以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
本発明に係る錠剤印刷装置の印刷対象物である錠剤は、一例である錠剤Tbを例に挙げて説明するが、錠剤は、裸錠(素錠)、糖衣錠、フィルムコーティング錠(FC錠)、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠等の錠剤やタブレットを含むほか、硬カプセル、軟カプセル等のカプセル錠を含み得るもので、医薬用、食用、洗剤用、工業用等、その用途を問わない。
本発明の実施の一形態に係る錠剤印刷装置は、図1に示すように構成される。図1において、印字対象の錠剤を貯めるホッパー11から第1振動フィーダ12a及び第2振動フィーダ12bが続き、第2振動フィーダ12bから更に続いて第1受け渡しフィーダ13及び整列フィーダ14が配置されている。整列フィーダ14の後方には第1搬送機構17が配置されており、整列フィーダ14の後端部と第1搬送機構17の前端部に上からかぶさるように、第2受け渡しフィーダ16が配置されている。
第1振動フィーダ12a及び第2振動フィーダ12bのそれぞれは、例えば、樋状の搬送路に加振器が設けられた構造となっており、ホッパー11から順次供給される錠剤Tbが振動によって前記搬送路内を整列フィーダ14に向けて順次移動する。整列フィーダ14は、搬送路上に整列ガイドが配置された構造となっており、その整列ガイドによって錠剤Tbを、例えば、2列に分けて、各列の錠剤Tbを第2受け渡しフィーダ16に向けて順次搬送する。第1受け渡しフィーダ13及び第2受け渡しフィーダ16のそれぞれは、図示しない2つのプーリに、気体透過性を有する搬送ベルトが巻き掛けられ、その搬送ベルトの内側に図示しない吸気装置に結合した吸気チャンバが設けられた構造となっている。そして、第1受け渡しフィーダ13において搬送ベルトは、第1振動フィーダ12bからの錠剤Tbを吸気チャンバの吸気作用によって引き受けて搬送し、当該吸気チャンバの吸気作用が働かなくなる位置にて整列フィーダ14に引き渡す。また、第2受け渡しフィーダ16において搬送ベルトは、整列フィーダ14からの錠剤Tbを吸気チャンバの吸気作用によって引き受けて搬送し、当該吸気チャンバの吸気作用が働かなくなる位置にて第1搬送機構17に引き渡す。
第1搬送機構17は、駆動プーリ172と、テンションプーリ173と、2つの調整プーリ174a、174bとに搬送ベルト171が巻き掛けられた構造となっている。後述するように、搬送ベルト171には通孔176が設けられ、この通孔176に吸引空気を通して、錠剤Tbを当該搬送ベルト171に吸着させる。通孔176は、当該搬送ベルト171の移動方向に所定間隔をもって順次形成されている(図3参照)。駆動プーリ172は、モータMによって駆動され、モータMの駆動に伴う駆動プーリ172の回転によって環状の搬送ベルト171が回転移動する。また、モータMの駆動軸の回転に伴って動作する第1エンコーダ45が設けられている。環状の搬送ベルト171の内側に、図示しない吸気装置(例えば、真空ポンプ)に結合した、後述するような、吸気チャンバ175が設けられている。吸気チャンバ175の吸気作用により、搬送ベルト171の裏面側から空気が吸引され、それにより、前記通孔176を介して搬送ベルト171の表面に錠剤Tbが吸着保持される。
上述した吸気チャンバ175は、概ね箱状に形成されており、所定の部位に吸気装置に結合される排気口175aが形成されている。駆動プーリ172は、図示されてはいないが、搬送ベルト171の幅方向(図1紙面の手前から奥に向かう方向)に所定の間隔をもって平行に配列された2つのプーリにて構成されており、その2つのプーリの間に箱状の吸気チャンバ175が入り込んでいる。そして、吸気チャンバ175には、駆動プーリ172(2つのプーリ)の軸が回転自在に貫通する孔が、吸気チャンバ175の気密性を保持しつつ形成されている。そして、吸気チャンバ175において、上側部分の壁部(駆動プーリ172と調整プーリ174aとの間に張られる搬送ベルト171に対向した平面状の壁部)、下側部分の壁部(駆動プーリ172と調整プーリ174bとの間に張られる搬送ベルト171に対向した平面状の壁部)、駆動プーリ172側部分の壁部(駆動プーリ172を構成する2つのプーリの間に入り込んで駆動プーリ172に巻き掛けられた搬送ベルト171に対向し、駆動プーリ172を構成する2つのプーリの間に入り込んで設けられる円弧状に湾曲した壁部)のそれぞれには、図示しない複数の吸気孔が形成されている。また、吸気チャンバ175の前記円弧状に湾曲した壁部と逆側の端部は、2つの調整プーリ174a、174bに対向する壁部によって閉鎖されている。
前記排気口175aを介して結合される吸気装置(図示略)の吸気作用により吸気チャンバ175内の吸気が行われる。それにより、吸気チャンバ175の各壁部(調整プーリ174a、174bに対向する壁部は除く)に形成された吸気孔、更に、上述したように搬送ベルト171に形成された通孔176を通して空気が吸引されて、搬送ベルト171の表面に錠剤Tbが吸着される。
図2に示すように、2つの調整プーリ174a、174bは、上下方向に独立して移動可能である。調整プーリ174aの上下方向の位置を調整することにより、搬送ベルト171の上側部分と吸気チャンバ175の壁部との間の隙間Δaを調整することができる。また、調整プーリ174bの上下方向の位置を調整することにより、搬送ベルト171の下側部分と吸気チャンバ175の壁部との間の隙間Δbを調整することができる。また、テンションプーリ173は、水平方向に移動可能である。テンションプーリ173の水平方向の位置を調整することにより、搬送ベルト171のテンションを調整することができる。このように、搬送ベルト171の上側部分と吸気チャンバ175の壁部との間の隙間Δa、搬送ベルト171の下側部分と吸気チャンバ175の壁部との間の隙間Δb、及び搬送ベルト171のテンションのそれぞれの調整を、調整プーリ174a、174b、及びテンションプーリ173の位置調整によって、容易に行うことができる。
この錠剤印刷装置では、インク滴を噴出する複数のノズルを備えたノズルヘッドを有し、印字データに従って、圧電素子や熱素子等のエネルギー発生素子を駆動させることにより、各ノズルからインク滴を噴出して印字を行うインク噴出印刷機構(所謂、インクジェットプリンタ)が用いられている。搬送ベルト171の周囲には、前記インク噴出印刷機構のノズルヘッド(第1ノズルヘッドという)21、例えば、反射型の光学センサにて構成される第1錠剤センサ23、第1姿勢確認カメラ24、第1印字確認カメラ25、第1乾燥ユニット27及び2つの回収トレイ28a、28bが設けられている。吸気チャンバ175内には、2つのエアー噴射ノズル26a、26bが、搬送ベルト171を挟んで回収トレイ28a、28bに対向するように設けられている。
前述したように、整列フィーダ14によって2列に配列された錠剤Tbが第2受け渡しフィーダ16を介して第1搬送機構17の搬送ベルト171に供給される。この場合、搬送ベルト171上の2列の錠剤Tbのそれぞれについて印字を行うために、実際には、上述した第1ノズルヘッド21、第1錠剤センサ23、第1姿勢確認カメラ24、第1印字確認カメラ25、2つのエアー噴射ノズル26a、26b、第1乾燥ユニット27及び2つの回収トレイ28a、28bは、当該2列の錠剤Tbに対応するように、2セット設けられている。この2セットは同じ動作を行うので、以下、1セットについて説明する。
第1ノズルヘッド21(複数のノズル)は、印字位置Ppにおいて、搬送ベルト171の表面に対向して配置されている。第1錠剤センサ23は、印字位置Ppの搬送ベルト171の移動方向D(錠剤Tbの搬送方向D)における上流側の所定位置に設定された錠剤検出位置Pdで、搬送ベルト171上の錠剤Tbの有無に基づいた検出信号を出力する。第1姿勢確認カメラ24の撮影領域は、搬送ベルト171の上記印刷位置Ppと錠剤検出位置Pdとの間の所定範囲を含む。第1印字確認カメラ25の撮影領域は、搬送ベルト171の移動方向D(錠剤Tbの搬送方向D)における印字位置Ppの下流側の所定範囲に設定されている。2つのエアー噴射ノズル26a、26bと2つの回収トレイ28a、28bとは、吸気チャンバ175の下側、すなわち、駆動プーリ172と調整プーリ174bとの間に張られた搬送ベルト171を挟むように配置されている。また、回収トレイ28a、28bの上流側の所定位置には、搬送ベルト171に対向して第1乾燥ユニット27が配置されている。
第2搬送機構18は、上述した第1搬送機構17の構造と略同様の構造である。具体的には、第2搬送機構18は、第2エンコーダ46が装着されたモータMで駆動される駆動プーリ182と、テンションプーリ183と、2つの調整プーリ184a、184bとに搬送ベルト181が巻き掛けられた構造であって、搬送ベルト181の内側に図示しない吸気装置に排気口185aを介して結合された吸気チャンバ185が設けられている。また、搬送ベルト181には、搬送ベルト171と同様に、搬送ベルト181の移動方向に所定間隔をもって通孔が形成されている。そして、吸気装置(図示略)の動作に基づいた吸気チャンバ185の吸気作用による前記通孔を通した空気の吸引により、錠剤Tbが搬送ベルト181に吸着保持されるようになっている。搬送ベルト181の周囲に、前記インク噴出印刷機構の第2ノズルヘッド31(印字位置Pp)、第2錠剤センサ33(錠剤検出位置Pd)、第2姿勢確認カメラ34、第2印字確認カメラ35、第2乾燥ユニット37及び2つの回収トレイ38a、38bが設けられている。また、吸引チャンバ185内には、2つのエアー噴射ノズル36a、36bが、搬送ベルト181を挟んで2つの回収トレイ38a、38bに対向するように配置されている。特に、第2搬送機構18では、搬送ベルト181の移動方向D(錠剤Tbの搬送方向D)における最下流の部分に対向して収納トレイ40が配置されている。
上述した構造の錠剤印刷装置では、印字制御部100の制御のもと、次のようにして順次錠剤Tbの表面に文字やマークが印字される。
前述したようにホッパー11から順次供給されて第1振動フィーダ12a及び第2振動フィーダ12bを移動していく錠剤Tbは、第1受け渡しフィーダ13により整列フィーダ14に引き渡される。そして、整列フィーダ14により、例えば、2列に配列された錠剤Tbが第2受け渡しフィーダ16によって第1搬送機構17に順次引き渡されていく。第2受け渡しフィーダ16により順次第1搬送機構17に引き渡された錠剤Tbは、2列になって搬送ベルト171に吸着保持された状態で順次搬送されていく。
第1搬送機構17において、各列の錠剤Tbが搬送されていく過程で、第1錠剤センサ23からの検出信号に基づいて錠剤Tb(錠剤検出位置Pdに位置する)が検出されると、以後、第1エンコーダ45の値に基づいて錠剤検出位置Pdを基点としたその検出された錠剤Tbの位置が印字制御部100によって認識される。そして、錠剤Tbが第1姿勢確認カメラ24の撮影領域に進入すると、第1姿勢確認カメラ24で所定の撮影範囲の撮影がなされ、この撮影画像に基づいて、錠剤Tbの汚れ、カケ等の損傷の有無が判定され、更に、損傷が無いと判定された錠剤Tbの搬送ベルト171上での姿勢(錠剤Tbの表裏や、ベルト上での位置、ベルト上での保持されている向きや鉛直方向の傾きなどの姿勢を含む)が判定される。その後、損傷が無いと判定された錠剤Tbが印字位置Ppを通過する際に、前記検出された当該錠剤Tbの損傷及び姿勢の情報(判定結果)に基づいて生成された印字データに従って第1ノズルヘッド21の複数のノズルからのインク滴の噴出パターンが制御され、当該錠剤Tbの表面の所定の位置に所定の向きにて文字やマーク等が印字される。この時、損傷があると判定された錠剤Tbについては印字がなされない。つまり印字しないという印字データが生成されることになる。そして、以後、印字制御部100は、その印字がなされなかった錠剤Tbの位置(第1エンコーダ45の値に基づく)を追跡する。
更に、印字(印字位置Pp)を経た錠剤Tbが第1印字確認カメラ25の撮影領域に進入すると、第1印字確認カメラ25で所定の撮影範囲の撮影がなされ、この撮影画像に基づいて錠剤Tbに正常に文字やマークが印字されたか否かが判定される。そして、印字制御部100は、以後、正常に印字がなされなかったと判定された錠剤Tbの位置(第1エンコーダ45の値に基づく)を追跡する。
印字が完了して第1印字確認カメラ25の撮影領域を通過した錠剤Tbは、搬送ベルト171の移動に伴って搬送され、第1乾燥ユニット27に対向して搬送される際に、表面に印字された文字やマークのインクが乾燥(定着)させられる。カケ等の損傷により印字がなされずに、印字制御部100により位置が追跡されている錠剤Tbは、一方のエアー噴射ノズル26aに対向する位置に到達すると、そのエアー噴射ノズル26aから噴射されるエアーによって搬送ベルト171から飛ばされて、回収トレイ28aに回収される。また、カケ等の損傷はないが、印字が正常になされずに、印字制御部100により位置が追跡されている錠剤Tbは、他方のエアー噴射ノズル26bに対向する位置に達すると、そのエアー噴射ノズル26bから噴射されるエアーによって搬送ベルト171から飛ばされて、他方の回収トレイ28bに回収される。
表面に文字やマークが正常に印字された錠剤Tbは、搬送ベルト171の移動に伴って搬送され、吸引チャンバ175の吸気作用が働かなくなった位置にて搬送ベルト171から第2搬送機構18の搬送ベルト181上に落ちる。このようにして、表面に正常に印字のなされた錠剤Tbが第1搬送機構17から第2搬送機構18に受け渡される。すなわち、印字された面が搬送ベルト181側になるように裏返された状態で受け渡される。
第2搬送機構18においても、第1搬送機構17の場合と同様に、印字制御部100での制御のもと、搬送ベルト181の移動に伴って順次搬送される錠剤Tbの、第2錠剤センサ33(錠剤検出位置Pd)の検出信号の出力タイミングを基点とした第2エンコーダ46の値に基づく位置追跡、各錠剤Tbの裏面(第1搬送機構17で印字された面の反対側の面)に対する第2ノズルヘッド31(印字位置Ppに位置する)による文字やマーク等の印字、第2乾燥ユニット37による錠剤に印字された文字やマークのインクの乾燥、エアー噴射ノズル36aによる損傷のある錠剤Tbの回収トレイ38aへの回収、及びエアー噴射ノズル36bによる印字不良の錠剤Tbの回収トレイ38bへの回収がなされる。そして、正常に印字された錠剤Tbは、吸引チャンバ185の吸気作用が働かなくなった位置にて、収納トレイ40内に落ち収容される。
上述した錠剤印刷装置では、例えば、第1搬送機構17の搬送ベルト171の上方に配置される第2受け渡しフィーダ16から、第1搬送機構17の搬送ベルト171の表面に錠剤Tbが順次落とされる。移動する搬送ベルト171の表面上に落ちた各錠剤Tbは、揺れ動きながら、搬送ベルト171の移動によって検出位置Pdに向かって搬送されていく。この錠剤Tbの揺れ動きを抑えるために、搬送ベルト171の表面に微小な突起が形成されている。
具体的には、図3に示すように、搬送ベルト171には、当該搬送ベルト171の移動方向に所定間隔をもって、前述したように吸気チャンバ175の吸気作用によって空気を吸引して錠剤Tbを吸着させる通孔176が2列形成されている。そして、搬送ベルト171の通孔176の各列を中央に含む所定幅の領域(斜線部分)が、錠剤Tbが載り得る領域(以下、揺れ防止領域という)Epであるとして、その各揺れ防止領域Epに所定密度で微小な突起が形成されている。例えば、図4に示すように、微小な突起170は、錠剤Tbが覆う面積ETbに対して3個以上の密度にて形成されている。例えば、直径(最大径)10mm程度の錠剤Tbであれば、1mmの大きさ(最大径)の突起170が2mmの間隔で各揺れ防止領域Epに平面的に配列される。また、各突起170の高さは、錠剤Tbの厚さ(最大厚さ)の1/20以上、1/5以下の範囲で設定され、好ましくは、錠剤Tbの厚さ(最大厚さ)の1/10に設定される。
後述のように、突起170が錠剤Tbの揺れ動きを抑制するための接触、支点となるには、錠剤Tb表面の形状にもよるが、搬送ベルト171の表面粗さレベル(数十μm程度)ではなく、それ以上の少なくとも100μm以上の高さが必要になる。また、錠剤Tbが突起170だけでなく、突起170のない搬送ベルト171表面に接触しているような場合や高さの違う突起170で支持されて、搬送ベルト171に対して傾斜されているとしても、錠剤Tbの厚さの1/5以下であれば、その傾斜によって印刷不良とはならない。なお、錠剤Tbの直径(最大径)は概ね5〜12mm、厚さ(最大厚さ)は2〜8mmである。
突起170は、搬送ベルト171の素材(例えば、ウレタン)より柔軟性の大きい素材、例えば、シリコンゴムにて形成されることが好ましい。例えば、搬送ベルト171の素材が硬度(ゴム硬度、ショアA)Hs90程度で、突起170はシリコンで硬度Hs50程度が選ばれる。なお、素材の組合せは様々なものが適用できるが、搬送ベルト171の硬さはHs60〜120、突起170はHs20〜80の範囲で選択されるとよい。ただし、突起の硬度は、搬送ベルトより低いものが適用される。また、上述のように異なる素材を接合して突起を形成する場合、それぞれの素材の接合性(接着性)が良いものを選択することができる。なお、柔軟性は、例えば、弾性率、変形率等で表すことができ、柔
軟性が大きいとは、弾性率が小さい、変形率が大きいことを含む。また、例えばラシの毛のような細長い形状のように、その形状にて柔軟性を大きくすることもできる。
上記のように突起170の形成された搬送ベルト171(揺れ防止領域Ep)では、例えば、図5A及び図5Bに示すように、錠剤Tbが複数の突起170に接触し、支持された状態になる。
図5Aは、錠剤Tbが搬送ベルト171上に載置されている状態を錠剤Tb側面から見た(搬送方向Dと平行な方向から見た)模式図で、紙面に対して奥から手前方向に搬送される状態を示している。つまり図左右方向が搬送ベルト171の幅方向となる。図5Bは、紙面左から右に錠剤Tbが搬送される側面の(搬送方向Dに直交する方向から見た)図である。つまり図左右方向が搬送方向Dとなる。図5A及び図5Bに示す例では、三点の突起170で接触し、支持されている。なお、以降の突起と錠剤との接触を示す図は、錠剤Tbが搬送ベルト171上に載置されている状態を錠剤Tbの側面から見た図であって、その状態をわかりやすく模式したものであって、必ずしもすべての突起を図示していない。また、特に示さない限り紙面に対して奥から手前方向に搬送される状態を示している。
このように複数の突起170に接触した錠剤Tbは、図6に示すように、複数の突起170に接触した状態で揺れ動くことになる。このため、図7に示すように、特に錠剤Tbの表面が球面や円筒曲面等となる場合、突起170の無い搬送ベルト171の表面では錠剤Tbが自由に揺れ動くことにより、その揺れ動きが抑えられ難いのに対して、錠剤Tbの表面に分散的に当たる突起170によって、錠剤Tbは多点で支持されるようになるので、その揺れ動きが妨げられ易い。つまり、ある間隔の複数の点での支持となり、自由な振動が制限されることで錠剤Tbの振動が減衰し易くなる。また、更に、各突起170が、搬送ベルト171の素材より柔軟性の高いシリコンゴム等の素材で形成され、あるいは、柔軟性の高い形状にて形成されているので、ダンパーとしての役割を果たすことにより、揺れ動きをより吸収することができ、前記複数の突起170に接触することによる揺れ動きの抑え効果と相まって、更に、錠剤Tbの揺れ動きを効果的に減衰させ抑えることができる。なお、搬送ベルト171上に供給された時の振動は、錠剤Tbの表面が球面や円筒曲面でなく平面であっても発生する。錠剤表面が平面であっても同様の効果を得ることができるのは明らかである。
従って、搬送ベルト171の上方に位置する第2受け渡しフィーダ16から当該搬送ベルト171に順次供給される錠剤Tbの揺れ動きを早く抑えることができる。その結果、搬送ベルト171によって搬送される各錠剤Tbは、揺れ動くことなく位置検出位置Pd及び印字位置Ppを通過することができ、各錠剤Tbの位置や姿勢を精度良く検出することが、精度のよい印字が可能となる。
なお、上述した例では、搬送ベルト171の揺れ防止領域Epに形成される各突起170は、高さが同じものであったが、図8に示すように、全ての突起170の高さが同じでなくてもよい。また、図9に示すように、揺れ防止領域Epに錠剤Tbが覆う面積ETbに1個の密度で突起170を形成するようにしてもよい。これらの場合であっても、前述した例(図6参照)と同様に、揺れ動く錠剤Tbが突起170に接触することで、その揺れ動きを減衰させることができる。錠剤Tbの接触が、搬送ベルト171表面の他に少なくとも1点あれば、その接触点2点の結ぶ方向の揺動が抑制される。このことにより揺れ動きのエネルギーは減衰し、接触点間方向以外の揺れ動きも抑制される。ただし、上述した例のように、突起170を錠剤Tbが覆う面積ETbに3個以上の密度で形成した場合は、同1個の密度の場合より、各錠剤Tbの揺れ動きをより早く減衰させることができる。
特に、図10に示すように、突起170との接触点が錠剤Tbの支持点とはならず、錠剤Tbが搬送ベルト171の突起170の無い表面で揺れ動くような場合でも、突起170のある側への揺れ動きが制限されて、その突起170のある側への揺れ角Δθ2が、突起170が無い側への揺れ角Δθ1より小さくなる。これにより、錠剤Tbの揺れ動きのバランスが乱されて、錠剤Tbの揺れ動きのエネルギーが減衰し、その揺れ動きが抑制される。
このような作用は、カプセル錠のように表面が円筒状の曲面であっても同様である。
また、更に、突起170は、図4に示すように、整然と配列されていなくてもよい。例えば、図11に示すように、突起170が、所定密度で、ランダムに配列されていてもよい。また、各突起170の形状は同じものでなく、例えば、図12に示すように、種々の形状の突起170(1)、170(2)、170(3)、170(5)、170(6)が揺れ防止領域Epに形成されるものであってもよい。これらの場合であっても、前述した例(図6参照)と同様に、揺れ動く錠剤Tbが突起170に接触することで、その揺れ動きを減衰させることができる。
更に、前述した例では、搬送ベルト171の錠剤Tbが載り得る領域として決められた揺れ防止領域Epに限って突起170を形成したが、これに限定されない。搬送ベルト171の全面に突起を所定の密度で形成するようにしてもよい。突起170が揺れ防止領域Epに限って形成される場合は、突起を形成する面積が減るので、その突起170の形成が容易となる。一方、搬送ベルト11の全面に突起170が形成される場合は、錠剤Tbが供給される場所の限定が緩やかとなり、錠剤供給位置などの調整が容易にできるようになる。
揺れ動きの抑制効果を検証するために、幅15mm、ゴム硬度Hs90のウレタン製搬送ベルトで、錠剤が供給される搬送ベルト表面全面にゴム硬度Hs50のシリコン剤を塗布し、半硬化状態の時に直径φ2〜3mm、高さ1〜2mmの突起を丸枠型を押しつけてランダムに形成した後完全に硬化させた突起付きベルトを用意した。この突起付き搬送ベルト上に平面視直径φ10mm、厚さ6.6mmで、曲面を有する糖衣錠を供給、搬送し、錠剤が搬送ベルト上に供給されてからその揺れ動きが所定値まで収まるまでの時間を高速度カメラで観測した。その結果、突起が無い場合は所定値まで揺れ動きが収束するのに約2145msかかったのに対し、上記突起がある場合は約33msで揺れ動きが所定値に収束した。これにより、突起の存在で約1/60の時間で錠剤の揺れ動きが抑制されるのを確認した。
更に、上述した錠剤印刷装置では、比較的大きな開口の排気口175aを介して吸気される吸気チャンバ175を用いているので、吸引効率が良く、各錠剤Tbに対する吸引力を高めることができる。そのため、各錠剤Tbの搬送ベルト171への保持力が強くなり、より安定した搬送ができ、各錠剤Tbの振動もより早く減衰させることができる。また、調整プーリ174a、174bの位置調整により(図2参照)、吸気チャンバ175と搬送ベルト171との間の隙間を適正に設定することができるので、各錠剤Tbに対する吸引力を高めることができる。そのため、上記と同様、各錠剤Tbの搬送ベルト171への保持力が強くなり、より安定した搬送ができ、各錠剤Tbの振動もより早く減衰させることができる。
上述した例では、搬送ベルト171(181)に錠剤Tbが2列になって供給されている(図3参照)が、これに限らない。搬送ベルト171(181)に錠剤Tbが、1列や3列以上で供給されるようにしてもよい。更に、搬送ベルトを並列に複数配列し、各搬送ベルトに錠剤Tbを1列にて供給するようにしてもよい。特に、複数列で錠剤Tbを搬送する場合、ノズルヘッド21、カメラ23、25、乾燥ユニット27、回収機構(28a、28b、40)は、それら複数の列の錠剤Tbに対して共用させるようにすることもできる。
上述した搬送ベルト171(181)として、図13及び図14に示す構造の搬送ベルトを用いることができる。
図13及び図14に示すように、搬送ベルト171には、当該搬送ベルト171の移動方向に延びる所定深さの溝177が形成されている。そして、その溝177の底部に通孔176が所定間隔で形成されている。溝177の幅は、搬送される錠剤Tbの径よりも小さい。そして、突起170が、溝177から立ち上がった搬送ベルト171の表面の所定範囲に、所定密度にて形成されている(図14参照)。
このような搬送ベルト171では、第2受け渡しフィーダ16から搬送ベルト171の溝177に向けて順次落とされる錠剤Tbが、揺れ動きながら、通孔176からの吸気による溝177全体にわたる吸気作用によって、溝177から大きく離れることなく、当該溝177上に載った状態で搬送される。その過程で、各錠剤Tbは、通孔176による吸引だけの場合より、溝177を通したより大きな吸気作用によって揺れ動きがより早く抑えられるとともに、突起170に接触することにより、その揺れ動きが更に抑えられ、その揺れ動きがより効果的に減衰させられる。
前述した錠剤印刷装置では、搬送ベルト171として歯付きのタイミングベルトが用いられ、駆動プーリ172及びテンションプーリ174として、タイミングプーリが用いられている。これにより、搬送ベルト171のすべりを極力少なくすることができ、第1エンコーダ45の出力値に基づいて、各錠剤Tbの搬送ベルト171上の位置を精度良く追跡することができる。
また、搬送ベルト171として平ベルトを用いることができる。この場合、例えば、図15に示すように、搬送ベルト171(平ベルト)の縁端部分に長手方向(移動方向)に孔178が所定の間隔で並ぶように形成される。この孔178の列を挟むように、発光素子と受光素子とが設けられる。搬送ベルト171が移動する際に、各孔178を通過する発光素子からの光を受光素子にて検出し、その受光素子からの検出信号に基づいて、孔178の数をカウントし、そのカウント値に基づいて搬送ベルト171の移動量が演算される。このようにすれば、駆動プーリや従動プーリに巻き掛けられた搬送ベルト171(平ベルト)にすべりが生じたとしても、第1エンコーダ45の出力値によらないので、搬送ベルト171の正確な移動量を検出することができる。
なお、配列される通常の形状の孔178aの所定数毎に、形状の異なる(例えば、大きい)孔178bを形成するようにしてもよい。このようにすれば、形状の異なる孔178bを検出する毎に、カウンタをリセットすることにより、カウンタのオーバーフローを防止することができる。
また、図16に示すように搬送ベルト171(平ベルト)の厚さ方向の面分にマーク179を形成するようにしてもよい。この場合、搬送ベルト171の厚さ方向の面に対向さえて反射型の光学センサが配置される。搬送ベルト171が移動する際に、光学センサによってマーク179を順次検出し、その検出信号に基づいてマーク179の数をカウントし、そのカウント値に基づいて搬送ベルト171の移動量が演算される。このようにすれば、駆動プーリや従動プーリに巻き掛けられた搬送ベルト171(平ベルト)にすべりが生じたとしても、搬送ベルト171の正確な移動量を検出することができる。
なお、この場合も、配列される通常の形状のマーク179aの所定数毎に、形状の異なる(例えば、大きい)マーク179bを形成するようにしてもよい。このようにすれば、形状の異なるマーク179bを検出する毎に、カウンタをリセットすることにより、カウンタのオーバーフローを防止することができる。
タイミングベルトに比べて平ベルトは素材の種類が多く、突起170の形成の容易な資材の選択が容易である。上述の例では、突起170の硬度は、搬送ベルト171の硬度より低く柔軟性のあるものとしたが、平ベルトは素材の選択肢が広いので、錠剤の揺れ動きを抑制する柔軟性の大きい突起を、搬送ベルトと同じ素材で一体成形できる素材とすることも容易である。こうすれば、突起を形成するコストを下げることができる。
なお、上述した各例において、搬送ベルト171の表層を、突起170と同様に柔軟性の高い素材で形成するようにしてもよい。
また、図1に示す錠剤印刷装置において、第2搬送機構18の搬送ベルト181の表面にも、上述した第1搬送機構17の搬送ベルト171と同様に、突起170が形成されている。また、これに限られず、整列フィーダ14の搬送ベルトのように上方から錠剤が落とされるように供給される搬送ベルトであれば、同様に、微小な突起を形成することにより、錠剤の揺れ動きをより早く抑えることができる。
なお、搬送ベルト171、181として、メッシュ状に形成されて気体透過性を有する搬送ベルトを用いることもできる。
上述した錠剤印刷装置(機構部分)は、図17及び図18に示すように、筐体ケース200内に納められている。図17は、筐体ケース200内に納められた錠剤印刷装置を模式的に示す正面図であり、図18は、筐体ケース200内に納められた錠剤印刷装置を模式的に示す側面図である。なお、図17は、図18のA−A矢視図である。
図17及び図18において、前述した構造(図1と同じ構造)の錠剤印刷装置が、概ね箱型の筐体ケース200内に納められている。整列フィーダ14、第2受け渡しフィーダ16、第1搬送機構17、及び第2搬送機構18等の各機構は、筐体ケース200の前壁部に比較的近い場所に配置され、第1搬送機構17の吸引チャンバ175を吸気装置(図示略)に接続する第1吸気管207及び第2搬送機構18の吸気チャンバ185を吸気装置(図示略)に接続する第2吸気管208が、それぞれ、筐体ケース200の奥方に延びている。そして、筐体ケース200の前壁部の所定部位には、透明な窓体202が嵌め込まれており、作業者OPTは、窓体202を通して筐体ケース200内を見ることができる。
このように錠剤印刷装置の各機構が筐体ケース200内に納められた状態では、作業者OPTは、窓体202を通して、各機構(第1搬送機構17、第2搬送機構18等)やその裏側を直接見ることができない。このため、いちいち錠剤印刷装置を停止させて、筐体ケース200の前面カバーを外して、内部(各機構の周囲部分)を点検しなければならなかった。したがって、作業性が悪いばかりでなく、錠剤印刷装置を稼働させながら各機構の状態や搬送される錠剤の状態、各機構の裏側部分に不具合があるかどうかを目視で点検することができなかった。
このような点を考慮して、図17及び図18に示すように、筐体ケース200内の上方部に斜めに傾けられた鏡面板210が窓体202に対向するように設けられている。このように、鏡面板210が設けられることにより、筐体ケース200外部の作業者OPTは、窓体202を通して、鏡面板210に映る各機構(第1搬送機構17、第2搬送機構18等)の状態やその裏側、錠剤の搬送状態を見ることができる。このため、作業者OPTは、錠剤印刷装置を停止させることなく稼働させながら各機構に不具合があるかどうかを容易に目視で点検することができる。
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。