以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、理解を容易にするために図示を省略または簡略化した部分がある。また、以下の各図における各部の形状や寸法比は、必ずしも正確なものではない。
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係る攪拌用回転体1の構造について説明する。図1(a)は、攪拌用回転体1の平面図であり、図1(b)は、攪拌用回転体1の正面図(側面図も同一)であり、図1(c)は、攪拌用回転体1の底面図である。これらの図に示されるように、攪拌用回転体1は、円柱状の本体10と、本体10の表面に設けられた複数の吸入口12と、本体10の表面に設けられた複数の吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐように本体10の内部に形成された流通路16と、吸入口12と吐出口14の間において本体10から突出するように設けられた仕切部材18と、から構成されている。
本体10は、本実施形態では略円柱状に構成されており、本体10の表面は、略円形状の上面10aおよび底面10b、ならびに外周面である側面10cから構成されている。本体10の上面10aの中心には、モータ等の駆動装置に繋がる駆動軸20が接続される接続部10dが設けられている。従って、攪拌用回転体1は、本体10の中心軸Cを回転軸として回転するように構成されている。なお、図示は省略するが、接続部10dは、例えば螺合や係合、クランプ等、既知の適宜の接続機構によって駆動軸20を接続可能に構成されている。
吸入口12は、接続部10dの反対側、すなわち攪拌用回転体1の先端側となる底面10bに設けられている。本実施形態では、4つの略円形状の吸入口12を、中心軸Cを中心とする円周上に等間隔に並べて配置している。吐出口14は、吸入口12に対して本体10の半径方向(遠心方向)外側となる位置(中心軸Cから中心軸Cに垂直な方向に離れた位置)に設けられている。本実施形態では、各吸入口12に対応させた4つの略円形状の吐出口14を、側面10cにそれぞれ配置している。
流通路16は、1つの吸入口12と1つの吐出口14を繋ぐトンネル状の通路として形成されている。従って、本体10の内部には、4つの流通路16が形成されている。本実施形態では、各流通路16は、吸入口12から中心軸C方向に沿って直進した後に直角に曲がり、本体10の遠心方向に向けて直進した後に吐出口14に到達するように形成されている。すなわち、本実施形態の流通路16は、中心軸C方向に形成された軸方向部分16a、および遠心方向に形成された遠心方向部分16bを備えている。また、本実施形態では、流通路16をこのように形成することで、吸入口12の方向が中心軸C方向となり、吐出口14の方向が遠心方向(中心軸Cに垂直な方向)となるようにしている。
仕切部材18は、側面10cの底面10b側端部から遠心方向に突出するように設けられた略鍔状(フランジ状)の部材である。仕切部材18は、本実施形態では略平板状に構成されると共に、側面10cの全周にわたって(本体10の周方向に連続して)設けられている。そして、仕切部材18の駆動軸20側の面である第1の仕切面18aは、遠心方向と略平行に構成されている。また、仕切部材18の先端側の面である第2の仕切面18bは、第1の仕切面18aと同様に遠心方向と略平行に構成されると共に、本体10の底面10bと連続するように構成されている。
次に、攪拌用回転体1の作用について説明する。図2(a)は攪拌用回転体1の作用を示した平面図であり、図2(b)は攪拌用回転体1の作用を示した正面図である。攪拌用回転体1は、流体である被攪拌物内において、駆動軸20に駆動されて中心軸Cを中心に回転することにより、被攪拌物を攪拌するものである。流体中に攪拌用回転体1を浸漬して回転させると、流通路16内に進入した流体も攪拌用回転体1と共に回転することとなる。すると、流通路16内の流体に遠心力が作用し、図2(a)および(b)に示されるように、流通路16内の流体は攪拌用回転体1の半径方向外側に向けて流動する。
吐出口14は、吸入口12よりも攪拌用回転体1の半径方向外側に設けられているため、吐出口14では吸入口12よりも強い遠心力が働くこととなる。従って、流体は、攪拌用回転体1が回転している限り吸入口12から吐出口14に向けて流動する。すなわち、流通路16内の流体が吐出口14から噴出すると共に、外部の流体が吸入口12から流通路16内に吸引される。これにより、攪拌用回転体1の周囲の流体には、吐出口14のある側面10cから放射状に広がる流動と、吸入口12のある底面10bに向かう流動が発生することとなる。
また、攪拌用回転体1の表面(すなわち、上面10a、底面10bおよび側面10c)近傍では、粘性の影響により流体が攪拌用回転体1と共に回転することとなるため、この遠心力によっても攪拌用回転体1の周囲の流体は、中心軸Cから放射状に広がるように流動することとなる。このとき、上面10a近傍の流体は、図2(b)に示されるように、側面10cの上面10a側近傍の流体と共に吐出口14からの噴流に引き寄せられて随伴流となるため、遠心方向に比較的スムーズに流動することとなる。そして、この結果、上方(駆動軸20側)から上面10aに向かう流動が発生することとなる。
一方、底面10b近傍の流体は、仕切部材18を設けたことによって、吐出口14からの噴流に引き寄せられにくくなっている。具体的には、側面10cの底面10b側近傍の流体が吐出口14からの噴流に引き寄せられることで負圧が生じ、これにより図2(b)に示されるように、吐出口14からの噴流と仕切部材18の第1の仕切面18aとの間に渦が発生することとなる。そして、この渦により、底面10b近傍における遠心方向の流動が吐出口14からの噴流に合流するのが妨げられることとなる。また、この渦は、底面10b近傍における遠心方向の流動を弱めるように作用することとなる。
この結果、下方(駆動軸20の反対側)から底面10bに向かう流動は、仕切部材18を設けたことによって弱められることとなる。すなわち、攪拌用回転体1の下方の流体は、吸入口12による吸引力だけでなく、吐出口14からの噴流による吸引力によっても攪拌用回転体1に引き寄せられるが、仕切部材18を設けたことによって吐出口14からの噴流による吸引力が低下した分だけ、流動が弱められることとなる。
図3(a)は、攪拌用回転体1の使用状態の一例を示した図であり、図3(b)は、仕切部材18を有しない攪拌用回転体1aの使用状態の一例を示した図である。これらの図では、容器30内に収容した被攪拌物100中に攪拌用回転体1、1aを配置し、上方の駆動装置40によって回転させる場合の例を示している。
これらの図に示されるように、被攪拌物100中で攪拌用回転体1、1aを回転させることにより、被攪拌物100内には複雑な循環流が発生することとなる。すなわち、吐出口14からの噴出等によって攪拌用回転体1、1aから遠心方向に放射状に広がる流動は、ある程度広がった後に上下に分かれ、一方が上方から攪拌用回転体1aに向かう流動となり、他方が下方から攪拌用回転体1aに向かう流動となる。
仕切部材18を有しない攪拌用回転体1aでは、上方から攪拌用回転体1aに向かう流動は、吐出口14からの噴流による吸引力によって引き寄せられ、下方から攪拌用回転体1aに向かう流動は、吸入口12による吸引力および吐出口14からの噴流による吸引力によって引き寄せられることとなる。従って、上方からの流動よりも下方からの流動の方が、吸入口12による吸引力の分だけ強いものとなる。また、上方および下方から攪拌用回転体1aに向かう流動は、攪拌用回転体1aの回転に伴って旋回流となる。
このような循環流を発生させることによって、容器30内の被攪拌物100の略全体に攪拌力を及ぼすことができるため、被攪拌物100を効率的に攪拌することが可能となる。また、下方から攪拌用回転体1aに向かう比較的強い旋回流によって容器30の底部32に沈降した沈降物を適宜に巻き上げ、吐出口14からの噴流によって被攪拌物100中に分散させるといったことが可能となる。
一方、本実施形態の攪拌用回転体1では、上述のように仕切部材18によって吐出口14からの噴流による吸引力が下方からの流動に作用しにくくしているため、下方から攪拌用回転体1に向かう旋回流を、攪拌用回転体1aと比較して弱めることが可能となっている。すなわち、攪拌用回転体1では、攪拌用回転体1の上下に発生する旋回流のバランスを取り、被攪拌物100中の流動状態を適切に制御することが可能となっている。
これにより、攪拌用回転体1の下方(先端側)に発生する旋回流が強くなりすぎないようにすることができるため、例えば容器30の底部32に小石や砂等が存在するような場合にも、これらが旋回流と共に回転し、容器30の底部32を摩耗させるといった不具合を防止することが可能となる。また、攪拌用回転体1の回転数を落とす必要がないため、必要な強さの循環流を適宜に維持したまま、下方の旋回流のみを弱めることができる。すなわち、吸入口12への流動および吐出口14からの流動の強さを確保することができるため、全体的な攪拌力を落とすことなく、下方の旋回流を弱めることが可能となっている。
特に、本実施形態では、仕切部材18を略鍔状に構成することで、吐出口14からの噴流を仕切部材18が阻害しないようにしているため、仕切部材18を設けたことによって本体10の有する攪拌力が低下しないようになっている。また、仕切部材18を略鍔状に構成することにより、被攪拌物100中における回転抵抗を小さくすることができるため、攪拌に要する電力費等の上昇を抑制することが可能となっている。
この結果、被攪拌物100を収容している容器30等の内部の状況や、被攪拌物100の性状、被攪拌物100中の含有物等の状態等に制限されることなく、適切な循環流を発生させることが可能となる。すなわち、被攪拌物100の状態に影響されることなく、効率的な攪拌を行うことができる。
なお、被攪拌物100中における攪拌用回転体1の姿勢は、図3(a)に示した吸入口12を下方に向ける姿勢に限定されるものではなく、例えば吸入口12を上方に向ける姿勢や側方に向ける姿勢等、その他の姿勢であってもよいことはいうまでもない。また、図1(b)に示した仕切部材18の厚みT、遠心方向の突出量P、および中心軸C方向における吐出口14と仕切部材18(第1の仕切面18a)の間の距離D1は、特に限定されるものではなく、所望の流動状態に応じて適宜に設定すればよい。すなわち、仕切部材18の寸法および位置を調整することで、旋回流を弱める程度を調整することができる。
次に、攪拌用回転体1のその他の形態について説明する。図4(a)〜(c)、図5(a)〜(d)および図6(a)〜(d)は、仕切部材18のその他の形態の例を示した図である。なお、図4(a)〜(c)は、平面図であり、図5(a)〜(d)および図6(a)〜(d)は、正面図(側面図)である。また、図5(a)および(b)では、攪拌用回転体1の一部を断面で示している。
仕切部材18の形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状を採用することができる。例えば図4(a)に示されるように、仕切部材18は、遠心方向の突出量Pが本体10の周方向に沿って変化する形状に構成されるものであってもよい。また、仕切部材18は、本体10の周方向の全周にわたって設けられるものに限定されず、例えば図4(b)に示されるように、本体10の周方向において部分的に設けられるものであってもよい。換言すれば、複数の仕切部材18を本体10の周方向に配列するようにしてもよい。
また、例えば図4(c)に示されるように、仕切部材18に複数の貫通孔18cを設けるようにしてもよい。さらに、図示は省略するが、メッシュ状の部材から仕切部材18を構成するようにしてもよい。このように、仕切部材18の寸法および位置の設定に加え、仕切部材18の形状を適宜に設定することにより、攪拌用回転体1の周囲の流動状態をより細やかに制御することが可能となる。
また、仕切部材18は、図5(a)および(b)に示されるように、第1の仕切面18aまたは第2の仕切面18bに凸部18dを有するものであってもよい。第1の仕切面18aに適宜の構成の凸部18dを設けることで、吐出口14からの噴流と第1の仕切面18aの間における渦の発生状況を適宜に制御することが可能となる。また、第2の仕切面18bに適宜の構成の凸部18dを設けることで、本体10の底面10b近傍および第2の仕切面18b近傍の流動の状態を適宜に制御することが可能となる。
なお、凸部18dは、図5(a)および(b)に示されるように第1の仕切面18aまたは第2の仕切面18bの全周にわたり連続して設けられるものであってもよいし、断続して設けられるものであってもよい。また、凸部18dの形状、位置および個数が特に限定されないことはいうまでもない。また、凸部18dに代えて、凹部(窪み)を第1の仕切面18aまたは第2の仕切面18bに設けるようにしてもよい。
また、仕切部材18は、図5(c)に示されるように、曲折した部材から構成されるものであってもよい。また、図5(d)に示されるように、本体10の周方向に複数の仕切部材18を配列するようにした場合、各仕切部材18の中心軸C方向における位置をずらすようにしてもよい。このように、第1の仕切面18aおよび第2の仕切面18bに凹凸形状や段差、傾き等を適宜に設けることにより、攪拌用回転体1の周囲の流動状態をより細やかに制御することが可能となる。
また、仕切部材18は、第2の仕切面18bが本体10の底面10bと連続するものに限定されず、第2の仕切面18bが底面10bと連続しないものであってもよい。この場合、例えば図6(a)に示されるように、本体10の側面10cの中間部から仕切部材18を突出させるようにしてもよいし、図6(b)に示されるように、中心軸C方向に突出した後に遠心方向に突出する形状に仕切部材18を構成するようにしてもよい。このように、中心軸C方向における吐出口14と第1の仕切面18aの間の距離D1に加え、中心軸C方向における吸入口12と第2の仕切面18bの間の距離D2を適宜に設定することにより、攪拌用回転体1の周囲の流動状態をより細やかに制御することが可能となる。
また、仕切部材18は、図6(c)に示されるように、例えば棒状の接続部18eを介して本体10に接続され、本体10との間に隙間Gが形成された状態で設けられるものであってもよい。このように、本体10と仕切部材18の間に隙間Gを設けることにより、吐出口14からの噴流と第1の仕切面18aの間における渦の発生状況を制御することが可能となる。
なお、この場合の仕切部材18は、図6(c)に示されるように、本体10に対して中心軸C方向に離隔して設けられるものであってもよいし、遠心方向に離隔して設けられるものであってもよい。また、隙間Gの大きさおよび形状、ならびに接続部18eの形状および個数が特に限定されないことは、いうまでもない。
また、仕切部材18は、遠心方向に略平行な方向に突出するものに限定されず、図6(d)に示されるように、遠心方向に対して角度を有する方向(斜め方向)に本体10から突出するように設けられるものであってもよい。このように、仕切部材18の突出方向を調整することにより、攪拌用回転体1の周囲の流動状態をより細やかに制御することが可能となる。
なお、この場合の仕切部材18は、本体10から斜め方向に突出した後に遠心方向または中心軸C方向に突出するものであってもよいし、本体10から遠心方向または中心軸C方向に突出した後に斜め方向に突出するものであってもよい。また、図6(d)では、仕切部材18を吐出口14の反対側に向けて斜めに突出させた場合の例を示しているが、仕切部材18を吐出口14側に向けて斜めに突出させるようにしてもよいことはいうまでもない。
このように、仕切部材18の形状、寸法および位置を適宜に設定することで、攪拌用回転体1の周囲の流動状態を制御して被攪拌物100内に適切な循環流を発生させ、効率的な攪拌を行うことが可能となる。なお、仕切部材18は、被攪拌物100に対する全体的な攪拌力を維持するという観点からは、上述のように吐出口14からの噴流を阻害しない形状のものであることが好ましい。具体的には、仕切部材18は、吐出口14の方向から見た場合に、吐出口14と重ならない形状のものであることが好ましい。さらに、被攪拌物100の性状(例えば、粘性)によっては、仕切部材18は、吐出口14に繋がる流通路16(遠心方向部分16b)の内壁と連続する面を有しないことが好ましい。また、攪拌に要する動力費を削減するという観点からは、仕切部材18は、被攪拌物100中における回転抵抗を増大させない形状であることが好ましい。具体的には、仕切部材18は、中心軸Cと平行な断面の形状および位置が本体10の周方向に沿って略一定となる形状であることが好ましい。
図7(a)〜(d)は、本体10のその他の形態の例を示した図である。なお、図7(a)〜(c)は、正面図であり、図7(d)は、断面図である。本体10の形状は特に限定されるものではなく、種々の形状を採用することができる。例えば図7(a)に示されるように、本体10は、略半球と略円柱を組み合わせた略砲弾形状に構成されるものであってもよい。本体10をこのように構成することで、上方(駆動軸20側)からの流動をよりスムーズに吐出口14からの噴流に合流させることが可能となる。
また、本体10は、図7(b)に示されるように、吸入口12の一部(この例では、4つの吸入口12のうちの2つ)が上面10a(駆動軸20側)に設けられるものであってもよい。また、図7(c)に示されるように、本体10は、吸入口12が底面10bおよび上面10aにそれぞれ設けられ、吐出口14が上面10aの吸入口12および底面10bの吸入口12と繋がるように構成されるであってもよい。このように、底面10bだけでなく上面10aにも吸入口12を設けることで、被攪拌物100中の流動状態をより適切に制御することが可能となる。
また、本体10は、図7(d)に示されるように、駆動軸20に設けられた軸部流通路22と流通路16が繋がるように構成されるものであってもよい。この場合、軸部流通路22を介して被攪拌物100の外部の各種気体や液体、固体等を流通路16内に吸引し、吐出口14から被攪拌物100と共に噴出させることで、各種気体等を被攪拌物100中に混合、分散または溶解させることが可能となる。本実施形態では特に、仕切部材18によって吐出口14の近傍に渦を発生させるようにしているため、各種気体等の混合、分散または溶解を促進することが可能となっている。また、被攪拌物100に混入させた気泡を効率的にマイクロバブル化することが可能となっている。
その他、図示は省略するが、本体10の形状は、例えば球状や半球状、多角柱状等、その他の任意の形状を採用することができる。また、吸入口12および吐出口14の形状(断面形状)、ならびに流通路16の断面形状は、円形状に限定されるものではなく、例えば楕円形状や多角形状等、その他の形状であってもよい。また、吸入口12および吐出口14の方向は、中心軸C方向または遠心方向に対して角度を有する方向(斜め方向)であってもよい。また、流通路16は、滑らかに湾曲した曲線状の通路として構成されるものであってもよいし、吸入口12と吐出口14を直線的に繋ぐように構成されるものであってもよい。
また、本実施形態では、本体10の流通路16以外の部分を中実に構成しているが、本体10の流通路16以外の部分を中空状に構成するようにしてもよい。また、本体10を構成する材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属やセラミックス、樹脂、ゴム、木材等、使用条件に応じた適宜の材質を採用することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る攪拌用回転体2について説明する。図8(a)は、攪拌用回転体2の平面図であり、図8(b)は、攪拌用回転体2の正面図(側面図も同一)であり、図8(c)は、攪拌用回転体2の底面図である。本実施形態の攪拌用回転体2は、仕切部材18を吐出口14に対して吸入口12の反対側に設けるようにしたものであり、その他の構成は第1の実施形態の攪拌用回転体1と同一である。従って、以下の説明では、第1の実施形態と同一の部分については同一の部号を付すと共にその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図8(a)〜(c)に示されるように、本実施形態の仕切部材18は、側面10cの上面10a側端部から遠心方向に突出するように設けられた略鍔状の部材である。仕切部材18の駆動軸20側の面である第1の仕切面18aは、遠心方向と略平行に構成されると共に、本体10の上面10aと連続するように構成されている。また、仕切部材18の先端側の面である第2の仕切面18bは、本実施形態では吐出口14側の面となり、遠心方向と略平行に構成されている。
図9は、攪拌用回転体2の使用状態の一例を示した図である。図9に示されるように、本実施形態では、吐出口14よりも上方に位置する仕切部材18と吐出口14からの噴流との間に渦が発生することとなり、これにより、吐出口14からの噴流による吸引力が上方からの流動に作用しにくくなっている。従って、上方から攪拌用回転体2に向かう旋回流は、上面10aに吸入口12を設けていないことから、きわめて弱いものとなり、この結果、攪拌用回転体2よりも上方には弱い流動の循環流が発生することとなる。
一方、攪拌用回転体2よりも下方では、上方の循環流が弱くなったことに伴って、循環流の流動が促進されることとなる。この結果、下方から攪拌用回転体2に向かう旋回流はより強いものとなり、攪拌用回転体2から放射状に広がる流動は、この強い旋回流によって比較的早い段階で下方へと引き寄せられることとなる。すなわち、本実施形態では、攪拌用回転体2の下方、すなわち先端側に強い循環流を積極的に発生させると共に、この強い循環流の発生する範囲が遠心方向において狭められるようになっている。
従って、本実施形態の攪拌用回転体2によれば、攪拌用回転体2の下方の特定の領域に対し、より強い攪拌力を略集中的に及ぼすことが可能となっている。これにより、例えば被攪拌物100の乳化や、容器30の底部32に堆積した沈降物の分散等を迅速且つ効率的に行うことが可能となる。また、仕切部材18の寸法、形状および位置を調整することで、より強い攪拌力が及ぼされる領域の範囲、およびこの領域における攪拌力の強さを調整することができるため、被攪拌物100の性状等に応じた流動状態を被攪拌物100中に生成し、効率的な攪拌を行うことが可能となっている。
なお、第1の実施形態において説明した仕切部材18および本体10のその他の形態を、本実施形態においても適用可能であることはいうまでもない。また、第1の実施形態と同様に、被攪拌物100中における攪拌用回転体2の姿勢は、特に限定されるものではない。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る攪拌用回転体3について説明する。図10(a)は、攪拌用回転体3の平面図であり、図10(b)は、攪拌用回転体3の正面図(側面図も同一)であり、図10(c)は、攪拌用回転体3の底面図である。本実施形態の攪拌用回転体3は、仕切部材18を吐出口14に対して吸入口12側およびその反対側の両方に設けるようにしたものであり、その他の構成は第1または第2の実施形態の攪拌用回転体1または2と同一である。従って、以下の説明では、第1または第2の実施形態と同一の部分については同一の部号を付すと共にその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図10(a)〜(c)に示されるように、本実施形態では、仕切部材18は、側面10cの底面10b側端部および上面10a側端部の両方に設けられている。また、本実施形態では、2つの仕切部材18は略同一形状に構成されており、底面10b側の仕切部材18は、第2の仕切面18bが底面10bと連続するように構成され、上面10a側の仕切部材18は、第1の仕切面18aが上面10aと連続するように構成されている。
図11は、攪拌用回転体3の使用状態の一例を示した図である。図11に示されるように、本実施形態では、吐出口14からの噴流と上下の仕切部材18との間にそれぞれ渦が発生することとなり、これにより、吐出口14からの噴流による吸引力は、上方からの流動および下方からの流動のいずれにも作用しにくくなっている。
従って、下方から攪拌用回転体3に向かう旋回流および上方から攪拌用回転体3に向かう旋回流は、いずれも弱いものとなり、この結果、攪拌用回転体2から放射状に広がる流動がより遠方まで到達することが可能となる。すなわち、本実施形態では、攪拌用回転体3の上下の旋回流による影響を受けにくくすることで、攪拌用回転体2から放射状に広がる流動の直進性を高め、より遠方まで到達させることを可能としている。
従って、本実施形態の攪拌用回転体3によれば、遠心方向により広い範囲にわたって攪拌力を及ぼすことが可能となっている。これにより、例えば容器30の幅方向寸法が大きいような場合にも、被攪拌物100の略全体に攪拌力を及ぼすことができるため、効率的な攪拌を行うことが可能となっている。また、被攪拌物100の略全体に攪拌力を及ぼしながらも、攪拌用回転体3の上下の旋回流が強くなりすぎないようにすることができるため、例えば容器30の底部32の摩耗といった強い旋回流に起因する不具合を防止することが可能となっている。
また、2つの仕切部材18の寸法、形状および位置を調整することで、放射状に広がる流動の到達範囲および上下の旋回流の強さを調整することができるため、容器30の形状等に応じた流動状態を被攪拌物100中に生成し、効率的な攪拌を行うことが可能となっている。さらに、2つの仕切部材18の寸法、形状および位置を適宜に異ならせることで、上下の旋回流のバランスを調整することができる。
なお、第1の実施形態において説明した仕切部材18および本体10のその他の形態を、本実施形態においても適用可能であることはいうまでもない。また、第1の実施形態と同様に、被攪拌物100中における攪拌用回転体3の姿勢は、特に限定されるものではない。
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係る攪拌用回転体4について説明する。図12(a)は、攪拌用回転体4の平面図であり、図12(b)は、攪拌用回転体4の正面図(側面図も同一)であり、図12(c)は、攪拌用回転体4の底面図である。本実施形態の攪拌用回転体4は、第1〜第3の実施形態の攪拌用回転体1〜3に調整部材19を追加したものであり、その他の構成は第1〜第3の実施形態の攪拌用回転体1〜3と同一である。従って、以下の説明では、第1〜第3の実施形態と同一の部分については同一の符号を付すと共にその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図12(a)〜(c)に示す例では、仕切部材18は、第1の実施形態の攪拌用回転体1と同様に、側面10cの底面10b側端部に設けられ、第2の仕切面18bが底面10bと連続するように構成されている。そして、調整部材19は、仕切部材18の吐出口14側の面である第1の仕切面18aの外周端部から吐出口14側に向けて突出する略四角柱状の部材であり、本体10の周方向に沿って複数が配列されている。換言すれば、調整部材19は、本体10の周方向に断続して設けられている。
このように、調整部材19を断続して設けることで、攪拌用回転体4の周辺の流動を適宜にかき乱すことができるため、吐出口14の周辺における流動や渦の発生状況をより適切な状態とすることが可能となる。また、調整部材19の仕切部材18からの突出量Paや調整部材19の間隔Sを調整することで、攪拌用回転体4の周辺の流動状態をより細やかに調整し、所望の流動状態を生成することができる。
また、図12(b)に示されるように、吐出口14の方向から見た場合に調整部材19が部分的に吐出口14と重なるようにすることで、吐出口14からの噴流を、流動方向を変更することなく適宜に攪乱することができる。これにより、全体的な攪拌力を維持したまま、例えば駆動軸20の軸部流通路22(図7(d)参照)を介して被攪拌物100中に混入した各種気体、液体または固体等の混合、分散または溶解をさらに効率化したり、マイクロバブルの生成能力をさらに高めたりすることが可能となる。
図13(a)〜(c)、図14(a)〜(c)および図15(a)〜(c)は、攪拌用回転体4のその他の形態の例を示した図である。なお、図13(a)および(b)、図14(a)および(b)ならびに図15(a)〜(c)は、正面図(側面図)であり、図13(c)および図14(c)は、平面図である。
調整部材19の形状は特に限定されるものではなく、種々の形状を採用することができる。調整部材19は、例えば図13(a)に示されるように、略三角形の平板状に構成されるものであってもよいし、図示は省略するが、例えば円柱状や円錐状等のその他の形状に構成されるものであってもよい。また、調整部材19は、中心軸C方向と平行な方向に突出するものに限定されず、中心軸Cに対して角度を有する方向(斜め方向)に突出するものであってもよい。
また、例えば図13(b)に示されるように、調整部材19の大きさ、形状または間隔を本体10の周方向の位置に応じて変更するようにしてもよい。この場合、図示は省略するが、吐出口14の方向から見た場合に調整部材19と吐出口14が完全に重ならないようにしてもよい。すなわち、調整部材19は、吐出口14の方向から見た場合に吐出口14と部分的に重なるものであってもよいし、完全に重ならないものであってもよい。また、本体10および仕切部材18に対する調整部材19の位置は、特に限定されるものではなく、任意の位置に設けることができる。さらに、例えば図13(c)に示されるように、調整部材19を複数列に配置するようにしてもよい。
また、調整部材19は、例えば図14(a)または(b)に示されるように、メッシュ状に構成されるものであってもよい。この場合にも、メッシュ状でない調整部材19を本体10の周方向に断続して設けた場合と同等の効果を奏することができる。なお、この場合、図14(a)または(b)に示されるように、メッシュ状の調整部材19を本体10の周方向に連続して設けるようにしてもよいし、図示は省略するが、メッシュ状の調整部材19を本体10の周方向に断続して設けるようにしてもよい。また、メッシュ状の調整部材19を複数列または複数層に重ねて配置するようにしてもよいし、メッシュ状の調整部材19とメッシュ状でない調整部材19とを組み合わせるようにしてもよい。
また、調整部材19を設ける場合においても、仕切部材18の構成は特に限定されるものではなく、第1の実施形態において説明したような各種構成を採用することができる。例えば、図14(c)に示されるように、本体10の周方向に沿って複数の仕切部材18を配列し、仕切部材18ごとに調整部材19を設けるようにしてもよい。
また、仕切部材18は、例えば図15(a)に示されるように、吐出口14に対して吸入口12の反対側に設けられるものであってもよいし、例えば図15(b)および(c)に示されるように、吐出口14に対して吸入口12側およびその反対側の両方に設けられるものであってもよい。すなわち、第2の実施形態の攪拌用回転体2または第3の実施形態の攪拌用回転体3に調整部材19を設けるようにしてもよい。
なお、攪拌用回転体3に調整部材19を設ける場合、調整部材19は、例えば図15(b)に示されるように、吐出口14の両側の仕切部材18を繋ぐように設けられるものであってもよいし、例えば図15(c)に示されるように、吐出口14の両側の仕切部材18ごとに独立して設けられるものであってもよい。
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態に係る攪拌装置5について説明する。本実施形態の攪拌装置5は、第1〜4の実施形態の攪拌用回転体1〜4を中心軸C方向に複数連結したものである。図16は、攪拌装置5の正面図(側面図)であり、駆動軸20を介して3つの攪拌用回転体1〜3を連結した例を示している。
このように、複数の攪拌用回転体1〜4を回転軸方向に連結することで、攪拌効率をさらに向上させることが可能であり、特に、被攪拌物100を収容する容器30の深さが深いような場合に効果的である。なお、攪拌装置5は、攪拌用回転体1〜4のうち、同一の構成のものを複数連結したものであってもよいし、異なる構成のものを複数連結したものであってもよい。すなわち、例えば容器30の深さ等、中心軸C方向の位置に応じて適切な構成の攪拌用回転体1〜4を選択し、配置することで、さらに攪拌効率を向上させることが可能となる。また、連結する攪拌用回転体1〜4の個数が限定されないことは、いうまでもない。
以上説明したように、上記第1〜第4の実施形態に係る攪拌用回転体1〜4は、回転軸(中心軸C)を中心に回転する本体10と、本体10の表面に設けられる吸入口12と、本体10の表面において吸入口12よりも回転軸から遠心方向外側の位置に設けられる吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐ流通路16と、吐出口14に対する回転軸方向の一側または他側において本体10から突出するように設けられる仕切部材18と、を備えている。
このような構成とすることで、吸入口12側(先端側)またはその反対側(駆動軸20側)から攪拌用回転体1〜4に向かう流動と、吐出口14からの噴流により攪拌用回転体1〜4から放射状に広がる流動とを適宜に隔絶することが可能となるため、被攪拌物100中の流動状態を所望の流動状態に制御することができる。これにより、被攪拌物100の状態によらず効率的な攪拌を行うことが可能となる。
また、仕切部材18は、吐出口14の方向から見た場合に吐出口14と重ならない形状に構成されることが好ましい。このようにすることで、吐出口14からの噴流を阻害しないようにすることが可能となるため、被攪拌物100に対する全体的な攪拌力を維持したまま、被攪拌物100中に適切な流動状態を発生されることができる。
また、攪拌用回転体1では、仕切部材18は、吐出口14と吸入口12の間に設けられている。このようにすることで、吸入口12側(先端側)から攪拌用回転体1に向かう流動を適宜に弱め、被攪拌物100中の流動状態を所望の流動状態に制御することができる。
また、攪拌用回転体2では、仕切部材18は、吐出口14に対して吸入口12の反対側に設けられている。このようにすることで、吸入口12の反対側(駆動軸20側)から攪拌用回転体2に向かう流動を適宜に弱め、被攪拌物100中の流動状態を所望の流動状態に制御することができる。
また、攪拌用回転体3では、仕切部材18は、吐出口14に対して回転軸(中心軸C)方向の両側に設けられている。このようにすることで、吸入口12側(先端側)およびその反対側(駆動軸20側)から攪拌用回転体1〜4に向かう流動を適宜に弱め、被攪拌物100中の流動状態を所望の流動状態に制御することができる。
また、仕切部材18は、本体10の周方向に連続して設けられるものであってもよい。このようにすることで、吸入口12側(先端側)またはその反対側(駆動軸20側)から攪拌用回転体1〜4に向かう流動と、吐出口14からの噴流により攪拌用回転体1〜4から放射状に広がる流動とをより効果的に隔絶することができる。
また、仕切部材18は、回転軸(中心軸C)と平行な断面の形状および位置が本体10の周方向に沿って略一定となる形状に構成されるものであってもよい。このようにすることで、攪拌用回転体1〜4の回転抵抗を増大させることなく、被攪拌物100中の流動状態を所望の流動状態に制御することができる。
また、攪拌用回転体4は、仕切部材18から吐出口14側に向けて突出する調整部材19を備え、調整部材19は、本体10の周方向に断続して設けられている、または仕切部材18から吐出口14側に向けて突出するメッシュ状に構成されている。このようにすることで、攪拌用回転体4の周辺の流動を適宜にかき乱すことが可能となるため、攪拌用回転体4の周辺の流動状態をより細やかに調整し、所望の流動状態を生成することができる。また、被攪拌物100中に混入した各種気体、液体または固体等の混合、分散および溶解、ならびにマイクロバブルの生成をより効率的に行うことができる。
また、上記第5の実施形態に係る攪拌装置5は、攪拌用回転体1〜4を、回転軸(中心軸C)方向に複数配置して構成されている。このような構成とすることで、攪拌用回転体1〜4を適宜に組み合わせて配置し、より効率的な攪拌を行うことができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の攪拌用回転体および攪拌装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。