[1]第1実施例
図1は第1実施例に係る映像表示装置1の全体構成を表す。映像表示装置1は、飛行しながら空中に映像を表示する装置である。映像表示装置1は、4つの回転翼11を備え、各回転翼11を回転させて飛行するいわゆるマルチコプターやクアッドコプターと呼ばれるマルチローター式の回転翼機である。各回転翼11は、いずれも本実施例では2枚のブレードを有するローターであり、後述するモータが生じさせる回転力を推進力に変えて自装置を空中で移動、すなわち飛行させる。
映像表示装置1は、4つの回転翼11を有する飛行機構10と、電源部20と、速度センサ部30と、映像表示部40と、囲み部材80とを備える。飛行機構10は、各回転翼11の回転により揚力を発生させて自装置(映像表示装置1のこと)を空中で移動させる機構、すなわち自装置を飛行させる機構である。飛行機構10は本発明の「機構」の一例である。飛行機構10は、例えば各回転翼11を同じ回転数で回転させることで自装置を上昇及び下降させ、各回転翼11の回転数を変えることで回転数が少ない回転翼11側に自装置を傾けて水平方向に移動させる。飛行機構10は、前述した4つの回転翼11の他に、4つのモータ12と、4つのESC(Electronic Speed Controller)13と、フライトコントローラ14と、受信機15とを備える。
モータ12は、回転可能に支持されたシャフトと、そのシャフトを回転させる回転機構とを有し、回転機構は、永久磁石などの磁界発生部材、電流を流すコイル及びそれらを格納する筐体を有する。モータ12としては、例えば、直流電流でシャフトを回転させ、半導体スイッチを用いてコイルに流れる電流の向きを変えるブラシレスモータが用いられる。各モータ12のシャフトには、上記の回転翼がそれぞれ固定されており、モータ12がシャフトを回転させることで回転翼が回転する。
ESC13は、モータ12に電気的に接続され、入力された電流を増幅してモータ12に供給するとともに、電流の向きの変更などを行ってモータ12の回転を制御する。フライトコントローラ14は、4つのESC13とそれぞれ電気的に接続され、各ESC13の動作を制御することで、映像表示装置1の飛行を制御する。具体的には、フライトコントローラ14は、各モータ12の回転数を制御して、映像表示装置1の上昇、下降、水平移動、ホバリング、着陸、指定したルートの飛行などを可能とする。
受信機15は、フライトコントローラ14と電気的に接続されており、外部のリモコン操縦機から送信されてきた操縦信号を受信してフライトコントローラ14に供給する。操縦信号とは映像表示装置1の上昇や下降、水平移動などの飛行方法を指示する信号である。フライトコントローラ14が供給された操縦信号が表す指示に従って飛行を制御することで、リモコン操縦機を操作する操縦者が意図したように映像表示装置1を飛行させることが可能となる。4つのモータ12、4つのESC13、フライトコントローラ14及び受信機15は、4つの回転翼11を回転させて自装置の飛行を制御する飛行制御部16として機能する。
電源部20は、飛行機構10及び映像表示部40と電気的に接続されており、これらの各部を作動させる電力を供給する。電源部20は、バッテリー21と、バッテリーアラーム22と、BEC(Battery Eliminator Circuit)23とを備える。バッテリー21は、リチウムポリマーバッテリーであり、蓄えた電力を前述の各部に供給する。バッテリーアラーム22は、過放電によるバッテリー21の損傷を防ぐため、バッテリー21の電圧を測定し、例えば設定値よりも電圧が下がったらアラームを鳴らして操縦者に報知する。BEC23は、バッテリー21に蓄積された電力を映像表示部40に供給する回路である。
速度センサ部30は、自装置(映像表示装置1)の移動速度及び移動方向を測定する。速度センサ部30は本発明の「センサ部」の一例である。ここでいう移動速度とは、例えば映像表示装置1が水平方向や鉛直、又は斜めの方向に移動する速度のことである。つまり、例えば映像表示装置1が回転してもその回転速度は移動速度として扱わない。この移動速度は、映像表示装置1の重心が移動する速度ということができ、移動方向は、映像表示装置1の重心が移動する方向ということができる。速度センサ部30は、3軸速度センサ31を備え、3軸速度センサ31が測定した測定結果に基づいて自装置の移動速度及び移動方向を測定する。速度センサ部30は、測定した移動速度及び移動方向を表す移動情報を後述するシングルボードコンピュータ41に供給する。
映像表示部40は、発光体であるLED(Light Emitting Diode)を複数有し、複数のLEDが発する光により映像を表示する。映像表示部40は、シングルボードコンピュータ41と、モータドライバ42と、DC(Direct Current)モータ・フォトリフレクタ43と、回転・通信部44と、LEDドライバ45と、スリップリング46と、シリアルLEDテープ47と、環状部材48とを備える。
シングルボードコンピュータ41は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びSDメモリーカード等を備え、CPUが、RAMをワークエリアとして用いてSDメモリーカードに記憶されたプログラムを実行することによって、モータドライバ42及びLEDドライバ45の動作を制御する。本実施例では、シングルボードコンピュータ41は、速度センサ部30から供給される移動情報に基づく制御をこれらのドライバに対して行う。
モータドライバ42は、DCモータ・フォトリフレクタ43の動作を制御する。具体的には、モータドライバ42は、回転の開始、回転の停止、回転速度などを制御する。モータドライバ42は、シングルボードコンピュータ41からの指示に基づいてこれらの制御を行う。
DCモータ・フォトリフレクタ43は、直流電流により駆動力を生じさせるモータと、モータの回転速度を表す値を測定するセンサであるフォトリフレクタとを備える。フォトリフレクタが測定した値はモータドライバ42を介してシングルボードコンピュータ41に供給される。シングルボードコンピュータ41は、供給された値に基づいて、モータの回転速度を目的の値とするように制御する。
回転・通信部44は、DCモータ・フォトリフレクタ43が生じさせる駆動力により回転する棒状のシャフトを有する。このシャフトには、後述する環状部材48が固定される。また、このシャフトは、通信線としての機能を有し、後述するシリアルLEDテープ47の信号線が接続されて、各LEDとLEDドライバ45との通信を仲介する。
LEDドライバ45は、映像表示部40が備える複数のLEDの発光を制御する。具体的には、LEDドライバ45は、発光の開始、発光の停止、発光時の光量などを制御する。LEDドライバ45は、シングルボードコンピュータ41からの指示に基づいてこれらの制御を行う。スリップリング46は、LEDドライバ45及び回転・通信部44とそれぞれ電気的に接続され、回転・通信部44のシャフトが回転している状態でもLEDドライバ45から回転・通信部44に向けて電力及び信号を伝達する。
シリアルLEDテープ47は、信号線と、その信号線に沿って1列に並べられ且つそれぞれがその信号線に接続された複数のLEDと、信号線及び複数のLEDを接着させたテープとを備える。複数のLEDは、信号線から供給される信号により個別に発光が制御される。環状部材48は、棒状の部材を環状に形成した部材であり、その外周側にシリアルLEDテープ47が貼り付けられている。このため、シリアルLEDテープ47が備える複数のLEDは環状に配置されている。環状部材48は、前述のとおり回転・通信部44が有するシャフトに固定されているので、DCモータ・フォトリフレクタ43が生じさせた駆動力によりシャフトとともに回転する。
シリアルLEDテープ47及び環状部材48は、複数のLEDが並べて設けられた枠体50を形成する。枠体50は、環状部材48と同様に環状の形をしている。枠体50は、決まった軌道を繰り返し移動するように設けられている。決まった軌道とは、枠体50を移動させる駆動力を生じさせる駆動機構(本実施例ではDCモータ・フォトリフレクタ43及び回転・通信部44等を有する機構)に対する位置及び向きが決まっている軌道のことをいう。
本実施例では、枠体50は、回転軸の周囲に配置されてこの回転軸を中心として回転可能に支持されており、この回転軸を中心にして回転する。つまり、枠体50は、回転軸の周囲を囲む軌道を同じ回転方向に繰り返し回転移動する。なお、ここでいう回転軸は、シャフトなどの棒状の物体ではなく、回転の中心となる仮想の直線のことである。
また、枠体50は、飛行機構10及び電源部20を取り囲むように、これらの各部の周囲に配置されている。枠体50は、回転軸を中心として回転軸の周囲を回転することで、飛行機構10及び電源部20の周囲を回転することにもなる。枠体50は、回転軸を中心にして回転しても、飛行機構10及び電源部20には接触しない大きさ及び配置となっている。つまり、枠体50が回転移動する軌道の内側に飛行機構10及び電源部20が収まるようになっている。
シングルボードコンピュータ41、モータドライバ42、DCモータ・フォトリフレクタ43及び回転・通信部44は、前述した回転軸を中心に枠体50を回転させる制御を行う回転制御部60として機能する。シングルボードコンピュータ41、LEDドライバ45及びスリップリング46は、枠体50が前述した決まった軌道を移動する際に、複数のLEDが発する光が映像を表すようにそれら複数のLEDの発光時期を制御する発光制御部70として機能する。発光制御部70は、本実施例では、枠体50が回転軸を中心に回転する際に各LEDの発光時期を制御する。
囲み部材80は、枠体50を囲んで配置され、枠体50及び他の各部と他の物体との接触を防ぐ構造体である。枠体50及び囲み部材80の配置や形状については、図2及び図3を参照して説明する。
図2は上から見た映像表示装置1を表す。ここでいう「上から見る」とは、鉛直に上昇又は下降するときの姿勢となっている映像表示装置1を鉛直上方から見ることを意味する。映像表示装置1は、電源部20などを格納する直方体の箱である筐体2を備える。筐体2の上面は正方形の形をしている。筐体2が有する4つ側面には、回転翼11−1、10−2、10−3、10−4をそれぞれ支持するアーム部3−1、3−2、3−3、3−4(それぞれを区別しない場合は「アーム部3」という)が設けられている。
各回転翼11は各アーム部3の先端(筐体2から離れた方の端)に設けられている。図2(a)では、アーム部3−1及び3−3に重なるようにして枠体50が表されている。枠体50は、図2のように上から見ると、図2(b)に表すように筐体2の上面の中心点を通る回転軸B1を中心に回転可能に設けられている。図2では、この回転軸B1に沿った方向である回転軸方向A1が鉛直に沿った方向になっており、図2に表す映像表示装置1が回転軸方向A1から見た映像表示装置1にもなっている。
枠体50に設けられた複数のLEDは、回転軸B1を含む平面S1上に配置されている。本実施例では、この平面S1に直交する方向のうちの一方の方向(図中の矢印で表された方向)のことを、枠体50の向きの基準を表す方向として、枠体基準方向A2と呼ぶものとする。枠体基準方向A2は、枠体50について定められた枠体50の向きの一例である。囲み部材80は、複数の縦環状部材81と、複数の横環状部材82と、それらを結合させているジョイント83とを備える。これらについては図3も参照して後ほど詳しく説明する。
図3は図2(a)の矢視A−Aに見た映像表示装置1を表す。図3に表す映像表示装置1は、鉛直に上昇又は下降するときの姿勢となっている。図3では、鉛直及び水平方向を矢印で表している。この姿勢では、回転軸方向A1が鉛直に沿った方向になっている。つまり、映像表示装置1は、回転軸方向A1を鉛直に向けた姿勢で鉛直に上昇又は下降する。筐体2の内部には、フライトコントローラ14、受信機15、バッテリー21、バッテリーアラーム22、BEC23、速度センサ部30、シングルボードコンピュータ41、モータドライバ42、LEDドライバ45及びスリップリング46が設けられている。アーム部3の鉛直上方には、モータ12及びESC13が設けられている。
DCモータ・フォトリフレクタ43は、DCモータ431と、フォトリフレクタ432とを備え、筐体2の外側に固定されている。回転・通信部44は、プーリー441と、シャフト442と、ベアリング443と、角度センサ部444とを備える。プーリー441は、DCモータ431の回転力をシャフト442に伝達する滑車である。シャフト442は、長手方向を鉛直に沿った方向に向けて配置された円柱形の軸であり、プーリー441を介して伝達される回転力によって回転する。また、シャフト442は、例えば金属で形成されており、前述したように通信線として機能する。シャフト442の鉛直上方の端はスリップリング46に接触しており、LEDドライバ45からの電力及び信号を受け取る。
角度センサ部444は、筐体2の鉛直下方の面に設けられ、枠体50と一体になって回転するシャフト442の回転角度を測定することで、枠体50の回転角度を測定する。シャフト442の外周面には基準の位置が決められており、その基準の位置が角度センサ部444の正面に来たときを回転角度が0°とする。シャフト442の外周面には例えば10°毎に36本の線が引いてあり、それらの線を検出した回数を数えることで、角度センサ部444は回転角度を測定する。
シャフト442の基準の位置は、例えば、所定の回転角度(例えば0°)が測定されたときに角度センサ部444が向いている方向(角度センサ部444からシャフト442に向かう方向)に枠体基準方向A2が向くように決められている。そのため、枠体基準方向A2を特定の方向に向けたい場合には、その方向に対応する回転角度が測定されるように枠体50を回転させればよくなっている。角度センサ部444は、回転角度の測定を一定の時間間隔(例えば0.01秒毎)で行い、その度に測定した回転角度をシングルボードコンピュータ41に供給する。
シャフト442には枠体50が備える環状部材48が固定されている。環状部材48は、12本の真っ直ぐな金属線481と、それらの金属線481同士を接続する12個のジョイント482とを備え、それら(複数の金属線481及び複数のジョイント482)を環状に組み上げて、正12角形の形に形成されている。図2で述べた枠体基準方向A2は、この環状部材48が形成する平面(枠体50が形成する平面でもある)の垂線に沿った方向となっている。
環状部材48に貼り付けられているシリアルLEDテープ47の信号線は、シャフト442と接触している。シャフト442は、この信号線を介して各LEDとLEDドライバ45との通信を仲介する。ベアリング443は、環状部材48が固定されている位置よりも鉛直下方側でシャフト442に回転可能に取り付けられており、そのベアリング443には囲み部材80が固定されている。これにより、シャフト442が、囲み部材80を支持しつつ囲み部材80とは別に回転するようになっている。
筐体2の鉛直上方には支持部材4が設けられている。支持部材4は、長手方向を回転軸方向A1(枠体50の回転軸B1に沿った方向)に向けて配置された円柱形の部材である。支持部材4には、ベアリング5が回転可能に取り付けられており、そのベアリング5には環状部材48が固定されている。これにより、支持部材4は、環状部材48を支持しつつ環状部材48とは別に回転するようになっている。支持部材4のベアリング5の取り付け位置よりも鉛直上方には、囲み部材80が固定されている。
図3では、前述した囲み部材80が備える複数(本実施例では2つ)の縦環状部材81、複数(本実施例では6つ)の横環状部材82及びジョイント83が表されている。縦環状部材81及び横環状部材82は、いずれも、例えば針金のように細い金属線を環状に形成した部材である。縦環状部材81は、自身が形成する環で囲まれた平面が鉛直に沿うように配置されており、横環状部材82は、自身が形成する環で囲まれた平面が水平方向に沿うように配置されている。
囲み部材80が備える環状部材は細い金属線で形成されているため、複数のLEDを囲み部材80越しに見てもそれら複数のLEDが発光することで表示される映像を認識できるようになっている。言い換えると、囲み部材80は、枠体50を囲んで配置されているが、映像を完全に隠してしまうということはなく、囲み部材80越しに映像を視認させることが可能な形状を有している。
以上の構成により、回転制御部60が枠体50を回転させ、発光制御部70が複数のLEDの発光を制御することで、各LEDが発した光の残像によって表される映像が表示される。
図4は表示された映像の一例を表す。図4では、空中で静止している(ただし回転翼11や枠体50は回転している)映像表示装置1をユーザが水平方向に見た場合の映像が表されている。図4では、枠体50に設けられた48個のLEDをLED01からLED48までの符号を振って表している。
映像表示装置1は、枠体50を回転させることで表示面C1を形成している。表示面C1は、シャフト442を軸にして回転する枠体50が作り出す回転体(正12角形を回転させたときの回転体)の表面である。枠体50の周囲には囲み部材80が配置されているため、表示面C1には囲み部材80の一部が重なって見えることになるが、図4では、映像を見やすくするために囲み部材80のうち表示面C1に重なって見える部分を省略している。
図4の例では、映像表示装置1が、表示面C1に「E」という文字を表示している。この場合、発光制御部70は、各LEDを、斜線を引いた矩形で表された領域(LED07、LED11であれば領域D71、D111)を通過する期間に発光させ、上下を二点鎖線で挟まれた領域(LED03、07、11であれば領域D32、D72、D112)を通過する期間には発光させないように制御する。例えばLED07は、領域D71を通過する間でも常に現在位置(つまり一点)で光を発しているだけであるが、LED07が通過した後も少しの間残像が残るため、領域D71の全体が光って見えるようになっている。
図4の例では、発光制御部70は、枠体50が上述した軌道(回転軸を囲む軌道)を移動する際に、すなわち図3に表す回転軸B1の周囲を回転移動する際に、複数のLEDが発する光が映像を表すようにそれら複数のLEDの発光時期を制御している。この制御のことを以下では「第1発光制御」という。発光制御部70は、本実施例では、この第1発光制御を、自装置が移動していないとき及び低速で移動しているときに行い、自装置が高速で移動しているときには異なる制御を行う。
具体的には、発光制御部70は、自装置が移動する際に、上述した軌道上の所定の位置にある複数のLEDが発する光が映像を表すようにそれら複数のLEDの発光時期を制御する。この制御のことを以下では「第2発光制御」という。回転制御部60は、発光制御部70により第2発光制御が行われる場合、枠体50の位置を前述した軌道上の所定の位置に維持する制御を行う。回転制御部60は本発明の「維持部」の一例である。この所定の位置について、図5及び図6を参照して説明する。
図5は第2発光制御が行われる際の映像表示装置1の姿勢の一例を表す。図5(a)では水平方向に見た映像表示装置1が表されており、図5(b)では鉛直上方から見た映像表示装置1が表されている。これらの図では、枠体50の位置を分かりやすくするため、枠体50以外には、図5(a)では最も外側に配置された縦環状部材81とそれを支持する部材だけを表し、図5(b)では最も外側に配置された横環状部材82とそれを支持する部材だけを表している。
図5の例では、映像表示装置1が、枠体50の回転軸方向A1が鉛直に沿った方向となる姿勢で、水平方向に沿った移動方向E1に移動している。なお、映像表示装置は、水平方向に移動する際には回転軸B1を鉛直に対して傾けて飛行するが、説明を分かりやすくするため、ここではその傾きが無視できる程度の大きさであるものとする。そのため、この例では、枠体50の回転軸方向A1と移動方向E1とが直交するようになっている。
回転制御部60は、枠体50の軌道上で自装置の移動方向に応じて決まる位置を所定の位置として、その位置に枠体50が維持されるように枠体50の回転を制御する。本実施例では、回転制御部60は、図5(b)に表すように、枠体基準方向A2が移動方向E1に向くときの枠体50の位置を所定の位置とする。言い換えると、回転制御部60は、枠体50に設けられた複数のLEDが配置された平面S1が移動方向E1と直交するときの枠体50の位置を所定の位置とする。
回転制御部60は、図1に表す速度センサ部30により測定される移動方向と、図3に表す角度センサ部444により測定される回転角度とに基づいて、枠体基準方向A2が移動方向E1とずれているか否かを判断する。回転制御部60は、これらの方向がずれていないと判断した場合には枠体50を回転させず、これらの方向がずれていると判断した場合には、枠体基準方向A2が移動方向E1に向くまで枠体50を回転させる。
図6は飛行中の枠体50の向きの変遷の一例を表す。図6では鉛直上方から見た映像表示装置1が表されている。本実施例では、図2に表す回転軸B1から回転翼11−1に向かう方向のことを、飛行機構10の向きの基準を表す方向として、機構基準方向A3と呼ぶものとする。機構基準方向A3は、飛行機構10について定められた飛行機構10の向きの一例である。図6では、機構基準方向A3を変えることなくE11、E12、E13と移動方向を変えながら移動する映像表示装置1が表されている。
映像表示装置1のようなマルチコプターは、例えば飛行機とは異なり、複数の回転翼の回転数を変えることで図6に表すように機構基準方向A3を変えずに全方向に移動することが可能である。なお、厳密には水平方向に移動中の映像表示装置1は鉛直に対して傾くため、機構基準方向A3も多少変化するが、その変化は無視できるほど小さいものとする。図6の例では、機構基準方向A3と移動方向との関係が維持されないで映像表示装置1が移動している。この場合に、回転制御部60は、機構基準方向A3とは別に枠体基準方向A2を制御して、枠体50の軌道上で自装置の移動方向に応じて決まる位置を所定の位置として、その位置に枠体50の位置を維持する。
図7は本実施例の第2発光制御が行われた場合に表示される映像の一例を表す。図7では、移動方向E1に移動する映像表示装置1の枠体50が形成する表示面C2が表されている。図7では、図を見やすくするため、枠体50、縦環状部材81及びそれを支持する部材を除いて図示を省略している。図3に表すように、枠体50を形成する環状部材48が正12角形の形に形成されているため、表示面C2は正12角形を底面とする角柱の側面の形をしている。図7の例では、表示面C2に世界地図が表示されている。なお、図7では表示面C2の半分しか表されていないが、裏側に残り半分の表示面C2が形成されており、そちらにも映像(同じ世界地図の映像でもよいし、違う映像でもよい)が表示される。
映像表示装置1は、第1発光制御を行うと、図4に表す表示面C1のように、枠体50が移動する決まった軌道(本実施例では回転する枠体50が描く軌道)を範囲として映像を表示する。これに対し、映像表示装置1は、第2発光制御を行うと、図7に表す表示面C2のように、表示面C1とは異なる範囲に映像を表示することができる。
また、映像表示装置1が図7に表す状態よりもさらに移動すると、表示面C2の移動方向E1の寸法はさらに大きくなる。表示面C2の移動方向E1の寸法は、LEDが発した光の残像が残り続ける時間(以下「残像時間」という)において映像表示装置1が移動する距離となる。そのため、移動速度が速いほど表示面C2の移動方向E1の寸法は大きくなる。例えば少なくとも表示面C1の水平方向の寸法よりも長い距離だけ映像表示装置1を残像時間に移動させることで、表示面C1よりも広い範囲に映像を表示させることができる。
図6では、回転制御部60が図6の説明で述べたように枠体50の回転を制御した際に第2発光制御により映像が表示される表示面の向く方向(表示面の垂線方向)のうち水平方向に沿った表示面方向F11、F12、F13が表されている。この方向は表示面に表示される映像の歪みが最も少なく見える正面方向を表している。例えば弧を描いて並んだ観客の前で映像表示装置1を飛行させる場合、ユーザからの距離を一定に保つため図6に表すように飛行させることになりやすい。その場合に、本実施例では、映像表示装置1に最も近いユーザ、すなわち表示面方向にいるユーザに対して表示面の正面方向を向けることができる。
発光制御部70は、上述した第1発光制御と第2発光制御とを、自装置の移動速度に応じて切り替える。例えば、発光制御部70は、速度センサ部30から供給された移動情報が表す移動速度、すなわち速度センサ部30により測定された自装置の移動速度が閾値未満であれば第1発光制御を行い、その移動速度が閾値以上であれば第2発光制御を行う。第2発光制御は、映像表示装置1の移動速度があまり遅いと、例えば図4に表す表示面C1よりも狭い範囲にしか映像を表示することができなくなる。例えば移動速度の閾値を前述した残像時間に表示面C1の水平方向の寸法よりも長い距離を映像表示装置1が移動する移動速度の値とすることで、第2発光制御が行われた場合には常に表示面C1よりも広い範囲に映像を表示することができるようになる。
また、発光制御部70は、第2発光制御を行う際に、複数のLEDの発光時期を、自装置の移動速度に応じて制御する。発光制御部70は、速度センサ部30により測定された自装置の移動速度を用いてこの制御を行う。発光制御部70は、例えば、基準時刻から映像に応じた経過時間が経過したときにLEDを発光させる場合に、自装置の移動速度がN(Nは自然数)倍になると、元の移動速度における経過時間のN分の1が経過したときにLEDを発光させるよう制御する。
図8は本実施例で表示される映像の別の一例を表す。図7に表す映像表示装置1が移動速度V1で移動し、図8に表す映像表示装置1が移動速度V2(V2=V1÷2)で移動するものとする。その場合、図7に表す映像表示装置1が移動距離W1だけ移動したとすると、図8に表す映像表示装置1は移動距離W2(W2=W1÷2)だけ移動することになる。これらの移動距離W1、W2は、図7、図8に表す表示面C2の移動方向E1の寸法を表している。
この場合、発光制御部70は、移動速度V1における経過時間の2倍が基準時刻から経過したときにLEDを発光させる。その結果、映像表示装置1が図7に表す映像を表示するだけの時間(移動距離W1÷移動速度V1で表される時間)が経過しても、図8に表す映像表示装置1はその半分の映像だけを表示することになるが、表示面C2の移動方向E1の寸法も半分になっているため、図7及び図8の例に表されるように、表示される映像(これらの例では世界地図)の範囲が変わるだけでその映像の形や大きさは維持することができる。
[2]第2実施例
本発明の第2実施例について、以下、第1実施例と異なる点を中心に説明する。第1実施例では、第2発光制御が行われる際に枠体50の位置が所定の位置に維持されたが、第2実施例では、枠体50の位置が所定の位置に維持されない。
本実施例の発光制御部70は、複数のLEDが上述した決められた軌道(例えば回転軸B1の周囲を囲む軌道)を回転移動しているときに上述した第2発光制御を行う。また、発光制御部70は、第2発光制御を行う際に、回転軸B1よりも自装置の移動方向の前方を枠体50が回転移動している期間に複数のLEDが発する光が映像を表すようにそれら複数のLEDの発光時期を制御する。この制御のことを以下では「第3発光制御」という。
図9は第2及び第3発光制御が行われるタイミングを表す。図9では回転軸方向A1から見た本実施例の映像表示装置1aが表されている。この図では、説明を分かりやすくするため、枠体50、最も外側の横環状部材82及びそれを支持する部材だけを表している。この枠体50は、回転制御部60により制御されて例えば時計回りの方向に回転している。図9では、枠体基準方向A2が映像表示装置1aの移動方向E2を向いた状態、すなわち第1実施例で述べた軌道の所定の位置にある状態の枠体50が表されている。発光制御部70は、回転する枠体50がこの所定の位置にあるときに第2発光制御を行う。
また、図9では、枠体50が回転軸B1よりも移動方向E2の前方を回転するときに複数のLEDが通過する領域R1と、枠体50が回転軸B1よりも移動方向E2の後方を回転するときに複数のLEDが通過する領域R2とが表されている。発光制御部70は、回転する枠体50が領域R1を通過するときに第3発光制御を行う。また、発光制御部70は、回転する枠体50が領域R2を通過するときには、複数のLEDを発光させないように制御する。
図10は本実施例の第2及び第3発光制御が行われた場合に表示される映像の一例を表す。図10では、移動方向E2に移動する映像表示装置1aの枠体50が形成する表示面C3及び表示面C4が表されている。表示面C3は、第2表示制御が行われることにより映像が表示される表示面であり、図7に表す表示面C2と同じく、正12角形を底面とする角柱の側面の形をしている。
表示面C4は、第3表示制御が行われることにより映像が表示される表示面である。表示面C4は、図4に表す表示面C1(回転する枠体50が作り出す回転体、すなわち正12角形を回転させたときの回転体の表面)を枠体50の回転軸を通る平面で分割して得られる2つの面のうちの一方の形をしている。このように、本実施例によれば、図7の例では映像が表示されていなかった映像表示装置の移動方向の前方にも映像を表示することができる。
また、枠体50を回転させながら表示面C3に映像を表示するため、例えば第1発光制御を行っている状態から第2及び第3発光制御を行っている状態に切り替える際に、回転している枠体50を停止させる必要がないので、枠体50が停止するまでの時間を必要とする場合に比べて、切り替えに要する時間を短くすることができる。また、移動方向の後方(図9に表す領域R2)では複数のLEDを発光させないように制御されることで、表示面C3に表示される映像に領域R2を通過するLEDの発する光が重なって映像が見にくくなるということがない。
[3]変形例
上述した各実施例はそれぞれが本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、各実施例及び以下に示す各変形例は、必要に応じて組み合わせて実施してもよい。
[3−1]枠体の回転制御
回転制御部60は、図6の例とは異なる制御を行ってもよい。
図11は本変形例の飛行中の枠体50の向きの変遷の一例を表す。図11の例では、機構基準方向A3を移動方向に向けながら移動する映像表示装置1が表されている。この場合、映像表示装置1は、移動方向に移動しながら機構基準方向A3を移動方向に向けるという回転の動きを行っている。
このように、機構基準方向A3と移動方向との関係が維持されながら映像表示装置1が移動する場合に、回転制御部60は、機構基準方向A3と枠体基準方向A2との関係が維持されるように枠体50を制御する。具体的には、回転制御部60は、例えば機構基準方向A3に対して枠体基準方向A2が所定の角度(例えば90度)を成す位置まで枠体50を回転させ、その位置に枠体50が到達すると、それ以降回転をさせないように枠体50の回転を制御する。
本変形例では、機構基準方向A3と移動方向との関係(例えばこれらの方向が成す角度)が分かっていれば、図1に表す速度センサ部30が測定した移動方向を用いなくても枠体50の回転を制御することができる。また、移動方向の測定に要する時間と、枠体基準方向A2及び移動方向のずれが生じたときに枠体50を回転させる時間とが不要なので、移動方向が変化したときに枠体50を回転させる場合に比べて表示面方向を早くユーザの方に向けることができる。
[3−2]斜め移動時の発光制御
発光制御部70は、自装置が水平方向に対して角度を成す方向、すなわち斜め上方向や斜め下方向に移動する場合に、上記の例とは異なる発光制御を行ってもよい。まず、映像表示装置が斜め方向に移動する場合に、水平方向への移動時と同じ発光制御を行った場合に表示される映像について図12を参照して説明する。
図12は斜め方向への移動時に表示される映像の一例を表す。図12(a)では、水平方向に沿った移動方向E21に移動する映像表示装置1xが第2発光制御を行って形成した表示面C21に表示された「E」という文字の映像が表されている。図12(b)では、水平方向に対して角度を成す移動方向E22(斜め上方向)に移動する映像表示装置1xが第2発光制御を行って形成した表示面C22に表示された「E」という文字の映像が表されている。
表示面C21、C22は、複数のLEDが通過する領域によって形成されている。図12では、各表示面において各LEDが通過する領域の境界を二点鎖線で表した。映像表示装置1xは、移動方向E21に移動する場合も移動方向E22に移動する場合も同じ第2発光制御を行う。「E」の文字は1本の縦棒と3本の横棒で形成されており、図12(a)に表す「E」の文字は縦棒が鉛直に伸び且つ横棒が水平方向に伸びているので、縦棒と横棒とが直交している。これに対し、図12(b)の例では、「E」の文字の縦棒は鉛直に伸び且つ横棒は斜め上に伸びているため、縦棒と横棒とが直交していない。このように、斜め方向への移動時には、表示される映像(この例では「E」という文字)が水平方向への移動時の映像から変形している。
本変形例の発光制御部70は、第2発光制御を行う際に、枠体50が軌道上の所定の位置にあるときのLEDの発光時期を、自装置の移動方向における各LEDの位置に応じて制御する。
図13は移動方向における各LEDの位置の一例を表す。図13では、枠体50を水平方向に見たときに、移動方向E22に沿って且つ枠体50の鉛直中心と交わる座標軸L22が表されている。この座標軸L22は、枠体50と交わっている点を原点G0とし、移動方向E22を正方向とする1次元の座標軸である。
座標軸L22に対して各LEDから下ろした垂線と座標軸L22の交わった点の座標が、移動方向E22における各LEDの位置を表す。例えばLED03は座標G03、LED07は座標G07、LED18は座標G18、LED22は座標G22というように、各LEDの位置が表される。各座標の大小関係はG03>G07>G0>G18>G22となっている。発光制御部70は、水平移動時に行う発光時期を、この座標が原点G0から正方向に離れているほど早くして、この座標が原点G0から負方向に離れているほど遅くする制御を行う。発光制御部70は、例えば上記座標に単位時間(例えば0.1秒など)を乗じた時間だけ遅め又は早めにLEDを発光させる。
図14は本変形例の映像表示装置1aが表示する映像の一例を表す。図14では、映像表示装置1aが、図12(b)に表すものと同じ表示面C23(斜め上方向の移動方向E22に移動したときに形成される表示面)を形成し、その表示面C23に「E」という文字の映像を表示している。例えば「E」の文字の縦棒のうち、座標軸L22の座標が原点G0に近いLEDが発光するタイミングを基準とすると、LED07が発光する部分は原点G0から正方向に離れているため早めに発光され、LED18が発光する部分は原点G0から負方向に離れているため遅めに発光されるので、その結果、Eの縦棒が移動方向E22に対して直交するように表示されている。
同様に、上記の発光制御が行われることで、移動方向E22に沿った「E」の横棒が表示される。従って、図14の例で表示される「E」の文字は、図12(a)に表す水平飛行時に表示される「E」と同様に、縦棒と横棒とが直交する形となっている。これにより、図12(b)の例のように水平飛行時も斜め飛行時も同じ発光制御を行う場合に比べて、斜め飛行時に表示される映像と水平飛行時に表示される映像との差が小さくなる。
なお、水平飛行時の映像の上下方向(「E」の文字であれば縦棒に沿った方向)における表示面C21の寸法H21に比べると、斜め方向への飛行時の映像の上下方向における表示面C23の寸法H23は小さくなっている。そのため、上記のように発光時期を変化させるだけだと、上下方向に縮んだ映像が表示されることになる。そこで、発光制御部70は、その点を考慮して、斜め移動時には表示する映像の上下方向の寸法を大きくし、又は、左右方向(上下方向に直交する方向)の寸法を小さくしてもよい。
若しくは、発光制御部70は、斜め移動時に、表示する映像の上下方向の寸法を大きくして且つ左右方向の寸法を小さくしてもよい。いずれの場合も、発光制御部70は、表示される映像の上下方向の寸法及び左右方向の寸法の比率が、水平飛行時に表示される映像の同比率と一致するように映像の寸法を変化させる。これにより、水平飛行時も斜め飛行時も同じ発光制御を行う場合に比べて、斜め飛行時に表示される映像と水平飛行時に表示される映像との差がさらに小さくなる。
なお、映像表示装置が水平方向に移動する場合でも、枠体の回転軸が鉛直に対して傾いていると、図12(b)の例のような映像が表示されることになるので、本変形例で述べた発光制御が行われてもよい。これにより、発光制御を一律に行う場合に比べて、枠体の回転軸を鉛直に対して傾けて飛行する場合と、枠体の回転軸を鉛直に対して傾けずに水平飛行する場合との映像の差が小さくなる。
[3−3]駆動力の出力
発光制御部70は、第2発光制御を行う際に、実施例では、速度センサ部30により測定された自装置の移動速度を用いて発光時期を制御したが、これに限らない。本変形例の発光制御部70は、第2発光制御を行う際に、複数のLEDの発光時期を、自装置を移動させる駆動力を生じさせる駆動部の出力に応じて制御する。
図15は本変形例に係る映像表示装置1bの全体構成を表す。映像表示装置1bは、図1に表す各部のうち速度センサ部30を除く各部を備える。本変形例では、4つのモータ12のことを、映像表示装置1bを移動(飛行)させる駆動力を生じさせている駆動部17というものとする。フライトコントローラ14は、電気的にシングルボードコンピュータ41と接続されている。フライトコントローラ14は、上述したように各モータ12の回転数を制御する。この回転数は、駆動部17の出力を表す。フライトコントローラ14は、駆動部17の出力を表す出力情報として、制御に用いた回転数を発光制御部70のシングルボードコンピュータ41に供給する。
発光制御部70は、駆動部17の出力情報が供給されると、その出力情報が表す出力に応じた発光時期に各LEDを発光させる制御を行う。より具体的には、発光制御部70は、例えば、出力情報が表す各モータの出力から、各回転翼11の回転速度を求め、求めた回転速度に応じて生じる揚力による自装置の移動速度を算出する。例えば図2に表す回転翼11−1、11−2の回転数が回転翼11−3、11−4よりも少ないと、映像表示装置1bは回転翼11−1、11−2が設けられている側に傾いてそちらの方向に移動する。発光制御部70は、このときの傾きの角度と各回転翼11が生じさせる揚力とから移動方向に働く力を算出し、自装置の移動速度を求める。
本変形例によれば、映像表示装置に例えば図1に表す速度センサ部30を搭載する必要がなくなり、速度センサ部30を搭載する場合に比べて映像表示装置を軽量化できる。なお、例えばフライトコントローラ14に手を加えることができなくて駆動部の出力情報が得られない場合も考えられる。その場合には、実施例のように速度センサ部30を搭載して自装置の移動速度を求めればよい。つまり、実施例では、駆動部の出力情報が得られない映像表示装置においても自装置の移動速度に応じて回転速度を変化させることができる。
[3−4]外部装置による測定
映像表示装置の移動速度を外部装置が測定してもよい。
図16は本変形例に係る映像表示システム100の全体構成を表す。映像表示システム100は、映像表示装置1cと、移動速度測定装置90とを備える。映像表示装置1cは、図1に表す各部のうち速度センサ部30を除く各部を備える。
移動速度測定装置90は、飛行する映像表示装置1cを撮影可能な場所に設置されて用いられる。移動速度測定装置90は、撮影部91と、移動速度測定部92と、測定結果送信部93とを備える。撮影部91は、レンズ及びイメージセンサ等を備え、被写体の映像を撮影する。移動速度測定部92は、例えば、撮影部91が撮影した映像から映像表示装置1cの輪郭を抽出し、抽出した輪郭の寸法を求める。
移動速度測定部92は、予め映像表示装置1cの実際の寸法を記憶しておくことで、その実際の寸法と求めた映像上の寸法から、自装置と移動速度測定装置90との距離を算出する。映像上の位置から映像表示装置1cの方向が分かるので、移動速度測定部92は、その方向に向かって算出した距離だけ離れた物体である映像表示装置1cの実空間における座標を算出する。
移動速度測定部92は、そうして映像表示装置1cの実空間における座標を繰り返し算出し、移動距離を移動時間で除した値を移動速度として算出する。移動速度測定部92は、算出した移動速度の値を測定結果として測定結果送信部93に供給する。測定結果送信部93は、供給された測定結果を映像表示装置1cに送信する。なお、移動速度測定装置90は、上記のように撮影した映像を用いる方法以外にも、例えばスピードガンのように電磁波を照射してその反射波の周波数に基づいて移動速度を測定してもよい。
送信された測定結果は、映像表示装置1cの受信機15により受信されて発光制御部70に供給される。受信機15は、外部装置(本変形例では移動速度測定装置90)が測定した自装置の移動速度を表す情報を取得する取得部を実現している。発光制御部70は、第2発光制御の際に、こうして供給された測定結果(すなわち受信機15により受信された、外部装置が測定した自装置の移動速度を表す情報)に応じて、複数のLEDの発光時期を制御する。
なお、上記の例では外部装置が映像表示装置の移動速度を測定したが、外部装置は映像表示装置の位置を測定してもよい。その場合、受信機15が外部装置から映像表示装置の位置を表す情報(例えば緯度、経度及び高度)を繰り返し取得し、発光制御部70が、取得された情報が表す位置の変化から自装置の移動速度を求めてからその移動速度に応じて複数のLEDの発光時期を制御する。
本変形例では、映像表示装置が自装置の移動速度を測定するセンサを備えたり、駆動部の出力情報を発光制御部70に供給する仕組みを備えたりする必要がない。そのため、それらのセンサや仕組みを備えていない映像表示装置でも、自装置の移動速度に応じて複数のLEDの発光時期を制御することができる。
[3−5]LEDの点滅制御
発光制御部70は、実施例では、例えば図4に表すLED07が領域D71を通過する期間にLED07を発光させ続けたが、点滅させてもよい。
図17は本変形例で表示される映像の一例を表す。図17では、点滅する複数のLEDにより表示された「E」という文字が表されている。この場合、発光制御部70は、各LEDが点滅する時期を発光時期として制御する。
[3−6]枠体の回転方法1
実施例では、回転翼11及び枠体50が別々に回転したが、回転翼及び枠体が一体となって回転してもよい。
図18は本変形例の映像表示装置1dを表す。映像表示装置1dは、筐体2dと、回転翼11dと、モータ12dと、枠体50dと、力発生部120とを備える。筐体2dには、図示せぬ飛行機構の各部や電源部、映像表示部の各部が格納されている。映像表示装置1dは、1つの回転翼11dを備えるシングルローター式の回転翼機である。
回転翼11dは、シャフト111dと、ローター112dとを備える。シャフト111dは、鉛直下方の端がモータ12dの回転軸に固定され、モータ12dが生じさせる回転力により回転する。モータ12dの筐体の鉛直下方側には支持部材4d−1が固定されている。支持部材4d−1は、円柱形の部材であり、鉛直下方の端にベアリング6d−1が回転可能に取り付けられている。そのベアリング6d−1には筐体2dが固定されている。モータ12dが自身の回転軸を回転させると、その回転軸を回転させる回転機構は反作用によって回転軸とは反対向きに回転する。そのため支持部材4d−1も回転するが、ベアリング6d−1が設けられていることにより、ベアリング6d−1が設けられていない場合に比べてその回転力が筐体2dに伝わりにくくなっている。
一方、シャフト111dの鉛直上方の端には枠体50dが固定されている。これにより、枠体50dは、シャフト111dが回転すると、すなわち回転翼11dが回転すると、回転翼11dと一体になって回転するようになっている。枠体50dの鉛直下方の端には支持部材4d−2が固定されている。支持部材4d−2は、長手方向を鉛直に沿って配置された円柱形の部材であり、枠体50dとともに回転する。
支持部材4d−2の枠体50dの反対側の端(鉛直上方の端)にはベアリング6d−2が回転可能に取り付けられており、そのベアリング6d−2には筐体2dが固定されている。このため、ベアリング6d−2が設けられていない場合に比べて支持部材4d−2の回転力が筐体2dに伝わりにくくなっている。以上のとおり、筐体2dは、ベアリング6d−1及び6d−2を介して支持部材4d−1及び4d−2に繋がっているため、これらの支持部材が回転しても一緒には回転しないようになっている。また、支持部材4d−1及び支持部材4d−2は反対方向に回転するため、これらの回転力がベアリングを介して伝わったとしても、それらが打ち消し合って筐体2dに与えられる回転力を小さくしている。
力発生部120は、水平方向に働く力を発生させる機構であり、筐体2dに設けられている。力発生部120は、本実施例では、航空機における補助翼及び昇降舵の働きによって水平方向の力を発生させる。力発生部120は、第1舵面121−1及び第2舵面121−2(これらを区別しない場合は「舵面121」という)と、舵面向き制御部122とを備える。舵面121は、回転翼11dの回転により鉛直下方に吹き付ける風が当たる位置に配置される。舵面向き制御部122は、2つの舵面121の向きを制御する。
図18では、鉛直に沿って上向きを正方向とするZ軸と、第1舵面121−1から第2舵面121−2に向かう方向に沿ってこの方向を正方向とするX軸と、図18において奥から手前に向かう方向に沿ってその方向を正方向とするY軸とを表した。力発生部120は、両舵面121ともZ軸正方向側がZ軸負方向側よりもY軸負方向側に位置するように傾いた向きに制御することで、Y軸負方向に向かう水平方向の力を発生させる。力発生部120は、両舵面121ともZ軸正方向側がZ軸負方向側よりもY軸正方向側に位置するように傾いた向きに制御することで、Y軸正方向に向かう水平方向の力を発生させる。
力発生部120は、第1舵面121−1はZ軸正方向側がZ軸負方向側よりもY軸負方向側に位置するように傾いた向きに制御し、第2舵面121−2はZ軸正方向側がZ軸負方向側よりもY軸正方向側に位置するように傾いた向きに制御することで、筐体2dがZ軸負方向に見たときに時計回り方向に回転する水平方向の力を発生させる。また、力発生部120は、第1舵面121−1はZ軸正方向側がZ軸負方向側よりもY軸正方向側に位置するように傾いた向きに制御し、第2舵面121−2はZ軸正方向側がZ軸負方向側よりもY軸負方向側に位置するように傾いた向きに制御することで、筐体2dがZ軸負方向に見たときに反時計回り方向に回転する水平方向の力を発生させる。
本変形例では、飛行中は枠体50dの位置を軌道上の所定の位置に維持することができないので、第2実施例で述べたように、発光制御部70が、複数のLEDが決められた軌道を移動しているときに第2発光制御を行うことで、図4に表す表示面C1とは異なる範囲に映像を表示することができる。
[3−7]枠体の回転方法2
実施例では、回転翼11及び枠体50が別々に回転したが、回転翼の回転力の反作用で枠体を回転させてもよい。
図19は本変形例の映像表示装置1eを表す。映像表示装置1eは、筐体2eと、回転翼11eと、モータ12eと、枠体50eと、力発生部120とを備える。回転翼11eは、シャフト111eと、ローター112eとを備える。シャフト111eには、ベアリング6eが回転可能に取り付けられており、ベアリング6eには枠体50eが固定されている。モータ12eの筐体の鉛直下方側には、棒状の支持部材4e−1を介して筐体2eの上面が固定されている。筐体2eの鉛直下向きの面には棒状の支持部材4e−2を介して枠体50eが固定されている。
このように、映像表示装置1eにおいては、モータ12eの筐体と、筐体2eと、枠体50eとが互いに支持部材を介して固定されており、一体となって回転するようになっている。一方、モータ12eの回転軸に固定された回転翼11eは、それら(枠体50e及び各筐体)からは独立して回転する。ただし、回転翼11eが回転すると、その反作用としてモータ12eの筐体を反対向きに回転させる力が発生する。この力により、モータ12eの筐体は回転翼11eとは反対向きに回転し、筐体2e及び枠体50eも、そのモータ12eの筐体と一体となって回転する。映像表示装置1eは、力発生部120が発生させる力により鉛直以外の方向に移動する際に第2発光制御を行う。
[3−8]力発生部
図18に表す力発生部120は、舵面に当たる風の力で水平方向の力を発生させたが、これとは異なる方法で水平方向の力を発生させてもよい。
図20は本変形例の映像表示装置1fの構成を表す。図20では、水平方向に見た映像表示装置1fが表されている。映像表示装置1fは、図18に表す映像表示装置1dが備える各部のうち、力発生部120を力発生部120fに替えた構成を備える。
力発生部120fは、複数のプロペラ部123を備える。各プロペラ部123は、プロペラ及びそれを回転させるモータを有し、筐体2dの水平方向に向いた面に設けられている。各プロペラ部123は、プロペラを回転させることで水平方向の力(例えばプロペラ部123から筐体2dに向かう方向に働く力)を発生させる。映像表示装置1fは、プロペラ部123を4方に設けることで、4つの方向に進むことができるようになっている。また、複数のプロペラを同時に回転させることで、各プロペラ部123が発生させる力の合力の方向に進むこともできる。
なお、筐体が回転していると筐体に固定されているプロペラ部123が発生させる力の方向も変化してしまうので、筐体の回転を抑えるために、映像表示装置が例えば図18に表す力発生部120をさらに備えていてもよい。又は、筐体とともにプロペラ部123が回転していても映像表示装置が目的の方向に移動するように各プロペラの回転を制御するようにしてもよい。舵面を用いて力を発生させる場合、舵面に当たる風が弱くなると力も弱くなるが、本変形例では、回転翼が生じさせる風の強さに関係なく水平方向の力の大きさを変動させることができる。
[3−9]枠体
枠体は、上述した実施例や変形例で述べたものに限らない。
図21A、図21Bは本変形例の枠体の例を表す。図3に表す枠体50は環状の枠を形成する物体であったが、図21A(a)では、環が鉛直上方で途切れた枠を形成する枠体50hが表されており、図21A(b)では、環が鉛直の中央で途切れた枠を形成する枠体50iが表されている。このように、枠体は、完全な環状ではなく環が途中で途切れた形であってもよい。
図21A(c)では、底辺を鉛直上方に向けて頂点を鉛直下方に向けた三角形の形をした枠体50jが表されている。一方、図21A(d)では、円の形をした枠体50kが表されている。このように、枠体は、直線のみで形成された形をしていてもよいし、曲線のみで形成された形をしていてもよい。また、上述した実施例や変形例では鉛直に沿った回転軸を中心に枠体が回転したが、図21B(e)では、水平方向に沿った回転軸を中心に回転する枠体50lが表されている。このように、枠体の回転軸はどの方向を向いていてもよい。
また、図21B(f)では、2列に並べられたLEDが設けられた環状の枠体50mを環の径に沿った方向から見たところが表されている。枠体50mは、円筒を短く切ったような形をしており、細長い板の両端を繋いで環状に形成した形をしている。このように、枠体は棒状ではなく板状であってもよい。また、図21B(g)では、真っ直ぐな棒状の枠体50pが表されている。枠体50pは、筐体2pの鉛直下方に設けられた土台51pに固定されており、土台51pが回転することで枠体50pも回転する。このように、枠体は飛行機構や電源部の周囲を回転しなくてもよい。
図21B(h)では、枠体50pと同じく真っ直ぐな棒状の枠体50qが表されている。枠体50qは、図中の矢印に示すように一方の端を軸にした往復移動をする。そのため、枠体50qの軌道は扇の形をした軌道となる。このように、枠体は回転移動をしていなくてもよい。ただし、その場合も、決まった軌道を繰り返し移動するように枠体が設けられている必要がある。それにより、枠体に設けられた複数のLEDが発する光の残像により映像が表示されるからである。
[3−10]発光体
発光体はLEDに限らない。白熱電球や有機EL(Electroluminescence)など、光を発し且つ発光時期を制御可能な他の物体を発光体として用いてもよい。
[3−11]発光体の配置
図3等では、発光体の一例であるLEDが枠体の回転軸に対して対称に配置されており、枠体が回転すると対象に配置されたLEDが同じ軌跡を描いていたが、これに限らない。例えば各LEDが枠体の回転時に同じ軌跡を描かないようにずらして配置されていてもよい。これにより、前述したLEDが同じ軌跡を描く場合に比べて、枠体の回転軸に沿った方向の映像の走査線の密度を高めることができる。
[3−12]飛行体の形態
映像表示装置は、上述した回転翼機に限らない。例えば実施例の映像表示装置は4つの回転翼を備えるマルチローター式の回転翼機であったが、3つ以上の回転翼を備えるマルチローター式の回転翼機であってもよいし、シングルローター式又はツインローター式の回転翼機であってもよい。また、第2実施例や変形例で述べたシングルローター式の回転翼機は、ツインローター式の回転翼機であってもよい。
また、同軸で回転する3つ以上のローターを備える回転翼機であってもよい。また、回転翼機ではなく、例えば動力から推力を得て前進し、固定翼により揚力を得て飛行する飛行機であってもよい。例えばホバリングが可能な模型飛行機が知られているが、そのような飛行機を用いれば、空中に静止した状態又は低速で移動する状態で映像を表示することができる。
[3−13]移動機構
自装置を移動させる機構は、飛行機構10に限らない。例えば競技場などで空中に張った2本のワイヤ上を移動するカメラに用いられている機構が用いられてもよい。また、1本又は2本のレールに沿って自装置を移動させる機構や、車輪及びそれを回転させる駆動部を備え自走して自装置を移動させる機構が用いられてもよい。要するに、自装置を移動させる機構であれば、どのような移動機構が用いられてもよい。