以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
<第1実施形態>
図1は本実施形態にかかる位置検出装置1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、位置検出装置1は、ベース部としてのパターンレスタッチパネル2(以下、単にタッチパネル2という)と、タッチパネル2に計測信号としてのパルス信号を与えるための信号源3と、位置情報取得部4と、演算部5とを備えている。
図2はタッチパネル2の構成を示す断面図であり、図3は同平面図である。タッチパネル2は、電磁透過性(光とタッチ電界を含む)を有するリジット基板又はフレキシブルシート等からなり、平面視において矩形状の基板21を備えている。本開示において、矩形とは、正方形及び長方形を含む概念である。基板21の表面には、略全面にわたって電磁透過性の導電層22が形成されており、その上に透明の絶縁保護層23が形成されている。導電層22は、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜であり、その抵抗値は、1kΩ/□から10MΩ/□である。また、絶縁保護層23は、例えばポリエステルシートであり、その厚さは、例えば1μmから100μmである。
図3に示すように、タッチパネル2には、導電層22の辺に沿って4つの電極E,E,…が設けられている。具体的には、導電層22の各辺の中間位置に各1つの電極が非対称に設けられている。なお、本開示において、対称に電極を設けるとは、例えば、導電層が矩形状の場合において、導電層の中心を通る二等分線を引いたときに、対向する辺の電極の位置が同一になるように電極を設けることを指すものとする。また、例えば、導電層が円形状の場合に、導電層の中心に対して点対称の位置に電極を設けることを指すものとする。したがって、非対称の位置とは、上記対称な位置からずらして電極を配置することを指すものとする。
以下、説明の便宜上、図3において電極Eのうち、導電層22の左端で上下方向に延びる辺に沿って設けられた電極を第1電極E1と称し、第1電極E1から反時計回りの順番で各辺に設けられた電極をそれぞれ第2、第3及び第4電極E2,E3,E4と称する場合がある。また、図3では、4つの電極E1,E2,E3,E4により電極群を構成している。
図1に戻り、信号源3は、パルスジェネレータ31(図1ではPGと表記する)と、アナログスイッチ32(図1ではASと表記する)とを有する。パルスジェネレータ31は、周期的に変動する矩形状のパルス信号(電圧:Vcc)を発生する。アナログスイッチ32は、パルスジェネレータ31とタッチパネル2の各電極Eとの間に設けられ、第1から第4電極E1,E2,…,E4のうち後述する演算部5から出力される電極選択信号SC1が示す電極Eにパルス信号を与える。電極選択信号SC1は、対をなす2つの電極E,E、又は、4つの電極E,E,…を示す信号である。
位置情報取得部4は、同一構成の2つのアナログスイッチ41,41(図1ではASと表記する)と、差動アンプ42と、ノイズフィルタ43と、ピークホールド部44と、アナログデジタル変換回路45(図1ではADCと表記する)とを備えている。
各アナログスイッチ41は、第1から第4電極E1,E2,…,E4の出力信号を受け、後述する演算部8から出力される電極選択信号SC2に基づいて選択された一対の測定対象となる電極E,E(以下単に測定電極E,Eともいう)の出力信号を通過させ、差動アンプ42の入力端子に出力する。具体的には、一方のアナログスイッチ41が一方の測定電極Eからの出力信号を通過させ、他方のアナログスイッチ41が他方の測定電極Eからの出力信号を通過させる。これにより、差動アンプ42は、第1から第4電極E1,E2,…,E4のうち電極選択信号SC2によって選択されたペア電極としての一対の測定電極E,Eからの出力信号の信号量差を示す差動信号を出力する。ノイズフィルタ43は、差動アンプ42から出力された差動信号のノイズ成分を除去する。ピークホールド部44は、ノイズが除去された差動信号のピーク電圧をアナログ信号として保持する。アナログデジタル変換回路45は、前記ピーク電圧(アナログ信号)に基づいて、ピーク電圧値及びピーク電圧の符号情報をデジタル値に変換する。なお、ピークホールド回路44は、必ずしも必要ではなく、ノイズフィルタ43の出力信号を直接アナログデジタル変換回路45に入力するようにしてもよい。この場合、アナログデジタル変換回路45には、時分割処理の動作をさせるようにすればよい。具体的には、アナログデジタル変換回路45は、ノイズフィルタ43から入力されたアナログ信号に対して、適当なサンプリング数で時分割された所定の単位時間毎にデジタル変換処理を施す。そして、デジタル変換処理後のデジタル信号の中から最大値を抽出し、その最大値に基づいたピーク電圧値及びピーク電圧の符号情報を記録するようにするとよい。
演算部5は、位置検出装置1の各ブロックの動作を制御する。また、演算部5は、本実施形態に係る位置検出方法を使用するように、および、本実施形態に係る位置検出プログラムを実行するように、構成されている。
例えば、演算部5は、第1から第4電極E1,E2,…,E4の中からパルス信号を与える電極を選択し、その電極を示す電極選択信号SC1を信号源3のアナログスイッチ32に出力する。また、測定対象となる対をなす測定電極を選択し、その測定電極を示す電極選択信号SC2を2つのアナログスイッチ41,41に送信する。そして、これらの電極選択信号SC1,SC2により両スイッチの動作が制御される。
電極選択信号SC1は、演算部5が任意に選択した対をなす2つの電極E,E、又は、4つの電極E,E,…を示す信号である。ここで、演算部5が、パルス信号を与える電極として、どの電極をどのような順番で選択するかは特に限定されない。また、2つの電極E,Eを選択する場合において、任意の2箇所の電極からの出力信号に基づいて差動アンプ42により差動信号が採取できる。このとき、好ましくは入力信号を与えた電極から出力信号を採取することが有効である。4つの電極E,E,…を選択する場合に、2つの組み合わせの差動をとる、すなわち6つの組み合わせを選択できるが、各辺から1つずつの電極を選択するのが好ましい。また、導電層22上で直交する仮想線を引き、この仮想線と導電層22の辺とが重なる位置(4箇所)に電極を設けて、それらの電極に信号を与えてもよい。
また、電極選択信号SC2は、電極選択信号SC1で選択された電極の中から任意に選択された対をなす測定電極を示す信号である。したがって、電極選択信号SC1が2つの電極を示す信号である場合、電極選択信号SC1と電極選択信号SC2とは、同じ電極を示す信号となる。
さらに、演算部5は、アナログデジタル変換回路45から出力された差動信号(デジタル値)に含まれる差分情報に基づいて、絶縁保護層23に接近又は接触した物体(例えば、ユーザーの指)の位置を演算により求める。ここで、差分情報とは、差動信号に基づいて得られる情報全般を指すものとする。例えば、差分情報には、差動信号が正の電圧信号か負の電圧信号かを示す符号情報、差動信号の大きさを示す電圧差情報、差動信号が所定の電圧に到達するまでの時間情報等が含まれる。また、演算部は、上記制御を行うためのプログラムが格納されたROM51及び後述する補正テーブルTB1やルックアップテーブルTB2等が登録されるデータベースが格納された格納部52を備えている。
−タッチ位置の検出原理−
図4は位置検出装置1において、タッチパネル2の第3及び第4電極E3,E4と周辺ブロックとの接続関係を詳細に示した図である。以下の位置検出原理の説明では、パルスジェネレータ31からのパルス信号が一対の測定電極としての第3及び第4電極E3,E4に与えられ、差動アンプ42からは第3及び第4電極E3,E4の差動信号が出力されるものとする。すなわち、電極選択信号SC1,SC2が第3及び第4電極E3,E4を示している場合を例に説明する。なお、以下の説明に際して、理解を容易にするために、(1)導電層22は、一様なシート抵抗を有するものとして説明する。ただし、詳細は後述するが、導電層22のシート抵抗が部分的に異なる場合においても、本発明は適用が可能である。(2)図4ではアナログスイッチ32及びアナログスイッチ41の図示を省略する。
図4に示すように、パルスジェネレータ31と第3及び第4電極E3,E4の入力端子IN3,IN4とは、それぞれ基準抵抗R0を介して入力信号配線NIにより接続されている。入力信号配線NIは、当該配線NIに沿って併走する第1グランド配線NG1とのペア配線となっている。第1グランド配線NG1の一端は、パルスジェネレータ31のグランドと接続されている。
第3及び第4電極E3,E4の出力端子OUT3,OUT4は、差動アンプ42の入力端子にそれぞれ出力信号配線NTにより接続されている。出力信号配線NTは、入力信号配線NIと同様にグランド配線(以下、第2グランド配線NG2と称する)とのペア配線となっている。差動アンプ42の両入力端子間には、同一インピーダンスを有する2つの負荷Z1,Z1が直列接続されており、両負荷Z1,Z1の間の中間ノードがグランドに接続されている。このグランドに第2グランド配線NG2の一端が接続されている。第1及び第2グランド配線NG1,NG2の他端(タッチパネル側の端部)は解放端となっている。このような非対称電極構成とすることにより、パルスジェネレータ31から第3及び第4電極E3,E4の入力端子IN3,IN4に印加されるパルス信号、並びに第3及び第4電極の出力端子OUT3,OUT4から差動アンプ42に出力される出力信号の感度の向上とノイズをより効果的に低減することができる。
図5はユーザーによりタッチ位置TPがタッチされた場合における第3及び第4電極E3,E4の出力信号及び差動アンプ42から出力される差動信号の一例を示した図である。図5において、縦軸は電圧値であり、横軸は時間である。また、図5(a)は後述する式(1),(2)で求められるV3,V4の信号波形を示しており、図5(b)は式(3)で求められるVdfの信号波形を示している。
ここで、図4において、タッチ位置TPは、第4電極E4よりも第3電極E3の方に近いものとする。すなわち、第3電極Eとタッチ位置TPとの間の導電層22の抵抗(以下、第3抵抗R3と称し、抵抗値はR3と記載する)と、第4電極とタッチ位置TPとの間の導電層22の抵抗(以下、第4抵抗R4と称し、抵抗値はR4と記載する)との間には、R3<R4の関係が成立するものとする。
タッチ位置TPがタッチされた状態において、第3電極にパルス信号が入力されると、タッチした指と導電層22との間の容量CTと第3抵抗R3との時定数に応じた電圧でタッチ位置TPがチャージアップされる。このチャージアップ状態が第3電極E3に反射され、差動アンプ42の一方の入力端子に下記式(1)で示される反射信号が入力される。
V3=Vdd(1−exp(−t/R3CT)) ‥(1)
ここで、容量CTは、絶縁保護層の材質、厚さ等に応じて一義的に決まる値である。なお、図4に示すように、容量CTとグランドとの間には、タッチするユーザー毎に異なる特定の値の負荷Z2が生じる。発明の理解を容易にするため、本式ではその影響を省略している。以下の式でも同様とする。なお、本開示では、このユーザー毎に異なる負荷Z2について、後述する実施形態2において説明する補正マーカーを用いて補正することができるように構成されている。
同様に、位置TPがタッチされた状態において、第4電極E4にパルス信号が入力されると、容量CTと第4抵抗R4との時定数に応じて、差動アンプ42の他方の入力端子に下記式(2)で示される反射信号が入力される。
V4=Vdd(1−exp(−t/R4CT)) ‥(2)
したがって、差動アンプ42からは、上記式下記式(3)に示す差動信号(式(1),(2)の差分の信号)が出力される。
Vdf=V3−V4
=Vdd(−exp(−t/R3CT)+exp(−t/R4CT))‥(3)
ピークホールド部44は、差動信号が正の場合、式(3)の最大電圧値をピーク電圧としてホールドし、差動信号が負の場合、式(3)の最小電圧値をピーク電圧としてホールドする。
−タッチ位置の検出動作(1)−
演算部5では、ピーク電圧値及びピーク電圧の符号情報に基づいてタッチ位置TPを演算により求める。ここでは、もっとも単純な方法であるピーク電圧の符号情報に基づいてタッチ位置TPを求める演算について説明する。
まず、第3電極E3と第4電極E4とを結ぶ仮想直線IE34(図4の二点鎖線参照)の垂直二等分線BP34(図4の一点鎖線参照)を引き、垂直二等分線BP34よりも第3電極E3寄りの領域を第1領域R1とし、垂直二等分線よりも第4電極寄りの領域を第2領域R2とする。本実施形態において、導電層22は一様なシート抵抗であるため、第3及び第4抵抗R3,R4の抵抗値は、タッチ位置と電極との間の距離に基づいて定まる。例えば、上記図4の構成の場合、ピーク電圧(図5の点X参照)の符号は「+」であるため、演算部5はタッチ位置TPが第1領域R1にあることを求めることができる。
次に、図3に戻り、演算部5は、第2電極E2と第3電極E3を測定対象となる一対の電極として選択する。この場合、第2電極E2と第3電極E3とを結ぶ仮想直線IE23の垂直二等分線BP23を引き、垂直二等分線BP23よりも第2電極E2寄りの領域を第3領域R3とし、垂直二等分線BP23よりも第3電極E3寄りの領域を第4領域R4とする。先ほどと同様に、演算部5は、ピーク電圧の符号に基づいてタッチ位置TPが第4領域R4になることを求めることができる。
演算部5は、上記2つの測定に基づいて、タッチ位置TPが第1領域R1と第4領域R4との重複部分(図3の斜線で示す領域)にあることを求めることができる。
−従来技術との比較−
ところで、図14に示すように、従来のパターンレスタッチパネルでは、タッチパネル91の4隅に電極E9,E9,…が設けられている(例えば、特許文献2,3参照)。このような従来の電極配置において、タッチ位置の検出は次の手順で行われる。まず、タッチパネル91の4隅の電極E9,E9,…に対して同相、同電圧の電圧が与えられる。次に、4隅の電極のうちの一対の電極E9,E9の出力信号を受けた差動アンプ92から出力された差動信号に基づいて、演算部93でタッチ位置を演算する。ここで、従来技術では、タッチ位置TP9がタッチパネル91の中心にあるとき、すべての対をなす電極E,Eの組み合わせにおいて、対をなす各電極E9とタッチ位置TP9との間の抵抗値R91,R92が互いに等しい抵抗値となるため、差動信号が0Vになる。すなわち、タッチパネル91の中心位置がタッチされた場合、差動アンプ92からは、タッチされていない状態と同じ差動信号しか得られないという問題がある。
そこで、本願発明者らは、図3に示すように、導電層22の辺に沿って電極E1,E2,…を非対称な位置に設けることにより上記問題を解決できることを見いだした。換言すると、本願発明者らは、導電層22の辺に沿って電極を設ける際に、対をなす電極間を結ぶ仮想直線IEの垂直二等分線BPを、互いの組み合わせを異ならせて引いた場合に、垂直二等分線BP同士が互いに交わる仮想交点が少なくとも2つできる(少なくとも2箇所にできる)ように電極Eを配置することにより上記問題を解決できることを見いだした。
より具体的には、本願発明のようにパターンレスタッチパネルにおいて、差動信号を用いてタッチ位置TPの検出を行う場合、タッチ位置TPと測定電極E,Eとの間の距離の差に応じた差動信号が出力される。したがって、対をなす測定電極E,E間を結ぶ仮想直線の垂直二等分線を引いた場合に、垂直二等分線は、タッチ位置と測定対象電極と間の距離が互いに等しくなる位置、すなわち、タッチされた場合に2つの対象電極からの出力信号に基づく差動信号が0Vになる位置を示している。したがって、タッチパネルの4隅に電極を設けた場合、すべての一対の測定電極の組み合わせにおいて、任意に選択した2つの測定電極E,E間を結ぶ仮想直線IEの垂直二等分線BPがすべて導電層22の中心で交わるため、タッチ位置TPが導電層22の中心にあるときに差動信号が0Vになる。
一方で、本開示に係るパターンレスタッチパネルでは、仮想交点が少なくとも2つできるように電極群の電極E,E,…を配置するため、互いに組み合わせが異なる対をなす電極を測定対象として選択することにより、タッチ位置に拘わらず差動信号が0Vになることを避けて確実にタッチ位置を検出できるようすることができる。
さらに、図3に示す電極配置では、仮想交点IPのうちの少なくとも1つ(例えば、図3のIP5参照)が導電層22の外側に位置するような電極E,E,…の配置にしている。仮想交点IPは、対をなす測定電極E,Eを用いた測定について、複数の組み合わせにおいて差動信号が0Vになる点を示している。このような仮想交点IPを導電層22の外に出すことで、複数対の測定電極を用いて測定することにより、差動信号が0Vになる点をなくすことができ、ひいては、位置検出装置1の解像度を向上させることができるようになる。換言すると、垂直二等分線BP12とBP34との仮想交点をIP6として定義した場合、導電層22(タッチパネル2)のサイズは、仮想交点IP5,IP6の内側まで広くすることが可能といえる。すなわち、電極E,E…が導電層22の辺に沿ってではなく、その内側に配置されている場合においても、本発明は適用可能であるといえる。
さらに、本願発明者らは、図3のような電極配置において、従来技術と同様に4つの電極に対して同時に電圧を印加する場合に、一対の測定電極E,Eの位置によっては、差動信号が正の電圧値と負の電圧値の間で変動する現象が起こる場合があることを発見した。図15は、ノータッチ状態において4つの電極に対して同時に電圧(図15の実線参照)を印加した場合における所定の2つの測定電極間の差動電圧(図15の破線参照)の変動を示しており、(a)は正常状態における波形データであり、(b)は上記変動が発生する場合の波形データである。この点に関し、本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、本現象は、他の電極から入力されたパルス信号に起因するものだと見いだした。さらに、2つの測定電極E,Eにのみパルス信号を与えることにより、図15(b)のような変動現象が発生しないことを見いだし、本発明を完成するに至った。したがって、前述のとおり、本実施形態では、パルスジェネレータ31と第1から第4電極E1,E2,…,E4との間にアナログスイッチ32を設け、演算部5からの電極選択信号SC1に基づいて、一対の測定電極E,Eにパルス信号が印加されるようにしている。これにより、電極E,Eの配置や一対の測定電極E,Eの組み合わせに拘わらず安定したタッチ位置の検出が可能となっている。
以上のように、本実施形態によると、タッチパネル2の電極E,E,…を非対称に配置したことにより、測定電極E,E間を結ぶ垂直二等分線BPが導電層22上の1点に集中しないようにすることができる。前述のとおり、垂直二等分線BP上は差動信号が0Vになり、垂直二等分線BP近傍も差動信号の変化が得られにくい。したがって、垂直二等分線BPの1点集中を避けることにより、測定電極E,Eの組み合わせを異ならせることによって、上記差動信号の振幅が得られにくい位置を削減することができる。すなわち、タッチ位置TPによる検出感度の差異を少なくすることができ、解像度を向上させることができるようになる。
また、本願発明者らは、従来4隅に設けられていた電極E,E…の位置を導電層22の辺の両端から離間させた場合においても、一対の測定電極E,Eにパルス信号を与える構成にすることにより、差動信号の変動現象が発生しないことを見いだした。これにより、電極を導電層の辺の任意の位置に配置することができる。すなわち、タッチ位置に近い電極E,Eを測定電極E,Eにすることができるようになる。本実施形態のようなパターンレスタッチパネルでは、基準抵抗R0と第1から第4抵抗R1〜R4の分圧により差動信号の振幅が規定されるため、タッチ位置TPが近い方が差動信号の振幅を大きく得ることができる。したがって、本態様に係るタッチパネルは、解像度を高めることができるようになるメリットがある。このような構成は、タッチパネル2が大型化する際により顕著な効果が得られる。
さらに、2層構造タッチパネルでは、その特性上、シート抵抗値が1kΩ/□から5kΩ/□の範囲にすることが必要であるが、本発明では、導電層のシート抵抗値が2桁以上高くてもよい点に特徴がある。すなわち、超大型ディスプレイ、壁面等を使用した超大型スクリーン、ホワイトボード等の大型板面等の超大型のタッチパネルに適している。さらに、有機導電シート、金属薄膜シート等のシート抵抗値が高いシートを導電層に適用することが可能になるため、曲面での使用にも適している。
なお、上記実施形態では、導電層22が矩形状であるものとして説明したが、導電層の形状は、矩形状以外の形状であってもよい。例えば、図6には、導電層22が楕円(円形状)の場合におけるタッチパネルの構成を示している。図6においても、図3の場合と同様に、4つの電極E71,E72,E73,E74が楕円形状の導電層22の辺に沿って非対称に配置されている例を示している。図6に示すように、矩形状の導電層の場合と同様に、対をなす電極間を結ぶ仮想直線IEの垂直二等分線BPを、互いの組み合わせを異ならせて引いた場合に、垂直二等分線BP同士が互いに交わる仮想交点IPが少なくとも2つできる(少なくとも2箇所にできる)ように構成されている。これにより、タッチ位置に拘わらず差動信号が0Vになることを避けて確実にタッチ位置を検出できるようすることができる。
<第2実施形態>
図7は第2実施形態に係るタッチパネルの構成例を示す平面図である。なお、タッチパネル2の平面図は、第1実施形態で示した図2記載のものと同様である。また、位置検出装置1は、第1実施形態で示した図1記載のものと同様である。以下の実施形態において、第1実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する場合がある。
図7に示すように、第2実施形態に係るタッチパネル2には、導電層22の辺に沿って、第1から第4電極E11,E12,…,E43が各3個ずつ設けられている。図7では、第1から第4電極E11,E12,…,E43が非対称に設けられている例を示している。具体的には、導電層の第1コーナーC1(図7左上)から各第1電極E11,E12,E13までの距離と、導電層の第4コーナーC4(図7右上)から各第3電極E31,E32,E33までの距離とが、それぞれ互いに異なるように各電極が配置されている。例えば、図7において、D11≠D31である。同様に、導電層22の第1コーナーC1から各第4電極E41,E42,E43までの距離と、導電層22の第2コーナーC2(図7左下)から各第2電極E21,E22,E23までの距離とが、それぞれ互いに異なるように各電極が配置されている。例えば、図7において、D21≠D41である。
−タッチ位置の検出動作(2)−
以下において、図8から図12を参照しながら、ルックアップテーブルを用いたタッチ位置の検出、すなわち、本実施形態に係る位置検出方法および位置検出プログラムを用いた処理について詳細に説明する。図8は全体フローを示しており、図9はユーザーがタッチパネルにタッチ操作した際のタッチ位置検出に係る動作の詳細フローを示している。なお、これまでの説明と同様に、電極選択信号SC1と電極選択信号SC2とが同じ2つの電極Eを示す信号であるものとして説明する。
ルックアップテーブルの作成に際し、図7のタッチパネルを複数の検出領域に分割する。本実施形態では、タッチパネルが80個の検出領域Q1,Q2,…,Q80に分割された例を示している。図11(a)にルックアップテーブルの一例を示している。図11(a)に示すように、ルックアップテーブルには、測定対象となるペア電極E,Eの組み合わせと、各検出領域Q1,Q2,…,Q80の標準出力情報としての標準ピーク電圧とが対応付けされた状態でリスト化されている。標準ピーク電圧とは、標準的な測定環境において、標準的な人が各検出領域をタッチした場合を想定した場合において、各ペア電極E,Eにパルス信号を印加したときに、当該各ペア電極から出力される出力電圧の電圧差のピーク値のである。なお、本開示では、測定対象となるペア電極E,Eの組み合わせを互いに異ならせて100通りの組み合わせに対してパルス信号印加及び測定を行うものとする。なお、図11及び図12の表では、列毎に異なるペア電極E,Eの組み合わせを記載しており、説明の便宜上、それぞれのペア電極E,Eの組み合わせに対して、ペア電極番号P00〜P99を付している。ペア電極番号P00〜P05までは、対向する辺に沿って配置された電極をペア電極として選択しており、ペア電極番号P06〜P09及びP99は、互いに直交する辺に沿って配置された電極をペア電極として選択している。なお、図11では記載していないが同一辺にある2つの電極をペア電極としてもかまわない。
ここでルックアップテーブルの生成方法を説明する。あるペア電極E,Eを選んだとき、前述の演算で同じピーク値を示す仮想線が決定されるが、これに従った演算値がタッチ面(例えば、導電層22)の全体で得られる。この演算値が正しいことを実際にタッチすることで検証し、もし誤差が認められればそれを補正する。タッチ面全面の正しいタッチ点ピーク値をタッチ点対応で格納部52に取り込んだ表がルックアップテーブルであり、タッチ点解像度に応じてルックアップテーブルの横軸と縦軸のタッチ点の値の数(ピクセル値数)が決定される。全電極Eの組み合わせの数だけルックアップテーブルの数があり、ホバリングなどでパネルから離れたタッチ点に対して、非線形ピーク出力となることが多いため、この個別ルックアップテーブルも必要な場合がある。
図7に示すように、S1において、タッチパネル2には、ユーザーによるタッチ操作に基づいてルックアップテーブルに登録された標準差分情報を補正するための補正マーカーMK1,MK2が表示される。標準差分情報は、上記リスト化された各検出領域Q1,Q2,…,Q80の標準ピーク電圧のリスト情報を含む情報である。図7では、補正マーカーMK1,MK2がそれぞれタッチパネル2の右上及び左下に表示されている例を示している。なお、補正マーカーMK1,MK2の表示位置及び表示数は上記に限定されない。例えば、補正マーカーMK1,MK2の位置が図7と異なっていてもよいし、補正マーカーMK1,MK2が1箇所又は3箇所以上に表示されてもよい。
S2において、演算部5は、ユーザーによるタッチパネル2へのタッチ操作が行われる前に、ノータッチ状態における各標準ピーク電圧を補正するためのノータッチ補正データの取得を行う。
図9はノータッチ補正データの取得動作の一例を示すフロー図である。図9に示すように、まず、演算部5は、あらかじめ定められた電極選択ルールに従って、測定対象となる対をなすペア電極を選択する(S21)。電極選択ルールは、例えば、演算部5の格納部52に格納されたデータベースにあらかじめ登録されている。図11に示す表では、電極選択ルールの一例を示している。具体的には、表の1行目に記載されたペア電極番号P00,P01,…,P99に対応するようにペア電極の組み合わせが表の2行目に記載されている。演算部5は、例えば、図11の表のペア電極番号P00,P01,…,P99の順にペア電極を構成する2つの電極を選択する。したがって、図11の例では、演算部は、まずペア電極として第1電極E11及び第3電極E31を選択する。
S22及びS23では、演算部5は、パルスジェネレータ31及びアナログスイッチ32に電極選択信号SC1を与え、ペア電極E11,E31に所定のパルス信号を与えるとともに、アナログスイッチ41,41に電極選択信号SC2を与える。これにより、パルス信号が与えられたペア電極E11,E31から出力された出力信号が差動アンプ42に入力され、ピークホールド部44からピーク電圧が出力される。これにより演算部5は、ピークホールド部44からノータッチ状態におけるピーク電圧を取得し、補正テーブルTB1に登録する。その後、演算部5は、上記パルス信号が与えられたペア電極E11,E31をディスチャージする(S24)。ペア電極E11,E31のディスチャージは、例えば、ペア電極E11,E31をグランドに短絡させることにより実施する。
S25では、ピーク電圧の取得回数(ペア電極の組み合わせ)が規定された数(例えば100)に到達したか否かを判定し、到達していなければ(S25でNO)、S21に戻り、ペア電極E11,E31の組み合わせを、次のペア電極番号P02に係るペア電極E12,E32に変えてノータッチ状態におけるピーク電圧を取得する。以後、規定のピーク電圧の取得回数に到達するまで、S21〜S25のフローを繰り返す。このようにして、ノータッチ補正データの取得が完了すると、フローは図8のS3に戻る。
S3において、演算部5は、補正テーブルTB1を参照してルックアップテーブルTB2の標準差分情報の補正を行う。標準差分情報の補正は、例えば、図11(a)のルックアップテーブルTB2の各標準ピーク電圧から同じ電極の組み合わせに係るノータッチ補正データを差し引く。具体的には、図10において、“P00−Q01”の欄における標準ピーク電圧Vp11からペア電極番号P00に係るノータッチ補正データVn11を差し引き、その演算結果を“P00−Q1”の欄の標準ピーク電圧と置き換える。同様にして、“P00−Q02”の欄の標準ピーク電圧Vp21を“Vp21−Vn11”の値に置き換えるという作業を、ペア電極番号P00に係る各標準ピーク電圧Vp11,Vp12,…に対して行う。さらに、上記置き換え作業を、各ペア電極番号P00,P01,…,P99の各標準ピーク電圧Vp21,Vp22,…に対してそれぞれに実施する。なお、標準差分情報の補正は、上記減算処理に限定されず、他の方法を用いてもよい。例えば、減算とは異なる演算処理を行ってもよいし、検出領域Q1,Q2,…,Q80毎に異なる倍数をかけたノータッチ補正データを用いて補正を実施してもよい。また、各検出領域Q1,Q2,…,Q80毎での補正は、導電層22のシート抵抗が部分的に異なる(ずれる)場合でも適用可能となる。すなわち、仮に、導電層22のシート抵抗が部分的に異なる場所が、位置検出装置毎にばらつくような場合においても、このようなノータッチ補正データVn11,12,…を用いた補正を行うことにより、位置検出装置毎のばらつきに拘わらず、シート抵抗のずれによる影響を打ち消すように補正をすることができる。
標準差分情報の補正が終わると、フローはS4のマーカー補正処理に進む。マーカー補正処理S4において、補正マーカーMK1,MK2のうちのいずれか一方がタッチされると(S41でYES)、演算部5はマーカー補正データを取得する(S42)。S42では、図9のノータッチ補正データの取得に係る処理と同様の処理を行い、マーカータッチ補正データを取得して、補正テーブルTB1に登録する。図11(b)には、マーカーMK1及びMK2のマーカータッチ補正データを取得した例を示している。マーカータッチ補正データを取得した後、演算部5は、マーカータッチ補正データを用いて標準差分情報の補正を行う(S43)。前述の図4で例示したとおり、タッチ位置の容量CTとグランドとの間にタッチするユーザー毎に異なる特定の値の負荷Z2が生じる。マーカータッチ補正データを用いることで、この負荷Z2に起因する演算誤差を補正することができるようになる。S43の補正が完了すると、タッチパネル2から補正マーカーMK1,MK2が消去される。そして、タッチパネル2に対してユーザーによるタッチ操作を受けると(S5でYES)、演算部5は補正されたルックアップテーブルTB2を用いてタッチ位置の検出演算を行う(S6)。
次に、図10を用いて、演算部5によるタッチ位置の検出演算について詳細に説明する。タッチ位置の検出演算では、ノータッチ補正データの取得の場合と同様に、電極選択ルールに従って、ペア電極を選択する(S61)。次に、演算部5は、パルスジェネレータ31及びアナログスイッチ32に電極選択信号SC1を与え、ペア電極に所定のパルス信号を与えるとともに(S62)、ピークホールド部44からピーク電圧を取得する(S63)。
ピーク電圧が取得されると、演算部5はユーザーによるタッチ操作の位置を推定する推定演算を行う(S64)。具体的には、推定演算では、(1)まず、演算部5は、取得されたピーク電圧と、補正後のルックアップテーブルTB2の各検出領域Q1,Q2,…,Q80における標準ピーク電圧とを比較する。(2)そして、図12に示すように、(1)記載の両電圧の誤差が所定の範囲内の場合に“1”を、両電圧の誤差が所定の範囲を超える場合に“0”を演算結果テーブルTB3に登録する。例えば、取得されたピーク電圧と標準ピーク電圧との誤差が±10%以内の場合に“1”を出力する。推定演算が終了すると、パルス信号が与えられたペア電極がディスチャージされる(S65)。なお、本実施形態における候補位置とは、前述の両電圧の誤差が所定の範囲内の位置、すなわち、演算結果テーブルTB3に“1”が登録された位置である。
そして、演算部5は、規定された取得回数(例えば、100)に到達するまで、上記S61〜S65の処理を繰り返し、電極選択ルールで規定されたすべての組み合わせに係るペア電極(例えば、P00,P01,…,P99)の推定演算(上記(1)及び(2)の演算)を実施する。
演算部5は、推定演算をあらかじめ規定された回数実施した後(S66でYES)、推定演算の結果に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の位置を判断する特定演算を行う(S67)。具体的には、検出領域毎に推定演算結果を加算し、加算結果の大きさ、突出度、近似度等に基づいてタッチ操作の位置を判断する。例えば、図12の例では、検出領域Q7の加算結果が95になっているため、すなわち、演算部5は、候補位置として抽出された回数が最も大きいため、検出領域Q7がユーザーのタッチ位置であると判断する。
なお、特定演算におけるタッチ位置の判断方法は、特に限定されるものではない。例えば、検出領域毎の推定演算結果の加算値の大きさのみに基づいて判断してもよいし、加算結果の大きさが所定の大きさ以上でかつ所定の突出度を有する検出領域がある場合に、その検出領域をタッチ操作の位置と判断するようにしてもよい。また、例えば、複数点の検知領域における加算結果の大きさが他の検知領域の加算結果よりも突出して大きく、かつ、互いの加算結果が近似している場合がある。このような場合には、演算部はユーザーによって複数点のタッチ操作が行われたと判断する。また、複数の推定演算結果や複数のピーク電圧値に基づく別の評価軸を設定し、その別の評価軸の結果に基づいて、又は別の評価軸の結果を加味してタッチ位置を判断するようにしてもよい。
以上のように、本実施形態によると、ペア電極を構成する電極の組み合わせを異ならせた測定を実施することにより、多面的なデータ取得が可能となるとともに、それらを総合してタッチ操作の位置を判断するため、タッチ位置の判断精度を向上させることができるようになる。また、パターンレスタッチパネルの場合、電極の位置とタッチ操作位置との間の距離によって測定精度に差異が生じる場合があるが、本実施形態のようにペア電極を構成する電極の組み合わせを異ならせてタッチ操作位置の判断を行うことで、タッチ位置による測定精度のばらつきをなくすことができる。
<変形例>
上記実施形態では、図8のS4において、補正マーカーMK1,MK2を用いたマーカー補正処理S4を行うものとしたが、これに限定されない。例えば、一つのタッチ位置に対してペア電極E,E間の差動データ(出力信号)はすべて演算部5に取り込まれるため、任意の位置の補正タッチに基づいて、複数のルックアップテーブルTB2,TB2,…が格納されたルックアップテーブルセットTBSのうちから一致度の高いルックアップテーブルTB2(以下、第1ルックアップテーブルTB21と称する)を選び出すことにより、補正を完了させてもよい。一致度の判定方法は、位置検出時の方法と同じスコア算出によるステップと最大スコアの高いLUT(ルックアップテーブル)選別判断法である。
以下、図13を用いて、マーカー補正処理S4に代えて、補正タッチに係る補正処理S7を行う場合のフローについて詳細に説明する。なお、図8と共通のフローに関しては同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
図13では、補正マーカーMK1,MK2を使用しないため、図8のS1に係る「補正マーカー表示」は実施しない。
S3において、演算部5は、補正テーブルTB1を参照してルックアップテーブルセットTBSに係る複数のルックアップテーブルTB2,TB2,…について標準差分情報の補正を行う。図13では、すべてのルックアップテーブルTB2,TB2,…に対して、各標準ピーク電圧から同じ電極の組み合わせに係るノータッチ補正データを差し引く。
標準差分情報の補正が終わると、フローはS7の補正処理に進む。以下、補正処理S7の一例を記載する。例えば、補正処理S7において、タッチパネル2の任意の位置においてタッチ操作がされると(S71でYES)、演算部5はあらかじめ設定された組み合わせに係る複数のペア電極に対してパルス信号印加及び測定を実施する。そして、複数の測定結果と、複数のルックアップテーブルTB2,TB2,…の各検出領域Q1,Q2,…,Q80の標準ピーク電圧とを比較し、第1ルックアップテーブルTB21を選択する(S72)。前述のとおり、ユーザー毎に異なるタッチ操作に係る負荷Z2が異なるが、本方法によって選択された第1ルックアップテーブルTB21は、ユーザーの個人差を加味した最適なルックアップテーブルであるといえる。以下のフローは、図8と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。これにより、ユーザーの個人差があるような場合においても、解像度の高い位置検出を実現することができる。
なお、大型のタッチパネル等において、複数のユーザーによるタッチ操作があるような場合に、各ユーザーのタッチ領域の周辺領域をユーザー領域として区画し、ユーザー領域毎に最適なルックアップテーブルを選択して、適用するようにしてもよい。これにより、各ユーザー領域において、解像度の高い位置検出を実現することができるようになる。具体的な用途として、大型教育パネル等において、複数の生徒がランダムにタッチするような用途が考えられ、本変形例に係るユーザー領域毎の最適なルックアップテーブルの選択が特に有用である。
第2実施形態において、以下の改変も可能である。
例えば、上記第2実施形態において、各辺の電極の数は、それぞれ3個であるものとしたが、電極の数はこれに限定されない。各辺に設ける電極の数は、それぞれ少なくとも1個であればよく、また各辺で電極数が異なっていてもかまわない。
また、第2実施形態において、導電層22の各辺に設けられた電極は、非対称な位置であるものとしたが、各辺の電極が対称な位置に設けられていてもよい。ただし、各辺の電極を対称に設ける場合には、各辺の電極からペア電極を選択する際に、ペア電極間を結ぶ仮想直線の垂直二等分線が集中しすぎないようにするのが好ましい。
また、第2実施形態において、ペア電極にパルス信号を与えて、ペア電極から得られる差動信号のピーク電圧に基づいてタッチ位置の検出を行うものとしたが、これに限定されない。例えば、ペア電極に代えて、単電極を選択し、単電極からRC時定数に係る時間と電圧とに係る情報を取得して、当該情報に基づいて、図10に係るタッチ位置のタッチ位置の検出演算S6を行ってもよい。
また、図12において、演算部5は、取得されたピーク電圧と、補正後のルックアップテーブルTB2の各検出領域Q1,Q2,…,Q80における標準ピーク電圧とを比較し、両電圧の誤差が所定の範囲内の場合に“1”を、両電圧の誤差が所定の範囲を超える場合に“0”を演算結果テーブルTB3に登録するものとしたが、タッチ位置の推定演算はこれに限定されない。例えば、演算部5は、検出領域Q1,Q2,…,Q80毎に、上記両電圧の誤差が少ないほど高くなるような3段階以上のランク付け(スコア導出)をしてもよく、所定の数値(例えば、確率、割合等)を用いてタッチ位置であることの確からしさを示すスコアを導出するようにしてもよい。この場合、例えば、演算部5は、各ペア電極の組み合わせを変えて、上記スコアの導出(推定演算)を行い、その推定演算の結果に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の位置を判断する特定演算を行う。特定演算におけるタッチ位置の判断方法は、前述の第2実施形態及びその変形例と同様であり、ここではその詳細な説明は省略する。また、スコアは、上記両電圧の誤差が少ないほど高くなるようなスコアに限定されず、出力信号に基づいて各検出領域Q1,Q2,…,Q80がタッチ位置であることの確からしさを示すようなものであればよい。例えば、そのスコアに係る出力信号の基準値、値の高低、スコア導出のための演算方式等は任意に設定することができる。
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが種々の改変が可能である。
例えば、第1及び第2実施形態において、電極選択信号SC1と電極選択信号SC2とが同じ2つの電極を示す信号であるものとして説明したが、これに限定されず、電極選択信号SC1と電極選択信号SC2とが異なる電極を示してもよい。
以下では、例えば図3の構成において、電極選択信号SC1が4つの電極(例えば、第1〜第4電極E1〜E4)を示す信号であり、電極選択信号SC2が2つの電極E(例えば、第3,第4電極E3,E4)を示す信号である場合におけるタッチ位置の検出動作について説明する。この場合においても、「タッチ位置の検出動作(1)」及び「タッチ位置の検出動作(2)」と同様の手順でタッチ位置TPを求めることができる。
具体的には、「タッチ位置の検出動作(1)」で説明したように、第1領域R1及び第2領域R2を定義する。そして、パルス信号を与える電極として第1〜第4電極E1〜E4を選択するとともに、第3電極E3及び第4電極E4を測定電極Eとして選択する。そうすると、パルスジェネレータ31から出力されたパルス信号が、アナログスイッチ32を介して第1〜第4電極E1〜E4に与えられる。このとき、測定電極E(例えば、第3,第4電極E3,E4)には同じパルス信号を与えるとともに、他の電極E例えば、第1,第2電極E1,E2)には、別のパルス信号を与えるようにする。そうすることで、検出位置特異性が増大し、感度向上という効果が得られる。また、そうすることで、図15(b)に示したような現象も起こらない。
ここで上記説明と同様に、第3及び第4抵抗R3,R4の抵抗値は、タッチ位置と電極との間の距離に基づいて定まるため、ピーク電圧の符号が「+」となり、演算部5はタッチ位置TPが第1領域R1にあることを求めることができる。次に、パルス信号を与える電極は変えずに、第2電極E2及び第3電極E3を測定電極として選択するとともに、第3領域R3及び第4領域R4を定義する。そして、上記説明と同様にして、演算部5は、ピーク電圧の符号に基づいてタッチ位置TPが第4領域R4になることを求めることができる。その後、演算部5は、上記2つの測定に基づいて、タッチ位置TPが第1領域R1と第4領域R4との重複部分(図3の斜線で示す領域)にあることを求めることができる。
なお、上記「タッチ位置の検出動作(1)〜(3)」において、電極選択信号SC1は、対をなす2つの電極、又は、4つの電極を示す信号であるものとしたが、これに限定されない。例えば、導電層22の形状が矩形状以外の多角形状や円形状である場合に、演算部5によって選択される電極数が2つ又は4つ以外であっても本実施形態と同様の効果が得られる場合がある。同様に、上記「タッチ位置の検出動作(1)〜(3)」において、計測信号(パルス信号)が与えられた電極の中から測定対象となる測定電極が選択されている例を示しているが、測定電極が計測信号を与える電極に含まれていなくてもよい。例えば、計測信号を与えるための信号供給電極と、測定信号を受信する信号受信電極とを分け、対応する信号供給電極及び信号受信電極を対にし、この対電極同士を互いに近づけて配置するようにしてもよいし、互いに少し離間させて配置するようにしてもよく、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
また、第1及び第2実施形態において、電極は導電層の辺に沿って設けられるものとしたが、一部の電極が導電層の辺から内側に離間した位置に設けられていてもかまわない。例えば、導電層22の面積に対してタッチパネル2の開口面積(有効タッチ面積)が狭い場合に、各電極がタッチパネル2の有効タッチ領域を区画する枠に沿って設けられていてもよい。一方で、同じ面積の導電層内において、タッチ検出可能な領域を広く確保するためには、導電層22の辺に沿って電極が設けられているのが好ましい。
また、第1及び第2実施形態では、電極が矩形状の導電層22の中間位置に設けられている例について説明したが、複数の電極のうちの一部が導電層の第1から第4コーナーC1〜C4に設けられていてもかまわない。例えば、図7の破線で示すように、電極E51〜E54が設けられていてもよい。この場合、例えば、ペア電極としてE51とE21又はE22との組み合わせ、E52とE41又はE42との組み合わせのように選択すればよい。
また、第1及び第2実施形態では、ペア電極に対するパルス信号印加及び測定を各ペア電極の組み合わせに対して1回行う例を示しているが、5〜50msの期間毎に前記ペア電極を構成する電極の組み合わせを変えるものとし、この5〜50msの期間中に複数回のパルス信号印加及び測定を実施するようにしてもよい。この場合、例えば、複数回の測定結果を平均してその値を各演算に用いるようにすればよい。
また、上記実施形態では、導電層はタッチパネル表面に設けられているものとしたが、例えば、携帯電話の裏側のように、タッチパネルの画面から所定の間隔を空けた位置に導電層が設けられている、すなわち、ホバリング検出されるような状態においても、本発明は適用可能であり、同様の効果が得られる。