以下、図1〜図3を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、楽器ケース1を備えている。
この楽器ケース1は、図1および図2に示すように、底板2と、この底板2の前端部(図2では左端部)に起立して設けられた前板3と、底板2の後端部(図2では右端部)に起立して設けられた背板4と、底板2の両側部(図2は紙面の表裏面側)に起立して設けられた一対の側板5と、背板4の上端部および一対の側板5の上端部に設けられた天板6と、を備えている。
この場合、前板3は、図1および図2に示すように、その高さが背板4の高さの半分以下の高さに形成されている。また、一対の側板5は、前部側(図2では左側)が前板3の高さよりも少し高く形成され、後部側(図2では右側)が背板4と同じ高さに形成されている。これにより、一対の側板5は、前部側と後部側との境界部がほぼ垂直な立ち上り部5aに形成され、この立ち上り部5aの下部から側板5の前端部に向けて前下がりに緩やかに傾斜する傾斜部5bが形成されている。
天板6は、図2に示すように、第1天板30と第2天板31とを備え、これらが一対の側板5における後部側(図2では右側)の各上端部と背板4の上端部とに亘って取り付けられるように構成されている。この場合、第1天板30は、背板4の上端部と一対の側板5の上端部における後部側に開閉可能に配置されるように構成されている。第2天板31は、第1天板30の前側に位置する一対の側板5の上端部における前部側に配置されるように構成されている。
これにより、楽器ケース1は、図1および図2に示すように、一対の側板5の前部側(図2では左側)に位置する個所が上側に開放されたほぼ箱形状に形成されている。この場合、天板6における第2天板31の上面には、譜面立て9が後方に少し傾いた状態で起立して設けられている。
一方、楽器ケース1内における前側部(図2では左側)には、図2に示すように、鍵盤部7が上方に露呈した状態で設けられている。この鍵盤部7は、楽器ケース1の底板2上に設けられた鍵盤シャーシ8と、この鍵盤シャーシ8上に並列に配列された複数の鍵10と、を備えている。複数の鍵10は、白鍵10aと黒鍵10bとを有し、その各後端部が鍵盤シャーシ8上に上下方向に回転可能に取り付けられ、この状態で楽器ケース1の前側上方に露呈するように構成されている。
また、楽器ケース1内には、図2に示すように、鍵盤部7の複数の鍵10にそれぞれアクション荷重を付与するアクション機構部11が、鍵盤部7の後方に位置して設けられている。このアクション機構部11は、鍵10が押鍵された際に、その押鍵された鍵10に対応するハンマー部材11aが回転することにより、押鍵された鍵10それぞれにアクション荷重を付与するように構成されている。
すなわち、このアクション機構部11は、図2に示すように、鍵10にアクション荷重を付与することにより、アコースティックピアノの鍵タッチに近似した鍵タッチ感が得られるように構成されている。また、このアクション機構部11は、ハンマー部材11aが回転して鍵10にアクション荷重を付与した際に、スイッチ動作するスイッチ部12を備えている。このスイッチ部12は、そのスイッチ動作によって後述する発音部13から楽音を発生させるための電気信号を出力するように構成されている。
また、この楽器ケース1内には、図2に示すように、鍵盤部7とアクション機構部11との間を仕切る仕切部材14が設けられている。この仕切部材14は、鍵盤部7における複数の鍵10の各後端部の上方に配置されたカバー板14aと、このカバー板14aの後端部上にほぼ垂直に起立して設けられた天前板14bと、を有している。
この場合、カバー板14aは、図2に示すように、鍵盤部7の後部上側に位置した状態で、一対の側板5間に梁渡されている。また、天前板14bは、天板6における第2天板31の前端部(図2では左端部)に位置する側板5の立ち上り部5aから後部側(図2では右端部)に離れた位置に配置されている。
この天前板14bは、図2に示すように、その上端部が第2天板31の下面に配置され、鍵10の配列方向における両端部が一対の側板5間に取り付けられて固定されるように構成されている。また、この天前板14bの上部には、図1に示すように、複数の開放孔14cが鍵10の配列方向に沿って所定間隔で設けられている。
さらに、この楽器ケース1内には、図2に示すように、棚板15が天板6の下側でかつアクション機構部11の上方に位置する箇所に配置されている。この棚板15は、天前板14bに設けられた複数の開放孔14cの下側に位置する天前板14bの上部と背板4との間に位置した状態で、一対の側板5間に固定されている。この棚板15の前側下面における鍵10の配列方向の両側には、スピーカなどの発音部13がそれぞれ上向きで取り付けられている。この場合、棚板15には、発音放音孔15aが発音部13に対応して設けられている。
ところで、この楽器ケース1には、図1および図2に示すように、鍵盤部7を開閉可能に覆うための鍵盤蓋開閉装置16が設けられている。この鍵盤蓋開閉装置16は、鍵盤部7を開閉可能に覆う鍵盤蓋17を備えている。この鍵盤蓋17は、鍵盤部7の前後方向における長さが互いに異なる前蓋18と後蓋19とを有し、これら前蓋18と後蓋19とが蝶番などの連結部材20によって折り曲げ可能に連結された構成になっている。
すなわち、この鍵盤蓋17は、図2に示すように、前蓋18と後蓋19とが図2において連結部材20を中心に回転してほぼ平板状に展開した状態で、鍵盤部7の上側に配置されることにより、前蓋18が鍵盤部7の前部側を覆い、後蓋19が鍵盤部7の後部側を覆うように構成されている。この場合、前蓋18は、その前後方向の長さが後蓋19の前後方向(図2では上下方向)の長さよりも長く形成されている。
また、この鍵盤蓋開閉装置16は、図2に示すように、後蓋19の後端部を楽器ケース1に回転可能に支持する回転支点部21と、前蓋18の前端部を鍵盤部7の前後方向にガイドするガイド部22と、を備えている。回転支点部21は、ヒンジ部であり、仕切部材14の天前板14bの下部に位置した状態で、一対の側板5間に梁渡された軸部21aと、後蓋19の後端上部に設けられた筒状の軸受部21bと、を備えている。
これにより、回転支点部21は、図2に示すように、一対の側板5間に梁渡された軸部21aが後蓋19の軸受部21bに挿入され、この状態で軸部21aを中心に後蓋19が上下方向に回転するように構成されている。また、この回転支点部21は、前蓋18と後蓋19とが連結部材20で折れ曲がって鍵盤蓋17が鍵盤部7を開放した際に、鍵盤蓋17を山折に折り曲げて前蓋18を鍵盤部7の後部上方に起立させるように構成されている。
また、ガイド部22は、図2に示すように、前蓋18の前端下部に設けられたガイド突起部18aが挿入して鍵盤部7の前後方向にガイドする溝であり、楽器ケース1における一対の側板5の各内面に設けられている。すなわち、このガイド部22は、鍵盤部7の前端部から立ち上がり、鍵盤部7の上側に沿って鍵盤部7の後部に亘って緩やかに湾曲した状態で設けられている。
これにより、鍵盤蓋17は、図2に示すように、前蓋18と後蓋19とが図2において連結部材20を中心に回転してほぼ平板状に展開した状態で鍵盤部7の上側に配置された際に、前蓋18が前下がりに少し傾斜した状態で、前蓋18のガイド突起部18aがガイド部22の前端部に位置して支持されると共に、後蓋19がほぼ水平な状態で、後蓋19の後端部が回転支点部21によって支持されるように構成されている。
また、この鍵盤蓋17は、図2に示すように、前蓋18と後蓋19とが連結部材20を中心に折れ曲がって互いに接近した状態で、鍵盤部7を開放させた際に、前蓋18のガイド突起部18aがガイド部22の後端部に位置して前蓋18がほぼ直立に起立した状態で支持されると共に、後蓋19の後端部が回転支点部21によって支持されて後蓋19が起立するように構成されている。
この場合、鍵盤蓋17は、図2に示すように、前蓋18と後蓋19とが連結部材20を中心に山折に折れ曲がって起立した際に、後蓋19が仕切部材14の天前板14bに接近した状態で、一対の側板5の立ち上り部5aと天前板14bとの間に配置されて収納されるように構成されている。すなわち、この鍵盤蓋17は、山折に折れ曲がって起立した際に、その上端部が第2天板31の下面から下側に離れた位置、つまり天前板14bの開放孔14cよりも少し低い高さになるように構成されている。
一方、この楽器ケース1の前側上部には、図1および図2に示すように、放音部材24が設けられている。この放音部材24は、枠形状に形成され、発音部13で発生した音を楽器ケース1の前側に向けて放音する放音孔23が、楽器ケース1の前後方向に開放されて設けられている。また、この放音部材24は、鍵盤部7の後部上方に位置する楽器ケース1の第2天板31の前側下面に配置されている。
すなわち、この放音部材24は、図1および図2に示すように、複数の鍵10の配列方向に沿う鍵盤部7の全長に亘って配置された枠状部25を有し、枠状部25で囲われた領域に放音孔23が楽器ケース1の前後方向に開放された状態で形成された構成になっている。この場合、枠状部25は、厚みの薄い上板部25aと同じ厚みの下板部25bとによって枠状に構成されている。この枠状部25は、その高さが天前板14bの上部に設けられた開放孔14cに対応する長さで形成されている。
また、この枠状部25は、図1および図2に示すように、その前後方向の長さが、天前板14bの前面と一対の側板5の立ち上り部5aとの間の長さよりも少し短い長さで形成されている。枠状部25は、側板5の立ち上り部5aより前方向に突出しないことが望ましい。つまり、側板5の上部の前後方向の長さに基づく。
これにより、放音部材24は、図1および図2に示すように、天前板14bの上部に設けられた開放孔14cに対応して、天前板14bの前側に位置する第2天板31の前側下面に配置され、この状態で第2天板31の下面に取り付けられるように構成されている。
この場合、放音部材24は、図1〜図3に示すように、鍵盤蓋17が山折に折れ曲がって、後蓋19が天前板14bに接近した状態で、一対の側板5の立ち上り部5aと仕切部材14の天前板14bとの間に起立して配置された際に、鍵盤蓋17の上端部が放音部材24の下側に位置することにより、鍵盤蓋17によって放音部材24の放音孔23が塞がれないように構成されている。
また、この放音部材24の前面には、図1に示すように、ネット部材29が設けられている。このネット部材29は、発音部13のネットとほぼ同じ布状のものであり、放音部材24の放音孔23を覆って放音部材24の前面に取り付けられ、この状態で発音部13が発生した音を通過させ、埃などの塵挨が通過しないように構成されている。この場合、ネット部材29は、楽器ケース1の前面に露呈するため、装飾性を有していることが望ましい。
ところで、天板6の後部側に位置する第1天板30は、図2に示すように、放音蓋であり、その後端部が蝶番30aによって背板4の上端部に回転可能に取り付けられ、この蝶番30aを中心に上下方向に回転して天板放音孔6aを開閉するように構成されている。この第1天板30は、蝶番30aを中心に上方に向けて回転して天板放音孔6aを開放した際に、蓋支持部材32によって支持されるように構成されている。
この蓋支持部材31は、図2に示すように、楽器ケース1内の棚板15の上面に設けられた支持規制部33と、この支持規制部33にスライド可能に設けられて第1天板30を支持する支持棒34と、を備えている。この支持棒34は、その上端部34aが第1天板30の前側下面に回転可能に取りけられ、下端部33bが支持規制部33にスライド可能に設けられた構成になっている。
これにより、支持棒34は、図2に示すように、放音蓋である第1天板30が開かれる際に、下端部34bが支持規制部33に沿って前側に移動しながら徐々に起立し、第1天板30が開かれた際に、下端部34bが支持規制部33の前端部に当接して位置規制されることにより、天板放音孔6aを開放した状態で第1天板30を支持するように構成されている。
また、この支持棒34は、図2に示すように、第1天板30が閉じられる際に、下端部33bが支持規制部33に沿って後側に移動しながら徐々に横倒し、第1天板30が閉じられた際に、下端部34bが支持規制部33の後端部に位置して、楽器ケース1内に横倒して収納されることにより、第1天板30が閉じられて天板放音孔6aを塞ぐように構成されている。
一方、天板6の前側に位置する第2天板41は、図2および図3に示すように、取付調整部材35によって第1天板30の前側に位置する一対の側板5上に取り付けられるように構成されている。この第2天板31は、その前端部が一対の側板5の中間部に位置する立ち上り部5aから少し前側に突出した状態で配置され、かつ第2天板31の後端部が第1天板30の前端部に接近した状態で配置されるように構成されている。
この場合、第1天板30の前端部には、図2に示すように、その上面から下面に向けてオーバーハング状に傾斜する第1傾斜面30bが設けられている。また、第2天板部31の後端部には、その下面から上面に向けて傾斜し、第1天板30の第1傾斜面30bの下側に潜り込む第2傾斜面31aが設けられている。
取付調整部材35は、図2および図3に示すように、第2天板31の下面に取り付けられる第1取付部36aと天前板14bの後面(図3では右側面)に対して取り付けられる第2取付部36bとを有する取付部材36と、第1取付部36aを第2天板31の下面に取り付ける複数のビス37と、第2取付部36bを天前板14bの後面に対して調整可能に取り付ける締結部材であるねじ部材38と、を備えている。
取付部材36は、図2および図3に示すように、ステンレスなどの金属板を逆L字形状に折り曲げた金具であり、第2天板31の下面に対応する第1取付部36aと、天前板14bの後面に対応する第2取付部36bとが、一体に形成された構成になっている。この場合、第1取付部36aは、複数のビス37によって第2天板31の下面に取り付けられるように構成されている。
また、第2取付部36bには、図2および図3に示すように、ねじ部材38が螺合するねじ孔39が設けられている。ねじ部材38は、ねじ部38aと頭部38bとを有し、ねじ部38aが天前板14bに設けられたねじ挿入孔40に前側(図3では左側面)から挿入されて螺合するように構成されている。この場合、天前板14bの前面には、補助金具41がビス42によって取り付けられており、この補助金具41には、ねじ孔41aが天前板14bのねじ挿入孔40に対応して設けられている。
これにより、ねじ部材38は、図2および図3に示すように、補助金具41のねじ孔41aにねじ部38aが螺合して天前板14bのねじ挿入孔40に挿入され、この状態で取付部材36の第2取付部36bのねじ孔39に螺合することにより、天前板14bの後面と第2取付部36bとの間に隙間S1が生じていても、その隙間S1を保った状態で、第2取付部36bを天前板14bに対して取り付けるように構成されている。
このため、取付調整部材35は、図2および図3に示すように、第2天板31の下面に取付部材36の第1取付部36aを複数のビス37で取り付け、この第2天版31を第1天板30の前側に位置する一対の側板5上に配置して位置合せし、この状態でねじ部材38によって第2取付部36bを天前板14bに対して取り付けるように構成されている。
次に、このような天板6の第1天板30および第2天版31を一対の側板5上に取り付ける場合について説明する。
この場合には、第1天板30および第2天版31を一対の側板5上に取り付ける前に、予め、楽器ケース1内に鍵盤部7およびアクション機構部11を組み込み、この状態で仕切り部材14および棚板15を取り付ける。
この場合、仕切り部材14を取り付ける際には、予め、天前板14bに鍵盤蓋17を取り付け、この状態でカバー板14aを楽器ケース1内に組み付け、この後天前板14bを楽器ケース1内に組み込む。また、棚板15を取り付け際には、予め、棚板の下面に発音部13を取り付け、この状態で楽器ケース1の一対の側板5間に組み付ける。
そして、天板6を一対の側板5上に取り付ける際には、まず、背板4の上端部に第1天板30を開閉可能に取り付ける。このときには、第1天版30を一対の側板5の上端部と背板4の上端部に配置して位置合せし、この状態で第1天版30の後端部を蝶番30aによって背板4の上端部に回転可能に取り付ける。
また、このときには、第1天板30の下面に支持棒34の上端部34aを取り付け、この支持棒34の下端部34bを支持規制部33に取り付け、この支持規制部33を棚板15上に取り付ける。これにより、第1天板30は、一対の側板5の後部側に位置する上端部上と背板4の上端部上とに位置合せされた状態で、第1天板30の後端部が背板4の上端部に蝶番30aによって回転可能に取り付けられている。
一方、第2天板31を一対の側板5上に取り付ける場合には、予め、第2天板31の下面に取付調整部材35の取付部材36を取り付ける。このときには、第2天板31の下面における所定位置、つまり取付部材36の第2取付部36bが天前板14bの後面に対面する位置に取付部材36の第1取付部36aを複数のビス37によって取り付ける。
そして、第2天板31を第1天板30の前側に位置する一対の側板5上に配置して位置合せする。このときには、第1天板30の前端部の第1傾斜面30bと第2天板31の後端部の第2傾斜面31aとの間に隙間ゲージGを配置して、第1天板30の前端部と第2天板31の後端部との間の隙間S2が均一になるように調整すると共に、一対の側板5に対する第2天板31の設置位置を調整して位置合せする。
この状態で、第2天板31の取付位置を取付調整部材35によって調整して第2天板31を一対の側板5に対して固定する。このときには、予め、天前板14bのねじ挿入孔40に補助金具41のねじ孔41aを対応させた状態で、天前板14bの前面に補助金具41をビス42によって取り付ける。
そして、ねじ部材38のねじ部38aを補助金具41のねじ孔41aにねじ部38aを螺合させて天前板14bのねじ挿入孔40に挿入させ、この挿入したねじ部38aの先端部を取付部材36の第2取付部36bのねじ孔39に螺合させて、ねじ部材38を締め付ける。
このときには、ねじ部材38を締め付けながら、第1天板30の前端部と第2天板31の後端部との隙間S2を隙間ゲージGで調整し、第1天板30の前端部と第2天板31の後端部との隙間S2を均一にする。このとき、天前板14bの後面と第2取付部36bとの間に隙間S1が生じていても、その隙間S1を保った状態で、第2取付部36bが天前板14bに対して固定される。これにより、第2天板31が一対の側板5上に位置合せされて固定される。
この後、天前板14bの前面に放音部材24を配置して第2天板31の下面に取り付ける。このときには、予め、放音部材24の前面にネット部材29を取り付け、この放音部材24を、天前板14bに設けられた複数の開放孔14cに対応させて、第2天板31の下面に取り付ける。これにより、取付調整部材35のねじ部材38および補強金具41が放音部材24のネット部材29によって覆い隠される。
次に、この鍵盤楽器の作用について説明する。
この鍵盤楽器で演奏する場合には、まず、鍵盤蓋17を開いて鍵盤部7を開放する。このときには、前蓋18の前端下部に手を掛けて前蓋18を押し上げながら鍵盤部7の後方に向けて押す。
すると、前蓋18のガイド突起部18aがガイド部22に沿って鍵盤部7の後部側に向けて移動を開始すると共に、後蓋19の後端部が回転支点部21を中心に図2において時計回りに回転を開始する。このときには、前蓋18と後蓋19とが連結部材20を中心に回転して徐々に山折が高くなるように折れ曲がる。
そして、前蓋18を更に鍵盤部7の後方に向けて押すと、前蓋18の下面(図2では右側面)が後蓋19の下面(図2では左側面)に対面して接近し、前蓋18のガイド突起部18aがガイド部22の後端部に位置した状態でほぼ直立に起立すると共に、後蓋19の後端部が回転支点部21を中心に更に時計回りに回転して起立する。
このときには、前蓋18のガイド突起部18aがガイド部22の後端部に支持されて、前蓋18が鍵盤部7の後部上方にほぼ垂直な状態で起立する。これにより、前蓋18の下面(図2では右側面)と後蓋19の下面(図2では左側面)とが互いに対面して接近した状態で、鍵盤蓋17が鍵盤部7の後端部上に山折に折り曲げられて起立し、鍵盤部7が開放される。
この状態では、鍵盤蓋17が山折に折れ曲がって、後蓋19が仕切部材14の天前板14bに接近した状態で、鍵盤蓋17が一対の側板5の立ち上り部5aと天前板14bとの間に起立して配置されると共に、鍵盤蓋17の上端部が放音部材24の下側に位置して配置される。これにより、放音部材24の放音孔23が鍵盤蓋17によって塞がれることがない。また、このときには、第1天板30を閉じて天板放音孔6aを塞いでおく。
このように第1天板30で天板放音孔6aが塞がれて、鍵盤部7が開放された状態では、鍵盤部7が楽器ケース1の上側に露出するので、この鍵盤部7の複数の鍵10を押鍵操作して演奏することができる。この状態で、鍵10を押鍵操作して演奏すると、アクション機構部11のハンマー部材11aが回転して鍵10にアクション荷重が付与される。また、このときには、アクション機構部11のスイッチ部12がスイッチ動作して電気信号を出力し、このスイッチ部12からの電気信号に基づいて発音部13が楽音を発生する。
このように発音部13が楽音を発生すると、その楽音が棚板15の発音放音孔15aから第1天板30と第2天板31との下側に放音される。このときには、天板6の天板放音孔6aが第1天板30で塞がれているため、天板6と棚板15との間に放音された楽音は、仕切部材14の天前板14bの開放孔14cを通して、放音部材24の放音孔23から楽器ケース1の前側に向けて放音される。これにより、演奏者が発音部13で発生した楽音を良好に聴くことができる。
ところで、発音部13で発生された楽音の音質を変えたい場合には、天板6の第1天板30を開いて天板放音孔6aを開放させれば良い。このときには、第1天板30の後端部に設けられた蝶番30aを中心に第1天板30を上方に向けて回転させると、支持棒33の下端部33bが支持規制部32に沿って前側に移動しながら徐々に起立し、第1天板30が開いた際に、支持棒33の下端部33bが支持規制部32の前端部に当接して位置規制される。
これにより、第1天板30が開いて天板放音孔6aを開放させた状態で、第1天板30が支持棒33によって支持される。この状態で、発音部13で楽音が発生されると、その楽音が棚板15の発音放音孔15aから天板6に向けて放音される。この放音された楽音は、その一部が放音部材24の放音孔23を通して楽器ケース1の前側に放音される。
また、他の一部の楽音は、天板放音孔6aから楽器ケース1の上方に放音され、この放音された楽音が第1天板30で楽器ケース1の前側に向けて反響される。このように、発音部13で発生された楽音が放音部材24の放音孔23と第1天板30の天板放音孔6aとから楽器ケース1の外部に放音されることにより、発音部13で発生された楽音の音質が変化し、この変化した音質の楽音を良好に聴くことができる。
このように、この鍵盤楽器の天板によれば、一対の側板5の後部間に設けられた背板4の上端部に回転可能に取り付けられた第1天板30と、この第1天板30の前側に位置する一対の側板5上に配置される第2天板31と、第1天板30の前端部と第2天板31の後端部との間の隙間S2を調整して第2天板31を一対の側板5に対して固定する取付調整部材35と、を備えていることにより、第1天板30および第2天板31の取付作業性が良く、かつ精度良く正確に取り付けることができる。
すなわち、この鍵盤楽器の天板では、背板4の上端部に第1天板30を回転可能に取り付けた状態で、第1天板30の前側に位置する一対の側板5上に第2天板31を取り付ける際に、第1天板30の前端部と第2天板31の後端部との間の隙間S2を取付調整部材35によって調整して取り付けることができるので、第1天板30および第2天板31の取付作業性が良く、かつ精度良く正確に取り付けることができる。
この場合、この鍵盤楽器の天板は、第2天板31の前側下面に位置して一対の側板5間に取り付けられた天前板14bを備えていることにより、第2天板31を一対の側板5に直接取り付けて固定する必要がなく、一対の側板5間に取り付けられた天前板14bに対して第2天板31を取付調整部材35によって取り付けることにより、第2天板31を一対の側板5に対して確実にかつ良好に取り付けて固定することができる。
また、取付調整部材35は、第2天板31の下面に取り付けられる第1取付部36aと天前板14bの後面に対して取り付けられる第2取付部36bとを有する取付部材36と、第1取付部36aを第2天板31の下面に取り付ける複数のビス37と、第2取付部36bを天前板14bの後面に対して調整可能に取り付ける締結部材であるねじ部材38と、を備えていることにより、一対の側板5に対する第2天板31の取付位置を取付調整部材35によって調整して精度良く正確に取り付けることができる。
この場合、この取付調整部材35は、取付部材36の第2取付部36bにねじ部材38のねじ部38aが螺合するねじ孔39が設けられ、天前板14bにねじ部材38のねじ部38aが挿入するねじ挿入孔40が設けられ、天前板14bの前面に補助金具41が取り付けられ、この補助金具41にねじ部材38のねじ部38aが螺合するねじ孔ねじ孔41aが設けられていることにより、ねじ部材38の締め付けを調整するだけで、第2天板31を精度良く正確に取り付けることができる。
すなわち、この取付調整部材35では、第2天板31の下面に取付部材36の第1取付部36aを複数のビス37によって取り付け、この第2天板31を第1天板30の前側に位置する一対の側板5上に配置して位置合せし、ねじ部材38のねじ部38aを補助金具41のねじ孔41aにねじ部38aを螺合させて天前板14bのねじ挿入孔40に挿入させ、この挿入されたねじ部38aの先端部を取付部材36の第2取付部36bのねじ孔39に螺合させ、この状態でねじ部材38を締め付けることにより、第2天板31を精度良く正確に取り付けることができる。
この場合、第1天板30の前端部には、その上面から下面に向けてオーバーハング状に傾斜する第1傾斜面30bが設けられており、第2天板部31の後端部には、その下面から上面に向けて傾斜し、第1天板30の第1傾斜面30bの下側に潜り込む第2傾斜面31aが設けられていることにより、第1天板30の第1傾斜面30bと、第2天板部31の第2傾斜面31aとの間に隙間S2があっても、その隙間S2を通して楽器ケース1内を見えにくくすることができると共に、埃などの塵埃が隙間S2から楽器ケース1内に侵入しにくくすることができ、かつデザイン的に好ましいものを提供することができる。
また、この天板では、天前板14bの前面には、放音用のネット部材29を有する放音部材24が設けられていることより、楽器ケース1内の発音部13で発生された楽音を、天前板14bに設けられた複数の開放孔14cおよび放音部材24の放音孔23から楽器ケース1の前側に向けて良好に放音させることができるほか、天前板14bの前面側に露出する取付調整部材35のねじ部材38の頭部38aや補助金具41を隠すことができるので、外観的にもデザイン的にも好ましいものを得ることができる。
さらに、この天板組立方法では、一対の側板5の後部間に設けられた背板4の上端部に第1天板30を回転可能に取り付け、この状態で第1天板30の前側に位置する一対の側板5上に第2天板31を取り付ける際に、第1天板30の前端部と第2天板31の後端部との間に隙間ゲージGを配置して、この状態で取付調整部材35によって第2天板31の取付位置を調整して第2天板31を一対の側板5に対して固定することにより、組立て作業が簡単でかつ容易にできると共に、第2天板31を精度良く正確に取り付けることができる。
すなわち、この天板組立方法では、背板4の上端部に第1天板30の後端部を回転可能に取り付け、この第1天板30の前側に、取付調整部材35の取付部材36が取り付けられた第2天板31を配置する際に、第1天板30の前端部の第1傾斜面30bと第2天板31の後端部の第2傾斜面31aとの間に隙間ゲージGを配置して、第1天板30の前端部と第2天板31の後端部との隙間S2が均一になるように位置合わせをすることができる。
また、この天板組立方法では、第2天板31を第1天板30の前側に位置する一対の側板5上に配置して位置合せした状態で、取付調整部材35のねじ部材38のねじ部38aを補助金具41のねじ孔41aにねじ部38aを螺合させて天前板14bのねじ挿入孔40に挿入させ、この挿入されたねじ部38aの先端部を取付部材36の第2取付部36bのねじ孔39に螺合させて、ねじ部材38を締め付けることにより、簡単に第2天板31を一対の側板5に対して固定することができる。
この場合、ねじ部材38を締め付けながら、第1天板30の前端部と第2天板31の後端部との隙間S2を隙間ゲージGで調整することができるので、第1天板30の前端部と第2天板31の後端部との隙間S2を均一にすることができる。このとき、天前板14bの後面と第2取付部36bとの間に隙間S1が生じていても、その隙間S1を保った状態で、第2取付部36bを天前板14bに対して固定することができるので、第2天板31を一対の側板5上に対して正確にかつ精度よく位置合せして固定することができる。
なお、上述した実施形態では、天前板14bにねじ挿入孔40を設け、この天前板14bの前面に補助金具41を設け、この補助金具41にねじ部材38が螺合するねじ孔41aを設けた場合について述べたが、必ずしも補助金具41を設ける必要はなく、天前板14bにねじ部材38が螺合するねじ孔を設けた構成であっても良い。
また、上述した実施形態では、発音部13としてスピーカを備えた電子式の鍵盤楽器に適用した場合について述べたが、これに限らず、例えば発音部13として弦を用いたアコースティックピアノなどの鍵盤装置にも適用することができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、背板の上端部に開閉可能に取り付けられた第1天板と、前記第1天板の前側に配置される第2天板と、閉じた状態の前記第1天板の前端部と前記第2天板の後端部との間の距離が調整可能な取付調整部材と、を備えていることを特徴とする天板である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の天板において、前記背板は一対の側板の後部間に設けられ、 前記第2天板は前記一対の側板に対して固定されることを特徴とする天板である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の天板において、前記第2天板の前側下面に位置して前記一対の側板間に取り付けられた天前板を備えていることを特徴とする天板である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の天板において、前記取付調整部材は、前記第2天板の下面に取り付けられる第1取付部と前記天前板の後面に対して取り付けられる第2取付部とを有する取付部材と、前記第2取付部を前記天前板の後面に対して調整可能に取り付ける締結部材と、を備えていることを特徴とする天板である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の天板において、前記第1天板の前端部には、その上面から下面に向けてオーバーハング状に傾斜する第1傾斜面が設けられており、前記第2天板部の後端部には、その下面から上面に向けて傾斜し、前記第1天板の前記第1傾斜面の下側に潜り込む第2傾斜面が設けられていることを特徴とする天板である。
請求項6に記載の発明は、請求項3または請求項4のいずれかに記載の天板において、前記天前板の前面には、放音用のネット部材が設けられていることを特徴とする天板である。
請求項7に記載の発明は、一対の側板の後部間に設けられた背板の上端部に第1天板を回転可能に取り付ける第1の工程と、前記第1天板の前側に位置する前記一対の側板上に第2天板を配置する際に、前記第1天板の前端部と前記第2天板の後端部との間に隙間ゲージを配置し、この状態で取付調整部材によって前記第2天板の取付位置を調整して前記第2天板を前記一対の側板に対して固定する第2の工程と、を有していることを特徴とする天板組立方法である。
請求項8に記載の発明は、一対の側板と、前記一対の側板の後部間に設けられた背板と、請求項1〜請求項6のいずれかに記載された天板と、を備えた楽器ケースと、前記楽器ケース内に設けられ、複数の鍵を有する鍵盤部と、前記楽器ケース内に設けられ、前記複数の鍵のいずれかに対する押鍵操作に応答して楽音を発音する発音部と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。