JP6630620B2 - 蓄電デバイス用セパレータ、蓄電デバイス及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
[1]ポリオレフィン微多孔膜からなる基材と、その基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された、電極と接着する熱可塑性ポリマーを含有する層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、
前記熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
前記ガラス転移温度のうち少なくとも1つは20℃未満の領域に存在し、
前記ガラス転移温度のうち少なくとも1つは20℃以上の領域に存在し、
前記ガラス転移温度が20℃以上の領域に存在する熱可塑性ポリマーが、芳香族ビニル化合物単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを単量体単位として有する第1の共重合体を含み、
前記ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在する熱可塑性ポリマーが、(メタ)アクリル酸エステル単量体を単量体単位として有する第2の共重合体を含み、
前記ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在する熱可塑性ポリマーと、前記ガラス転移温度が20℃以上の領域に存在する熱可塑性ポリマーとの混合比が、質量基準で50:50〜5:95である、蓄電デバイス用セパレータ。
[2]下記(1)及び(2)の少なくとも一方の剥離強度が、4mN/mm以上である、
上記蓄電デバイス用セパレータ。
(1)アルミニウム箔(冨士加工紙(株)製アルミニウム箔、厚さ:20μm)に、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液に濡らした前記蓄電デバイス用セパレータを、前記熱可塑性ポリマーを含有する層の側から重ね合わせ、それらを重ね合わせた方向に80℃、10MPaの圧力で2分間加圧した後、前記アルミニウム箔と前記蓄電デバイス用セパレータとの間を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。
(2)アルミニウム箔(冨士加工紙(株)製アルミニウム箔、厚さ:20μm)に、前記蓄電デバイス用セパレータを、前記熱可塑性ポリマーを含有する層の側から重ね合わせ、それらを重ね合わせた方向に80℃、10MPaの圧力で2分間加圧した後、前記アルミニウム箔と前記蓄電デバイス用セパレータとの間を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。
[3]下記(3)の剥離強度が40mN/mm以下である、上記蓄電デバイス用セパレータ。
(3)重ね合わせた20mm×100mmの前記セパレータ2枚と、それらのセパレータを挟んだ2枚のPTFEシートとを備えるサンプルを、温度25℃、圧力10MPaの条件で2分間加圧した後、前記サンプルにおけるセパレータ同士を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。
[4]前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、(メタ)アクリル酸の炭化水素エステルを含む、上記蓄電デバイス用セパレータ。
[5]前記第1の共重合体が有する、前記740cm-1〜770cm-1の波数における赤外吸収ピーク強度に対する1720cm-1〜1750cm-1の波数における赤外吸収ピーク強度の比が、1〜18である、上記蓄電デバイス用セパレータ。
[6]前記第1の共重合体における単量体単位としての前記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、更に炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体及びシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体である、上記蓄電デバイス用セパレータ。
[7]前記熱可塑性ポリマーを含有する層の担持量は、固形分として0.05g/m2以上1.50g/m2以下である、上記蓄電デバイス用セパレータ。
[8]上記蓄電デバイス用セパレータを備える蓄電デバイス。
CH2=CR1−COO−R2 (1)
式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は置換基を有していてもよくかつ鎖内にヘテロ原子を有していてもよい1価の炭化水素基を示す。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸の炭化水素エステルを含むと好ましい。基1価の炭化水素基としては、例えば、直鎖であっても分岐していてもよい鎖状アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。また、置換基としては、例えば、ヒドロキシル基及びフェニル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えば酸素原子が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
そのようなR2を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどの鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、フェニルアクリレート及びフェニルメタクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
そのようなシクロアルキル基を有する単量体としては、より具体的には、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルアクリレート及びアダマンチルメタクリレートが挙げられる。シクロアルキル基の脂環を構成する炭素原子の数は、4〜8が好ましく、6及び7がより好ましく、6が特に好ましい。また、シクロアルキル基は置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、例えば、メチル基及びターシャリーブチル基が挙げられる。これらの中では、シクロヘキシルアクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートが共重合体調製時の重合安定性が良好である点で好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、ポリマーのTgはFOXの式(下記式(2))より概算することができる。なお、共重合体等のガラス転移温度としては、上記DSCを用いた方法により測定したものを採用する。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+‥‥+Wi/Tgi+‥‥Wn/Tgn (2)
ここで、式(2)中において、Tg(K)は、コポリマーのTgを示し、Tgi(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTgを示し、Wiは、各モノマーの質量分率を示す。
熱可塑性ポリマーは、その全量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、上記共重合体を含む。その熱可塑性ポリマーは、上記共重合体以外に、本発明の課題解決を損なわない程度の、その他の成分を含んでもよい。
ポリエチレン:[η]=6.77×10-4Mv0.67(Chiangの式)
ポリプロピレン:[η]=1.10×10-4Mv0.80
本実施形態におけるポリマー層の基材に対する担持量は、固形分で0.05g/m2以上1.50g/m2以下が好ましく、より好ましくは0.07g/m2以上1.00g/m2以下であり、更に好ましくは0.10g/m2以上0.70g/m2以下である。その層の基材に対する担持量を0.05g/m2以上1.50g/m2以下とすることは、得られるセパレータにおいて、ポリマー層と基材との接着力を一層向上させる一方で、基材の孔を閉塞することによるサイクル特性(透過性)の低下を一層抑制する観点から好ましい。
本実施形態では、ポリマー層が、基材の一面当たりの表面積に対して、80%以下の表面被覆率で基材の表面上に存在することが好ましく、より好ましくは50%以下、更に好ましくは45%以下、特に好ましくは40%以下の表面被覆率で基材の表面上に存在する。また、ポリマー層が5%以上の表面被覆率で基材の表面上に存在することが好ましい。このポリマー層の表面被覆率を80%以下とすることは、熱可塑性ポリマー(例えば、上記共重合体)による基材の孔の閉塞を更に抑制し、セパレータの透過性を一層向上する観点から好ましい。一方、表面被覆率を5%以上とすることは、電極との接着性を一層向上する観点から好ましい。
本実施形態のセパレータにおけるポリマー層の平均厚さは、特に限定されないが、2.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以下、更に好ましくは0.5μm以下である。ポリマー層の平均厚さを2.0μm以下とすることは、ポリマー層による透過性低下を抑制すると共に、セパレータをロールとして保管した際のポリマー層同士又はポリマー層と基材との貼り付きを効果的に抑制する観点から好ましい。本実施形態におけるポリマー層の平均厚さは、例えば、基材に塗布する塗布液における熱可塑性ポリマー又は共重合体濃度や塗布液の塗布量、塗布方法及び塗布条件を変更することにより調整することができる。ただし、ポリマー層の平均厚さの調整方法は、それらに限定されない。
本実施形態におけるポリマー層の基材上での存在形態(パターン)は、特に限定されず、基材の全面に亘って存在してもよく、あるいは、例えば図1に黒塗りで示す平面形状を有していてもよい。すなわち、ポリマー層は、例えば、ドット状(例えば図1の(A))、格子目状(例えば図1の(B))、線状(例えば図1の(C))、縞状(例えば図1の(D))、亀甲模様状(例えば図1の(E))等のような平面形状で存在してもよい。
本実施形態において、共重合体を含む熱可塑性ポリマーを基材の少なくとも一方の面(片面)に担持する方法は、特に限定されない。例えば、熱可塑性ポリマーを含有する塗布液を基材の少なくとも一方の面に塗布した後、必要に応じて塗布液の溶媒又は分散媒を除去する方法が挙げられる。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを備える蓄電デバイスは、特に限定されないが、例えば、非水系電解液二次電池等の電池、コンデンサー及びキャパシタが挙げられる。それらの中でも、本発明による作用効果による利益がより有効に得られる観点から、電池が好ましく、非水系電解液二次電池がより好ましく、リチウムイオン二次電池が更に好ましい。本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、基材上にポリマー層を備えるため、捲回時のハンドリング性、電極活物質との接着性、及び透過性にも優れる。
被着体として正極集電体(冨士加工紙(株)製アルミニウム箔、厚さ:20μm)を30mm×150mmに切り取る。一方、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液(富山薬品工業製)に、セパレータ(サイズ:幅20mm、長さ100mm)を浸漬して十分に濡らした後に引き上げる。次いで、上記集電体に十分に濡らしたセパレータをそのポリマー層側から重ね合わせた後、それらを2枚のテフロン(登録商標)シート(ニチアス(株)製ナフロンPTFEシート TOMBO−No.9000(製品名))で挟む。それらに対して80℃、10MPaの条件で、2分間プレスを行って得られた積層体を加熱剥離強度試験用(条件1)のサンプルとする。得られた試験用サンプルのセパレータと集電体との間の90°剥離強度を、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2−500N(製品名)を用いて、引張速度50mm/分で測定する。
被着体として正極集電体(冨士加工紙(株)製アルミニウム箔、厚さ:20μm)を30mm×150mmに切り取り、その集電体にセパレータ(サイズ:幅20mm、長さ100mm)をそのポリマー層側から重ね合せた後、それらを2枚のテフロン(登録商標)シート(ニチアス(株)製ナフロンPTFEシート TOMBO−No.9000(製品名))で挟む。これらに対して80℃、10MPaの条件で、2分間プレスを行って得られた積層体を加熱剥離強度試験用(条件2)のサンプルとする。得られた試験用サンプルのセパレータと集電体との間の90°剥離強度を、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2−500N(製品名)を用いて、引張速度50mm/分で測定する。
本実施形態に係る積層体は、上記セパレータと電極とが積層したものである。本実施形態のセパレータは、電極と接着することにより積層体として用いることができる。ここで、「接着」とは、セパレータと電極との剥離強度が、好ましくは4mN/mm以上、より好ましくは6mN/mm以上、さらに好ましくは8mN/mm以上であることをいう。
本実施形態のセパレータは、電池やコンデンサー、キャパシタ等におけるセパレータや物質の分離に用いることができる。特に、非水電解液電池用セパレータとして用いた場合に、電極への密着性と優れた電池性能を付与することが可能である。本実施形態の蓄電デバイスは、蓄電デバイス用セパレータを備えるものであり、それ以外の構成は、従来知られているものと同様であってもよい。蓄電デバイスは、特に限定されないが、例えば、非水系電解液二次電池等の電池、コンデンサー及びキャパシタが挙げられる。それらの中でも、本発明による作用効果による利益がより有効に得られる観点から、電池が好ましく、非水系電解液二次電池がより好ましく、リチウムイオン二次電池が更に好ましい。以下、蓄電デバイスが非水系電解液二次電池である場合についての好適な態様について説明する。
(1)固形分
得られた共重合体の水分散体をアルミ皿上に約1g精秤し、このとき量り取った水分散体の質量を(a)gとした。それを、130℃の熱風乾燥機で1時間乾燥し、乾燥後の共重合体の乾燥質量を(b)gとした。下記式により固形分を算出した。
固形分=(b)/(a)×100 [%]
光散乱法による粒径測定装置(LEED&NORTHRUP社製、商品名「MICROTRAC UPA150」)を用い、50%粒径(nm)を測定し、平均粒径とした。
10cm×10cm角の試料を基材から切り取り、株式会社島津製作所製の電子天秤AEL−200(商品名)を用いて質量を測定した。得られた質量を100倍することで1m2当たりの膜の目付(g/m2)を算出した。
10cm×10cm角の試料を基材から切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、膜密度を0.95(g/cm3)として下記式を用いて計算した。
気孔率=(1−質量/体積/0.95)×100
JIS P−8117に準拠し、東洋精器株式会社製のガーレー式透気度計、G−B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度とした。
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーで基材を固定した。次に固定された基材の中央部に対して、先端の曲率半径が0.5mmである針を用い、突刺速度2mm/secの条件で、25℃の雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として突刺強度(g)を得た。
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、基材の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また、基材の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定した。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
ここで、Rgasは透気度(秒)から下記式を用いて求めた。
Rgas=0.0001/(透気度×(6.424×10-4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm3/(cm2・sec・Pa))から下記式を用いて求めた。
Rliq=透水度/100
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用い、セパレータの断面観察により測定した。より具体的には、セパレータを1.5mm×2.0mm程度に切り取り、ルテニウム染色した。ゼラチンカプセル内に染色後のサンプルとエタノールとを収容し、液体窒素により凍結させた後、ハンマーでサンプルを割断した。次いで、サンプルをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、30000倍にて観察し、ポリマー層の平均厚さを算出した。なお、SEM画像にて基材(ポリオレフィン微多孔膜)断面の多孔構造が見えない最表面領域をポリマー層領域とした。
共重合体を含む水分散体(固形分=38〜42質量%、pH=9.0)を、アルミ皿に適量とり、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後の乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、型番:DSC6220)にて窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。なお、測定条件は下記の通りとした。
(1段目昇温プログラム)
70℃で開始し、毎分15℃の速度で昇温した。110℃に到達後、その温度で5分間維持した。
(2段目降温プログラム)
110℃から毎分30℃の速度で降温した。−50℃に到達後、その温度で4分間維持した。
(3段目昇温プログラム)
−50℃から毎分15℃の速度で130℃まで昇温した。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得した。
得られたDSC曲線におけるベースラインを高温側に延長した直線と、変曲点における接線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
BIO RAD製の赤外吸収分析装置(製品名「FTS−60A/896 UMA300」)を用い以下のようにして測定した。共重合体の水分散液を60℃にて24時間真空乾燥し、白色の測定サンプルを得た。これをめのう製乳鉢で粉砕した。同様にKBrを用意し、めのう製乳鉢で粉砕した。KBr100mgに対して、測定サンプルを0.5mg加え、測定サンプルとKBrをめのう製乳鉢で十分にすり混ぜた後、錠剤を作製し、その錠剤をサンプルにして測定を行った。なお、測定前にバックグラウンドの測定を行った。
測定モード:顕微透過法
検出器:MCT
ビームスプリッター:KBr(臭化カリウム)
スキャンスピード:20kHz
積算回数:64回
分解能:4cm-1
測定波数:4000〜700cm-1
得られた赤外吸収スペクトルから、740cm-1〜770cm-1の波数範囲で最も赤外吸収強度が大きい波数での赤外吸収ピーク強度(A(Ar))と、1720cm-1〜1750cm-1の波数範囲で最も赤外吸収強度が大きい波数での赤外吸収ピーク強度(A(Ac))を求め、740cm-1〜770cm-1の波数における赤外吸収ピーク強度と、1720cm-1〜1750cm-1の波数における赤外吸収ピークとの強度比(A(Ac)/A(Ar))を算出した。
共重合体を含む水分散体を130℃のオーブン中に1時間静置して乾燥させた。乾燥させて得られた共重合体の膜を0.5gになるように切り取った。切り取ったサンプルを、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=2:3(質量比)の混合溶媒10gと一緒に50mLのバイアル瓶に入れ、1日混合溶媒を浸透させた後、サンプルを取り出し、上記混合溶媒にて洗浄し、質量(Wa:g)を測定した。その後、サンプルを150℃のオーブン中に1時間静置してから、質量を測定し(Wb:g)、下記式より共重合体の電解液に対する膨潤度を算出した。
共重合体の電解液に対する膨潤度(倍)=(Wa−Wb)÷(Wb)
基材(ポリオレフィン微多孔膜)及びセパレータのそれぞれについて、10cm×10cmに切り出したサンプル3枚の総質量を測定し、下記式により、サンプル中のポリマー層の担持量(固形分)を測定した。
ポリマー層の担持量(g/m2)=[(セパレータ3枚の総質量)−(基材3枚の総質量)]÷3×100
(13)セパレータと電極との接着性
セパレータと電極との密着性は、以下の手順で評価した。
(正極の作製)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックそれぞれ2.3質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%を、N−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。この時、正極の活物質塗布量は250g/m2、活物質嵩密度は3.00g/cm3になるようにした。
負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエンコポリマー水分散体1.7質量%を、精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。この時、負極の活物質塗布量は106g/m2、活物質嵩密度は1.35g/cm3になるようにした。
上記方法により得られた正極を幅17mm、長さ50mmに切断した。一方、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液(富山薬品工業製)に、セパレータ(サイズ:幅20mm、長さ100mm)を浸漬して十分に濡らした後に引き上げた。次いで、上記電極に十分に濡らしたセパレータをポリマー層側の面で重ねた。得られた積層物をアルミニウム製のジップ付き袋に入れ、80℃、10MPaの条件で、2分間プレスを行って電極とセパレータとの積層体を得た。その後、積層体を袋から取り出して密着性試験用のサンプルとした。得られた試験用サンプルの基材と電極との間の90°剥離強度を、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2−500N(製品名)を用いて、引張速度50mm/分で測定した。剥離強度の値に基づいて、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
6mN/mm以上…◎
4mN/mm以上 6mN/mm未満…○
4mN/mm未満…×
(セパレータの接着性試験)
アルミニウム箔(冨士加工紙株式会社製、厚さ:20μm)を20mm×100mmに切り取り、そのアルミニウム箔に本実施形態のセパレータにおけるポリマー層側の面を重ね合わせた後、2枚のテフロン(登録商標)シート(ニチアス株式会社製、ナフロン(商標)PTFEシート TOMBO−No.9000)で挟み、80℃、10MPaの圧力で、積層方向に2分間加圧した。そうして得られたサンプルにおいて、アルミニウム箔及びセパレータ間の剥離強度を、(株)イマダのフォースゲージZP5N及びMX2−500Nを用いて、引張速度50mm/分で測定した。剥離強度の値に基づいて、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
4mN/mm以上…○
4mN/mm未満…×
20mm×100mmに切り取ったセパレータ2枚を準備し、それらを重ね合わせた後、2枚のテフロン(登録商標)シート(ニチアス株式会社製のナフロン(商標)PTFEシート TOMBO−No.9000)で挟んだ。得られたサンプルについて、温度25℃、圧力10MPaの条件で2分間プレスを行った。プレス後のサンプルにおけるセパレータ同士の90°剥離強度を、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2−500Nを用いて、引張速度50mm/分で測定した。剥離強度の値に基づいて、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
40mN/mm以下…○
40mN/mm超…×
NCセルによるトリクル試験後のセパレータ表面の黒色化具合を観察して耐酸化性を評価した。詳細には、水分散液を塗布したセパレータを18mmφ、上記「(13)セパレータと電極との密着性」にて作製した正極及び上記負極を16mmφの円形(円板)に切り出し、正極と負極との活物質面が対向するよう、正極、セパレータ及び負極の順に積層した後に、蓋付きステンレス金属製容器に収納した。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と、それぞれ接するように配置した。この容器内に上記電解液を注入して密閉し、その状態で室温にて1日放置して電池を得た。なお、電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより調製したものを用いた。次いで、25℃の雰囲気下、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行った。次に6mA(1.0C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。次に、60℃雰囲気下、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行った。次いで、4.2Vを保持するように充電を続けた状態にて60℃の雰囲気下で4日間保存を行った後、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。この電池からセパレータを取り出し、付着物を取り除くためにジメトキシエタン、エタノール、及び1規定の塩酸中で各15分間の超音波洗浄を行った。その後、空気中にて乾燥し、セパレータの正極接触面側の水分散液塗布部の黒色変色具合を目視にて観察し、耐酸化性の評価を行った。黒色に変色した割合が面積あたりで5%以下のものを◎、10%以下のものを○、10%を超えるものを×と判定した。
セパレータを18mmφ、上記「(13)セパレータと電極との密着性」にて作製した正極及び上記負極を16mmφの円形(円板)に切り出し、正極と負極との活物質面が対向するよう、正極、セパレータ及び負極の順に積層した後に、蓋付きステンレス金属製容器に収納した。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と接するように配置した。この容器内に上記電解液を注入して密閉し、その状態で室温にて1日放置した。なお、電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより調製したものを用いた。その後、25℃雰囲気下、2mA(0.3C)の電流値で電池電圧が4.2Vになるまで充電し、その電圧に到達後、そのまま4.2Vを保持するようにして、電流値を3mAから絞り始めるという方法により、合計8時間、電池作製後の最初の充電を行った。続いて、6mA(1C)の電流値で電池電圧が3.0Vになるまで放電(定電流放電)して放電容量を測定した。次いで、上記と同様にして充電を行った後、12mA(2C)の電流値で電池電圧が3.0Vになるまで放電(定電流放電)して放電容量を測定した。
前者(1C)の放電容量に対する後者(2C)の放電容量の割合を容量維持率(%)と定義し、容量維持率が90%以上の場合を◎、70%以上90%未満の場合を○、70%未満の場合を×として、レート特性を評価した。
(水分散体A1)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、乳化剤として「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液、表中「KH1025」と表記。以下同様。)2.0質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液、表中「SR1025」と表記。以下同様。)0.5質量部とを投入した。次いで、反応容器内部の温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液(表中「APS(aq)と表記。以下同様。」)を7.5質量部添加した。過硫酸アンモニウム水溶液を添加終了した5分後に、乳化液を滴下槽から反応容器に150分かけて滴下した。なお、乳化液は、芳香族ビニル化合物単量体(表中、「Arビニル化合物単量体」と表記。)として、スチレン(表中、「St」と表記。以下同様)78質量部、(メタ)アクリル酸エステル単量体として、メチルメタクリレート(表中、「MMA」と表記。以下同様。)20質量部、アクリル酸(表中、「AA」と表記。以下同様。)1.0質量部、メタクリル酸(表中、「MAA」と表記。以下同様。)1.0質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学工業株式会社製商品名、表中、「A−TMPT」と表記。以下同様。)1.0質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(表中、「AcSi」と表記。以下同様)0.5質量部、乳化剤として「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)2.0質量部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液7.5質量部、及びイオン交換水52質量部の混合物をホモミキサーにより5分間混合させて作製した。
乳化液の滴下終了後、反応容器内部の温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却した。得られたエマルジョンを、水酸化アンモニウム水溶液(25%水溶液)でpH=9.0に調整し、濃度40%の水分散体を得た(水分散体A1)。得られた水分散体A1中の共重合体について、上記方法により、Tg、平均粒径、赤外吸収ピーク強度の比及び電解液に対する膨潤度を測定した。得られた結果を表1に示す。
(水分散体A2〜A10)
原材料の種類及び配合比を表1に示すように変更した以外は、合成例1と同様にして、水分散体A2〜A10を得た、なお、表中、「BA」は、ブチルアクリレートを意味する。得られた水分散体A2〜A10中の共重合体について、上記方法により、Tg、粒子径、赤外吸収ピーク強度の比及び電解液に対する膨潤度を測定した。得られた結果を表1に示す。なお、表中、原材料の組成は質量基準である。
(基材B1−1の製造)
Mvが70万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、Mvが30万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、Mvが40万であるホモポリマーのポリプロピレンとMvが15万であるホモポリマーのポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリオレフィン混合物99質量部に酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量部となるように、すなわち、ポリマー濃度が35質量部となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
[基材B2−1の製造]
水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)96.0質量部とアクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)4.0質量部と、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部とを100質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製し、基材B1−1の表面にマイクログラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、多孔層を2μmの厚さで形成して、ポリオレフィン微多孔膜B2−1を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜である基材B2−1を基材B1−1と同様に上記方法により評価した。得られた結果を表2に示す。
固形分で80質量部の水分散体A1と、固形分で20質量部の水分散体A7とを、水に均一に分散させて、熱可塑性ポリマーを含む塗布液(固形分30質量%)を調製した。次いで、基材B1の片面にマイクログラビアコーターを用いて、ポリマー層がドット状になるように塗布液を塗布した。その後、60℃にて塗布後の塗布液を乾燥して水を除去した。さらに、基材B1のもう片面にも同様に塗布液を塗布し、再度上記と同様にして乾燥させた。こうして、基材B1の両面にポリマー層を形成したセパレータを得た。
得られたセパレータについて、上記方法により、ハンドリング性、接着性、耐酸化性及びレート特性を評価した。得られた結果を表3に示す。
塗布液として、旭化成ケミカルズ社製のスチレンブタジエンポリマー(グレード名:L1571、粒子径:200nm、ガラス転移温度:0℃)を用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータを得た。得られたセパレータについて、上記方法により、ハンドリング性、接着性、耐酸化性及びレート特性を評価した。得られた結果を表3に示す。
水分散体の種類及び混合割合(質量%)、ポリマー層のパターン、並びに、塗布液中の固形分(質量部)を表3に示すように変更した以外は実施例1と同様にして塗布液を調製し、セパレータを作製した。得られたセパレータの各種物性及び評価・試験結果を表3に示す。
Claims (8)
- ポリオレフィン微多孔膜からなる基材と、その基材の少なくとも片面上の少なくとも一部に形成された、電極と接着する熱可塑性ポリマーを含有する層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、
前記熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
前記ガラス転移温度のうち少なくとも1つは20℃未満の領域に存在し、
前記ガラス転移温度のうち少なくとも1つは20℃以上の領域に存在し、
前記ガラス転移温度が20℃以上の領域に存在する熱可塑性ポリマーが、芳香族ビニル化合物単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを単量体単位として有する第1の共重合体を含み、
前記ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在する熱可塑性ポリマーが、(メタ)アクリル酸エステル単量体を単量体単位として有する第2の共重合体を含み、
前記ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在する熱可塑性ポリマーと、前記ガラス転移温度が20℃以上の領域に存在する熱可塑性ポリマーとの混合比が、質量基準で50:50〜5:95である、
蓄電デバイス用セパレータ。 - 下記(1)及び(2)の少なくとも一方の剥離強度が、4mN/mm以上である、請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
(1)アルミニウム箔(冨士加工紙(株)製アルミニウム箔、厚さ:20μm)に、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液に濡らした前記蓄電デバイス用セパレータを、前記熱可塑性ポリマーを含有する層の側から重ね合わせ、それらを重ね合わせた方向に80℃、10MPaの圧力で2分間加圧した後、前記アルミニウム箔と前記蓄電デバイス用セパレータとの間を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。
(2)アルミニウム箔(冨士加工紙(株)製アルミニウム箔、厚さ:20μm)に、前記蓄電デバイス用セパレータを、前記熱可塑性ポリマーを含有する層の側から重ね合わせ、それらを重ね合わせた方向に80℃、10MPaの圧力で2分間加圧した後、前記アルミニウム箔と前記蓄電デバイス用セパレータとの間を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。 - 下記(3)の剥離強度が40mN/mm以下である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
(3)重ね合わせた20mm×100mmの前記セパレータ2枚と、それらのセパレータを挟んだ2枚のPTFEシートとを備えるサンプルを、温度25℃、圧力10MPaの条件で2分間加圧した後、前記サンプルにおけるセパレータ同士を引張速度50mm/分で剥離した際の90°剥離強度。 - 前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、(メタ)アクリル酸の炭化水素エステルを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 前記第1の共重合体が有する、740cm-1〜770cm-1 の波数における赤外吸収ピーク強度に対する1720cm-1〜1750cm-1の波数における赤外吸収ピーク強度の比が、1〜18である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 前記第1の共重合体における単量体単位としての前記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体及びシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 前記熱可塑性ポリマーを含有する層の担持量は、固形分として0.05g/m2以上1.50g/m2以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータを備える蓄電デバイス。
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