記第11の実施形態では、突条部144は略矩形断面とされていたが、突出先端(下方)に向かって先細となる形状などとされてもよく、かかる形状を採用することにより、より大きな圧力をもって寝台の表面に圧接され得る。
更にまた、前記第10,11の実施形態に記載の足掛部(接続部)136は、脚部が複数設けられている前記第1〜第6および第9の実施形態でも採用することが可能であり、また前記第7,8の実施形態でも脚部を複数設けることで採用可能となる。