本開示は、2基の基地局に同時に接続されている移動局へのデータパケットを破棄する方法に関する。さらに、本開示は、本明細書に記載されている方法を実行する基地局を提供する。
ロングタームエボリューション(LTE)
WCDMA(登録商標)無線アクセス技術をベースとする第3世代の移動通信システム(3G)は、世界中で広範な規模で配備されつつある。この技術を機能強化または発展・進化させるうえでの最初のステップとして、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)と、エンハンストアップリンク(高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)とも称する)とが導入され、これにより、極めて競争力の高い無線アクセス技術が提供されている。
ユーザからのますます増大する需要に対応し、新しい無線アクセス技術に対する競争力を確保する目的で、3GPPは、ロングタームエボリューション(LTE)と称される新しい移動通信システムを導入した。LTEは、今後10年間にわたり、データおよびメディアの高速伝送ならびに大容量の音声サポートに要求されるキャリアを提供するように設計されている。高いビットレートを提供する能力は、LTEにおける重要な方策である。
LTE(ロングタームエボリューション)に関する作業項目(WI)の仕様は、E−UTRA(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access(UTRA):進化したUMTS地上無線アクセス)およびE−UTRAN(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access Network(UTRAN):進化したUMTS地上無線アクセスネットワーク)と称され、最終的にリリース8(LTEリリース8)として公開される。LTEシステムは、パケットベースの効率的な無線アクセスおよび無線アクセスネットワークであり、IPベースの全機能を低遅延かつ低コストで提供する。LTEでは、与えられたスペクトルを用いてフレキシブルなシステム配備を達成するために、スケーラブルな複数の送信帯域幅(例えば、1.4MHz、3.0MHz、5.0MHz、10.0MHz、15.0MHz、および20.0MHz)が指定されている。ダウンリンクには、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、かかる無線アクセスは、低いシンボルレートのため本質的にマルチパス干渉(MPI)を受けにくく、また、サイクリックプレフィックス(CP)を使用しており、さらに、さまざまな送信帯域幅の構成に対応可能だからである。アップリンクには、SC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access:シングルキャリア周波数分割多元接続)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、ユーザ機器(UE)の送信出力が限られていることを考えれば、ピークデータレートを向上させるよりも広いカバレッジエリアを提供することが優先されるからである。LTEリリース8/9では、数多くの主要なパケット無線アクセス技術(例えば、MIMO(多入力多出力)チャネル伝送技術)が採用され、高効率の制御シグナリング構造が達成されている。
LTEアーキテクチャ
図1は、LTEの全体的なアーキテクチャを示し、図2は、E−UTRANのアーキテクチャをより詳細に示している。E−UTRANは、eNodeBから構成され、eNodeBは、UE向けの、E−UTRAのユーザプレーン(PDCP/RLC/MAC/PHY)および制御プレーン(RRC)のプロトコルを終端処理する。eNodeB(eNB)は、物理(PHY)レイヤ、媒体アクセス制御(MAC)レイヤ、無線リンク制御(RLC)レイヤ、およびパケットデータ制御プロトコル(PDCP)レイヤ(これらのレイヤはユーザプレーンのヘッダ圧縮および暗号化の機能を含む)をホストする。eNBは、制御プレーンに対応する無線リソース制御(RRC)機能も提供する。eNBは、無線リソース管理、アドミッション制御、スケジューリング、交渉によるアップリンクQoS(サービス品質)の実施、セル情報のブロードキャスト、ユーザプレーンデータおよび制御プレーンデータの暗号化/復号化、ダウンリンク/アップリンクのユーザプレーンパケットヘッダの圧縮/復元など、多くの機能を実行する。複数のeNodeBは、X2インタフェースによって互いに接続されている。
また、複数のeNodeBは、S1インタフェースによってEPC(Evolved Packet Core:進化したパケットコア)、より具体的には、S1−MMEによってMME(Mobility Management Entity:移動管理エンティティ)、S1−Uによってサービングゲートウェイ(SGW:Serving Gateway)に接続されている。S1インタフェースは、MME/サービングゲートウェイとeNodeBとの間の多対多関係をサポートする。SGWは、ユーザデータパケットをルーティングして転送する一方で、eNodeB間のハンドオーバー時におけるユーザプレーンのモビリティアンカーとして機能し、さらに、LTEと別の3GPP技術との間のモビリティのためのアンカー(S4インタフェースを終端させ、2G/3GシステムとPDN GWとの間でトラフィックを中継する)として機能する。SGWは、アイドル状態のユーザ機器に対しては、ダウンリンクデータ経路を終端させ、そのユーザ機器へのダウンリンクデータが到着したときにページングをトリガーする。SGWは、ユーザ機器のコンテキスト(例えばIPベアラサービスのパラメータ、ネットワーク内部ルーティング情報)を管理および格納する。さらに、SGWは、合法傍受(lawful interception)の場合にユーザトラフィックの複製を実行する。
MMEは、LTEのアクセスネットワークの主要な制御ノードである。MMEは、アイドルモードのユーザ機器の追跡およびページング手順(再送信を含む)の役割を担う。MMEは、ベアラのアクティブ化/非アクティブ化プロセスに関与し、さらには、最初のアタッチ時と、コアネットワーク(CN)ノードの再配置を伴うLTE内ハンドオーバー時とに、ユーザ機器のSGWを選択する役割も担う。MMEは、(HSSと対話することによって)ユーザを認証する役割を担う。非アクセス層(NAS:Non-Access Stratum)シグナリングはMMEにおいて終端され、MMEは、一時的なIDを生成してユーザ機器に割り当てる役割も担う。MMEは、サービスプロバイダの公衆陸上移動網(PLMN:Public Land Mobile Network)に入るためのユーザ機器の認証をチェックし、ユーザ機器のローミング制約を実施する。MMEは、NASシグナリングの暗号化/完全性保護においてネットワーク内の終端点であり、セキュリティキーの管理を行う。シグナリングの合法傍受も、MMEによってサポートされる。さらに、MMEは、LTEのアクセスネットワークと2G/3Gのアクセスネットワークとの間のモビリティのための制御プレーン機能を提供し、SGSNからのS3インタフェースを終端させる。さらに、MMEは、ローミングするユーザ機器のためのホームHSSに向かうS6aインタフェースを終端させる。
LTE(リリース8)におけるコンポーネントキャリア構造
3GPP LTEシステムのダウンリンクコンポーネントキャリアは、いわゆるサブフレームにおける時間−周波数領域でさらに分割される。3GPP LTEで、各サブフレームは、図3に示すように2つのダウンリンクスロットに分割され、そこにおいて、第1のダウンリンクスロットは、第1のOFDMシンボル内の制御チャネル領域(PDCCH領域)を備える。各サブフレームは、時間領域内の所与の数のOFDMシンボルで構成され(3GPP LTE(リリース8)では12個または14個のOFDMシンボル)、各OFDMシンボルはコンポーネントキャリアの帯域幅全体に広がる。したがって、OFDMシンボルは、各々、図4にも示すように、NDL RB×NRB sc個のそれぞれのサブキャリアで送信されるいくつかの変調シンボルで構成される。
例えば3GPPロングタームエボリューション(LTE)において使用されるような、例えばOFDMを使用する、マルチキャリア通信システムを想定すると、スケジューラによって割り当てることができるリソースの最小単位は、1つの「リソースブロック」である。物理リソースブロック(PRB)は、図4に例示されるように時間領域におけるNDL symb個の連続するOFDMシンボル(例えば、7つのOFDMシンボル)および周波数領域におけるNRB sc個の連続するサブキャリア(例えば、コンポーネントキャリアの12個のサブキャリア)として定義される。したがって、3GPP LTE(リリース8)では、物理リソースブロックは、時間領域における1つのスロットおよび周波数領域における180kHzに対応する、NDL symb×NRB sc個のリソース要素で構成される(ダウンリンクリソースグリッドについてさらに詳しくは、例えば、3GPPのウェブサイトで入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれている、非特許文献1の6.2節を参照)。
1つのサブフレームは、2つのスロットで構成され、したがって、いわゆる「通常の」CP(サイクリックプレフィックス)が使用されるときにはサブフレーム内に14個のOFDMシンボルが存在し、いわゆる「拡張」CPが使用されるときにはサブフレーム内に12個のOFDMシンボルが存在する。専門用語を目的として、以下で、サブフレーム全体に広がる同じNRB sc個の連続するサブキャリアと同等の時間−周波数リソースは、「リソースブロックペア」または同意義の「RBペア」もしくは「PRBペア」と呼ばれる。
「コンポーネントキャリア」という用語は、周波数領域におけるいくつかのリソースブロックの組合せを示す。LTEの将来のリリースでは、「コンポーネントキャリア」という用語はもはや使用されず、その代わりに、その専門用語はダウンリンクおよびオプションでアップリンクリソースの組合せを示す「セル」に変更される。ダウンリンクリソースのキャリア周波数とアップリンクリソースのキャリア周波数との間のリンク付けは、ダウンリンクリソースで送信されるシステム情報において指示される。
コンポーネントキャリア構造についての同様の想定が、後のリリースにも適用される。
より広い帯域幅のサポートのためのLTE−Aにおけるキャリアアグリゲーション
世界無線通信会議2007(WRC−07)において、IMT−Advancedの周波数スペクトルが決定された。IMT−Advancedのための全体的な周波数スペクトルは決定されたが、実際に利用可能な周波数帯域幅は、地域や国によって異なる。しかしながら、利用可能な周波数スペクトルのアウトラインの決定に続いて、3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)において無線インタフェースの標準化が開始された。3GPP TSG RAN #39会合において、「Further Advancements for E-UTRA (LTE-Advanced)」に関する検討項目の記述が承認された。この検討項目は、E−UTRAを進化・発展させるうえで(例えば、IMT−Advancedの要求条件を満たすために)考慮すべき技術要素をカバーしている。
LTEアドバンストシステムがサポートすることができる帯域幅は100MHzであり、一方、LTEシステムは20MHzのみをサポートすることができる。今日、無線スペクトルの欠如がワイヤレスネットワークの開発のボトルネックになり、結果として、LTEアドバンストシステムのために十分広いスペクトル帯域を見つけることは困難である。したがって、より広い無線スペクトル帯域を獲得するための方法を見つけることは急務であり、ここにおいて、可能性のある答えは、キャリアアグリゲーション機能である。
キャリアアグリゲーションでは、最大で100MHzの広い送信帯域幅をサポートする目的で、2つ以上のコンポーネントキャリアがアグリゲートされる。LTE−Advancedシステムでは、LTEシステムにおけるいくつかのセルが、より広い1つのチャネルにアグリゲートされ、このチャネルは、たとえLTEにおけるこれらのセルが異なる周波数帯域である場合でも100MHzに対して十分に広い。
少なくとも、アグリゲートされるコンポーネントキャリアの数がアップリンクとダウンリンクとで同じであるとき、すべてのコンポーネントキャリアをLTEリリース8/9互換として設定することができる。ユーザ機器によってアグリゲートされるすべてのコンポーネントキャリアが必ずしもLTEリリース8/9互換でなくてよい。リリース8/9のユーザ機器がコンポーネントキャリアにキャンプオンする(camp on)ことを回避するため、既存のメカニズム(例:バーリング(barring))を使用することができる。
ユーザ機器は、自身の能力に応じて1つまたは複数のコンポーネントキャリア(複数のサービングセルに対応する)を同時に受信または送信することができる。キャリアアグリゲーションのための受信能力もしくは送信能力またはその両方を備えた、LTE−Aリリース10のユーザ機器は、複数のサービングセル上で同時に受信する、もしくは送信する、またはその両方を行うことができ、これに対して、LTEリリース8/9のユーザ機器は、コンポーネントキャリアの構造がリリース8/9の仕様に従う場合、1つのみのサービングセル上で受信および送信を行うことができる。
キャリアアグリゲーションは、連続するコンポーネントキャリアおよび不連続なコンポーネントキャリアの両方においてサポートされ、各コンポーネントキャリアは、3GPP LTE(リリース8/9)の計算方式(numerology)を使用して、周波数領域における最大110個のリソースブロックに制限される。
同じeNodeB(基地局)から送信される、場合によってはアップリンクおよびダウンリンクにおいて異なる帯域幅の異なる数のコンポーネントキャリアをアグリゲートするように、3GPP LTE−A(リリース10)互換のユーザ機器を構成することが可能である。設定することのできるダウンリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器のダウンリンクのアグリゲーション能力に依存する。逆に、設定することのできるアップリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器のアップリンクのアグリゲーション能力に依存する。ダウンリンクコンポーネントキャリアよりもアップリンクコンポーネントキャリアが多くなるように移動端末を構成することはできない。
一般的なTDD配備では、コンポーネントキャリアの数および各コンポーネントキャリアの帯域幅は、アップリンクとダウンリンクとで同じである。同じeNodeBから送信されるコンポーネントキャリアは、必ずしも同じカバレッジを提供する必要はない。
連続的にアグリゲートされるコンポーネントキャリアの中心周波数の間隔は、300kHzの倍数である。これは、3GPP LTE(リリース8/9)の100kHzの周波数ラスターとの互換性を保つと同時に、15kHz間隔のサブキャリアの直交性を維持するためである。アグリゲーションのシナリオによっては、連続するコンポーネントキャリアの間に少数の使用されないサブキャリアを挿入することによって、n×300kHzの間隔あけを容易にすることができる。
複数のキャリアをアグリゲートする影響は、MAC層に及ぶのみである。MAC層には、アップリンクおよびダウンリンクの両方において、アグリゲートされるコンポーネントキャリアごとに1つのHARQエンティティが要求される。コンポーネントキャリアあたりのトランスポートブロックは最大1個である(アップリンクにおけるSU−MIMOを使用しない場合)。トランスポートブロックおよびそのHARQ再送信(発生時)は、同じコンポーネントキャリアにマッピングする必要がある。
図5および図6は、それぞれ、ダウンリンクおよびアップリンクにおける、キャリアアグリゲーションが設定された第2層構造を示している。
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、移動端末はネットワークとの1つのRRC接続のみを有する。RRC接続の確立/再確立時、1つのセルが、LTEリリース8/9と同様に、セキュリティ入力(1つのECGI、1つのPCI、および1つのARFCN)と、非アクセス層(NAS)モビリティ情報(例:TAI)とを提供する。RRC接続の確立/再確立の後、そのセルに対応するコンポーネントキャリアは、ダウンリンクプライマリセル(PCell)と称される。接続状態では、ユーザ機器あたりつねに1つのダウンリンクPCell(DL PCell)および1つのアップリンクPCell(UL PCell)が設定される。コンポーネントキャリアの設定されたセットおいて、他のセルはセカンダリセル(SCell)と呼ばれ、SCellのキャリアはダウンリンクセカンダリコンポーネントキャリア(DL SCC)およびアップリンクセカンダリコンポーネントキャリア(UL SCC)である。ダウンリンクPCellおよびアップリンクPCellの特徴は以下のとおりである。
1. 各SCellごとに、ダウンリンクリソースに加えてアップリンクリソースのユーザ機器による使用を設定することができる。したがって、設定されるDL SCCの数はUL SCCの数よりもつねに大きいかまたは等しく、アップリンクリソースのみを使用するようにSCellを設定することはできない。
2. アップリンクPCellが、層1アップリンク制御情報の送信のために使用される。
3. ダウンリンクPCellは、SCellとは異なり非アクティブ化することはできない。
4. UEの観点からすると、各アップリンクリソースは、1つのサービングセルにのみ属する。
5. 設定することができるサービングセルの数は、UEのアグリゲーション能力によって決まる。
6. ダウンリンクPCellにおいてレイリーフェージング(RLF)が発生すると再確立がトリガーされるが、ダウンリンクSCellにRLFが発生しても再確立はトリガーされない。
7. ダウンリンクPCellセルは、ハンドオーバーとともに(すなわちセキュリティキー変更およびRACH手続きとともに)変化する。
8. 非アクセス層情報はダウンリンクPCellから取得される。
9. PCellは、ハンドオーバー手順(すなわちセキュリティキー変更およびRACH手順)によってのみ変更することができる。
10. PCellは、PUCCHの送信に使用される。
コンポーネントキャリアの設定および再設定は、RRCによって行うことができる。アクティブ化および非アクティブ化は、MAC制御要素を介して行われる。LTE内ハンドオーバー時、RRCによって、ターゲットセルで使用するためのSCellを追加、削除、または再設定することもできる。新しいSCellを追加するときには、SCellのシステム情報(送信/受信に必要である)を送るために専用のRRCシグナリングが使用される(LTEリリース8/9におけるハンドオーバー時と同様)。
キャリアアグリゲーションを使用するようにユーザ機器が構成されているとき、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアの一対がつねにアクティブである。この対のうちのダウンリンクコンポーネントキャリアは、「ダウンリンクアンカーキャリア」と称されることもある。同じことはアップリンクについてもあてはまる。
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、同時に複数のコンポーネントキャリアについてユーザ機器をスケジューリングすることができるが、一度に行うことのできるランダムアクセス手順は最大で1つである。クロスキャリアスケジューリング(cross-carrier scheduling)では、コンポーネントキャリアのPDCCHによって別のコンポーネントキャリアのリソースをスケジューリングすることができる。この目的のため、それぞれのDCIフォーマットにコンポーネントキャリア識別フィールド(「CIF」と称する)が導入されている。
クロスキャリアスケジューリングが行われていないときには、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアとをリンクすることによって、グラントが適用されるアップリンクコンポーネントキャリアを識別することができる。アップリンクコンポーネントキャリアへのダウンリンクコンポーネントキャリアのリンクは、必ずしも1対1である必要はない。言い換えれば、同じアップリンクコンポーネントキャリアに複数のダウンリンクコンポーネントキャリアをリンクすることができる。一方で、1つのダウンリンクコンポーネントキャリアは、1つのアップリンクコンポーネントキャリアのみにリンクすることができる。
OSI層の概要
図7は、OSIモデルの簡潔な概要を示しており、LTEのアーキテクチャの詳しい説明と、本発明についての本明細書の説明は、このOSIモデルに基づいている。
開放型システム間相互接続参照モデル(OSIモデルまたはOSI参照モデル)は、通信ネットワークおよびコンピュータネットワークのプロトコル設計を階層化して抽象的に記述したものである。OSIモデルでは、システムの機能を一連の層(レイヤ)に分割する。各層は、その性質として、自身より下位の層の機能を使用するだけであり、自身の機能を自身より上位の層にエクスポートするだけである。一連のこれらの層から構成されているプロトコル動作を実施するシステムは、「プロトコルスタック」または「スタック」として知られている。その主たる特徴として、層と層の間それぞれにおいて、一方の層が他方の層とデータをやりとりする方法の仕様が決まっている。このことは、ある製造者によって書かれた層と、別の製造者による層とが共に動作できることを意味する。以下では、本出願に関連する最初の3層のみについて詳しく説明する。
物理層または第1層(レイヤ1)の主たる目的は、特定の物理媒体(例えば、同軸ケーブル、ツイストペア、光ファイバ、インタフェース)を通じて、情報(ビット)を伝送することである。この層は、データを、通信チャネルを通じて送信される信号(またはシンボル)に変換または変調する。
データリンク層(または第2層、レイヤ2)の目的は、入力されるデータをデータフレームに分割することによって、特定の物理層と両立する方式で情報フローを形成することである(分割および再構築(Segmentation And Re-assembly:SAR)機能)。さらに、データリンク層では、消失フレームの再送を要求することによって、発生しうる送信エラーを検出および訂正することができる。この層は、一般に、アドレッシングメカニズムを提供し、また、データレートを受信機の能力に合わせる目的でフロー制御アルゴリズムを提供することができる。さらには、共有されている媒体が複数の送信機および受信機によって同時に使用される場合、データリンク層は、一般に、その物理媒体へのアクセスを調整および制御するメカニズムを提供する。
データリンク層は、非常に多くの機能を提供するため、しばしば副層(サブレイヤ)に分割される(例えばUMTSにおけるRLC副層とMAC副層)。第2層プロトコルの代表的な例としては、固定回線ネットワーク用のPPP/HDLC、ATM、フレームリレーや、無線システム用のRLC、LLC、MACが挙げられる。第2層の副層であるPDCP層、RLC層、MAC層については、後からさらに詳しく説明する。
ネットワーク層または第3層(レイヤ3)は、トランスポート層によって要求されるサービス品質を維持しながら、可変長パケットを送信元から1つまたは複数のネットワークを介して送信先まで伝送する機能および手順に関する手段を提供する。一般にネットワーク層の主たる目的は、特に、ネットワークルーティング機能、ネットワークのフラグメント化機能、および輻輳制御機能を実行することである。ネットワーク層プロトコルの主な例は、IPインターネットプロトコルまたはX.25である。
第4層〜第7層に関しては、アプリケーションおよびサービスによっては、アプリケーションまたはサービスをOSIモデルの特定の層に関連付けることが困難なことがあり、なぜなら第3層より上位の層で動作するアプリケーションおよびサービスは、OSIモデルの複数の異なる層に属するさまざまな機能をしばしば実施するためである。したがって、特にTCP(UDP)/IPベースのネットワークにおいては、第4層およびそれより上位層がまとめられて、いわゆる「アプリケーション層」を形成することがある。
層(レイヤ)のサービスおよびデータの交換
以下では、本明細書において使用される用語「サービスデータユニット(SDU)」および「プロトコルデータユニット(PDU)」について、図8に関連して定義しておく。OSIモデルにおける層間でのパケットの交換を一般的かつ形式的に記述する目的で、SDUエンティティとPDUエンティティが導入された。SDUは、いわゆるSAP(サービスアクセスポイント)を介してのサービスを第N層に位置するプロトコルに要求する第N+1層におけるプロトコルから送られる情報の単位(データブロック/情報ブロック)である。PDUは、送信側および受信側における同じ第N層に位置する同じプロトコルのピアプロセス間で交換される情報の単位である。
PDUは、一般的には、受け取った(1つまたは複数の)SDUの処理後のバージョンから構成されるペイロード部分と、ペイロード部分の前に付加される第N層に固有のヘッダと、オプションとして最後に付加されるトレイラとによって形成される。これらのピアプロセスの間には、(第1層を除いて)直接的な物理接続が存在しないため、PDUを第N−1層に渡して処理する。したがって、第N層のPDUは、第N−1層の観点からはSDUである。
LTEの第2層:ユーザプレーンのプロトコルスタック
LTEの第2層のユーザプレーンのプロトコルスタックは、図9に示したように、PDCP層、RLC層、およびMAC層という3つの副層から構成される。前述したように、送信側においては、各層は、上の層からSDUを受け取り、そのSDUに対するサービスを提供し、下の層にPDUを出力する。RLC層は、PDCP層からパケットを受け取る。これらのパケットは、PDCP層の観点からはPDCP PDUと呼ばれ、RLC層の観点からはRLC SCUである。RLC層は、下の層(すなわちMAC層)に提供するパケットを作成する。RLC層によってMAC層に提供されるパケットは、RLC層の観点からはRLC PDUであり、MAC層の観点からはMAC SDUである。
受信側においては、上記のプロセスが逆に行われ、各層はSDUを上の層に渡し、上の層ではこれらのSDUをPDUとして受け取る。
物理層は、本質的に、ターボ符号化および巡回冗長検査(CRC)によって保護されたビットパイプ(bitpipe)を提供するが、データリンク層のプロトコルは、信頼性、安全性、および完全性を高めることによって、上位層へのサービスを向上させる。さらに、データリンク層は、マルチユーザ媒体アクセス/スケジューリングの役割を担う。LTEのデータリンク層の設計における主たる課題の1つは、幅広いさまざまなサービスおよびデータレートを有するIP(インターネットプロトコル)データフローに要求される信頼性レベルおよび遅延を提供することである。特に、プロトコルのオーバーヘッドを調整しなければならない。例えば、広く想定されていることとして、VoIP(ボイスオーバーIP)フローは、100msのオーダーの遅延および最大1%のパケット消失に耐えることができる。これに対して、TCPファイルダウンロードは、帯域幅遅延積が小さいリンクを通じて良好に実行されることが周知である。したがって、極めて高いデータレート(例えば100MB/s)でダウンロードするためには、さらに小さい遅延が要求されることに加えて、VoIPのトラフィックよりもIPパケット消失の影響を大きく受ける。
全体として、上記の課題は、LTEデータリンク層の、部分的に互いに結合されている以下の3つの副層によって達成される。
PDCP(パケットデータコンバージェンスプロトコル)副層は、主として、IPヘッダの圧縮および暗号化の役割を担う。さらに、PDCP副層は、基地局間のハンドオーバーの場合における消失のない(ロスレス)モビリティをサポートし、上位層の制御プロトコルに完全性保護を提供する。
RLC(無線リンク制御)副層は、主としてARQ機能を備えており、また、データの分割および連結をサポートする。データの分割および連結によって、データレートとは無関係にプロトコルのオーバーヘッドが最小になる。
最後に、MAC(媒体アクセス制御)副層は、HARQを提供し、また、スケジューリング動作やランダムアクセスなど、媒体へのアクセスに要求される機能を担う。図10は、IPパケットがデータリンク層の複数のプロトコルを経て物理層まで送られるデータフローを例示的に示している。この図は、各プロトコル副層においてそれぞれのプロトコルヘッダがデータユニットに付加されることを示している。
PDCP(パケットデータコンバージェンスプロトコル)
PDCP層は、制御プレーンにおけるRRC(無線リソース制御)メッセージと、ユーザプレーンにおけるIPパケットを処理する。PDCP層の主たる機能は、無線ベアラに応じて以下のとおりである。
− ユーザプレーンデータのヘッダの圧縮および復元
− セキュリティ機能:
○ ユーザプレーンデータおよび制御プレーンデータの暗号化および復号
○ 制御プレーンデータの完全性の保護および検証
− ハンドオーバーのサポート機能:
○ ハンドオーバー時における上の層のためのPDUの順次配信および並べ替え
○ RLC確認モード(AM)においてマッピングされたユーザプレーンデータのロスレスハンドオーバー
− タイムアウトによるユーザプレーンデータの破棄
PDCP層は、DCCH(専用制御チャネル)またはDTCH(専用トランスポートチャネル)のいずれかを使用する無線ベアラにおいてのみ、ユーザプレーンおよび制御プレーンにおけるデータストリームを管理する。PDCP層のアーキテクチャは、図11および図12に示したように、ユーザプレーンデータと制御プレーンデータとで異なる。LTEでは、2つの異なるタイプのPDCP PDUとして、PDCPデータPDUとPDCP制御PDUが定義されている。PDCPデータPDUは、制御プレーンデータおよびユーザプレーンデータの両方に使用される。PDCP制御PDUは、ヘッダ圧縮に対するフィードバック情報と、PDCP状態報告を伝送する目的にのみ使用され、PDCP状態報告は、ハンドオーバーの場合に使用され、したがってユーザプレーン内でのみ使用される。
ヘッダ圧縮、セキュリティ、およびハンドオーバーの各機能については、本発明との関連性が薄いため、詳しくは説明しない。これらの機能の詳細は、非特許文献2(参照により本明細書に組み込まれている)の4.2.2節、4.2.3節、および4.2.4節に記載されている。
これに対して、以下では、データパケットの破棄について詳しく説明する。PDCP層の概要と、PDCP層における破棄については、特に、非特許文献3(参照により本明細書に組み込まれている)に定義されている。
用語「破棄(する)」は、本発明においては、パケットをただちに削除するという最も厳密な意味として理解するのではなく、これより広い意味として、パケットがもはや必要なく、したがって削除するべきであることを示す概念を意味するものとする。技術規格には、PDCP PDU/PDCP SDUを実際に削除する特定のタイミングが明確に定義されておらず(PDCP PDU/PDCP SDUを破棄するタイミングが規定されているのみである)、なぜならバッファの管理は大部分が技術的な実装に依存するためである。したがって、パケットが「破棄された」後、1つの技術的な実装によると、そのパケットをただちに削除し、別の技術的な実装によると、破棄されたものとして示されている複数のパケットを削除することによってバッファを定期的に空にする。一般には、無線インタフェースにおいて利用可能なデータレートは、ネットワークインタフェースにおいて利用可能なデータレートより小さい。したがって、あるサービスのデータレートが、LTEの無線インタフェースによって提供されるデータレートより高いときには、ユーザ機器およびeNodeBにおいてバッファリングを行う。このバッファリングによって、MAC層におけるスケジューラは、その時点の無線チャネルの状態に適合させる目的で、物理層における瞬間的なデータレートをいくらか変えることができる。バッファリングの働きにより、瞬間的なデータレートの変動は、アプリケーションからは伝送遅延の若干のばらつきとして見えるにすぎない。
しかしながら、アプリケーションによって提供されるデータレートが、無線インタフェースによって提供されるデータレートを長期間にわたり超えるときには、大量のデータがバッファリングされることがある。ベアラにロスレスハンドオーバーが適用されない場合、これによってハンドオーバー時に大量のデータが消失する、あるいはリアルタイムアプリケーションの場合には過大な遅延が生じることがある。
例えば過大な遅延を防止する目的で、LTEのPDCP層には破棄機能が含まれている。この破棄機能はタイマーに基づいており、送信側における上位層から受け取る各PDCP SDUに対して、タイマー(「discardTimer(破棄タイマー)」)が起動される。
さらに、PDCP層は、上位層のPDCP SDUからPDCP PDUの生成を続け、生成すると、生成したPDCP PDUを下位層(RLC)に渡す。
標準規格である非特許文献3の5.4節には、PDCP SDUに対するタイマーが切れたとき、またはPDCP SDUが正常に配信されたことがPDCP状態報告によって確認されたとき、ユーザ機器は、そのPDCP SDUを、対応するPDCP PDUとともに破棄するものと記載されている。
PDCP状態報告は、ある基地局から別の基地局への移動局のハンドオーバーに関連して送られる。3GPPの標準規格には明示的に規定されておらず、したがって技術的な実装に依存することであるが、PDCP PDUがユーザ機器に正常に転送された後、すなわち具体的には、PDCP PDUがRLC層に渡され、RLC層によってユーザ機器に正常に配信された後(より一般的には、ハンドオーバー時に限定されず、ユーザ機器に正常に配信されたことはRLC層によって示すことができる)、タイマーが切れる前に、PDCP層は、PDCP PDUおよびPDCP SDUをさらに削除する。この場合、そのPDCP SDU(およびしたがってPDCP PDU)に対応するタイマーも終了/削除/停止される。
しかしながら、PDCP SDUに対するタイマーが切れたときには、そのPDCP SDUをユーザ機器に正常に配信することはまだ達成できていない。標準規格である非特許文献3に記載されているように、PDCP層はそのPDCP SDUおよびPDCP PDUを破棄し、その特定のPDCP PDUを破棄するように下位層(RLC層)に指示する。
上位層(すなわちPDCP層)から特定のRLC SDUを破棄するように指示されたとき、送信側のAM RLCエンティティまたは送信側のUM RLCエンティティ(後の説明を参照)は、指示されたRLC SDUのセグメントがRLCデータPDUにまだマッピングされていない場合、そのRLC SDUを破棄する(非特許文献4の5.3節を参照)。
PDCP層は、「discardTimer(破棄タイマー)」に基づいてパケットを破棄し、discardTimerは、例えば、無線ベアラに要求されるQoSによって決まる特定の遅延要件に従って設定することができる。例えば、パケットの遅延がサービスにとって過大となった場合、そのパケットを送信する必要はない。したがって、この破棄メカニズムは、送信側における過大な遅延およびキューイングを防止することができる。
順次配信の処理はRLC層が行うため、ピアPDCPエンティティには知らされない。ピアPDCPエンティティは、受信されていないPDCPパケットを待機しない。
PDCP層の破棄メカニズムは、図13に例示的に示してあり、この図は、3GPPによって定義されているように、PDCP SDUを処理し、discardTimerに基づいてPDCP SDUおよびPDCP PDUを対応して破棄するときの、単純化した流れ図である。図から明らかであるように、正常に配信されたPDCP PDU/PDCP SDUを削除するステップについては省略してあり、なぜならこのステップは、本発明の中心課題である破棄メカニズムとの関連性が薄いためである。
ユーザプレーンデータのPDCP PDUは、データPDUと制御PDUとを区別する目的で、「D/C」フィールドを備えており、データPDUおよび制御PDUのフォーマットは、それぞれ図14および図15に示してある。PDCPデータPDUは、7ビットまたは12ビットのシーケンス番号(SN)を備えている。ユーザプレーンデータのPDCPデータPDUは、圧縮されていない(ヘッダ圧縮が使用されない場合)IPパケット、または圧縮されたIPパケットのいずれかを含む。制御プレーンデータ(例えばRRCシグナリング)のPDCPデータPDUは、完全性保護のための32ビット長のMAC−Iフィールドを備えている。制御プレーンデータのPDCPデータPDUは、1つの完全なRRCメッセージを含む。
PDCP制御PDUは、ユーザプレーンデータを扱うPDCPエンティティによって使用される。2つのタイプのPDCP制御PDUがあり、PDCPヘッダ内のPDUタイプフィールドによって区別される。PDCP制御PDUは、ロスレスハンドオーバーの場合のPDCP「状態報告」、またはROHCヘッダ圧縮プロトコルによって作成されるROHCフィードバックのずれかを伝える。ROHCフィードバックを伝えるPDCP制御PDUは、RLC UMまたはRLC AMのいずれかにマッピングされたユーザプレーン無線ベアラに使用され、PDCP状態報告を伝えるPDCP制御PDUは、RLC AMにマッピングされたユーザプレーン無線ベアラにのみ使用される。
ロスレスハンドオーバーの場合のPDCP状態報告を伝えるPDCP制御PDUは、すでに正常に受信されたPDCP SDUの再送信を防止するためと、正常に受信されたがヘッダの復元に失敗したPDCP SDUの再送信を要求するために使用される。このPDCP制御PDUは、再送信する必要のあるPDCP SDUを示すビットマップと、基準シーケンス番号(SN)であるFMS(先頭の欠落SDU:First Missing SDU)とを含む。すべてのPDCP SDUが正しい順序で受信された場合、このフィールドは次の予測されるシーケンス番号(SN)を示し、ビットマップは含まれない。
無線リンク制御(RLC)
RLC層は、PDCP層(RLCの観点からは「上位」層)と、MAC層(RLCの観点からは「下位」層)との間に位置する。RLC層は、サービスアクセスポイント(SAP)を通じてPDCP層と通信し、論理チャネルを介してMAC層と通信する。RLC層は、PDCP PDU(すなわちRLC SDU)を、MAC層によって示されるサイズにちょうど収まるように再フォーマットする。すなわち、送信側のRLC層はPDCP PDUの分割もしくは連結またはその両方を行い、受信側のRLC層はRLC PDUを組み立て直してPDCP PDUを再構築する。さらにRLC層は、MAC層において実行されるHARQ動作に起因してRLC PDUが正しくない順序で受信された場合、RLC PDUを並べ替える。
RLC層の機能は、「RLCエンティティ」によって実行される。RLCエンティティは、3つのデータ伝送モード、すなわち、透過モード(TM)、非確認モード(UM)、確認モード(AM)のうちの1つに設定される。確認モード(AM)には、再送信をサポートするための特殊な機能が定義されている。
非確認モード(UM)RLCの主たる機能をまとめると、RLC SDU(すなわちPDCP PDU)の分割および連結、RLC PDUの並べ替え、RLC SDUの重複の検出、RLC SDUの再組み立てである。
確認モード(AM)RLCの主たる機能をまとめると、RLCデータPDUの再送信、再送信されたRLCデータPDUの再分割、ポーリング、状態報告、状態禁止である。
RLC層に関するさらなる詳細は、非特許文献2(参照により本明細書に組み込まれている)の4.3.1節に記載されている。
分割および連結は、非確認モード(UM)RLCエンティティおよび確認モード(AM)RLCエンティティの重要な機能である。送信側の非確認モード(UM)/確認モード(AM)RLCエンティティは、上位層から受け取ったRLC SDUに対して分割もしくは連結またはその両方を実行してRLC PDUを形成する。各送信機会におけるRLC PDUのサイズは、MAC層が、無線チャネルの状態と利用可能な送信リソースとに応じて決定して通知する。したがって、送信される各RLC PDUのサイズが異なることがある。送信側の非確認モード(UM)/確認モード(AM)RLCエンティティは、RLC SDUを、これらがUM/AM RLCエンティティに到着した順序でRLC PDUに含める。したがって1つのRLC PDUは複数のRLC SDUやRLC SDUのセグメントを含むことができる。
送信側の非確認モード(UM)/確認モード(AM)RLCエンティティは、RLC SDUの分割もしくは連結またはその両方を実行した後、RLC PDUの中に関連するRLCヘッダを含め、このRLCヘッダは、そのRLC PDUのシーケンス番号と、含まれているRLC SDUまたはRLC SDUのセグメントそれぞれのサイズおよび境界とを示す。なお、RLCシーケンス番号は、PDCPによって付加されるシーケンス番号とは独立していることに留意されたい。
すでに上述したように、特定のRLC SDUを破棄するように上位層(すなわちPDCP層)から指示されたとき、送信側の確認モード(AM)RLCエンティティ、または送信側の非確認モード(UM)RLCエンティティは、示されたRLC SDUのセグメントがRLCデータPDUにまだマッピングされていなければ、そのRLC SDUを破棄する(非特許文献4の5.3節を参照)。RLC SDUがすでに「RLCデータPDUにマッピングされた」かに関する判定は、以下を意味するものとみなすことができる。
− RLC層において受け取られ、かつ、
− 関連するヘッダ情報が付加された(かつ下位層に渡された、または渡すことができる状態にある)
スモールセル
移動体データの爆発的需要は、いかに移動体事業者が、より大容量およびユーザ体験の品質(QoE)の向上の難しい要件に応える必要があるかの変化を促している。現在、ロングタームエボリューション(LTE)を使用する第4世代ワイヤレスアクセスシステムが、3G/3.5Gシステムよりも低いレイテンシおよび高い効率でより高速のアクセスを実現するために、多数の事業者によって世界中で配備されている。しかしながら、予想される将来のトラフィック成長は、驚異的であり、特にトラフィックの最高容量を生成する高トラフィックエリア(ホットスポットエリア)では、容量要件に対処するためのさらなるネットワーク高密度化の必要性が非常に高まっている。ネットワーク高密度化―ネットワークノードの数を増やし、それによりネットワークノードをユーザ端末に物理的により近づけること―は、トラフィック容量を改善するおよびワイヤレス通信システムの達成可能なユーザ−データ転送速度を高めるための鍵である。
マクロ配備の直接的な高密度化に加えて、ネットワーク高密度化は、既存のマクロノード層のカバレッジの下でそれぞれスモールセルの補足的低電力ノードの配備によって達成することができる。そのような異種配備では、低電力ノードは、例えば屋内および屋外のホットスポットの場所において、ローカルに非常に高いトラフィック容量および非常に高いユーザスループットを提供する。その一方で、マクロ層は、カバレッジエリア全体にわたりサービスアベイラビリティおよびQoEを確保する。言い換えれば、低電力ノードを含む層はまた、広いエリアをカバーするマクロ層とは対照的に、ローカルエリアアクセスを提供すると言うことができる。
スモールセルそれぞれの低電力ノードの設置ならびに異種配備は、LTEの第1のリリース以降、可能であった。この関連で、いくつかの解決策が、LTEの最近のリリース(すなわち、リリース10/11)において特定された。より具体的には、これらのリリースは、異種配備における層間の干渉を処理するために、追加のツールを紹介した。パフォーマンスをさらに最適化し、コスト/エネルギー効率の高い動作を実現するために、スモールセルは、さらなる機能強化を必要とし、多くの場合、既存のマクロセルと対話するまたは既存のマクロセルを補完する必要がある。そのような解決策は、LTEリリース12以降のさらなる進化の間に調査されることになる。特に、低電力ノードおよび異種配備に関連するさらなる機能強化が新しいリリース12の検討項目(SI)「E−UTRAおよびE−UTRANのためのスモールセルの機能強化の研究(Study on Small Cell Enhancements for E-UTRA and E-UTRAN)」の下で検討されることになろう。これらの活動のうちのいくつかは、低電力層および二重層接続性へのマクロ支援の異なる形を含む、マクロ層と低電力層との間のさらに高度の相互作用の達成に重点的に取り組むことになろう。二重接続は、デバイスがマクロ層および低電力層の両方への同時接続を有することを暗示する。
スモールセルの機能強化に関するこの検討項目において想定されるいくつかの配備シナリオを以下に論じる。以下のシナリオでは、非特許文献5において理想的ではないバックホールとして分類されたバックホール技術が想定される。
理想的バックホール(すなわち、光ファイバを使用する専用ポイントツーポイント接続など、スループットが極めて高くレイテンシが極めて低いバックホール)と、非理想的バックホール(すなわち、xDSL、マイクロ波、その他のバックホール(例:中継)など、市場において広く使用されている一般的なバックホール)の両方を検討するべきである。この場合、パフォーマンスとコストのトレードオフを考慮するべきである。
次の表は、事業者からの情報に基づく非理想的バックホールの分類を示している。
遠隔無線ヘッド(RRH)を配備するために使用することができるファイバアクセスは、この検討項目では想定されない。HeNBは除外されないが、HeNBの送信電力がピコeNBのそれよりも低くても、配備シナリオおよび課題に関してピコeNBと区別されない。以下の3つのシナリオが、考えられる。
シナリオ#1は、図16に示され、同じキャリア周波数(周波数内)のマクロセルおよびスモールセルが理想的ではないバックホールを介して接続される配備シナリオである。ユーザは、屋外および屋内の両方に分散される。
シナリオ#2は図17および18に示され、異なるキャリア周波数(周波数間)のマクロセルおよびスモールセルが理想的ではないバックホールを介して接続される配備シナリオを指す。ユーザは、屋外および屋内の両方に分散される。本明細書で2aおよび2bと呼ばれる、2つの異なるシナリオ#2が基本的に存在し、その差は、シナリオ2bでは、屋内スモールセル配備が考慮されるということである。
シナリオ#3は、図19に示され、1つまたは複数のキャリア周波数のスモールセルのみが理想的ではないバックホールリンクを介して接続される配備シナリオを指す。
配備シナリオに応じて、異なる課題/問題が存在し、さらなる調査を必要とする。検討項目の段階で、そのような課題が、対応する配備シナリオについて識別され、非特許文献6において捉えられ、それらの課題/問題のさらなる詳細は、そこで見ることができる。
非特許文献6の5節に記載された識別された課題を解決するために、この検討項目では、非特許文献5で特定された要件に加えて、以下の設計目標が検討される。
移動性頑強性に関して、
− RRC_CONNECTEDにおけるUEについて、スモールセル配備によって達成される移動性パフォーマンスは、マクロのみのネットワークのそれに匹敵すべきである。
頻繁なハンドオーバーによるシグナリング負荷の増加に関して、
− いずれの新しい解決策も、コアネットワークに向けたシグナリング負荷の過度の増加をもたらしてはならない。しかし、スモールセルの機能強化によって引き起こされる追加のシグナリングおよびユーザプレーントラフィック負荷もまた、考慮されるべきである。
ユーザごとのスループットおよびシステム容量の改善に関して、
− 理想的バックホール配備に似たユーザごとのスループットおよびシステム容量を達成するために、マクロセルおよびスモールセルにわたる無線リソースを使用し、一方で、QoS要件が目標とされるべきであることを考慮する。
二重接続
3GPP RAN作業グループにおいて現在審議中の問題への1つの有望な解決策は、いわゆる「二重接続」コンセプトである。「二重接続」という用語は、所与のUEが、理想的ではないバックホールと接続された少なくとも2つの異なるネットワークノードによって提供される無線リソースを消費する、動作を示すために使用される。基本的に、UEは、マクロセル(マクロeNB)およびスモールセル(セカンダリまたは小型eNB)の両方と接続される。さらに、UEの二重接続に関与する各eNBは、異なる役割を想定することができる。それらの役割は、eNBの電力クラスに必ずしも依存せず、UEの間で異なってもよい。
この検討項目は、現在、非常に初期の段階にあるので、二重接続の詳細はまだ決定されていない。例えば、アーキテクチャはまだ合意されていない。したがって、多くの事項/詳細、例えばプロトコル拡張、は、現在、まだ未決定である。図20は、二重接続の例示的アーキテクチャを示す。それは単に1つの潜在的オプションとして理解されるべきであり、本発明は、この特定のネットワーク/プロトコルアーキテクチャに限定されず、広く適用され得る。アーキテクチャに関する以下の想定が、本明細書では行われる。
− 各パケットをどこに供するか、C/Uプレーン分割、のベアラレベルごとの決定
○ 例として、UE RRCシグナリングおよびVoLTEなどの高いQoSデータが、マクロセルによって提供可能であり、一方、ベストエフォート型データがスモールセルにオフロードされる。
− ベアラ間の結合はなく、マクロセルとスモールセルとの間に必要とされる共通のPDCPまたはRLCはない。
− RANノード間のルーザ調整
− SeNBはS−GWに接続しない、すなわち、パケットはMeNBによって転送される。
− スモールセルはCNに対して透過的である。
最後の2つの箇条書きに関して、SeNBがS−GWと直接接続されること、すなわち、S1−UがS−GWとSeNBとの間にあること、もまた起こり得ることに留意されたい。基本的に、ベアラマッピング/分割に関する3つの異なるオプションが存在する。
− オプション1:図21aに示され、S1−Uはまた、SeNBにおいて終了する。
− オプション2:図21bに示され、S1−UはMeNBにおいて終了し、ベアラはRANにおいて分割しない。
− オプション3:図21cに示され、S1−UはMeNBにおいて終了し、ベアラはRANにおいて分割する。
図21a〜21cは、Uプレーンデータのダウンリンク方向を一例として挙げる、それらの3つのオプションを示す。説明を目的として、オプション2は、本出願のために主として想定され、図20のベースでもある。
スモールセルの機能強化のためのユーザプレーンのアーキテクチャ
図21a〜図21cに示したようにユーザプレーンデータの分割に関する検討に加えて、ユーザプレーンのアーキテクチャに関してさまざまな代替形態も検討されている。
共通する認識として、S1−UインタフェースがMeNBにおいて終端するときには、SeNBにおけるプロトコルスタックは、少なくともRLC(再)分割をサポートしなければならない。この理由として、RLC(再)分割は物理インタフェースに密接に関連する動作であり(例:MAC層がRLC PDUのサイズを示す: 上の説明を参照)、非理想的バックホールが使用されるときには、RLC PDUを送信するノード自身においてRLC(再)分割を行わなければならないためである。
現在進められている検討では、上記の想定に基づいて、ユーザプレーンの代替形態の以下の4つのグループが区別されている。
A. 独立したPDCP層: このオプションでは、現在定義されている無線インタフェースのユーザプレーンのプロトコルスタックが、完全にベアラごとに終了する。1本のEPSベアラでの送信は1つのノードが実施するようにされており、ただし追加の層の支援下で、MeNBおよびSeMBによってデータが送信されるように1本のEPSベアラを分割することをサポートすることもできる。MeNBおよびSeNBから異なるベアラのデータの送信を同時に行うことができる。
B. マスター/スレーブPDCP層: このオプションでは、SI−UがMeNBにおいて終端し、PDCP層の少なくとも一部分がMeNBに属するものと想定する。ベアラが分割される場合、MeNBにおいて終端するPDCPベアラのPDCP PDUを配信するように構成されている基地局ごとに、ユーザ機器側にも個別の独立したRLCベアラが存在する。
C. 独立したRLC層: このオプションでは、SI−UがMeNBにおいて終端し、PDCP層がMeNBに属するものと想定する。ベアラが分割される場合、MeNBにおいて終端するPDCPベアラのPDCP PDUを配信するように構成されている基地局ごとに、ユーザ機器側にも個別の独立したRLCベアラが存在する。
D. マスター/スレーブRLC層: このオプションでは、SI−UがMeNBにおいて終端し、PDCP層と、RLC層の一部とがMeNBに属するものと想定する。EPSベアラのためにユーザ機器に必要なRLCエンティティは1つのみであるが、ネットワーク側では、関与するノードの間でRLC層の機能が分散され、「スレーブRLC層」はSeNBにおいて動作する。ダウンリンクでは、スレーブRLC層は、SeNBにおいて必要な、遅延要件が厳しいRLC動作を受け持つ。すなわちスレーブRLC層は、MeNBにおけるマスターRLC層から、スレーブによって送信できるようにマスターが割り当てた容易に構築されるRLC PDU(マスターによってシーケンス番号がすでに割り当てられている)を受信し、これらのRLC PDUをユーザ機器に送信する。MACスケジューラからのグラントにこれらのPDUをちょうど収める処理は、現在定義されている再分割メカニズムを再利用することによって達成される。
上記に基づいて、図22a〜図22iに示したさまざまなアーキテクチャが提案されている。これらは、非特許文献7からの抜粋である。
以下では、図22a〜図22iに示したさまざまな代替形態の主たる特徴について概説する。以下の説明において、ベアラが分割される、とは、複数の基地局を介するようにベアラを分割できること(能力)として理解されたい。図から理解できるように、2本のベアラはS1インタフェースを通じて確立されているものと想定する。
− 1A: S1−UはSeNBにおいて終端しており、PDCPは独立している(ベアラは分割されない)。
− 2A: S1−UはMeNBにおいて終端しており、MeNBにおいてベアラは分割されず、SeNBにおけるPDCPは独立している。
− 2B: S1−UはMeNBにおいて終端しており、MeNBにおいてベアラは分割されず、マスター・スレーブPDCPである。
− 2C: S1−UはMeNBにおいて終端しており、MeNBにおいてベアラは分割されず、SeNBにおいてRLCは独立している。
− 2D: S1−UはMeNBにおいて終端しており、MeNBにおいてベアラは分割されず、マスター・スレーブRLCである。
− 3A: S1−UはMeNBにおいて終端しており、MeNBにおいてベアラが分割され、ベアラの分割のためPDCPは独立している。
− 3B: S1−UはMeNBにおいて終端しており、MeNBにおいてベアラが分割され、ベアラの分割のためマスター・スレーブPDCPである。
− 3C: S1−UはMeNBにおいて終端しており、MeNBにおいてベアラが分割され、ベアラの分割のためRLCは独立している。
− 3D: S1−UはMeNBにおいて終端しており、MeNBにおいてベアラが分割され、ベアラの分割のためマスター・スレーブRLCである。
3GPPによる検討において、上記の代替形態それぞれのさまざまな利点および欠点が認識されている。
ユーザプレーンアーキテクチャの欠点
上に説明したように、MeNBとSeNBとの間のバックホールリンクは、低速であることがあり、したがって例えば60msにもおよぶ大きな一方向レイテンシが発生することがある(非理想的なバックホールの前出の表を参照)。
さらに、ユーザプレーンアーキテクチャのいくつかの代替形態においては、アクセス層(Access Stratum)のプロトコル層(例えばPDCP層、RLC層、MAC層)の一部さえも、MeNBとSeNBとの間で分散される。したがってレイテンシが大きいため、これらのノード間でリアルタイム情報を共有することが不可能になる。情報によっては、他方のノードに到着するまでに期限切れとなることさえある。
さらに、層間/クロスレイヤ通信では、ノード間のインタフェース(すなわちマクロeNBとスモールeNBとの間のX2インタフェース)におけるインタフェースシグナリング負荷が増大する。このインタフェースにおける負荷は不要であるようにするべきである。
より詳細には、層間/クロスレイヤ通信において二重接続に起因して発生するレイテンシは、別の問題(例えばPDCP SDU/PDCP PDU破棄メカニズムの既存の手順における問題)の原因にもなりうる。
図13に関連して説明したように、従来技術においては、PDCP SDU破棄メカニズムは、discardTimerに基づいて機能し、このタイマーが切れたときに、対応するPDCP SDUを、対応するPDCP PDU(すでに生成されている場合)とともに破棄する。対応するPDCP PDUがすでに下位層に渡されている場合、その下位層に破棄するように指示される。
図13のPDCP層の破棄メカニズムは、PDCP層およびRLC層がMeNBとSeNBとの間で分散されているシナリオ、特に、PDCP層(または少なくともPDCP SDU破棄メカニズム)がSeNBに存在しないシナリオにも、適用することができ、このことは図23に示してある。このシナリオは、少なくとも、現在検討されているユーザプレーンアーキテクチャの代替形態2C,2D,3C,3Dの場合にあてはまる。さらに、MeNBおよびSeNBにおいてマスター/スレーブPDCP層がどのように分割されているか、具体的には、上述したPDCP SDU/PDCP PDU破棄機能がMeNBまたはSeNBのどちらに配置されているかに応じて、場合によっては代替形態2B,3Bにもあてはまる。
図23から理解できるように、PDCP層(特にPDCP層の破棄機能)はMeNBに配置されているのに対して、RLC層はSeNBに配置されているものと想定する。
PDCP層は、MeNB/SeNBからダウンリンクでユーザ機器に送信されるデータに対して、自身が受け取る各PDCP SDUごとにdiscardTimerを起動し、それらのPDCP SDUに対するタイマーが切れていないか継続的にチェックする。これに加えてPDCP層は、通常の機能も実行し、すなわちPDCP SDUからPDCP PDUを生成し(例えば、ヘッダ圧縮、暗号化、完全性保護、PDCPヘッダの付加: 図11を参照)、そのPDCP PDUをRLC層に転送する。特定のPDCP SDUに対するdiscardTimerが切れた時点で、対応するPDCP PDUおよびPDCP SDUを破棄する。さらに、MeNBにおけるPDCP層は、そのPDCP SDUに対応する生成したPDCP PDUが下位層(RLC層)にすでに転送されたか否かをチェックする。転送されていない場合、RLC層への指示情報は必要ない。PDCP PDUがRLC層にすでに転送されていた(「はい」)場合、PDCP層におけるPDCP PDUおよびPDCP SDUは破棄されるが、さらに、対応するPDCP PDUを破棄するようにRLC層に指示する必要がある。SeNBにおけるRLC層は、そのPDCP PDU(またはPDCP PDUのセグメント)をRLC PDUにすでにマッピングしたかをチェックし、すでにマッピングしていた場合、もはやRLC層においてそのPDCP PDUを破棄することはできない。しかしながら、RLC層においてそのPDCP PDUがまだRLC PDUに処理されていない場合、RLC層でもそのPDCP PDUを破棄することができる。
なお、PDCP PDUは、RLC層の観点からはRLC SDUであることに留意されたい。このことは図22のほとんどの代替形態にあてはまる。しかしながら、RLC層がMeNBとSeNBとの間で分割されている場合(代替形態2Dおよび3Dを参照)、この用語(RLC SDU)は曖昧であり、なぜならMeNBにおけるRLC層がPDCP PDUを受け取り、そのPDCP PDUに対して特定の機能を実行し(これらの機能はまだ定義されていない)、結果としての「パケット」をSeNBのRLC層に転送するためである。SeNBのRLC層の観点からは、MeNBにおけるRLC層の機能がすでに実行されてRLC PDUが形成されているか否かによって、RLC PDUを受信する、またはRLC SDUを受信することになる。本発明の以下の説明においては、実例を挙げることと説明を簡潔にすることのみを目的として、SeNBにおけるRLC層は、MeNBから(MeNBのPDCP層から、またはMeNBのマスターRLC層から)RLC SDUを受信するものと想定する。しかしながら、この想定は、本発明およびその範囲をこの用語(RLC SDU)に制限するものではなく、この文脈において用語「RLC PDU」も同等に使用することができる。
前述したように、MeNBは、SeNBにおけるRLC層に、(1つまたは複数の)PDCP PDUを破棄するように指示する。結果として、パケットごとの破棄指示情報がX2インタフェースを介して送られる。第1の問題点として、この方式はリソースの無駄であり、なぜなら破棄する必要のある各PDCP PDUについてのみこの情報を伝えればよいためである。
第2の問題点として、X2インタフェースのレイテンシに起因して、しばらくするとSeNBがPDCP PDU(または少なくともPDCP PDUのセグメント)の送信を(すなわちRLC PDUの形成を)開始することがある。結果としてSeNBは、PDUの正常な送信を完了しなければならず、このステップは、X2インタフェースのレイテンシがなければ必要ないものである。したがって、X2インタフェースのレイテンシが大きい場合、ダウンリンク送信において破棄機能が意図したように機能しないことがある。
本発明の1つの目的は、二重接続のシナリオにおいてPDCP SDU/PDCP PDUの形のダウンリンクデータを破棄する改良された方法を提供することである。本発明のより具体的な目的は、PDCP層の破棄機能がマスター基地局に配置されており(セカンダリ基地局には配置されていない)、RLC層がセカンダリ基地局に配置されている場合に、PDCP層の破棄機能と、PDCP層とRLC層との対応する相互関係とを改良することである。
本目的は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
本発明の主たる一態様は、移動局であって、マスター基地局とセカンダリ基地局との接続を制御する制御部と、前記セカンダリ基地局からデータパケットを受信する受信部と、を含み、前記データパケットは、前記マスター基地局から前記セカンダリ基地局へ転送されたPDCP PDU(Packet Data Convergence Protocol Data Unit)であり、前記移動局が、前記セカンダリ基地局からの前記データパケットを正常に受信できなかった場合に、通知が前記セカンダリ基地局から前記マスター基地局に送信され、前記通知が、特定のベアラに対する、前記マスター基地局によって転送され前記セカンダリ基地局によって前記移動局に正常に配信された前記PDCP PDUの最大のシーケンス番号に関する情報、および、前記マスター基地局によって転送され前記セカンダリ基地局によって前記移動局に正常に配信されなかった前記PDCP PDUに関する情報を含み、前記移動局に正常に配信された前記PDCP PDUの前記最大のシーケンス番号に関する前記情報に基づいて、前記移動局に正常に配信されなかった前記PDCP PDUを除く前記PDCP PDUの前記最大のシーケンス番号までのPDCP PDUが、前記マスター基地局の送信バッファから削除される、移動局である。
本発明の第1の態様においては、移動局が二重接続の状態にあり、したがってマスター基地局およびセカンダリ基地局の両方にそれぞれの通信リンクを介して接続されているものと想定する。移動局は、少なくとも、マスター基地局からセカンダリ基地局を介して移動局に転送されるデータパケットを受信する。マスター破棄機能(master discard function)を有する上位層(例えばPDCP層)を含むプロトコルスタックはマスター基地局に配置されており、セカンダリ基地局には配置されていない。セカンダリ基地局もプロトコルスタックを有するが、マスター基地局のこの特定の上位層を有さず、セカンダリ基地局は、マスター基地局のこの上位層の下の層である下位層(例えばRLC層)を有する。したがって、データパケットは、マスター基地局の上位(例えばPDCP)層からセカンダリ基地局における下位(例えばRLC)層に転送される。
マスター基地局における上位層(例えばPDCP層)のマスター破棄機能は、(この上位層において適切に処理された後に)移動局にまだ正常に転送されていないデータパケットを破棄することを可能にする。これを目的として、各データパケット(例えばPDCP SDU)に対して、それを受け取ったときに、マスター破棄機能のマスタータイマー(master timer)を起動する。上位層は、受け取ったデータパケット(例えばPDCP SDU)を、例えば下位層(例えばRLC層)に転送される処理済みデータパケット(例えばPDCP PDU)を生成することによって、適切に処理する。
データパケットが移動局に正常に転送された場合、マスタータイマーを停止することができる。正常に転送されたことは、例えば下位層によって知らせることができる。さらにその場合には、受け取ったデータパケットと処理したデータパケットはもはや必要ないため、上位層において最終的に削除することができ、したがってマスター基地局におけるバッファを空にすることができる。しかしながら、(データパケットの転送が正常に完了する前に)マスタータイマーが切れた場合、上位層(例えばPDCP層)において、データパケット(例えばPDCP SDU)および処理したデータパケット(例えばPDCP PDU)を破棄する。
さらには、セカンダリ基地局における前述の下位層においてセカンダリ破棄機能(secondary discard function)が設定されるものと想定し、このセカンダリ破棄機能は、マスター基地局におけるマスター破棄機能にある程度似たものである。この目的のため、マスター基地局は、上位層におけるマスター破棄機能に基づいてセカンダリ破棄機能を設定する。そのために、マスター基地局からセカンダリ基地局に設定メッセージを送信することができ、設定メッセージは、セカンダリ破棄機能のセカンダリタイマーに関連して使用されるタイマー値を少なくとも含む。設定メッセージの中のタイマー値は、マスタータイマーのタイマー値とする、あるいは、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクに起因して発生する遅延、もしくは、マスター基地局からセカンダリ基地局にデータパケットを送信するプロセス全体に適用されるフロー制御の処理遅延、またはその両方を補正するため、あらかじめ小さい値とすることができる。さらにこれらに代えて、セカンダリ基地局がセカンダリタイマーの値を調整することもでき、したがって、セカンダリ基地局によって使用される設定メッセージにはマスタータイマーの値が含まれるが、この値は、マスター基地局の上位層がデータパケットを受け取ってから、(上位層による処理後に)セカンダリ基地局の下位層がそのデータを受信するまでの間のさまざまな遅延が補正されるように、セカンダリ基地局によって調整される。したがって、特定のデータパケットに対するマスタータイマーとセカンダリタイマーは、本質的に同時に切れる。
さらには、2つのタイマー(マスタータイマーおよびセカンダリタイマー)の同期を容易にするため、次のようにマスター基地局からセカンダリ基地局にタイムスタンプ情報を提供することができる。マスター基地局は、自身の上位層がデータパケットを受け取るたびに、そのデータパケットのタイムスタンプをさらに生成することができ、このタイムスタンプは、上位層がそのデータパケットを実際に受け取った受取時刻(例えばマスタータイマーがトリガーされた時刻)を示す、または、そのデータパケットに対するマスタータイマーが切れるまでの残り時間を示す。いずれの場合にも、実際のデータパケットに加えて、(例えばデータパケットのヘッダの一部として)タイムスタンプがセカンダリ基地局に提供され、したがってセカンダリ基地局は、タイムスタンプを使用することによって、特定のデータパケットに対するマスタータイマーに一致するようにセカンダリタイマーを設定することができる。
セカンダリタイマーは、マスター基地局における上位層からのデータパケット(例えばPDCP PDU)が、下位層において受信されるたびに起動される。これに対応して、セカンダリタイマーが切れた時点で、セカンダリ基地局の下位層において、受信したデータパケット(例えばPDCP PDU)が破棄される。
要約すると、移動局に転送されるデータパケットがマスター基地局(具体的にはマスター基地局のプロトコルスタックの上位層(例えばPDCP層))において受け取られたときに、マスター破棄機能のマスタータイマーが起動され、マスター基地局の上位層は、そのデータパケットを処理する(例えば受け取ったPDCP SDUからPDCP PDUを生成する)。
最初に、説明を目的として、処理したデータパケット(例えばPDCP PDU)を、マスタータイマーが切れる前にセカンダリ基地局における下位層に転送できないものと想定する。この場合、処理したデータパケット(例えばPDCP PDU)と、受け取ったデータパケット(例えばPDCP SDU)とが、マスター基地局の上位層によって破棄される。
処理したデータパケット(例えばPDCP PDU)がセカンダリ基地局における下位層に転送されるものと想定すると、セカンダリ基地局の下位層において、その処理されたデータパケット(例えばPDCP PDU、これはRLC SDUとも称される)が受信された時点で、セカンダリ基地局におけるセカンダリ破棄機能のセカンダリタイマーが起動される。しかしながら、セカンダリ基地局が(何らかの理由で)そのデータパケットを移動局にさらに転送できないものと想定する。
したがって、マスター基地局におけるマスタータイマー(データパケットがユーザ機器にまだ正常に送信されていないため依然として動作している)が最終的に切れ、したがって、マスター基地局の上位層では、対応する受け取ったデータパケットおよび処理したデータパケット(例えばPDCP SDUおよびPDCP PDU)を破棄することがトリガーされる。同様に、このデータパケットに対する、セカンダリ基地局におけるセカンダリ破棄機能のセカンダリタイマーも切れ、したがって、セカンダリ基地局の下位層では、対応するデータパケットを破棄することがトリガーされる。
なお、セカンダリ基地局におけるセカンダリタイマーが切れた時点で、セカンダリ基地局は、自身の下位層から移動局に送信する準備のできた、下位層に固有なさらなるデータパケットを生成するために、データパケット(またはその少なくとも一部)がその時点までに下位層によってすでに処理されたかを、チェックすることが有利であることに留意されたい。PDCP層およびRLC層に関連するさらに具体的な実施形態においては、セカンダリ基地局は、PDCP PDU(またはそのセグメント)がRLC PDUにすでにマッピングされたかをチェックする。すでにマッピングされた場合(すなわち下位層のデータパケットであるRLC PDUが生成された場合)、下位層はそのデータパケットの破棄を実行しない。マッピングされていない場合、下位層はそのデータパケットの破棄を実行する。
本発明の第2の代替態様も、本発明の基礎をなす上述した問題点を解決するが、第2の代替態様では、セカンダリ基地局の設計を単純化するため、セカンダリ基地局にセカンダリ破棄機能を設定することを回避する。第1の態様の場合に類似するシナリオを想定し、したがって、移動局がマスター基地局およびセカンダリ基地局の両方にそれぞれの通信リンクを介して接続されているものと想定する。移動局は、少なくとも、マスター基地局からセカンダリ基地局を介して移動局に転送されるデータパケットを受信する。マスター破棄機能を有する上位層(例えばPDCP層)を含むプロトコルスタックは、マスター基地局に配置されており、セカンダリ基地局には配置されていない。セカンダリ基地局もプロトコルスタックを有するが、このプロトコルスタックは、マスター基地局のこの特定の上位層を有さず、セカンダリ基地局は、マスター基地局のこの上位層の下の層(例えばRLC層)を有する。したがって、データパケットは、マスター基地局の上位(例えばPDCP)層からセカンダリ基地局における下位(例えばRLC)層に転送され、その後さらに移動局に転送される。
本発明の第1の態様と同様に、マスター基地局における上位層(例えばPDCP層)のマスター破棄機能は、移動局にまだ正常に転送されていないデータパケットを破棄することを可能にする。上位層によって受け取られる各データパケット(例えばPDCP SDU)に対して、マスター破棄機能の対応するマスタータイマーを起動する。上位層(例えばPDCP層)は、受け取ったデータパケット(例えばPDCP SDU)を、例えば下位層(例えばRLC層)に転送される処理済みのデータパケット(例えばPDCP PDU)を生成することによって、適切に処理する。
マスタータイマーが切れた時点で、データパケットおよび処理済みのデータパケット(例えばそれぞれPDCP SDUおよびPDCP PDU)が上位層によって破棄される。
背景技術のセクションにおいて説明した破棄機能とは異なり、データパケットが下位層にすでに転送されたか否かに関するチェックは実行されない。すでに転送されたか否かには関係なく、マスター基地局(具体的にはその上位層(例えばPDCP層))は、その特定のデータパケットを破棄するように下位層(例えばRLC層)に指示しない。
本発明の第1の態様とは異なり、マスター基地局における上述したマスター破棄機能に対応するセカンダリ破棄機能も、セカンダリ基地局において実施されない。したがって、セカンダリ基地局の下位層(例えばRLC層)は、マスター基地局においてデータパケットが破棄されたか認識せず、受信したデータパケットに対する下位層の処理(例えば移動局へのデータパケットの送信)の実行を続行する。
セカンダリ基地局における下位層(例えばRLC層)は、データパケット(例えば1つまたは複数のRLC PDUとしてのPDCP PDU)を移動局に送信し続け、移動局にデータパケット(例えばPDCP PDU)が正常に配信された時点で、セカンダリ基地局における下位層(例えばRLC層)は、マスター基地局における上位層から受信したデータパケット(例えばPDCP PDU)を破棄することができる。したがって、この第2の態様では、マスター基地局およびセカンダリ基地局における処理量が少なく、かつセカンダリ基地局が単純化される破棄方式が提供される。
本発明の第3の態様によると、移動局は、データを送信するためにマスター基地局へのベアラを使用するか、セカンダリ基地局へのベアラを使用するかを決定するときに、マスター破棄機能のマスタータイマーの値を考慮する。より詳細には、移動局がマスター基地局およびセカンダリ基地局の両方にそれぞれの通信リンクを介して接続されているシナリオを想定する。二重接続においては、マスター基地局およびセカンダリ基地局の両方が同じベアラを処理担当することが可能である(図21cのEPSベアラ2を参照)。すなわち、この特定のベアラ2のパケットのいくつかは、マスター基地局を介して送信され、他のパケットはセカンダリ基地局を介して送信される。このような送信は、無線条件または他の基準に応じて行うことができる。
本発明のこの第3の態様は、本発明の上述した第1の態様および第2の態様に代えて、またはこれらの態様に加えて、使用することができる。移動局は、データパケット、特に、すでに大きく遅延しているパケット、または破棄タイマーの時間が短いパケットを、マスター基地局またはセカンダリ基地局のどちらを介して送信するかを決定するときに、マスター破棄機能のマスタータイマーの残り時間を考慮することを提案する。
本発明の第1の実施形態は、マスター基地局およびセカンダリ基地局の両方に接続されている移動局を宛先とするデータパケットを破棄する方法、を提供する。データパケットは、マスター基地局からセカンダリ基地局を介して移動局に転送される。マスター破棄機能を有する上位層は、マスター基地局に配置されており、セカンダリ基地局には配置されていない。マスター破棄機能は、各データパケットが受け取られたときに起動されるマスタータイマーが切れた時点で、データパケットを破棄する。マスター基地局は、セカンダリ基地局の下位層におけるセカンダリ破棄機能を、マスター基地局の上位層におけるマスター破棄機能に基づいて設定する。マスター基地局は、データパケットを上位層からセカンダリ基地局の下位層に転送する。セカンダリ基地局における下位層のセカンダリ破棄機能は、マスター基地局における上位層からデータパケットを受信したときに下位層によって起動されたセカンダリタイマーが切れた時点で、受信したデータパケットを破棄する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局における上位層はPDCP層であり、セカンダリ基地局における下位層はRLC層であり、データパケットは、PDCP層によってPDCP SDUとして受け取られ、受け取ったPDCP SDUからPDCP層によって生成されたPDCP PDUとして、RLC層に転送される。セカンダリ基地局におけるRLC層のセカンダリ破棄機能は、マスター基地局におけるPDCP層からPDCP PDUが受信されたときにRLC層によって起動されたセカンダリタイマーが切れた時点で、受信されたPDCP PDUを破棄する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ基地局におけるRLC層は、RLC層によって起動されたセカンダリタイマーが切れた時点で、PDCP PDUまたはPDCP PDUの少なくとも1つのセグメントが、RLC PDUを生成するためにすでに使用されたかを判定する。受信したPDCP PDUを、セカンダリ基地局におけるRLC層のセカンダリ破棄機能によって破棄するステップは、PDCP PDUまたはPDCP PDUのセグメントが、RLC PDUを生成するためにまだ使用されていないときにのみ実行される。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ破棄機能を設定するステップは、セカンダリ破棄機能のセカンダリタイマーを設定するために使用される有効時間値(expiry time value)を少なくとも含む、セカンダリタイマーに関する情報、を含む設定メッセージを、マスター基地局からセカンダリ基地局に送信するステップ、を含む。セカンダリ基地局は、セカンダリタイマーの有効時間値を少なくとも含むセカンダリタイマーに関する受信された情報に基づいて、セカンダリ破棄機能を設定する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、設定メッセージに含まれる、PDCP PDUに対するRLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP SDUに対するPDCP層のマスタータイマーの有効時間値と同じである。あるいは、設定メッセージに含まれる、PDCP PDUに対するRLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP SDUに対するPDCP層のマスタータイマーの有効時間値より、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間だけ、小さい。あるいは、設定メッセージに含まれる、PDCP PDUに対するRLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP SDUに対するPDCP層のマスタータイマーの有効時間値と同じであり、セカンダリ基地局は、受信された情報に含まれるセカンダリタイマーの有効時間値から、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間を差し引いた有効時間値に基づいて、RLC層のセカンダリ破棄機能を設定する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、設定メッセージに含まれる、RLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP層のマスタータイマーの有効時間値より、マスター基地局とセカンダリ基地局との間のデータパケットのフロー制御によって使用される遅延時間だけ、小さい。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、マスター基地局のPDCP層におけるPDCP SDUの受取時刻に関するタイムスタンプ情報、を生成する。あるいは、マスター基地局は、PDCP SDUに対して残っている、マスター破棄機能のマスタータイマーの有効時間、に関するタイムスタンプ情報、を生成する。次いで、マスター基地局は、生成したタイムスタンプ情報を、好ましくは、マスター基地局のPDCP層によってセカンダリ基地局のRLC層に転送されるPDCP PDUのヘッダの中で、セカンダリ基地局に送信する。受信したPDCP PDUをセカンダリ基地局におけるRLC層のセカンダリ破棄機能によって破棄するステップは、そのPDCP PDUの生成元であるPDCP SDUに関連する受信されたタイムスタンプ情報、にさらに基づく。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局におけるPDCP層においてPDCP SDUを受け取り、PDCP SDUを受け取った時点で、マスター基地局におけるPDCP層は、受け取ったPDCP SDUに対してマスター破棄機能のマスタータイマーを起動する。マスター基地局におけるPDCP層は、受け取ったPDCP SDUからPDCP PDUを生成する。生成したPDCP PDUが移動局に正常に転送されたことの通知がマスター基地局によって受信された時点で、マスター基地局におけるPDCP層は、受け取ったPDCP SDUと、生成したPDCP PDUとを破棄する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、受信される通知は、セカンダリ基地局によってマスター基地局に送信され、セカンダリ基地局によって移動局に正常に転送された1つまたは複数のPDCP PDUに関する情報、を含む。この通知は、例えば、セカンダリ基地局によって移動局に正常に転送されなかった1つまたは複数のPDCP PDUに関する情報、をさらに含むことができる。この通知は、例えば、移動局に正常に転送された各PDCP PDUごとにセカンダリ基地局によって送信される。または、この通知は、複数のPDCP PDUに関するビットマップを含む。または、この通知は、最も最近に移動局に正常に転送されたPDCP PDUを示す。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、セカンダリタイマーの有効時間値を監視し、セカンダリ基地局におけるセカンダリタイマーが切れる時刻を認識する。セカンダリタイマーが切れるものとマスター基地局が認識した時刻の近傍において、マスター基地局が、PDCP PDUが移動局に正常に転送されたことの通知をセカンダリ基地局から受信しない場合、マスター基地局は、通知が受信されなかった対象のPDCP PDUを、このPDCP PDUに対するマスタータイマーが切れる前に、移動局に送信する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ基地局は、セカンダリ基地局が1つまたは複数のPDCP PDUを移動局に正常に転送できなかったためにセカンダリ基地局によって破棄されるこれらの1つまたは複数のPDCP PDUが破棄されることをマスター基地局に知らせる破棄通知を、マスター基地局に送信する。この破棄通知は、例えば、移動局に正常に転送されなかった各PDCP PDUごとにセカンダリ基地局によって送信される。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局がPDCP PDUの破棄通知をセカンダリ基地局から受信したとき、マスター基地局は、そのPDCP PDUを移動局に送信する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ基地局は、セカンダリタイマーが切れる前にRLC状態報告を受信するため、RLC状態報告をセカンダリ基地局に送信するように移動局にポーリングする。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、マスター破棄機能に対して設定されている有効タイマー値を考慮して、移動局との通信リンクを確立し、したがって、マスター破棄機能の有効タイマー値が小さい場合に設定される通信リンクは、セカンダリ基地局を介さずに移動局との間に直接的に確立される。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間に関する情報を含むメッセージが、移動局に送信される。あるいは、移動局は、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間を、マスター基地局およびセカンダリ基地局から受信されるその後のPDCP PDUの複数の異なる受信時刻に基づいて、推定する。次いで、セカンダリ基地局に送信されるPDCP SDUに対する、移動局のPDCP層における破棄タイマーの残りの有効時間が、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間に等しいかまたはそれより小さい場合、そのPDCP SDUと、そのPDCP SDUから生成されたPDCP PDUとが移動局によって破棄される、または、そのPDCP PDUが、移動局とマスター基地局との間の通信リンクを介して移動局によってマスター基地局に直接送信される。
本発明の第2の実施形態は、マスター基地局およびセカンダリ基地局の両方に接続されている移動局を宛先とするPDCP PDUの形のデータを破棄する方法、を提供する。データは、マスター基地局からセカンダリ基地局を介して移動局に転送される。マスター破棄機能を有するPDCP層は、マスター基地局に配置されており、セカンダリ基地局には配置されていない。マスター基地局におけるPDCP層は、PDCP SDUを受け取る。マスター基地局におけるPDCP層は、PDCP SDUを受け取った時点で、その受け取ったPDCP SDUに対してPDCP層のマスター破棄機能のマスタータイマーを起動する。マスター基地局におけるPDCP層は、受け取ったPDCP SDUからPDCP PDUを生成する。マスター基地局におけるPDCP層は、生成したPDCP PDUをセカンダリ基地局におけるRLC層に転送する。生成したPDCP PDUがマスター基地局によってセカンダリ基地局におけるRLC層に転送された時点で、マスター基地局におけるPDCP層は、受け取ったPDCP SDUと、生成したPDCP PDUとを破棄する。受け取ったPDCP SDUに対する、マスター基地局におけるPDCP層のマスター破棄機能のマスタータイマーが切れた時点で、マスター基地局におけるPDCP層は、PDCP SDUから生成したPDCP PDUが、自身によってセカンダリ基地局におけるRLC層にすでに転送されたかを判定する。すでに転送された場合、PDCP層は、RLC層に転送されたPDCP PDUを破棄するようにRLC層に指示しない。
本発明の第3の実施形態は、データを基地局に送信する移動局であって、マスター基地局およびセカンダリ基地局の両方に接続されている、移動局、を提供する。マスター破棄機能を有する上位層は、マスター基地局に配置されており、セカンダリ基地局には配置されていない。マスター破棄機能は、各データパケットを受け取ったときに起動されたマスタータイマーが切れた時点で、データパケットを破棄する。移動局の受信機は、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間に関する情報を含むメッセージを、マスター基地局から受信する。あるいは、移動局のプロセッサは、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間を、マスター基地局およびセカンダリ基地局から受信されるその後のPDCP PDUの複数の異なる受信時刻に基づいて、推定する。移動局のプロセッサは、セカンダリ基地局に送信されるPDCP SDUに対する、移動局のPDCP層における破棄タイマーの残りの有効時間が、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間に等しいかまたはそれより小さいかを判定する。等しいかまたはそれより小さい場合、プロセッサは、そのPDCP SDUと、そのPDCP SDUから生成されたPDCP PDUとを、破棄する、または、移動局の送信機が、そのPDCP PDUを、移動局とマスター基地局との間の通信リンクを介してマスター基地局に直接送信する。本発明の第1の実施形態は、移動局を宛先とするデータパケットを転送するマスター基地局、を提供する。移動局は、マスター基地局およびセカンダリ基地局の両方に接続されている。データパケットは、マスター基地局からセカンダリ基地局を介して移動局に転送される。マスター破棄機能を有する上位層は、マスター基地局に配置されており、セカンダリ基地局には配置されておらず、マスター破棄機能は、各データパケットを受け取ったときに起動されたマスタータイマーが切れた時点で、データパケットを破棄する。マスター基地局のプロセッサおよび送信機は、マスター基地局の上位層におけるマスター破棄機能に基づいて、セカンダリ基地局の下位層におけるセカンダリ破棄機能を設定し、セカンダリ基地局における下位層のセカンダリ破棄機能は、マスター基地局における上位層から受信されるデータパケットの受信時に下位層によって起動されたセカンダリタイマーが切れた時点で、受信したデータパケットを破棄する。上位層からのデータパケットは、送信機がセカンダリ基地局の下位層に転送する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局における上位層はPDCP層であり、セカンダリ基地局における下位層はRLC層であり、データパケットは、PDCP層によってPDCP SDUとして受け取られ、受け取ったPDCP SDUからPDCP層によって生成されたPDCP PDUとして、RLC層に転送され、セカンダリ基地局におけるRLC層のセカンダリ破棄機能は、マスター基地局におけるPDCP層からPDCP PDUが受信されたときにRLC層によって起動されたセカンダリタイマーが切れた時点で、受信されたPDCP PDUを破棄する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、セカンダリ破棄機能を設定するステップは、セカンダリ破棄機能のセカンダリタイマーを設定するために使用される有効時間値を少なくとも含む、セカンダリタイマーに関する情報、を含む設定メッセージを、送信機がセカンダリ基地局に送信するステップ、を含む。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、設定メッセージに含まれる、PDCP PDUに対するRLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP SDUに対するPDCP層のマスタータイマーの有効時間値と同じである。あるいは、設定メッセージに含まれる、PDCP PDUに対するRLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP SDUに対するPDCP層のマスタータイマーの有効時間値より、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間だけ、小さい。あるいは、設定メッセージに含まれる、RLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP層のマスタータイマーの有効時間値より、マスター基地局とセカンダリ基地局との間のデータパケットのフロー制御によって使用される遅延時間だけ、小さい。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、プロセッサは、マスター基地局のPDCP層におけるPDCP SDUの受取時刻に関するタイムスタンプ情報、を生成する、あるいは、PDCP SDUに対して残っている、マスター破棄機能のマスタータイマーの有効時間に関するタイムスタンプ情報、を生成する。送信機は、生成されたタイムスタンプ情報を、好ましくは、マスター基地局のPDCP層によってセカンダリ基地局のRLC層に転送されるPDCP PDUのヘッダの中で、セカンダリ基地局に送信する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局は、マスター破棄機能に対して設定されている有効タイマー値を考慮して、移動局との通信リンクを確立し、したがって、マスター破棄機能の有効タイマー値が小さい場合に設定される通信リンクは、セカンダリ基地局を介さずに移動局との間に直接的に確立される。
本発明の第1の実施形態は、データパケットを移動局に転送するセカンダリ基地局であって、移動局がマスター基地局およびセカンダリ基地局の両方に接続されている、セカンダリ基地局、を提供する。データパケットは、マスター基地局からセカンダリ基地局を介して移動局に転送される。マスター破棄機能を有する上位層は、マスター基地局に配置されており、セカンダリ基地局には配置されておらず、マスター破棄機能は、各データパケットを受け取ったときに起動されるマスタータイマーが切れた時点で、データパケットを破棄する。セカンダリ基地局のプロセッサは、マスター基地局の上位層におけるマスター破棄機能に基づいて、セカンダリ基地局の下位層におけるセカンダリ破棄機能を設定する。セカンダリ基地局の受信機は、マスター基地局の上位層からのデータパケットを、セカンダリ基地局の下位層において受信する。セカンダリ基地局のプロセッサは、マスター基地局における上位層からデータパケットが受信されたときに下位層によって起動されたセカンダリタイマーが切れた時点で、受信されたデータパケットを、セカンダリ基地局における下位層のセカンダリ破棄機能によって破棄する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、マスター基地局における上位層はPDCP層であり、セカンダリ基地局における下位層はRLC層であり、データパケットは、PDCP層によってPDCP SDUとして受け取られ、受け取ったPDCP SDUからPDCP層によって生成されたPDCP PDUとして、RLC層に転送され、したがって、セカンダリ基地局におけるRLC層のセカンダリ破棄機能は、マスター基地局におけるPDCP層からPDCP PDUが受信されたときにRLC層によって起動されたセカンダリタイマーが切れた時点で、受信されたPDCP PDUを破棄する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、RLC層によって起動されたセカンダリタイマーが切れた時点で、プロセッサは、PDCP PDUまたはPDCP PDUの少なくとも1つのセグメントが、RLC PDUを生成するためにすでに使用されたかを、セカンダリ基地局におけるRLC層によって判定する。受信したPDCP PDUを、セカンダリ基地局におけるRLC層のセカンダリ破棄機能によって破棄するステップは、PDCP PDUまたはPDCP PDUのセグメントが、RLC PDUを生成するためにまだ使用されていないときにのみ実行される。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、受信機は、セカンダリ破棄機能のセカンダリタイマーを設定するために使用される有効時間値を少なくとも含む、セカンダリタイマーに関する情報、を含む設定メッセージを、マスター基地局から受信する。プロセッサは、セカンダリタイマーの有効時間値を少なくとも含むセカンダリタイマーに関する受信された情報に基づいて、セカンダリ破棄機能を設定する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、設定メッセージに含まれる、PDCP PDUに対するRLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP SDUに対するPDCP層のマスタータイマーの有効時間値と同じである。あるいは、設定メッセージに含まれる、PDCP PDUに対するRLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP SDUに対するPDCP層のマスタータイマーの有効時間値より、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間だけ、小さい。あるいは、設定メッセージに含まれる、RLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP層のマスタータイマーの有効時間値より、マスター基地局とセカンダリ基地局との間のデータパケットのフロー制御によって使用される遅延時間だけ、小さい。あるいは、設定メッセージに含まれる、PDCP PDUに対するRLC層のセカンダリタイマーの有効時間値は、PDCP SDUに対するPDCP層のマスタータイマーの有効時間値と同じであり、セカンダリ基地局のプロセッサは、受信された情報に含まれるセカンダリタイマーの有効時間値から、マスター基地局とセカンダリ基地局との間の通信リンクの遅延時間を差し引いた有効時間値に基づいて、RLC層のセカンダリ破棄機能を設定する。
上の実施形態に加えて、または上の実施形態に代えて使用できる、本発明の第1の実施形態の有利な変形形態によると、受信機は、マスター基地局のPDCP層におけるPDCP SDUの受取時刻に関する情報、または、PDCP SDUに対して残っている、マスター破棄機能のマスタータイマーの有効時間に関する情報、のいずれかを含むタイムスタンプ情報、をマスター基地局から受信する。プロセッサは、受信されたPDCP PDUを、そのPDCP PDUの生成元であるPDCP SDUに関連する受信されたタイムスタンプ情報、に基づいて、RLC層のセカンダリ破棄機能によって破棄する。
開示する実施形態のさらなる恩恵および利点は、本明細書および図面から明らかになるであろう。これらの恩恵および利点は、本明細書および図面に開示したさまざまな実施形態および特徴によって個別に提供することができ、これらの恩恵および利点の1つまたは複数を得るためにすべてを備える必要はない。
以下、例示的な実施形態について添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
3GPP LTEシステムの例示的なアーキテクチャを示している。
3GPP LTEのE−UTRANアーキテクチャ全体の例示的な概要を示している。
3GPP LTE(リリース8/9)のために定義されたものとしてのダウンリンクコンポーネントキャリアの例示的サブフレーム境界の図である。
3GPP LTE(リリース8/9)に定義されているダウンリンクスロットの例示的ダウンリンクリソースグリッドの図である。
ダウンリンクのキャリアアグリゲーションが有効になっている状態における3GPP LTE−A(リリース10)の第2層構造を示している。
アップリンクのキャリアアグリゲーションが有効になっている状態における3GPP LTE−A(リリース10)の第2層構造を示している。
通信するための複数の異なる層を含むOSIモデルを示している。
プロトコルデータユニット(PDU)とサービスデータユニット(SDU)の関係と、層間でのこれらのデータユニットの交換を示している。
3つの副層(PDCP層、RLC層、MAC層)から構成される、ユーザプレーンおよび制御プレーンの第2層のプロトコルスタックを示している。
PDCP層、RLC層、およびMAC層におけるさまざまな機能の概要と、さまざまな層によるSDU/PDUの処理を例示的に示している。
ユーザプレーンデータを対象とするPDCP層のアーキテクチャを示している。
制御プレーンデータを対象とするPDCP層のアーキテクチャを示している。
PDCP層における破棄機能に関連するステップと、RLC層における破棄との相互関係とを単純化して示した流れ図である。
データPDUを示している。
制御PDUを示している。
マクロセルおよびスモールセルが同じキャリア周波数にある、スモールセルを機能強化するための配備シナリオの図である。
スモールセルが屋外にあり、マクロセルおよびスモールセルが異なるキャリア周波数にある、スモールセルを機能強化するためのさらなる配備シナリオの図である。
スモールセルが屋内にあり、マクロセルおよびスモールセルが異なるキャリア周波数にある、スモールセルを機能強化するためのさらなる配備シナリオの図である。
スモールセルのみでのスモールセルを機能強化するためのさらなる配備シナリオの図である。
S1−UインタフェースがマクロeNBにおいて終了し、ベアラ分割がRANにおいて行われない、コアネットワークに接続されたマクロeNBおよび小型eNBとの二重接続の通信システムアーキテクチャの概要の図である。
図21a、図21b、図21cは、それぞれ、SGWとUEとの間に2つの別個のEPSベアラを有する異なるオプションの図である。
図22a、図22b、図22c、図22d、図22e、図22f、図22g、図22h、図22iは、それぞれ、二重接続に関連して現在検討されている、MeNBおよびSeNBにおけるユーザプレーンのアーキテクチャのさまざまな代替形態を示している。
PDCP層の破棄機能がMeNBに配置されており、RLC層がSeNB内であるユーザプレーンアーキテクチャに適用されるときの、図13と同様の、PDCP層における破棄機能に関連するステップと、RLC層における破棄との相互関係とを単純化して示した流れ図である。
第1の例示的な実施形態による改良された破棄機能を示している流れ図である。
第1の実施形態の改良形態を示しているシグナリング図であり、この改良形態によると、MeNBは、SeNBがユーザ機器に正常に送信できなかった特定のPDCP PDUの追加の再送信をユーザ機器に直接送信するか否かを決定することができる。
第1の実施形態の改良形態を示しているシグナリング図であり、この改良形態によると、MeNBは、SeNBがユーザ機器に正常に送信できなかった特定のPDCP PDUの追加の再送信をユーザ機器に直接送信するか否かを決定することができる。
さらなる改良形態を例示的に示しているシグナリング図であり、この改良形態によると、SeNBによってユーザ機器に正常に送信できなかったPDCP PDUの破棄通知が、SeNBからMeNBに送信される。
第2の例示的な実施形態による改良された破棄機能を示している流れ図である。
第5の例示的な実施形態による、SeNBとMeNBとの間の改良された破棄機能を示している流れ図である。
以下の段落では、さまざまな例示的な実施形態について説明する。例示のみを目的として、実施形態の多くは、上の背景技術のセクションで部分的に論じられた、3GPP LTE(リリース8/9)およびLTE−A(リリース10/11)移動体通信システムによる無線アクセス方式に関して概要を示される。これらの実施形態は、例えば、上の背景技術のセクションで説明されている3GPP LTE−A(リリース10/11/12)通信システムなどの移動体通信システムにおいて有利に使用することができるが、実施形態はこの特定の例示的な通信ネットワークにおける使用に限定されないことに留意されたい。
「移動局」または「移動ノード」は、通信ネットワーク内の物理エンティティである。1つのノードがいくつかの機能エンティティを有することができる。機能エンティティとは、所定の一連の機能を実施する、もしくは、ノードまたはネットワークの別の機能エンティティに所定の一連の機能を提供する、またはその両方であるソフトウェアモジュールまたはハードウェアモジュールを意味する。ノードは、通信機器または通信媒体にノードをアタッチする1つまたは複数のインタフェースを有することができ、ノードはこれらのインタフェースを通じて通信することができる。同様に、ネットワークエンティティは、機能エンティティを通信機器または通信媒体にアタッチする論理インタフェースを有することができ、ネットワークエンティティは論理インタフェースを通じて別の機能エンティティやコレスポンデントノードと通信することができる。
請求項において使用されている用語「マスター基地局」は、3GPPの二重接続によると、マクロ基地局、あるいはマスターeNB/マクロeNBとも称される。
請求項において使用されている用語「セカンダリ基地局」は、3GPPの二重接続によると、スレーブ基地局、あるいはセカンダリeNB/スレーブeNBとも称される。
用語「破棄(する)」は、請求項および説明においては、discardTimer、および、このタイマーが切れた時点で破棄される例えばPDCP SDU/PDCP PDUの破棄に関連して、使用されている。しかしながら、「破棄(する)」は、削除するプロセスのみに具体的に制約されるのではなく、PDCP PDU/PDCP SDUをもはや必要ないものと設定し、したがって削除されるように設定するプロセスとして、より広義に理解されたい。実際に削除が行われるタイミングは、実装に依存することができ、例えば、パケットごとに行う、したがって基本的にはPDCP SDU/PDCP PDUを破棄するように指示されたときにただちに削除する、または、破棄されるデータ(PDU/SDU)が例えば100msごとにバッファから除去されるように周期的に削除することができる。
以下では、いくつかの例示的な実施形態について詳しく説明する。これらの実施形態は、さまざまな実施形態に関連する以下に説明されている特に重要な特徴を備えながら、3GPP規格に規定されている広い仕様の範囲内で実施されるように意図されている。
本説明は、本開示を限定するものとして理解されるべきではなく、本開示をよりよく理解するための実施形態の単なる例として理解されたい。特許請求の範囲で提示される本開示の一般原則は、異なるシナリオに、本明細書で明示的に記載されない方法で適用することができることが、当業者には理解されよう。同様に、さまざまな実施形態の説明を目的とすることを前提とする以下のシナリオは、そのようなものとして、本発明を限定しないものとする。
第1の実施形態
以下では、本発明の第1のセットの実施形態について説明する。第1の実施形態の原理の説明を簡単にするために、いくつかの想定を行うが、これらの想定は、本特許請求の範囲によって広く定義されるものとしての本出願の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことに、留意されたい。
第1の実施形態を図24を参照しながら説明する。図24は、特定の第1の実施形態において実行されるさまざまなステップを示している流れ図である。スモールセル環境における二重接続のシナリオを想定し、ユーザ機器は、MeNBおよびSeNBの両方に接続されており、少なくとも、サービングゲートウェイ(SGW)からMeNBに転送され最終的にSeNBを介してユーザ機器に転送されるデータを受信する(すなわち図21bおよび図21cにEPSベアラ2として例示的に示してある)。図示したように、EPSベアラ2は、必要に応じてそのデータを両方のeNBを介して送信できるようにMeNBにおいて分割する(図21c)、または、MeNBにおいて分割されずにEPSベアラ1とは個別にそのデータを転送することができる(図21b)。
3GPPにおけるスモールセルの検討によると、背景技術のセクションにおいて図22を参照しながら説明したように、ユーザプレーンのさまざまなアーキテクチャが検討されている。第1の実施形態においては、MeNBおよびSeNBのユーザプレーンアーキテクチャとして、破棄機能を有するPDCP層がMeNBに配置されておりSeNBには配置されていないアーキテクチャを想定する。さらに、下層のRLC層は、SeNBに配置されており、MeNBには配置されていても配置されていなくてもよい。したがって、この第1の実施形態は、検討下にある図22c,22d,22e,22g,22h,22iのユーザプレーンアーキテクチャのいずれかを対象とすることができる。図22cのユーザプレーンアーキテクチャ(代替形態2B)および図22gのユーザプレーンアーキテクチャ(代替形態3B)においては、PDCP層がMeNBとSeNBの間で分割されており、どの機能が実際にMeNBに配置されており、どの機能が実際にSeNBに配置されているかが明確ではない。しかしながら、この第1の実施形態に関連することは、PDCP層の破棄機能がMeNBに配置されており、したがってRLC層の破棄機能とは離れていることであり、このため従来技術においては、MeNBとSeNBとの間で層間通信を行うことが必要となる(背景技術のセクションの最後に説明した問題点の記述を参照)。
PDCP層の機能およびRLC層の機能(第1の実施形態においてはそれぞれMeNBおよびSeNBに配置されている)は、背景技術のセクションにおいて(例えば図10、図11、図12を参照しながら)説明した(現在の3GPP規格に定義されている)機能とほとんど同じままであるものとする。異なるのは、第1の実施形態に関連する以下に説明する変更点である。第1の実施形態では、PDCP層とRLC層との間、したがって上述したシナリオにおけるMeNBとSeNBとの間の、改良された破棄機能メカニズムを提案する。
MeNBのPDCP層における破棄機能は、MeNBの上位層(RRC層など)によって設定される。したがって、MeNBにおけるdiscardTimerの値は、上位層によって設定される。なお、MeNBにおける破棄機能を設定する上位層は、SeNBには存在しないことに留意されたい。第1の実施形態によると、基本的にMeNBのPDCP層の破棄機能に従ってSeNBのRLC層における追加の破棄機能を提供するため、MeNBの(1層または複数の)上位層(RRC層など)が、X2インタフェースを通じて、SeNBの破棄機能を設定する。
一般的には、SeNBにおける破棄機能によって使用される破棄タイマー値は、MeNBにおける破棄機能によって使用される破棄タイマー値と同じにすることができる。あるいは、SeNBにおける破棄機能によって使用される破棄タイマー値は、MeNBにおける破棄機能によって使用される破棄タイマー値に基づくが、データがMeNBのPDCP層にPDCP SDUの形で到着してPDCP層の破棄タイマーがトリガーされるタイミングから、データがSeNBのRLC層にPDCP PDU(すなわちRLC SDU、例外として図22e,22iにおけるようにRLC層が分割されている場合にはRLC PDU)の形で到着して第1の実施形態のRLC層の破棄タイマーがトリガーされるタイミングまでの、データによって発生するさまざまな遅延が補正されるように、調整することができる。
SeNBのRLC層が自身の破棄機能の対応する破棄タイマーを設定できるようにする対応する設定メッセージを、MeNBからSeNBに送信する。この設定メッセージは、SeNBにおけるRLC層の破棄タイマーを設定するためにSeNBによって使用される値を含むことができる。この値は、MeNBにおけるPDCP層の破棄機能の破棄タイマーに使用される値と同じとする、または、データのさまざまな遅延が考慮されるように調整することができる。
より詳細には、この遅延全体は、MeNBとSeNBとの間のバックホールリンクに使用される通信技術に固有なバックホール遅延(例えばDSLアクセスの場合には最大60ms)と、X2インタフェース上のMeNBがデータを処理し、そのデータがこのバックホール(X2インタフェース)を通じてSeNBに向けて実際に送信されるまでにかかるフロー制御遅延とから構成されるものとみなすことができる。後者のフロー制御は、例えば、X2インタフェースが輻輳していた(ユーザ機器の数やトラフィック量が過大である)、もしくは、SeNB側に容量に関連する何らかの問題(例えば処理遅延、バッファ容量、無線輻輳など)があった、またはその両方が原因で、MeNBがX2インタフェースを介してSeNBにパケットを送信できないときに発生しうる。バックホールリンク遅延は、MeNBとSeNBとの間の物理リンクの特性とバックホールのスループットによって決まる本質的にある程度一定なものであるため、MeNBおよびSeNBにおいて求めることができる。これに対して、データのフロー制御によって発生する遅延は、相当に変動し、したがってフロー制御遅延の正確な時間長を求めることは難しい。しかしながら、MeNBもしくはSeNBまたはその両方がフロー制御遅延の平均値または最小値を求めることは可能であり、SeNBにおける破棄タイマーを設定するためのSeNBへの設定メッセージの中でSeNBに送信されるタイマー値を決定するときに、これらの値を考慮することができる。
したがって、MeNBにおける破棄機能とSeNBにおける破棄機能は、発生する遅延の影響を受け、非効率的な破棄メカニズムとなる。この問題は、SeNBにおける破棄機能のタイマーを、遅延が補正されるように設定することによって、回避することができる。例えば、MeNBにおける破棄タイマーが200msに設定されており、バックホール遅延が50msであると想定すると、SeNBにおける破棄タイマーのより正確な、したがって有利なタイマー値(有効discardTimerと称することができる)は、150msである(この例ではフロー制御遅延は無視するものと想定する)。設定メッセージ内の値を、MeNBによってあらかじめ150msに設定する、または、設定メッセージ内の値を200ms(MeNBにおける破棄タイマーのタイマー値)に設定し、SeNBが、自身の破棄タイマーが150msに設定されるように、このタイマー値を調整する。
バックホールリンク遅延を理由とする調整に加えて、またはこの調整に代えて、SeNBにおける有効discardTimerを、同様にフロー制御遅延が補正されるように調整することができる。フロー制御遅延の最小値または平均値が20msであると想定すると、SeNBにおける有効discardTimerは、200ms−50ms−20ms(フロー制御遅延のみを補正する場合には200ms−20ms)に設定することができる。設定メッセージ内の値は、あらかじめ調整する、または、設定メッセージには、MeNBにおける破棄タイマーの(調整されていない)タイマー値を含め、SeNB自身が、受信したタイマー値を、フロー制御遅延もしくはバックホールリンク遅延またはその両方が考慮されるように調整する。SeNBは、フロー制御遅延の大きさを、X2リンク(X2における輻輳期間)を通じて認識する、または、例えばSeNB自身の容量の問題(例えば処理遅延、バッファ容量、無線輻輳など)に起因してX2を通じてのパケットの受信を停止する期間として、SeNB自身でフロー制御遅延を求めることができる。
したがって、SeNBのRLC層における破棄機能は、MeNBのPDCP層からPDCP PDUを受信した時点で対応する破棄タイマーが起動され、かつ上の方法のいずれかに従ってMeNB/SeNBによって設定された時間の後に切れるように、セットアップされる。
MeNBにおける上位層がSeNBにおけるRLC層の破棄機能をどのように設定するかに関する具体的な実施方法は、さまざまな方法をとることができる。例えば、設定メッセージの送信は、所有権のある手段によって、例えばO&M(オペレーション&メンテナンス)を使用して達成することができる、あるいは、SeNBにおけるRLC層を設定する、X2インタフェースを通じたRRCメッセージなどの設定メッセージを使用して、X2インタフェースを通じて設定を指定することができる。この設定情報によって、SeNBがサポートする、移動局に向かう各ベアラに対して適用される破棄タイマーが、SeNBに知らされる。この設定情報は、MeNBにおけるRRC層によってX2リンクを介してSeNBに提供する、または、上位層によって、X2を介して、または所有権のあるインタフェースを使用して、例えばO&Mを通じて、SeNBに配置されているRRCエンティティに対して設定することができる。
以下では、MeNBにおける破棄機能およびSeNBにおける破棄機能の両方をセットアップした後のパケットの転送について、図24に関連して説明する。データはダウンリンクにおいてMeNBおよびSeNBを介してユーザ機器に送信されるものと想定し、さらに例示を目的として、図22dまたは図22h(代替形態2Cまたは3C)のユーザプレーンアーキテクチャが使用されるものと想定する。
PDCP層が上位層からPDCP SDUを受け取ったとき、そのPDCP SDUに対して対応するPDCP discardTimerを起動し、PDCP層における通常のメカニズムに従って、そのPDCP SDUからPDCP PDUを生成する。次いで、このように生成したPDCP PDUを、SeNBにおけるRLC層にX2インタフェースを介して転送する。しかしながら、MeNBにおけるPDCP層が、MeNBにおける破棄タイマーが切れる前に適切なタイミングで、SeNBにおけるRLC層にPDCP PDUを実際に転送できないことがあることにも留意されたい。この理由として、MeNBにおける処理遅延、X2リンクの輻輳などが挙げられる。
SeNBのRLC層がPDCP PDU(RLCの観点からはRLC SDU)を受信した時点で、その受信したPDCP PDUに対して、RLC層における対応するdiscardTimer(または有効discardTimer)を起動する。さらに、SeNBのRLC層は、通常の方法でそのRLC SDUを処理して1つまたは複数のRLC PDUを生成し、次いで、これらのRLC PDUを、ユーザ機器にさらに転送できるように下位層(すなわちMAC層)に渡すことができる(簡潔さを目的として図24には示していない)。
したがって、PDCP SDUのデータに対して、MeNBにおける破棄タイマーとSeNBにおける破棄タイマーが動作している。
最初に、PDCP SDUデータがSeNBによってユーザ機器に正常に送信されるものと想定する。この場合、PDCP PDUデータを伝える対応する(1つまたは複数の)RLC PDUがユーザ機器によって正しく受信されて確認応答を受け取ったことを、SeNBにおける下層(例えばMAC層)がSeNBにおけるRLC層に知らせる。したがって、SeNBのRLC層は、RLC層におけるdiscardTimerを停止/終了させることができ、PDCP PDUデータ(すなわちRLC SDU)を破棄することができる。さらに、SeNBのRLC層は、PDCP PDUがユーザ機器に正常に送信されたことを、(例えば正常配信通知(Successful Delivery Indication)(後の説明を参照)を送信することによって)MeNBにおけるPDCP層に知らせる。これに応えてPDCP層は、その正常に送信されたPDCP PDU(より正確にはPDCP SDU)に対する自身の破棄タイマーを停止/終了させることができ、さらにそのPDCP SDUおよびPDCP PDUを最終的に破棄することができる。結果として、MeNBでは、SeNBによってユーザ機器に正常に送信されたことが通知されなかったPDCP PDUに対応する、より少ない(残りの)PDCP SDUに対するdiscardTimerが動作している。このようなdiscardTimerが切れたとき、そのことをMeNBがSeNBに示すこともできる。なぜなら、この時点で動作しているdiscardTimerは少数であり、ユーザ機器にまだ正常に配信されていないPDCP PDU(すなわちユーザ機器が正常配信通知をまだ送信していない対象のPDCP PDU)に対応する破棄指示情報がMeNBからSeNBに送信されるのみであり、したがって、X2インタフェースを介してのシグナリングは依然として軽減されるためである。この方法では、すべてのPDCP PDUについてではなく、SeNBによってユーザ機器に実際に配信されなかったPDCP PDUのみについて破棄するように指示するだけでよいため、各PDCP PDUについて破棄するように指示する不必要なX2シグナリングが回避される。
これに対して、SeNBにおけるRLC層が、受信したPDCP PDUデータを何らかの理由でユーザ機器に送信できなかったものと想定する。この場合、MeNBおよびSeNBにおける2つのタイマーが最終的に切れる。MeNBにおいては、PDCP SDUに対して起動された破棄タイマーが切れたとき、PDCP層が、(切れた破棄タイマーに対応する)PDCP SDUと、そのPDCP SDUから生成されたPDCP PDUの両方を破棄する。同様に、SeNBにおけるRLC層では、PDCP PDU(すなわちRLC SDU)を受信した時点で起動された破棄タイマーが切れたとき、その受信したPDCP PDUが破棄される。
さらに、この第1の実施形態の有利な実施例においては、RLC層は、PDCP PDUを実際に破棄する前に、そのPDCP PDU(またはPDCP PDUの少なくとも1つのセグメント)のデータが、ユーザ機器に送信できるように少なくとも1つのRLC PDUにすでにマッピングされたかをチェックすることができる。PDCP PDUに対するRLC層によるRLC送信メカニズムに支障が生じないように、RLC層におけるPDCP PDUの破棄は、そのPDCP PDUがRLC PDUにまだマッピングされていないときにのみ実行する(図24の「いいえ」分岐を参照)。
上の説明から明らかであるように、図23に関連して説明した処理と比較すると、1つの利点として、MeNBにおけるPDCP層の破棄タイマーが切れたとき、PDCP PDU/PDCP SDUを破棄するように(SeNBにおける)RLC層に指示する必要はもはやなく、これによってX2を介してのシグナリングが軽減される。さらには、たとえX2におけるバックホール遅延が破棄タイマー値と同程度かまたはそれより大きいときでも破棄メカニズムは機能し、なぜなら、SeNBにおけるRLC層は、PDCP PDUを破棄できるように、MeNBのPDCP層における破棄タイマーと基本的に同期している個別のタイマーを動作させているためである。
さらに、PDCP PDUがRLC層にすでに転送されたか否かをもはやチェックする必要がなく、したがってMeNBにおけるPDCPプロトコルが単純化される。
以下では、この第1の実施形態のさらなる詳細および改良形態について説明する。
前に説明したように、SeNBのRLC層は、PDCP PDUがユーザ機器に正常に送信されたことを、MeNBにおけるPDCP層に知らせることができる。MeNBに知らせる対応する通知(以下では正常配信通知と称する)は、さまざまな方法で実施することができる。一般的には、このような正常配信通知を送信する方法およびタイミング(すなわち報告を開始および停止するタイミング)について、MeNBによってSeNBを設定することができる。例えば、MeNBは、特定のベアラを対象とする正常配信通知の報告を開始するように(X2を介して)SeNBに求めることができ、さらに、特定のベアラを対象とする報告を停止するように(X2を介して)SeNBに求めることができる。
例えば、X2を介してSeNBにおいて受信された後にユーザ機器に正常に送信された各PDCP PDUごとに、正常配信通知をSeNBからMeNBに連続的に送信することができる。この方法の利点として、最大限に早いタイミングでMeNBに知らされ、MeNBは、どのPDCP PDUがユーザ機器によって受信され、どのPDCP PDUが受信されなかったかを明確に認識する。しかしながら、この方法の欠点として、X2インタフェースにおけるシグナリング負荷が大きい。さらに、この場合には、PDCP PDU N−1およびPDCP PDU N+1がユーザ機器に正常に配信された場合、そのようにMeNBに報告されるが、PDCP PDU Nがユーザ機器にまだ正常に配信されておらず、RLC再送信の状態にあるものと想定すると、MeNBは、PDCP PDU Nの状態(SeNBにおいて破棄されたのか、最終的にユーザ機器に正常に配信されたのか)を判断することができない。当然ながら、このことは大きな問題ではなく、なぜならMeNBは、PDCP PDU Nの正常配信通知を受信するまで、またはPDCP PDU Nに対するマスター破棄タイマーが切れるまで、PDCP PDU Nを保持することができるためである。しかしながら、代替方法として、X2インタフェースを介して受信されてユーザ機器に正常に配信された各PDCP PDUを「順序どおりに」MeNBに知らせる。
これに代えて、X2インタフェースにおけるシグナリング負荷を軽減するため、正常に配信された複数のPDCP PDUのうち、最大のシーケンス番号をMeNBに送信することができる。しかしながら、この方法は誤った判断につながることがあり、以下ではこれについて説明する。
シーケンス番号11〜20を有する連続する10個のPDCP PDUのうち、シーケンス番号13,15を有するPDCP PDUが、MeNBからSeNBに送信されるときに失われ、シーケンス番号17,19を有するPDCP PDUが、SeNBからユーザ機器に正常に送信されていないものと想定する。正常配信通知が、シーケンス番号20を有する、正常に送信された最後のPDCP PDUのみを示す場合、MeNBは、シーケンス番号20までのすべてのPDCP PDUが正常に配信されたものとみなし、したがってこれらを破棄する。したがって再送信の機会が失われる。このような正常配信通知は、X2において失われたPDCP PDU(上の例ではシーケンス番号13,15のPDCP PDU)を示さず、さらには、正常に配信された最後のPDCP PDUの最大のシーケンス番号より小さいシーケンス番号を有するPDCP PDUのうち、ユーザ機器においてまだ正常に受信されていないPDCP PDU(上の例ではシーケンス番号17,19のPDCP PDU)に関して正しくない状態を伝える。
しかしながら、この欠点はさほど重大ではなく、なぜなら、正常に配信されないPDCP PDUの数は一般にはごく少なく、したがって、必要であればこれらのPDCP PDUの再送信を、さらなる上位層(例えばTCP層)によって行うことができるためである。しかしながら、この欠点を克服するため、SeNBによってユーザ機器に正常に送信できなかった(1つまたは複数の)PDCP PDUのシーケンス番号を含めることによって、正常に配信された(前の方法では報告されない)複数のPDCP PDUのシーケンス番号のうち、最大のシーケンス番号を含む正常配信通知を改良することができる。例えば、(PDCP PDU 0〜100はすでにSeNBによって報告されて)PDCP PDU 101〜200が依然としてMeNBのバッファ内にあり、正常配信通知が、ACK_SN=150と、これに加えてNACK_SN1=140およびNACK_SN2=145を示すものと想定する。MeNBは、この正常配信通知に応えて、シーケンス番号140,145のPDCP PDUを除く、シーケンス番号101〜150のPDCP PDUを破棄する。この場合、後から説明するように、さらなる改良形態では、MeNBは、PDCP PDU 140およびPDCP PDU 145をユーザ機器に直接送信するか否かを決定することができる(図25および図26に関連する後からの説明を参照)。
さらなる代替方法として、正常配信通知はビットマップを含むことができ、このビットマップには、ユーザ機器に正常に配信されたがまだ報告されていないPDCP PDUのうち最も新しいPDCP PDU、または最も古いPDCP PDUのACK_SNと、そのPDCP PDUより前の各PDCP PDUごとの、またはそのPDCP PDUより後の各PDCP PDUごとの1ビット情報とを含める。例えば、正常配信通知は、以下のように構成することができる。
ビットマップの先頭は、正常に配信され、かつ、正常に配信されたことがMeNBにまだ示されていないPDCP PDUのうち最も古いPDCP PDUである。
ビットマップの最後は、正常に配信されたPDCP PDUのうち最も新しいPDCP PDUである。
正常に配信されたすべてのPDCP PDUを「1」によって示し、そうでないすべてのPDCP PDUを「0」によって示す、またはこの逆によって示す。
この代替方法では、これまでの代替方法よりもX2シグナリングが減少しうるが、非効率的となることがあり、なぜなら、前の報告の更新が必要となりうるためである。例えば、あるPDCP PDUが、(前の正常配信通知の時点においては)正常に送信されていないことが報告されたが、その後に正常に送信された場合、次の正常配信通知のビットマップには、最初の正常配信通知と同じ情報の一部が含まれる。
別の可能な方法として、正常配信通知の上述したいくつかの代替方法を組み合わせることができ、例えば、正常に配信された(または正常に配信されていない)PDCP PDUのうち最も古い(または最も新しい)PDCP PDUを示し、これに加えて、上に提案した対応するビットマップを送信する。
正常配信通知のフォーマットおよび内容とは別に、SeNBからMeNBに正常配信通知をいつ送信するかに関するタイミングを定義しなければならず、例えば以下のうちの1つとすることができる。
例えば次のようなイベントに基づくイベントトリガー方式:
SeNBがユーザ機器からの(RLC)状態報告を受信する
MeNBが正常配信通知を求める(例えば、MeNBのバッファが特定のレベルを超えたとき、またはタイマーに基づく)
ビットマップのサイズが固定されており、ビットマップ全体が使用されたとき(したがってビットマップのサイズが「n」ならば、「n」個のPDCP PDUフィードバック情報が実際に伝えられる)
これに代えて、またはこれに加えて、正常配信通知を周期的に送信することができ、この場合、周期は例えば設定可能とすることができる。
さらなる改良形態について、図25および図26に関連して説明する。これらの図は、以下に説明するさらなる改良形態に焦点をあてて、SeNB、MeNB、およびユーザ機器において実行されるさまざまなステップを概略的に示している略図である。なお、図25および図26は、さらなる改良形態を深く理解できるように示すために、簡略化されていることに留意されたい。この改良形態によると、SeNB自身がPDCP PDUを正常に送信できない場合に、MeNBがそのPDCP PDUをユーザ機器に直接送信する機会がMeNBに与えられ、例えば、SeNBにおけるセカンダリタイマーが切れてからMeNBにおけるマスタータイマーが切れるまでの時間枠を使用してユーザ機器に直接送信する。第1の実施形態に関連して前に説明したように、SeNBにおけるセカンダリタイマーは、(PDCP SDUを受け取ることによってトリガーされるマスタータイマー値と比較して)PDCP PDUがSeNBに到着してセカンダリタイマーがトリガーされるまでに発生する遅延の一部(実際には全体ではない)が考慮されるように、設定することができる。したがって、セカンダリタイマーは、同じPDCP PDU/PDCP SDUに対するMeNBにおける対応するマスタータイマーより前に切れるものとする。
より詳細には、MeNBは、SeNBにおけるセカンダリタイマーに設定されている時間をさらに監視し、したがってMeNBは、特定のPDCP PDUに対するSeNBにおけるセカンダリタイマーが切れるタイミングを認識しているものと想定する。さらに、MeNBは、正常配信通知がMeNBに達するまでにかかる時間も考慮することができ、したがって、MeNBにおいて監視される時間は、SeNBからの対応する正常配信通知を受信することができるように、わずかに長い必要がある。言い換えれば、MeNBは、特定のPDCP PDUの正常配信通知が最も遅くていつまでに受信されているべきかを認識している。図25および図26には、上記の変形形態のいずれも、「SN_Xに対するセカンダリタイマーが切れたか?」として枠内に記載されている。一実施例においては、図25および図26に例示したように、MeNBは、PDCP PDU(SN_X)をSeNBに送信した時点で、セカンダリタイマーの時間の監視を開始する。いずれの場合も、MeNBは、セカンダリタイマーのタイマー値を監視し、セカンダリタイマーは、PDCP PDU(SN_X)に対するマスタータイマーが切れる前に終了する。図には示していない別の実施例においては、MeNBは、マスタータイマーのタイマー値を監視し、(さまざまな遅延を考慮して)セカンダリタイマーが切れるであろうタイミングを認識する。
図25は、SeNBがPDCP PDUをユーザ機器に正常に送信することができる場合を示している。したがって、SeNBは、PDCP PDUに関する正常配信通知をMeNBに送信し、対応するPDCP PDUを破棄する。MeNBは、正常配信通知を受信した時点で、PDCP SDU(SN_X)に対応するマスタータイマーを停止し、PDCP SDU/PDCP PDU(SN_X)を破棄する。図26は、SeNBがPDCP PDUをユーザ機器に正常に送信することができない、逆の場合を示している。したがって、PDCP PDU(SN_X)に対するSeNBにおけるセカンダリタイマーが最終的に切れ、SeNBはPDCP PDU(SN_X)を破棄する。したがって、このPDCP PDUに対しては正常配信通知がSeNBによってMeNBに送信されない。この改良形態に関して前述したように、MeNBも、SeNBにおけるセカンダリタイマーに設定されている時間(場合によっては、正常配信通知がMeNBに受信されるまでに発生する遅延を考慮して調整された時間)を監視しており、したがって、自身がPDCP PDU(SN_X)の正常配信通知が最も遅くていつまでに受信されているべきかを認識している。MeNBは、SeNBから正常配信通知が受信されず、以降にも受信されないものと判断すると(「SN_Xに対するセカンダリタイマーが切れたか?」「はい」)、そのときマスタータイマーが切れていなければ(すなわちマスタータイマーがまだ動作しており切れていない)、そのPDCP PDU(SN_X)をユーザ機器に直接送信することを決定することができる。その少し後に、そのPDCP PDU(SN_X)に対するMeNBにおけるマスタータイマーが切れる、またはMeNBによって停止され、対応するPDCP SDU(SN_X)およびPDCP PDU(SN_X)がMeNBにおいて破棄される。
これに代えて、正常配信通知にPDCP PDUのNACK_SNを含めることができ、MeNBは、NACK_SNに応えて、対応するPDCP PDUをユーザ機器に送信することを決定することができる。
この改良形態をさらに有利にするため、マスタータイマーは、ユーザ機器におけるPDCP並べ替えタイマー(reordering timer)の値より小さいものとする。そうでない場合、すなわちユーザ機器における並べ替えタイマーがMeNBにおけるマスタータイマーよりも小さい値に設定されている場合、ユーザ機器は、自身におけるPDCP PDUに対する並べ替えタイマーが切れた後にMeNBによる直接的な送信を受信することがあり、その場合にユーザ機器は、たとえパケットを正常に受信しても、そのパケットをそのまま破棄する。しかしながら、並べ替えタイマーはMeNBによってユーザ機器に対して設定されるため(またはそのように指定される場合)、MeNBは、ユーザ機器において動作する並べ替えタイマーよりもマスタータイマーが短くなるようにすることができる。
この改良形態においては、絶対的に必要ではないが、PDCP PDUがユーザ機器に正常に送信されてから短い時間の後に正常配信通知がMeNBに送信されるならば有利である。そうでない場合、MeNBはセカンダリタイマーが切れる時刻前後まで正常配信通知を受信しないため、SeNBがPDCP PDUをユーザ機器に送信できなかったものと誤って想定することがあり、結果としてMeNBは独自にそのPDCP PDUをユーザ機器に送信する(図26を参照)。いずれの場合も、ユーザ機器が両方のeNB(SeNBおよびMeNB)から同じPDCP PDUを受信した場合には重複するPDCP PDUを破棄するように、ユーザ機器を構成するべきである。
第1の実施形態のさらなる改良形態(図25および図26に関連して説明した前の改良形態に代わる方法(または前の改良形態に追加される方法)と考えることができる)においては、SeNBとMeNBとの間での破棄通知(Discard Indication)を提案し、この破棄通知は、SeNBによってユーザ機器に正常に送信されなかったPDCP PDUをMeNBに知らせる。この改良形態においても、このような破棄通知を送信する方法およびタイミング(すなわち報告を開始および停止するタイミング)について、MeNBによってSeNBを設定することができる。例えば、MeNBは、特定のベアラを対象とする破棄通知の報告を開始するように(X2を介して)SeNBに求めることができ、さらに、特定のベアラを対象とする報告を停止するように(X2を介して)SeNBに求めることができる。
以下では、この改良形態の一例について、図27を参照しながら説明する。SeNBは、MeNBからPDCP PDUを受信した時点で、受信したPDCP PDUに対するセカンダリタイマーを起動するものと想定する。SeNBは、セカンダリタイマーが切れた時点で、(例えばそのPDCP PDUがRLC PDUにまだマッピングされていなければ)そのPDCP PDU(RLC SDU)を破棄して送信を終了し、例えば以下に説明する破棄通知を使用することによって、自身が破棄することをMeNBに知らせる。これに応えてMeNBは、そのPDCP PDUに対するマスタータイマーがまだ動作している場合、そのPDCP PDUをユーザ機器に送信することを決定することができる。マスタータイマーがトリガーされてからセカンダリタイマーがトリガーされるまでの間に発生するさまざまな遅延の一部(ただし全体ではない)について調整されるようにセカンダリタイマーが設定されている場合、セカンダリタイマーがマスタータイマーより前に切れることを考えれば、MeNBが破棄通知を受信した時点でマスタータイマーはおそらくまだ動作している。
さらに、SeNBは、例えば特定のPDCP PDUがSeNB RLC層によってすでに何度も(再)送信されたときには、セカンダリタイマーが切れる前にそのPDCP PDUを破棄することを決定することができる。
この改良形態において使用される破棄通知は、上述した正常配信通知と同様に、さまざまな方法で実施することができる。例えば、ユーザ機器に正常に送信できなかった(例えば、対応するセカンダリタイマーが切れた、または最大再送回数に達した)各PDCP PDUごとに、SeNBからMeNBに破棄通知を送信することができる。この方法の利点として、最大限に早いタイミングで(したがってMeNBにおける対応するマスタータイマーが切れる前に)MeNBに知らされ、さらに、MeNBはどのPDCP PDUがユーザ機器によって受信されなかったのかを明確に認識する。SeNBからMeNBへのこのような破棄通知が必要となるPDCP PDUは極めて少数である(RLC再送信の後において106のオーダー)ことを考えると、X2インタフェースにおけるシグナリング負荷はおそらくはそれほど大きくない。
破棄通知をいつ送信するかに関しても、さまざまな実施方法があり、そのうちのいくつかは、正常配信通知に関連してすでに説明した。例えば、破棄通知の送信をイベントトリガー方式とすることができ、例えば、PDCP PDUに対する少なくとも1つのセカンダリタイマーが切れたとき、または、正常な配信の回数が特定のしきい値を超えたときに(例えば50回の正常な配信ごとに)トリガーすることができる(SeNBは、1つのACK_SNのみ、または1つのACK_SNおよび1つ以上のNACK_SNを含む1つの破棄通知をMeNBに送ることができる)。これに代えて、破棄通知の送信を周期的とすることができる。このタイプの報告方法においては、SeNBにおいて破棄されるPDCP PDUが存在しない(すなわちその報告周期内ではすべてのPDCP PDUが対応するセカンダリタイマーの切れる前にユーザ機器に正常に送信された)ときに、破棄がゼロであること(NULL discard)を破棄通知によって示すことができる。破棄がゼロであることは、例えば、前述したように1つのACK_SNのみを含めることによって、または、その時点までにX2を介して受信されたすべてのPDCP PDUが配信されたことを示す特殊なフィールドを利用することによって、示すことができる。
しかしながら、破棄通知およびその送信タイミングの別の実施方法として、正常配信通知に関連して説明した方法なども(例えば最大のシーケンス番号に関する上の説明を参照されたい)、それが適切と判断される場合には使用することができる。
要約すると、MeNBは、有利であると判断される場合、ユーザ機器への直接的な再送信を実行することができる(実際には、マスタータイマーがまだ動作している、すなわち対象のPDCP PDUがMeNBにおいてまだ利用可能である場合にのみ実行することができる)。ユーザ機器のPDCP層は、SeNBおよびMeNBの両方から同じPDCP PDUを受信した場合、それらの重複するPDCP PDUを破棄する。このように、必要な場合、より小さいリンク遅延を使用してPDCP PDUをユーザ機器に追加的に再送信することができる。
破棄通知は、たとえ1つのACK_SNのみ、または1つのACK_SNおよび1つ以上のNACK_SNを示す場合にも、MeNBのPDCPバッファをクリアする機会を提供する目的で、SeNBによって周期的にMeNBに送信することができる。
破棄通知を不必要にMeNBに送信することを回避する目的で、新規のポーリングトリガー(Poll Trigger)をSeNBおよびユーザ機器によって使用することができる。新規のポーリングトリガーは、セカンダリタイマーが切れるタイミングに関連付ける(例えば切れる直前または直後)、またはSeNBにおける任意の他の破棄メカニズムに関連付ける(例えば前に説明したように配信カウンターに基づく)べきである。ポーリングは、ポーリングビット(Poll bit)を含めることによって行い、ユーザ機器は、ポーリングを受信した時点で、ただちにRLC状態報告をSeNBに送信する。これに応えてSeNBは、RLC状態報告に基づいて破棄通知をさらに更新し、例えば、送信されたRLC状態報告に基づいて、ユーザ機器において受信されたものと新たに確認されたPDCP PDUについては、破棄通知を送らない。
図24に関連して上に説明した破棄メカニズムは、以下に説明するようにPDCP SDU/PDCP PDUに関連するタイムスタンプ情報をSeNBにおけるRLC層に提供することによって、さらに正確さを高めることができる。1つのオプションによると、MeNBのPDCP層がPDCP SDUが受け取って、そのPDCP SDUに対応するPDCP層における破棄タイマーがトリガーされるとき、そのPDCP SDUを受け取った時刻(例えば、GPS時刻、UTC時刻、フレーム番号、サブフレーム番号など)を示すタイムスタンプを生成する。したがって、(そのPDCP SDUから生成された)PDCP PDUをSeNBにおけるRLC層に送信するとき、(これらのPDCP SDU/PDCP PDUに関連する)生成したタイムスタンプもSeNBに提供する。タイムスタンプ情報は、例えば、X2インタフェースを介してSeNBに転送される対応するPDCP PDUのヘッダに含めることができる。RLC層は、タイムスタンプ情報およびPDCP PDUを受信した時点で、前に設定されたSeNBの破棄タイマー値(特に、MeNBのPDCP層における破棄タイマーと同じに設定されているとき)と、受信したタイムスタンプが示す受取時刻情報とに基づいて、PDCP層における破棄タイマーがいつ切れるかを正確に求めることができる。
別のオプションによると、PDCP層の破棄タイマーが切れて、したがってPDCP SDUおよびPDCP PDUを破棄するようにPDCP層がトリガーされるまでの残り時間に関する情報を、タイムスタンプ情報に含めることができる。タイムスタンプの情報は、どのエンティティがいつタイムスタンプを生成するかによって異なる。例えば、X2プロトコルがMeNBからパケットを受け取る時点において、破棄タイマーが切れるまでの残り時間が76msである場合、この情報をタイムスタンプに含める。この場合にも、この情報はSeNBにおけるRLC層に提供され、したがってSeNBは、自身のRLC層における破棄タイマーが切れることによって、受信したPDCP PDUを破棄する正確なタイミングを、この情報を使用して求めることができる。
結果として、SeNBのRLC層に設定される破棄メカニズムを、MeNBのPDCP層の破棄タイマーに、より正確に同期させることができる。この特定のケースにおいては、MeNBからPDCP SDUデータをSeNBに送信するときに発生する遅延を補正するために、SeNBのRLC層の破棄タイマーを、MeNBのPDCP層の破棄タイマーの破棄タイマー値よりもいくらか小さく調整する必要もない。そうではなく、SeNBのRLC層における破棄タイマーを、MeNBのPDCP層における破棄タイマーと正確に同じ値に設定することができる。
上の改良形態に加えて、または上の改良形態に代えて使用することのできる、さらなる改良形態によると、MeNBは、短い破棄タイマーに関連付けられるパケットを、SeNBを介してユーザ機器に送信する(したがってバックホールリンクの遅延/輻輳が発生する)のではなく、短い破棄タイマーに関連付けられるベアラ/パケットはMeNB自身がユーザ機器に送信するようにする。このことは、どのベアラ/パケットをMeNBまたはSeNBのどちらが処理担当するべきかを選択するときに、重要な要素として考慮することができる。具体的には、MeNB、SeNB、ユーザ機器の間に、ベアラなどの通信リンクを確立するとき、小さい破棄タイマー値を有するパケットに関連付けられるベアラは、MeNBがユーザ機器との間に直接(すなわちSeNBを経由しないで)確立し、それ以外のベアラは、MeNBとユーザ機器との間、または、MeNBおよびSeNBとユーザ機器との間に、通常の方法で確立することができる。
第2の実施形態
第2の実施形態では、第1の実施形態と同じ問題に対処するが、以下に図28に関連して説明するように、やや異なる代替の解決策を提供する。基本的には、上に説明した第1の実施形態に関連する想定と同じ想定を行う。具体的には、スモールセル環境における二重接続のシナリオを想定し、ユーザ機器は、MeNBおよびSeNBの両方に接続されており、少なくとも、サービングゲートウェイ(SGW)からMeNBに転送され最終的にSeNBを介してユーザ機器に転送される(すなわち図21b,21cにEPSベアラ2として例示的に示した)データを受信する。図示したように、EPSベアラ2は、必要に応じてそのデータを両方のeNBを介して送信できるようにMeNBにおいて分割する(図21c)、または、MeNBにおいて分割せずにEPSベアラ1とは個別にそのデータを転送することができる(図21b)。
3GPPにおけるスモールセルの検討によると、背景技術のセクションにおいて図22を参照しながら説明したように、ユーザプレーンのさまざまなアーキテクチャが検討されている。第2の実施形態においては、MeNBおよびSeNBのユーザプレーンアーキテクチャの想定として、破棄機能を有するPDCP層はMeNBに配置されているがSeNBには配置されておらず、さらに、下位のRLC層はSeNBに配置されており、MeNBには配置されていてもいなくてもよい。したがって、この第2の実施形態は、検討されているユーザプレーンアーキテクチャのうち図22c,22d,22e,22g,22h,22iのアーキテクチャのいずれかを対象とすることができる。図22cのユーザプレーンアーキテクチャ(代替形態2B)および図22gのユーザプレーンアーキテクチャ(代替形態3B)においては、PDCP層がMeNBとSeNBの間で分割されており、どの機能が実際にMeNBに配置されており、どの機能が実際にSeNBに配置されているかが明確ではない。しかしながら、第2の実施形態に関連することは、PDCP層の破棄機能がMeNBに配置されており、したがってRLC層の破棄機能とは離れていることであり、このため従来技術においては、MeNBとSeNBとの間で層間通信を行うことが必要となる(従来技術の問題点の説明を参照)。
PDCP層の機能およびRLC層の機能(第2の実施形態においてはそれぞれMeNBおよびSeNBに配置されている)は、背景技術のセクションにおいて(例えば図10、図11、図12を参照しながら)説明した(現在の3GPP規格に定義されている)機能とほとんど同じままであるものとする。異なるのは、第2の実施形態に関連する以下に説明する変更点である。さらに、第2の実施形態では、PDCP層とRLC層の間(すなわちMeNBとSeNBの間)の改良された破棄機能メカニズムを提案する。
従来技術および第1の実施形態と同様に、MeNBにおけるPDCP層は、対応するPDCPタイマーが切れているためにもはや送信する必要のないPDCP SDU(および対応するPDCP PDU)を破棄することを可能にする破棄メカニズムを実施する。しかしながら、第2の実施形態によるMeNBのPDCP層における破棄メカニズムでは、従来技術の破棄メカニズムとは異なり、第1の実施形態と同様に、PDCP PDUがRLC層に転送されたかをチェックせず、さらに、PDCP SDUを破棄するようにSeNBにおける下層(RLC層)に指示しない。さらには、SeNBを単純化するため、第1の実施形態において提案した個別の破棄メカニズムをSeNBにおいて実施しない。
したがって、MeNBにおけるPDCP層は、PDCP SDUを受け取ると、そのPDCP SDUに対応する破棄タイマーを起動し、さらにそのPDCP SDUを通常の方法で処理してPDCP PDUを生成し、次いでそのPDCP PDUを、ユーザ機器にさらに転送できるようにSeNBにおけるRLC層に転送する。SeNBのRLC層は、MeNBにおけるPDCP層からX2インタフェースを介してそのPDCP PDUを受信したとき、第1の実施形態におけるようには自身の追加の破棄タイマーを起動せず、RLC層の通常の動作として、受信したデータを分割および連結してRLC PDUを生成し、次いでこれらのRLC PDUを、さらに送信できるように下位層(例えばMAC層)に渡す。さらに、SeNBにおけるRLC層は、前に受信したPDCP PDUを破棄するように指示する通知を、MeNBにおけるPDCP層から受信する機能も備えない。結果として、たとえMeNBにおいてPDCP層の破棄タイマーが切れても、RLC層は、自身の通常のプロセス、すなわちユーザ機器に送信できるように(1つまたは複数の)RLC PDUを生成するプロセスを続行する。したがって、MeNBにおけるPDCP層によってかなり前にすでに破棄されたPDCP PDUについて、それらがユーザ機器に正常に受信されたことをRLC層がMeNBのPDCP層に報告することもありうる。
当然ながら、SeNBにおけるRLC層は、受信したPDCP PDUデータを(1つまたは複数のRLC PDUの形で)ユーザ機器に正常に転送することを成功するまで長時間にわたり試みることがないように、別の内部破棄タイマー(第1の実施形態のタイマーとは異なる)を備えることができる(備えなくてもよい)。
図28に例示的に示したように、SeNBにおけるRLC層は、通常のルーチン動作として、ユーザ機器に正常に送信されたため後から使用できるように保持しておく必要のないPDCP PDU(すなわちRLC SDU、および場合によってはRLC PDU)を破棄することによって、自身のバッファをクリアする。
第2の実施形態のこの破棄メカニズムは、実施の観点において単純であり、したがってSeNBをより単純にすることができ、したがって、より安価である。その理由として、この破棄メカニズムでは、(特にデータレートの高いアプリケーションの場合に)同時に動作する複数のタイマー(PDCP PDUごとに1つのタイマー)を扱う必要がなく、また、RLC層は、X2を介して受信するすべてのPDCP PDUに対して同じ挙動をとる。さらに、この第2の実施形態の利点として、破棄タイマーを知らせるためにパケット(PDCP PDU)ごとにSeNBにシグナリングする必要がなく、また、このような破棄機能/タイマー値の設定/再設定が回避される。さらに、MeNBは、データがSeNBのRLC層にすでに転送されたか否かに関する対応するチェックをもはや行う必要がない。
第2の実施形態の1つの改良形態においては、SeNBがPDCP PDUをユーザ機器に正常に送信できなかった場合に対応するため、(図25および図26に関連して説明した第1の実施形態の改良形態と同様に、例えばMeNBの破棄タイマーが切れる前に)MeNBがそのPDCP PDUをユーザ機器に直接送信する機会が与えられる。第2の実施形態についてすでに説明したように、RLC層は、PDCP PDUがユーザ機器に正常に送信されたことを、MeNBにおけるPDCP層に報告する。この報告は、第1の実施形態において正常配信通知に関連して説明した方法と同様の方法で行うことができる。このような正常配信通知に使用可能なさまざまなフォーマット、内容、および送信方法については、ここでは説明を繰り返さない。したがって、第1の実施形態の説明のうち、1つ(または複数)のPDCP PDUがユーザ機器に正常に送信されたことをSeNBにおけるRLC層によってMeNBのPDCP層に知らせる場合に等しくあてはまる対応する説明箇所を参照されたい。
第2の実施形態のこの改良形態によると、MeNBは、特定のPDCP PDUに対応する正常配信通知が、特定の時点までに(ただしその同じPDCP PDUに対応するMeNBにおけるマスタータイマーが切れる前に)受信されたか否かを判定する。MeNBは、その特定の時点までに正常配信通知を受信しなかった場合、そのPDCP PDUをユーザ機器に直接送信することを決定することができる。
第3の実施形態
第3の実施形態は、ユーザ機器における処理の改良を対象とし、したがって、第1の実施形態および第2の実施形態とは独立して、または第1の実施形態および第2の実施形態に加えて、実施することができる。
ユーザ機器からSeNBに送信されたパケットはX2インタフェースを介してMeNBに転送されなければならず、したがって少なくともバックホールリンク遅延が発生するため、SeNBリンクは一般には大きなレイテンシを有する。このことは、図21bの二重接続モード(異なるベアラが異なるeNBによって処理担当されている)にはあまりあてはまらない。しかしながら、図21cの二重接続モードにおいては、同じベアラ2が両方のeNBによって処理担当されており、したがって、アップリンクおよびダウンリンクにおいて、このベアラのパケットの一部はMeNBを介して送信され、それ以外のパケットはSeNBを介して送信される。どちらの経路を介してパケットを送信するかは、例えば、リアルタイムの負荷や無線状況などに応じて決定することができる。
この第3の実施形態によると、ユーザ機器は、PDCP PDUをMeNBに直接送信するか、このパケットを(MeNBに転送されるように)SeNBに送信するかに関して、ユーザ機器のPDCP層における破棄タイマーを考慮して決定する。
ユーザ機器は、MeNBとSeNBの間のバックホールリンク遅延の公称値もしくはフロー制御遅延またはその両方を認識していない。この情報は、ネットワークによってユーザ機器に直接シグナリングする、または、ユーザ機器が、例えば、異なるノードを介して受信される例えば以降のPDCP PDUの受信時刻の差を観察することによって、ある期間におけるこの値の推定を試みることができる。このような差の平均は、バックホール遅延の公称値を表すはずであり、ユーザ機器は、好ましくは推定誤差を考慮して、この値を使用することができる。
したがって、ユーザ機器は、バックホール遅延(およびオプションとしてフロー制御遅延)に関する必要な情報を認識する。
ユーザ機器は、特に、(例えば、ウインドウストーリング(window stalling)、グラントの欠如、その他の理由によって)すでに長い遅延が発生しているパケットについては、例えば、MeNBへのマクロリンクにおける送信機会を使用することを決定することができる。
ユーザ機器は、PDCP PDUが破棄されるまでの残り時間を、バックホール遅延もしくはフロー制御遅延またはその両方と比較し、破棄されるまでの残り時間が、バックホールリンク遅延もしくはフロー制御遅延またはその両方と同程度であるかまたはそれより小さい場合、SeNBを介した迂回を回避するため、そのPDCP PDUをMeNBに直接送信することを決定する。
あるいはユーザ機器は、破棄されるまでの残り時間が、バックホールリンク遅延(およびオプションとしてこれに加えてフロー制御遅延: 第1の実施形態における上の説明を参照)と同程度であるかまたはそれより小さい場合、そのパケットをSeNBへのSeNBリンクを介して送信しないことを決定することができる。
したがって、マクロリンクにおける利用可能な送信機会/グラントが存在しない場合、ユーザ機器は、PDCP PDUを送信するためのマクロリンクにおける利用可能な送信機会/グラントを待機することができ、その場合には、マクロリンクにおける送信機会/グラントが時間内に利用可能にならなかった場合、破棄タイマーが切れた時点でそのPDCP PDUを破棄しなければならない。
第4の実施形態
さらなる第4の実施形態では、SeNBにPDCP層の破棄メカニズムが配置されている場合において、PDCP層の破棄機能を改良する。第1の実施形態においては、データパケットがMeNBからSeNBに送信されることによって発生するさまざまな遅延を補正するものとして、SeNBにおけるRLC層の有効discardTimerについて説明した。
同様に、この第4の実施形態では、SeNBにおけるPDCP層の破棄機能において有効discardTimerを使用することを提案する。したがって、MeNBの上位層がSeNBにおけるPDCP層の破棄機能を設定するときに、バックホールリンク遅延やフロー制御遅延などの遅延を補正する破棄タイマー値を求める(バックホールリンク遅延およびフロー制御遅延の説明については第1の実施形態を参照)。
したがって、この第4の実施形態は、SeNBにPDCP層(特に破棄メカニズム)が配置されているユーザプレーンアーキテクチャに適用され、すなわち、代替形態2Aおよび代替形態3A(図22bおよび図22fを参照)と、さらに、(MeNBではなく)SeNBにおけるPDCP層が破棄機能を含む場合には、代替形態2Bおよび代替形態3B(図22cおよび図22gを参照)にも適用される。
1本のベアラがSeNBおよびMeNBの両方によって処理担当される二重接続モードおよび対応するユーザプレーンアーキテクチャの場合、PDCP層はMeNBおよびSeNBに配置されている(代替形態3Aを参照)。この第4の実施形態によると、特定のベアラに対するMeNBのPDCP層における破棄タイマーは、同じ特定のベアラに対するSeNBのPDCP層における破棄タイマーとは異なる(すなわちタイマー値がより大きい)。すなわち、SeNBのPDCP層における破棄タイマー値は、考慮される遅延(例えばバックホールリンク遅延やフロー制御遅延)の量だけ小さい。
このようにする利点として、遅いバックホールやフロー制御遅延に起因するX2におけるパケット遅延が相殺され、すなわち、PDCP層における破棄機能は、完全に意図したとおりに動作し、PDCP層における破棄は、上位層/アプリケーションから見て同時に実行される。もしSeNBにおける破棄タイマーの値がMeNBにおける破棄タイマー値と同じであるならば、たとえ上位層/アプリケーションがすでにパケットを予期しなくなった後にも、アクセス層はパケット送信の試みを続ける。
第5の実施形態
第5の実施形態では、MeNBにおけるPDCP層の破棄機能のメカニズムが異なる。第1の実施形態と同様に、(例えば上述した第1の実施形態に関連して開示した複数の代替方法の1つに従って)SeNBにおいてセカンダリタイマーを設定する。その一方で、これまでの実施形態とは異なり、PDCP層にマスタータイマーを定義しない。したがってPDCP層は、PDCP SDUを受け取ったときにマスタータイマーをトリガーしない。
代わりに、MeNBにおける破棄メカニズムは、SeNBから受信される破棄通知によって制御され、破棄通知は、SeNBによってユーザ機器に正常に配信できなかったPDCP PDU(およびそのシーケンス番号(SN))をMeNBに知らせる。破棄通知およびそのさまざまな実施方法については、第1の実施形態の1つの改良形態に関連してすでに詳しく説明しており、その説明内容がこの第5の実施形態にも同様にあてはまるため、ここでは詳しい説明を繰り返さない。
したがって、MeNBは、1つまたは複数の特定のPDCP PDUの破棄通知を受信した時点で、これらのPDCP PDUのどれがユーザ機器によって正しく受信され、どれが正しく受信されなかったかを推測することができる。したがってMeNBは、この推測に基づいてPDCP PDUを破棄することができ、PDCP SDUに対するマスタータイマーはもはや必要ない。
例えば、SeNBからの破棄通知は、例えば、ユーザ機器に正常に配信できなかったPDCP PDUのNACK SNに加えて、ユーザ機器に正常に配信されたPDCP PDUのうちの最大のシーケンス番号を含むように実施することができる。
これに代えて、破棄通知は、例えば次のようにして、ビットマップを使用することによって実施することができる。ビットマップの先頭は、対応する「セカンダリタイマー」が切れており、かつ、そのPDCP PDUが破棄されることが前にMeNBに示されておらず、かつ、別のタイマー(例えばReportingTimerA(報告タイマーA)と称する)が切れていない、破棄されたPDCP PDUのうち、最も古いPDCP PDUである。このReportingTimerAは、セカンダリタイマーと一緒に起動することができ、ユーザ機器のPDCP層の並べ替えタイマーより小さくセカンダリタイマーより大きい値を有する。ReportingTimerAは、破棄通知のビットマップを送信するタイミングを制御する。破棄通知のビットマップの最後は、最も最近に破棄された(すなわちセカンダリタイマーが切れた)PDCP PDUである。ビットマップ内の破棄されたすべてのPDCP PDUを「1」によって示し、正常に配信されたすべてのPDCP PDUを「0」によって示す、またはこの逆とすることができる。
ビットマップを使用する代わりに、セカンダリタイマーが切れたがReportingTimerAは切れておらず、かつ、そのPDCP PDUが破棄されることが前にMeNBに示されていない、破棄されたPDCP PDUのリスト(例えば1つまたは複数のNACK SN)を、破棄通知とすることもできる。さらなる例においては、このリストに加えて、シーケンス番号が最大である正常に配信されたPDCP PDUのACK_SNをMeNBに報告し、したがってMeNBは、その情報に基づいて自身のバッファをクリアすることができる。したがってSeNBは、(1つまたは複数の)NACK_SNと、シーケンス番号が最大である正常に配信されたPDCP PDUのACK_SNとを、MeNBに報告する。
破棄通知の送信は、任意のイベント(例えば少なくとも1つのセカンダリタイマーが切れる)によってトリガーする、または周期的とすることができる。
さらなる改良形態(第1の実施形態の対応する改良形態に類似する: 図27を参照)として、MeNBは、破棄通知を受信した時点で、SeNBによってユーザ機器に正常に送信されなかったPDCP PDUをユーザ機器に直接送信するか否かを決定することができる。この改良形態の利点として、SeNBによって行われたユーザ機器への送信が失敗したPDCP PDUのさらなる再送信が、SeNBの代わりにMeNBによって行われる。
この改良形態は図29に示してあり、図29は、MeNBにおける破棄メカニズムが、マスタータイマーを使用せず、SeNBから受信される破棄通知に主として基づいて機能することを示している。例えば、MeNBが、PDCP PDU SN_XのNACKを示す破棄通知を受信した場合、これに応えてMeNBは、X−1までのシーケンス番号のPDCP PDUを破棄することができる。次いで、MeNBは、PDCP PDU SN_Xをユーザ機器に直接送信することを決定することができ、正常に送信された時点で、SN_XのPDCP PDUをさらに破棄することができる。
本発明のハードウェアおよびソフトウェア実装
別の例示的な実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアを用いて、上記したさまざまな実施形態を実施することに関する。これに関連して、本発明は、ユーザ機器(移動端末)およびeNodeB(基地局)を提供する。ユーザ機器は、本発明の方法を実行するようにされている。
さまざまな実施形態は、コンピューティングデバイス(プロセッサ)を使用して実施または実行され得るものとさらに認識される。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または、その他プログラマブルロジックデバイスなどである。さまざまな実施形態は、これらのデバイスの組合せによっても実行または具体化され得る。
さらに、さまざまな実施形態は、ソフトウェアモジュールによっても実施され得る。これらのソフトウェアモジュールは、プロセッサによって実行され、または、ハードウェアにおいて直接実行される。また、ソフトウェアモジュールとハードウェア実装の組合せも可能である。ソフトウェアモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読記憶媒体、例えば、RAMやEPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD−ROM、DVDなどに格納され得る。
さらには、本発明の複数の異なる実施形態の個々の特徴は、個々に、または任意の組合せにおいて、別の実施形態の主題とすることができることに留意されたい。
具体的な実施形態に示した本開示には、広義に記載されている本発明の概念または範囲から逸脱することなく、さまざまな変更もしくは修正またはその両方を行うことができることが、当業者には理解されるであろう。したがって、本明細書に示した実施形態は、あらゆる点において例示的であり、本発明を制限するものではないものとみなされる。