以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、特段変更等の説明がない限り、適宜その説明を省略する。
[実施形態1]
モータ駆動システム100(以下、モータシステム100とも呼ぶ)は、SRモータ1とSRモータ1を駆動するモータ駆動装置500とを備える。図1は、第1実施形態にかかるモータシステム100で使用されるSRモータ1の構成を示す一部切り欠き斜視断面図である。図2は、SRモータ1が備えるステータ2の構成を示す一部切り欠き斜視断面図である。
SRモータ1は、例えば、図1において非回転部分であるステータ2と、ステータ2に対して相対回転可能な、回転部分であるロータ4とを備える。これらステータ2とロータ4とは、径方向に所定の間隔を空けて配置されている。
ロータ4は、ロータ本体40と、複数のロータ側磁極部41とを備え、さらに、図1に示す例では、出力軸42とを備える。
出力軸42は、ロータ4の回転駆動力(回転トルク)を外部に取り出すためにロータ本体40に取り付けられた回転軸(出力軸、シャフト)である。出力軸42は、例えば、円柱状の棒状のロッド部材であり、ロータ本体40の軸芯と出力軸42の軸芯とが一致するように、ロータ本体40に固定されている。
ロータ本体40は、ロータ側磁極部41とステータ2に設けられた後述のステータ側磁極部212、232との磁気的な相互作用によって、出力軸42と共に軸芯C周りに回転する円板状あるいは円柱状の部材であり、磁性材料によって形成されている。
各ロータ側磁極部41は、ステータ2に設けられる後述の励磁コイル31、32が励磁した状態でロータ本体40が回転した場合に各ステータ側磁極部212、232との間の磁気抵抗の増減が繰り返される形状を有し、磁性材料によって形成されている。各ロータ側磁極部41は、軸芯C方向に沿って延びかつ径方向外側に突出する突条形状を有し、これらの複数のロータ側磁極部41は、ロータ本体40の外周面に周方向(回転方向、図1の例では方向Aで表わされている方向)に所定の間隔を空けて並設するようにそれぞれ設けられている。これらロータ側磁極部41は、図1に示す例では、周方向に等間隔で6個である。各ロータ側磁極部41は、その先端に、軸芯C方向視においてステータ側磁極部212、232のステータ側磁極面214、234と対応する円弧状であって、径方向外側に突出する円弧状である磁極面であるロータ側磁極面43を有する。すなわち、ロータ側磁極面43は、径方向視において、径方向外側に凸の突曲面である。また、各ロータ側磁極部41の各ロータ側磁極面43は、軸芯C方向の方向視において、出力軸42と同心となる共通(同一)の円周上に位置している。
ステータ2は、ステータ本体20と、複数のステータ側磁極部212、232と、2相に応じた2個の励磁コイル30(総称)すなわち第1相の第1系励磁コイル31および第2相の第2系励磁コイル32とを備える。なお、以下では、第1相の第1系励磁コイル31を単に励磁コイル31と呼ぶ場合がある。また、第2相の第2系励磁コイル32を単に励磁コイル32と呼ぶ場合がある。
ステータ本体20は、環状の各励磁コイル31、励磁コイル32をそれぞれ保持する例えば筒状の部材であり、磁性材料によって形成されている。この筒状のステータ本体20は、ロータ4をその回転方向に囲むと共に、その内側(軸芯C側)に各励磁コイル31、励磁コイル32を収容する。
励磁コイル30は、電力の供給を受けることによって磁場を生成する巻線であり、出力軸42の軸芯C方向に並ぶようにステータ本体20に2個配設されている。各励磁コイル31、励磁コイル32は、環形状を有し、その芯部をロータ4が挿通するように、そして、各励磁コイル31、励磁コイル32の軸とロータ4の軸とが一致するように、配置される。この各励磁コイル31、励磁コイル32は、当該SRモータ1を駆動させるために電流が供給されて励磁した場合に、スイッチトリラクタンス方式によってステータ2とロータ4との間の磁気抵抗に基づく回転力をロータ4に生じさせる。この各励磁コイル31、励磁コイル32は、その厚さ方向が各励磁コイル31、励磁コイル32の径方向を向くように(すなわち、フラットワイズに)帯状の電導線材を絶縁させつつコイル状に巻き重ねた、いわゆるパンケーキ型コイルである。
励磁コイル31は、第1相の第1系励磁コイルの一例であり、本実施形態では、1個であるが、直列接続された複数の励磁コイルであっても良い。同様に、励磁コイル32は、第2相の第2系励磁コイルの一例であり、本実施形態では、1個であるが、直列接続された複数の励磁コイルであっても良い。
各ステータ側磁極部212、232は、励磁コイル31、励磁コイル32が励磁した状態でロータ本体40が回転した場合に、ロータ側磁極部41との間の磁気抵抗の増減が繰り返される形状を有し、磁性材料によって形成されている。各ステータ側磁極部212、232は、円筒状のステータ本体20の内側周面から軸芯C側(径方向内側)に突出する突片形状を有し、これらの複数のステータ側磁極部212、232は、ステータ本体20の内側周面(回転方向)に所定の間隔を空けてそれぞれ設けられている。これらステータ側磁極部212、232は、図1および図2に示す例では、周方向に等間隔で6個である。各ステータ側磁極部212、232は、その先端に、軸芯C方向の方向視においてロータ4に沿った円弧状であって径方向外側に凹む形状を有するステータ側磁極面214、234を有する。すなわち、ステータ側磁極面214、234は、径方向視において、径方向外側に凹む凹曲面である。なお、各ステータ側磁極部212が各ステータ側磁極面214を有し、各ステータ側磁極部232が各ステータ側磁極面234を有する。各ステータ側磁極面214および各ステータ側磁極面234は、各々、軸芯C方向の方向視において、出力軸42と同心となる共通(同一)の円周上に位置している。
そして、ステータ側磁極部212、232は2個の励磁コイル31、励磁コイル32に対応して軸芯C方向に2段設けられている。より具体的には、図1および図2に示す例では、ステータ側磁極部212、232は円筒形状のステータ本体20における内側周面に周方向に沿って6個、円筒形状のステータ本体20における軸芯C方向の両端に2段の合計12個(=6個×2段)である。なお、本実施形態では、図1および図2における上側の前記端部に各ステータ側磁極部212が1段目のステータ側磁極部として設けられ、下側の前記端部にステータ側磁極部232が2段目のステータ側磁極部として設けられる。このように各段に設けられたステータ側磁極部212、232の数は、相互に等しい。また、各段におけるステータ側磁極部212、232の数は、ロータ4のロータ側磁極部41の数とそれぞれ等しく、本実施形態では6個である。
また、ステータ本体20には、その内側周面から軸芯C方向側にステータ側磁極部212、232と略同じ長さで突出するリング板形状を有する突条部22が設けられている。すなわち、ステータ本体20の内側周面からステータ側磁極部212、232の各ステータ側磁極面214、234までの長さと、ステータ本体20の内側周面から突条部22の先端面までの長さは、略同一である。なお、磁気抵抗を低減する観点から、ステータ側磁極部212、232の各ステータ側磁極面214、234とロータ側磁極部41の磁極面43との距離は、小さいほど好ましく、突条部22の先端面とロータ側磁極部41の磁極面43との距離は、小さいほど好ましい。
励磁コイル31は、第1段目のステータ側磁極部212と突条部22とによって挟まれる位置に配設され、励磁コイル32は、第2段目のステータ側磁極部232と突条部22とによって挟まれる位置に配設されている。
そして、図1および図2示すように、SRモータ1がステータ2によって所定の位相差を持つように、格段のステータ側磁極部212、232の位置は、ロータ4の回転角に対する励磁コイル31、励磁コイル32による各インダクタンスの周期変化における各位相差が機械角で25度(電気角で150度[=360度/60×25])となるように、回転方向(周方向)でずれている。より具体的には、各ステータ側磁極部212、232の周方向にける中央位置と軸芯Cとを結ぶ線を基準線Yaとし、第1段目の各ステータ側磁極部212の基準線をYa1とし、第2段目の各ステータ側磁極部232の基準線をYa2とした場合に、第1段目の各ステータ側磁極部212は、その基準線Ya1が、第2段目の各ステータ側磁極部232における周方向で互いに隣接する2個のステータ側磁極部232の各基準線Ya2、Ya2の中央の位置から例えば図1のA方向に5度(−A方向に25度)ずれて配置されている。なお、全ての第1段目のステータ側磁極部212は、前記各基準線Ya2、Ya2の中央の位置から周方向に対して同じ方向に前記A方向に5度ずれている。言い換えれば、第2段目の各ステータ側磁極部232は、その基準線Ya2が、第1段目のステータ側磁極部212における周方向で互いに隣接する2個のステータ側磁極部212の各基準線Ya1、Ya1の中央の位置から前記A方向とは逆の方向に5度ずれて配置されている。なお、全ての第2段目のステータ側磁極部232は、前記各基準線Ya1、Ya1の中央の位置から周方向に対して同じ方向に前記A方向とは逆の方向に5度ずれている。図1および図2で示す例では、各段の各ステータ側磁極部212、232は、6個であるので、周方向に60度の間隔で配設されている。このため、第1段目の各ステータ側磁極部212は、その基準線Ya1が第2段目の各ステータ側磁極部232の各基準線Ya2に対して前記A方向とは逆の方向に25度(=60度/2−5度)ずれる位置に、配置されている。言い換えれば、第2段目の各ステータ側磁極部232は、その各基準線Ya2が第1段目の各ステータ側磁極部212の各基準線Ya1に対して前記A方向に25度ずれる位置に、配置されている。
ここで説明した、各ステータ側磁極部212の基準線Ya1が第2段目の各ステータ側磁極部232の各基準線Ya2に対して前記A方向とは逆の方向に25度ずれる位置に配置されていることにより、ロータ4が停止状態から始動するときに自立駆動を可能にする。上記25度のずれに対応して、励磁コイル32の自己インダクタンスLbの回転角に対する特性は、励磁コイル31の自己インダクタンスLaの回転角に対する特性に対して、機械角αで25度だけ遅れる位相差を有する。
そして、このようなステータ本体20、突条部22およびステータ側磁極部212、232ならびにロータ本体40およびロータ側磁極部41は、上記のように、それぞれ磁性材料によって形成され、等方的な所定の磁気特性(透磁率)を有している。これらステータ本体20、突条部22およびステータ側磁極部212、232ならびにロータ本体40およびロータ側磁極部41は、電気絶縁膜で被膜された軟磁性粉末によってそれぞれ形成されている。より具体的には、ステータ本体20、突条部22およびステータ側磁極部212、232は、一体で形成されており、電気絶縁膜で被膜された軟磁性粉末を圧縮して固めることにより形成され、ロータ本体40およびロータ側磁極部41は、一体で形成されており、電気絶縁膜で被膜された軟磁性粉末を圧縮して固めることにより形成されている。本実施形態では、これらは、表面にリン酸系化成被膜等の電気絶縁被膜が形成された鉄粉によって形成されている。ここで、前記軟磁性粉末とは、強磁性の金属粉末であり、より詳しくは、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末等が挙げられる。これら軟磁性粉末は、公知の手段、例えば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法や、酸化鉄等を微粉砕した後にこれを還元する方法等によって製造することができる。また、一般に、透磁率が同一である場合に飽和磁束密度が大きいので、軟磁性粉末は、例えば、上記純鉄粉、鉄基合金粉末およびアモルファス粉末等の金属系材料であることが特に好ましい。
このような軟磁性粉末によって形成されたステータ本体20、突条部22およびステータ側磁極部212、232は、例えば、圧粉形成等の公知の常套手段によって形成される。このような軟磁性粉末によって形成されたロータ本体40およびロータ側磁極部41は、例えば、圧粉形成等の公知の常套手段によって形成される。
また、ステータ本体20、突条部22およびステータ側磁極部212、232ならびにロータ本体40およびロータ側磁極部41は、軟磁性粉末と非磁性体粉末との混合物を圧縮して固めたものであってもよい。この場合、軟磁性粉末と非磁性体粉末との混合比率を比較的容易に調整することができ、前記混合比率を適宜に調整することによって、所望の磁気特性を容易に実現することができる。また、ステータ本体20、突条部22およびステータ側磁極部212、232ならびにロータ本体40およびロータ側磁極部41は、電気絶縁膜で被膜された軟磁性粉末を結合媒体(例えば、エポキシ系樹脂等の液体または粉末等)と共に金型成型することによって形成されてもよい。
図3は、SRモータにおける1相の励磁コイルのインダクタンスの回転方向に対する特性を表わす図である。具体的には、1相分の励磁コイルの自己インダクタンスLの値とその回転方向に対する位置の一例である電気角θとの関係を示す図である。横軸は電気角θを示し、縦軸は自己インダクタンス値Lを示している。図3において、SRモータ1に備えられた励磁コイル31(または励磁コイル32)の自己インダクタンスLの値は、ロータが回転した場合にその電気角の増加方向に対して、周期的に正弦波状の特性を示す。電気角の0度は、ロータ4に含まれるロータ側磁極部41の一つと、近接するステータ2に含まれるステータ側磁極部212(またはステータ側磁極部232)との距離が最小となる場合としている。このとき、自己インダクタンスLの値は最大である。一方、自己インダクタンスLの値の最小値は、前記のロータ4に含まれるロータ側磁極部41の一つと、前記のステータ2に含まれる複数のステータ側磁極部212またはステータ側磁極部232の一つとの距離が最大となる電気角180度のときである。なお、回転方向に対する位置として、機械角が使用されても良い。本実施形態では、ステータおよびロータに含まれる前記磁極部の数が各々6極なので、電気角の360度は機械角の60度に対応する。機械角の0度、60度、120度、180度、240度、300度、360度が電気角の0度(360度)に対応する。なお、本実施形態では、特に断らない限り、回転角は機械角である。
一般的に、励磁コイルが一つの場合のSRモータが発生させるトルクTは(式1)で表される。
ただし、Iは励磁コイルに流れる励磁電流であり、Lは励磁コイルの自己インダクタンスであり、θは電気角でいう回転子の位置である。なお、(式1)において、電気角θの代わりに機械角αで偏微分を行ってもよい。これは、次式の(式2)でも同様である。
(式1)より、∂L/∂θが最大となる回転子位置で、電流Iを流した場合に、SRモータのトルクは最大となる。図3によると、自己インダクタンスは、電気角270度で∂L/∂θは最大となるため、この回転子位置で励磁電流を流すことにより、SRモータのトルクは最大となる。また、電気角が180度から360度の範囲で、∂L/∂θが正の値となることから、この電気角の範囲で励磁電流を流すことにより、SRモータのトルクは正の値となる。すなわち、電気角が180度から360度の範囲では、SRモータのロータの回転は加速する(この加速する回転方向を正回転方向と呼ぶ)。逆に、電気角が0度から180度の範囲で、∂L/∂θが負の値となることから、この電気角の範囲で電流を流すことにより、SRモータのトルクは負の値となる。すなわち、電気角が0度から180度の範囲では、SRモータのロータの回転は減速する。
(式1)により、2相の励磁コイル31、励磁コイル32を有する場合のSRモータ1が発生するトルクTは、(式2)で表される。
ただし、Iaは励磁コイル31に流れる励磁電流であり、Ibは励磁コイル32に流れる励磁電流であり、Laは励磁コイル31の自己インダクタンスであり、Lbは励磁コイル32の自己インダクタンスである。
(式2)より、回転角(電気角)θに対する励磁コイル31の自己インダクタンスLaの微分値∂La/∂θ、および回転角(電気角)θに対する励磁コイル32の自己インダクタンスLbの微分値∂Lb/∂θが最大となる回転子位置で、励磁電流Iaおよび励磁電流Ibを流した場合に、SRモータのトルクは最大となる。
図4は、モータシステム100で使用されるSRモータ1のモータ駆動装置500(以下、SRモータ駆動装置500と呼ぶ)の構成を示すブロック図である。SRモータ駆動装置500は、SRモータ1の励磁コイル31および励磁コイル32に接続され、SRモータ1におけるロータ4の回転駆動を制御する。SRモータ駆動装置500は、電源電力Pdc[w]である電源(直流電圧源)Vdcに接続するための一対の電源端子Pe(正極側端子Pe1、負極側端子Pe2)と、第1相の第1系励磁コイルである励磁コイル31および第2相の第2系励磁コイルである励磁コイル32による各インダクタンスLa、Lbの回転角に対する周期変化における各位相間に差を持つ上記2相SRモータ1の励磁コイル31および励磁コイル32それぞれに接続するための二対の接続端子Pa(正極側端子Pa1、負極側端子Pa2)、Pb(正極側端子Pb1、負極側端子Pb2)とを備える。
SRモータ駆動装置500はさらに、電源端子Peと接続端子Pa、Pbとの間に複数のスイッチング素子(図4に示す例では、スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、スイッチング素子c1、スイッチング素子c2)を有する駆動制御部510を備える。なお、複数のスイッチング素子a1〜c2は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワートランジスタなどであり、本実施形態では複数のスイッチング素子a1〜c2はIGBTである。
駆動制御部510は、複数のスイッチング素子a1〜c2の各々のオンオフを切り換えることによって、SRモータ1に含まれる励磁コイル31、励磁コイル32に流れる各励磁電流を切り換える。駆動制御部510は、後述のように、例えば、複数のスイッチング素子a1〜c2の各々のオンオフを切り換えることによって、電源端子Peから接続端子Pa、Pbを介して励磁コイル31のみに給電するための第1経路L1を形成し、次に、複数のスイッチング素子a1〜c2の各々のオンオフを切り換えることによって、電源端子Peから接続端子Pa、Pbを介して励磁コイル31および励磁コイル32のそれぞれへ給電するための第2経路L2を形成し、次に、複数のスイッチング素子a1〜c2の各々のオンオフを切り換えることによって、電源端子Peから接続端子Pa、Pbを介して励磁コイル32のみに給電するための第3経路L3を形成する。
駆動制御部510は、本実施形態では、制御回路520、記憶部530、および回転位置検出部540を備える。駆動制御部510は、入力側に直流電圧源Vdcが接続され、出力側に励磁コイル31、励磁コイル32が接続される。制御回路520は、入力側に記憶部530および回転位置検出部540が接続され、出力側に複数のスイッチング素子a1〜c2が接続される。
図4には、励磁コイル31、励磁コイル32が記載されているが、SRモータ駆動装置500に、励磁コイル31および励磁コイル32は含まれない。なお、本実施形態では、各励磁電流により励磁コイル31および励磁コイル32から発生する磁界は互いに打ち消しあう方向である。
駆動制御部510では、直列に接続されたスイッチング素子a1およびスイッチング素子a2と、直列に接続されたスイッチング素子b1およびスイッチング素子b2と、直列に接続されたスイッチング素子c1およびスイッチング素子c2とが、一対の電源端子Pe(正極側端子Pe1、負極側端子Pe2)に並列に接続されている。各スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、スイッチング素子c1、スイッチング素子c2には、それぞれフリーホイーリング用にダイオードd1、ダイオードd2、ダイオードd3、ダイオードd4、ダイオードd5、ダイオードd6が並列に接続されている。より具体的には、電源端子Peの正極側端子Pe1には、各スイッチング素子a1、スイッチング素子b1、スイッチング素子c1のドレイン端子、および、ダイオードd1、ダイオードd3、ダイオードd5のカソード端子が接続され、負極側端子Pe2には、各スイッチング素子a2、スイッチング素子b2、スイッチング素子c2のソース端子、および、ダイオードd2、ダイオードd4、ダイオードd6のアノード端子が接続される(以下では、ドレイン端子、ソース端子、カソード端子、アノード端子は、各々単にドレイン、ソース、カソード、アノードとも呼ぶ)。また、第1出力端子Paの正極側端子Pa1には、ダイオードd1のアノードおよびスイッチング素子a1のソースと、ダイオードd2のカソードおよびスイッチング素子a2のドレインとが接続される。第1出力端子Paの負極側端子Pa2および第2出力端子Pbの正極側端子Pb1は、ダイオード3のアノードおよびスイッチング素子b1のソースと、ダイオード4のカソードおよびスイッチング素子b2のドレインとが接続される。第2出力端子Pbの負極側端子Pb2は、ダイオードd5のアノードおよびスイッチング素子c1のソースと、ダイオードd6のカソードおよびスイッチング素子c2のドレインとが接続される。
制御回路520は、複数のスイッチング素子a1〜c2のオンオフを切り換える信号を出力する。制御回路520は、より具体的には、SRモータが所望の回転動作をするように、励磁コイル31に流す励磁電流と励磁コイル32に流す励磁電流を制御するために、スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、スイッチング素子c1、スイッチング素子c2の各々のスイッチング制御用端子(例えば、IGBTのゲート端子、以下単にゲートとも呼ぶ)に向けて、複数のスイッチング素子a1〜c2の各々のオンまたはオフを切り換える信号を出力する。なお、スイッチング素子がオンするとは、スイッチング素子が通電状態となることであり、スイッチング素子がオフするとは、スイッチング素子が通電を遮断する状態となることである。図4の例では、制御信号Sa1の信号線はスイッチング素子a1のゲートに接続され、制御信号Sa2の信号線はスイッチング素子a2のゲートに接続され、制御信号Sb1の信号線はスイッチング素子b1のゲートに接続され、制御信号Sb2の信号線はスイッチング素子b2のゲートに接続され、制御信号Sc1の信号線はスイッチング素子c1のゲートに接続され、制御信号Sc2の信号線はスイッチング素子c2のゲートに接続される。
本実施形態では、制御回路520は、ロータ4の回転に対する励磁コイル31の自己インダクタンスLaおよび励磁コイル32の自己インダクタンスLbの特性を用いて制御信号を出力する。さらに、制御回路520は、ロータ4の回転に対する回転位置に対応して、制御信号を出力する。この場合に、制御回路520は、ロータ4の回転位置に関する情報と励磁コイル31の自己インダクタンスLaの値との関係を表わす第1関係情報を、第1関係情報を記憶する第1記憶部から読み出して回転位置に対する励磁コイル31の自己インダクタンスLaを得ることができる。また、制御回路520は、ロータ4の回転位置に関する情報と励磁コイル32の自己インダクタンスLbの値との関係を表わす第2関係情報を、第2関係情報を記憶する第2記憶部から読み出して回転位置に対する励磁コイル32の自己インダクタンスLbを得ることができる。
記憶部530は、例えば不揮発性記憶素子であり、機能的に第1記憶部および第2記憶部を構成している。ロータ4の回転位置に関する情報は、例えば、回転方向に対する機械角αや電気角θである。前記の第1関係情報は、例えば、機械角αや電気角θに対する励磁コイル31の自己インダクタンスLaの特性であり、LUT(LookUp Table)形式で第1記憶部に記憶されている。前記の第2関係情報は、例えば、機械角αや電気角θに対する励磁コイル32の自己インダクタンスLbの特性であり、LUT形式で第2記憶部に記憶されている。以下では、第1関係情報は、機械角αに対する励磁コイル31の自己インダクタンスLaの特性であり、第2関係情報は、機械角αに対する励磁コイル32の自己インダクタンスLbの特性である。
回転方向に対する機械角αや電気角θは、回転位置検出部540から得られる検出値を用いて算出される。制御回路520は、ロータ4の回転位置に関する情報が入力される位置情報入力端子PLを有しており、位置情報入力端子PLに回転位置検出部540が接続される。
回転位置検出部540は、ロータ4の位置検出用に使用される。本実施形態では、回転位置検出部540はロータリエンコーダ540である。ロータリエンコーダ540の検出結果からロータ4の回転位置、すなわち機械角αおよび電気角θが算出される。なお、回転位置検出部540は、ロータリエンコーダに限られない。例えば、ロータ4に位置検出用の永久磁石が取り付けられて、ロータ4の回転時にホール素子で永久磁石の磁界の変化を検出して、ロータ4の回転位置が検出されても良い。また、レーザ光の光源とレーザ光を検出する光検出器とから構成される検出装置を用いて、ロータ4が有するロータ側磁極部41でロータ4が回転する毎にレーザ光を遮らせ、ロータ側磁極部41がレーザ光を遮った数が光検出器の検出結果を用いて算出されることで、ロータ4の回転が検出されても良い。
本実施形態では、制御回路520は、励磁コイル31の自己インダクタンスLaの値および励磁コイル32の自己インダクタンスLbの値に従って、複数のスイッチング素子a1〜c2への制御信号を出力するが、以下においては、制御回路520は、具体的にはロータリエンコーダ540でロータ4の位置検出を行って電気角θを算出し、第1関係情報、第2関係情報、および電気角θを使用して、ロータ4の回転位置すなわち電気角θに対応して複数のスイッチング素子a1〜c2への制御信号を出力する。このように本実施形態では、制御回路520は、ロータ4の回転位置に対応して各制御信号を出力している。
図5は、スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、スイッチング素子c1、スイッチング素子c2の各スイッチング素子の電気角θに対するオンオフの切換えを示すタイミングチャートである。すなわち、制御回路520が電気角θに対応して複数のスイッチング素子a1〜c2の各々に制御信号を出力した際の、複数のスイッチング素子a1〜c2の各々のオンオフ制御の状態を示している。図5では、上から順にスイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、スイッチング素子c1、スイッチング素子c2の各々のオンオフの切換えを示すタイミングチャートが示されており、横軸は電気角θ(時間)である。なお、図5において、複数のスイッチング素子a1〜c2の各々がオンまたはオフの状態にある期間は、期間S1〜期間S5の5つである。
図6および図7は、モータシステム100における、各期間および機械角αに対する励磁コイル31の自己インダクタンスLa、励磁コイル32の自己インダクタンスLb、励磁電流Ia、および励磁電流Ibのシミュレーション図である。図6は、本実施形態の場合におけるシミュレーション図であり、図7は比較例の場合におけるシミュレーション図である。励磁コイル31の自己インダクタンスLaは実線で表わされ、励磁コイル32の自己インダクタンスLbは破線で表わされる。励磁コイル31に流れる励磁電流Iaは一点鎖線で示され、励磁コイル32に流れる励磁電流Ibは点線で示されている。図6および図7では、紙面左側の縦軸はμH単位で表すインダクタンスであり、紙面右側の縦軸はA単位で表す励磁電流であり、横軸は機械角α(度)である。横軸は電気角θではないが、機械角が60度となる毎に電気角が1周期進むことから、機械角αから電気角θに換算することができる。
次に、本実施形態におけるモータシステム100の動作について説明する。まず、ロータ4が正回転方向に回転する場合について説明し、次に逆回転方向に回転する場合について説明する。なお、正回転方向は、所定の回転方向例えば時計回り方向であり、逆回転方向は、正回転方向とは逆の方向である。なお、図6に示した機械角αに対する各期間が移り変わるタイミングによって、SRモータ1は正回転方向に回転を行う。
図5において、制御信号によって全てのスイッチング素子がオフとなっている停止状態(期間S1)では、図6に示すように、励磁コイル31および励磁コイル32の双方ともに励磁電流は流れない。すなわち(式2)より、SRモータ1にはトルクは発生していない。
この停止状態からロータ4を正回転させる場合、図6に示すように、励磁コイル31の自己インダクタンスLaが最小となるとき、すなわち、励磁コイル31の自己インダクタンスLaが最小となる機械角αのとき、制御回路520は制御信号を出力し、スイッチング素子a1およびスイッチング素子b2がオンされ、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子c1およびスイッチング素子c2がオフされる。これによって、直流電圧源Vdcから、電源端子Peの正極側端子Pe1、スイッチング素子a1、第1出力端子Paの正極側端子Pa1、励磁コイル31、第1出力端子Paの負極側端子Pa2、スイッチング素子b2、および電源端子Peの負極側端子Pe2を介して電流が流れる第1経路L1で、励磁コイル31にのみ電源電力Pdcが供給され、励磁コイル31が励磁される(期間S2)。一方、励磁コイル32には直流電圧源Vdcから電流が流れず電源電力Pdcは供給されない。図6に示すように、期間S2では、励磁コイル31が給電された結果、励磁電流Iaが機械角α方向に対して上昇傾向を示している。一方、励磁コイル32の励磁電流Ibは機械角α方向に対して下降しているが、これはスイッチング素子b2から、ダイオードd6、第2出力端子Pbの負極側端子Pb2、励磁コイル32、および第2出力端子Pbの正極側端子Pb1を介して電流が流れるためである。
この期間S2では、機械角α方向に対して∂La/∂θが正となる。この期間S2では上述のように励磁電流Iaが流れているので、(式2)より、SRモータ1は正回転を促す方向にトルクが発生し、ロータ4が正回転している場合にはロータ4が回転を加速し、回転始動時の場合にはロータ4が正回転方向に向けて回転を開始する。
ロータ4が正回転方向に回転し、図6に示すように、励磁コイル31の自己インダクタンスLaの回転角に対する変化の度合いが最も大きいとき、すなわち、∂La/∂θが最大となる機械角αのとき、制御回路520は制御信号を出力し、スイッチング素子a1およびスイッチング素子c2がオンされ、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、およびスイッチング素子c1がオフされる。これによって、直流電圧源Vdcから、電源端子Peの正極側端子Pe1、スイッチング素子a1、第1出力端子Paの正極側端子Pa1、励磁コイル31、第1出力端子Paの負極側端子Pa2、第2出力端子Pbの正極側端子Pb1、励磁コイル32、第2出力端子Pbの負極側端子Pb2、スイッチング素子c2、および電源端子Peの負極側端子Pe2を介して電流が流れる第2経路L2で、励磁コイル31および励磁コイル32の両方に電源電力Pdcが供給され、励磁コイル31および励磁コイル32が励磁される(期間S3)。図6に示すように、期間S3では、励磁コイル31と励磁コイル32に給電がされた結果、機械角α方向に対して励磁電流Ibが上昇している。一方、励磁コイル31の励磁電流Iaは、機械角α方向に対して一旦急減してから、励磁電流Ibと同じ電流値で機械角α方向に対して上昇している。励磁電流Iaの減少は、電源電力Pdcに対して、励磁コイル31に加えて励磁コイル32が追加されてことで励磁コイル32の抵抗負荷が増加したためである。
この期間S3では機械角α方向に対して励磁コイル31の自己インダクタンスLaにおける∂La/∂θが正となっている。期間S3では上述のように励磁電流Iaが流れているので、(式2)より、SRモータ1は正回転を促す方向にトルクが発生し、ロータ4が正回転方向に向けて回転を加速する。なお、励磁電流Ibは流れているが、機械角α方向に対する∂Lb/∂θは小さく、(式2)の励磁コイル32に対応する項すなわち第2項目のトルクへの影響は些少である。
期間S3では、次の期間S4において励磁コイル32による正回転を促すトルクが大きくなるように、期間S4における励磁コイル32に流れる励磁電流Ibを大きくしておく目的から、励磁コイル32にも通電が開始される。なお、励磁電流Ibが流れても、上述のように、機械角α方向に対する∂Lb/∂θは小さいため、励磁コイル32における減速方向のトルクの影響は些少である。よって、次の期間S4において励磁コイル32による正回転を促すトルクが大きくできることから、SRモータ1のモータ効率を向上させることができる。
加えて、上述の様に、α方向に対して即ち時間変化に対して励磁電流Iaが一旦減少している区間があることから、dIa/dtが負となり、励磁コイル31には逆起電力Vaが発生している(第1出力端子Paの正極側端子Pa1の電位よりも負極側端子Pa2の電位の方が高くなる)。すると、直流電圧源Vdcの出力電圧値をV0[v]とした場合、この逆起電力Vaにより、直流電圧源Vdc、励磁コイル31および励磁コイル32を含む電気回路には、(V0+Va)[v]の電圧が印加されている。この(V0+Va)[v]の電圧の印加により、期間S3において、励磁コイル32に流れる励磁電流Ibをさらに大きくすることができ、結果、期間S4において励磁コイル32による正回転を促すトルクがさらに大きくできることから、SRモータ1のモータ効率をさらに向上させることができる。
ロータ4が正回転方向に回転し、図6に示されているように、励磁コイル32の自己インダクタンスLbが最小となるとき、すなわち、励磁コイル32の自己インダクタンスLbが最小となる機械角αのとき、制御回路520は制御信号を出力し、スイッチング素子b1およびスイッチング素子c2がオンされ、スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b2、およびスイッチング素子c1がオフされる。これによって、直流電圧源Vdcから、電源端子Peの正極側端子Pe1、スイッチング素子b1、第2出力端子Pbの正極側端子Pb1、励磁コイル32、第2出力端子Pbの負極側端子Pb2、スイッチング素子c2、および電源端子Peの負極側端子Pe2を介して電流が流れる第3経路L3で、励磁コイル32のみへ電源電力Pdcが供給される(期間S4)。一方、励磁コイル31には直流電圧源Vdcから電流が流れず電源電力Pdcは供給されない。図6に示されているように、期間S4では、励磁コイル32のみに給電された結果、機械角α方向に対して励磁電流Ibが上昇傾向を示している。なお、励磁電流Iaは機械角α方向に対して減少しつつも励磁コイル31に若干電流が流れている。これは、スイッチング素子c2と、ダイオードd2とを介して、励磁コイル31からの電流の還流が起こっているためである。これにより、励磁コイル31に蓄えられた磁気エネルギーを放出でき、∂La/∂θが負となる領域で励磁電流Iaをゼロとなる。
この期間S4では機械角α方向に対して∂Lb/∂θが正となる。期間S4では上述のように励磁電流Ibが流れているので、(式2)より、SRモータ1は正回転を促す方向にトルクが発生し、ロータ4が正回転方向に向けて回転を加速する。なお、励磁電流Iaが若干流れており、その後∂La/∂θが負となるときには励磁電流Iaはゼロに近い値となっている。これにより、(式2)の励磁コイル31に対応する項すなわち第1項目は若干正の値となる。
ロータ4が正回転方向に回転し、図6に示されているように、励磁コイル32のインダクタンスの回転方向に対する変化の度合いが最も大きいときであり、すなわち、∂Lb/∂θが最大となる機械角αのとき、制御回路部520bは制御信号を出力し、スイッチング素子c2がオンされ、スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、およびスイッチング素子c1がオフされる。これによって、励磁コイル32が所謂フリーホイーリング状態となって、励磁コイル32に蓄えられた磁気エネルギーが、励磁コイル32から第2出力端子Pbの負極側端子Pb2、スイッチング素子c2、ダイオードd4、および第2出力端子Pbの正極側端子Pb1を介して電流が励磁コイル32に戻る第4経路L4で、放出される(期間S5)。すなわち、制御回路520は、第1出力端子Paおよび第2出力端子Pbの両方に電源電力Pdcを供給させない制御信号を出力する一方、上記励磁コイル32をフリーホイーリング状態とする制御信号を出力する。これにより、励磁コイル32への電源電力Pdcの供給が停止され、励磁コイル31および励磁コイル32への電源電力Pdcの給電は遮断される。一方、図6に示されているように、期間S5では、励磁電流Ibは機械角α方向に対して減少しつつも若干電流が流れている。これは、スイッチング素子c2と、ダイオードd4、および、ダイオードd2とを介して、励磁コイル32から還流により電流が流れていることを示している。このように、還流する電流は励磁コイル31にも流れており、図6によると励磁電流Iaが機械角α方向に対して増加して、その後減少する。
この期間S5では機械角α方向に対して励磁コイル32の自己インダクタンスLbにおける∂Lb/∂θが正となっている。期間S5では上述のように励磁電流Ibが流れているので、(式2)より、SRモータ1は正回転を促す方向にトルクが発生し、ロータ4が正回転方向に向けて回転を加速する。なお、励磁電流Iaは流れているが、機械角α方向に対する∂La/∂θは小さく、(式2)の励磁コイル31に対応する項すなわち第1項目のトルクへの影響は些少である。よって、期間S5では、励磁コイル32によりロータ4の正回転方向の加速を促す方向にトルクが加わり、ロータ4の正回転方向に向けた回転が加速できる上、励磁電流Ibを還流により減少させることができるので、次に遷移する∂Lb/∂θが負となる期間S2において、励磁電流Ibが残留しないで済み、回転を減速させる方向にリラクタンストルクが発生しないで済むことができる。
この後、期間5から期間2へと移り、制御回路520は、期間S2で説明した制御信号を出力する。上述のように、期間S1から期間S2、期間S3、期間S4、及び期間S5と順番に期間が移り、期間S5からは再び期間S2へ移り、その後は上記の期間S2から期間S3、期間S4、及び期間S5への期間の遷移を1サイクルとして当該サイクルが繰り返される。なお、期間S5からは期間S1へ移ってもよい。この場合、期間S1から期間S2、期間S3、期間S4、及び期間S5の遷移が1サイクルとなる。
以上の動作により、本実施形態におけるモータシステム100のモータ効率は、55.6%である。なお、モータ効率は、モータの仕事量を模した抵抗における消費電力に対する励磁コイルの両端電圧および励磁コイルを流れる電流から求めた電力の比によって、計算された値である。
次に、比較例について説明する。この比較例では、図1〜図4を用いて説明した本実施形態と同様のモータシステムを用い、スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、スイッチング素子c1、スイッチング素子c2の各スイッチング素子のオンオフの切り換えの仕方が本実施形態とは異なっている。より具体的には、比較例では、電源電力Pdcが、励磁コイル31または励磁コイル32の一方にのみ供給され、励磁コイル31および励磁コイル32の両方に供給されない。すなわち、比較例では、期間S3が設けられていない。
この比較例では、図7に示すように、上述の期間S1から期間S2、および期間S4と順番に移るように複数のスイッチング素子a1〜c2の各々が制御され、そして期間S4からは再び期間S2へ戻り、その後はこの動作が繰り返される。
以上の動作により、比較例におけるモータシステムのモータ効率は、42.3%である。このように比較例におけるモータシステムのモータ効率は、上記の本実施形態におけるモータ効率の55.6%よりも低くなる。本実施形態のモータシステム100では、期間S3の説明で述べた理由により、モータ効率を向上させることができる。
なお、比較例では期間S5への遷移を行っていないが、変形例の箇所で述べているように、期間S5の期間が設けられないことで、モータ効率が若干低下した程度であり、期間S5の期間が設けられたとしても、比較例のモータ効率は42.3%程度の値となり、上記の本実施形態におけるモータ効率の55.6%に大きく近づくことはないと考えられる。
次に、SRモータ1が逆回転方向に回転する場合について説明する。
SRモータ1が逆回転方向に回転する場合であっても、制御回路520が出力する各制御信号は、SRモータ1が正回転方向に回転する場合の説明で用いた図5を使用することができる。すなわち、SRモータ1が逆回転方向に回転する場合であっても、期間S1から期間S2、期間S3、期間S4、及び期間S5と順番に期間が遷移し、期間S5からは再び期間S2へ遷移し、各期間においてオンオフさせるスイッチング素子は、SRモータ1が正回転方向に回転する場合と同様である。
しかし、SRモータ1が逆回転方向に回転する場合には、各期間を移らせるタイミングが、図6を用いて説明を行ったSRモータ1が正回転方向に回転するタイミングとは異なる。つまり、SRモータ1が逆回転方向に回転する場合には、制御回路520が出力する制御信号のタイミングは、SRモータ1が正回転方向に回転する場合のタイミングとは異なる。このタイミングの違いにより、期間S2においてロータ4が回転始動時に回転を始める方向と、その後のロータ4の回転を加速する方向が、逆回転の方向となる。
以下において、ロータ4に逆回転させるための各期間が移るタイミングについて説明する。
制御信号によって全てのスイッチング素子がオフとなっている停止状態(期間S1)では、励磁コイル31および励磁コイル32の双方ともに励磁電流は流れない。すなわち(式2)より、SRモータ1にはトルクは発生していない。
この停止状態からロータ4を逆回転させる場合、励磁コイル31の自己インダクタンスLaが最大となるとき、すなわち、励磁コイル31の自己インダクタンスLaが最大となる機械角αのとき、制御回路520は制御信号を出力し、スイッチング素子a1およびスイッチング素子b2がオンされ、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子c1およびスイッチング素子c2がオフされる。これによって、直流電圧源Vdcから、電源端子Peの正極側端子Pe1、スイッチング素子a1、第1出力端子Paの正極側端子Pa1、励磁コイル31、第1出力端子Paの負極側端子Pa2、スイッチング素子b2、および電源端子Peの負極側端子Pe2を介して電流が流れる第1経路L1で、励磁コイル31にのみ電源電力Pdcが供給され、励磁コイル31が励磁される(期間S2)。一方、励磁コイル32には直流電圧源Vdcから電流が流れず電源電力Pdcは供給されない。
この期間S2では、機械角α方向に対して∂La/∂θが負となる。この期間S2では上述のように励磁電流Iaが流れているので、(式2)より、SRモータ1は逆回転を促す方向にトルクが発生し、ロータ4が逆回転している場合にはロータ4が回転を加速し、回転始動時の場合にはロータ4が逆回転方向に向けて回転を開始する。
ロータ4が逆回転方向に回転し、励磁コイル31の自己インダクタンスLaの回転角に対する変化の度合いが最も小さいとき、すなわち、∂La/∂θが最小となる機械角αのとき、制御回路520は制御信号を出力し、スイッチング素子a1およびスイッチング素子c2がオンされ、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、およびスイッチング素子c1がオフされる。これによって、直流電圧源Vdcから、電源端子Peの正極側端子Pe1、スイッチング素子a1、第1出力端子Paの正極側端子Pa1、励磁コイル31、第1出力端子Paの負極側端子Pa2、第2出力端子Pbの正極側端子Pb1、励磁コイル32、第2出力端子Pbの負極側端子Pb2、スイッチング素子c2、および電源端子Peの負極側端子Pe2を介して電流が流れる第2経路L2で、励磁コイル31および励磁コイル32の両方に電源電力Pdcが供給され、励磁コイル31および励磁コイル32が励磁される(期間S3)。
この期間S3では機械角α方向に対して励磁コイル31の自己インダクタンスLaにおける∂La/∂θが負となる。期間S3では上述のように励磁電流Iaが流れているので、(式2)より、SRモータ1は逆回転を促す方向にトルクが発生し、ロータ4が逆回転方向に向けて回転を加速する。
期間S3では、次の期間S4において励磁コイル32による逆回転を促すトルクが大きくなるように、期間S4における励磁コイル32に流れる励磁電流Ibを大きくしておく目的から、励磁コイル32にも通電が開始される。なお、励磁電流Ibが流れても、上述のように、機械角α方向に対する∂Lb/∂θは小さいため、励磁コイル32における減速方向のトルクの影響は些少である。よって、次の期間S4において励磁コイル32による逆回転を促すトルクが大きくできることから、SRモータ1のモータ効率を向上させることができる。
なお、逆回転方向の場合でも正回転方向の場合と同様に、電源電力Pdcに対して、励磁コイル31に加えて励磁コイル32が追加されてことで励磁コイル32の抵抗負荷が増加したため、励磁電流Iaが減少する(dIa/dtが負となる)区間が存在しうる。よって、逆回転方向の場合でも、励磁コイル31に逆起電力Vaが発生しうる。すると、この逆起電力Vaにより、直流電圧源Vdc(出力電圧値はV0[v])、励磁コイル31および励磁コイル32を含む電気回路には、(V0+Va)[v]の電圧が印加される。この(V0+Va)[v]の電圧の印加により、期間S3において、励磁コイル32に流れる励磁電流Ibをさらに大きくすることができ、結果、期間S4において励磁コイル32による逆回転を促すトルクがさらに大きくなしえることから、SRモータ1のモータ効率をさらに向上させることが可能となりうる。
ロータ4が逆回転方向に回転し、励磁コイル32の自己インダクタンスLbが最大となるとき、すなわち、励磁コイル32の自己インダクタンスLbが最大となる機械角αのとき、制御回路520は制御信号を出力し、スイッチング素子b1およびスイッチング素子c2がオンされ、スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b2、およびスイッチング素子c1がオフされる。これによって、直流電圧源Vdcから、電源端子Peの正極側端子Pe1、スイッチング素子b1、第2出力端子Pbの正極側端子Pb1、励磁コイル32、第2出力端子Pbの負極側端子Pb2、スイッチング素子c2、および電源端子Peの負極側端子Pe2を介して電流が流れる第3経路L3で、励磁コイル32のみへ電源電力Pdcが供給される(期間S4)。一方、励磁コイル31には直流電圧源Vdcから電流が流れず電源電力Pdcは供給されない。
この期間S4では機械角α方向に対して∂Lb/∂θが負となる。期間S4では上述のように励磁電流Ibが流れているので、(式2)より、SRモータ1は逆回転を促す方向にトルクが発生し、ロータ4が逆回転方向に向けて回転を加速する。
ロータ4が逆回転方向に回転し、励磁コイル32のインダクタンスの回転方向に対する変化の度合いが最も小さいときであり、すなわち、∂Lb/∂θが最小となる機械角αのとき、制御回路520は制御信号を出力し、スイッチング素子c2がオンされ、スイッチング素子a1、スイッチング素子a2、スイッチング素子b1、スイッチング素子b2、およびスイッチング素子c1がオフされる。これによって、励磁コイル32が所謂フリーホイーリング状態となって、励磁コイル32に蓄えられた磁気エネルギーが、励磁コイル32から第2出力端子Pbの負極側端子Pb2、スイッチング素子c2、ダイオード4、および第2出力端子Pbの正極側端子Pb1を介して電流が励磁コイル32に戻る第4経路L4で、放出される(期間S5)。すなわち、制御回路520は、第1出力端子Paおよび第2出力端子Pbの両方に電源電力Pdcを供給させない制御信号を出力する一方、上記励磁コイル32をフリーホイーリング状態とする制御信号を出力する。これにより、励磁コイル32への電源電力Pdcの供給が停止され、励磁コイル31および励磁コイル32への電源電力Pdcの給電は遮断される。
この期間S5では機械角α方向に対して励磁コイル32の自己インダクタンスLbにおける∂Lb/∂θが負となる。期間S5では上述のように励磁電流Ibが流れているので、(式2)より、SRモータ1は逆回転を促す方向にトルクが発生し、ロータ4が逆回転方向に向けて回転を加速する。よって、期間S5では、励磁コイル32によりロータ4の逆回転方向の加速を促す方向にトルクが加わり、ロータ4の逆回転方向に向けた回転が加速できる上、励磁電流Ibを還流により減少させることができるので、次に遷移する∂Lb/∂θが正となる期間S2において、励磁電流Ibが残留しないで済み、回転を減速させる方向にリラクタンストルクが発生しないで済むことができる。
この後、期間5から期間2へと移り、制御回路520は、期間S2で説明した制御信号を出力する。上述のように、期間S1から期間S2、期間S3、期間S4、及び期間S5と順番に期間が移り、期間S5からは再び期間S2へ移り、その後は上記の期間S2から期間S3、期間S4、及び期間S5への期間の遷移を1サイクルとして当該サイクルが繰り返される。なお、期間S5からは期間S1へ移ってもよい。この場合、期間S1から期間S2、期間S3、期間S4、及び期間S5の遷移が1サイクルとなる。
以上の動作により、本実施形態におけるモータシステム100におけるモータ効率は、回転方向が正回転方向の場合と異なるだけであるので、実施形態1と同様の値となる。
上記の構成により、駆動制御部510が、励磁コイル31における回転角に対するインダクタンスLaの微分値が最大または最小となるタイミングで、第1経路L1から第2経路L2へ切り換えた後は、インダクタンスLaの微分値が正から負へ向かい(インダクタンスLaの微分値が最大となった後の場合)、または負から正へ向かう(インダクタンスLaの微分値が最小となった後の場合)。一方、励磁コイル31のインダクタンスLaの回転角に対する周期変化と、励磁コイル32のインダクタンスLbの回転角に対する周期変化との間には位相差が存在する。よって、この位相差によっては、励磁コイル31で発生するトルクにおいて、例えば正回転方向に加速する区間(本実施形態では、励磁コイル31のインダクタンスLaの微分値が正の区間)だけ使用し、励磁コイル32で発生するトルクにおいて、同じく正回転方向に加速する区間(本実施形態では、励磁コイル32のインダクタンスLbの微分値が正の区間)だけ使用することができる。なお、励磁コイル31または励磁コイル32の何れかで発生するトルクが正回転方向とは逆の逆回転方向となる場合でも、すなわちその励磁コイルのインダクタンスの微分値が負となる場合でも、その微分値が比較的小さいとき(例えば、ゼロに近いとき)、既に述べたように、その励磁コイルに励磁電流を流すことができる。
よって、一方の励磁コイルに励磁電流が通電されて当該一方の励磁コイルのトルクが正回転方向の向きに加速し、他方の励磁コイルのトルクが逆回転方向に加速する場合でも、位相差によってはその他方の励磁コイルのインダクタンスの微分値が比較的小さい場合、その他方の励磁コイルに励磁電流を流してもそのトルクが小さくなるから正回転方向に対する減速の影響は少ない。そして、その後にその他方の励磁コイルのインダクタンスの微分値はその他方の励磁コイルのトルクが正回転方向の向きに加速する方向へと変化するので、その変化した当初から励磁電流が流れていることから、その他方の励磁コイルのトルクを効率よく使用することができ、SRモータ1のモータ効率を向上させることができる。すなわち、位相差によっては2つの励磁コイルの励磁電流を同時に通電させることで、SRモータ1のモータ効率を向上させることができる。
上述のように、回転角θに対するインダクタンスの微分値が最大または最小となるタイミング以後は、インダクタンスの微分値が正から負、または負から正へ向かうので、その間にインダクタンスの微分値がゼロに近くなる区間が存在する。よって、励磁コイル31における回転角に対するインダクタンスの微分値(∂L/∂θ)が最大または最小となるタイミングで、第1経路から、励磁コイル31および励磁コイル32の両方へ給電するための第2経路へ切り換えた場合、位相差によっては、SRモータ1のモータ効率を向上させることができる。本実施形態では、上述のように電気角で150度の位相差があり、励磁コイル31のインダクタンスLaおよび励磁コイル32のインダクタンスLbの波形が図6に示すようになっており、ロータ4を正回転させる場合の期間S3の説明の箇所(および逆回転させる場合の期間S3の説明の箇所)で述べた効果を奏することができる。
さらに、上記の構成により、第2経路L2から第3経路L3へ切り換える具体的なタイミングを提供できるので、モータ効率を向上させるより具体的な構成のモータ駆動装置500を提供することができる。
さらに、上記の構成により、励磁コイル32をフリーホイーリング状態にするための第4経路L4をさらに形成するので、励磁コイル32に蓄えられた磁気エネルギーをフリーホイーリングによって放出させることができる。また、励磁コイル32における回転角に対するインダクタンスLbの微分値が最大となった後に当該微分値が正から負となったときに(または励磁コイル32における回転角に対するインダクタンスLbの微分値が最小となった後に、当該微分値が負から正になったときに)、励磁コイル32からの磁束によるトルクの向きが変わり、ロータ4の回転を減速する方向のトルクが発生する。上記の構成により、その回転を減速する方向のトルクが発生するときに、励磁コイル32に流れる電流をゼロとできるので、ロータ4の回転を減速させることを回避することができる。
上記実施形態のようなモータ駆動システムは、上記の各モータ駆動装置を備えることで、上記の効果を奏するので、モータ効率を向上させるモータ駆動システムを提供することができ、モータ駆動システムにおける消費電力を低減させることができる。
変形例として、例えば、上記実施形態では期間5から期間2へと期間が移ったが、期間S5への遷移が行われなくてもよい。この場合、励磁コイル32のインダクタンスの回転方向に対する変化の度合いが最も大きいとき、すなわち、∂Lb/∂θが最大となる機械角αのときに、制御回路520は、期間4における制御信号から期間5における制御信号への切換えを行わず、期間4における制御信号から期間2における制御信号への切換えを行う。
期間S5へ遷移しないことで、励磁コイル32の励磁電流Ibを還流させて減少させることはできないので、∂Lb/∂θが負となる期間2において、(式2)よりロータ4を減速させる方向のトルクを発生させる可能性が考えられる。しかし、期間S2において、励磁電流Ibがゼロになるまでの間の時間では、励磁コイル32における∂Lb/∂θの値はゼロに近くなるため、(式2)よりロータ4を減速させる方向のトルクは小さく、モータ効率における影響も小さいと考えられる。よって、期間S5への遷移を行わない場合でも、上記比較例におけるモータ効率に対して、上記2つの実施形態におけるモータ効率を高く維持することができ、さらに期間S5への遷移を行わないため制御が簡単になる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。