JP6611932B2 - 医薬組成物 - Google Patents
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Description
例えば、特許第3713237号公報には、フルベストラント、医薬的に許容できるアルコール類(エタノール及びベンジルアルコール)、安息香酸ベンジル、及びヒマシ油を含む筋肉内注射に適する医薬製剤が開示されている。
特表2004−534093号公報には、フルベストラント、製剤的に許容されるアルコール(エタノール及びベンジルアルコール)、プロピレングリコール、及びヒマシ油を含む筋肉内注射に適合した医薬製剤が開示されている。
特表2009−509942号公報には、フルベストラント、製薬上許容されるアルコール(エタノール及びベンジルアルコール)、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール、及びヒマシ油を含む製剤が開示されている。
国際公開第2015/033302号には、フルベストラント、安息香酸、アルコール(エタノール等)、及び植物油を含む製剤が開示されている。
特表2011−514349号公報には、フルベストラント、グリコフロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を含み、かつ、実質的にヒマシ油を含まない、筋肉内注射のためのフルベストラント配合物が開示されている。
しかし、医薬製剤におけるエタノールの使用は、アルコール過敏症等のエタノールに対してアレルギー反応を起こす患者への投与を制限することになるため、幅広い患者への適用の観点からは、好ましいとはいえない。
したがって、特許第3713237号公報、特表2004−534093号公報、特表2009−509942号公報、及び国際公開第2015/033302号に記載された医薬製剤を、エタノールに対してアレルギー反応を起こす患者に投与することは困難である。
(1)エタノールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
(2)安息香酸の含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
(3)フルベストラントの含有率が、医薬組成物の全質量に対して4.5質量%以上10.0質量%以下である。
(4)プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して8質量%以上23質量%以下である。
(5)ベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して5質量%以上24質量%以下である。
(6)安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して8質量%以上19質量%以下である。
[3] プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが、プロピレングリコールである[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[4] プロピレングリコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して12質量%以上18質量%以下である[3]に記載の医薬組成物。
[5] ベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して5質量%以上15質量%以下である[1]〜[4]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[6] 安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して10質量%以上16質量%以下である[1]〜[5]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(i)エタノールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して0.5質量%未満である。
(ii)安息香酸の含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
(iii)フルベストラントの含有率が、医薬組成物の全質量に対して4.5質量%以上10.0質量%以下である。
(iv)プロピレングリコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して12質量%以上18質量%以下である。
(v)ベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して5質量%以上15質量%以下である。
(vi)安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して10質量%以上16質量%以下である。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、医薬組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が医薬組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、医薬組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「エタノールを実質的に含まない」とは、エタノールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満であることを意味する。
本実施形態の医薬組成物は、フルベストラントと、プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコール(以下、「特定多価アルコール」ともいう。)と、ベンジルアルコールと、安息香酸ベンジルと、ヒマシ油と、を含み、かつ、下記の(1)〜(6)の要件を満たす医薬組成物である。
(1)エタノールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
(2)安息香酸の含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
(3)フルベストラントの含有率が、医薬組成物の全質量に対して4.5質量%以上10.0質量%以下である。
(4)プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して8質量%以上23質量%以下である。
(5)ベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して5質量%以上24質量%以下である。
(6)安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して8質量%以上19質量%以下である。
しかし、医薬製剤におけるエタノールの使用は、アルコール過敏症等のエタノールに対してアレルギー反応を起こす患者への投与を制限することになり、幅広い患者への適用の観点からは、好ましいとはいえない。
一方、エタノールの代替溶剤の選択には、フルベストラントの溶解性のみならず、代替溶剤とその他の含有成分(例えば、ヒマシ油等の溶剤)との相溶性を考慮する必要がある。特に、注射液製剤では、含まれる各成分の相溶性が良好でないと、低温で保存した場合に相分離又は析出に起因する濁りが生じ得る。
本実施形態の医薬組成物は、エタノールの含有率が医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
本実施形態の医薬組成物は、エタノールの含有率が医薬組成物の全質量に対して1質量%未満であるため、アルコール過敏症等のエタノールに対してアレルギー反応を起こす患者にも適用することができる。したがって、本実施形態の医薬組成物は、エタノールに対してアレルギー反応を起こす患者も含めて、幅広い患者への投与が可能である。
一般に、揮発性の成分であるエタノールを含む医薬組成物では、その製造工程、製品としての流通工程等において、エタノールが揮発し、医薬組成物の組成が変化する場合がある。エタノールの揮発による医薬組成物の組成変化は、例えば、投与後に臨床効果の予期せぬ変動又は副作用の発現を招来するため、好ましいとはいえない。また、エタノールの揮発により、医薬組成物中のフルベストラントの濃度が高くなると、品質規格の逸脱を生じ得る。
本実施形態の医薬組成物は、エタノールの含有率が医薬組成物の全質量に対して1質量%未満であるため、製造工程中又は保存中におけるエタノールの揮発によって生じ得る、医薬組成物の組成変化、特にフルベストラントの濃度変化が低減又は抑制される。
さらに、本実施形態の医薬組成物は、エタノールの含有率が医薬組成物の全質量に対して1質量%未満であるため、エタノールの揮発による作業者及び環境への負荷が軽減又は抑制され、製造適性に優れる。
本実施形態の医薬組成物は、有効成分として、フルベストラントを含む。
フルベストラント(7α−[9−(4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール)は、エストロゲン受容体アンタゴニストであり、乳癌を治療するための薬物として知られている。
1回あたりの投与量の観点から、本実施形態の医薬組成物中のフルベストラントの含有率は、医薬組成物の全質量に対して、好ましくは4.5質量%以上7.0質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%以上5.5質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上5.5質量%以下である。
本実施形態の医薬組成物は、プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコール(即ち、特定多価アルコール)を含む。
本実施形態の医薬組成物において、特定多価アルコールは、フルベストラントの溶解性に寄与する。
フルベストラントの溶解性をより高める観点からは、本実施形態の医薬組成物は、特定多価アルコールとして、少なくともプロピレングリコールを含むことが好ましく、特定多価アルコールがプロピレングリコールであることが特に好ましい。
本実施形態の医薬組成物中の特定多価アルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して8質量%以上であると、フルベストラントの溶解性が良好となり、低温で保存した場合に、医薬組成物においてフルベストラントの析出による濁りの発生が抑制される傾向がある。このような濁りの発生を抑制させる観点から、本実施形態の医薬組成物中の特定多価アルコールの含有率は、医薬組成物の全質量に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上あり、更に好ましくは14質量%以上である。
本実施形態の医薬組成物中の特定多価アルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して23質量%以下であると、例えば、特定多価アルコールとヒマシ油とが十分に相溶するため、低温で保存した場合に、医薬組成物において相分離による濁りの発生が抑制される傾向がある。このような濁りの発生を抑制させる観点から、本実施形態の医薬組成物中の特定多価アルコールの含有率は、医薬組成物の全質量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下である。
本実施形態の医薬組成物は、ベンジルアルコールを含む。
本実施形態の医薬組成物において、ベンジルアルコールは、フルベストラントの溶解性に寄与する。
本実施形態の医薬組成物中のベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して5質量%以上であると、フルベストラントの溶解性が良好となり、低温で保存した場合に、医薬組成物においてフルベストラントの析出による濁りの発生が抑制される傾向がある。このような濁りの発生を抑制させる観点から、本実施形態の医薬組成物中のベンジルアルコールの含有率は、医薬組成物の全質量に対して、好ましくは6質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上である。
本実施形態の医薬組成物中のベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して24質量%以下であると、例えば、ベンジルアルコールとヒマシ油とが十分に相溶するため、低温で保存した場合に、医薬組成物において相分離による濁りの発生が抑制される傾向がある。このような濁りの発生を抑制させる観点から、本実施形態の医薬組成物中のベンジルアルコールの含有率は、医薬組成物の全質量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以下である。
本実施形態の医薬組成物は、安息香酸ベンジルを含む。
本実施形態の医薬組成物において、安息香酸ベンジルは、フルベストラントの溶解性、及び低温保存した場合における医薬組成物の濁りの発生抑制に寄与する。
本実施形態の医薬組成物中の安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して8質量%以上であると、フルベストラントの溶解性が良好となり、低温で保存した場合に、医薬組成物においてフルベストラントの析出による濁りの発生が抑制される傾向がある。このような濁りの発生を抑制させる観点から、本実施形態の医薬組成物中の安息香酸ベンジルの含有率は、医薬組成物の全質量に対して、好ましくは9質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。
本実施形態の医薬組成物中の安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して19質量%以下であると、例えば、ベンジルアルコールとヒマシ油とが十分に相溶するため、低温で保存した場合に、医薬組成物において相分離による濁りの発生が抑制される傾向がある。このような濁りの発生を抑制させる観点から、本実施形態の医薬組成物中の安息香酸ベンジルの含有率は、医薬組成物の全質量に対して、好ましくは16質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
本実施形態の医薬組成物は、ヒマシ油を含む。
本実施形態の医薬組成物は、ヒマシ油を含むことで、治療上有効な血中フルベストラント濃度を一定期間保持させることができる。
本実施形態の医薬組成物中のヒマシ油の含有率は、例えば、フルベストラントの溶解性を保持する観点から、医薬組成物の全質量に対して、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは55質量%以上である。また、本実施形態の医薬組成物中のヒマシ油の含有率は、例えば、医薬組成物の保存安定性を高める観点から、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下である。
本実施形態の医薬組成物中のヒマシ油の含有率が、医薬組成物の全質量に対して40質量%以上70質量%以下であると、例えば、治療上有効な血中フルベストラント濃度を一定期間保持させることができ、かつ、フルベストラントを均一に溶解させるために必要なヒマシ油以外の含有成分の配合量を確保することができる。
本実施形態の医薬組成物は、安息香酸の含有率が医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
本実施形態の医薬組成物中の安息香酸の含有率は、医薬組成物の全質量に対して、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.3質量%未満であり、更に好ましくは0.1質量%未満であり、特に好ましくは安息香酸を含まないこと、即ち、0質量%である。
本実施形態の医薬組成物は、必要に応じて、医薬的に許容される添加剤(以下、「その他の添加剤」ともいう。)を更に含んでいてもよい。なお、本実施形態の医薬組成物を筋肉内注射用として適用する場合には、筋肉内注射に適した添加剤を更に含むことが好ましい。
その他の添加剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、アスコルビン酸又はその塩、塩酸、グルコン酸又はその塩、酢酸又はその塩、乳酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、リン酸又はその塩、硫酸又はその塩、酒石酸又はその塩、クエン酸又はその塩、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタモール、メグルミン、グリシン、ヒスチジン又はその塩、ε-アミノカプロン酸、アルギニン又はその塩、システイン又はその塩、メチオニン、アラニン、ロイシン、アスパラギン酸又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、チオグリセリン、チオグリコール酸又はその塩、タウリン、エデト酸ナトリウム、リドカイン又はその塩、ニコチン酸アミド、クロロブタノール、クレアチニン、ゴマ油、ラッカセイ油、ツバキ油、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、オレイン酸エチル、乳酸エチル、チメロサール、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トコフェロール等が挙げられる。
但し、その他の添加剤は、これらに限定されない。
本実施形態の医薬組成物がその他の添加剤を含む場合、医薬組成物中のその他の添加剤の含有率は、医薬組成物の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
本実施形態の医薬組成物は、水を含んでいてもよい。
本実施形態の医薬組成物が水を含む場合、医薬組成物中の水の含有率は、特に限定されず、例えば、低温で保存した場合に濁りの発生が抑制されるという観点から、医薬組成物の全質量に対して1質量%以下が好ましい。
本実施形態の医薬組成物の好ましい組成例としては、例えば、以下に示す組成が挙げられる。以下に示す組成を有する本実施形態の医薬組成物は、フルベストラントの溶解性がより良好で、かつ、低温で保存した場合の濁りの発生がより抑制される。
フルベストラントと、プロピレングリコールと、ベンジルアルコールと、安息香酸ベンジルと、ヒマシ油と、を含み、かつ、下記の(i)〜(vi)の要件を満たす組成。
(i)エタノールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して0.5質量%未満である。
(ii)安息香酸の含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
(iii)フルベストラントの含有率が、医薬組成物の全質量に対して4.5質量%以上10.0質量%以下である。
(iv)プロピレングリコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して12質量%以上18質量%以下である。
(v)ベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して5質量%以上15質量%以下である。
(vi)安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して10質量%以上16質量%以下である。
本実施形態の医薬組成物は、筋肉内注射用として好適に用いることができる。
本実施形態の医薬組成物は、フルベストラントの溶解性が良好で、かつ、低温(2℃〜8℃)で保存しても、医薬組成物に含まれる成分の相分離又は析出による濁りの発生が抑制されており、フルベストラント等の成分が良好に混合されている状態が安定に保持されているため、筋肉内注射に適した医薬製剤である。
また、本実施形態の医薬組成物は、有効成分としてフルベストラントを含むため、乳癌治療用として好適に用いることができる。
本実施形態の医薬組成物の製造方法は、既述の医薬組成物を製造できればよく、特に限定されるものではない。
本実施形態の医薬組成物を製造する方法としては、含まれる成分が均一に混合された医薬組成物を得やすいという観点から、以下で説明する、本実施形態の医薬組成物の製造方法が好ましい。
本実施形態の製造方法は、フルベストラントと、特定多価アルコールと、ベンジルアルコールと、安息香酸ベンジルと、ヒマシ油と、を一括して混合する場合と比較して、含まれる成分が均一に混合された医薬組成物を得やすいという利点を有する。
以下、本実施形態の製造方法について説明するが、既述の医薬組成物と共通する事項、例えば、医薬組成物に含まれる成分及びその量については、説明を省略する。
第1の工程は、フルベストラントと、特定多価アルコールと、ベンジルアルコールと、安息香酸ベンジルと、を混合し、フルベストラント含有液を得る工程である。
医薬組成物が、既述のその他の成分を含む場合には、フルベストラントと、特定多価アルコールと、ベンジルアルコールと、安息香酸ベンジルと、その他の成分と、を混合し、フルベストラント含有液を得ることが好ましい。
混合の方法としては、特に限定されず、例えば、撹拌による混合が挙げられる。
第1の工程では、通常、雰囲気温度15℃〜60℃の条件下で、フルベストラントと、特定多価アルコールと、ベンジルアルコールと、安息香酸ベンジルと、を混合し、フルベストラント含有液を得る。
第2の工程は、第1の工程で得られたフルベストラント含有液と、ヒマシ油と、を混合し、医薬組成物を得る工程である。
混合の方法としては、特に限定されず、例えば、撹拌による混合が挙げられる。
第2の工程では、通常、雰囲気温度15℃〜60℃の条件下で、フルベストラント含有液とヒマシ油とを混合し、医薬組成物を得る。
本実施形態の製造方法は、必要に応じて、第1の工程及び第2の工程以外のその他の工程を有していてもよい。また、第1の工程及び第2の工程は、複数の工程を含んで構成されていてもよい。
その他の工程としては、医薬組成物を滅菌する工程、医薬組成物を容器に充填する工程等が挙げられる。
滅菌する工程としては、滅菌フィルターを用いたろ過滅菌法が好ましい。
本実施形態の医薬組成物を充填する容器としては、バイアル、アンプル、シリンジ等が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態の医薬組成物を充填する容器としては、医療現場における取り扱い性の観点から、シリンジが好ましく、ガラス製のシリンジがより好ましい。即ち、本実施形態の医薬組成物の剤形としては、医薬組成物を予めシリンジに充填したプレフィルドシリンジが好ましい。
本発明の他の実施形態は、有効成分としてフルベストラント含む既述の医薬組成物を、乳癌の治療の対象となる患者へ投与することを含む乳癌の治療方法も包含する。
<実施例1>
撹拌子を入れた清潔なガラス容器に、フルベストラント5質量部、特定多価アルコールとしてプロピレングリコール14質量部、ベンジルアルコール10質量部、及び安息香酸ベンジル15質量部を秤量した後、撹拌して、フルベストラント含有液を得た。次いで、得られたフルベストラント含有液にヒマシ油を加え、全量を100質量部に調整した後、更に撹拌して均一化し、実施例1の医薬組成物を得た。
医薬組成物の組成を、下記の表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2〜実施例16の医薬組成物を得た。
医薬組成物の組成を、下記の表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1〜比較例12の医薬組成物を得た。
医薬組成物の組成を、下記の表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例13〜比較例29の医薬組成物を得た。
1.フルベストラントの溶解性
上記にて得られた実施例1〜実施例16及び比較例1〜比較例12の各医薬組成物に、更に少なくとも飽和量のフルベストラントを加え、室温(15℃〜30℃)にて少なくとも1日以上撹拌した後、10000rpm(round per minute;以下、同じ。)〜14000rpmにて10分間〜20分間遠心分離を行い、過剰のフルベストラント(即ち、析出しているフルベストラント)を除き、上清を得た。
得られた上清に溶解しているフルベストラントの量を、下記の条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定し、医薬組成物におけるフルベストラントの溶解度(質量%)を算出した。そして、以下の評価基準に基づき、フルベストラントの溶解性を評価した。結果を表1に示す。
なお、評価結果が[A]、[B]、又は[C]に分類されるものを合格と判定した。
A:フルベストラントの溶解度が5.5質量%以上である。
B:フルベストラントの溶解度が5.0質量%以上5.5質量%未満である。
C:フルベストラントの溶解度が4.5質量%以上5.0質量%未満である。
D:フルベストラントの溶解度が4.0質量%以上4.5質量%未満である。
E:フルベストラントの溶解度が4.0質量%未満である。
なお、フルベストラントの溶解度が5.0質量%未満であることは、フルベストラントを更に加える前の医薬組成物中のフルベストラントが、本来の溶解度を超えて溶解した状態(所謂、過飽和状態)であったことを意味する。すなわち、医薬組成物中の溶解度を超えた過剰なフルベストラントが、フルベストラントを更に加えたことで析出したことを意味する。
カラム:XBridge C8(製品名、粒子径:3.5μm、カラムサイズ:4.6mm×150mm、Waters社)
移動相A:メタノール/水=70/30
移動相B:メタノール
グラジェント条件(移動相Bの比率):0%(開始)→0%(12min)→100%(12.1min)→100%(20min)→0%(20.1min)→0%(30min、停止)
検出波長:225nm
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
上記にて得られた実施例1〜実施例16、比較例1〜比較例4、及び比較例7の各医薬組成物について、少なくとも1mLを、それぞれ無色透明のガラス瓶(5mL容量)に量り取り、冷蔵庫(雰囲気温度:2℃〜8℃)に保存した。保存開始から1時間以上経過後、冷蔵庫からガラス瓶を取り出した。取り出し直後に、ガラス瓶の表面に生じた曇りをキムワイプ(登録商標)で拭き取ってから、ガラス瓶に入った医薬組成物を目視にて観察し、濁りの有無を確認した。結果を表1に示す。
なお、表1では、ガラス瓶に入った医薬組成物に、濁りが確認されなかった場合を「なし」と表記し、濁りが確認された場合を「あり」と表記した。
比較例5、比較例6、及び比較例8〜比較例12の医薬組成物については、上記の「1.フルベストラントの溶解性」の評価結果が「D」又は「E」であったため、濁りの有無の評価試験を行わなかった。
一方、ガラス瓶に入った医薬組成物に濁りが確認される状態は、含まれる成分が均一に混合されていない状態を示し、低温(2℃〜8℃)での保存中に、医薬組成物に含まれる成分のいずれかが相分離又は析出しており、筋肉内注射に適した製剤とはいえないことを意味する。
(1)開放状態での測定
5mL容量のガラス製バイアル瓶(型式:SV−5、日電理化硝子(株))の質量(g)を測定し、測定値を記録した。次いで、上記にて得られた実施例1、実施例3、実施例14〜実施例16、及び比較例13〜比較例29の各医薬組成物を、それぞれ上記バイアル瓶に約0.1g量り取った後、医薬組成物が入ったバイアル瓶の質量(g)を測定し、測定値を記録した。
次いで、医薬組成物が入ったバイアル瓶を、バイアル瓶の開口部をボルティングクロス(型番:N−No.230T、230メッシュ、NBCメッシュテック(株))を用いて覆った後、雰囲気温度25℃のドラフトチャンバー内に静置した。静置から6時間後に、バイアル瓶をドラフトチャンバーから取り出し、ボルティングクロスを取り除いた後、再度、医薬組成物が入ったバイアル瓶の質量(g)を測定し、測定値を記録した。
バイアル瓶の質量(g)、並びに医薬組成物が入ったバイアル瓶の経時前及び経時後の質量(g)から、下記の式(1)に基づき、医薬組成物の質量減少率(%)を算出した。そして、算出した医薬組成物の質量減少率(%)の値から、以下の評価基準に基づき、医薬組成物の組成安定性を評価した。結果を表2に示す。
医薬組成物の質量減少率(%)=[〔医薬組成物が入ったバイアル瓶の経時前の質量(g)〕−〔医薬組成物が入ったバイアル瓶の経時後の質量(g)〕/〔医薬組成物が入ったバイアル瓶の経時前の質量(g)〕−〔バイアル瓶の質量(g)〕]×100・・・式(1)
A:医薬組成物の質量減少率が0.5%未満である。
B:医薬組成物の質量減少率が0.5%以上1.0%未満である。
C:医薬組成物の質量減少率が1.0%以上10.0%未満である。
D:医薬組成物の質量減少率が10.0%以上である。
1mL容量のポリプロピレン製シリンジ(型式:SS−01T、テルモ(株))の質量(g)を測定し、測定値を記録した。次いで、上記にて得られた実施例1、実施例3、実施例14〜実施例16、及び比較例13〜比較例29の各医薬組成物を、それぞれ上記シリンジに約1g充填した後、医薬組成物が充填されたシリンジの質量(g)を測定し、測定値を記録した。
次いで、医薬組成物が充填されたシリンジを50℃の恒温槽に保存した。保存から60時間後に、シリンジを恒温槽から取り出し、再度、医薬組成物が充填されたシリンジの質量(g)を測定し、測定値を記録した。
シリンジの質量(g)、並びに医薬組成物が充填されたシリンジの経時前及び経時後の質量(g)から、下記の式(2)に基づき、医薬組成物の質量減少率(%)を算出した。そして、算出した医薬組成物の質量減少率(%)の値から、以下の評価基準に基づき、医薬組成物の組成安定性を評価した。結果を表2に示す。
医薬組成物の質量減少率(%)=[〔医薬組成物が充填されたシリンジの経時前の質量(g)〕−〔医薬組成物が充填されたシリンジの経時後の質量(g)〕/〔医薬組成物が充填されたシリンジの経時前の質量(g)〕−〔シリンジの質量(g)〕]×100・・・式(2)
A:医薬組成物の質量減少率が0.5%未満である。
B:医薬組成物の質量減少率が0.5%以上1.0%未満である。
C:医薬組成物の質量減少率が1.0%以上10.0%未満である。
D:医薬組成物の質量減少率が10.0%以上である。
上記(1)及び(2)の両方において、評価結果が[A]又は[B]であれば、医薬組成物の組成安定性が「良好」であると判断し、上記(1)及び(2)の少なくとも一方において、評価結果が[C]又は[D]であれば、医薬組成物の組成安定性が「不良」であると判断した。
表1中、「NT」は、試験を行わなかったことを意味する。
一方、比較例1〜比較例12の医薬組成物は、フルベストラントの溶解性及び濁りの有無の少なくとも一方の評価において、良好な結果が得られなかった。
これらの結果から、実施例1、実施例3、及び実施例14〜実施例16の医薬組成物は、成分の揮発による組成変化が小さく、組成安定性に優れることがわかった。
一方、エタノールの含有率が1質量%以上である比較例13〜比較例29の医薬組成物は、エタノールの含有率が1質量%未満である実施例1、実施例3、及び実施例14〜実施例16の医薬組成物と比較して、質量減少率が高く、組成安定性に劣っていた。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的に、かつ、個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
Claims (8)
- フルベストラントと、プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコールと、ベンジルアルコールと、安息香酸ベンジルと、ヒマシ油と、を含み、かつ、下記の(1)〜(6)の要件を満たす医薬組成物。
(1)エタノールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
(2)安息香酸の含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
(3)フルベストラントの含有率が、医薬組成物の全質量に対して4.5質量%以上10.0質量%以下である。
(4)プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して8質量%以上23質量%以下である。
(5)ベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して5質量%以上24質量%以下である。
(6)安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して8質量%以上19質量%以下である。 - エタノールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して0.5質量%未満である請求項1に記載の医薬組成物。
- プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが、プロピレングリコールである請求項1又は請求項2に記載の医薬組成物。
- プロピレングリコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して12質量%以上18質量%以下である請求項3に記載の医薬組成物。
- ベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して5質量%以上15質量%以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- 安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して10質量%以上16質量%以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- フルベストラントと、プロピレングリコールと、ベンジルアルコールと、安息香酸ベンジルと、ヒマシ油と、を含み、かつ、下記の(i)〜(vi)の要件を満たす医薬組成物。
(i)エタノールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して0.5質量%未満である。
(ii)安息香酸の含有率が、医薬組成物の全質量に対して1質量%未満である。
(iii)フルベストラントの含有率が、医薬組成物の全質量に対して4.5質量%以上10.0質量%以下である。
(iv)プロピレングリコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して12質量%以上18質量%以下である。
(v)ベンジルアルコールの含有率が、医薬組成物の全質量に対して5質量%以上15質量%以下である。
(vi)安息香酸ベンジルの含有率が、医薬組成物の全質量に対して10質量%以上16質量%以下である。 - 筋肉内注射用である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
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