JP6607344B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Description

この発明は鉛蓄電池に関し、特に繰り返し深く放電されても長寿命な鉛蓄電池に関する。
フォークリフトの1日当たりの稼働時間を長くしたいとの要望があり、鉛蓄電池の側からこれに応えるには、深い放電を繰り返した際の寿命性能を向上させる必要がある。特許文献1(JP2013-218894A)は、Na塩ではなく酸型のリグニンスルホン酸を用い、負極電極材料の密度を3.7g/cm3以上とし、電極材料に0.2〜1.2mass%のカーボンを含有させることにより、寿命性能を向上させることを開示している。また特許文献1は、負極電極材料中の硫酸バリウム濃度が0.6mass%の例を開示している。
特許文献2(JP2010-529619A)は、鉛蓄電池の用途毎に、負極電極材料の好ましい組成を開示している。フォークリフト用などの工業動力用では、硫酸バリウムを1.4〜2.25mass%と、自動車用等に比べ高濃度に含有させるとしている。これは、深い放電の繰り返しに対して高濃度の硫酸バリウムが有効である、との経験則があることを示唆する。
JP2013-218894A JP2010-529619A
この発明の課題は、深い放電を繰り返すサイクルに対する、鉛蓄電池の寿命性能を向上させることにある。
この発明の鉛蓄電池は、電解液の理論容量が負極電極材料の理論容量の30%以上であり、負極電極材料が0より多くかつ0.6mass%未満の硫酸バリウムを含み、さらに負極電極材料の密度が3.6g/cm3より高いことを特徴とする。好ましくは、電解液の理論容量が負極電極材料の理論容量の40%以上である。
負極電極材料が0よりも多くかつ0.6mass%未満の硫酸バリウムを含み、さらに負極電極材料の密度を3.6g/cm3より高くすると、負極電極材料の理論容量の30%以上に相当する電気量を放電することを繰り返しても、容量を高く維持できる(図1〜図3)。なお以下、負極電極材料の理論容量の30%以上に相当する電気量の放電を、「負極電極材料の利用率が30%以上となる放電」あるいは「負極利用率が30%以上の放電」のように表現することがある。深い放電を伴う用途では硫酸バリウム含有量が高い方が良い、との経験則(例えば特許文献2を参照)が有り、硫酸バリウム含有量を0.6mass%未満とすることはこの経験則を超えるものである。また特定の硫酸バリウム含有量と、3.6g/cm3より高い負極電極材料密度との組み合わせが重要なことは、本発明で初めて得られた知見である。例えば特許文献1では、負極電極材料のカーボン含有量と密度との組み合わせが重要としている。
この発明の鉛蓄電池では、電解液の理論容量を負極電極材料の理論容量の30%以上とするので、負極電極材料の利用率が30%以上となる放電のような深い放電を行うことができる。この電池は、電解液の理論容量が負極電極材料の理論容量の30%未満のものと比べて、容量を大きくすることができる。また、電解液の理論容量は負極材料の理論容量の40%以上が好ましい。なぜなら、放電反応が進んだときに残存する硫酸成分の量が多くなるため、電解液中の硫酸濃度が低下することに起因する反応過電圧の上昇が抑制され、結果的に、鉛蓄電池のさらなる高容量化がはかれるからである。この効果が優れることから、電解液の理論容量は負極材料の理論容量の43%以上さらには57%以上とすることが好ましい。この発明の鉛蓄電池は深い放電を繰り返しても長寿命なので、フォークリフト用、電気車用等の鉛蓄電池とした際に、1サイクル当たりの稼働時間を長くできる。
負極電極材料は、硫酸バリウムの含有量および密度がつぎのいずれかの範囲を満たすようにすると、深い放電を繰り返した際の寿命を長くできる。
i) 硫酸バリウム含有量が0.1mass%より大きく、かつ密度が 3.7g/cm3より高い、
ii) 硫酸バリウム含有量が0.2mass%より大きく、かつ密度が 3.6g/cm3より高い
硫酸バリウムの含有量および負極電極材料の密度がつぎのいずれかの範囲を満たすようにすると、深い放電を繰り返した際の寿命をさらに長くできる。
i) 硫酸バリウム含有量が0.15mass%以上0.5mass%以下で、かつ密度が 3.8g/cm3以上4.0g/cm3以下、
ii) 硫酸バリウム含有量が0.3mass%以上0.5mass%以下で、かつ密度が 3.7g/cm3以上4.0g/cm3以下
好ましくは、負極電極材料はカーボンの含有量が0.2%mass%以下で、例えば0.2mass%以下0.1mass%以上である。特許文献1では高濃度のカーボンを含有させることにより容量を維持するが、この発明では負極電極材料の密度を3.6/cm3以上とし、硫酸バリウム含有量を0.6mass%未満で0超とすることにより、容量を維持できる。そして0.2mass%を越えるカーボンを必要としない。
この発明の鉛蓄電池は、負極電極材料の利用率が30%以上となる放電過程を含む用途で使用でき、特に1サイクル当たりの負極電極材料の平均利用率が30%以上となる用途で使用できる。好ましくは、負極電極材料の利用率が40%以上となる放電過程を含む用途で使用でき、特に1サイクル当たりの負極電極材料の平均利用率が30%以上となる用途で使用できる。
また正極電極材料の理論容量は例えば負極の理論容量の86%以上とすることによって、軟化などの正極の劣化を抑制することができる。
負極電極材料密度が3.8g/cm3、硫酸バリウム濃度が0.1〜0.8mass%での、サイクル試験結果を示す特性図 負極電極材料密度が3.6g/cm3及び3.7g/cm3、硫酸バリウム濃度が0.2〜0.6mass%での、サイクル試験結果を示す特性図 負極電極材料密度が3.9g/cm3及び4.0g/cm3、硫酸バリウム濃度が0.3〜0.8mass%での、サイクル試験結果を示す特性図 利用率44%の放電1400サイクル目の、硫酸バリウムの含有量と、負極電極材料の理論容量に対する放電容量の割合、との関係を示す特性図 利用率20%の放電1400サイクル目の、硫酸バリウムの含有量と、負極電極材料の理論容量に対する放電容量の割合、との関係を示す特性図
以下に、本願発明の最適実施例を示す。本願発明の実施に際しては、当業者の常識及び先行技術の開示に従い、実施例を適宜に変更できる。なお実施例では、負極電極材料を負極活物質と呼び、正極電極材料を正極活物質と呼ぶことがある。また負極板は、負極格子等の負極集電体と負極電極材料(負極活物質)とから成り、正極板は、芯金等の正極集電体と正極電極材料(正極活物質)とから成り、集電体以外の固形成分は電極材料に属するものとする。この明細書において、「〜」により範囲を示すときは、上限と下限とを含むものとする。
高さ300mm、幅140mm、厚み3.5mmのペースト式負極板5枚と、外形が同じ寸法でチューブ径が10mmのチューブ式正極板4枚とを、それぞれタンク化成後にポリエチレン製微孔セパレータを介して積層し、フォークリフト用の鉛蓄電池とした。負極板の負極電極材料の密度を3.6g/cm3〜4.0g/cm3とし、負極電極材料に対して、カーボンとしてアセチレンブラックを0.2 mass%、リグニンスルホン酸を0.2 mass%、硫酸バリウムを0.1〜0.8 mass%含有させた負極板を準備した。なおアセチレンブラックは他のカーボンブラックに変えても良く、カーボンの種類は任意である。またリグニンスルホン酸のスルホン酸基が、H+が結合しているH型か、Na+が結合しているNa型かは、結果に有意差を与えなかった。リグニンスルホン酸に変えて、スルホン化ビスフェノール類縮合物等を用いても良い。硫酸バリウムは、ピーク粒径が1.20μmで体積平均粒径が1.40μmのものを用いたが、粒径等の性状は任意である。
正極活物質は二酸化鉛を主成分とし、正極板4枚分の理論容量は710±5Ah、負極板5枚分の理論容量は575±3Ahであった。上辺を除く3辺を囲うように、封筒状のセパレータを負極板に装着し、極群を電槽に入れ、比重1.28(20℃)の希硫酸を2800cm(理論容量約357Ah)注入し、負極板の種類ごとに3セルずつ試作電池を製作した。
正極電極材料の理論容量は、負極の理論容量の86%以上とすることが好ましい。このようにすることにより、充放電サイクルに伴う正極板の性能低下を抑制できる。この効果がさらに向上することから、正極電極材料の理論容量は負極の理論容量の114%以上、さらには125%以上とすることが好ましい。充放電サイクルに伴う正極板の性能低下を抑制することによって、負極板の寿命性能が電池全体の寿命性能に影響する割合が大きくなるので、本発明の意義が大きくなる。
負極活物質の種類を”3D2”等の記号で表し、先頭の”3”は硫酸バリウムを0.3mass%含有することを示し、”D”は既化成の負極活物質密度が3.8g/cm3であることを示し、末尾の”2”は2セルの平均でデータを示すことを表す。なお既化成の負極活物質の密度は、Bが3.6g/cm3、Cが3.7g/cm3、Eが3.9g/cm3、Fが4.0g/cm3である。例えば5C2では、既化成の負極活物質が硫酸バリウムを0.5mass%含有し、密度は3.7g/cm3である。
試作電池を30℃水槽中で45Aで放電し、端子電圧が1.7Vを切った時点の放電電気量を測定すると、負極板の種類によらず約252Ahであった。そこで電池の基準容量を252Ah(負極の理論容量に対する利用率(負極利用率)で44%)とした。試作電池を以下のサイクル寿命試験に投入した。すなわち30℃水槽中で、放電は電流67Aを3時間(負極利用率35%)、充電は電流48Aを5時間、放電と充電を交互に行うサイクルを繰り返し、100サイクル毎に30℃、45A、終止電圧1.7Vの放電容量試験を行った。なおサイクル寿命試験中に各電池のうち1セルを100サイクル目の放電容量試験の直前に解体し、BET比表面積を測定した。BET比表面積は硫酸バリウム含有量と共に増加し、硫酸バリウムが負極活物質の収縮を防止していることを裏付けた。なお、上記電池は、電解液の理論容量が負極電極材料の理論容量の約62%である。この構成により、負極利用率30%を大幅に超える深い放電を達成できている。
残りの2セルずつを1400サイクルまでサイクル寿命試験に投入し、1400サイクル後に負極活物質中の硫酸鉛の含有量を測定した。予想に反して、硫酸鉛の含有量は硫酸バリウム含有量と共に増加し、このことは、深い放電を繰り返すと、硫酸バリウムが硫酸鉛を蓄積させることを示している。また400サイクルまでの容量の挙動と1000サイクル以降の容量の挙動は異なり、400サイクルまで容量が安定な電池でも1000サイクル付近から急速に容量が低下する現象が見られた。これらのことは、100サイクル目では硫酸バリウムによりBET比表面積の低下が抑制され、容量も維持されるが、1400サイクル目では硫酸バリウムにより硫酸鉛の蓄積が進み、容量が低下することを示唆する。
負極活物質の密度が3.8g/cm3のD系列での結果を図1に、3.6g/cm3のB系列と3.7g/cm3のC系列での結果を図2に、3.9g/cm3のE系列と4.0g/cm3のF系列での結果を図3に示す。
図1のD系列では、硫酸バリウム含有量が0.1mass%では100サイクル目の容量低下が著しく、0.8mass%では300サイクル目以降の容量低下が著しく、0.6mass%では600サイクル目以降の容量低下が著しかった。そして硫酸バリウム含有量が0.15mass%では、容量は低いものの安定で、深い放電の繰り返しに対する耐久性には、硫酸バリウム含有量を低くすることが重要であることを示唆している。そして硫酸バリウム含有量が0.15mass%〜0.5mass%で1400サイクル目に高い容量が得られ、密度が3.8g/cm3ではこの範囲が最適であることを示している。
図2のB系列、C系列の内、B系列(密度3.6g/cm3)では、硫酸バリウム含有量によらず、1400サイクル目の容量が低かった。このことは負極活物質の密度が低いと、深い放電の繰り返しへの耐久性が得られないことを示している。C系列(密度3.7g/cm3)では、硫酸バリウム含有量が0.3mass%(3C2)と0.5mass%(5C2)で1400サイクル目の容量が高かった。
図3のE系列(密度3.9g/cm3)、F系列(密度4.0g/cm3)では、硫酸バリウム含有量を0.6mass%以上とすると、硫酸バリウム含有量によらず、1400サイクル目の容量が低かった。これに対して負極活物質の密度3.9g/cm3で、硫酸バリウム含有量が0.3mass%で、1400サイクル目の容量が高かった。このように硫酸バリウム含有量は0.6mass%未満が良いことは、どの密度でも共通していた。
上記評価結果のうち、負極活物質の密度が3.8g/cm3のものおよび3.6g/cm3にものについて、1400サイクル目の放電容量と硫酸バリウムの含有量との関係を図4にそれぞれ示す。比較として、放電深度がより浅い場合の傾向について別途評価した結果を図5に示す。図5の結果は、上記試験の放電条件を負極電極材料の理論容量の20%(すなわち負極利用率20%)に変更して行ったものである。なお、1400サイクル目の放電容量は、負極電極材料の理論容量に対する割合で評価した。
図4から、負極活物質の密度が3.8g/cm3かつ負極利用率44%となる放電をおこなった場合、硫酸バリウム含有量が0.4mass%〜0.8mass%の範囲では、含有量が少なくなるにしたがって1400サイクル目の放電容量が大きく向上していることがわかる。他方、図4および図5から、負極密度が3.6g/cm3の場合や、負極利用率が20%となる放電の場合においては、このような傾向が認められないことがわかる。これらのことは、負極電極材料の理論容量の44%に相当する容量を放電できるだけの電解液を備え、かつ負極電極材料の密度が3.8g/cm3という構成をそなえた場合、硫酸バリウム含有量を低減することによって寿命性能が向上する効果が顕著に得られることを意味するものである。
上記の現象は、硫酸バリウムが負極電極材料の導電性に及ぼす影響の度合いに関連性があるものと推定される。すなわち、硫酸バリウムは導電性が低いので、負極電極材料に添加すると負極電極材料の伝導性が低下するが、特定条件下ではこの低下が硫酸鉛の蓄積を加速させる原因になっていると推定される。負極利用率が20%程度の浅い放電深度においては、負極板全体にわたってほぼ均一な放電状態となっており、充電時においても負極電極材料の伝導性は高いので、硫酸バリウムの添加量が0.6mass%程度であれば負極電極材料内部は十分な伝導性を維持できる。このことは、従来技術における硫酸バリウムの含有量が1.4~2.25mass%ということからも明らかである。そのため、従来の鉛蓄電池においては、0.6mass%程度の硫酸バリウムが硫酸鉛の蓄積を加速させるという現象は生じない。他方、上記試験のように、負極利用率が44%のような深い放電深度まで放電されると、負極板内における放電状態の不均一性が顕著となり、たとえば局所的に50%を超えるようなとくに深い放電深度となる部分が生じる。このような場所では、充電時における負極電極材料の導電性がとくに低く、充電を受け入れにくい状態となっている。そのような状況下では、硫酸バリウムの添加による導電性低下の影響は大きく、硫酸鉛の蓄積が加速される程度にまで導電性を引き下げることになったと推定される。
このようなメカニズムに基づいて考察すると、硫酸バリウムの含有量を低減することによる寿命性能の向上効果は、負極電極材料の利用率が30%以上となる放電を含む充放電サイクルを行う場合に、とくに明確に観察できると考えられる。そして負極電極材料の利用率が40%以上となる放電をする場合に、さらに顕著に認められると考えられる。負極電極材料の利用率が30%以上となる放電を含む充放電サイクルを行うと、硫酸鉛の蓄積が明確に認められるようになり、負極電極材料の利用率が40%以上の放電を行う場合は、硫酸鉛の蓄積がさらに顕著になる。そして、硫酸鉛の蓄積が発生しているという状況は、充電過程において活物質の導電性が低下していることを意味している。このため、0.6mass%程度の添加量であったとしても、活物質全体の導電性、なかんずく負極板内において放電状態の不均一性が顕著となっている状態において、とくに深い放電深度となっている部分の導電性に、硫酸バリウムが大きく影響を及ぼすと考えられる。そのような状況では、硫酸バリウムを減量することによって、硫酸鉛の蓄積を顕著に回避あるいは抑制できると推定される。したがって、当該効果は、電解液の理論容量が負極電極材料の理論容量の30%以上の電池において発揮されやすく、40%以上のときにより顕著に発揮される。
硫酸バリウムの含有量を低減することによって寿命性能が向上するという効果は、理由は明らかではないが、負極電極材料の密度が3.6g/cm3より大きい範囲でのみ認められる。図4に示した通り、密度が3.6g/cm3の場合は、当該効果は得られない。他方、負極電極材料の密度が3.7g/cm3、3.9g/cm3および4.0g/cm3でも同様の傾向があることが確認された。これらのことから、この効果は3.6g/cm3よりも高い密度範囲で得られるものと推定される。
以上のことから、本発明において、硫酸バリウム含有量を低減することによって得られる寿命性能向上の効果は、電解液の理論容量を負極電極材料の理論容量の30%以上とし、かつ負極電極材料の密度が3.6g/cm3より高くした鉛蓄電池において、特有に確認される現象であると言える。そして、この本発明は、負極電極材料の利用率が30%以上となる用途で意義が大きく、当該割合が40%以上の用途ではさらに意義が大きい。
これらの結果は、フォークリフト用などの深い放電を伴う用途で、負極活物質中の硫酸バリウム含有量を増すとの、特許文献2の指針とは反する。また硫酸バリウム含有量と負極活物質の密度との組み合わせが重要で、活物質の密度を3.6g/cm3よりも高くし、かつ硫酸バリウム含有量を0.6mass%未満にすることが重要であることを示している。
負極の理論容量に対する1400サイクル目の放電容量を、表1にまとめて示し、灰色の領域が最適領域である。硫酸バリウム含有量は0.1mass%超で0.6mass%未満が良く、特に0.15mass%以上0.5mass%以下で、負極活物質の密度が3.8g/cm3以上4.0g/cm3以下が最適で、密度が3.7g/cm3以上3.8g/cm3以下で硫酸バリウム含有量が0.3mass%以上0.5mass%以下の範囲も優れている。これらのことを一般化すると、硫酸バリウム含有量が0.1mass%超0.6mass%未満で、密度が3.7g/cm3超4.0g/cm3以下の領域が好ましく、この中でも硫酸バリウム含有量が0.15mass%超0.6mass%未満の領域が好ましい。また硫酸バリウム含有量が0.2mass%超0.6mass%未満で密度が3.6g/cm3超4.0g/cm3以下の領域も好ましい。
硫酸バリウムの添加によって改善される寿命性能は添加量に概ね比例するという認識があったが、上記の好ましい範囲については、範囲の内外で比例関係を超える性能改善が認められる。すなわち、表1からたとえば負極密度が3.8g/cm3の場合、硫酸バリウムの含有量を0.1%から0.15%としたとき放電容量は25%から31%に改善していることがわかる。比較として、負極密度が3.6g/cm3の場合は硫酸バリウムの含有量を0.1%増やすことに概ね放電容量が1%増える傾向となっていることがわかる。なお、この傾向は図4でも見ることができる。これらの対比から、0.15mass%以上0.5mass%以下で、負極活物質の密度が3.8g/cm3以上4.0g/cm3以下の範囲とすることによって、範囲外と比べて顕著な効果が得られていることがわかる。また、同様の理由で密度が3.7g/cm3以上3.8g/cm3以下で硫酸バリウム含有量が0.3mass%以上0.5mass%以下の範囲も顕著な効果が得られていることはわかる。
上記のサイクル試験は、昼間に負極利用率35%でフォークリフトを運転し、夜間に充電して、週末の均等充電を省略することに相当する。この条件で、1400サイクルの間、理論容量に対する容量を30%以上に維持できることは、負極利用率が40%を越えるように運転条件を過酷にし、これを週末の均等充電で補うことを想定した場合、フォークリフト用の鉛蓄電池を、負極利用率が40%を越える条件で、5年間使用できることを示唆する。
なお、本発明は、フォークリフト用の鉛蓄電池以外にも、負極利用率が30%以上の放電過程を経る用途であれば好ましく用いられる。また本発明によれば、負極活物質の理論容量の30%以上または40%以上を定格容量と定めた鉛蓄電池を、市場に供給することができる。このような鉛蓄電池は、ユーザーが定格容量の100%を追加の充電なしに使い切るという使い方をしても、繰り返し充放電して使用する時の容量低下が抑制されることとなる。
本発明における各種材料の定量方法を示す。満充電後の鉛蓄電池を解体し、負極板を水洗及び乾燥して硫酸分を除去し、負極電極材料を採取する。負極電極材料を粉砕し、300g/L濃度の過酸化水素水を、負極電極材料100g当たり20mL加え、さらに60mass%の濃硝酸をその3倍容のイオン交換水で希釈した(1+3)硝酸を加え、撹拌下で5時間加熱し、鉛を硝酸鉛として溶解させる。次いで濾過により、カーボンブラック、硫酸バリウム、補強材(含まれている場合)を分離する。
濾過によって得られた固形分を水中に分散させる。補強材が通らない篩い、例えば径が
1.4mmの篩いを用い、分散液を2回篩いを通して、水洗をおこない補強材を除去する。次いで例えば3000rpm×5分の遠心分離を施し、カーボンブラックを上澄みおよび上方沈殿から抽出し、下方沈殿から硫酸バリウムを抽出する。上記一連の操作で分離した硫酸バリウム、カーボンブラックを水洗乾燥した後にそれぞれの重量を秤量する。
本発明における負極電極材料の密度の測定方法をつぎに示す。既化成で満充電状態の負極電極材料を水洗・真空乾燥したあと格子から分離し、水銀アマルガムを作らないよう前処理した後に負極電極材料を水銀圧入試験用の容器に充填し、負極電極材料の質量を測定し、次いで100μm以上の細孔が水銀が満たされるように水銀を圧入したときの負極電極材料の体積を測定する。この体積で負極電極材料の質量を割ることによって負極電極材料の密度を計算する。

Claims (4)

  1. 電解液の理論容量が負極電極材料の理論容量の30%以上であり、前記負極電極材料が0より多くかつ0.6mass%未満の硫酸バリウムを含み、さらに負極電極材料の密度が3.6g/cm3より高く、前記負極電極材料の利用率が30%以上となる放電過程を含む用途で使用されることを特徴とする、開放型の鉛蓄電池。
  2. 前記負極電極材料は、前記硫酸バリウムの含有量および密度がつぎのいずれかの範囲を満たすことを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
    i) 硫酸バリウム含有量が0.1mass%より大きく、かつ密度が 3.7g/cm3より高い、
    ii) 硫酸バリウム含有量が0.2mass%より大きく、かつ密度が 3.6g/cm3より高い
  3. 前記負極電極材料は、前記硫酸バリウムの含有量および密度がつぎのいずれかの範囲を満たすことを特徴とする請求項2に記載の鉛蓄電池。
    i) 硫酸バリウム含有量が0.15mass%以上0.5mass%以下で、かつ密度が3.8g/cm3以上4.0g/cm3以下、
    ii) 硫酸バリウム含有量が0.3mass%以上0.5mass%以下で、かつ密度が3.7g/cm3以上4.0g/cm3以下
  4. 前記負極電極材料は、カーボンの含有量が0.2mass%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉛蓄電池。
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