JP6621252B2 - 治療耐性がんに対する治療耐性低減剤 - Google Patents

治療耐性がんに対する治療耐性低減剤 Download PDF

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Description

本発明は、インターロイキン−34(IL−34)とコロニー刺激因子−1受容体(CSF−1R)との結合を阻害する物質及び/又はがん細胞におけるIL−34の発現を抑制する物質を有効成分とする、治療耐性がんに対する治療耐性低減剤に関する。
がんの治療法には、がん組織を摘出する外科的療法、抗がん剤を投与する化学療法、放射線を照射する放射線療法及びがんに対する免疫を誘導するがん免疫療法などがある。これらのうち、外科的治療法を除く他の治療法において、治療を実行することによってがんがその治療に対して耐性を示す治療耐性がんとなるという問題を抱えている。
特に、化学療法及び放射線療法において治療耐性がんの出現は深刻な問題である。化学療法及び放射線療法は、その性質上、がん組織と正常組織とを厳格に区別して治療を行うことが元々困難な方法であり、例えば化学療法では薬効と毒性との差が小さいため副作用が発生し易く、また放射線療法はがん周辺の正常組織にも放射線を照射せざるを得ないという問題を抱えている。そのため、がんが治療耐性を獲得してしまうと、より多量の抗がん剤の投与又はより多量若しくは高強度の放射線照射が必要となるが、副作用が耐えがたいものとなったり正常組織の被曝量が高くなり過ぎたりすることで、がん治療を中止せざるを得なくこともしばしばである。
特に、抗がん剤の投与という最も一般的な化学療法は、同時に多くの治療耐性がん、すなわち薬剤耐性がんを生み出している。薬剤耐性がんが現実問題となっている抗がん剤の例としては、乳がん及び卵巣癌に対するドキソルビシンン、タモキシフェン、シスプラチン、ドセタキセルなど、非小細胞肺癌の治療薬であるイレッサやタルセバなどが挙げられる。
がんが治療耐性を獲得する又は治療耐性を発揮する機構及びこれに関与する分子の同定、さらには当該分子の関与を抑制する技術の開発は、がんの治療耐性という問題を解消し、既存の治療法の有効性を高めるためにも有益である。
また、治療耐性がんに対しても薬効が期待できる新たながん治療法の開発にも注目が集まっている。特に、がん細胞による免疫抑制作用の阻害は有望な治療標的であり、例えば、宿主側の免疫細胞の活性を抑制する機能を持つ免疫チェックポイント分子の阻害薬は、がん細胞による免疫抑制を解除し、宿主側の免疫応答を活性化させる新たな抗がん剤として精力的な開発が進められている。
一方、CSF−1R(Colony Stimulating Factor−1 Receptor、M−CSFR、CD−115又はc−fmsとも呼ばれる)は、Uniprotアクセッション番号:P07333として登録されている、細胞外ドメインに免疫グロブリン(Ig)モチーフを有する一本鎖膜貫通受容体型チロシンキナーゼである。
CSF−1Rの特異的リガンドとして、M−CSF(マクロファージコロニー刺激因子、CSF−1とも呼ばれる)及びIL−34が知られている(非特許文献1)。IL−34はUniprotアクセッション番号:Q6ZMJ4として登録されているヒトのサイトカインであり、これをコードする遺伝子の塩基配列は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)にGene ID:146433として登録されている。
M−CSF及びIL−34は、CSF−1Rのチロシンキナーゼ活性を通じた細胞の分化、増殖、移動及び単球系列に由来する前駆体マクロファージ及び破骨細胞の生存に関連することが確認されているが、一方で前記2つのリガンドは、初代マクロファージにおけるMCP−1及びエオタクシン2などのケモカインの産生、TF−1−fms細胞における形態変化、及びJ774A.1細胞の遊走を誘導する能力等において異なると考えられている(非特許文献2)。
IL−34及び/又はCSF−1Rを標的とした医薬としては、IL−34に結合することでCSF−1RとIL−34との結合を阻害することのできる単離抗体を関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、マクロファージ活性化症候群(MAS)、円板状ループス、サルコイドーシス、血管炎、及び移植片対宿主病などの骨髄病原性免疫疾患の治療に用いることが報告されている(特許文献1)。また、CSF−1Rに結合してCSF−1RとIL−34との結合を阻害することのできる抗体を白血病、乳癌、子宮内膜癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、腎臓癌、多発性骨髄腫などの治療に用いることも報告されている(特許文献2)。
しかし、IL−34とがんの治療耐性との関連性は未だ確認されていない。
特表2015−510510号公報 特表2013−529183号公報
Linら、Science、2008年、第320巻、第807−811ページ Chiharaら、Cell Death and Differentiaton、2010年、第17巻、第1917−1927ページ
本発明は、がんの治療耐性、特に薬剤耐性を解消又は低減することができ、がん治療の有効性を高めることができる、治療耐性がんに対する治療耐性低減剤を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、がんの治療耐性の一種である薬剤耐性に関するメカニズムを研究する過程で、IL−34が薬剤耐性に関与していることを実験的に見いだし、下記の各発明を完成させた。
(1)IL−34とCSF−1Rとの結合を特異的に阻害する物質及び/又はがん細胞におけるIL−34の発現を抑制する物質を有効成分とする、治療耐性がんに対する治療耐性低減剤。
(2)IL−34に結合することでIL−34とCSF−1Rとの結合を特異的に阻害する物質を有効成分とする、(1)に記載の治療耐性低減剤。
(3)IL−34に対する特異抗体を有効成分とする、(1)又は(2)に記載の治療耐性低減剤。
(4)抗がん剤投与治療又は放射線照射治療において併用するための、(1)〜(3)のいずれかに記載の治療耐性低減剤。
本発明によれば、抗がん剤投与又は放射線照射などの治療法に対して耐性を示すがんの治療耐性を低減させることができ、がん治療の有効性を高め、副作用等の発生を抑えることができる。
ヒト健常ドナー由来末梢血リンパ球(PBL)をドキソルビシン(DOX)感受性ヒト肺腺がん細胞株A549細胞株(A549−DS)の培養上清又はDOX耐性A549細胞株(A549−DR)の培養上清で刺激した後のFACS解析の結果を示す図である。図1上段は刺激後の細胞のCD14及びCD11bについてのドットプロットであり、図1下段はCD14CD11b細胞(上段図の太枠内に存在する細胞)の比率を示すグラフである。 ヒト健常ドナー由来単球をGM−CSF、M−CSF、A549−DS培養上清又はA549−DR細胞培養上清で刺激した後の顕微鏡観察像である。 ヒト健常ドナー由来単球をGM−CSF、M−CSF、A549−DS細胞培養上清又はA549−DR細胞培養上清で刺激した後の、CD14、CD11b、CD68及びCD163のmRNA発現レベルを示すグラフである。グラフの横軸は、対照(DMEMのみで培養した単球)における発現レベルと比較した相対値である。 A549−DR細胞におけるM−CSF mRNAの発現量を、A549−DSにおける発現量に対する相対値で示したグラフである。 A549−DS細胞培養上清又はA549−DR細胞培養上清中のIL−34濃度を示すグラフである。 ヒト健常ドナー由来単球を、A549−DR細胞培養上清、抗IL−34中和抗体処理後のA549−DR細胞培養上清、又はA549−DR−IL−34−KO細胞の培養上清で刺激した後の、CD14、CD11b、CD68及びCD163のmRNA発現レベルを示す図である。グラフの縦軸は、対照(DMEMのみで培養した単球)における発現レベルと比較した相対値である。 A549−DS細胞、A549−DR細胞、A549−DR−IL−34−KO細胞(図7上段)及び抗IL−34抗体で中和したA549−DR細胞(図7下段)を、DOX存在下又は非存在下で培養した場合の細胞生存率を示すグラフである。 A549−DS細胞、A549−DR細胞又はA549−DR−IL−34−KO細胞を接種したヒト化マウスにおける、DOX又はPBS投与による腫瘍サイズの変化を示す図である。図8左側のグラフの横軸は、各がん細胞を接種してからの日数を表す。 A549−DS細胞、A549−DR細胞又はA549−DR−IL−34−KO細胞を接種したヒト化マウスの腫瘍中のCD68CD163細胞の数を示すグラフである。
本発明者らは、以下の1)〜5)に示される各実験を通じて、がん細胞株において発現しているIL−34が、がんの治療耐性に関与していることを見いだした。
1)薬剤耐性がん細胞の作製
ヒト肺腺がん細胞株A549は、American Type Cell Culture(ATCC、USA)から入手した。細胞培養は、ウシ胎児血清(終濃度10%)、ペニシリン(終濃度100U/mL)及びストレプトマイシン(終濃度100μg/mL)を加えたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(SIGMA)を用いて、37℃、5%CO2下で行った。DOX濃度を0.01〜1μMまで段階的に上昇させたDMEM中でA549細胞を37℃、5%CO下で培養し、DOX耐性を獲得した細胞を選抜することにより、DOX耐性A549細胞株(A549−DR)を作製した。得られたA549−DR細胞は、1μM DOXに曝露することで、その薬剤耐性を維持した。
2)A549−DR細胞の培養上清が単球の分化に対して及ぼす効果
上記1)で作製したA549−DR細胞を滅菌PBSで5回洗浄し、DOX非添加DMEM10mLを予め分注した細胞培養プレートに1×10個/mLとなるように播種し、72時間培養した後、培養上清を回収した。薬剤耐性を誘導していないA549細胞(A549−DS)の培養上清も同様に調製した。
ヒト健常ドナーの末梢血から常法に従って末梢血リンパ球(PBL)を調製し、これをDMEM、A549−DS培養上清又はA549−DR細胞培養上清50%を添加したDMEM中で培養することにより、PBLを刺激した。1週間後、浮遊細胞を回収し、単球及びマクロファージが発現する細胞表面抗原であるCD14及びCD11bについて、フローサイトメーター(Biolegend、FACS Canto II)を用いてFACS解析を行った(モノクローナル抗体試薬:Human Anti CD14、Human Anti CD11b(いずれもBiolegend))。結果を図1に示す。
A549−DR細胞培養上清で刺激した場合、培地又はA549−DS細胞培養上清で刺激した場合と比べ、CD14CD11b細胞数の増加が認められた。この結果から、A549−DR細胞上清中には単球の分化に影響を与える因子が存在することが示唆された。
3)A549−DR細胞培養上清に含まれる単球分化誘導因子の検討
マグネティックセルソーティングシステム(Miltenyi Biotech)を用いてヒト健常ドナーからCD14単球を分離し、これを上記2)と同様にA549−DS又はA549−DR細胞の培養上清で刺激した。6〜7日後に単球を回収し、Sepazol(nacalai)で全RNAを抽出して、マクロファージマーカーとして知られるCD14、CD11b、CD68及びCD163の発現レベルをRT−PCRで測定した。RT−PCRは、表1に記載のプライマーセットを用いて、Power SYBR(登録商標) Green(Applied Biosystems)を使用して、製造業者のプロトコールに従って実施した。
Figure 0006621252
また、比較のため、GM−CSF(25ng/mL)又はM−CSF(25ng/mL)で刺激して単球を分化させ、同様の評価を行った。単球は、GM−CSFによる刺激でM1マクロファージに、M−CSFによる刺激でM2マクロファージに分化することが知られている。
刺激後の細胞の形態観察の結果を図2に、CD14、CD11b、CD68及びCD163の発現レベルの比較を図3に示す。A549−DR細胞培養上清の存在下で単球はマクロファージへと分化し、その形態はM−CSFにより誘導されるマクロファージと類似していることが確認された。
4)A549−DR細胞におけるM−CSF及びIL−34の発現解析
上記3)の結果から、A549−DR細胞はM−CSFの分泌を介して単球をM2マクロファージに分化させるという仮説を立て、A549−DR細胞におけるM−CSF mRNAの発現をRT−PCRにより測定した。RT−PCRは、表1に記載のプライマーセットを用いて、上記3)と同様の方法で実施した。結果を図4に示す。仮説に反し、M−CSFのmRNA発現量は、A549−DSと比較してA549−DR細胞で低下していた。
A549−DR細胞培養上清により誘導されたマクロファージはM−CSF誘導マクロファージと同様の形態及び表現型を持つことから、A549−DR細胞はM−CSFの受容体であるCSF−1Rの別のリガンドを産生している可能性があると考え、CSF−1Rのリガンドとして知られるIL−34に着目した。A549−DS細胞及びA549−DR細胞の培養上清中のIL−34をELISAキット(Biolegend)を用いて測定した結果を図5に示す。A549−DS培養上清中でIL−34は検出されなかった一方、A549−DR細胞培養上清中には多量のIL−34が確認された。
5)IL−34欠失がA549−DR細胞培養上清の単球分化能に及ぼす効果
薬剤耐性におけるIL−34の役割を解明するため、CRISPRシステムを利用してIL−34ノックアウトA549−DR細胞株(A549−DR−IL−34−KO)を作製した。具体的には、pCas−ガイドベクター中にIL−34のガイドRNAを組み込んだIL34−gene knockout kit via CRISPR,Human(−)(Origene)を、トランスフェクション試薬としてFuGENE(登録商標) 6 Transfection Reagent(Promega)を用いて、A549−DR細胞にトランスフェクトした。IL−34遺伝子のノックアウトは、RT−PCR及びELISAによりIL−34のmRNA及びタンパク質が検出されないことで確認した。
作製したA549−DR−IL−34−KO細胞の培養上清を上記2)と同様に調製し、単球の分化に与える影響を評価した。また、上記2)で得たA549−DR細胞の培養上清に抗IL−34中和抗体(R&D systems、MAB5265、10μg/mL)を加えて60分間反応させることでIL−34の中和処理を行い、中和後の上清を同様に評価した。
CD14、CD11b、CD68及びCD163の発現レベルの比較を図6に示す。A549−DR細胞培養上清刺激細胞において認められた細胞表面抗原の発現レベルの増加は、IL−34の中和又はノックアウトにより減少した。したがって、IL−34を欠失させることにより、A549−DR細胞培養上清は、単球をM2マクロファージに分化させる能力を失うことが確認された。
以上の結果及び後述の実施例から、薬剤耐性がん細胞であるA549−DR細胞は、産生するIL−34分泌を介して自身の薬剤耐性を維持すると共に、単球の免疫抑制性M2マクロファージへの分化を促進することが示された。腫瘍内又はその近傍に存在するM2マクロファージは腫瘍関連マクロファージ(Tumor Associated Macrophages、TAMs)としても知られ、腫瘍におけるTAMsの集積が化学療法又は放射線療法の有効性を損なう原因の一つであることが報告されている(Tangら、Immunology、2012年、第138巻、第93−104ページ)。また、IL−34はCSF−1Rのリガンドとしてこれに結合することで単球の免疫抑制性M2マクロファージへの分化を促進することが知られている。したがって、がん細胞におけるIL−34の発現を抑制するか、又はIL−34とCSF−1Rとの結合を阻害することにより、がんがIL−34によって治療耐性を獲得することを妨げることができると期待される。
本発明の治療耐性低減剤は、IL−34とヒトCSF−1Rとの結合を特異的に阻害する物質及び/又はがん細胞におけるIL−34の発現を抑制する物質を有効成分とするものである。本発明の治療耐性低減剤は、治療に元々耐性を示す耐性がん、及び治療を行うことでその治療に対する耐性を獲得するに至った獲得性治療耐性がんのいずれにも適用することができるが、後者の獲得性治療耐性がんへの適用が好ましい。
IL−34の発現を抑制する物質としては、IL−34をコードしている遺伝子からのRNA転写及びタンパク質翻訳を抑制することのできる物質を挙げることができる。そのような物質の例としては、前記NCBIにGene ID:146433として登録されているIL−34をコードしている遺伝子の塩基配列を基にして当業者が設計、作製することができるアンチセンスRNA又はsiRNAなどの阻害性核酸である。
前記阻害性核酸は、塩基配列の一部がヌクレアーゼによる分解に対する安定性を向上させることのできる修飾を受けたRNA、又は塩基配列の一部がヌクレアーゼによる分解に耐性を示す非天然塩基に置換されたRNAであってもよい。修飾される又は置換される塩基の種類又は個数は、IL−34をコードしている遺伝子からのRNA転写及びタンパク質翻訳を抑制する能力を失わない限り、特に制限は無い。
前記阻害性核酸は、遺伝子組み換え技術又は化学合成技術を利用して人工的に合成することができる。遺伝子組み換え方法、核酸の化学合成方法、また非天然型の塩基の合成手法又はこれを含む核酸の合成手法としては、当業者に知られ又は周知である方法を採用することができる。またいわゆるDNAシンセサイザーなどの機器を用いることで、核酸を合成してもよい。
前記阻害性核酸はそのまま生体に投与されてもよいが、がん組織に対して選択的に投与される方法、特にがん細胞内に導入することができる方法により投与されることが好ましい。かかる目的において、前記阻害性核酸は核酸導入用試薬と組み合わせて使用されることが好ましい。該核酸導入用試薬の例としては、アテロコラーゲン、リポソーム、ナノパーティクル、リポフェクチン、リポフェクタミン、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、あるいはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質等を挙げることができる。また、適当なウイルスベクターを用いて腫瘍組織中の細胞内に導入してもよい。
IL−34とヒトCSF−1Rとの結合を特異的に阻害する物質としては、CSF−1R又はIL−34に、特にIL−34に特異的に結合することで、IL−34とヒトCSF−1Rとの結合を阻害する物質を有効成分とするものが好ましい。そのような物質の例は、CSF−1R上のIL−34結合部位をブロックすることでIL−34とCSF−1Rとの結合を阻害する抗CSF−1R抗体、前記結合部位とは異なる部位でCSF−1Rに結合するが立体障害的にIL−34とCSF−1Rとの結合を阻害する抗CSF−1R抗体、IL−34上のCSF−1R結合部位をブロックすることでIL−34とCSF−1Rとの結合を阻害する抗IL−34抗体、又は前記結合部位とは異なる部位でIL−34に結合するが立体障害的にIL−34とCSF−1Rとの結合を阻害する抗IL−34抗体などを挙げることができる。CSF−1RはIL−34の他にM−CSFとも結合することから、本発明においてはM−CSFとCSF−1Rとの結合に影響を与えないという点で、IL−34に結合する抗体の利用が好ましい。
本発明において利用される前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはヒト抗体であり得、また当該抗体のFab、Fab’若しくはF(ab’)2などの抗体断片も本発明において利用することができる。
抗体は、好ましくは遺伝子組換え手法で作製された組換えヒトIL−34を抗原としてウサギ、マウス、ラットなどの適当な実験動物を免疫することを含む、一般的な抗体作製方法によって調製することができる。あるいは、前掲特許文献1に記載されている抗IL−34抗体、R&D systemsから市販されている抗IL−34抗体であるMAB5265、その他の既存の抗IL−34抗体を使用してもよい。
上記抗体を有効成分とする本発明の治療耐性低減剤は、抗体を含有する医薬製剤に用いられる一般的な担体を用いて凍結乾燥製剤又は水溶液の形態に調製されて使用されることが好ましい。担体の例としては、緩衝剤、抗酸化剤、保存剤、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、キレート化剤及び非イオン性界面活性剤などを挙げることができるが、これらには限定されない。
本発明の治療耐性低減剤は、IL−34又はCSF−1Rに結合してIL−34の機能を阻害することのできる、前記阻害性核酸又は抗体以外の化合物であってもよい。そのような化合物は、CSF−1Rを発現している適当な細胞とIL−34を用いた結合阻害活性のスクリーニングを通じて探索することができる。
本発明の治療耐性低減剤は、先に例示されるもの以外の薬学的に許容される賦形剤、担体、医薬などと医薬組成物を形成し又は製剤化して使用することができる。薬学的に許容される成分は当業者において周知であり、当業者が通常の実施能力の範囲内で、例えば第十六改正日本薬局方その他の規格書に記載された成分から製剤の形態に応じて適宜選択して使用することができる。
本発明の治療耐性低減剤は、筋内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与又はがん組織への直接投与など非経口的に投与されることが好ましく、そのような投与経路に適した製剤、例えば注射剤又は点滴剤などであることが好ましい。
本発明における治療耐性低減剤は、抗がん剤投与による化学療法、放射線療法及び/又は免疫療法の実施において併用されることが好ましい。特に抗がん剤投与による化学療法における併用が好ましい。本発明の治療耐性軽減剤の併用が有効な抗がん剤としては、ドキソルビシンン、タモキシフェン、シスプラチン及びドセタキセルなどを挙げることができるが、これらには限定されない。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例1>インビトロでのDOX耐性低減効果の確認
A549−DS細胞、A549−DR細胞、A549−DR−IL−34−KO細胞をDOX添加(終濃度1μM)DMEM培地又はDOX非添加DMEM培地で培養し、72時間後、MTTアッセイ(細胞増殖測定キット、ロシュアプライド)を行って細胞生存率を測定した。同様に、A549−DR細胞を、抗IL−34中和抗体を終濃度0.01〜10μg/mLで添加したDOX添加又は非添加培地で培養し、細胞生存率を同様に測定した。結果を図7に示す。
A549−DR細胞はDOX存在下でも生存率が低下せず、DOX耐性を示した。一方、A549−DR−IL−34−KO細胞及び抗IL−34抗体で中和したA549−DR細胞はDOXへの感受性を回復しており、IL−34の欠失によるDOX耐性の低減が認められた。
<実施例2>インビボでのDOX耐性低減効果の確認
NOGマウス(NOD/Shi−Scid IL−2RγKO Jic、雌性、6週齢)にX線(2.5G)を照射し、24時間後にヒト骨髄細胞200万個(Stem cell technologies)を移植した。3週間後、マウスに1×10個のA549−DS細胞、A549−DR細胞、A549−DR−IL−34−KO細胞を接種し、腫瘍サイズが5mmに達したら(がん細胞接種から1週間後)、DOXを10mg/kg/マウスの用量で週に2回、合計4回、静脈内投与した。対照群には、DOXの代わりにPBSを同量投与した。試験終了後、摘出した腫瘍から単細胞懸濁液を調製し、これをanti−CD68、anti−CD163(メーカー名Biolegend)で染色し、FACS解析によりCD68CD163細胞の数を評価した。
腫瘍サイズの推移を図8左に、試験終了時の腫瘍サイズを図8右に示す。A549−DR腫瘍のサイズはDOX投与により大きく変動しなかったが、A549−DR−IL−34−KO腫瘍のサイズはDOX投与により有意に減少した。
腫瘍中のCD68CD163細胞、すなわちM2マクロファージの数を図9に示す。A549−DR腫瘍に浸潤したM2マクロファージの数は、A549−DS腫瘍のそれよりも多かった。他方、IL−34をノックアウトしたA549−DR腫瘍においては、M2マクロファージ数は低下した。
本発明の治療耐性がんに対する治療耐性低減剤は、がんに対して化学療法、放射線療法又は免疫療法を行う際に併用することで各治療法の有効性を維持することができる医薬としての産業上の利用可能性を有する。

Claims (3)

  1. インターロイキン−34に結合することでインターロイキン−34とコロニー刺激因子−1受容体との結合を特異的に阻害するインターロイキン−34に対する特異抗体、又は当該特異抗体のインターロイキン−34への特異的結合能を有する断片を有効成分とする、治療耐性がんに対する治療耐性低減剤。
  2. がん細胞におけるインターロイキン−34の発現を抑制する阻害性核酸を有効成分とする、治療耐性がんに対する治療耐性低減剤。
  3. 化学療法、放射線療法及び/又は免疫療法において併用するための、請求項1又は2に記載の治療耐性低減剤。
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