以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(検波領域を光軸調整及び視差調整に応じて設定する例)
2.第2の実施の形態(検波領域を光軸調整のみに応じて設定する例)
3.他の実施の形態
<1.第1の実施の形態>
[1−1.複眼撮像装置の構成]
図1に示す複眼撮像装置1は、コントロールユニット2によって2個の撮像ユニット3A及び3Bを制御しながら所定の撮像対象を撮像する複眼撮像を行うことにより、立体画像を構成する2系統の画像信号を生成するようになされている。
コントロールユニット2は、全体を統括制御するシステムコントローラ5、ユーザの操作を受け付ける操作部6及び種々の情報を表示する表示部7等を有している。
システムコントローラ5は、図2に示すように、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)11を中心に構成されており、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13及び不揮発性メモリ14がバス15を介して接続されている。
CPU11は、ROM12や不揮発性メモリ14から所定の基本プログラムや複数画像調整制御プログラム等の各種プログラムを読み出し、RAM13をワークメモリ等として用いながら、これらのプログラムを実行するようになされている。
因みに不揮発性メモリ14は、撮像ユニット3A及び3Bそれぞれにおける焦点制御や露出制御のような画像調整処理に必要な値等、当該撮像ユニット3A及び3Bの制御に用いる種々の値を記憶している。
またCPU11は、通信インタフェース(I/F)16を介して撮像ユニット3A及び3Bの各部に対して各種制御信号等を送信すると共に、当該撮像ユニット3A及び3Bの各部から種々の情報を取得するようになされている。
操作部6(図1)は、例えば各種操作ボタンやタッチパネル等でなり、ユーザの操作内容に応じた操作信号を生成してシステムコントローラ5へ供給する。この操作部6には、例えば撮像処理を開始又は終了する撮像ボタン、各種メニューを操作するカーソルボタン、画像の倍率を調整するズームレバー、及び立体視したときの奥行感を変化させるべく左右の視差量を調整する視差量調整ダイヤル等が設けられている。
表示部7は、例えば液晶パネルで構成されており、システムコントローラ5から供給される表示信号に基づいた表示画面を表示することにより、撮像ユニット3A及び3Bにより撮像した画像や各種設定内容等の種々の情報をユーザに提示する。
撮像ユニット3Aは、コントロールユニット2の制御に基づいて撮像対象(図示せず)を撮像ユニット3Bと異なる視点から撮像し、1系統の画像信号を生成するようになされている。因みに撮像ユニット3Aは、右目に対応する画像信号を生成する。
この撮像ユニット3Aは、撮像対象等から得られる撮像光を光学調整部20Aにより光学的に調整し、撮像素子24Aにより撮像する。すなわち撮像ユニット3Aは、ズームレンズ21Aにより撮像光を所望のズーム倍率で拡大し、絞り22Aにより撮像光の光量を減光し、フォーカスレンズ23Aにより焦点を調整する。
このときコントロールユニット2のシステムコントローラ5は、レンズドライバ31Aを介して、ズームレンズ21Aにおける拡大率、絞り22Aの絞り量、及びフォーカスレンズ23における焦点位置をそれぞれ制御する。またシステムコントローラ5は、タイミングジェネレータ32Aを介して撮像素子24Aのシャッター速度を制御する。
撮像素子24Aは、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)で構成され、各画素に補色系又は原色系のカラーフィルタが設けられており、各画素を補色又は原色の色信号で表した撮像信号を生成するようになされている。実際上撮像素子24Aは、入射される撮像光をタイミングジェネレータ32Aの制御に基づいた周期で光電変換することによりアナログの画像信号V1Aを生成し、これをアナログ信号処理部25Aへ供給する。
アナログ信号処理部25Aは、画像信号V1Aを相関二重サンプリングした後、システムコントローラ5の制御に基づき画像信号V1Aのゲイン(利得)を調整することにより画像信号V2Aを生成し、これをA/D(Analog/Digital)変換器26Aへ供給する。
A/D変換器26Aは、アナログの画像信号V2Aをアナログディジタル変換することによりディジタルの画像信号V3Aを生成し、これをディジタル信号処理部27Aへ供給する。
ディジタル信号処理部27Aは、例えばディジタルシグナルプロセッサにより構成されており、画像信号V3Aに対しシステムコントローラ5の制御に基づいた種々の画像調整処理を施す。ここで施される画像調整処理には、例えばホワイトバランス補正処理やガンマ補正処理等、撮像後の画像信号に対する様々な処理が含まれる。
さらにディジタル信号処理部27Aは、画像信号V3Aのうち最終的な画像として切り出すべき領域(以下これを切出領域と呼ぶ)の画像を切り出して画像信号V4Aとし、これをメモリ8へ供給する。
メモリ8は、画像信号V4Aを一時的に記憶した後、これを記憶部9へ供給する。記憶部9は、例えば光ディスクドライブや磁気ディスクドライブ、或いはフラッシュメモリ等でなり、順次供給される画像信号V4Aを記憶する。また記憶部9は、システムコントローラ5からの要求に応じて、記憶している画像信号4を読み出してメモリ8へ供給するようになされている。
またディジタル信号処理部27Aは、画像信号V3Aにより表される画像のうち所定領域内の画素値を基に、当該画像信号V3Aを調整する際に用いる複数種類の検出値を生成し、これをシステムコントローラ5へ供給するようになされている(詳しくは後述する)。
システムコントローラ5は、これらの検出値を基に、レンズドライバ31A及びタイミングジェネレータ32Aを介してズーム制御、絞り制御、焦点制御及びシャッター速度制御等の各種制御を行うようになされている。
このように撮像ユニット3Aは、コントロールユニット2の制御に基づき、一般的なビデオカメラ等と同様に撮像対象を撮像して画像信号V4Aを生成するようになされている。以下では、コントロールユニット2の制御に基づき撮像ユニット3Aにより撮像対象の画像信号V4Aを生成する処理を単眼撮像処理とも呼ぶ。
一方撮像ユニット3Bは、撮像ユニット3Aと同様に構成されており、コントロールユニット2の制御に基づき、撮像対象を撮像ユニット3Aと僅かに異なる位置及び方向から撮像することにより、画像信号V4Aと対応する画像信号V4Bを生成する。因みに撮像ユニット3Bは、左目に対応する画像信号を生成する。
このときコントロールユニット2は、撮像ユニット3A及び3Bに対するズーム制御、絞り制御、焦点制御及びシャッター速度制御等の各種制御を連動させることにより、画像信号V4A及びV4Bに関する焦点位置や露出等の種々の調整値を統括的に制御する複眼撮像制御を行う。
かくして撮像ユニット3A及び3Bにより生成された画像信号V4A及びV4Bは、それぞれを右眼用及び左眼用の画像とする立体画像を表すものとなる。
このように複眼撮像装置1は、コントロールユニット2によって撮像ユニット3A及び3Bを連動させるよう制御して複眼撮像処理を行うことにより、立体画像を表す画像信号V4A及びV4Bをそれぞれ生成するようになされている。
ところで撮像ユニット3A及び3Bは、その製造調整工程等において、撮像素子24A及び24Bによるそれぞれの撮像領域が互いに一致するよう、光学調整部20A及び20Bの光軸がそれぞれ調整されるものの、調整誤差が生じる場合がある。
この調整誤差がある場合、撮像ユニット3A及び3Bでは、光学調整部20A及び20Bの光軸がずれることにより互いの撮像領域にずれが生じてしまう。このような撮像領域のずれは、ズームレンズ21A及び21Bによる拡大率を高めた場合、すなわち操作部6のズームレバーにより高いズーム倍率に設定された場合に、より顕著に表れることになる。
一方、撮像領域のずれは、画像信号V3A及びV3Bからの切出領域をそれぞれ移動させて最終的な画像信号V4A及びV4Bの撮像領域をほぼ一致させる処理(以下これを光軸補正処理と呼ぶ)により、実質的に解消することができる。
そこで複眼撮像装置1の製造調整工程では、設定されたズーム倍率と切出領域の適切な移動量(以下これを光軸補正量と呼ぶ)との関係が測定された上で、両者の関係を表す光軸補正テーブルが生成されるようになされている。そしてこの光軸補正テーブルは、システムコントローラ5の不揮発性メモリ14(図2)に記憶される。
[1−2.画像調整処理]
次に、コントロールユニット2のシステムコントローラ5と、撮像ユニット3A及び3Bのディジタル信号処理部27A及び27Bとによる、画像信号V3A及びV3Bが表す画像の調整処理について説明する。
システムコントローラ5は、所定の撮像処理プログラムを実行することにより、例えば図3に示すように内部で種々の機能を実現する。またディジタル信号処理部27A及び27Bは、予めプログラムされることにより、図3に示す各機能を実現するように設定されている。
まずシステムコントローラ5は、切出拡縮制御部40により、画像信号V3A及びV3Bの切出領域をそれぞれ設定する。具体的に切出拡縮制御部40の光軸補正制御部41A及び41Bは、光軸補正処理として、不揮発性メモリ14から光軸補正テーブルを読み出し、このときのズーム倍率に応じた光軸補正量を決定して第1の領域としての切出領域TA1及びTB1を設定する。
ここで図4(A)は、画像信号V3A及びV3Bにより表される画像の全領域である原画像MA及びMBと、互いに対応する撮像対象JA及びJBとを模式的に表している。
図4(A)において、原画像MAにおける撮像対象JAの相対位置と、原画像MBにおける撮像対象JBの相対位置とは互いに相違する。その一方で、切出領域TA1における撮像対象JAの相対位置及び切出領域TB1における撮像対象JBの相対位置は、いずれもほぼ中央であり、互いに一致している。
次に切出拡縮制御部40の視差量制御部42は、光軸補正処理により設定された切出領域を基に、画像信号V4A及びV4Bを立体視したときに得られる奥行感を調整するべく、再度切出領域を設定するようになされている。以下では、このような処理を視差量調整処理とも呼ぶ。
具体的に視差量制御部42は、例えば図4(A)と対応する図4(B)及び(C)に示すように、操作部6の視差量調整ダイヤルにより指示された視差量に応じて、切出領域TA1及びTB1をそれぞれ左右方向に移動させた位置に、第2の領域としての切出領域TA2及びTB2を設定する。
因みに図4(B)は、表示画面よりも手前側に撮像対象を位置させる場合を示しており、図4(C)は、表示画面よりも奥側に撮像対象を位置させる場合を示している。
その後、切出拡縮制御部40の切出領域信号生成部43Aは、切出領域TA2及びTB2の位置や大きさ等を表す切出領域信号STA2及びSTB2を生成する。そして切出領域信号生成部43Aは、切出領域信号STA2及びSTB2を検出領域制御部44A及び44Bとディジタル信号処理部27A及び27Bの切出拡縮部55A及び55Bとへそれぞれ供給する。
検出領域制御部44Aは、供給された切出領域信号STA2に応じて、切出領域TA2におけるほぼ中央となる位置に、所定の大きさでなり矩形状の検波領域DA2(図4(B)及び(C))を設定する。
この検波領域DA2は、最終的に切り出す切出領域TA2のうち、焦点制御や露出制御における合焦度合や露出を最適に調整すべき領域を表しており、検波枠とも呼ばれている。
また検波領域DA2は、視差量調整処理後の切出領域TA2に対応した位置に設定されている。すなわち検波領域DA2は、仮に視差量調整処理前の切出領域TA1に対応して設定した場合の検波領域DA1とは異なる位置に設定されている。
これと同様に検出領域制御部44Bは、供給された切出領域信号STB2に応じて、切出領域TB2におけるほぼ中央となる位置に検波領域DB2を設定する。
そして検出領域制御部44A及び44B(図3)は、検波領域DA2及びDB2の位置や大きさ等を表す検波領域情報SDA及びSDBを生成し、それぞれをディジタル信号処理部27A及び27Bの検出部52A及び52Bへ供給する。
一方、ディジタル信号処理部27Aは、A/D変換器26A(図1)から供給される画像信号V3Aを増幅部51Aにより増幅し、これを検出部52A及びホワイトバランス調整部53Aへ供給する。
検出部52Aは、鮮鋭度検出部52A1、輝度検出部52A2及び色信号検出部52A3を有しており、画像信号V3Aのうち検波領域情報SDAにより特定される検波領域DA内の画素値を基に、複数種類の検出値を生成するようになされている。
具体的に鮮鋭度検出部52A1は、画像信号V3Aのうち検波領域DA2内に含まれる画素の画素値に対し微分等の演算処理を施すことにより鮮鋭度を表す鮮鋭度信号SSAを生成し、これをレンズ制御部45へ供給する。
レンズ制御部45は、鮮鋭度信号SSAを基に画像信号V3Aのうち検波領域DA2の部分の鮮鋭度が最も高くなるよう、すなわちこの部分に焦点が合うよう、レンズドライバ31Aを介してフォーカスレンズ23Aの位置を制御する。
輝度検出部52A2は、画像信号V3Aのうち検波領域DA2内に含まれる画素の輝度値について積算等の演算処理を施すことにより輝度信号SBAを生成し、これを露出制御部46へ供給する。
露出制御部46は、輝度信号SBAを基に画像信号V3Aのうち検波領域DA2の部分における露出値が最適な値となるよう、レンズドライバ31Aを介して絞り22Aの絞り量を制御し、またタイミングジェネレータ32Aを介して撮像素子24Aのシャッター速度を制御し、さらに増幅部51Aにおける増幅ゲインを制御する。
色信号検出部は、画像信号V3Aのうち検波領域DA2内に含まれる画素の画素値について所定の演算処理を施すことにより色信号SCAを生成し、これをホワイトバランス制御部47へ供給する。
ホワイトバランス制御部47は、色信号SCAを基にホワイトバランス調整信号SWAを生成し、これをホワイトバランス調整部53Aへ供給する。ホワイトバランス調整部53Aは、ホワイトバランス調整信号SWAに基づいて画像信号V3Aのホワイトバランスを調整し、これをガンマ補正部54Aへ供給する。
ガンマ補正部54Aは、画像信号V3Aに対して所定のガンマ補正処理を施し、切出拡縮部55Aへ供給する。切出拡縮部55Aは、画像信号V3Aのうち切出領域信号STA2が示す領域を切り出すことにより画像信号V4Aを生成し、これをメモリ8へ供給する。
一方ディジタル信号処理部27Bは、ディジタル信号処理部27Aと対応しており、検出部52Bの鮮鋭度検出部52B1、輝度検出部52B2及び色信号検出部52B3によりそれぞれ鮮鋭度信号SSB、輝度信号SBB及び色信号SCBを生成する。
レンズ制御部45は、鮮鋭度信号SSBを基に画像信号V3Bのうち検波領域DB2の部分の鮮鋭度が最も高くなるよう、すなわちこの部分に焦点が合うよう、レンズドライバ31Bを介してフォーカスレンズ23Bの位置を制御する。
このときレンズ制御部45は、左側用のレンズドライバ31Bに供給する制御信号について、右側用の鮮鋭度信号SSAに基づいて補正する。またレンズ制御部45は、右側用のレンズドライバ31Aに供給する制御信号についても、左側用の鮮鋭度信号SSBに基づいて補正する。
露出制御部46は、輝度信号SBBを基に画像信号V3Bのうち検波領域DB2の部分における露出値が最適な値となるよう、レンズドライバ31Bを介して絞り22Bの絞り量を制御し、またタイミングジェネレータ32Bを介して撮像素子24Bのシャッター速度を制御し、さらに増幅部51Bにおける増幅ゲインを制御する。
このとき露出制御部46は、レンズ制御部45と同様、左側用のレンズドライバ31B、タイミングジェネレータ32B及び増幅部51Bにそれぞれ供給する制御信号について、右側用の輝度信号SBAに基づいて補正する。また露出制御部46は、右側用のレンズドライバ31A、タイミングジェネレータ32A及び増幅部51Aにそれぞれ供給する制御信号についても、左側用の輝度信号SBBに基づいて補正する。
ホワイトバランス制御部47は、色信号SCBを基にホワイトバランス調整信号SWBを生成し、これをホワイトバランス調整部53Bへ供給する。
このときホワイトバランス制御部47は、左側用のホワイトバランス調整部53Bに供給するホワイトバランス調整信号SWBを右側用の色信号SCAに基づいて補正する。またホワイトバランス制御部47は、右側用のホワイトバランス調整部53Aに供給するホワイトバランス調整信号SWAについても左側用の色信号SCBに基づいて補正する。
ディジタル信号処理部27Bは、画像信号V3Bについて増幅部51Bにより増幅し、ホワイトバランス調整部53Aによりホワイトバランスを調整し、ガンマ補正部54Bによりガンマ補正処理を施した上で切出拡縮部55Bへ供給する。切出拡縮部55Bは、画像信号V3Bのうち切出領域信号STB2が示す領域を切り出すことにより画像信号V4Bを生成し、これをメモリ7へ供給する。
すなわち撮像ユニット3A及び3B(図1)は、それぞれ撮像した画像信号V3A及びV3Bについて、それぞれの検波領域DA2及びDB2における検出値に重点を置きつつ、他方の画像信号における検出値も参酌しながら、焦点制御、露出制御及びホワイトバランス制御を行うようになされている。
このように複眼撮像装置1では、光軸補正処理及び視差量調整処理により切出領域TA2及びTB2を設定すると共に検波領域DA2及びDB2を設定し、当該検波領域DA2及びDB2内の画素値等から鮮鋭度等の各種検出値を生成する。そして複眼撮像装置1は、生成された各種検出値に基づいて焦点制御や露出制御等の画像を調整する処理(以下これらをまとめて画像調整処理と呼ぶ)を行うことにより、立体画像を表す画像信号V4A及びV4Bを生成するようになされている。
[1−3.撮像対象と検波領域の位置との関係]
ここで、視聴者がテレビジョン装置等を用いて画像信号V4A及びV4Bの画像を立体視する場合に得られる立体感と検波領域の位置との関係について説明する。
一般に、テレビジョン装置により画像を立体視する場合、テレビジョン装置では画像信号V4A及びV4Bを1フレーム又は1フィールドずつ交互に表示する。また視聴者には眼鏡をかけさせ、この眼鏡において左右のレンズを液晶シャッター等により画像と同期して交互に遮光させる。
これにより視聴者は、正面の表示画面内で、右目により画像信号V4Aに基づく画像のみを見ると共に、左目により画像信号V4Bに基づく画像のみを見る。
図5(A)〜(C)は、この様子を模式的に示したものであり、上段に表示画面に表示する画像を、下段に視聴者の目、表示画面及び得られる像の位置の関係を、検波領域と共にそれぞれ表している。この表示画面の全体に、切出領域TA1及びTB1又は切出領域TA2及びTB2が表示されることになる。
図5(A)は、図4(A)と対応しており、視聴者の視点VA及びVB、光軸補正処理のみを行った場合における切出領域TA1及びTB1、撮像対象JA及びJB、並びに検波領域DA1及びDB1の位置関係を示している。この場合、表示画面上で検波領域DA2及びDB2は一致している。
図5(B)は、図4(B)と対応しており、光軸補正処理に加えて像が手前に位置して見えるような視差量調整処理を行った場合を示している。この場合、表示画面上で撮像対象JA及びJBが左右にずれているため、視聴者は脳内で無意識的に撮像対象JA及びJBを重ねようとし、手前に像があるような立体感を得ることができる。
ここで画像信号V4A及びV4Bは、それぞれ撮像対象JA及びJBに検波領域DA2及びDB2が合わされていることから、左右それぞれの画像で撮像対象に焦点及び露出等が合うように調整されている。このため視聴者は、撮像対象が鮮明に表され、且つ奥行感をもった画像を楽しむことができる。
図5(C)は、図4(C)と対応しており、光軸補正処理に加えて像が奥側に位置して見えるような視差量調整処理を行った場合を示している。この場合、表示画面上で撮像対象が左右に図5(B)と反対方向にずれているため、視聴者に奥に像があるような立体感を与えることができる。この場合にも視聴者は、撮像対象が鮮明に表され、且つ奥行感をもった像を認識することができる。
[1−4.検波領域設定処理手順]
次に、複眼撮像装置1において右側及び左側の検波領域DA2及びDB2をそれぞれ設定する際の検波領域設定処理手順RT1及びRT2を、図6及び図7のフローチャートを用いて説明する。因みに右側の検波領域設定処理手順RT1及び左側の検波領域設定処理手順RT2については、どちらを先に処理しても良く、或いは並列処理をしても良い。
また説明の都合上、画面内の座標については画面左上を原点とし、左から右へ向かう方向にx軸を設定し、上から下へ向かう方向にy軸を設定する。また切出領域TAや検波領域DAについては、左上及び右下の頂点の座標により表すものとする。
システムコントローラ5のCPU11は、撮像処理が開始されると右側の検波領域設定処理手順RT1(図6)を開始してステップSP1へ移る。
ステップSP1においてCPU11は、光軸補正制御部41Aにより、不揮発性メモリ14から光軸補正テーブルを読み出し、このときのズーム倍率に応じて右側の光軸補正量を決定し、この光軸補正量を基に左上頂点を表す座標(TA1Lx,TA1Ly)を決定して、次のステップSP2へ移る。
ステップSP2においてCPU11は、切出領域TA1の左上頂点を表す座標(TA1Lx,TA1Ly)と操作部6のズームレバーにより設定された倍率とに基づき、所定の演算式に従って右下頂点を表す座標(TA1Rx,TA1Ry)を算出して次のステップSP3へ移る。
ステップSP3においてCPU11は、座標(TA1Lx,TA1Ly)及び座標(TA1Rx,TA1Ry)をそれぞれ左上頂点及び右下頂点とした切出領域TA1を設定し、次のステップSP4へ移る。
ステップSP4においてCPU11は、視差量制御部42により、設定された切出領域TA1の左上頂点(TA1Lx,TA1Ly)と視差量に応じて定まる調整量Sとを基に、切出領域TA2の左上頂点を表す座標(TA2Lx,TA2Ly)を次の(1)式により算出し、次のステップSP5へ移る。
TA2Lx=TA1Lx+S
TA2Ly=TA1Ly ……(1)
ステップSP5においてCPU11は、切出領域TA2の左上頂点を表す座標(TA2Lx,TA2Ly)と操作部6のズームレバーにより設定された倍率とに基づき、所定の演算式に従って右下頂点を表す座標(TA1Rx,TA1Ry)を算出して次のステップSP6へ移る。
ステップSP6においてCPU11は、座標(TA2Lx,TA2Ly)及び座標(TA2Rx,TA2Ry)をそれぞれ左上頂点及び右下頂点とした切出領域TA2を設定し、次のステップSP7へ移る。
ステップSP7においてCPU11は、検出領域制御部44Aにより、切出領域TA2の左上頂点(TA2Lx,TA2Ly)と定数(Cx,Cy)とを基に、検波領域DA2の左上頂点を表す座標(DA2Lx,DA2Ly)を次の(2)式により算出し、次のステップSP8へ移る。ここで定数(Cx,Cy)は、切出領域TA2と検波領域DA2との大きさの差異に基づいて定まる値である。
DA2Lx=TA2Lx+Cx
DA2Ly=TA2Ly+Cy ……(2)
ステップSP8においてCPU11は、検波領域DA2の左上頂点を表す座標(DA2Lx,DA2Ly)に基づいた所定の演算式に従って、右下頂点を表す座標(DA2Rx,DA2Ry)を算出して次のステップSP9へ移る。
ステップSP9においてCPU11は、座標(DA2Lx,DA2Ly)及び座標(DA2Rx,DA2Ry)をそれぞれ左上頂点及び右下頂点とした検波領域DA2を設定し、次のステップSP10へ移る。
ステップSP10においてCPU11は、設定した検波領域DA2を表す検波領域情報SDAを生成し、これを検出部52Aへ供給した後、次のステップSP11へ移って右側の検波領域設定処理手順RT1を終了する。
またシステムコントローラ5のCPU11は、撮像処理が開始されると左側の検波領域設定処理手順RT2(図7)を開始してステップSP21へ移る。
ステップSP21においてCPU11は、右側の場合と同様、光軸補正制御部41Bにより、不揮発性メモリ14から光軸補正テーブルを読み出し、このときのズーム倍率に応じて左側の光軸補正量を決定し、この光軸補正量を基に左上頂点を表す座標(TB1Lx,TB1Ly)を決定して、次のステップSP22へ移る。
ステップSP22及びSP23において、CPU11は、右側の場合と同様、右下頂点を表す座標(TB1Rx,TB1Ry)を算出した上で切出領域TB1を設定し、次のステップSP24へ移る。
ステップSP24においてCPU11は、視差量制御部42により、設定された切出領域TB1の左上頂点(TB1Lx,TB1Ly)と調整量Sとを基に、切出領域TB2の左上頂点を表す座標(TB2Lx,TB2Ly)を右側の場合とは一部符号を反転した次の(3)式により算出し、次のステップSP25へ移る。
TB2Lx=TB1Lx−S
TB2Ly=TB1Ly ……(3)
ステップSP25及びSP26において、CPU11は、右側の場合と同様、右下頂点を表す座標(TB2Rx,TB2Ry)を算出した上で切出領域TB2を設定し、次のステップSP27へ移る。
ステップSP27において、CPU11は、右側の場合と同様、検出領域制御部44Bにより、切出領域TB2の左上頂点(TB2Lx,TB2Ly)と定数(Cx,Cy)とを基に、検波領域DB2の左上頂点を表す座標(DB2Lx,DB2Ly)を次の(4)式により算出し、次のステップSP28へ移る。
DB2Lx=TB2Lx+Cx
DB2Ly=TB2Ly+Cy ……(4)
ステップSP28及びSP29においてCPU11は、右側の場合と同様、右下頂点を表す座標(DB2Rx,DB2Ry)を算出した上で検波領域DB2を設定し、次のステップSP30へ移る。
ステップSP30においてCPU11は、設定した検波領域DB2を表す検波領域情報SDBを生成し、これを検出部52Bへ供給した後、次のステップSP31へ移って左側の検波領域設定処理手順RT2を終了する。
[1−5.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による複眼撮像装置1は、光軸補正制御部41A及び41Bにより、このときのズーム倍率に応じた光軸補正処理により画像信号V3A及びV3B内で切出領域TA1及びTB1をそれぞれ設定する。
視差量制御部42は、視聴者に与えたい立体感に応じた視差量調整処理により切出領域TA1及びTB1を左右方向へずらしたような切出領域TA2及びTB2をそれぞれ設定する。
検出領域制御部44A及び44Bは、切出領域TA2及びTB2のほぼ中心となる位置に検波領域DA2及びDB2をそれぞれ設定する。
そしてディジタル信号処理部27A及び27Bは、検出部52A及び52Bにより検波領域DA2及びDB2内の画素値を基に鮮鋭度等の各種検出値を生成した上で、焦点制御や露出制御等の画像調整処理を行う。
従って複眼撮像装置1は、画像信号V4A及びV4Bにおける互いに対応する位置に撮像対象JA及びJBを位置させ、且つ撮像対象JA及びJBにそれぞれ焦点や露出を最適化できるので、撮像対象の立体画像を鮮明に撮像することができる。
このように生成された画像信号V4A及びV4Bは、所定の表示装置を介してその画像を見た視聴者に対し、右目及び左目にそれぞれ鮮明な撮像対象を見せることができ、その結果として当該撮像対象について適切な奥行感を与えることができる。
特に複眼撮像装置1は、画像信号V3A及びV3Bのそれぞれについて検波領域DA2及びDB2を設定し、当該検波領域DA2及びDB2内の画素値からそれぞれ生成した各検出値に重点を置きつつ他方の検出値も参酌しながら、それぞれの画像について画像調整処理を行う。
このため複眼撮像装置1は、左右それぞれの画像信号について、それぞれの画像信号における検波領域内の画素値から得られる検出値に基づいてそれぞれ画像調整処理を行うことにより、それぞれ撮像対象を極めて鮮明に撮像することができる。
これに加えて複眼撮像装置1は、左右それぞれの画像信号について、他方の画像信号から得られた検出値に基づいてそれぞれの調整値等を補正することにより互いの相関性を高めることができ、左右の画像の相違による違和感を軽減することができる。
以上の構成によれば、複眼撮像装置1は、このときのズーム倍率に応じた光軸補正処理により画像信号V3A及びV3B内で切出領域TA1及びTB1をそれぞれ設定し、さらに視聴者に与えたい立体感に応じた視差量調整処理により切出領域TA2及びTB2をそれぞれ設定する。そして複眼撮像装置1は、切出領域TA2及びTB2のほぼ中心となる位置に検波領域DA2及びDB2をそれぞれ設定し、検波領域DA2及びDB2内の画素値を基に各種検出値を生成した上で、焦点制御や露出制御等の画像調整処理を行う。従って複眼撮像装置1は、画像信号V4A及びV4Bにおける互いに対応する位置に撮像対象JA及びJBを位置させた上で、撮像対象JA及びJBに合わせて焦点や露出をそれぞれ最適に制御でき、鮮明な立体画像に調整することができる。
<2.第2の実施の形態>
[2−1.複眼撮像装置の構成]
第2の実施の形態による複眼撮像装置71(図1)は、第1の実施の形態による複眼撮像装置1と比較して、システムコントローラ5に代わるシステムコントローラ75を有している点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
システムコントローラ75(図3)は、システムコントローラ5と比較して、切出拡縮制御部40並びに検出領域制御部44A及び44Bに代わる切出拡縮制御部80並びに検出領域制御部84A及び84Bを有している点が相違する。
切出拡縮制御部80は、切出領域信号生成部43A及び43Bに代わる切出領域信号生成部83A及び83Bを有している。
[2−2.検波領域の設定]
切出拡縮制御部80の光軸補正制御部41A及び41Bは、図4(A)と対応する図8(A)に示すように、切出拡縮制御部40の場合と同様、不揮発性メモリ14から光軸補正テーブルを読み出し、このときのズーム倍率に応じた光軸補正量を決定して切出領域TA1及びTB1を設定する。
また視差量制御部42は、図4(B)及び(C)と対応する図8(B)及び(C)に示すように、操作部6の視差量調整ダイヤルにより指示された視差量に応じて、切出領域TA1及びTB1をそれぞれ左右方向に移動させた位置に、最終的な切出領域TA2及びTB2を設定する。
切出領域信号生成部83A及び83Bは、まず切出領域TA2及びTB2の位置や大きさ等を表す切出領域信号STA2及びSTB2をディジタル信号処理部27A及び27Bの切出拡縮部55A及び55Bへそれぞれ供給する。
さらに切出領域信号生成部83A及び83Bは、切出領域信号生成部43A及び43Bとは異なり、再設定前の切出領域TA1及びTB1の位置や大きさ等を表す切出領域信号STA1及びSTB1を生成し、これらを検出領域制御部84A及び84Bへ供給する。
検出領域制御部84A及び84Bは、供給された切出領域信号STA1に応じて、再設定前の切出領域TA1及びTB1におけるほぼ中央となる位置に、検波領域DA1及びDB1(図8(B)及び(C))を設定する。
そして検出領域制御部84A及び84B(図3)は、検波領域DA1及びDB1の位置や大きさ等を表す検波領域情報SDA及びSDBを生成し、それぞれをディジタル信号処理部27A及び27Bの検出部52A及び52Bへ供給する。
検出部52A及び52Bは、画像信号V3A及びV3Bのうち検波領域DA1及びDB1内に含まれる画素の画素値を基に、鮮鋭度を表す鮮鋭度信号等の各種信号を生成し、これらをレンズ制御部45、露出制御部46及びホワイトバランス制御部47へそれぞれ供給する。
これに応じてレンズ制御部45、露出制御部46及びホワイトバランス制御部47は、それぞれ検波領域DA1及びDB1の画素値から生成された各種信号に基づいて、焦点制御、露出制御及びホワイトバランス制御を行うようになされている。
このように複眼撮像装置71では、光軸補正処理により設定された、すなわち視差量調整処理による再設定前の切出領域TA1及びTB1を基に検波領域DA1及びDB1を設定し、当該検波領域DA1及びDB1内の画素値等から鮮鋭度等の各種検出値を生成する。そして複眼撮像装置71は、生成された各種検出値に基づいて画像調整処理を行うことにより、立体画像を表す画像信号V4A及びV4Bを生成するようになされている。
[2−3.撮像対象と検波領域の位置との関係]
ここで、視聴者がテレビジョン装置等を用いて第2の実施の形態における画像信号V4A及びV4Bの画像を立体視する場合に得られる立体感と検波領域の位置との関係について説明する。
図9(A)〜(C)は、図5(A)〜(C)と同様、視聴者が右目により画像信号V4Aに基づく画像のみを見ると共に左目により画像信号V4Bに基づく画像のみを見る様子を模式的に示したものである。
図9(A)は、図8(A)と対応しており、視聴者の視点VA及びVB、光軸補正処理のみを行った場合における切出領域TA1及びTB1、撮像対象JA及びJB、並びに検波領域DA1及びDB1の位置関係を示している。この場合、図5(A)と同様、表示画面上で検波領域DA1及びDB1は一致している。
図9(B)は、図8(B)と対応しており、図5(B)と同様、光軸補正処理に加えて像が手前に位置して見えるような視差量調整処理を行った場合を示している。この場合、表示画面上で撮像対象JA及びJBが左右にずれているため、視聴者は脳内で無意識的に撮像対象JA及びJBを重ねようとし、手前に像があるような立体感を得ることができる。
ここで図9(B)では、手前に見える像の位置で検波領域DA1及びDB1が一致している。これは、光軸補正処理後の切出領域TA1及びTB1における中心に検波領域DA1及びDB1を設定したこと、すなわち撮像対象JA及びJBにおける互いにほぼ同等の位置に検波領域DA1及びDB1を設定したことにより、撮像対象JA及びJBが一致するときには検波領域DA1及びDB1も一致するからである。
このように、手前に見える像の位置で撮像対象JA及びJBが一致すると共に検波領域DA1及びDB1も一致するということは、撮像対象JA及びJBのうち焦点制御や露出制御の基準とする領域も互いに一致することを意味する。
すなわち、第2の実施の形態より生成した画像信号V4A及びV4Bは、撮像対象JA及びJBそれぞれについて最適に画像調整処理がなされるため、その画像を立体視する視聴者に対し、極めて鮮明な撮像対象の像を立体視させることができる。
図9(C)は、図8(C)と対応しており、図5(C)と同様、光軸補正処理に加えて像が奥側に位置して見えるような視差量調整処理を行った場合を示している。この場合、表示画面上で撮像対象が左右に図9(B)と反対方向にずれているため、視聴者に奥に像があるような立体感を与えることができる。この場合にも視聴者は、撮像対象が極めて鮮明に表され、且つ奥行感をもった像を認識することができる。
[2−4.検波領域設定処理手順]
次に、複眼撮像装置71において、右側及び左側の検波領域DA1及びDB1をそれぞれ設定する際の検波領域設定処理手順RT3及びRT4を、図10及び図11のフローチャートを用いて説明する。因みに右側の検波領域設定処理手順RT3と左側の検波領域設定処理手順RT4については、どちらを先に処理しても良く、或いは並列処理をしても良い。
システムコントローラ75のCPU11は、撮像処理が開始されると右側の検波領域設定処理手順RT3(図10)を開始してステップSP41へ移る。なおステップSP41〜SP46の処理については、ステップSP1〜SP6の処理と同一であるため説明を省略する。
CPU11は、ステップSP47〜50において、ステップSP7〜SP10における検波領域DA2を検波領域DA1に置き換えたような処理を行う。
すなわちステップSP47においてCPU11は、検出領域制御部84Aにより、切出領域TA1の左上頂点(TA1Lx,TA1Ly)と定数(Cx,Cy)とを基に、検波領域DA1の左上頂点を表す座標(DA1Lx,DA1Ly)を次の(5)式により算出し、次のステップSP48へ移る。
DA1Lx=TA1Lx+Cx
DA1Ly=TA1Ly+Cy ……(5)
ステップSP48においてCPU11は、検波領域DA1の左上頂点を表す座標(DA1Lx,DA1Ly)に基づいた所定の演算式に従って、右下頂点を表す座標(DA1Rx,DA1Ry)を算出して次のステップSP49へ移る。
ステップSP49においてCPU11は、座標(DA1Lx,DA1Ly)及び座標(DA1Rx,DA1Ry)をそれぞれ左上頂点及び右下頂点とした検波領域DA1を設定し、次のステップSP50へ移る。
ステップSP50においてCPU11は、設定した検波領域DA1を表す検波領域情報SDAを生成し、これを検出部52Aへ供給した後、次のステップSP51へ移って右側の検波領域設定処理手順RT3を終了する。
またシステムコントローラ75のCPU11は、撮像処理が開始されると左側の検波領域設定処理手順RT4(図11)を開始してステップSP61へ移る。なおステップSP61〜SP66の処理については、ステップSP21〜SP26の処理と同一であるため、説明を省略する。
CPU11は、ステップSP67〜70において、ステップSP27〜SP30における検波領域DB2を検波領域DB1に置き換えたような処理、換言すればステップSP47〜SP50における検波領域DA1を検波領域DB1に置き換えたような処理を行う。
すなわちステップSP67においてCPU11は、検出領域制御部84Bにより、切出領域TB1の左上頂点(TB1Lx,TB1Ly)と定数(Cx,Cy)とを基に、検波領域DB1の左上頂点を表す座標(DB1Lx,DB1Ly)を次の(6)式により算出し、次のステップSP68へ移る。
DB1Lx=TB1Lx+Cx
DB1Ly=TB1Ly+Cy ……(6)
ステップSP68及びSP69においてCPU11は、右側の場合と同様、右下頂点を表す座標(DB1Rx,DB1Ry)を算出した上で検波領域DB1を設定し、次のステップSP70へ移る。
ステップSP70においてCPU11は、設定した検波領域DB1を表す検波領域情報SDBを生成し、これを検出部52Bへ供給した後、次のステップSP71へ移って左側の検波領域設定処理手順RT4を終了する。
[2−5.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態による複眼撮像装置71は、光軸補正制御部41A及び41Bにより、このときのズーム倍率に応じた光軸補正処理により画像信号V3A及びV3B内で切出領域TA1及びTB1をそれぞれ設定する。
視差量制御部42は、視聴者に与えたい立体感に応じた視差量調整処理により切出領域TA1及びTB1を左右方向へずらしたような切出領域TA2及びTB2をそれぞれ設定する。
検出領域制御部84A及び84Bは、視差量調整処理により得られる切出領域TA2及びTB2ではなく、敢えて光軸補正処理のみにより得られる切出領域TA1及びTB1のほぼ中心となる位置に、検波領域DA1及びDB1をそれぞれ設定する。
そしてディジタル信号処理部27A及び27Bは、検出部52A及び52Bにより検波領域DA1及びDB1内の画素値を基に鮮鋭度等の各種検出値を生成した上で、焦点制御や露出制御等の画像調整処理を行う。
従って複眼撮像装置71は、画像信号V4A及びV4Bにおける互いに対応する位置に撮像対象JA及びJBを位置させ、且つ撮像対象JA及びJBの互いに一致する箇所に焦点や露出を最適化できるので、撮像対象の立体画像を極めて鮮明に撮像することができる。
このとき複眼撮像装置71では、切出領域TA1及びTB1のほぼ中心となる位置に、すなわち実際に画像を切り出す領域である切出領域TA2及びTB2の中心からは外れた箇所に、検波領域DA1及びDB1をそれぞれ設定する。
このため第2の実施の形態により生成された画像信号V4A及びV4Bは、表示画面に表示される段階では互いの検波領域DA1及びDB1の位置が互いにずれることになるが、立体視されたときに検波領域DA1及びDB1を撮像対象の像に合わせることができる。
特に、視差量が大きく表示画面上で右目用の撮像対象JAと左目用の撮像対象JBとが大きく離れている場合であっても、立体視した場合に撮像対象の像の位置で検波領域DA1及びDB1を重ね合わせることができる。この結果、画像信号V4A及びV4Bを立体視した視聴者に対し、十分に奥行感があり極めて鮮明な像を認識させることができる。
また複眼撮像装置71は、その他の点においても第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、複眼撮像装置71は、ズーム倍率に応じた光軸補正処理により画像信号V3A及びV3B内で切出領域TA1及びTB1をそれぞれ設定し、さらに視聴者に与えたい立体感に応じた視差量補正処理により切出領域TA2及びTB2をそれぞれ設定する。そして複眼撮像装置1は、先に設定した切出領域TA1及びTB1のほぼ中心となる位置に検波領域DA1及びDB1をそれぞれ設定し、検波領域DA1及びDB1内の画素値を基に各種検出値を生成した上で、焦点制御や露出制御等の画像調整処理を行う。従って複眼撮像装置71は、画像信号V4A及びV4Bにおける互いにずれた位置に撮像対象JA及びJBを位置させた上で、撮像対象JA及びJBの互いに一致する箇所に合わせて焦点や露出をそれぞれ最適化でき、格段に鮮明な立体画像を撮像することができる。
<3.他の実施の形態>
なお上述した実施の形態においては、検波領域内に含まれる画素の画素値から検出値を生成して画像調整処理として撮像光を光学的に変化させるように、すなわち画像の焦点位置や露出等の調整処理を行うようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、これらのいずれかの調整処理を行うようにしても良く、或いは検波領域内の画素の画素値から得られる検出値を基に、撮像後の画像信号により表される画像において画質を撮像対象に合わせる調整処理、例えばコントラスト、ガンマ特性や色調等の調整処理を行うようにしても良い。
また上述した実施の形態においては、撮像ユニット3A及び3Bにより撮像された画像信号V3A及びV3Bに対し切出領域及び検波領域を設定するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、他の撮像装置により撮像された画像信号を取得し、この画像信号に対し切出領域及び検波領域を設定するようにしても良い。この場合、ホワイトバランスやコントラスト等、撮像素子により画像信号が生成された後の段階でこの画像信号に施す種々の画像調整処理を適用することができる。
さらに上述した実施の形態においては、設定した切出領域の座標から演算により検波領域の座標を定めるようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば切出領域内を格子状に複数の領域に分割しておき、設定した切出領域に応じて1又は2以上の領域を検波領域に設定する等、種々の方法により検波領域を設定するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、設定した切出領域のほぼ中央に検波領域を設定するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば撮像対象が所定の顔認識処理により認識された顔部分である場合に、検波領域をその目の位置に設定する等、撮像対象に対し任意の箇所に検波領域を設定するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、予め光軸補正テーブルを記憶しておき、設定されたズーム倍率に応じて光軸補正量を決定して切出領域TA1及びTB1を設定するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば所定の撮像対象特定部により、画像信号V3A及びV3Bにより表される画像から互いに対応する撮像対象をそれぞれ特定し、この撮像対象の位置を基準とした領域をそれぞれ切出領域TA1及びTB1として設定しても良い。また、例えば所定の手ぶれ補正処理部により、手ぶれ補正処理を行って切出領域TA1及びTB1を設定するようにしても良い。このように切出領域TA1及びTB1については、種々の手法により設定することができる。
さらに上述した実施の形態においては、撮像素子24A及び24Bにおいて撮像した全領域を表す画像信号V3A及びV3Bをそれぞれ生成し、切出領域信号STA2及びSTB2に従い切出拡縮部55A及び55Bによりそれぞれの一部を切り出して画像信号V4A及びV4Bを生成するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば撮像素子24A及び24Bへ切出領域信号STA2及びSTB2を供給することにより、撮像した画像の一部を切り出して切出領域TA2及びTB2に相当する画像信号V3A及びV3Bを生成するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、複眼撮像装置1及び71として、コントロールユニット2と撮像ユニット3A及び3Bとを一体に構成するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば独立したコントロールユニット2が外部の2台の撮像ユニットから画像信号を取得すると共に、この撮像ユニットに対し各種制御信号を供給するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、2台の撮像ユニット3A及び3Bを用いて2系統の画像信号V4A及びV4Bを生成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばホログラム画像を撮像する場合に、3台や8台等のように2以上の任意の台数の撮像ユニット3を用いて同一の撮像対象についての画像信号を同時並列的に生成する場合に適用しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、システムコントローラ5において所定の撮像処理プログラムを実行することにより、図3に示した各機能を実現するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、各機能をハードウェアにより実現するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、ディジタルシグナルプロセッサにより構成されたディジタル信号処理部27A及び27Bが予めプログラムされることにより図3に示した各機能を実現するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、各機能をハードウェアにより実現するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、複数画像調整制御プログラムを不揮発性メモリ14に予め記憶させておき、これを読み出して実行することにより、切出領域及び検波領域を設定して画像信号を調整させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばUSB(Universal Serial Bus)接続やLAN(Local Area Network)接続を介して外部のサーバ装置やホスト機器等から複数画像調整制御プログラムを取得して実行するようにしても良い。
さらに上述した第2の実施の形態においては、第1の領域設定部としての光軸補正制御部41A及び41Bと、第2の領域設定部としての視差量制御部42と、検波領域設定部としての検出領域制御部84A及び84Bとによって画像処理装置としての複眼撮像装置71を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる第1の領域設定部と、第2の領域設定部と、検波領域設定部とによって画像処理装置を構成するようにしても良い。