JP6620817B2 - 黄色ブドウ球菌不活化菌体とロイコシジンを混合したワクチン - Google Patents
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Description
また、本発明は、前記免疫原性組成物を反芻動物に投与して、黄色ブドウ球菌に対する免疫応答を誘発する方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明者らは、前記ロイコシジンM/F抗原に加えて、黄色ブドウ球菌の菌体抗原を併用することで、より効率よく牛乳房炎の感染の予防することを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて本発明者らが完成させたものである。
〔1〕ロイコシジンM/F抗原を含有してなり、かつ、投与対象動物である反芻動物に毒素中和活性を付与することが可能な免疫原性組成物であって、
前記ロイコシジンM/F抗原が、
配列番号3で示されるロイコシジンMタンパク質を構成するアミノ酸配列または配列番号3との相同性が80%以上のアミノ酸配列、および
配列番号4で示されるロイコシジンFタンパク質を構成するアミノ酸配列または配列番号4との相同性が80%以上のアミノ酸配列
を有するタンパク質である、反芻動物の乳房炎の症状軽減用免疫原性組成物、
〔2〕前記ロイコシジンM/F抗原が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の培養上清から得られたものである前記〔1〕に記載の免疫原性組成物、
〔3〕前記黄色ブドウ球菌がMLST型別においてCC97型の菌株である前記〔2〕に記載の免疫原性組成物、
〔4〕前記ロイコシジンM/F抗原が、合成されたものである前記〔1〕に記載の免疫原性組成物、
〔5〕前記ロイコシジンM/F抗原が、不活化処理されたものである前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の免疫原性組成物、
〔6〕さらに黄色ブドウ球菌の菌体抗原を含有し、かつ、反芻動物の乳房炎の症状軽減用または予防用である前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の免疫原性組成物、
〔7〕前記黄色ブドウ球菌の菌体抗原が、黄色ブドウ球菌の不活化全菌体である前記〔6〕に記載の免疫原性組成物、
〔8〕前記黄色ブドウ球菌が、反芻動物の乳汁より分離された黄色ブドウ球菌である前記〔6〕または〔7〕に記載の免疫原性組成物、
〔9〕前記反芻動物がウシ、ヤギ、ヒツジまたはシカである前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の免疫原性組成物、
〔10〕ワクチンとして使用するための、前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の免疫原性組成物、
〔11〕反芻動物における乳房炎の症状軽減用または予防用の製剤を調製するための、前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の免疫原性組成物、
〔12〕免疫学的に効果的な量の前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を投与対象動物である反芻動物に投与することを含む、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する免疫応答を誘発する方法、
〔13〕免疫応答が、反芻動物における乳房炎を予防するかもしくは症状を軽減させる、前記〔12〕に記載の方法、
に関する。
毒素中和活性を反芻動物に付与することが可能であることについては、具体的には、後述の実施例に記載の手順に基づいて、確認することができる。
前記ロイコシジンMタンパク質は、308アミノ酸残基のアミノ酸配列(配列番号3)からなり、これは黄色ブドウ球菌が有する遺伝子配列において配列番号1に示される927bpの塩基配列でコードされる。
また、前記ロイコシジンFタンパク質は、322アミノ酸残基のアミノ酸配列(配列番号4)からなり、これは前記ロイコシジンMタンパク質をコードする遺伝子領域の下流側に1bpの塩基を介して配列番号2に示される969bpの塩基配列でコードされる。
なお、前記ロイコシジンMタンパク質およびロイコシジンFタンパク質のアミノ酸配列や塩基配列は、公知のデータベースで確認することができる。公知のデータベースとしては、DNA Data Bank of Japan, Medlineなどが挙げられる。
ロイコシジンM/F抗原としては、ロイコシジンMタンパク質を構成するアミノ酸配列の少なくとも一部を有するタンパク質もしくはペプチド、またはロイコシジンFタンパク質を構成するアミノ酸配列の少なくとも一部を有するタンパク質もしくはペプチドが挙げられる。
また、前記少なくとも一部を有するタンパク質は、配列番号3または配列番号4に記載のアミノ酸配列に変異を導入されたものでもよい。この場合、変異を導入されたタンパク質としては、投与対象動物である反芻動物に毒素中和活性を付与することが可能なものであれば変異の程度は特に限定はなく、例えば、変異を導入されたタンパク質のアミノ酸配列の相同性は、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の相同性を有していればよい。配列番号3または配列番号4に記載のアミノ酸配列に導入しうるアミノ酸残基の変異としては、1〜2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加することが挙げられる。例えば、置換するアミノ酸は、元の蛋白質の立体構造を保持するために、元のアミノ酸に近い化学的性質のアミノ酸であることが望ましい。このような保存的置換の具体例として、例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trpの非極性アミノ酸間の相互置換、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glnの非荷電性アミノ酸間の置換、酸性アミノ酸であるAspとGluとの置換、及び塩基性アミノ酸のLys、Arg、Hisによる相互置換を挙げることができる。また、前記欠失、挿入付加などの変異についても、公知の手法を用いて行えばよい。
例えば、後述の実施例に記載の方法によって、黄色ブドウ球菌を培養し、その上清からロイコシジンM/F抗原を得ることができる。
前記合成の方法としては、例えば、タンパク質自動合成装置、全自動ペプチド合成装置などの装置を用いる方法などが挙げられる。
例えば、前記培養上清から得られるロイコシジンM/F抗原は、毒性を有するため、不活化処理することで安全性を高めることができる。
不活化処理の方法としては、前記ロイコシジンM/F抗原をホルマリンやフェノールと接触させたり、加温処理、紫外線照射などに供したりする方法が挙げられるが、特に限定はない。
黄色ブドウ球菌の不活化処理としては、黄色ブドウ球菌の菌体をホルマリン、フェノールと接触させたり、加温処理、紫外線照射などに供したりする方法などが挙げられるが、特に限定はない。
また、前記不活化全菌体の一部としては、前記不活化全菌体を超音波処理等の物理的処理またはリゾスタフィン等の加水分解酵素を用いた酵素処理などで分解等の処理を施して得られるものをいう。
無水マンニトールオレイン酸エステル加スクワラン液とは、無水マンニトールオレイン酸エステルおよびスクワランからなる溶液をいう。
前記黄色ブドウ球菌に関連する疾患としては、特に限定はないが、乳房炎、化膿性疾患、関節炎、結膜炎、皮膚炎などが挙げられる。
また、予防とは、黄色ブドウ球菌に感染した後で疾患を発症する前の状態に有る反芻動物への予防的な投与によって、発症を阻害することをいう。
黄色ブドウ球菌の試験用菌株の選定として以下の条件を満たすものを使用する。
1.野外で黄色ブドウ球菌が原因と考えられる乳房炎を発症した牛の乳汁より分離された菌株。黄色ブドウ球菌としての同定方法は一般的な同定方法に準ずる。200CFU程度を牛の乳房に接種することで急性乳房炎を発症する。
2.遺伝子プロファイルによりCP5型・MLST型別-CC97型で、かつ、ロイコシジンM/Fを保有する菌株。この他にフィブロネクチン結合蛋白、クランピングファクターといった既知の病原因子の遺伝子保有も含まれる。
3.培養上清が、ロイコシジンM/F非保有株のそれに比べ牛の好中球に対して強い傷害活性を有する菌株。
1.全菌体抗原及びロイコシジンM/F抗原の調製
黄色ブドウ球菌の培養は種菌をBrain Heart Infusion broth(BHI培地)といった液体培地に移植し、37℃で18〜24時間振とう培養等により得る。培養方法は、菌数が109CFU/mL以上に達すること、CP抗原やロイコシジンの発現が認められるものであればこれに限定されるものではなく、公知の培養方法が利用できる。
全菌体抗原は上記培養菌液を遠心処理して集菌した後、ホルマリン(ホルムアルデヒド)を加えて37℃で24時間感作することで不活化する。ホルマリン濃度は抗原性を損なわず不活化が達成される範囲でよい。
培養菌液より冷却遠心分離により上清を採取し、硫酸アンモニウム法により沈渣を回収しPBSに溶解後、透析を行う。硫酸アンモニウムの濃度はロイコシジンM/F分画を沈殿可能な範囲でよい。また、他のポリエチレングリコール法等を用いてもよい。得られた濃縮ロイコシジンM/Fに対してホルマリン(ホルムアルデヒド)を加えて37℃で24時間感作することで不活化する。
抗原量として、一回注射量あたり不活化菌体を不活化前の菌数として4×1010CFU/dose、これに加え不活化濃縮上清を不活化前のロイコシジン毒素活性として5120U/doseになるように添加する。
1)多形核(PMN)白血球及びロイコシジン
PMN白血球は、牛末梢血よりフィコール(Pharmacia社)を用いた遠心分離法により調製した。陽性対照として、牛乳汁から分離したBM1006株をBHI培地で37℃、20時間培養した菌液の上清(ロイコシジン毒素活性:320倍相当)をロイコシジン参照液として用いた。
2)ロイコシジン毒素活性の測定(PMNアッセイ)
前記1)に従い、牛末梢血よりPMN白血球を調製し、平底96ウェルプレート内で階段希釈した各検体と混合した。1ウェルあたり50%以上の傷害が見られた最大希釈倍率をもとに検体のロイコシジン毒素活性を求めた。
3)ロイコシジン中和抗体の測定
RPMI−GH(RPMI1640+0.1%ゼラチン+20mM HEPES)を希釈液とし、平底96ウェルプレート内で2倍階段希釈した検体に対し、RPMI−GHで50倍に希釈したロイコシジン参照液を等量加え、37℃で60分間感作した。ゼラチンコーティングをした平底96ウェルプレートに中和感作液を80μL添加した後、4×106cell/mLに調整したPMN白血球含有液20μLを添加してプレートミキサーで攪拌後、37℃で感作をおこなった。1ウェルあたり50%以上の傷害が見られたものをロイコシジン毒素活性陽性とし、ロイコシジン毒素活性を抑制した最大希釈倍率をもとに検体のロイコシジン抗体価を求めた。本発明では、被験物を牛に投与した場合に、被験物を投与していない対照牛と比べて、前記検体でのロイコシジン抗体価を4倍以上に有意に高くできた被験物を「ロイコシジン毒素中和活性を付与することが可能」と判断する。
ワクチンとしては、乳汁に対して有効成分に対する免疫を付与させるためのアジュバントを添加する。鉱物油あるいは植物油を主体とした油性アジュバントを基本とするが、これにアルミニウムゲルアジュバント等を加えてもよい。
1.MLST解析、ロイコシジン遺伝子解析
牛乳汁より分離、同定した黄色ブドウ球菌について、フェノールクロロホルム抽出・エタノール沈殿法、ボイル法や市販キットを用いた方法などの一般的手法によりDNAを抽出し、MLST型別法に供した。MLST型別法はバクテリア分離体や他の微生物の亜種決定及び解析を行なう塩基配列に基づいた分子疫学的解析手法であり、MLST型別法(http://www.mlst.net/)に準じて実施、解析した。ロイコシジン遺伝子保有調査はHataら、J Clin Microbiol. 2010.48:2130-2139 2003; 10(2):272-277に記載の方法に準じて実施した。
2.培養上清の好中球傷害活性評価
候補菌株を細菌増殖用培地(Brain Heart Infusion Porcine broth)に接種し、37℃で24時間振とう培養して得た上清を市販のイーグル最小必須培地(Eg−MEM)で階段希釈し、これに牛末梢血より採取、精製した顆粒球細胞を等量混合して37℃で2時間感作させた。顆粒球細胞に対して変性効果を示す最大希釈倍率をロイコシジン毒素活性として候補株上清の毒素活性を評価した。
なお、上清中では、ロイコシジンEとロイコシジンDとの複合体(LukE-LukD)、ヘモリジン(溶血素)(hlg)、ロイコシジンMおよび/またはロイコシジンF(LukM(/F))の有無を公知の手法に基づいて調べ、表中では、検出したものを「+」で示す。
得られた結果を表1に示す。
表1に示す結果より、MLST型別においてCC97型かつ、ロイコシジンM/F遺伝子を保有し、毒素活性に優れたS. aureus HK−3株を選抜し、以下の試験に供した。
1.不活化全菌体抗原の調製
菌体の培養:
実施例1で得られたS. aureus HK−3株を製造用寒天培地(Brain Heart Infusion Porcine + Bacto Agar)に接種し、37℃で24時間静置培養した。発育した集落を釣菌して製造用液体培地(Brain Heart Infusion Porcine)に移植し、37℃で18〜24時間振とう培養したもので、菌数が2×109CFU/mL以上に達したものを本培養菌液とした。
不活化全菌体抗原液の調製:
本培養菌液にホルマリン(ホルムアルデヒド)を0.4v/v%加え、37℃で24時間感作した。感作後、菌数を1〜3×1011CFU/mLとなるようにPBSで適宜調整し、後述の実施例3、実施例5−1及び実施例5−2に供した。
2.ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原の調製
本培養菌液から冷却遠心分離により上清を採取し、硫酸アンモニウム法により沈渣を回収しPBSに溶解後、透析を行い、ロイコシジンM/F抗原を得た。なお、得られたロイコシジンM/F抗原は、配列番号3及び配列番号4を基にそれぞれ組換え蛋白を作製し、それを元に作製した免疫血清を用いてウエスタンブロッティングを行うことで、配列番号3に示されるロイコシジンMタンパク質と、配列番号4に示されるロイコシジンFタンパク質とを含むことを確認した。そして、ロイコシジン毒素活性として25,600U/mL以上となるように調整した後、ホルマリン(ホルムアルデヒド)を0.2v/v%加え、37℃で24時間感作したものを後述の実施例4、実施例5−1及び実施例5−2に供した。
なお、ホルマリン感作後に不活化抗原となっていることは、前記ロイコシジン毒素活性を測定して、毒素活性が消失していることを調べて確認した。
実施例2で調製した免疫原のうち、不活化全菌体を用いて調製したワクチンを搾乳牛(ホルスタイン、5齢)に注射した後、乳房内感染に対する防御効果を対照牛(ワクチン未接種牛)と比較した。
不活化全菌体ワクチンとして、一回あたりの注射量2mLに対して不活化前の菌数として4×1010CFUに調整した不活化菌含有液を加え、これにアジュバントを加えたものを4週間隔で2回筋肉内注射した。生菌攻撃試験として、2回の免疫後2週間後にS. aureus HK−3株 500CFUを乳房内に接種した。生菌接種後、乳房炎症状として乳汁体細胞数、および感染の程度として乳汁からの菌排泄数をそれぞれ経日的に評価した。結果を図1に示す。
図1の上図および下図に示す結果より、HK−3株不活化菌体抗原ワクチンを投与した試験牛の乳房1、2では、対照牛の乳房1、2に比べ、感染初期での体細胞数上昇の早期回復と乳汁からの菌排泄数の軽減効果が見られたが程度は限定的であったことから、不活化菌体抗原ワクチン単独では牛の乳房における黄色ブドウ球菌による疾患の発病を抑える予防効果は不十分であると判定した。
実施例2で調製した免疫原のうち、ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原を用いて調製したワクチンを搾乳牛(ホルスタイン、3齢)に注射し、その前後でロイコシジンM/Fを含む上清成分を乳房内に接種して炎症軽減効果を比較した。ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原ワクチンとして、一回あたりの注射量2mLに対して不活化前のロイコシジン毒素活性として5120UのロイコシジンM/F濃縮不活化抗原を用い、これにアジュバントを加えたものを4週間隔で2回筋肉内注射した。上清接種試験として、免疫前及び2回の免疫後2週間後にS. aureus HK−3株の濃縮上清1280Uを乳房内に接種した。前記濃縮上清接種後、乳房炎症状として乳汁体細胞数を評価した。結果を図2に示す。
図2の上図および下図に示す結果から、ワクチン注射前(免疫前)の試験牛及び対照牛(ワクチン未接種牛)の乳房1、2では濃縮上清接種により体細胞数(SCC、白血球と上皮細胞を主体とする乳汁中の細胞数)500万/mLを超える強い炎症が惹起されたのに対し、HK−3株より調製したロイコシジンM/F濃縮不活化抗原ワクチン注射後ではこれが大幅に軽減されたことから、乳房の炎症が有意に弱められていることがわかる。
次いで、引き続き、本試験牛に実施例3で記載した方法と同様にS. aureus HK−3株を乳房内に接種した。その結果、M/F濃縮不活化抗原ワクチン注射牛の乳房1、2において乳汁からの菌排泄について軽減効果は見られなかった。
以上の結果から、ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原には、S. aureus HK−3株による炎症惹起に対する抑制効果が認められたことから、試験牛に毒素中和活性を付与できたことがわかる。ただし、黄色ブドウ球菌の排泄量が有意に低減せず、感染防御効果は認められなかった。したがって、前記ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原には、黄色ブドウ球菌による疾患の程度を軽減する効果があることがわかる。
実施例2で調製した免疫原のうち、不活化全菌体及びロイコシジンM/F濃縮不活化抗原を用いて調製したワクチンを搾乳牛(ホルスタイン、4齢)に注射した後、乳房内感染に対する防御効果を対照牛(ワクチン未接種牛)と比較した。
不活化全菌体ワクチンとして、一回あたりの注射量2mLに対して不活化前の菌数として4×1010CFUに調整した不活化菌含有液及び不活化前のロイコシジン毒素活性として5120UのロイコシジンM/F濃縮不活化抗原を加え、これにアジュバントを加えたものを4週間隔で2回筋肉内注射した。ワクチン2回注射後の乳汁における全菌体に対するELISA抗体、ロイコシジンに対する中和抗体の量は、ワクチン注射後の試験牛では、ワクチン注射前の試験牛およびワクチン未接種の対照牛と比べて、全菌体及びロイコシジン双方に対して顕著に高い抗体付与がなされていることが確認された。
これらの結果を表2に示す。
なお、実施例2と同様の方法で作製した1〜3×107CFUの不活化全菌体抗原を抗原として間接ELISA法で牛血清の菌体に対する抗体価を測定した。
図3の上図、下図に示す結果から、ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原と不活化全菌体抗原とを投与した試験牛の乳房1、2では、対照牛の乳房1、2に比べ、感染初期での体細胞数を有意に低減し、しかも乳汁からの菌排泄数が確認されなかった。
以上の結果から、ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原とHK−3株不活化菌体抗原とを併用することで、ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原を単独で使用した場合と比べて、黄色ブドウ球菌による疾患の程度をより軽減する効果に加えて、感染防御効果も発揮されることがわかる。
実施例5−1と同様の方法で2回の免疫を行った後2週目の試験牛および対照牛に、生菌攻撃試験として、S. aureus HK−3株100CFUを乳房内に接種した。生菌接種後、乳房炎症状として乳汁体細胞数、および感染の程度として乳汁からの菌排泄数をそれぞれ経時的に評価した。結果を図4に示す。
図4の上図、下図に示す結果から、ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原と不活化全菌体抗原とを投与した試験牛の乳房では、対照牛の乳房に比べ、体細胞数及び乳汁からの菌排泄数双方において有意な低減が認められた。
以上の結果から、ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原とHK−3株不活化菌体抗原とを併用することで、ロイコシジンM/F濃縮不活化抗原を単独で使用した場合と比べて、黄色ブドウ球菌による疾患の程度をより軽減する効果に加えて、感染防御効果も発揮されることがわかる。
Claims (13)
- ロイコシジンM/F抗原を含有してなり、かつ、投与対象動物である反芻動物に毒素中和活性を付与することが可能な免疫原性組成物であって、
前記ロイコシジンM/F抗原が、
配列番号3で示されるロイコシジンMタンパク質を構成するアミノ酸配列または配列番号3で示されるアミノ酸配列に1又は2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列、および
配列番号4で示されるロイコシジンFタンパク質を構成するアミノ酸配列または配列番号4で示されるアミノ酸配列に1又は2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列
を有するタンパク質である、反芻動物の乳房炎の症状軽減用免疫原性組成物。 - 前記ロイコシジンM/F抗原が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の培養上清から得られたものである請求項1に記載の免疫原性組成物。
- 前記黄色ブドウ球菌がMLST型別においてCC97型の菌株である請求項2に記載の免疫原性組成物。
- 前記ロイコシジンM/F抗原が、合成されたものである請求項1に記載の免疫原性組成物。
- 前記ロイコシジンM/F抗原が、不活化処理されたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
- さらに黄色ブドウ球菌の菌体抗原を含有し、かつ、反芻動物の乳房炎の症状軽減用または予防用である請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
- 前記黄色ブドウ球菌の菌体抗原が、黄色ブドウ球菌の不活化全菌体である請求項6に記載の免疫原性組成物。
- 前記黄色ブドウ球菌が、反芻動物の乳汁より分離された黄色ブドウ球菌である請求項6または7に記載の免疫原性組成物。
- 前記反芻動物がウシ、ヤギ、ヒツジまたはシカである請求項1〜8のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
- ワクチンとして使用するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
- 反芻動物における乳房炎の症状軽減用または予防用の製剤を調製するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
- 免疫学的に効果的な量の請求項1〜11のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を投与対象動物である反芻動物に投与することを含む、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する免疫応答を誘発する方法。
- 免疫応答が、反芻動物における乳房炎を予防するかもしくは症状を軽減させる、請求項12に記載の方法。
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