以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。尚、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
図1は、実施形態における水中通信システム5の構成例の概略を示す図である。この水中通信システム5は、水中通信の性能を試験するための実験機として使用され得る。図2は、水中通信システム5のハードウェア構成を示すブロック図である。
水中通信システム5は、双方向に通信可能な第1通信装置110及び第2通信装置120を含む。第1通信装置110は、第1コイル結合体23、コンデンサCr1,Cr2(図4参照)、PLC(Power Line Communication)アダプタ21、DCDCコンバータ25、バッテリ26、プロセッサ27、及びカメラ28を有する。第2通信装置120は、第2コイル結合体43、コンデンサCr3,Cr4(図4参照)、PLCアダプタ41、及び計測用PC(personal computer)45を有する。第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43は、それぞれ、複数のコイルを有する。
第1通信装置110は、防水容器160に収容される。防水容器160は、内部に水が侵入しないように密閉される開閉自在な容器でよい。また、防水容器160は、電波を通しやすい樹脂(例えばアクリル)で成形される。防水容器160は、水中(例えば海中)に配置される。図1では、防水容器160は、水槽150に配置されている。防水容器160は、水槽150の枠体に固定されたパイプ170に、支持部材165を介して懸架される。支持部材165は、パイプ170の長手方向に移動自在である。防水容器160は、水槽150に貯留する水中に没するように配置されてよい。水槽150には、水の代わりに、海水や塩水が貯留されてもよい。なお、図1、図2では、コンデンサCr1,Cr2は、図示省略されているが、防水容器160の内部に配置される。防水容器160は、例えば耐圧構造を有してよい。
なお、第1コイル結合体23の各コイルは、防水容器160の外部に配置されてもよい。この場合、第1コイル結合体23の各コイルは、水槽150内の水と接触するので、被覆されている。また、第1コイル結合体23は、防水容器160の外部において、防水性を有する管に内包されてもよい。また、コンデンサCr1,Cr2は、防水対策が施されて水槽150内に配置されてもよい。
第2通信装置120では、第2コイル結合体43は、水槽150の枠体に固定されたパイプ170に、支持部材125を介して懸架される。支持部材125は、パイプ170の長手方向に移動自在である。第2コイル結合体43は、水槽150に貯留する水中に没するように、かつ、第1通信装置110の第1コイル結合体23と対向するように配置される。第1コイル結合体23と第2コイル結合体43とが対向するように配置されるとは、第1コイル結合体23に含まれる各コイルが定義する面(コイル面)が、第2コイル結合体43に含まれる各コイルが定義する面(コイル面)と平行となるように配置されることを指してよい。
防水容器160又は第2コイル結合体43をパイプ170の長手方向が移動することで、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43との間隔であるコイル間距離Lが任意の長さに変更され得る。パイプ170の長手方向への防水容器160又は第2コイル結合体43の移動は、例えばプロセッサ27や計測用PC45により指示されてもよいし、その他の制御装置により指示されてもよい。
第2コイル結合体43の各コイルは、水槽150内の水と接触する場合、被覆されている。また、第2コイル結合体43は、防水容器に収容されたり防水性を有する管に内包されたりしてもよい。
図1、図2では、コンデンサCr3,Cr4は、図示省略されているが、水槽150の外部で、第2コイル結合体43とPLCアダプタ41との間に配置される。つまり、コンデンサCr3,Cr4を空気の中に置くことで、これらの絶縁性を簡易に担保できる。また、コンデンサCr3,Cr4は、防水対策が施されて水槽150内に配置されてもよい。
図1、図2では、第1通信装置110は、防水容器160に収容されて水槽150の中で水中に没するように配置され、第2通信装置120は、第2コイル結合体43を除き、水槽150の外部に配置されたが、これと逆でもよい。つまり、第2通信装置120は、防水容器160に収容されて水槽150の中で水中に没するように配置され、第1通信装置110は、第1コイル結合体23を除き、水槽150の外部に配置されてもよい。
第1通信装置110では、第1コイル結合体23は、コイルLr1とコイルLr2とが、それぞれのコイル面が重なるように(平行となるように)成形される。コンデンサCr1は、コイルLr1と直列に接続されてよく、コイルLr1と共に共振回路111A(図4参照)を形成する。コンデンサCr2は、コイルLr2と直列に接続されてよく、コイルLr2と共に共振回路111B(図4参照)を形成する。
DCDCコンバータ25は、バッテリ26から直流電圧(例えば5V)を入力し、直流電圧の電圧値を変換し、変換された直流電圧(例えば12V)をPLCアダプタ21に出力する。
プロセッサ27は、第1通信装置110が備えるメモリに保持されたプログラムを実行し、各種機能を実現する。プロセッサ27は、第1通信装置の各部を制御する。プロセッサ27は、例えばUSB(Universal Serial Bus)で接続されたカメラ28を制御し、カメラ28で撮像された画像データをPLCアダプタ21に送出する。
PLCアダプタ21は、DCDCコンバータ25からの直流電圧12Vを電源として、第1コイル結合体23に給電する。PLCアダプタ21は、プロセッサ27から入力したデータ(例えば画像データ)をデジタル信号処理し、処理後のデジタルデータを、第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43を介して第2通信装置120に送信する。PLCアダプタ21は、第2通信装置120から第2コイル結合体43及び第1コイル結合体23を介して受信したデジタルデータをデジタル信号処理し、処理後のデジタルテータをプロセッサ27に送出する。PLCアダプタ21は、電力線通信(PLC)方式に従ったデータを生成し、生成されたデータを第1コイル結合体23に供給する。
第2通信装置120では、第2コイル結合体43は、コイルLr3とコイルLr4とが、それぞれのコイル面が重なるように(平行となるように)成形される。コンデンサCr3は、コイルLr3と直列に接続されてよく、コイルLr3と共に共振回路121A(図4参照)を形成する。コンデンサCr4は、コイルLr4と直列に接続されてよく、コイルLr4と共に共振回路121B(図4参照)を形成する。
PLCアダプタ41は、計測用PC45から入力したデータ(例えば制御データ)をデジタル信号処理し、処理後のデジタルデータを、第2コイル結合体43及び第1コイル結合体23を介して第1通信装置110に送信する。PLCアダプタ41は、第1通信装置110から第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43を介して受信したデジタルデータをデジタル信号処理し、処理後のデジタルテータを計測用PC45に送出する。PLCアダプタ41は、電力線通信(PLC)方式に従ったデータを生成し、生成されたデータを第2コイル結合体43に供給する。
計測用PC45は、一般的なPCのハードウェア構成を有してよく、制御部、通信部、記憶部、操作部、表示部、等を有してよい。計測用PC45の制御部は、第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43を用いた水中通信に関して各種計測を行う。また、計測用PC45の制御部は、第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43を介して受信した第1通信装置110からのデータ(例えば画像データ)を入力し、この画像データを基に各種の処理を行う。制御部は、例えばプロセッサがプログラムを実行することで、各種機能を実現する。
図3は、PLCアダプタ21、41のハードウェア構成例を示す図である。PLCアダプタ21、41は、同一のハードウェア構成を有するので、ここでは、PLCアダプタ21を用いて説明する。
PLCアダプタ21は、直交周波数分割多重方式(ODFM:orthogonal frequency-division multiplexing)でデジタル信号処理を行って通信する。PLCアダプタ21は、制御部210及びAFE214を有する。制御部210は、CPU211、PLC_PHYブロック212、及びPLC_MACブロック213を含む。
CPU211は、メモリ235に記憶されたデータを利用し、PLC_MACブロック213及びPLC_PHYブロック212の動作を制御し、PLCアダプタ21の各部を制御する。
PLC_PHYブロック212は、送信信号及び受信信号のPHY層(Physical layer)を管理する。PLC_MACブロック213は、送信信号及び受信信号のMAC層(Media Access Control layer)を管理する。
AFE214は、DA変換器、AD変換器、及び可変増幅器(いずれも不図示)を有してよい。AFE214は、DA変換器でデジタル信号をアナログ信号に変換して送信してよい。AFE214は、受信したアナログ信号を可変増幅器でゲイン調整を行い、AD変換器でデジタル信号に変換してよい。
また、PLCアダプタ21は、イーサネット(登録商標)MACブロック216、SDRAMコントローラ219、フラッシュメモリインターフェース(I/F)218、GPIO(General-purpose input/output)222、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)223、及びクロックIC(CLK)221を有する。
イーサネット(登録商標)MACブロック216には、イーサネット(登録商標)PHYブロック217が接続される。イーサネット(登録商標)MACブロック216は、送信信号及び受信信号のMAC層を管理する。イーサネット(登録商標)PHYブロック217は、送信信号及び受信信号のPHY層を管理する。イーサネット(登録商標)PHYブロック217には、例えば、プロセッサ27や計測用PC45が接続される。
SDRAMコントローラ219は、SDRAM232に対する読み出し動作及び書き込み動作を制御する。フラッシュメモリインターフェース218は、フラッシュメモリ231に対する読み出し動作及び書き込み動作を制御する。SDRAM232及びフラッシュメモリ231は、メモリ235の一部でよい。また、メモリ235は、これ以外のメモリであってもよい。
GPIO222は、汎用入出力インターフェースである。UART223は、入力されたデータに対し、シリアルパラレル変換またはパラレルシリアル変換を行って出力する。クロックIC221は、振動子(OSC:Oscillator)220が発振する信号に同期したクロックを各部に供給する。
制御部210は、例えばデータ通信のための基本的な制御や変復調を含む信号処理を行う。制御部210は、イーサネット(登録商標)PHYブロック217を介してプロセッサ27から受信したデータを変調し、送信データとしてAFE214に出力する。また、制御部210は、AFE214を介して第1コイル結合体23から入力された信号を、受信信号として復調し、イーサネット(登録商標)PHYブロック217を介してプロセッサ27に出力する。
PLCアダプタ21による通信は、次のような手順で行われる。送信の場合、プロセッサ27から入力されたデータは、イーサネット(登録商標)PHYブロック217を介して制御部210に送られる。制御部210では、入力データに対しデジタル信号処理が施され、デジタル信号が生成される。生成されたデジタル信号は、AFE214によってアナログ信号に変換される。変換されたアナログ信号は、第1コイル結合体23に出力される。デジタル信号処理では、ODFMによる変調が行われる。
一方、受信の場合、第1コイル結合体23から受信した信号は、AFE214により、ゲイン調整された後、デジタル信号に変換される。変換されたデジタル信号は、制御部210に送られる。制御部210では、デジタル信号処理が施され、デジタル信号は、デジタルデータに変換される。変換されたデジタルデータは、イーサネット(登録商標)PHYブロック217を介してプロセッサ27に伝送される。
図4は、第1通信部111及び第2通信部121の構成例を示す図である。第1通信部111は、第1コイル結合体23、コンデンサCr1,Cr2、及びPLCアダプタ21を含む。第2通信部121は、第2コイル結合体43、コンデンサCr3,Cr4、及びPLCアダプタ41を含む。
第1コイル結合体23は、1対のコイルLr1とコイルLr2とをデータ伝送方向に多段化し、磁気的に結合して成形される。データ伝送方向は、コイルLr1及びコイルLr2のコイル面と垂直な方向である。
コイルLr1と直列にコンデンサCr1が接続される。コイルLr1とコンデンサCr1は、共振回路111Aを形成する。この共振回路111Aの共振周波数f1は、コイルLr1のインダクタンスL1とコンデンサCr1のキャパシタンスC1を用いて、1/2π(L1・C1)1/2で表される。
また、コイルLr2と直列にコンデンサCr2が接続される。コイルLr2とコンデンサCr2は、共振回路111Bを形成する。この共振回路111Bの共振周波数f2は、コイルLr2のインダクタンスL2とコンデンサCr2のキャパシタンスC2を用いて、1/2π(L2・C2)1/2で表される。共振周波数f1と共振周波数f2とが互いに異なる値にされることで、第1コイル結合体23が通信に用いる周波数帯域を広帯域化できる(図7等参照)。つまり、第1通信装置110は、第1コイル結合体23により、広帯域なアンテナを実現できる。
同様に、第2コイル結合体43は、1対のコイルLr3とコイルLr4をデータ伝送方向に多段化し、磁気的に結合して成形される。データ伝送方向は、コイルLr3及びコイルLr4のコイル面と垂直な方向である。
コイルLr3と直列にコンデンサCr4が接続される。コイルLr3とコンデンサCr3は、共振回路121Aを形成する。この共振回路121Aの共振周波数f3は、コイルLr3のインダクタンスL3とコンデンサCr3のキャパシタンスC3を用いて、1/2π(L3・C3)1/2で表される。
また、コイルLr4と直列にコンデンサCr4が接続される。コイルLr4とコンデンサCr4は、共振回路121Bを形成する。この共振回路121Bの共振周波数f4は、コイルLr4のインダクタンスL4とコンデンサCr4のキャパシタンスC4を用いて、1/2π(L4・C4)1/2で表される。共振周波数f3と共振周波数f4とが互いに異なる値にされることで、第2コイル結合体43が通信に用いる周波数帯域を広帯域化できる(図7参照)。つまり、第2通信装置120は、第2コイル結合体43により、広帯域なアンテナを実現できる。
図4では、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43とでは、コイルLr2とコイルLr3とが対向している。つまり、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43の各コイルは、Lr1、Lr2、Lr3、Lr4、の順に並んでいる。
コイルLr1の巻回方向とコイルLr2の巻回方向とは、同じ方向でも逆方向でもよい。同様に、コイルLr3の巻回方向とコイルLr4の巻回方向とは、同じ方向でも逆方向でもよい。コイルLr1の巻回方向とコイルLr2の巻回方向が逆方向である場合、コイルLr1の巻回方向とコイルLr4の巻回方向とが同じ方向とされ、コイルLr2の巻回方向とコイルLr3の巻回方向とが同じ方向とされてよい。つまり、4つのコイルのうち、内側に配列された2つのコイルLr2,Lr3と、外側に配列された2つのコイルLr1,Lr4とが、同じ方向に巻回されてよい。
コイルLr1の巻回方向とコイルLr2の巻回方向とが逆方向とされることで、水中通信システム5は、コイルLr1とコイルLr2に流れる相互の電流の向きが逆になって伝送特性が変わるので、例えば後述する伝送特性を表すS21パラメータの値が2つの共振周波数に基づく帯域でなだらかになる。よって、周波数帯域における特性の急激な変化が緩和され、広帯域が必要な通信技術を用いることができる。
また、対向する第1コイル結合体23のコイルLr2と第2コイル結合体43のコイルLr3とが同じ向き(同一の巻回方向)に巻回されることで、水中通信システム5は、共振により磁界を介して伝送される信号の極性が揃えることができ、伝送特性を向上できる。
また、コイルLr1,Lr2,Lr3,Lr4の巻き数(例えば5ターン)は、それぞれ同じでも異なってもよい。また、コイルLr1,Lr2,Lr3,Lr4のサイズ(例えばコイルの直径や線径)は、それぞれ同じであっても異なってもよい。なお、コイルの巻き数が大きい程、又はコイルの直径や線径が長い程、磁界により発生するエネルギーが大きくなり、長距離伝送可能となり得る。
図5は、第1通信部111及び第2通信部121の等価回路の一例を示す図である。図5では、第1通信部111及び第2通信部121は、それぞれ同一の特性(パラメータ)を有してよい。
前述したように、第1コイル結合体23のコイルLr1とコンデンサCr1は、共振回路111Aを形成する。また、第1コイル結合体23のコイルLr2とコンデンサCr2は、共振回路111Bを形成する。各共振回路111A,111Bの共振周波数f1,f2は、それぞれコンデンサCr1,Cr2の容量値(キャパシタンス)を可変することで調整されてよい。この場合、コイルLr1,Lr2のインダクタンスを変更する必要がないので、水中に配置されたコイルを交換することを不要として、共振周波数f1,f2を調整できる。なお、共振周波数f1,f2は、コイルLr1,Lr2のインダクタンスを可変することで調整されてもよい。
同様に、第2コイル結合体43のコイルLr3とコンデンサCr3は、共振回路121Aを形成する。また、第2コイル結合体43のコイルLr4とコンデンサCr4は、共振回路121Bを形成する。各共振回路121A,121Bの共振周波数f3,f4は、それぞれコンデンサCr3,Cr4の容量値(キャパシタンス)を可変することで調整される。なお、共振周波数f1,f2は、コイルLr3,Lr4のインダクタンスを可変することで調整されてもよい。
第1コイル結合体23と第2コイル結合体43とは、結合係数kで磁気的に結合される。また、コイルLr1とコイルLr2は、図5において正の極性を表す黒点に示すように、逆向きに巻かれている。同様に、コイルLr3とコイルLr4は、逆向きに巻かれている。また、コイルLr1及びコイルLr4と、コイルLr2及びコイルLr3とは、前述したように、同じ向きに巻かれている。
なお、ここでは、各コイル結合体が、それぞれ2つのコイルを結合させたものであることを例示したが、3つ以上のコイルを結合させたものであってもよい。また、第1コイル結合体23を形成するコイルの数と第2コイル結合体を形成するコイルの数は、同じ数(例えば2つ)でも異なる数でもよい。これにより、第1通信部111と第2通信部121の伝送特性が様々な用途に合わせて調整され得る。
次に、第1通信装置110から第2通信装置120へのデータ伝送について説明する。
共振回路111A,111Bでは、第1通信装置110の送信コイルとしてのコイルLr1,Lr2に電流が流れるとコイルLr1,Lr2の周囲に磁場が発生する。発生した磁場の振動は、同一の周波数で共振する中継コイルとしてのコイルLr3,Lr4を含む共振回路121A,121Bに伝達される。コイルLr1,Lr2に流れる電流は、電力線通信方式に従った信号(PLC信号とも称する)を含む。
コイルLr3,Lr4を含む共振回路121Aでは、コイルLr1,Lr2の磁場の振動により、受電コイルとしてのコイルLr3,Lr4に交流電流が誘起される。この交流電流は、第1通信装置110からのPLC信号を含む。このように、第1通信装置110から第2通信装置120へ例えばPLC信号が伝送される。
図6は、PLCアダプタ21、41による伝送量と減衰量との関係の一例を示すグラフである。図6は、PLCアダプタ21を含む第1通信部111、及びPLCアダプタ41を含む第2通信部121による通信性能を調べるために、測定した伝送特性の結果を示す。なお、図6の伝送特性は、水中ではなく空気中で得られた特性である。
図6の計測では、PLCアダプタ21,41間で共振回路111A,111B,121A,121Bを取り外し、2つのPLCアダプタ21,41間に減衰器を入れて、PLCアダプタ21,41間の減衰量を変えた場合の伝送特性である。このグラフにより共振回路111B,121B間の減衰量が分かれば、PLCアダプタ21,41間の伝送速度を知ることができる。
図6のグラフの縦軸は、MAC(Media Access Control)の伝送レート(MACレート)[Mbps]を表す。横軸は、減衰量(Attenuation)[dB]を表す。図6では、計測用PC45の制御部が、伝送路(例えば空中)における減衰量を調整しながら、MACレートを計測した。つまり、計測用PC45は、減衰器(アッテネータ)としての機能を有してよい。
図6では、MACレートは、減衰量が40dB以下の範囲まで約100Mbpsと高く、その後、減衰量の増加と共に下降する。減衰量が50dBの場合でもMACレートが約95Mbps程度と高い。なお、減衰量が大きい環境とは、例えば電力線や水中のように様々な信号やノイズが混在するような通信環境が考えられる。なお、電力線通信方式を用いた通信の規格では、50dB以下の減衰量とすることが要求されている。図6では、減衰量が50dB以下の範囲ではMACレートが約95Mbps以上となり、高いMACレートを実現できる。つまり、減衰量が50dB以下の範囲では、高いMACレートで電力線通信可能である。
図7は、第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43の伝送特性の一例を示すグラフである。
図7の伝送特性の計測に用いられた第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43は、同一の特性(パラメータ)を有するように成形される。図7のグラフでは、図5に示した等価回路で示される構成を用いて計測された計測結果が示されている。図7の計測では、計測用PC45により、計測用PC45にPLCアダプタ41を介して接続された第2コイル結合体43を用いてデータ伝送した伝送特性が計測される。
なお、ここでは、例えば、コイルLr1〜Lr4のインダクタンス及びコンデンサCr1〜Cr4のキャパシタンスは、Lr1=Lr4=2μH、Cr1=Cr4=126pF、Lr2=Lr3=1μH、Cr2=Cr3=15.8pFである。このときの共振周波数f1、f2は、それぞれ10MHz、40MHzである。また、例えば、コイルLr1〜Lr4のインダクタンス及びコンデンサCr1〜Cr4のキャパシタンスは、Lr1=Lr4=1μH、Cr1=Cr4=5.8pF、Lr2=Lr3=2μH、Cr2=Cr3=126pFである。このときの共振周波数f1、f2は、それぞれ40MHz、10MHzである。例えば、コイル結合体に含まれる各コイルの直径は、およそ12cmである。例えば、コイル間距離Lは、およそ12cmである。このとき、コイルLr1とコイルLr2の間及びコイルLr3とコイルLr4の間の結合係数k12=k34=0.7であり、コイルLr1とコイルLr4の間及びコイルLr2とコイルLr3の間の結合係数k14=k23=0.05であり、コイルLr1とコイルLr3の間及びコイルLr2とコイルLr4の間の結合係数はk13=k24=0.01である。例えば、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43とは、塩水中に配置されて計測されており、その塩水の濃度は4%である。
図7のグラフの縦軸は、伝達関数に用いられるS21パラメータ[dB]である。横軸は、周波数[MHz]である。S21パラメータは、伝送特性(減衰・位相特性)を表し、値が大きい程、電波が通り易くなる。図7では、計測用PC45の制御部が、データ伝送に係る周波数を変更しながら、S21パラメータの値を計測した。なお、縦軸のS21パラメータは、図6に示した減衰量と符号が異なっているが、両者は同様の減衰特性を示している。
第2通信部121では、共振回路121Aの共振周波数f3は、前述のように10MHz及び40MHzのいずれか一方であり、共振回路121Bの共振周波数f4は、前述のように10MHz及び40MHzのいずれか他方である。図7では、各共振回路(例えば共振回路111A,111B,121A,121B)がそれぞれ磁気的に結合することで、3MHz近傍及び28MHz近傍の2箇所に、S21パラメータのピークが出現している。なお、各共振回路がそれぞれ磁気的に結合することで、S21パラメータのピーク部分が急峻となることが抑制され、比較的滑らかな特性となっている。
図7に示すS21パラメータの値は、2MHz〜30MHzの周波数帯域において、いずれの周波数においても−50dB以上である。S21パラメータが−50dB以上の値の範囲は、前述したように、図6における減衰量が50dB以下の値の範囲に対応し、電力線通信の規格において要求される値である。2MHz〜30MHzの周波数帯域は、電力線通信のために確保することが要求される帯域である。したがって、水中通信システム5は、第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43を用いることで、伝送特性が比較的高い状態をおよそ2MHz〜30MHzの広帯域において実現でき、電力線通信で要求される伝送特性を満足できる。
なお、従来の音響通信の場合、使用可能周波数帯域は、例えば1MHz程度である。したがって、本実施形態の水中通信システム5によれば、使用可能な周波数帯域が少なくとも2MHz〜30MHzを含んでおり、格段に伝送特性が向上していることが理解できる。
次に、伝送効率を表す指標である、搬送波レベル対干渉・雑音比(CINR:Carrier to Interference and Noise Ratio)について説明する。CINRの値が大きい程、伝送効率が高い。
図8Aは、PLCアダプタ21、41を同軸ケーブルで接続した場合における、CINRの周波数変化の一例を示すグラフである。グラフの縦軸はCINRの値[dB]を表す。横軸は周波数[MHz]を表す。この場合、PLCアダプタ21とPLCアダプタ41との間に、第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43は介在しない。PLCアダプタが使用する周波数帯域に含まれる3MHz〜28MHzの帯域では、CINRの値が一様に大きく、伝送特性が均一である。つまり、図8Aでは、PLCアダプタ21とPLCアダプタ41との間に信号が減衰する要因がほとんどなく、PLC信号を伝送する際の理想的な伝送特性が得られる。
図8Bは、塩水中において1cm離して第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43が配置された場合における、CINRの周波数変化の一例を示すグラフである。図8Bでは、23MHz付近では、CINRの値が落ち込んでいるが、この周波数付近を除く、3MHz〜28MHzの帯域では、CINRの値が比較的大きく、概ね良好な伝送特性が得られる。
図8Cは、塩水中において20cm離して第1コイル結合体23及び第2コイル結合体43を配置した場合における、CINRの周波数変化の一例を示すグラフである。図8Cでは、20MHz〜25MHzの帯域では、CINRの値が小さいが、この帯域を除く、3MHz〜28MHzの帯域(特に、13MHz以下の帯域)では、CINRの値が比較的大きく、概ね良好な伝送特性が得られる。なお、13MHz以上の領域では、CINRの特性改善の余地がある。
次に、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43との距離(コイル間距離L)と伝送レート(例えばMACレート)との関係について説明する。
図9は、コイル間距離Lに対する伝送レートの変化例を示すグラフである。グラフの縦軸は伝送レート[Mbps]を表す。横軸はコイル間距離[cm]を表す。図9では、計測用PC45の制御部が、第2コイル結合体43に対する第1コイル結合体23の距離(つまりコイル間距離L)を変更しながら、TCP(Transmission Control Protocol)プロトコルに従った通信時の伝送レートを計測した。図9では、空中及び塩水中において、第1通信装置110と第2通信装置120との通信(送信、受信)時の伝送レートを測定した。
グラフg11は、塩水中において、第1通信装置110から第2通信装置120にデータを送信する場合を示す。グラフg12は、塩水中において、第2通信装置120から第1通信装置110にデータを送信する場合を示す。
グラフg11,g12に示すように、塩水中では、伝送レートは、コイル間距離Lが長くなると、急激に下がる。図9では、伝送レートは、コイル間距離Lが約20cm位まで離れても、数Mbps以上で確保されるが、コイル間距離が約20cm超えると急激に下がる。したがって、コイル間距離Lが約20cm位までの範囲であると、伝送レートが数Mbpsと確保されるので、画像データ等、伝送量の比較的多いデータ(例えば静止画や動画の画像データ)の通信が可能である。
グラフg13は、空中において、第1通信装置110から第2通信装置120にデータを送信する場合を示す。グラフg14は、空中において、第2通信装置120から第1通信装置110にデータを送信する場合を示す。グラフg13,g14に示すように、空中では、コイル間距離が40cm付近でも、伝送レートは、10Mbps以上で確保される。
なお、従来、PLCを用いて海中でデータ伝送する場合の伝送距離は、10mm程度であった。この伝送距離10mmと比較すると、水中通信システム5では、コイル間距離Lに相当する伝送距離が20cm程度を達成しており、従来と比較して飛躍的に伝送距離が延びていることが理解できる。
(中継コイルを含む構成例)
図1〜図5に示した構成例では、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43とを磁界を介して直接に(2段に)結合させる場合を示したが、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43との間に、第3コイル結合体63を中継コイルとして設け、3段以上に結合させてもよい。
図10は、中継コイルとして、第3コイル結合体63を介在させた場合の第1通信部111、第2通信部121及び第3通信部131の構成例を示す図である。第3通信部131は、第3コイル結合体63、コンデンサCr5,Cr6を含む。第3通信部131は、図10に示すように、PLCアダプタ61を含んでもよいし、PLCアダプタ61を含まなくてもよい。
なお、第3コイル結合体63には、バッテリ等から電力が給電されてもよいし、給電されなくてもよい。つまり、第3コイル結合体63は、例えばPLCアダプタ61によって給電されるリピータ(給電コイル)であってもよいし、給電されないブースタコイル(無給電コイル)であってもよい。つまりリピータはアクティブであり、ブースターコイルはパッシブである。
第3コイル結合体63は、コイルLr5とコイルLr6とが、それぞれのコイル面が重なるように(平行となるように)成形される。コンデンサCr5は、コイルLr5と直列に接続されてよく、コイルLr5と共に共振回路131Aを形成する。コンデンサCr6は、コイルLr6と直列に接続されてよく、コイルLr6と共に共振回路131Bを形成する。図10に示すように、第3コイル結合体63は、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43との間に介在する。
図10では、第1コイル結合体23と第3コイル結合体63とでは、コイルLr2とコイルLr5とが対向している。第2コイル結合体43と第3コイル結合体63とでは、コイルLr3とコイルLr6とが対向している。つまり、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43と第3コイル結合体63の各コイルは、Lr1、Lr2、Lr5、Lr6、Lr3、Lr4、の順に並んでいる。
コイルLr1の巻回方向とコイルLr2の巻回方向とは、同じ方向でも逆方向でもよい。同様に、コイルLr3の巻回方向とコイルLr4の巻回方向とは、同じ方向でも逆方向でもよい。同様に、コイルLr5の巻回方向とコイルLr6の巻回方向とは、同じ方向でも逆方向でもよい。
コイルLr1の巻回方向とコイルLr2の巻回方向が逆方向である場合、コイルLr1の巻回方向とコイルLr6の巻回方向とコイルLr3の巻回方向とが同じ方向とされ、コイルLr2の巻回方向とコイルLr5の巻回方向とコイルLr4の巻回方向とが同じ方向とされてよい。つまり、6つのコイルのうち、隣り合うコイル結合体の内側同士のコイルと外側同士のコイルとが、同じ方向に巻回されてよい。この場合、共振回路111A,131B,121Aの共振周波数f1,f6,f3が同じとされ、共振回路111B,131A,121Bの共振周波数f2,f5,f4が同じとされてよい。
なお、コイルLr5,Lr6等の中継コイルは、データ伝送方向に多段に配置され、複数段で中継を行ってもよい。また、コイルLr5,Lr6等の中継コイルは、第1通信装置110に含まれてもよいし、第2通信装置120に含まれてもよいし、水中通信システム5において第1通信装置110及び第2通信装置120から独立して設けられてもよい。
次に、第1通信装置110から中継コイルを介した第2通信装置120へのデータ伝送について説明する。
共振回路111A,111Bでは、第1通信装置110の送信コイルとしてのコイルLr1,Lr2に電流が流れるとコイルLr1,Lr2の周囲に磁場が発生する。発生した磁場の振動は、同一の周波数で共振する中継コイルとしてのコイルLr5,Lr6を含む共振回路131A,131Bに伝達される。コイルLr1,Lr2に流れる電流は、PLC信号を含む。
コイルLr5,Lr6を含む共振回路131A,131Bでは、磁場の振動によりコイルLr5,Lr6に電流が励起され、電流が流れ、コイルLr5,Lr6の周囲に更に磁場が発生する。発生した磁場の振動は、同一の周波数で共振する他の中継コイルを含む共振回路又はコイルLr3,Lr4を含む共振回路121A,121Bに伝達される。
共振回路121Aでは、コイルLr5,Lr6等の中継コイルの磁場の振動により、受電コイルとしてのコイルLr3,Lr4に交流電流が誘起される。この交流電流は、第1通信装置110からのPLC信号を含む。このように、第1通信装置110から第2通信装置120へ例えばPLC信号が伝送される。
以上のように、本実施形態における水中通信システム5では、第1通信装置110は、海水中(水中の一例)において、第2コイル結合体43を有する第2通信装置120(他の水中通信装置の一例)との間でデータを通信する。第2コイル結合体43は、コイルLr3(他の第1のコイルの一例)及びコイルLr4(他の第2のコイルの一例)を含む。第1通信装置110は、磁界を介して第2コイル結合体43との間でデータを伝送する第1コイル結合体23を有する。第1コイル結合体23は、コイルLr1(第1のコイルの一例)及びコイルLr2(第2のコイルの一例)を含む。第1通信装置110は、コイルLr1及びコイルLr2にデータを供給するPLCアダプタ21の制御部210(供給部の一例)を有する。第1通信装置110は、コイルLr1に接続され、コイルLr1と共に共振する共振周波数f1(第1の共振周波数の一例)で共振する共振回路111A(第1の共振回路の一例)を形成するコンデンサCr1(第1のコンデンサの一例)を備える。第1通信装置110は、コイルLr2に接続され、コイルLr2と共に共振周波数f2(第2共振周波数)で共振する共振回路111B(第2の共振回路の一例)を形成するコンデンサCr2(第2のコンデンサの一例)と、を備える。
これにより、第1通信装置110は、2つの共振周波数f1,f2が異なる共振回路111A,111Bの特性が結合されて、複数のピークを有する伝送特性を得ることができる。また、コイルLr1とコイルLr2が発生させる磁界が結合することにより、伝送特性のピークが滑らかになり、2つの共振周波数の間で伝送特性が平滑化される。よって、広い周波数帯域における特性の急激な変化が抑えられ、伝送特性が平準化される。したがって、第1通信装置110は、データ伝送に用いる周波数帯域を広帯域化できる。第1通信装置110は、広帯域化することで、広帯域が必要な通信(例えば電力線通信)を用いることができ、水中におけるデータの伝送性能を向上できる。
また、コイルLr1の巻回方向とコイルLr2の巻回方向とが逆方向でよい。
これにより、コイルLr1とコイルLr2に流れる相互の電流の向きが逆になって伝送特性が変化し、コイルLr1の巻回方向とコイルLr2の巻回方向とが同じ方向である場合と比較して、伝送特性の変化が一層滑らかになる。よって、第1通信装置110は、広帯域の周波数帯域における特性の変化を一層平滑化でき、広帯域を用いたデータ通信を安定化できる。
また、第1通信装置110は、第3通信部131を備えてよい。第3通信部131は、第1コイル結合体23と第2コイル結合体43との間に介在する第3コイル結合体63を有してよい。第3コイル結合体63は、コイルLr1とコイルLr3との間に配置されたコイルLr5(第3のコイルの一例)と、コイルLr2とコイルLr4との間に配置されたコイルLr6(第4のコイルの一例)とを含んでよい。第3通信部131は、コイルLr5に接続されると共に、コイルLr5と共に共振する共振回路131A(第3の共振回路の一例)を形成するコンデンサCr5(第3のコンデンサの一例)と、コイルLr6に接続されると共に、コイルLr6と共に共振する共振回路131B(第4の共振回路の一例)を形成するコンデンサCr6(第4のコンデンサの一例)と、を備えてよい。共振回路111Aの共振周波数f1と共振回路131Bの共振周波数f6とは、同一でよい。共振回路111Bの共振周波数f2と共振回路131Aの共振周波数f5とは、同一でよい。
これにより、第1コイル結合体23は、第1コイル結合体23が発生する磁界と第3コイル結合体63が発生する磁界とが結合することで、第3コイル結合体63との間で磁気共鳴方式によりデータを伝送できる。また、第3コイル結合体63は、他の中継コイルのコイル結合体や受信コイルとしてのコイルLr3,Lr4を含む第2コイル結合体43との間で、磁気共鳴方式によりデータ伝送できる。よって、第2コイル結合体43は、データ伝送を中継でき、水中通信の通信距離を延ばすことができる。
また、コイルLr1の巻回方向とコイルLr6の巻回方向とが同一方向でよい。コイルLr2の巻回方向とコイルLr5の巻回方向とが同一方向でよい。
これにより、コイルLr1とコイルLr6に流れる相互の電流の向きが同じになり、磁界結合の力が大きくなり、コイルLr1の巻回方向とコイルLr6の巻回方向とが逆方向である場合と比較して、データ伝送の信号レベルが大きくなる。同様に、コイルLr2とコイルLr5に流れる相互の電流の向きが同じになり、磁界結合の力が大きくなり、コイルLr2の巻回方向とコイルLr5の巻回方向とが逆方向である場合と比較して、データ伝送の信号レベルが大きくなる。よって、第1通信装置110は、例えば送信コイルとしてのLr1,Lr2から中継コイルとしてのコイルLr5,Lr6へ伝送されるデータの信号減衰を小さくでき、水中における信号レベルの低下を抑制しながら、水中通信の通信距離を伸ばすことができる。
また、コイルLr5及びコイルLr6は、電力が供給される給電コイルでよい。
これにより、第1通信装置110では、第3コイル結合体63が第1コイル結合体23から受信したデータを、より高い信号レベルにして、第2通信装置120の第2コイル結合体43へ転送できる。つまり、第1通信装置110は、第3コイル結合体63による受信レベルが低い場合でも、送信レベルを高くしてデータを転送でき、データ中継の度に信号レベルが減衰し、水中通信における通信精度が低下することを抑制できる。
また、第3コイル結合体63は、電力が供給されない無給電コイルでもよい。
これにより、第1通信装置110は、第3コイル結合体63に含まれるコイルLr5,Lr6が給電されない場合でも、磁場による電流の励起を基に、受信したデータを転送できる。したがって、第1通信装置110は、コイルLr5,Lr6のための電源確保が困難な場所や状況であっても、データ通信の中継を実現できる。
また、データは、画像データを含んでよい。画像データは、静止画や動画を含んでよい。
これにより、第1通信装置110は、広帯域に確保された通信帯域を利用して、水中において画像データを伝送できる。
また、データは、電力線通信の通信方式に従って生成されたデータを含んでよい。
これにより、第1通信装置110は、データ伝送に用いる周波数帯域を広帯域化できるので、例えば3MHz〜28MHzの周波数帯域を使用する電力線通信を用いて、水中におけるデータの伝送性能を向上できる。つまり、第1通信装置110は、既存の電力線通信技術を適用して、水中通信できる。
また、コイルLr1及びコイルLr2は、水面と略直交する方向にデータを伝送してよい。
これにより、例えば水上や水面近くに所在する第1通信装置110と、水中や水底に所在する第2通信装置120との間で、データ通信できる。
また、本実施形態の水中通信システム5は、第1通信装置110(第1の水中通信装置の一例と第2通信装置120(第2の水中通信装置の一例)との間でデータを通信する。第1通信装置110は、コイルLr1,Lr2と、コイルLr1,Lr2にデータを供給するPLCアダプタ21の制御部210と、コイルLr1に接続され、コイルLr1と共に共振回路111Aを形成するコンデンサCr1と、コイルLr2に接続され、コイルLr2と共に共振回路111Bを形成するコンデンサCr2と、を備える。第2通信装置120は、磁界を介してコイルLr2との間でデータを伝送するコイルLr3(第3のコイルの一例)と、磁界を介してコイルLr1との間でデータを伝送するコイルLr4と、コイルLr3に接続され、コイルLr3と共に共振回路121A(第3の共振回路の一例)を形成するコンデンサCr3(第3のコンデンサの一例)と、コイルLr4に接続され、コイルLr4と共に共振回路121B(第4の共振回路の一例)を形成するコンデンサCr4(第4のコンデンサの一例)と、を備える。水中において、コイルLr1、コイルLr2、コイルLr3、コイルLR3、の順に配列される。共振回路111Aと共振回路111Bとは、共振周波数が異なる。共振回路121Aと共振回路121Bとは、共振周波数が異なる。共振回路111Aと共振回路121Bとは、共振周波数が同一である。共振回路111Bと共振回路121Aとは、共振周波数が同一である、
これにより、水中通信システム5では、第1通信装置110は、2つの共振周波数f1,f2が異なる共振回路111A,111Bの特性が結合されて、複数のピークを有する伝送特性を得ることができる。また、コイルLr1とコイルLr2が発生させる磁界が結合することにより、伝送特性のピークが滑らかになり、2つの共振周波数の間で伝送特性が平滑化される。よって、広い周波数帯域における特性の急激な変化が抑えられ、伝送特性が平準化される。したがって、第1通信装置110は、データ伝送に用いる周波数帯域を広帯域化できる。第1通信装置110は、広帯域化することで、広帯域が必要な通信(例えば電力線通信)を用いることができ、水中におけるデータの伝送性能を向上できる。
また、第1通信装置110及び第2通信装置120において、4つのコイルLr1〜Lr4のうちの外側同士のコイルLr1,Lr4及び内側同士のコイルLr2,Lr3が同一の共振周波数により共振することで、共振回路111Aと共振回路121Bとの磁気共鳴の共鳴力が増し、共振回路111Bと共振回路121Aとの磁気共鳴の共鳴力が増し水中における信号の減衰が低減する。よって、第1通信装置110及び第2通信装置120による水中通信における伝送距離を伸ばすことができる。例えば水中通信システム5dでは、例えばコイル間距離Lを20cm程度とすることができる。
(海中通信システムの応用例)
水中通信システム5の応用例として、海中通信システム1010について説明する。コイル結合体CB(例えば第1コイル結合体23,第2コイル結合体43,第3コイル結合体63)を用いたデータ通信の伝送距離を長く確保できる場合、以下のような応用例が実現され得る。
図11は、海中通信システム1010が置かれる環境の一例を示す模式図である。海中通信システム1010は、第1通信装置110及び第2通信装置120を備える。海中通信システム1010は、複数のコイル結合体CBを備える。第1通信装置110は、第2通信装置120に対して、複数のコイル結合体CBを介して、磁気共鳴方式に従ってワイヤレス(無接点)でデータ伝送する。配置されるコイル結合体CBの数は、n個であり、任意である。
コイル結合体CBの各コイルは、例えば、環状に形成され、樹脂のカバーで被覆されて絶縁されている。コイル結合体CBの各コイルは、例えば、ヘリカルコイルやスパイラルコイルである。また、コイル結合体CBの各コイルは、例えばキャプタイヤケーブルで形成される。コイル結合体CBの各コイルは、データを送信する場合には一次コイル(Primary Coil)として動作し、データを受信する場合には二次コイル(Secondary Coil)として動作し、データを中継する場合にはリピータやブースターコイルとして動作する。コイル結合体CB同志は、略平行に配置され、例えば各コイルの開口面の半分以上が重なるよう配置されてよい。
コイル結合体CB以外の第1通信装置110の構成部は、船舶1050に設置されてよい。コイル結合体CB以外の第2通信装置120の構成部は、移動可能な水中航走体1060(例えば潜水艇1070や水底掘削機1080)や固定的に設置される第2通信装置(例えば地震計、監視カメラ、地熱発電機)に設置されてよい。各コイル結合体CBは、水中(例えば海中)に配置される。
潜水艇1070は、例えば、遠隔操作無人探査機(ROV:Remotely Operated Vehicle)、無人潜水艇(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)、又は自立型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)を含んでもよい。
船舶1050の一部は、水面1090(例えば海面)より上部つまり水上に存在し、船舶1050の他の一部は、水面1090よりも下部つまり水中に存在する。船舶1050は、水上で移動可能であり、例えばデータ取得場所の水上へ自由に移動可能である。船舶1050に設置された第1コイル結合体23以外の第1通信装置110の構成部と第1コイル結合体23との間は、電線1020により接続されてよい。電線1020は、水上のコネクタ(不図示)を介して、例えば第1通信装置110内のPLCアダプタ21と接続されてよい。
水中航走体1060は、水中又は水底1095(例えば海底)に存在し、水中又は水底1095を航走する。水中航走体1060は、例えば、水上の船舶1050からの指示により、データ取得ポイントへ自由に移動可能である。船舶1050からの指示は、例えばコイル結合体CBを介した通信により伝送されてよい。
各コイル結合体CBは、連結体1030と接続され、例えば等間隔に配置される。尚、データ伝送に用いる伝送周波数が低周波であるほど、電力伝送距離が長くなり、コイル間距離Lを長くできる。伝送周波数は、コイル結合体CBの各コイルのインダクタンス、コイル結合体CBの各コイルの直径、コイル結合体CBの各コイルの巻き数等のコイル特性に基づき定まる。また、コイル結合体CBの各コイルの太さが太い程、つまりコイル結合体CBの各コイルの線径が大きい程、コイル結合体CB各コイルでの電気抵抗が減り、電力損失が小さくなる。
図11では、連結体1030の数が3つであるが、これに限られない。連結体1030における水底側の端部には、錘1040が接続される。連結体1030における水面側の端部には、ブイ(Buoy)1045が接続される。
錘1040により、連結体1030の移動を規制でき、連結体1030に固定された各各コイル結合体CBの移動を規制できる。よって、水中において水流が発生しても、錘1040により各コイル結合体CBの移動が規制されるので、海中通信システム1010は、各コイル結合体CBを用いたデータ伝送の効率が低下することを抑制できる。
また、連結体1030において、水底側の端部に錘1040が接続され、水面側の端部にブイ1045が接続されることで、錘1040が水底側、ブイ1045が水面側となり、連結体1030が水面1090と略垂直となる姿勢を維持できる。よって、各コイル結合体CBの各コイルにより定義される面は、水面1090と略平行となり、磁界共鳴方式によって水深方向(水面と略直交する方向)に電力伝送できる。
尚、錘1040は、連結体1030の運搬時には連結体1030から取り外され、連結体1030の運搬が終了し、所定の位置に設置される際に、連結体1030に錘1040が取り付けられてもよい。これにより、連結体1030の運搬が容易になる。
尚、海中通信システム1010では、各コイルが動作するためのバッテリを備えてもよいし、各コイルが動作するためのバッテリを備えなくてもよい。各コイルが動作するためのバッテリを備えない場合、例えば水中に配置された複数のコイル結合体CBのうち、1つのコイル結合体CB(例えば第1コイル結合体23)に対して給電され、磁界共鳴方式に従って電力伝送されてよい。
つまり、海中通信システム1010と海中給電システムとを1つのシステムで実現できる。これにより、海中通信システム1010は、水中通信と水中給電とで構成部品の一部を共用することができ、部品点数を削減できる。また、海中や海底にいる水中航走体1060は、バッテリを使用することなく、第2通信装置120の第2コイル結合体43等のコイルで受電した電力を使用できる。なお、データ伝送用のコイルと電力伝送用のコイルとは、同じコイルであっても異なるコイルであってもよい。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
上記実施形態では、水として海水を主に例示したが、海水以外の水(例えば淡水)であってよい。したがって、第1通信装置110及び第2通信装置120は、海水以外の水中(例えば河川、湖、ダムにおける水中)において通信してもよい。
上記実施形態では、広帯域が必要な通信として電力線通信を例示したが、広帯域且つ周波数が比較的低い帯域(例えば数MHz〜40MHz)を用いる通信方式であれば、上記実施形態を適用可能である。
上記実施形態では、プロセッサ(例えばCPU)は、物理的にどのように構成してもよい。また、プログラム可能なプロセッサを用いれば、プログラムの変更により処理内容を変更できるので、プロセッサの設計の自由度を高めることができる。プロセッサは、1つの半導体チップで構成してもよいし、物理的に複数の半導体チップで構成してもよい。複数の半導体チップで構成する場合、上記実施形態の各制御をそれぞれ別の半導体チップで実現してもよい。この場合、それらの複数の半導体チップで1つのプロセッサを構成すると考えることができる。また、プロセッサは、半導体チップと別の機能を有する部材(コンデンサ等)で構成してもよい。また、プロセッサが有する機能とそれ以外の機能とを実現するように、1つの半導体チップを構成してもよい。また、複数のプロセッサが1つのプロセッサで構成されてもよい。
上記各実施形態は、組み合わされてもよい。