JP6621654B2 - コーヒーの香気成分分析方法 - Google Patents
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非特許文献1には、淹れたてのコーヒーにおけるコーヒー本来の香味感に寄与する香気成分の1種として、3−メチル−2−ブテン−1−チオールが記載されている。しかし、3−メチル−2−ブテン−1−チオールに限られず、同文献に、コーヒー本来の香味感に寄与する成分として記載されている各種香気成分は、いずれも、コーヒーを淹れた直後に短時間で消失してしまうことが知られている。
前記コーヒー抽出液をペーパー濾過およびネル濾過をすることなくメッシュ濾過することにより固液分離し、コーヒー濾液を調製する工程と、
前記コーヒー濾液からヘッドスペース法により測定試料を捕集する工程と、
を有し、
前記コーヒー濾液を調製する工程において、前記メッシュ濾過に使用する濾過フィルターが、目開き53μm以上、目開き150μm以下である、コーヒーの香気成分分析方法が提供される。
しかし、本発明者は、従来の分析プロセスにおいて採用しているペーパーろ過という前処理手法に関し、コーヒーの香りを特徴づける一部の香気成分(D−リモネン、β−ミルセンおよび2−メチルフラン等)が、ろ過時に吸着除去されてしまっている可能性があることを見出した。
また、本発明者は、従来の分析プロセスにおいて採用しているペーパーろ過という前処理手法に関し、分析試料として用いるコーヒー抽出液の作製に用いたコーヒー豆の焙煎度や、品種の違いにより、処理時間にバラつきが生じることも知見した。ここで、背景技術の項で述べたとおり、コーヒー本来の香味感に寄与する成分として非特許文献1に記載されている各種香気成分は、いずれも、コーヒーを淹れた直後に短時間で消失してしまう可能性が高い。そのため、従来の前処理方法のように処理時間にバラつきが生じてしまった場合、分析対象成分が測定前に消失してしまう可能性もある。以上を踏まえ、本発明者は、コーヒーの香気成分を分析する際に採用する前処理方法として、試料状態の差異に関係なく、いかなる場合においても短時間で精度高く処理できる手法を確立する必要があると考えた。
まず、調製したコーヒー濾液を密封容器中に入れ、当該コーヒー濾液の液温を20℃とする。その後、コーヒー濾液が格納された密封容器ごと50℃の温度に加熱し、コーヒー濾液中に含まれる香気成分を気化させる。こうすることで、密封容器の気相領域に、測定試料である香気成分を集めることができる。なお、上記加熱処理時間は、特に限定されないが、10分程度であれば十分である。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
コーヒー豆に由来するコーヒー成分を含むコーヒー抽出液を調製する工程と、
前記コーヒー抽出液をペーパー濾過することなくメッシュ濾過することにより固液分離し、コーヒー濾液を調製する工程と、
前記コーヒー濾液からヘッドスペース法により測定試料を捕集する工程と、
を有する、コーヒーの香気成分分析方法。
<2>
前記コーヒー濾液を調製する工程が、
前記コーヒー抽出液をメッシュ濾過する工程と、
前記メッシュ濾過する工程により得られた濾液を遠心分離する工程と、
を含む、<1>に記載のコーヒーの香気成分分析方法。
<3>
前記捕集する工程の後、前記測定試料をガスクロマトグラフにより分離する工程をさらに有する、<1>または<2>に記載のコーヒーの香気成分分析方法。
<4>
前記コーヒー濾液を調製する工程において、前記メッシュ濾過に使用する濾過フィルターが、50メッシュ以上500メッシュ以下の篩である、<1>乃至<3>のいずれか一つに記載のコーヒーの香気成分分析方法。
<5>
当該コーヒーの香気成分分析方法により分析する香気成分が、D−リモネン、β−ミルセン、2−メチルフランからなる群より選択されるいずれか1種以上の成分を含む、<1>乃至<4>のいずれか一つに記載のコーヒーの香気成分分析方法。
まず、10gの粉砕コーヒー豆を300mLビーカーに量りとった。次いで、ビーカー内に200gの熱湯を注ぎ、4分間撹拌した。このようにして、実施例及び比較例の分析方法に用いるコーヒー抽出液を調製した。
(実施例1)
調製したコーヒー抽出液を、100メッシュ(目開き150μm)の篩にかけてメッシュ濾過した。その後、得られたコーヒー濾液50mLを、その温度が20℃となるまで速やかに冷やした。
その後、3gの塩化ナトリウムを入れたGC分析用バイアル瓶に、得られたコーヒー濾液10mLを採取した。次いで、内部標準液として、終濃度が10ppmとなるようにシクロヘキサノールをバイアル瓶に添加してから蓋をしめて密封した上で撹拌混合した。このようにして得られたコーヒー濾液入りバイアル瓶を用いて後述する香気成分の分析を実施した。
280メッシュ(目開き53μm)の篩にかけてメッシュ濾過した点以外は、実施例1と同様の方法でコーヒー濾液入りバイアル瓶を調製した。
100メッシュ(目開き150μm)の篩にかけてメッシュ濾過した後、3000rpm(1670×g)で5分間遠心分離し、得られた上澄み液をコーヒー濾液として用いた点以外は、実施例1と同様の方法でコーヒー濾液入りバイアル瓶を調製した。
メッシュ濾過することなく濾紙を用いてペーパーろ過して得られたコーヒー濾液を用いた点以外は、実施例1と同様の方法でコーヒー濾液入りバイアル瓶を調製した。
上述した方法により準備したコーヒー濾液入りバイアル瓶の気相部分にシグマアルドリッチ社製のSPMEファイバー(DVB/CAR/PDMS)を挿入し、5分間、揮発成分を捕集した。このSPMEファイバーをGC/MSに設置し、300秒間焼成することにより、捕集した揮発成分を脱離させた。本実施例および比較例においては、上記揮発成分中に含まれるD−リモネン量およびβ−ミルセン量の測定を行った。
D−リモネン量およびβ−ミルセン量の測定は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS、アジレント・テクノロジー社製、7890GC/5975MSD)を用いた固相マイクロ抽出法(SPME)法により実施した。具体的には、D−リモネンおよびβ−ミルセンの含有量は、標準添加検量線法により定量した。なお、単位は、ppbである。
なお、上記測定試料は、それぞれ3サンプルずつ準備した。そのため、下記表1には、準備した3つの測定試料に関する定量結果の平均値を測定結果として示す。ここで、下記表1に示す内標準比とは、GC/MSによるピーク面積の内標比(各成分のピーク面積/シクロヘキサノールのピーク面積)を示す。
Claims (4)
- コーヒー豆に由来するコーヒー成分を含むコーヒー抽出液を調製する工程と、
前記コーヒー抽出液をペーパー濾過およびネル濾過をすることなくメッシュ濾過することにより固液分離し、コーヒー濾液を調製する工程と、
前記コーヒー濾液からヘッドスペース法により測定試料を捕集する工程と、
を有し、
前記コーヒー濾液を調製する工程において、前記メッシュ濾過に使用する濾過フィルターが、目開き53μm以上、目開き150μm以下である、コーヒーの香気成分分析方法。 - 前記コーヒー濾液を調製する工程が、
前記コーヒー抽出液をメッシュ濾過する工程と、
前記メッシュ濾過する工程により得られた濾液を遠心分離する工程と、
を含む、請求項1に記載のコーヒーの香気成分分析方法。 - 前記捕集する工程の後、前記測定試料をガスクロマトグラフにより分離する工程をさらに有する、請求項1または2に記載のコーヒーの香気成分分析方法。
- 当該コーヒーの香気成分分析方法により分析する香気成分が、D−リモネン、β−ミルセン、2−メチルフランからなる群より選択されるいずれか1種以上の成分を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコーヒーの香気成分分析方法。
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