JP6624211B2 - 二液相を含むスラグの製造方法及び人工リン鉱石の製造方法 - Google Patents

二液相を含むスラグの製造方法及び人工リン鉱石の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、二液相を含むスラグの製造方法及び人工リン鉱石の製造方法に関し、特に製鋼スラグを再利用することにより、効果的に人工リン鉱石を得ようとするものである。
リンの利用
用途は、農業や食品、電子部品、医薬、自動車産業など多肢にわたる。しかしながら、リン製品の原料であるリン鉱石は、日本では全量輸入に依存している。
リン鉱石は埋蔵国が限られており、今後利用されるリン鉱石は重金属元素含有割合が増加して、品質の低下が進み、リン鉱石処理費の上昇ならびにあらゆるリン製品の価格上昇が見込まれる。このため、リンを含む製鋼スラグなどの産業副産物からリンを回収する取り組みが盛んに行われている。
製鋼スラグに含まれるリンを濃縮・分離する方法として、以下に述べるような提案がなされている。
特許文献1には、産業副産物から人工リン鉱石を製造する方法が提案されている。すなわち、炭材充填層を有する溶解炉内に、脱リンスラグなどの燐を含有する産業副産物であるリン原料、珪素原料および炭材とともに鉄原料を装入して溶融する。この方法によれば、脱リンスラグに含まれるリンが還元されて溶融鉄に濃化することから、このリン溶融鉄を回収し、これを人工リン鉱石として利用する。
上述したような鉄―スラグの二液分離により得られた人工リン鉱石は、C濃度が2質量%程度、P濃度が10質量%程度で、残部は鉄および不純物である。しかしながら、この組成は、リン鉱石の組成、P25>30質量%、酸化鉄(FeO換算)<4質量%と比較すると、P濃度が低いといった問題がある。また、特許文献1には、鉄含有量について詳細な記述はないが、残部88質量%は鉄および不純物であることから、リン鉱石の組成と比較すると鉄含有割合が高いことが推測される。
一般に、リン鉱石はリン酸原料として多用されるが、リン鉱石を硫酸で分解する際、鉄の存在下では、不純物であるリン酸鉄錯体が生成し、粘性が上がるため、製造プロセス上好ましくない。そのため、上記したようなリン溶融鉄である人工リン鉱石をリン鉱石代替として使用するには問題が残る。しかも、珪素原料や炭材などの鉄とリンの還元剤を使用する必要があり、コストが高いという問題もがある。
また、特許文献2では、溶銑脱リンによって溶銑中のリンをスラグ中に濃化させ、冷却条件を制御することで、Ca3(PO42(以下、C3Pと称する)相の含有割合の高いスラグと酸化鉄相を主成分とするスラグに固液分離し、冷却して凝固させ、これら二相を有するスラグの硬度差によって、C3P相の含有割合の高いスラグの回収方法を提案している。しかしながら、スラグの固液分離・冷却・破砕回収により得られたスラグ中の酸化鉄濃度は28質量%であり、リン鉱石と比較すると酸化鉄濃度が極めて高いという問題がある。さらに、この方法では、回収固相の周りに液相から凝固した固相が混入し、リン鉱石レベルまでの固液分離は困難であった。
上述したとおり、特許文献1及び特許文献2はいずれも、処理前の化合物中のリンを鉄又はスラグに濃化させる方法であるが、リン鉱石と比してP25の濃度が低く、酸化鉄濃度が高いことが課題である。
ところで、非特許文献1や非特許文献2より、溶銑脱リン反応向上を主目的とした基礎研究において、溶銑存在下でCaO-FeO-P25-MgOやCaO-FeO-P25-SiO2から構成される合成スラグを溶融すると二液相状態を呈する性質が知られている。この性質が確認されている組成領域を図1中にAで示す。この二液相状態は、P25含有割合が高く酸化鉄含有割合が低い相(高リン相)と、P25含有割合が低く酸化鉄含有割合が高い相(高鉄相)からなる。
しかしながら、従来の実脱リンスラグ(P25濃度(図1中B))は、図1中にAで示す組成領域と異なる組成を有しており、現実的に二液相分離状態を利用したリンの回収は困難であると考えられていた。さらに、MgOやSiO2、Al23を含んだ複雑な系である実スラグにおいても、非特許文献1および非特許文献2と類似した組成にしたとしても二液相を利用したリン資源回収方法は開発されていない。例えば、前述のように溶融してもMgOやAl23、酸化マンガンが存在すると必ずしも二液化するとは限らず、分離効果が不明である。
特開2014−24695号公報 特開2009−132544号公報
ISIJ int. 第44号 2004年 476−481頁 Arch. Eisenhuttenwes. 第19号 1948年 111-117頁
従来の製鋼スラグの固液分離によるリン濃縮・分離方法は、微細に分散した固相のリン濃縮相の周辺に高鉄相が付着し、回収できる高リン相のリン濃度が低く、酸化鉄濃度が高いという問題があった。
本発明は、対象とするスラグ成分を規定することで、製鋼スラグを効果的に少なくとも二液相を含む多相に分離させ、もって人工リン鉱石相当の高リン低鉄相を有利に回収することができる技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、少なくとも二液相を含む多相へと分離させることにより、加熱溶融後スラグの組成を、リン鉱石相当である値までP25濃度を増加させ、かつ酸化鉄濃度を減少させる方法について検討した。
その結果、溶融する製鋼スラグの特性、具体的には使用するリン濃縮スラグの成分組成を或る特定範囲に制御することにより、高P25濃度でかつ低酸化鉄濃度の液相の分離が効果的に達成されることの知見を得た。
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
1.リン濃縮スラグを用いて溶融状態でスラグを少なくとも二液相を含む多相に分離する方法であって、
該リン濃縮スラグとして、製鋼スラグを還元処理し高リン溶銑を得たのち、該高リン溶銑を石灰脱リンすることにより生成した、成分として少なくともCaO、P25、SiO2、酸化鉄および金属鉄を含み、P25、SiO2、酸化鉄および金属鉄がそれぞれ、P25>7質量%、SiO2<10質量%(但し、0質量%を含む)、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和>15質量%を満足する組成範囲のスラグを用い、
該リン濃縮スラグを、1550℃以上の加熱温度で加熱溶融し10分以上保持することにより、
溶融状態で、上層に、P25>25質量%、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和≦15質量%の高リン相と、下層に、P25<20質量%、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和>15質量%の高鉄相との2つの液相を形成することを特徴とする二液相を含むスラグの製造方法。
2.前記リン濃縮スラグとして、さらにMgOを酸化マンガンと共に、MgO<16質量%で、かつ15質量%<酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)と酸化マンガン(MnO+MnO2:MnO換算)の和<80質量%を満足する範囲で含有するスラグを用いることを特徴とする前記1に記載の二液相を含むスラグの製造方法。
3.前記1または2の方法で製造した二液相スラグについて、溶融状態で上層のみ回収し、その後冷却することを特徴とする人工リン鉱石の製造方法。
4.前記1または2の方法で製造した二液相スラグについて、上下層に相分離した状態のまま冷却し、凝固した二層スラグを機械的に破壊したのち、上層のみを回収することを特徴とする人工リン鉱石の製造方法。
本発明によれば、リン濃縮スラグの成分組成を或る特定範囲に制御することにより、上層が高P25濃度かつ低酸化鉄濃度で、下層が低P25濃度かつ高酸化鉄濃度の二液相を含むスラグを得ることができる。
また、本発明によれば、少なくとも二液相を含む多相に分離したリン濃縮スラグから、二液相の上層である高リン相のみを分離回収することによって、組成が天然のリン鉱石に匹敵する人工のリン鉱石を得ることができ、リン酸原料および肥料原料や化学原料向けのリン含有物質などの天然リン鉱石の代替材料として有効活用することができる。
さらに、リン濃縮スラグの二液相の下層は高鉄相であり、酸化鉄を主成分としていることから、この下層を分離回収することにより、鉄源としてリサイクル利用できるという効果もある。
1600℃におけるCaO−FeOn−P25の3元状態図である。なお、図中、黒塗りの□△はリン濃縮スラグを、白塗り□は本発明の実施例を、白塗り△は比較例を示す。 本発明に従う処理工程を示すフローチャートである。 本発明に従いリン濃縮スラグを加熱溶融して二液相に分離させた状態を示すスラグのるつぼ断面図写真である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
さて、本発明者らは、製鋼スラグから、P25含有割合の高いスラグと酸化鉄を主成分とするスラグとの二液相を含む多相に分離させる方法について検討した。
その結果、使用するスラグとしては、リン濃縮スラグで、その成分として少なくともCaO、P25、SiO2、酸化鉄および金属鉄を含み、P25、SiO2、酸化鉄および金属鉄がそれぞれ、P25>7質量%、SiO2<10質量%(但し、0質量%を含む)、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和>15質量%を満足する組成範囲のスラグが有効であることが判明した。
なお、SiO2を含む場合にCaO/SiO2で表されるスラグの塩基度は5以上とすることが有利であることが判明した。
また、上記のリン濃縮スラグとしては、MgOを酸化マンガンと共に、MgO<16質量%で、かつ15質量%<酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)と酸化マンガン(MnO+MnO2:MnO換算)の和<80質量%の範囲で含有するスラグがより好適であることが判明した。
まず、リン濃縮スラグの製造方法について説明する。
図2に、本発明に従いリン濃縮スラグを少なくとも二液相を含む多相に分離する工程及び人工リン鉱石の製造工程の1例をフローチャートで示す。
本発明では、出発原料として、溶銑予備脱リン処理時に発生する脱リンスラグや転炉での脱炭精錬において発生する転炉スラグなどのリンを含有する製鋼スラグを用いる。
ついで、製鋼スラグ中の鉄酸化物及びリン酸化物を、ロータリーキルンにて、炭素、珪素、アルミニウムのうちの1種以上を含有する還元剤を供給して還元処理し、リン濃度が0.5質量%以上のリン含有溶融銑を回収する。ここに、還元処理工程に使用する処理容器としては、ロータリーキルン以外に、アーク炉の他、溶銑を熱源及び種湯として保持した取鍋やトピードカーなどを用いることができる。
ついで、得られたリン含溶融銑に、酸素ガスとともにCaO系媒溶剤を吹き付け、リン含有熔銑中のリンを脱リン処理で生成するスラグ中にリン酸化物として移行させる脱リン処理を施して、CaO含有フラックス中にP25濃度として7質量%以上濃縮させ、得られたスラグをリン濃縮スラグとして回収する。なお、リン濃縮スラグ中のP25濃度だけでなく、SiO2濃度や酸化マンガン濃度を制御するため、脱リン処理を行ったのちに、脱珪処理や脱マンガン処理をしてもよい。
次に、二液相を含むスラグの製造方法について説明する。
上記のようにして得られたリン濃縮スラグを、スラグ鍋や電気炉等に移し、容器の周辺、上部もしくは下部等から加熱を加え、スラグ温度が1550℃以上になる温度まで再加熱して、二液相を含む多相に分離させる。
得られた二液相は、比重差により、上層は、P25>25質量%、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和≦15質量%の高リン相となる。なお、この高リン相は、質量比でCaO/P25が1.0〜1.4の範囲、またCaO+P25>70質量%の範囲とすることがより有利である。
他方、下層は、P25<20質量%、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和>15質量%の高鉄相になる。
ここに、再加熱の温度を限定する理由について説明すると次のとおりである。脱リン処理は一般に温度が低い方がよく、1300〜1450℃程度で実施されるが、この温度域ではスラグ中に液相がほとんど生成しないため、高リン溶銑を再脱リン処理しただけではリン濃縮スラグは二液相分離せず、高リンかつ低鉄相は得られない。リン濃縮スラグを1550℃以上に加熱することでスラグの液相率は70質量%以上となり二液相に分離させることができる。スラグの加熱コストおよび容器の溶損の点からは、加熱温度は1680℃以下であることが好ましい。
また、加熱時間は、リン濃縮スラグを十分に溶融させるために10分以上とする。この加熱保持時間の上限については特に制限はないが120分程度で十分である。
次に、本発明のリン濃縮スラグの組成の限定理由について説明する。
本発明では、図1中にAで示す組成範囲内で二液相分離が確認されている。しかしながら、リン濃縮スラグ中のP25濃度が7質量%以下では、二液相を含む多相に分離したスラグ(以下、単に二液相分離スラグという)として回収する際、リン濃度が満足いくほどの二液相分離スラグ量を得ることができない。
それ故、リン濃縮スラグ中のP25濃度は7質量%超とする。好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。
また、リン濃縮スラグ中には、SiO2が混入する。このSiO2濃度が10質量%以上になると、液相が二相に分離せず、高リン相が得られないか、高リン相中の酸化鉄濃度が高くなるため、SiO2濃度は10質量%未満とする。より望ましいSiO2濃度は5質量%以下である。0質量%であっても良い。
表1に示す組成成分の合成スラグ原料を、電気炉にて1600℃で1時間溶融したのち、室温まで冷却したスラグ試料の断面を光学顕微鏡、EPMAなどで観察し、二液相を含む多層への分離の有無について確認した。
得られた結果を表1に示す。
表1に示したとおり、SiO2濃度が0質量%および5質量%のスラグ試料では、上下層に高リン相と高鉄相が分離していることが確認された。一方、SiO2濃度が10質量%のスラグ試料では、均一な単一組織が確認されるにすぎなかった。
また、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和が15質量%以下の組成範囲のスラグは、高Fe相と高P相の二液相分離が確認されず、二液相スラグが得られない。そのため、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和は15質量%超とする。なお、この酸化鉄と金属鉄の和の上限については特に制限はないが、80質量%が実際的である。
次に、二液相に分離した上下各層のスラグ組成の限定理由について説明する。
上層において、P25濃度が25質量%以下では、分離回収したのちに、リン濃度が満足いくほどの人工リン鉱石とすることができない。それ故、上層におけるP25濃度は25質量%超とした。好ましくは30質量%以上である。なお、P25濃度の上限については特に制限されることはないが、45質量%が実際的である。
また、上層における酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和が15質量%を超えると、得られた人工リン鉱石をリン酸原料として利用する際に、リン酸鉄不純物を生成し、悪影響が大きくなるので、酸化鉄と金属鉄の和は15質量%以下とする。0質量%であっても良い。
なお、スラグ中の金属鉄は、前述した還元雰囲気下で1550℃以上に加熱することで、ほぼ全量が酸化されるが、一部金属鉄として残存している。
次に、下層において、P25濃度が20質量%以上では、上層でのP25回収効率が低下する点で好ましくない。それ故、下層におけるP25濃度は20質量%未満とした。好ましくは10質量%以下である。
また、下層における酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和が15質量%以下では、上層へのFe含有量が高くなる点で好ましくない。それ故、下層における酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和は15質量%超とした。好ましくは50質量%以上である。なお、この酸化鉄と金属鉄の和の上限については特に制限はないが、80質量%が実際的である。
さらに、本発明では、リン濃縮スラグ中にさらに、MgOを酸化マンガンと共に、MgO<16質量%で、かつ15質量%<酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)と酸化マンガン(MnO+MnO2:MnO換算)の和<80質量%を満足する範囲で含有させることができる。
ここで、MgO濃度が16質量%以上であると、高リン相の冷却後の主要相であるC3P相へのMgOの置換割合が増えるので好ましくない。一般に、リン鉱石は主にリン酸原料として多用されるが、リン鉱石を硫酸で分解した際、MgOの存在下では、不純物であるリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が多量に生成してしまう。従って、かようなMAPの発生を防ぐために、MgOは16質量%未満とすることが好ましい。より好ましくは10質量%以下である。
また、酸化鉄濃度及び酸化マンガン濃度の和が15質量%以下では、二液相分離が生じず、ほぼ均一な相となるので好ましくなく、一方80質量%以上になると高リン相の生成量が少なく、再加熱コストに対する回収物生成量が少なくなるため、好ましくない。なお、酸化鉄、金属鉄及び酸化マンガンの和は、25質量%以上55質量%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは40質量%以上55質量%以下の範囲である。
以上、本発明に従うリン濃縮スラグの好適組成について説明したが、当該スラグ中には、その他にもAl23が5質量%以下程度で含有されている。
次に、人工リン鉱石の製造方法について説明する。
前述のようにして得た二液相分離スラグ中における当該二液相の上層から人工リン鉱石を製造する。ここに、リン鉱石を製造する方法としては、液相状態で上層のみを除滓機等で掻き出して回収し、その後冷却する方法がある。また、容器内で二液相を含むスラグのまま凝固させたのち、上層の高リン相と下層の高鉄相を機械的に分離して上層のみを回収する方法もある。なお、上層回収時に下層が一部混入しても回収物全体の酸化鉄・金属鉄濃度が15質量%以下であればよい。
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本発明の実施に当たっては、脱リンスラグをロータリーキルンにて還元し、得られた高リン溶銑を再脱リンして製造した種々のリン濃縮スラグを使用した。
使用したリン濃縮スラグの組成を表2に示す。
表2に示したリン濃縮スラグ1を電気炉に装入して、1450℃から1650℃までの種々の温度で1時間加熱溶融し、室温まで冷却した。加熱溶融温度と上下層分離の有無及び得られたスラグ組成について調べた結果を表3に示す。
表3に示したとおり、1550℃以上の溶融温度では、上下層に高リン相と高鉄相が上下に分離していることが確認された。一方、1550℃未満の溶融温度では、固液相が見られ、上下層分離は確認されなかった。
また、リン濃縮スラグ1を電気炉に装入して、1560℃において5〜60分加熱溶融し、室温まで10℃/minで冷却した。なお、加熱溶融時間が5分の場合は上下層分離が確認されなかったので、冷却時間を10℃/minから3℃/minに遅くした実験を追加して実施した。加熱溶融時間と上下層分離の有無及び得られたスラグ組成について調べた結果を表4に示す。
表4に示したとおり、10分以上加熱溶融することで、上下層に高リン相と高鉄相が分離していることが確認された。一方、10分未満の加熱時間では、冷却速度が10℃/min及び3℃/minのいずれの場合でも上下層分離は確認されなかった。
次に、表2中のリン濃縮スラグ1〜3を電気炉に装入して、1560℃において1時間加熱溶融し、室温まで冷却した。リン濃縮スラグ1〜3(発明例1〜3)を二液相に分離させたときの上下各層のスラグ組成について調べた結果を表5に示す。
表5に示したとおり、成分として、少なくともCaO、P25、SiO2、酸化鉄および金属鉄を、P25>7質量%、SiO2<10質量%、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和>15質量%で含有するリン濃縮スラグ、さらにはMgOを酸化マンガンと共に、MgO<16質量%で、かつ15質量%<酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)と酸化マンガン(MnO+MnO2:MnO換算)の和<80質量%で含有するリン濃縮スラグは、加熱溶融後、光学顕微鏡観察及びEPMAより、上層にP25含有割合が高く酸化鉄含有割合が低い相(高リン相)と、下層にP25含有割合が低く酸化鉄含有割合が高い相(高鉄相)の二液相が確認された。
また、実施例1の光学顕微鏡断面観察図を図3に示す。
X線回折測定により、冷却された上層はC3P相を、冷却された下層は(FeMg2)O4を有することが確認された。
次に、リン濃縮スラグ4〜9(比較例1〜6)について同様の実験を行ったときの二液相分離状態および各スラグ組成について調べた結果を、表6に示す。
表6より明らかなように、10質量%≦SiO2のリン濃縮スラグ4〜6(比較例1〜3)、P25が7質量%以下のリン濃縮スラグ7(比較例4)及びFeOの和が15%以下のリン濃縮スラグ8、9(比較例5、6)はいずれも、溶融冷却処理後、光学顕微鏡観察及びEPMAから上下層分離状態は確認されず、単一組織のみが確認された。また、溶融前後で組成の変化はほぼ見られなかった。
(実施例2)
表7に示すリン濃縮スラグ10〜12を電気炉に装入して、1560℃において1時間加熱溶融し、室温まで冷却した。リン濃縮スラグ10〜12(発明例4〜6)を二液相に分離させたときの上下各層のスラグ組成について調べた結果を表8に示す。
表7に示したとおり、成分として、少なくともCaO、P25、SiO2、酸化鉄および金属鉄を、P25>7質量%、SiO2<10質量%、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和>15質量%を満足する範囲で含有するリン濃縮スラグは、加熱溶融後、表8に示したとおり、上層がP25含有割合が高く酸化鉄含有割合が低い相(高リン相)で、下層がP25含有割合が低く酸化鉄含有割合が高い相(高鉄相)の二液相となることが確認された。
以上のことから、成分として少なくとも、CaO、P25、SiO2、酸化鉄および金属鉄を、P25>7質量%、SiO2<10質量%(但し、0質量%を含む)、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和>15質量%の範囲で含有するリン濃縮スラグ、さらにはMgOを酸化マンガンと共に、MgO<16質量%で、かつ15質量%<酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)と酸化マンガン(MnO+MnO2:MnO換算)の和<80質量%の範囲で含有するリン濃縮スラグは、加熱溶融後、上層が質量比でCaO/P25が1.0〜1.4で、P25>25質量%、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和≦15質量%の高リン相と、下層が酸化鉄を主成分とする高鉄相とに比重分離する。そして、かかるリン濃縮スラグを加熱溶融し、冷却したのちには、上層にリン鉱石相当のC3P濃縮相が、下層に(FeMg2)O4相が得られる。
なお、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

Claims (4)

  1. リン濃縮スラグを用いて溶融状態でスラグを少なくとも二液相を含む多相に分離する方法であって、
    該リン濃縮スラグとして、製鋼スラグを還元処理し高リン溶銑を得たのち、該高リン溶銑を石灰脱リンすることにより生成した、成分として少なくともCaO、P25、SiO2、酸化鉄および金属鉄を含み、P25、SiO2、酸化鉄および金属鉄がそれぞれ、P25>7質量%、SiO2<10質量%(但し、0質量%を含む)、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和>15質量%を満足する組成範囲のスラグを用い、
    該リン濃縮スラグを、1550℃以上の加熱温度で加熱溶融し10分以上保持することにより、
    溶融状態で、上層に、P25>25質量%、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和≦15質量%の高リン相と、下層に、P25<20質量%、酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)の和>15質量%の高鉄相との2つの液相を形成することを特徴とする二液相を含むスラグの製造方法。
  2. 前記リン濃縮スラグとして、さらにMgOを酸化マンガンと共に、MgO<16質量%で、かつ15質量%<酸化鉄(FeO+Fe23:FeO換算)と金属鉄(M.Fe:FeO換算)と酸化マンガン(MnO+MnO2:MnO換算)の和<80質量%を満足する範囲で含有するスラグを用いることを特徴とする請求項1に記載の二液相を含むスラグの製造方法。
  3. 請求項1または2の方法で製造した二液相スラグについて、溶融状態で上層のみ回収し、その後冷却することを特徴とする人工リン鉱石の製造方法。
  4. 請求項1または2の方法で製造した二液相スラグについて、上下層に相分離した状態のまま冷却し、凝固した二層スラグを機械的に破壊したのち、上層のみを回収することを特徴とする人工リン鉱石の製造方法。
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