JP6604095B2 - 縦枠材および耐力壁 - Google Patents
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このため、複数の枠部材(特許文献1に示す角形鋼管とリップ付溝形鋼)を組み立てて構成される縦枠材では、図22に示すように、隣り合う枠部材9A、9B同士を固定するねじ部に引き抜き力が作用する。そのため、従来の縦枠材では、前述の引き抜き力に対する抵抗を確保するために、多数のねじ止めを付与する構成となることから、製造性および現場での施工性が低下するという問題があった。
また、このように外枠溝形鋼に面取り部分を設けることにより、外枠溝形鋼のウェブがウェブの面外方向に変形することを抑制し、外側の溝形鋼と内枠溝形鋼および内枠部材との一体性を高めることができるので、縦枠材の耐力を向上させることができる。
また、内枠溝形鋼と内部材を接合する接合ねじが前述のポケット部に突出しない構成となることから、この接合ねじと面材に固定するための固定ねじとが干渉することがなく、施工性を向上させることができる。
図1乃至図3に示すように、本実施の形態による建築物用の縦枠材1は、面材10に固定されて枠組みされる建築物の枠組壁工法における耐力壁の一部を構成している。耐力壁Tは、面材10と、面材10の一方の面に沿って上下方向に延在する縦枠材1と、縦枠材1の上下端部に取り付けられた接合金物4と、水平方向に延在する横枠材(図示省略)とで構成されている。このような耐力壁Tは、スチールハウス、ツーバイフォー住宅、或いは木質パネル工法等の建築物に適用することができる。
ここで、縦枠材1の部材軸方向に直行し、なおかつ面材10の面方向に沿う方向を壁面水平方向Xといい、縦枠材1の部材軸方向に直行し、なおかつ壁面水平方向Xに直交する方向を壁厚方向Yという。
なお、内溝形鋼22は、内枠溝形鋼21のウェブ21Bの外周部に対して、内溝形鋼22のリップ部22cの外周部を当接させるように配置しても良い。この場合には、内枠溝形鋼21のウェブ21Bと内溝形鋼22のリップ部22cをねじ止めすることが可能となる。
また、接合ねじ23による接合箇所は、壁厚方向Yに二箇所ずつで上下方向に所定の間隔をあけて配置されている。なお、接合ねじ23の接合箇所は、縦枠材1の材軸方向に300mm以下の間隔で設けることが望ましい。
接合金物4は、鋼材からなる底板41と立上り板42とを有している。この接合金物4を内枠溝形鋼21の溝部内に配置し、立上り板42を内枠溝形鋼21のウェブ21Bに当てがい、その当接部において接合ねじ23で両者を接合する。また、底板41は横枠材のウェブに載置し、基礎6に埋設されたアンカーボルト43の突出部を横枠材と底板41のボルト挿通孔を挿通させ、その突出先端のねじ部にナット44を締結する。これにより縦枠材1は、接合金物4を介して基礎6に固定されている。なお、内枠溝形鋼21と内溝形鋼22の厚さは同じでなくも良い。
なお、縦枠材1は、使用する環境条件などに応じて、表面処理などの防錆処理を施すようにしてもよい。
図6に示すように、第2の実施の形態による縦枠材1Aは、外枠溝形鋼31のウェブ31Bとフランジ31Aの接合部が面取りされた面取り部32が形成された構成となっている。内溝形鋼22のウェブ22Bの幅寸法は、内枠溝形鋼21のウェブ21Bの幅寸法より小さく、かつ外枠溝形鋼31のウェブ31Bの幅寸法に略一致している。外枠溝形鋼31のウェブ31Bの幅寸法は、ウェブ31Bと面取り部32との接合部33が内溝形鋼22のフランジ22Aの先端部に当接する位置となる寸法とする。
このように外枠溝形鋼31に面取り部32を設けることにより、外枠溝形鋼31のウェブ31Bの面外変形、すなわち図6の二点鎖線Pに示すような面取り部32を有さない外枠溝形鋼31に生じ得る面外変形が抑制でき、縦枠材1Aの一体性を確実に確保することができる。
図7に示す第3の実施の形態による縦枠材1Bは、外枠溝形鋼31の内側に一対の内溝形鋼25、25(内部材、内枠部材)を設けた構成となっている。一対の内溝形鋼25、25は、互いにウェブ25B、25B同士を当接させて背合わせに配置し、それぞれ一方のフランジ25Aが内枠溝形鋼21のウェブ21Bに対して接合ねじ23により接合され、他方のフランジ25Aが外枠溝形鋼31のウェブ31Bに当接された構成となっている。
なお、外枠溝形鋼31の内側に設ける内溝形鋼25は、上記のように一対であることに限定されず、1つであってもよい。この場合、1つの内溝形鋼25のフランジ25A、25Aを、それぞれ内枠溝形鋼21のウェブ21Bの外周部、外枠溝形鋼31のウェブ31Bの内周部に当接させた構成とすることができる。また、内部材が一対の内溝形鋼25、25で構成される場合は、それぞれのウェブ25B、25B同士をねじ止めしてもよい。
図8に示す第4の実施の形態による縦枠材1Cは、一対の内枠溝形鋼26、26を設けるとともに、内溝形鋼22に代えて角形鋼管27を設けた構成となっている。一対の内枠溝形鋼26、26は、互いに溝開口縁を同じ方向に向けてフランジ26A、26A同士を当接させて配置している。そして、内枠溝形鋼26は、それぞれのウェブ26Bが内枠角形鋼管27に対して接合ねじ23により接合された構成となっている。
内枠角形鋼管27は、断面中空矩形状の鋼製角鋼(角パイプ)であって、外枠溝形鋼31の両フランジ31Aとの間に、ポケット部24が形成されている。
図9に示す第5の実施の形態による縦枠材1Dは、上述した第1の実施の形態における外枠溝形鋼31のリップ部31c及び内枠溝形鋼21のリップ部21cの両方の下方部分に切欠部31d、21dを設けた構成となっている。切欠部31d、21dを設けることで、溝開口部の幅寸法が大きくなるので、図5に示すような基礎6に埋め込まれたアンカーボルト43と縦枠材1Dを接合する際に、ナット44の締め込み作業が容易になり、施工性を向上させることができる。
なお、外枠溝形鋼31のリップ部31cの下方部分のみに切欠部31dを設けた構成、もしくは内枠溝形鋼21のリップ部21cの下方部分のみに切欠部21dを設けた構成としてもよい。
図10〜図12は、上述した実施の形態の変形例1〜3を示している。変形例1〜3は、外枠溝形鋼31のフランジ31Aと、内枠溝形鋼21のフランジ21Aとを、外側から連結ねじ28で連結する構成となっている。このように変形例1〜3では、内枠溝形鋼21と外枠溝形鋼31とが連結ねじ28によって固定されているので、外枠溝形鋼31と内枠溝形鋼21との一体性を確保することができる。
第1の変形例では、内枠溝形鋼21のリップ部21cの頂部が、外枠溝形鋼31のリップ部31cに当接していてもよいし、当接していなくてもよい。
また第1変形例では、凹部31dを設けることで、連結ねじ28の頭部28aが外枠溝形鋼31の外周表面に突き出し面材10と干渉することを防止できる。
第2の変形例では、内枠溝形鋼21のリップ部21cの頂部が、外枠溝形鋼31のリップ部31cに当接していてもよいし、当接していなくてもよい。
本第1実施例では、図13に示すように、外枠溝形鋼31の有無をパラメータとしたFEM解析を行い、上述した実施の形態に示す縦枠材の効果を確認した。
本解析では、図13に示すCase1、2について解析モデル(図14、図15参照、図中の単位はmm)を作成し、部材軸方向に分布する分布荷重を図心(断面重心)と偏心させた位置に作用させることで図16、図17に示すような結果を得た。
Case2は、Case1の解析モデルにおいて、外枠溝形鋼31を除いた比較例の解析モデルである。
なお、Case1、2の各解析モデルの構成要素の寸法は、図14(a)、(b)、及び図15(a)〜(c)に示している。
また、解析の条件は、要素はシェル要素を使用し、素材は40キロ普通鋼を想定し、板厚は外枠溝形鋼31の板厚寸法を2.2mm、内枠溝形鋼21および内溝形鋼22の板厚寸法を3mmとし、解析モデルの上下方向の長さ寸法は、2730mmとした。
図16は、変位δ(mm)と応力σ(=荷重P/断面積A)の関係を示している。ここで、変位δは解析モデル最上部の軸方向変位、荷重Pは解析で計測した鉛直方向荷重、断面積Aは各縦枠材単体の断面積の総和である。図17は、最大耐力/全塑性耐力で表される断面効率を示している。
これにより、本発明が、外枠溝形鋼の内側に収納された内枠溝形鋼と内溝形鋼の間に生じる離間を確実に防止し、部材耐力を向上させる効果を発揮することが確認できた。
次に、図18に示す第6の実施の形態による耐力壁Tの縦枠材1Hについて説明する。
耐力壁Tには、縦枠材1の部材軸方向の端部に接合金物4が取り付けられている。ここで、図18は、縦枠材1Hにおける部材軸方向の下端部で接合金物4が設けられる部分の水平断面図である。
第6の実施の形態の縦枠材1Hは、上述した第1の実施の形態と同様であり、内枠溝形鋼21(内枠部材)と、溝形鋼からなる内溝形鋼22(内部材、内枠部材)と、内枠溝形鋼21および内溝形鋼22を囲繞する外枠溝形鋼31(外枠部材)と、を備えている。そして、内枠溝形鋼21および内溝形鋼22は、それぞれのウェブ21B、22B同士が互いに背中合わせにして当接されている。
なお、上述した図7に示す第3の実施の形態のように、複数の内溝形鋼25、25が設けられる場合には、内枠溝形鋼21のウェブ21Bの幅寸法をLW1とし、一対の内溝形鋼25、25の両幅寸法を合わせた全幅寸法をLW2とする。さらに、内溝形鋼が3つ以上設けられる場合も、それら全ての全幅寸法をLW2とする。
また、この場合には、帯板45、内枠溝形鋼21のウェブ21B、および内溝形鋼22のウェブ22Bが一体的に設けられ、互いにずれたり、開きが生じることが無くなるので、これらの局部変形による耐力壁Tの剛性低下を確実に防止することができる。
第2実施例は、上述した第6の実施の形態による建築物用の縦枠材および耐力壁の効果を裏付けるための実施例について以下に説明する。
第2実施例では、図20(a)に示す比較例による第1試験体S1と、図20(b)に示す実施例による第2試験体S2を設けて、接合金物4が設けられる部分の内枠溝形鋼21のウェブ21Bと内部材(内溝形鋼22)のウェブ22Bの剛性を測定して比較した。
図20(a)に示す比較例による第1試験体S1は、外枠部材が省略されており、二重に設けられる内枠溝形鋼21(211、212)と内溝形鋼22の幅寸法が同等となっている。そして、内枠溝形鋼211、212の2枚のウェブ21Bと内溝形鋼22の1枚のウェブ22Bの厚さ寸法はそれぞれ3.2mmで、合計3枚のウェブが積層された構成となっている。一方、図20(b)に示す実施例による第2試験体S2は、上述した第1実施例の図14(a)の解析モデルとほぼ同等の構成となっている。第2試験体S2では、内枠溝形鋼21の1枚のウェブ21Bと内溝形鋼22の1枚のウェブ22Bの厚さ寸法はそれぞれ3.2mmで、合計2枚のウェブが積層された構成となっている。接合金物4は、両試験体S1、S2ともに帯体45と各ウェブ21B、22Bを複数(図20ではそれぞれ水平方向に4本、全44本)のねじ径8mmの接合ねじ23で固定されている。なお、各部材(内枠溝形鋼21、内部材22、接合金物4)は、40キロ級の普通鋼を使用した。
表1に実験結果を示す。表1に示す実験結果は、小型接合金物4Bを用いた接合部の引張実験から得た接合部剛性を、大型接合金物4Aを用いた接合部の引張実験で得た接合部剛性で無次元化したものである。
なお、表1では、大型接合金物4Aを「HD金物 大」で示し、小型接合金物4Bを「HD金物 小」で示している。
このように、内枠溝形鋼21と内溝形鋼22を外枠溝形鋼31が囲繞することで、内枠溝形鋼21と内溝形鋼22の離間が抑制されていれば良いのであって、その拘束手段は、リップ部の当接やねじ止めによる拘束手段に限定されることはない。
1、1A〜1H 縦枠材
4 接合金物
5 固定ねじ
10 面材
21 内枠溝形鋼(内枠部材)
22 内溝形鋼(内部材、内枠部材)
21A、22A フランジ
21B、22B ウェブ
21a 溝開口縁
21c、22c リップ部
21d 切欠部
23 接合ねじ
24 ポケット部
25、25A、25B 内溝形鋼(内部材、内枠部材)
28 連結ねじ
31 外枠溝形鋼(外枠部材)
31A フランジ
31B ウェブ
31a 溝開口縁
31c リップ部
32 面取り部
45 帯板
46 ベース板
O 図心
X 壁面水平方向
Y 壁厚方向
Claims (6)
- 建築物の一部を構成する耐力壁の面材に固定される縦枠材であって、
少なくとも1つの内枠溝形鋼と、溝形鋼または角形鋼管からなる1つ、または複数の内部材とを有するとともに、これら前記内枠溝形鋼および前記内部材からなる部材同士が隣接された内枠部材と、
前記内枠部材を囲繞する外枠溝形鋼からなる外枠部材と、
を備え、
前記内枠溝形鋼の開口縁と外枠溝形鋼の開口縁が同じ方向を向いて設置され、
前記内枠溝形鋼のウェブには、1つ、または複数の前記内部材が当接され、
前記外枠部材が面材に固定され、
前記外枠溝形鋼は、ウェブとフランジの接合部が面取りされていることを特徴とする縦枠材。 - 前記外枠部材のフランジ部は、前記内枠溝形鋼のフランジ部とネジ止めされていることを特徴とする請求項1に記載の縦枠材。
- 前記外枠部材は、前記面材の面に直交する壁厚方向に突出するリップ部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の縦枠材。
- 前記外枠部材のウェブ側に位置する前記内枠部材の両フランジと、前記外枠部材の両フランジと、が前記面材に直交する壁厚方向に離間していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の縦枠材。
- 前記外枠部材の板厚寸法は、前記内部材および前記内枠溝形鋼の板厚寸法よりも小さく、かつ設定された前記面材の板厚よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の縦枠材。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の縦枠材が前記面材に接合されていることを特徴とする耐力壁。
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