以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、作業車両1の概略左側面図である。図2は、作業車両1の概略平面図である。図3は、作業車両1の概略背面図である。なお、以下では、作業車両1として、圃場で作業する場合に使用するトラクタ(農用トラクタ)を例に説明する。
また、以下の説明において、前後方向とは、作業車両、すなわち、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。なお、トラクタ1の進行方向とは、トラクタ1の直進時において、後述する操縦席7からステアリングハンドル6へ向かう方向である(図1および図2参照)。
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。ここでは、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、オペレータが操縦席7に着いて前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である(図2および図3参照)。さらに、上下方向とは、前後方向および左右方向に対して直交する方向である(図1および図3参照)。前後方向、左右方向および上下方向は、互いに3次元で直交する。
図1、図2および図3に示すように、トラクタ1は、走行車体2の前部および後部にそれぞれ前輪3,3および後輪4,4を備えており、走行車体2の前部に搭載されたエンジンEの回転動力を、ミッションケース20(図3参照)内の変速装置によって適宜減速するなどして前輪3,3、後輪4,4へ伝達するように構成されている。
また、走行車体2の中央部には、ハンドルポスト5に支持されたステアリングハンドル6が設けられ、ステアリングハンドル6の後方に操縦席7が設けられている。また、図示しないが、ステアリングハンドル6の周辺には、エンジンEの回転数を調節するスロットルレバーなどの各種操作レバーなどが設けられている。
また、走行車体2の中央のステップフロア8には、ハンドルポスト5を挟んで、左側にクラッチペダル9が設けられ、右側に左右の後輪4,4をそれぞれ制動する左右のブレーキペダル10L,10Rが設けられている。
図2に示すように、走行車体2は、操縦席7の左右の両側方において、左右の後輪4,4を前方および上方から覆う左右のリヤフェンダ11,11を備えている。なお、左側のリヤフェンダ11の上方の面(上面)には、主変速レバー12が設けられ、主変速レバー12の後方には、低速、中速、高速および中立のいずれかの位置を選択する副変速レバー13が設けられている。
また、右側のリヤフェンダ11の上面には、たとえば、作業機(たとえば、ロータリ耕耘機)50による耕耘深さを設定する耕深レバー14、昇降アーム101を操作して作業機50の高さを設定するポジションレバー15などが設けられている。
また、走行車体2の後部には、左右のリヤフェンダ11,11を下方からそれぞれ支持する左右のリヤフレーム16,16(図3参照)が設けられている。さらに、走行車体2の後部における操縦席7の後方には、左右のリヤフレーム16,16に支持されたアーチ状のロプスフレーム17が設けられている。
作業機50は、リヤフレーム16に取り付けられたヒッチ(たとえば、2Pヒッチ)の他、昇降アーム101(後方のリフトロッドを含む)によって昇降可能に支持されつつ、走行車体2の後部に連結されている。図3に示すように、作業機50は、ミッションケース20の後面に設けられたPTO(Power take-off)軸21から、エンジンEから伝達された回転動力を取り出して、たとえば、耕耘爪を回転させて耕耘作業などを行う。
昇降アーム101は、操縦席7の下方に設けられた昇降シリンダケース102(図9参照)内において昇降リンク機構120(図12参照)に連結されている。なお、昇降シリンダケース102には、昇降リンク機構120の他、昇降アーム101を駆動する昇降シリンダ104(図9参照)が収納されている。
また、たとえば、昇降アーム101の回動に連動する昇降リンク機構120の回動速度をダンパ121(図12参照)によって制限することで、作業機50の下降速度を遅くすることができる。なお、上記した、昇降アーム101、昇降シリンダケース102、昇降シリンダ104、昇降リンク機構120およびダンパ121は、作業機50の下降速度を調整する、いわゆるメカデセラ100を構成している。メカデセラ100の詳細については、図8〜図13を用いて後述する。
また、作業機50は、走行車体2に対してPTO軸21まわりにローリング可能に連結され、走行車体2の後方に配置される。また、本実施形態に係る作業車両(トラクタ1)は、作業機50の走行車体2に対するローリング姿勢を用途に応じて制御するために3種類のモードを有している。各モードは、後述するモード切替スイッチ61(図2参照)によって入切を切り替えることができる。
次に、図4〜図7を参照して、作業機50の姿勢(すなわち、ローリング姿勢)制御における各モードについて説明する。上記したように、作業機50の姿勢制御において、モード切替スイッチ61は、「手動モード」、「自動水平モード」および「平行モード」の3種類のモードに切り替えることができる。
図4および図5は、作業機50の姿勢制御における「手動モード」の説明図である。操作者がモード切替スイッチ61を押して「手動モード」を「入」へ切り替えると、作業機50の姿勢(ローリング姿勢、すなわち、左右方向に傾斜した姿勢)を調整する右上げスイッチ62および右下げスイッチ63による操作が可能となる。なお、図4および図5では、走行車体2が走行し、かつ、作業機50によって作業する圃場面などの作業面Grが水平な場合を示している。
図4に示すように、「手動モード」では、右上げスイッチ62(図2参照)の1回または複数回の押し操作によって、左右の昇降アーム101のいずれか一方(図示の例では、右側の昇降アーム101)に設けられた姿勢変更シリンダ24のロッドが収縮し、作業機50を右上へ引き上げる。これにより、作業機50は、作業機支持部材22を介して矢印R1の向きへ回動し、作業面Grに対して右上がりに傾斜する。
また、図5に示すように、「手動モード」では、右下げスイッチ63(図2参照)の1回または複数回の押し操作によって、姿勢変更シリンダ24のロッドが伸張し、作業機50を右下へ押し下げる。これにより、作業機50は、作業機支持部材22を介して矢印R2の向きへ回動し、作業面Grに対して右下がりに傾斜する。
なお、「手動モード」を、モード切替スイッチ61によって「自動水平モード」および「平行モード」のいずれも選択されていない、すなわち、いずれも「入」になっていない場合に「入」になるように構成してもよい。
図6は、作業機50の姿勢制御における「自動水平モード」の説明図である。操作者がモード切替スイッチ61を押して「自動水平モード」を「入」へ切り替えると、図6に示すように、たとえば、作業面Grが傾斜している場合でも、作業機50は、かかる作業面Grを走行する走行車体2のローリングに関わらず、常に水平状態を維持するように自動制御される。
図7は、作業機50の姿勢制御における「平行モード」の説明図である。操作者がモード切替スイッチ61を押して「平行モード」を「入」へ切り替えると、図7に示すように、たとえば、作業面Grが傾斜している場合、作業機50は、かかる作業面Grの傾斜に沿ってローリングしている走行車体2と同等に傾斜して、作業面Grに対して常に平行となるように自動制御される。
なお、トラクタ1は、作業機50を、走行車体2のローリングに関わらず、予め設定されたロール角に維持する「傾斜モード」をさらに有してもよい。
また、トラクタ1は、走行車体2に対する後退操作を検出して作業機50を非作業位置へ上昇させる「バックアップモード」、作業機50を非作業位置から作業位置へ下降させる場合に下降速度を所定高さから緩速として衝撃を緩和する「デセラ(デセラレーション)モード」などをさらに有してもよい。なお、「バックアップモード」や「デセラモード」を、入切スイッチを操作してそれぞれの入切を切り替えるようにしてもよい。
また、「デセラモード」を実行するために、入切スイッチによって電動モータの入切を切り替えるような電気式の他、機械式としてもよい。本実施形態に係る作業車両(トラクタ1)では、機械式のいわゆるメカデセラを採用している。ここで、図8〜図13を参照して、かかるメカデセラ100について説明しておく。
図8は、メカデセラ100の設置位置の説明図である。具体的には、図8は、走行車体2の後部を示す概略右側面図である。また、図8には、右側面視において後輪4に隠れた部分を透視して示している。図8に示すように、トラクタ1は、走行車体2の後部における右側、かつ、後輪4よりも左右方向の内側(左側)にメカデセラ100を備えている。メカデセラ100は、操作者Oによるポジションレバー15の操作によって作業機50が非作業位置(上昇位置)から作業位置(下降位置)へ下降する場合に、かかる下降速度を調整する装置である。
図9〜図13は、メカデセラ100の構成の説明図である。具体的には、図9、図10および図11は、昇降シリンダケース102の概略右側面図(透視図)であり、図9に昇降アーム101の基本状態、図10に昇降アーム101を下げた状態、図11に昇降アーム101を上げた状態をそれぞれ示している。また、図12は、昇降リンク機構120の概略右側面図であり、図13は、ダンパ(減衰部材)121の概略斜視図である。
図9に示すように、メカデセラ100では、昇降バルブ103のバルブスプール103aが前後方向に動かされると、昇降シリンダケース102の内部に上下方向について斜めに設置された昇降シリンダ104が作動し、昇降シリンダアーム104aに連結された昇降アーム101のシリンダ接続部101bを押し引きする。これにより、昇降アーム101が昇降アーム回動軸101aを支点として上下に回動する。
また、図10および図11に示すように、かかるメカデセラ100では、昇降アーム101を下げた位置から上昇させる場合、操作者Oがポジションレバー15(図8参照)を前方に倒した下げ位置から後方の上げ位置まで引くと、ポジションレバー15の下端部が第1回動体105のレバー当接部105aを押し下げる。これにより、第1回動体105が図中における反時計回りに回転する。また、第1回動体105の内部には内部アーム105bが設けられており、第1回動体105が回転すると、内部アーム105bが第1回動体105と一体となって回転する。
また、内部アーム105bの内部には第1内部リンク110が設けられている。第1内部リンク110は、内部アーム105bの回転に伴い、昇降シリンダケース102に固定された第1内部リンク回動軸110aを支点として図中における反時計回りに回転する。また、第1内部リンク110は、上部において内部アーム105bに連結され、下部において内部リンクピン110bに連結されている。このため、第1内部リンク110が反時計回りに回転すると、第2内部リンク111が前方へ引っ張られ、これにより、内部リンクピン110bの下方近傍において連結された昇降バルブ103のバルブスプール103aを押し込む。
バルブスプール103aが昇降バルブ103によって押し込まれると、油路104bから圧油が供給されて昇降シリンダ104内の昇降ピストン104cを押し出して、昇降アーム101が上昇する。このとき、第1回動体105の回転角により決定する内部リンクピン110bの位置に対して昇降アーム101が上昇しすぎると、昇降アーム101と第2内部リンク111との連結部111aが内部リンクピン110bよりも前方へ移動する。これにより、スプール連結部111bが後方へ移動して昇降シリンダ104に対する圧油の供給が停止する。このように、メカデセラ100では、ポジションレバー15の位置と、昇降アーム101および第1回動体105の回転角とが常に連動するようになる。
また、かかるメカデセラ100では、ポジションレバー15を上げた位置から下降させる場合、操作者Oがポジションレバー15(図8参照)を後方に引いた上げ位置から前方の下げ位置へ倒すと、ポジションレバー15の下端部が第1回動体105のレバー当接部105aから離れるため、第1回動体105の戻りばね105d(図8参照)によって、第1回動体105が図中における時計回りに回転する。
第1回動体105の回転に伴い、内部アーム105bが時計回りに回転するため、第1内部リンク110が、内部アーム105bの回転に伴い第1内部リンク回動軸110aを支点として時計回りに回転する。第1内部リンク110が時計回りに回転すると、第2内部リンク111が後方へ引っ張られ、これにより、内部リンクピン110bの下方近傍において連結された昇降バルブ103のバルブスプール103aを引き出す。
バルブスプール103aが昇降バルブ103によって引き出されると、昇降シリンダ104内の圧力が下がり、昇降アーム101が自重によって昇降ピストン104cを昇降シリンダ104の内部へ押し込みながら下降する。このとき、第1回動体105の回転角により決定する内部リンクピン110bの位置に対して昇降アーム101が下降しすぎると、昇降アーム101と第2内部リンク111との連結部111aが内部リンクピン110bよりも後方へ移動する。これにより、スプール連結部111bが前方へ移動して昇降シリンダ104に対して圧油が供給される。このように、メカデセラ100では、昇降アーム101の下降時においても、ポジションレバー15の位置と、昇降アーム101および第1回動体105の回転角とが常に連動するようになる。
また、図12に示すように、昇降アーム101(図9参照)に連動して回転する第1回動体105の外部アーム105cと第2回動体106の下部アーム106aとは、第1リンクアーム107によって連結されており、昇降アーム101が下降する場合、第1回動体105が図中における反時計回りに回転すると、第2回動体106が反時計回りに回転する。さらに、第2回動体106の上部アーム106bは、第3回動体108のリンク連結アーム108bと第2リンクアーム109とによって連結されており、第2回動体106が時計回りに回転すると、第3回動体108が時計回りに回転する。
なお、図13に示すように、第3回動体108は、回動軸となる第3筒体108aにリンク連結アーム108b、リターンプレート108dおよびボルト取付板108cが溶接されており、各部材が一体となって回転する。また、たとえば、ボルト取付板108cに穴が設けられ、かかる穴にナット108eが溶接され、ナット108eにボルト112が調整可能に挿入されるようにしてもよい。また、リターンプレート108dは、ボルト取付板108cに対して間隔をあけて対面するように第3筒体108aに溶接されている。なお、この場合、ナット108eがめねじ部としてボルト取付板108cに溶接されているが、ナット108eに代えて、ボルト取付板108cにタップ加工してボルト112を挿入するようにしてもよい。
また、図12および図13に示すように、第3回動体108と同軸上の外側にはダンパアーム115が回転可能に設けられている。ダンパアーム115は、回動軸となる第4筒体115aに当接板115bとダンパ連結部115cとが溶接されており、各部材が一体となって回転する。当接板115bは、第3回動体108のボルト取付板108cとリターンプレート108dとの間に挿入するように設けられるので、第3回動体108が時計回りに回転する場合、所定の角度以上に回転したところでボルト112が当接板115bに当接すると、第3回動体108の回転がダンパアーム115に伝達される。
よって、ボルト112の挿入深さを調節することで、ダンパ121(図12参照)に連結されたダンパアーム115が回転(回動)を開始するタイミングを調整することが可能となる。これにより、作業機50(図1参照)の下降速度を低下させる位置を調節することができる。なお、第3回動体108が反時計回りに回転する場合は、リターンプレート108dが当接してダンパアーム115を反時計回りに回転させる。
また、ダンパ連結部115cには、ダンパ121の取付位置を調節するダンパ位置変更部材116が取り付けられる。ダンパ位置変更部材116は、下方が開口された矩形状(コ字形状)に形成されており、ダンパ連結部115cに被せるように取り付けられ、下部にダンパ取付ロッド116aを軸支してダンパ121が取り付けられる。ダンパ取付ロッド116aは、ダンパ連結部115cの下部に設けられた長穴115dに挿通されることで、ダンパ121の取付位置をダンパアーム115の回転の径方向について変更可能となる。
また、ダンパ位置変更部材116の頂部には、矩形状の穴部116bと、ダンパ位置変更部材116の位置固定用の板ばね117とが設けられている。板ばね117は、下方に折り曲げられ、穴部116bを一旦通過して下方で折り返されている。かかる折返し部がダンパ連結部115cの上面に形成された複数の溝の1つに嵌合することで、ダンパ位置変更部材116が固定される。
また、ダンパ121の取付位置を回転の径方向について変更可能とすることで、回動支点となる第4筒体115aとダンパ121とを押し込む力の作用点となるダンパ取付ロッド116aとの間の距離が変更可能となる。なお、かかる距離が近いほどダンパ121を押し込む力が強くなり、遠いほどダンパ121を押し込む力が弱くなる。ダンパ121が効き始めてからの作業機50の下降速度は、ダンパ121を押し込む力が強いほど速く、ダンパ121を押し込む力が弱いほど遅くなるため、ダンパ121とダンパ取付ロッド116aとの間の距離を変更することで、作業機50の下降速度を調整することができる。
次に、図14〜図18を参照して、ロール角検出装置30、姿勢制御装置40について説明する。図14および図15は、ロール角検出装置30および姿勢制御装置40の設置位置の説明図である。なお、図14および図15には、走行車体2の後部を斜め上方から見た図(斜視図)をそれぞれ示している。また、図中、後輪4などを省略している。また、図15では、操縦席7を省略している。
ロール角検出装置30は、走行車体2のロール軸を中心とした左右方向の傾斜角、すなわち、ロール角を検出する装置である。なお、本実施形態に係るトラクタ1では、ロール角検出装置30として傾斜センサを採用している。以下、ロール角検出装置30を「傾斜センサ」という。
なお、従来、ロール角検出装置30と姿勢制御装置40とは離れた位置にあった。このため、双方の機器を接続するワイヤーハーネスなどの配線が長くなり、配線の配索が煩雑になり、組み立てが難しくなっていた。本実施形態に係る作業車両(トラクタ1)では、ロール角検出装置30と姿勢制御装置40とを近接して設けることとした。
図14および図15に示すように、傾斜センサ30は、走行車体2の後部に設けられている。より具体的には、傾斜センサ30は、走行車体2の後部において操縦席7の後方に設けられたセンターフレーム23の直上に設けられている。なお、センターフレーム23は、上記した左右のリヤフレーム16,16の上部に設けられ、左右のリヤフレーム16,16の間に左右方向に架け渡された部材である。
また、傾斜センサ30は、後方の面(後面)がカバー(以下、「傾斜センサカバー」という)35によって覆われている。このように、傾斜センサ30の後面が傾斜センサカバー35に覆われることで、傾斜センサ30に対する後方からの泥はねなどによる影響を防ぐことができる。なお、傾斜センサカバー35は、傾斜センサ30の四方のすべてまたは少なくとも後面を含む四方の一部を覆うものであってもよい。
また、傾斜センサカバー35は、後方の面(後面)に車両のナンバープレートP(図14参照)が取り付けられるナンバープレート取付部36をさらに有している。なお、傾斜センサ30の詳細については、図16を用いて後述する。
姿勢制御装置40は、作業機50(図1参照)の走行車体2に対するローリング姿勢を制御する装置である。姿勢制御装置40は、傾斜センサ30の検出値に基づいて姿勢変更シリンダ24のロッドを伸縮制御して、作業機50のローリング姿勢を制御する。図14および図15に示すように、姿勢制御装置40は、走行車体2の後部に設けられている。より具体的には、姿勢制御装置40は、走行車体2の後部において、センターフレーム23の直下にブラケットを介して設けられるとともに、傾斜センサ30の下方に位置して傾斜センサ30に近接して設けられている。
また、姿勢制御装置40は、後方の面(後面)がカバー(以下、「制御装置カバー」という)45によって覆われている。このように、姿勢制御装置40の後面が制御装置カバー45に覆われることで、姿勢制御装置40に対する後方からの泥はねなどによる影響を防ぐことができる。なお、制御装置カバー45は、姿勢制御装置40の四方のすべてまたは少なくとも後面を含む四方の一部を覆うものであってもよい。
このように、本実施形態に係るトラクタ1によれば、傾斜センサ30と姿勢制御装置40とが走行車体2の後部に集中することで、ワイヤーハーネスなどの配線の配索が容易となる。これにより、組み立て容易性を向上させることができる。また、傾斜センサ30と姿勢制御装置40との間を短い配線で接続することができ、部品コストを低減することができる。さらに、組み立て容易性の向上、部品コストの低減によって、製造コストを低減することができる。
また、傾斜センサ30が操縦席7のすぐ後方(真後ろ)にあるため、操作者は操縦席7に着席したまま作業機50(図3参照)のロール角などを調整することができる。これにより、傾斜センサ30による作業機50の微調整が容易となる。また、傾斜センサ30の設置を容易に行うことができる。
また、傾斜センサカバー35の後面にナンバープレート取付部36が設けられることで、ナンバープレート取付部36に取り付けられるナンバープレートPはセンターフレーム23の高さに位置するようになる。このため、ナンバープレートPの外部からの視認性が向上する。
図14および図15に示すように、姿勢制御装置40の下方には、作業機50の姿勢(ローリング姿勢)、すなわち、走行車体2に対する左右方向の傾斜角(ロール角)を検出する傾斜角検出装置70が姿勢制御装置40に近接して設けられている。なお、本実施形態に係るトラクタ1では、傾斜角検出装置70としてストロークセンサを採用している。以下、傾斜角検出装置70を「ストロークセンサ」という。なお、ストロークセンサ70の詳細については、図18を用いて後述する。
ストロークセンサ70は、後方の面(後面)がカバー(以下、「ストロークセンサカバー」という)75によって覆われている。このように、ストロークセンサ70の後面がストロークセンサカバー75に覆われることで、ストロークセンサ70に対する後方からの泥はねなどによる影響を防ぐことができる。なお、ストロークセンサカバー75は、ストロークセンサ70の四方のすべてまたは少なくとも後面を含む四方の一部を覆うものであってもよい。
このように、本実施形態に係るトラクタ1によれば、傾斜センサ30、姿勢制御装置40およびストロークセンサ70が、走行車体2の後部においてセンターフレーム23付近に集中し、かつ、それぞれの後面がカバー(傾斜センサカバー35、制御装置カバー45およびストロークセンサカバー75)によって覆われることで、各装置(機器)に対する後方からの泥はねなどによる影響を防ぐことができる。また、傾斜センサカバー35の後面にナンバープレートPが取り付けられることで、傾斜センサ30を傾斜センサカバー35とナンバープレートPとによって二重に保護することができる。
また、ストロークセンサ70と姿勢制御装置40とが近接しているため、ストロークセンサ70と姿勢制御装置40とを短い配線で接続することができ、配線の配索が容易となるとともに、部品コストを低減することができる。これにより、製造コストをさらに低減することができる。
図14および図15に示すように、走行車体2の後部には、作業機50を支持しつつ、作業機50のローリングと共に左右方向に傾斜(回動)する作業機支持部材22が設けられている。すなわち、作業機支持部材22は、作業機50のローリング姿勢に応じて作業機50のロール角と同等に傾斜する。したがって、ストロークセンサ70によって作業機支持部材22の左右方向の傾斜角を検出すれば、作業機50のローリング姿勢を検出することができる。
このように、本実施形態に係るトラクタ1によれば、作業機支持部材22の傾斜角を検出して作業機50の(走行車体に対する)ローリング姿勢を検出することができるため、構成簡素となる。これにより、製造コストをさらに低減することができる。
なお、傾斜センサ30、姿勢制御装置40およびストロークセンサ70は、センターフレーム23における左右方向の中心に配置され、かつ、上下方向について同一線上に並ぶように配置されている。これにより、3つの機器を最短距離で配置することができるとともに、傾斜センサ30およびストロークセンサ70においては、走行車体2のロール角および作業機50の姿勢をそれぞれ精度良く検出することができる。
ここで、図16を参照して、ロール角検出装置(傾斜センサ)30の詳細について説明する。図16は、ロール角検出装置(傾斜センサ)30の分解斜視図である。なお、従来、たとえば、傾斜センサ30の検出値を処理する場合に基準となる基準値を、スイッチの押下によって変更して作業機の姿勢を傾斜させていたが、スイッチを一回押下するごとの変化量が機種などでばらつきがある場合があり、作業機50の姿勢調整が煩雑化することがあった。このため、本実施形態に係るトラクタ1では、傾斜センサ30を走行車体2のロール軸Lまわりに回動させることとした。
図16に示すように、ロール角検出装置である傾斜センサ30は、センターフレーム23の上方の面(上面)23aに設けられる。なお、センターフレーム23は、上記した上面23aと、上面から直角に屈曲された前方の面(前面)23bとを有しており、左右側面視において鉤状に形成されている。
センターフレーム23の前面23bには、取付プレート25が、前面23bと対面して、センターフレーム23から上方へ突出して設けられている。取付プレート25には、傾斜センサ30のセンサ本体31を支持する支持ブラケット32が取り付けられる。このように、傾斜センサ30はアッセンブリ化されている。また、取付プレート25は、円形の第1穴部25aを有し、支持ブラケット32は、前方へ突出して第1穴部25aに挿通可能な第1軸部32aを有している。なお、取付プレート25は、センターフレーム23に取り付けられた状態において、第1穴部25aの中心が走行車体2のロール軸L上に位置する。
また、支持ブラケット32の第1軸部32aを取付プレート25の第1穴部25aに挿通させることで、支持ブラケット32は、取付プレート25に対して走行車体2のロール軸Lを中心に左右方向に傾斜(回動)可能となる。したがって、支持ブラケット32に固定されたセンサ本体31は、センターフレーム23に取り付けられた状態において、走行車体2のロール軸Lまわりに回動可能となる。
このように、本実施形態に係るトラクタ1によれば、傾斜センサ30が走行車体2のロール軸Lまわりに回動することで、走行車体2のロール角に関わらず作業機50のローリング姿勢の調整が可能となる。これにより、作業機50の姿勢調整を容易に行うことができる。
また、取付プレート25は、上下に長い長穴である第2穴部25bを有し、支持ブラケット32は、前方へ突出して第2穴部25bに挿通可能な第2軸部32bを有している。支持ブラケット32の第2軸部32bを取付プレート25の第2穴部25bに挿通させることで、支持ブラケット32の左右方向の回動を所定範囲に規制して過度な回動を抑えることができる。
また、支持ブラケット32は、取付プレート25の上面25aに対して隙間をあけて取り付けられる。かかる隙間に傾斜センサ30と姿勢制御装置40との間を接続する配線を通すことで、配線が外部に露出しないようになり、見栄えを良くすることができる。
また、センサ本体31が支持ブラケット32を介してセンターフレーム23に取り付けられた状態で、センサ本体31を覆うように、傾斜センサカバー35が上方から取り付けられる。また、傾斜センサ30には、センサ本体31、厳密には、支持ブラケット32に回動操作レバー33が着脱自在に取り付けられる。回動操作レバー33は、傾斜センサ30を手動でロール軸Lまわりに回動させるものであり、使用時には、傾斜センサカバー35の上面に設けられた左右方向に長い長穴35aを介して、図中の二点破線で示すように、支持ブラケット32の取付筒32cに挿入される。また、回動操作レバー33は、不使用時には、傾斜センサカバー35の上面の四隅のいずれかの近傍に設けられた穴35bに挿入される。これにより、回動操作レバー33は傾斜センサカバー35に保持される。
本実施形態に係るトラクタ1によれば、操作者が傾斜センサ30を回動しない場合に回動操作レバー33をセンサ本体31から取り外しておくことで、操作者が回動操作レバー33に接触して作業機50のローリング姿勢が変更されるような、操作者の意図しない変更、すなわち、誤操作を防止することができる。なお、傾斜センサ30が傾斜センサカバー35に覆われることによっても、誤操作を防止している。
また、上記したように、傾斜センサ30が操縦席7よりも後方にあるため(図14参照)、操作者が操縦席7から傾斜センサ30を回動操作する場合、操作者は操縦席7から後方を向いて操作することができる。これにより、操作者が作業機50の動きを目視によって確認しながら傾斜センサ30を回動操作することができる。
図16に示すように、センターフレーム23には、傾斜センサ30を挟んで、左右の少なくとも一方(図示の例では、左側)にクランプ部26が設けられている。クランプ部26は、センターフレーム23の下方の面(上面23aの裏面)に設けられ、センターフレーム23から後方へ延伸している可塑性部材であるクランプ部材26を有している。かかるクランプ部材26を下方へ折り返すことで、姿勢変更シリンダ24へ送給する圧油を調整するための後述するバルブ27と姿勢制御装置40とを接続する配線をまとめて、これらを固定することができる。
図15に示すように、操縦席7の直下には、電子制御されて、姿勢変更シリンダ24へ送給する圧油を調整するバルブ27が設けられている。バルブ27は、昇降シリンダケース102の左右いずれか一側方(図示の例では、昇降シリンダケース102の右方)に設けられている。このように、バルブ27が、姿勢変更シリンダ24と左右方向について同じ側(右側)にあることで、油圧を取り出すための長さを最短にすることができ、かつ、操作者からは見えにくい位置でメンテナンス時には作業者が作業しやすい位置となる。また、バルブ27は、外部から見えない位置にあるため、見栄えを良くすることができる。なお、バルブ27の外側(右側)には、着脱可能な泥除けカバー28が設けられている。また、かかる泥除けカバー28をゴム製として、着脱容易となるように構成してもよい。
このように、本実施形態に係るトラクタ1によれば、電子制御されるバルブ27と姿勢制御装置40とを接続する配線をセンターフレーム23の下方に配索することができる。これにより、センターフレーム23に配線が隠れるようになり、配線によって外観を損なうことがなくなり、さらに、上記したように、クランプ部26によって配線を固定するため、配線を容易に配索することができる。
また、ここで、図17および図18を参照して、傾斜角検出装置(ストロークセンサ)70の詳細について説明する。図17および図18は、傾斜角検出装置(ストロークセンサ)70の説明図である。なお、図17には、走行車体2の後部を斜め上方から見た図(斜視図)を示している。また、図中、ストロークセンサカバー75(図14参照)を省略している。また、図中、後輪4なども省略している。
図17に示すように、ストロークセンサ70は、前後方向の回動軸71aを支点に左右方向に回動する回動アーム71を備えている。ストロークセンサ70は、操縦席7を支持するシートブラケット19(図15参照)の後面に固定されている。また、ストロークセンサ70の下方において、ミッションケース20(図3参照)の後面には、上記した作業機支持部材22が設けられている。作業機支持部材22は、PTO軸21まわりに回動可能に設けられている。また、作業機支持部材22の上部には、PTO軸カバー76が固定されている。PTO軸カバー76は、前方端縁の中央部をカバー固定板77で上から押さえ付けるように固定されている。また、カバー固定板77には、上方へ突出する連結ロッド77aが設けられている。連結ロッド77aは、ストロークセンサ70の回動アーム71に連結されている。
図18に示すように、左右の連結部22a,22bを介して作業機50(図3参照)が連結された作業機支持部材22が作業機50のローリングに伴い左右方向に回動すると、作業機支持部材22もこれと同様に回動する。作業機支持部材22が回動すると、連結ロッド77aに連結された回動アーム71が回動軸71aを支点に回動する。そして、ストロークセンサ70は、回動アーム71の変化量(回動量)を検出することで、作業機50のローリング姿勢を検出する。
また、ストロークセンサ70が走行車体2の後部に設けられるため、ストロークセンサ70と被検出体である作業機50とが最短距離となり、作業機50のローリング姿勢を高感度で検出することができる。
次に、図19を参照して、ポジションセンサ80を用いた作業機50(図3参照)の水平制御規制について説明する。図19は、ポジションセンサ80の設置位置の説明図である。なお、図19には、走行車体2の後部を前方から斜めに見た図(斜視図)を示している。図19に示すように、走行車体2の後部から後方へ延伸する左右の昇降アーム101のいずれか(図示の例では、左側)の昇降アーム回動軸101aの近傍には、ポジションセンサ80が設けられている。ポジションセンサ80は、昇降アーム101の高さを検出する。
そして、姿勢制御装置40は、ポジションセンサ80によって昇降アーム101の所定高さ以上の上昇が検出されると、作業機50の水平制御を規制する。このように、作業機50の水平制御を規制することで、作業機50が高い位置で左右方向に傾斜(回動)することを防止することができ、誤操作によって作業機50が回動して、回動した作業機50に挟まれるなどの危険性をなくすことができる。また、作業機50が高い位置で回動することによって走行車体2が損傷することを防止することができる。
なお、ポジションセンサ80は、センサブラケット81に支持されており、センサブラケット81は、リヤアスクルケース29の取付ボルト29aと共締めされている。
次に、図20を参照して、モード切替スイッチ61を含む作業機50(図3参照)の姿勢に関する各スイッチを備えるスイッチボックス60の配置について説明する。図20は、スイッチボックス60の設置位置の説明図である。なお、図20は、走行車体2の右側部を斜め上方から見た図(斜視図)を示している。また、図中、後輪4などを省略している。
図20に示すように、スイッチボックス60は、モード切替スイッチ61、右上げスイッチ62および右下げスイッチ63を備えている。上記したように、モード切替スイッチ61は、傾斜センサ30の検出値に基づいて作業機50のローリング姿勢を制御するモード(「手動モード」、「自動水平モード」および「平行モード」)を切り替えるスイッチである。また、右上げスイッチ62および右下げスイッチ63は、「手動モード」において作業機50の姿勢(左右方向の傾斜)を調整するスイッチである。上記した、モード切替スイッチ61、右上げスイッチ62および右下げスイッチ63は、スイッチボックス60によってアッセンブリ化されている。このため、取付作業性が良好となる。
スイッチボックス60は、左右のリヤフェンダ11,11のいずれか一方(図示の例では、右側のリヤフェンダ11)の上方の面(上面)に設けられている。したがって、モード切替スイッチ61は、右側のリヤフェンダ11の上面に設けられている。また、スイッチボックス60は、傾斜センサ30よりも左右いずれかの外側方(右側の外側方)、かつ、傾斜センサ30よりも前方に設けられている。したがって、モード切替スイッチ61は、傾斜センサ30よりも右側の外側方、かつ、傾斜センサ30よりも前方に設けられている。
このように、本実施形態に係るトラクタ1によれば、操作者が操縦席7(図2参照)から振り返った姿勢で、傾斜センサ30、モード切替スイッチ61の双方の操作を容易に行うことができる。また、傾斜センサ30、右上げスイッチ62および右下げスイッチ63の双方の操作についても容易に行うことができる。
また、スイッチボックス60における各スイッチの位置関係は、モード切替スイッチ61が後方に配置され、右上げスイッチ62および右下げスイッチ63が前方に配置されている。さらに、右上げスイッチ62が走行車体2の内側(左側)、右下げスイッチ63が走行車体2の外側(右側)に配置されている。これにより、作業機50の姿勢を操作者の着座姿勢や感覚にあわせることができ、操作性を向上させることができる。さらに、モード切替スイッチ61、右上げスイッチ62および右下げスイッチ63は、走行車体2のハンドキャッチャー18の後方に配置されている。これによっても、作業機50の姿勢を操作者の着座姿勢や感覚にあわせることができ、操作性を向上させることができる。
また、スイッチボックス60は、リヤフェンダ11の上面に前後の2点で固定されている。なお、スイッチボックス60は、リヤフェンダ11に対してボルト、ナットで固定され、右側のリヤフレーム16に共締めされている。
また、スイッチボックス60のリヤフェンダ11の上面と対向する面(底面)の外周縁部には、リヤフェンダ11の上面形状に沿わせるために樹脂などのトリム64が装着されている。これにより、スイッチボックス60の底面とリヤフェンダ11の上面との間の隙間を埋めることができ、防水性や防塵性を向上させることができる。なお、トリム64は、スイッチボックス60の内部に収納された配線がスイッチボックス60の底面の内周面部で損傷しないように、すなわち、配線を保護するために、内周縁部に装着されてもよい。
また、スイッチボックス60は、所定の高さ(厚み)を有している。これにより、スイッチボックス60の内部にワイヤーハーネスなどの配線を収納することができ、幹線のみが外部に露出するようになって見栄えを良くすることができる。
なお、図示しないが、ワイヤーハーネスなどの配線の幹線は、リヤフェンダ11に沿って配索されており、たとえば、リヤフェンダ11の下面において、リヤフェンダ11に設けられたクランプによってまとめて固定されている。これにより、外部からは配線の幹線しか見えなくなり、幹線も走行車体2に沿っているため、見栄えを良くすることができる。
また、上記したように、走行車体2の後部における左右方向の右側には、作業機50の下降速度を調整する下降速度調整装置(メカデセラ)100が設けられている。また、メカデセラ100は、昇降シリンダケース102(図15参照)の左右いずれか一側方(右側方)に設けられている。さらに、上記したバルブ27(図15参照)は、メカデセラ100が設けられた側と同じ側に設けられている。
このように、本実施形態に係るトラクタ1によれば、メカデセラ100とバルブ27とが同じ側にあることで、2つの装置のメンテナンスなどが容易となる。
また、走行車体2の右側にメカデセラ100およびバルブ27などが配置されたことにり、走行車体2の後部における左右方向の左側にポジションセンサ80(図19参照)のような他のセンサ類が設けられている。これにより、走行車体2の左側において後輪4や泥除けカバー28(図15参照)を取り外すことで、センサ類のメンテナンスを行うことができる。すなわち、メンテナンス作業が容易となる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。