以下、本発明の一実施形態に係るパターン転写装置およびパターン転写方法について、図1から図15を参照して説明する。
図1には、本実施形態に係るパターン転写装置1の構成の一例を概略的に示す。パターン転写装置1は、薄膜状の基材2の両面に、転写用ロールの賦形部(パターン)を転写する装置(いわゆるロールツーロール式両面転写装置)である。薄膜状の基材2は、パターン転写のベースとなるフィルムやシート(以下、ベースフィルム2という)などである。また、以下の説明では、両面にパターンが転写されたベースフィルム2については、転写フィルム20と称して適宜、ベースフィルム2と区別する。
本実施形態のパターン転写装置1(図1から図15参照)において、第1方向Xおよび第2方向Yは、水平面上において互いに直交する方向である。第1方向Xおよび第2方向Yと直交する方向を第3方向Zと定義する。第1方向Xは、パターン転写装置1の横方向(あるいは、左右方向)として規定されている。また、第1方向Xは、ベースフィルム2、転写フィルム20の幅方向とも規定される。第2方向Yは、パターン転写装置1の縦方向(あるいは、長手方向)として規定されている。第3方向Zは、パターン転写装置1の重力方向(あるいは、上下方向)として規定されている。
図1に示すように、パターン転写装置1は、樹脂層形成部3、パターン転写部4、樹脂層硬化部5、およびフィルム搬送部6を備えている。樹脂層形成部3、パターン転写部4、樹脂層硬化部5は、ベースフィルム2の一面(以下、表面という)2aと他面(以下、裏面という)2bに対応してそれぞれ備えられている。フィルム搬送部6は、樹脂層形成部3(3a)にベースフィルム2を送り出し、パターン転写部4を経て、樹脂層硬化部5(51b)より転写フィルム20を引き取るように、樹脂層形成部3、パターン転写部4、樹脂層硬化部5の前後とそれらの間に備えられている。
パターン転写装置1には、第1方向Xにおける基準位置を表わし、第2方向Yに延びる直線として、機械基準線L(図9、図11、図13から図15参照)が設定されている。樹脂層形成部3、パターン転写部4、樹脂層硬化部5、およびフィルム搬送部6は、機械基準線Lを基準として、機械基準線Lに沿って順次配置されている。そして、樹脂層形成部3、パターン転写部4、樹脂層硬化部5、およびフィルム搬送部6は、後述する補正機構8の制御部82によって、稼働状態がそれぞれ制御されている。
ベースフィルム2は、平面状のフィルム面が所定長さに亘って連続する樹脂フィルムである。本実施形態では、光透過性(透光性)、具体的には紫外線透過性を持つ透明のフィルムをベースフィルム2として適用する。
フィルム搬送部6は、ベースフィルム2を繰り出すフィルム繰出軸61と、繰り出したベースフィルム2から生成された転写フィルム20を巻き取るフィルム巻取軸62とを備えている。フィルム繰出軸61およびフィルム巻取軸62は、いずれもモータ(図示省略)の駆動力で回転する。フィルム繰出軸61は、ベースフィルム2の搬送方向(以下、流れ方向という)の最上流に、フィルム巻取軸62は、当該流れ方向の最下流にそれぞれ配置されている。これにより、ベースフィルム2がフィルム繰出軸61から繰り出されるとともに、転写フィルム20がフィルム巻取軸62に巻き取られる。
また、フィルム搬送部6は、ベースフィルム2の搬送を中継する複数の中継ロール(中継ロール群)63を備えている。中継ロール群63(63a,63b,63c,63d,63e,63fを含む)は、フィルム繰出軸61とフィルム巻取軸62との間の搬送経路上に配置されており、駆動ロールと従動ロール(以下、アイドルロールという)によって構成されている。駆動ロールは、モータ(図示省略)の駆動力で回転する。アイドルロールは、ベースフィルム2および転写フィルム20の流れによって回転する。
本実施形態では一例として、フィルム繰出軸61の下流側には、入口側フィードロール63aと、この入口側フィードロール63aに対向して、ニップロール63bが配置されている。フィルム巻取軸62の上流側には、出口側フィードロール63cと、この出口側フィードロール63cに対向して、ニップロール63dが配置されている。入口側フィードロール63aの下流側、および出口側フィードロール63cの上流側には、それぞれ、ダンサーロール63e,63fが設けられている。ベースフィルム2および転写フィルム20は、入口側フィードロール63a、出口側フィードロール63c、ダンサーロール63e,63f、およびその他の中継ロール63により、所定の張力を保ちながら搬送される。
フィルム繰出軸61にセットされるベースフィルム2の巻玉は、ベースフィルム2がロール状に巻かれて形成されている。ベースフィルム2の巻玉は、幅寸法にかかわらず、ベースフィルム2の幅方向(第1方向X)の中央点が機械基準線L上に位置するように、フィルム繰出軸61にセットされる。そして、フィルム繰出軸61から繰り出されたベースフィルム2は、幅方向の中央点が機械基準線Lに沿うように搬送され、言い換えれば、幅方向の中央点の軌跡を水平面上に投影した時に機械基準線Lと一致するように搬送され、転写フィルム20となってフィルム巻取軸62に巻き取られる。
樹脂層形成部3は、ベースフィルム2の表面2aおよび裏面2bに樹脂層(図示省略)を形成する。図1に示すように、樹脂層形成部3は、表面2aに樹脂層を形成する表面用の樹脂吐出部(塗工ダイ)3aと、裏面2bに樹脂層を形成する裏面用の樹脂吐出部(塗工ダイ)3bを備えている。表面用の樹脂吐出部3aはベースフィルム2の表面2aに、裏面用の樹脂吐出部3bはベースフィルム2の裏面2bに、それぞれ未硬化樹脂を薄膜状に広げて吐出する。ベースフィルム2が所定のラインスピードで搬送されているため、樹脂吐出部3a,3bから吐出された未硬化樹脂は、表面2aおよび裏面2bでそれぞれ樹脂層をなす。樹脂としては、紫外線硬化性を持ち、例えば常温で液体状の透明樹脂が用いられる。
パターン転写部4は、ベースフィルム2の表面2aおよび裏面2bに形成された樹脂層に、転写によってパターン21を成形する。図1に示すように、パターン転写部4は、樹脂層にパターン21を成形するパターン転写ロール群を備えている。表面2aのパターン転写ロール群は、表面2aの樹脂層に表面パターン21aを成形する第1のロール(以下、表面ロールという)41と第2のロール(以下、表面バックアップロールという)42を有している。また、裏面2bのパターン転写ロール群は、裏面2bの樹脂層に裏面パターン21bを成形する第3のロール(以下、裏面ロールという)43と第4のロール(以下、裏面バックアップロールという)44を有している。
表面ロール41と表面バックアップロール42は、互いのロール面を対向させて配置され、その間で表面2aに樹脂層が形成されたベースフィルム2を挟圧することにより、樹脂層に表面パターン21aを成形する。裏面ロール43と裏面バックアップロール44は、互いのロール面を対向させて配置され、その間で裏面2bに樹脂層が形成されたベースフィルム2を挟圧することにより、樹脂層に裏面パターン21bを成形する。本実施形態では、表面ロール41(後述する表面賦形部411の凸部分)、表面バックアップロール42、裏面ロール43(後述する裏面賦形部431の凸部分)、裏面バックアップロール44の各直径は、同一直径に設定されている。
図2から図5には、表面ロール41および裏面ロール43の概略構成を示す。表面ロール41および裏面ロール43は、駆動ロールである。これらのロール41,43の軸部41a,43aは、両側が軸受部(図示省略)によって支持され、一端側に接続されたモータ(図示省略)の駆動力で回転する。これに対し、表面バックアップロール42および裏面バックアップロール44は、ベースフィルム2の流れによって回転するアイドルロールである。
表面ロール41、裏面ロール43、表面バックアップロール42、および裏面バックアップロール44は、機械基準線Lと直交するように配置されている。言い換えれば、表面ロール41、裏面ロール43、表面バックアップロール42、および裏面バックアップロール44の軸方向(あるいは、長手方向)は、第2方向Yと直交し、第1方向Xと一致する。
表面バックアップロール42は、表面ロール41の軸部41aと平行な軸を中心に、表面ロール41とは逆方向(図1では反時計回り)に回転する。図1に示すように、表面ロール41と表面バックアップロール42は、回転の軸、およびベースフィルム2を挟圧して樹脂層に表面パターン21aを成形する転写点Taが同一の水平面上に位置するように配置されている。一方、裏面バックアップロール44は、裏面ロール43の軸部43aと平行な軸を中心に、裏面ロール43とは逆方向(図1では時計回り)に回転する。図1に示すように、裏面ロール43と裏面バックアップロール44は、回転の軸、およびベースフィルム2を挟圧して樹脂層に裏面パターン21bを成形する転写点Tbが同一の水平面上に位置するように配置されている。
裏面ロール43は、軸方向(第1方向X)に進退可能となっている。これにより、裏面ロール43は、裏面バックアップロール44に対して軸方向に変位する。本実施形態では一例として、裏面ロール43は、図6に示すように移動テーブル10に搭載されている。移動テーブル10は、裏面バックアップロール44が搭載されたベース(床面)12に対して、裏面ロール43の軸方向に移動する。移動テーブル10を移動させる移動機構11としては、モータ、ボールねじ、レールおよびスライダなどを用いた機構のように、直線移動可能かつ所定位置で停止可能な機構を適用することができる。
図2に示すように、表面ロール41は、表面賦形部411をロール面41sに有している。表面賦形部411は、転写により表面パターン21aを成形するための凹凸部である。表面バックアップロール42は、表面ロール41の表面賦形部411にベースフィルム2の表面2aを押し付ける押付ロールである。これらのロール41,42により、ベースフィルム2の表面2aには、表面賦形部411の凸凹を反転させた凹凸部として、表面パターン21aが樹脂層に成形される。
同様に、図4に示すように、裏面ロール43は、裏面賦形部431をロール面43sに有している。裏面賦形部431は、転写により裏面パターン21bを成形するための凹凸部である。裏面バックアップロール44は、裏面ロール43の裏面賦形部431にベースフィルム2の裏面2bを押し付ける押付ロールである。これらのロール43,44により、ベースフィルム2の裏面2bには、裏面賦形部431の凸凹を反転させた凹凸部として、裏面パターン21bが樹脂層に成形される。
表面賦形部411および裏面賦形部431は、模様や図形、あるいは記号や文字などの任意の形態をなす凹凸状に加工されている。
図2および図3に示すように、表面ロール41は、表面賦形部411に加えて、表面賦形部411の転写位置を示す表面アライメントマーク412をロール面41sに有している。表面アライメントマーク412は、表面賦形部411とともに、ベースフィルム2の表面21aの樹脂層に転写される。転写された表面アライメントマーク412(以下、フィルム表面アライメントマーク21cという)の位置により、ベースフィルム2の表面2aに対する表面賦形部411の転写位置、つまり表面パターン21aの成形位置を把握することが可能となる。図2には、井(♯)形とした形態を一例として示すが、表面アライメントマーク412は、任意の形態で構わない。この場合、井(♯)形は、例えば凹状に加工すればよい。なお、以下の説明においては、表面ロール41の表面アライメントマーク412が転写され、ベースフィルム2の表面21aの樹脂層に成形されたマークをフィルム表面アライメントマーク21cとして、表面アライメントマーク412と区別する。
また、図4および図5に示すように、裏面ロール43は、裏面賦形部431に加えて、裏面アライメントマーク432をロール面43sに有している。裏面アライメントマーク432は、裏面賦形部431とともに、ベースフィルム2の裏面21bの樹脂層に転写される。なお、本実施形態において、裏面アライメントマーク432の転写は必須ではない。裏面アライメントマーク432を転写可能とした場合、例えば、裏面ロール43の下流側にベースフィルム2に転写された両面のアライメントマークを検知するカメラなどの検査装置を設けて、転写状態を管理することも可能となる。
裏面アライメントマーク432は、裏面賦形部431の転写位置を示す。裏面アライメントマーク432の位置により、ベースフィルム2の裏面2bに対する裏面賦形部431の転写位置、つまり裏面パターン21bの成形位置を把握できる。
図4には、裏面アライメントマーク432を斜め十字(×)とした形態を一例として示す。裏面アライメントマーク432は、任意の形態で構わないが、表面アライメントマーク412と識別可能な形態とする。この場合、裏面アライメントマーク432(斜め十字(×))は、例えば凹状に加工すればよい。
表面アライメントマーク412と裏面アライメントマーク432の数および配置間隔は、互いに一致していれば任意に設定可能である。本実施形態では図3に示すように、表面ロール41は、4箇所M1〜M4に1つずつ、4つの表面アライメントマーク412を有している。4つの表面アライメントマーク412は、表面ロール41のロール面41sに、周方向へ等間隔(90°の位相差)で配置されている。また、図2に示すように、4つの表面アライメントマーク412は、ロール面41sの中央線(ロールセンタ)L41から所定距離a41だけモータによる駆動側(図2においては、右側)にオフセットして配置されている。所定距離a41は、表面アライメントマーク412が表面賦形部411から外れるように設定されている。
これに対応して、裏面ロール43は、図5に示すように4箇所M5〜M8に1つずつ、4つの裏面アライメントマーク432を有している。4つの裏面アライメントマーク432は、1つずつそれぞれ異なる表面アライメントマーク412と対をなしている。4つの裏面アライメントマーク432は、裏面ロール43のロール面43sに、周方向へ等間隔(90°の位相差)で配置されている。
裏面アライメントマーク432は、後述する第1の検知部(第1のカメラ)81aの第1のカメラ基準点84aと裏面ロール43の転写点Tbとの位相差(回転角)の範囲内に配置される。本実施形態では、第1のカメラ基準点84aと転写点Tbとの位相差は、90°に設定されている。
裏面アライメントマーク432は、ロール面43sの中央線(ロールセンタ)L43から所定距離a43だけ、裏面ロール43のモータによる駆動側(図4においては、右側)にオフセットして配置されている。言い換えれば、裏面アライメントマーク432は、ロール面43sの中央線(ロールセンタ)L43から幅方向に所定距離a43だけ、表面ロール41における表面アライメントマーク412のオフセットと同じ側にオフセットして配置されている。所定距離a43は、裏面賦形部431から外れて、後述する第1の検知部(第1のカメラ)81aの撮像可能範囲(画角)83aに裏面アライメントマーク432が収まるように設定されている。本実施形態において、所定距離a43は、表面アライメントマーク412についての所定距離a41と同一距離に設定されている。
樹脂層硬化部5は、パターン21、表面アライメントマーク412および裏面アライメントマーク432が成形された樹脂層を硬化させて、表面2aおよび裏面2bにそれぞれ固着させる。樹脂層硬化部5は、図1に示すように紫外線を照射する光源51a,51bを備えている。光源51a,51bとしては、例えば紫外線を照射可能なLEDランプなどが適用できる。樹脂層は、紫外線硬化樹脂で形成されており、光源51a,51bから紫外線が照射されることで硬化する。本実施形態において、ベースフィルム2は、紫外線透過性を持つ樹脂であるため、光源51a,51bは、紫外線を照射する樹脂層が形成された面とは反対の面側に配置されている。ベースフィルム2を挟んで、表面用の光源51aは表面ロール41と、裏面用の光源51bは裏面ロール43と、それぞれ対向している。このように光源51a,51bを配置した場合であっても、光源51a,51bから照射された紫外線は、ベースフィルム2を透過して樹脂層に照射される。
樹脂層硬化部5により、表面パターン21aと表面アライメントマーク412が成形(転写)された樹脂層が表面2aに固着されるとともに、裏面パターン21bと裏面アライメントマーク432が成形(転写)された樹脂層が裏面2bに固着されることで、転写フィルム20が生成される。生成された転写フィルム20は、フィルム巻取軸62で巻き取られる。
パターン転写装置1は、表面パターン21aと裏面パターン21bとの成形位置のズレを予め補正する補正機構8を備えている。補正機構8によりかかるズレを補正することで、表面パターン21aと裏面パターン21bの位置合わせを可能としている。本実施形態では、成形される裏面パターン21bの表面パターン21aに対する位置のズレを補正機構8で補正した後、裏面パターン21bを成形している。
図1に示すように、補正機構8は、検知部81と、制御部82を有している。検知部81は、4つの検知部81a,81b,81c,81dを含んで構成されている。
第1の検知部81aは、裏面ロール43の裏面アライメントマーク432の位置を検知する。図7から図9に示すように、本実施形態では一例として、第1の検知部81aには、カメラ(以下、第1のカメラ81aという)が適用されている。
第1のカメラ81aは、裏面ロール43のロール面43sにカメラレンズを向けて、ロール面43sを常時撮像し、裏面アライメントマーク432の位置を検知する。第1のカメラ81aは、その撮像可能範囲(画角)83aに裏面アライメントマーク432を捉えることが可能な位置に、位置決め固定されている。詳細には、第1方向Xに対して、第1のカメラ81aは、撮像可能範囲83aの中心(以下、第1のカメラ基準点という)84aが、機械基準線Lから所定距離e43だけ、裏面アライメントマーク432のオフセットと同じ側(図9においては、右側)にオフセットされた位置に、位置決め固定されている。第2方向Yに対しては、第1のカメラ81aは、裏面ロール43の軸芯43cと同位置に、言い換えれば、第1のカメラ基準点84aがロール面43sの頂点43pと同位置に位置するように、位置決め固定されている。そして、第3方向Zに対しては、第1のカメラ81aは、ロール面43sの頂点43pから、裏面アライメントマーク432にピントを合わせることが可能な所定距離b43だけ上方に離れた位置に、位置決め固定されている。
第2の検知部81bは、第1の検知部(第1のカメラ)81aによって裏面アライメントマーク432の位置が検知された時に、ベースフィルム2に転写された表面アライメントマーク412(フィルム表面アライメントマーク21c)の位置を検知する。図7、図10、図11に示すように、本実施形態では一例として、第2の検知部81bには、カメラ(以下、第2のカメラ81bという)が適用されている。第2のカメラ81bは、第1のカメラ81aが裏面ロール43のロール面43sを連続的に撮像するのに対し、所定のタイミングでのみ撮像を行うカメラである。本実施形態において、第2のカメラ81bは、第1のカメラ81aによって裏面アライメントマーク432の位置が検知された時に、ベースフィルム2の表面2aを撮像する。具体的には、裏面アライメントマーク432の中心の流れ方向の位置が第1のカメラ基準点84aの流れ方向の位置にあることが検知された時、第2のカメラ81bは、シャッターを切り、ベースフィルム2の表面2aを撮像する。つまり、撮像可能範囲83aにおいて、第1のカメラ基準点84aの第1方向X、第2方向Yの座標値を(0,0)とした場合、裏面アライメントマーク432の中心のY座標が0であることが検知された時、ベースフィルム2の表面2aが撮像される。そして、撮像した画像において、第2のカメラ81bは、フィルム表面アライメントマーク21cの位置を、撮像可能範囲(画角)83bにおける相対的な位置関係によって検知する。
第2のカメラ81bは、裏面バックアップロール44のロール面44sにカメラレンズを向け、フィルム表面アライメントマーク21cを検知することが可能な位置に、位置決め固定されている。詳細には、第1方向Xに対して、第2のカメラ81bは、撮像可能範囲83bの中心(以下、第2のカメラ基準点という)84bが、機械基準線Lから所定距離e44だけ第1のカメラ81aと同じ側(図11においては、右側)にオフセットされて、位置決め固定されている。第2方向Yに対しては、第2のカメラ81bは、裏面バックアップロール44の軸芯44cと同位置に、言い換えれば、第2のカメラ基準点84bが、ロール面44sの頂点44pと同位置に位置するように、位置決め固定されている。そして、第3方向Zに対しては、第2のカメラ81bは、ロール面44sの頂点44pから、フィルム表面アライメントマーク21cにピントを合わせることが可能な所定距離b44だけ上方に離れた位置に、位置決め固定されている。
本実施形態において、第1のカメラ81aについての所定距離e43と、第2のカメラ81bについての所定距離e44とは、同一距離に設定されている。かつ、所定距離e43および所定距離e44は、表面アライメントマーク412についての所定距離a41および裏面アライメントマーク432についての所定距離a43と同一距離に設定されている。つまり、所定距離a41、所定距離a43、所定距離e43、および所定距離e44は、全て同一距離に設定されている。
これにより、第1のカメラ81aが裏面アライメントマーク432を検知し、少なくとも第1方向Xに対して、検知された裏面アライメントマーク432の中心(斜め十字の交点)の座標が、第1のカメラ基準点84aと一致した状態にあるとき、裏面ロール43の中央線(ロールセンタ)L43は、機械基準線Lと一致した状態にあり、裏面ロール43は、パターン転写装置1に対して軸方向にズレることなく、基準の位置にあることになる。
パターン転写装置1の機械基準線Lに対して、裏面ロール43と表面パターン21aにいずれも第1方向X(軸方向、幅方向)にズレが生じている場合、機械基準線Lと一致するように位置の補正をすることが考えられる。このとき、裏面ロール43と表面パターン21aのズレをそれぞれ補正するとすれば、そのための補正機構や補正制御が複雑になる。本実施形態では、このようなズレが生じている場合、機械基準線Lと一致するように位置の補正をするのではなく、表面パターン21aの位置のズレに合わせて、裏面ロール43の位置を補正するようにしている。この補正によれば、裏面ロール43の第1方向Xの位置を補正する補正機構8を有していればよい。補正の詳細については、後述する。
本実施形態では、裏面ロール43と裏面バックアップロール44の直径は、上述したように、同一直径とされている。これにより、第1のカメラ基準点84aに対応するロール面43s上の頂点43pと転写点Tb(図8参照)との表面距離(周方向の距離)と、第2のカメラ基準点84bに対応するロール面44s上の頂点44pと転写点Tbとの表面距離を一致させることができる。
裏面バックアップロール44の直径が裏面ロール43の直径よりも小さい場合は、かかる表面距離が一致するように、第2のカメラ81bを裏面バックアップロール44の回転方向の上流側に移動させればよい。
これにより、第2のカメラ81bは、裏面バックアップロール44によって搬送されているベースフィルム2の表面2aを撮像する。かかるベースフィルム2の表面2aには、裏面バックアップロール44によって搬送されるよりも上流側で、表面ロール41によって表面2aに表面アライメントマーク412が転写され、フィルム表面アライメントマーク21cが成形されている。
図11に示すように、第2のカメラ81bは、フィルム表面アライメントマーク21cの位置を検知する。そして、第2のカメラ81bの撮像可能範囲83bの中心(以下、第2のカメラ基準点という)84bに対するフィルム表面アライメントマーク21cの中心(井形の重心)の位置のズレ(ズレ量)を検知する。
図12および図13には、第3の検知部81cの概略構成を示す。第3の検知部81cは、回転方向への裏面ロール43(端的には、裏面アライメントマーク432)の位相変化を検知するための部材である。第3の検知部81cは、回転部材(被検知部材)85と、センサ部材86とを有している。回転部材85は、センサ部材86によって、その回転位置が検知される部材(いわゆるドグ)である。本実施形態において、回転部材85は、軸芯85aを裏面ロール43の軸部43aの軸芯43cと一致させて、軸部43aに取り付けられている。一例として、回転部材85は、裏面ロール43のモータによる駆動側(図13においては、右側)の軸部43aに配置されている。これにより、回転部材85は、裏面ロール43と同一の回転態様で回転する。したがって、センサ部材86によって回転部材85の回転位置を検知することで、裏面ロール43の回転態様を検知することが可能となる。
回転部材85は、軸芯85aに対して放射状に伸びる4つのアーム85bを備えている。各アーム85bは、隣り合うアーム85bと互いに直交するように(90°の位相差で)配置されている。すなわち、回転部材85は、軸芯85aを対称中心とする点対称の十字形をなしている。4つのアーム85bは、1つずつそれぞれ異なる裏面アライメントマーク432と対をなしている。
アーム85bは、軸芯85aを中心とした回転方向の前側(下流側)および後側(上流側)の面、これらの面と連続して対向する平面、および径方向の端面を有する矩形体とされている。この場合、回転方向の前側の面(以下、基準面という)85cは、その回転位置がセンサ部材86によって検知される部位となっている。
基準面85cは、対をなす裏面アライメントマーク432の位置よりも所定の位相(回転角度)だけ手前(上流側)に位置する。図12および図13に示すように、本実施形態では、基準面85cは、裏面ロール43の回転方向(図12では反時計回り)に対して、対をなす裏面アライメントマーク432の位置よりも位相を85°だけ手前(上流側)にずらして配置されている。
センサ部材86は、センサ86aと、センサ86aを保持するブラケット86bを備えて構成されている。本実施形態では一例として、センサ86aには、近接センサを適用している。例えば、回転部材85(アーム85b)を磁性体もしくは非磁性体の金属で構成した場合、センサ86aには、高周波発振型の近接センサを適用すればよい。回転部材85(アーム85b)を非金属体で構成した場合、センサ86aには、静電容量型の近接センサを適用すればよい。ブラケット86bは、裏面ロール43の軸部43aを支持する軸受部43dに配置されている。本実施形態では、裏面ロール43のモータによる駆動側(図13においては、右側)の軸部43aの軸受部43dに、回転部材85(アーム85b)と対向するようにブラケット86bが配置されている。
センサ86aは、ブラケット86bに保持された状態で、その検知点(電極やコイルなどの検出素子が外部に臨む点)86cが回転部材85に向いている。したがって、裏面ロール43の回転に伴って回転部材85のアーム85bが回転すると、所定のタイミングで基準面85cが検知点86cと重なる。センサ86aは、このように基準面85cが検知点86cと重なるタイミングを検知することで、裏面ロール43の回転態様を検知する。本実施形態では、対をなす裏面アライメントマーク432と基準面85cとの位相差は、85°に設定されている。したがって、例えば裏面ロール43の回転方向(図12では反時計回り)に対して、転写点Tbの5°手前(上流側)に裏面アライメントマーク432が位置する時(図13に示す状態)、これと対をなす基準面85c(図12においては、基準面87)は、鉛直上方(時計における12時の位置)で検知点86cと重なる。すなわち、裏面ロール43が回転し、裏面アライメントマーク432が転写点の5°手前(上流側)に位置するタイミングを、センサ86aによって検知できる。ただし、これらの角度は、一例であって上記の値に限定されるものではない。
図8および図9には、第4の検知部81dの概略構成を示す。第4の検知部81dは、第1の検知部(第1のカメラ)81aによって裏面アライメントマーク432が検知された時、およびセンサ86aによって基準面85cが検知された時に裏面ロール43の軸方向の位置をそれぞれ検知する。具体的には、裏面アライメントマーク432の中心の流れ方向の位置が、第1のカメラ基準点84aの流れ方向の位置にあることが検知された時、第4の検知部81dは、裏面ロール43の軸方向の位置をそれぞれ検知する。つまり、裏面アライメントマーク432の中心のY座標が0であることが検知された時、裏面ロール43の軸方向の位置が検知される。また、基準面85cが検知点86cと重なったことが検知された時、裏面ロール43の軸方向の位置が検知される。
本実施形態では、第4の検知部81dには、レーザ式、静電容量式、超音波式、光干渉式などの非接触変位計(以下、変位計81dという)が適用されている。変位計81dは、裏面ロール43の操作側(モータによる駆動側とは反対側。図9においては、左側)のロール端面43bから距離c43、かつ裏面ロール43の軸芯43cから距離d43だけそれぞれ離れて位置決め固定されている。ただし、これらの距離c43,d43は、ベースフィルム2がフィルム繰出軸61から最初に繰り出される時点におけるロール端面43bおよび軸芯43cとの距離の目安である。ベースフィルム2がフィルム繰出軸61から繰り出されて裏面ロール43が回転を始めると、裏面ロール43の軸部43aを支持する軸受部43dには、少なくとも軸受部43dの回転精度の範囲内におけるミクロンオーダーの振れが軸方向に生じる。したがって、裏面ロール43の回転中、距離c43,d43は、裏面ロール43の変位によって変動する。本実施形態では、変位計81dによって距離c43の変動を検知することで、裏面ロール43の軸方向の変位を計測している。なお、このような計測を可能とするべく、裏面ロール43は、軸部43aとロール端面43bとの直角度が精度よく加工されている。
また、図8に示すように、変位計81dは、裏面ロール43の回転方向に対して転写点Tbよりも所定の位相(角度θ)だけ手前(上流側)の位置の近傍で、ロール端面43bとの距離を検知するように配置されている。例えば、角度θは、基準面85cが上側鉛直位置(時計における12時の位置)で検知点86cと重なる時の裏面アライメントマーク432と転写点Tbとの位相差(本実施形態では一例として、5°)に合わせればよい。
制御部82は、第1の補正処理および第2の補正処理を行い、表面パターン21aと裏面パターン21bとの成形位置のズレを予め補正する。本実施形態では、成形される裏面パターン21bの表面パターン21aに対する位置のズレ(以下、パターンズレという)を、裏面パターン21bの成形前に予め補正している。第1の補正処理においては、第2のカメラ81bで検知されたフィルム表面アライメントマーク21cの位置と、第1のカメラ81aで検知された裏面アライメントマーク432の位置に基づいて、ズレの仮補正量を設定する。第2の補正処理においては、変位計81dで検知された裏面ロール43の軸方向の位置に基づいて、第1の補正処理で設定された仮補正量を修正してズレの最終補正量を設定する。
制御部82は、CPU、メモリ、入出力回路、タイマなどを備えたマイクロコンピュータとして構成されている。制御部82は、各種データを入出力回路により読み込み、メモリから読み出したプログラムを用いてCPUで演算し、演算結果に基づいた制御を行う。制御部82には、第1のカメラ81a、第2のカメラ81b、センサ86a、変位計81dによる検知結果のデータが逐一送信されている。制御部82は、これらのデータを用いて、第1の補正処理を行うとともに、第2の補正処理を行う。
制御部82は、第2の補正処理によって設定した最終補正量に基づいて、パターンズレを補正する。その際、制御部82は、裏面ロール43の周速度を増減させるとともに、裏面ロール43の軸方向位置を変位させる。制御部82は、裏面ロール43の周速度を上げる場合、裏面ロール43の軸部43aを駆動するモータの出力を上げ、周速度を下げる場合、当該モータの出力を下げる。また、制御部82は、裏面ロール43の軸方向位置を一方側(例えば、モータによる駆動側)に変位させる場合、裏面ロール43の移動機構11で裏面ロール43を一方側へ進行させ、他方側(例えば、モータによる駆動側とは反対側(操作側))に変位させる場合、裏面ロール43を他方側へ退行させる。
図14および図15に示すように、パターンズレは、ベースフィルム2の流れ方向とベースフィルム2の幅方向の双方に生じる。制御部82は、流れ方向および幅方向の双方に対するパターンズレを、それぞれ以下のように補正する。なお、ベースフィルム2の幅方向は、表面ロール41および裏面ロール43の軸方向に相当する。
まず、流れ方向に対するパターンズレの補正について説明する。制御部82は、フィルム表面アライメントマーク21cの位置の流れ方向のズレ量を演算する。具体的には、第2のカメラ81bによって撮像されたフィルム表面アライメントマーク21cの中心位置の第2のカメラ基準点84bに対する流れ方向のズレ量を演算する。
第2のカメラ81bによってフィルム表面アライメントマーク21cが撮像されるタイミング(以下、撮像基準時という)において、裏面アライメントマーク432の中心の流れ方向の位置は、第1のカメラ基準点84aの流れ方向の位置にある(Y座標が0)。したがって、例えば撮像されたフィルム表面アライメントマーク21cの中心の流れ方向の位置(Y座標)が第2のカメラ基準点84bよりも上流側にある場合(図14に示すP1が相当)、フィルム表面アライメントマーク21cは、裏面アライメントマーク432に対して遅れを生じている。この状態では、裏面パターン21bが表面パターン21aに対して下流側へズレて成形され、流れ方向にパターンズレが生じることになる。したがって、裏面パターン21bを表面パターン21aの位置に合わせて成形させるため、裏面ロール43の周速度を下げて、裏面パターン21bの成形を遅らせる。
これに対し、撮像されたフィルム表面アライメントマーク21cの中心の流れ方向の位置(Y座標)が第2のカメラ基準点84bよりも下流側にある場合(図14に示すP2が相当)、フィルム表面アライメントマーク21cは、裏面アライメントマーク432よりも先行している。この状態では、裏面パターン21bが表面パターン21aに対して上流側へズレて成形され、流れ方向にパターンズレが生じることになる。したがって、裏面パターン21bを表面パターン21aの位置に合わせて成形させるため、裏面ロール43の周速度を上げて、裏面パターン21bの成形を早める。
図14に示すように、撮像されたフィルム表面アライメントマーク21cの中心(重心)位置がP1と検知された場合、フィルム表面アライメントマーク21cは、裏面アライメントマーク432よりも流れ方向に距離y1だけ遅れている。この場合、制御部82は、裏面ロール43の周速度を距離y1に相当する分だけ減速させるように、裏面ロール43を駆動するモータの出力を下げる。また、撮像されたフィルム表面アライメントマーク21cの中心(重心)位置がP2と検知された場合、フィルム表面アライメントマーク21cは、裏面アライメントマーク432よりも流れ方向に距離y2だけ先行している。この場合、制御部82は、裏面ロール43の周速度を距離y2に相当する分だけ増速させるように、裏面ロール43を駆動するモータの出力を上げる。
なお、これらの流れ方向に対するパターンズレの補正量(距離y1,y2)は、第1の補正処理で設定される。そして、第2の補正処理後、当該補正量に基づいて、裏面ロール43の周速度は、増減される。すなわち、流れ方向に対するパターンズレの補正においては、仮補正量がそのまま最終補正量として設定される。
次に、幅方向に対するパターンズレの補正について説明する。制御部82は、フィルム表面アライメントマーク21cおよび裏面アライメントマーク432の中心の幅方向のズレ量を演算する。具体的には、第2のカメラ81bによって撮像されたフィルム表面アライメントマーク21cの中心位置の第2のカメラ基準点84bに対する幅方向のズレ量を演算する。また、第1のカメラ81aによって撮像された裏面アライメントマーク432の中心位置の第1のカメラ基準点84aに対する幅方向のズレ量を演算する。この場合、制御部82は、撮像基準時に撮像された裏面アライメントマーク432の中心位置の幅方向のズレ量を演算する。
例えば、図14に示すように、撮像されたフィルム表面アライメントマーク21cの中心位置が第2のカメラ基準点84bよりも駆動側(図14においては、右側)にある場合、表面パターン21aは、成形される裏面パターン21bに対しても駆動側に位置することになる。逆に、撮像されたフィルム表面アライメントマーク21cの中心位置が第2のカメラ基準点84bよりも操作側(図14においては、左側)にある場合、表面パターン21aは、成形される裏面パターン21bに対しても操作側に位置することになる。
一方、撮像された裏面アライメントマーク432の中心位置が第1のカメラ基準点84aよりも駆動側(図14においては、右側)にある場合、裏面パターン21bは、駆動側に寄って成形(転写)されることになる。逆に、撮像された裏面アライメントマーク432の位置が第1のカメラ基準点84aよりも操作側(図14においては、左側)にある場合、裏面パターン21bは、操作側に寄って成形されることになる。
制御部82は、第1の補正処理において、これらのフィルム表面アライメントマーク21cおよび裏面アライメントマーク432の幅方向に対するズレ(つまり、撮像基準時におけるズレ)に基づいて、幅方向に対するパターンズレの仮補正量を設定する。
幅方向に対するパターンズレの仮補正量を設定した後、制御部82は、その仮補正量を修正して、最終補正量を設定する。具体的には、仮補正量設定時(撮像基準時)と、基準面85cが検知点86cと重なったことが検知された時(以下、最終補正量設定時という)に、変位計81dによって検知された裏面ロール43の軸方向の位置の変位を演算する。そして、制御部82は、演算した変位で幅方向に対するパターンズレの仮補正量を修正し、最終補正量を設定する。
例えば、最終補正量設定時に検知された裏面ロール43の軸方向(幅方向)の位置が仮補正量設定時(撮像基準時)よりも駆動側に移動している場合、もしくは操作側に移動している場合、制御部82は、これらの移動量(変位量)に基づいて、仮補正量を修正し、幅方向に対するパターンズレの最終補正量を設定する。そして、制御部82は、最終補正量だけ、裏面ロール43の軸方向位置を駆動側もしくは操作側に変位させる。
図14に示すように、撮像基準時に撮像されたフィルム表面アライメントマーク21cの中心(重心)位置がP1やP2と検知された場合、フィルム表面アライメントマーク21cは、第2のカメラ基準点84bよりも距離x1だけ操作側にある。また、図14に示すように、撮像基準時に撮像された裏面アライメントマーク432の中心(交点)位置がP3と検知された場合、裏面アライメントマーク432は、第1のカメラ基準点84aよりも距離x2だけ駆動側にある。この場合、制御部82は、裏面ロール43が軸方向の駆動側へ距離(x1+x2)だけ移動していると判定する。したがって、制御部82は、幅方向に対するパターンズレの仮補正量を、操作側へ距離(x1+x2)として設定する。
そして、最終補正量設定時において、図15に示すように、変位計81dとロール端面43bとの距離c43(図9参照)が撮像基準時と比べて距離x3だけ近づいていることが検知された場合、制御部82は、裏面ロール43の軸方向の最終補正量を次のように設定する。この場合、制御部82は、裏面ロール43が撮像基準時と比べ、軸方向の駆動側へ距離x3だけ移動していると判定する。したがって、制御部82は、幅方向に対するパターンズレの最終補正量を、操作側へ距離(x1+x2−x3)として設定する。
幅方向に対するパターンズレの最終補正量は、第2の補正処理において設定される。第2の補正処理の後、制御部82は、幅方向に対するパターンズレの最終補正量だけ、裏面ロール43を軸方向の駆動側もしくは操作側へ移動させるように、裏面ロール43の移動機構11を制御する。上記例の場合であれば、制御部82は、移動機構11を制御し、裏面ロール43の移動テーブル10を操作側へ距離(x1+x2−x3)だけ移動させる。
なお、制御部82は、第2の補正処理の後、流れ方向に対するパターンズレの補正と幅方向に対するパターンズレの補正を同時に行う。すなわち、制御部82は、裏面ロール43の周速度の増減と、裏面ロール43の軸方向位置の変位を同時に行う。ただし、裏面パターン21bが成形される前にいずれもが終了可能であれば、裏面ロール43の周速度の増減と軸方向位置の変位のタイミングは同時でなくともよい。
本実施形態によれば、第1の補正処理において、流れ方向および幅方向に対するパターンズレの仮補正量を設定し、第2の補正処理において、幅方向に対するパターンズレの仮補正量を補正して、流れ方向および幅方向に対するパターンズレの最終補正量を設定している。これにより、設定した最終補正量に基づいてパターンズレ、つまり成形される裏面パターン21bの表面パターン21aに対する位置のズレを、裏面パターン21bの成形前に予め補正することができる。
本実施形態では一例として、対をなす表面アライメントマーク412、裏面アライメントマーク432、および回転部材85のアーム85bは、それぞれ4つずつ、90°の位相差で配置されている。したがって、パターンズレは、裏面ロール43が1回転する間に4回補正される。このため、表面パターン21aと裏面パターン21bの位置合わせを高精度に行うことができ、転写フィルム20の品質向上を図ることが可能となる。
例えば、裏面ロール43の径寸法が大きくなるほど、軸部43aを支持する軸受部43dの内径寸法および外径寸法は大きくなる。軸受部43dの内外径寸法が大きくなると、軸受部43dは、内輪の軸方向の振れが大きくなる。したがって、裏面パターン21bの転写点Tbの僅かに手前(上流側)で幅方向に対するパターンズレの仮補正量を補正して最終補正量を設定することで、表面パターン21aと裏面パターン21bの位置合わせをより高精度に行うことが可能となる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、上述した新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。