(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1乃至図7を参照にして説明する。
図1は、走行装置1を示す図である。走行装置1は、クレーン、ホイールローダ等の建設機械において、車両を走行させる走行装置であり、本実施形態では電気及び油圧が用いられるハイブリッド式の走行装置である。また、本実施形態では、走行装置1の全体が車両の下部走行体(図示しない)に設けられている。
図1に示すように、走行装置1は、発動機であるエンジン2と、2つのアクスル3(フロントアクスル3A及びリアアクスル3B)と、制御部5と、を備える。制御部5は、CPU又はASICを備えるプロセッサ、及び、メモリ等の記憶部を備える。また、エンジン2には回転センサ(図示しない)が設けられ、エンジン2の回転数が回転センサによって検知され、エンジン2の回転数の検知結果が制御部5に伝達される。エンジン2とアクスル(車軸)3との間には、第1の動力伝達部10が形成されている。エンジン2を発動することによって発生した動力(エンジン動力)は、第1の動力伝達部10を通してアクスル3に伝達される。アクスル3にエンジン2からの動力が伝達されることにより、アクスル3が作動され、車両が走行する。なお、エンジン2は、下部走行体においてリアアクスル3Bより後方側に位置している。
第1の動力伝達部10は、トルクコンバータ(T/C)11及びトランスミッション(T/M)12を備える。したがって、エンジン2とアクスル3との間は、トルクコンバータ11及びトランスミッション12を介して連結されている。本実施形態では、エンジン2とアクスル3との間に油圧回路等が設けられず、エンジン2はアクスル3に機械的に連結されている。トルクコンバータ(クラッチ)11及びトランスミッション12は、周知の走行装置における構成と同様の構成である。エンジン2からの動力は、トルクコンバータ11、トランスミッション12を順に通して、アクスル3に伝達される。また、制御部5は、トルクコンバータ11及びトランスミッション12のぞれぞれの作動状態を制御している。トルクコンバータ11及びトランスミッション12のそれぞれの作動状態が切替わることにより、エンジン2とアクスル3との間の接続状態が切替わり、エンジン2からの動力がアクスル3に伝達されるか否かが切替わる。
建設機械には、アクセル13での操作入力を検知するアクセルセンサ14、ブレーキ(回生ブレーキ)15での操作入力を検知するブレーキスイッチ16、及び、操作レバー17での操作入力を検知するレバースイッチ18が設けられている。操作レバー17では、車両が走行していない状態での作業において操作入力が行われる。例えば、建設機械がクレーンである場合は、操作レバー17で操作入力が行われると、エンジン2の発動によって発生した動力(エンジン動力)によって油圧ポンプ(図示しない)が駆動され、油圧によって上部旋回体の旋回動作、ブームの起伏動作等が行われる。アクセルセンサ14、ブレーキスイッチ16及びレバースイッチ18のそれぞれの検知結果は、制御部5に伝達される。また、下部走行体には、車体の走行速度を検知する速度センサ6が、トランスミッション12に連結された状態で設けられている。速度センサ6での走行速度の検知結果は、制御部5に伝達される。
制御部5は、アクセルセンサ14での検知結果に基づいて、アクセル13で操作入力が行われているか否かを判定するとともに、アクセル13での操作入力におけるアクセル操作量(アクセル入力値)Aを検出する。制御部5の記憶部(図示しない)には、車両が加速しているか否かの基準値となる基準アクセル操作量Athが記憶されている。制御部5は、検出したアクセル操作量Aと基準アクセル操作量Athとを比較し、車両が加速しているか否かを判定する。また、制御部5は、ブレーキスイッチ16での検知結果に基づいて、ブレーキ15で操作入力が行われているか否かを判定するとともに、ブレーキ15での操作入力におけるブレーキ操作量(ブレーキ入力値)Bを検出する。制御部5は、検出したブレーキ操作量Bに基づいて、車両の減速において作用させる制動力の大きさを判定する。
走行装置1は、電気式動力装置として電気動力源ユニット20を備える。電気動力源ユニット20は、バッテリ(蓄電部)21と、電力変換部としてのインバータ22と、電動発電機(モータジェネレータ)23と、を備える。バッテリ21の直流電力がインバータ22で変換され、電動発電機(MG)23に供給されることにより、電動発電機23は電動機として動作する。電動発電機23が電動機動作することにより、動力(電動機動力)が発生する。また、電動発電機23は、電気動力源ユニット20の外部からの動力(例えば、作動しているアクスル3からの動力(アクスル動力))が伝達されることにより、発電機として動作する(発電機動作する)。これにより、電動発電機23で電力が発生し、発生した電力がインバータ22で直流電力に変換され、バッテリ21に蓄電される。
制御部5は、インバータ22を制御することにより、電動機動作する電動発電機23へのバッテリ21からの電力の供給を制御する。これにより、電動発電機23の電動機動作(アシスト動作)において、電動発電機23のトルクP及び回転数Rを含む動作状態が制御される。また、制御部5は、インバータ22を制御することにより、発電機動作する電動発電機23からバッテリ21への電力の供給を制御する。これにより、電動発電機23の発電機動作(回生動作)において、バッテリ21での蓄電状態が制御される。
電動機動作及び発電機動作のそれぞれでは、電動発電機23の動作状態(回転数R及びトルクPを含む)は、制御部5にフィードバックされる(検出される)。また、バッテリ21での蓄電状態(充電率(State of charge)ε)も、制御部5にフィードバックされる(検出される)。制御部5の記憶部(図示しない)には、バッテリ21の蓄電状態を判定する基準値である基準充電率εthが記憶されている。また、制御部5の記憶部には、例えば、図2に示す電動発電機23の効率マップが記憶されている。図2では、横軸に電動発電機23の回転数R[min−1]を、縦軸に電動発電機23のトルクP[N・m]を示し、電動発電機23の効率γがパーセント表示で示されている。
なお、バッテリ21は、下部走行体においてフロントアクスル3Aより前方側に位置していることが好ましい。これにより、リアアクスル3Bより後方側に位置するエンジン2に対して重量バランスが保たれ、車体において前方から後方まで均一な重量配分を実現可能となる。また、バッテリ21は、強度の高いフレームの内部に配置され、衝撃からバッテリ21が保護されることが好ましい。
走行装置1は、油圧回路ユニットである油圧トランスミッション(HST)30を備える。油圧トランスミッション30は、油圧回路(油圧閉回路)31と、油圧回路31に配置される油圧モータ32と、油圧回路31を通して油圧モータ32との間で作動油を授受可能な油圧ポンプ33と、を備える。油圧モータ32及び油圧ポンプ33は、容量可変である。制御部5の制御によって、油圧モータ32の傾転角α及び油圧ポンプ33の傾転角α´が変化し、油圧モータ32及び油圧ポンプ33のそれぞれにおいて容量が変化する。油圧モータ32の容量が変化することにより、油圧回路31の作動油の油圧ρ及び油圧モータ32を通過する作動油の流量Vが変化し、油圧モータ32の駆動トルクτ及び回転数Nを含む駆動状態が変化する。同様に、油圧ポンプ33の容量が変化することにより、油圧回路31の作動油の油圧ρ及び油圧ポンプ33を通過する作動油の流量V´が変化し、油圧ポンプ33の駆動トルクτ´及び回転数N´を含む駆動状態が変化する。
制御部5の記憶部(図示しない)には、例えば、図3に示すテーブルが記憶されている。図3のテーブルでは、油圧モータ32の複数の回転数Nk(k=1,2,3…)のそれぞれについて、油圧モータ32の効率ηに対する油圧回路31の油圧ρ及び油圧モータ32を通過する作動油の流量Vの関係が示されている。回転数Nk[min−1]のそれぞれについて示されるグラフでは、縦軸に油圧モータ32の効率η[%]を、横軸に油圧ρ[Pa]を示し、流量V[m3/rev]がVk(k=1,2,3…)で示されている。また、制御部5の記憶部には、例えば、図4に示すグラフが記憶されている。図4のグラフでは、油圧ポンプ33の駆動トルクτ´と回転数N´との関係が示され、横軸に油圧ポンプ33の回転数N´[min−1]を、縦軸に油圧ポンプ33の駆動トルクτ´[N・m]を示している。
油圧トランスミッション30は、第1の動力伝達部10と電気動力源ユニット20の電動発電機23との間に配置されている。電動発電機23は、油圧トランスミッション30の油圧ポンプ33に連結されている。電動発電機23と油圧ポンプ33との間は、油圧回路31等を介することなく機械的に連結されている。また、走行装置1では、第1の動力伝達部10と油圧トランスミッション30の油圧モータ32との間に第2の動力伝達部40が設けられている。本実施形態では、第2の動力伝達部40は、エンジン2とトルクコンバータ11との間において第1の動力伝達部10から油圧モータ32に向かって分岐する。油圧モータ32は、第2の動力伝達部40及び第1の動力伝達部10を介して、アクスル3及びエンジン2に連結されている。油圧モータ32はアクスル3(及びエンジン2)に対して、油圧回路31等を介することなく機械的に連結されている。ただし、本実施形態では、油圧モータ32と油圧ポンプ33との間に油圧回路31が介在するため、電動発電機23(及び油圧ポンプ33)は、アクスル3(及びエンジン2)に機械的に連結されていない。
電動発電機23が電動機動作することにより、電動発電機23からの動力(電動機動力)が油圧ポンプ33に伝達され、油圧ポンプ33が駆動される。そして、油圧ポンプ33が駆動された状態で、制御部5による油圧トランスミッション30の制御によって、油圧モータ32と油圧ポンプ33との間で油圧回路31を介して作動油を授受させる。これにより、油圧モータ32に電動発電機23からの動力が伝達される。すなわち、電動機動作する電動発電機23からの動力が、油圧ポンプ33及び油圧回路31を通して油圧モータ32に伝達される。油圧モータ32に伝達された動力(電動機動力)は、第2の動力伝達部40を通して第1の動力伝達部10に伝達される。そして、第1の動力伝達部10(本実施形態では、エンジン2とトルクコンバータ11との間)において、電動発電機23からの動力(電動機動力)がエンジン2からの動力(エンジン動力)に合流し、合流した動力がアクスル3に伝達される。これにより、エンジン2によるアクスル3の作動が、電動機動作する電動発電機23によってアシストされる。なお、電動発電機23の電動機動作における制御部5による電気動力源ユニット20及び油圧トランスミッション30の制御の詳細については後述する。
また、アクスル3が作動している状態では、アクスル3から第1の動力伝達部10及び第2の動力伝達部40を通して、油圧モータ32に動力(アクスル動力)が伝達される。例えば車両の減速においてバッテリ21の充電率εが基準充電率εthより小さい場合は、作動するアクスル3からの動力によって油圧モータ32が駆動された状態で、制御部5による油圧トランスミッション30の制御によって、油圧モータ32と油圧ポンプ33との間で油圧回路31を介して作動油を授受させる。これにより、油圧ポンプ33にアクスル3からの動力が伝達され、油圧ポンプ33が駆動されるとともに、電動発電機23にアクスル3から動力が伝達される。すなわち、作動しているアクスル3からの動力が、第1の動力伝達部10、第2の動力伝達部40、油圧モータ32、油圧回路31及び油圧ポンプ33を順に通して電動発電機23に伝達される。アクスル3からの動力が電動発電機23に伝達されることにより、電動発電機23は発電機動作する。これにより、アクスル3からの動力(運動エネルギー)が電力(電気エネルギー)に回生(変換)され、変換された電力がバッテリ21に蓄電される。アクスル3の運動エネルギーが電気エネルギーに変換されることにより、車両が減速する。なお、電動発電機23の発電機動作における制御部5による電気動力源ユニット20及び油圧トランスミッション30の制御の詳細については後述する。
図5は、油圧トランスミッション30の構成を示す図である。図5に示すように、油圧トランスミッション30は、油圧回路31、油圧モータ32及び油圧ポンプ33に加えて、油圧回路31の油圧ρを検知する圧力センサ35と、油圧回路31を流れる作動油の温度Tを検知する温度センサ36と、を備える。圧力センサ35及び温度センサ36のそれぞれでの検知結果は制御部5に伝達される。なお、圧力センサ35及び温度センサ36が複数設けられ、油圧回路31において複数箇所で油圧ρ及び温度Tが検知されてもよい。この場合、制御部5によって、油圧ρ及び温度Tのそれぞれについて、例えば複数箇所での検知結果の圧力差及び温度差が算出される。また、制御部5の記憶部(図示しない)には、油圧トランスミッション30を使用可能な範囲での作動油の温度Tの上限値である、使用上限温度T1maxが記憶されている。
また、油圧回路31には、油圧ポンプ33と並列にバイパスライン37が延設されている。バイパスライン37には、バイパスバルブ38が配置されている。制御部5は、バイパスバルブ38の作動状態を制御している。バイパスバルブ38の作動状態が切替わることにより、作動油がバイパスライン37を通過するか否かが切替わる。
また、油圧回路31には、油圧ブレーキユニット(ブレーキバルブユニット)41が、油圧ポンプ33及びバイパスライン37と並列に設けられている。油圧ブレーキユニット41は、リリーフバルブ42と、リリーフバルブ42に対して並列に配置されるブレーキバイパスバルブ43と、を備える。リリーフバルブ42は、上流側からの作動油の油圧によって作動される。リリーフバルブ42を作動油が上流側から下流側へ通過することにより、作動油が開放され、運動エネルギーが熱エネルギーに変換される。このため、リリーフバルブ42の下流側では、上流側に比べて作動油の温度が高くなる。リリーフバルブ42は、作動可能な範囲における作動油の温度Tの上限値である作動上限温度T2maxを有し、リリーフバルブ42の作動上限温度T2maxは制御部5の記憶部に記憶されている。また、制御部5は、リリーフバルブ42の作動状態を制御している。リリーフバルブ42の作動状態を制御することにより、リリーフバルブ42を作動させる際の上流側の油圧であるリリーフバルブ42の作動圧力ρ´が調整される。
例えば車両の減速においてバッテリ21の充電率εが所定の基準充電率εth以上の場合(例えば、満充電状態の場合)は、制御部5による油圧トランスミッション30の制御によって、油圧モータ32から油圧ポンプ33に作動油を供給されず、アクスル3からの動力が電動発電機23(及び油圧ポンプ33)に伝達されない。代わりに、制御部5による油圧トランスミッション30の制御によって、油圧モータ32から油圧ブレーキユニット41のリリーフバルブ42に作動油が供給され、リリーフバルブ42に供給された作動油が開放される。これにより、アクスル3からの動力(運動エネルギー)が熱エネルギーに変換され、車両が減速する。なお、リリーフバルブ42での作動油の開放における制御部5による電気動力源ユニット20及び油圧トランスミッション30の制御の詳細については後述する。
制御部5は、ブレーキバイパスバルブ43の作動状態を制御している。ブレーキバイパスバルブ43の作動状態が変化することにより、ブレーキバイパスバルブ43を油が通過するか否かが切替わる。また、油圧ブレーキユニット41は、リリーフバルブ42及びブレーキバイパスバルブ43の下流側にオイルクーラ45を備える。オイルクーラ45によって、油が冷却される。油圧ブレーキユニット41では、オイルクーラ45の上流側に温度センサ46が、オイルクーラ45の下流側に温度センサ47が、設けられている。温度センサ46によってオイルクーラ45で冷却される直前において作動油の温度Tが検知され、温度センサ47によってオイルクーラ45で冷却された直後において作動油の温度Tが検知される。温度センサ46,47のそれぞれでの検知結果は、制御部5に伝達される。
なお、油圧トランスミッション30には、油圧ポンプ33、バイパスライン37及び油圧ブレーキユニット41と並列に、フラッシングバルブユニット(図示しない)が設けられている。フラッシングバルブユニットによって、油圧回路31から漏れた作動油が補給される。これにより、油圧ポンプ33におけるキャビテーションの発生が防止されるとともに、作動油の劣化が防止される。
次に、本実施形態の走行装置1の作用及び効果について説明する。車両を走行させる際には、制御部5は、トルクコンバータ11及びトランスミッション12を制御し、エンジン2の動力(エンジン動力)を第1の動力伝達部10を通してアクスル3に伝達可能にする。エンジン2からの動力によってアクスル3が作動されることにより、車両が走行する。なお、車両の走行時には、制御部5による制御によって、車両が走行していない状態での作業において駆動させるポンプ等(例えば、ブームの起伏動作において駆動されるポンプ)には、エンジン2からの動力は伝達されない。
図6及び図7は、車両を走行させる際の制御部5による処理を示すフローチャートである。車両の走行においては、図6及び図7に示す処理が継続して行われる。図6及び図7に示すように、車両を走行させる際は、制御部5は、温度センサ36による検知結果に基づいて、油圧トランスミッション30の油圧回路31の作動油の温度Tが使用上限温度T1max以下であるか否かを判定する(ステップS101)。作動油の温度Tが使用上限温度T1max以下である場合は(ステップS101−Yes)、制御部5は、アクセルセンサ14での検知結果に基づいて、アクセル13で操作入力が行われているか否かを判定する(ステップS102)。アクセル13で操作入力が行われている場合は(ステップS102−Yes)、制御部5は、アクセルセンサ14での検知結果に基づいて、アクセル13での操作入力におけるアクセル操作量Aが基準アクセル操作量Ath以上であるか否かを判定する(ステップS103)。これにより、車両を加速させるか否かが判定される。アクセル操作量Aが基準アクセル操作量Athより小さい場合は(ステップS103−No)、制御部5は、車両を加速させず、定速走行させると判定する。
車両を定速走行させる判定すると、制御部5は、油圧モータ32の傾転角αを最小にし(ステップS105)、油圧モータ32の容量を最小にする。この際、第2の動力伝達部40を通して伝達されるエンジン2(アクスル3)からの動力によって油圧モータ32が駆動されるが、油圧モータ32の容量が最小になるため、油圧モータ32の仕事量が小さくなる。また、車両を定速走行させると判定すると、制御部5は、バイパスバルブ38を開状態にし(ステップS106)、作動油はバイパスライン37を通過する。作動油がバイパスライン37を通過することにより、油圧モータ32から油圧ポンプ33に作動油が供給されず、エンジン2(アクスル3)からの動力は油圧ポンプ33に伝達されない。これにより、油圧ポンプ33は駆動されず、電動発電機23は発電機動作を行わない。また、車両を定速走行させる場合には、制御部5によるインバータ22の制御によって、バッテリ21から電動発電機23に電力が供給されず、電動発電機23は電動機動作も行わない。したがって、車両を定速走行させると判定すると、制御部5は、電動発電機23を停止し(ステップS107)、電動発電機23は電動機動作及び発電機動作のいずれも行わない。電動発電機23が停止することにより、油圧ポンプ33は駆動されず、油圧ポンプ33は仕事を行わない。前述のように油圧モータ32の仕事量が小さくなり、かつ、油圧ポンプ33が仕事を行わないため、車両を定速走行させる際には、エンジン2の駆動トルクが低減され、エンジン2での燃料噴射量が抑えられる。
ステップS103においてアクセル操作量Aが基準アクセル操作量Ath以上である場合は(ステップS103−Yes)、制御部5は、車両を加速させると判定する。車両を加速させると判定すると、制御部5は、バッテリ21の充電率εが基準充電率εthより小さいか否かを判定する(ステップS104)。充電率εが基準充電率εthより小さい場合は、(ステップS104−Yes)、車両を定速走行させると判定した場合(ステップS103−No)と同様に、制御部5は、油圧モータ32の傾転角αを最小にし(ステップS105)、バイパスバルブ38を開状態にするとともに(ステップS106)、電動発電機23を停止する(ステップS107)。電動発電機23が停止しているため、電動発電機23で動力は発生せず、電動発電機23からアクスル3に動力(電動機動力)は伝達されない。このため、エンジン2からの動力(エンジン動力)のみによって車両が加速する。また、エンジン2からの動力のみによって車両を加速させる場合も、車両を定速走行させる場合と同様に、ステップS105〜S107の処理によって、油圧モータ32の仕事量が小さくなり、かつ、油圧ポンプ33が仕事を行わない。このため、エンジン2の駆動トルクが低減され、エンジン2での燃料噴射量が抑えられる。
ステップS104において、バッテリ21の充電率εが基準充電率εth以上の場合は(ステップS104−No)、制御部5の制御によって、電動発電機23は電動機動作させ、電動発電機23の電動機動作によって発生した動力(電動機動力)が、油圧トランスミッション30、第2の動力伝達部40及び第1の動力伝達部10を順に通して、アクスル3に伝達される。これにより、エンジン2によるアクスル3の作動が、電動機動作する電動発電機23によってアシストされ、エンジン2からの動力(エンジン動力)及び電動発電機23からの動力(電動機動力)によって、車両が加速する。
エンジン2からの動力及び電動機動作する電動発電機23からの動力によって車両を加速させる場合には(ステップS104−No)、制御部5は、アクセル13での操作入力によるアクセル操作量A及びエンジン2の回転数に基づいて、エンジン2によるアクスル3の作動をアシストするために適切な油圧モータ32の駆動トルクτ及び回転数Nを算出する(ステップS108)。そして、制御部5は、算出された油圧モータ32の駆動トルクτ及び回転数Nに基づいて、算出された回転数Nにおいて油圧モータ32の効率ηを最大にする油圧回路31の油圧ρ及び油圧モータ32を通過する作動油の流量Vを推定する(ステップS109)。油圧ρ及び流量Vの推定は、図3のテーブルを用いて行われる。ステップS109での処理では、例えば、図3の複数の回転数Nkの中からステップS108で算出された油圧モータ32の回転数Nに最も近い回転数(例えばN1)を選択し、選択した回転数(例えばN1)において油圧モータ32の効率ηを最大にする油圧ρ及び流量Vを推定する。
そして、制御部5は、推定された油圧ρ及び流量Vを実現する油圧ポンプ33の傾転角α´を算出し、算出された傾転角α´に調整した場合の油圧ポンプ33の駆動トルクτ´及び回転数N´を算出する。油圧ポンプ33の駆動トルクτ´及び回転数N´を算出は、図4に示す油圧ポンプ33の駆動トルクτ´と回転数N´との関係を用いて、行われる。そして、算出された油圧ポンプ33の駆動トルクτ´及び回転数N´から、制御部5は、電動機動作させる電動発電機23のトルクP及び回転数Rを算出する(ステップS110)。油圧ポンプ33の駆動トルクτ´及び回転数N´の算出、及び、電動発電機23のトルクP及び回転数Rの算出は、図2に示す電動発電機23の効率マップを用いて行われる。そして、ステップS109で推定された油圧ρ及び流量Vにする条件において、電動発電機23の効率γが最大になる電動発電機23のトルクP及び回転数Rが算出される。すなわち、ステップS110では、エンジン2によるアクスル3の作動をアシストする電動発電機23の電動機動作において、効率γの良いトルクP及び回転数Rが算出される。
電動発電機23のトルクP及び回転数Rが算出されると、制御部5は、バイパスバルブ38を閉状態にする(ステップS111)。そして、インバータ22を制御することにより、バッテリ21から電動発電機23に電力を供給し、電動発電機23を電動機動作させる(ステップS112)。この際、ステップS110で算出された効率γの良いトルクP及び回転数Rで電動機動作する状態に、電動発電機23に供給される電力が制御される。電動発電機23の電動機動作により、電動発電機23から伝達された動力によって油圧ポンプ33が駆動される。この際、バイパスバルブ38は閉状態であるため、バイパスライン37を作動油は通過しない。また、制御部5による油圧ブレーキユニット41(リリーフバルブ42及びブレーキバイパスバルブ43)の制御によって、油圧ブレーキユニット41にも作動油が流入しない。このため、油圧ポンプ33が駆動されることにより、油圧ポンプ33と油圧モータ32との間で油圧回路31を通して作動油が授受され、油圧モータ32が駆動される。この際、油圧回路31の油圧ρ及び油圧モータ32を通過する作動油の流量Vは、ステップS109で推定された値と略同一になり、ステップS108で算出された値と略同一の駆動トルクτ及び回転数Nで油圧モータ32が駆動される。
前述のようにして、 エンジン2からの動力及び電動機動作する電動発電機23からの動力によって車両を加速させる場合は、電動発電機23からの動力(電動機動力)が油圧ポンプ33及び油圧回路31を通して、油圧モータ32に伝達される。そして、油圧モータ32から第2の動力伝達部40を通して第1の動力伝達部10に動力が伝達され、第1の動力伝達部10においてエンジン2からの動力(エンジ動力)に電動発電機23からの動力(電動機動力)が合流する。
ステップS102においてアクセル13で操作入力が行われていない場合は(ステップS102−No)、制御部5は、ブレーキスイッチ16での検知結果に基づいて、ブレーキ15で操作入力が行われているか否かを判定する(ステップS113)。ブレーキ15で操作入力が行われている場合は(ステップS113−Yes)、制御部5は、車両を減速させると判定する。車両を減速させると判定すると、制御部5は、ブレーキスイッチ16で検知されたブレーキ15での操作入力におけるブレーキ操作量Bから、車両の減速において作用させる制動力を算出する(ステップS114)。そして、車両の減速において算出された制動力を発生させるために適切な油圧モータ32の駆動トルクτが、制御部5によって算出される。
車両が走行している状態では、作動しているアクスル3からの動力(アクスル動力)が第1の動力伝達部10及び第2の動力伝達部40を通して油圧モータ32に伝達され、油圧モータ32は駆動されている。車両を減速させると判定すると、制御部5は、エンジン2の回転数及び速度センサ6で検知される車両の速度に基づいて、油圧モータ32の回転数Nを算出する(ステップS115)。ステップS114で算出された制動力に基づき車両の減速において適切な油圧モータ32の駆動トルクτが算出され、ステップS115で油圧モータ32の回転数Nが算出されると、制御部5は、バッテリ21の充電率εが基準充電率εthより小さいか否かを判定する(ステップS116)。
バッテリ21の充電率εが基準充電率εthより小さい場合は(ステップS116−Yes)、制御部5の制御によって、作動するアクスル3から油圧モータ32に伝達された動力を、油圧回路31及び油圧ポンプ33を通して電動発電機23に伝達させ、電動発電機23を発電機動作させる。電動発電機23の発電機動作によってアクスル3からの運動エネルギー(動力)が電気エネルギーに変換され、車両が減速する。そして、電動発電機23で発生した電力は、バッテリ21に蓄電される。この際、制御部5は、インバータ22を制御することにより、バッテリ21から電動発電機23に電力が供給されない。
電動発電機23の発電機動作によって車両を減速させる場合には(ステップS116−Yes)、制御部5は、ステップS114で算出された制動力に対応する油圧モータ32の駆動トルクτ、及び、ステップS115で算出された油圧モータ32の回転数Nに基づいて、算出された回転数Nにおいて油圧モータ32の効率ηを最大にする油圧回路31の油圧ρ及び油圧モータ32を通過する作動油の流量Vを推定する(ステップS117)。油圧ρ及び流量Vの推定は、図3のテーブルを用いて、ステップS109で前述したようにして、行われる。そして、制御部5は、推定された油圧ρ及び流量Vを実現する油圧ポンプ33の傾転角α´を算出し、算出された傾転角α´に調整した場合の油圧ポンプ33の駆動トルクτ´及び回転数N´を算出する。そして、制御部5は、算出された油圧ポンプ33の駆動トルクτ´及び回転数N´から、発電機動作させる電動発電機23のトルクP及び回転数Rを算出する(ステップS118)。電動発電機23のトルクP及び回転数Rの算出は、図4に示す油圧ポンプ33の駆動トルクτ´と回転数N´との関係、及び、図2に示す電動発電機23の効率マップを用いて、ステップS110で前述したようにして行われる。このため、ステップS118での処理により、ステップS117で推定された油圧ρ及び流量Vにする条件において、電動発電機23の効率γが最大になる電動発電機23のトルクP及び回転数Rが算出される。すなわち、ステップS118では、アクスル3から伝達される動力による電動発電機23の発電機動作において、効率γの良いトルクP及び回転数Rが算出される。
電動発電機23のトルクP及び回転数Rが算出されると、制御部5は、バイパスバルブ38を閉状態にする(ステップS119)。これにより、作動油は、バイパスライン37を通過しなくなる。また、制御部5による油圧ブレーキユニット41(リリーフバルブ42及びブレーキバイパスバルブ43)の制御によって、油圧ブレーキユニット41にも作動油が流入しない。したがって、油圧モータ32と油圧ポンプ33の間で油圧回路31を通して作動油が授受され、駆動している油圧モータ32から油圧ポンプ33及び電動発電機23に動力が伝達される。すなわち、制御部5は、油圧トランスミッション30を制御することにより、油圧モータ32から油圧回路31及び油圧ポンプ33を通して電動発電機23に動力(アクスル動力)を伝達し、電動発電機23を発電機動作させる(ステップS120)。この際、油圧モータ32は、ステップS114、S115において算出された値と略同一の駆動トルクτ及び回転数Nで駆動され、油圧回路31の油圧ρ及び油圧モータ32を通過する作動油の流量Vは、ステップS1117で推定された値と略同一になる。このため、電動発電機23は、ステップS118で算出された効率γの良いトルクP及び回転数Rで発電機動作する。
ステップS116においてバッテリ21の充電率εが基準充電率εthより大きい場合は(ステップS116−No)、制御部5は、油圧回路31の作動油の温度Tがリリーフバルブ42の作動上限温度T2max以下であるか否かを判定する(ステップS121)。作動油の温度Tが作動上限温度T2max以下の場合は(ステップS121−Yes)、制御部5による制御によって、油圧ブレーキユニット41のリリーフバルブ42に作動油を供給し、作動するアクスル3から伝達された動力を、油圧回路31を通してリリーフバルブ42に伝達する。これにより、リリーフバルブ42が作動され、リリーフバルブ42での作動油の開放によって、アクスル3からの運動エネルギー(動力)が熱エネルギーに変換され、車両が減速する。この際、制御部5の制御によって、油圧ポンプ33に作動油が供給されず、油圧ポンプ33は駆動されない。
リリーフバルブ42での作動油の開放によって車両を減速させる場合には(ステップS121−Yes)、制御部5は、ステップS114で算出された制動力に対応する油圧モータ32の駆動トルクτ、及び、ステップS115で算出された油圧モータ32の回転数Nに基づいて、油圧回路31の油圧ρ及び油圧モータ32を通過する作動油の流量Vを推定する(ステップS122)。この際、ステップS115で算出された回転数Nにおいて油圧モータ32を通過する作動油の流量Vが最大になる状態に、油圧ρ及び流量Vを推定する。流量Vが大きくなることにより、油圧モータ32の吐出圧力が低下するため、リリーフバルブ42の通過による作動油の温度Tの上昇幅が小さくなる。そして、制御部5は、推定された油圧ρでリリーフバルブ42が作動可能な状態に、リリーフバルブ42の作動圧力ρ´を調整する(ステップS123)。
そして、制御部5は、バイパスバルブ38を閉状態にする(ステップS124)。これにより、作動油は、バイパスライン37を通過しなくなる。また、制御部5による油圧トランスミッション30の制御によって、油圧モータ32からの作動油が、油圧ブレーキユニット41のリリーフバルブ42に供給される。この際、油圧ブレーキユニット41では、ブレーキバイパスバルブ43が閉状態であり、ブレーキバイパスバルブ43を作動油は通過しない。リリーフバルブ42に油が供給されることにより、油圧モータ32から油圧ポンプ33に作動油が供給されず、油圧ポンプ33は駆動されない。このため、電動発電機23は発電機動作を行わない。また、制御部5のインバータ22の制御によって、バッテリ21から電動発電機23に電力は供給されず、電動発電機23は電動機動作を行わない。したがって、リリーフバルブ42での作動油の開放によって車両を減速させる場合は、制御部5は、電気動力源ユニット20及び油圧トランスミッション30を制御することにより、電動発電機23を停止する(ステップS125)。
また、制御部5による制御によって、リリーフバルブ42に作動油が供給されると、リリーフバルブ42は作動する(ステップS126)。これにより、リリーフバルブ42で作動油が開放され、アクスル3からの動力が熱エネルギーに変換される。この際、制御部5は、油圧モータ32の傾転角αを調整することにより、油圧モータ32を通過する作動油の流量Vを、ステップS122で推定された値と略同一にしている。
ステップS101において作動油の温度Tが使用上限温度T1maxより大きい場合(ステップS101−No)、ステップS113においてブレーキ15での操作入力が行われていない場合(ステップS113−No)、及び、ステップS121で作動油の温度Tがリリーフバルブ42の作動上限温度T2maxより大きい場合は(ステップS121−No)、制御部5による制御によって、油圧ブレーキユニット41のオイルクーラ45に作動油を供給し、作動油を冷却する。作動油の冷却を行うことにより、油圧トランスミッション(油圧回路ユニット)30が保護されるとともに、作動油の劣化が防止される。
作動油を冷却する場合には(ステップS101−No、ステップS113−No及びステップS121−No)、制御部5は、ブレーキバイパスバルブ43を開状態にする(ステップS127)。これにより、油圧ブレーキユニット41に供給された作動油は、リリーフバルブ42を通過せず、代わりにブレーキバイパスバルブ43を通過してオイルクーラ45に供給される。そして、制御部5は、油圧モータ32の回転数Nを算出し、算出した油圧モータ32の回転数Nに基づいて、油圧回路31の油圧ρ及び油圧モータ32を通過する作動油の流量Vを推定する(ステップS128)。この際、算出された回転数Nにおいて、オイルクーラ45を通過後の(すなわち、オイルクーラ45の下流側での)作動油の温度Tが適温になる状態に、油圧ρ及び流量Vを推定する。
そして、制御部5は、バイパスバルブ38を閉状態にする(ステップS129)。これにより、作動油は、バイパスライン37を通過しなくなる。また、制御部5による油圧トランスミッション30の制御によって、油圧モータ32からの作動油が、油圧ブレーキユニット41のオイルクーラ45に供給される。オイルクーラ45に油が供給されることにより、油圧モータ32から油圧ポンプ33に作動油が供給されず、油圧ポンプ33は駆動されない。このため、電動発電機23は発電機動作を行わない。また、制御部5のインバータ22の制御によって、バッテリ21から電動発電機23に電力は供給されず、電動発電機23は電動機動作を行わない。したがって、オイルクーラ45によって作動油を冷却する場合は、制御部5は、電気動力源ユニット20及び油圧トランスミッション30を制御することにより、電動発電機23を停止する(ステップS130)。また、制御部5による制御によって、オイルクーラ45に作動油が供給されると、オイルクーラ45は作動油を冷却する(ステップS131)。この際、制御部5は、油圧モータ32の傾転角αを調整することにより、油圧モータ32を通過する作動油の流量Vを、ステップS128で推定された値と略同一にしている。
本実施形態の走行装置1では、エンジン2からアクスル3に動力を伝達する第1の動力伝達部10から第2の動力伝達部40が分岐し、第2の動力伝達部40と電動発電機23との間に油圧回路31を備える油圧トランスミッション30が介在している。このため、電動発電機23とアクスル3(エンジン2)との間には油圧回路31が介在し、電動発電機23はアクスル3に機械的に連結されていない。このため、アクスル3の作動状態(車両の走行速度等)及びアクスル3と電動発電機23との間に設けられるギアでのギア比等の、電動発電機23の回転数への影響が小さくすることができる。
また、制御部5によって図6及び図7に示す制御が行われることにより、電動発電機23が効率γの良い回転数で電動機動作及び発電機動作を行う状態に、油圧モータ32及び油圧ポンプ33の容量が調整される。すなわち、油圧回路31、油圧モータ32及び油圧ポンプ33を備える油圧トランスミッション(油圧回路ユニット)30が第1の動力伝達部10と電動発電機23との間に設けられるため、制御部5による油圧トランスミッション30の制御によって、電動発電機23を効率γの良い回転数で電動機動作及び発電機動作させることができる。
また、電動発電機23は、エンジン2からアクスル3に動力を伝達する第1の動力伝達部10から分岐する第2の動力伝達部40を介してアクスル3及びエンジン2に連結され、第1の動力伝達部10に位置していない(すなわち、電動発電機23は、エンジン2と同軸ではない)。このため、走行装置1においてレイアウトの自由度が大きくなり、建設機械においてアクスル3に掛かる荷重(軸重)を変更可能となる。また、電動発電機23が第1の動力伝達部10に位置しないため、電動発電機23に故障が発生しても、エンジン2からの動力は第1の動力伝達部10を通してアクスル3に伝達され、エンジン2の動力のみで車両を走行させることが可能である。さらに、電動発電機23が第1の動力伝達部10に位置しないため、電動発電機23に故障が発生しても、容易に電動発電機23を交換可能である。
また、本実施形態では、例えば、バッテリ21が満充電状態等のバッテリ21の充電率εが基準充電率εth以上の場合でも、リリーフバルブ42で作動油が開放されることにより、アクスル3からの動力が熱エネルギーに変換され、車両が減速される。電動発電機23での発電機動作に加えて、リリーフバルブ42での作動油の開放によっても、車両が減速されるため、ブレーキパッド等の機械的ブレーキの作動頻度(使用頻度)が減少する。機械的ブレーキ(摩擦ブレーキ)の使用頻度が減少するため、機械的ブレーキの作動によって過度の摩擦熱が発生することが防止され、ベーパーロック現象の発生が防止される。また、機械的ブレーキの使用頻度が減少することにより、ブレーキパッドの摩耗も低減される。
また、リリーフバルブ42が設けられることにより、前述の電動発電機23の電動機動作及び発電機動作のそれぞれにおいて、例えばアクスル3から過剰なトルクが油圧トランスミッション30に伝達されても、リリーフバルブ42で作動油を開放することにより、電動発電機23に作用するトルクが低減される。これにより、電動発電機23を含む電気動力源ユニット20が保護される。
また、本実施形態では、オイルクーラ45が設けられているため、リリーフバルブ42での開放によって作動油の温度Tが上昇しても、前述のように必要に応じて、オイルクーラ45が作動油を冷却する。このため、使用可能な範囲で作動油の温度Tが保たれる。
(変形例)
第1の実施形態では、エンジン2とトルクコンバータ11との間において第2の動力伝達部40が第1の動力伝達部10から分岐しているが、これに限るものではない。例えば第1の変形例として図8に示すように、第1の動力伝達部10においてトルクコンバータ11とトランスミッション12との間にギアボックス50が設けられ、ギアボックス50において第2の動力伝達部40が第1の動力伝達部10から分岐してもよい。また、例えば第2の変形例として図9に示すように、トランスミッション12において、第2の動力伝達部40から第1の動力伝達部10が分岐してもよい。すなわち、エンジン2からアクスル3に動力を伝達する第1の動力伝達部10から第2の動力伝達部40が分岐し、第2の動力伝達部40と電動発電機23との間に油圧トランスミッション30が介在していればよい。
また、例えば第3の変形例として図10に示すように、油圧トランスミッション(油圧回路ユニット)30において、油圧モータ32が下部走行体に設けられ、油圧ポンプ33が上部旋回体に設けられてもよい。この場合、バッテリ21及び電動発電機23を含む電気動力源ユニット20は、上部旋回体に設けられる。ただし、本変形例でも、エンジン2、及び、トランスミッション12を含む第1の動力伝達部10は下部走行体に設けられる。本変形例では、上部旋回体を下部走行体に旋回可能に連結する旋回ベアリング55において、油圧回路31の下部走行体側の部分と上部旋回体側の部分がロータリーシール56を介して接続される。本変形例では、バッテリ21は、上部旋回体のカウンタウエイト部に配置されることが好ましい。これにより、建設機械がクレーンである場合は吊り上げ性能が向上するとともに、バッテリ21のレイアウトの自由度が大きくなる。
また、ある変形例では、走行していない状態の作業時において、電動発電機23が電動機動作及び発電機動作を行うことが可能であってもよい。例えば、駆動されることにより上部旋回体を旋回させる油圧ポンプ(図示しない)が設けられ、エンジン2からの動力によって油圧ポンプを駆動する場合に、電動機動作する電動発電機23によってエンジン2による油圧ポンプの駆動がアシストされる。また、操作レバー17で操作入力が行われていない場合は(アイドリング状態では)、エンジン2からの動力が電動発電機23に伝達され、電動発電機23が発電機動作する。この場合も、制御部5によって、図6及び図7を用いて前述したように、電動機動作及び発電機動作のそれぞれにおいて、効率γの良い電動発電機23のトルクP及び回転数Rが算出される。そして、算出された効率γの良いトルクP及び回転数Rで電動発電機23を電動機動作又は発電機動作させる。なお、走行しない状態での作業では、トルクコンバータ11及びトランスミッション12のそれぞれの作動状態を切替えることにより、エンジン2からの動力はアクスル3に伝達されない。
前述の実施形態等では、走行装置(1)は、発動されることにより動力を発生するエンジン(2)と、動力によって作動されるアクスル(3)と、エンジン(2)からの動力をアクスル(3)に伝達する第1の動力伝達部(10)と、電力が供給されることにより動力を発生する電動機として動作し、動力が伝達されることにより電力を発生する発電機として動作する電動発電機(23)と、を備える。走行装置(1)では、第1の動力伝達部(10)と電動発電機(23)との間に油圧回路ユニット(30)が配置され、油圧回路ユニット(30)は、油圧回路(31)と、油圧回路(31)に配置される油圧モータ(32)と、油圧回路(31)を通して油圧モータ(32)との間で作動油を授受することにより、油圧モータ(32)との間で油圧回路(31)を通して動力を伝達する油圧ポンプ(33)と、を備える。第1の動力伝達部(10)と油圧回路ユニット(30)の油圧モータ(32)との間には、第2の動力伝達部(40)が設けられる。電動機動作する電動発電機(23)からの動力が油圧ポンプ(33)及び油圧回路(31)を通して油圧モータ(32)に伝達されることにより、油圧モータ(32)から動力が第2の動力伝達部(40)を通して第1の動力伝達部(10)に伝達され、第1の動力伝達部(10)において電動発電機(23)からの動力が、エンジン(2)からの動力に合流する。また、作動しているアクスル(3)から動力が第2の動力伝達部(40)を通して油圧モータ(32)に伝達されることにより、油圧モータ(32)から油圧回路(31)及び油圧ポンプ(33)を通して電動発電機(23)に動力が伝達され、電動発電機(23)が発電機動作する。
以上、本発明の実施形態等について説明したが、本発明は前述の実施形態等に限るものではなく、発明の趣旨を逸脱することなく種々の変形ができることは、もちろんである。