JP6629854B2 - 時計の調速装置 - Google Patents

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Description

本発明は、時計の調速装置に関する。
機械式時計は、調速装置によって正確な歩度を得ている。調速装置は、ひげぜんまいとてん輪を備えている。
ひげぜんまいは、金属材料で形成されていたが、最近は、シリコン製のものも用いられるようになっている。シリコン製のひげぜんまいは半導体プロセスで形成することができるため、金属製のひげぜんまいに比べて精密な寸法精度を実現することができる。
一方で、シリコン製のひげぜんまいは、衝撃に対する耐久性が金属製のものに比べて劣る。そこで、シリコン製のひげぜんまいを母材とし、この母材の表面にダイヤモンドライクカーボン(Diamond-Like Carbon;DLC)等の強度を向上させるコーティングが施されたひげぜんまいが知られている。
しかし、このようなコーティングを施されたひげぜんまいは、コーティングを施されていないひげぜんまいに比べて、温度に対するばね定数の変化の割合が大きくなって歩度の精度が低下するという温度特性の問題がある。ひげぜんまいの温度特性が悪化すると、調速装置による正確な歩度を実現することができない。
一方、二酸化ケイ素(SiO)によるコーティングのように、シリコン製のひげぜんまいの強度を向上させるとともに、温度特性を改善したひげぜんまいもある(例えば、特許文献1,2参照)。
実用新案登録3154091号公報 特許4515913号公報
しかし、二酸化ケイ素によるコーティングで温度特性を改善する場合、その膜厚を例えば5[μm]以上に厚くしなければ実質的な効果が現れない。そして、そのような厚い膜厚を形成するためには、数十時間の処理時間を要する。また、二酸化ケイ素によるコーティングには、高価な酸化炉が必要である。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、コストを抑制しつつ、ひげぜんまいの強度を向上させるとともに、温度変化による歩度の精度の低下を防止又は抑制することができる時計の調速装置を提供することを目的とする。
本発明の時計の調速装置は、ひげぜんまいと、てん輪とを備え、前記ひげぜんまいは、渦巻状の母材と、前記母材の表面に設けられて強度を向上させるコーティング膜とを有し、前記ひげぜんまいは、温度変化に応じてばね定数が変化し、前記てん輪は、温度変化に応じて慣性モーメントが変化する。そして、前記ひげぜんまいのばね定数の変化と、前記てん輪の慣性モーメントの変化とによって、温度変化による振動周期の変化を抑制する。さらに、前記てん輪は、てん真を中心とした円環状の支持部材と、前記支持部材に支持されて前記支持部材の半径方向に延びると共に、少なくとも一方の端部が拘束されていない錘部材と、を備える。
本発明に係る時計の調速装置によれば、コストを抑制しつつ、ひげぜんまいの強度を向上させるとともに、温度変化による歩度の精度の低下を防止又は抑制することができる。
本発明の実施形態である携帯用時計(例えば腕時計)における調速装置を示す平面図である。 図1におけるてん輪を示す平面図である。 図2におけるI−I線に沿った断面を示す図であり、熱変形前の常温の状態を表す。 図2におけるI−I線に沿った断面を示す図であり、常温の状態から温度が上昇したときの状態を表す。 錘部材が、半径方向に延びた全長の、半径方向の内側の端部までの長さが半径方向の外側の端部までの長さよりも長くなる位置の部分で、リム部に支持されているてん輪を示す図2相当の平面図である。 繊維強化プラスチックによって、アーム部、リム部、錘部材を一体的に形成したてん輪を示す図2相当の平面図である。 熱膨張率の異なる二種類の金属板を径方向に接合したバイメタルを用いたリム部を有するてん輪を示す図2相当の平面図である。 てん真、アーム部、リム部からなるてん輪を示す図2相当の平面図である。 本発明の実施形態の調速装置と、第2実施形態の調速装置と、比較例1,2の調速装置による各温度特性(温度と歩度との対応関係)の実験結果を示すグラフである。 母材にDLCのコーティング膜又は合成樹脂のコーティング膜を設けたときのひげぜんまいのばね定数に与える影響を示すグラフである。 第3実施形態の調速装置及び比較例6,7,8の調速装置による各温度特性(温度と歩度との対応関係)の実験結果を示すグラフである。 母材にSiOのコーティング膜を設けたときのひげぜんまいのばね定数に与える影響を示すグラフである。
以下、本発明に係る調速装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
<調速装置の構成>
図1は本発明の実施形態である携帯用時計(例えば腕時計)における調速装置(てんぷ)10を示す平面図である。図2は図1におけるてん輪2を示す平面図である。
本実施形態の調速装置10は、図1に示すようにひげぜんまい1と、てん輪2と、を備えている。
ひげぜんまい1は、例えばシリコンで形成されている。ひげぜんまい1は、シリコンウェハから半導体プロセスにより形成されて、渦巻形状を呈している。また、ひげぜんまい1は、その表面に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)のコーティングが施されている。これにより、ひげぜんまい1は、シリコン製の母材と、この母材の表面に設けられたDLCによって形成されたコーティング膜と、を有している。DLCのコーティングの膜厚は、例えば1[μm]程度である。
ひげぜんまい1は、DLCのコーティングによって、コーティングが施されていないもの(渦巻状の母材)に比べて、強度が増大している。
ひげぜんまい1は、内側の端部がてん輪2のてん真3に接合され、外側の端部が、携帯用時計のムーブメントのてんぷ受けに固定されている。
てん輪2は、図2に示すように、てん真3と、支持部材となるアーム部5及びリム部4と、錘部材6とを備えている。アーム部5は、中心Cに、てん真3が嵌め合わされる貫通孔5aが形成されている。アーム部5は、中心Cから両端部5b,5cまでの長さが等しく形成されている。
てん真3は、アーム部5の貫通孔5aに嵌め合わされて、軸の上下が、携帯用時計のムーブメントの地板とてんぷ受けとに回転自在に支持される。
リム部4は、円環状に形成され、アーム部5の両端部5b,5cにそれぞれ結合している。アーム部5とリム部4とが結合した状態で、中心Cは、リム部4の中心に一致し、アーム部5は、中心Cからリム部4の半径方向に延びている。
なお、アーム部5とリム部4とは、一体に成形されたものであってもよいし、別部材であったものを接合してもよい。
アーム部5とリム部4とは、例えば、鉄にニッケルを加えた合金(インバー(登録商標)等)であり、常温付近での熱膨張率が極めて小さい。
錘部材6は、柱状の棒材であり、アーム部5及びリム部4よりも常温付近で熱膨張率の大きい例えば銅で形成されている。本実施形態においては、錘部材6の熱膨張率は、アーム部5及びリム部4の熱膨張率の6倍を超える大きさである。
また、本実施形態においては、錘部材6は、柱状の軸方向がリム部4の半径方向の内側に延びた状態で、柱状の軸方向の一方の端部6aがリム部4に接合されている。つまり、錘部材6は、リム部4の半径方向の外側に対応する端部6aがリム部4に支持されている。一方、錘部材6は、リム部4の半径方向の内側に対応する端部6bはどこにも接触せずに拘束されていない状態となっている。
錘部材6とリム部4との接合方法としては、ねじによる締結、接着剤による貼り付け、凹凸等の形状による嵌め合わせ、溶接やろう付けによる溶着などを適用することができる。
錘部材6は、6個備えられていて、これら6個の錘部材6は、中心C回りに、アーム部5の軸心から45[度]の角度間隔で配置されている。
これにより、錘部材6は、温度の変化に応じた熱膨張、熱収縮する場合、リム部4に支持された外側の端部6aを基準として、リム部4の半径方向の内側に、拘束されずに伸縮する。
<調速装置の作用>
次に、本実施形態の携帯用時計における調速装置10の作用について説明する。
図3A及び図3Bは、図2におけるI−I線に沿った断面を示す図であり、図3Aは熱膨張前の常温の状態を表し、図3Bは常温の状態から温度が上昇したときの状態を表す。
図3Aに示すように、てん輪2の熱膨張前は、各錘部材6単体の重心6gは、てん真3(図2参照)の中心Cから、半径方向の距離L1にある。
てん輪2やてん輪2の周辺温度が常温から温度が上昇すると、ひげぜんまい1はばね定数が低下する。
このひげぜんまい1のばね定数の低下は、調速装置10の振動周期を長くする方向に変化させる要素となる。
これに対して、てん輪2は、常温から温度が上昇すると、次のように変化する。すなわち、熱膨張率が極めて小さいアーム部5(図2参照)及びリム部4は温度の上昇によってもほとんど膨張しないが、アーム部5及びリム部4に対して熱膨張率が大きい錘部材6は膨張する。
このとき、錘部材6は、図3Bに示すように、それぞれ半径方向の外側の端部6aを基準として、中心Cに向かって伸長する。そして、各錘部材6単体の重心6gは、てん真3の中心Cから、半径方向の距離L2(<L1)の位置に移動する。
この結果、温度の上昇後のてん輪2の半径方向における重心は、温度上昇前に比べて、半径方向の内側方向(中心Cに近付く方向)に移動した分布となる。したがって、てん輪2の慣性モーメントは温度の上昇によって小さくなる。
てん輪2の慣性モーメントが小さくなることは、調速装置10の振動周期を短くする方向に変化させる要素となる。
つまり、てん輪2は、コーティング膜を含めたひげぜんまい1の温度変化に応じたばね定数の変化に基づく調速装置10の振動周期の変化を打ち消す(抑制する)方向に、温度の変化に応じて慣性モーメントが変化する。
なお、コーティング膜を含めたひげぜんまい1の、温度変化に応じたばね定数の変化は、実験等により予め把握可能であるため、その温度変化に対応するてん輪2の慣性モーメントの変化量を、ひげぜんまい1の温度変化に応じたばね定数の変化に基づく調速装置10の振動周期の変化を打ち消すものに設定することが可能である。この場合、錘部材6の長さ等を調整することにより、温度変化に対応するてん輪2の慣性モーメントの変化量を設定すればよい。
このように、本実施形態の調速装置10は、てん輪2の慣性モーメントが、コーティング膜を含めたひげぜんまい1のばね定数の変化に基づく振動周期の変化を打ち消す方向に変化するため、温度変化による振動周期のずれが抑制される。したがって、温度変化による携帯用時計の歩度の精度の低下を防止又は抑制することができる。
しかも、DLCによりひげぜんまい1の強度を向上させることができる。また、ひげぜんまい1に用いられるDLC等のコーティングに、温度補償(温度変化によるばね定数の変化に対する補償)を機能させる必要がない。よって、DLC等のコーティングは、ひげぜんまい1の強度を必要とされる強度まで高めるのに十分な厚さであれば足りる。したがって、必要以上の厚さの被膜を形成するためのコストをかける必要がない。
また、本実施形態の調速装置10は、各錘部材6は、支持部材であるリム部4に1か所のみで接合されているため、リム部4及び錘部材6は温度の変化による歪が発生しないか、歪みの作用が少ない。よって、てん輪2の耐久性が、温度変化による応力によって低下するのを防止又は抑制することができる。
本実施形態の調速装置10は、錘部材6が半径方向の外側の端部6aにおいてリム部4に支持されているため、錘部材6の重心6gが半径方向の内側方向に移動する長さを最大にすることができる。これにより調速装置10は、錘部材6による温度補償の範囲を最大限に広く確保することができる。
<変形例>
本実施形態の調速装置10は、母材の表面に強度を向上させるコーティング膜としてDLCを適用したひげぜんまい1を用いているが、コーティング膜としては、金属膜、高分子材料膜、アルミナ膜、二酸化チタン(TiO)膜、二酸化ケイ素(SiO)膜等を適用することもできる。
本実施形態の調速装置10は、ひげぜんまい1の母材がシリコン製であったが、他の素材で形成されたものであってもよい。ひげぜんまい1の母材としては、その他に、例えば、石英ガラスやセラミックス材料などを適用することもできる。
本実施形態の調速装置10は、アーム部5及びリム部4が鉄にニッケルを加えた合金であり、錘部材6が銅であるが、アーム部5及びリム部4と錘部材6との素材の組み合わせは、この実施形態のものに限定されない。すなわち、錘部材6は、アーム部5及びリム部4よりも熱膨張率の大きいものであればよく、銅の他にニッケルなどを適用することもできる。
また、アーム部5及びリム部4は、錘部材6よりも熱膨張率の小さいものであればよく、例えば、石英ガラスやシリコンなどを適用することもできる。
さらに、組み合わせるひげぜんまいの温度特性によっては、温度が上昇するほど収縮する負の温度特性を有する材質(例えば、タングステン酸ジルコニウム(ZrW)や、シリコン酸化物(LiO-Al-SiO)等)をてん輪2に用いてもよい。
本実施形態の調速装置10は、6個の錘部材6を備えているが、錘部材6は、2個以上であればよく、特定の個数に限定されるものではない。なお、錘部材6は、中心Cを挟んで対称となる位置や、等角度間隔で配置されることが、重量分布の均等化の観点から好ましい。
また、錘部材6の向き(軸線の向き:姿勢)はリム部4の半径方向に一致したものに限定されない。ただし、錘部材6の向きは、リム部4の接線方向以外であること、つまり接線方向に交差する方向であることが必要である。
本実施形態の調速装置10は、錘部材6が半径方向に一様な形状であるが、一様な形状に限らず、半径方向の内側に向かうにしたがって幅が広くなったり、厚さが厚くなったりして重量が大きくなる形状を採用することもできる。このように、半径方向の内側に向かうにしたがって重量が大きくなる形状の錘部材によれば、温度の上昇により、重心が半径方向の内側に移動する量を、一様な幅、厚さの錘部材6による重心6gの移動する量よりも大きくすることができる。
本実施形態の調速装置10は、錘部材6を支持する支持部材として、アーム部5とリム部4とが形成されているが、リム部4を備えずにアーム部5のみを備え、このアーム部5に錘部材6が支持されるものであってもよい。また、リム部4は、周方向に1周完全に繋がった円環状でなくてもよく、部分的に途切れた形状であってもよい。
図4は、錘部材6が、半径方向に延びた全長の、半径方向の内側の端部6bまでの長さL4が半径方向の外側の端部6aまでの長さL3よりも長くなる位置の部分6eで、リム部4に支持されているてん輪12を示す図2相当の平面図である。
本実施形態の調速装置10は、錘部材6の半径方向の外側の端部6aがリム部4に支持されたものであるが、錘部材6は、図4に示すように、半径方向に延びた全長(L3+L4)の、半径方向の内側の端部6bまでの長さL4が半径方向の外側の端部6aまでの長さL3よりも長くなる位置の部分6eで、リム部4に支持されていてもよい。
このように端部6a,6b以外の部分6eでリム部4に支持された錘部材6を有するてん輪12を備えた調速装置も本発明に係る時計の調速装置の一実施形態である。そして、このてん輪12は、温度の上昇により、リム部4に支持された部分6eよりも半径方向の外側の部分6cは、半径方向の外側に向けて伸長し、リム部4に支持された部分6eよりも半径方向の内側の部分6dは、半径方向の内側に向けて伸長する。
そして、半径方向の外側の部分6cの重心は半径方向の外側に向けて移動し、半径方向の内側の部分6dの重心は半径方向の内側に向けて移動する。これら各重心の移動量は、その各部分6c,6dの長さL3、L4に比例するため、半径方向の外側の部分6cの半径方向の外側への重心の移動量は、半径方向の内側の部分6dの半径方向の内側への重心の移動量よりも小さい。したがって、錘部材6の全体の重心は、半径方向の内側に移動する。
この結果、温度上昇により、てん輪12の重心の分布は半径方向の内側に移動し、てん輪12の慣性モーメントは小さくなり、てん輪2と同じ作用効果が発揮される。
すなわち、このように構成されたてん輪12とひげぜんまい1とを備えた調速装置は、温度変化による携帯用時計の歩度の精度の低下を防止又は抑制することができ、ひげぜんまい1の強度を向上させることができ、必要以上の厚さの被膜を形成するためのコストをかける必要がない。
本実施形態の調速装置10では、支持部材となるアーム部5及びリム部4が、常温付近での熱膨張率が極めて小さい材質で形成され、一方錘部材6が、アーム部5及びリム部4よりも常温付近で熱膨張率の大きい材質で形成されている。しかしながら、これに限らず、例えば、図5に示すてん輪2Aや、図6に示すてん輪2Bを備えた調速装置も本発明に係る時計の調速装置の一実施形態である。
すなわち、図5に示すてん輪2Aでは、アーム部5及びリム部4と一対の錘部材6とを、繊維強化プラスチックで一体的に形成すると共に、アーム部5の軸方向に対して一対の錘部材6の軸方向を直交させる。そして、繊維強化プラスチックが有する繊維Sの配向方向を、アーム部5の軸方向(アーム部5の延在方向)に対して平行に設定している。
ここで、「繊維強化プラスチック」とは、繊維に方向性を持たせたまま(長繊維の状態)で作製した織物に、主原料の合成樹脂を含浸させて形成されたプリプレグシートを積層し、合成樹脂の強度を高めたプラスチック複合材料である。繊維に方向性があるため、繊維の配向によって熱膨張率や強度に異方性が出る。つまり、この繊維強化プラスチックは、繊維の方向に沿った方向には熱膨張率が小さく、繊維の方向に直交する方向には熱膨張率が大きい。そのため、図5に示すてん輪2Aは、アーム部5の軸方向に平行な方向には熱膨張率が比較的小さくて変形しにくい。また、アーム部5の軸方向に直交する方向には熱膨張率が比較的大きくて変形しやすい。
これにより、図5に示すてん輪2Aでは、常温から温度が上昇したときに、アーム部5では熱膨張率が小さく、ほとんど膨張しない。また、リム部4は、中心Cを中心として半径方向に熱膨張するが、アーム部5が結合した部分及びその近傍部分では、半径方向と繊維Sの配向方向とのずれが小さくて熱膨張率が比較的小さく、また、アーム部5によっても膨張が拘束される。一方、錘部材6が一体化した部分及びその近傍部分では、半径方向と繊維Sの配向方向とのずれが大きくて熱膨張率が比較的大きい。そのため、リム部4は、温度が上昇すると、アーム部5の軸方向を短軸方向とし、錘部材6の軸方向を長軸方向とする楕円形状に熱膨張する。これに対し、錘部材6では熱膨張率が大きく、アーム部5の中心Cに向かって伸長する。
この結果、てん輪2Aの重心の分布は半径方向の内側に移動し、てん輪2Aの慣性モーメントは小さくなり、図2に示すてん輪2と同じ作用効果が発揮される。すなわち、このように構成されたてん輪2Aと、シリコン製の母材の表面にDLCのコーティング膜が設けられたひげぜんまい1とを備えた調速装置は、温度変化による携帯用時計の歩度の精度の低下を防止又は抑制することができる一方、ひげぜんまい1の強度を向上させることができ、必要以上の厚さの被膜を形成するためのコストをかける必要がない。
なお、このてん輪2Aにおいても、錘部材6の長さや、繊維強化プラスチックの熱膨張率等を調整することで、温度変化によるてん輪2Aの慣性モーメントの変化量を制御することができる。また、この図5に示すてん輪2Aでは、アーム部5及びリム部4と一対の錘部材6とが一体的に形成されている。そのため、組立性が良く、錘部材6がリム部4に対して傾いて取り付けられることがなくなり、安定した温度特性を得ることができる。
また、繊維強化プラスチックに用いる繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維等を用いることができる。また、繊維強化プラスチックの主原料である合成樹脂としては、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてもよいし、ポリアミド樹脂、メチルメタアクリレートなどの熱可塑性樹脂を用いてもよい。
さらに、図6に示すてん輪2Bでは、てん真3を径方向の外側から半周程度取り囲むように略円弧状に形成され、てん真3を中心にして両側に配置された2つのバイメタル部40から構成されたリム部4Bと、これら2つのバイメタル部40とてん真3とを径方向で連結するアーム部5Bとを備えている。
ここで、バイメタル部40は、熱膨張率が異なる第1金属板4αと第2金属板4βが径方向に重なり合うようにして接合されている。このバイメタル部40では、径方向内側に位置する第1金属板4αの材料としては鉄にニッケルを加えた合金(インバー(登録商標))等の低熱膨張材料を用い、径方向外側に位置する第2金属板4βの材料としては黄銅等の高熱膨張材料を用いる。
また、アーム部5Bは、てん真3を通るように径方向に延びる帯状のものであって、その長手方向中心がてん真3に嵌め合わされる。さらに、アーム部5Bは、バイメタル部40の第1金属板4αと同様にインバー(登録商標)等の低熱膨張材料により形成されている。
そして、アーム部5Bの両端に、それぞれバイメタル部40の一端が固定されている。これにより、各バイメタル部40の両端は、アーム部5Bに固定された固定端40aと、この固定端40aとは反対側端に位置する自由端40bとに設定される。また、2つのバイメタル部40は、てん真3を中心にして点対称に配置された状態になり、2つのバイメタル部40により、てん真3の全周を取り囲んだリム部4Bが形成される。さらに、自由端40bには、それぞれ錘部6Bが設けられている。
上記の構成により、温度上昇時、バイメタル部40は、2つの金属板(第1,第2金属板4α,4β)の熱膨張率の差異により自由端40b側が径方向の内側に向けて移動するように変形する。これにより、温度上昇に伴って錘部6Bが径方向内側に移動し、てん輪2Bの慣性モーメントを低下させることができる。この結果、図2に示すてん輪2と同じ作用効果が発揮される。
すなわち、このように構成されたてん輪2Bと、シリコン製の母材の表面にDLCのコーティング膜が設けられたひげぜんまい1とを備えた調速装置は、温度変化による携帯用時計の歩度の精度の低下を防止又は抑制することができる一方、ひげぜんまい1の強度を向上させることができ、必要以上の厚さの被膜を形成するためのコストをかける必要がない。
さらに、本実施形態の調速装置10では、てん輪2が支持部材となるアーム部5及びリム部4と、錘部材6とを有している。しかしながら、これに限らず、図7に示すように、てん真3と、アーム部5と、リム部4とからなり、錘部材を有していないてん輪2Cであってもよい。
ここで、図7に示すてん輪2Cを、温度が上昇するほど膨張する正の温度特性を有する黄銅等によって形成した場合では、温度が上昇すると膨張し、アーム部5が伸長しててん輪2Cが拡径する。そのため、温度上昇後のてん輪2Cの半径方向における重心は、温度上昇前に比べて、半径方向の外側方向(中心Cから離れる方向)に移動した分布となる。したがって、てん輪2Cの慣性モーメントは温度の上昇によって大きくなる。てん輪2Cの慣性モーメントが大きくなることは、調速装置10の振動周期を長くする方向に変化させる要素となる。
一方、例えばシリコン製の母材に、二酸化ケイ素によるコーティング膜を設けたひげぜんまいでは、コーティング膜を含めたひげぜんまいのばね定数が、温度が上昇しても低下せず、調速装置10の振動周期を短くする方向に変化させる要素となる。
そのため、黄銅によって図7Cに示すてん輪2Cを形成した場合であっても、コーティング膜を含めたばね定数が、温度が上昇するほど増加する正の温度係数を有するひげぜんまい(例えば、シリコン製の母材に二酸化ケイ素のコーティング膜)と組み合わせることで、てん輪2Cの慣性モーメントの変化に基づく振動周期の変化と、コーティング膜を含めたひげぜんまいのばね定数の変化に基づく振動周期の変化とが互いに打ち消しあい、温度変化による携帯用時計の歩度の精度の低下を防止又は抑制することができる。
また、図7に示すてん輪2Cを、温度が上昇するほど収縮する負の温度特性を有するタングステン酸ジルコニウム等によって形成した場合では、温度が上昇するとアーム部5が縮小しててん輪2Cが縮径する。そのため、てん輪2Cの重心の分布は半径方向の内側に移動し、てん輪2Cの慣性モーメントは小さくなり、図2に示すてん輪2と同じ作用効果が発揮される。すなわち、負の温度特性を有する材質によって形成されたてん輪2Cと、図1に示すひげぜんまい1とを備えた調速装置は、てん輪2Cの慣性モーメントの変化に基づく振動周期の変化と、コーティング膜を含めたひげぜんまいのばね定数の変化に基づく振動周期の変化とが互いに打ち消しあい、温度変化による携帯用時計の歩度の精度の低下を防止又は抑制することができる。
このように、本実施形態の調速装置10に採用するてん輪は、慣性モーメントを制御することができれば、どのような構成であっても構わない。コーティング膜を含めたひげぜんまいのばね定数の変化に基づく調速装置10の振動周期の変化を打ち消すことができるてん輪を適宜選択することができる。
[実験例1]
図8は、本実施形態の調速装置10と、本発明の他の実施形態(第2実施形態)である調速装置と、比較例1,2の調速装置による各温度特性(温度と歩度との対応関係)の実験結果を示すグラフである。
図8のグラフにおいて、実線は、本発明の実施形態の調速装置10による温度特性を示し、点線は、第2実施形態の調速装置による温度特性を示し、一点鎖線は、本発明が適用されない比較例1の温度特性を示し、二点鎖線は、本発明が適用されない比較例2の温度特性を示す。なお、これら実線、点線、一点鎖線及び二点鎖線は、温度8[度]、23[度]及び38[度]における各実験データのプロットを結んで得られた。
ここで、実施形態の調速装置10(実線)は、母材がシリコンで、厚さ1[μm]のDLCのコーティング膜が施されたひげぜんまいと、図2に示したてん輪とを備えた構成である。
第2実施形態の調速装置(点線)は、母材がシリコンで、厚さ1[μm]の合成樹脂製のコーティング膜が施されたひげぜんまいと、図2に示したてん輪とを備えた構成である。 なお、この第2実施形態の調速装置(点線)における「合成樹脂製のコーティング膜」とは、例えば、ポリパラキシリレン系ポリマーを含む合成樹脂によって形成されたコーティング膜である。
比較例1の調速装置(一点鎖線)は、コーティングが無いシリコンのひげぜんまい(シリコン製の母材)と、快削黄銅で形成されたてん輪とを備えた構成である。
比較例2の調速装置(二点鎖線)は、母材がシリコンで、厚さ1[μm]のDLCのコーティング膜が施されたひげぜんまいと、快削黄銅で形成されたてん輪とを備えた構成である。
図8に示した温度特性のグラフによると、シリコン製のひげぜんまいと、従来のてん輪(快削黄銅性)は、ともに温度増加に伴って振動周期を遅らせる温度特性を有するため、比較例1は温度特性が悪い。
ここで、比較例1のひげぜんまい(シリコン製の母材)にDLCのコーティングが施された比較例2では、DLCのコーティングがひげぜんまいの温度特性を悪化させる方向に作用し、比較例2の温度特性は比較例1の温度特性よりも悪化する。
一方、実施形態の調速装置10は、比較例2に対して、てん輪が異なるものであるが、上述した2つの比較例1,2に対して、DLCのコーティングでシリコンのひげぜんまいの剛性を向上させつつ、DLCのコーティングで悪化した温度特性を改善させ、温度に応じた歩度の変動を減少させることが実証された。
また、第2実施形態の調速装置であっても、上述した2つの比較例1,2に対して、合成樹脂のコーティングでシリコンのひげぜんまいの剛性を向上させつつ、温度特性を改善して、温度に応じた歩度の変動を減少させることが実証された。
また、図9は、シリコン製の母材に対してコーティング膜を設けたときのひげぜんまいのばね定数への影響を示すグラフである。図9のグラフにおいて、実線は比較例3の渦巻状の母材(コーティングのないシリコン製のひげぜんまい)のばね定数の温度特性を示し、一点鎖線はシリコン製の母材に厚さ1[μm]のDLCのコーティング膜を設けた比較例4のひげぜんまいのばね定数の温度特性を示し、点線はシリコン製の母材に厚さ1[μm]の合成樹脂のコーティング膜を設けた比較例5のひげぜんまいのばね定数の温度特性を示す。なお、比較例4のひげぜんまいは、本実施形態の調速装置10に適用したひげぜんまいである。また、比較例5のひげぜんまいは、第2実施形態の調速装置に適用したひげぜんまいである。そして、実線、一点鎖線、点線は、温度8[度]、23[度]及び38[度]における各実験データのプロットを結んで得られたものであり、23[度]のときのばね定数比を1としている。
ここで、図9に示すように、比較例3の渦巻状の母材(コーティングのないシリコン製のひげぜんまい)は、温度が上昇するほどばね定数が低下する特性(負の温度係数)を有している。一方、母材に対しDLCのコーティングが施された比較例4のひげぜんまいと、母材に対し合成樹脂のコーティングが施された比較例5のひげぜんまいにおいても、温度が上昇するほどばね定数が低下する特性(負の温度係数)を有している。
しかしながら、比較例3のひげぜんまいよりも、比較例4及び比較例5のひげぜんまいの方が、温度の上昇に対してばね定数がより大きく低下している。すなわち、DLCのコーティング膜を母材に設けたひげぜんまいのばね定数の温度係数は、母材のばね定数の温度係数よりも小さいことが実証された。また、合成樹脂のコーティング膜を母材に設けたひげぜんまいのばね定数の温度係数も、母材のばね定数の温度係数よりも小さいことが実証された。
そして、このように、コーティング膜を設けたことで、母材のばね定数の温度係数よりも、ばね定数の温度係数が小さくなるひげぜんまいは、温度上昇時の慣性モーメントの温度係数(負の温度係数)が比較的小さいてん輪(つまり、温度上昇時の慣性モーメントの増加抑制効果が比較的高いてん輪)に対して適用することで、温度に応じた歩度の変動を適切に抑制することができる。
なお、母材に設けたことで「母材のばね定数の温度係数よりも、ひげぜんまいのばね定数の温度係数を小さくする」コーティング膜は、DLCや合成樹脂に限らない。他のコーティング膜であっても、ひげぜんまいのばね定数の温度係数を図9の比較例4や比較例3に示す特性とするものであれば、適用することが可能である。
[実験例2]
図10は、本発明の他の実施形態(第3実施形態)である調速装置及び比較例6,7,8の調速装置による各温度特性(温度と歩度との対応関係)の実験結果を示すグラフである。
図10のグラフにおいて、実線は、本発明の第3実施形態の調速装置による温度特性を示し、一点鎖線は、本発明が適用されない比較例6の温度特性を示し、二点鎖線は、本発明が適用されない比較例7の温度特性を示し、点線は、本発明が適用されない比較例8の温度特性を示す。なお、これら実線、点線、一点鎖線及び二点鎖線は、温度8[度]、23[度]及び38[度]における各実験データのプロットを結んで得られた。
ここで、第3実施形態の調速装置(実線)は、母材がシリコンで、厚さ1[μm]の二酸化ケイ素(SiO)のコーティングが施されたひげぜんまいと、図2に示したてん輪とを備えた構成である。
比較例6の調速装置(一点鎖線)は、コーティングが無いシリコンのひげぜんまい(シリコン製の母材)と、快削黄銅で形成されたてん輪とを備えた構成である。この比較例6は、図7に示した比較例1と同じである。
比較例7の調速装置(二点鎖線)は、母材がシリコンで、厚さ5[μm]の二酸化ケイ素(SiO)のコーティングが施されたひげぜんまいと、快削黄銅で形成されたてん輪とを備えた構成である。
比較例8の調速装置(点線)は、コーティングが無いシリコンのひげぜんまい(シリコン製の母材)と、図2に示したてん輪とを備えた構成である。
図10に示した温度特性のグラフによると、シリコン製のひげぜんまいと、従来のてん輪(快削黄銅製)は、ともに振動周期を遅らせる温度特性を有しているため、比較例6は温度特性が悪い。
ここで、比較例6のひげぜんまいに、厚さ5[μm]の二酸化ケイ素のコーティングが施された比較例7では、二酸化ケイ素のコーティングが快削黄銅のてん輪の温度特性を打ち消す方向に作用するため、調速装置全体での温度特性は改善されている。
しかし、二酸化ケイ素のコーティングを厚さ5[μm]まで成長させるには数十時間の期間を要するため、高価な製造コストがかかるという問題がある。
比較例8は、比較例6のてん輪を、第3実施形態の調速装置におけるてん輪に代えた構成であり、比較例5に比べて、温度特性が大幅に改善している。
一方、第3実施形態の調速装置は、二酸化ケイ素のコーティングでシリコンのひげぜんまいの剛性を向上させつつ、シリコンのひげぜんまいの温度特性を改善し、さらにてん輪によっても調速装置の全体での温度特性を、比較例6,7,8よりも改善し、温度に応じた歩度の変動を略完全に抑えられることが実証された。
また、図11は、シリコン製の母材に対して二酸化ケイ素のコーティング膜を設けたときのひげぜんまいのばね定数への影響を示すグラフである。図11のグラフにおいて、実線は比較例9の渦巻状の母材(コーティングのないシリコン製のひげぜんまい)のばね定数の温度特性(上述の比較例3と同じもの)を示し、一点鎖線はシリコン製の母材に厚さ1[μm]の二酸化ケイ素のコーティング膜を設けた比較例10のひげぜんまいのばね定数の温度特性を示す。なお、比較例10のひげぜんまいは、第3実施形態の調速装置に適用したひげぜんまいである。そして、実線及び一点鎖線は、温度8[度]、23[度]及び38[度]における各実験データのプロットを結んで得られたものであり、23[度]のときのばね定数比を1としている。
ここで、図11に示すように、比較例9の渦巻状の母材(コーティングのないシリコン製のひげぜんまい)は、温度が上昇するほどばね定数が低下する特性(負の温度係数)を有している。一方、母材に対し厚さ1[μm]の二酸化ケイ素のコーティングが施された比較例10のひげぜんまいにおいても、温度が上昇するほどばね定数が低下する特性(負の温度係数)を有している。
しかしながら、比較例9のひげぜんまいよりも、比較例10のひげぜんまいの方が、温度の上昇に対してばね定数が低下していない。すなわち、二酸化ケイ素のコーティング膜を母材に設けたひげぜんまいのばね定数の温度係数は、母材のばね定数の温度係数よりも大きいことが実証された。
そして、このように、コーティング膜を設けたことで、母材のばね定数の温度係数よりも、ばね定数の温度係数が大きくなるひげぜんまいは、温度上昇時の慣性モーメントの温度係数(負の温度係数)が比較的大きいてん輪(つまり、温度上昇時の慣性モーメントの増加抑制効果が比較的低いてん輪)に対して適用することで、温度に応じた歩度の変動を適切に抑制することができる。
なお、母材に設けたことで「母材のばね定数の温度係数よりも、ひげぜんまいのばね定数の温度係数を大きくする」コーティング膜は、二酸化ケイ素に限らない。他のコーティング膜であっても、ひげぜんまいのばね定数の温度係数を図11の比較例9に示す特性とするものであれば、適用することが可能である。
関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月15日に日本国特許庁に出願された特願2015-120320に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。

Claims (8)

  1. ひげぜんまいと、てん輪とを備え、
    前記ひげぜんまいは、渦巻状の母材と、前記母材の表面に設けられて強度を向上させるコーティング膜とを有し、
    前記ひげぜんまいは、温度変化に応じてばね定数が変化し、
    前記てん輪は、温度変化に応じて慣性モーメントが変化し、
    前記ひげぜんまいのばね定数の変化と、前記てん輪の慣性モーメントの変化とによって、温度変化による振動周期の変化を抑制し、
    前記てん輪は、てん真と、前記てん真を中心とした円環状の支持部材と、前記支持部材に支持されて前記支持部材の半径方向に延びると共に、少なくとも一方の端部が拘束されていない錘部材と、を備える
    ことを特徴とする時計の調速装置。
  2. 前記ひげぜんまいのばね定数の温度係数は、前記母材のばね定数の温度係数よりも小さい
    ことを特徴とする請求項1に記載の時計の調速装置。
  3. 前記コーティング膜は、ダイヤモンドライクカーボン又は樹脂により形成されている
    ことを特徴とする請求項2に記載の時計の調速装置。
  4. 前記ひげぜんまいのばね定数の温度係数は、前記母材のばね定数の温度係数よりも大きい
    ことを特徴とする請求項1に記載の時計の調速装置。
  5. 前記コーティング膜は、二酸化ケイ素により形成されている
    ことを特徴とする請求項4に記載の時計の調速装置。
  6. 前記支持部材は、前記てん真から前記てん真を中心とした半径方向の外側に延びたアーム部と、前記アーム部の両端に結合した円環状のリム部と、を有し、
    前記錘部材は、前記支持部材に支持され、その支持された部分から前記半径方向の内側に延び、前記支持部材に比べて温度変化に応じた熱膨張率が大き
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の時計の調速装置。
  7. 前記錘部材は、前記半径方向に延びた全長の、前記支持部材の支持位置から前記半径方向の内側の端部までの長さが、前記支持部材の支持位置から前記半径方向の外側の端部までの長さよりも長くなる位置で、前記支持部材に支持されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の時計の調速装置。
  8. 前記錘部材は、前記半径方向に延びた全長の外側の端部が前記支持部材に支持されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の時計の調速装置。
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