JP6610174B2 - 中空粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
(A)少なくとも重合性単量体を含有する樹脂液に、反応性表面を有する金属酸化物粒子を分散した液を調製する工程と、
(B)前記工程(A)で調製した前記金属酸化物粒子を分散した樹脂液に気体を注入する工程と、
(C)前記工程(B)で前記気体が注入された前記樹脂液を、第2の分散媒中に注入して、前記気体を内包した前記樹脂液の液滴粒子を形成し、当該液滴粒子の分散液を調製する工程と、
(C´)前記工程(C)の後に、前記気体を内包した液滴粒子を分割する工程と、
(D)前記工程(C´)で形成された液滴粒子を、当該液滴粒子中に含有されている前記重合性単量体を重合することにより固体化し、さらに、第2の分散媒から単離する工程と、
を有することを特徴とする中空粒子の製造方法。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように考えている。
これに対して、本発明者は、中空粒子において、シェルに含有される樹脂と金属酸化物粒子とを化学結合を介して複合化させることが有効と考えた。具体的な方法としては、気体を内包した液滴粒子を中空粒子の前駆体として直接形成し、この液滴粒子を固体化する中空粒子の作製法において、液滴の原料として、重合性単量体とこれとの反応性を有する表面を備えた金属酸化物粒子とを含有する液を用いることが考えられる。このような方法によれば、重合性単量体が重合して液滴粒子を固体化する際に、重合性単量体と金属酸化物粒子の表面とが化学結合をする。この結果、シェルは、樹脂と金属酸化物粒子とが化学結合を介して複合化した構造となると考えられる。
このような複合化した構造を有するシェルを備えることで、本発明の中空粒子は強度を改善できたと推察する。
前記シェルが、少なくとも樹脂と金属酸化物粒子とからなる複合体構造を有している中空粒子の製造方法であることを特徴とする。この特徴は各請求項に係る発明に共通又は対応する技術的特徴である。
(A)少なくとも重合性単量体を含有する樹脂液に、反応性表面を有する金属酸化物粒子を分散した液を調製する工程と、
(B)前記工程(A)で調製した前記金属酸化物粒子を分散した樹脂液に気体を注入する工程と、
(C)前記工程(B)で前記気体が注入された前記樹脂液を、第2の分散媒中に注入して、前記気体を内包した前記樹脂液の液滴粒子を形成し、当該液滴粒子の分散液を調製する工程と、
(C´)前記工程(C)の後に、前記気体を内包した液滴粒子を分割する工程と、
(D)前記工程(C´)で形成された液滴粒子を、当該液滴粒子中に含有されている前記重合性単量体を重合することにより固体化し、さらに、第2の分散媒から単離する工程と、
を有することを特徴とする。
これにより、本発明は、強度の高い中空粒子の製造方法を提供することができる。
本発明の中空粒子は、空孔を内包するシェルを有する。
図1は、本発明の中空粒子の一例を示す概略図である。
図1に示す例において、中空粒子1は、空孔3を内包するシェル2を有する。ここで、空孔とは、空気等のガス、真空空間等が存在している部分をいう。
なお、図1に示す例では、空孔は一つしかないが、本発明の中空粒子はこれに限定されず、空孔は複数あってもよい。また、本発明の中空粒子は、空孔の形状も限定されず、球状であっても、球状でなくてもよい。
シェルは、空孔を内包し、少なくとも樹脂と金属酸化物粒子とからなる複合体構造を有している。
なお、シェルは、本発明の効果発現を阻害しない範囲内で、樹脂及び金属酸化物粒子以外の金属や、無機化合物など、ほかの化合物等を有していてもよい。
本発明に係る樹脂としては、後述の重合性単量体を重合させてなる樹脂であることが好ましい。具体的には、例えば、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
金属酸化物粒子の種類は、特に限定はなく、公知のものを使用できる。金属酸化物粒子としては、具体的には、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化チタン(チタニア:TiO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられる。
なお、本発明に係る金属酸化物粒子は、表面修飾されることで、反応性表面を有する金属酸化物粒子であることが好ましい。
上記質量比の値が、1/10以上であると、シェルに含まれる金属酸化物粒子の量が少なくなりすぎることを回避でき、本発明の効果を好適に発現できる。
また、質量比の値が、10/1以下であれば、シェルが内包する空孔が潰れる懸念がなく、空孔を好適に保つことができるため好ましい。
本発明においては、重合性官能基を有する化合物による有機表面修飾を行う態様であることが好ましい。また、当該有機表面修飾の前段として、当該有機表面修飾の反応率を上げる、金属酸化物粒子として酸化チタンを用いる場合であればその光触媒活性を抑制する等の目的で、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の表面修飾用金属酸化物から選ばれる無機表面修飾を1回又は複数回行ってもよい。
チタニア、アルミナ、シリカ、及びジルコニア等の金属酸化物から選ばれる無機表面修飾とは、金属酸化物粒子の表面にチタニア、アルミナ、シリカ又はジルコニアを析出させる処理をいい、これらの表面に析出したチタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニアにはチタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物が修飾していることも含まれる。
次に、本発明で使用可能な重合性官能基を有する化合物について説明する。
以下に、上記一般式(1)で示される化合物例を挙げる。
S−2 CH2=CHSi(OCH3)3
S−3 CH2=CHSiCl3
S−4 CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−5 CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3
S−6 CH2=CHCOO(CH2)2Si(OC2H5)(OCH3)2
S−7 CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3
S−8 CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−9 CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3
S−10 CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−11 CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3
S−12 CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−13 CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3
S−14 CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2
S−15 CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3
S−16 CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−17 CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3
S−18 CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−19 CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3
S−20 CH2=CHSi(C2H5)(OCH3)2
S−21 CH2=C(CH3)Si(OCH3)3
S−22 CH2=C(CH3)Si(OC2H5)3
S−23 CH2=CHSi(OCH3)3
S−24 CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH3)2
S−25 CH2=CHSi(CH3)Cl2
S−26 CH2=CHCOOSi(OCH3)3
S−27 CH2=CHCOOSi(OC2H5)3
S−28 CH2=C(CH3)COOSi(OCH3)3
S−29 CH2=C(CH3)COOSi(OC2H5)3
S−30 CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OC2H5)3
また、前記一般式(1)の化合物以外でも、下記のラジカル反応可能な反応性基を有するシラン化合物を用いてもよい。
次に、重合性官能基を有する化合物による金属酸化物粒子の表面修飾方法を、前記した一般式(1)等で表されるシラン化合物を用いた場合を例に説明する。有機表面修飾を行うに際し、金属酸化物粒子100質量部に対し、シラン化合物を表面修飾剤として0.1〜200質量部、溶媒50〜5000質量部を用いて湿式メディア分散型装置を使用して処理することが好ましい。
本発明の中空粒子は、上述のように、シェルが、少なくとも樹脂と金属酸化物粒子とからなる複合体構造を有している。本発明において、この複合体構造とは、樹脂と金属酸化物粒子とが、化学結合を介して結合した状態で、シェルに含有されている構造をいう。
なお、中空粒子が複合体構造を有しているか否かは、NMRやIR等による測定により、シェル中の樹脂と金属酸化物粒子とが、化学結合を介して結合しているかどうかを確認することで判断できる。
本発明の中空粒子の製造方法は、液体中で製造する中空粒子の製造方法であって、
(A)少なくとも重合性単量体を含有する樹脂液に、反応性表面を有する金属酸化物粒子を分散した液を調製する工程と、
(B)前記工程(A)で調製した前記金属酸化物粒子を分散した樹脂液に気体を注入する工程と、
(C)前記工程(B)で前記気体が注入された前記樹脂液を、第2の分散媒中に注入して、前記気体を内包した前記樹脂液の液滴粒子を形成し、当該液滴粒子の分散液を調製する工程と、
(D)前記工程(C)で形成された液滴粒子を、当該液滴粒子中に含有されている前記重合性単量体を重合することにより固体化し、さらに、第2の分散媒から単離する工程と、
を有することが好ましい。
また、重合性単量体を重合することによってシェルを形成する中空粒子製造方法であれば、当該重合性単量体の代わりに、当該重合性単量体に反応性表面を有する金属酸化物粒子を分散した液を用いることによって、本発明の中空粒子を製造することができる。
例えば、下記(i)〜(iii)の工程を有する多孔性樹脂粒子の製造方法において、油相液に反応性表面を有する金属酸化物微粒子を分散させる製造方法を挙げることができる。
(i)重合性単量体及び当該重合性単量体に対する重合開始能を有する油溶性重合開始剤を、疎水性溶媒に溶解又は分散させて油相液を調製する。
(ii)当該油相液を、前記重合性単量体に対する重合開始能を有する水溶性重合開始剤が含有された水溶性溶媒中に油滴として分散させる。
(iii)前記油相液が分散した状態において、前記重合性単量体に前記油溶性重合開始剤及び前記水溶性重合開始剤を同時に作用させて、当該重合性単量体を重合しシェルを形成する。これにより、シェルの内部に複数の空孔を生成させる。
工程(A)は、少なくとも重合性単量体を含有する樹脂液に、反応性表面を有する金属酸化物粒子を分散した液を調製する工程である。
本発明に係る樹脂液とは、重合性単量体を含有する。樹脂液は、例えば、重合性単量体のみであってもよいが、樹脂が溶解したものであるほうが、粘度の観点から好ましい。このような観点から、樹脂液は、重合性単量体などを分散媒(以下、樹脂液に含有される分散媒を「第1の分散媒」ともいう。)として、上述の樹脂等を増粘剤として溶解させて液状化したものであることが好ましい。なお、増粘剤として使用される樹脂としては、重合性単量体に溶解されるものであることが、高温や高圧にする必要なく容易に樹脂液を調製でき、低コストかつ安全であるため好ましい。なお、樹脂液に含有される樹脂としては、第1の分散媒である重合性単量体の一部を気体の注入前に重合することによって作製した高分子を用いることもできる。
また、樹脂液の25℃における粘度は、10mPa・s以上であることが、樹脂液に気体を内包させた状態を維持しやすくなり、この結果、中空粒子の収率が向上することから好ましく、更に好ましくは、100mPa・s以上である。
また、樹脂液の25℃における粘度の上限は、気体を内包させる装置の取扱い粘度上限によって既定される。一般的な撹拌機を用いる場合には500000mPa・s以下であることが好ましく、更に好ましくは75000mPa・s以下である。
粘度の測定方法は、特に限定されず、既知の方法であればよいが、共軸二重円筒型、単一円筒型回転式粘度計(B型)、コーンプレート型(E型)等の回転式粘度計が望ましく、後述の本願の実施例ではコーンプレート型粘度計を用いて測定した。
重合性単量体としては、上記樹脂を溶解した状態で水に分散可能なものであれば、特に限定されず、具体的には、例えば、以下の(1)〜(8)に示すものが挙げられる。
スチレン系単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレートフェニル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどが挙げられる。
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどが挙げられる。
ビニルエーテル類としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどが挙げられる。
ビニルケトン類としては、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどが挙げられる。
N−ビニル化合物類としては、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。
多官能ビニル単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキシレングリコールジメタクリレート、ヘキシレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどの3級以上のアルコールのジメタクリレート及びトリメタクリレートなどが挙げられる。
上述のもの以外にも、例えば、ブタジエン、ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体、無水マレイン酸などが挙げられる。
界面活性剤は親水基と親油基の組合せによって構成されているが、親水基及び親油基の種類は極めて多数にのぼり、その組合せによってできる界面活性剤の種類も極めて多い。本発明に係る油溶性界面活性剤としては、有機溶媒又は重合性単量体に溶解し、気体の分散安定性を発揮するものであれば、特に限定されず、好適に用いることができる。
なお、このような油溶性界面活性剤を樹脂液が含有することで、上述のように、有機溶媒又は重合性単量体中において、気体の分散安定性が向上し、好適に気体を内包した液滴粒子を作製することができ、この結果、気体を内包しない液滴から生じる中実粒子が減少し、中空粒子の収率が上がるため好ましい。
さらに、市販品も使用でき、具体的には、例えば、花王株式会社製レオドールSP−L10や、日油株式会社製モディパーF606などが挙げられる。
本発明に係る樹脂液は、上述の第1の分散媒である重合性単量体以外に、その他の第1の分散媒として、上記樹脂を溶解する等により液化できる分散媒が、本発明の効果発現を阻害しない範囲で含有されていてもよい。このような分散媒は、特に限定されないが、例えば非重合性の有機溶媒であってもよい。
本発明に好適に使用できる有機溶媒は、上記樹脂液となった状態で水に分散可能なものであればよく、特に限定されず、例えば、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、塩化メチレン等が挙げられる。
本発明に係る反応性表面を有する金属酸化物粒子とは、上述の表面修飾された金属酸化物粒子をいう。また、反応性表面を有するとは、上記重合性官能基が表面に修飾されていることをいう。金属酸化物粒子は、このような反応性表面を有することにより、本発明に係る樹脂及び重合性単量体と化学結合し、ひいては、この化学結合を介して結合した状態でシェルに含有され、複合体構造を形成することができる。
金属酸化物粒子と重合性単量体との質量比の値(金属酸化物粒子の質量/重合性単量体の質量)が、1/10〜10/1の範囲内であること、すなわち、重合性単量体100質量部に対して、金属酸化物粒子が10〜1000質量部の範囲内であることが好ましい。
上記質量比の値が、1/10以上であると、シェルに含まれる金属酸化物粒子の量が少なくなりすぎることを回避でき、本発明の効果を好適に発現できる。
また、質量比の値が、10/1以下であれば、シェルが内包する空孔が潰れる懸念がなく、空孔を好適に保つことができるため好ましい。
工程(B)は、工程(A)で調製した前記金属酸化物粒子を分散した樹脂液に気体を注入する工程である。
注入可能な気体としては、工程(A)〜工程(D)の間で気体であればよいが、安定性や安全性から、例えば、空気や不活性気体(ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素など)が望ましい。
気体を注入させる方法は、気体を内包した液滴(樹脂液の泡)を作製できるものであれば、特に限定されず、具体的には、例えば、バブラー(アズワン株式会社製ケラミフィルター)を通して空気を注入する方法が挙げられる。また、このほか、樹脂液を撹拌して泡立てることで、気体を内包した液滴(樹脂液の泡)を作製するなどしてもよい。
工程(C)は、工程(B)で前記気体が注入された前記樹脂液を、第2の分散媒中に注入して、前記気体を内包した前記樹脂液の液滴粒子を形成し、当該液滴粒子の分散液を調製する工程である。
この液滴粒子の分散液は、水溶性界面活性剤を含有することが、液滴粒子の凝集を防ぐことができ、ひいては、中空粒子の収率が向上することから好ましい。
本発明に係る液滴粒子とは、第2の分散媒中に形成される、本発明に係る樹脂液の粒子である。当該液滴粒子は、上記樹脂液をシェルとして、気体を内包した状態(樹脂液シェルが空孔を内包する状態)で、第2の分散媒中に分散できる。
上述のように、界面活性剤は、親水基と親油基の組合せによって構成されているが、親水基及び親油基の種類は極めて多数にのぼり、その組合せによってできる界面活性剤の種類も極めて多い。本発明に係る水溶性界面活性剤としては、水溶性溶媒に溶解し、液滴粒子の分散安定性を発揮するものであれば、特に限定されず、好適に用いることができる。
なお、液滴粒子の分散液は、このような水溶性界面活性剤を含有すれば、液滴粒子の分散安定性が向上し、この結果、中空粒子の収率が向上することから好ましい。
これらの界面活性剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第2の分散媒は、気体を内包させた液滴粒子を分散させることができるものであれば特に限定されないが、水溶性溶媒であることが、樹脂液が過度に溶解するなどせず、ひいては、中空粒子の収率が向上することから好ましい。
水溶性溶媒としては、水に無限に溶ける溶媒であれば特に限定されず、例えば、イオン交換水などの水、メタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。この中でも、特に、水であることが環境への負荷が小さい、安全性が高い、有機溶媒や重合性単量体の溶解性が低い、などのため好ましい。なお、水は、特に限定されず、例えば、イオン交換水や、蒸留水が好適に用いられる。
工程(D)は、工程(C)で形成された液滴粒子を、当該液滴粒子中に含有されている前記重合性単量体を重合することにより固体化し、さらに、第2の分散媒から単離する工程である。
前記固体化は、液滴粒子中に含有されている重合性単量体を重合することにより行われる。また、樹脂液が、第1の分散媒として非重合性の有機溶媒を含有する場合は、減圧留去や水蒸気蒸留などによって非重合性の有機溶媒を除去する方法を更に用いることが好ましい。
液滴粒子中に含有されている重合性単量体を重合する方法は、特に限定されず、例えば、熱や光などと重合開始剤による重合を用いることができる。
このような方法としては、既知の方法であればよく、具体的には、重合開始剤存在下で適当な温度に保ったり、光を照射したりする方法が代表的であるが、ガンマ線や電子線を照射する等も挙げられる。
重合開始剤としては、特に限定されず、油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤など公知のものを使用できるが、中でも、油溶性重合開始剤を好適に使用できる。
これらの油溶性重合開始剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの水溶性重合開始剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
固体化した液滴粒子を単離する方法は特に限定されず、公知のものを使用でき、具体的には、例えば、上記固体化された液滴粒子を含有する液体を吸引濾過した後、イオン交換水を用いた洗浄を行い、バット等に広げて乾燥させることで単離してもよい。ほかには、遠心分離とイオン交換水の追加を繰り返す、イオン交換水を加えながらの限外濾過を行った後の凍結乾燥などが挙げられる。
分割する方法としては、特に限定されないが、例えば、細孔を有する膜などに気体を内包した液滴粒子の分散液を通すことで、気体を内包した液滴粒子を更に分割し、より細かい気体を内包した液滴粒子を得ることができる。
さらに、その細孔が均一な場合、気体を内包した液滴粒子を分割する際に、分割後の粒径をそろえることができる。具体的な方法例としては、SPG膜(SPGテクノ株式会社製)を用いることを挙げることができる。
<金属酸化物粒子を分散した樹脂液の調製(工程(A))>
増粘剤としてポリスチレン(樹脂、DIC株式会社製HP−555)18質量部を、重合性単量体であるスチレンモノマー(第1の分散媒)72質量部に溶解させ、樹脂液を調製した。この樹脂液に、大径酸化チタン粒子〔1〕(テイカ製JR−600A)をKBM−503で表面修飾した反応性表面を有する金属酸化物粒子20質量部を更に加えて、ミックスローターを用いて分散した(100rpmで3時間)。さらに、樹脂液に、油溶性界面活性剤(花王株式会社製レオドールSP−L10)3.15質量部と油溶性重合開始剤α,α′−アゾビスイソブチロニトリル(関東化学株式会社製)1.10質量部を加えて溶解させ、反応性表面を有する金属酸化物粒子を分散した樹脂液を調製した。
体積平均一次粒子径0.25μmのルチル型酸化チタン粒子(テイカ製JR−600A)500質量部をトルエン/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)の混合溶媒1500質量部と撹拌混合し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503、信越化学工業株式会社製)5質量部を添加し、ジルコニアビーズミルにより、回転速度1000rpm、ミル滞留時間30分、温度35度で湿式解砕処理を行った。得られたスラリーから溶媒を減圧蒸留にて留去し、120度で2時間の焼付けを行った。その後、ピンミルにて解砕し、表面修飾済みの大径酸化チタン粒子を得た。
上記工程(A)にて調製された金属酸化物粒子を分散した樹脂液にバブラー(アズワン株式会社製ケラミフィルター)を通して空気を注入して、気泡を含んだ樹脂液を調製した。
別にあらかじめ、ラウリル硫酸ナトリウム(水溶性界面活性剤、花王株式会社製エマール2FG)60質量部を、第2の分散媒であるイオン交換水1200質量部に溶解させておき、これをゆるやかに撹拌しながら、前記の気泡を含んだ樹脂液を注入し、気体を内包した液滴粒子を形成し、当該液滴粒子の分散液(白色液〔1〕)を調製した。
この白色液〔1〕を、撹拌装置と水冷還流管と窒素導入管をセットしたセパラブルフラスコに入れ、撹拌と窒素注入を継続しながら、室温で20分間撹拌したのち70℃まで昇温し、70℃で4時間保持した後、撹拌しながら室温まで冷却し、一夜放置した(重合性単量体を重合することによる固体化)。
その後、吸引濾過及びイオン交換水を用いた洗浄を行い、バットに広げて40℃で乾燥して、白色粉体〔1〕を得た(単離)。
この白色粉体〔1〕をそのまま、及び光硬化性の包埋樹脂D−800(日本電子(株)製)中に包埋した包埋片を液体窒素に浸漬して割った断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、粒径が1〜10μm程度の、内部に複数の空間を有し、シェルに大径酸化チタン粒子が埋没している球状の中空粒子〔1〕であることが観察された。図2にこの中空粒子〔1〕の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す。図2(A)は中空粒子〔1〕の外観であり、図2(B)は中空粒子〔1〕の断面である。
得られた白色粉体の走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、粒径が1μm程度の、内部に複数の空間を有し、シェルに大径酸化チタン粒子が埋没している球状の中空粒子〔2〕であることが観察された。図3にこの中空粒子〔2〕の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す。図3(A)は中空粒子〔2〕の外観であり、図3(B)は中空粒子〔2〕の断面である。
中空粒子〔2〕の製造において、工程Aでは反応性表面を有する金属酸化物粒子を、小径酸化チタン粒子〔1〕をKBM−503で表面修飾した粒子に換え、工程CではSPG膜の細孔径を4.9μmとしその送液圧を350kPaとしたほかは、中空粒子〔2〕の製造と同様にして中空粒子〔3〕を製造した。
得られた白色粉体の走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、粒径が2〜3μm程度の、内部に複数の空間を有し、シェルに小径酸化チタン粒子が埋没している球状の中空粒子であることが観察された。図4にこの中空粒子〔3〕の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す。図4(A)は中空粒子〔3〕の外観であり、図4(B)は中空粒子〔3〕の断面である。
体積平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子500質量部をトルエン/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)の混合溶媒1500質量部と撹拌混合し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503、信越化学工業株式会社製)75質量部を添加し、ジルコニアビーズミルにより、回転速度1000rpm、ミル滞留時間40分、温度35度で湿式解砕処理を行った。得られたスラリーから溶媒を減圧蒸留にて留去し、120度で2時間の焼付けを行った。その後、ピンミルにて解砕し、表面修飾済みの小径酸化チタン粒子を得た。
増粘剤としてポリスチレン(樹脂、DIC株式会社製HP−555)18質量部を、スチレンモノマー67.8質量部とネオペンチルグリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製)4.2質量部との混合溶液に溶解させた。それに油溶性界面活性剤(花王株式会社製レオドールSP−L10)2.10質量部と油溶性重合開始剤α,α′−アゾビスイソブチロニトリル(関東化学株式会社製)1.10質量部を加えて溶解させ、樹脂液を調製した(本発明に係る工程(A)に対応する工程)。これ以降は中空粒子〔2〕の製造と同様にして中空粒子〔4〕を製造した。
得られた白色粉体の走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、粒径が1μm程度の、内部に複数の空間を有する球状の中空粒子〔4〕であることが観察された。図5にこの中空粒子〔4〕の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す。図5(A)は中空粒子〔4〕の外観であり、図5(B)は中空粒子〔4〕の断面である。
上述のようにして製造された中空粒子〔1〕〜〔4〕について、下記のようにして強度を評価した。
微小圧縮試験機(島津製作所製MCT−510)を用いて、20μm径平面圧子、負荷速度0.4462mN/secにて荷重し、外径が10%圧縮されたときの圧力を、中空粒子〔1〕〜〔4〕について、それぞれ5個測定し、その平均値を求めた。この平均値を表1に記載の10%圧縮強度とし、強度の評価に採用した。
結果は表1に示す。
2 シェル
3 空孔
Claims (1)
- 液体中で製造する中空粒子の製造方法であって、
(A)少なくとも重合性単量体を含有する樹脂液に、反応性表面を有する金属酸化物粒子を分散した液を調製する工程と、
(B)前記工程(A)で調製した前記金属酸化物粒子を分散した樹脂液に気体を注入する工程と、
(C)前記工程(B)で前記気体が注入された前記樹脂液を、第2の分散媒中に注入して、前記気体を内包した前記樹脂液の液滴粒子を形成し、当該液滴粒子の分散液を調製する工程と、
(C´)前記工程(C)の後に、前記気体を内包した液滴粒子を分割する工程と、
(D)前記工程(C´)で形成された液滴粒子を、当該液滴粒子中に含有されている前記重合性単量体を重合することにより固体化し、さらに、第2の分散媒から単離する工程と、
を有することを特徴とする中空粒子の製造方法。
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