以下、図面を参照しながら、本発明の直流機に係る好適な実施形態について、直流モータを例に説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。また、以下の説明では、固定子にスロットを形成したインナーロータ型の直流モータを例に説明するが、本発明の直流モータは、スロットレスモータ、アウターロータ型モータ、あるいは、アキシャルギャップ型等の直流モータとして構成してもよい。さらに、以下で説明する直流モータは、従来のブラシ付き直流モータと同様に発電機としても機能するものであり、その構造は直流モータと同様である。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る直流モータの概略を示す図であり、図2は、図1に示す直流モータのスイッチング回路と固定子巻線のみを示した図である。また、図3は、本発明の第1の実施形態に係る直流モータの位置検出センサと制御回路を除く等価回路である。直流モータ101は、図1に示すように、固定子10、回転子20、スイッチング回路30、位置検出センサ40、および、制御回路50を備えており、スイッチング回路30には直流電源60が接続される。本実施形態を含むすべての実施形態において、簡単化のため、回転子20の極数を2m(mは整数)とした場合にmが1の場合であるN極とS極の2極の場合について説明する。また、図面によっては、簡略化のため、図3ではトランジスタをスイッチの記号として表現し、後述する図4では方形のブロックとして表現しているが、これらのトランジスタは、図1に示すフリーホイルダイオードを備えたトランジスタと同様のものである。トランジスタの表現については、他の実施形態の図面についても同様である。
固定子10は、n(nは4m以上の整数であり、本実施形態ではn=9)個のスロット(溝)を形成したケイ素鋼板を積層した固定子コア11と、固定子コア11の各スロットに収納した9個のコイルA〜Iからなる固定子巻線12を備えている。本発明の固定子巻線は2層巻きとなっている。以下の説明では、例えば、「A」の符号については、「コイルA」と「コイル辺A」の両者に用いるが、図1、図2に示すように、「コイルA」は、回転子20の磁極ピッチだけ隔てた2つのスロットに収納されたコイル辺Aとコイル辺aと、これらの2つのコイル辺A,aを接続するコイル端と、2本の口出線を有するものを意味し、「コイル辺A」と記す場合は、コイルAの2つのコイル辺の一方のコイル辺Aを示すものとする。他のコイルB〜Iについても同様である。本発明において、コイル辺は、回転子20の磁界の磁力線が直角に交差するコイル部分である。
9個のコイルA〜Iの各コイル辺は、それぞれで2π/nの位相をずらせてスロットに収納されている。コイル数が異なる他の実施形態においても同様である。コイル数nが奇数の場合、スロット数も奇数となる。この場合、9個のコイルA〜Iのそれぞれのコイル辺は、一方のコイル辺を収めたスロットとこのスロットから回転子20の磁極ピッチ(本実施形態では2極機であるため180°)内で最も磁極ピッチに近いスロットに他方のコイル辺が収められる。換言すれば、各コイルの2つのコイル辺は、n/2の商、すなわち、4(9÷2=4・・・1)個離れたスロットに収納される。本発明で、回転子の磁極ピッチとは、回転子の隣り合う磁極同士の間隔(角度)を意味する。例えば、回転子に、N極、S極、N極、S極の4個の磁極を有する4極機の場合は、隣り合うN極とS極との間隔であり、磁極ピッチは90°となる。
なお、2極機でスロット数が偶数の場合は、各コイルの2つのコイル辺は180°離れた位置のスロットに収められる。すなわち、スロット数が偶数の場合は、全節巻となり、コイルピッチは磁極ピッチと等しくなる。また、スロット数が奇数の場合は、短節巻となり、コイルピッチは磁極ピッチよりも短くなるが最も磁極ピッチに近くなるように設けられる。本発明では、スロットを有する固定子の場合に、コイルピッチが磁極ピッチと等しい場合および磁極ピッチよりも短いが最も磁極ピッチに近い場合の両者を含めて、回転子の磁極ピッチに略等しいコイルピッチという。
9個のスロットは位相差2π/n(n=9)を有して設けられているため、コイルA〜Iは、2π/9の位相差を有して各スロットに収納されている。コイルの数は、奇数、偶数を問わず4個以上であればよい。このため、スロットを有する固定子の場合、コイルが収納される固定子のスロット数も4個以上となる。図1に示す直流モータは、2極のロータと9個のスロットに収納したコイルA〜Iと9個の整流子片を備えたブラシ付き直流モータに相当する。
固定子巻線12に関して、より具体的には、コイルAは、コイル辺Aが収納されるスロットとこのスロットから4個のスロット分離れたスロットに収納されるコイル辺aとを有している。また、コイルBは、コイル辺Aが収納されるスロットに隣接したスロットに収納されるコイル辺Bとこのスロットから4個のスロット分離れたスロットに収納されるコイル辺bとを有している。さらに、コイルCは、コイル辺Bが収納されるスロットに隣接したスロットに収納されるコイル辺Cとこのスロットから4個のスロット分離れたスロットに収納されるコイル辺cとを有している。以降、コイルD〜Iについても同様であり、コイルIは、コイル辺Hが収納されるスロットに隣接したスロットに収納されるコイル辺Iとこのスロットから4個のスロット分離れたスロットに収納されるコイル辺iとを有している。
これにより、コイル辺Aとコイル辺f、コイル辺Bとコイル辺g、コイル辺Cとコイル辺h、コイル辺Dとコイル辺i、コイル辺Eとコイル辺a、コイル辺Fとコイル辺b、コイル辺Gとコイル辺c、コイル辺Hとコイル辺d、および、コイル辺Iとコイル辺eがそれぞれ同じスロット内に収納される。
本実施形態では、図3の等価回路から明らかなように、9個の各コイルAからコイルIはそれぞれが直列接続されており、全体で環状の閉ループが形成されている。そして各コイルの接続点は、それぞれスイッチング素子であるトランジスタを介して、直流電源60のプラス側電源線61およびマイナス側電源線62に接続されている。具体的には、コイルIのコイル辺i側の口出線と隣接するコイルAのコイル辺A側の口出線が接続され、その接続点はトランジスタTA1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTA2を介してマイナス側電源線62に接続されている。また、コイルAのコイル辺a側の口出線と隣接するコイルBのコイル辺B側の口出線が接続され、その接続点はトランジスタTB1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTB2を介してマイナス側電源線62に接続されている。以降、順次同様であり、コイルHのコイル辺h側の口出線とコイルIのコイル辺I側の口出線が接続され、その接続点はトランジスタTI1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTI2を介してマイナス側電源線62に接続されている。
図1〜3に示すように、本実施形態では、隣接する2つのコイルに電流を流した際に、2つのコイルが共通に取り囲む領域において、同じ方向の磁界が発生するように、隣接するコイルの口出線が順次接続されて、各コイルが環状に直列接続されている。例えば、隣接する2つのコイルB,Cに注目すると、コイル辺Bの口出線からコイル辺cの口出線へ電流を流した際に、コイルBとコイルCに生じる磁束は、2つのコイルB,Cが共通に取り囲む領域に対しては同方向の磁界が発生する。このようなコイルの接続形態を、本発明では順方向接続という。
また、各口出線の接続点には、ハーフブリッジを構成する2個のスイッチング素子の接続点が接続されている。そのため、スイッチング回路30は、プラス側電源線61に接続されたプラス電源側の9個のトランジスタTA1〜TI1と、マイナス側電源線62に接続されたマイナス電源側の9個のトランジスタTA2〜TI2とを備えており、プラス電源側の9個のトランジスタTA1〜TI1と、マイナス電源側の9個のトランジスタTA2〜TI2とは、それぞれ対をなしてハーフブリッジを構成している。
図2に示すように、プラス電源側の複数のトランジスタTA1〜TI1とマイナス電源側のトランジスタTA2〜TI2の接続点を直流モータの整流子片と仮定した場合、各コイルA〜Iは、一方の口出線と他方の口出線とが隣接する整流子片に接続される。本実施形態では、各コイルA〜Iは,直流モータにおける重ね巻と同様の固定子巻線構造となっている。
図1に示す回転子20は図示しない軸を中心に回転可能に設けられており、本実施形態では永久磁石を備えている。回転子20は永久磁石回転子に限る必要はなく、励磁コイルを備えたものでもよい。また、説明を簡単にするために、本実施形態では、回転子20の極数は2極としているが、2極より多くても構わない。例えば、回転子を4極(m=2)とし、本実施形態と同様の構成をとる場合は、例えば、回転子2極当たりに9個のコイルを配置すればよく、18個のスロットに18個のコイルを収納した固定子巻線とする。但し、スイッチング回路30のトランジスタの数と後述する位置検出センサ40のセンサの数は2倍にする必要はない。この場合、180°の対称位置にあるコイルの口出線を同じハーフブリッジの2個のトランジスタ素子の接続点に接続すればよい。なお、回転子が4(m=2)極の場合は、固定子10のスロット数は8(=4m)個以上であればよい。
位置検出センサ40は、図1に示すように、回転子20の回転位置を検出するためのものであり、本実施形態では、スロット数あるいはコイル数に等しいn個(n=9)のホール素子からなるセンサSa〜Siが用いられる。図1では、固定子10のスロットの箇所にセンサSa〜Siが位置するように図示されているが、実際は、固定子10から軸方向に離間させた位置に設けてよい。ホール素子からなるセンサSa〜Siは回転子20の磁界を検出する一例であり、部品が小さく構成が簡単であるが、可飽和コイルを用いたセンサや、非接触で回転子20の位置を検出できるものであれば光検出素子によるアブソリュートエンコーダを用いてもよい。センサSa〜Siは、例えば、回転子20のN極が対向している際に論理値“H”を出力し、S極が対向しているときに論理値“L”を出力するように調整されている。なお、回転子20の位置検出のためには、ホール素子のほか、レゾルバを用いてもよい。この場合、回転子20の回転角を算出することになる。
制御回路50は、位置検出センサ40からの回転子20の位置信号を受けて、スイッチング回路30のプラス側電源線61に接続されたトランジスタTA1〜TI1、および、マイナス側電源線62に接続されたトランジスタTA2〜TI2のオン・オフ状態を切り替えることによって、各コイルA〜Iに流れる電流の方向を切り換えている。本実施形態では、後述するように、トランジスタTA1〜TI1のいずれか1つと、トランジスタTA2〜TI2のいずれか1つがオン状態になる。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る直流モータの制御回路の一構成例を示す図である。図4に示す制御回路50は、9個のセンサSa〜Siの信号を受けて、スイッチング素子である18個のトランジスタTA1〜TI2のゲートへオン・オフ信号を送信する。制御回路50を構成する論理回路は、センサSa〜Si側を上流側、トランジスタTA1〜TI2側を下流側とした場合、図4に示す第1段目51の9個のXOR(排他的論理和)回路と、第2段目52の9個のXOR回路と、第3段目53の9個のNOT(否定)回路と、第4段目54の18個のAND(論理積)回路、および、第5段目55の増幅器を備えている。第4段目54のAND回路は9個のコイルに対応した対をなしており、その出力信号は第5段目55の増幅器で増幅されて各トランジスタTA1〜TI2のゲートに供給されている。一対のAND回路は、直流電源60のプラス側電源線61とマイナス側電源線62に直列接続したハーフブリッジを構成する一対のトランジスタの各ゲートに接続される。
例えば、コイルCとコイルD(コイル辺cとコイル辺D)の口出線の接続点に接続されたハーフブリッジを構成するトランジスタTD1,TD2に注目すると、隣り合う2つのホール素子、例えば、センサScとSdからの信号が、第1段目51のXOR回路に入力され、その出力は、トランジスタTD1,TD2に接続された第4段目54の対となるAND回路にそれぞれ入力される。また、センサScからの信号と正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが、第2段目52のXOR回路に入力され、その出力は、対となる第4段目54のAND回路の一方に直接入力され、他方のAND回路に、第3段目53のNOT回路を介して入力される。このため、トランジスタTD1,TD2に接続された第4段目54の対となるAND回路の出力値は同時に“H”になることはない。
センサSa〜Siは、各トランジスタをスイッチングすることによって各コイルA〜Iに電流を流した際に、回転子20にトルクが作用するように所定の位置に配設される。例えば、回転子20のN極がセンサSe,Sf,Sg,Sh,Siに対向し、回転子20のS極がセンサSa,Sb,Sc,Sdに対向している状態(以下、この状態を「ケース1」という。)とすると、センサSe,Sf,Sg,Sh,Siの出力は“H”となり、センサSa,Sb,Sc,Sdの出力は“L”となる。そして、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが正回転の論理値“H”である場合、トランジスタTA1のゲートに接続される第4段目54のAND回路とトランジスタTE2のゲートに接続される第4段目54のAND回路の出力値が“H”となり、他のトランジスタのゲートに接続されたAND回路の出力は全て“L”となる。
これにより、図3に示すように、プラス電源側のトランジスタTA1とマイナス電源側のトランジスタTE2のみがオン状態となる。直流電源60からの電流は、プラス側電源線61、トランジスタTA1を経て、コイルA、コイルB、コイルC、コイルDの順に直列接続された1つのコイル群に流れる経路と、コイルI、コイルH、コイルG、コイルF、コイルEの順に直列接続されたもう1つのコイル群に流れる経路に分かれ、さらに、トランジスタTE2を経由してマイナス側電源線62に流れる。
図5は、スイッチング素子のオン・オフのタイミングを説明するための図である。図5において、t11からt16は時刻を示しており、上から下にかけて時間が経過する。また、プラス側電源線61に接続されたプラス電源側の9個のトランジスタTA1〜TI1と、マイナス側電源線62に接続されたマイナス電源側の9個のトランジスタTA2〜TI2のうち、それぞれの時刻においてオン状態にあるトランジスタを太枠で囲みハッチングを施している。ケース1の場合は、図5の時刻t11に示す状態にある。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る直流モータの各コイル辺に流れる電流を説明するための図である。ケース1(時刻t11)の状態においては、各コイル群に流れる電流によって、図6(A)に示すように、コイル辺A,B,C,D,e,f,g,h,iには紙面手前から奥に向けて、また、コイル辺E,F,G,H、I,a、b、c、dには紙面奥から手前に向けて電流が流れる。なお、同じスロットに収納されたコイル辺eとコイル辺Iには互いに逆方向に電流が流れる。これにより、固定子10の内部には、図6(A)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺e,Iを収納したスロット位置からコイル辺i,Dを収納したスロットとコイル辺a、Eを収納したスロットとの中間位置に向かう方向)の磁界が発生する。固定子10の磁界と回転子20の磁界とはほぼ90°の位相差を有しており、回転子20の磁界の方向が固定子10の磁界の方向に揃うように回転子20に力が作用する。これにより、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転する。
時刻t11のケース1の状態から、さらに回転子20が反時計方向に回転すると、図6(B)に示すように、回転子20のN極がセンサSf,Sg,Sh,Siに対向し、回転子20のS極がセンサSa,Sb,Sc,Sd,Seに対向する。これにより、トランジスタTA1のゲートに接続される第4段目54のAND回路とトランジスタTF2のゲートに接続される第4段目54のAND回路の出力値が“H”となり、他のトランジスタのゲートに接続されたAND回路の出力は全て“L”となる。そして、図5の時刻t12に図示するように、トランジスタTA1とトランジスタTF2のみがオン状態となり、他のトランジスタは全てオフ状態となる。
この状態では、直流電源60からの電流は、コイルA、コイルB、コイルC、コイルD、コイルEの経路のコイル群と、コイルI、コイルH、コイルG、コイルFの経路のコイル群に分かれて流れるため、図6(B)に示すように、コイル辺A,B,C,D,E,f,g,h,iには紙面手前から奥に向けて、また、コイル辺F,G,H,I,a,b,c,d,eには紙面奥から手前に向けて電流が流れる。なお、同じスロットに収納されたコイル辺aとコイル辺Eには互いに逆方向に電流が流れる。このため、固定子10の内部には、図6(B)に示す回転子20のNSの境界線に沿った方向(コイル辺e,Iを収納したスロットとコイル辺f,Aを収納したスロットとの中間位置からコイル辺a,Eを収納したスロット位置に向かう方向)の磁界が発生する。この磁界より、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、反時計方向に回転する。
さらに回転子20が反時計方向に回転すると、図6(C)に示すように、回転子20のN極がセンサSf,Sg,Sh,Si、Saに対向し、回転子20のS極がセンサSb,Sc,Sd,Seに対向する。これにより、トランジスタTB1のゲートに接続される第4段目54のAND回路とトランジスタTF2のゲートに接続される第4段目54のAND回路の出力値が“H”となり、他のトランジスタのゲートに接続されたAND回路の出力は全て“L”となる。そして、図5の時刻t13に図示するように、トランジスタTB1とトランジスタTF2のみがオン状態となり、他のトランジスタは全てオフ状態となる。
この状態では、直流電源60からの電流は、コイルB、コイルC、コイルD、コイルEの経路のコイル群と、コイルA,コイルI、コイルH、コイルG、コイルFの経路のコイル群に分かれて流れるため、図6(C)に示すように、コイル辺B,C,D,E,f,g,h,i,aには紙面手前から奥に向けて、また、コイル辺F,G,H,I,A,b,c,d,eには紙面奥から手前に向けて電流が流れる。なお、同じスロットに収納されたコイル辺fとコイル辺Aには互いに逆方向に電流が流れる。このため、固定子10の内部には、図6(C)に示す回転子20のNSの境界線に沿った方向(コイル辺f,Aを収納したスロット位置からコイル辺a,Eを収納したスロットとコイル辺b、Fを収納したスロットとの中間位置に向かう方向)の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、反時計方向に回転する。
以降、同様に、回転子20が反時計方向のトルクを受けて、反時計方向に回転するにしたがって、位置検出センサ40の各センサSa〜Siの信号出力が変化し、これに伴って、図1に示すプラス電源側のトランジスタTA1〜TI1とマイナス電源側のトランジスタTA2〜TI2のオン状態にあるトランジスタが切り替わる。これによって、回転子20は正回転方向である反時計方向に回転し続ける。なお、時刻t11から時刻t13の間に、回転子20は2π/9、すなわち40°回転している。以上のように、本実施形態では、固定子10のすべてのコイルに流れる電流が回転子20の回転トルクを与えることになる。このため、コイルの電流利用率の高い直流モータを得ることができる。
図5に示すように、固定子巻線として奇数個(9個)のコイルA〜Iがある場合、プラス電源側のトランジスタTA1〜TI1のオン状態の切り替えと、マイナス電源側のトランジスタTA2〜TI2のオン状態の切り替えは、交互に行われる。すなわち、時刻t12では時刻t11の状態から、マイナス電源側のトランジスタTE2に代わってTF2がオン状態になり、時刻t13ではプラス電源側のトランジスタTA1に代わってTB1がオン状態になり、時刻t14ではマイナス電源側のトランジスタTF2に代わってTG2がオン状態になり、さらに、時刻t15ではプラス電源側のトランジスタTB1に代わってTC1がオン状態になる。なお、固定子10のスロットの数が偶数の場合は、プラス電源側のトランジスタとマイナス電源側のトランジスタは、同じタイミングでオン状態が切り替わる。
次に、図4または図6(A)に示すケース1の場合であって、例えば、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが逆回転の論理値“L”であった場合、トランジスタTE1のゲートに接続される第4段目54のAND回路とトランジスタTA2のゲートに接続される第4段目54のAND回路の出力値が“H”となり、他のトランジスタのゲートに接続されたAND回路の出力は全て“L”となる。これにより、直流電源60からの電流は、プラス側電源線61、トランジスタTE1を経て、コイルD、コイルC、コイルB、コイルAの順に直列接続された1つのコイル群に流れる経路と、コイルE、コイルF、コイルG、コイルH、コイルIの順に直列接続されたもう1つのコイル群に流れる経路に分かれ、さらに、トランジスタTE2を経てマイナス側電源線62に流れる。
そして、各コイル群に流れる電流によって、コイル辺E,F,G,H,I、a,b,c,dには紙面手前から奥に向けて、また、コイル辺A,B,C,D,e,f,g,h,iには紙面奥から手前に向けて電流が流れる。なお、同じスロットに収納されたコイル辺eとコイル辺Iには互いに逆方向に電流が流れる。すなわち、各コイル辺A〜iに流れる電流は、図6(A)に示した各コイル辺A〜iに流れる電流と反対方向になる。これにより、固定子10の内部には、図1に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺i,Dを収納したスロットとコイル辺a、Eを収納したスロットとの中間位置からコイル辺e,Iを収納したスロット位置に向かう方向)の磁界が発生する。この磁界により、回転子20には時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では逆回転方向である時計方向に回転する。以降、正回転方向の場合と同様に、回転子20は逆回転方向である時計方向に回転を続ける。このように、本実施形態の直流モータ101は、回転子20の磁極の位置に応じて、回転子のN極に対向するコイルのコイル辺とS極に対向するコイルのコイル辺とに流れる電流の方向が異なる方向となるように、制御回路50がスイッチング素子である各トランジスタTA1〜TI2の導通・非導通を切り替えている。
このように、本実施形態では、回転子20の磁極NSの位置に応じて、各コイルに流れる電流が、回転子のN極に対向するコイルのコイル辺とS極に対向するコイルのコイル辺とが異なる方向となるように、スイッチング素子の導通・非導通を切り替えている。
次に、プラス電源側のトランジスタTA1〜TI1あるいはマイナス電源側のトランジスタTA2〜TI2のオン状態にあるトランジスタを切り替える際の切り替え方法について説明する。例えば、図5に示す時刻t11から時刻t12にかけて、マイナス電源側のトランジスタTE2がオン状態からオフ状態に、また、これに伴い、マイナス電源側のトランジスタTF2がオフ状態からオン状態に切り替わる。これによって、コイルEに流れる電流の方向が、時刻t11と時刻t12とでは反対方向に切り替わることになる。
この場合、トランジスタTE2からTF2へオン状態の切り替え方法として、マイナス電源側のトランジスタTF2をオン状態にする際に、同時にトランジスタTE2をオフするのではなく、トランジスタTF2をオン状態にした際に、トランジスタTE2については微小時間だけオン状態を保つようにし、その後、トランジスタTE2をオフ状態にする。このため、コイルEについては、微小時間だけ短絡された状態となる。これは、ブラシ付き直流電動機において、ブラシが隣接する整流子片に跨って接触した際に、コイルが短絡される現象と同じであり、トランジスタTE2とトランジスタTF2とを同時に開閉する場合よりも、安定的にコイルに流れる電流を切り替えることができる。
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る直流モータの位置検出センサと制御回路を除く等価回路である。説明の便宜上、固定子巻線のコイル数が8つの場合を示している。図8は、第2の実施形態に係る直流モータの制御回路の一構成例を示す図であり、図9は、第2の実施形態に係る直流モータのスイッチング素子のオン・オフ状態の遷移を示す図である。また、図10は、本発明の第2の実施形態に係る直流モータの各コイル辺に流れる電流を説明するための図である。
本実施形態の直流モータ102は、図7に示すように、プラス側電源線61とマイナス側電源線62との間に、各コイルA〜Hがトランジスタを介して並列に接続されたものである。図10に示すように、固定子コアは8個のスロットを有しており、8個のスロットに収納された各コイルA〜Hは、第1の実施形態と同様に、n/2mの商、すなわち、4(8÷2=4)個離れたスロットに収納されている。固定子の構成については、各コイルA〜Hの結線方法が異なるだけで、後述する第3の実施形態と同じである。また、回転子の構成も第1の実施形態と同じである。位置検出センサのセンサSa〜Shについても数が異なるだけで、第1の実施形態と同様であり、本実施形態では8個のセンサSa〜Shを備えている。
そして、図7に示すように、例えば、コイルAの場合、コイルAの一方の口出線を、それぞれプラス側電源線61とマイナス側電源線62に接続されるハーフブリッジを構成するトランジスタTA1とTA2の接続点に接続し、コイルAの他方の口出線を、それぞれプラス側電源線61とマイナス側電源線62に接続されるハーフブリッジを構成するトランジスタTA3とTA4の接続点に接続している。他のコイルB〜Hについても同様である。すなわち、各コイルA〜Hの2つの口出線は、それぞれハーフブリッジを構成する2個のスイッチング素子の接続点に接続されており、各コイルA〜Hは、いわゆるフルブリッジあるいはHブリッジを構成する4個のスイッチング素子によって、直流電源60のプラス側電源線61とマイナス側電源線62に接続される。このように、第2の実施形態では、各コイルは他のコイルと接続されていない。また、スイッチング素子であるトランジスタの数は、第1の実施形態の2倍の数だけ必要となる。
第2の実施形態では、各コイルA〜Hは、それぞれ4つのトランジスタによって通電される。例えば、コイルAに関して電源から電流を供給する場合は、いわゆるHブリッジを構成するトランジスタTA1〜TA4の対角にあるトランジスタTA1とTA4の組を同時にオン・オフ制御するか、あるいは、トランジスタTA2とTA3の組を同時にオン・オフ制御する。他のコイルB〜Hについても同様であり、図9では、これらの組を2段に分けて表している。上段の組をオン状態にした場合は、各コイルA〜Hを流れる電流は、図7で示す紙面左側から右側に向けて流れ、下段の組をオン状態にした場合は、各コイルA〜Hを流れる電流は、図7で示す紙面右側から左側に向けて流れる。また、図9では、t21〜t25は時刻を示しており、上から下にかけて時間が経過する。また、それぞれの時刻においてオン状態にあるトランジスタを太枠で囲みハッチングを施している。
次に、本実施形態に係る直流モータにおける制御回路について説明する。図8に示す制御回路150は8個のセンサSa〜Shの信号を受けて、スイッチング素子である32個のトランジスタTA1〜TH4のゲートへオン・オフ信号を送信する。制御回路150を構成する論理回路は、センサSa〜Sh側を上流側、トランジスタTA1〜TH4側を下流側とした場合、図8に示す第1段目151の8個のXOR回路と、第2段目152の8個のXOR回路と8個のNOT回路、第3段目153の8個のNOT回路と、第4段目154の16個のAND回路、および、第5段目155の32個の増幅器を備えている。
例えば、コイルAの口出線の接続点に接続されたフルブリッジを構成するトランジスタTA1〜TD4に注目すると、隣り合う2つのホール素子であるセンサSaとSbからの信号が第1段目151のXOR回路に入力され、その出力は、第2段目152のNOT回路を経て、一方のハーフブリッジを構成する一対のトランジスタTA1,TA2に接続された第4段目154の一対のAND回路に入力される。また、センサSaからの信号と正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが第2段目152のXOR回路に入力され、その出力は、増幅器を介して直接トランジスタTA4と、トランジスタTA1に接続された第4段目154のAND回路に入力され、さらに、第2段目152のXOR回路の出力は、第3段目のNOT回路を経て、直接トランジスタTA3と、トランジスタTA2に接続された第4段目154のAND回路に入力される。このため、トランジスタTA1,TA2は同時にオン状態になることはなく、同様に、トランジスタTA3,TA4も同時にオン状態になることはない。
例えば、図8または図10(A)に示すように、回転子20のN極がセンサSf,Sg,Sh,Saに対向し、回転子20のS極がセンサSb,Sc,Sd,Seに対向している状態(以下、この状態を「ケース2」という。)とすると、センサSf,Sg,Sh,Saの出力は“H”となり、センサSb,Sc,Sd,Seの出力は“L”となる。そして、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが正回転の論理値“H”である場合、図9の時刻t21で示すように、トランジスタTB1,TB4、TC1、TC4、TD1、TD4、TE4,TF2,TF3,TG2,TG3,TH2,TH3,TA4がオン状態になり、それ以外のトランジスタはオフ状態となる。これにより、図7示す等価回路において、コイルB,C,Dには紙面の左側から右側に電流が流れ、コイルF,G,Hには紙面の右側から左側に電流が流れる。一方、トランジスタTA1〜TA3およびトランジスタTE1〜TE3はオフ状態となるため、コイルAとコイルEには電流が流れない。
ケース2の状態において、直流モータの各コイル辺に流れる電流は、図10(A)に示す時刻t21の図に示すようになり、コイル辺B,C,D,f,g,hには紙面手前から奥に向けて、また、コイル辺F,G,H、b、c、dには紙面奥から手前に向けて電流が流れる。これにより、固定子10の内部には、図10(A)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺e,Aを収納したスロットからコイル辺a,Eを収納したスロットに向かう方向)の磁界が発生する。この磁界により、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転する。
以降、回転子20が回転すると、センサSa〜Shに対向する回転子20のN極とS極が変化する。回転子20が図10(A)に示す位置から図10(B)に示すように反時計方向に45°回転した時刻t22の位置では、回転子20のN極がセンサSg,Sh,Sa,Sbに対向し、回転子20のS極がセンサSc,Sd,Se,Sfに対向する。この状態では、図9の時刻t22において太枠で囲みハッチングを施したトランジスタがオン状態になる。これにより、図7の等価回路において、コイルC,D,Eには紙面の左側から右側に電流が流れ、コイルG,H,Aには紙面の右側から左側に電流が流れる。一方、トランジスタTB1〜TB3およびトランジスタTF1〜TF3はオフ状態となるため、コイルAとコイルEには電流が流れない。
このとき、直流モータの各コイル辺に流れる電流は、図10(B)に示すように、コイル辺C,D,E,g,h,aには紙面手前から奥に向けて、また、コイル辺G,H,A,c,d,eには紙面奥から手前に向けて電流が流れる。これにより、固定子10の内部には、図10(B)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺f、Bを収納したスロットからコイル辺b,Fを収納したスロットに向かう方向)の磁界が発生する。この磁界により、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転する。
さらに、図10(C)に示すように回転子20が反時計方向に45度回転した位置では、回転子20のN極がセンサSh,Sa,Sb,Scに対向し、回転子20のS極がセンサSd,Se,Sf,Sgに対向する。この状態では、図9の時刻t23において太枠で囲みハッチングを施したトランジスタがオン状態になる。これにより、図7の等価回路において、コイルD,E,Fには紙面の左側から右側に電流が流れ、コイルH,A,Bには紙面の右側から左側に電流が流れる。一方、トランジスタTC1〜TC4およびトランジスタTG1〜TG4はオフ状態となるため、コイルC、コイルGには電流が流れない。
このとき、直流モータの各コイル辺に流れる電流は、図10(C)に示すように、コイル辺D,E,F,h,a,bには紙面手前から奥に向けて、また、コイル辺H,A,B,d,e,fには紙面奥から手前に向けて電流が流れる。これにより、固定子10の内部には、図10(B)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺g、Cを収納したスロットからコイル辺c,Gを収納したスロットに向かう方向)の磁界が発生する。この磁界により、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、さらに反時計方向に回転する。以降、同様にして、各トランジスタのオン状態。オフ状態は、図9の時刻t21から時刻t25に示すように切り替わり、回転子20は正回転方向である反時計方向に回転し続ける。
また、ケース2の状態において、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが逆回転の論理値“L”であった場合、トランジスタTA3,TB2,TB3、TC2、TC3、TD2、TD3、TE3,TF1,TF4,TG1,TG4,TH1,TH4がオン状態になり、それ以外のトランジスタはオフ状態となる。これにより、図7の等価回路において、コイルB,C,Dには紙面の右側から左側に電流が流れ、コイルF,G,Hには紙面の左側から右側に電流が流れる。一方、トランジスタTA1〜TA4およびトランジスタTE1〜TE4はオフ状態となるため、コイルAとコイルEには電流が流れない。
このとき、直流モータの各コイル辺に流れる電流は、図10(A)に示す時刻t21の図に示す電流の方向とは逆向きの電流が流れる。すなわち、コイル辺B,C,D,f,g,hには紙面奥から手前に向けて、また、コイル辺F,G,H、b、c、dには紙面手前から奥に向けて電流が流れる。これにより、固定子10の内部には、図10(A)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺a,Eを収納したスロットからコイル辺e,Aを収納したスロットに向かう方向)の磁界が発生する。この磁界により、回転子20には時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では逆回転方向である時計方向に回転する。以降、同様にして、回転子20は逆回転方向である時計方向に回転し続ける。
第2の実施形態では、例えば、図10(A)に示す位置に回転子20がある場合、回転子20の磁極NSの境界では、回転子20の界磁による磁束密度はほぼゼロとなるため、この境界に位置するスロットに収納されたコイルAとEには逆起電力が発生しない。このため、コイルAとEを直流電源60に接続すると、過電流が流れるおそれがある。このため、第2の実施形態では、回転子20の極性が切り替わる位置に対向するスロットに収納されたコイルに対しては、このコイルの口出線に接続した少なくとも一方のハーフブリッジのトランジスタを非導通にすることによって、直流電源60からの電流を流さないブランキング期間を設けている。本発明では、電流が流れないブランキング期間にあるコイルをブランキングコイルと呼ぶ。本実施形態では、ブランキングコイルは、磁極NSの境界付近に位置する2個のコイルとなる。本実施形態では、ブランキングコイルが生じるものの、固定子10のスロット数とコイル数を増やすことによって、ブランキングコイルの影響は小さくなり、コイルの電流利用効率は高くなる。ブランキングコイルを発生させる他の実施形態についても同様である。
直流モータの駆動時には、第2の実施形態では、各コイルは直流電源60に対して並列に接続されるのに対して、第1の実施形態では、各コイルは直流電源60に対して直列に接続される。第1の実施形態では、複数のコイルは閉ループを形成するように直列され、複数のコイルは2つのコイル群に分けられてそれぞれに電流が流れるように、スイッチング回路のトランジスタのオン・オフが切り替えられる。この場合、オン状態にあるトランジスタは、プラス側電源線61に接続されたトランジスタTA1〜TI1のうちの1つと、マイナス側電源線62に接続されたトランジスタTA2〜TI2のうちの1つの計2つである。ここで、各コイルに流す所定の電流値をLアンペアとした場合、各トランジスタTA1〜TI2には、2Lアンペアの電流容量が必要となる。
また、第1の実施形態では、直列接続された各コイルに所定のLアンペアを流すために、直流電源60の電圧を大きくする必要があるため、各トランジスタTA1〜TI2には耐圧の大きなトランジスタを用いる必要がある。この傾向は、直流モータの回転を滑らかにするために、固定子10のスロット数を増やしてコイル数を増やした場合に顕著に現れる。
一方、第2の実施形態に係る直流モータでは、各トランジスタTA1〜TI4は、所定の電流値Lアンペアを流せる容量があればよいため、第1の実施形態に係る直流モータに比べて電流容量の小さなトランジスタを用いることができる。さらに、第2の実施形態に係る直流モータは、第1、第2の実施形態に係る直流モータに比べて、直流電源60の電源電圧も小さくでき、トランジスタの耐圧も小さなものを使用できる。
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態に係る直流モータの制御回路を除く一構成例を示す図であり、図12は、第3の実施形態に係る直流モータの位置検出センサと制御回路を除く等価回路である。本実施形態の直流モータ103の固定子10は、n(nは4m以上の整数であり、本実施形態では8)個のスロットを形成したケイ素鋼板を積層した固定子コア11と、2層巻きで固定子コアの各スロットに収納した8個のコイルA〜Hからなる固定子巻線12を備えている。この構成については、コイル数が異なるだけで第2の実施形態と同様である。
図11に示すように、隣接する8個のスロットは位相差2π/n(n=8)を有して設けられている。各コイルA〜Hは、2極機でスロット数が偶数の場合であるため、各コイルの2つのコイル辺が180°離れた位置のスロットに収められる。このため、本実施形態ではコイルピッチは磁極ピッチと等しくなる。また、隣接するコイルA〜Hは、2π/8(=45°)の位相差を有しており、各コイルA〜Hも隣接するコイルとは45°の位相差を有している。また、回転子20およびセンサSa〜Shの構成も第2の実施形態と同様である。
第3の実施形態では、各コイルA〜Hは直列接続されるが、隣接する2つのコイルに電流を流した際に、この2つのコイルが共通に取り囲む領域において、逆方向の磁界が発生するように、2つの隣接するコイルの口出線が順次接続されて環状に直列接続される。そして、口出線の各接続点が、それぞれ直流電源のプラス側電源線とマイナス側電源線に接続されたハーフブリッジを構成する2個のスイッチング素子の接続点に接続されている。
より具体的には、コイルHのコイル辺H側の口出線が隣接するコイルAのコイル辺Aの口出し線に接続され、その接続点はトランジスタTA1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTA2を介してマイナス側電源線62に接続されている。また、コイルAのコイル辺a側の口出線と隣接するコイルBのコイル辺b側の口出線が接続され、その接続点はトランジスタTB1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTB2を介してマイナス側電源線62に接続されている。さらに、コイルBのコイル辺B側の口出線と隣接するコイルCのコイル辺C側の口出線が接続され、その接続点はトランジスタTC1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTC2を介してマイナス側電源線62に接続されている。以降、順次同様であり、コイルGのコイル辺g側の口出線とコイルHのコイル辺h側の口出線が接続され、その接続点はトランジスタTH1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTH2を介してマイナス側電源線62に接続されている。
したがって、直列接続された隣接する2つのコイル、例えば、隣接する2つのコイルB,Cに注目すると、コイル辺bの口出線からコイル辺cの口出線へ電流を流した際に、コイルBとコイルCに生じる磁束は、2つのコイルB,Cが共通に取り囲む領域に対しては逆方向の磁界が発生する。このようなコイルの接続形態を、本発明では逆方向接続という。
次に、第3の実施形態に係る直流モータ103の制御回路と、各コイルに流れる電流について説明する。図13は、本発明の第3の実施形態に係る直流モータの制御回路の一構成例を示す図であり、図14は、第3の実施形態に係る直流モータのスイッチング素子のオン・オフ状態の遷移を示す図である。また、図15は、第3の実施形態に係る直流モータの各コイル辺に流れる電流を説明するための図である。
図13に示す制御回路250は8個のセンサSa〜Shの信号を受けて、スイッチング素子である16個のトランジスタTA1〜TH2のゲートへオン・オフ信号を送信する。制御回路250を構成する論理回路は、センサSa〜Sh側を上流側、トランジスタTA1〜TH2側を下流側とした場合、第1段目251の8個のXOR回路と、第2段目252の8個のXOR回路、第3段目253の4個のNOT回路、第4段目254の12個のNOT回路、第5段目255の16個のAND回路、および、第6段目256の16個の増幅器を備えている。
例えば、コイルCとコイルD(コイル辺cとコイル辺d)の口出線の接続点に接続されたハーフブリッジを構成するトランジスタTD1とTD2に注目すると、隣り合う2つのホール素子であるセンサSaとSbからの信号が第1段目251のXOR回路に入力され、その出力は、第4段目254のNOT回路を経て、トランジスタTD1,TD2に接続された第5段目255の対となるAND回路にそれぞれ入力される。また、一方のセンサSaからの信号と正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが第2段目252のXOR回路に入力され、その出力は、対となる第5段目255のAND回路の一方に直接入力され、他方のAND回路に、第4段目254のNOT回路を介して入力される。このため、トランジスタTD1,TD2に接続された第5段目255の対となるAND回路の出力値が同時に“H”になることはない。
例えば、図13または図15(A)で示すように、回転子20のN極がセンサSa,Sb,Sc,Sdに対向し、回転子20のS極がセンサSe,Sf,Sg,Shに対向している状態(以下、この状態を「ケース3」という。)とすると、センサSa,Sb,Sc,Sdの出力は“H”となり、センサSe,Sf,Sg,Shの出力は“L”となる。そして、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが正回転の論理値“H”である場合、トランジスタTA2、TB1,TD2、TE1,TF2,TH1の各ゲートに接続される第5段目255のAND回路の出力値が“H”となり、他のトランジスタのゲートに接続されたAND回路の出力は全て“L”となる。この状態の各トランジスタのオン・オフの状態は、図14の時刻t31に示される。同図において、t31からt36は時刻を示しており、上から下にかけて時間が経過する。また、プラス側電源線61に接続されたプラス電源側の8個のトランジスタTA1〜TH1と、マイナス側電源線62に接続されたマイナス電源側の8個のトランジスタTA2〜TH2のうち、それぞれの時刻においてオン状態にあるトランジスタを太枠で囲みハッチングを施している。
これにより、直流電源60から各コイルA〜Hには、プラス電源側のトランジスタTB1、コイルA、マイナス電源側のトランジスタTA2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTB1、コイルB、コイルC、マイナス電源側のトランジスタTD2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTE1、コイルD、マイナス電源側のトランジスタTD2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTE1、コイルE、マイナス電源側のトランジスタTF2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTH1、コイルG、コイルF、マイナス電源側のトランジスタTF2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTH1、コイルH、マイナス電源側のトランジスタTA2を経由する電流が流れる。
ケース3(時刻t31)の状態においては、各コイルに流れる電流によって、図15(A)に示すように、コイル辺C,D,E,F、g,h,a,bには紙面手前から奥に向けて電流が流れ、コイル辺G,H,A,B,c,d,e,fには紙面奥から手前に向けて電流が上がれる。これにより、固定子10の内部には、図15(A)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺f,Bを収納したスロットとコイル辺g,Cを収納したスロットとの中間位置からコイル辺b,Fを収納したスロットとコイル辺c,Gを収納したスロットとの中間位置へ向う方向)の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転する。
なお、この状態においてコイルB,Cの2コイルと、コイルF,Gの2コイルは直流電源60に対して直列接続された状態で接続されるため、直流電源60に対して単独に接続される他のコイルA,D,E,Hよりも流れる電流値は小さくなる。
時刻t31の状態から、さらに回転子20が反時計方向に回転子すると、図15(B)の時刻t32に示すように、回転子20のN極がセンサSb,Sc,Sd,Seに対向し、回転子20のS極がセンサSf,Sg,Sh,Sa,に対向する。これにより、トランジスタTA2、TB1,TC2,TE1,TF2,TG1の各ゲートに接続される第5段目255のAND回路の出力値が“H”となり、他のトランジスタのゲートに接続されたAND回路の出力は全て“L”となる。この状態における各トランジスタのオン・オフ状態は、図14の時刻t32に示すとおりである。時刻t32の状態は、時刻t31の状態に比べて、上段のトランジスタTG1と下段のトランジスタTC2がオフ状態からオン状態に切り替わり、上段のトランジスタTH1と下段のトランジスタTD2がオン状態からオフ状態に切り替わっている。
これにより、直流電源60から各コイルA〜Hには、プラス電源側のトランジスタTB1、コイルA、マイナス電源側のトランジスタTA2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTB1、コイルB、マイナス電源側のトランジスタTC2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTE1、コイルD、コイルC,マイナス電源側のトランジスタTC2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTE1、コイルE、マイナス電源側のトランジスタTF2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTG1、コイルF、マイナス電源側のトランジスタTF2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTG1、コイルG、コイルH、マイナス電源側のトランジスタTA2を経由する電流が流れる。
時刻t32の状態においては、各コイル群に流れる電流によって、図15(B)の時刻t32に示すように、コイル辺D,E,F、G,h,a,b,cには紙面手前から奥に向けて電流が流れ、コイル辺H,A,B,C,d,e,f、gには紙面奥から手前に向けて電流が上がれる。これにより、固定子10の内部には、図15(B)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺g,Cを収納したスロットとコイル辺h,Dを収納したスロットとの中間位置からコイル辺c,Gを収納したスロットとコイル辺d,Hを収納したスロットとの中間位置へ向う方向)の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転する。
この時刻t32状態においてコイルB,Cの2コイルと、コイルF,Gの2コイルは直流電源60に対して直列接続された状態で接続されるため、直流電源60に対して単独に接続される他のコイルA,D,E,Hよりも流れる電流値は小さくなる。
さらに回転子20が反時計方向に回転すると、図15(C)に示すように、回転子20のN極がセンサSc,Sd,Se,Sf,に対向し、回転子20のS極がセンサSg,Sh,Sa,Sbに対向する。これにより、各トランジスタTA1〜TH2は、図14の時刻t33で示すように、時刻t32の状態から、上段のトランジスタTD1と下段のトランジスタTH2がオフ状態からオン状態に切り替わり、上段のトランジスタTE1と下段のトランジスタTA2がオン状態からオフ状態に切り替わっている。
これにより、直流電源60から各コイルA〜Hのコイル辺A〜hには、図15(C)の時刻t33に示す電流が流れ、回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺h,Dを収納したスロットとコイル辺a,Eを収納したスロットとの中間位置からコイル辺d,Hを収納したスロットとコイル辺e,Aを収納したスロットとの中間位置へ向う方向)の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転を続ける。なお、時刻t31から時刻t33の間に、回転子20は2π/8の2倍、すなわち90°回転している。また、説明は省略するが、図13または図15(A)に示すケース3の状態において、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが逆回転の論理値“L”であった場合、回転子20は逆回転方向である時計方向に回転し続ける。
本実施形態では、常に2つのハーフブリッジを構成する4個のトランジスタがオフ状態となるため、各コイルは、2個のトランジスタを介して直流電源60に直接接続される場合と、2つのコイルが直列接続された状態で2個のトランジスタを介して直流電源60に直接接続される場合の、2通りの直流電源60への接続形態が存在する。このため、第1の実施形態に比べて、電流容量と耐圧が小さいトランジスタを使用することができる。また、回転子20の磁極NSの境界線に位置するスロットに収納されたコイルには、ブランキング期間を設けていないが、回転子20の磁極NSの境界線に位置するスロットに収納されたコイルは、隣接する2つのコイルが直列接続されて直流電源60に接続されるため、逆起電力が小さくなることによる過電流の影響を小さく抑えることができる。
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態に係る直流モータの位置検出センサと制御回路を除く等価回路である。本実施形態の直流モータ104の固定子は、n(nは4m以上の整数であり、本実施形態では9)個のスロットを形成したケイ素鋼板を積層した固定子コアと、固定子コアの各スロットに収納した9個のコイルA〜Iからなる固定子巻線を備えている。固定子コアと固定子巻線の構成、および、センサSa〜Siの構成については、コイルA〜Iの接続方法が異なるだけで、図1に示す第1の実施形態と同様である。なお、本実施形態では、第1の実施形態の直流モータ101よりも、ハーフブリッジの数は1組多くなっている。
第4の実施形態では、第3の実施形態と同様に、各コイルA〜Iは直列接続されるが、逆方向接続される。すなわち、隣接する2つのコイルに電流を流した際に、この2つのコイルが共通に取り囲む領域において、逆方向の磁界が発生するように、2つの隣接するコイルの口出線が順次接続されて直列接続される。しかし、第4の実施形態ではコイル数が奇数であるため、環状ではなく単に直列接続されており、例えば、コイルAとコイルIとは接続されない。また、スロット数が奇数であるため、コイルピッチは、磁極ピッチよりも短い短節巻となる。それ以外のコイルの接続形態については第3の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
そして、口出線の各接続点が、それぞれ直流電源のプラス側電源線とマイナス側電源線に接続されたハーフブリッジを構成する2個のスイッチング素子の接続点に接続されている。このため、9つのコイルA〜Iに対して、20個のトランジスタTA1〜TJ2が接続されている。
次に、第4の実施形態に係る直流モータ104の制御回路と、各コイルに流れる電流について説明する。図17は、本発明の第4の実施形態に係る直流モータの制御回路の一構成例を示す図であり、図18は、第4の実施形態に係る直流モータのスイッチング素子のオン・オフ状態の遷移を示す図である。また、図19は、第3の実施形態に係る直流モータの各コイル辺に流れる電流を説明するための図である。
図17に示す制御回路350は9個のセンサSa〜Siの信号を受けて、スイッチング素子である20個のトランジスタTA1〜TJ2のゲートへオン・オフ信号を送信する。制御回路350を構成する論理回路は、センサSa〜Si側を上流側、トランジスタTA1〜TJ2側を下流側とした場合、図17に示す第1段目351の9個のXOR回路、第2段目352の9個のXOR回路、第3段目353の5個のNOT回路、第4段目354の13個のNOT回路、第5段目355の18個のAND回路、第6段目356の18個の増幅器、および、サブ論理回路357を備えている。
ここで、図17に図示した第4の実施形態の制御回路350と図13に図示した第3の実施形態の制御回路250とを対比すると、第4の実施形態の制御回路350は、コイルHとコイルIの電流を切り替えるために、トランジスタTI1,TI2からなるハーフブリッジとトランジスタTJ1,TJ2からなるハーフブリッジのためのサブ論理回路357が追加されている点で異なっている。
コイルHとコイルI(コイル辺Hとコイル辺I)の口出線の接続点に接続されたフルブリッジを構成するトランジスタTI1とTI2に注目すると、隣り合う2つのホール素子であるセンサSiとSaからの信号が第1段目351のXOR回路に入力され、その出力は、第4段目354のNOT回路を経て、トランジスタTI1,TI2に接続された第5段目355の対となるAND回路にそれぞれ入力される。また、一方のセンサSiからの信号と正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが第2段目352のXOR回路に入力され、その出力は、対となる第5段目355のAND回路の一方に直接入力され、他方のAND回路に、第4段目354のNOT回路を介して入力される。このため、トランジスタTI1,TI2に接続された第5段目355の対となるAND回路の出力値が同時に“H”になることはない。
また、コイルIのコイル辺iの口出線に接続されたフルブリッジを構成するトランジスタTJ1とTJ2に注目すると、トランジスタTA1とTA2に接続された第5段目355の対となるAND回路の出力を受けるサブ論理回路357からゲート信号を生成している。トランジスタTA1とTA2は直列接続したコイルの一端側のコイルAに接続したハーフブリッジであり、トランジスタTJ1とTJ2は、直列接続したコイルIの一端側のコイルに接続したハーフブリッジである。サブ論理回路357は、トランジスタTA1とTA2に接続された第5段目355の対となるAND回路の出力がそれぞれNOT回路を介してXOR回路に入力され、このXOR回路の出力とそれぞれのNOT回路の出力が、トランジスタTJ1とTJ2に接続された対となるAND回路に入力される。
このため、トランジスタTA1とTA2に接続された第5段目355の対となるAND回路の出力が“L”,“L”の場合は、トランジスタTJ1とTJ2に接続された対となるAND回路の出力は“L”,“L”となり、“H”,“L”の場合は、“L”,“H”となり、“L”,“H”の場合は、“H”,“L”となる。したがって、トランジスタTJ1,TJ2に接続された第5段目355の対となるAND回路の出力値が同時に“H”になることはない。
例えば、図17または図19(A)で示すように、回転子20のN極がセンサSa,Sb,Sc,Sd、Seに対向し、回転子20のS極がセンサSf,Sg,Sh,Siに対向している状態(以下、この状態を「ケース4」という。)とすると、センサSa,Sb,Sc,Sd、Seの出力は“H”となり、センサSf,Sg,Sh,Siの出力は“L”となる。そして、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが正回転の論理値“H”である場合、トランジスタTA1、TB2,TC1、TD2,TF1,TG2,TH1,TJ2の各ゲートに接続される第5段目255のAND回路の出力値が“H”となり、他のトランジスタのゲートに接続されたAND回路の出力は全て“L”となる。この状態の各トランジスタのオン・オフの状態は、図18の時刻t41に示される。同図において、t41からt46は時刻を示しており、上から下にかけて時間が経過する。また、プラス側電源線61に接続されたプラス電源側の10個のトランジスタTA1〜TJ1と、マイナス側電源線62に接続されたマイナス電源側の10個のトランジスタTA2〜TJ2のうち、それぞれの時刻においてオン状態にあるトランジスタを太枠で囲みハッチングを施している。
これにより、直流電源60から各コイルA〜Iには、プラス電源側のトランジスタTA1、コイルA、マイナス電源側のトランジスタTB2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTC1、コイルB、マイナス電源側のトランジスタTB2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTC1、コイルC、マイナス電源側のトランジスタTD2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTF1、コイルE、コイルD,マイナス電源側のトランジスタTD2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTF1、コイルF、マイナス電源側のトランジスタTG2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTH1、コイルG、マイナス電源側のトランジスタTG2を経由する電流。および、プラス電源側のトランジスタTH1、コイルH、コイルI,マイナス電源側のトランジスタTJ2を経由する電流が流れる。
ケース4(時刻t41)の状態においては、各コイル群に流れる電流によって、図19(A)に示すように、コイル辺I,A,B,C,D,e,f、g,hには紙面手前から奥に向けて電流が流れ、コイル辺i,a,b,c,d,E,F,G,Hには紙面奥から手前に向けて電流が流れる。これにより、固定子10の内部には、図19(A)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺d,Hを収納したスロットとコイル辺e,Iを収納したスロットとの中間位置からコイル辺i,Dを収納したスロット位置へ向う方向)の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転する。
なお、この状態において、コイルD,Eの2コイルと、コイルH,Iの2コイルは直流電源60に対して直列接続されているため、直流電源60に対して単独に接続される他のコイルA,B,C,F,Gよりも流れる電流値は小さくなる。このため、本実施形態では、回転子20の磁極NSの境界線に位置するスロットに収納されたコイルは、隣接する2つのコイルが直列接続されて、直流電源60に接続されるため、逆起電力が小さくなることによる過電流が流れる影響を小さく抑えることができる。
時刻t41の状態から、さらに回転子20が反時計方向に回転子すると、図19(B)の時刻t42に示すように、回転子20のN極がセンサSb,Sc,Sd,Seに対向し、回転子20のS極がセンサSf,Sg,Sh,Si,Sa,に対向する。これにより、
トランジスタTA1,TA2に接続された一対のAND回路の出力が共に“L”となるため、トランジスタTJ1,TJ2に接続された一対のAND回路の出力も共に“L”となる。したがって、各トランジスタTA1〜TJ2は、図18の時刻t42に図示するように、時刻t41の状態から、上段のトランジスタTA1と下段のトランジスタTJ2がオン状態からオフ状態に切り替わり、下段のトランジスタTI2がオフ状態からオン状態に切り替わる。
これにより、直流電源60から各コイルA〜Iには、プラス電源側のトランジスタTC1、コイルB、マイナス電源側のトランジスタTB2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTC1、コイルC、マイナス電源側のトランジスタTD2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTF1、コイルE、コイルD,マイナス電源側のトランジスタTD2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTF1、コイルF、マイナス電源側のトランジスタTG2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTH1、コイルG、マイナス電源側のトランジスタTG2を経由する電流、および、プラス電源側のトランジスタTH1、コイルH、マイナス電源側のトランジスタTI2を経由する電流が流れ、コイルAとコイルIは、ブランキングコイルとなって電流が流れない。
時刻t42の状態においては、各コイル群に流れる電流によって、図19(B)に示すように、コイル辺B,C,D,e,f、g,hには紙面手前から奥に向けて電流が流れ、コイル辺b,c,d,E,F,G,Hには紙面奥から手前に向けて電流が流れる。これにより、固定子10の内部には、図19(B)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺e,Iを収納したスロットからコイル辺i,Dを収納したスロットとコイル辺a,Eを収納したスロットとの中間位置へ向う方向)の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転する。時刻t41から時刻t42にかけて、回転子20はほぼ2π/9の半分の20°回転している。
なお、この時刻t42に示す状態において、コイルD,Eの2コイルは直流電源60に対して直列接続されているため、他のコイルB,C,F,Gよりも流れる電流値は小さくなる。また、コイルA,Iの2つのコイルには電流が流れない。このため、回転子20の磁極NSの境界線に位置するスロットに収納されたコイル辺における逆起電力が小さくなることによって、過電流が流れる影響を小さく抑えることができる。
さらに、回転子20が回転し、図19(C)に示す状態になると、位置検出センサ40の各センサSa〜Siの信号出力が変化するため、図18の時刻t43に示すように、プラス電源側のトランジスタTA1〜TI1とマイナス電源側のトランジスタTA2〜TI2のオン状態にあるトランジスタが切り替わる。これによって、回転子20は正回転方向である反時計方向に回転し続ける。以降、同様の動作が継続される。また、説明は省略するが、ケース4の状態において、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが逆回転の論理値“L”であった場合、回転子20は逆回転方向である時計方向に回転し続ける。
本実施形態においても、第3の実施形態と同様に、各コイルは、2つのトランジスタを介して直流電源60に直接接続される場合と、2つのコイルが直列接続された状態で2つのトランジスタを介して直流電源60に直接接続される場合の、2通りの直流電源60への接続形態が存在するとともに、さらに、直列接続された両端のコイルには電流が流れないブランキング期間が生じる。このため、第1の実施形態に比べて、電流容量と耐圧が小さいトランジスタを使用することができる。
(第5の実施形態)
図20は、本発明の第5の実施形態に係る直流モータの制御回路を除く一構成例を示す図であり、図21は、第5の実施形態に係る直流モータの位置検出センサと制御回路を除く等価回路である。本実施形態の直流モータ105の固定子10は、n(nは4m以上の整数であり、本実施形態では6)個のスロットを形成したケイ素鋼板を積層した固定子コア11と、2層巻き固定子コアの各スロットに収納した6個のコイルA〜Fからなる固定子巻線12を備えている。また、直流モータ105は6個Sa〜Sfを有している。
隣接する6個のスロットは位相差2π/n(n=6)を有して設けられている。各コイルA〜Fは、2極機でスロット数が偶数であるため、各コイルの2つのコイル辺が180°離れた位置のスロットに収められる。このため、本実施形態ではコイルピッチは磁極ピッチと等しくなる。また、隣接するコイルA〜Fは、2π/6(=60°)の位相差を有している。
本実施形態では、コイルの数が偶数であって、隣接する2つのコイルを直列接続したコイル対に分け、各コイル対の2つのコイルを逆方向接続している。すなわち、コイル対をなす2つのコイルの一方から他方に電流を流した場合に、この2つのコイルが共通に取り囲む領域において、逆方向の磁界が発生するように、各コイル対をなす2つのコイルの口出線が接続されている。そして、各コイル対の2つのコイルの口出線の接続点と両端の口出線に、それぞれハーフブリッジを構成する2個のトランジスタの接続点が接続されている。
6つのコイルA〜Fを有する場合、これらの6個のコイルを隣接する2つのコイルを直列接続したコイル対に分ける。例えば、コイルA,B、コイルC,D、コイルE,Fをそれぞれ直列接続した3つのコイル対とする。直列接続するに当たっては、直列接続した各コイル対の一方から他方に電流を流した場合に、この2つのコイルが共通に取り囲む領域において、逆方向の磁界が発生するように、各コイル対をなす2つのコイルの口出線を接続する。そして、各コイル対の2つのコイルの接続点と両端の口出線に、それぞれハーフブリッジを構成する2個のトランジスタの接続点が接続されている。したがって、各コイル対には3つのハーフブリッジを構成する6個のトランジスタが接続される。
より具体的に、コイルA,Bからなるコイル対について説明すると、図20に示すコイルAのコイル辺a側の口出線が隣接するコイルBのコイル辺bの口出し線に接続され、その接続点はトランジスタTab1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTab2を介してマイナス側電源線62に接続されている。また、コイルAのコイル辺A側の口出線には、トランジスタTA1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTA2を介してマイナス側電源線62に接続されている。さらに、コイルBのコイル辺B側の口出線には、トランジスタTB1を介してプラス側電源線61に接続されるとともに、トランジスタTB2を介してマイナス側電源線62に接続されている。コイルC,Dからなるコイル対、および、コイルE,Fからなるコイル対についても同様である。このように、本実施形態では、直列接続した2つのコイルと6個のトランジスタが一組となっている。
次に、第5の実施形態に係る直流モータ105の制御回路と、各コイルに流れる電流について説明する。図22は、本発明の第5の実施形態に係る直流モータの制御回路の一構成例を示す図であり、図23は、第5の実施形態に係る直流モータのスイッチング素子のオン・オフ状態の遷移を示す図である。また、図24は、第5の実施形態に係る直流モータの各コイル辺に流れる電流を説明するための図である。
図22に示す制御回路450は6個のセンサSa〜Sfの信号を受けて、スイッチング素子である18個のトランジスタTA1〜TF2のゲートへオン・オフ信号を送信する。制御回路450を構成する論理回路は、センサSa〜Sf側を上流側、トランジスタTA1〜TF2側を下流側とした場合、図22に示す第1段目451の6個のXOR回路と、第2段目452の6個のNOT回路と3個のXOR回路、第3段目453の6個のNOT回路、第4段目454の12個のAND回路と3個のNOT回路、第5段目455の18個の増幅器を備えている。
例えば、コイルAのコイル辺Aの口出線に接続されたフルブリッジを構成するトランジスタTA1とTA2に注目すると、隣り合う2つのホール素子であるセンサSfとSaからの信号が第1段目451のXOR回路に入力され、その出力は、第2段目452のNOT回路を経て、トランジスタTA1,TA2に接続された第4段目454の対となるAND回路にそれぞれ入力される。また、一方のセンサSaからの信号と正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが第2段目452のXOR回路に入力され、その出力は、対となる第4段目454のAND回路の一方に直接入力され、第3段目453のNOT回路を介して他方のAND回路に入力される。このため、トランジスタTA1,TA2に接続された第4段目454の対となるAND回路の出力値が同時に“H”になることはない。
また、コイルAのコイル辺aの口出線とコイルBのコイル辺bの接続点に接続されたハーフブリッジを構成するトランジスタTab1とTab2に注目すると、第2段目452のXOR回路に、センサSaからの信号と正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが入力され、その出力は、一方のトランジスタTab1に入力されるとともに、他方のトランジスタTab2に、第4段目454のNOT回路を介して入力される。このため、トランジスタTab1,Tab2に接続された第4段目454の対となるAND回路の出力値が同時に“H”になることはない。
さらに、コイルBのコイル辺Bの口出線に接続されたフルブリッジを構成するトランジスタTB1とTB2に注目すると、第1段目451のXOR回路には、隣り合う2つのホール素子であるセンサSaとSbからの信号が入力され、その出力は、第2段目452のNOT回路を経て、トランジスタTB1,TB2に接続された第4段目454の対となるAND回路にそれぞれ入力される。また、第2段目452のXOR回路には、一方のセンサSaからの信号と正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが入力され、その出力は、対となる第4段目454の一方のAND回路に直接入力され、他方のAND回路に、第3段目453のNOT回路を介して入力される。このため、トランジスタTB1,TB2に接続された第4段目454の対となるAND回路の出力値が同時に“H”になることはない。
図22または図24(A)の時刻t51に示すように、回転子20のN極がセンサSb,Sc,Sdに対向し、回転子20のS極がセンサSe,Sf,Saに対向している状態(以下、この状態を「ケース5」という。)とすると、センサSb,Sc,Sdの出力は“H”となり、センサSe,Sf,Saの出力は“L”となる。そして、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが正回転の論理値“H”である場合、図23の時刻t51で枠とハッチングで示すように、トランジスタTab1、TC1,TD1、Tef1,TA2,Tcd2,TF2がオン状態になり、他のトランジスタは全てオフ状態になる。そして、トランジスタTB1,TB2からなるハーフブリッジに接続されたコイルBと、トランジスタTE1,TE2からなるハーフブリッジに接続されたコイルEは、それぞれ電流が流れないブランキングコイルとなる。
これにより、直流電源60から各コイルA〜Fには、プラス電源側のトランジスタTab1、コイルA、マイナス電源側のトランジスタTA2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTC1、コイルC、マイナス電源側のトランジスタTcd2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTD1、コイルD、マイナス電源側のトランジスタTcd2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTef1、コイルF、マイナス電源側のトランジスタTF2を経由する電流が流れる。
ケース5(時刻t51)の状態においては、各コイルに流れる電流によって、図24(A)に示すように、コイル辺C,D,f,aには紙面手前から奥に向けて電流が流れ、コイル辺F,A,c,dには紙面奥から手前に向けて電流が上がれる。また、コイル辺B,b,E,eには電流が流れない。これにより、固定子10の内部には、図24(A)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺e,Bを収納したスロット位置からコイル辺b,Eを収納したスロット位置へ向う方向)の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転する。
この状態において、回転子20の磁極NSの境界線に位置するスロットに収納されたコイルB,Eの2コイルはブランキングコイルとして電流が流れないため、逆起電力が小さくなることによる過電流の影響を小さく抑えることができる。
回転子20が反時計方向に回転すると、図24(B)に示すように、回転子20のN極がセンサSc,Sd,Seに対向し、回転子20のS極がセンサSf,Sa,Sbに対向する。これにより、各トランジスタTA1〜TF2は、図23の時刻t52で示すように、時刻t51の状態から、上段のトランジスタTE1、下段のトランジスタTB2とTef2がオフ状態からオン状態となり、上段のトランジスタTC1とTef1、下段のトランジスタTF2がオン状態からオフ状態に切り替わる。
このため、直流電源60から各コイルA〜Fには、プラス電源側のトランジスタTab1、コイルA、マイナス電源側のトランジスタTA2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTab1、コイルB、マイナス電源側のトランジスタTB2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTD1、コイルD、マイナス電源側のトランジスタTcd2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTE1、コイルE、マイナス電源側のトランジスタTef2を経由する電流が流れる。また、コイルC、Fには電流が流れない。
この状態で、直流電源60から各コイルA〜Hのコイル辺A〜hには、図24(B)の時刻t52に示す電流が流れ、回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺f,Cを収納したスロット位置からコイル辺c、Fを収納したスロット位置へ向う方向)の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転を続ける。なお、時刻t51から時刻t52の間に、回転子20は2π/6、すなわち60°回転している。
さらに、回転子20が回転し、図24(C)に示す状態になると、位置検出センサ40の各センサSa〜Sfの信号出力が変化するため、図23の時刻t43に示すように、プラス電源側のトランジスタTA1〜TF1とマイナス電源側のトランジスタTA2〜TF2のオン状態にあるトランジスタが切り替わる。これによって、回転子20は正回転方向である反時計方向に回転し続ける。以降、同様の動作が継続される。また、説明は省略するが、ケース5の状態において、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが逆回転の論理値“L”であった場合、回転子20は逆回転方向である時計方向に回転し続ける。
第5の実施形態では、回転子20の磁極NSの境界線に位置するスロットに収納された2つのコイルはブランキングコイルとして直流電源60に接続されないため、逆起電力が小さくなることによって過電流が流れる影響を抑えることができる。また、コイル対をなす2つのコイルのコイル辺の接続点に接続される2つのトランジスタは、いずれか一方がオン状態となるため、各コイルに電流が流れる際は、必ず一方のコイル辺の口出線と他方のコイル辺の口出線とがトランジスタを介して直流電源に接続されることになる。このため、本実施形態は、第2の実施形態と同様に、第1の実施形態に比べて電流容量と耐圧が小さいトランジスタを使用することができる。また、固定子10のスロット数とコイル数を増やすことにより、ブランキングコイルの影響を小さくし、コイルの電流利用効率を高めることができる。
(第6の実施形態)
図25は、第6の実施形態に係る直流モータの位置検出センサと制御回路を除く等価回路である。後述する図28に示すように、本実施形態の直流モータ106の固定子10は、n(nは4m以上の整数であり、本実施形態では7)個のスロットを形成したケイ素鋼板を積層した固定子コアと、2層巻き固定子コアの各スロットに収納した7個のコイルA〜Gからなる固定子巻線を備えている。また、直流モータ106は7個のセンサSa〜Sgを有している。
隣接する7個のスロットは位相差2π/n(n=7)を有して設けられている。各コイルA〜Gは、2極機でスロット数が奇数であるため、各コイルの2つのコイル辺が180°より短い位置のスロットに収められる。このため、本実施形態ではコイルピッチは磁極ピッチより短い短節巻きとなる。また、隣接するコイルA〜Fは、2π/7(=約51.4°)の位相差を有している。
本実施形態では、コイルの数が奇数であって、隣接する2つのコイルを直列接続したコイル対と1つの単独コイルに分け、各コイル対の2つのコイルを逆方向接続している。すなわち、コイル対をなす2つのコイルの一方から他方に電流を流した場合に、この2つのコイルが共通に取り囲む領域において、逆方向の磁界が発生するように、各コイル対をなす2つのコイルの口出線が接続されている。そして、コイル対の2つのコイルの口出線の接続点と両端の口出線に、それぞれハーフブリッジを構成する2個のトランジスタの接続点に接続され、また、単独コイルの両端の口出線はそれぞれハーフブリッジをなす2つのトランジスタの接続点に接続されている。
このように、第6の実施形態はコイル数が奇数であるため、第5の実施形態に単独コイルとこの単独コイルのためのスイッチング素子を付加した構成となっている。したがって、図21に示す第5の実施形態に係る等価回路と図25に示す第6実施形態に係る等価回路から明らかなように、直流電源60に対するコイルA〜Fまでの6個のコイルとトランジスタTA1〜TF2までの18個のトランジスタの接続形態は、第5の実施形態と第6の実施形態とは同じである。また、単独コイルとなるコイルGについては、第2の実施形態と同様であり、いわゆるHブリッジあるいはフルブリッジを構成する4個のトランジスタTG1〜TG4に接続されている。
次に、第6の実施形態に係る直流モータ106の制御回路と、各コイルに流れる電流について説明する。図26は、本発明の第5の実施形態に係る直流モータの制御回路の一構成例を示す図であり、図27は、第6の実施形態に係る直流モータのスイッチング素子のオン・オフ状態の遷移を示す図である。また、図28は、第6の実施形態に係る直流モータの各コイル辺に流れる電流を説明するための図である。
図26に示す制御回路550は7個のセンサSa〜Sgの信号を受けて、スイッチング素子である22個のトランジスタTA1〜TG4のゲートへオン・オフ信号を送信する。
センサSa〜Sg側を上流側、トランジスタTA1〜TG4側を下流側とした場合、図26に示す第1段目551の7個のXOR回路と、第2段目552の7個のNOT回路と4個のXOR回路、第3段目553の7個のNOT回路、第4段目554の14個のAND回路、第5段目455の22個の増幅器を備えている。
本実施例の制御回路550を構成する論理回路は、図22に示した第5の実施形態に係る直流モータ105の制御回路450と比較して説明すると、トランジスタTA1、TA2に接続された対となるAND回路に入力されるセンサの出力が、センサSgとSaとなっている点、センサSf,Sgからの信号を受けて、コイルGに接続したトランジスタTG1〜TG4をオン・オフのため信号を出力する論理回路が付加されている点を除き、コイルA〜Fに接続された18個のトランジスタTA1〜TF2のオン・オフのための信号を生成する論理回路は論理的に同じであるため、その説明を省略する。
また、単独のコイルGについては、第2の実施形態の直流モータ102の各コイルに接続した4個のトランジスタのオン・オフのための信号を生成する論理回路と同じであるため、その説明を省略する。
図26または図28(A)の時刻t61に示すように、回転子20のN極がセンサSb,Sc,Sdに対向し、回転子20のS極がセンサSe,Sf,Sg,Saに対向している状態(以下、この状態を「ケース5」という。)とすると、センサSb,Sc,Sdの出力は“H”となり、センサSe,Sf,Sg,Saの出力は“L”となる。そして、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが正回転の論理値“H”である場合、図27の時刻t61で太枠とハッチングで示すように、トランジスタTab1、TC1,TD1、Tef1,TG3,TA2,Tcd2,TF2,TG2がオン状態になり、他のトランジスタは全てオフ状態になる。そして、トランジスタTB1,TB2からなるハーフブリッジに接続されたコイルBと、トランジスタTE1,TE2からなるハーフブリッジに接続されたコイルEは、それぞれ電流が流れないブランキングコイルとなる。
これにより、直流電源60から各コイルA〜Gには、プラス電源側のトランジスタTab1、コイルA、マイナス電源側のトランジスタTA2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTC1、コイルC、マイナス電源側のトランジスタTcd2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTD1、コイルD、マイナス電源側のトランジスタTcd2を経由する電流、プラス電源側のトランジスタTef1、コイルF、マイナス電源側のトランジスタTF2を経由する電流、および、プラス電源側のトランジスタTG3、コイルG、マイナス電源側のトランジスタTG2を経由する電流が流れる。また、コイルBとコイルEには電流が流れない。
ケース6(時刻t61)の状態においては、各コイルに流れる電流によって、図28(A)に示すように、コイル辺C,D,f,g,aには紙面手前から奥に向けて電流が流れ、コイル辺F,G,A,c,dには紙面奥から手前に向けて電流が上がれる。また、コイル辺B,b,E,eには電流が流れない。これにより、固定子10の内部には、図28(A)に示す回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向(コイル辺e,Aを収納したスロットとコイル辺f,Bを収納したスロットの中間位置からコイル辺b,Eを収納したスロット位置へ向う方向)の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転する。
この状態において、回転子20の磁極NSの境界線に位置するスロットに収納されたコイルB,Eの2コイルはブランキングコイルとして電流が流れないため、逆起電力が小さくなることによる過電流の影響を小さく抑えることができる。
回転子20が反時計方向に回転すると、図28(B)に示すように、回転子20のN極がセンサSb,Sc,Sd,Seに対向し、回転子20のS極がセンサSf,Sg,Saに対向する。回転子20は、時刻t61の状態から時刻t62の状態に時計方向に2π/(7×2)の角度移動している。これにより、各トランジスタTA1〜TG4は、図27の時刻t62で示すように、時刻t62には、時刻t61の状態から、上段のトランジスタTE1、下段のトランジスタTef2がオフ状態からオン状態となり、上段のトランジスタTef1、下段のトランジスタTF2がオン状態からオフ状態に切り替わる。
これにより、直流電源60から各コイルA〜Gには、時刻t61の状態と比べて、プラス電源側のトランジスタTE1、コイルE、マイナス電源側のトランジスタTef2を経由する電流が流れるとともに、コイルFには電流が流れない。このため、直流電源60から各コイルA〜Hのコイル辺A〜gには、図28(B)の時刻t62に示す電流が流れ、回転子20の磁極NSの境界線に沿った方向の磁界が発生する。この磁界によって、回転子20には反時計方向のトルクが作用し、回転子20は、本実施形態では正回転方向である反時計方向に回転を続ける。
以降、同様に、回転子20の回転によって、各トランジスタのオン・オフの状態は、図27の時刻t63以降に示す状態となり、各コイル辺に流れる電流は時刻t63では図28(C)、時刻t64では図28(D)に示す方向に流れる。また、説明は省略するが、ケース6の状態において、正逆回転制御入力端子70からの正逆信号Qが逆回転の論理値“L”であった場合、回転子20は逆回転方向である時計方向に回転し続ける。
本実施形態においては、第5の実施形態と同様に、回転子20の磁極NSの境界線に位置するスロットに収納された2つのコイルはブランキングコイルとして直流電源60に接続されないため、逆起電力が小さくなることによる過電流の影響を抑えることができる。また、コイル対をなす2つのコイルのコイル辺の接続点に接続される2つのトランジスタは、いずれか一方がオン状態となるため、各コイルに電流が流れる際は、必ず一方のコイル辺の口出線と他方のコイル辺の口出線とがトランジスタを介して直流電源に接続されることになる。このため、第1の実施形態に比べて電流容量と耐圧が小さいトランジスタを使用することができる。また、固定子10のスロット数とコイル数を増やすことにより、ブランキングコイルの影響を小さくし、コイルの電流利用効率を高めることができる。
(第7の実施形態)
本発明に係る直流モータの回転子は、永久磁石回転子であってもよく、また、励磁コイルを備えたものであってもよい。第7の実施形態に係る直流モータは、図示しないが、回転子として励磁コイルを備えている。励磁コイルに供給する直流電流は、スリップリングを介して回転子側に供給してもよく、また、無接触で励磁コイルに給電するために、回転子側と固定子側に同軸のコイルを設け、電磁誘導を利用して回転子側に誘起した交流電圧をダイオードブリッジによって整流し、回転子側の励磁巻線を直流駆動してもよい。本実施形態では、回転子を惰性で回転させる場合に、回転子の励磁コイルへの電流を遮断することによって、固定子側にヒステリシス損や渦電流損が発生することがない。このため、輸送機械用の直流モータとして利用する場合に、効率のよい稼働が可能となる。
以上、本発明に係る直流モータについて説明したが、2極の回転子を有する直流モータのコイル数は4つ以上あればよく、順方向接続のコイルを有する直流モータの場合は、コギングを小さくするために固定子のスロット数は奇数の方が望ましい。したがって、コイル数は5個以上の奇数であることがより望ましい。また、各実施形態では、説明を簡単にするために少ないコイル数の事例を挙げて説明したが、例えば、コイル数が18以上であることが望ましい。
そして、説明を簡単にするために、回転子の磁極数が2極の場合について説明したが、回転子の磁極数は2m(mは整数)極であってよい。その場合の固定子のスロット数は、4m以上の整数であればよい。そして、n個のコイルを、n/2m個(但し商)のスロットだけ離れたスロットに収納すればよい。その際は、コイルに流れる電流が、回転子のN極に対向するコイルのコイル辺とS極に対向するコイルのコイル辺とが異なる方向となるように、スイッチング素子の導通・非導通を切り替えるようにすればよい。
また、第5、第6の実施形態では、隣接する2つのコイルを直列接続したコイル対に分けたが、コイル数を増やした場合に、隣接する3つのコイルあるは3つ以上のコイルを直列接続したコイル群とし、このコイル群の各口出線の接続点にハーフブリッジを設ける構成とすることもできる。
また、回転子の周囲に固定子を配置したインナーロータ型の直流モータを例に説明したが、固定子の回りに回転子を配置したアウターロータ型のモータ、あるいは、アキシャルギャップ型のモータとして構成してもよい。さらに、スロットレスモータやコアレスモータとして構成することも可能である。
また、制御回路は論理回路から構成したが、例えばマイコンを用いてもよい。この場合、マイコンのメモリ内に、予め回転子20の位置に対して各トランジスタをオン・オフするゲート信号のテーブルを記憶させておき、センサからの回転子20の位置信号をマイコンに入力し、各トランジスタへのゲート信号をマイコンから出力するように構成することが可能である。この場合、位置検出センサ40としては、ホール素子以外にロータリーエンコーダやレゾルバを用いて回転子の位置を検出するようにしてもよい。
以上、本発明の直流機の例として、直流モータについて説明したが、各実施形態で説明した直流モータは、駆動条件によって従来のブラシ付き直流モータと同様に発電機としても機能させることができる。発電機として機能させる場合としては、例えば、回生制動時に回転子の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して直流電源側に戻したり、さらに、直流電源自体を負荷として充電したり、直流電源を他の負荷に置き換えることができる。本発明の直流機を発電機として機能させ、直流電源を他の負荷に置き換えることは、特許請求の範囲に記載した事項の技術的範囲に含まれるものである。