JP6616924B2 - 涙道チューブ - Google Patents

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Description

本発明は、涙道閉塞治療に用いる涙道チューブに関する。
流涙症をもたらす涙道閉塞の治療には、(i)涙道ブジーによるプロービング、(ii)涙道チューブの留置、(iii)涙嚢鼻腔吻合術(DCR)、(iv)涙小管形成術、(v)鼻涙管形成術、(vi)涙丘移動術などがある。
前記(i)の涙道ブジーによるプロービングは、ブジーと呼ばれる細管を涙道内に挿入することで閉塞部位を開通させ、涙液の流路を再建するものである。その後に使用する(ii)涙道チューブは、流路の維持と組織の再建を図るために留置する涙道内挿管器具である。これらの治療は容易で低侵襲であることから第一治療として行われる場合が多い。これに対して、(iii)涙嚢鼻腔吻合術(DCR)、(iv)涙小管形成術、(v)鼻涙管形成術、(vi)涙丘移動術は、効果は高いが、顔に切開を入れたり骨に穴をあけたりするので相対的に侵襲度が高く、最終手段として行われる。
前記(ii)において使用する涙道チューブは、前記(i)の涙道ブジーによるプロービングのあと、流路の維持と組織の再建を図るために留置するものである。前記(ii)の涙道チューブの留置は前述の(iii)〜(vi)の各治療方法と比して容易で低侵襲、かつ効果が高い。その中でも特許文献1に示されるような、チューブの中央部分が細く柔らかいチューブやロッドで形成され、その両側が硬く太いチューブでできている涙道チューブ(例えば、特許文献1、2、3を参照)が広く普及している。
当該涙道チューブは、チューブと、該チューブの両側の切れ目から挿入された一対のブジーからなり、ブジーを操作してチューブを涙道内へと誘導し留置する。尚、図3に示すように、涙道は涙点(21、22)、涙小管(23、24)、涙嚢(26)、鼻涙管(27)などからなっている。この涙道内に涙道チューブが挿入される。
しかし、前記涙道チューブを挿入するためには、ブジーを用いた涙道内での操作を術者の指先の感覚を頼りとした手探り状態で行わなければならず、術者に高度な操作技術がないとブジーがチューブを突き破ったり、また正常な涙道以外に穴を開ける(仮道)こともあり、その場合、治療成績は不良であった。
そこで、近年の涙道閉塞治療の分野では、より安全で確実な治療を行う観点から、涙道チューブ挿入術として、シース誘導内視鏡下穿破法(SEP)とシース誘導チューブ挿入法(SGI)とを組み合わせた挿入術が行われている。
SEPでは、涙道内視鏡に被せたテフロン(登録商標)製またはポリウレタン製の外筒部分のシースを涙道内視鏡よりも先行させて涙点に挿入し、涙道内視鏡で涙道内を観察しながら閉塞部を穿破し、次いで、シース先端が鼻涙管開口部から出る位置まで挿入を行った後、シースを残したままで涙道内視鏡のみ抜去する。例えば、図1(a)、(b)に示すように涙道内視鏡29に装着したシース30を、上涙点21から上涙小管23を経て涙道31の下鼻道28にある閉塞部位32に挿入し、この閉塞部位32を貫通した後、涙道内視鏡29を取り外す。
SGIでは、前記SEPにて挿入した涙点側のシース端部に涙道チューブを連結し、鼻内視鏡観察下で閉塞部から出たシース先端を鉗子でつまんで引き出す。このことにより涙道チューブはシースに引かれてSEPにて開放された閉塞部のスペースに挿入される。その後シースと涙道チューブの連結を外し留置が完了する。例えば、図2(a)に示すように前記シース30に涙道チューブ33を接続し、図2(b)に示すように前記涙道チューブ33を接続した側と反対の側から前記シース30を引っ張って涙道31内に前記涙道チューブ33を挿入して閉塞部位32を貫通させる。次に、図2(c)に示すように前記シース30を取り外して前記涙道チューブ33を涙道31内に留置する。
次いで、図示しないが、涙道内視鏡29に装着した別のシース30を、涙道チューブ33を挿入していない下涙点22から下涙小管24を経て涙道31の下鼻道28にある閉塞部位32に挿入し、この閉塞部位32を貫通した後、涙道内視鏡29を取り外し、このシース30に、前記閉塞部位32を貫通していない涙道チューブ33の端部を接続し、前記涙道チューブ33を接続した側と反対の側から前記シース30を引っ張って涙道チューブ33のもう一方の端部を貫通させ、最後に前記シース30を取り外して、図3に示すように前記涙道チューブ33を涙道31内に留置する。
前記のSEPとSGIとを組み合わせた挿入術は、従来のように盲目的に行うのではなく、閉塞部の穿破を涙道内視鏡下で実施できる点で安全性に優れた方法である。また、SEPに用いるシースは剛性の高い材質でできているため、手元部からの操作、力が先端にダイレクトに伝わり微細な操作を行うことができ、また、術中に涙道内視鏡が折れたり、先端部ファイバーが破損したりするリスクも少ないという利点がある。
しかしながら、SEPでは、涙道内視鏡にシースをかぶせて押し込むだけではなく、涙道内視鏡のプローブに被せた状態でトロンボーンのように前後に動かす等の複雑な手技が行われるため、シースの端部に鉗子で把持し易い形状にカットした部分(通称「みみ」と呼ばれる。)を形成する必要があるが(例えば、特許文献4の図2の11を参照。)、SGI時に鼻からシースを抜き去る際、この「みみ」が涙道壁にひっかかるとシースの剛性が高いため涙道壁を傷つける可能性がある。また、前記SGIでは鼻内視鏡観察下で閉塞部から出たシース先端を鉗子でつまんで引き出す操作の難易度が高く、患者への負担が大きくなる可能性がある。また、シースを鼻中に埋没させるケースもあり、その際には切開手術が必要となる。
一方、シースのかわりに涙道チューブに涙道内視鏡を挿入して用いることも考えられており、例えば、涙道に挿入できる外径を持ち、柔軟性を有する材料で構成された涙道留置用本体と、この涙道留置用本体の下端部に設けられ、涙道留置用本体よりも硬い材料で構成された柔軟性を有する筒体よりなるシース部とを備えたことを特徴とする涙道治療用具(特許文献5)が知られている。
しかし、前記涙道治療用具を前記SEPと同様の挿入術に使用する場合、前記涙道治療用具では全長が長くなるために全般的に操作がし難くなる傾向があり、また、涙道内に配置後に涙道治療用具本体とシース部を分離する必要もあった。
以上のように、現在、涙道閉塞治療で採用されているSEPとSGIとを組み合わせた挿入術、またはSEPと同様の挿入術が行える涙道チューブには、手技を簡便に行う点および安全に行う点で十分とはいえず、改善の余地があった。
特許第2539325号公報 特許第3558924号公報 特開2004−202276号公報 特開2007−313290号公報 特開2010−213957号公報
上記のような事情に鑑み、本発明の目的は、SEPと同様の涙道閉塞治療に好適に用いることができる涙道チューブ、具体的には、涙道内視鏡の先に直接装着することができ、またシースを用いずにSEPと同様の涙道閉塞部の穿破をより簡便に、かつ安全に行うことができ、さらに、そのまま留置できる涙道チューブを提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく、鋭意検討を進めた。その結果、涙道チューブを構成するチューブ状部材の他方端にある基端部に着目し、基端部から涙道内視鏡を挿入することができ、しかも基端部を鉗子で把持し易く、涙道に接触した場合でも傷つけ難い形状にすることで、涙道内で操作してもタックしたり破損したりし難く、しかも涙道内での操作性や装着した涙道内視鏡の操作性に優れたものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕一方端に内腔へ連通する開口部を有する一対のチューブ状部材と、これらチューブ状部材の他方端同士をつなぐ接続部材と、を含む涙道チューブであって、
少なくとも一方の前記チューブ状部材の他方端を含む基端部が前記接続部材に向かって先細りしたテーパー形状となっており、かつ前記基端部がチューブ状部材の内腔に通じる出入口を有しており、
前記出入口周縁を構成する前記基端部の一部と前記接続部材とが接続されていることを特徴とする涙道チューブ。
〔2〕前記出入口の面積が、前記チューブ状部材の内腔の長軸方向に対する直交断面積よりも大きい前記〔1〕に記載の涙道チューブ。
〔3〕前記チューブ状部材の長軸方向に対する直交面に、前記出入口周縁における最も他方端側の箇所と最も一方端側の箇所とを投影した場合、
その直交面での前記箇所同士の長さが、前記チューブ状部材の内径長以上である前記〔1〕または〔2〕に記載の涙道チューブ。
〔4〕前記出入口周縁を構成する前記基端部は、前記チューブ状部材の他方端側に、前記チューブ状部材の長軸方向に対する直交面の形状にて英字U字状の部分を含む前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔5〕前記出入口周縁が無段差面で形成される前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔6〕前記出入口周縁を構成する基端部の側面と前記接続部材の側面とが接続されている前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔7〕前記接続部材の先端が前記基端部に形成されたテーパーの位置よりも一方端側にある前記〔6〕に記載の涙道チューブ。
〔8〕前記チューブ状部材の長軸方向に対する直交面に投影した前記基端部のテーパー形状の最も細い部分の位置が、前記長軸方向に対する前記基端部の直交断面の中心に対して偏心している前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔9〕前記基端部が単一材料で形成され、前記基端部を除く前記チューブ状部材の残部に比べて低硬度である前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔10〕前記基端部を除く前記チューブ状部材の残部の少なくとも一部が、多層構造である〔9〕に記載の涙道チューブ。
〔11〕前記多層構造における最外層と前記基端部とが同一材料で構成される前記〔10〕に記載の涙道チューブ。
〔12〕前記多層構造における最外層が、最内層よりも低硬度の材料で構成される前記〔10〕または〔11〕に記載の涙道チューブ。
〔13〕前記基端部と前記基端部を除く前記チューブ状部材の残部との隣り合った箇所の周囲が、前記基端部と前記残部に亘って、補強部材で覆われている前記〔9〕〜〔12〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔14〕前記補強部材と、前記多層構造における最外層と、前記基端部とが同一材料で構成される前記〔13〕に記載の涙道チューブ。
〔15〕前記接続部材と、前記補強部材と、前記多層構造における最外層と、前記基端部とが、同一材料で構成される前記〔14〕に記載の涙道チューブ。
〔16〕少なくとも一方の前記チューブ状部材における一方端を含む末端部が無色材料で形成される前記〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔17〕前記無色材料で形成される前記末端部の周囲の一部に、前記チューブ状部材の長軸方向に沿う着色部が形成される前記〔16〕に記載の涙道チューブ。
〔18〕前記着色部が前記一方端にまで形成されている前記〔17〕に記載の涙道チューブ。
〔19〕前記着色部が一連状の線または破線である前記〔17〕または〔18〕に記載の涙道チューブ。
〔20〕前記着色部が前記末端部の周囲全長に対する1/50以上1/3以下の長さの幅を有する前記〔17〕〜〔19〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔21〕前記チューブ状部材における前記着色部が、前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側および反対側の少なくとも一方側に形成されている前記〔17〕〜〔20〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔22〕前記着色部が前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側および反対側に形成されており、一方の着色部の幅が他方の着色部の幅と異なるように形成されている前記〔21〕に記載の涙道チューブ。
〔23〕幅の細い前記着色部が、前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側に形成され、幅の太い前記着色部が、反対側に形成されている前記〔22〕に記載の涙道チューブ。
〔24〕一対の前記チューブ状部材の一方のチューブ状部材の色相が、色相環にて、前記着色部の色相に対して補色色相または隣接補色色相である前記〔17〕〜〔23〕のいずれかに記載の涙道チューブ。
〔25〕着色された前記チューブ状部材の色が黄色であり、前記着色部の色が青色である前記〔24〕に記載の涙道チューブ。
本発明の涙道チューブによれば、少なくとも一方の前記チューブ状部材の他方端を含む基端部が前記接続部材に向かって先細りしたテーパー形状となっており、かつ前記基端部がチューブ状部材の内腔に通じる出入口を有していることで、前記基端部の出入口から前記チューブ状部材の一方端側にまで涙道内視鏡を挿入することができ、SEPと同様の涙道閉塞治療に好適に用いることができる。
また、前記基端部が接続部材に向かって先細りしたテーパー形状となっており、前記出入口周縁を構成する前記基端部の一部と前記接続部材とが接続されていることで、涙道壁に基端部が当たりづらいことに加えて、手技中に前記基端部を鉗子で把持してもチューブ状部材の内腔がつぶれることがなく、チューブ状部材に挿入している涙道内視鏡と鉗子とが接触することも防ぐことができ、しかも、涙道内視鏡に挿入した状態の涙道チューブを涙道内視鏡に沿って前後にスムーズに動かすことが容易となるため、シースを用いる従来法に比べて、SEPと同様の涙道閉塞部の穿破をより簡便に、かつ安全に行うことができ、さらに、そのまま留置できる。
また、本発明の涙道チューブでは、少なくとも一方の前記チューブ状部材における一方端を含む末端部が無色材料で形成されることで、手技中において涙道チューブに挿入にしている涙道内視鏡からの視野を確保することができる。
また、前記無色材料で形成される末端部の周囲の一部にチューブ状部材の長軸方向に沿う着色部が形成されることで、手技中において涙道内視鏡の観察下で、末端部の位置を容易に確認することができる。
また、本発明の涙道チューブのチューブ状部材の色相が色相環にて前記着色部の色相に対して補色色相または隣接補色色相であることで、涙道中の暗い環境下に挿入されているチューブ状部材の具体的な位置を容易に確認することができる。
SEPに基づく涙道閉塞部の手術の一例を示す概略説明図である。 SGIに基づく涙道閉塞部の手術の一例を示す概略説明図である。 涙道の解剖学的な構造および涙道閉塞具が留置された状態を示す説明図である。 本発明の涙道チューブの一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの基端部の一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの基端部の一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの基端部の断面の一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの基端部におけるチューブ状部材と接続部材との接続の状態を示す概略図である。 本発明の涙道チューブのチューブ状部材並びに先端側および基端側の断面の一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの製造工程の一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの末端部に形成した着色部の一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの末端部に形成した着色部の一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの末端部に形成した着色部の一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの一例を示す概略図である。 本発明の涙道チューブの一例を示す概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう涙道とは、図3に示すように、上/下涙点(21/22)、上/下涙小管(23/24)、総涙小管(25)、涙嚢(26)、鼻涙管(27)、鼻腔管(図示せず)、Hasner’s valve(図示せず)から構成され、涙腺(図示せず)から産出された涙液を眼表面から下鼻道(28)へと導く管(眼球付属器)である。図3は、涙道の解剖学的な構造を模式的に示したものである。尚、上涙点(21)から、上涙小管(23)、総涙小管(25)を経て下鼻道(28)へと導く管を上涙道といい、下涙点(22)から下涙小管(24)、総涙小管(25)を経て下鼻道(28)へと導く管を下涙道という。
本発明の涙道チューブは、一方端に内腔へ連通する開口部を有する一対のチューブ状部材と、これらチューブ状部材の他方端同士をつなぐ接続部材と、を含む涙道チューブであって、
少なくとも一方の前記チューブ状部材の他方端を含む基端部が前記接続部材に向かって先細りしたテーパー形状となっており、かつ前記基端部がチューブ状部材の内腔に通じる出入口を有しており、
前記出入口周縁を構成する前記基端部の一部と前記接続部材とが接続されていることを特徴とする。
前記チューブ状部材の構造としては、同一の樹脂組成物からなる一体型のチューブでもよいし、樹脂の種類が異なる複数の層が厚み方向に積層された積層構造を有するチューブでもよい。
前記チューブ状部材を構成する樹脂としては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレン、シリコーン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、イソブチレン系共重合体、およびこれらのアロイなどを含む樹脂組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明では、上記アロイとしては特に限定はないが、例えば、ポリウレタンとイソブチレン系共重合体のアロイを用いる場合、前記イソブチレン系ブロック共重合体(A)と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)との割合を調整することで、チューブの硬さを調整できる。熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合を大きく設定するほど、チューブの硬度を大きくすることができる。尚、抗血栓性、表面滑り性、柔軟性の観点から考えると、イソブチレン系ブロック共重合体(A)が1重量%以上含まれていることが好ましい(即ち、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合が、重量比で(A)/(B)=1/99〜99/1)。中でも、耐摩耗性の観点から考えると、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合が、重量比で(A)/(B)=1/99〜70/30であることが好ましい。特に、圧縮応力の観点から考えると、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合が、重量比で(A)/(B)=1/99〜50/50であることが好ましい。本発明に用いられる一体のチューブ用の樹脂組成物はイソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)のみからなるものでもよいが他の成分を混合してもよい。
イソブチレン系ブロック共重合体(A)として、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SIBSという場合がある)であるカネカ社製の「SIBSTAR102T」が好ましい。熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)(以下、TPUという場合がある)として、エーテル系芳香環式ポリウレタンである日本ミラクトラン社製の「ミラクトランE385PNAT」、Lubrizol社製「テコタンTT1074A」またはエーテル系脂環式ポリウレタンであるLubrizol社製の「テコフレックスEG100A」、「テコフレックスEG85A」またはポリカーボネート系ポリウレタンであるLubrizol社製「カルボタンPC3575A」などが好ましい。
前記チューブ状部材が、厚み方向の積層構造を有するチューブである場合、各層に使用する樹脂を変えてもよい。例えば、内側の層には、挿入術を行う際、涙道チューブのプッシャビリティを向上させるために、剛性の高い樹脂としてポリエチレンを使用することが好ましい。また、外側の層には、涙道内と接触する部分にはより柔らかい材質の樹脂としてポリウレタンを使用することが好ましい。
前記積層構造が3層である場合には、最外層にポリウレタンを使用し、中間層に接着性のあるポリエチレンを使用し、最内層に剛性の高いポリエチレンを使用することで、閉塞部穿破のためのプッシャビリティを得ることができ、かつ涙道内で操作した場合の安全性に優れるという利点がある。
4層以上の場合でも、最外層にはポリウレタン、最内層には剛性の高いポリエチレンを使用することが好ましい。
また、各層同士は、チューブ状部材の長軸方向全体にわたって溶着することで剛性の連続性が保たれ、キンクが生じにくく、涙道チューブを挿入時に力が他方端側から一方端側へ伝わり易く、操作性に優れるという利点がある。
前記チューブ状部材の内腔は、涙道チューブを涙道に挿入する際にはチューブ状部材の基端部に設けた出入口から挿入した涙道内視鏡を収容するための空間となり、また涙道チューブを涙道内に留置した際にはチューブ状部材の基端部に設けた出入口を通じて涙などの体液の流路となる。
前記チューブ状部材の一方端にある開口部は、涙道チューブを留置した際には涙などの体液の流路の一部となり、また基端部に設けた出入口から挿入した涙道内視鏡の先端部を前記開口部付近にまで挿入した際には、前記開口部を経て涙道内視鏡からの視野を確保して、チューブが仮道を作ったりして、粘膜等を傷付け出血を引き起こす等の問題を避けることができる。
また、前記チューブ状部材の外径は、涙道に挿入可能な範囲であればよいが、例えば、最大外径は0.8mm以上1.7mm以下であれば、国籍、性別の違いによらず、幅広い患者の涙道に対応することができる。
前記チューブ状部材の長さとしては、市販の涙道チューブと同じ程度であればよく、特に限定はない。
前記チューブ状部材の他方端側には、チューブ状部材の他方端を含む基端部がある。前記涙道チューブでは少なくとも一方のチューブ状部材の基端部が前記接続部材に向かって先細りしたテーパー形状となっており、かつ前記基端部がチューブ状部材の内腔に通じる出入口を有している。
チューブ状部材において、基端部は基端部以外の部分(残部)とは別材料のチューブ状部材で構成されていてもよいし、同じ材料のチューブ状部材で構成されていてもよい。なお、前記チューブ状部材の残部とは、チューブ状部材の一方端を含む末端部とチューブ状部材の主要な部分である本体で構成される。
前記基端部は、例えば、チューブ状部材の末端部および本体を構成するチューブの他方端に別のチューブの端部を突き合わせた状態で両者を熱溶着することで形成してもよいし、チューブ状部材の末端部および本体を構成するチューブの他方端を基端部用のチューブの内腔にはめ込んで熱溶着して形成してもよい。
前記基端部は、例えば、チューブ状部材の一部であるこの基端部に接続される接続部材に向かって先細りしたテーパー形状になっている。テーパー形状の例としては、チューブを斜めにカットした形状、チューブの表面を段階的にカットした形状などが含まれるが、特に限定はない(例えば、カット以外でも斜め形状、ひいてはテーパ形状は作成できる。)。
前記基端部では、前記チューブ状部材の他方端側に、前記チューブ状部材の長軸方向に対する直交面の形状が英字U状の部分を含むことで、基端部を他の形状にカットした場合に比べて出入口の面積をより広くすることができ涙道内視鏡の挿入・排出という操作がし易くなる。
前記カットする角度について特に限定はないが、カットして形成される面が無段差面であれば、涙道壁への基端部の引っ掛かりを顕著に低減できるため好ましい。
また、前記チューブ状部材の長軸方向に対する直交面に投影した前記基端部のテーパー形状の最も細い部分の位置が、前記基端部の長軸方向に対する直交断面の中心に対して偏心した位置となるように調整することで、出入口の面積をより広くすることができ涙道内視鏡の挿入・排出という操作がし易くなる。
なお、前記のように基端部をカットして形成される面が出入口周縁となり、涙道内視鏡を涙道チューブの内腔に挿入するためや、涙道内に留置された際の涙液などの体液の流路の一部となるための出入口を形成する。
前記出入口の面積は、前記チューブ状部材の内腔の長軸方向に対する直交断面積よりも大きいことで、涙道内視鏡を挿入し易くするとともに、涙道内に留置された場合、涙液などの体液の流れを良好に保つことができるので好ましい。
なお、前記出入口の面積は、市販のマイクロスコープを用いて出入口付近を複数の角度から撮影した映像に基づいて算出したり、立体的な形状に対応した専用の計算ソフトを用いて算出すればよい。また、チューブ状部材の切断面を上記と同様にして内腔の長軸方向に対する直交断面積を算出すればよい。
また、前記チューブ状部材の長軸方向に対する直交面に、前記出入口周縁における最も他方端側の箇所と最も一方端側の箇所とを投影した場合、その直交面での前記箇所同士の長さが、前記チューブ状部材の内径長さ(内腔の直径)以上であることで、チューブ状部材の側壁に出入口が形成された場合に比べて、涙道内視鏡の軌道を確保し易いため好ましい。
なお、チューブ状部材の側壁に出入口が形成された場合、前記箇所同士の長さは、「約0」となる。
前記基端部の長さとしては、特に限定はないが、2〜10mm程度であればよい。
前記基端部を構成する樹脂としては、特に限定はなく、例えば、シリコーン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、イソブチレン系共重合体、およびこれらのアロイなどを含む樹脂組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明では、上記アロイとしては特に限定はないが、例えば、ポリウレタンとイソブチレン系共重合体のアロイを用いる場合、前記イソブチレン系ブロック共重合体(A)と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)との割合を調整することで、チューブの硬さを調整できる。熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合を大きく設定するほど、チューブの硬度を大きくすることができる。尚、抗血栓性、表面滑り性、柔軟性の観点から考えると、イソブチレン系ブロック共重合体(A)が1重量%以上含まれていることが好ましい(即ち、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合が、重量比で(A)/(B)=1/99〜99/1)。中でも、耐摩耗性の観点から考えると、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合が、重量比で(A)/(B)=1/99〜70/30であることが好ましい。特に、圧縮応力の観点から考えると、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合が、重量比で(A)/(B)=1/99〜50/50であることが好ましい。また、前記樹脂組成物はイソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)のみからなるものでもよいが他の成分を混合してもよい。
イソブチレン系ブロック共重合体(A)として、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SIBSという場合がある)であるカネカ社製の「SIBSTAR102T」が好ましい。熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)(以下、TPUという場合がある)として、エーテル系芳香環式ポリウレタンである日本ミラクトラン社製の「ミラクトランE385PNAT」、Lubrizol社製「テコタンTT1074A」またはエーテル系脂環式ポリウレタンであるLubrizol社製の「テコフレックスEG100A」、「テコフレックスEG85A」またはポリカーボネート系ポリウレタンであるLubrizol社製「カルボタンPC3575A」などが好ましい。
また、本発明の涙道チューブにおける前記チューブ状部材では、前記基端部と、それ以外の部分(残部)とを構成する樹脂を適宜選択することで、有利な効果が奏される。
例えば、前記基端部の材料が単一材料で形成され、前記基端部を除く前記残部に比べて低硬度であることで、手技中に破損し難くしながら、基端部を鉗子で把持し易くすることができる。
また、前記基端部を除く前記残部の少なくとも一部が多層構造であることで、樹脂選択の幅が広がり、例えば、外層に低硬度の樹脂を用いることで涙道に接触した際に涙道を傷つける可能性を顕著に低減しながら、内層に高硬度の樹脂を用いることで、涙道チューブが涙道内閉塞部を穿破し易くすることができる。
また、前記多層構造における最外層と前記基端部とが同一材料で構成されることで、前記チューブ状部材の残部と前記基端部とを構成するチューブ同士を溶着した際に両者が一体化して強い接着性が得られ、手技中で前記残部と基端部との接続部分の接着が破損する可能性をより低減することができる。
また、前記多層構造における最外層が、最内層よりも低硬度の材料で構成されることで、手技中に涙道を傷つける可能性を顕著に低減することができる。
本発明の涙道チューブでは、前記出入口周縁を構成する前記基端部の一部と前記接続部材とが接続される。
前記接続部材は、2つのチューブ状部材の他方端同士を接続するためのものであり、チューブ状部材よりも小さい径であればよく、この径については特に限定はない。
前記接続部材を構成する樹脂としては、柔軟な樹脂で構成されていればよく、例えば、シリコーン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、イソブチレン系共重合体、およびこれらのアロイなどを含む樹脂組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
前記接続部材の長さとしては、市販の涙道チューブと同じ程度であればよく、特に限定はない。
前記チューブ状部材と前記接続部材との接続の仕方としては、前記チューブ状部材の一部である前記基端部の端部と前記接続部材の端部とが当接されていてもよいが、接続面がより大きく、接続箇所の強度がより高まる観点から、前記出入口周縁を構成する基端部の側面(例えば、前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置に対して反対側の側面)と前記接続部材の側面とで接続されていることが好ましい。
また、前記側面同士で基端部と接続部材とが接続されている場合、接続部材の先端の位置としては、前記基端部に形成されたテーパーの位置よりも一方端側になるように調整することで、テーパーを形成されている基端部の強度が接続部材により補強されて大きくなるため好ましい。また、前記接続部材の先端の位置が前記チューブ状部材の基端部と残部との接続部分よりもさらに一方端側になるように調整することで、前記基端部と前記残部との接続部分の強度も接続部材により補強されるためより好ましい。
また、前記基端部と、基端部を除くチューブ状部材の残部との隣り合った箇所の周囲が、前記基端部と前記残部に亘って、補強部材に覆われていてもよい。
補強部材としては、前記基端部および前記残部と一体化し易い観点から、前記基端部および前記残部を構成する樹脂材料と同一材料または溶着し易い材料で構成されたチューブが挙げられる。
中でも、前記残チューブ状部材の基端部を除く残部が多層構造を有する場合、多層構造の最外層と、基端部と、補強部材とを同一材料で構成することで、前記基端部と前記残部との接続強度をより高めることで、涙道チューブの穿破力をより大きくすることができる。また、多層構造を有するチューブ状部材の最外層、基端部および補強部材に加えて、接続部材も同一材料で構成することで、涙道チューブ全体の強度を上げて手技中の各部の破損の可能性をより低減することができる。
また、前記チューブ状部材の開口部付近の内腔は、出入口から挿入した涙道内視鏡の先端に係合するように絞られていてもよい(減径されていてもよい)。このようになっていると、涙道内視鏡と開口部付近の内腔との係り合いに起因する抵抗感を術者が感じ取れ、その術者は、末端部の位置を感触で把握できる。
また、本発明の涙道チューブでは、少なくとも一方の前記チューブ状部材における一方端を含む末端部が無色材料で形成されていることで、涙道内視鏡を涙道チューブに挿入した状態で、チューブ状部材の開口部からだけでなく、チューブ状部材の壁面からも外部の様子を涙道内視鏡で観察できる。
前記末端部を構成する無色材料には、全く色がついていない透明な材料のほか、構成樹脂に由来する着色があっても、内腔にある涙道内視鏡から壁部を通して外部の様子が観察できる程度に透明な材料(例えば、半透明な青色)も含まれる。
前記末端部の全長の範囲については特に限定はなく、一方端から2〜10mmの範囲であればよい。
また、少なくとも一方のチューブ状部材において前記無色材料で形成される前記末端部の周囲の一部に、前記チューブ状部材の長軸方向に沿う着色部が単数または複数形成されていることで、チューブ状部材の開口部からだけでなく、チューブ状部材の壁面からも外部の様子を涙道内視鏡で観察できることに加えて、手技中に末端部の位置を確認することができる。
さらに前記着色部がチューブ状部材の一方端まで形成されていると、手技中に涙道内にあるチューブ状部材の一方端の位置まで確認することが可能となる。
前記着色部の形状については、特に限定はないが、一連状の線または破線であることで、チューブ状部材の末端部の位置や状態を、そのチューブ状部材の内腔にある涙道内視鏡から観察して把握することが容易になり正確な涙道チューブ挿入術が行えるという利点がある。
前記着色部が前記末端部の周囲全長に対する1/50以上1/3以下の長さの幅を有することで、手技中に涙道内に挿入されているチューブ状部材の末端部の位置や状態を、そのチューブ状部材の内腔にある涙道内視鏡から観察して把握することがより容易になる。前記着色部の幅は、1/20以上1/5以下がより好ましい。
また、前記チューブ状部材における前記着色部が、前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側および反対側の少なくとも一方側に形成されていると、涙道内視鏡から観察できる着色部の位置と、基端部の出入口の位置から、末端部の向きも確認することができる。
中でも、チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側および反対側に着色部を形成している場合、涙道内の閉塞部を穿破する際に末端部が変形しても、末端部の変形状態、かつ、開口部と涙道内視鏡との位置関係を正確に把握することができる。
さらに、前記複数の着色部の幅を変えること、例えば、幅の細い前記着色部(幅細着色部)が、前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側に形成され、幅の太い前記着色部(幅広着色部)が、反対側に形成されていることで、涙道チューブの向きを確認することができ、方向を間違えずに目的の場所に確実に涙道チューブを挿入することがより簡単になる。もちろん、幅広着色部が、前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側に形成され、幅細着色部が、反対側に形成されていても、上記同様の効果を奏する。ただし、幅広着色部が前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置に対して反対側に形成されている方が、出入口、ひいては涙道チューブの向きを比較的容易に把握でき、正確な挿入術を行い易い。
前記着色部の色については、特に限定はないが、鼻腔内はおおむね赤色であるため、涙道内視鏡を通して目で確認し易いように、色相環にて赤色と補色色相または隣接補色色相の関係になる色に調整すればよく、例えば、青、シアン等が挙げられる。
また、前記着色部は少なくとも1本のチューブ状部材の末端部に設けていればよいし、2本のチューブ状部材の末端部に着色部がそれぞれ設けられていてもよい。2本のチューブ状部材に着色部が設けられている場合、それぞれの着色部の色は同じでも異なっていてもよい。また、一連状の線または破線の着色部が設けられており、前記線が複数ある場合には、各線の色は同じでも異なっていてもよい。
また、前記着色部を有するチューブ状部材では、末端部だけでなく、着色部から他方端側のチューブ状部材の全周囲にも着色を行ってもよい。
従来のシースを用いた手技においては、入り組んだ形状で暗く、かつ閉塞している涙道内にシースを挿入していくのは涙道内視鏡を用いても難しく、粘膜にシース等が突き刺さり仮道を形成したり、もともとあった仮道に誤って挿入したりする可能性があった。
しかし、前記のように、着色部から他方端側のチューブ状部材の全周囲に着色を行っていれば、先に涙道内に挿入されているチューブ状部材の位置を、後から挿入するチューブ状部材内の涙道内視鏡から確認し、それを道標にして、正確な挿入術を行える。そのため、仮道の形成などを防止できる。
前記着色部から他方端側のチューブ状部材の全周囲にも着色が施されている場合、この他方端側の着色部の色については、色相環にて前記着色部の色相に対して補色色相または隣接補色色相となるように調整すればよく、例えば、黄、黄緑、緑等が挙げられる。
中でも、涙道内視鏡から確認し易いという観点から、着色部の色が青色であり、着色された他方端側のチューブ状部材の色が黄色であることが好ましい。
前記着色部は、金型を用いてのライン入りチューブ押出成形や、チューブ状部材の所望の位置に着色した中実チューブを熱溶着するなどの方法にて作製すればよく、作製方法は特に限定されない。
前記着色部から他方端側のチューブ状部材の着色は少なくとも1本のチューブ状部材に施されていればよいし、2本のチューブ状部材にそれぞれ施されていてもよい。2本のチューブ状部材に前記着色が施されている場合、それぞれの色は同じでも異なっていてもよい。
なお、2本のチューブ状部材に前記着色が施されていると、先に涙道内に挿入されているチューブ状部材の位置を後から挿入するチューブ状部材内から涙道内視鏡を通して確認した場合、鼻腔内面に対して先に留置されているチューブ状部材色が際立って見える。すなわち、暗い涙道内でもチューブ状部材の確認がより明確に行うことができ、後に留置するチューブ状部材の位置精度を高められる。さらに、2本のチューブ状部材に施されている色の種類によっては、前記チューブ状部材の末端部に着色部がなくとも使用することができる場合がある。このような色としては、黄、黄緑、緑等が挙げられる。
また、本発明の涙道チューブは、涙道への挿入性や涙道内での操作性を優れたものとする観点から、前記チューブ状部材や接続部材の表面に親水性コーティングを施してもよい。
前記親水性コーティング部分に用いる親水性コーティングとは、血液や涙液と接触した際に潤滑性が発現し、涙道挿入時の抵抗が低減され、涙道内で好適な操作性を実現するためのものである。親水性コーティングの種類は特に限定されず、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、モノメトキシポリアルキレングリコール等の親水性ポリマー、またはこれらのブレンド等が好適に使用される。
本発明で用いられる涙道内視鏡としては、涙道閉塞治療に使用できるものであればよく、特に限定はない。
また、本発明の涙道チューブを涙道内に挿入する際には、涙道内視鏡以外の涙道チューブ操作具を使用することもできる。このような涙道チューブ操作具としては、例えばブジーなどの操作棒が挙げられる。
以下に本発明に係る涙道チューブを図面に示した複数の実施形態に基づき説明するが、本発明はこれらの実施態様により何ら制限されるものではない。
図4(a)、(b)、(c)は、本発明の涙道チューブ1の外観の一例を示したものである。図4(a)は涙道チューブ1の斜視図、図4(b)は涙道チューブ1の側面図、図4(c)は涙道チューブ1の上面図を示す。
涙道チューブ1は、一対のチューブ状部材2と、これらチューブ状部材2の端同士をつなぐ接続部材3とを含む涙道チューブである。
前記チューブ状部材2はいずれも一方端(先端)4に開口部5を有しており、開口部5は内腔6へ連通している。また、一対の前記チューブ状部材2はいずれも他方端側で接続部材3と接続している。
前記チューブ状部材2は、図4(c)に示すように、一方端4から他方端7にかけて、末端部8、本体9および基端部10から構成されている。
本発明では、少なくとも一方の前記チューブ状部材2の他方端7を含む基端部10が前記接続部材3に向かって先細りしたテーパー形状となっている。
テーパー形状については、図4(a)、5(a)、(b)、8(a)に示すように、斜めにカットした形状であってもよいし、図6に示すように段を設けてもよい。
前記基端部10は、チューブ状部材2の内腔6に通じる出入口11を有している。
前記出入口11の面積は、前記チューブ状部材2の内腔6の長軸方向に対する直交断面積よりも大きくなるように調整されている。例えば、図4(a)、5(a)、(b)、8(a)に示すように斜めにカットされた無段差の出入口11の面積や、図6に示すように段が形成された出入口11の面積は、いずれも内腔6の長軸方向に対する直交断面12の面積より大きくなる。なお、前記出入口11の面積は、市販のマイクロスコープを用いて出入口11付近を複数の角度から撮影した映像に基づいて算出したり、立体的な形状に対応した専用の計算ソフトを用いて算出すればよい。また、チューブ状部材2の本体9の切断面を上記と同様にして内腔6の長軸方向に対する直交断面積を算出すればよい。
前記出入口11の周縁13を構成する前記基端部10は、前記チューブ状部材2の他方端側に、前記チューブ状部材2の長軸方向に対する直交面の形状にて英字U字状の部分を含む。例えば、図5(a)、(b)に示すように斜めにカットされた無段差面の出入口11がある基端部10のうち、他方端側の位置Xにおける切断面は図7に示すように英字U字状になる。同様に、図6に示すように段を有する出入口11がある基端部10のうち、他方端側の任意の位置における切断面も図7に示すように英字U字状になる。
また、前記出入口11の周縁13を構成する前記基端部10において、チューブ状部材2の長軸方向に対する直交面に、図4(b)、6、8(a)に示すように、前記出入口11の周縁13における最も他方端側の箇所(他方端7)と最も一方端側の箇所14とを投影した場合、その直交面での前記箇所同士の長さが、前記チューブ状部材2の内径長(内腔6の直径)以上になっていることが好ましい。
また、前記チューブ状部材2の長軸方向に対する直交面に投影した前記基端部10のテーパー形状の最も細い部分の位置(他方端7)は、前記長軸方向に対する前記基端部10の直交断面の中心に対して偏心していることが好ましい。
本発明の涙道チューブ1では、前記出入口11の周縁13を構成する前記基端部10の一部と前記接続部材3とが接続されている。
前記基端部10と前記接続部材3との接続の仕方としては、例えば、図8(b)に示すように前記基端部10の周縁13と前記接続部材3の端部とが当接されていてもよいが、接続面がより大きく、接続箇所の強度がより高まる観点から、図4(a)、6、8(a)に示すように、前記出入口11の周縁13を構成する基端部10の側面と前記接続部材3の側面とが接続されているのが好ましい。なお、基端部10や本体9の側面に対する接続部材3の接続位置は、前記基端部10の直交断面の中心に対して偏心した、基端部10のテーパー形状の最も細い部分の箇所の位置にあることが好ましい。
また、前記側面同士で基端部10と接続部材3とが接続されている場合、接続部材3の先端15の位置としては、基端部10の他方端7付近にあってもよいが、図4(a)、(c)、図6、図8(a)に示すように、基端部10に形成されたテーパー形状の位置またはさらに一方端側になるように調整すれば、テーパーを形成されている基端部10の強度が接続部材3により補強されて大きくなるため好ましい。
また、図示しないが、前記接続部材3の先端15の位置が前記チューブ状部材2の本体9と前記基端部10の接続部分16よりもさらに一方端側になるように調整することで、前記接続部分の強度も接続部材3により補強されるためより好ましい。
前記チューブ状部材2を構成する末端部8、本体9、基端部10は、一体型の単層のチューブでもよいし、厚み方向に積層構造を有するチューブでもよい。
中でも、前記チューブ状部材2の末端部8や本体9が一体型の単層のチューブで構成されており、前記基端部10が単一材料で形成されている場合、前記基端部10は、前記チューブ状部材2の残部である末端部8や本体9に比べて低硬度であることが好ましい。
積層構造を有するチューブとしては、例えば、図9(a)に示すように、一方端4を含む末端部8が単層で、末端部8よりも他方端側にあるチューブ状部材の本体9が4層になっているチューブ状部材が挙げられる。末端部8を構成するチューブは、本体9の4層チューブの最内層17を構成している。また、本体9では、最内層17の上に順番に内側中間層18、外側中間層19および最外層20が積層されている。図9(b)は、図9(a)の末端部8の位置Xにおける断面、図9(c)は図9(a)の本体9の位置Yにおける断面、図9(d)は基端部10の位置Zにおける断面をそれぞれ示している。なお、前記積層構造の数については、3層以下であってもよいし、5層以上でもよい。また、図中、末端部8や基端部10は単層のチューブで構成されているが、それぞれ2層以上の積層構造を有するチューブであってもよい。
前記多層構造における最外層20は、最内層17よりも、低硬度の材料で構成されることが好ましい。
また、前記多層構造における最外層20は、前記基端部10と同一材料で構成されることが好ましい。
前記のような構成を有する涙道チューブ1は、チューブ状部材2、接続部材3などの各部材同士を接続し、接続部分を加熱して各部材の樹脂同士を熱溶着することで得られる。各部材を熱溶着する手順や方法については特に限定はない。
上記のようにして得られる涙道チューブ1では、各部の樹脂が互いに熱溶解して表面が滑らかな状態となっている。例えば、図5(a)、(b)に示すように、接続部材3と基端部10との接続部分のように、各部材の表面が滑らかな状態となっているため、涙道内に挿入した場合、壁に引っ掛かったりする可能性を顕著に低減することができる。
また、本発明の涙道チューブ1では、図10に示すように、前記基端部10と前記基端部10を除く前記チューブ状部材2の残部の一部である本体9との隣り合った箇所の周囲が、前記基端部10と前記残部の一部である本体9に亘って、補強部材35で覆われていてもよい。
前記補強部材35は、前記多層構造における最外層20および前記基端部10と同一材料で構成されていてもよく、さらに接続部材3とも同一材料で構成されていてもよい。
また、補強部材35を備えた涙道チューブ1は、例えば、図11に示す手順で作製することができる。
まず、チューブ状部材2の本体9用のチューブの他方端面と、基端部10用チューブの端面とを当接する。そして、図11(a)に示すように、この当接した部分16を含む本体9用チューブと基端部10用チューブの表面に補強部材35用チューブを被せ、この補強部材35用チューブの側面に接続部材3の側面を接続し、これらの外周部を熱溶着用のチューブなどで加熱して、各部材同士を熱溶着する。熱溶着した部分の樹脂は溶融することで一体化する。
次いで、図11(b)に示すように、本体9と基端部10との当接した部分16付近の任意の位置から接続部材3との接着面付近まで、カッターなどの切断用の道具を使用して任意の角度で傾斜カットすることにより、図11(c)に示すような補強部材35を有する涙道チューブ1を得ることができる。
また、本発明の涙道チューブ1は、少なくとも一方の前記チューブ状部材2における一方端4を含む末端部8が無色材料で形成されていてもよい。
無色材料で形成される前記末端部8の周囲の一部には、図4(a)、(c)に示すように前記チューブ状部材の長軸方向に沿う着色部(ライン)36が形成されていてもよい。
前記着色部36は、図4(a)、(c)に示すようにチューブ状部材の一方端4にまで形成されていてもよいし、より短くてもよい。
前記着色部36の形状は、図4(a)、(c)に示すように一連状の線でもよいし、図12(a)、(b)に示すように破線でもよい。なお、図12(b)は、図12(a)のチューブ状部材2の末端部8付近の拡大図である。
前記着色部36の幅としては、前記末端部8の周囲全長に対して1/50以上1/3以下の長さの幅であればよい。例えば、図13(a)、(b)に示すように、末端部8の周囲全長に対して1/3の長さの幅にしても、着色部36以外の透明な壁部を通して涙道内の確認はできる。なお、図13(b)は、図13(a)のチューブ状部材2の末端部8付近の拡大図である。
また、前記着色部36は、前記チューブ状部材2の周囲方向における出入口11の位置と同じ側および反対側の少なくとも一方側に形成されていてもよい。例えば、チューブ状部材2の基端部10や本体9の直交断面12の中心に対して偏心した、基端部10のテーパー形状の最も細い部分の箇所7の位置を、出入口11の位置の反対側としてもよい。
具体的には、図4(a)、(c)に示す涙道チューブ1では、着色部36は、チューブ状部材2の周囲方向における出入口11の位置と反対側に形成されている。また、図4(a)、(c)において着色部36の位置が長軸方向に対する直交断面方向にて、末端部8を境に反対側に変えた場合には、図示しないが、その着色部36は、チューブ状部材2の周囲方向における出入口11の位置と同じ側に形成されていることになる。
また、図14(a)、(b)に示すようにチューブ状部材2の周囲方向における出入口11の位置と同じ側および反対側に着色部36a、36bが2つ形成されていてもよい。この場合について、例えば、図15に示すように、出入口11の位置と同じ側の着色部36aの幅は、出入口11の位置と反対側の着色部36bの幅と、異なっていることが好ましい(ただし、これに限定されず、異なる幅を有する着色部36の配置が逆になっていてもよいし、同幅の着色部36が形成されていてもよい。)。このようになっていると、末端部8が涙道内の閉塞部や狭窄部を穿破する際に大きく変形した上、材質の透明性から涙道内視鏡で把握しにくくなったとしても、2本の着色部36により、末端部8の変形状態が立体的に把握され、開口部5の位置を涙道内視鏡で把握でき、ひいては涙道内視鏡の先端位置を把握できる。また、幅長を異とする着色部36a、36bと出入口11との位置関係より、涙道チューブの向きも把握できる。これらによって、正確な涙道チューブ挿入術を行える。
また、一方のチューブ状部材2において、前記着色部36よりも他方端側のチューブ状部材2の全周囲に別の着色した部分37を設けていてもよい(もちろん、部分37の着色が無い涙道チューブであってもよいし、2本のチューブ状部材に、部分37のような着色がなされている涙道チューブでも構わない。)。
前記着色した部分37は、図4(a)〜(c)などに示すように、少なくともチューブ状部材2の本体9に形成していればよいが、さらに基端部10にも形成してもよい。また、図16(a)、(c)に示す涙道チューブ1のように両方のチューブ状部材2に着色した部分37を施してもよい。なお、図16(a)〜(c)に示す涙道チューブ1の構成は、前記着色した部分37が2つある以外は、図4(a)〜(c)に示す涙道チューブ1の構成と同じである。
前記着色した部分37の色相は、色相環にて、前記着色部36の色相に対して補色色相または隣接補色色相であることが好ましい。
中でも、着色された前記チューブ状部材2の部分37の色が黄色であり、前記着色部36の色が青色であることで、暗い涙道内でチューブ状部材2の位置を確認し易くなるため好ましい。
また、図16(a)、(c)に示す涙道チューブ1のように、2本のチューブ状部材2にそれぞれ着色した部分37が施されている場合、一方の着色した部分13の色を黄、黄緑または緑にし、他方の着色した部分37の色を前記の色と同じ色または異なる色にしてもよい。
また、図12(a)、図13(a)、図14(a)に示す涙道チューブ1では、いずれも一方のチューブ状部材2に着色した部分37を施しているが、図16(a)と同様に、両方のチューブ状部材2に着色した部分37を施していてもよい。また、2本のチューブ状部材2にそれぞれ着色した部分37が施されている場合、一方の着色した部分37の色を黄、黄緑または緑にし、他方の着色した部分13の色を前記の色と同じ色または異なる色にしてもよい。
また、図17(a)、(c)に示すように2本のチューブ状部材2に着色した部分37があり、かつ、末端部に着色部36がない態様の涙道チューブ1でもよい。なお、図17(a)〜(c)に示す涙道チューブ1の構成は、前記着色部36がない以外は、図16(a)〜(c)に示す涙道チューブ1の構成と同じである。
図17(a)、(c)に示す涙道チューブ1では、一方の着色した部分37の色を黄、黄緑または緑にし、他方の着色した部分37の色を前記の色と同じ色または異なる色にしてもよい。
また、上記同様に着色部36がないとともに、末端部が、無色透明ではなく、涙道内視鏡から末端部の壁部を通して外部の様子を観察できる程度に透明な材料(例えば、半透明の青色)で形成されていてもよい。なぜなら、2本のチューブ状部材に着色が施されている場合に、先に涙道内に挿入されているチューブ状部材の位置を後から挿入するチューブ状部材内から(例えば、末端部から)涙道内視鏡を通して確認することができるので、暗い涙道内でもチューブ状部材の確認がより明確に行うことができ、後に留置するチューブ状部材の位置精度を高められる。
(実施例1)
図11に示す構造のチューブ状部材2を有する涙道チューブを以下のようにして作製した。
まず、末端部が単層で、本体が4層構造を有するチューブの他方端に、同径のポリウレタン製の基端部用チューブを当接し、この当接した部分を含む4層構造の本体用チューブと基端部用チューブとの表面に補強部材用チューブを被せた。そしてこの補強部材用チューブの側面に、接続部材用のロッドの側面を接続し、前記当接面よりも一方端側にまでロッドの先端の位置がくるように調整して、各部の接続箇所を一度に熱溶着した。
次いで、基端部の一方端側付近から他方端側付近までを斜めカットして出入口を形成することで、一対のチューブ状部材および接続部材を有する涙道チューブを作製した。
使用した各部材の構成は以下のとおり。
(チューブ状部材)
(1)末端部
低密度ポリエチレン製
末端部長さ:約4mm、直径:0.9〜1.3mmの先細のテーパー形状

(2)本体
最内層:低密度ポリエチレン製、内側中間層:高密度ポリエチレン製、外側中間層:接着性低密度ポリエチレン製、最外層:ポリウレタン製
内腔の直径:0.96mm

また、チューブ状部材の末端部と本体は、内腔からも涙道内視鏡で観察できる程度に透明な状態であった。

(3)基端部
ポリウレタン製
内径:0.96mm、長さ:5mm

(接続部材)
ポリウレタン製
直径:0.7mm
全長:23mm
(比較例1)
基端部用のチューブを用いず、末端部が単層で、本体が4層構造を有するチューブの他方端の側面に接続部材の側面を接続して熱溶着し、チューブ状部材の他方端を斜めカットして、実施例1と比べて基端部のない涙道チューブを作製した。
なお、各部の材料は実施例1と同じ材料を用いた。
(比較例2)
実施例1において、接続部材となる中実ロッドの接続位置を、4層構造の本体用チューブの直交断面の中心軸上に位置するように調節した後、各部材を熱溶着させた。そして、基端部の側面にポンチで出入口となる穴を開けて、基端部がテーパー形状を有していない涙道チューブを作製した。
(試験例1)
実施例1および比較例1、2で得られた涙道チューブの出入口からチューブ状部材の開口部付近にまで涙道内視鏡を挿入し、これを実際のSEPと同様に、涙道を模した人工モデルに挿入し、鉗子を用いて手技を行った。なお、鉗子は、実施例1および比較例2の涙道チューブの基端部を把持するようにし、比較例1の涙道チューブのチューブ状部材のカットした部分を把持するようにした。
その結果、実施例1で得られた涙道チューブは良好に人工モデル内に留置することができた。
一方、比較例1で得られた涙道チューブは、カットしたチューブの部分が途中で破損し、外側中間層と最外層の接着面が剥離してポリエチレン製の全層の断面がむき出しになった。
また、比較例2で得られた涙道チューブは、比較例1のような基端部の破損は見られなかったが、手技中に涙道内視鏡とポリウレタン表面とがタックして、留置が完了するまで、長い時間を要した。
(試験例2)
実施例1で得られた涙道チューブにある2本のチューブ状部材2において、接続部材3のロッドの接続面と同じ側(基端部10の出入口11の位置と反対側)の末端部8に一方端まで形成された青色の着色部36を設けた。着色部36は一連状の線で、末端部の周囲全長に対して1/10の長さの幅に調整した。
また、一方のチューブ状部材では、着色部36から他方端側の本体9の全周囲を黄色に着色した。
着色した涙道チューブを使用してSEPと同様の挿入術により実際の涙道に涙道チューブを留置した。
まず、黄色に着色したチューブ状部材の基端部の出入口から開口部付近まで涙道内視鏡のプローブを挿入して装着した後、実際の涙道の上涙点から上涙点小管を通過して下鼻道まで涙道チューブを挿入していった。涙道内の様子は、涙道チューブのチューブ状部材の開口部から観察して把握することができ、また挿入する際には、チューブ状部材の着色部の向きを確認することで方向を間違えずに閉塞部などの目的の場所に確実に挿入することができた。下鼻道から涙道チューブの先が出たことを確認した後、涙道内視鏡を取り外して涙道チューブを涙道内に留置した。
続いて、透明なチューブ状部材の基端部の出入口から開口部付近まで涙道内視鏡のプローブを挿入して装着した後、涙道の下涙点から下涙点小管を通過して挿入していった。真っ暗な涙嚢および鼻涙管においても、先に挿入したチューブ状部材の位置は、黄色の着色部分を見つけることで簡単に把握できた。また、黄色の着色部の方向を確認することで挿入すべき下鼻道の位置も簡単に把握できた。
(試験例3)
実施例1で得られた涙道チューブにある2本のチューブ状部材2において、基端部10の出入口11の位置と同じ側および反対側の末端部8の表面に、図14(a)、(b)に示すように、それぞれ一方端4まで形成された一連状で青色の着色部36a、36bを設けた。なお、図15に示すように、出入口11と同じ側の着色部36aの幅は、出入口13と反対側の着色部36bの幅に比べて狭くなるように調整した。これ以外の構成は、試験例2と同じようにした。
試験例2と同様に、着色した涙道チューブを使用してSEPと同様の挿入術により実際の涙道に涙道チューブを留置した。涙道内の閉塞部を穿破する際、末端部が大きく変形したが、末端における円周方向にて対角関係に2本の着色部が存在することで、末端部の変形状態、かつ、開口部と涙道内視鏡との位置関係を正確に把握しながら挿入術を行うことができた。また、2本の着色部のうち、出入口11と同じ側の着色部の幅を細くしていることから、涙道チューブの向きを確認することができ、方向を間違えずに目的の場所に確実に挿入することができた。
1 涙道チューブ
2 チューブ状部材
3 接続部材
4 一方端
5 開口部
6 内腔
7 他方端
8 末端部
9 本体
10 基端部
11 出入口
12 直交断面
13 出入口11の周縁
14 出入口11の周縁13における最も一方端側の箇所
15 接続部材3の先端
16 接続部分
17 最内層
18 内側中間層
19 外側中間層
20 最外層
21 上涙点
22 下涙点
23 上涙小管
24 下涙小管
25 総涙小管
26 涙嚢
27 鼻涙管
28 下鼻道
29 涙道内視鏡
30 シース
31 涙道
32 閉塞部位
33 涙道チューブ
35 補強部材
36 着色部
37 着色部36よりも他方端側の着色した部分

X Y Z チューブ状部材の長軸方向に対して直角の方向

Claims (23)

  1. 一方端に内腔へ連通する開口部を有する一対のチューブ状部材と、これらチューブ状部材の他方端同士をつなぐ接続部材と、を含む涙道チューブであって、
    少なくとも一方の前記チューブ状部材の他方端を含む基端部がカットされて前記接続部材に向かって先細りしたテーパー形状となっており、前記基端部がチューブ状部材の内腔に通じる出入口を有しており、かつカットされた前記基端部の面が出入口の周縁となっており、
    前記出入口の面積が前記チューブ状部材の内腔の長軸方向に対する直交断面積よりも大きく、
    前記出入口周縁を構成する前記基端部の側面と前記接続部材の側面とが接続されていることを特徴とする涙道チューブ。
  2. 前記チューブ状部材の長軸方向に対する直交面に、前記出入口周縁における最も他方端側の箇所と最も一方端側の箇所とを投影した場合、
    その直交面での前記箇所同士の長さが、前記チューブ状部材の内径長以上である請求項1に記載の涙道チューブ。
  3. 前記出入口周縁を構成する前記基端部は、前記チューブ状部材の他方端側に、前記チューブ状部材の長軸方向に対する直交面の形状にて英字U字状の部分を含む請求項1または2に記載の涙道チューブ。
  4. 前記出入口周縁が無段差面で形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の涙道チューブ。
  5. 前記接続部材の先端が前記基端部に形成されたテーパーの位置よりも一方端側にある請求項1〜4のいずれか1項に記載の涙道チューブ。
  6. 前記チューブ状部材の長軸方向に対する直交面に投影した前記基端部のテーパー形状の最も細い部分の位置が、前記長軸方向に対する前記基端部の直交断面の中心に対して偏心している請求項1〜のいずれか1項に記載の涙道チューブ。
  7. 前記基端部が単一材料で形成され、前記基端部を除く前記チューブ状部材の残部に比べて低硬度である請求項1〜のいずれか1項に記載の涙道チューブ。
  8. 前記基端部を除く前記チューブ状部材の残部の少なくとも一部が、多層構造である請求項に記載の涙道チューブ。
  9. 前記多層構造における最外層と前記基端部とが同一材料で構成される請求項に記載の涙道チューブ。
  10. 前記多層構造における最外層が、最内層よりも低硬度の材料で構成される請求項8または9に記載の涙道チューブ。
  11. 前記基端部と前記基端部を除く前記チューブ状部材の残部との隣り合った箇所の周囲が、前記基端部と前記残部に亘って、補強部材で覆われている請求項7〜10のいずれか1項に記載の涙道チューブ。
  12. 前記基端部と前記基端部を除く前記チューブ状部材の残部との隣り合った箇所の周囲を、前記基端部と前記残部に亘って覆っている補強部材が、前記多層構造における最外層および前記基端部と同一材料で構成される請求項に記載の涙道チューブ。
  13. 前記接続部材と、前記補強部材と、前記多層構造における最外層と、前記基端部とが、同一材料で構成される請求項12に記載の涙道チューブ。
  14. 少なくとも一方の前記チューブ状部材における一方端を含む末端部が無色材料で形成される請求項1〜13のいずれか1項に記載の涙道チューブ。
  15. 前記無色材料で形成される前記末端部の周囲の一部に、前記チューブ状部材の長軸方向に沿う着色部が形成される請求項14に記載の涙道チューブ。
  16. 前記着色部が前記一方端にまで形成されている請求項15に記載の涙道チューブ。
  17. 前記着色部が一連状の線または破線である請求項15または16に記載の涙道チューブ。
  18. 前記着色部が前記末端部の周囲全長に対する1/50以上1/3以下の長さの幅を有する請求項15〜17のいずれか1項に記載の涙道チューブ。
  19. 前記チューブ状部材における前記着色部が、前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側および反対側の少なくとも一方側に形成されている請求項15〜18のいずれか1項に記載の涙道チューブ。
  20. 前記着色部が前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側および反対側に形成されており、一方の着色部の幅が他方の着色部の幅と異なるように形成されている請求項19に記載の涙道チューブ。
  21. 幅の細い前記着色部が、前記チューブ状部材の周囲方向における出入口の位置と同じ側に形成され、幅の太い前記着色部が、反対側に形成されている請求項20に記載の涙道チューブ。
  22. 一対の前記チューブ状部材の一方のチューブ状部材の色相が、色相環にて、前記着色部の色相に対して補色色相または隣接補色色相である請求項15〜21のいずれか1項に記載の涙道チューブ。
  23. 着色された前記チューブ状部材の色が黄色であり、前記着色部の色が青色である請求項22に記載の涙道チューブ。
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