以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1に示すように、車両1は、ステレオカメラ装置10を備える。以下において車両1の存在する空間を実空間と呼ぶ。実空間において、車両1の前方(図において紙面に直交する方向)をZ方向、車両1の車幅方向(図において左方向)をX方向、X方向およびZ方向に直交する方向である車両1の高さ方向(図において上方向)をY方向とする。ここで、本願における「車両」とは、乗用車、トラック、バス等、道路上を走行する車両を意味する。
図2に示すように、ステレオカメラ装置10は、ステレオカメラ11、光学部材12、距離算出部13等を含んで構成される。
ステレオカメラ11は、被写体を、視差を有する複数の方向から同時に撮像することにより、その奥行き方向の情報も記録できるようにしたカメラである。ステレオカメラ装置10には、2台分以上のカメラのレンズ機構を1台のカメラ筺体に収容したもの、および、2台以上のカメラを離間して配置したものを含む。本実施形態においては、ステレオカメラ11は、車両1の前方(Z方向)を向いて右側に位置するカメラである第1の撮像部11a、および左側に位置するカメラである第2の撮像部11bの2つの撮像部を並べたものとする。また、同じ被写体を異なる複数の視点から撮像した、複数の互いに視差のある画像を「ステレオ画像」と呼ぶ。
第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bは、例えば、CCDカメラやCMOSカメラであり、被写体を撮像して画像を出力する。図1に示すように、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bは、同じ高さ位置で、光軸が互いに平行になるように車両1の前方(Z方向)やや下向きに向けて配置される。また、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bは、車幅方向(X方向)に横並びに離間して配置される。第1の撮像部11aと第2の撮像部11bとの光学中心を結んだ距離を基線長と呼び、その方向を基線長方向と呼ぶ。図1に示す例では、基線長方向はX方向となる。また、図3に示すように、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bは車両1のフロントガラス2の内側に設置される。
以降の説明においては、第1の撮像部11aから出力される画像(第1の画像)、および第2の撮像部11bから出力される画像(第2の画像)をそれぞれ「基準画像」、および「参照画像」といい、これらの画像の画像空間においては、実空間のX方向を画像空間に投影した方向をx方向とし、画像空間においてx方向に垂直な方向をy方向とする。また、以降、適宜基準画像および参照画像のうちの任意の画像を単に「画像」という。
光学部材12は、例えば、平面鏡であり、車両1の内部の運転者3からの光線(運転者3により反射された光)を反射させて、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bそれぞれ鉛直方向下部に入射させる。図1に示すように、光学部材12は、第1の光学部材12a、第2の光学部材12b等を含んで構成される。光学部材12は、ステレオカメラ装置10に対して固定することができるが、フロントガラス2に固定することも可能である。
図3に示すように、第1の光学部材12aは、第1の撮像部11aの鉛直方向上部に、車両1の前方にある被写体からの光線が直接入射して(図3の実線の矢印を参照)結像するのを妨げないように配置される。また、第1の光学部材12aは、車両1の内部の被写体(例えば、運転者3)からの光線を反射させ、反射した光線が第1の撮像部11aの鉛直方向下部に入射して結像する(図3の破線の矢印を参照)ように配置される。
これにより、図4(a)に示すように、車両1の前方にある被写体は、基準画像において、第1の撮像部11aの鉛直方向上部に対応する第1の領域に撮像される。また、運転者3は、基準画像の、第1の撮像部11aの鉛直方向下部に対応する第2の領域に撮像される。
同様にして、図3に示すように、第2の光学部材12bは、第2の撮像部11bの鉛直方向上部に、車両1の前方にある被写体からの光線が直接入射して(図3の実線の矢印を参照)結像するのを妨げないように配置される。また、第2の光学部材12bは、運転者3からの光線を反射させ、反射した光線が第2の撮像部11bの鉛直方向下部に入射して(図3の破線の矢印を参照)結像するように配置される。
これにより、図4(b)に示すように、車両1の前方にある被写体は、参照画像において、第2の撮像部11bの鉛直方向上部に対応する第1の領域に撮像される。また、運転者3は、参照画像において、第2の撮像部11bの鉛直方向下部に対応する第2の領域に撮像される。
なお、図1に示すように、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bは、基線長の中心が、X軸方向における運転席の中心となるように配置されることが好ましいが、基線長の中心が、X軸方向における車幅の中心となるように配置されてもよい。
図2に示すように、距離算出部13は、取得部14、画像処理部15、画像メモリ16等を含んで構成される。距離算出部13は、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bと結合して一体の装置を構成してもよいし、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bと通信ネットワークを介して情報を送受信してもよい。
取得部14は、画像処理部15の入力インタフェースである。取得部14は、ステレオカメラ11の撮像信号の伝送方式に対応し、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bからそれぞれ基準画像および参照画像を取得する。さらに、取得部14は取得した画像を、画像処理部15に引き渡す。
画像処理部15は、種々の演算処理を実行する部分であり、ソフトウェアプログラムに従い処理を実行する汎用のCPU(Central Processing Unit)および/またはステレオ画像処理用に設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等を含んで構成することができる。
また、画像処理部15は、補正部17、視差算出部18、距離変換部19等を含んで構成することができる。
補正部17は、取得部14によって取得された画像を補正する。複数のカメラが基準からずれて設置されている場合、対象物までの距離を正確に測定することができない。そのため、補正部17は、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bのそれぞれから受信した画像を、補正用のパラメータを記憶するための書き換え可能なメモリに格納されている補正パラメータに従って補正する。この補正とは、ステレオカメラ装置10が工場から出荷されたときの第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11b間のずれを、画像の変換により電子的に補正するものである。これにより、補正部17は、参照画像および基準画像において実質的に平行等位と同じ状態を作る。書き換え可能なメモリとしては、フラッシュメモリ、磁気抵抗メモリ(MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory))、強誘電体メモリ(FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory))などの不揮発性メモリ等を用いることができる。
視差算出部18は、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bによってそれぞれ出力され、補正部17によって補正された基準画像および参照画像の第1の領域に基づいて、車両1の前方の外部にある被写体の視差を算出する。具体的には、視差算出部18は、第1の領域については、図4に例を示すように、ステレオカメラ11から車両1の外部の被写体までの距離と見込まれる範囲(例えば、1m〜無限遠)に対応する視差の範囲で基準画像の特徴点Paに対応する、参照画像の特徴点(対応点)Pbを探索する。すなわち、対応点Pbの探索範囲は、特徴点Paの座標に対応する参照画像上の座標にある点Pa’を基準として決定され、対応する参照画像上の点Pa’の画素から第1の画素数以上、第2の画素数以下、離れた点のなかから対応点Pbを探索する。
また、視差算出部18は、第2の領域については、ステレオカメラ11から運転者3までの距離と見込まれる範囲(例えば、30cm〜1m)に対応する視差の範囲で基準画像の特徴点Pcに対応する、参照画像の特徴点(対応点)Pdを探索する。すなわち、対応点Pdの探索範囲は、特徴点Pcの座標に対応する参照画像上の座標にある点Pc’を基準として決定され、対応する参照画像上の点Pc’から第3の画素数以上、第4の画素数以下、離れた点のなかから対応点Pdを探索する。
距離変換部19は、公知の方法により、視差算出部18によって算出した視差をステレオカメラ11から被写体までの距離に変換する。また、距離変換部19は、変換した距離を車両1に搭載された種々の車載ECU(Engine Control Unit)4に送信する。
画像メモリ16は、取得部14によって取得された画像を一時的に蓄積するメモリであり、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の高速の揮発性メモリを用いることができる。画像メモリ16は、画像処理部15が上述のように視差および距離を算出する間、画像を保持するとともに、算出された各画素の視差、および被写体までの距離を記憶する。
次に、図5のフローチャートを参照して、ステレオカメラ装置10が行う距離算出方法について説明する。
まず、取得部14が、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bからそれぞれ基準画像および参照画像を取得する(ステップS11)。
ステップS11で基準画像および参照画像が取得されると、補正部17が基準画像の第1の領域および参照画像の第1の領域をそれぞれ補正する(ステップS12)。同様にして、補正部17は、基準画像の第2の領域および参照画像の第2の領域をそれぞれ補正する(ステップS12)。
ステップS12で補正が行われると、視差算出部18は、補正部17によって補正された基準画像の第1の領域、および参照画像の第1の領域に基づいて、ブロックマッチング法を用いて視差を算出する(ステップS13)。
ここで、図6の概念図、および図7のフローチャートを参照して、視差算出部18による視差の算出処理について説明する。図6に示す概念図においては、1つのセルが1つの画素を表し、例えば、座標(1,1)の画素をR0、座標(2,1)の画素をR7という。同様にして、図6(b)は参照画像の一部を拡大して示した概念図であり、1つのセルが1つの画素を表し、例えば、座標(8,1)の画素をC0、座標(9,1)の画素をC7という。
図7に示すように、まず、視差算出部18は、補正部17で補正された基準画像の第1の領域について、図6に示すような、特徴点Paを構成する注目画素(図6(a)のR0)を抽出し(ステップS130)、該注目画素と該注目画素に隣接する画素(図6(a)のR1〜R8)とから構成される、3×3ピクセルの矩形のブロックを抽出する。(ステップS131)。
また、視差算出部18は、基準画像の第1の領域の注目画素R0の座標に対応する、参照画像上の座標にある画素(図6(b)のC0)と該画素に隣接する画素(図6(b)のC1〜C8)からなる3×3ピクセルの矩形のブロックを抽出する(ステップS131)。
ステップS131でブロックが抽出されると、視差算出部18は、参照画像から抽出したブロックと、基準画像から抽出したブロックとを用いて1次元マッチングを行う。
まず、視差算出部18は、シフト量mを第1のシフト量m1に設定する(ステップS132)。ここで、シフト量mは、基準画像の画素の座標に対して、参照画像のブロックをx方向にシフトさせたピクセル数を表す量である。第1のシフト量m1は、上述の「第1の画素数」に相当する値であり、第1の領域に撮像されている被写体の距離として想定される範囲に対応する視差の最小値である。
次に、シフト量mがm1の場合の評価値を算出して、現在の評価値の最小値とする(ステップS133)。評価値の計算には、評価関数としてSAD(Sum of Absolute Difference)を使用する。すなわち、基準画像のブロック内の各画素と、基準画像のブロック内の各画素にそれぞれ対応する参照画像の各画素について、輝度値の差の絶対値を算出し、これを、ブロックの全画素に渡って加算する。評価値が小さいほど、参照画像のブロックと基準画像とのマッチングが高いことを意味する。
基準画像のブロックの参照画像へのマッチングをさらに説明する。まず、基準画像から抽出されたブロックを3行3列の画素(R0〜R8)とする。本実施形態では、図1に示すように、車両1の前方を見て右側に位置する第1の撮像部11aが基準画像を出力し、被写体の方向を見て左側に位置する第2の撮像部11bが参照画像を出力するので、図4に示すように、基準画像上での被写体は、参照画像上においてはより右側に位置する。このため、視差算出部18は、図6に示すように、基準画像のブロックと同じ大きさの3×3ピクセルの領域を参照画像上で、基準画像のブロックと対応する位置から順次、右方向(正のx方向)にシフトさせて、ブロックを抽出し評価関数の計算を行う。すなわち、1次元マッチングを行うとは、参照画像上で、基準画像のブロックと等しい大きさのウィンドウWを基線長方向にシフトさせ、ウィンドウW内の参照画像の画素の輝度値と基準画像のブロックの画素の輝度値との間でマッチングを行うことを意味する。
図6は、シフト量mが7の場合を示している。このときの、ウィンドウW内の3行3列の画素をC0〜C8とするとき、評価値SADは、次の式(1)により得られる。
SAD=Σ|Ri−Ci| (1)
ここで、RiおよびCiは、それぞれ基準画像のブロックのi番目の画素の輝度値、および、参照画像のウィンドウW内のi番目の画素の輝度値を示し、Σはi=0〜8についての全ての総和をとることを意味する。
図7のフローチャートに戻り、以降の処理で視差算出部18は、1ピクセルずつシフト量mを順次増加させて、評価値の算出を繰り返し行う。
視差算出部18はシフト量mがm≦m2である場合(ステップS134)、シフト量mを1ピクセルだけ増加させる(ステップS135)。すなわち、参照画像のブロックを基準画像のブロックに対して、さらに1ピクセルだけシフトさせる。ここで、第2のシフト量m2は、上述の「第2の画素数」に相当する値であり、第1の領域に撮像されている被写体の距離として想定される範囲に対応する視差の最大値である。
そして、シフト後の参照画像のブロックと基準画像のブロックとの間で評価値を再び算出する(ステップS136)。算出された評価値が、その時点の評価値の最小値よりも小さい場合(ステップS137)、視差算出部18は評価値の最小値を、新たに算出された評価値に更新して記憶する。さらに、この評価値の最小値に対応するシフト量mを記憶する(ステップS138)。評価値が、その時点の評価値の最小値よりも大きい場合は、そのままステップS134に戻り、以下、m>m2となるまで、ステップS134〜S138の処理を繰り返す。
第1の領域に車両1の外部の被写体が撮像される場合、第1のシフト量m1は、1280(ピクセル)×960(ピクセル)の大きさの画像において、例えば、0〜10ピクセル程度に設定することができる。同様に、第2のシフト量m2は、例えば、80〜150ピクセル程度に設定することができる。
一方、ステップS134において、m>m2となった場合、視差算出部18は、評価値の最小値に対応するシフト量mを当該ブロックに含まれる注目画素の視差として決定する(ステップS139)。そして、視差算出部18は、ステップS130に戻って、基準画像の第1の領域の全ての画素について、視差dの算出を繰り返す。全ての画素について視差dを決定した場合(ステップS140)、視差算出処理を終了する。
同様にして、視差算出部18は、補正部17によって補正された基準画像の第2の領域、および参照画像の第2の領域に基づいて、ブロックマッチング法により視差を算出する(ステップS13)。視差算出部18が第2の領域に含まれる画素についての視差を算出する方法は、第1の領域に含まれる画素についての視差を算出する方法と概ね同様であるが、異なる点についてここで説明する。
上述のように、第1の領域の画素の視差を算出する処理において、視差算出部18は、基準画像の第1の領域の注目画素R0の座標に対応する参照画像上の座標から、正のx方向に第1の画素数以上、第2の画素数以下、離れた座標にある画素C0と該画素C0に隣接する画素C1〜C7からなる3×3ピクセルの矩形のブロックを抽出する。しかし、第2の領域の画素の視差を算出する方法においては、視差算出部18は、基準画像の第2の領域の特徴点Pcを構成する注目画素R0の座標に対応する参照画像上の座標から、正のx方向に第3の画素数以上、第4の画素数以下、離れた座標にある画素C0と該画素に隣接する画素C1〜C8からなる3×3ピクセルの矩形のブロックを順次抽出する。すなわち、第1の領域と第2の領域とでは、画像処理部15が、対応点を探索する視差の範囲を異ならせている。
具体的には、視差算出部18がステップS132で設定するシフト量mの最小値は第1のシフト量m1ではなく、第1のシフト量m1より大きい第3のシフト量m3(上述の「第3の画素数」に相当)に設定される。また、ステップS134で設定されるシフト量mの最大値は、第2のシフト量m2ではなく、第2のシフト量m2より大きい第4のシフト量m4(上述の「第4の画素数」に相当)に設定される。すなわち、ステレオカメラ11から近くにいる運転者3が撮像されている第2の領域では、車両1の前方にある遠くの被写体が撮像されている第1の領域よりシフト量mを大きくすることによって、評価値を算出する回数を少なくして視差を算出することができる。第2の領域に車両1の運転者3が撮像される場合、第3のシフト量m3は、1280(ピクセル)×960(ピクセル)の大きさの画像において、例えば、150〜250ピクセル程度に設定することができる。同様に、第4のシフト量m4は、例えば、300〜400ピクセル程度に設定することができる。
ステップS13で、視差算出部18によって第1の領域、第2の領域それぞれについての視差が算出されると、距離変換部19は、第1の領域の視差を、ステレオカメラ11から車両1の外部の被写体までの距離に変換する(ステップS14)。同様にして、距離変換部19は、第2の領域の視差を、ステレオカメラ11から運転者3までの距離に変換する(ステップS14)。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bは、直接光線が入射することによって撮像し、第1の領域に撮像された被写体と、光学部材12で反射又は屈折されることによって撮像し、第2の領域に撮像された被写体それぞれの、ステレオカメラ11からの距離を算出する。そのため、2台のステレオカメラ装置10を用いることなく、1台のステレオカメラ装置10を用いることによって、車両1の前方の被写体までの距離と運転者3までの距離を測定することができる。したがって、距離の測定に要するステレオカメラ装置10のコストを低減することができる。また、2台のステレオカメラ装置10を用いることなく、1台のステレオカメラ装置10を用いることによって、ステレオカメラ装置10の設置スペースを節約することができ、車両1内の限られた空間を有効に活用することができる。
また、このようにして、車両1の外部の被写体までの距離を測定するとともに、運転者3までの距離を測定することが可能になる。このため、運転者3の頭の位置に合わせて車両1が備える種々の装置を自動で調整することができる。例えば、車両1が備えるヘッドアップディスプレイ装置が運転者3の頭の位置に応じて、運転者3が視認しやすい位置に画像を表示するよう制御することができる。また、防眩制御装置が、直射日光を和らげるように運転者3の頭の位置に応じて、フロントガラス2の一部の透過率を下げることができる。また、ミラー位置制御装置が、運転者3まで距離に応じて、例えば、車両1のサイドミラーの向きを調整するような制御を行うことができる。
また、第1の実施形態によれば、第1の領域の被写体は車両1の外部にあるため、ステレオカメラ11からの距離は概ね1m〜無限遠である。したがって、画像処理部15は、第1の領域については、この距離の範囲に対応する視差の範囲で基準画像の特徴点Paに対応する、参照画像の対応点Pbを探索することで、効率的に視差を決定することができる。また、第2の領域の被写体は運転者3であるため、ステレオカメラ11からの距離は概ね30cm〜1mの範囲内である。したがって、画像処理部15は、第2の領域については、この距離の範囲に対応する視差の範囲で基準画像の特徴点Pcに対応する、参照画像の対応点Pdを探索することで、効率的に視差を決定することができる。
<第2の実施形態>
図8を用いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係るステレオカメラ装置20は、第1の実施形態のステレオカメラ装置10と同様に、ステレオカメラ11、光学部材12および距離算出部13を備えるが、ステレオカメラ11および光学部材12の配置および向きが異なっている。
図8に示すように、第2の実施形態のステレオカメラ11は、車両1の車室内であって運転者3の前方上部に、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bの撮像方向を、車両1の後方(負のZ方向)に向けて配置される。さらに、ステレオカメラ11と車両1の車室の天井との間には空間が設けられ、この空間を通過して光学部材12に反射された光線が第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bに入射するように、ステレオカメラ11は後方のやや上向きに向けて配置される。
第1の光学部材12aは、フロントガラス2を通過し、ステレオカメラ11と車両の1の車室の天井との間を通って入射する車両1の外部の被写体からの光線を反射させ、反射した光線が第1の撮像部11aの鉛直方向上部に入射して(図8の破線の矢印を参照)結像するように配置される。また、第1の光学部材12aは、第1の撮像部11aの鉛直方向下部に、運転者3からの光線が直接入射して(図8の実線の矢印を参照)結像するのを妨げないように配置される。
これにより、図9(a)に示すように、車両1の前方にある被写体は、基準画像において、第1の撮像部11aの鉛直方向上部に対応する第2の領域に撮像される。また、運転者3は、基準画像の、第1の撮像部11aの鉛直方向下部に対応する第1の領域に撮像される。同様に、参照画像において、車両1の前方にある被写体は、第1の撮像部11aの鉛直方向上部に対応する第2の領域に撮像される。また、運転者3は、参照画像における、第1の撮像部11aの鉛直方向下部に対応する第1の領域に撮像される。
距離算出部13は、第1の実施形態の距離算出部13と同様に、第1の領域と第2の領域とでは、対応点を探索する視差の範囲を異ならせている。しかし、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、第1の領域に運転者3が撮像され、第2の領域に車両1の外部の被写体が撮像される。ステレオカメラ11から、第2の領域に撮像される車両1の外部の被写体までの距離は、ステレオカメラ11から、第1の領域に撮像される運転者3までの距離より長い。すなわち、第2の領域の視差は、第1の領域の視差より小さい。そこで、第3の画素数は第1の画素数より小さい画素数とし、第4の画素数は第2の画素数より小さい画素数とする。具体的には、画像処理部15は、第1の領域及び第2の領域で、それぞれステレオカメラ11から運転者3までの距離と見込まれる30cm〜1m、ステレオカメラ11から外部の車体までの距離と見込まれる1m〜無限遠にそれぞれ対応する視差の範囲で基準画像の特徴点に対応する、参照画像の対応点を探索することで、効率的に視差を決定することができる。
第2の実施形態におけるその他の構成、作用は第1の実施形態と同様なので、同一または対応する構成要素には、同一参照符号を付して説明を省略する。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、車両1の外部の被写体と車両1の内部の運転者3とを、単一の装置で撮像することができる。また、距離算出部13によるブロックマッチングの探索範囲を異ならせるため、効率的に距離を算出することができる。したがって、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
<第3の実施形態>
続いて、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態のステレオカメラ装置30において、第1の実施形態のステレオカメラ装置10と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
第3の実施形態のステレオカメラ装置30は、第1の実施形態のステレオカメラ装置10と同様に、ステレオカメラ11、光学部材12、距離算出部13等を含んで構成されるが、ステレオカメラ11の配置、光学部材12の配置および向きが異なっている。
図10に示すように、第3の実施形態のステレオカメラ11は、運転者3の前方下側の例えば、ダッシュボード上に、撮像方向を車両1の前方(正のZ方向)に向けて配置される。
第1の光学部材12aは、車両1の外部の被写体からの光線が第1の撮像部11aの鉛直方向下部に直接入射して(図10の実線の矢印を参照)結像するのを妨げないように、第1の撮像部11aの前方鉛直方向上側に配置される。また、第1の光学部材12aは、運転者3からの光線を反射させ、反射した光線が第1の撮像部11aの鉛直方向上部に入射して(図10の破線の矢印を参照)結像するように配置される。
これにより、図11(a)に示すように、運転者3は、基準画像において、第1の撮像部11aの鉛直方向上部に対応する第2の領域に撮像される。また、車両1の前方にある被写体は、基準画像の、第1の撮像部11aの鉛直方向下部に対応する第1の領域に撮像される。
第3の実施形態におけるその他の構成、作用は第1の実施形態と同様なので、同一または対応する構成要素には、同一参照符号を付して説明を省略する。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、車両1の外部の被写体と車両1の内部の運転者3とを、単一の装置で撮像することができる。また、距離算出部13によるブロックマッチングの探索範囲を異ならせるため、効率的に距離を算出することができる。したがって、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
また、上記実施形態では、光学部材12は、被写体からの光線を反射させて第1の撮像部11aに入射させる第1の光学部材12aと被写体からの光線を反射させて第2の撮像部11bに入射させる第2の光学部材12bとの2つの光学部材12を備えたが、この限りではない。例えば、光学部材12は、被写体からの光線をその一部で反射させて第1の撮像部11aに入射させ、被写体からの光線を異なる部分で反射させて第2の撮像部11bに入射させる一体の反射鏡により構成されてもよい。
また、上記実施形態では、光学部材12は、反射鏡とし、反射鏡によって反射した被写体からの光線が第1の撮像部11a及び第2の撮像部11bに入射するように配置されるとしたが、この限りではない。例えば、光学部材12は、被写体からの光線を屈折させるもので、屈折した被写体からの光線が第1の撮像部11a及び第2の撮像部11bに入射するように配置されるとしてもよい。
また、上記実施形態では、ブロックは、注目画素(R0)と該注目画素に隣接する画素(R1〜R8)からなるとしたが、この限りではない。例えば、注目画素(R0)と、該注目画素(R0)に隣接する複数の画素(R1〜R8)と、さらにそれらの画素(R1〜R8)に隣接する画素とから構成される5×5ピクセルの矩形のブロックでも良い。同様にして、ブロックは9×9ピクセル等とすることもできる。ブロックの大きさが小さいと、視差算出に使用される情報量が少なく視差算出の精度の劣化が懸念される。一方、ブロックが大きくなると同一のブロック内に視差の異なる被写体物が混在する可能性が高くなる。ブロックの大きさとしては、3×3ピクセル以上10×10ピクセル未満が好ましい。
また、上記実施形態で視差算出部18は、視差算出処理において、参照画像のブロックのシフト量mを1ピクセルずつ順次増加させて、評価値の算出を繰り返し行ったが、この限りではない。例えば、視差算出部18は参照画像のブロックのシフト量mを2ピクセル以上ずつ順次増加させてもよい。
また、上記実施形態では、光学部材12は、平面鏡であるとしたが、例えば凹面鏡としてもよい。この場合、ステレオカメラ装置10が近くにいる運転者3を撮像するにあたって、運転者3からの光線に正の屈折力を与え、ピントをより適切に合わせることができる。
また、画像処理部15は、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bから出力された全ての画像について上述のように視差算出および距離算出を行ってもよいし、第1の撮像部11aおよび第2の撮像部11bから出力された複数の画像のうちのいくつかの画像について、例えば、所定のフレーム数おきに視差算出および距離算出を行ってもよい。一般に、車両1の走行中に、該車両1を運転している運転者3の、ステレオカメラ11からの距離は頻繁に変化しないと考えられる。そのため、例えば、画像処理部15は、運転者3を被写体として表す領域については、車両1の外部の被写体を表す領域についてより低い頻度で距離を算出してもよい。これによって、画像処理部15が距離を算出する負荷を低減することができる。